JP2017020098A - アルミニウム合金の材料組織予測方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱処理後のアルミニウム合金の材料組織を、より精度良く予測し得る方法を提供する。【解決手段】熱処理前のアルミニウム合金の材料組織の状態と熱処理の条件とから、熱処理によって析出する第二相粒子のサイズと数密度を算出する一方、アルミニウム合金中に存在する第二相粒子について、そのサイズ毎に、熱処理によるサイズの変化を算出して、第二相粒子のサイズと数密度にて表される粒子サイズ分布関数を求めると共に、熱処理の進行に従って、析出する第二相粒子や前記サイズ変化する第二相粒子についての算出を繰り返し実施し、そしてその得られた算出値に基づいて、粒子サイズ分布関数を繰り返し更新して、熱処理終了時点における粒子サイズ分布関数を求め、熱処理後の第二相粒子の分散状態を予測することによって、熱処理後のアルミニウム合金の材料組織を予測するようにした。【選択図】図2

Description

本発明は、アルミニウム合金の材料組織予測方法に係り、特に、Al(アルミニウム)合金の熱処理後の材質を、その合金成分の熱処理前の状態や熱処理条件に基づいて予測する方法に関するものである。
従来から、Al合金の板材は、鋳造して得られるAl合金鋳塊を均質化処理した後、熱間圧延を行い、次いで冷間圧延を、必要に応じて中間焼鈍を介して実施し、更にその後、必要に応じて最終焼鈍を行うことにより、製造されている。また、Al押出材は、鋳造して得られるAl合金鋳塊を均質化処理した後、所定の押出加工を実施し、更に必要に応じて溶体化処理、時効処理、焼鈍、引き抜き等を実施した後、所望の調質を実施して、製造されている。そして、このような製造工程における熱履歴によって、Al合金の板材や押出材には、鋳造時に生じた晶出物の他に、その合金成分が微細な第二相粒子として析出したり、更に第二相粒子のサイズ変化が惹起されたりして、材料組織が変化するようになるところから、その最終製品の材質を制御することが重要とされている。例えば、缶材(板材)の場合には、耳率異常が惹起されたり、また押出材の場合には、最終製品のグレイングロス等が惹起されたりする場合があるのである。また、それらの製造工程における途中工程の材質の差も、最終製品の差に繋がることとなるところから、途中工程における材質も制御することが必要となっている。そして、そのような製造の全工程に亘る材質制御を考慮すると、Al合金中において析出する合金成分の固溶状態や析出状態を知ることは、重要なことなのである。
ところで、Al合金中において析出する第二相粒子に関して、JIS規定の1000系合金では、均質化処理で生じるAl−Fe系やAl−Fe−Si系化合物からなる粒子の分散状態が、後工程での結晶粒サイズに影響を及ぼすことが知られており、更に、それら化合物の分散状態と母相中に残存する合金成分たる固溶元素は、アルマイト処理を代表とする各種表面処理後の品質にも、影響を及ぼすこととなる。同様に、JIS規定の3000系合金におけるAl−Mn系やAl−Mn−Si系化合物粒子の分散状態も、材料特性に影響をもたらすことが知られている。一方、JIS規定の2000系合金や7000系合金等において、合金成分として添加されるMn、Cr及びZrは、均質化処理中において、それぞれ、微細なAl6Mn 、Al7Cr 、Al3Zr 等の化合物を形成し、再結晶を抑制する働きがあるものである。また、それらの合金元素は、意図的に再結晶速度を制御する場合に用いられるものであるが、その再結晶を抑制する効果は、上記の析出する各化合物の分散状態によっても、変化することとなる。
このように、製造されるAl合金材の材質予測時に考慮すべき第二相粒子としては、例えば、JIS規定の1000系Al合金においては、均質化処理で生じるAl−Fe系やAl−Fe−Si系粒子が挙げられ、またJIS規定の3000系Al合金では、同じく均質化処理で生じるAl−Mn系やAl−Mn−Si系粒子が、挙げられるのである。また、JIS規定の2000系や7000系のAl合金では、その均質化処理で生じるAl−Mn系、Al−Cr系、Al−Zr系化合物を考慮する必要があり、更にJIS規定の2000系、6000系及び7000系のAl合金では、400℃以下の低温熱処理で生じるAl−Cu−Mg系、Al−Cu系、Mg−Si系、Zn−Mg系化合物を考慮する必要があるのである。
