JP6976344B2 - 硬化性組成物、硬化膜、積層体、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ - Google Patents

硬化性組成物、硬化膜、積層体、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサ Download PDF

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Description

本発明は、硬化性組成物、硬化膜、積層体、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサに関する。
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、カラー画像の固体撮像素子である、CCD(電荷結合素子)や、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)が用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードを使用している。このために、近赤外線カットフィルタを使用して視感度補正を行うことがある。近赤外線カットフィルタは、例えば、近赤外線吸収色素などの近赤外線吸収剤を含む硬化性組成物を用いて製造されている。
また、特許文献1には、二量化チオ尿素誘導体と銅化合物をモル比8:2〜1:2の割合で混合した近赤外線吸収剤用組成物を、重合性原料100質量部中に、0.1〜1.5質量部添加混合後、アゾ系ラジカル重合開始剤の存在下で加熱重合して近赤外線吸収性成形体を製造することが記載されている。また、特許文献1では、アゾ系ラジカル重合開始剤として、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルが用いられている。
特開平6−299139号公報
近赤外線吸収色素を含む硬化性組成物を用いて硬化膜を製造する場合、調製直後の硬化性組成物を用いて硬化膜を製造する場合もあれば、調製後長期間保管された硬化性組成物を用いて硬化膜を製造することもある。しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1に記載されたアゾ系ラジカル重合開始剤を含む硬化性組成物は保存安定性が劣り、製造直後の硬化性組成物を用いた場合と、保管後の硬化性組成物を用いた場合とで得られる硬化膜の分光特性にばらつきが生じやすいことが分かった。
また、本発明者の検討によれば、近赤外線吸収剤として色素化合物である近赤外線吸収色素を含む硬化性組成物を用いて硬化膜を製造した場合、製膜時に近赤外線吸収色素が凝集しやすい傾向にあることが分かった。特に、製膜時に熱が加えられると、近赤外線吸収色素が凝集しやすい傾向にあった。膜中における、近赤外線吸収色素に由来する凝集物のサイズが大きくなると、分光特性にばらつきが生じたり、膜面の平滑性が低下することがある。更には、凝集物のサイズが大きくなると、膜から凝集物が剥落し易くなり、凝集物が存在していた箇所に、凝集物のサイズの孔が生じる恐れがある。なお、特許文献1に記載された二量化チオ尿素誘導体と銅化合物をモル比8:2〜1:2の割合で混合した近赤外線吸収剤用組成物は、色素化合物とは異なる化合物であり、二量化チオ尿素誘導体を配位子とする銅錯体化合物の一種である。
よって、本発明の目的は、保存安定性が良好で、近赤外線吸収色素に由来する凝集物の発生が抑制された硬化膜を製造できる硬化性組成物を提供することにある。また、本発明は、硬化膜、積層体、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することにある。
本発明者の検討によれば、近赤外線吸収色素と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤を含む硬化性組成物において、所定のラジカル重合開始剤を用いることにより、保存安定性が良好で、近赤外線吸収色素に由来する凝集物が少ない硬化膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。よって、本発明は以下を提供する。
<1> 近赤外線吸収色素と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤Aとを含み、ラジカル重合開始剤Aがピナコール化合物である、硬化性組成物。
<2> 近赤外線吸収色素と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤Aとを含み、ラジカル重合開始剤Aは、熱分解温度が120〜270℃であり、かつ、熱分解速度が33〜60W/℃・molである化合物である、硬化性組成物。
<3> ラジカル重合開始剤Aがピナコール化合物である、<2>に記載の硬化性組成物。
<4> ラジカル重合開始剤Aの含有量が、硬化性組成物の全固形分に対して0.1〜20質量%である、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<5> ラジカル重合性化合物の100質量部に対してラジカル重合開始剤Aを1〜100質量部含有する、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<6> さらに、ラジカル重合開始剤Aとは異なるラジカル重合開始剤Bを含む、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<7> ラジカル重合開始剤Bが、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物およびベンジルジメチルケタールから選ばれる少なくとも1種である、<6>に記載の硬化性組成物。
<8> ラジカル重合開始剤Bの熱分解温度が100〜270℃である、<6>または<7>に記載の硬化性組成物。
<9> ラジカル重合開始剤Bの熱分解速度が3〜10W/℃・molである、<6>〜<8>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<10> ラジカル重合開始剤Aの100質量部に対してラジカル重合開始剤Bを0.1〜2000質量部含有する、<6>〜<9>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<11> <1>〜<10>のいずれか1つに記載の硬化性組成物から得られる硬化膜。
<12> 支持体上に<11>に記載の硬化膜を有する積層体。
<13> 支持体と硬化膜との間に、環状エーテル基を有する化合物を含む組成物を用いて得られる膜を有する、<12>に記載の積層体。
<14> 支持体が銅を含有するガラス基材である、<12>または<13>に記載の積層体。
<15> 硬化膜上に無機膜を有する、<12>〜<14>のいずれか1つに記載の積層体。
<16> 硬化膜と無機膜との間に平坦化層を有する、<15>に記載の積層体。
<17> <11>に記載の硬化膜を有する近赤外線カットフィルタ。
<18> <11>に記載の硬化膜を有する固体撮像素子。
<19> <11>に記載の硬化膜を有する画像表示装置。
<20> <11>に記載の硬化膜を有する赤外線センサ。
本発明によれば、保存安定性が良好で、近赤外線吸収色素に由来する凝集物が少ない硬化膜を形成できる硬化性組成物を提供することができる。また、本発明は、硬化膜、積層体、近赤外線カットフィルタ、固体撮像素子、画像表示装置および赤外線センサを提供することができる。
赤外線センサの一実施形態を示す概略図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において、「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も含む。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アリル」は、アリルおよびメタリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定でのポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC−8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel Super AWM―H(東ソー(株)製、6.0mmID(内径)×15.0cm)を用い、溶離液として10mmol/LのリチウムブロミドNMP(N−メチルピロリジノン)溶液を用いることによって求めることができる。
本明細書において、近赤外線とは、波長700〜2,500nmの光をいう。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程を表すだけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物の第1の態様は、近赤外線吸収色素と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤Aとを含み、ラジカル重合開始剤Aがピナコール化合物であることを特徴とする。
また、本発明の硬化性組成物の第2の態様は、近赤外線吸収色素と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤Aとを含み、ラジカル重合開始剤Aは、熱分解温度が120〜270℃であり、かつ、熱分解速度が33〜60W/℃・molである化合物であることを特徴とする。
上記本発明の硬化性組成物は保存安定性が良好で、近赤外線吸収色素に由来する凝集物が少ない硬化膜を製造することができる。このような効果が得られる理由としては以下によるものであると推測される。すなわち、本発明の硬化性組成物は、ラジカル重合性化合物と上述したラジカル重合開始剤Aとを含むので、このような硬化性組成物を加熱することで、ラジカル重合開始剤Aから発生したラジカルによってラジカル重合性化合物の重合反応が速やかに進行し、膜を速やかに硬化させることができる。このため、近赤外線吸収色素が膜中の架橋ネットワークなどに速やかに取りこまれると推測される。このため、本発明の硬化性組成物は、加熱時における近赤外線吸収色素の凝集を効果的に抑制でき、近赤外線吸収色素に由来する凝集物が少ない硬化膜を製造することができたと推測される。また、ラジカル重合開始剤の安定性が低いと、硬化性組成物の保管中にラジカル重合開始剤が分解するなどしてラジカルが発生し、このラジカルによってラジカル重合性化合物の重合反応が進行して、硬化性組成物の粘度などが経時的に増加したり、組成物中で近赤外線吸収色素が凝集したり、近赤外線吸収色素がラジカルによって変性したりする傾向にあるが、上記のラジカル重合開始剤Aは、硬化性組成物中で安定して存在できると考えられる。このため、本発明の硬化性組成物は、保管時における粘度の上昇や近赤外線吸収色素の凝集や、ラジカルによる近赤外線吸収色素の変性などを抑制でき、保存安定性に優れている。以下、本発明の硬化性組成物の各成分について説明する。
<<近赤外線吸収色素>>
本発明の硬化性組成物は、近赤外線吸収色素を含有する。近赤外線吸収色素は、顔料(近赤外線吸収顔料ともいう)であってもよく、染料(近赤外線吸収染料ともいう)であってもよい。また、近赤外線吸収染料と近赤外線吸収顔料とを併用することも好ましい。近赤外線吸収染料と近赤外線吸収顔料とを併用する場合、近赤外線吸収染料と近赤外線吸収顔料との質量比は、近赤外線吸収染料:近赤外線吸収顔料=99.9:0.1〜0.1:99.9であることが好ましく、99.9:0.1〜10:90であることがより好ましく、99.9:0.1〜20:80であることがさらに好ましい。
本発明において、近赤外線吸収染料は、23℃のシクロペンタノン、シクロヘキサノン、および、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種の溶剤100gに対する溶解度が、1g以上であることが好ましく、2g以上であることがより好ましく、5g以上であることがさらに好ましい。また、近赤外線吸収顔料は、23℃のシクロペンタノン、シクロヘキサノン、および、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルのそれぞれの溶剤100gに対する溶解度が、1g未満であることが好ましく、0.1g以下であることがより好ましく、0.01g以下であることがさらに好ましい。
近赤外線吸収色素は、単環または縮合環の芳香族環を含むπ共役平面を有する化合物であることが好ましい。近赤外線吸収色素のπ共役平面における芳香族環同士の相互作用により、硬化膜の製造時に近赤外線吸収色素のJ会合体が形成されやすく、近赤外領域の分光特性に優れた硬化膜を製造できる。
近赤外線吸収色素が有するπ共役平面を構成する水素以外の原子数は、6個以上であることが好ましく、14個以上であることがより好ましく、20個以上であることがさらに好ましく、25個以上であることが一層好ましく、30個以上であることが特に好ましい。上限は、例えば、80個以下であることが好ましく、50個以下であることがより好ましい。
近赤外線吸収色素が有するπ共役平面は、単環または縮合環の芳香族環を2個以上含むことが好ましく、3個以上含むことがより好ましく、4個以上含むことがさらに好ましく、5個以上含むことが特に好ましい。上限は、100個以下が好ましく、50個以下がより好ましく、30個以下がさらに好ましい。前述の芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、クアテリレン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾリン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、トリアジン環、ピロール環、インドール環、イソインドール環、カルバゾール環、および、これらの環を有する縮合環が挙げられる。
近赤外線吸収色素は、波長700〜1,300nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることが好ましく、波長700〜1,000nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物であることがより好ましい。なお、本明細書において、「波長700〜1,300nmの範囲に極大吸収波長を有する」とは、近赤外線吸収色素の溶液中での吸収スペクトルにおいて、最大の吸光度を示す波長が、波長700〜1,300nmの範囲内に有ることを意味する。近赤外線吸収色素の溶液中での吸収スペクトルの測定に用いる測定溶媒としては、クロロホルム、メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、テトラヒドロフランが挙げられる。近赤外線吸収色素がクロロホルムに溶解する化合物である場合は、クロロホルムを測定溶媒として用いる。クロロホルムに溶解しない化合物である場合は、メタノールを用いる。また、クロロホルムおよびメタノールのいずれにも溶解しない場合はジメチルスルホキシドを用いる。
近赤外線吸収色素は、波長700〜1,000nmの範囲に極大吸収波長を有し、かつ、波長500nmにおける吸光度A1と極大吸収波長における吸光度A2との比率A1/A2が、0.08以下であることが好ましく、0.04以下であることがより好ましい。この態様によれば、可視透明性と近赤外線遮蔽性に優れた硬化膜を製造しやすい。
本発明において、近赤外線吸収色素として、極大吸収波長の異なる少なくとも2種の化合物を用いることも好ましい。この態様によれば、得られる硬化膜の吸収スペクトルの波形が、1種類の近赤外線吸収色素を使用した場合に比べて広がり、幅広い波長範囲の近赤外線を遮蔽することができる。極大吸収波長の異なる少なくとも2種の化合物を用いる場合、波長700〜1,000nmの範囲に極大吸収波長を有する第1の近赤外線吸収色素と、第1の近赤外線吸収色素の極大吸収波長よりも短波長側であって、波長700〜1,000nmの範囲に極大吸収波長を有する第2の近赤外線吸収色素とを少なくとも含み、第1の近赤外線吸収色素の極大吸収波長と、第2の近赤外線吸収色素の極大吸収波長との差が1〜150nmであることが好ましい。
本発明において、近赤外線吸収色素は、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、ジイモニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物およびジベンゾフラノン化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物およびクアテリレン化合物から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物およびスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ピロロピロール化合物が特に好ましい。ジイモニウム化合物としては、例えば、特表2008−528706号公報に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。フタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006−343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013−195480号公報の段落番号0013〜0029に記載の化合物、特許第6081771号公報に記載のバナジウムフタロシアニンが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ナフタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012−77153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ジイモニウム化合物およびスクアリリウム化合物は、特開2010−111750号公報の段落番号0010〜0081に記載の化合物を使用してもよく、この内容は本明細書に組み込まれる。また、シアニン化合物は、例えば、「機能性色素、大河原信/松岡賢/北尾悌次郎/平嶋恒亮・著、講談社サイエンティフィック」を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、近赤外線吸収色素としては、特開2016−146619号公報に記載された化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、近赤外線吸収色素は、下記構造の化合物を用いることも好ましい。
Figure 0006976344
ピロロピロール化合物としては、式(PP)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0006976344

