次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は、本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態に限定されるものではない。
本形態の新聞用紙は、原料パルプの50質量%以上が古紙パルプであり、原料パルプに由来する灰分が8〜12%であり、少なくとも炭酸カルシウム及びホワイトカーボンが添加されており、製品灰分が15〜40%であり、坪量が40g/m2以下である。したがって、本形態の新聞用紙を製造するにあたっては、原材料として、古紙パルプ等の原料パルプ及び炭酸カルシウムやホワイトカーボン等の填料を主に使用する。
好ましくは、原料パルプとして、図1に示すように、古紙(脱墨)パルプ(DIP)の他に、機械パルプ(MP)及びクラフトパルプ(KP)を少なくとも使用する。そして、古紙パルプ及び機械パルプには、それぞれ分子量が120万以下の凝結剤(1)を添加する。また、クラフトパルプには、分子量が500万〜1000万の凝結剤(2)を添加する。凝結剤(1)を添加した後の古紙パルプ及び機械パルプ並びに凝結剤(2)を添加した後のクラフトパルプは、配合ボックス10において配合する。この配合によって得られた配合パルプ(配合P)は、ファンポンプ20、スクリーン30と順に通し、濃度を2質量%以下とする。炭酸カルシウムやホワイトカーボン等の填料は、ファンポンプ20に通す前の配合パルプに、つまり、配合ボックス10とファンポンプ20との間の配合パルプに添加する。スクリーン30を通り、かつ濃度を2質量%以下とした配合パルプには、分子量が1000万〜2000万の凝集剤を添加する。この凝集剤の添加により得られた紙料は、抄紙機40において中性抄紙、本形態においてpH6〜9で抄紙する。この中性抄紙は、抄紙速度1000m/分以上で、かつ坪量が40g/m2以下となるように行う。以下、詳細に説明する。
(原料パルプ)
原料パルプとしては、例えば、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)等のグランドパルプ(GP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等のクラフトパルプ(KP)、機械パルプ(MP)、機械パルプを元来多く含有する茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、更紙古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、中質古紙、下級古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、無選別古紙等から製造される離解・脱墨古紙パルプや離解・脱墨・漂白古紙パルプ等の古紙(脱墨)パルプ(DIP)などの中から一種を又は複数種を選択して使用することができる。
ただし、本形態においては、前述したように、原料パルプとして、古紙パルプ、機械パルプ、及びクラフトパルプを少なくとも使用し、特に原料パルプの50質量%以上(より好適には55質量%以上)を古紙パルプとする。古紙パルプの配合割合が50質量%以上であると、紙力の低下や裏抜けの問題が顕著になるため、本発明の効果がいかんなく発揮される。
このように古紙パルプを高配合にする場合は、古紙パルプのCSF(カナダ標準ろ水度)を300〜380cc(好適には330〜360cc)に調整しておくのが好ましい。CSFが300cc未満であると、得られる原料パルプの濾水性が低下し生産性が悪くなる問題と、古紙由来の微細繊維に起因する紙粉や印刷欠陥が増加する問題が顕在化する場合がある。他方、CSFが380ccを超えると、新聞用紙の坪量を40g/m2以下にする場合、強度が不足する原因になる場合がある。なお、CSFは、JIS P 8121−2:2012に準拠して測定した値である。
一方、機械パルプとしては、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、及びリファイナーメカニカルパルプ(RMP)の中の少なくともいずれか一種を使用するのが好ましく、サーモメカニカルパルプを使用するのがより好ましい。この点、機械パルプを配合すると、紙力強度及び印刷適性が低下し、また、紫外線等の光線によって褪色し易くなる。しかるに、機械パルプとしてサーモメカニカルパルプを使用すると、当該問題を緩和することができる。サーモメカニカルパルプは、原料木材を予め加熱することで柔軟化し、その後に機械的に磨砕することで得られるパルプである。したがって、サーモメカニカルパルプは、パルプ繊維の損傷が比較的少なく、また、繊維長が比較的均一化している。
本件発明者等の知見では、新聞用紙を構成する各種パルプそれぞれがもつイオン性は異なっており、本形態で用いる凝集剤や凝結剤が発現させる効果も、実質それぞれの原料パルプで異なるため、出来る限り用いる原料パルプに適応した凝集剤、凝結剤の利用が望まれる。特に、新聞用紙で多用される古紙パルプや微細繊維を多く含む機械パルプはその影響が大きく、本形態ではそれぞれの構成パルプに適応した凝集剤、凝結剤の利用について鋭意検討し本形態を完成させている。
(凝結剤(1)の添加)
