JP6977820B2 - 固定子、電動機および密閉型圧縮機 - Google Patents
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Description
密閉型圧縮機は、圧縮動作によって生じる高圧高温のガスを扱うので、全ての機構が金属の密閉容器に収納されている。その電動機構部も、同様に、密閉容器の内周面に固定子の外周面を嵌合し、密閉容器内に収納される。したがって、拘束部と密閉容器とが、接近して配置される。電動機構部は、小型ながら高トルクを得るため、定格電圧も高く、高電圧が印加される。その上、巻線同士を接続するため、多くの渡り線を使用する。この結果、狭いスペースの中で、巻線の端末部の切断面および渡り線の端末部の切断面と密閉容器の内周面との絶縁距離を確保することに課題があった。
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における密閉型の回転圧縮機を示す縦方向すなわちクランクシャフトの半径方向から見た断面図である。
図1に示すように、密閉型圧縮機100には、圧縮機構部2と、電動機構部3と、が備えられている。圧縮機構部2と電動機構部3とは、その外周を囲む密閉容器1に収納されている。そして、圧縮機構部2と電動機構部3とは、密閉容器1の内周面に固定されている。密閉容器1は、その内部が圧縮された冷媒ガスにて満たされるので、機密性、耐熱性、強度が要求される金属製の容器である。密閉容器1は、上部容器11と下部容器12とで、構成されている。電動機構部2と圧縮機構部3とは、クランクシャフト4にて連結され、圧縮機構部2は電動機構部3によって駆動される。
シリンダ22には、ほぼ円筒形で、軸方向の両端が開口された内部空間が設けられている。内部空間の軸方向両端の開口部は、それぞれ、主軸受23および副軸受24にて閉塞されている。シリンダ22の内部空間には、クランクシャフト4の偏芯軸部43とローリングピストン21とが収納されている。シリンダ22には、その内部空間の半径方向に溝が設けられており、溝内を半径方向に往復運動する図示しないベーンが備えられている。ベーンは、その一端がローリングピストン21の外周面に当接され、ローリングピストン21の外径側の外周面とシリンダ22の内部空間の内周面とによって形成される空間を2つに分けている。すなわち、冷媒ガスを圧縮する圧縮室が形成される。
同様に、副軸受24には、クランクシャフト4の副軸部42を挿通する軸受孔が設けられている。副軸受24は、その軸受孔に挿通された副軸部42を支持することで、クランクシャフト4を回転自在に支持する。
吐出マフラ25の上部には、開口部25aが設けられており、マフラ室内の冷媒ガスは開口部25aを介して、密閉容器1内に放出される。
まず、吸入マフラ101、吸入連結管5、吸入口を介して、シリンダ22に形成された圧縮室に冷媒ガスが吸入される。圧縮室では、ローリングピストン21、すなわち、偏芯軸部43が、偏芯軸部43の偏芯回転により、シリンダ22の内部空間を移動して、吸入口との連通が断たれる。さらに、ローリングピストン21が偏芯回転していくと、圧縮室の容積が縮小し、吸入した冷媒ガスを圧縮する。ローリングピストン21の偏芯回転が進むにしたがって、圧縮室は吐出口と連通する。圧縮室と吐出口が連通し、冷媒ガスが所定の圧力に到達すると、吐出口を閉塞している吐出弁が開口する。吐出口が開口すると、圧縮室内の冷媒ガスは、吐出口を介して、吐出マフラ25のマフラ室内に吐出される。ローリングピストン21が偏芯回転していくと、吐出ポートとの連通が断たれ、再び、吸入ポートと連通される。これが繰り返されることによって、圧縮機構部2は、冷媒ガスを吸入、圧縮、吐出を行う。一連の動作は、ローリングピストン21がシリンダ22の内部空間内を一回転する間に行われる。
電動機構部3の構成について、説明する。図2は、密閉型圧縮機100を電動機構部3の部分にて、クランクシャフト4に対して垂直な平面にて切断した断面図である。電動機構部3の構成は、図1と図2とを使用して、説明していく。
電動機構部3は、回転子31と、その回転子31のその外側を囲むように設けられた固定子32と、から構成される。
