明確性を維持するために、本開示では、前段落の「2つのジャイロスコープ」を、2つの「共振器」、すなわち第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器として参照する。「ジャイロスコープ」という用語は、以下、任意の単一の共振器ではなく、2つ以上の共振器を備えるデバイス全体のみを指す。言い換えれば、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器のいずれかを単独で使用して入力軸を中心とした回転速度を測定することができたとしても、当該共振器の両方が含まれる複合システムのみが、本開示においては「ジャイロスコープ」として参照される。
本開示では、デバイス平面が例示され、xy平面と称される。z軸はxy平面に垂直である。プルーフマスがデバイス平面内で水平に維持される線形および/もしくは回転運動(またはそれらの組み合わせ)は、「面内」運動または「デバイス平面内の運動」と称され、一方、プルーフマス(またはプルーフマスの重心)が垂直方向に動く線形および/もしくは回転運動(またはそれらの組み合わせ)は、「面外」運動または「デバイス平面から外方への運動」と称される場合がある。
本開示では、「半径方向」振動は、xy平面内の、中心点から外方への線形運動および中心点に向かう線形運動を指す。「接線方向」振動とは、中心点を中心とした仮想円の接線または円周に沿ったxy平面内の動きを指す。接線振動は、実際には線形運動と回転との混合である場合がある。サスペンション構成は、プルーフマスが接線方向においてどのように動くかを決定づける。
xy平面を示す本開示の図では、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器内のコリオリ素子の配置は、当該素子の静止位置に対応する。
本開示では、垂直z軸に平行な任意の軸を中心とした回転は、単にz軸を中心とした回転と称される。当該角回転速度が測定される変数であるとき、入力軸はz軸である。同様に、x軸に平行な任意の軸を中心とした回転はx軸を中心とした回転と称され、y軸に平行な任意の軸を中心とした回転はy軸を中心とした回転と称される。当該角回転速度が測定されるとき、入力軸はそれぞれx軸およびy軸である。構成要素の回転速度は、測定対象の動きの実際の回転軸からの距離に依存しないため、ジャイロスコープの入力軸は、x軸、y軸、またはz軸と常に同一視することができる。
本開示全体を通して、「構造Aが振動モードX1および振動モードX2を共通振動モードXと同期させる」などの語句における「同期させる」という用語は、以下の意味を有する。構造Aは、相互接続されたマス要素の第1のセットS1と相互接続されたマス要素の第2のセットS2との間の機械的接続を構成する。これらのセットは、互いに機械的に結合されていない場合、振動モードX1および振動モードX2において別個に振動する。
ただし、第1のセットおよび第2のセットは、好ましくは、所望の共通モードXにおいて振動するべきであり、当該理由から、構造Aによって相互接続される。構造Aは、所望の共通モードXを有効にするが、望ましくない共通振動モードYが発生し得るという可能性も生じる。望ましくない振動モードYが多数存在する可能性があるが、一般的には、最も低い共振周波数を有するものが最も重要である。構造Aは、望ましくない共通振動モードYに同時に抵抗しながら、所望の共通振動モードXに柔軟に対応することにより、セットS1とS2とを望ましい共通振動モードXに結合する剛性と柔軟性との組み合わせを示す場合、同期構造である。
所望の共通モードXの共振周波数FXと望ましくない共通振動モードの共振周波数FYとの間の関係については、標準の非同期結合よりも同期結合の方が有利である。言い換えれば、構造Aは一般的に、望ましくない振動モードYが必要とする動きにおいて剛性がある。結果、共振周波数FYが上昇する。共振周波数FXも、構造Aによって上昇する場合がある(標準の非同期結合と比較して)。ただし、構造Aの柔軟性および剛性の特性は、FYの増加が、周波数FXの(可能な)増加よりも大幅に大きくなるようなものである。
したがって、構造Aの存在は、比FY/FXおよび/または差FY−FXを増加させる。当該改善が測定される基準状態は、場合によっては、構造Aのない相互接続されたマス要素の同じシステムである場合がある。この場合、マス要素はまた他の構造によって相互接続され、構造Aは純粋に同期構造である。他の場合、たとえば、構造Aがマス要素の重量を支えるためにも必要であるとき、同期改善が測定される基準状態は、Aが、たとえば、構造的な支持のみを提供する代替の標準構造Bに置き換えられたマス要素から成る同じシステムであってもよい。