前述したように、古紙パルプ及び機械パルプには、好ましくはクラフトパルプと配合するに先立って、より好ましくは他の原料パルプと配合するに先立って(例えば、古紙パルプ及び機械パルプを相互に配合するに先立って)、それぞれ分子量(質量平均分子量)が120万以下の凝結剤(1)を添加する。凝結剤(1)の添加は、古紙パルプ及び機械パルプを配合した後に行っても、配合する前にそれぞれに対して行ってもよい。ただし、各別に添加する方が好ましい。
前述したように、古紙パルプと機械パルプはアニオントラッシュ(アニオン性夾雑物)やマイクロピッチ、濁度成分を多く含むため、凝集力より凝結力が勝る凝結剤、中でも低分子量の凝結剤の利用が好適である。
凝結剤(1)を添加するにあたっては、オンラインのカチオンデマンド測定装置によるカチオンデマンド測定値に基づき添加量を制御するのが好ましい。この制御を行うことで、中性抄紙の際の濾水安定性を図ることができ、湿紙の断紙を減らすことができる。
凝結剤(1)としては、例えば、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ポリダドマック、PDADMAC)、ポリアミン(PAm)、ポリエチレンイミン(PEI)等の有機高分子系凝結剤や、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等の無機系凝結剤などを使用することができる。ただし、填料の歩留り向上効果が高いことから、凝結剤(1)としては、カチオン性の凝結剤、特にカチオン性の有機高分子系凝結剤を使用するのが好ましい。また、カチオン性の有機高分子系凝結剤と共に無機系凝結剤を使用する場合は、無機系凝結剤として、硫酸バンドを使用するのが好ましい。
カチオン性の有機高分子系凝結剤としては、アンモニア、第1級アミン、第2級アミン、及び第3級アミンの中から選択された少なくともいずれか一種以上のアミン類と、ポリカチオン物質と、質量平均分子量が10000〜70000のポリアルキレンイミンとを反応させて得たポリアルキレンイミン変性物を使用するのが好ましい。
カチオン性の有機高分子系凝結剤の配合割合は、固形分換算で、好ましくは0.1〜1.0kg/絶乾パルプトン、より好ましくは0.15〜0.60kg/絶乾パルプトン、特に好ましくは0.30〜0.45kg/絶乾パルプトンである。配合割合が0.1kg/絶乾パルプトン未満であると、アニオントラッシュが十分に凝結せず、また、中和効果が十分に得られず、填料の歩留り向上効果が不十分であるとされるおそれがある。他方、配合割合が1.0kg/絶乾パルプトンを超えると、抄紙系内のカチオン性が高くなり過ぎ、不要な凝結やサイズ効果のむらが生じ、歩留りがかえって悪くなり、地合むらが生じるおそれもある。なお、凝結剤(1)一般としては、その配合割合が、固形分換算で、好ましくは1.0〜2.0kg/絶乾パルプトン、より好ましくは1.2〜1.8kg/絶乾パルプトン、特に好ましくは1.3〜1.7kg/絶乾パルプトンである。
凝結剤(1)の分子量は、前述しように120万以下であるが、より好ましくは70万以下、特に好ましくは60万以下である。また、凝結剤(1)の分子量は、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、特に好ましくは40万以上である。分子量が120万を超えると、填料が十分に凝結せず、十分な歩留り向上効果が得られないおそれがある。他方、分子量が10万未満であると、凝結能力が強くなり過ぎるおそれがある。結果、偏凝結が発生したり、スラリーの粘度が上昇したりして、地合の悪化につながるおそれがある。また、得られる新聞用紙の紙力が低下するおそれもある。なお、分子量(質量平均分子量)は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)を使用して測定した値である。
凝結剤(1)としてカチオン性の凝結剤を使用する場合、当該カチオン性の凝結剤のカチオン電荷密度は、好ましくは5meq/g以上、より好ましくは8meq/g以上、特に好ましくは10meq/g以上である。また、カチオン電荷密度は、好ましくは25meq/g以下、より好ましくは22meq/g以下、特に好ましくは20meq/g以下である。カチオン電荷密度が5meq/g未満であると凝結剤(1)の基本目的である微細な繊維(パルプ)の凝集が得られ難い。他方、カチオン電荷密度が25meq/gを超えると、微細繊維と短繊維、長繊維との凝集が生じ、紙料スラリー中で不均等な紙料パルプ分散状態となり地合いが低下するおそれがある。
なお、カチオン電荷密度は、次の方法で測定した値である。まず、試料をpH4.0の水溶液(凝結剤水溶液)とする。次に、この水溶液について流動電位法に基づく粒子荷電測定装置(Muteck PCD−03)にて1/1000規定のポリビニル硫酸カリウム水溶液を用いた滴定によって、アニオン要求量(μeq/l)を測定する。そして、得られたアニオン要求量を水溶液の固形分濃度(g/l)で除し、この除した値をカチオン電荷密度(meq/g)とする。複数の凝結剤を併用した場合、カチオン電荷密度は、凝結剤全体としてのカチオン電荷密度をいう。
(凝結剤(2)の添加)
