JP6979270B2 - グラファイト樹脂複合体 - Google Patents

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本発明は、グラファイト樹脂複合体とそれを用いた熱伝導性接着シートに関する。また本発明は、当該熱伝導性接着シートを用いて得られる車載用パワーモジュールまたは半導体装置にも関する。
近年、携帯電話、LED照明装置、車載用パワーモジュール等に代表される電子機器の高性能化及び小型化に伴い、半導体デバイス、プリント配線板実装、装置実装の各階層において実装技術が急激に進歩している。そのため、電子機器内部の発熱密度は年々増加しており、使用時に発生する熱を如何に効率的に放熱するかが重要な課題である。
またこれらの電子機器、特にパワーモジュールまたは半導体装置では、半導体チップを上面に有する絶縁基板の下面が、銅などの金属ベース板にハンダで接合され、さらにその金属ベース板が放熱板または冷却器にハンダで接合される構成を取っている。ここで、冷却器には一般に複数のフィンが形成され、接合用のハンダとしては一般的にSnを主成分とする合金によるハンダが用いられている。しかしハンダによる接合は熱衝撃に対してさらなる改良の余地があり、構成材料の熱膨張率の違いに起因する熱応力によって接合材の破壊(クラック)や接合界面の破壊(せん断破壊)が生じる虞がある。半導体装置では一般的に、半導体とそれに直接結合されている絶縁基板の熱膨張率に比べると、冷却器(素材として主に熱伝導率の高い金属が使用される)の熱膨張率とが著しく高い。例えば半導体チップの熱膨張は一般的に3ppmであり、絶縁基板の熱膨張は4〜5ppmであり、アルミニウムの冷却器の熱膨張率は約23ppmである。半導体装置内でのこのような大きな熱膨張率の違いから発生する熱応力は大きいので、ハンダなどの従来技術で抗するには困難があった。
熱伝導率と熱応力への高い要求を満たすべく、電子部材を固定するために、ハンダの代わりに熱伝導性接着シートが用意されることがある。
上記の熱伝導性接着シートには、従来から、未硬化の状態(Aステージ)の熱硬化性樹脂に酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の熱伝導率の高いセラミックス粉末を分散させた後、各種コーターによる塗工等でシート状に成型し、加熱により熱硬化性樹脂を半硬化状態(Bステージ)とした熱硬化性樹脂組成物が用いられてきた。
上記の熱伝導性接着シートは、金属回路や金属板等の電子部材に密着させた後、加熱することにより半硬化状態(Bステージ)の熱硬化性樹脂を溶融させ、電子部材表面に結合させることで熱伝導性接着シートの電子部材に対する接着性を発現させ、さらに加熱することにより熱硬化性樹脂を完全に硬化した状態(Cステージ)とし、電子部材との間の接着を強固にしている。
上記の熱伝導性接着シートは、金属回路や金属板等の電子部材との間に接着層(未硬化の状態(Aステージ)の熱硬化性樹脂又は未硬化の状態(Aステージ)の熱硬化性樹脂中にセラミックス粉末を分散させたもの)を形成する必要が無いことから、塗工作業や精密な塗布装置の導入が不要であり、ユーザーの作業が非常に簡便になるので広く利用されている。
特許文献1では、金属ベース回路基板において、半硬化状態(Bステージ)の熱硬化性樹脂中にセラミックス粉末を分散させた熱伝導性接着シート上に金属箔を配置した状態で、熱伝導性接着シートに含有される熱硬化性樹脂を硬化してCステージにすることによって、放熱性に優れた金属ベース回路基板を簡便な方法で得ることを可能にしている。
また、上記の熱伝導性接着シートの熱伝導率を高める方法としては、(1)完全に硬化した状態(Cステージ)の熱硬化性樹脂の熱伝導率を高くすること、(2)セラミックス粉末の熱伝導率を高くすること、(3)セラミックス粉末の粒子径を大きくすること、(4)セラミックス粉末を高充填すること、がある。特許文献2では(1)の方法により高い熱伝導率の熱伝導性接着シートを得ることを可能にしている。また、特許文献3では、セラミックス粉末として熱伝導率の高い窒化ホウ素を用いることにより、(2)の方法により高い熱伝導率の熱伝導性接着シートを得ることを可能にしている。また、特許文献4では、(2)と(4)の方法により高い熱伝導率の熱伝導性接着シートを得ることを可能にしている。さらに、特許文献5では、様々な粒子径の窒化アルミニウム粉末を特定の比率で組み合わせることにより、(2)と(3)と(4)の方法により高い熱伝導率の熱伝導性接着シートを得ることを可能にしている。
しかし、上記の特許文献1及び3〜5の発明においては、セラミックス粉末の各粒子間に熱伝導率の低い熱硬化性樹脂層が存在することから、熱伝導率は最高でも16W/(m・K)(特許文献5 表2 合成例7参照)であり、高い熱伝導率を得ることには限界があった。また、特許文献2においても熱硬化性樹脂の熱伝導率を高くすることには限界があり、熱伝導率は最高でも10.5W/(m・K)(特許文献2 表1 実施例6参照)であった。そのため、近年ますます困難になる電子機器の熱設計要求において、放熱性の面で課題があった。
そこで、特許文献6〜9では、熱伝導率の高いセラミックス一次粒子を焼結し、3次元的に連続する一体構造となしたセラミックス焼結体の細孔中に熱硬化性樹脂を充填したセラミックス樹脂複合体を板状に加工したものが提案されている。これらの発明では、板状のセラミックス樹脂複合体(熱伝導性接着シート)の熱伝導率はセラミックス焼結体で決まるため、高い熱伝導率を得ることができる。