そして、従来では、上述の如き第二相粒子の分散状態は、主として実験によって、検討されているのであるが、近年における、より高品質なAl合金材の実現の要請に応えるには、そのような従来の手法では、第二相粒子の分散状態を全工程に亘って高精度に制御することは、極めて困難なこととなっているのである。また、製品の1ロット中のばらつきも、問題とされ、例えば板材の製造工程では、均質化処理工程において、鋳塊の表層と内部とで、昇温速度に差が生じるようになるのであるが、これにより、3000系Al合金では、後工程の圧延での耳率ばらつきの一因ともなっているのであり、また押出材の製造工程では、表層でのグレイングロスが惹起されることとなるのである。これらの問題は、何れも、再結晶状態を制御する働きがある第二相粒子、例えばAl6Mn 、AlMnSi、Al2Zr 、Al7Cr 等の化合物の析出が、均質化処理において適切に制御され得ていないことが、その一因となっているのである。その他にも、例えば、最終焼鈍による軟化処理に際して、材料内の熱履歴のばらつきにより、軟化の程度に差が生じ、以て最終製品に、強度差が惹起されることもある。なお、熱処理後の組織を制御しようとしても、工業的生産上のばらつき(昇温速度等の熱履歴の変動)は避けられず、またそれを実験で検証することも、現実的ではないのである。
このため、特開2002−224721号公報においては、製品のAl合金板を用いることなく、その材質を予測することが出来、また種々の材質のAl合金板を安定的に製造することが出来る、最適な製造条件を速やかに見出すことが出来るAl合金板の材質予測方法が、提案されている。即ち、そこでは、鋳造組織計算、均熱組織計算、熱延組織計算及び巻き取り組織計算を順次実施して、それらの計算によって算出された晶出物量、全析出物量、結晶粒径、合金元素の固溶量及び残留応力に基づいて、製品Al合金板の材質予測を行う手法や、冷間圧延(+冷延後焼鈍)を行う場合にあっては、更に、冷延組織計算(+冷延後焼鈍組織計算)を実施して、それらの計算によって算出された値に基づいて、Al合金板の材質予測を行う手法が採用されている。しかしながら、かかる材質予測方法にあっては、第二相粒子である析出物の体積率のみを用いて、その析出量増分を計算しているものであるところから、簡易的な予測となり、その予測精度が悪く、また様々な熱履歴に対応することも困難であって、実用上充分なものではなかったのである。
特開2002−224721号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、熱処理後のAl合金の材料組織を、より精度良く予測し得る方法を提供することにあり、また他の課題とするところは、Al合金に対して実際に熱処理を実施することなく、その熱処理後の組織を、第二相粒子のサイズや数密度を含めて予測し、後工程における再結晶現象や強度を有利に制御し得るようにした、Al合金の材料組織の予測方法を提供することにある。
そして、本発明にあっては、上述せる如き課題を解決するために、熱処理前のAl合金の材料組織の状態と熱処理の条件とから、熱処理後のAl合金の材料組織を予測する方法にして、かかる熱処理によって析出する第二相粒子のサイズと数密度を算出する一方、Al合金中に存在する第二相粒子について、そのサイズ毎に、該熱処理によるサイズの変化を算出して、該第二相粒子のサイズと数密度にて表される粒子サイズ分布関数を求めると共に、該熱処理の進行に従って、前記析出する第二相粒子や前記サイズ変化する第二相粒子についての算出を繰り返し実施し、そしてその得られた算出値に基づいて、前記粒子サイズ分布関数を繰り返し更新して、該熱処理終了時点における粒子サイズ分布関数を求めることにより、前記Al合金における熱処理後の第二相粒子の分散状態を予測するようにしたことを特徴とするAl合金の材料組織予測方法を、その要旨とするものである。
なお、かかる本発明に従う予測方法の好ましい具体的態様の一つによれば、熱処理前のAl合金の材料組織の状態と熱処理の条件とから、熱処理後のAl合金の材料組織を予測する方法にして、(a1)Al合金中において第二相粒子として析出する合金成分の該熱処理前の固溶量と、該Al合金中において既に存在する第二相粒子の分散状態を示す初期の粒子サイズ分布関数と、該熱処理の条件とを読み込む第一の工程と、(a2)かかる読み込まれた析出合金成分の固溶量と熱処理条件とから、演算の開始される熱処理温度における核生成速度を算出し、該演算開始熱処理温度に対応する熱処理時点からの微少時間経過の間に新たに析出する第二相粒子のサイズと数密度とを算出する第二の工程と、(a3)前記演算開始時点での析出合金成分の固溶量と熱処理温度とから、Al合金中に存在する第二相粒子のサイズ変化速度を算出し、前記微少時間経過の間に惹起される第二相粒子のサイズ変化を、該第二相粒子のサイズ毎に算出する第三の工程と、(a4)上記第二の工程において算出された、新たに析出する第二相粒子のサイズと数密度及び上記第三の工程において算出された、第二相粒子のサイズ毎のサイズ変化を、前記初期の粒子サイズ分布関数に加えて、かかる初期の粒子サイズ分布関数を更新し、中間の粒子サイズ分布関数を得ることからなる第四の工程と、(a5)前記微少時間経過時点での熱処理温度における前記析出合金成分の固溶量を算出し、その算出された固溶量を、前記第二の工程における析出合金成分の読込み固溶量と置き換える第五の工程と、(a6)前記微少時間の経過毎に、前記第二乃至第五の工程を繰り返して、前記中間の粒子サイズ分布関数の更新を行い、前記熱処理の終了時点まで継続することにより、最終の粒子サイズ分布関数を得る第六の工程とを、含むことを特徴とするAl合金の材料組織予測方法が、有利に採用されるのである。