対応して、「同期させない」という表現、および「構造Aは振動モードX1および振動モードX2を共通振動モードと同期させない」などの語句は、構造Aは、S1とS2との間に機械的な接続を形成するが、構造Aは、セットS1とS2とを任意の共通振動モードXに結合しない剛性と柔軟性との組み合わせを示す。相互接続されたマス要素の2つのセットS1とS2は、代わりに互いに独立して振動する。構造Aは、たとえば、共振振動の間、セットS1の動きがセットS2の動きにほとんど影響を与えないか、または、まったく影響を与えないように、剛性のままであり得る。代替的に、構造Aは、2つのセット間で結合がほとんどまたはまったく発生しないように、柔軟であり得る。これら2つの状況の例を以下に示す。
本開示に記載される装置は、1つまたは複数の第1のコリオリ素子対と1つまたは複数の第2のコリオリ素子対とを備える。これらのコリオリ素子対の一次振動は、同じ駆動信号によって駆動される。以下の詳細で説明するように、駆動振動において、2つの共振モード、すなわち、共通同相モードおよび共通逆位相モードが支配的である。上記の1つは望ましい共通駆動モードXであり、もう1つは望ましくない共通駆動モードYである。第1の電気機械共振器と第2の電気機械共振器との間の結合構成は、望ましくない共通駆動モードYに抵抗しながら、所望の共通駆動モードXに対応またはこれを促進することによって、第1の共振器の駆動振動を第2の共振器の駆動振動と同期させる。
共通逆位相モードおよび共通同相モードはまた、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の二次振動モードにも存在し、ジャイロスコープが角回転を受けるときに、当該共通モードを示し得る。しかしながら、第1の電気機械共振器と第2の電気機械共振器との間の結合構成は、共通逆位相モード、共通同相モード、またはこの2つの共振器間のいかなる他の位相関係も促進しない。第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の二次振動は、互いに独立している。したがって、当該振動から得られる測定結果は、差動誤差補償、ノイズ最適化、または自己診断の目的に使用することができる。
結合構成が、1つまたは複数の第1のコリオリ素子の二次振動と、1つまたは複数の第2のコリオリ素子の二次振動との間のいかなる特定の位相関係も促進しないために、結合構成は、第1の共振器の二次振動モードから第2の共振器の二次振動モードへの、または逆方向の衝撃を伝達しない駆動同期要素から構成することができる。
少なくとも本開示において提示されるx軸およびy軸の実施形態では、二次振動における伝達の欠如は、二次振動モードに関して、デバイス基板などの周囲の固定構造に結合構成を堅固に接続することによって達成することができる。言い換えれば、結合構成は、コリオリの力がコリオリ素子において誘導する動きに抵抗するように、固定構造から懸架することができる。にもかかわらず、結合構成は、駆動トランスデューサの作用および一次振動モードに関する結合構成の可動性に起因して、所望の共通一次振動モードを促進することができる。言い換えれば、結合構成は、駆動トランスデューサによって生成される運動のために固定構造から柔軟に懸架することができ、結合構成内の駆動同期要素は、第1の共振器および第2の共振器の一次振動モードを同期させることができる。結合構成は、任意選択的に、駆動同期要素に加えて他の部品も備えてもよいが、結合構成のいずれの部品も、1つまたは複数の第1のコリオリ素子の二次振動を1つまたは複数の第2のコリオリ素子の二次振動と同期させない。
少なくとも本開示において提示されるz軸の実施形態では、二次振動モード間の伝達の欠如は、1つまたは複数の第1のコリオリ素子の二次振動と1つまたは複数の第2のコリオリ素子の二次振動との間の任意の位相関係を柔軟に可能にする駆動同期要素を含む結合構成を利用することによって達成することができる。結合構成は、たとえば、自身のアンカーポイントから懸架されることなく、2つの共振器の間に配置することができる。ここでも、結合構成は、任意選択的に、駆動同期要素以外の部品を備えてもよいが、結合構成のいずれの部品も、1つまたは複数の第1のコリオリ素子の二次振動を、1つまたは複数の第2のコリオリ素子の二次振動と同期させない。