また特許文献10では、シリコンに代表される半導体チップとアルミニウムや銅に代表される冷却器の両者の中間の熱膨張率を持つ緩衝材を、適宜介在させて熱膨張率の差を緩和させる方法が提案されている。特許文献10では基本構成として、半導体チップと冷却器との間にパワーモジュール用基板が介在されこのパワーモジュール用基板はセラミックス製の絶縁基板の上下に金属層が形成され、さらにこの金属層に熱膨張率の差を緩和させるために、銅−モリブデン−銅の3層をろう付けにして積層した積層基板を用いている。
特開2009−049062号公報 特開2006−063315号公報 特開2014−196403号公報 特開2011−184507号公報 特開2014−189701号公報 特開昭62−126694号公報 国際公開WO2014/196496A1号 国際公開WO2015/022956A1号 特開平08−244163号公報 特開2007−335795号公報
半導体装置などの車載用パワーモジュール構造体に使用される電子部材には、電気的絶縁性を要しないものもあり、放熱グリースや放熱シートなどがそうした例である。
従来知られている上述したようなセラミック樹脂複合体をそうした電気的絶縁性を要しない電子部材に熱伝導性を目当てにした転用が試みられることもあったが、上述したようなセラミック樹脂複合体では熱伝導性が低く、満足できる結果は得られていない。すなわちそうしたセラミック樹脂複合体は、放熱性/熱伝導率などの面で問題が下記のようにあることが知られている。
特許文献6に記載の発明に従って板状のセラミックス樹脂複合体を2層以上積層する場合には、板状のセラミックス樹脂複合体間に熱伝導率の低い接着層(熱硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂中にセラミックス粉末を分散させたもの)が必要であり(特許文献6の第4図参照)、放熱性の面で課題があった。
特許文献7においても、板状のセラミックス樹脂複合体を金属回路や金属板等の電子部材と接着する際は、熱伝導率の低い接着層(熱硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂中にセラミックス粉末を分散させたもの)が必要であり、放熱性の面で課題があった。
特許文献8においても、金属回路及び金属板と接着する際は、熱伝導率の低い接着層(熱硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂中にセラミックス粉末を分散させたもの、特許文献8の段落0056、0057参照)が必要である。そのため、金属回路と板状のセラミックス樹脂複合体の間の接着層の熱抵抗が高くなるため、放熱性の面で課題があった。
特許文献9では、接着機能を有する板状のセラミックス樹脂複合体(熱伝導性接着シート)が提案されており、放熱性に優れた回路基板が得られる。しかし、特許文献9によれば金属回路と接着する前の熱硬化性樹脂の硬化状態は未硬化の状態(Aステージ)である(特許文献9の段落0053参照)。セラミックス樹脂複合体に含有される熱硬化性樹脂の硬化状態が未硬化の状態(Aステージ)であると、セラミックス樹脂複合体を板状の熱伝導性接着シートに切断する際の熱で、未硬化の状態の熱硬化性樹脂が溶融し厚みのバラツキが発生し、所望の熱伝導性接着シートを得ることができない。さらには、熱伝導性接着シートが切断の際の衝撃に耐えることができず割れが発生する。そのため、切断工程においてセラミックス焼結体を補強するため、TMP(トリメチロールプロパン)等の液状有機物を含浸後、板状に切断加工を行い、加熱処理等により液状有機物を除去した後に、板状のセラミックス焼結体に熱硬化性樹脂を含浸し、熱伝導性接着シートを得る必要がある。そのため、工程が煩雑になる(含浸工程が2回必要(液状有機物と熱硬化性樹脂の含浸)であり、且つ熱硬化性樹脂の含浸は板状で1枚毎に大量に処理する必要がある)と、コストアップに繋がると言う課題があり、量産の際の障害となっていた(特許文献9の段落0036〜0045参照)。また、薄い熱伝導性接着シートが含有する熱硬化性樹脂の硬化状態が未硬化の状態(Aステージ)であるため、補強効果が小さく、金属回路を接着する場合に割れが発生し易く(特許文献9の段落0063参照)、所望の特性が得られにくい。さらには、熱硬化性樹脂の流動性が高すぎる未硬化の状態(Aステージ)であると電子部材表面の凹凸に熱伝導率の低い熱硬化性樹脂層が形成され、熱伝導率が低下すると言う課題もあった。
また、窒化ホウ素などのセラミックス焼結体は通常弾性率が高いため、物質としては高熱伝導率を有するものの、金属回路や金属板等の電子部材を熱伝導性接着シートに加熱加圧により接着する際に、概して平坦になっている電子部材表面の形状(微細な凹凸形状)に対して熱伝導性接着シートに含有されるセラミックス焼結体が追従し難く空気の層が挟まってしまいやすいがために、結果として高熱伝導率を示さない。さらに、弾性率の低いセラミックス焼結体を用いた場合でも、熱伝導性接着シートに含有される熱硬化性樹脂が流動性の低い完全に硬化した状態(Cステージ)であると、電子部材表面にセラミックス焼結体と熱硬化性樹脂が結合しづらくなるため同様に高い熱伝導率を示さない。
またそもそも、電気的絶縁性を要しない電子部材にまでセラミックス焼結体を用いると、コストがかさんだり製造工程が煩雑になったりして利点が乏しいという問題もある。
また、熱伝導性接着シートに含有される熱硬化性樹脂の流動性が高すぎる(粘度が低すぎる)未硬化の状態(Aステージ)であると、切断工程や接着工程で不具合が発生しやすく、工程が煩雑になる場合や、熱伝導性等の特性が低下する場合がある。