前述したように、クラフトパルプには、古紙パルプ及び機械パルプと配合するに先立って、好ましくは古紙パルプや機械パルプ等の他の原料パルプと配合するに先立って、分子量が500万〜1000万の凝結剤(2)を添加する。分子量が500万未満であると、後段で含有させる古紙パルプ及び機械パルプとの凝結性が低下し、クラフトパルプとの均一な紙層を得難くなるおそれがある。他方、分子量が1000万を超えると、凝結剤を用いた場合の元来の課題である地合い形成が不安定になり、フロック地合となるおそれがある。
クラフトパルプに添加する凝結剤(2)としても、古紙パルプや機械パルプの場合と同様に、凝集剤の利用では過大なフロックの形成が生じる可能性があるため、比較的低分子量の凝結剤を利用するのが好ましいが、アニオントラッシュ(アニオン性夾雑物)やマイクロピッチ、濁度成分の含有が比較的少ないためカチオン性の高い凝結剤の使用は控え、クラフトパルプの被覆とマイルドな凝結性を確保するために、古紙パルプ及び機械パルプの場合に利用した凝結剤よりも高分子量の凝結剤を利用するのが好ましい。
凝結剤(2)としては、例えば、アニオン性凝結剤化合物(例えばアニオン性有機ポリマー、アニオン性無機化合物、又はその両方)、(メタ)アリルアミン又はジ(メタ)アリルアミン・マレイン酸共重合体、(メタ)アリルアミン又はジ(メタ)アリルアミン・シトラコン酸共重合体、(メタ)アリルアミン又はジ(メタ)アリルアミン・イタコン酸、(メタ)アリルアミン又はジ(メタ)アリルアミン・フマル酸共重合体などの両性有機凝結剤などを使用することができる。ただし、カチオン電荷密度が低い古紙パルプ及び機械パルプとの組合せから、凝結剤(2)としては、カチオン性の凝結剤を使用するのが好ましい。
カチオン性の凝結剤としては、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、カチオン性ポリアクリルアミド等を使用することができる。
カチオン性の凝結剤の配合割合は、固形分換算で、好ましくは1.0〜2.0kg/絶乾パルプトン、より好ましくは1.2〜1.8kg/絶乾パルプトン、特に好ましくは1.3〜1.7kg/絶乾パルプトンである。配合割合が1.0kg/絶乾パルプトン未満であると、クラフトパルプへのカチオン性凝結剤の付与量が不十分で、後段で含有させる古紙パルプ及び機械パルプとの凝結性が低下し、クラフトパルプとの均一な紙層を得がたくなる。他方、配合割合が2.0kg/絶乾パルプトンを超えると、クラフトパルプへのカチオン性凝結剤の付与量が過剰になりゃすく、地合いの悪化や、紙料のフロック化が生じ均一な紙層が得難くなる。なお、凝結剤(2)一般としては、その配合割合が、固形分換算で、好ましくは1.5〜2.5kg/絶乾パルプトン、より好ましくは1.7〜2.3kg/絶乾パルプトン、特に好ましくは1.9〜2.1kg/絶乾パルプトンである。
凝結剤(2)の分子量は、前述しように500万〜1000万であるが、より好ましくは600万〜900万、特に好ましくは700万〜800万である。分子量が500万未満であると、古紙パルプや機械パルプと比べ比較的長繊維が多いクラフトパルプと、後段で配合される古紙パルプや機械パルプとの均一な分散による紙層形成が得られ難い問題が生じる。他方、分子量が1000万を超えると、長大な分子量による高分子鎖により紙料の均一な分散が妨げられ、均一な地合いの新聞用紙が得られなくなり、引っ張りや引き裂きなどの紙質強度も低下する問題が生じる。なお、分子量(質量平均分子量)の測定方法は、凝結剤(1)と同様である。
凝結剤(2)としてカチオン性の凝結剤を使用する場合、当該カチオン性の凝結剤のカチオン電荷密度は、好ましくは3.0meq/g以上、より好ましくは4.5meq/g以上、特に好ましくは6.0meq/g以上である。また、カチオン電荷密度は、好ましくは18meq/g以下、より好ましくは15meq/g以下、特に好ましくは11meq/g以下である。カチオン電荷密度が3.0meq/g未満であるとクラフトパルプに十分なカチオン性を付与できず、古紙パルプ及び機械パルプと電荷的に結合され、組み合わされた紙層形成が得られ難い問題が生じる。他方、カチオン電荷密度が18meq/gを超えると、過度の高分子鎖により均一な紙料分散が阻害され、不均質な地合い不良の紙層形成が生じる問題が有る。なお、カチオン電荷密度の測定方法及び複数の凝結剤を併用する場合については、凝結剤(1)の場合と同様である。
いずれにしろ凝結剤は、原料パルプの性状に対して取捨選択して用いることが好ましく、抄紙工程のフローを勘案すると、例えば原料パルプ製造工程から原料パルプを受け入れ、流送白水を脱水し、白水にて再希釈された受け入れ原料パルプに個々の凝結剤を添加し、配合用の紙料を調整することが好ましい。
(填料の添加)
前述したように、凝結剤(1)を添加した後の古紙パルプ及び機械パルプ並びに凝結剤(2)を添加した後のクラフトパルプは、配合ボックス10において配合する。この配合によって得られた配合パルプ(配合P)には、ファンポンプ20に通すに先立って填料を添加する。填料をファンポンプ20に通すに先立って添加すると、当該填料が分散し易く(分散性向上)、また、抄紙機40における初期脱水において填料の抜けが少なくなる(歩留り向上)。