本開示は、横軸および交差軸によって画定されるデバイス平面を備える微小電気機械ジャイロスコープについて説明する。交差軸は横軸に直交し、ジャイロスコープは、横軸に平行であるか、交差軸に平行であるか、またはデバイス平面に直交するかのいずれかである、少なくとも1つの入力軸も備える。
ジャイロスコープは、対応する第1の共振器中心点および第2の共振器中心点を有する、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器をさらに備える。
第1の電気機械共振器は、1つまたは複数の第1のコリオリ素子対を備える。各第1のコリオリ素子対は、第1の共振器中心点に対して対称に配置される。第2の電気機械共振器は、同数の第2のコリオリ素子対を備える。各第2のコリオリ素子対は、第2の共振器中心点に対して対称に配置される。
第1の共振器中心点に対する1つまたは複数の第1のコリオリ素子対の各々のサイズ、形状および位置は、第2の共振器中心点に対する、対応する第2のコリオリ素子対のサイズ、形状および位置に実質的に等しい。
ジャイロスコープは、制御ユニットと、1つまたは複数の駆動トランスデューサとをさらに備える。制御ユニットは、1つまたは複数の駆動トランスデューサに1つまたは複数の駆動信号を印加することにより、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器をそれぞれの一次振動モードに設定するように構成される駆動回路を備える。一次振動モードでは、1つまたは複数の第1のコリオリ素子対は第1の共振器中心点に対して逆位相で振動し、1つまたは複数の第2のコリオリ素子対は第2の共振器中心点に対して逆位相で振動する。
ジャイロスコープは、第1の電気機械共振器に接続され、ジャイロスコープが入力軸を中心とした角回転を受けるときにコリオリの力によって第1の電気機械共振器内で誘導される二次振動モードから第1のセンス信号を生成するように構成される、2つ以上の第1のセンストランスデューサをさらに備える。ジャイロスコープは、第2の電気機械共振器に接続され、ジャイロスコープが入力軸を中心とした角回転を受けるときにコリオリの力によって第2の電気機械共振器内で誘導される二次振動モードから第2のセンス信号を生成するように構成される、2つ以上の第2のセンストランスデューサをさらに備える。
すべての第1のコリオリ素子対および第2のコリオリ素子対は、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の一次振動モード、第1の電気機械共振器内で誘導される二次振動モード、ならびに、第2の電気機械共振器内で誘導される二次振動モードに対応する、少なくとも部分的に柔軟なサスペンション構成によって固定構造から懸架される。
第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器は、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の一次振動モードを共通の同相または逆位相一次振動モードと同期させるが、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の二次振動モードとは同期させない結合構成と、機械的に結合される。
第1の共振器中心点に対する1つまたは複数の第1のコリオリ素子対のサイズ、形状および位置は、第2の共振器中心点に対する1つまたは複数の第2のコリオリ素子対のサイズ、形状および位置に対応する。したがって、第1の電気機械共振器と第2の電気機械共振器とは、実質的に同一である(ただし、製造公差によりわずかな差が生じる場合がある)。結果、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器はまた、同じ入力軸をも有する。
入力軸は、以下でより詳細に説明するように、xy平面のx軸もしくはy軸であってもよく、またはxy平面に直交するz軸であってもよい。本開示では、入力軸という用語は、特に、二重測定が実装されている測定軸を指す。以下に示すY軸およびZ軸の実施形態では、ジャイロスコープには1つの入力軸しかない一方、XY軸の実施形態では、2つの入力軸がある。Z軸の実施形態では、x軸および/またはy軸(いずれの軸でも二重測定はされない)を中心とした角回転速度を測定するために、同じコリオリ素子を使用することも可能であり得る。当該追加の測定については詳細に説明しない。
Y軸の実施形態