またパワーモジュール基板への使用に関しても、上記特許文献10に記載の方法においては積層構成が非常に複雑になり製品コストがアップするとともに、多層構造となるので全体の熱抵抗が高くなってしまい、十分な冷却性能を得ることができないという課題があった。
以上述べたような従来技術においては、放熱用接着シートにおいて充分な熱伝導性(放熱性)と接着性を併せて得られる技術は得られておらず、上記した従来技術の欠点を総合的に解決できる技術は今まで見られない。
本発明は、上記のような背景技術に鑑み、量産性及び製品特性(放熱性と接着性)に優れ、特に電子機器の放熱性を飛躍的に向上することができ、特に電気的絶縁性を要しない、または積極的な導電性の付与を目的とする電子部材用途に適するグラファイト樹脂複合体を提供することを課題の一つとする。また、本発明は、本発明に係るグラファイト樹脂複合体を材料とする熱伝導性接着シートを提供することを別の課題の一つとする。
上記課題に鑑みて、本発明の実施形態では下記を提供できる。
[1]
グラファイト一次粒子が3次元的に連続する一体構造をなしているグラファイト焼結体に熱硬化性樹脂組成物を含浸させてなり、少なくともひとつの熱伝導面を有するグラファイト樹脂複合体であって、
前記グラファイト焼結体と前記熱硬化性樹脂組成物との合計量に対する前記グラファイト焼結体の比率が、70体積%以上80体積%以下であり、
前記グラファイト焼結体と前記熱硬化性樹脂組成物との合計量に対する前記熱硬化性樹脂組成物の比率が、20体積%以上30体積%以下であり、
前記熱伝導面にX線を照射して得られるX線回折パターンにおいて、前記グラファイト一次粒子の(002)面に相当する回折ピーク強度を前記グラファイト一次粒子の(100)面に相当する回折ピーク強度で割った値が、30未満である
ことを特徴とするグラファイト樹脂複合体。
[2]
前記熱伝導面にX線を照射して得られるX線回折パターンにおいて、前記グラファイト一次粒子の(002)面に相当する回折ピーク強度を前記グラファイト一次粒子の(100)面に相当する回折ピーク強度で割った値が、0.01以上25以下である、[1]に記載のグラファイト樹脂複合体。
[3]
前記熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ基を有する物質及びシアネート基を有する物質の何れか一方又は両方と、水酸基を有する物質及びマレイミド基を有する物質の何れか一方又は両方との組み合わせである、[1]または[2]に記載のグラファイト樹脂複合体。
[4]
前記熱硬化性樹脂組成物が、ビスマレイミドトリアジン樹脂である、[3]に記載のグラファイト樹脂複合体。
[5]
前記熱硬化性樹脂組成物の示差走査型熱量計で測定される発熱開始温度が、180℃以上300℃以下の範囲であり、且つ硬化率が5%以上60%以下の範囲であり、且つ数平均分子量が450以上4800以下の範囲である、[1]〜[4]のいずれかに記載のグラファイト樹脂複合体。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載のグラファイト樹脂複合体を加工してなり、熱伝導面を両面に有する熱伝導性接着シート。
[7]
[6]に記載の熱伝導性接着シートの両面の熱伝導面にそれぞれ接着された二つ以上の電子部材を備えた車載用パワーモジュール構造体。
[8]
前記電子部材が、基板用の金属ベース板、ならびに基板を冷却するための放熱板および熱交換用冷却器から選択される一種以上である、[7]に記載の車載用パワーモジュール構造体。
[9]
半導体装置である、[7]または[8]に記載の車載用パワーモジュール構造体。
本発明に係るグラファイト樹脂複合体を加工して得た熱伝導性接着シートは、接着性に優れ、高い熱伝導率(低い熱抵抗)を示すため、本発明の熱伝導性接着シートを用いた電子機器は優れた信頼性と放熱性を示し、しかも熱応力への高い耐性と導電性をも呈する。さらには、熱硬化性樹脂とグラファイトの体積含有率の制御により熱膨張係数を任意に制御することが可能であるため、熱サイクル時に応力を緩和し、高い信頼性を得ることも可能である。
グラファイト一次粒子の形状を模式化した図である。 本発明の実施形態に係るグラファイト一次粒子の理想的な配向の予想を表す模式図である。 本発明の実施形態に係る車載用パワーモジュール構造体の構成例を示す模式図である。
以下、本発明についてより詳しく説明していく。本明細書においてチルダ記号「〜」を用いて示された数値範囲は、別段の断わりが無いかぎり、或る範囲の下限値と上限値を共に含む数値範囲を意味する。
本発明は、特定の物性の範囲内で制御されたグラファイト焼結体に、所定の熱硬化性樹脂組成物を適切量含浸することにより、優れた量産性及び接着性とともに、今までにない高い熱伝導率を達成したことを特徴の一つとする。理論によって本発明が制限されることを意図するものではないが、高い熱伝導率を達成できたのは、金属板等の電子部材表面の微細な凹凸形状にグラファイト焼結体と熱硬化性樹脂組成物が能く追随できるため、断熱する空気がほとんど侵入しないことに起因すると考えられる。このような高い熱伝導率は、従来の一般的なセラミックス焼結体と熱硬化性樹脂組成物の組み合わせでは実現不可能であり、本発明によって初めて提供可能となったのである。すなわち、本発明者は従来にない画期的な熱伝導性接着シートを開発したのである。以下に本明細書において使用される用語の定義と、本発明において使用される各材料について説明する。
