JP6978224B2 - 材料組織計算装置および制御プログラム - Google Patents

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Description

本発明は、工業プロセスによって製造されるAl(アルミニウム)の材料組織を計算する材料組織計算装置に関する。
近年、工業プロセスによって製造される金属材料の製造条件を検討するために、各製造工程における当該金属材料の特性の変化を予測する技術が提案されている。一例として、特許文献1には、Al合金板の製造工程において、当該Al合金板の材質を予測する方法が開示されている。
特開2002−22471号公報(2002年8月13日公開)
但し、以下に述べるように、工業プロセスにおいてAlの材料組織を予測(計算)するための方法については、改善の余地がある。本発明の一態様は、従来よりも正確に、工業プロセスにおけるAlの材料組織を予測することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る材料組織計算装置は、第1工程から第N工程までを含む、アルミニウムを製造する工業プロセスについて、iを、1≦i≦Nを満たす自然数、第i工程の時刻tについて、t=0を当該第i工程の開始時刻、t=tfiを当該第i工程の終了時刻、第i工程における上記アルミニウムの製造条件を示す情報をPC(i)、第i工程の時刻tにおける上記アルミニウムの加工熱処理条件を示す情報をTMP(i,t)、第i工程の時刻tにおける上記アルミニウムの材料組織を示す情報をMS(i,t)、として、PC(1)〜PC(N)およびMS(1,0)を、あらかじめ設定された情報として取得する工程間情報統合部と、第1工程計算部から第N工程計算部までを含む工程計算部と、MS(i,t)およびTMP(i,t)に基づいて、MS(i,t)の時間変化を算出する材料組織計算部と、を備えており、上記材料組織計算部は、複数の冶金的現象のそれぞれの時間変化を算出する、複数の計算モジュールを含み、上記工程計算部における第i工程計算部は、PC(i)に基づいてTMP(i,t)を算出し、複数の上記計算モジュールのそれぞれには、共通のデータ構造を有するMS(i,t)が供給され、i=1からi=Nまでの順に、上記工程間情報統合部は、上記第i工程計算部にPC(i)およびMS(i,0)を供給し、第i工程において、t=0からt=tfiまでの順に、上記第i工程計算部は、(i)上記材料組織計算部にMS(i,t)およびTMP(i,t)を供給することで、当該材料組織計算部にMS(i,tfi)を算出させ、かつ、(ii)当該MS(i,tfi)を上記工程間情報統合部に供給し、上記工程間情報統合部は、上記第i工程計算部から取得したMS(i,tfi)を、MS(i+1,0)として設定し、MS(i,t)は、上記アルミニウムの再結晶状態と未再結晶状態とで、別の情報として取り扱われている
本発明の一態様に係る材料組織計算装置によれば、従来よりも正確に、工業プロセスにおけるAlの材料組織を予測することが可能となる。
実施形態1に係る情報処理装置の要部の構成を示す機能ブロック図である。 図1の情報処理装置における全体的な処理の流れを例示する図である。 図1の情報処理装置における工程間情報統合部の処理の流れを例示する図である。 図1の情報処理装置における第i工程計算部の処理の流れを例示する図である。 図1の情報処理装置における材料組織計算部の処理の流れを例示する図である。 実施例におけるPCの項目を示す図である。 実施例におけるMSの項目を示す図である。 実施例における全体的な処理の流れを例示する図である。 実施例における計算結果を示す図である。 実施例、比較例、および各参考例のそれぞれについての、計算の処理の違いを示す図である。 実施例、比較例、および各参考例のそれぞれについての比較結果を示す図である。 比較例におけるMSの項目を示す図である。 比較例における全体的な処理の流れを例示する図である。 比較例における計算結果を示す図である。 参考例1における全体的な処理の流れを例示する図である。 参考例1における計算結果を示す図である。 参考例2における全体的な処理の流れを例示する図である。 参考例2における計算結果を示す図である。
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、図1〜図18に基づいて詳細に説明する。実施形態1の情報処理装置1(材料組織計算装置)は、Alの最も初期的な材料組織を示す情報(後述するMS(1,0))と、Alの各製造工程における製造条件を示す情報(後述するPC(1)〜PC(N))とに基づいて、Alの材料組織の時間的な変化を計算(予測)する。
(用語の説明)
はじめに、情報処理装置1の具体的な構成の説明に先立ち、本明細書において用いる各用語について述べる。
「製造工程」とは、Al(Al製品)を製造するための任意の工程を含む。製造工程の一例としては、Al展伸材の加工および熱処理に関する工程(例:均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、熱間押出、引抜き、熱間鍛造、冷間鍛造、溶体化処理、時効処理、および焼鈍等)が挙げられる。
「製造条件」(Processing Condition,以下「PC」とも呼称する)とは、各製造工程において、Alの品質(特性)に関連する任意の条件を含む。PCには、各製造工程における設備の設定値が含まれる。一例として、冷間圧延の場合には、PCには、開始板厚、終了板厚、加工度、圧延速度、圧延ワークロール径等のそれぞれの設定値が含まれる。PCについては、後により詳細に述べる。
「加工熱処理条件」(Thermo-Mechanical Processing,以下「TMP」とも呼称する)とは、所定のPCのもとで、各時刻においてAlに与えられる温度、歪量、および歪速度等を意味する。本発明の一態様に係る材料組織計算装置では、PCのデータセット(以下述べるPC(i))は、TMPを算出できるように設定されていることが必要である。TMPについても、後により詳細に述べる。
TMPの計算には、FEM(Finite Element Method,有限要素法)等の公知のシミュレーション技術が用いられてよい。一例として、熱間押出の場合には、Alの合金成分、コンテナの温度、ビレット温度、押出形状,および押出速度等の設定値を用いて、FEMによりTMPを算出できる。
「材料組織」(Micro-Structure,以下「MS」とも呼称する)とは、微視的な材料組織(金属材料組織)を意味する。MSには、例えば固溶元素、析出物、晶出物、転位、亜結晶粒、および結晶粒等が含まれる。MSについても、後により詳細に述べる。
「材料組織の変化」とは、MSの変化を意味する。MSの変化は、固溶、析出、回復、および再結晶等の現象(冶金的現象)に伴って生じる。MSの変化には、固溶元素の変化、第二相粒子の変化、亜結晶粒の変化、および結晶粒の変化等が含まれる。
以下に述べるように、情報処理装置1によれば、ある製造工程の開始時刻から終了時刻までのMSの時間的な変化を計算できる。そして、当該製造工程の終了時刻におけるMSの計算結果を、次に製造工程における初期的なMSとして用いることができる。これにより、複数の異なる製造工程によって製造されるAlについて、最終的なMS(最後の製造工程が完了した時点のMS)を算出できる。つまり、最終製品としてのAlの材質を予測できる。
その結果、予測されたAlの材質に基づいてPCを設定できるので、最終製品の特性を効果的に制御することが可能となる。例えば、最終製品の強度バラツキの抑制、および、熱間押出における材料表面のひび割れの抑制等が可能となる。加えて、各製造工程において、MSを要因とする不具合を低減できる。それゆえ、より高品質なAlを製造することが可能となる。
情報処理装置1によって最終的なMS(つまり材質)を予測することが可能なアルミ製品としては、アルミ板材(圧延材)、アルミ箔材、アルミ押出材、およびアルミ鍛造材等が挙げられる。一例として、これらのアルミ製品の製造工程には、以下の1〜4に示す各工程が含まれる。
<1.アルミ板材(圧延材)の場合の製造工程の例>
溶解工程、脱ガス工程、鋳造工程、連続鋳造工程、均質化処理工程、熱間粗圧延工程、熱間仕上圧延工程、冷間圧延工程、溶体化処理工程、時効処理工程、矯正工程、焼鈍工程、および表面処理工程。
<2.アルミ箔材の場合の製造工程の例>
溶解工程、脱ガス工程、鋳造工程、連続鋳造工程、均質化処理工程、熱間粗圧延工程、熱間仕上圧延工程、冷間圧延工程、溶体化処理工程、時効処理工程、矯正工程、焼鈍工程、表面処理工程、および箔圧延工程。
<3.アルミ押出材の場合の製造工程の例>
溶解工程、脱ガス工程、鋳造工程、均質化処理工程、熱間押出工程、引き抜き工程、溶体化処理工程、時効処理工程、矯正工程、焼鈍工程、表面処理工程、および切断工程。
<4.アルミ鍛造材の場合の製造工程の例>
熱間鍛造工程(アルミ鋳物材、アルミ圧延材、またはアルミ押出材を素材とする)、冷間鍛造工程、溶体化処理工程、時効処理工程、および焼鈍工程。
(情報処理装置1の目的)
所望の特性を有するAl製品を製造するためには、材料内部の微視的な金属組織(つまりMS)を最適に制御する必要がある。MSのサイズは、通常は500μm以下のサイズである。また、上述の通り、MSは、Al合金への元素の添加、および、製造工程中の加工歪または熱処理によって、材料内部において生じる冶金的現象(例:固溶、析出、晶出、塑性変形、回復、および再結晶等)により変化する。