填料としては、無機填料及び有機填料のいずれをも使用することができる。無機填料としては、例えば、重質炭酸カルシム、軽質炭酸カルシウム、クレー、シリカ、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸ナトリウムの鉱酸による中和によって製造される非晶質シリカ等を使用することができる。また、有機填料としては、例えば、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン系樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。以上の填料は、単独で使用しても、複数を組み合わせて使用してもよい。
ただし、填料としては、少なくとも炭酸カルシウム及びホワイトカーボンを使用するのが好ましい。これらのうち、炭酸カルシウムは、平均粒子径が1.0〜2.0μm(好適には1.6〜1.8μm)の重質炭酸カルシウムを使用するのが好ましい。更には、粒度分布がシャープな、エンジニアード重質炭酸カルシウムが好適に用いられる。炭酸カルシウムとして重質炭酸カルシウムを使用すると、軽質炭酸カルシウムを使用する場合と比べて粒径が不揃いで、異型な性状を有するため原料パルプ繊維の隙間を埋めたり、原料パルプに物理的に歩留る量が増えるため、原料パルプに対する無機填料の含有量を増加でき、高灰分化が容易になる。ただし、重質炭酸カルシウムの平均粒子径が1.0μm未満であると、新聞用紙の高速抄造における脱水にて灰分の流失量が増加する問題が生じやすくなる。また、重質炭酸カルシウムの平均粒子径が2.0μmを超えると、硬質な炭酸カルシウムであるが故に設備の汚損量が増加すると共に、不透明度が低下し、紙質強度も低下する恐れが生じる。なお、重質炭酸カルシウムの平均粒子径は、レーザー回折式粒子径測定装置「マイクロトラック」〔株式会社日機装製(商品名)〕で測定した値である。
さらに、炭酸カルシウムとしては、シリカ複合重質炭酸カルシウム、特に平均粒子径が1.5〜2.0μm(好適には1.7〜1.8μm)で、かつ0.021〜2000μmの範囲を132対数分割して測定した粒度分布における最頻値の頻度割合が5〜15%(好適には7〜12%)のシリカ複合重質炭酸カルシウムを使用するのも好ましい。炭酸カルシウムとしてシリカ複合重質炭酸カルシウムを使用すると、単なる重質炭酸カルシウムを使用する場合と比べて重質炭酸カルシウムを被覆するシリカの高い屈折率により不透明度を向上させることができる。ただし、シリカ複合重質炭酸カルシウムの平均粒子径が1.5μm未満であると、そもそもシリカ複合重質炭酸カルシウムの紙中での歩留が低下する問題と、高い屈折率の恩恵が得難い場合がある。また、シリカ複合重質炭酸カルシウムの平均粒子径が2.0μmを超えると、シリカによる被覆にムラが生じやすくなると共に、シリカ複合による高不透明度化が頭打ちになる現象が生じる。さらに、シリカ複合重質炭酸カルシウムの上記頻度割合が5%未満であると、不透明度向上効果が得難く、分散性が低下する場合がある。また、シリカ複合重質炭酸カルシウムの上記頻度割合が15%を超えると、製造コスト的に現実的でない面と不透明度向上効果が頭内になる現象が生じる。シリカ複合重質炭酸カルシウムの平均粒子径は、レーザー回折式粒子径測定装置「マイクロトラック」〔株式会社日機装製(商品名)〕にて測定した値である。
炭酸カルシウムと併用する填料としてのホワイトカーボンは、平均粒子径が15〜25μm(好適には18〜23μm)であるのが好ましい。平均粒子径が15μm未満であると、歩留が極端に低下し不透明度向上効果が得難くなる問題画がある。他方、平均粒子径が25μmを超えると、紙粉の発生を助長する問題と、印刷時に粉落ちやベタ印刷部のインク吸収ムラが生じる問題がある。
以上のほか、填料としては、再生粒子、特にシリカ複合再生粒子も使用することができる。再生填料は、(1)製紙スラッジを、断面積710mm2以下、長さ30mm以下の形状に成形する成形工程、(2)この成形で得られた成形物を低酸素条件下で600℃未満の温度で間接加熱して炭化する工程、(3)この炭化で得られた炭化物を600〜800℃で燃焼する燃焼工程、及び(4)この燃焼で得られた燃焼灰を平均粒子径が0.1〜10μmとなるように粉砕する粉砕工程を経ることで製造するのが好ましい。再生粒子は複数種類の無機微粒子の多孔質凝集体であるため、填料として再生粒子を使用すると、高い不透明性を担保することができる。
シリカ複合再生粒子とは、以上の再生粒子の表面にシリカを複合させた粒子である。再生粒子の表面にシリカを複合させると、再生粒子の有するカチオン性とシリカの有するアニオン性とにより、パルプ繊維間の結合が適度に阻害され、得られる新聞用紙の嵩が高くなる。また、シリカを複合させると、得られる新聞用紙の白色度が向上する。さらに、シリカ複合させると、填料としての吸油量が高まる。したがって、吸収乾燥型印刷インクを新聞用紙表面で保持乾燥することができるようになり、軽量な新聞用紙の印刷不透明度を向上させることができる。加えて、シリカを複合させると、元来ポーラスな再生粒子の表面がシリカで被覆されることになるため、比表面積が極めて広くなり、不透明度が極めて高くなる。