図1aは、xy平面として示されているデバイス平面内のジャイロスコープを示す。ジャイロスコープは、横軸18と、交差軸19とを備える。当該事例において、y軸が入力軸であるため、交差軸19は入力軸に平行である。ジャイロスコープはまた、破線によってマークされた上側の正方形によって区切られた、第1の電気機械共振器11も備える。第2の電気機械共振器12は、下側の破線の正方形によって区切られている。中央の長方形によって境界される結合構成13は、第1の電気機械共振器11を第2の電気機械共振器に機械的に接合する。
第1の電気機械共振器11は、交差軸19の対向する両側に第1のコリオリ素子111および第2のコリオリ素子112を備える。当該素子は第1のコリオリ素子対111+112を形成する。当該対は、第1の横軸181上に対称に位置整合しており、結果、各コリオリ素子111/112の半分が軸の片側にあり、もう半分が反対側にある。第1のコリオリ素子111は、第1の横軸181上の第1のアンカーポイント141から懸架され、第2のコリオリ素子は、同じ軸上の第2のアンカーポイント142から懸架される。詳細には示されていないサスペンションにより、コリオリ素子111および112は、少なくとも垂直軸および第1の横軸181を中心とした回転振動を受けることが可能である。
同様に、第2の電気機械共振器12は、交差軸19の対向する両側に第3のコリオリ素子121および第4のコリオリ素子122を備える。当該素子は第2のコリオリ素子対121+122を形成する。当該対は、第2の横軸182上に対称に位置整合している。第3のコリオリ素子121は、第2の横軸182上の第3のアンカーポイント143から懸架され、第4のコリオリ素子122は、同じ軸上の第4のアンカーポイント144から懸架される。サスペンションは、第2のコリオリ素子対において、第1のコリオリ素子対と同じ動きを可能にする。
図1aに見られるように、コリオリ素子111、112、121、および122はすべて同じサイズおよび形状を有し、対はそれぞれの共振器中心点に対して同じ位置に配置される。
すべてのアンカーポイントは、ジャイロスコープを囲む固定構造の部品である。第1のコリオリ素子111および第2のコリオリ素子112は、第1の駆動フレーム161により互いに接合され、第3のコリオリ素子113および第4のコリオリ素子114は、第2の駆動フレーム162により互いに接合される。各駆動フレームは、交差軸19の2つのアンカーポイントから懸架されている。駆動フレーム161および162は、交差軸19とそれら駆動フレームの対応する横軸181または182との交差点にある、第1の共振器中心点および第2の共振器中心点に中心がある。
当該事例において、入力軸はy軸である。ジャイロスコープは、図1aには示されていない1つまたは複数の駆動トランスデューサを備える。駆動トランスデューサは、たとえば、トランスデューサに印加される駆動信号が、駆動フレーム(複数可)を振動運動するように設定する振動力を生成することができるように、駆動フレームの一方または両方内に配置され、駆動フレーム(複数可)に機械的に接続された容量性トランスデューサであってもよい。代替的に、1つまたは複数の駆動トランスデューサはピエゾトランスデューサであってもよく、代替的に、当該トランスデューサは、第1の駆動フレームおよび第2の駆動フレームの外側のいずこかに配置されてもよい。
駆動トランスデューサは、第1の駆動フレーム161および第2の駆動フレーム162を、交差軸19に沿った線形振動運動に設定するように構成される。当該運動により、第1のコリオリ素子対111+112および第2のコリオリ素子対121+122を一次振動モードに作動させる。これは図1bに示されており、一次振動周期の半分において第1の駆動フレーム161および第2の駆動フレーム162の駆動トランスデューサによって誘導される運動は、フレーム内の黒色矢印で示されている。コリオリ素子対内で誘導される、対応する回転一次振動モードは、コリオリ素子の上部に黒色矢印で示されている。振動周期の後半では、各駆動フレームおよびコリオリ素子の動きは反対方向になる。
各コリオリ素子は、線形運動を妨げるがアンカーポイントに対する回転運動を可能にするサスペンションによって、アンカーポイントから懸架される。したがって、駆動フレーム161の線形運動は、第1のコリオリ素子111の振動位相が第2のコリオリ素子112の振動位相と反対である一次振動モードを誘導する。素子111は、素子112が時計回りに回転すると反時計回りに回転し、逆のときは逆の回転になる。言い換えれば、第1のコリオリ素子対111+112は、第1の共振器中心点に対して逆位相で振動する。対応して、第2のコリオリ素子対121+122は、第2の共振器中心点に対して逆位相で振動する。