従来、MSの制御に関しては多くの理論的研究が行われている。このため、上述の冶金的現象の多くは、所定の数式(理論式または実験式)により定式化されている。従って、実験室レベルでの単純な合金成分および製造工程を考慮する場合には、MS制御の方針(換言すれば、製造条件(PC))を決定しやすい。
しかしながら、工業プロセス(工業製品)の場合には、Alの合金成分および製造工程はいずれも複雑である。さらに、材料において複数の冶金的現象が同時に生じ、MSの変化に影響を及ぼす。また、複数の冶金的現象は、相互作用的である。このため、工業プロセスの場合には、MS制御の方針を決定することが容易ではなかった。
さらに、各製造工程におけるMSの変化は、前の製造工程におけるMSの影響を強く受ける。このため、最終製品のMSを制御するためには、全製造工程におけるMSの変化を制御することが必要である。
しかしながら、従来の冶金理論では、単一の現象(冶金的現象)または単一の製造工程のみを考慮して、上述の定式化が行われている。このため、従来の冶金理論では、単一の現象または単一の製造工程におけるMSの変化しか計算することができず、工業プロセスにおけるMSを計算するには不十分であった。
このため、工業プロセスでのPCを決定する場合には、トライアンドエラー(試作検討)によりPCを調整していく方法が主流である。しかしながら、試作検討によりPCを調整する場合には、多大なコスト(例:時間、労力、および試作費用)を要する。
試作検討のコスト(回数)を減らすために、工業プロセスにおいて理論的な方法によりMSを予測する方法も提案されている。しかしながら、従来の方法では、MSを変化させる複数の冶金的現象が同時に生じた場合に、当該冶金的現象の相互作用がMSの変化に及ぼす影響については十分に考慮されていない。
また、従来の技術では、複数の製造工程に亘ってMSを予測するための方法も十分ではない。例えば、上述の特許文献1の技術では、Al合金板の材質を予測するために使用される材料組織因子の数が少ない。このため、特許文献1の技術は、複数の製造工程に亘るMSの変化の複雑性を取り扱うには不十分である。
以上の点を鑑み、情報処理装置1は、工業プロセスにおける試作検討のコストを低減することを目的として、本願の発明者ら(以下、発明者ら)によって想到された。具体的には、以下に述べるように、情報処理装置1は、工業プロセスにおいて、複数の製造工程に亘るMSの変化を計算できるように構成されている。
(PCについて)
以下、情報処理装置1において用いられる各データについて述べる。実施形態1では、工業プロセスにおけるAlの製造工程が、第1工程から第N工程までのN個の工程を含む場合を考える。Nは、N≧2を満たす自然数である。また、上記製造工程におけるi番目の工程を、第i工程とする。iは、1≦i≦Nを満たす自然数である。
実施形態1では、第i工程における製造条件(PC)を示すデータセットを、PC(i)として表す。PC(i)は、製造条件情報と称されてもよい。PC(i)(つまり、PC(1)〜PC(N))は、ユーザ入力によって、情報処理装置1にあらかじめ設定されている。
PC(i)に含まれる情報(データ、設定値)の例は、以下の1〜5の通りである。但し、PC(i)に含まれる情報は、以下の1〜5の例に限定されない。上述のように、PC(i)は、TMP(より具体的には、以下に述べるTMP(i,t))を算出できるように設定されていればよい。
<1.熱間粗圧延工程においてPC(i)に含まれる情報の例>
被加工物の材質、スラブ寸法(幅、厚さ、長さ)、開始温度、終了温度、パス数、各パスの材料寸法(幅、厚さ、長さ)、各パスの圧下量、各パスの圧延時間、各パス間の保持時間、各パスの圧延速度、ワークロール径、およびクーラント量等。
<2.熱間仕上圧延工程においてPC(i)に含まれる情報の例>
被加工物の材質、パス数、開始温度、終了温度、各パスの材料寸法(幅、厚さ、長さ)、各パスの圧下量、各パスの圧延時間、各パス間の保持時間、各パスの圧延速度、各パスのワークロール径、巻取りコイルサイズ、巻取り後の冷却速度、およびスプール径等。
<3.冷間圧延工程においてPC(i)に含まれる情報の例>
被加工物の材質、パス数、開始温度、終了温度、各パスの材料寸法(幅、厚さ、長さ)、各パスの圧下量、各パスの圧延時間、各パス間の保持時間、各パスの圧延速度、各パスのワークロール径、巻取りコイルサイズ、巻取り後の冷却速度、およびスプール径等。
<4.熱間押出工程においてPC(i)に含まれる情報の例>
被加工物の材質、コンテナ形状、製品形状、開始コンテナ温度、開始ダイス温度、開始ビレット温度、ラム速度、および押出速度等。
<5.均質化処理工程においてPC(i)に含まれる情報の例>
鋳塊寸法(幅、厚さ、長さ)、昇温速度、保持温度、保持時間、冷却速度、および冷却時間等。
(TMPについて)
第i工程において、当該工程が開始されてから経過した時間をtとして表す。t=0は、第i工程の開始時刻を表す。なお、各工程の区別のため、第i工程における時刻tは、tiと表記されてもよい。例えば、t1は、第1工程における時刻tである。
TMP(i,t)は、第i工程の時刻tにおいて、Alに与えられる温度(加工温度)T、歪量(歪み)ε、および歪速度dεのそれぞれを示すデータセットである。TMP(i,t)は、加工熱処理条件情報と称されてもよい。
以下、TMP(i,t)に含まれる温度T、歪量ε、および歪速度dεをそれぞれ、温度T(i,t)、歪量ε(i,t)、および歪速度dε(i,t)とも表す。TMP(i,t)は、第i工程の時刻tにおいて、Alに与えられる熱、および当該Alの加工状態(加工条件)を示す指標となる。TMP(i,t)は、時刻tの関数、または、時刻tに対応するデータセットとして規定されてよい。
以下に述べるように、温度T、歪量ε、および歪速度dεはいずれも、AlにおけるMSの変化を高精度に予測(算出)するために必須のパラメータである。このため、TMPには、温度T、歪量ε、および歪速度dεの3種類のデータが含まれている必要がある。
温度Tは、析出、回復、および再結晶等の現象(製造工程において生じ得る冶金的現象)に大きく影響を与えるパラメータである。
歪量εは、材料に塑性加工が加えられる工程において、当該材料内に形成される加工組織を決定する支配的なパラメータである。
また、歪速度dεは、熱間加工時に重要なパラメータである。Alは、動的な回復または再結晶が特に生じやすい金属であるためである。このため、AlにおけるMSの変化を高精度に算出するためには、温度Tおよび歪量εのみなならず、歪速度dεをも考慮することが必要である。
上述のように、ユーザ入力によって設定されたPC(i)は、TMP(i,t)を算出できるように設定されている。このため、情報処理装置1は、PC(i)に基づいて、TMP(i、t)を算出する。
TMPを算出することが可能な製造工程であれば、任意の製造工程に対して実施形態1の方法を適用できる。このため、情報処理装置1は、任意の製造工程に対する机上検討が可能であるように構成できる。PC(i)に基づいてTMP(i,t)を算出する方法は、製造工程に応じて任意に設定されてよい。以下の1〜3に、その一例を示す。
<1.均質化処理工程におけるTMP(i,t)の算出方法>
均質化処理工程は、熱処理工程の1つである。このため、第i工程が均質化処理工程である場合には、Alに加工のための外力は印加されない。従って、歪量εおよび歪速度dεは、全ての時刻tにおいて0であると見なすことができる。つまり、ε(i,t)=0およびdε(i,t)=0とすることができる。
それゆえ、均質化処理工程では、温度Tの時間変化のみを考慮すればよい。つまり、温度T(i,t)=T(t)のみを算出すればよい。一例として、均質化処理工程における、開始温度Ts(℃)、昇温速度Hu(℃/s)、保持温度Th(℃)、保持時間th(s)、冷却速度Hd(℃/s)、および終了温度Te(℃)のそれぞれのデータが、PC(i)に含まれる場合を考える(後述の図6も参照)。
この場合、均質化処理工程における昇温→保温(保持)→冷却の各ステップにおける温度T(t)を、以下の式(1)、
Figure 0006978224
によって近似できる。
式(1)では、均質化処理工程における温度T(t)が、3つの線形関数(一次関数)によって近似されている。式(1)において、1段目の式は昇温時における温度T(t)を、2段目の式は保温時における温度T(t)を、3段目の式は冷却時における温度T(t)を、それぞれ表す。式(1)に所定の時刻tを代入することにより、当該時刻tにおける温度T(t)を得ることができる。
なお、均質化処理工程における温度T(t)を近似する式は、式(1)に限定されなくともよい。例えば、所定の時間ごとにAlの温度が直接的に測定されている場合には、各測定時刻における温度の測定値が、情報処理装置1(より具体的には、後述する第i工程計算部)に供給されてよい。
この場合、情報処理装置1は、各測定点のデータに対して公知の補間処理を用いることにより、所望の形式の関数(例:線形関数または非線形関数)によって温度T(t)を表現してよい。
<2.冷間圧延工程におけるTMP(i,t)の算出方法>
一例として、冷間圧延工程における、ワークロール径、板厚、および圧延速度のデータが、PC(i)に含まれる場合を考える。この場合、圧延時の歪量εおよび歪速度dεをそれぞれ、圧延理論に基づいて(圧延理論に基づく理論式を用いて)算出できる。