また、本発明に従う予測方法の別の好ましい具体的態様の一つによれば、 熱処理前のAl合金の材料組織の状態と熱処理の条件とから、熱処理後のAl合金の材料組織を予測する方法にして、(b1)Al合金中において第二相粒子として析出する合金成分の熱処理前の固溶量と熱処理条件とを読み込む第一の工程と、(b2)かかる読み込まれた析出合金成分の固溶量と熱処理条件とから、演算の開始される熱処理温度における核生成速度を算出し、該演算開始熱処理温度に対応する熱処理時点からの微少時間経過の間に新たに析出する第二相粒子のサイズと数密度とを算出して、それら析出粒子のサイズと数密度からなる初期の粒子サイズ分布関数を求める第二の工程と、(b3)前記微少時間経過時点での熱処理温度における核生成速度を算出し、該微少時間経過後の次の微少時間経過の間に新たに析出する第二相粒子のサイズと数密度を算出する第三の工程と、(b4)前記微少時間経過時点での析出合金成分の固溶量と熱処理温度とから、Al合金中に存在する第二相粒子のサイズ変化速度を算出し、前記次の微少時間経過の間に惹起される第二相粒子のサイズ変化を、該第二相粒子のサイズ毎に算出する第四の工程と、(b5)上記第三の工程において算出された、新たに析出する第二相粒子のサイズと数密度及び上記第四の工程において算出された、第二相粒子のサイズ毎のサイズ変化を、前記初期の粒子サイズ分布関数に加えて、かかる初期の粒子サイズ分布関数を更新し、中間の粒子サイズ分布関数を得ることからなる第五の工程と、(b6)前記微少時間の経過毎に、前記第三乃至第五の工程を繰り返して、前記中間の粒子サイズ分布関数の更新を行い、前記熱処理の終了時点まで継続することにより、最終の粒子サイズ分布関数を得る第六の工程とを、含むことを特徴とするAl合金の材料組織予測方法も、有利に採用されることとなる。
そして、本発明にあっては、前記熱処理として、Al合金鋳塊の均質化処理が、好適にその対象とされるのである。
このように、本発明に従うAl合金の材料組織の予測方法にあっては、熱処理によって析出し、またサイズ変化する第二相粒子のサイズや量(数密度)が、後工程における再結晶現象や強度を制御する上において、非常に重要な情報であって、特に、熱処理後組織については、かかる第二相粒子のサイズや数を含めて予測する必要があるとの知見に基づいて、そのような第二相粒子のサイズと数密度にて規定される粒子サイズ分布関数を求め、更にこの粒子サイズ分布関数を熱処理の進行に従って繰り返し更新して、かかる熱処理の終了時点における粒子サイズ分布関数を求めることにより、目的とするAl合金における熱処理後の第二相粒子の分散状態を予測するようにしたものであるところから、実際に熱処理を施すことなく、Al合金の熱処理後の材質(組織)を精度良く予測することが出来ることとなったのである。
そして、このような本発明に係る予測方法に従って、例えば、熱処理が均質化処理である場合の処理後組織の計算によって、第二相粒子である析出物のサイズと量から、再結晶抑止力を予測することが出来、それは、後工程である熱間圧延や押出加工の制御の指針になる情報とすることが出来るものであり、また熱処理が溶体化処理であるときの処理後組織の計算によって、かかる溶体化処理により目的とする粒子の再固溶の達成の可否が予測され、また再固溶を達成するための最適な溶体化処理条件の選定が可能となるのであり、更に熱処理が時効処理である場合においては、その処理後組織の計算によって、強度に寄与する微細な第二相粒子の分散状態が予測され、以て処理後の材料強度を見積もることが可能となるのである。
粒子サイズ分布関数の模式図を示すものである。 本発明の実施の形態の一例を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態の他の一例を示すフローチャートである。 実施例において得られたMn固溶量に関する実測値と計算値との関係を示すグラフである。 実施例において得られた平均粒子直径に関する実測値と計算値との関係を示すグラフである。
ところで、本発明に従うAl合金の材料組織の予測方法において、Al合金としては、材質予測時に考慮されるべき第二相粒子を析出する合金成分を含有するAl合金の全てが対象とされ、例えば、前述の如く、JIS規定の1000系Al合金では、Al−Fe系やAl−Fe−Si系の粒子が計算対象とされ、またJIS規定の3000系Al合金では、Al−Mn系やAl−Mn−Si系の粒子が計算対象とされることとなる。更に、JIS規定の2000系や7000系のAl合金では、Al−Mn系、Al−Cr系、Al−Zr系粒子が計算対象とされ、またJIS規定の2000系、6000系及び7000系のAl合金の低温熱処理においては、Al−Cu−Mg系、Al−Cu系、Mg−Si系、Zn−Mg系の粒子が計算対象とされるのである。要するに、本発明に従う熱処理計算の対象とされる、第二相粒子を与える合金成分(元素)は、材質特性に影響する元素が選択され、特に複数の合金元素から構成される場合においては、粒子形成に際して、粒子を構成するために必要な量の原子が拡散により集積する速度が最も遅い元素が、計算対象とされることとなる。