回転子31は、回転子31の中心軸上に、軸方向に貫通するシャフト穴31bが設けられている。回転子31のシャフト穴31bには、クランクシャフト4の主軸部41が挿入され、回転子31は主軸部41に固定されている。
固定子32は、密閉型圧縮機100の外周を形成する密閉容器1内に挿入され、焼嵌などにより、密閉容器1の内周面に固定されている。すなわち、固定子32の半径方向の外周面と密閉容器1の内周面とが接して、固定されている。
回転子31は、永久磁石33によって、磁束を発生する。
なお、連通孔36以外にも、回転子31と固定子32との隙間や、固定子32の隙間、固定子32と密閉容器1との隙間を介して、圧縮機構部2から吐出された冷媒ガスは、吐出管6へ送り出される。
図2では、ティース32cごとに、バックヨーク32bにて分離して、形成し、固定子巻線37を巻き回した後、成形品を、バックヨーク32bにて、円環状につなぎ合わせて、固定子鉄心32a、すなわち、固定子32を形成したものである。これは、製造方法の一例であって、本願の特徴は、この方法に限られるものではない。
なお、被膜は絶縁性があるので、導線どうしが接触しても導通はしない。
なお、拘束部の拘束溝には、固定子巻線37以外に、渡り線やリード線39も、拘束される。
接続端子7は、密閉容器1の上部容器11に設けられた端子で、密閉容器1の内外を電気的に接続する。これにより、絶縁部材38の拘束部に拘束された固定子巻線37および渡り線を、リード線39、端子39a、接続端子7を介して、外部の装置とつなぎ、電気的に導通させる。
なお、接続端子7は、下部容器12に設けられていても構わない。
そこで、本願では、拘束部における固定子巻線37などの拘束方法を改善して、密閉容器1の内周面と拘束部に拘束される固定子巻線37の端末部との距離を確保する構造とした。
具体的な構成は、図3、4、5、6にて、説明していく。
鉄心部材51a〜51iは、薄板状の電磁鋼板をクランクシャフト4の軸方向に積み重ねて、形成されたものであり、円弧状のバックヨーク52a〜52iの部分とバックヨーク52a〜52iに直角かつ中心方向に延伸したティース53a〜53iの部分とから構成されている。バックヨーク52a〜52iはそれぞれの端部にて接続され、円環状に組み立てられる。なお、バックヨーク52a〜52iは、図2のバックヨーク32bを構成するものであり、ティース53a〜53iはティース32cと同じものである。
固定子鉄心32aの軸方向の端面、すなわち、鉄心部材51a〜51iの端面には、絶縁部材55a〜55iが取り付けられている。絶縁部材55a〜55iは、鉄心部材51a〜51i同様に、分割されている。そして、鉄心部材51a〜51iには、絶縁部材55a〜55iが、それぞれ、取り付けられている。すなわち、鉄心部材51aには絶縁部材55aが、鉄心部材51bには絶縁部材55bが、というように、取り付けられている。鉄心部材51a〜51i同様に、円環状に配置され、図2の絶縁部材38を構成する。なお、絶縁部材38は、固定子鉄心32aの両端面に取り付けられているが、2つはほぼ同じものなので、もう一方の絶縁部材38の説明は省略する。
絶縁部材55a〜55iの拘束部56a〜56i、57a〜57iには、巻線54a〜54iの端末部以外にも、渡り線58a〜58cの端末部およびリード線60a〜60cの端末部も拘束される。
ここで、巻線の端末部、渡り線の端末部、リード線の端末部とは、各導線の末端部であり、一本の導線から切断して形成した巻線、渡り線、リード線の切断面を含む、切断面から数cmから数十cmの部分である。したがって、各導線の両端部に存在する。導線の端末部は、他の導線と接続するために利用する部分であり、被覆や被膜を取り除き、圧接端子による接続や、半田付けによる接続を行う部分である。
渡り線58a〜58cは、導体である芯線と、芯線を覆う被覆59a〜59fと、から構成される導線である。芯線は、巻線同様、単線であることが多く、材質は、銅、アルミニウム、または、導通性のある合金である。
被覆59a〜59fは、絶縁性のPCV(ポリ塩化ビニル)などで構成されている。被覆59a〜59fは、渡り線58a〜58cどうしの接触や、渡り線58a〜58cと巻線54a〜54iとの接触があっても、導通させないようにしたものである。