例えば、入側の板厚をhin(m)、出側の板厚hout(m)、ロールを半径Rr(m)、圧延速度をVr(m/s)とすると、以下の式(2)、
Figure 0006978224
によって、歪量εおよび歪速度dεを算出できる。
材料がロールを通過する時刻tについてのデータが、PC(i)にさらに含まれていれば、式(2)の歪量εおよび歪速度dεをそれぞれ、ε(i,t)およびdε(i,t)として表現できる。つまり、歪量εおよび歪速度dεをそれぞれ、時刻tの関数として表現できる。
なお、冷間圧延工程において、単純な計算を行う場合には、温度Tとして室温を用いればよい。但し、一部の製品の場合には、加工による発熱によって生じるMSの変化を考慮することが好ましい。この場合、温度Tも、時刻tの関数T(t)として表現することが好ましい。
但し、理論式を用いて、冷間圧延工程における温度T(t)を高精度に算出することは必ずしも容易ではない。そこで、PC(i)には、冷間圧延工程の前後の温度(冷間圧延工程の開始時の温度、冷間圧延工程の終了時の温度)が含まれていることが好ましい。この場合、冷間圧延工程前後の温度を用いて、冷間圧延工程における温度Tの時間的な変化を、近似式を用いて概略的に表現できる。
<3.熱間押出工程におけるTMP(i,t)の算出方法>
熱間押出工程においては、材料の幾何学的形状が複雑であるため、単純な計算式のみからTMPを算出することは必ずしも容易ではない。但し、コンテナ径、押出速度、および製品形状等のデータがPC(i)に含まれていれば、FEMを用いてTMPを算出できる。
(MSについて)
MS(i,t)は、第i工程の時刻tにおけるMSを示すデータセットである。MS(i,t)は、材料組織情報と称されてもよい。一例として、MS(i,t)には、主要な添加元素の含有量、主要な添加元素の固溶量、代表的な第二相粒子の平均半径および数密度、再結晶率、結晶粒径、および歪エネルギーのデータが含まれていてよい。
ここで、歪エネルギーとは、材料内の亜結晶粒が有する自由エネルギーの総量を意味する。亜結晶粒は、加工により生ずる転位によって、または、熱による転位の再配列によって生じる。
MS(i,t)には、代表的な第二相粒子の粒子サイズの分布を示すデータがさらに含まれていることが好ましい。第二相粒子がMSの変化に及ぼす影響は、当該第二相粒子の粒子サイズによって異なるためである。それゆえ、第二相粒子の平均半径および数密度に加えて、当該第二相粒子の粒子サイズの分布をさらに用いることにより、MSを高精度に算出できる。
また、材料(Al)の再結晶部と未再結晶部とで、MS(i,t)が個別に取り扱われることがさらに好ましい。つまり、MS(i,t)を、材料の再結晶状態と未再結晶状態とで、別の情報(別のデータセット)として取り扱うことが好ましい。
複数の製造工程を連結する計算においては、ある製造工程(第i工程)における計算の完了時に、材料の再結晶部と未再結晶部が混在した状態のままで、計算結果が次の製造工程(第i+1工程)における計算を行う工程計算部(第i+1工程計算部)に与えられる場合が多いためである。
この場合、MS(i,t)を再結晶部と未再結晶部との平均値(平均情報)として取り扱うよりも、MS(i,t)を再結晶部と未再結晶部とで個別の情報として取り扱う方が、計算精度を向上させることができる。
一例として、材料の再結晶の有無によって、当該材料における析出速度および加工組織の形成具合は大きく変化する。すなわち、材料の再結晶部と未再結晶部とで、複数の冶金的現象のそれぞれの時間変化の態様は大きく異なりうる。それゆえ、MS(i,t)を再結晶部と未再結晶部とで個別に取り扱うことにより、材料組織の予測をより高精度に行うことができる。
また、MS(i,t)は、全ての製造工程(第1工程〜第N工程)において、共通の項目(換言すれば、同じ種類のフォーマットまたはデータ構造)によって定義されている。これにより、情報処理装置1(より具体的には、工程間情報統合部11)において、第i工程計算部(後述)から取得したMS(i,tfi)を、第i+1工程計算部(後述)へと容易に伝達できる。例えば、以下に述べる第1工程計算部12aから第2工程計算部12bへと、MS(1,tf1)=MS(2,0)を容易に伝達できる。
(情報処理装置1の構成)
図1は、情報処理装置1の要部の構成を示す機能ブロック図である。情報処理装置1は、制御部10、入力部70、表示部75、および記憶部90を備える。
制御部10は、情報処理装置1の各部を統括的に制御する。制御部10の機能は、記憶部90に記憶されたプログラムを、CPU(Central Processing Unit)が実行することで実現されてよい。記憶部90は、制御部10が実行する各種のプログラム、および当該プログラムによって使用されるデータを格納する。
制御部10は、工程間情報統合部11、工程計算部12、および材料組織計算部13を備える。工程計算部12は、第1工程計算部12aから第N工程計算部12Nまでの、N個の下位的な工程計算部(サブ工程計算部)を備える。
工程計算部12において、第i工程における計算を行うサブ工程計算部を、第i工程計算部と称する。図1には、便宜上、第1工程計算部12a、第2工程計算部12b、および第N工程計算部12Nが図示されている。なお、後述の実施例では、N=3の場合を例示する。
材料組織計算部13は、組織計算モジュール群130を備える。組織計算モジュール群130は、複数の冶金的現象のそれぞれの時間変化を計算するモジュール(計算モジュール)である。
組織計算モジュール群130は、例えば、計算モジュールとして、再結晶モジュール130a、固溶析出モジュール130b、加工組織モジュール130c、および回復モジュール130dを備える。
再結晶モジュール130aは、材料(Al)の再結晶の時間変化を算出する。固溶析出モジュール130bは、材料の固溶析出の時間変化を算出する。加工組織モジュール130cは、材料の加工組織の時間変化を算出する。回復モジュール130dは、材料の回復の時間変化を算出する。
Alは、各種の金属材料のうち、回復が生じやすい材料である。このため、回復モジュール130dを設けることにより、Alの回復(Alにおいて生じやすい冶金的現象)を考慮して、複数の相互作用的な冶金的現象の時間変化を算出できる。それゆえ、材料組織をより正確に予測することが可能となる。
但し、組織計算モジュール群130に、さらなるモジュールが設けられてもよい。組織計算モジュール群130によって、複数の冶金的現象によって生じる、MSの変化を計算できる。
複数のモジュールのそれぞれ(例:再結晶モジュール130a、固溶析出モジュール130b、加工組織モジュール130c、および回復モジュール130d)には、共通のデータ構造を有するMS(i,t)が供給される。例えば、複数のモジュールのそれぞれには、図7に示される項目を有するMS(i,t)が供給される。
以下に述べるように、工程間情報統合部11、工程計算部12(第1工程計算部12a〜第N工程計算部12N)、および材料組織計算部13(組織計算モジュール群130)が設けられることにより、Alの材料組織の変化を予測できる(以下に述べる図2も参照)。
入力部70は、ユーザの入力(ユーザ入力)を受け付ける。上述のように、PC(1)〜PC(N)は、ユーザ入力によって設定される。また、MS(1,0)(つまり、第1工程における材料組織情報の初期値)も、ユーザ入力によって設定される(後述の図3も参照)。
表示部75は、各種のデータ(特に、制御部10の計算結果)をグラフとして表示する。また、表示部75は、ユーザ入力のための入力画面を表示してもよい。表示部75が設けられることにより、ユーザにGUI(Graphic User Interface)を提供できるので、ユーザの利便が向上する。なお、入力部70および表示部75としてタッチパネルを用いた場合、入力部70と表示部75とを一体の部材として実現できる。
(工程間情報統合部11)
図2は、情報処理装置1における全体的な処理の流れを例示する図である。図2には、工程間情報統合部11と工程計算部12と材料組織計算部13との間のデータの流れ、および、処理の流れが概略的に示されている。図3は、工程間情報統合部11の処理S1〜Sの流れを例示するフローチャートである。以下、図2を参照しつつ、図3に基づいて、工程間情報統合部11の動作について述べる。
なお、図2では、各工程の区別のために、第i工程におけるTMP(i,t)およびMS(i,t)がそれぞれ、TMP(i,ti)およびMS(i,ti)として表記されている。
まず、工程間情報統合部11は、ユーザによって設定されたMS(1,0)およびPC(1)〜PC(N)を取得する(S1)。そして、工程間情報統合部11は、i=1に設定する(S2)。iは、図3の処理におけるループカウントである。
続いて、工程間情報統合部11は、第i工程計算部に、MS(i,0)およびPC(i)を供給する(S3)。第i工程計算部がMS(i,tfi)を取得する処理については、後述の図4に示されている。tfiは、第i工程の終了時刻である。tfiは、あらかじめ設定されていてもよいし、あるいは第i工程計算部によって変更可能に設定されてもよい。
一例として、i=1の場合には、工程間情報統合部11は、第1工程計算部12aに、MS(1,0)およびPC(1)を供給する(図2における、工程間情報統合部から第1工程計算部に向かう矢印を参照)。この場合、第1工程計算部12aは、MS(1,0)およびPC(1)を取得して、MS(,tf1)を算出する。