<グラファイト焼結体、グラファイト樹脂複合体、熱伝導性接着シート>
本発明では、グラファイト一次粒子同士が焼結により結合した状態で2個以上集合した状態を、3次元的に連続する一体構造の「グラファイト焼結体」と定義する。さらに、本発明では、グラファイト焼結体と熱硬化性樹脂組成物からなる複合体を「グラファイト樹脂複合体」と定義する。また、グラファイト樹脂複合体をシート状に加工したものを「熱伝導性接着シート」と定義する。
グラファイト一次粒子同士の焼結による結合は、走査型電子顕微鏡(例えば日本電子社製の「JSM−6010LA」)を用いて、グラファイト一次粒子の断面の一次粒子同士の結合部分を観察することにより評価することができる。観察の前処理として、グラファイト粒子を樹脂で包埋後、CP(クロスセクションポリッシャー)法により加工し、試料台に固定した後にオスミウムコーティングを行う。観察倍率は1500倍とする。また、評価用のグラファイト焼結体は、グラファイト樹脂複合体を構成する熱硬化性樹脂組成物を大気雰囲気、500〜900℃で灰化することにより得る事ができる。グラファイト一次粒子同士の焼結による結合が無い場合は、灰化の際に形状を保持することができない。
<グラファイト焼結体の割合>
グラファイト樹脂複合体中のグラファイト焼結体は70〜80体積%(熱硬化性樹脂組成物は20〜30体積%)の範囲内であることが好ましく、71〜79体積%であることがより好ましい。グラファイト焼結体の量が70体積%より小さいと熱伝導率の低い熱硬化性樹脂組成物の割合が増えるため、熱伝導率が低下する。グラファイト焼結体の量が80体積%より大きいと、金属板等の電子部材を熱伝導性接着シートに加熱加圧により接着する際に、電子部材表面の形状に熱硬化性樹脂組成物が沿うように結合し難くなり、引っ張りせん断接着強さと熱伝導率が低下する可能性がある。セラミックス樹脂複合体中のグラファイト焼結体の割合(体積%)は、以下に示すグラファイト焼結体のかさ密度と気孔率の測定より求めることができる。
グラファイト焼結体かさ密度(D)=質量/体積 ・・・・・(1)
グラファイト焼結体気孔率(%)=(1−(D/グラファイト焼結体真密度))×100=熱硬化性樹脂組成物の割合(%) ・・・・・(2)
グラファイト焼結体の割合(%)=100−熱硬化性樹脂組成物の割合・・・・・(3)
<グラファイト焼結体の製造方法>
グラファイト焼結体は、例えばコークス、タールピッチをねつ合、成形し最初におよそ1000℃で焼成、次いで約3000℃で黒鉛化することによって得られる。成形方法としてはCIP成形、押出成形、モールド成形がある。
<グラファイト焼結体と熱硬化性樹脂組成物の複合化>
本発明のグラファイト焼結体と熱硬化性樹脂組成物は、例えばグラファイト焼結体に熱硬化性樹脂組成物を含浸させることで、複合化することができる。熱硬化性樹脂組成物の含浸は、真空含浸、1〜300MPa(G)での加圧含浸、又はそれらの組合せの含浸で行うことができる。真空含浸時の圧力は、1000Pa(abs)以下が好ましく、100Pa(abs)以下が更に好ましい。加圧含浸工程では、圧力1MPa(G)未満ではグラファイト焼結体の内部まで熱硬化性樹脂組成物が十分含浸できない可能性があり、300MPa(G)超では設備が大規模になるためコスト的に不利である。グラファイト焼結体の内部に熱硬化性樹脂組成物を容易に含浸させるには、真空含浸及び加圧含浸時に100〜180℃に加熱し、熱硬化性樹脂組成物の粘度を低下させると更に好ましく行うことができる。
<グラファイト樹脂複合体中のグラファイト一次粒子の配向性>
本発明のグラファイト樹脂複合体は、少なくとも片面、好ましくは両面に熱伝導面を有し、当該熱伝導面を熱伝導対象に接着するように構成される。この熱伝導面において、グラファイト一次粒子の配向が制御されているところに特徴がある。
グラファイト一次粒子は概して鱗片形状を取っており、その面内方向((100)方向)が、熱伝導方向に沿うようにグラファイト一次粒子を配向させることが好ましい。これはすなわち、グラファイト一次粒子の厚み方向((002)方向)が、熱伝導方向に対して垂直になるような配向を意味する。グラファイト一次粒子の配向はX線回折パターンによって確認可能であり、JIS K0131:1996またはJIS R7651:2007に準拠した方法で測定を行うことができる。図1にグラファイト一次粒子の形状を模式化した図を、また図2に本発明の実施形態に係るグラファイト一次粒子の配向の概要を表す模式図を示した。
本発明の実施形態で使用できるグラファイト一次粒子は、任意の形状(平均長径、アスペクト比)を有することができる。特に限定をするものではないが、例えばグラファイト一次粒子の平均長径として1μm〜800μmの範囲、アスペクト比として5〜30の範囲のものを使用可能である。なお平均長径やアスペクト比は、グラファイト焼結体を上述した走査型電子顕微鏡で観察し、例えば測定視野中のグラファイト一次粒子100個から算出することで計算可能である。
<熱硬化性樹脂組成物>