シリカ複合再生粒子に含まれるシリカの割合は、酸化物換算で、好ましくは50質量%以下、より好ましくは49質量%以下、特に好ましくは48質量%以下である。また、好ましくは10質量%以上、より好ましくは41質量%以上、特に好ましくは42質量%以上である。シリカの割合が50質量%を超えると、微細なシリカ粒子の充填が過度となり、吸油量及び不透明度の低下を招くおそれがある。他方、シリカの割合が10質量%未満であると、シリカによる被覆が不十分となり、吸油量及び不透明度の向上効果が得られないおそれがある。なお、シリカの割合は、元素分析を行うことで算出することができる。
シリカ複合再生粒子の内添(添加)量は、灰分換算(灰分率)で絶乾パルプ当たり、好ましくは8〜18質量%、より好ましくは10〜16質量%、特に好ましくは11〜15質量%である。灰分率が8質量%未満であると、用紙同士の摩擦抵抗が少なくなり、得られた新聞用紙を巻き取り難くなる。灰分率が18質量%を超えると、引張強度や引き裂き強度等の新聞用紙に求められる紙質強度が確保しがたくなると共に、輪転機での紙詰まりが生じやすくなり、操業性が悪化する恐れがある。
なお、灰分率は、JIS P 8251に準拠して測定した値である。具体的には、用紙(試験片)を室温下でるつぼに入れ、次いでマッフル炉に入れ、炉の温度を525℃まで徐々に上げる。525℃の燃焼温度を3時間以上保ち、黒化物が認められなくなるまで用紙を完全に灰化する。次いで、マッフル炉からるつぼを取り出し、デシケータで室温まで冷却し、灰化物を含むるつぼの質量を測定する。そして、次の式により試験片の灰分率を算出する。
灰分率=(灰化物の質量/試験片の絶乾質量)×100
なお、灰化物の質量は、灰化物を含むるつぼの質量から空のるつぼの質量を差し引いて求める。また、試験片の絶乾質量は、含有水分率測定を2回行い、得られた結果の平均値と試験片の質量の実測値とから求める。
填料を添加した配合パルプは、ファンポンプ20、スクリーン30と順に通し、濃度を2質量%以下とする。濃度が2質量%を超えると、紙料と填料との均一な分散・混合が得られ難くなるとともに、地合いの低下を招く問題が生じる。
濃度を2質量%以下とするのは、ファンポンプ20を通す前でも、ファンポンプ20を通した後、スクリーン30を通す前でも、スクリーン30を通した後でもよい。ただし、ファンポンプ20を通す前が、紙料中に凝集剤をムラ無く分散させ易く好ましい。
(凝集剤の添加)
前述したように、填料を添加し、ファンポンプ20及びスクリーン30を通し、濃度を2質量%以下とした配合パルプには、分子量(質量平均分子量)が1000万〜2000万の凝集剤を添加する。凝集剤をスラリー(繊維懸濁液)に添加すると、高い分子量の凝集剤の結合力によって、先に含有させた凝結剤の効果で、予備凝集している填料等の微細な無機粒子や、古紙パルプや機械パルプ由来の微細なパルプ繊維が紙料中のパルプ繊維と凝集する。ただし、分子量が1000万未満であると、予備凝集している填料等の微細な無機粒子や、古紙パルプや機械パルプ由来の微細なパルプ繊維と紙料中のパルプ繊維との結合が不十分で、紙質強度や不透明性向上効果が損なわれる問題が生じる。他方、分子量が2000万を超えると、凝集剤を用いた場合に生じる紙料のフロック化が顕在化し、紙質強度や不透明性の低下、地合いの悪化を招く問題が生じる。なお、凝集剤とは、2.5meq/g以下の電荷密度、かつ1000万以上の分子量を有する物質をいう。
凝集剤としては、カチオン性の凝集剤を使用するのが好ましい。カチオン性の凝集剤を使用すると、凝結剤(1)や凝結剤(2)の添加によって凝結している微細な無機粒子や、古紙パルプや機械パルプ由来の微細なパルプ繊維等のアニオン性物質が凝集して予備凝集体を形成するので、ピッチ濃度が低減し、地合が向上すると共に、汚れ、欠陥、断紙等が減少する。また、アニオン物質との中和により、その他製紙用助剤薬品の歩留りが向上する。
カチオン性の凝集剤としては、例えば、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体の単独重合物又は非イオン性単量体との共重合物、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロライド)、ジアルキルアミン−エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライド−ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、ポリビニルアミジン、キトサン、ポリアルキレンポリアミン等を単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。ただし、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体及び非イオン性単量体の共重合物を使用するのが好ましく、(メタ)アクリレート系カチオン性単量体及び非イオン性単量体の共重合物とポリアルキレンポリアミンとの混合物を使用するのが特に好ましい。これらの凝集剤を使用すると、填料として再生粒子を使用した場合において、再生粒子の凝集性が向上し、また、スラリーの増粘が抑制される。