また、本発明が適用される熱処理にあっても、処理後の組織乃至は材質の制御が必要とされる熱処理の全てが、その対象とされるものであり、特に、鋳造して得られたAl合金の鋳塊に対して実施される均質化処理からなる熱処理にて形成される組織は、その後の工程である圧延、押出、鍛造等を組み合わせた製造工程全体を設計するための情報となるところから、本発明においては、そのような均質化処理に対して有利に適用されるところであるが、また溶体化処理や時効処理等の、Al合金材料の製造工程において採用される各種の熱処理に対しても、同様に、本発明は適用可能である。
そして、本発明に従って熱処理後のAl合金の材料組織を予測するに際しては、熱処理前のAl合金の材料組織の状態と、熱処理の条件とが、用いられることとなる。そこで、熱処理前のAl合金の材料組織の状態とは、Al合金中において第二相粒子として析出する合金成分の熱処理前の固溶量と、Al合金中において第二相粒子が既に存在する場合においては、その既に存在する第二相粒子の分散状態(サイズ及び数密度)を示す初期粒子サイズ分布関数が含まれ、また熱処理条件としては、昇温速度、保持温度及び保持時間、冷却速度が考慮されることとなる。なお、Al合金中において既に存在する第二相粒子としては、一般に、1μm以下のサイズのものであって、鋳造時にAl合金溶湯の凝固によって生じた、熱処理前のAl合金中に存在する晶出物は、そのサイズが遙かに大きなものであるところから、そのような第二相粒子には含まれず、本発明に従う計算では、その対象外とされることとなる。
ここにおいて、Al合金の材質予測のための熱処理計算において、本発明の特徴的な点は、Al合金材料中に存在する第二相粒子の存在状態を、そのサイズと数密度(量)からなる粒子サイズ分布関数として表すことにあり、その熱処理計算は、熱処理の経過時間に伴う粒子サイズ分布関数の変化を計算し、かかる粒子サイズ分布関数を逐次更新するようにすることにある。
なお、図1には、上記粒子サイズ分布関数の模式図が示されている。そこにおいて、粒子サイズ分布関数は、粒子半径の範囲と、その粒子半径の範囲に含まれる粒子の数の情報からなる、j個のデータセットとして、認識されるものである。そして、i番目の粒子半
径の範囲は、ri 以上、かつ(ri +Δr)より小さい範囲として表され、i番目の第二
相粒子の数の情報は、i番目の粒子半径の範囲に含まれる粒子の数密度Ni を、粒子サイズ範囲の長さΔrで除した数Fi として、表されることとなる。即ち、Ni=Fi×Δrとなるのである。なお、ここで、Δrは、目的とする熱処理計算において有効な値を得ることが出来る範囲内において、適宜に選定されるものであるが、一般に、0.1nm〜10nmの範囲内において選定されることとなる。
ところで、上記した熱処理計算に際しては、先ず、熱処理されるべきAl合金の初期組織、換言すれば熱処理前のAl合金の材料組織の状態が、かかる計算に用いられることとなるのである。そして、そのような初期組織には、Al合金中において第二相粒子として析出する合金成分(以下、析出合金成分と略称する)の熱処理前の固溶量が、計算の根拠として採用され、また熱処理前のAl合金中に、既に、第二相粒子が存在する場合においては、そのような第二相粒子の分散状態が、初期粒子サイズ分布関数として表されることとなる。なお、析出合金成分の熱処理前の固溶量(初期固溶量)C0 は、Al合金を得るために用いられた析出合金成分の添加量から、鋳塊の凝固によって析出した晶出物中の析出合金成分量を減算し、更に第二相粒子が存在する場合には、そのような第二相粒子を構成する析出合金成分量を減算して、得ることが出来る。また、熱処理前のAl合金中に既に1μm以下の微細な第二相粒子が存在している場合には、そのような第二相粒子の分散状態が、そのサイズと数密度からなる初期の粒子サイズ分布関数として、初期組織を規定するために用いられるのである。なお、それら析出合金成分の熱処理前の固溶量や初期粒子サイズ分布関数は、公知の手法に従って、実験によって求めることが可能である。
一方、熱処理条件としては、Al合金を熱処理するために採用される昇温速度と、それによって到達せしめられる到達温度である保持温度と、その温度における保持時間と、かかる保持温度から、熱処理を終了させるべく冷却せしめられる冷却速度とが、用いられることとなる。