続いて、工程間情報統合部11は、第i工程計算部からMS(i,tfi)を取得する(S4)。一例として、i=1の場合には、工程間情報統合部11は、第1工程計算部12aから、MS(1,tf1)を取得する(図2における、第1工程計算部から工程間情報統合部に向かう矢印を参照)。
続いて、工程間情報統合部11は、MS(i,tfi)=MS(i+1,0)として、MS(i+1,0)を設定する(S5)。つまり、工程間情報統合部11は、第i工程の完了時における材料組織情報を、第i+1工程(次工程)の開始時における材料組織情報として設定する。
そして、工程間情報統合部11は、i=Nであるか否かを判定する(S6)。つまり、工程間情報統合部11は、現時点の計算対象である第i工程が、最終工程(第N工程)であるか否かを判定する。
i=Nでない場合(S6でNO)、工程間情報統合部11は、i=i+1に設定する(S7)。つまり、工程間情報統合部11は、iの値を1つカウントアップする。そして、S3に戻り、同様の処理を繰り返す。
一例として、i=1の場合を考える。この場合、S5において、工程間情報統合部11は、MS(1,tf1)=MS(2,0)として、MS(2,0)を設定する。続いて、工程間情報統合部11は、i=2としてiを設定し、S3に戻る。
そして、S3において、工程間情報統合部11は、第2工程計算部12bに、MS(2,0)(=MS(1,tf1))およびPC(2)を供給する(図2における、工程間情報統合部から第2工程計算部に向かう矢印を参照)。
続いて、工程間情報統合部11は、S4において、第2工程計算部12bからMS(2,tf2)を取得する(図2における、第2工程計算部から工程間情報統合部に向かう矢印を参照)。以下、第3工程以降についても同様である。
そして、iの値が順次カウントアップされ、i=Nとなった場合(S6でYES)に、工程間情報統合部11は、処理を終了する。工程間情報統合部11は、第1工程から第N工程までの計算において得られた全ての材料組織情報を、最終的な計算結果として出力してよい。
また、工程間情報統合部11は、第1工程から第N工程までの計算において得られた全ての加工熱処理条件情報を、最終的な計算結果として出力してよい。以下に述べるように、加工熱処理条件情報(TMP(i,t))は、第i工程計算部によって算出される。
工程間情報統合部11は、ユーザ入力に応じて、最終的な計算結果の一部(例:ユーザが閲覧を所望する計算結果)のみを、表示部75に選択的に表示させてよい。また、工程間情報統合部11は、上述の各処理の途中において、記憶部90に計算結果を格納してもよい。
なお、記憶部90には、ユーザによってあらかじめ測定された、実際の材料におけるMSを示すデータ(以下、MS実測データ)(実測情報)が記憶されていてよい。工程間情報統合部11は、MS実測データを用いて、当該MS実測データの測定対象となった材料と同じ製造条件(PC(i))のもとで算出されたMSを評価してよい。
より具体的には、工程間情報統合部11は、MS実測データに対するMS(i,t)の誤差を算出することにより、当該MS(i,t)の誤差(以下、計算誤差)を評価してよい。さらに、工程間情報統合部11は、計算誤差が小さくなるよう、工程計算部および材料組織計算部における計算に用いられるパラメータ(例:係数)を調整してよい。このように、工程間情報統合部11は、MS実測データを用いて、計算精度を向上させる機能を有していることが好ましい。
なお、MS実測データには、MSの全項目(後述の図7を参照)に対応する実測値が含まれている必要はない。MS実測データには、MSの項目の少なくとも一部分に対応する実測値が含まれていればよい。
(工程計算部12)
図4は、工程計算部12に含まれる第i工程計算部の処理S11〜S18の流れを例示するフローチャートである。以下、図4を参照し、第i工程計算部の動作について述べる。
なお、図4におけるiの値は、上述の処理S2において、工程間情報統合部11によってあらかじめ設定されているものとする。この点については、後述する図5についても同様である。つまり、図4および図5はいずれも、所定の第i工程における処理を示す。
まず、第i工程計算部は、工程間情報統合部11から、MS(i,0)および製造条件PC(i)を取得する(S11)。なお、上述のように、MS(i,0)は、MS(i−1,tfi)に等しい。
続いて、第i工程計算部は、第i工程における時刻t(時刻ti)を、t=0(開時刻,初期時刻)に設定する(S12)。そして、第i工程計算部は、PC(i)に基づいてTMP(i,t)を算出する(S13)。一例として、i=1かつt=t1=0の場合を考える。この場合、第1工程計算部12aは、MS(1,0)を材料組織計算部13に供給する(図2も参照)。
なお、上述のとおり、第i工程計算部においてTMP(i,t)を算出する方法は、製造工程に応じて異なる手法が用いられてよい。例えば、焼鈍等の工程であれば、炉の温度設定プログラムから、温度履歴を単純に模擬した数式を設定できる。また、圧延または引抜き等の、比較的単純な塑性加工を伴う工程であれば、圧延理論または材料力学の理論に基づいて数式を設定できる。この場合、第i工程計算部は、当該数式を用いてTMP(i,t)を算出できる。
あるいは、鍛造または押出等の複雑な工程については、FEMなどのシミュレーション技術を用いることにより、第i工程計算部においてTMP(i,t)を算出すればよい。
そして、第i工程計算部は、MS(i,t)およびTMP(i,t)を材料組織計算部13に供給する(S14)。一例として、i=1かつt=t1=0の場合には、第1工程計算部12aは、MS(1,0)およびTMP(1,0)を材料組織計算部13に供給する(図2も参照)。
続いて、第i工程計算部は、材料組織計算部13から、MS(i,t+Δt)を取得する(S15)。一例として、i=1かつt=t1=0の場合、第1工程計算部12aは、材料組織計算部13から、MS(1,Δt)を取得する(図2も参照)。なお、Δtは微小時間である。Δtの値は、材料組織計算部13において設定されてよい。
なお、Δtの値は、一定であってもよいし、一定でなくともよい。一例として、異なるiに対して、異なるΔtの値が設定されてよい。あるいは、同じiに対しても、計算の途中において、Δtの値が変更されてもよい。
続いて、第i工程計算部は、t=tfiであるか否かを判定する(S16)。つまり、第i工程計算部は、時刻tが第i工程における終了時刻まで進行したか否かを判定する。
t=tfiでない場合(S16でNO)、第i工程計算部は、t=t+Δtに設定する(S17)。つまり、第i工程計算部は、第i工程における時刻tを、Δtだけカウントアップ(進行)させる。そして、S13に戻り、同様の処理を繰り返す。
他方、第i工程計算部は、t=tfiである場合(S16でYES)、第i工程計算部は、工程間情報統合部11に、MS(i,tfi)を供給する(S18)(上述の図3のS4・S5も参照)。一例として、i=1かつt=t1=0の場合、第1工程計算部12aは、工程間情報統合部11に、MS(1,tf1)を供給する。
以上のように、第i工程計算部は、PC(i)に基づいてTMP(i,t)を算出する。そして、第i工程計算部は、材料組織計算部13にMS(i,t+Δt)を順次算出させてゆき、材料組織計算部13からMS(i,tfi)を取得する。
そして、上述のように、工程間情報統合部11は、第i工程計算部からMS(i,tfi)を取得し、当該MS(i,tfi)をMS(i+1,0)として第i+1工程計算部に供給する。このように、工程間情報統合部11は、第i工程計算部における第i工程の計算が完了すると、第i+1工程計算部に第i+1工程(次の製造工程)の計算を開始させる。
(材料組織計算部13)
図5は、材料組織計算部13の処理S21〜S23の流れを例示するフローチャートである。以下、図5を参照し、材料組織計算部13の動作について述べる。
まず、材料組織計算部13は、第i工程計算部からMS(i,t)およびTMP(i,t)を取得する(S21)。続いて、材料組織計算部13は、組織計算モジュール群130によって、MS(i,t)およびTMP(i,t)に基づいて、MS(i,t+Δt)を算出する(S22)。
そして、材料組織計算部13は、算出したMS(i,t+Δt)を、第i工程計算部に供給する(S23)。
組織計算モジュール群130は、現時点における加工熱処理条件(TMP(i,t))を用いて、現時点の材料組織(MS(i,t))から、微小時間Δt後の材料組織(MS(i,t+Δt))を算出(予測)する機能を有する。
組織予測モジュール群に含まれる各モジュールは、公知の方法(例:MSの予測のための公知の理論式または実験式)を用いた計算手法によって、各冶金的現象に伴うMSの時間的な変化を計算(予測)してよい。つまり、各モジュールは、所定のモデル(計算モデル、物理モデル)を用いて、MSの変化を予測してよい。但し、各モジュールにおけるMSの予測方法は特に限定されない。組織予測モジュール群は、MSの変化を予測できれば、任意の計算手法を用いてよい。