熱硬化性樹脂組成物としては、エポキシ基を有する物質及びシアネート基を有する物質の何れか一方又は両方と、水酸基を有する物質及びマレイミド基を有する物質の何れか一方又は両方との組み合わせであることが好ましい。これらの中でも、シアネート基を有する物質とマレイミド基を有する物質の組み合わせがより好ましい。エポキシ基を有する物質としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂(クレゾールのボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等)、フェノ−ルノボラック型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂が挙げられ、シアネート基を有する物質としては、2,2'−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2'−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1'−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、1,3−ビス(2−(4−シアナトフェニル)イソプロピル)ベンゼン等のシアネート樹脂が挙げられ、水酸基を有する物質としては、フェノールノボラック樹脂、4,4'−(ジメチルメチレン)ビス[2−(2−プロペニル)フェノール]等のフェノール類が挙げられ、マレイミド基を有する物質としては、4,4'−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3'−ジメチル−5,5'−ジエチル−4,4'−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,6'−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、4,4'−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4'−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、2,2'−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等のマレイミド樹脂が挙げられる。特に好ましくは、得られる特性が優れることに鑑み、熱硬化性樹脂組成物としてビスマレイミドトリアジン樹脂を使用することができる。
熱硬化性樹脂組成物には適宜、グラファイト焼結体と熱硬化性樹脂組成物間の密着性を向上させるためのシランカップリング剤、濡れ性やレベリング性の向上及び粘度低下を促進して含浸・硬化時の欠陥の発生を低減するための消泡剤、表面調整剤、湿潤分散剤を含有することができる。さらに、硬化速度や発熱開始温度を制御するために、硬化促進剤を加えても良い。硬化促進剤としては、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリルボレート等の有機リン化合物、アセチルアセトン銅(II)、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の金属触媒が挙げられる。
<熱硬化性樹脂組成物の半硬化>
グラファイト焼結体と複合化した熱硬化性樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)することでグラファイト樹脂複合体を得ることができる。加熱方式としては、赤外線加熱、熱風循環、オイル加熱方式、ホットプレート加熱方式又はそれらの組み合わせで行うことができる。半硬化は、含浸終了後に含浸装置の加熱機能を利用してそのまま行っても良いし、含浸装置から取り出した後に、熱風循環式コンベア炉等の公知の装置を用いて別途行っても良い。
<熱硬化性樹脂組成物の発熱開始温度>
グラファイト樹脂複合体に含有される熱硬化性樹脂組成物の示差走査型熱量計で測定した発熱開始温度は180℃以上であることが好ましく、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが更により好ましい。当該発熱開始温度が180℃より小さいと、真空含浸及び加圧含浸時に熱硬化性樹脂組成物を加熱した際に、熱硬化性樹脂組成物の硬化反応が進み、熱硬化性樹脂組成物の粘度が上昇して、熱硬化性樹脂組成物がグラファイト焼結体の気孔内に含浸することができなくなる。このため、グラファイト樹脂複合体の接着性が低下する。当該発熱開始温度の上限については特に制限は無いが、熱伝導性接着シートに加熱加圧により接着する際の生産性や装置部品の耐熱性を考慮すると、300℃以下が実際的である。発熱開始温度は、硬化促進剤等により制御することができる。
<熱硬化性樹脂組成物の硬化温度および硬化時間>
グラファイト樹脂複合体に含有される熱硬化性樹脂組成物の硬化温度は、180℃以下であるのが好ましく、160℃以下であるのがより好ましい。また当該熱硬化性樹脂組成物の硬化時間は、10〜15時間程度が好ましい。
<熱硬化性樹脂組成物の発熱開始温度の評価方法>
発熱開始温度とは、熱硬化性樹脂組成物を示差走査型熱量計にて加熱硬化した場合に得られる、横軸に温度(℃)、縦軸に熱流(mW)をとった発熱曲線において、発熱ピークから発熱曲線の立ち上がりへ向かう曲線上の変曲点における接線とベースラインとの交点における温度である。
<熱硬化性樹脂組成物の硬化率>
グラファイト樹脂複合体に含有される熱硬化性樹脂組成物の硬化状態を示す用語である「半硬化(Bステージ)状態」とは、示差走査熱量測定を用いて下記計算式から求められる硬化率が5〜60%の状態をいう。当該硬化率が5%より小さいと、グラファイト樹脂複合体を板状の熱伝導性接着シートに切断する際の熱で、未硬化の状態の熱硬化性樹脂組成物が溶融し厚みのバラツキが発生する。また、グラファイト樹脂複合体が切断の際の衝撃に耐えることができず割れが発生し、シート成形が困難となる。さらには、熱伝導性接着シートを加熱加圧により接着する際に、電子部材表面に熱伝導率の低い接着(熱硬化性樹脂組成物)層が形成され、熱伝導率が低下する。当該硬化率が90%より大きいと、熱伝導性接着シートに加熱加圧により接着する際に熱硬化性樹脂組成物が溶融しないため、熱伝導性接着シートを接着することができない。グラファイト樹脂複合体中の熱硬化性樹脂組成物の硬化率は好ましくは10〜90%であり、より好ましくは12〜40%であり、更により好ましくは15〜30%である。