そして、本発明に従う熱処理計算においては、上記した熱処理条件に基づいて、微少時間Δt、例えば0.001秒〜10秒程度の時間の経過毎に、それに対応した温度Tが選定され、またそのような微少時間Δtの経過毎に、当該温度Tにおける析出合金成分の固溶量Cが計算されるのである。具体的には、微少時間Δtがn回経過した後の析出合金成分の固溶量Cn は、下記式(1)により計算されることとなるのである。なお、式(1)中、Cn-1 は、(n−1)回の微少時間Δt経過後の析出合金成分の固溶量であり、Cβは、粒子中の溶質である析出合金成分の平衡濃度であり、fp は、第二相粒子の体積率である。
Figure 2017020098
また、かかる式(1)にて求められる析出合金成分の固溶量Cの熱処理経過時間tにおける固溶量を、Cとして表して、かかる熱処理経過時間tにおける核生成速度Jを、公知の古典的核生成理論に基づいて計算し、そしてこの核生成速度Jが、熱処理の微少時間Δtの間に析出する第二相粒子のサイズと数密度の算出に供されることとなるのである。なお、かかる計算には、例えば、榎本正人著「金属の相変態」第47〜56頁(内田老鶴圃、2000年10月25日発行)を参照することが出来る。
従って、熱処理の微少時間Δtの間に新たに形成される第二相粒子の数Δnは、上記の核生成速度Jを用いて、Δn=J×Δtとして求められ得、また形成される第二相粒子のサイズは、rc として求められるのである。そして、その得られたΔnを用い、図1において、ri <rc <(ri +Δr)を満たすi番目の第二相粒子の数の情報Fi が、Fi +Δn×Δrに変更されることとなる。換言すれば、サイズrc を有するΔn個の第二相粒子が、粒子サイズ分布関数に追加されるのである。
一方、Al合金中に既に存在する第二相粒子のサイズ変化Vは、析出合金成分の固溶量Cと粒子半径rの関数として、下記式(2)及び式(3)により計算されることとなる。なお、それらの式中、Dは拡散係数であり、Cr は粒子界面での析出合金成分の濃度を表している。また、Vβ:析出相のモル体積、γ:粒子/母相界面のエネルギー、R:気体
定数、Cα:母相中の析出合金成分平衡濃度である。
Figure 2017020098
Figure 2017020098
そうすると、熱処理の微少時間Δtの間に惹起される粒子サイズの変化ΔRは、ΔR=VΔtとして求められ得、そしてこれを、第二相粒子の全ての粒子サイズに適用することで、即ち粒子サイズ毎に求めることで、粒子サイズ分布関数の変化、即ち第二相粒子の分散状態の変化が求められ得るのである。
その後、上記の計算に用いられた熱処理経過時間tに、更に微少時間Δtを加え、かかる熱処理経過時間tを更新して、その更新時間が熱処理の完了時間に達していない場合においては、再度、上記の析出する第二相粒子やサイズ変化する第二相粒子についての計算を繰り返し実施し、そしてその得られた算出値に基づいて、粒子サイズ分布関数が繰り返し更新されることとなる。
なお、このような析出する第二相粒子やサイズ変化する第二相粒子についての計算の途中経過として、必要に応じて、Al合金中の析出合金成分の固溶量(中間)や粒子サイズ分布関数(中間)が記録される。この途中経過としての中間粒子サイズ分布関数からは、二次情報として、粒子の平均サイズ、相数密度、粒子間距離等が求められ得るのである。
また、上述の如く、熱処理経過時間tに微少時間Δtを加えて更新された時間が、熱処理の完了時間(最終区間)に達したときには、上記した途中経過の記録と同様に、Al合金中の析出合金成分の固溶量や粒子サイズ分布関数が、最終の結果として記録され、目的とするAl合金における熱処理後の第二相粒子の分散状態が予測されるのである。なお、そのような熱処理後のAl合金の組織は、圧延、押出、鍛造、熱処理等を組み合わせた製造工程全体の設計をするための情報となるものであり、それら工程の材質予測計算を行う際には、他の工程の材質予測計算と組み合わせることで、全工程に亘る材質予測計算を行うことも可能となるものである。
ところで、図2には、上記のような本発明に従うAl合金の材料組織予測方法において、熱処理前のAl合金の材料組織の状態に関し、既に、Al合金中に第二相粒子が存在する場合における具体的な演算手法の一例に係るフローチャートが、示されている。そこにおいて、ステップS1では、熱処理前のAl合金の材料組織の初期組織として、別途実験によって求められた析出合金成分の初期固溶量C0 と初期粒子サイズ分布関数が読み込まれ、またステップS2においては、Al合金に対して実施される熱処理の条件(昇温速度、到達温度、保持時間、冷却速度)が読み込まれ、更にそのような熱処理において、本発明に従う演算が開始される熱処理温度が、読み込まれた熱処理条件に従って、ステップS31において設定される。
そして、かかる読み込まれた析出合金成分の固溶量C0 と熱処理条件とから、ステップS5においては、前記ステップS31において設定された演算の開始される熱処理温度における核生成速度Jを算出し、この演算開始熱処理温度に対応する熱処理時点からの微少時間Δt経過の間に新たに析出する第二相粒子のサイズと数密度とが算出される。