式中、R1aおよびR1bは、各々独立にアルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、R2およびR3は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R2およびR3は、互いに結合して環を形成してもよく、R4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、−BR4A4B、または金属原子を表し、R4は、R1a、R1bおよびR3から選ばれる少なくとも一つと共有結合もしくは配位結合していてもよく、R4AおよびR4Bは、各々独立に置換基を表す。R4AおよびR4Bは互いに結合して環を形成していてもよい。式(PP)の詳細については、特開2009−263614号公報の段落番号0017〜0047、特開2011−68731号公報の段落番号0011〜0036、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010〜0024の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
式(PP)において、R1aおよびR1bは、各々独立に、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。また、R1aおよびR1bが表すアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、特開2009−263614号公報の段落番号0020〜0022に記載された置換基や、以下の置換基Tが挙げられる。
(置換基T)
アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30のアルキニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30のアリール基)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30のアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30のアルコキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30のアリールオキシ基)、ヘテロアリールオキシ基、アシル基(好ましくは炭素数1〜30のアシル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30のアリールオキシカルボニル基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30のアシルオキシ基)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30のアシルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30のアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30のアリールオキシカルボニルアミノ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30のスルファモイル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30のカルバモイル基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30のアルキルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30のアリールチオ基)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1〜30)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜30)、ヘテロアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30)、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルスルフィノ基、アリールスルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数1〜30)。これらの基は、さらに置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
1a、R1bで表される基の具体例としては、アルコキシ基を置換基として有するアリール基、水酸基を置換基として有するアリール基、アシルオキシ基を置換基として有するアリール基などが挙げられる。
式(PP)において、R2およびR3は、各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基としては上述した置換基Tが挙げられる。R2およびR3の少なくとも一方は電子求引性基が好ましい。ハメットの置換基定数σ値(シグマ値)が正の置換基は、電子求引性基として作用する。ここで、ハメット則で求められた置換基定数にはσp値とσm値がある。これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができる。本発明においては、ハメットの置換基定数σ値が0.2以上の置換基を電子求引性基として例示することができる。σ値は、0.25以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.35以上が更に好ましい。上限は特に制限はないが、好ましくは0.80以下である。電子求引性基の具体例としては、シアノ基(σp値=0.66)、カルボキシル基(−COOH:σp値=0.45)、アルコキシカルボニル基(例えば、−COOMe:σp値=0.45)、アリールオキシカルボニル基(例えば、−COOPh:σp値=0.44)、カルバモイル基(例えば、−CONH2:σp値=0.36)、アルキルカルボニル基(例えば、−COMe:σp値=0.50)、アリールカルボニル基(例えば、−COPh:σp値=0.43)、アルキルスルホニル基(例えば、−SO2Me:σp値=0.72)、アリールスルホニル基(例えば、−SO2Ph:σp値=0.68)などが挙げられ、シアノ基が好ましい。ここで、Meはメチル基を、Phはフェニル基を表す。なお、ハメットの置換基定数σ値については、例えば、特開2011−68731号公報の段落番号0017〜0018を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
式(PP)において、R2は電子求引性基(好ましくはシアノ基)を表し、R3はヘテロアリール基を表すことが好ましい。ヘテロアリール基は、5員環または6員環が好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環または縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜8の縮合環が好ましく、単環または縮合数が2〜4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示される。ヘテロアリール基は、窒素原子を1個以上有することが好ましい。式(PP)における2個のR2同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、式(PP)における2個のR3同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。
式(PP)において、R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基または−BR4A4Bで表される基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基または−BR4A4Bで表される基であることがより好ましく、−BR4A4Bで表される基であることが更に好ましい。R4AおよびR4Bが表す置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、または、ヘテロアリール基が好ましく、アルキル基、アリール基、または、ヘテロアリール基がより好ましく、アリール基が特に好ましい。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。式(PP)における2個のR4同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。R4AおよびR4Bは互いに結合して環を形成していてもよい。
式(PP)で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。以下の構造式中、Phはフェニル基を表す。また、ピロロピロール化合物としては、特開2009−263614号公報の段落番号0016〜0058に記載の化合物、特開2011−68731号公報の段落番号0037〜0052に記載の化合物、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010〜0033に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
Figure 0006976344

Figure 0006976344
スクアリリウム化合物としては、下記式(SQ)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006976344

式(SQ)中、A1およびA2は、それぞれ独立に、アリール基、ヘテロアリール基または式(A−1)で表される基を表す;
Figure 0006976344

式(A−1)中、Z1は、含窒素複素環を形成する非金属原子団を表し、R2は、アルキル基、アルケニル基またはアラルキル基を表し、dは、0または1を表し、波線は連結手を表す。式(SQ)の詳細については、特開2011−208101号公報の段落番号0020〜0049、特許第6065169号公報の段落番号0043〜0062、国際公開WO2016/181987号公報の段落番号0024〜0040の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
なお、式(SQ)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
Figure 0006976344
スクアリリウム化合物は、下記式(SQ−1)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006976344

環Aおよび環Bは、それぞれ独立に芳香族環を表し、
AおよびXBはそれぞれ独立に置換基を表し、
AおよびGBはそれぞれ独立に置換基を表し、
kAは0〜nAの整数を表し、kBは0〜nBの整数を表し、
AおよびnBはそれぞれ環Aまたは環Bに置換可能な最大の整数を表し、
AとGA、XBとGB、XAとXBは、互いに結合して環を形成しても良く、GAおよびGBがそれぞれ複数存在する場合は、互いに結合して環構造を形成していても良い。
AおよびGBが表す置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられる。
AおよびXBが表す置換基としては、活性水素を有する基が好ましく、−OH、−SH、−COOH、−SO3H、−NRX1X2、−NHCORX1、−CONRX1X2、−NHCONRX1X2、−NHCOORX1、−NHSO2X1、−B(OH)2および−PO(OH)2がより好ましく、−OH、−SHおよび−NRX1X2が更に好ましい。RX1およびRX1は、それぞれ独立に水素原子または置換基を表す。XAおよびXBが表す置換基としてはアルキル基、アリール基、または、ヘテロアリール基が挙げられ、アルキル基が好ましい。
環Aおよび環Bは、それぞれ独立に、芳香族環を表す。芳香族環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、および、フェナジン環が挙げられ、ベンゼン環またはナフタレン環が好ましい。芳香族環は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられる。
AとGA、XBとGB、XAとXBは、互いに結合して環を形成しても良く、GAおよびGBがそれぞれ複数存在する場合は、互いに結合して環を形成していても良い。環としては、5員環または6員環が好ましい。環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。XAとGA、XBとGB、XAとXB、GA同士またはGB同士が結合して環を形成する場合、これらが直接結合して環を形成してもよく、アルキレン基、−CO−、−O−、−NH−、−BR−およびそれらの組み合わせからなる2価の連結基を介して結合して環を形成してもよい。Rは、水素原子または置換基を表す。置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられ、アルキル基またはアリール基が好ましい。
kAは0〜nAの整数を表し、kBは0〜nBの整数を表し、nAは、環Aに置換可能な最大の整数を表し、nBは、環Bに置換可能な最大の整数を表す。kAおよびkBは、それぞれ独立に0〜4が好ましく、0〜2がより好ましく、0〜1が特に好ましい。
スクアリリウム化合物は、下記式(SQ−10)、式(SQ−11)または式(SQ−12)で表される化合物であることも好ましい。
式(SQ−10)
Figure 0006976344

式(SQ−11)
Figure 0006976344

式(SQ−12)
Figure 0006976344
式(SQ−10)〜(SQ−12)中、Xは、独立して、1つ以上の水素原子がハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基またはアルコキシ基で置換されていてもよい式(1)または式(2)で示される2価の有機基である。
−(CH2n1− ・・・(1)
式(1)中、n1は2または3である。
−(CH2n2−O−(CH2n3− ・・・(2)
式(2)中、n2とn3はそれぞれ独立して0〜2の整数であり、n2+n3は1または2である。
1およびR2は、それぞれ独立して、アルキル基またはアリール基を表す。アルキル基およびアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられる。
3〜R6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を表す。
nは2または3である。
スクアリリウム化合物としては、下記構造の化合物が挙げられる。また、特開2011−208101号公報の段落番号0044〜0049に記載の化合物、特許第6065169号公報の段落番号0060〜0061に記載の化合物、国際公開WO2016/181987号公報の段落番号0040に記載の化合物、国際公開WO2013/133099号公報に記載の化合物、国際公開WO2014/088063号公報に記載の化合物、特開2014−126642号公報に記載の化合物、特開2016−146619号公報に記載の化合物、特開2015−176046号公報に記載の化合物、特開2017−25311号公報に記載の化合物、国際公開WO2016/154782号公報に記載の化合物、特許5884953号公報に記載の化合物、特許6036689号公報に記載の化合物、特許5810604号公報に記載の化合物、特開2017−068120号公報に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
Figure 0006976344
シアニン化合物は、式(C)で表される化合物が好ましい。
式(C)
Figure 0006976344

