JP6979582B6 - 変異型蛋白質、及び該変異型蛋白質を発現し円形脱毛を発症する遺伝子改変マウス - Google Patents

変異型蛋白質、及び該変異型蛋白質を発現し円形脱毛を発症する遺伝子改変マウス Download PDF

Info

Publication number
JP6979582B6
JP6979582B6 JP2017182249A JP2017182249A JP6979582B6 JP 6979582 B6 JP6979582 B6 JP 6979582B6 JP 2017182249 A JP2017182249 A JP 2017182249A JP 2017182249 A JP2017182249 A JP 2017182249A JP 6979582 B6 JP6979582 B6 JP 6979582B6
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
alopecia
seq
mouse
mutant protein
amino acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017182249A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6979582B2 (ja
JP2019054775A (ja
Inventor
晃 岡
正人 大塚
麻子 大友
志斈 池田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Juntendo University
Tokai University Educational Systems
Original Assignee
Juntendo University
Tokai University Educational Systems
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Juntendo University, Tokai University Educational Systems filed Critical Juntendo University
Priority to JP2017182249A priority Critical patent/JP6979582B6/ja
Publication of JP2019054775A publication Critical patent/JP2019054775A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6979582B2 publication Critical patent/JP6979582B2/ja
Publication of JP6979582B6 publication Critical patent/JP6979582B6/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Description