また、ステップS6においては、Al合金中に存在する第二相粒子のサイズ変化速度Vが、演算開始時点での析出合金成分の固溶量C0 と熱処理温度Tとから、前記した式(2)及び式(3)に基づいて算出され、かかる微少時間Δt経過の間に惹起される第二相粒子のサイズ変化が、第二相粒子のサイズ毎に算出されることとなる。
次いで、かかる算出された新たに析出する第二相粒子のサイズと数密度及び第二相粒子のサイズ毎のサイズ変化が、ステップS7において、前記した初期の粒子サイズ分布関数に加えられて、その初期粒子サイズ分布関数を更新することにより、中間の粒子サイズ分布関数が求められるのである。
なお、上記の演算により求められた中間の粒子サイズ分布関数は、必要に応じて、析出合金成分の固溶量と共に、途中経過として記録される。なお、この中間の粒子サイズ分布関数からは、二次情報として、粒子の平均サイズ、総数密度、粒子間距離等が、適宜に求められるのである(ステップS8)。
その後、上記の如くして初期粒子サイズ分布関数から中間の粒子サイズ分布関数を求めることによって、粒子サイズ分布関数が更新された後、演算開始時点での時間に微少時間Δtを加えた熱処理経過時間tに、微少時間Δtを更に加えて、熱処理経過時間tを更新し(ステップS9)、そしてその更新された熱処理経過時間(t+Δt)が、ステップS10において、熱処理の最終区間であるか、どうかの判断が為され、その結果、最終区間でない場合においては、ステップS3において、かかる更新された熱処理経過時間(t+Δt)に対応する熱処理温度に更新し、またその更新された熱処理温度における析出合金成分の固溶量が、前記式(1)を用いて、ステップS4において算出された後、ステップS5〜ステップS10が前述の如くして繰り返されて、中間の粒子サイズ分布関数の更新が行われる。そして、このように更新される熱処理経過時間が最終区間でない限りにおいて、再び、上記したステップS3〜ステップS10が繰り返されることとなる。
一方、上記の更新された熱処理経過時間(t+Δt)が、ステップS10において、熱処理の最終区間であると判断された場合にあっては、ステップS3に戻ることなく、ステップS11に進み、その最後に更新された粒子サイズ分布関数が最終の粒子サイズ分布関数として記録され(最終結果の記録)、そしてそれに基づいて、Al合金の熱処理後の材料組織が予測されるのである。
また、熱処理前のAl合金中に第二相粒子が存在しない場合における、本発明に従うAl合金の材料組織予測方法の具体的な演算手法の一例が、図3に、フローチャートの形態において示されている。そこにおいて、ステップS1における初期組織の読み込みは、図2に示される場合とは異なり、熱処理前のAl合金中に固溶している析出合金成分の初期固溶量C0 のみが読み込まれ、またステップS2においては、図2の場合と同様に、Al合金に対して実施される熱処理の条件が読み込まれ、更にそのような熱処理において、本発明に従う演算が開始される熱処理温度が、かかる読み込まれた熱処理条件に従って、図2の場合と同様に、ステップS31において設定されることとなる。
次いで、かかる読み込まれた析出合金成分の固溶量C0 と熱処理条件とから、ステップS51においては、図2の場合と同様に、演算の開始される熱処理温度における核生成速度Jを算出し、この演算開始熱処理温度に対応する熱処理時点からの微少時間Δt経過の間に新たに析出する第二相粒子のサイズと数密度とが算出されて、初期粒子サイズ分布関数が求められる。
そして、かかる求められた初期粒子サイズ分布関数は、ステップS12において記録された後、ステップS91において、上記した演算開始熱処理温度に対応する熱処理時点(初期熱処理経過時間)に微少時間Δtを加えて、そのような初期熱処理経過時間の更新を行い、その後、図2の場合と同様にして、ステップS3〜ステップS10の工程が繰り返されることとなる。即ち、初期熱処理経過時間の経過によって、Al合金中には初期第二相粒子が存在し、それは、初期粒子サイズ分布関数にて表されるものであるところから、初期熱処理経過時間が更新された後のAl合金は、図2の場合と同様に、ステップS3〜ステップS10の工程に従って、前記初期粒子サイズ分布関数から中間の粒子サイズ分布関数が求められて、粒子サイズ分布関数の更新が行われ(ステップS7)、そして必要に応じて途中経過の記録(ステップS8)が行われた後、熱処理経過時間の更新(ステップS9)を行い、そしてその更新された熱処理経過時間が、熱処理の最終区間に相当するか、どうかの判断が為された後、そうでない場合には、ステップS3〜ステップS10が繰り返し実行される一方、かかる更新された熱処理経過時間が熱処理の最終区間に相当する場合にあっては、ステップS11において最終結果の記録を行い、最終の粒子サイズ分布関数が求められて、目的とするAl合金の熱処理後の材料組織が予測されることとなるのである。