<熱硬化性樹脂組成物の硬化率の評価方法>
硬化率(%)=[(X−Y)/X]×100
X:加熱により硬化を進める前の状態の熱硬化樹脂組成物を、示差走査型熱量計を用いて硬化させた際に生じた熱量。
Y:加熱により、半硬化状態(Bステージ)とした熱硬化性樹脂組成物(硬化率を評価する対象となる熱硬化性樹脂組成物)について、示差走査型熱量計を用いて硬化させた際に生じた熱量。
尚、上述のX及びYにおいて「硬化させた」状態は、得られた発熱曲線のピークから
特定できる。また当該技術分野において、「Cステージ状態」とは、熱硬化性樹脂組成物の硬化がほぼ終了しており、高温に加熱しても再度溶融することはない状態をいう。具体的には、「Bステージ状態」の欄で述べた硬化率が60%を超えている状態をいう。さらに、「Aステージ状態」とは、加熱による硬化が全く進んでいないか又は僅かしか進んでおらず、常温の20℃で液体の状態をいう。具体的には、「Bステージ状態」の欄で述べた硬化率が5.0%より小さい状態をいう。
<熱硬化性樹脂組成物の数平均分子量と評価方法>
本発明におけるグラファイト樹脂複合体に含有される熱硬化性樹脂組成物の数平均分子量とは、サイズ排除クロマトグラフィー(以下、SECと略記する)によって測定されるポリスチレン換算で示される平均分子量である(JIS K 7252−1:2016 3.4.1項 式(1)に準拠)。数平均分子量は、450〜4800の範囲のものが好ましく、500〜4000の範囲のものがより好ましく、550〜3500の範囲のものが更により好ましい。数平均分子量が450より小さいと、グラファイト樹脂複合体を板状の熱伝導性接着シートに切断する際の熱で、熱硬化性樹脂組成物が溶融し厚みのバラツキが発生する。また、グラファイト樹脂複合体が切断の際の衝撃に耐えることができず割れが発生する。さらには、熱伝導性接着シートに加熱加圧により接着する際に、界面に熱伝導率の低い接着(熱硬化性樹脂組成物)層が形成され、熱伝導率が低下する。数平均分子量が4800より大きいと、熱伝導性接着シートに加熱加圧により接着する際の熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度が高いため、電子部材との接着強さが低下する。また、熱伝導性接着シートに加熱加圧により接着する際に、電子部材の表面にグラファイト焼結体と熱硬化性樹脂組成物が結合しづらくなるため熱伝導率が低下する。
<熱硬化性樹脂組成物の溶融温度と評価方法>
本発明におけるグラファイト樹脂複合体に含有される熱硬化性樹脂組成物の溶融温度は、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、95℃以上であることが更により好ましい。当該溶融温度が70℃より小さいと、グラファイト樹脂複合体を板状の熱伝導性接着シートに切断する際の熱で、熱硬化性樹脂組成物が溶融し厚みのバラツキが発生する。当該溶融温度の上限については、特に制限は無いが、熱伝導性接着シートに加熱加圧により接着する際に、熱硬化性樹脂組成物の硬化反応の進行による粘度上昇を抑制する必要があることを考えると、溶融温度は180℃以下が実際的であり、典型的には150℃以下であり、より典型的には120℃以下である。本発明の溶融温度は、示差走査熱量測定により熱硬化性樹脂組成物を加熱した際の吸熱ピークの温度である。
<熱伝導性接着シートの構成>
本発明の実施形態に係る熱伝導性接着シートは、少なくとも片面に、好ましくは両面に、熱伝導面を有する。この熱伝導面は、例えば熱交換冷却器(ヒートシンク)や放熱板(銅ベースなど)といった熱伝導対象に接着するように構成される。熱伝導面においてグラファイト一次粒子の配向が制御されていることについては上述したとおりである。熱伝導性接着シートの使用態様例については後述する。
<熱伝導性接着シートの厚み>
熱伝導性接着シートの厚みは、要求特性によって変えることができる。例えば、熱抵抗が重要である場合は、0.1mm〜0.35mmの薄いものを用いることができる。
<車載用パワーモジュール構造体>
本発明の実施形態に係る熱伝導性接着シートは、車載用パワーモジュール構造体中に含めることができる。車載用パワーモジュール構造体は、二つ以上の電子部材の接着に、当該熱伝導性接着シートを用いることで製造することができる。二つ以上の電子部材とは、例えば一方の電子部材がアルミ製の熱交換冷却器(ヒートシンク)、他方の電子部材がパワーモジュール底面の銅板(放熱板)である。従来技術においては、放熱シート等のTIM(Thermal Interface Material)をネジ止めで固定することでパワーモジュールの発熱性電子部品の熱を銅製の放熱板から放熱シートを介してアルミ製の冷却器に逃がしているが、本発明の実施形態に係る熱伝導性接着シートは高熱伝導率と共に、接着機能を併せ持つことからネジ止めが不要であり、車載用パワーモジュール構造体の構成部材として好適である。好ましい実施形態においては、車載用パワーモジュール構造体は半導体装置であってよい。