本発明は、変異型蛋白質、及び該変異型蛋白質を発現し円形脱毛を発症する遺伝子改変マウスに関する。
円形脱毛症は頭皮に円形の脱毛斑を生ずる症状であり、その治療法が研究されている。研究で用いられる円形脱毛症モデルマウスとして、「C3H/HeJマウス」が知られている(非特許文献1、2)。該マウスは、元来、脱毛症のモデルマウスとして作られたものではなく、自然発生的に見出されたマウスを交配して系統を確立したものである。該マウスは、生後5か月でメスの0.25%、オスの0.035%が脱毛するが、選択的な交配により20%に増加する。しかしながら、このマウスの脱毛要因となる遺伝子は突き止められていない。
しかしながら、この「C3H/HeJマウス」が世界でも唯一の円形脱毛症モデルマウスであり、それ以外の円形脱毛症モデルマウスは知られていない。
Sundberg et. al., J. Invest. Dermatol., 102(6), 847-56 (1994) McElwee et. al., Clin. Exp. Dermatol., 27(5), 410-7 (2002) Harms et al., Curr. Protoc. Hum. Genet., 83:15, 7, 1-27 (2014) Miura et al., Sci. Rep., 5:12799 (2015) Peereboom-Wynia et al., Clin. Exp. Dermatol., 14(1), 47-50 (1989)
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、簡便な方法で作製できる変異型蛋白質、及び該変異型蛋白質の発現を維持し円形脱毛を発症する遺伝子改変マウスの提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、マウスCCHCR1蛋白質の591位のアルギニン(Arg)が、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)又はチロシン(Tyr)に置換された変異型蛋白質が発現することにより、マウスが円形脱毛を発症することを見出して、本発明を完成させた。本発明は下記の通りである。
〔1〕配列番号1で表されるアミノ酸配列の591位のアルギニンが、フェニルアラニン、トリプトファン又はチロシンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型蛋白質、又は
配列番号1で表されるアミノ酸配列の591位のアルギニンが、フェニルアラニン、トリプトファン又はチロシンに置換されたアミノ酸配列において、該591位のアミノ酸以外の1~数個のアミノ酸が置換若しくは欠失、又は1~数個のアミノ酸が挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなる変異型蛋白質。
〔2〕〔1〕に記載の変異型蛋白質をコードするDNA。
〔3〕〔1〕に記載の変異型蛋白質を発現し、円形脱毛を発症する遺伝子改変マウス。
〔4〕〔3〕に記載の遺伝子改変マウスに脱毛症の治療薬の候補又は予防薬の候補を投与
する工程を含む、脱毛症の治療薬又は予防薬のスクリーニング方法。
〔5〕〔3〕に記載の遺伝子改変マウスに脱毛症の改善用又は予防用の化粧品の候補を塗布する工程を含む、脱毛症の改善用又は予防用の化粧品のスクリーニング方法。
〔6〕配列番号8に記載の塩基配列を含むDNA。
〔7〕〔6〕に記載のDNAをマウスへ導入する工程を含む、〔3〕に記載の遺伝子改変マウスの作製方法。
本発明によれば、簡便な方法で作製できる変異型蛋白質、及び該変異型蛋白質の発現を維持し円形脱毛を発症する遺伝子改変マウスが提供できる。
各動物種におけるCCHCR1蛋白質の一部分のアミノ酸配列を整列させた図である。 図1Aに記載された各動物種におけるCCHCR1蛋白質の構造予測の結果を示した図である。 本発明の一実施態様におけるヒトハプロタイプ解析の結果を示す図である。 本発明の一実施態様におけるヒトハプロタイプ解析の結果を示す図である。 本発明の一実施態様におけるヒトハプロタイプ解析の結果を示す図である。 本発明の一実施態様におけるヒトハプロタイプ解析の結果を示す図である。 本発明の一実施例で作製したマウスの背部を示した写真である(図面代用写真)。 a、bともに、本発明の一実施例で作製したマウスの背部の皮膚表面を示した写真である(図面代用写真)。 本発明の一実施例で作製したマウスの背部の皮膚表面を示した顕微鏡像である(図面代用写真)。 本発明の一実施例で作製したマウスの背部の毛幹の走査型電子顕微鏡像である(図面代用写真)。
<変異型蛋白質>
本発明の一実施態様に係る変異型蛋白質は、マウスCCHCR1蛋白質のアミノ酸配列(配列番号1)の591位のアルギニン(Arg)が、フェニルアラニン(Phe)、トリプトファン(Trp)又はチロシン(Tyr)に置換されたアミノ酸配列からなる。
該変異型蛋白質は、前記置換がされ、マウスが該変異型蛋白質を発現して円形脱毛を発症する限り、該変異型蛋白質のアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上同一性を有するアミノ酸配列からなる変異型蛋白質であってもよい。
このような変異型蛋白質としては、該変異型蛋白質のアミノ酸配列において、591位のアミノ酸以外の1~数個のアミノ酸が置換又は欠失したアミノ酸配列からなる変異型蛋白質や、該変異型蛋白質のアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が挿入若しくは付加されたアミノ酸配列からなる変異型蛋白質が挙げられる。