式中、Z1およびZ2は、それぞれ独立に、縮環してもよい5員または6員の含窒素複素環を形成する非金属原子団であり、
101およびR102は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはアリール基を表し、
1は、奇数個のメチン基を有するメチン鎖を表し、
aおよびbは、それぞれ独立に、0または1であり、
aが0の場合は、炭素原子と窒素原子とが二重結合で結合し、bが0の場合は、炭素原子と窒素原子とが単結合で結合し、
式中のCyで表される部位がカチオン部である場合、X1はアニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、式中のCyで表される部位がアニオン部である場合、X1はカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、式中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、cは0である。
シアニン化合物の具体例としては、以下に示す化合物が挙げられる。また、シアニン化合物としては、特開2009−108267号公報の段落番号0044〜0045に記載の化合物、特開2002−194040号公報の段落番号0026〜0030に記載の化合物、特開2015−172004号公報に記載の化合物、特開2015−172102号公報に記載の化合物、特開2008−88426号公報に記載の化合物、特開2017−031394号公報に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
Figure 0006976344
本発明において、近赤外線吸収色素としては、市販品を用いることもできる。例えば、SDO−C33(有本化学工業(株)製)、イーエクスカラーIR−14、イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーTX−EX−801B、イーエクスカラーTX−EX−805K((株)日本触媒製)、ShigenoxNIA−8041、ShigenoxNIA−8042、ShigenoxNIA−814、ShigenoxNIA−820、ShigenoxNIA−839(ハッコーケミカル社製)、EpoliteV−63、Epolight3801、Epolight3036(EPOLIN社製)、PRO−JET825LDI(富士フイルム(株)製)、NK−3027、NK−5060((株)林原製)、YKR−3070(三井化学(株)製)などが挙げられる。
近赤外線吸収色素の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して3〜50質量%であることが好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましい。下限は、4質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。近赤外線吸収色素は1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<他の近赤外線吸収剤>>
本発明の硬化性組成物は、上述した近赤外線吸収色素以外の近赤外線吸収剤(他の近赤外線吸収剤ともいう)をさらに含んでもよい。他の近赤外線吸収剤としては、無機顔料(無機粒子)が挙げられる。無機顔料の形状は特に制限されず、球状、非球状を問わず、シート状、ワイヤー状、チューブ状であってもよい。無機顔料としては、金属酸化物粒子または金属粒子が好ましい。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)粒子、酸化アンチモンスズ(ATO)粒子、酸化亜鉛(ZnO)粒子、Alドープ酸化亜鉛(AlドープZnO)粒子、フッ素ドープ二酸化スズ(FドープSnO2)粒子、ニオブドープ二酸化チタン(NbドープTiO2)粒子などが挙げられる。金属粒子としては、例えば、銀(Ag)粒子、金(Au)粒子、銅(Cu)粒子、ニッケル(Ni)粒子などが挙げられる。また、無機顔料としては酸化タングステン系化合物を用いることもできる。酸化タングステン系化合物は、セシウム酸化タングステンであることが好ましい。酸化タングステン系化合物の詳細については、特開2016−006476号公報の段落番号0080を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の硬化性組成物が他の近赤外線吸収剤を含有する場合、他の近赤外線吸収剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜50質量%が好ましい。下限は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
また、上述した近赤外線吸収色素と他の近赤外線吸収剤との合計質量中における他の近赤外線吸収剤の含有量は、1〜99質量%が好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は他の近赤外線吸収剤を実質的に含有しないことも好ましい。他の近赤外線吸収剤を実質的に含有しないとは、上述した近赤外線吸収色素と他の近赤外線吸収剤との合計質量中における他の近赤外線吸収剤の含有量が0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、他の近赤外線吸収剤を含有しないことがさらに好ましい。
<<ラジカル重合性化合物>>
本発明の硬化性組成物は、ラジカル重合性化合物を含有する。ラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する基を1個以上有する化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基を2個以上有する化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基を3個以上有する化合物であることがさらに好ましい。ラジカル重合性化合物におけるエチレン性不飽和結合を有する基の個数の上限は、たとえば、15個以下が好ましく、6個以下がより好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。ラジカル重合性化合物は、3〜15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3〜6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
ラジカル重合性化合物は、モノマー、ポリマーのいずれの形態であってもよいがモノマーが好ましい。モノマータイプのラジカル重合性化合物は、分子量が100〜3,000であることが好ましい。上限は、2,000以下がより好ましく、1,500以下がさらに好ましい。下限は、150以上がより好ましく、250以上がさらに好ましい。また、ラジカル重合性化合物は、分子量分布を実質的に有さない化合物であることも好ましい。ここで、分子量分布を実質的に有さない化合物としては、化合物の分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が、1.0〜1.5である化合物が好ましく、1.0〜1.3がより好ましい。
ラジカル重合性化合物の例としては、特開2013−253224号公報の段落番号0033〜0034の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。ラジカル重合性化合物としては、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、NKエステルATM−35E;新中村化学工業(株)製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては、KAYARAD D−330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、KAYARAD D−320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては、KAYARAD D−310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては、KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A−DPH−12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基が、エチレングリコール残基および/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物が好ましい。またこれらのオリゴマータイプも使用できる。また、特開2013−253224号公報の段落番号0034〜0038の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2012−208494号公報の段落番号0477(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0585)に記載の重合性モノマー等が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としては、M−460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、A−TMMT)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)も好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。例えば、RP−1040(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
ラジカル重合性化合物は、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。酸基を有するラジカル重合性化合物の市販品としては、例えば、アロニックスM−305、M−510、M−520(以上、東亞合成(株)製)などが挙げられる。ラジカル重合性化合物の酸価は、0.1〜40mgKOH/gが好ましい。下限は5mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、30mgKOH/g以下がより好ましい。
ラジカル重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物も好ましい態様である。カプロラクトン構造を有するラジカル重合性化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120等が挙げられる。カプロラクトン構造を有するラジカル重合性化合物については、特開2013−253224号公報の段落番号0042〜0045の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
ラジカル重合性化合物は、アルキレンオキシ基を有する化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有するラジカル重合性化合物は、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する化合物であることが好ましく、エチレンオキシ基を有する化合物であることがより好ましく、エチレンオキシ基を4〜20個有する3〜6官能(メタ)アクリレート化合物であることがさらに好ましい。アルキレンオキシ基を有するラジカル重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR−494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA−330などが挙げられる。
ラジカル重合性化合物としては、特公昭48−41708号公報、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載されたエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物も好適である。また、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載された分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物を用いることも好ましい。また、ラジカル重合性化合物としては、特開2017−48367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物を用いることもできる。市販品としては、UA−7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA−40H(日本化薬(株)製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社化学(株)製)などが挙げられる。
また、ラジカル重合性化合物としては、8UH−1006、8UH−1012(以上、大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB−A0(共栄社化学(株)製)などを用いることも好ましい。
また、ラジカル重合性化合物としては、特開2017−48367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物を用いることもできる。
ラジカル重合性化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜40質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
ラジカル重合性化合物の含有量は、近赤外線吸収色素の100質量部に対して、20〜300質量部であることが好ましい。上限は、200質量部以下であることが好ましく150質量部以下であることがより好ましく、120質量部以下であることが更に好ましい。下限は、30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、60質量部以上であることが更に好ましい。ラジカル重合性化合物と近赤外線吸収色素との割合が上記範囲であれば、近赤外線吸収色素に由来する凝集物の発生がより抑制された硬化膜を形成し易い。
本発明の硬化性組成物は、ラジカル重合性化合物を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。ラジカル重合性化合物を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<ラジカル重合開始剤A>>
本発明の硬化性組成物はラジカル重合開始剤Aを含有する。ラジカル重合開始剤Aは、光または熱の作用によってラジカルを発生させてラジカル重合性化合物の重合反応を開始または促進させる化合物である。ラジカル重合開始剤Aは、少なくとも熱の作用によってラジカルを発生する化合物であることが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、ラジカル重合開始剤Aとして、ピナコール化合物を用いるか(第1の態様)、
または、
熱分解温度が120〜270℃であり、かつ、熱分解速度が33〜60W/℃・molである化合物を用いる(第2の態様)。
第1の態様において用いられるラジカル重合開始剤Aの熱分解温度は270℃以下であることが好ましく、240℃以下であることがより好ましく、220℃以下であることが更に好ましい。熱分解温度の下限は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましく、140℃以上であることがより一層好ましく、150℃以上であることが特に好ましい。また、第1の態様において用いられるラジカル重合開始剤Aの熱分解速度は、33W/℃・mol以上であることが好ましく、35W/℃・mol以上であることがより好ましく、37W/℃・mol以上であることが更に好ましい。熱分解速度の上限は66W/℃・mol以下であることが好ましく、65W/℃・mol以下であることがより好ましく、64W/℃・mol以下であることが更に好ましい。
第2の態様において用いられるラジカル重合開始剤Aの熱分解温度は120〜270℃である。上限は、240℃以下であることがより好ましく、220℃以下であることが更に好ましい。下限は140℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。また、第2の態様において用いられるラジカル重合開始剤Aの熱分解速度は、33〜66W/℃・molである。下限は、35W/℃・mol以上であることが好ましく、37W/℃・mol以上であることがより好ましい。上限は65W/℃・mol以下であることが好ましく、64W/℃・mol以下であることがより好ましい。第2の態様において用いられるラジカル重合開始剤Aとしては、上述した特性を有する化合物であれば特に限定は無く、ピナコール化合物などが挙げられ、本発明の効果がより顕著に得られるという理由からピナコール化合物であることがより好ましい。
なお、本発明において、ラジカル重合開始剤の熱分解温度は熱重量・示差熱(TG−DTA)測定により測定した値である。より具体的にはラジカル重合開始剤を23℃の状態から昇温速度10℃/分の条件で昇温して、ラジカル重合開始剤の重量減少が始まる温度を測定した。
また、ラジカル重合開始剤の熱分解速度は、示差走査熱量(DSC)測定により測定した値である。より具体的には、ラジカル重合開始剤を23℃の状態から昇温速度10℃/分の条件で昇温して、100℃以降で発熱ピークの立ち上がり温度と、発熱ピークの極大温度とを結ぶ線の傾きにより熱分解速度を算出した。
第1の態様および第2の態様で用いられるラジカル重合開始剤Aの重量1%温度は、90〜220℃であることが好ましい。重量1%温度の上限は、215℃以下であることが好ましく、210℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。重量1%温度の下限は、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。ラジカル重合開始剤Aの重量1%温度が上記範囲であれば、低温硬化性と組成物の保存安定性を両立させやすい。なお、本発明においてラジカル重合開始剤の重量1%温度とは、ラジカル重合開始剤単体についてTG−DTA測定を行ったときの、ラジカル重合開始剤の重量が1%減少する温度である。
第1の態様および第2の態様で用いられるラジカル重合開始剤Aの波長365nmにおけるモル吸光係数は、100L・mol-1・cm-1以下であることが好ましく、50L・mol-1・cm-1以下であることがより好ましく、10L・mol-1・cm-1以下であることが更に好ましい。ラジカル重合開始剤Aの波長365nmにおけるモル吸光係数が100L・mol-1・cm-1以下であれば、硬化性組成物の保管中において、ラジカル重合開始剤Aからのラジカルの発生を効果的に抑制でき、硬化性組成物の保存安定性が良好である。
なお、本発明において、ラジカル重合開始剤の波長365nmにおけるモル吸光係数は、ラジカル重合開始剤を溶剤に溶解させて、ラジカル重合開始剤の5mol%溶液(測定溶液)を調製し、この測定溶液の吸光度を測定することで算出した。具体的には、前述の測定溶液を幅1cmのガラスセルに入れ、Agilent Technologies社製UV−Vis−NIRスペクトルメーター(Cary5000)を用いて吸光度を測定し、下記式に当てはめて、波長365nmにおけるモル吸光係数(L・mol-1・cm-1)を算出した。
Figure 0006976344

上記式においてεはモル吸光係数(L・mol-1・cm-1)、Aは吸光度、cは測定溶液の濃度(mol/L)、lは光路長(cm)を表す。
ラジカル重合開始剤Aのモル吸光係数の測定において、測定溶液の調製に用いる溶剤としては、アセトニトリル、クロロホルムが挙げられる。ラジカル重合開始剤Aがアセトニトリルに溶解する化合物である場合は、アセトニトリルを用いて測定溶液を調製する。ラジカル重合開始剤Aがアセトニトリルに溶解しないが、クロロホルムに溶解する化合物である場合は、クロロホルムを用いて測定溶液を調製する。また、ラジカル重合開始剤Aがアセトニトリルおよびクロロホルムに溶解しないが、ジメチルスルホキシドに溶解する化合物である場合は、ジメチルスルホキシドを用いて測定溶液を調製する。
本発明で用いられるラジカル重合開始剤Aとしては、ピナコール化合物であることが好ましい。ピナコール化合物としては、ベンゾピナコール化合物であることが好ましい。ピナコール化合物としては、下記式(T−1)〜(T−3)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006976344
式(T−1)〜(T−3)中、Rt1〜Rt4は、それぞれ独立して置換基を表し、m1〜m4は、それぞれ独立して0〜4の整数を表す。m1が2〜4の場合、m1個のRt1は、それぞれ同一であってもよく、異なってもよい。また、m1個のRt1のうち2個のRt1同士が互いに結合して環を形成していてもよい。m2が2〜4の場合、m2個のRt2は、それぞれ同一であってもよく、異なってもよい。また、m2個のRt2のうち2個のRt2同士が互いに結合して環を形成していてもよい。m3が2〜4の場合、m3個のRt3は、それぞれ同一であってもよく、異なってもよい。また、m3個のRt3のうち2個のRt3同士が互いに結合して環を形成していてもよい。m4が2〜4の場合、m4個のRt4は、それぞれ同一であってもよく、異なってもよい。また、m4個のRt4のうち2個のRt4同士が互いに結合して環を形成していてもよい。また、Rt1とRt2、Rt1とRt3、Rt1とRt4、Rt2とRt3、Rt2とRt4、Rt3とRt4は結合して環を形成していてもよい。
式(T−1)中、Rt5およびRt6は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、Ti(RM1)(RM2)(RM3)、Zr(RM1)(RM2)(RM3)、Si(RM1)(RM2)(RM3)またはB(RM1)(RM2)を表し、RM1〜RM3は、それぞれ独立して置換基を表す。
式(T−2)中、M1は、Ti(RM4)(RM5)、Zr(RM4)(RM5)、Si(RM4)(RM5)またはB(RM4)を表し、RM4およびRM5はそれぞれ独立して置換基を表す。
式(T−3)中、M2は、Ti(RM6)、Zr(RM6)、Si(RM6)またはBを表し、RM6は置換基を表し、L1は2価の連結基を表す。
Rt1〜Rt4、RM1〜RM6が表す置換基としては、アルキル基、アリール基、複素環基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、−ORX1、−SRX1、−CORX1、−COORX1、−OCORX1、−NRX1X2、−NHCORX1、−CONRX1X2、−NHCONRX1X2、−NHCOORX1、−SO2X1、−SO2ORX1、−NHSO2X1などが挙げられる。RX1およびRX2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基を表す。
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
置換基としてのアルキル基、RX1およびRX2が表すアルキル基、式(T−1)におけるRt5およびRt6が表すアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。
置換基としてのアリール基、RX1およびRX2が表すアリール基、式(T−1)におけるRt5およびRt6が表すアリール基の炭素数は、6〜20が好ましく、6〜15がより好ましく、6〜10が更に好ましい。アリール基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。
置換基としての複素環基、ならびに、RX1およびRX2が表す複素環基は、5員環または6員環が好ましい。複素環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。複素環基を構成する炭素原子の数は3〜30が好ましく、3〜18がより好ましく、3〜12がより好ましい。複素環基を構成するヘテロ原子の数は1〜3が好ましい。複素環基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。また、複素環基は、水素原子の一部または全部が、上記置換基で置換されていてもよい。
m1〜m4は、それぞれ独立して0〜4の整数を表し、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましく、0または1が更に好ましく、0が特に好ましい。
1が表す2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、−NR’−(R’は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、水素原子が好ましい)、−SO2−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−、−S−およびこれらを組み合わせてなる基が挙げられる。
式(T−1)において、Rt5およびRt6の少なくとも一方は水素原子であることが好ましく、Rt5およびRt6の両方が水素原子であることがより好ましい。
ピナコール化合物の具体例としては、ベンゾピナコール、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メチルフェニル)エタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メトキシフェニル)エタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリエチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタンなどが挙げられる。また、ピナコール化合物については、特表2014−521772号公報、特表2014−523939号公報、および、特表2014−521772号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
ラジカル重合開始剤Aの含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して0.1〜20質量%であることが好ましい。上限は15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。下限は0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。
また、硬化性組成物は、ラジカル重合性化合物の100質量部に対してラジカル重合開始剤Aを1〜200質量部含有することが好ましい。下限は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上が更に好ましい。上限は、150質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、100質量部以下が更に好ましい。ラジカル重合開始剤Aとラジカル重合性化合物との割合が上記範囲であれば、近赤外線吸収色素に由来する凝集物の発生がより抑制された硬化膜を形成し易い。
<<ラジカル重合開始剤B>>
本発明の硬化性組成物は、ラジカル重合開始剤として、上述したラジカル重合開始剤Aとは異なるラジカル重合開始剤Bを含むことが好ましい。この態様によれば、本発明の効果がより顕著に得られる傾向にある。更には、得られる硬化膜の分光特性(例えば近赤外線遮蔽性など)をより向上させることができる。ラジカル重合開始剤Aとラジカル重合開始剤Bとを併用することにより、製膜時における近赤外線吸収色素の会合性などを向上させることができるためであると推測される。また、例えば、ラジカル重合開始剤Bとして、ラジカル重合開始剤Aよりも熱分解速度が遅い化合物を用いた場合においては、硬化性組成物の硬化性を適度に調整でき、その結果、近赤外線吸収色素に由来する凝集物の発生がより抑制された硬化膜を形成し易い。
本発明で用いられるラジカル重合開始剤Bとしては、光または熱の作用によってラジカルを発生させてラジカル重合性化合物の重合反応を開始または促進させる化合物が挙げられる。ラジカル重合開始剤Bは、少なくとも熱の作用によってラジカルを発生する化合物であることが好ましい。
ラジカル重合開始剤Bの熱分解温度は100〜270℃であることが好ましい。上限は、240℃以下であることがより好ましく、220℃以下であることが更に好ましい。下限は120℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。ラジカル重合開始剤Bの熱分解温度が上記範囲であれば、硬化性組成物の保存安定性が良好である。
また、ラジカル重合開始剤Aの熱分解温度とラジカル重合開始剤Bの熱分解温度の差の絶対値は12℃以上であることが好ましく、13℃以上であることがより好ましい。上限は35℃以下であることが好ましく、34℃以下であることがより好ましい。両者の熱分解温度の差が上記範囲であれば、熱硬化性と保存安定性を両立するという効果が得られる。
ラジカル重合開始剤Bの熱分解速度は、3〜30W/℃・molであることが好ましい。上限は20W/℃・mol以下であることが好ましく、10W/℃・mol以下であることがより好ましく、7W/℃・mol以下であることが更に好ましい。ラジカル重合開始剤Bの熱分解速度が上記範囲であれば、硬化性組成物の硬化性を適度に調整でき、近赤外線吸収色素に由来する凝集物の発生がより抑制された硬化膜を形成し易い。
また、ラジカル重合開始剤Aの熱分解速度とラジカル重合開始剤Bの熱分解速度の差の絶対値は27W/℃・mol以上であることが好ましく、30W/℃・mol以上であることがより好ましい。上限は55W/℃・mol以下であることが好ましく、53W/℃・mol以下であることがより好ましい。両者の熱分解速度の差が上記範囲であれば、硬化性組成物の硬化性を適度に調整でき、近赤外線吸収色素に由来する凝集物の発生がより抑制された硬化膜を形成し易い。
ラジカル重合開始剤Bとしては、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物、α−アミノアセトフェノン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、オキシム化合物、有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられ、近赤外線吸収色素由来の凝集物の発生を効果的に抑制でき、更には、分光特性に優れた硬化膜が得られやすいという理由から、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物、α−アミノアセトフェノン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物およびオキシム化合物が好ましく、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物およびベンジルジメチルケタール化合物がより好ましく、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物が更に好ましい。
α−ヒドロキシアセトフェノン化合物としては、下記式(T−11)で表される化合物が挙げられる。
式(T−11)
Figure 0006976344