本発明の実施形態に係る車載用パワーモジュール構造体には、熱伝導性接着シートの他、発熱素子もしくは半導体素子(以下、「基板」に含まれるものとして「基板」とも略記する)と、放熱板と、熱交換冷却器とを含めることができる。図3に、本発明の実施形態に係る車載用パワーモジュール構造体の構成例を模式図として示した。図3に示す車載用パワーモジュール構造体30には、上から順に、基板32と、放熱板34と、熱伝導性接着シート36(波線の模様で示す)と、熱交換冷却器38とが含まれている。また基板32には、発熱素子もしくは半導体素子33aと、発熱素子もしくは半導体素子33aを銅回路33cに接合するハンダ33b(右斜線の模様で示す)と、銅回路33cと、銅回路33cと放熱板34を隔てて接着する絶縁層33d(左斜線の模様で示す)とが含まれている。なおここでは簡単に説明するため、各部品を一個ずつ描いているが、複数個の部品が含まれていてもよいことは言うまでもない。
基板(発熱素子もしくは半導体素子を含む)には、例えばIGBT(insulated gate bipolar transistor、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やサイリスタ等のパワー素子を含めることができる。また本明細書においては、基板には銅回路や絶縁層が含まれていてもよい(例えば、上述した図3の基板32が銅回路33cおよび絶縁層33dを含む態様などのように)。そうした絶縁層としては、絶縁性に優れるセラミックス樹脂複合体を使用してもよい。ここで絶縁性を有するセラミックス樹脂複合体と、本発明の実施形態に係る熱伝導性を有するグラファイト樹脂複合体とは、特に車載用パワーモジュール構造体中における用途が明確に異なることに留意されたい。
放熱板は、電極及び放熱体の機能を兼ねたものであり、熱伝導性及び電気伝導性の良い金属で構成されているのが通常である。放熱板としては例えば、銅ベースやアルミニウムベース、またはそれらの合金からなるベースが含まれる。
熱交換冷却器は、一般的な固体ヒートシンク(アルミニウム製など)であってもよいし、または内部を冷却水が流れる水冷式やフィンを有する空冷式等のものであってもよい。
<車載用パワーモジュール構造体を製造するに際しての熱伝導性接着シートを用いた接着方法>
本発明の実施形態に係る車載用パワーモジュール構造体を製造するにあたっては、熱伝導性接着シートを放熱板と熱交換冷却器の間の接着に用いることができる。この接着にあたっては、熱伝導性接着シートに含まれるグラファイト樹脂複合体を加熱することにより、半硬化状態(Bステージ)の熱硬化性樹脂を溶融させ、被着体表面の形状に沿うような形状として接着性を発現させ、さらに加熱することにより熱硬化性樹脂を完全に硬化した状態(Cステージ)とし、被着体との間の接着を強固にすることが可能である。より短時間で接着する場合にはCステージ状態に熱硬化性樹脂と塗布し加熱し硬化する方法も可能である。加熱方式としては、赤外線加熱、熱風循環、オイル加熱方式、ホットプレート加熱方式又はそれらの組み合わせで行うことができる。半硬化は、含浸終了後に含浸装置の加熱機能を利用してそのまま行っても良いし、含浸装置から取り出した後に、熱風循環式コンベア炉等の公知の装置を用いて別途行っても良い。なお、被着体に接着するのは熱伝導性接着シートの熱伝導面とするのが好ましい。
以下、本発明を実施例、比較例を挙げて更に具体的に説明するが、これらは本発明及びその利点をより良く理解するために提供されるのであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
<実施例1〜3>
グラファイト焼結体として、東海カーボン社製黒鉛(G100(実施例1及び3)、G159(実施例2))を使用した。また熱硬化性樹脂組成物として、ビスマレイミドトリアジン樹脂(三菱ガス化学社製の「BT2160」)を使用した。配合比等を下記表に比較例とまとめて示す。
<熱硬化性樹脂組成物のグラファイト焼結体への含浸、半硬化、シート状加工>
グラファイト焼結体へ熱硬化性樹脂組成物の含浸を行った。グラファイト焼結体及び熱硬化性樹脂組成物を、真空加温含浸装置(協真エンジニアリング社製の「G−555AT−R」)を用いて、温度145℃、圧力15Pa(abs)の真空中で各々10分間脱気した後、引き続き同装置内で前記の加温真空下でグラファイト焼結体を熱硬化性樹脂組成物中に10分間浸漬した。さらに、加圧加温含浸装置(協真エンジニアリング社製の「HP−4030AA−H45」)を用いて、温度145℃、圧力3.5MPaの加圧下にて120分間含浸し、グラファイト焼結体と熱硬化性樹脂組成物を複合化した。その後、大気圧下、160℃で、下記表に示す時間条件で加熱し、熱硬化性樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)させ、グラファイト樹脂複合体とした。
<グラファイト焼結体の割合及び熱硬化性樹脂組成物の割合>
グラファイト樹脂複合体中のグラファイト焼結体の割合は、先述した方法に従い、グラファイト焼結体のかさ密度及び真密度から求めた。かさ密度は、先述した方法に従い、ノギス(ミツトヨ社製、「CD67−SPS」)及び電子天秤(エー・アンド・デイ社製、「MC−1000」)で測定したグラファイト焼結体の体積(各辺の長さから算出)及び質量から求めた。真密度は、先述した方法に従い、乾式自動密度計(マイクロメリティックス社製、「AccuPyc II 1340」)で求めたグラファイトの体積と質量より求めた。算出結果を下記表に示す。