1~数個とは、好ましくは1~70個、より好ましくは1~50個、さらに好ましくは1~30個、よりさらに好ましくは1~10個、特に好ましくは1~5個、格段に好ましくは1~3個である。アミノ酸がN末端側及び/又はC末端側に付加される場合も同様である。
置換は保存的置換が好ましく、保存的置換とは、置換部位が芳香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr間で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合には、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である場合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸である場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸である場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル基を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間でお互いに置換することを指す。保存的置換としては、具体的には、AlaからSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLysへの置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの置換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからSer又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、Asp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又はAspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn、Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met、Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はPheへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへの置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、PheからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、SerからThr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置換、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe又はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeuへの置換が挙げられる。
挿入されるアミノ酸配列としては、マウスが円形脱毛を発症する限り、特に制限されない。また、付加されるアミノ酸配列としては、マウスが円形脱毛を発症する限り特に制限されないが、例えば、蛍光蛋白質や、発現の定量や分離に用いるためのタグ蛋白質となるように、由来の異なるアミノ酸配列でもよい。蛍光蛋白質であれば、例えば、マウス生体内で発現した該蛋白質の追跡や発現量の検討ができる。また、タグ蛋白質であれば、生体外に取り出して発現量の検討や分離精製ができる。いずれも、常法に従って行うことができる。
尚、CCHCR1蛋白質には、いくつかのコイルドコイルドメインが含まれると推定されている。図1Aに示すように、ハツカネズミ(Mus musculus)のCCHCR1蛋白質の591位のアルギニン(Arg)は多くの動物種で保存されている。Hap01はヒトのハプロタイプの一つであり、該アミノ酸を矢印で示している。Hap26もヒトのハプロタイプの一つだが、構造予測によれば、Hap26のように、587位のアルギニン(Arg)がトリプトファン(Trp)に置換されると、該残基が含まれるドメインのコイルドコイル構造を構成しうる確率が大きく減衰することがわかった(図1Bの矢印)。これは、コイルドコイル構造中のアラニン、グルタミン酸、リジン、及びアルギニンが芳香族アミノ酸に置換されると、該構造が構成されにくくなるためであると考えられる。
尚、図1Aにおいて、Hap26の配列を配列番号11、Hap01の配列を配列番号12、Pan troglodytesの配列を配列番号13、Macaca mulatttaの配列を配列番号14、Canis lupus familiarisの配列を配列番号15、Bos taurusの配列を配列番号16、Mus musculusの配列を配列番号17、Xenopus tropicalisの配列を配列番号18とする。
ここで、下記研究により、上記Hap26が円形脱毛症患者で遺伝統計学的に有意に多いハプロタイプであることが示された。