式中Rt11は、置換基を表し、Rt12およびRt13は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を表し、Rt12とRt13が互いに結合して環を形成していてもよく、mは0〜4の整数を表す。
Rt11が表す置換基としては、上述した置換基が挙げられ、アルキル基、アルコキシ基が好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基などが挙げられる。
Rt12およびRt13は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を表す。置換基としては、上述した置換基が挙げられ、アルキル基、アリール基が好ましい。また、Rt12とRt13は互いに結合して環(好ましくは炭素数4〜8の環、より好ましくは、炭素数4〜8の脂肪族環)を形成していてもよい。
α−ヒドロキシアセトフェノン化合物の具体例としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンなどが挙げられる。α−ヒドロキシアセトフェノン化合物の市販品としては、IRGACURE−184、IRGACURE−2959(以上、BASF社製)などが挙げられる。
α−アミノアセトフェノン化合物としては、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン、2−ジメチルアミノ−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンなどが挙げられる。α−アミノアセトフェノン化合物の市販品としては、IRGACURE−907、IRGACURE−369、および、IRGACURE−379(以上、BASF社製)などが挙げられる。
ベンジルジメチルケタール化合物としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE−651(BASF社製)などが挙げられる。
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)2−メチルプロピオンアミド]、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。アゾ化合物の市販品としては、V−70、V−65、V−60、V−59、V−40、V−30、V−501、V−601、VE−073、VA−080、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111、VA−044、VA−046B、VA−060、VA−061、V−50、VA−057、VA−067、VR−110(以上、和光純薬工業(株)製)等が挙げられる。
有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−キサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、3,3’4,4’−テトラ−(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(tert−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(tert−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(tert−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(tert−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。有機過酸化物の市販品としては、パーブチルO、パーブチルZ、パーヘキサ25B(以上、日油(株)製)等が挙げられる。
オキシム化合物としては、特開2001−233842号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報に記載の化合物、特開2006−342166号公報に記載の化合物、特開2000−66385号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報に記載の化合物、特表2004−534797号公報に記載の化合物、特開2006−342166号公報に記載の化合物、特開2017−19766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開WO2015/152153号公報に記載の化合物、国際公開WO2017/051680公報に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、3−ベンゾイルオキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE−OXE01、IRGACURE−OXE02、IRGACURE−OXE03、IRGACURE−OXE04(以上、BASF社製)、TR−PBG−304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN−1919((株)ADEKA製、特開2012−14052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI−730、NCI−831、NCI−930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
また、オキシム化合物として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014−137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。オキシム化合物として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載の化合物OE−01〜OE−75が挙げられる。また、オキシム化合物として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010−262028号公報に記載の化合物、特表2014−500852号公報に記載の化合物24、36〜40、特開2013−164471号公報に記載の化合物(C−3)などが挙げられる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、オキシム化合物として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013−114249号公報の段落番号0031〜0047、特開2014−137466号公報の段落番号0008〜0012、0070〜0079に記載の化合物、特許4223071号公報の段落番号0007〜0025に記載の化合物、アデカアークルズNCI−831((株)ADEKA製)などが挙げられる。
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 0006976344

Figure 0006976344
ラジカル重合開始剤Bの含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して0.1〜20質量%であることが好ましい。上限は15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。下限は0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。
また、ラジカル重合性化合物の100質量部に対してラジカル重合開始剤Bを1〜200質量部含有することが好ましい。下限は、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上が更に好ましい。上限は、150質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、100質量部以下が更に好ましい。ラジカル重合開始剤Bとラジカル重合性化合物との割合が上記範囲であれば、近赤外線吸収色素に由来する凝集物の発生がより抑制された硬化膜を形成し易い。
また、ラジカル重合開始剤Aの100質量部に対してラジカル重合開始剤Bを0.1〜2000質量部含有することが好ましい。下限は、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましい。上限は、1500質量部以下が好ましく、1000質量部以下がより好ましく、500質量部以下が更に好ましい。ラジカル重合開始剤Aとラジカル重合開始剤Bとの割合が上記範囲であれば、分光特性が良好で、近赤外線吸収色素に由来する凝集物の発生がより抑制された硬化膜を形成し易い。
<<環状エーテル基を有する化合物>>
本発明の硬化性組成物は、環状エーテル基を有する化合物を含有させてもよい。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基が挙げられ、エポキシ基が好ましい。環状エーテル基を有する化合物は、1分子内に環状エーテル基を2個以上有する化合物であることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物における環状エーテル基の数の上限は、100個以下であることが好ましく、10個以下であることがより好ましく、5個以下であることが更に好ましい。
環状エーテル基を有する化合物の環状エーテル基当量(環状エーテル基を有する化合物の分子量/環状エーテル基を有する化合物中の環状エーテル基の数)は、50〜400g/当量であることが好ましい。環状エーテル基当量の下限は、100g/当量以上であることが好ましく、150g/当量以上であることがより好ましい。上限は、350g/当量以下であることが好ましく、300g/当量以下であることがより好ましい。また、環状エーテル基を有する化合物がエポキシ基を有する化合物である場合、エポキシ基当量(エポキシ基を有する化合物の分子量/エポキシ基を有する化合物中のエポキシ基の数)は、50〜400g/当量であることが好ましい。エポキシ基当量の下限は、100g/当量以上であることが好ましく、150g/当量以上であることがより好ましい。上限は、350g/当量以下であることが好ましく、300g/当量以下であることがより好ましい。
環状エーテル基を有する化合物は、低分子化合物(例えば、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)であってもよい。環状エーテル基を有する化合物の分子量(ポリマーの場合は、重量平均分子量)は、200〜100000が好ましく、500〜50000がより好ましい。分子量(ポリマーの場合は、重量平均分子量)の上限は、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。
環状エーテル基を有する化合物は、繰り返し単位を有する化合物であることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物は、繰り返し単位を有する化合物である場合、環状エーテル基は繰り返し単位の側鎖に有していてもよく、主鎖末端に有していてもよい。なかでも、支持体に対して面吸着して、より優れた耐水密着性が得られやすいという理由から側鎖に環状エーテル基を有する化合物であることが好ましい。
環状エーテル基を有する化合物は、芳香族環および/または脂肪族環を有する構造の化合物であることが好ましく、芳香族環を有する構造の化合物であることが更に好ましい。環状エーテル基を有する化合物として芳香族環を有する化合物を用いた場合、近赤外線吸収色素と相互作用し易く、耐水密着性のより優れた硬化膜を形成し易い。
芳香族環としては、芳香族炭化水素環であることが好ましい。また、芳香族環は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられ、近赤外線吸収色素との相溶性が高まり、優れた耐水密着性が得られやすいという理由からナフタレン環を少なくとも含むことが好ましい。
環状エーテル基を有する化合物が芳香族環を含む場合、芳香族環の数としては、1個以上であることが好ましく、近赤外線吸収色素との相溶性が高まり、優れた耐水密着性が得られやすいという理由から2個以上であることがより好ましい。上限は、5個以下が好ましく、4個以下がより好ましい。また、環状エーテル基を有する化合物が繰り返し単位を有する化合物である場合、一つの繰り返し単位における芳香族環の数は、1〜10個が好ましい。上限は、7個以下が好ましく、5個以下がより好ましい。下限は、2個以上が好ましい。なお、環状エーテル基を有する化合物における芳香族環の数とは、単環の芳香族環の数と、縮合環を構成する環の数の合計値である。例えば、環状エーテル基を有する化合物における芳香族環としてナフタレン環を有する化合物の場合、この環状エーテル基を有する化合物の芳香族環の数は2個である。環状エーテル基を有する化合物における芳香族環としてベンゼン環とナフタレン環を有する化合物の場合、この環状エーテル基を有する化合物の芳香族環の数は3個である。
環状エーテル基を有する化合物が、芳香族環および/または脂肪族環を有する構造の化合物である場合、環状エーテル基は、単結合または連結基を介して、芳香族環および/または脂肪族環に結合していることが好ましい。連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、−NR’−(R’は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、水素原子が好ましい)、−SO2−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−、−S−およびこれらを組み合わせてなる基が挙げられる。
環状エーテル基を有する化合物は、特開2013−011869号公報の段落番号0034〜0036、特開2014−043556号公報の段落番号0147〜0156、特開2014−089408号公報の段落番号0085〜0092に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、例えば、ナフタレン変性エポキシ樹脂として、EPICLON HP5000、EPICLON HP4032D(以上、DIC(株)製)などが挙げられる。アルキルジフェノール型エポキシ樹脂として、EPICLON 820(DIC(株)製)などが挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、jER825、jER827、jER828、jER834、jER1001、jER1002、jER1003、jER1055、jER1007、jER1009、jER1010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON860、EPICLON1050、EPICLON1051、EPICLON1055(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。ビスフェノールF型エポキシ樹脂として、jER806、jER807、jER4004、jER4005、jER4007、jER4010(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON830、EPICLON835(以上、DIC(株)製)、LCE−21、RE−602S(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂として、jER152、jER154、jER157S70、jER157S65(以上、三菱化学(株)製)、EPICLON N−740、EPICLON N−770、EPICLON N−775(以上、DIC(株)製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、EPICLON N−660、EPICLON N−665、EPICLON N−670、EPICLON N−673、EPICLON N−680、EPICLON N−690、EPICLON N−695(以上、DIC(株)製)、EOCN−1020(日本化薬(株)製)等が挙げられる。脂肪族エポキシ樹脂として、ADEKA RESIN EP−4080S、同EP−4085S、同EP−4088S(以上、(株)ADEKA製)、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、EHPE3150、EPOLEAD PB 3600、EPOLEAD PB 4700(以上、(株)ダイセル製)、デナコール EX−212L、EX−214L、EX−216L、EX−321L、EX−850L(以上、ナガセケムテックス(株)製)等が挙げられる。また、オキセタニル基を有する化合物として、OXT−101、OXT−121、OXT−212、OXT−221(以上、東亞合成(株)製)、OXE−10、OXE−30(以上、大阪有機化学工業(株)製)などが挙げられる。
本発明の硬化性組成物が環状エーテル基を有する化合物を含有する場合、環状エーテル基を有する化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し、1〜45質量%が好ましい。下限は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は、環状エーテル基を有する化合物を実質的に含有しないことも好ましい。環状エーテル基を有する化合物を実質的に含有しないとは、環状エーテル基を有する化合物の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し、0.1質量%以下であることを意味し、0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことが一層好ましい。
<<樹脂>>
本発明の硬化性組成物は、樹脂を含有することができる。樹脂は、例えば、顔料などの粒子を組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。環状オレフィン樹脂としては、耐熱性向上の観点からノルボルネン樹脂が好ましく用いることができる。ノルボルネン樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製のARTONシリーズ(例えば、ARTON F4520)などが挙げられる。また、樹脂は、国際公開WO2016/088645号公報の実施例に記載された樹脂、特開2017−57265号公報に記載された樹脂、特開2017−32685号公報に記載された樹脂、特開2017−075248号公報に記載された樹脂、特開2017−066240号公報に記載された樹脂を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本発明で用いる樹脂は、酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として用いることもできる。
酸基を有する樹脂としては、側鎖にカルボキシル基を有するポリマーが好ましい。具体例としては、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂、側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシ基を有するポリマーに酸無水物を付加させた樹脂が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等が挙げられる。また他のモノマーは、特開平10−300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を用いることもできる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
酸基を有する樹脂は、さらに重合性基を有していてもよい。重合性基としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。市販品としては、ダイヤナールNRシリーズ(三菱レイヨン(株)製)、Photomer6173(カルボキシル基含有ポリウレタンアクリレートオリゴマー、Diamond Shamrock Co.,Ltd.製)、ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業(株)製)、サイクロマーPシリーズ(例えば、ACA230AA)、プラクセル CF200シリーズ(いずれも(株)ダイセル製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー(株)製)、アクリキュアーRD−F8((株)日本触媒製)などが挙げられる。
酸基を有する樹脂は、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好ましく用いることができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平7−140654号公報に記載の、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。
酸基を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むポリマーであることも好ましい。
Figure 0006976344
式(ED1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
Figure 0006976344