このように、本発明手法によれば、Al合金に対して実際に熱処理を施すことなく、計算によって、その熱処理後におけるAl合金中の析出合金成分の固溶量と共に、粒子サイズ分布関数が容易に得られることとなるのであり、そしてその粒子サイズ分布関数からは、二次情報として、粒子の平均サイズ、相数密度、粒子間距離等の熱処理後の組織を有利に予測し得ることとなったのである。
そして、そのような本発明に従う熱処理後のAl合金の材料組織の予測により、かかるAl合金の熱処理後の特性が有利に把握され得ることとなったのであり、例えば、熱処理が均質化処理である場合において、析出物のサイズと量から、後工程の熱間圧延や押出の制御の指針となる再結晶抑止力を有利に予測することが出来、また熱処理が溶体化処理である場合においては、目的とする粒子の再固溶の実現の有無が予測され得ると共に、再固溶を達成するための最適な溶体化処理条件の選定が可能となるのであり、更に、熱処理が時効処理である場合において、材料強度に寄与する微細な第二相粒子の分散状態が容易に予測され得ることによって、時効処理後の材料強度の予測が容易に為され得ることとなるのである。
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
先ず、厚さ:490mm、幅:1600mmの、Mn含有量の異なる各種のJIS A3000系アルミニウム合金鋳塊を、通常のDC鋳造法により製造し、その得られた鋳塊に対して、熱処理である均質化処理を、各種の温度下において実施した。なお、この均質化処理時の昇温速度は、40℃/hとし、冷却速度は、30℃/hとすると共に、最高到達温度(保持温度)とその温度下での保持時間を、下記表1に示される如く、それぞれ変化させることにより、均質化処理条件を変化させた。次いで、かかる均質化処理を施して得られた各鋳塊について、その材料組織が安定する厚さ1/4部分から小片を切り出し、析出合金成分であるMnについて、その固溶Mn量と、生成した第二相粒子(Al−Mn−Si粒子)の平均粒子半径を、下記の測定方法に従って実測した。
−固溶Mn量の測定方法−
上記のAl合金鋳塊から切り出された小片サンプルを、170℃のフェノールに浸漬させることにより、Al合金中のマトリックス成分を溶解せしめた後、ベンジルアルコールを添加して、溶液を液体状態に保ち、次いで0.1μmの孔径を有するフィルターを用いて、ろ過を行う。そして、そのフィルター上に捕捉された析出物を、塩酸・フッ酸混合液にて溶解せしめ、その得られた溶解液を適宜希釈した液を用いて、ICP分析を行うことにより、析出Mn量を求めた。また、固溶Mn量は、Al合金鋳塊中のMn含有量から、上記析出Mn量を差し引くことにより、求めた。
−平均粒子半径の測定方法−
上記Al合金鋳塊から切り出された小片サンプルを、機械研磨した後、更に硝酸−メタノール溶液にて電解研磨を施し、得られた薄膜試料についてTEM観察を行い、その得られた2万倍で撮影した写真の10枚を用いて、合計300μm2 の視野面積にて第二相粒子(化合物)を観察し、その観察写真の画像解析により、平均粒子径を求める。
一方、本発明に従う材料組織予測方法に従って、上記の各種条件下において実施される均質化処理によって惹起される、Al合金中における第二相粒子の形成状態を演算した。なお、ここでは、第二相粒子として、Al−Mn−Si相(粒子)を対象とした。また、Al合金中の初期の固溶Mn量としては、鋳塊の実測値を用い、第二相粒子が存在しない状態(初期数密度=0)を初期状態とした。演算の条件は、Δr=1nm、Δt=0.1sとして、各均質化処理条件と同様な熱履歴に従って、加熱開始時点から、析出計算を実施した。なお、Al合金鋳塊の鋳造時に生成する晶出物は、1μmよりも大きいものであるために、均質化処理中の成長及び縮小は無視し得るほどに小さなものであるところから、Al鋳塊に既に存在するMnを含有する晶出物は計算から除外し、均質化処理中に惹起される固溶析出反応のみを計算した。但し、Mnは、全て固溶している訳ではない為に、その固溶量は添加量ではなく、実測値が用いられた。
下記の表1には、上記の均質化処理が施されるAl合金鋳塊中のMn固溶量(初期固溶量)と、均質化処理時の保持温度と保持時間が示されていると共に、均質化処理後のMnの固溶析出状態について、実測又は計算によって求められたMn固溶量と析出物(第二相粒子)の平均直径の結果が示されている。また、それら均質化処理後のMn固溶量及び析出物の平均直径についての実測値と計算値との関係が、図4及び図5に示されている。
Figure 2017020098
かかる表1における実測値と計算値との比較や、図4及び図5から明らかな如く、本発明に従う材料組織の予測方法に従って算出されたMn固溶量や析出物の平均直径の計算値は、何れも、実際に均質化処理されたAl合金鋳塊の材料組織(Mn固溶量及び析出物の平均直径)と良好に一致しており、本発明に従う材料組織の予測方法によって、均質化処理(熱処理)を施すことなく、そのような処理後のAl合金鋳塊の材料組織を、より正しく評価し得ることが認められた。