円形脱毛症患者171個体と健常者560個体とを用い、ヒトMHC領域内における22座位のマイクロサテライトを用いて、円形脱毛症に関連する変異の解析を実施した。この結果、D6S2811のアリル208にて最も強い関連を示した(OR = 3.41, CI95% = 1.94-5.99, P = 3.39×10-5)(図1C)。ペアワイズ連鎖不平衡解析によれば、MHC領域において長く強い連鎖不平衡が確認された。D6S2811からD6S2930までの3座位でのハプロタイプの中で、円形脱毛症に強く関連するハプロタイプが一つ見いだされた(MShap01, OR = 3.78, CI95% = 2.00-7.16, P = 6.57×10-5)。
次に、円形脱毛症の原因変異を同定するために、リスクハプロタイプを有する5個体ならびにこれを持たない7個体を対象に、4.97 MbのMHC領域(chr6: 28477797-33451433, hg19)をシークエンシングした。すべてのリスクハプロタイプはヘテロ接合であるため、
円形脱毛症の原因変異はヘテロ接合であることが期待されたところ、合計12個体には77,040個の変異が認められ、そのうちヘテロ接合の変異は3,895個であった。このうち5個のリスクハプロタイプのみに共通して観察される変異は16個であり、遺伝子上にあってアミノ酸置換を伴う変異は、cchcr1遺伝子上に見いだされた一つの変異のみであった(rs142986308とする。)。さらに、これら16個の変異は651.7 kbの領域にわたり、互いに強い連鎖不平衡を示していた(図1D)。
次に、全個体を用いて全エクソンをシークエンシングしたところ、rs142986308のみが5個体すべてに共有され、優位な関連を示した(OR = 3.41, CI95% = 1.94-5.99, P = 3.39×10-5)。
さらに、rs142986308のcchcr1内に見出された24個のSNVにてハプロタイプ解析を行ったところ、アリルTを有する上記Hap26のみが統計学的有意性を示し(OR = 3.41, CI95% = 1.94-5.99, P = 3.39×10-5)、さらに、すべてハプロタイプの中でrs142986308のアリルTを有するハプロタイプはHap26のみであった(図1E)。
尚、図1Eにおいて、Hap01の配列を配列番号19、Hap02の配列を配列番号20、Hap03の配列を配列番号21、Hap04の配列を配列番号22、Hap05の配列を配列番号23、Hap06の配列を配列番号24、Hap07の配列を配列番号25、Hap08の配列を配列番号26、Hap09の配列を配列番号27、Hap10の配列を配列番号28、Hap11の配列を配列番号29、Hap12の配列を配列番号30、Hap13の配列を配列番号31、Hap14の配列を配列番号32、Hap15の配列を配列番号33、Hap16の配列を配列番号34、Hap17の配列を配列番号35、Hap18の配列を配列番号36、Hap19の配列を配列番号37、Hap20の配列を配列番号38、Hap21の配列を配列番号39、Hap22の配列を配列番号40、Hap23の配列を配列番号41、Hap24の配列を配列番号42、Hap25の配列を配列番号43、Hap26の配列を配列番号44とする。
さらに、円形脱毛症と関連を示す5個のアリル(コアアリル)で、EHH (extended haplotype homozygosity)を実施した(図1F)。rs142986308のアリルTを含むハプロタイプでは、最も長い(93.7 kb)rs1576 とD6S2931の間でEHH値1を示した。これはHap26が近年その頻度を患者集団で増加させていたことを表している。また、近接した座位に患者群で頻度が上昇しているアリルは、この影響によるヒッチハイキング効果によるものと考えられる。
このように、Hap26は、円形脱毛症患者で遺伝統計学的に有意に多いハプロタイプであり、これに含まれるrs142986308のアリルTが円形脱毛症の原因変異である。このことから、587位のアルギニンに相当する591位のアルギニンがトリプトファンに置換されたマウスは、ヒト円形脱毛症のモデルマウスとして有効である。
マウス生体内で前記変異型蛋白質を発現させる方法としては、特に制限されないが、CRISPR-Cas9システムが好ましい。その詳細は、後述する<遺伝子改変マウス>欄に記載する。
マウス生体外で前記変異型蛋白質を発現させる方法としては特に制限されず、例えば、従来の遺伝子工学手法が挙げられる。具体的には、後述する<前記変異型蛋白質をコードするDNA>欄に記載する、前記変異型蛋白質をコードするDNAを作製し、該DNAを用いて組換え発現ベクターを構築し、宿主に導入して発現させ、精製することなどが挙げられる。
<前記変異型蛋白質をコードするDNA>
本発明の他の実施態様は、前記変異型蛋白質をコードするDNAである。前記変異型蛋白質をコードしていればその塩基配列は特段制限されない。前記変異型蛋白質を構成する各アミノ酸をコードするコドンは公知であるため、各アミノ酸をコードするDNAの塩基配列は当業者であれば特定することができる。
<遺伝子改変マウス>
本発明の他の実施態様は、前記変異型蛋白質を発現し、円形脱毛を発症する遺伝子改変マウスである。
本実施態様におけるマウスの系統は、所望の遺伝子改変が行える系統であれば制限されない。例えばC57BL/6N系統マウスなどが挙げられる。
遺伝子改変の態様は、マウスが前記変異型蛋白質を発現し、円形脱毛を発症する限り制限はないが、CRISPR-Cas9システムによる遺伝子改変が好ましい。
CRISPR-Cas9システムの好ましい態様として実施例欄に記載された態様が挙げられるが、マウス生体内で前記変異型蛋白質が発現される限りその態様に限定されない。