巻線54a〜54i、渡り線58a〜58c、および、絶縁部材55a〜55iの拘束部56a〜56i、57a〜57iの詳細な接続方法と、渡り線58a〜58cの被覆59a〜59fで覆われていない、両端の端末部、および、端末部と端末部との中間部については、後で、説明する。
図7は、絶縁部材55aであり、(a)は鉄心部材51aのバックヨーク52aから見た正面図、(b)は(a)の右から見た側面図、(c)は(a)の上方から見た上面図である。
拘束部56a、57aの外観は、ほぼ直方体形状である。その内部も直方体状の内部空間が設けられており、内部空間の上方は、拘束部56a、57aの外部に開口している。すなわち、拘束部56a、57aは、側面4面と、底面で構成されている。
なお、2本の導線が拘束できるように、拘束部の一方の側面に拘束溝が2個設けられた例を説明したが、設ける数には制限は無く、拘束部の一方の側面に拘束溝が1個以上設けられていれば良い。
図8は、鉄心部材51aに絶縁部材55aを取り付け、拘束部56a、57aに導線を拘束した状態の図である。すなわち、導線73は、拘束溝64a、66aに、直線状に渡され、それぞれの溝に挟持され、拘束されている。導線74は、拘束溝65a、67aに、直線状に渡され、それぞれの溝に挟持され、拘束されている。導線75は、拘束溝68a、70aに、直線状に渡され、それぞれの溝に挟持され、拘束されている。導線76は、拘束溝69a、71aに、直線状に渡され、それぞれの溝に挟持され、拘束されている。導線73は、拘束溝66a側で切断されており、導線74は、拘束溝67a側で切断されている。導線75は、拘束溝70a側で切断されており、導線76は、拘束溝71a側で切断されている。
図7のような構造の絶縁部材55a〜55iとすることによって、従来との拘束方法や拘束する機能は変えず、固定子巻線37の切断面を90度変え、固定子鉄心32aの円周方向すなわち固定子鉄心32aの内側方向とし、固定子巻線37の切断面と密閉容器1の内周面とを直交させ、固定子巻線37の切断面が密閉容器1の内周面に対向させないように配置した。すなわち、拘束部56a〜56i、57a〜57iの固定子鉄心32aの円周方向の側面に拘束溝を設けることにより、固定子巻線37を拘束溝に固定子鉄心32aの半径方向から挟持させ、固定子巻線37の切断面と密閉容器1の内周面とが直交する配置を実現させた。これにより、固定子巻線37の切断面を密閉容器1から引き離した配置とし、固定子巻線37の切断面と密閉容器1の内周面との絶縁距離を確保できるようになった。一方、このような構造を取ると、従来技術では、固定子巻線37の巻き回しや、切断作業において、作業スペースが取れない課題が発生し、実現が困難であった。しかし、これを改善する構造を実現し、同時に組み込んだ。
まず、初めに、鉄心部材51aに巻線54aを巻き回す。初めに、巻線54aの巻始め端末部80aを絶縁部材55aの第1の拘束部56aの拘束溝64aと66aとに拘束し、ティース53aに巻線54aの巻き回しを開始する。巻線54aをティース53aに巻き回した後、巻線54aの巻終わり端末部81aを絶縁部材55aの第2の拘束部57aの拘束溝68aと70aとに拘束して、終了する。
前述のとおり、渡り線58aは、導体である芯線と、芯線を覆う被覆59a、59bと、から構成されている。ただし、渡り線58aの一方の端末部である第1の端末部83は、被覆59aおよび59bに覆われていない。同様に、渡り線58aのもう一方の端末部である第2の端末部85も被覆59aおよび59bに覆われていない。すなわち、渡り線58aは、被覆59aおよび59bに覆われていない第1の端末部83および第2の端末部85を有する。また、渡り線58aは、第1の端末部83と第2の端末部85との中間付近に、被覆59aおよび59bに覆われていない中間部84が設けられている。したがって、中間部84は、被覆59aと被覆59bの間に配置されている。よって、被覆59aは、第1の端末部83と中間部84との間に配置された第1の被覆であり、被覆59bは、第2の端末部85と中間部84との間に配置された第2の被覆である。