図1bに見られるように、コリオリ素子111および112は、交差軸19に対して鏡面対称に振動する。コリオリ素子121と122との間で対応する関係が得られ、当該素子もまた同じ軸に対して鏡面対称に振動する。第1のコリオリ素子111の振動位相は、第4のコリオリ素子122の振動位相と同じである(反時計回り)。第2のコリオリ素子112の振動位相は、第3のコリオリ素子121の振動位相と同じである(時計回り)。
第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の一次振動モードは、結合構成13によって共通の逆位相一次振動モードに同期され、第1のコリオリ素子対の時計回りの動きに対して、第2のコリオリ素子対の反時計回りの対応する動きがあり、逆も同様である。結合構成は、コリオリ素子の振動位相間で所望の共通逆位相関係が得られるように、第1の駆動フレーム161の振動を第2の駆動フレーム162の振動に結合する駆動同期要素131を備える。駆動同期要素131の動作は、図4aおよび図4bを参照して以下により詳細に説明する。
図1cは、ジャイロスコープが入力軸を中心とした角回転を受けるときの、第1のコリオリ素子対111+112および第2のコリオリ素子対121+122の二次振動モードを示している。各コリオリ素子は、対応する横軸181または182を中心に回転振動する。二次モードの位相関係は、一次モードの位相関係に対応している。同位相一次振動は同位相二次振動を誘導し、逆位相一次振動は逆位相二次振動を誘導する。同位相振動は、同相振動と同じものである。
ジャイロスコープは、第1のコリオリ素子111および第2のコリオリ素子112の振動を測定するための2つ以上の第1のセンストランスデューサと、第3のコリオリ素子121および第4のコリオリ素子122の振動を測定するための2つ以上の第2のセンストランスデューサとを備える。当該センストランスデューサは、たとえば、コリオリ素子に、ならびに、図示されたデバイス平面の上方および/または下方の隣接する固定構造に固定された容量性平行板を備えてもよい。2つ以上の第1のセンストランスデューサを差動増幅器に接続して、第1のコリオリ素子および第2のコリオリ素子の望ましくない共通モード振動の影響が相殺されている第1のセンス信号を生成することができる。第2のセンス信号を、2つ以上の第2のセンストランスデューサから同じ方法で読み取ることができる。
上記に従って、当該実施形態では、1つまたは複数の第1のコリオリ素子対は1つの第1のコリオリ素子対を含み、1つまたは複数の第2のコリオリ素子対は1つの第2のコリオリ素子対を含む。第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の一次振動モードは、上記コリオリ素子と交差する垂直軸を中心とした各コリオリ素子の回転面内振動を含む。駆動同期要素は、第1の共振器中心点に対する第1のコリオリ素子対の振動位相が、第2の共振器中心点に対する第2のコリオリ素子対の振動位相に対して逆位相である、共通逆位相一次振動モードを同期させる。
換言すれば、第2のコリオリ素子が垂直軸を中心として時計回り方向に振動すると、第1のコリオリ素子は垂直軸を中心として反時計回り方向に振動し、逆のときは逆の方向になる。第4のコリオリ素子が垂直軸を中心として反時計回り方向に振動すると、第3のコリオリ素子は垂直軸を中心として時計回り方向に振動し、逆のときは逆の方向になる。第3のコリオリ素子が垂直軸を中心として反時計回り方向に振動すると、第1のコリオリ素子は垂直軸を中心として時計回り方向に振動し、逆のときは逆の方向になる。入力軸は、交差軸19と平行である。
さらに、第1のコリオリ素子111および第4のコリオリ素子122は、それぞれの垂直軸を中心に時計回り/反時計回りに同時に回転するため、第1のコリオリ素子111および第4のコリオリ素子122は同じ位相で振動する。同様に、第2のコリオリ素子112および第3のコリオリ素子121も同時に時計回り/反時計回りに回転するため、第2のコリオリ素子112および第3のコリオリ素子121も同じ位相で振動する。最後に、第3のコリオリ素子121が反時計回りに回転すると第1のコリオリ素子111が時計回りに回転し、逆のときは逆の回転になるため、第1のコリオリ素子111および第3のコリオリ素子121は、反対位相で振動する。