Cas9 mRNAの配列設計、単鎖ガイドRNA(sgRNA)の配列設計、及び一本鎖DNA (ssODN)の配列設計は、例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列の591位のアルギニンをトリプトファンに置換する場合には、(a)cchcr1遺伝子の1,936塩基目のC(シトシン)がT(チミン)に置換され、かつ、(b)1,938塩基目のT(チミン)がG(グアニン)に置換されるように設計すればよく、常法に基づくことができる。
尚、これらはゲノムDNA上でみれば、それぞれ、(a)マウス17番染色体の35,528,927番目のC(シトシン)がT(チミン)に置換され、35,528,929番目のT(チミン)がG(グアニン)に置換されている場合と、(b)35,528,927番目のG(グアニン)がA(アゲニン)に置換され、35,528,929番目のA(アデニン)がC(シトシン)に置換されている場合とに対応するものである。
配列番号1で表されるアミノ酸配列の591位のアルギニンをフェニルアラニン又はチロシンに置換する場合にも、それぞれの場合に対応するようにcchcr1遺伝子の塩基を置換すればよい。
マウスの遺伝子改変は常法に従えばよく、好ましい態様として挙げられるのは、実施例欄に記載された態様であるが、当該態様に限定されない。
<脱毛症の治療薬又は予防薬のスクリーニング方法>
本発明の他の実施態様は、脱毛症の治療薬又は予防薬のスクリーニング方法である。
本実施態様に係るスクリーニング方法は、前記遺伝子改変マウスに脱毛症の治療薬の候補又は予防薬の候補を投与する工程を含む。
該脱毛症としては、男性型脱毛症、女性男性型脱毛症(びまん性脱毛症)、円形脱毛症、牽引性脱毛症、分娩後脱毛症、粃糠性脱毛症、脂漏性脱毛症が挙げられる。好ましくは円形脱毛症である。
該治療薬又は予防薬には、該治療薬又は予防薬の有効成分などの素材も含まれる。また、投与には摂取だけでなく外用剤等の場合の塗布も含まれる。
該候補を脱毛症の治療薬として決定するのは、該候補が投与されたマウスにおいて、投与前の脱毛巣面積よりも投与後の脱毛巣面積が小さくなった場合であり、好ましくは、投与後の脱毛巣面積が投与前の脱毛巣面積の50%以下になった場合であり、より好ましくは、脱毛が全くみられなくなった場合である。
このような効果がみられるまでの時間は、初回の投与から短時間であることが好ましく、例えば、6か月以内、好ましくは3か月以内、より好ましくは1か月以内である。
このようにして決定された脱毛症の治療薬は、脱毛症にまだ罹患していない対象や罹患する可能性が高い対象などに対する脱毛症の予防薬としても用いられる。
該候補の剤形は特に制限されない。例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、粉剤、カプセル剤、液剤、注射剤、外用剤(例えば、軟膏剤、クリーム剤等)、坐剤、徐放剤等が挙げられる。このうち好ましい剤形としては、患部に直接投与できる点や、投与が容易な点、全身副作用発生の可能性が低減する点などから外用剤である。
このほか、本実施態様に係るスクリーニング方法における手順は、脱毛症の治療薬又は
予防薬の開発や一般的な医薬の開発において行われている従来法の手順に従うことができる。
<脱毛症の改善用又は予防用の化粧品のスクリーニング方法>
本発明の他の実施態様は、脱毛症の改善用又は予防用の化粧品のスクリーニング方法である。
本実施態様に係るスクリーニング方法は、前記遺伝子改変マウスに脱毛症の改善用又は予防用の化粧品の候補を塗布する工程を含む。
該脱毛症としては、男性型脱毛症、女性男性型脱毛症(びまん性脱毛症)、円形脱毛症、牽引性脱毛症、分娩後脱毛症、粃糠性脱毛症、脂漏性脱毛症が挙げられる。好ましくは円形脱毛症である。
該化粧品には、該化粧品の脱毛症の改善用途又は予防用途における有効成分などの素材も含まれる。
該候補を脱毛症の改善用の化粧品として決定するのは、該候補が塗布されたマウスにおいて、塗布前の脱毛巣面積よりも塗布後の脱毛巣面積が小さくなった場合であり、好ましくは、塗布後の脱毛巣面積が塗布前の脱毛巣面積の50%以下になった場合であり、より好ましくは、脱毛が全くみられなくなった場合である。
このような効果がみられるまでの時間は、初回の塗布から短時間であることが好ましく、例えば、6か月以内、好ましくは3か月以内、より好ましくは1か月以内である。
このようにして決定された脱毛症の改善用の化粧品は、脱毛症をまだ発症していない対象や発症する可能性が高い対象などに対する脱毛症の予防用の化粧品としても用いられる。
該候補の剤形は特に制限されない。例えば、水やエタノール系の溶液製剤、ジェルやエッセンス等の可溶化製剤、エアゾール等の噴射形式製剤などが挙げられる。また、シャンプーやリンス、トリートメント、コンディショナー等の洗い流す製剤であってもよい。
このほか、本実施態様に係るスクリーニング方法における手順は、脱毛症の改善用又は予防用の化粧品の開発や一般的な化粧品の開発において行われている従来法の手順に従うことができる。
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
一例として、配列番号1で表されるアミノ酸配列の591位のアルギニン(Arg)がトリプトファン(Trp)に置換されたアミノ酸配列からなる変異型蛋白質を発現するマウスを作製するための方法として、CRISPR-Cas9システムを用いた方法を記載する。本実施例では、該システムを用いて、マウス胚のCCHCR1遺伝子において、配列番号1で表されるアミノ酸配列の591位のアルギニン(Arg)をコードする塩基配列を編集した。