(メタ)アクリレート系カチオン性単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等を例示することができる。ただし、(メタ)アクリル系単量体を使用するのが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライを使用するのがより好ましく、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドを使用するのが特に好ましい。これらの(メタ)アクリレート系カチオン性単量体を使用すると、填料として再生粒子を使用した場合において、再生粒子の凝集性が向上し、また、スラリーの増粘が抑制される。
(メタ)アクリレート系カチオン性単量体との共重合に使用する非イオン性単量体としては、例えば、アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N、N−ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト等を例示することができる。ただし、アクリルアミドを使用すると、所望の分子量及び電荷密度を有するカチオン性の合成高分子を得やすくなる。
カチオン性の凝集剤の添加量は、純分で、好ましくは5〜40kg/t、より好ましくは8〜20kg/t、特に好ましくは10〜15kg/tである。添加量が5kg/t未満であると、予備凝集させた微細な無機粒子やタルク、ホワイトカーボン、シリカ複合粒子等の填料の歩留り向上効果が得られ難くなる。他方、カチオン性の凝集剤の添加量が40kg/tを超えると、地合いが悪化するおそれがある。
カチオン性の凝集剤の分子量は、前述したように1000万〜2000万であるが、好ましくは1200万〜1800万、より好ましくは1400万〜1600万である。分子量が1000万未満であると、凝集効果が不十分とされるおそれがある。また、分子量が2000万を超えても凝集効果が不十分とされるおそれがあり、更にコスト高となる。
凝集剤としてカチオン性の水溶性重合体又は共重合体を使用する場合、カチオン性単量体の割合は、好ましくは5〜100モル%、より好ましくは10〜100モル%、特に好ましくは20〜80モル%である。
(中性抄紙)
前述したように、凝集剤の添加により得られた紙料は、抄紙機40において中性抄紙(好ましくはpH6〜9)する。この中性抄紙は、抄紙速度1000m/分以上(好適には、1100〜1400m/分)で、かつJIS P 8124:2011に準拠する坪量が40g/m2以下(好適には、36〜39g/m2)となるように行う。坪量が40g/m2以下であると紙力の低下や裏抜けの問題が顕著になるため、本発明による効果がいかんなく発揮される。
中性抄紙は、両面脱水機構を有するギャップフォーマ抄紙機、ハイブリッドフォーマ抄紙機、オントップフォーマ抄紙機等を使用して行うことができる。ただし、ヘッドボックスから噴射された紙料が2枚のワイヤー(ツインワイヤー)に挟まれて流れ、両側(表裏)からほぼ均等に脱水されるギャップフォーマ抄紙機を使用するのが好ましく、ツインワイヤーの表裏にフォーミングロール及びフォーミングシューが備わり(フォーミングゾーン)、当該フォーミングロール及びフォーミングシューによって紙料を両面脱水するギャップフォーマ抄紙機を使用して行うのがより好ましい。
本件発明においては、新聞用紙を構成する各種原料パルプへの選択的な凝結剤の添加と、抄紙前段での凝集剤の添加を行うため高い濾水性を有する紙料となり、均質な地合いの形成が容易になっている。本件発明者等の知見では、前記濾水性の高い紙料をストックインレットから直接2枚のワイヤー間に噴き出させるギャップフォーマ抄紙機を採用することで、紙料を2枚のワイヤー間に噴出させる際に、紙料の噴出速度がワイヤーの速度より速くすることで、ワイヤーと紙料が接触する臨界で表裏共に紙料の絡み合いが生じ、直後の脱水ブレード、サクションロールによる脱水機構を併用することで、迅速かつ均一な紙層形成が得られ、新聞用紙の表裏差が少なくなり、均一な地合いと高い不透明性を有する新聞用紙を1000m/分以上の高速抄紙で得ることができる。
ギャップフォーマ抄紙機による抄紙は、MD方向(抄紙方向)の超音波パルス伝播速度とCD方向の超音波パルス伝播速度との比(MD/CD比)が、1.8以上となるように行うのが好ましく、1.9以上となるように行うのがより好ましく、2.0以上となるように行うのが特に好ましい。MD/CD比が1.8未満であると、MD方向の引張り強さが不十分になり、印刷時に断紙が発生し易くなるおそれがある。MD/CD比の上限値は、好ましくは2.5である。なお、超音波パルス伝播速度とは、超音波パルスが用紙の一定距離を伝播するのに要する時間から算出した値である。MD/CD比は、紙中の繊維配向性を示す。超音波パルス伝播速度比は、例えば、野村商事株式会社製のSONIC SHEET TESTERを使用して測定することができる。MD/CD比は、抄紙機ヘッドボックスのエッジフローや、再循環弁開度、スライス開度、スライス位置、ジェット/ワイヤー比(J(ワイヤー上の紙料の流れ速度)/W(ワイヤーの速度)比)等を調整することで所望の値とすることができる。
(その他)
新聞用紙を製造するにあたっては、抄紙機のほか、例えば、プレドライヤー、アフタードライヤー、サイズ剤コーター、カレンダー等の公知の装置を使用することができる。