式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1〜30の有機基を表す。式(ED2)の具体例としては、特開2010−168539号公報の記載を参酌できる。
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013−29760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
酸基を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
Figure 0006976344

式(X)において、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数2〜10のアルキレン基を表し、R3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基を表す。nは1〜15の整数を表す。
酸基を有する樹脂については、特開2012−208494号公報の段落番号0558〜0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685〜0700)の記載、特開2012−198408号公報の段落番号0076〜0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。例えば、アクリベースFF−426(藤倉化成(株)製)などが挙げられる。
酸基を有する樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表す。
Figure 0006976344
本発明の硬化性組成物は、樹脂として、式(A3−1)〜(A3−7)で表される繰り返し単位を有する樹脂を用いることも好ましい。
Figure 0006976344

式中、R5は水素原子またはアルキル基を表し、L4〜L7は各々独立に単結合または2価の連結基を表し、R10〜R13は各々独立にアルキル基またはアリール基を表す。R14およびR15は、各々独立に水素原子または置換基を表す。
5は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1〜5が好ましく、1〜3がさらに好ましく、1が特に好ましい。R5は、水素原子またはメチル基が好ましい。
4〜L7は、各々独立に単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NR10−(R10は水素原子またはアルキル基を表し、水素原子が好ましい)
、または、これらの組み合わせからなる基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよいが、無置換が好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6〜18が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
10〜R13が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状または環状のいずれでもよく、環状が好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。アルキル基の炭素数は、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10がさらに好ましい。R10〜R13が表すアリール基の炭素数は6〜18が好ましく、6〜12がより好ましく、6がさらに好ましい。R10は、環状のアルキル基またはアリール基が好ましい。R11、R12は、直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。R13は、直鎖状のアルキル基、分岐状のアルキル基、または、アリール基が好ましい。
14およびR15が表す置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、−NRa1a2、−CORa3、−COORa4、−OCORa5、−NHCORa6、−CONRa7a8、−NHCONRa9a10、−NHCOORa11、−SO2a12、−SO2ORa13、−NHSO2a14または−SO2NRa15a16が挙げられる。Ra1〜Ra16は、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または、ヘテロアリール基を表す。なかでも、R14およびR15の少なくとも一方は、シアノ基または−COORa4を表すことが好ましい。Ra4は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表すことが好ましい。
式(A3−7)で表される繰り返し単位を有する樹脂の市販品としては、ARTON F4520(JSR(株)製)などが挙げられる。また、式(A3−7)で表される繰り返し単位を有する樹脂の詳細については、特開2011−100084号公報の段落番号0053〜0075、0127〜0130の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の硬化性組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。特に、顔料を用いた場合、分散剤を含むことが好ましい。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40〜105mgKOH/gが好ましく、50〜105mgKOH/gがより好ましく、60〜105mgKOH/gがさらに好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。分散剤として用いる樹脂が酸基を有する繰り返し単位を含むことにより、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、画素の下地に発生する残渣をより低減することができる。
分散剤として用いる樹脂は、グラフト共重合体であることも好ましい。グラフト共重合体は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、顔料の分散性、および、経時後の分散安定性に優れる。グラフト共重合体の詳細は、特開2012−255128号公報の段落番号0025〜0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、グラフト共重合体の具体例は、下記の樹脂が挙げられる。以下の樹脂は酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)でもある。また、グラフト共重合体としては特開2012−255128号公報の段落番号0072〜0094に記載の樹脂が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
Figure 0006976344
また、本発明において、樹脂(分散剤)は、主鎖および側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系分散剤を用いることも好ましい。オリゴイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する構造単位と、原子数40〜10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖および側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。オリゴイミン系分散剤については、特開2012−255128号公報の段落番号0102〜0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。オリゴイミン系分散剤の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。以下の樹脂は酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)でもある。また、オリゴイミン系分散剤としては、特開2012−255128号公報の段落番号0168〜0174に記載の樹脂を用いることができる。
Figure 0006976344
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、Disperbyk−111(BYKChemie社製)、ソルスパース76500(日本ルーブリゾール(株)製)などが挙げられる。また、特開2014−130338号公報の段落番号0041〜0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、上述した酸基を有する樹脂などを分散剤として用いることもできる。
本発明の硬化性組成物において、樹脂の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対し、1〜60質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
また、樹脂として分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.1〜40質量%が好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また、分散剤の含有量は、顔料100質量部に対して、1〜100質量部が好ましい。上限は、80質量部以下が好ましく、60質量部以下がより好ましい。下限は、2.5質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。
<<有彩色着色剤>>
本発明の硬化性組成物は、有彩色着色剤を含有することができる。本発明において、有彩色着色剤とは、白色着色剤および黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤は、波長400nm以上650nm未満の範囲に吸収を有する着色剤が好ましい。
有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。顔料は、有機顔料であることが好ましい。有機顔料としては、以下に示すものが挙られる。
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等(以上、青色顔料)、
これら有機顔料は、単独若しくは種々組合せて用いることができる。
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。また、これらの染料の多量体を用いてもよい。また、特開2015−028144号公報、特開2015−34966号公報に記載の染料を用いることもできる。
本発明の硬化性組成物が、有彩色着色剤を含有する場合、有彩色着色剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して0.1〜70質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。また、有彩色着色剤と近赤外線吸収色素との合計量は、硬化性組成物の全固形分に対して1〜80質量%が好ましい。下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。本発明の硬化性組成物が、有彩色着色剤を2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
また、本発明の硬化性組成物は、有彩色着色剤を実質的に含有しないことも好ましい。有彩色着色剤を実質的に含有しないとは、有彩色着色剤の含有量が、硬化性組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、有彩色着色剤を含有しないことがさらに好ましい。
<<赤外線を透過させて可視光を遮光する色材>>
本発明の硬化性組成物は、赤外線を透過させて可視光を遮光する色材(以下、可視光を遮光する色材ともいう)を含有することもできる。
本発明において、可視光を遮光する色材は、紫色から赤色の波長領域の光を吸収する色材であることが好ましい。また、本発明において、可視光を遮光する色材は、波長450〜650nmの波長領域の光を遮光する色材であることが好ましい。また、可視光を遮光する色材は、波長900〜1300nmの光を透過する色材であることが好ましい。
本発明において、可視光を遮光する色材は、以下の(A)および(B)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましい。
(A):2種類以上の有彩色着色剤を含み、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成している。
(B):有機系黒色着色剤を含む。
有彩色着色剤としては、上述したものが挙げられる。有機系黒色着色剤としては、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010−534726号公報、特表2012−515233号公報、特表2012−515234号公報、国際公開WO2014/208348号公報、特表2015−525260号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平1−170601号公報、特開平2−34664号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(2)黄色着色剤、青色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(3)黄色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(4)黄色着色剤および紫色着色剤を含有する態様。
(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(6)紫色着色剤およびオレンジ色着色剤を含有する態様。
(7)緑色着色剤、紫色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
(8)緑色着色剤および赤色着色剤を含有する態様。
本発明の硬化性組成物が、可視光を遮光する色材を含有する場合、可視光を遮光する色材の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がより一層好ましく、15質量%以下が特に好ましい。下限は、例えば、0.1質量%以上とすることができ、0.5質量%以上とすることもできる。
また、本発明の硬化性組成物は、可視光を遮光する色材を実質的に含有しないことも好ましい。可視光を遮光する色材を実質的に含有しないとは、可視光を遮光する色材の含有量が、硬化性組成物の全固形分に対して0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、可視光を遮光する色材を含有しないことがさらに好ましい。
<<顔料誘導体>>
本発明の硬化性組成物は、さらに顔料誘導体を含有することができる。顔料誘導体としては、色素骨格に、酸基および塩基性基から選ばれる少なくとも1種の基が結合した化合物が挙げられる。顔料誘導体としては、式(B1)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006976344

式(B1)中、Pは色素骨格を表し、Lは単結合または連結基を表し、Xは酸基または塩基性基を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なっていてもよい。
Pが表す色素骨格としては、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、キナクリドン色素骨格、アントラキノン色素骨格、ジアントラキノン色素骨格、ベンゾイソインドール色素骨格、チアジンインジゴ色素骨格、アゾ色素骨格、キノフタロン色素骨格、フタロシアニン色素骨格、ナフタロシアニン色素骨格、ジオキサジン色素骨格、ペリレン色素骨格、ペリノン色素骨格、ベンゾイミダゾロン色素骨格、ベンゾチアゾール色素骨格、ベンゾイミダゾール色素骨格およびベンゾオキサゾール色素骨格から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、キナクリドン色素骨格およびベンゾイミダゾロン色素骨格から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ピロロピロール色素骨格が特に好ましい。
Lが表す連結基としては、炭化水素基、複素環基、−NR−、−SO2−、−S−、−O−、−CO−もしくはこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
Xが表す酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基等が挙げられる。カルボン酸アミド基としては、−NHCORX1で表される基が好ましい。スルホン酸アミド基としては、−NHSO2X2で表される基が好ましい。イミド酸基としては、−SO2NHSO2X3、−CONHSO2X4、−CONHCORX5または−SO2NHCORX6で表される基が好ましい。RX1〜RX6は、それぞれ独立に、炭化水素基または複素環基を表す。RX1〜RX6が表す、炭化水素基および複素環基は、さらに置換基を有してもよい。さらなる置換基としては、上述した式(PP)で説明した置換基Tが挙げられ、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。Xが表す塩基性基としてはアミノ基が挙げられる。Xが表す塩構造としては、上述した酸基または塩基性基の塩が挙げられる。
顔料誘導体としては、下記構造の化合物が挙げられる。また、特開昭56−118462号公報、特開昭63−264674号公報、特開平1−217077号公報、特開平3−9961号公報、特開平3−26767号公報、特開平3−153780号公報、特開平3−45662号公報、特開平4−285669号公報、特開平6−145546号公報、特開平6−212088号公報、特開平6−240158号公報、特開平10−30063号公報、特開平10−195326号公報、国際公開WO2011/024896号公報の段落番号0086〜0098、国際公開WO2012/102399号公報の段落番号0063〜0094等に記載の化合物、特許第5299151号公報に記載の化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
Figure 0006976344
本発明の硬化性組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部が好ましい。下限値は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限値は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。顔料誘導体の含有量が上記範囲であれば、顔料の分散性を高めて、顔料の凝集を効率よく抑制できる。顔料誘導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<溶剤>>
本発明の硬化性組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤の種類は、各成分の溶解性や組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤の例としては、例えば、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ジクロロメタン、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。また、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドも溶解性向上の観点から好ましい。本発明において有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
本発明においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましい。溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
溶剤には、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
本発明において、有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
溶剤の含有量は、硬化性組成物の全量に対し、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましく、25〜75質量%であることが更に好ましい。溶剤を2種類以上用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。また、環境面等の理由により、硬化性組成物は、溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)を含有しないことが好ましい場合もある。
溶剤の含有量は、硬化性組成物の全量に対し、10〜97質量%であることが好ましい。下限は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることがより一層好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。上限は、96質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
<<重合禁止剤>>
本発明の硬化性組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p−メトキシフェノールが好ましい。重合禁止剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.001〜5質量%が好ましい。
<<シランカップリング剤>>
本発明の硬化性組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応および縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられる。シランカップリング剤は、特開2009−288703号公報の段落番号0018〜0036に記載の化合物、特開2009−242604号公報の段落番号0056〜0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。シランカップリング剤は、ウレア基を有するシランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜15.0質量%が好ましく、0.05〜10.0質量%がより好ましい。シランカップリング剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<界面活性剤>>
本発明の硬化性組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0238〜0245を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明において、界面活性剤は、フッ素系界面活性剤であることが好ましい。本発明の硬化性組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3〜40質量%が好適であり、より好ましくは5〜30質量%であり、特に好ましくは7〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
フッ素系界面活性剤として具体的には、特開2014−41318号公報の段落番号0060〜0064(対応する国際公開2014/17669号公報の段落番号0060〜0064)等に記載の界面活性剤、特開2011−132503号公報の段落番号0117〜0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS−330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、SC−101、SC−103、SC−104、SC−105、SC−1068、SC−381、SC−383、S−393、KH−40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造で、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日)(日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS−21が挙げられる。
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011−89090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
Figure 0006976344