[Cas9 mRNAの準備]
非特許文献3に記載の方法に従い、pBGKプラスミドを用いてCas9 mRNAを準備した。
[単鎖ガイドRNA (sgRNA)の準備]
CHOPCHOP(https://chopchop.rc.fas.harvard.edu/)を用いて下記2種の単鎖ガイドRNA (sgRNA)を準備した。
guide1: GCTGTGTCAGCTCCTGACGGAGG(配列番号2)
guide2: GGAAGCTGCCAGCCTCCGTCAGG(配列番号3)
上記sgRNA合成のための鋳型は、pUC57-sgRNAベクター(プラスミドバンクaddgene、#51132)を鋳型とし下記プライマーセットを用いたPCRで増幅した。
sgRNA 1用:5'-TAATACGACTCACTATAGGGCTGTGTCAGCTCCTGACGGGTTTTAGAGCTAGAAATAGCAAG-3'(配列番号4)、及び5'-AAAAAAAGCACCGACTCGG-3'(配列番号5)
sgRNA 2用:5'-TAATACGACTCACTATAGGGGAAGCTGCCAGCCTCCGTCGTTTTAGAGCTAGAAATAGCAAG-3'(配列番号6)、及び5'-AAAAAAAGCACCGACTCGG-3'(配列番号7)
PCR後の電気泳動ゲルから精製したPCR産物(400 ng)をMEGAshortscript T7 Kit (Ambion社)によるRNA合成に用いた。その手順はキットに添付されたマニュアルに従った。
MEGAclear Kit (Ambion社)を用いてCas9 mRNAとsgRNAを精製し、Ultrafree-MC filter (HV; 0.45μmポアサイズ、ミリポア社)を通して、後述するマウス受精卵へのマイクロインジェクションする際に、針が目詰まり(clogging)しないようにした。
[一本鎖DNA (ssODN)の準備]
下記一本鎖DNA (ssODN)の合成をIDT (Integrated DNA Technologies社)に委託した。
5'-CAGCAGTTGGAGGCAGCACGTCGGGGCCAGCAGGAGAGCACGGAGGAAGCTGCCAGCCTCtGgCAGGAGCTGACACAGCAGCAGGAAATCTACGGGCAAGGTGTGGGGGCGTGGCGGTGTGTG-3'(配列番号8)
[受精卵へのマイクロインジェクション]
C57BL/6N系統マウスの受精卵(1細胞期)に10 ng/μl Cas9 mRNA、10 ng/μl sgRNA、及び20 ng/μl ssODNをマイクロインジェクションした。その後、該受精卵をKSOM培地で一晩培養し、非特許文献4の方法に従って、偽妊娠のICR系統雌マウスの卵管に2細胞期胚を移植した。
[結果]
(遺伝子型)
作製したマウスの耳からイヤーパンチにより組織を取得し、180 μlの50 mM NaOH溶液を加え、95℃で10分間インキュベートした。20 μlの1 M Tris-HCl (pH 8.0)で中和し遠心してPCRのためにライセートを得た。PCRは、1 μlのライセート、0.2 UのKOD FX Neo (TOYOBO社)、5 μlの2×PCRバッファ、2 μlのdNTP(各2 mM)、及び0.2 μM(終濃度)の各プライマーを含む10 μlの反応量で行った。ForwardプライマーとしてAGCTGAGTGCCCACCTGAT(配列番号9)、ReverseプライマーとしてTGTGTCTCAGTGCTGCCTTC(配列番号10)を用いた(いずれもgreiner bio-one社に合成を委託したものである。)。PCR条件は、はじめに94℃で2分間の熱変性をし、その後、98℃で10秒間と60℃で25秒間を35サイクルとした。遺伝子配列の決定は、従来のサンガー法に従って行った。
その結果、cchcr1遺伝子の1,936塩基目のC(シトシン)がT(チミン)に置換され、1,938塩基目のT(チミン)がG(グアニン)に置換されていることが確認された。
(肉眼観察)
作製されたマウスの約50%は、生後4~8か月後に、その背部にパッチ状の脱毛を示した(図2)。脱毛が確認されたマウスの中には、時間経過とともにその脱毛部位が拡大したマウスも多かったが、初期の脱毛のままのマウスも見られた。また、脱毛したマウスの雌と雄の比は4:1であった。
脱毛した皮膚表面を観察すると、黒いスポット(白丸で囲った部分)や折れた毛髪(白色の矢印)、先細りの毛髪(黒色の矢印)が認められた(図3a及び図3b)。これらは円形脱毛症患者に特徴的な脱毛皮膚表面である。尚、図3aは倍率20倍、図3bは倍率32倍の画像である。また、脱毛領域に毛包が確認され、リンパ球浸潤などの兆候は観察されなかった(図4)。
(走査型電子顕微鏡観察)
毛幹を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果を図5に示す。作製したマウスでは、
黒いスポットや折れた毛髪、先細りの毛髪など、角質の構造異常や毛幹の平板化などの異常が観察された。この構造異常は脱毛していないマウスでも認められ、すなわちこの遺伝子改変マウスのすべてで認められた構造異常である。そしてこのような角質の構造異常はヒトの円形脱毛症患者でも観察されるものである(非特許文献5)。
本発明は、円形脱毛症の治療法の研究に利用できる。また、円形脱毛症の治療薬や予防薬、円形脱毛症の改善用又は予防用の化粧品の開発に利用できる。