次いで、26種類のセラミックス樹脂複合体をマルチワイヤーソー(タカトリ社製の「MWS−32N」)を用いて、320μmの厚さのシート状に加工し、熱伝導性接着シートを得た。
<熱伝導性接着シートの厚みと厚みの標準偏差測定>
熱伝導性接着シートの厚みをJIS K 7130:1999のA法に準拠して測定した。測定した熱伝導性接着シートの幅×長さ=50mm×50mmであり、1種類毎に、1枚当たり10箇所、合計10枚測定して平均を算出した。得られた熱伝導性接着シートの厚みについての評価結果を下記表に示す。
<熱伝導率>
本発明において評価対象となる熱伝導率は、熱硬化性樹脂組成物の硬化がほぼ終了してCステージ状態となった熱伝導性接着シートの熱伝導率である。測定器には、日立テクノアンドサービス社製、「樹脂材料熱抵抗測定器」を用いた。得られた熱伝導率の評価結果を下記表に示す。
<引っ張りせん断接着強さ>
幅×長さ×厚み=25mm×12.5mm×320μmの熱伝導性接着シートの両面に、幅×長さ×厚み=25mm×100mm×1.0mmの銅板を積層(サンプルサイズ及び積層方法はJIS K 6850:1999 付図.1参照)し、圧力5MPa、加熱温度240℃、加熱時間5時間の条件で、真空加熱プレス機を用いてプレス接着し、せん断接着強さ測定用サンプルを得た。測定装置は、オートグラフ(島津製作所社製の「AG−100kN」)を用い、測定条件は、測定温度25℃、クロスヘッドスピード5.0mm/minにて、JIS K 6850:1999に準拠して測定を実施した。得られた引っ張りせん断接着強さの評価結果を下記表に示す。
<熱伝導性接着シートの熱伝導面のX線回折パターン解析>
熱伝導性接着シートの熱伝導面のX線回折方法として、サンプルを樹脂ホルダーへ固定し、3kW−X線回折装置(ブルカー社製、D8ADVANCE)を用いて、2θ=10〜70°にて測定を行い、(002)面及び(100)面のピーク強度を測定した。
<比較例1〜2>
グラファイト焼結体として東海カーボン社製の製品(G535(比較例1)、G348(比較例2))を使用した他は、上記実施例と同様に作成し評価を行った。配合比等を下記表に実施例とまとめて示す。なお比較例2については、樹脂の含浸ができなかったために複合体の作製が不可能であった。この比較例2の結果については、グラファイトの空隙率が小さいために樹脂の含浸ができなかったものと推測される。
Figure 0006979270
Figure 0006979270
本発明の熱伝導性接着シートは、一般産業用や車載用パワー半導体モジュールに使用可能である。

Claims (9)

  1. グラファイト一次粒子が3次元的に連続する一体構造をなしているグラファイト焼結体に熱硬化性樹脂組成物を含浸させてなり、少なくともひとつの熱伝導面を有するグラファイト樹脂複合体であって、
    前記熱硬化性樹脂組成物の示差走査型熱量計で測定される溶融温度が、70℃以上180℃以下の範囲であり、
    前記熱硬化性樹脂組成物の示差走査型熱量計で測定される発熱開始温度が、180℃以上300℃以下の範囲であり、
    前記グラファイト焼結体と前記熱硬化性樹脂組成物との合計量に対する前記グラファイト焼結体の比率が、70体積%以上80体積%以下であり、
    前記グラファイト焼結体と前記熱硬化性樹脂組成物との合計量に対する前記熱硬化性樹脂組成物の比率が、20体積%以上30体積%以下であり、
    前記熱伝導面にX線を照射して得られるX線回折パターンにおいて、前記グラファイト一次粒子の(002)面に相当する回折ピーク強度を前記グラファイト一次粒子の(100)面に相当する回折ピーク強度で割った値が、30未満である
    ことを特徴とするグラファイト樹脂複合体。
  2. 前記熱伝導面にX線を照射して得られるX線回折パターンにおいて、前記グラファイト一次粒子の(002)面に相当する回折ピーク強度を前記グラファイト一次粒子の(100)面に相当する回折ピーク強度で割った値が、0.01以上25以下である、請求項1に記載のグラファイト樹脂複合体。
  3. 前記熱硬化性樹脂組成物が、エポキシ基を有する物質及びシアネート基を有する物質の何れか一方又は両方と、水酸基を有する物質及びマレイミド基を有する物質の何れか一方又は両方との組み合わせである、請求項1または2に記載のグラファイト樹脂複合体。
  4. 前記熱硬化性樹脂組成物が、ビスマレイミドトリアジン樹脂である、請求項3に記載のグラファイト樹脂複合体。
  5. 前記熱硬化性樹脂組成物の硬化率が5%以上60%以下の範囲であり、且つ数平均分子量が450以上4800以下の範囲である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のグラファイト樹脂複合体。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のグラファイト樹脂複合体を含み、熱伝導面を両面に有する熱伝導性接着シート。
  7. 請求項6に記載の熱伝導性接着シートの両面の熱伝導面にそれぞれ接着された二つ以上の電子部材を備えた車載用パワーモジュール構造体。
  8. 前記電子部材が、基板用の金属ベース板、ならびに基板を冷却するための放熱板および熱交換用冷却器から選択される一種以上である、請求項7に記載の車載用パワーモジュール構造体。
  9. 求項7または8に記載の車載用パワーモジュール構造体を含む半導体装置
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