上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
本発明においてフッ素系界面活性剤としては、フッ素原子および硬化性基を有する化合物(以下、含フッ素硬化性化合物ともいう)を用いることが好ましい。このような界面活性剤を用いることで、得られる硬化膜の耐溶剤性を向上させることができる。含フッ素硬化性化合物を用いることで優れた耐溶剤性が得られる理由としては次によるものであると推測する。含フッ素硬化性化合物は表面自由エネルギーが低いため、例えば、基板などの支持体上に組成物を塗布して形成される塗膜においては、支持体とは反対側の塗膜表面近傍に含フッ素硬化性化合物が偏在しやすい。含フッ素硬化性化合物がこのように偏在した状態で本発明の硬化性組成物を硬化することで、基板から遠い側の表面に含フッ素硬化性化合物の硬化物の割合が多い領域が形成される。このような領域が存在することにより、膜を溶剤に浸漬させても、近赤外線吸収色素が膜表面から浸み出しにくくなり、優れた耐溶剤性が得られる。
含フッ素硬化性化合物が有する硬化性基としては、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基およびオキセタニル基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
含フッ素硬化性化合物は、フッ素原子で置換されたアルキレン基、フッ素原子で置換されたアルキル基、及び、フッ素原子で置換されたアリール基からなる群から選択される少なくとも1つを有することが好ましい。
フッ素原子で置換されたアルキレン基としては、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であることが好ましい。
フッ素原子で置換されたアルキル基としては、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であることが好ましい。
フッ素原子で置換されたアルキレン基及びフッ素原子で置換されたアルキル基中の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。
フッ素原子で置換されたアリール基は、アリール基がフッ素原子で直接に置換されているか、トリフルオロメチル基で置換されていることが好ましい。
フッ素原子で置換されたアルキレン基、フッ素原子で置換されたアルキル基、及び、フッ素原子で置換されたアリール基は、フッ素原子以外の置換基をさらに有していてもよい。これらの具体例としては、例えば、特開2011−100089号公報の段落0266〜0272を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
含フッ素硬化性化合物は、フルオロエーテル基と硬化性基とを含む化合物であることが好ましい。フルオロエーテル基としては、フッ素原子で置換されたアルキレン基と酸素原子とが連結した基X(式(X)で表される基)が挙げられる。フルオロエーテル基は、パーフルオロアルキレンエーテル基であることが好ましい。なお、パーフルオロアルキレンエーテル基とは、下記式(X)におけるLAがパーフルオロアルキレン基であることを意味する。パーフルオロアルキレン基とは、アルキレン基中の水素原子がすべてフッ素原子で置換された基を意味する。
式(X) −(LA−O)n− 上記LAは、フッ素原子で置換されたアルキレン基を表す。フッ素原子で置換されたアルキレン基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。フッ素原子で置換されたアルキレン基は直鎖状であっても、分岐状であってもよい。nは1以上の整数を表し、1〜50が好ましく、1〜20がより好ましい。なお、nが2以上の場合、複数の−(LA−O)−中のLAは同一であってもよく、異なっていてもよい。
含フッ素硬化性化合物は、モノマーであってもよく、ポリマーであってもよいが、ポリマーであることが好ましい。
含フッ素硬化性化合物がポリマーである場合、ポリマーは、フルオロエーテル基を有する繰り返し単位と、硬化性基を有する繰り返し単位とを有するポリマーであることが好ましい。また、下記式(B1)で表される繰り返し単位と、下記式(B2)で表される繰り返し単位及び式(B3)で表される繰り返し単位の少なくとも一方とを有するポリマーであることが好ましく、下記式(B1)で表される繰り返し単位と、下記式(B3)で表される繰り返し単位とを有するポリマーであることがより好ましい。
Figure 0006976344
式(B1)〜(B3)中、R1〜R11は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、ハロゲン原子を表す。L1〜L4は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。X1は、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、又はオキセタニル基を表し、X2はフッ素原子で置換されたアルキル基またはフッ素原子で置換されたアリール基を表し、X3は式(X)で表される基を表す。
式(B1)〜(B3)中、R1〜R11は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。R1〜R11がアルキル基を表す場合、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。R1〜R11がハロゲン原子を表す場合、フッ素原子が好ましい。
式(B1)〜(B3)中、L1〜L4が2価の連結基を表す場合、2価の連結基としては、ハロゲン原子が置換していてもよいアルキレン基、ハロゲン原子が置換していてもよいアリーレン基、−NR12−、−CONR12−、−CO−、−CO2−、−SO2NR12−、−O−、−S−、−SO2−、又は、これらの組み合わせが挙げられる。なかでも、炭素数2〜10のハロゲン原子が置換していてもよいアルキレン基及び炭素数6〜12のハロゲン原子が置換していてもよいアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1種、又は、これらの基と−NR12−、−CONR12−、−CO−、−CO2−、−SO2NR12−、−O−、−S−、及び−SO2−からなる群から選択される少なくとも1種の基との組み合わせからなる基が好ましく、炭素数2〜10のハロゲン原子が置換していてもよいアルキレン基、−CO2−、−O−、−CO−、−CONR12−、又は、これらの基の組み合わせからなる基がより好ましい。ここで、上記R12は、水素原子又はメチル基を表す。
上記式(B1)で表される繰り返し単位の含有量は、含フッ素硬化性化合物中の全繰り返し単位に対して、30〜95モル%であることが好ましく、45〜90モル%であることがより好ましい。
上記式(B2)で表される繰り返し単位及び式(B3)で表される繰り返し単位の合計含有量は、含フッ素硬化性化合物中の全繰り返し単位に対して、5〜70モル%であることが好ましく、10〜60モル%であることがより好ましい。なお、式(B2)で表される繰り返し単位が含まれず、式(B3)で表される繰り返し単位が含まれる場合は、式(B2)で表される繰り返し単位の含有量は0モル%として、式(B3)で表される繰り返し単位の含有量が上記範囲であることが好ましい。
また、含フッ素硬化性化合物は、上記式(B1)〜(B3)で表される繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を有していてもよい。他の繰り返し単位の含有量は、含フッ素硬化性化合物中の全繰り返し単位に対して、10モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることがより好ましい。
含フッ素硬化性化合物がポリマーである場合、重量平均分子量が5,000〜100,000であることが好ましく、7,000〜50,000であることがより好ましい。また、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.80〜3.00であることが好ましく、2.00〜2.90であることがより好ましい。
含フッ素硬化性化合物の市販品としては、例えば、DIC社製のメガファックRS−72−K、メガファックRS−75、メガファックRS−76−E、メガファックRS−76−NS、メガファックRS−77等を利用することができる。含フッ素硬化性化合物は、特開2010−164965号公報の段落番号0050〜0090および段落番号0289〜0295に記載された化合物、特開2015−117327号公報の段落番号0015〜0158に記載の化合物を用いることもできる。また、含フッ素硬化性化合物として(B1−1)で表される繰り返し単位と、式(B3−1)で表される繰り返し単位とを有するポリマーを用いることもできる。式(B3−1)中、Xは、フルオロメチレン基またはフルオロエチレン基を表し、rは繰り返し単位数を表す。
Figure 0006976344
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレートおよびプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW−101、NCW−1001、NCW−1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD−6112、D−6112−W、D−6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
界面活性剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して0.001質量%〜5.0質量%が好ましく、0.005〜3.0質量%がより好ましい。界面活性剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<紫外線吸収剤>>
本発明の硬化性組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノブタジエン化合物、メチルジベンゾイル化合物、クマリン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012−208374号公報の段落番号0052〜0072、特開2013−68814号公報の段落番号0317〜0334の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。共役ジエン化合物の市販品としては、例えば、UV−503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としてはミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)を用いてもよい。
紫外線吸収剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。本発明において、紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
<<その他成分>>
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱重合禁止剤、可塑剤、密着促進剤およびその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、潜在酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分は、特開2008−250074号公報の段落番号0101〜0104、0107〜0109等の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。酸化防止剤としては、分子量500以上のフェノール化合物、分子量500以上の亜リン酸エステル化合物または分子量500以上のチオエーテル化合物がより好ましい。これらは2種以上を混合して使用してもよい。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。特に、フェノール性水酸基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2−[(4,6,9,11−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−2−イル)オキシ]エチル]アミン、および亜リン酸エチルビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。これらは、市販品として入手できる。例えば、アデカスタブ AO−20、アデカスタブ AO−30、アデカスタブ AO−40、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−50F、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−60G、アデカスタブ AO−80、アデカスタブ AO−330((株)ADEKA)などが挙げられる。また、酸化防止剤として、国際公開WO2017/006600号公報に記載された多官能ヒンダードアミン酸化防止剤を用いることもできる。酸化防止剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.3〜15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
潜在酸化防止剤とは、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100〜250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80〜200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が好ましい。潜在酸化防止剤としては国際公開WO2014/021023号公報、国際公開WO2017/030005号公報、特開2017−008219号公報に記載された化合物が挙げられる。市販品としては、アデカアークルズGPA−5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
本発明の硬化性組成物の粘度(23℃)は、例えば、塗布により膜を形成する場合、1〜100mPa・sであることが好ましい。下限は、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上がさらに好ましい。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下がさらに好ましく、15mPa・s以下が特に好ましい。
本発明の硬化性組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015−123351号公報に記載の容器が挙げられる。
本発明の硬化性組成物の用途は、特に限定されない。例えば、近赤外線カットフィルタなどの形成に好ましく用いることができる。また、本発明の硬化性組成物が可視光を遮光する色材を含有する場合においては、特定の波長以上の近赤外線のみを透過可能な赤外線透過フィルタを形成することもできる。
<硬化性組成物の調製方法>
本発明の硬化性組成物は、前述の成分を混合して調製できる。硬化性組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解または分散して硬化性組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜配合した2つ以上の溶液または分散液をあらかじめ調製し、使用時(塗布時)にこれらを混合して硬化性組成物として調製してもよい。
また、本発明の硬化性組成物が顔料などの粒子を含む場合は、粒子を分散させるプロセスを含むことが好ましい。粒子を分散させるプロセスにおいて、粒子の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における粒子の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、粒子を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015−157893号公報の段落番号0022に記載のプロセスおよび分散機を好適に使用出来る。また粒子を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015−194521号公報、特開2012−046629号公報の記載を参酌できる。
硬化性組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、硬化性組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン−6、ナイロン−6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.01〜7.0μm程度が適しており、好ましくは0.01〜3.0μm程度であり、さらに好ましくは0.05〜0.5μm程度である。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物を確実に除去できる。また、ファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。具体的には、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジが挙げられる。
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。
また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)または株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
第2のフィルタは、第1のフィルタと同様の素材等で形成されたものを使用することができる。
また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
<硬化膜>
本発明の硬化膜は、上述した本発明の硬化性組成物から得られるものである。本発明の硬化膜は、近赤外線カットフィルタとして好ましく用いることができる。また、熱線遮蔽フィルタや赤外線透過フィルタとして用いることもできる。本発明の硬化膜は、パターンを有していてもよく、パターンを有さない膜(平坦膜)であってもよい。
本発明の硬化膜は、支持体上に積層して用いてもよく、支持体から剥離して用いてもよい。支持体としては、シリコンなどの半導体基材や、透明基材が挙げられる。
支持体として用いられる透明基材は、少なくとも可視光を透過できる材料で構成されたものであれば特に限定されない。例えば、ガラス、樹脂などの材質で構成された基材が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。ガラスとしては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、銅を含有するガラスなどが挙げられる。銅を含有するガラスとしては、銅を含有する燐酸塩ガラス、銅を含有する弗燐酸塩ガラスなどが挙げられる。銅を含有するガラスにおける銅の含有量としては、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.3〜17質量%であることがより好ましく、0.5〜15質量%であることが更に好ましい。銅を含有するガラスは、波長700〜1100nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。下限は800nm以上であることが好ましく、900nm以上であることがより好ましい。上限は1050nm以下であることが好ましく、1000nm以下であることがより好ましい。
銅を含有するガラスの具体例としては、以下が挙げられる。
(1)質量%で、P25 46〜70%、AlF3 0.2〜20%、ΣRF(R=Li、Na、K)0〜25%、ΣR’F2(R’=Mg、Ca、Sr、Ba、Pb) 1〜50%からなり、F 0.5〜32%、O 26〜54%を含む基礎ガラス100質量部に対し、外掛け表示でCuO 0.5〜7質量部を含むガラス。
(2)質量%で、P25 25〜60%、Al23 1〜13%、MgO 1〜10%、CaO 1〜16%、BaO 1〜26%、SrO 0〜16%、ZnO 0〜16%、Li2O 0〜13%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜11%、CuO 1〜7%、ΣRO(R=Mg、Ca、Sr、Ba) 15〜40%、ΣR’2O(R’=Li、Na、K) 3〜18%(ただし、39%モル量までのO2-イオンがFで置換されている)からなるガラス。
(3)質量%で、P25 5〜45%、AlF3 1〜35%、ΣRF(R=Li、Na、K) 0〜40%、ΣR’F2(R’=Mg、Ca、Sr、Ba、Pb、Zn) 10〜75%、R”Fm(R”=La、Y、Cd、Si、B、Zr、Ta、mはR”の原子価に相当する数) 0〜15%(ただし、弗化物総合計量の70%までを酸化物に置換可能)、およびCuO 0.2〜15%を含むガラス。
(4)カチオン%で、P5+ 11〜43%、Al3+ 1〜29%、ΣRカチオン(R=Mg、Ca、Sr、Ba、Pb、Zn) 14〜50%、ΣR’カチオン(R’=Li、Na、K) 0〜43%、ΣR’’カチオン(R’’=La、Y、Gd、Si、B、Zr、Ta) 0〜8%、およびCu2+ 0.5〜13%を含み、さらにアニオン%でF- 17〜80%含有するガラス。
(5)カチオン%で、P5+ 23〜41%、Al3+ 4〜16%、Li+ 11〜40%、Na+ 3〜13%、ΣRカチオン(R=Mg、Ca、Sr、Ba、Zn) 12〜53%、およびCu2+ 2.6〜4.7%を含み、さらにアニオン%でF- 25〜48%、およびO2- 52〜75%を含むガラス。