Claims (8)

  1. 配列番号1で表されるアミノ酸配列の591位のアルギニンがトリプトファンに置換されたアミノ酸配列からなる変異型蛋白質。
  2. 請求項1に記載の変異型蛋白質をコードするDNA。
  3. 請求項1に記載の変異型蛋白質を発現し、配列番号1で表されるアミノ酸配列の591位に対応するアミノ酸残基がアルギニンであるCCHCR1蛋白質を発現しない、円形脱毛を発症する遺伝子改変マウス。
  4. 請求項3に記載の遺伝子改変マウスに脱毛症の治療薬の候補又は予防薬の候補を投与する工程を含む、脱毛症の治療薬又は予防薬のスクリーニング方法。
  5. 請求項3に記載の遺伝子改変マウスに脱毛症の改善用又は予防用の化粧品の候補を塗布する工程を含む、脱毛症の改善用又は予防用の化粧品のスクリーニング方法。
  6. 配列番号8に記載の塩基配列を含むDNA。
  7. 請求項6に記載のDNAをマウスの受精卵へ導入して、該マウスのcchcr1遺伝子の1,936塩基目のシトシンをチミンに置換し、1,938塩基目のチミンをグアニンに置換する工程を含む、請求項3に記載の遺伝子改変マウスの作製方法。
  8. マウスの受精卵において、cchcr1遺伝子の1,936塩基目のシトシンをチミンに置換し、1,938塩基目のチミンをグアニンに置換する工程を含む、遺伝子改変マウスの作製方法。
JP2017182249A 2017-09-22 2017-09-22 変異型蛋白質、及び該変異型蛋白質を発現し円形脱毛を発症する遺伝子改変マウス Active JP6979582B6 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017182249A JP6979582B6 (ja) 2017-09-22 2017-09-22 変異型蛋白質、及び該変異型蛋白質を発現し円形脱毛を発症する遺伝子改変マウス