一例として、再結晶モジュール130aは「Acta Materialia 51 (2003) 1453-1468」に記載の方法を、固溶析出モジュール130bは、「Acta Materialia 45 (1997) 4231-4240」に記載の方法を、加工組織モジュール130cは、「Journal of Materials Processing Technology 117 (2001) 333-340」に記載の方法を、それぞれ用いて実装されてよい。
各モジュールは、各モジュールの計算において必要な材料組織パラメータを相互に参照する。例えば、再結晶モジュール130aが再結晶を計算する場合には、第二相粒子の情報が不可欠となる。このため、再結晶モジュール130aは、固溶析出モジュール130bによって算出された固溶析出状態の計算結果を参照し、当該計算結果を第二相粒子の情報として用いる。
固溶析出モジュール130bでの固溶析出計算において、粒界析出を考慮するためには、再結晶モジュール130aにおいて算出された、結晶粒組織の計算結果が必要である。このため、固溶析出モジュール130bは、再結晶モジュール130aの計算結果を参照し、固溶析出を計算する。
各モジュールにおける計算を、微小時間Δtごとに行うことで、複数の冶金的現象の相互作用を考慮して、MSの時間変化を計算することが可能となる。つまり、複数の相互作用的な冶金的現象の時間変化を算出して、MS(i,t+Δt)を得ることができる。なお、Δtが大きい場合、材料組織の時間変化を精度よく計算することができない。このため、Δtはある程度小さい値として設定(選択)される必要がある。
ここで、組織計算モジュール群130での計算における、所定の材料組織パラメータ(材料組織の状態を示す変数)をZ(t)と表す。Δtは、時刻tから時刻t+Δtまでの間におけるZ(t)の変化量に着目して設定されてよい。
一例として、Δtは、Z(t)からZ(t+Δt)への変化量が、0.5%以下となるように設定されてよい。つまり、Δtは、Z(t)からZ(t+Δt)への時間的な変化が、ある程度小さくなるように設定されればよい。
なお、Δtは、所定の1つのZ(単一の材料組織パラメータ)または単一のモジュールによって設定されない。Δtは、組織計算モジュール群130(全てのモジュール)において用いられる全てのZの中で、時間領域における変化量が最も大きいZにより決定される。このように、変化量が最も大きいZに対してΔtを設定することにより、複数の現象の相互作用を十分に考慮できる。
(情報処理装置1の効果)
情報処理装置1によれば、種々のPC(i)(製造条件)に対して、MS(i,t)を算出できる。つまり、各工程の進行に伴うMSの変化を予測できる。それゆえ、製品(Al)の製造時に得られるMS(すなわち、MS(N,tfN))を従来よりも高精度に予測できる。すなわち、工業プロセスにおけるAlの材料組織を従来よりも高精度に予測できる。
このため、例えば、PC(i)に含まれるパラメータ(製造パラメータ)を所定の条件範囲中で変化させて計算を行うことで、当該製造パラメータがMSに及ぼす影響を系統的に知ることができる。
また、複数の製造パラメータのそれぞれに条件範囲を指定し、当該範囲内で各製造パラメータをランダムに変化させて繰り返し計算させることで、所望のMSを得るためのPC(i)を探索することもできる。
このように、情報処理装置1によれば、MSに起因する特性を安定化させるように、PC(i)を設定することが可能となる。それゆえ、工業プロセスにおける試作検討のコストの回数を大幅に減少させることができる。
さらに、情報処理装置1によれば、以下の実施例において詳述するように、共通のデータ構造を有するMS(i,t)を用いて、材料組織計算部13に計算を行わせることができる。以下、当該構成の利点について、実施例を参照し説明する。
(実施例)
鋳造工程→均質化処理工程→熱間粗圧延工程→熱間仕上圧延工程→冷間圧延工程という製造工程からなるH1n調質のAl板材(製品)を考える。冷間圧延後の製品強度の安定化を目的として、情報処理装置1による計算を利用した例を示す。
H1n調質の製品の場合、冷間圧延後の製品強度は、合金成分および冷間圧延の加工度に強く依存する。但し、冷間圧延後の製品強度は、熱間仕上圧延後の再結晶率にも影響されることが知られている。
合金成分および冷間圧延の加工度は、PCとして容易に制御できる。他方、熱間仕上圧延後の再結晶率は、安定した制御が難しく、製品強度のバラツキが生じる一因となっている。そこで、発明者らは、情報処理装置1を用いて、均質化処理工程→熱間粗圧延工程→熱間仕上圧延工程の後のMSの予測を行い、製品強度を安定化させる対策を検討した。
発明者らは、均質化処理工程→熱間粗圧延工程→熱間仕上圧延工程という連続した3つの工程を、計算対象とした。つまり、発明者らは、均質化処理工程を第1工程、熱間粗圧延を第2工程、熱間仕上圧延工程を第3工程として(N=3として)、情報処理装置1による計算を行った。
図6には、本実施例におけるPCの項目が示されている。具体的には、図6には、PC(1)(均質化処理工程におけるPCのデータセット)、PC(2)(熱間粗圧延工程におけるPCのデータセット)、およびPC(3)(熱間仕上圧延工程におけるPCのデータセット)が、それぞれ示されている。
なお、以下に述べるように、MS(1,0)としては、工場での製造指示の条件および製造実績から、均質化処理に供されるAl鋳塊のMSが与えられている。
これらのPCを用いて、各工程におけるTMPを算出した。まず、均質化処理工程(第1工程)におけるTMPについて、温度T(t)=T(1,t)を上述の式(1)によって計算した。上述の通り、歪量ε(t)=ε(1,t)および歪速度dε(t)=dε(1,t)はいずれも0とした。
熱間粗圧延工程(第2工程)および熱間仕上圧延工程(第3工程)では、圧延中の温度変化は不明である。このため、圧延による温度変化は一瞬で生じると仮定して、温度T(t)(温度T(2,t)およびT(3,t))を算出した。
また、歪量ε(t)(歪量ε(2,t)およびε(3,t))および歪速度dε(t)(歪速度dε(2,t)およびε(3,t))については、圧延ロールを通る瞬間のみ非零の数値が生じるとした。圧延ロールを通る瞬間以外の時刻では、歪量ε(t)および歪速度dε(t)はいずれも0に設定した。
歪量εおよび歪速度dεの大きさは、圧下量、圧延速度、およびロール径を用いて、圧延理論により算出した。熱間仕上圧延工程では、材料がコイルに巻き取られた後の冷却中にもMSの変化が起こる。熱間仕上圧延工程におけるTMPには、加工は含まれないので、単純に冷却速度の実測値から温度変化T(t)を算出した。
図7には、本実施例におけるMSの項目が示されている。図7のMSは、第1工程〜第3工程に共通して用いられている。鋳塊をサンプリングして材料組織観察を行い、第1工程(均質化処理工程)におけるMSの初期値(すなわち、MS(1,0))を実測した。なお、第1工程における材料の初期状態は鋳塊であるため、再結晶率は1であり、歪エネルギーは0である。
以上のデータに基づき、情報処理装置1を用いてMSの計算を行った。図8には、本実施例における全体的な処理の流れが例示されている。図8は、上述の図3において、N=3とした場合に相当する。
MSを算出するモデル(物理モデル、計算モデル)を調整するための実測データを取得するために、10ロット分の工場材を抽出した。当該工場材について、均質化処理工程後および熱間仕上圧延工程のそれぞれの後においてサンプリングを行い、MSを実測した。続いて、(i)均質化処理工程後の析出物の平均粒子半径Rpと、(ii)熱間仕上圧延工程後の再結晶率Yおよび再結晶部分の平均粒径Dと、を定量化した。
これらの実測データを用いて、モデルの調整を行った。ここで、モデル調整用の材料組織因子をXとする。Xは、上述のRp、D、およびYのうちの任意の1つである。また、XexpをXの実測値、XcalをXの計算値とする。
本実施例では、情報処理装置1(工程間情報統合部11)において、以下の式(3)、
Figure 0006978224
によって、Xの誤差評価値Eを算出した。そして、Rp、D、およびYの3つについての誤差評価値の平均値Emを最小化するよう、モデル(より具体的には、モデルに含まれるパラメータ)を調整した。
実施形態1では、MCMC法(マルコフ連鎖モンテカルロ法,Markov chain Monte Carlo method)を用いた学習によって、モデルの調整を行った。但し、モデルの調整には、その他の任意の公知の手法が用いられてよい。例えば、学習を利用しない方法によって、モデルの調整を行ってもよい。
図9には、上述のように調整したモデルを用いた計算結果が示されている。図9における各ロットに対する記号は、
Rexp:Rpの実測値
Rcal:Rpの計算値
ERp:Rpの誤差評価値
Dexp:Dの実測値
Dcal:Dの計算値
ED:Dの誤差評価値
Yexp:Yの実測値
Ycal:Yの計算値
EY:Yの誤差評価値
Em:誤差評価値の平均値
の通りである。なお、Em=(ERp+ED+EY)/3である。また、10ロット間におけるEmの平均値を、全体誤差平均値Emmと称する。これらの記号は、後述の比較例および各変形例においても同様である。全体誤差平均値Emmが0.2を下回れば、従来の経験則に依存した試作検討(トライアンドエラー)に代替しうる予測精度が得られることが期待される。
図9に示されるように、本実施例では、各ロットの誤差評価値について、十分に小さい平均値Emが得られた。このため、全体誤差平均値Emmについても、0.2を十分に下回る小さい値(0.08)が得られた(図9のハッチング部を参照)。