原料パルプから紙料を得るにあたっては、サイズ剤を内添することができる。サイズ剤としては、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/マレイン酸半エステル共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子、ロジン、トール油とフタル酸等とのアルキド樹脂ケン化物、石油樹脂とロジンとのケン化物などのアニオン性低分子化合物、イソジアネート系ポリマー等のカチオン性ポリマー等を使用することができる。ただし、サイズ剤としては、水溶性高分子を使用するのが好ましく、澱粉を使用するのがより好ましく、次亜塩素酸ナトリウム等による酸化反応によって低分子量化され分子中へカルボキシル基、アルデヒド基、カルボニル基等が導入された加工澱粉を使用するのが特に好ましい。ヒドロキシエチルセルロースを使用すると、コールドセット型オフセットインクのビヒクル分が素早く吸収されるため、輪転機の高速化や両面カラー用タワープレス機の使用によって印刷インク量が増加しても、充分な吸収乾燥性が発現される。また、填料が確実に繊維に固着されるため、填料の脱落が防止され、優れた印刷不透明度、印刷適性等を有するようになる。なお、以上のサイズ剤は、単独又は複数を組み合わせて使用することができる。
原料パルプから紙料を得るにあたっては、例えば、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、濾水性向上剤、染料、着色顔料、中性サイズ剤等の内添薬品を必要に応じて内添することができる。
乾燥紙力向上剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉等を例示することができる。湿潤紙力向上剤としては、例えば、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン等を使用することができる。中性サイズ剤としては、例えば、アルキルケテンダイマーやアルケニル無水コハク酸、中性ロジンサイズ剤等を使用することができる。
染料としては、例えば、アニオン性直接染料、カチオン性直接染料、塩基性染料等を使用することができる。アニオン性直接染料としては、例えば、東亜化成(株)製のトーアレッド2BP(登録商標)、クラリアントジャパン(株)製のカルタバイオレット3B70、日本化薬(株)製のカヤフェクトオレンジL等の赤色アニオン性直接染料(R1)、東亜化成(株)製のミカドファーストイエロー21R等の黄色アニオン性直接染料(Y1)、日本化薬(株)製のダイレクトスカイブルー5B200、日本化薬(株)製のカヤフェクトブルーRFliquid100等の青色アニオン性直接染料(B1)などを使用することができる。カチオン性直接染料としては、例えば、クラリアントジャパン(株)製のカルタゾールレッドK2BNリキッド、日本化薬(株)製のカヤフェクトオレンジCS等の赤色カチオン性直接染料(R2)、クラリアントジャパン(株)製のカルタゾールイエローKGLリキッド、日本化学工業所(株)製のスーパーイエローYSL等の黄色カチオン性直接染料(Y2)、クラリアントジャパン(株)製のカルタゾールブルーKRLリキッド等の青色カチオン性直接染料(B2)などを使用することができる。塩基性染料としては、例えば、保土ヶ谷化学工業(株)製のアストラフロキシン等の赤色塩基性染料(R3)、日本化学工業所(株)製のスーパーイエローFGL等の黄色塩基性染料(Y3)、BASFジャパン(株)製のバサゾールブルー16L等の青色塩基性染料(B3)などを使用することができる。
着色顔料としては、例えば、大日精化工業社製のTB1548バイオレット、大日精化工業社製のTB536ブルー等を使用することができる。
(新聞用紙)
以上のようにして得られる新聞用紙は、原料パルプに由来する(原料パルプと共に持ち込まれる)灰分が8〜12%であり、製品灰分が15〜40%(好適には18〜38%、より好適には20〜36%)であるのが好ましい。この点、原料パルプに由来する填料と、前述した新聞用紙の製造工程において新たに添加される填料とが合わさって製品灰分が決定される。原料パルプに由来する灰分は、製造工程において新たに添加される灰分と異なり、古紙処理工程を経ても古紙パルプに固着している填料若しくは、古紙処理工程で意図的に古紙パルプに固着若しくは残留させた填料であり、比較的高いアニオン性を有するため、抄紙工程で含有させる填料と反発し填料歩留を下げ易い性質を有するため、上記した範囲内となるように灰分を調整すると、抄紙工程で添加する灰分の歩留低下を抑えると共に、添加量を制限することができる利点がある。
原料パルプに由来する灰分が上記範囲(例えば8〜12%)となるように調整するにあたっては、古紙パルプに凝集剤を添加して調整する方法を採用するのが好ましい。この方法によると、古紙由来の填料の持つ比較的高いアニオン性を抑えることが可能になる。
本形態の新聞用紙は、ベック平滑度が、表面30〜70秒(好適には35〜65秒)、裏面28〜68秒(好適には30〜66秒)で、表面>裏面の関係を有するのが好ましい。このような関係を有すると、表裏ともほぼ同等な表面性を有し、新聞用紙の用に表裏面同等の情報印刷や印面が得られ好適である。なお、本明細書において、表面とは抄紙設備における紙の流れ方向において上面を意味し、裏面とは反面を意味する。また、ベック平滑度は、JIS P 8119:1998に準拠して測定した値である。