渡り線58aの第2の端末部85は、絶縁部材55gの第1の拘束部56gに拘束される。すなわち、第1の拘束部56gの拘束溝65g、67gに渡り線58aの第2の端末部85は、拘束される。
渡り線58aの中間部84は、絶縁部材55dの第1の拘束部56dに拘束する。すなわち、第1の拘束部56dの拘束溝65d、67dに渡り線58aの中間部84を渡して、拘束する。
すなわち、巻線54aと第1の端末部83とが接続され、巻線54dと中間部84とが接続され、巻線54gと第2の端末部85とが接続される。その結果、渡り線58aは、巻線54a、54d、54gの3つの異なる巻線を接続する。
渡り線58bは、巻線54b、54e、54hの3つの異なる巻線を接続する。渡り線58cは、巻線54i、54c、54fの3つの異なる巻線を接続する。
例えば、渡り線の接続点が、第1の端末部と第2の端末部に加え、中間部の接続点を2箇所設ければ、4箇所の接続が可能となり、4つの巻線を接続できる。
リード線60a〜60cは、渡り線58a〜58cと接続されている。リード線60aは、渡り線58aを介して、巻線54a、54d、54gと接続されている。したがって、渡り線58aは、リード線60aを通過する電流を、分流あるいは合流させることになる。
同様に、巻線54d、54e、54fは、巻線54eの巻終わり端末部81eと巻線54fの巻終わり端末部81fとによって、結線され、Y結線を構成するので、巻終わり端末部81eと巻終わり端末部81fによって、Y結線における中性線が構成されることになる。巻線54g、54h、54iは、巻線54hの巻終わり端末部81hと巻線54iの巻終わり端末部81iとによって、結線され、Y結線を構成するので、巻終わり端末部81hと巻終わり端末部81iによって、Y結線における中性線が構成されることになる。
巻線54cの巻終わり端末部81cと絶縁部材55bの第2の拘束部57bとの構造関係についても、全く同じである。
さらに、第1の拘束部56bの底部には、拘束溝72bを設け、巻線54bの巻終わり端末部81bを絶縁部材55aの第2の拘束部57aに引き回すときのガイドの役目とした。これにより、巻線54bの巻終わり端末部81bは絶縁部材55aの第2の拘束部57aに向かって、ほぼ直線状に引き回すことができ、配線を引き回すスペースも小さくできる。そして、最短で結線することにより、電気的抵抗も抑制でき、効率が良いものが組み立てられる。
これは、巻線54cの巻終わり端末部81cを絶縁部材55bの第2の拘束部57bに引き回すときの構造関係についても、全く同じである。
また、絶縁部材の拘束部の拘束溝は、その拘束溝に挿入した導線を固定子の半径方向に挟持させるように設け、挟持した導線を固定子の円周方向に引き回せるようにしたので、巻線の巻終わり端末部は、円周方向にある隣接する巻線の拘束部まで、曲折することなく、最短距離で結ぶことができ、引き回す効率も、電気的な効率も、高いものが確保できる。
特に、渡り線を使用しなくても、中性線のような重要な結線を行うことができ、その信頼性も向上させることができた。
すなわち、本願の構造により、作業工程数を減らすとともに、作業スペース確保もできるようになった。
Claims (3)
- 内周部に複数の磁極歯を有する円筒形の固定子鉄心と、
前記複数の磁極歯に取り付けられた絶縁部材を介して巻き回された巻線と、
前記絶縁部材の前記固定子鉄心の軸方向の端面に設けられ、前記巻線の巻始め端末部を拘束する第1の拘束部と、
前記絶縁部材の前記固定子鉄心の軸方向の端面に設けられ、前記巻線の巻終わり端末部を拘束する第2の拘束部と、
を備え、
前記第1の拘束部は、前記第2の拘束部より、前記固定子鉄心の端面から離れた位置に配置されるとともに、前記第1の拘束部と前記固定子鉄心の端面との間に隙間を有し、
前記巻線の巻終わり端末部は、前記第2の拘束部に拘束した後、前記隙間を通過させ、隣接する前記磁極歯の絶縁部材の拘束部に拘束し、前記巻線の巻終わり端末部にて、前記巻線と、隣接する前記磁極歯に巻き回された巻線と、を接続する固定子。 - 請求項1に記載の固定子と、前記固定子の内側に設けられた回転子と、を備えた電動機。
- 請求項2に記載の電動機を備えた密閉型圧縮機。
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