製造パラメータを様々に変更させてMSを算出することで、当該製造パラメータに応じて、仕上熱間圧延工程後の再結晶率の計算値Ycalを得ることができる。それゆえ、情報処理装置1によれば、仕上熱間圧延工程後のYcalの値によって、冷間圧延後の製品強度をシミュレーションによって検討できる(机上検討できる)。
図10には、実施例、比較例(後述)、および各参考例(後述)のそれぞれについて、計算処理の違いが示されている。図10に示されるように、本実施例では、各工程間の情報連携(データの受け渡し)は、工程間情報統合部11によって行われる。また、各工程におけるTMPの計算は、工程計算部12によって行われる。また、各工程におけるMSの計算は、材料組織計算部13によって行われる。
従来、冷間圧延後の製品強度を検討する場合には、工場で試験材を10ロット程度作成し、仕上熱延工程後の再結晶率が100%に近くなる製造条件を、試作検討によって模索せざるを得なかった。例えば、Al圧延材の10トン鋳塊1本分のコストをC(単位:円)とすると、K回の試作検討を行った場合には、概ねC×Kの費用が発生する。
しかしながら、上述のように、情報処理装置1によれば、従来よりも正確に、工業プロセスにおけるAlのMSを予測できる。このため、精度の高い机上検討により、試作検討の回数を、例えば半分以下に削減することが期待できる。従って、例えばC×K/2以上の費用低減が可能となる。
図11には、実施例、比較例、および各参考例のそれぞれについての比較結果が示されている。本実施例では、工程間情報統合部11によって、工程計算部12に対して、計算に必要な情報(PC(i)およびMS(i,0))を自動的に供給できる。このため、全工程(第1工程〜第N工程)の計算を、工程間情報統合部11が工程計算部12に一括して行わせることができる。それゆえ、ユーザの工数(計算のための工数)を低減できる。つまり、ユーザに対して利便性に優れた計算システム(計算プログラム)を提供できる。
さらに、本実施例では、工程間情報統合部11によって全工程に亘るモデル調整を行うことができるため、工程全体での計算の最適化を図ることができる。それゆえ、高い計算精度を得ることも可能となる。
また、本実施例では、全工程において、共通の項目(データ構造)を有する材料組織情報(MS(i,t))を用いて、材料組織計算部13に計算を行わせることが可能である。つまり、共通の(1つの)材料組織計算部13において、MSを計算することが可能である。これにより、工程に応じて個別の(異なる)材料組織計算モジュールを準備する必要がないため、計算システムの開発工数を大幅に低減できる。
本実施例では、均質化処理工程(第1工程)→熱間粗圧延処理工程(第2工程)→熱間仕上圧延処理工程(第3工程)の3つの工程を検討対象とした。情報処理装置1の構成によれば、これらの工程とは異なる別の工程(第4工程)を検討する場合にも、当該別の工程に対応する工程計算部(第4工程計算部)を開発するのみでよい。
このように、本発明の一態様に係る計算システムは、検討すべき工程に応じてカスタマイズ可能なパッケージ(MS予測パッケージ)であるので、他の工程に適用するためのプログラムの開発が簡便となる。それゆえ、様々な工程についての検討を行う場合にも、計算システムの開発に要する人工数を大幅に低減できる。
(比較例)
従来技術によるMSの予測計算の一例を、比較例として示す。比較例では、上述の実施例と同じPCおよびTMPを用いて、実施例と同様の計算を行った。図12は、比較例におけるMSの項目を示す図である。図13は、比較例における全体的な処理の流れを例示する図である。
図13に示されるように、比較例における情報処理装置1Xは、第1工程(均質化処理工程)の材料組織計算モジュール(第1材料組織計算モジュール)と、第2工程(熱間粗圧延工程)の材料組織計算モジュール(第2材料組織計算モジュール)と、第3工程(熱間仕上圧延工程)の材料組織計算モジュール(第3材料組織計算モジュール)と、を備える。
つまり、情報処理装置1Xは、3つの工程のそれぞれに対して、個別の材料組織計算モジュールを備える。この点において、比較例における情報処理装置は、情報処理装置1と異なる。各材料組織計算モジュール(第1材料組織計算モジュール〜第3材料組織計算モジュール)には、各工程のTMP計算のアルゴリズムとMS計算のアルゴリズムとが実装されている。各材料組織計算モジュールは、実施例と同様の方法によって、PCからTMPおよびMSを算出する。
また、図13に示されるように、情報処理装置1Xは、工程間情報統合部11を備えていない。この点においても、情報処理装置1Xは、情報処理装置1と異なる。情報処理装置1Xでは、現在の第i工程(例:第1工程)から次の第i+1工程(例:第2工程)へと計算を進める場合におけるデータの受け渡しは、ユーザがマニュアル操作によって行う必要がある(図10および図11も参照)。
情報処理装置1Xでは、工程ごとに独立した材料組織計算モジュールによって計算が行われる。このため、各工程の計算において使用される材料組織情報の種類が異なる。具体的には、第1材料組織計算モジュール(均質化処理の材料組織計算モジュール)における計算では、再結晶率、結晶粒径、および歪エネルギーの値は使用されない。
このため、図12のハッチング部に示されるように、第1材料組織計算モジュールでは、再結晶率、結晶粒径、および歪エネルギーは、材料組織情報の項目に含まれていない。それゆえ、第1材料組織計算モジュールには、材料組織情報として、再結晶率、結晶粒径、および歪エネルギーの値を入出力する機能が設けられていない。
従って、第2工程(熱間粗圧延工程)の計算のための材料組織情報(MS(2,0))を第2材料組織計算モジュールに受け渡す場合には、再結晶率、結晶粒径、および歪エネルギーの値をユーザが手動で選択する処理が必要となる。このため、情報処理装置1Xでは、MSの計算に要するユーザの工数が、情報処理装置1に比べて増大する。
さらに、情報処理装置1Xでは、各工程間の情報が個別に取り扱われているため、個々の個別の材料組織計算モジュール内でしかモデル調整を行うことができない。つまり、全工程に亘るモデル調整を行うことができない。それゆえ、比較例では、実施例に比べて計算精度が低下する。
図14には、比較例における計算結果が示されている。図14に示されるように、比較例では、各ロットにおける誤差評価値の平均値Emは、実施例の場合に比べて十分に大きい。さらに、全体誤差平均値Emmについても、0.2を十分に上回る大きい値(0.35)となった(図14のハッチング部を参照)。すなわち、比較例における計算では、従来の試作検討に代替しうる予測精度が得られないことが確認された。
また、情報処理装置1Xでは、工程ごとに材料組織計算モジュール(プログラム)を設計する必要があるため、プログラム設計に要する人工数が、実施例と比較して大となる。例えば、情報処理装置1Xを別の工程(例:第4工程)の検討に適用する場合には、第4工程に応じた材料組織計算モジュールを設計する必要がある。このことから、情報処理装置1Xは、別の工程への検討に適用するためのカスタマイズ性が、情報処理装置1に比べて十分に低いと言える。
(参考例1)
参考例1では、上述の実施例と同じPC、TMP、およびMSを用いて、実施例と同様の計算を行った。図15は、参考例1における全体的な処理の流れを例示する図である。図15に示されるように、参考例における情報処理装置1Pは、比較例の情報処理装置1Xに対して、情報処理装置1の工程間情報統合部11を付加した構成である。なお、参考例1におけるMSの項目は、比較例と同様である(図12を参照)。
上述の比較例と同様に、第1材料組織計算モジュール(均質化処理の材料組織計算モジュール)における計算では、再結晶率、結晶粒径、および歪エネルギーの値は使用されない。但し、情報処理装置1Pでは、工程間情報統合部11によって、第1材料組織計算モジュールにおける再結晶率、結晶粒径、および歪エネルギーの値が、そのまま第2材料組織計算モジュールに受け渡される。
参考例1においても、工程間情報統合部11は、実施例と同様に、各工程のモデル調整を行う。但し、各工程の材料組織計算部は個別であるため(各工程において共有されていないため)、ある工程でのモデル調整の結果は、別の工程には反映されない。
例えば、参考例1において、第1工程(均質化処理工程)では、実測された平均粒子半径(Rexp)との誤差を低減するように、モデル調整が行われるが、当該モデル調整の結果は、第2工程(熱間粗圧延工程)および第3工程(熱間仕上圧延工程)には反映されない(図10および図11も参照)。
参考例1によれば、工程間情報統合部11によって、各工程間の各工程の情報連携が自動化されるため、MSの計算に要するユーザの工数を、比較例に比べて低減することができる。しかしながら、参考例1においても、比較例と同様に、工程ごとに独立した材料組織計算モジュールによって計算が行われるため、全行程に亘るモデル調整ができない。それゆえ、参考例1においても、実施例と同程度の計算精度を得ることはできない。
図16には、参考例における計算結果が示されている。図16に示されるように、参考例1においても、各ロットにおける誤差評価値の平均値Emは、実施例の場合に比べて十分に大きい。さらに、全体誤差平均値Emmについても、0.2を十分に上回る大きい値(0.29)となった(図16のハッチング部を参照)。すなわち、参考例1における計算においても、従来の試作検討に代替しうる予測精度が得られないことが確認された。