図2aは、図1bに示す先行する実施形態のように、1つまたは複数の第1のコリオリ素子対が1つの第1のコリオリ素子対を含み、1つまたは複数の第2のコリオリ素子対が1つの第2のコリオリ素子対を含む代替形態を示す。第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の一次振動モードは、上記コリオリ素子と交差する垂直軸を中心とした各コリオリ素子の回転面内振動を含む。これも先行する実施形態に対応する。ただし、この代替形態は、駆動同期要素23が、当該事例においては第1の共振器中心点に対する第1のコリオリ素子対の振動位相が、第2の共振器中心点に対する第2のコリオリ素子対の振動位相と同相である、共通同相一次振動モードを同期させるという点において、先行する実施形態とは異なる。
駆動トランスデューサは、当該事例において、駆動同期要素23を交差軸29に沿った線形振動運動に設定するように構成される。
図2aに示すように、第2のコリオリ素子212がその垂直軸を中心として時計回り方向に振動すると、第1のコリオリ素子211はその垂直軸を中心として反時計回り方向に振動し、逆のときは逆の方向になる。同様に、第4のコリオリ素子222がその垂直軸を中心として時計回り方向に振動すると、第3のコリオリ素子221はその垂直軸を中心として反時計回り方向に振動し、逆のときは逆の方向になる。しかし、第1のコリオリ素子および第3のコリオリ素子は、時計回り方向に同時に振動し、次いで、振動周期の残りの半分においては反時計回りに振動する。
したがって、ここで、第1のコリオリ素子211および第3のコリオリ素子221が同時に時計回り/反時計回りに回転するため、第1のコリオリ素子211および第3のコリオリ素子221は同じ位相で振動する。同様に、第2のコリオリ素子212および第4のコリオリ素子222が同時に時計回り/反時計回りに回転するため、第2のコリオリ素子212および第4のコリオリ素子222も同じ位相で振動する。最後に、第4のコリオリ素子222が反時計回りに回転すると第1のコリオリ素子211が時計回りに回転し、逆のときは逆の回転になるため、第1のコリオリ素子211および第4のコリオリ素子222は反対位相で振動する。
第1の電気機械共振器の一次振動モードは同期フレーム261によって同期され、第2の電気機械共振器の一次振動モードは同期フレーム262によって同期される。当該事例において、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の一次振動モードは、第1の同期フレーム261を第2の同期フレーム262に接続するのみである、剛性の駆動同期要素23によって共通同相一次振動モードに容易に同期させることができる。そして、第1のコリオリ素子対の時計回りの動きに対して、第2のコリオリ素子対の時計回りの対応する動きがあり、逆も同様である。駆動同期要素23の前後の動きは、第1の共振器と第2の共振器との間に所望の共通の同相関係を作り出す。ここで第1の電気機械共振器と第2の電気機械共振器との間の結合構成を構成する駆動同期要素23は、任意の形状の剛体であってもよい。ただし、第1の電気機械共振器の二次振動モードと第2の電気機械共振器の二次振動モードとの間の結合を防ぐために、駆動同期要素は、十分な垂直厚さを有するべきである。これは、図1aに示す結合構成にも当てはまる。
図2bは、ジャイロスコープが入力軸を中心とした角回転を受けるときの、第1のコリオリ素子対211+212および第2のコリオリ素子対221+222の二次振動モードを示している。二次振動モードにおいて、各コリオリ素子は、対応する横軸281または282を中心に回転振動する。二次モードの位相関係は、一次モードの位相関係に対応している。同位相一次振動は同位相二次振動を誘導し、逆位相一次振動は逆位相二次振動を誘導する。前述のように、ジャイロスコープは、第1のコリオリ素子211および第2のコリオリ素子212の振動を測定するための2つ以上の第1のセンストランスデューサと、第3のコリオリ素子221および第4のコリオリ素子222の振動を測定するための2つ以上の第2のセンストランスデューサとを備える。2つ以上の第1のセンストランスデューサを差動増幅器に接続して、第1のコリオリ素子および第2のコリオリ素子の望ましくない共通モード振動の影響が相殺されている第1のセンス信号を生成することができる。第2のセンス信号を、2つ以上の第2のセンストランスデューサに同じ方法で接続することができる。ここで、2つの共振器信号の極性を、減算されたトランスデューサ信号の順序によって反対に構成することができる。