本形態の新聞用紙は、PPS平滑度が、表面3.5〜5.0μm(好適には3.7〜4.8μm)、裏面3.7〜5.0μm(好適には3.8〜4.7μm)であるのが好ましい。このような平滑度であると、印刷における網点再現性がほぼ同等であり表裏面の印刷適性が同等になり好適である。また、ベック平滑度とは別にPPS平滑度を規定するのは、近年の高速コールドオフセット輪転印刷において、高速で版胴から印面転写における紙面への圧接が瞬間的なものになり、高い網点再現性が要求されるためである。なお、表面及び裏面の意味は前述したとおりである。また、PPS平滑度は、JIS P 8151に基づき測定され、測定対象面について10点以上測定し、それらの平均値をその測定対象面のパーカープリントサーフラフネスとする。測定装置としては、例えばLorentzen&Wettre製の「PPS TESTER SE165」を用いることができる。一般に、パーカープリントサーフラフネスの測定では、バッキングの材質及びクランプ圧を適宜変更することにより、種々の条件で測定対象の平滑性を測定することができるところ、本発明においては、測定時のバッキングとしてソフトバッキングを選択し、かつ測定時のクランプ圧を1MPaに設定する。パーカープリントサーフラフネスの測定条件は、高速コールドオフセット輪転印刷時のブランケットの弾力性と印圧を想定したものである。
本形態の新聞用紙は、表面の繊維配向比(配向比A)の絶対値及び裏面の繊維配向比(配向比B)の絶対値がそれぞれ3以下(好適には2以下)であり、(配向比A)及び(配向比B)の差の絶対値が0.5以下(好適には0.3以下)である。加えて表面及び裏面いずれにおいても、MD方向の繊維配向角とCD方向の繊維配向角との差の絶対値が1.5°以下(好適には1.3°以下)であり、表面におけるMD方向の繊維配向角及びCD方向の繊維配向角の平均値(平均A)と、裏面におけるMD方向の繊維配向角及びCD方向の繊維配向角の平均値(平均B)とが(平均A)>(平均B)の関係を有するのが好ましい。以上のように表裏面の繊維配向比や繊維配向角を調整すると、新聞用紙の流れ方向のみならず、厚み方向での繊維の配向を把握可能になり、紙力のみならず填料歩留の向上を図ることが可能になる。なお、MD方向の繊維配向角とは抄紙ラインの流れ方向における原料パルプの繊維配向を意味し、CD方向の繊維配向角とは抄紙ラインの幅方向における原料パルプの繊維配向を意味する。
本形態の新聞用紙は、不透明度が95%以上(好適には95〜97%)であるのが好ましい。不透明度が95%未満であると、白色度の高い高白新聞用紙においては印刷の裏抜けが目立つ問題が生じる。他方、不透明度が97%を超える設計は高灰分化が必要になり要求される紙質における引張りや引き裂き強度を確保し難くなる問題が生じる。なお、不透明度は、JIS P 8149:2000に準拠して測定した値である。
本形態の新聞用紙は、MD方向のヤング率が3000〜4000Mpa(好適には3500〜4000Mpa)、CD方向のヤング率が1000〜2000Mpa(好適には1200〜2000Mpa)であるのが好ましい。ヤング率が以上の範囲内であれば、高速コールドオフセット輪転印刷における紙力に関わる操業トラブルの恐れがない。なお、MD方向のヤング率とは抄紙方向における紙のこわさを意味し、CD方向のヤング率とは抄紙機の幅方向における紙のこわさを意味する。また、ヤング率はJIS P 8113:1998に準拠して引張り弾性率を測定した値である。
本形態の新聞用紙は、MD方向のクラークこわさが45〜55cm3/100(好適には46〜52cm3/100)、CD方向のクラークこわさが14〜19cm3/100(好適には15〜18cm3/100)であるのが好ましい。クラークこわさが上記範囲内であれば、新聞用紙に求められる電車などの狭い環境下で簡易な折り畳みで使用されても形状維持を図ることが可能で、取り扱いに不具合が生じ難いからである。なお、MD方向のクラークこわさとは抄紙方向における剛度を意味し、CD方向のクラークこわさとは幅方向における剛度を意味する。また、クラークこわさは、JIS P 8143:2009に準拠して測定した値である。
次に、本発明の実施例を説明する。なお、本実施例は本発明の一例であり、本発明の範囲は、本実施例に限定されない。
原料パルプに各種填料を添加し、ギャップフォーマを使用して新聞用紙を製造する試験を行った。原料パルプの種類等、填料の種類、抄紙時のpH、得られた新聞用紙の物性等について、表1及び表2に示した。なお、古紙パルプ由来灰分の調整については、洗浄回数の増減や混錬手段(ニーダー)の調整で行った。また、各種物性の測定は、以下のとおりとした。
(測定方法)
(坪量)
JIS P 8124(2011)に準拠して測定した。
(古紙パルプ由来灰分)
JIS P 8251(2003)に準拠し、原料パルプ配合前の古紙パルプの灰分を測定した。
(紙厚)
JIS P 8118(1998)に準拠して測定した。
(灰分)
JIS P 8251(2003)に準拠して測定した。
(平滑度)
JIS P 8119(1998)に準拠して測定した。
(PPS平滑度)
ソフトバッキングを1.0MPaとした。
(不透明度)
JIS P 8149(2000)に準拠して測定した。