また、情報処理装置1Pにおいても、情報処理装置1Xと同様に、工程ごとに材料組織計算モジュールを設計する必要があるため、プログラム設計に要する人工数が、実施例と比較して大となる。つまり、情報処理装置1Pも、情報処理装置1Xと同様に、カスタマイズ性が情報処理装置1に比べて十分に低いと言える。
(参考例2)
参考例2では、上述の実施例と同じPC、TMP、およびMSを用いて、実施例と同様の計算を行った。図17は、参考例における全体的な処理の流れを例示する図である。図17に示されるように、参考例における情報処理装置1Qは、情報処理装置1から工程間情報統合部11を取り除いた構成である。なお、参考例2におけるMSの項目は、実施例と同様である(図7を参照)。
情報処理装置1Qは、工程間情報統合部11を備えていないので、比較例の情報処理装置1Xと同様に、工程間の情報を連携する機能を有していない。このため、第i工程から第i+1工程へと計算を進める場合におけるデータの受け渡しは、ユーザがマニュアル操作によって行う必要がある(図10および図11も参照)。それゆえ、情報処理装置1Qにおいても、情報処理装置1Xと同様に、MSの計算に要するユーザの工数が、情報処理装置1に比べて増大する。
また、情報処理装置1Qは、各工程計算部に共通の材料組織計算部13を有しているものの、工程間情報統合部11を備えていないので、全工程に亘るモデル調整を行うことができない。それゆえ、参考例2においても、実施例と同程度の計算精度を得ることはできない。
図18には、情報処理装置1Qにおける計算結果が示されている。図18に示されるように、参考例2においても、各ロットにおける誤差評価値の平均値Emは、実施例の場合に比べて十分に大きい。さらに、全体誤差平均値Emmについても、0.2を十分に上回る大きい値(0.40)となった(図18のハッチング部を参照)。すなわち、参考例2における計算においても、従来の試作検討に代替しうる予測精度が得られないことが確認された。
但し、情報処理装置1Qは、各工程計算部に共通の材料組織計算部13を有しているため、情報処理装置1と同様に、高いカスタマイズ性を有している。
〔変形例〕
実施形態1では、TMPおよびMSを示す情報(加工熱処理条件情報および材料組織情報)がそれぞれ、TMP(i,t)およびMS(i,t)として表される場合を例示した。つまり、AlのTMPおよびMSが、Alの位置(マクロ的な位置)によらず一定であるとして取り扱う場合を例示した。
但し、TMP(i,t)およびMS(i,t)を、Alを空間的に分割することによって得られた複数の部分領域(エリア)ごとに、別の情報として取り扱うこともできる。つまり、AlのTMPおよびMSが、Alの位置(以下、x)により異なるものとして取り扱うこともできる。
具体的には、加工熱処理条件情報をTMP(i,x,t)、材料組織情報をMS(i,x,t)として表現できる。すなわち、xを示す情報(位置情報)をさらに付加してTMPおよびMSを表現してよい。当該構成によれば、部分領域ごとにAlのTMPおよびMSを考慮できるので、AlのMSをさらに高精度に予測することが可能となる。
一例として、Alの板材において、板の表面から中心までの領域を複数のエリアに分割し、それぞれエリアにおけるMSの変化を算出できる。具体的には、既知のPC(i)を用いて、「PC(i)→TMP(i,x,t)→MS(i,x,t)」の順に、MS(i,x,t)を算出できる。つまり、複数のエリアごとに、実施形態1と同様に、TMPおよびMSを算出すればよい。
一例として、複数のエリアごとにTMPを算出することにより、PC(i)からTMP(i,x,t)を算出できる。この場合、上述のように、圧延理論またはFEMを用いて、複数のエリアごとにTMPを算出すればよい。
〔実施形態2〕
実施形態1では、工業プロセスにおけるAlの材料組織を予測する手法について説明を行った。但し、本発明の一態様に係る情報処理装置における計算手法の適用対象は、Alのみに限定されない。
例えば、当該計算手法は、工業プロセスにおける所定の金属製品の材料組織を予測するために適用されてもよい。一例として、当該計算手法は、工業プロセスにおける鉄(Fe)または銅(Cu)の材料組織を予測するために適用されてもよい。
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置1の制御ブロック(特に制御部10)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、情報処理装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る材料組織計算装置は、第1工程から第N工程までを含む、アルミニウムを製造する工業プロセスについて、iを、1≦i≦Nを満たす自然数、第i工程の時刻tについて、t=0を当該第i工程の開始時刻、t=tfiを当該第i工程の終了時刻、第i工程における上記アルミニウムの製造条件を示す情報をPC(i)、第i工程の時刻tにおける上記アルミニウムの加工熱処理条件を示す情報をTMP(i,t)、第i工程の時刻tにおける上記アルミニウムの材料組織を示す情報をMS(i,t)、として、PC(1)〜PC(N)およびMS(1,0)を、あらかじめ設定された情報として取得する工程間情報統合部と、第1工程計算部から第N工程計算部までを含む工程計算部と、MS(i,t)およびTMP(i,t)に基づいて、MS(i,t)の時間変化を算出する材料組織計算部と、を備えており、上記材料組織計算部は、複数の冶金的現象のそれぞれの時間変化を算出する、複数の計算モジュールを含み、上記工程計算部における第i工程計算部は、PC(i)に基づいてTMP(i,t)を算出し、複数の上記計算モジュールのそれぞれには、共通のデータ構造を有するMS(i,t)が供給され、i=1からi=Nまでの順に、上記工程間情報統合部は、上記第i工程計算部にPC(i)およびMS(i,0)を供給し、第i工程において、t=0からt=tfiまでの順に、上記第i工程計算部は、(i)上記材料組織計算部にMS(i,t)およびTMP(i,t)を供給することで、当該材料組織計算部にMS(i,tfi)を算出させ、かつ、(ii)当該MS(i,tfi)を上記工程間情報統合部に供給し、上記工程間情報統合部は、上記第i工程計算部から取得したMS(i,tfi)を、MS(i+1,0)として設定する。
上述のように、従来の技術では、複数の製造工程を含む工業プロセスにおける、Al(アルミニウム)のMS(材料組織)の変化を取り扱うことが困難であった。しかしながら、上記の構成によれば、種々のPC(i)(製造条件)に対して、MS(i,t)を算出できる。つまり、各工程の進行に伴うMSの変化を予測できる。
それゆえ、Alの製造時に得られるMS(つまり、MS(N,tfN))を従来よりも高精度に予測することが可能となる。すなわち、工業プロセスにおけるAlのMSを従来よりも高精度に予測できる。その結果、本発明の一態様に係る材料組織計算装置によれば、工業プロセスにおける試作検討のコストの回数を大幅に減少させることができる。
また、本発明の一態様に係る材料組織計算装置によれば、第1工程計算部から第N工程計算部までのそれぞれ(第1工程から第N工程までのそれぞれ)において、共通のデータ構造を有するMS(i,t)を用いて、材料組織計算部に計算を行わせることができる。つまり、共通の材料組織計算部を用いて計算を行うことができる。それゆえ、工程に応じて個別の材料組織計算部を準備する必要がない。
このように、本発明の一態様に係る計算システムによれば、検討すべき工程に応じたカスタマイズが可能であるので、計算システムの開発工数を大幅に低減できるという利点も得られる。
本発明の態様2に係る材料組織計算装置は、上記態様1において、上記第i工程計算部は、PC(i)に基づいて、第i工程の時刻tにおいて、上記アルミニウムに加えられる温度、歪量、および歪速度のそれぞれを示す情報として、TMP(i,t)を算出してよい。
上述のように、温度、歪量、および歪速度はいずれも、AlにおけるMSの変化を高精度に予測するために重要なパラメータである。それゆえ、上記の構成によれば、工業プロセスにおけるAlのMSをさらに高精度に予測できる。
本発明の態様3に係る材料組織計算装置は、上記態様1または2において、Δtを微小時間として、上記材料組織計算部は、MS(i,t)およびTMP(i,t)に基づいて、複数の相互作用的な冶金的現象の時間変化を算出して、MS(i,t+Δt)を得る構成であってもよい
上記の構成によれば、複数の相互作用的な冶金的現象に伴うMSの時間変化を考慮できるので、工業プロセスにおけるAlのMSをさらに高精度に予測できる。
本発明の態様4に係る材料組織計算装置は、上記態様1から3のいずれか1つにおいて、MS(i,t)には、第i工程の時刻tにおける、添加元素の添加量、添加元素の固溶量、第二相粒子の粒子サイズ分布、再結晶率、および歪エネルギーのそれぞれを示す情報が含まれている。
上記の構成によれば、MSとして多様なパラメータを考慮できるので、工業プロセスにおけるAlのMSをさらに高精度に予測できる。
本発明の態様5に係る材料組織計算装置は、上記態様1から4のいずれか1つにおいて、上記材料組織計算部には、上記材料組織の時間変化を算出するための計算モデルがあらかじめ設定されており、上記工程間情報統合部は、あらかじめ取得された上記材料組織の実測データとの誤差を低減するように、上記計算モデルに含まれるパラメータを調整してよい。