Claims (4)

  1. 熱処理前のアルミニウム合金の材料組織の状態と熱処理の条件とから、熱処理後のアルミニウム合金の材料組織を予測する方法にして、
    かかる熱処理によって析出する第二相粒子のサイズと数密度を算出する一方、アルミニウム合金中に存在する第二相粒子について、そのサイズ毎に、該熱処理によるサイズの変化を算出して、該第二相粒子のサイズと数密度にて表される粒子サイズ分布関数を求めると共に、
    該熱処理の進行に従って、前記析出する第二相粒子や前記サイズ変化する第二相粒子についての算出を繰り返し実施し、そしてその得られた算出値に基づいて、前記粒子サイズ分布関数を繰り返し更新して、該熱処理終了時点における粒子サイズ分布関数を求めることにより、前記アルミニウム合金における熱処理後の第二相粒子の分散状態を予測するようにしたことを特徴とするアルミニウム合金の材料組織予測方法。
  2. 熱処理前のアルミニウム合金の材料組織の状態と熱処理の条件とから、熱処理後のアルミニウム合金の材料組織を予測する方法にして、
    アルミニウム合金中において第二相粒子として析出する合金成分の該熱処理前の固溶量と、該アルミニウム合金中において既に存在する第二相粒子の分散状態を示す初期の粒子サイズ分布関数と、該熱処理の条件とを読み込む第一の工程と、
    かかる読み込まれた析出合金成分の固溶量と熱処理条件とから、演算の開始される熱処理温度における核生成速度を算出し、該演算開始熱処理温度に対応する熱処理時点からの微少時間経過の間に新たに析出する第二相粒子のサイズと数密度とを算出する第二の工程と、
    前記演算開始時点での析出合金成分の固溶量と熱処理温度とから、アルミニウム合金中に存在する第二相粒子のサイズ変化速度を算出し、前記微少時間経過の間に惹起される第二相粒子のサイズ変化を、該第二相粒子のサイズ毎に算出する第三の工程と、
    上記第二の工程において算出された、新たに析出する第二相粒子のサイズと数密度及び上記第三の工程において算出された、第二相粒子のサイズ毎のサイズ変化を、前記初期の粒子サイズ分布関数に加えて、かかる初期の粒子サイズ分布関数を更新し、中間の粒子サイズ分布関数を得ることからなる第四の工程と、
    前記微少時間経過時点での熱処理温度における前記析出合金成分の固溶量を算出し、その算出された固溶量を、前記第二の工程における析出合金成分の読込み固溶量と置き換える第五の工程と、
    前記微少時間の経過毎に、前記第二乃至第五の工程を繰り返して、前記中間の粒子サイズ分布関数の更新を行い、前記熱処理の終了時点まで継続することにより、最終の粒子サイズ分布関数を得る第六の工程とを、
    含むことを特徴とするアルミニウム合金の材料組織予測方法。
  3. 熱処理前のアルミニウム合金の材料組織の状態と熱処理の条件とから、熱処理後のアルミニウム合金の材料組織を予測する方法にして、
    アルミニウム合金中において第二相粒子として析出する合金成分の熱処理前の固溶量と熱処理条件とを読み込む第一の工程と、
    かかる読み込まれた析出合金成分の固溶量と熱処理条件とから、演算の開始される熱処理温度における核生成速度を算出し、該演算開始熱処理温度に対応する熱処理時点からの微少時間経過の間に新たに析出する第二相粒子のサイズと数密度とを算出して、それら析出粒子のサイズと数密度からなる初期の粒子サイズ分布関数を求める第二の工程と、
    前記微少時間経過時点での熱処理温度における核生成速度を算出し、該微少時間経過後の次の微少時間経過の間に新たに析出する第二相粒子のサイズと数密度を算出する第三の工程と、
    前記微少時間経過時点での析出合金成分の固溶量と熱処理温度とから、アルミニウム合金中に存在する第二相粒子のサイズ変化速度を算出し、前記次の微少時間経過の間に惹起される第二相粒子のサイズ変化を、該第二相粒子のサイズ毎に算出する第四の工程と、
    上記第三の工程において算出された、新たに析出する第二相粒子のサイズと数密度及び上記第四の工程において算出された、第二相粒子のサイズ毎のサイズ変化を、前記初期の粒子サイズ分布関数に加えて、かかる初期の粒子サイズ分布関数を更新し、中間の粒子サイズ分布関数を得ることからなる第五の工程と、
    前記微少時間の経過毎に、前記第三乃至第五の工程を繰り返して、前記中間の粒子サイズ分布関数の更新を行い、前記熱処理の終了時点まで継続することにより、最終の粒子サイズ分布関数を得る第六の工程とを、
    含むことを特徴とするアルミニウム合金の材料組織予測方法。
  4. 前記熱処理が、アルミニウム合金鋳塊の均質化処理である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のアルミニウム合金の材料組織予測方法。
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