(6)質量%で、P25 70〜85%、Al23 8〜17%、B23 1〜10%、Li2O 0〜3%、Na2O 0〜5%、K2O 0〜5%、ただし、ΣR2O(R=Li、Na、K) 0.1〜5%、SiO2 0〜3%からなる基礎ガラス100質量部に対し、外割でCuOを0.1〜5質量部含むガラス。
銅を含有するガラスは、市販品を用いることもできる。銅を含有するガラスの市販品としては、NF−50(AGCテクノグラス(株)製)等が挙げられる。
本発明の硬化膜の厚さは、目的に応じて適宜調整できる。硬化膜の厚さは、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。
本発明の硬化膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合、本発明の硬化膜は、波長700〜1300nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましく、波長700〜1000nmの範囲に極大吸収波長を有することがより好ましく、波長720〜980nmの範囲に極大吸収波長を有することがさらに好ましく、波長740〜960nmの範囲に極大吸収波長を有することが特に好ましい。
本発明の硬化膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合は、本発明の硬化膜は以下の(1)〜(4)のうちの少なくとも1つの条件を満たすことが好ましく、(1)〜(4)のすべての条件を満たすことがさらに好ましい。
(1)波長400nmでの透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。
(2)波長500nmでの透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(3)波長600nmでの透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
(4)波長650nmでの透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
本発明の硬化膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合は、本発明の硬化膜は、波長400〜550nmの平均透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。また、波長400〜550nmの全ての範囲での透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、波長700〜1300nmの範囲の少なくとも1点での透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
本発明の硬化膜は、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、本発明の硬化性組成物に含んでもよいものとして挙げた有彩色着色剤が挙げられる。また、本発明の硬化膜に有彩色着色剤を含有させて、近赤外線カットフィルタとカラーフィルタとしての機能を備えたフィルタとしてもよい。
本発明の硬化膜を近赤外線カットフィルタとして用い、かつ、本発明の硬化膜とカラーフィルタと組み合わせて用いる場合、本発明の硬化膜の光路上にカラーフィルタが配置されていることが好ましい。例えば、本発明の硬化膜とカラーフィルタとを積層して積層体として用いることができる。積層体においては、本発明の硬化膜とカラーフィルタとは、両者が厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。本発明の硬化膜とカラーフィルタとが厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィルタが形成された支持体とは別の支持体に、本発明の硬化膜が形成されていてもよく、本発明の硬化膜とカラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平坦化層など)が介在していてもよい。
なお、本発明において、近赤外線カットフィルタとは、可視領域の波長の光(可視光)を透過させ、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を遮光するフィルタを意味する。近赤外線カットフィルタは、可視領域の波長の光をすべて透過するものであってもよく、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するものであってもよい。また、本発明において、カラーフィルタとは、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を透過させ、特定の波長領域の光を遮光するフィルタを意味する。また、本発明において、赤外線透過フィルタとは、可視光を遮光し、近赤外線の少なくとも一部を透過させるフィルタを意味する。
<積層体>
本発明の積層体は、支持体上に本発明の硬化膜を有する。支持体としては、透明基材が挙げられ、ガラス基材であることが好ましく、銅を含有するガラス基材であることがより好ましい。特に本発明の硬化膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合、本発明の硬化膜を、銅を含有するガラス基材に上に積層して積層体とすることで、幅広い範囲の近赤外線を遮光することができる。
本発明の積層体は、支持体の表面に本発明の硬化膜が直接積層されていてもよいが、支持体と、本発明の硬化膜との間に、環状エーテル基を有する化合物を含む組成物(以下、組成物Aという)を用いて得られる膜を有することが好ましい。また、本発明の積層体が本発明の硬化膜と支持体との間に、上記組成物Aを用いて得られる膜(以下、膜Aともいう)を有する場合、膜Aの一方の面が支持体と接し、他方の面が本発明の硬化膜と接していることが好ましい。この態様によれば、本発明の硬化膜の支持体への密着性が良好である。特に、支持体として銅を含有するガラス基材を用いた場合においては、密着性を顕著に向上させることができる。
環状エーテル基を有する化合物が有する環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基が挙げられ、エポキシ基が好ましい。環状エーテル基を有する化合物の詳細については上述した硬化性組成物の環状エーテル基を有する化合物の項で説明した材料が挙げられる。
組成物Aにおいて、環状エーテル基を有する化合物の含有量としては特に限定はないが、組成物Aの全固形分に対して1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましく、5質量%以上であることがより一層好ましい。上限は100質量%とすることができる。また、上記組成物Aは、環状エーテル基を有する化合物の他に、更に、ラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤、溶剤、界面活性剤などを含んでいてもよい。これらの詳細については、上述した材料が挙げられる。
上記膜Aの厚さは、特に限定は無い。例えば、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上がさらに好ましい。
また、本発明の硬化膜の厚さt1と、上記膜Aの厚さt2との比は、t1:t2=1:0.002〜0.2であることが好ましく、1:0.006〜0.1であることがより好ましく、1:0.01〜0.04であることが更に好ましい。
本発明の積層体は、本発明の硬化膜上に無機膜を有することも好ましい態様である。無機膜としては、誘電体多層膜などが挙げられる。
誘電体多層膜とは、光の干渉の効果を利用して赤外線を遮光する膜である。具体的には、屈折率の異なる誘電体層(高屈折率材料層と低屈折率材料層)を、交互に2層以上積層してなる膜である。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上(好ましくは1.7〜2.5)の材料を用いることが好ましい。例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウムを主成分とし酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウムなどを少量含有させたものが挙げられる。低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下(好ましくは1.2〜1.6)の材料を用いることが好ましい。例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚みは、遮断しようとする赤外線の波長λ(nm)の0.1λ〜0.5λの厚みであることが好ましい。また、誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層の合計の積層数は、2〜100層が好ましく、2〜60層がより好ましく、2〜40層が更に好ましい。誘電体多層膜の詳細については、特開2014−41318号公報の段落番号0255〜0259の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の積層体は、本発明の硬化膜上に無機膜を有する場合、本発明の硬化膜の表面に無機膜が直接積層されていてもよいが、無機膜の製膜性や無機膜の密着性の観点から本発明の硬化膜と無機膜との間に平坦化層を更に有することが好ましい。平坦化層は、樹脂組成物などを用いて形成することができる。樹脂としては上述した材料が挙げられる。また、樹脂組成物は、更に、ラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤、溶剤、界面活性剤などを含んでいてもよい。これらの詳細については、上述した材料が挙げられる。
平坦化層の厚さは、特に限定は無い。例えば、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。
本発明の積層体は、近赤外線カットフィルタ、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
<硬化膜の製造方法>
次に、本発明の硬化膜の製造方法について説明する。本発明の硬化膜の製造方法は、上述した本発明の硬化性組成物を適用して硬化性組成物層を形成する工程と、硬化性組成物層を加熱硬化する工程と、を含む。
硬化膜の製造方法において、硬化性組成物は支持体上に適用することが好ましい。支持体としては、上述した支持体が挙げられる。支持体への硬化性組成物の適用方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009−145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット−特許に見る無限の可能性−、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ〜133ページ)や、特開2003−262716号公報、特開2003−185831号公報、特開2003−261827号公報、特開2012−126830号公報、特開2006−169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、硬化性組成物の適用方法については、国際公開WO2017/030174号公報、国際公開WO2017/018419号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
支持体に適用した硬化性組成物に対し、乾燥(プリベーク)を行ってもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下がさらに好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10秒〜3000秒が好ましく、40〜2500秒がより好ましく、80〜220秒がさらに好ましい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
硬化性組成物層を加熱硬化する工程において、加熱温度としては、例えば100〜240℃が好ましい。膜硬化の観点から、180〜230℃がより好ましい。加熱時間としては、2〜10分が好ましく、4〜8分がより好ましい。加熱硬化処理は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
本発明の硬化膜の製造方法においては、さらにパターンを形成する工程を含んでいてもよい。パターン形成方法としては、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法や、ドライエッチング法を用いたパターン形成方法が挙げられる。フォトリソグラフィ法でパターンを形成する場合、パターンを形成した後、硬化性組成物層の加熱硬化を行うことが好ましい。また、ドライエッチング法でパターンを形成する場合、硬化性組成物層の加熱硬化を行った後、パターンを形成することが好ましい。なお、本発明の硬化膜を平坦膜として用いる場合には、パターンを形成する工程を行わなくてもよい。以下、パターンを形成する工程について詳細に説明する。
(フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合)
フォトリソグラフィ法でのパターン形成方法は、本発明の硬化性組成物を適用して形成した硬化性組成物層に対しパターン状に露光する工程(露光工程)と、未露光部の硬化性組成物層を除去することにより現像してパターンを形成する工程(現像工程)と、を含むことが好ましい。必要に応じて、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。
(ドライエッチング法でパターン形成する場合)
ドライエッチング法でのパターン形成は、硬化性組成物層を加熱硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013−064993号公報の段落番号0010〜0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
<近赤外線カットフィルタ>
次に、本発明の近赤外線カットフィルタについて説明する。本発明の近赤外線カットフィルタは、本発明の硬化膜を含む。本発明の近赤外線カットフィルタは、支持体上に本発明の硬化膜を有することが好ましい。支持体としては、上述した支持体が挙げられ、透明基材であることが好ましく、ガラス基材であることがより好ましく、銅を含有するガラス基材であることが更に好ましい。この態様によれば、幅広い範囲の近赤外線を遮光することができる。
本発明の近赤外線カットフィルタは、本発明の硬化膜の他に、さらに、誘電体多層膜等の無機膜や、紫外線吸収層などを有していてもよい。近赤外線カットフィルタが、さらに、誘電体多層膜を有することで、視野角が広く、より近赤外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタが得られやすい。また、近赤外線カットフィルタが、さらに、紫外線吸収層を有することで、紫外線遮蔽性に優れた近赤外線カットフィルタとすることができる。紫外線吸収層としては、例えば、国際公開WO2015/099060号公報の段落番号0040〜0070、0119〜0145に記載の吸収層を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。誘電体多層膜としては、特開2014−41318号公報の段落番号0255〜0259の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
また、本発明の近赤外線カットフィルタが、本発明の硬化膜の他に、さらに、誘電体多層膜等の無機膜を有する場合、本発明の硬化膜の表面に無機膜が積層されていてもよく、本発明の硬化膜と無機膜との間に平坦化層が設けられていてもよい。無機膜の製膜性や無機膜の密着性の観点から本発明の硬化膜と無機膜との間に平坦化層が設けられていることが好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の硬化膜を有する。本発明の固体撮像素子の構成としては、本発明の硬化膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はない。例えば、以下のような構成が挙げられる。
支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明の硬化膜を有する構成である。さらに、デバイス保護膜上であって、本発明の硬化膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本発明の硬化膜上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素を形成する膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各画素よりも低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012−227478号公報、特開2014−179577号公報に記載の装置が挙げられる。
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、本発明の硬化膜を含む。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003−45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線−高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集−」、技術情報協会、326−328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430nm−485nm)、緑色領域(530nm−580nm)および黄色領域(580nm−620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加えさらに赤色領域(650nm−700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。
<赤外線センサ>
本発明の赤外線センサは、上述した本発明の硬化膜を含む。赤外線センサの構成としては、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。以下、本発明の赤外線センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110上に設けられている撮像領域は、近赤外線カットフィルタ111と、赤外線透過フィルタ114とを有する。また、近赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が積層している。カラーフィルタ112および赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
近赤外線カットフィルタ111は本発明の硬化性組成物を用いて形成することができる。近赤外線カットフィルタ111の分光特性は、使用する赤外発光ダイオード(赤外LED)の発光波長に応じて選択される。
カラーフィルタ112は、可視領域における特定波長の光を透過および吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014−043556号公報の段落番号0214〜0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
赤外線透過フィルタ114は、使用する赤外LEDの発光波長に応じてその特性が選択される。
図1に示す赤外線センサにおいて、平坦化層116上には、近赤外線カットフィルタ111とは別の近赤外線カットフィルタ(他の近赤外線カットフィルタ)がさらに配置されていてもよい。他の近赤外線カットフィルタとしては、銅を含有する層および/または誘電体多層膜を有するものなどが挙げられる。これらの詳細については、上述したものが挙げられる。また、他の近赤外線カットフィルタとしては、デュアルバンドパスフィルタを用いてもよい。また、図1に示す赤外線センサにおいて、近赤外線カットフィルタ111とカラーフィルタ112の位置が入れ替わっても良い。また、固体撮像素子110と近赤外線カットフィルタ111との間、および/または、固体撮像素子110と赤外線透過フィルタ114との間に他の層が配置されていてもよい。他の層としては、重合性化合物、樹脂および光重合開始剤とを含む組成物を用いて形成された有機物層などが挙げられる。また、カラーフィルタ112上に平坦化層が形成されていてもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」および「%」は、質量基準である。また、構造式中におけるMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
<ラジカル重合開始剤の熱分解温度の測定方法>
ラジカル重合開始剤の熱分解温度は、示差熱(TG−DTA)測定により測定した。具体的にはラジカル重合開始剤を23℃の状態から昇温速度10℃/分の条件で昇温して、ラジカル重合開始剤の重量減少が始まる温度を測定した。
<ラジカル重合開始剤の熱分解速度の測定方法>
ラジカル重合開始剤の熱分解速度は、示差走査熱量(DSC)測定により測定した。具体的には、ラジカル重合開始剤を23℃の状態から昇温速度10℃/分の条件で昇温して、100℃以降で発熱ピークの立ち上がり温度と、発熱ピークの極大温度とを結ぶ線の傾きにより熱分解速度を算出した。
<硬化性組成物の調製>
下記の表に示す原料を、下記の表に示す割合(質量部)で混合および撹拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)製)でろ過して硬化性組成物を調製した。
Figure 0006976344