上記の構成によれば、実測データに基づいて計算モデルに含まれるパラメータを調整できるので、工業プロセスにおけるAlのMSをさらに高精度に予測できる。
本発明の態様6に係る材料組織計算装置は、上記態様1から5のいずれか1つにおいて、MS(i,t)は、上記アルミニウムの再結晶状態と未再結晶状態とで、別の情報として取り扱われていることが好ましい。
上述のように、Alの再結晶の有無によって、複数の冶金的現象のそれぞれの時間変化の態様は大きく異なりうる。それゆえ、上記の構成によれば、工業プロセスにおけるAlのMSをさらに高精度に予測できる。
本発明の態様7に係る材料組織計算装置は、上記態様1から6のいずれか1つにおいて、上記材料組織計算部は、複数の上記計算モジュールとして、上記アルミニウムの回復の時間変化を算出する回復モジュールを、少なくとも備えていることが好ましい。
上述のように、Alは回復が生じやすい材料である。それゆえ、上記の構成によれば、回復モジュールによってAlの回復(Alにおいて生じやすい冶金的現象)を考慮できるので、工業プロセスにおけるAlのMSをさらに高精度に予測できる。
本発明の態様8に係る材料組織計算装置は、上記態様1から7のいずれか1つにおいて、TMP(i,t)およびMS(i,t)は、上記アルミニウムを空間的に分割することによって得られた複数の部分領域ごとに、別の情報として取り扱われていることが好ましい。
上記の構成によれば、部分領域ごとにTMPおよびMSを考慮できるので、工業プロセスにおけるAlのMSをさらに高精度に予測できる。
本発明の各態様に係る材料組織計算装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記材料組織計算装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記材料組織計算装置をコンピュータにて実現させる材料組織計算装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成できる。
〔本発明の別の表現〕
なお、本発明の一態様は、以下のようにも表現できる。
本発明の一態様に係る材料組織計算装置は、アルミニウム製品の製造工程において、(i)初期組織に対して、材料に加えられた加工熱処理条件から材料組織情報の時間変化を計算する材料組織計算部と、(ii)前工程の材料組織情報と対象工程の製造方法および製造条件から、対象工程において生ずる材料組織情報の時間変化を、材料組織計算部を呼び出して計算し、工程終了後の材料組織情報を計算する工程計算部と、(iii)工程計算部が計算した材料組織情報を次工程に渡す工程間情報統合部と、を備え、上工程から順に生ずる材料組織変化を引き継いで、各工程におけるアルミニウムの材料組織情報を計算し、各工程および最終製品の材料組織を計算する。
また、本発明の一態様に係る材料組織計算装置は、アルミニウム製品の製造工程において、(i)対象工程の製造条件から、加工熱処理条件すなわち材料に加えられる温度、歪量、歪速度を計算し、計算された温度、歪量、歪速度と、前工程の材料組織情報から、対象工程において生ずる材料組織変化を計算する工程計算部と、(ii)材料組織を、材料組織情報すなわち主要添加元素の添加量、主要添加元素の固溶量、主要な第二相粒子のサイズ分布関数、再結晶率、歪エネルギーを含む材料組織パラメータ群で表現し、前工程の材料組織情報と対象工程の加工熱処理条件から、対象工程において、複数の冶金的現象が並列に進行することで生ずる材料組織変化を、複数の物理式あるいは経験式を組み合わせて計算する材料組織計算部と、をさらに備える。
また、本発明の一態様に係る材料組織計算装置において、工程間情報統合部は、部分的に実測された各工程における材料組織因子を教師データとして、工程計算部および/あるいは材料組織計算部に含まれる係数を調整して予測精度を向上させる機能を有する。
1 情報処理装置(材料組織計算装置)
11 工程間情報統合部
12 工程計算部
12a 第1工程計算部
12N 第N工程計算部
13 材料組織計算部
130a 再結晶モジュール(計算モジュール)
130b 固溶析出モジュール(計算モジュール)
130c 加工組織モジュール(計算モジュール)
130d 回復モジュール(計算モジュール)
PC(i) 製造条件情報(第i工程におけるAlの製造条件を示す情報)
TMP(i,t) 加工熱処理条件情報(第i工程の時刻tにおけるAlの加工熱処理条件を示す情報)
MS(i,t) 材料組織情報(第i工程の時刻tにおけるAlの材料組織を示す情報)
i 工程の番号
N 工程の数
t 時刻
Δt 微小時間
ti 第i工程の時刻
tfi 第i工程の終了時刻

Claims (8)

  1. 第1工程から第N工程までを含む、アルミニウムを製造する工業プロセスについて、
    iを、1≦i≦Nを満たす自然数、
    第i工程の時刻tについて、t=0を当該第i工程の開始時刻、t=tfiを当該第i工程の終了時刻、
    第i工程における上記アルミニウムの製造条件を示す情報をPC(i)、
    第i工程の時刻tにおける上記アルミニウムの加工熱処理条件を示す情報をTMP(i,t)、
    第i工程の時刻tにおける上記アルミニウムの材料組織を示す情報をMS(i,t)、
    として、
    PC(1)〜PC(N)およびMS(1,0)を、あらかじめ設定された情報として取得する工程間情報統合部と、
    第1工程計算部から第N工程計算部までを含む工程計算部と
    MS(i,t)およびTMP(i,t)に基づいて、MS(i,t)の時間変化を算出する材料組織計算部と、を備えており、
    上記材料組織計算部は、複数の冶金的現象のそれぞれの時間変化を算出する、複数の計算モジュールを含み、
    上記工程計算部における第i工程計算部は、PC(i)に基づいてTMP(i,t)を算出し、
    複数の上記計算モジュールのそれぞれには、共通のデータ構造を有するMS(i,t)が供給され、
    i=1からi=Nまでの順に、
    上記工程間情報統合部は、上記第i工程計算部にPC(i)およびMS(i,0)を供給し、
    第i工程において、t=0からt=tfiまでの順に、
    上記第i工程計算部は、(i)上記材料組織計算部にMS(i,t)およびTMP(i,t)を供給することで、当該材料組織計算部にMS(i,tfi)を算出させ、かつ、(ii)当該MS(i,tfi)を上記工程間情報統合部に供給し、
    上記工程間情報統合部は、上記第i工程計算部から取得したMS(i,tfi)を、MS(i+1,0)として設定し、
    MS(i,t)は、上記アルミニウムの再結晶状態と未再結晶状態とで、別の情報として取り扱われていることを特徴とする材料組織計算装置。
  2. 上記第i工程計算部は、PC(i)に基づいて、
    第i工程の時刻tにおいて、上記アルミニウムに加えられる温度、歪量、および歪速度のそれぞれを示す情報として、TMP(i,t)を算出することを特徴とする請求項1に記載の材料組織計算装置。
  3. Δtを微小時間として、
    上記材料組織計算部は、MS(i,t)およびTMP(i,t)に基づいて、
    複数の相互作用的な冶金的現象の時間変化を算出して、MS(i,t+Δt)を得ることを特徴とする請求項1または2に記載の材料組織計算装置。
  4. MS(i,t)には、
    第i工程の時刻tにおける、添加元素の添加量、添加元素の固溶量、第二相粒子の粒子サイズ分布、再結晶率、および歪エネルギーのそれぞれを示す情報が含まれていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の材料組織計算装置。
  5. 上記材料組織計算部には、上記材料組織の時間変化を算出するための計算モデルがあらかじめ設定されており、
    上記工程間情報統合部は、あらかじめ取得された上記材料組織の実測データとの誤差を低減するように、上記計算モデルに含まれるパラメータを調整することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の材料組織計算装置。
  6. 上記材料組織計算部は、複数の上記計算モジュールとして、
    上記アルミニウムの回復の時間変化を算出する回復モジュールを、少なくとも備えていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の材料組織計算装置。
  7. TMP(i,t)およびMS(i,t)は、上記アルミニウムを空間的に分割することによって得られた複数の部分領域ごとに、別の情報として取り扱われていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の材料組織計算装置。
  8. 請求項1に記載の材料組織計算装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、上記工程間情報統合部、上記工程計算部、および上記材料組織計算部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
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