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017182249A JP6979582B6 (ja) 2017-09-22 2017-09-22 変異型蛋白質、及び該変異型蛋白質を発現し円形脱毛を発症する遺伝子改変マウス

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2019054775A JP2019054775A (ja) 2019-04-11
JP6979582B2 JP6979582B2 (ja) 2021-12-15
JP6979582B6 true JP6979582B6 (ja) 2022-01-17

Family

ID=66105835

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017182249A Active JP6979582B6 (ja) 2017-09-22 2017-09-22 変異型蛋白質、及び該変異型蛋白質を発現し円形脱毛を発症する遺伝子改変マウス

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6979582B6 (ja)

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016196481A (ja) 2010-11-02 2016-11-24 ザ トラスティース オブ コロンビア ユニバーシティ インザ シティ オブ ニューヨーク 脱毛症の治療方法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2974446B2 (ja) * 1991-04-30 1999-11-10 中外製薬株式会社 脱毛症マウス

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016196481A (ja) 2010-11-02 2016-11-24 ザ トラスティース オブ コロンビア ユニバーシティ インザ シティ オブ ニューヨーク 脱毛症の治療方法

Non-Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
CCHCR_HUMAN, Q8TD31, entry version 137,2017年08月,[onleine], 2021年6月8日検索、インターネット、<https://www.uniprot.org/uniprot/Q8TD31.txt?version=137>
CCHCR_MOUSE, Q8K2I2, entry version 94,2017年05月,[onleine], 2021年6月11日検索、インターネット、<https://www.uniprot.org/uniprot/Q8K2I2.txt?version=94>
L9KZB6_TUPCH, entry version 14,2017年04月12日,[online], 2021年9月30日検索、インターネット、<https://www.uniprot.org/uniprot/L9KZB6.txt?version=14>
Submitted SNP(ss) Details: ss1558290215 ,2015年,[online], 2021年6月8日検索、インターネット、<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/snp_ss.cgi?subsnp_id=ss1558290215>

Also Published As

Publication number Publication date
JP6979582B2 (ja) 2021-12-15
JP2019054775A (ja) 2019-04-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Tawe et al. Angiogenic activity of Onchocerca volvulus recombinant proteins similar to vespid venom antigen 5
ES2306456T3 (es) Db, el receptor para la leptina, acidos nucleicos codificantes del receptor y sus usos.
JP2001504333A (ja) 前立腺特異カリクレイン
JP2005508944A (ja) ヒト3レラキシン
JP2001515349A (ja) Tm4sfヒト腫瘍関連抗原
Welch et al. Characterization of a sperm-specific nuclear autoantigenic protein. I. Complete sequence and homology with the Xenopus protein, N1/N2
JP2001521400A (ja) ケラチノサイト由来カリクレイン
JP2001514264A (ja) ヒト・デフェンシンポリペプチドDef−X、ゲノムDNAおよびcDNA、それらを含有する組成物ならびに診断および治療処置への適用
Yip et al. Atrichia with papular lesions: a report of three novel human hairless gene mutations and a revision of diagnostic criteria
JP6979582B6 (ja) 変異型蛋白質、及び該変異型蛋白質を発現し円形脱毛を発症する遺伝子改変マウス
Cohen-Barak et al. Desmoglein 4 mutation underlies autosomal recessive keratosis pilaris atrophicans
JP2004201692A (ja) ヒト成長遺伝子及び低身長遺伝子領域
US20020081592A1 (en) Reproduction-specific genes
US6555670B1 (en) Testis-specific gene
Kumagai et al. Distinct phenotype of epidermolysis bullosa simplex with infantile migratory circinate erythema due to frameshift mutations in the V2 domain of KRT5.
US8178293B2 (en) Uses of BNIPXL-beta in premature canities
Whittock et al. Genomic organization and amplification of the human keratin 15 and keratin 19 genes
Bartl et al. HC Molecules of Cartilaginous Fishes
JP2002502264A (ja) サイクリン関連タンパク質
JP2001517093A (ja) 成長因子様タンパク質をコードするポリヌクレオチド
JP2002501747A (ja) ヒト・成長因子ホモログ
Severino-Freire et al. Extensive Post-zygotic Mosaicism of KRT1 or KRT10 Mutation Mimicking Classical Epidermolytic Ichthyosis
JP2001509015A (ja) ヒト塩素イオンチャネルタンパク質(hccp)
JP2004041175A (ja) ヒトlig−1相同体(hlig−1)
JP4412530B2 (ja) Trpv3遺伝子に変異を持つ無毛マウスまたは無毛ラット

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200923

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210616

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210622

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210819

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211005

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211022

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6979582

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R370 Written measure of declining of transfer procedure

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R370