Figure 0006976344

Figure 0006976344

Figure 0006976344

Figure 0006976344

Figure 0006976344
上記表に記載の原料は以下の通りである。
(近赤外線吸収色素)
A1〜A18、A20〜A22:下記構造の化合物。
A19:NK−5060((株)林原製、シアニン化合物)
Figure 0006976344

Figure 0006976344
(樹脂)
・樹脂1:下記構造の樹脂(重量平均分子量41,400、繰り返し単位に付記した数値はモル数である)のシクロペンタノン30質量%溶液。
Figure 0006976344

・樹脂2:下記構造の樹脂(重量平均分子量33100、繰り返し単位に付記した数値はモル数である)のシクロペンタノン30質量%溶液。
Figure 0006976344
(有機溶剤)
・有機溶剤1:シクロペンタノン
・有機溶剤2:3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド
・有機溶剤3:3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド
(ラジカル重合性化合物)
・ラジカル重合性化合物1:下記化合物の混合物(左側化合物と右側化合物とのモル比が7:3の混合物)
Figure 0006976344
・ラジカル重合性化合物2:下記化合物の混合物(高速液体クロマトグラフィーでの高さ比:46.15:49.39::4.46)
Figure 0006976344

・ラジカル重合性化合物3:下記化合物
Figure 0006976344

・ラジカル重合性化合物4:下記化合物
Figure 0006976344
(ラジカル重合開始剤A)
・ラジカル重合開始剤A1:下記構造の化合物(ピナコール化合物、熱分解温度182℃、熱分解速度56W/℃・mol)
Figure 0006976344

・ラジカル重合開始剤A2:下記構造の化合物(ピナコール化合物、熱分解温度178℃、熱分解速度54W/℃・mol。以下の構造式中、Phはフェニル基を表し、Buはブチル基を表す。)
Figure 0006976344

・ラジカル重合開始剤A3:下記構造の化合物(ピナコール化合物、熱分解温度178℃、熱分解速度54W/℃・mol。以下の構造式中、Phはフェニル基を表し、iPrはイソプロピル基を表す。)
Figure 0006976344

・ラジカル重合開始剤A4:下記構造の化合物(ピナコール化合物、熱分解温度172℃、熱分解速度50W/℃・mol。以下の構造式中、Phはフェニル基を表す。)
Figure 0006976344
(ラジカル重合開始剤B)
・ラジカル重合開始剤B1:IRGACURE−184(BASF社製、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物、熱分解温度151℃、熱分解速度4W/℃・mol)
・ラジカル重合開始剤B2:IRGACURE−2959(BASF社製、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物、熱分解温度165℃、熱分解速度8W/℃・mol)
・ラジカル重合開始剤B3:IRGACURE−651(BASF社製、ベンジルジメチルケタール化合物、熱分解温度170℃、熱分解速度5W/℃・mol)
・ラジカル重合開始剤B4:IRGACURE−OXE01(BASF社製、オキシム化合物、熱分解温度170℃、熱分解速度30W/℃・mol)
・シランカップリング剤:ウレイドプロピルトリメトキシシラン
・界面活性剤:下記式(B1−1)で表される繰り返し単位と、下記式(B3−1)で表される繰り返し単位とを有するポリマー(重量平均分子量=7,400、B1−1:B3−1=92.5:7.5(モル比))のプロピレングリコールモノメチルエーテル アセテート(PGMEA)30質量%溶液。下記式(B3−1)中、Xは、パーフルオロメチレン基またはパーフルオロエチレン基を表し、rは繰り返し単位数を表す。Xについては、−CF2−CF2−と、−CF2−と、−CH2−CF2−との個数の割合が、−CF2−CF2−:−CF2−:−CH2−CF2−=4.2:1.9:1.0である。
Figure 0006976344
・UV(紫外線)吸収剤:下記構造の化合物
Figure 0006976344
・重合禁止剤:p−メトキシフェノール
(分散液1)
下記組成の原料を、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO−3000−10(日本ビーイーイー(株)製))で、2時間かけて分散し、分散液1を調製した。
−分散液1の組成−・下記構造の近赤外線吸収色素(平均一次粒子径200nm)・・・11.6質量部
Figure 0006976344

・下記構造の顔料誘導体・・・・3.5質量部
Figure 0006976344

・分散剤(下記構造の樹脂、重量平均分子量22,900、主鎖の繰り返し単位に付記した数値はモル数であり、側鎖の繰り返し単位に併記される数値は、繰り返し単位の繰り返し数を示す。)・・・7.2質量部
Figure 0006976344

・シクロヘキサノン ・・・77.77質量部
(分散液2)
C.I.Pigment Black32の60質量部、C.I.Pigment Blue15:6の20質量部、C.I.Pigment Yellow139の20質量部、ソルスパース76500(日本ルーブリゾール(株)製、固形分濃度50質量%)の80質量部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの700質量部を混合し、ペイントシェーカーを用いて8時間分散して、分散液2を得た。
<近赤外線遮蔽性の評価>
各硬化性組成物を、ガラス基材(EAGLE XG、Corning社製、アルカリ土類ボロアルミノシリケート)上に製膜後の膜厚が2.5μmとなるようにミカサコーターにてスピンコート塗布し、ホットプレートを用いて100℃で120秒間乾燥し、次いで、220℃で5分間加熱して硬化膜を製造した。得られた硬化膜について、紫外可視近赤外分光光度計U−4100((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、波長700〜1300nmの範囲の透過率を測定し、硬化膜の極大吸収波長での透過率の値(T)を用いて以下の基準で近赤外線遮蔽性を評価した。
5:T≦1%
4:1%<T≦3%
3:3%<T≦5%
2:5%<T≦10%
1:10%<T
<凝集サイズの評価>
各硬化性組成物をガラス基材上に製膜後の膜厚が2.5μmとなるようにミカサコーターにてスピンコート塗布し、ホットプレートを用いて100℃で120秒間乾燥し、次いで、220℃で5分間加熱して硬化膜を製造した。
硬化膜が形成されたガラス基材を、23℃のアセトン中に5分間浸漬した後に、超高分解能走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用い、加速電圧2.0kV、観測倍率50000倍にて膜断面の画像を観察した。画像中、任意の3か所の穴空き部分(膜中に穴が空いたように観察される部分)の長軸方向の長さを測定し、その平均値を凝集サイズとして算出した。
<保存安定性の評価>
各硬化性組成物の調製後、ただちにガラス基材上に製膜後の膜の厚さが1.0μmとなるようにAct8(東京エレクトロン(株)製)を用いてスピンコート塗布し、次にホットプレートを用いて220℃で5分間加熱し、硬化膜を製造した。得られた硬化膜について、紫外可視近赤外分光光度計U−4100((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、波長400〜1,300nmの範囲における光透過率を測定した。調製直後の硬化性組成物を用いて製造した硬化膜の分光を分光1とする。
次に、調製直後の各硬化性組成物を、温度23℃のクリーンルームにて2カ月保管した後、保管後の各硬化性組成物を用いて上記と同様にして硬化膜を製造し、波長400〜1,300nmの範囲における光透過率を測定した。保管後の硬化性組成物を用いて製造した硬化膜の分光を分光2とする。
上記の分光1と分光2を用いて、各波長における調製直後の硬化性組成物を用いて製造した硬化膜と、保管後の硬化性組成物を用いて製造した硬化膜の透過率との差を算出し、波長400〜1,300nmの範囲における上記透過率の差の最大値(ΔT%)を求めて、以下の基準で保存安定性を評価した。
3:ΔT%<1
2:1≦ΔT%<5
1:5≦ΔT%
Figure 0006976344

Figure 0006976344

Figure 0006976344

Figure 0006976344

Figure 0006976344

Figure 0006976344
上記表に示す通り、実施例はいずれも保存安定性が良好で、凝集サイズの小さい硬化膜を製造することができた。
実施例1の硬化性組成物を、ガラス基材から弗燐酸塩ガラス基材(製品名:NF−50、AGCテクノグラス社製、大きさ50mm×50mm、厚さ0.05mm、銅を含有するガラス基材である)に変更し、上記近赤外遮光性を評価したところ、同様な効果が得られた。
110:固体撮像素子、111:近赤外線カットフィルタ、112:カラーフィルタ、114:赤外線透過フィルタ、115:マイクロレンズ、116:平坦化層

Claims (21)

  1. 近赤外線吸収色素と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤Aと、前記ラジカル重合開始剤Aとは異なるラジカル重合開始剤Bとを含み、
    前記ラジカル重合開始剤Aがピナコール化合物であ
    前記ラジカル重合開始剤Bが、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物およびベンジルジメチルケタールから選ばれる少なくとも1種である、硬化性組成物。
  2. 近赤外線吸収色素と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤Aと、前記ラジカル重合開始剤Aとは異なるラジカル重合開始剤Bとを含み、
    前記ラジカル重合開始剤Aがピナコール化合物であ
    前記ラジカル重合開始剤Bの熱分解温度が100〜270℃である、硬化性組成物。
  3. 近赤外線吸収色素と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤Aと、前記ラジカル重合開始剤Aとは異なるラジカル重合開始剤Bとを含み、
    前記ラジカル重合開始剤Aがピナコール化合物であ
    前記ラジカル重合開始剤Bの熱分解速度が3〜10W/℃・molである、硬化性組成物。
  4. 近赤外線吸収色素と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤Aと、前記ラジカル重合開始剤Aとは異なるラジカル重合開始剤Bとを含み、
    前記ラジカル重合開始剤Aは、熱分解温度が120〜270℃であり、かつ、熱分解速度が33〜60W/℃・molである化合物であり、
    前記ラジカル重合開始剤Bが、α−ヒドロキシアセトフェノン化合物およびベンジルジメチルケタールから選ばれる少なくとも1種である、硬化性組成物。
  5. 近赤外線吸収色素と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤Aとを含み、
    前記近赤外線吸収色素は、単環または縮合環の芳香族環を含むπ共役平面を有する化合物であり、
    前記ラジカル重合開始剤Aがピナコール化合物であ
    前記ラジカル重合性化合物の100質量部に対して前記ラジカル重合開始剤Aを20〜200質量部含有する、硬化性組成物。
  6. 前記近赤外線吸収色素の含有量が、前記硬化性組成物の全固形分に対して3〜50質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  7. 前記近赤外線吸収色素は、ピロロピロール化合物、シアニン化合物およびスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  8. 前記ラジカル重合開始剤Aの含有量が、硬化性組成物の全固形分に対して0.1〜20質量%である、請求項1〜のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  9. 前記ラジカル重合性化合物の100質量部に対して前記ラジカル重合開始剤Aを1〜100質量部含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
  10. さらに、前記ラジカル重合開始剤Aとは異なるラジカル重合開始剤Bを含む、請求項に記載の硬化性組成物。
  11. 前記ラジカル重合開始剤Aの100質量部に対して前記ラジカル重合開始剤Bを0.1〜2000質量部含有する、請求項1、2、3、4または10に記載の硬化性組成物。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載の硬化性組成物から得られる硬化膜。
  13. 支持体上に請求項12に記載の硬化膜を有する積層体。
  14. 支持体上に硬化膜を有する積層体であって、
    前記硬化膜は、近赤外線吸収色素と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤Aとを含み、前記ラジカル重合開始剤Aがピナコール化合物である、硬化性組成物から得られる硬化膜であり、
    前記支持体と前記硬化膜との間に、環状エーテル基を有する化合物を含む組成物を用いて得られる膜を有する積層体。
  15. 支持体上に硬化膜を有する積層体であって、
    前記硬化膜は、近赤外線吸収色素と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤Aとを含み、前記ラジカル重合開始剤Aがピナコール化合物である、硬化性組成物から得られる硬化膜であり、
    前記支持体が銅を含有するガラス基材である積層体。
  16. 支持体上に硬化膜を有する積層体であって、
    前記硬化膜は、近赤外線吸収色素と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合開始剤Aとを含み、前記ラジカル重合開始剤Aがピナコール化合物である、硬化性組成物から得られる硬化膜であり、
    前記硬化膜上に無機膜を有する積層体。
  17. 前記硬化膜と前記無機膜との間に平坦化層を有する、請求項16に記載の積層体。
  18. 請求項12に記載の硬化膜を有する近赤外線カットフィルタ。
  19. 請求項12に記載の硬化膜を有する固体撮像素子。
  20. 請求項12に記載の硬化膜を有する画像表示装置。
  21. 請求項12に記載の硬化膜を有する赤外線センサ。
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