上記のy軸の実施形態では、結合構成は、第1の共振器の二次振動モードの影響を第2の共振器に伝達しない、またはその逆の伝達を行わない駆動同期要素のみから構成されていた。当該実施形態は、選択された共通一次振動モードのみを促進し、二次振動を同期させる追加の構造はない。結合構成は、第1の共振器を第2の共振器に接続する一切の他の要素を含まない。
共振器間の二次振動モードは、結合構成のいずれの部分によっても同期されるべきではない。たとえば、結合構成が、図1bの第1のコリオリ素子111の下端を第3のコリオリ素子121の上側要素に接続するか、または、112の下端を122の上端に接続する何らかの種類のばねを含む場合、当該ばねは、二次振動モードが同期されないように垂直方向に柔軟であるべきである。対応して、図2bの第1のコリオリ素子211の下端とコリオリ素子221の上側要素とを接続する構造を結合構成が含む場合、当該構造は、横軸28を中心に回転させることによって二次振動を同期させるシーソーとして作用可能にすべきではない。
ただし、センサの振動ロバスト性にとって、共振器の2つのトランスデューサを結合して、共振器の逆位相運動を促進し、共振器の共通モード運動を拒絶することが有益である場合がある。
XY軸の実施形態
前の節で示した2つのY軸の実施形態は、以下の変更を加えて、対応するXY軸の実施形態に拡張することができる。図3は、デバイス平面内のジャイロスコープを示す。ジャイロスコープは、横軸38および交差軸39を備えている。当該事例において、ジャイロスコープには2つの直交する入力軸があり、うち1つは横軸38に平行で、もう1つは交差軸39に平行である。ジャイロスコープは、第1の電気機械共振器31、第2の電気機械共振器32、第3の電気機械共振器33、および第4の電気機械共振器34も備える。共振器の内側に位置し、横軸38が交差軸39と交差するジャイロスコープ中心点に中心がある結合構成が、上記共振器をともに結合し、以下に説明する方法で共振器の駆動振動を同期させる。結合構成は、中央駆動同期要素351および同期バー361〜364を備える。
第1の電気機械共振器31は、交差軸39の対向する両側にある第1のコリオリ素子311および第2のコリオリ素子312を備え、第2の電気機械共振器32は、交差軸39の対向する両側にある第3のコリオリ素子321および第4のコリオリ素子322を備える。当該素子は、第1のコリオリ素子対および第2のコリオリ素子対を形成し、当該素子対の一次および二次振動は、上記のY軸の実施形態と同じ方法で行われる。
第3の電気機械共振器33は、横軸38の対向する両側にある第5のコリオリ素子331および第6のコリオリ素子332を備える。当該素子はともに、第3のコリオリ素子対を形成する。第4の電気機械共振器34は、横軸38の対向する両側にある第7のコリオリ素子341および第8のコリオリ素子342を備える。当該素子はともに、第4のコリオリ素子対を形成する。
先行する実施形態のように、各コリオリ素子は、コリオリ素子の開口部内に位置するアンカーポイントから懸架することができる。第3のコリオリ素子対331+332は、第1の交差軸391上に対称に位置整合され、第4のコリオリ素子対341+342は、第2の交差軸392上に対称に位置整合される。
前述のように、コリオリ素子311〜342はすべて同じサイズおよび形状を有してもよく、対はそれぞれの共振器中心点に対して対応する位置に配置される。
第3の電気機械共振器および第4の電気機械共振器の入力軸はx軸である。ジャイロスコープは、図3には示されていない1つまたは複数の駆動トランスデューサを備える。駆動トランスデューサは、先行するY軸の実施形態において指定された駆動トランスデューサのいずれかを含んでもよく、同様のトランスデューサが、第3のコリオリ素子対および第4のコリオリ素子対にも実装されてもよい。ジャイロスコープは、各コリオリ素子対を駆動同期要素351に接合する同期バー361〜364を備える。
駆動トランスデューサは、第3の電気機械共振器および第4の電気機械共振器を、図1bの第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器について示した一次振動モードに対応する回転一次振動モードに設定するように構成されている。コリオリ素子対の誘導される一次モードは、コリオリ素子の上部に黒色矢印で示されている。結果、第5のコリオリ素子331の振動位相は、第6のコリオリ素子332の位相と反対になり、第7のコリオリ素子341の振動位相は、第8のコリオリ素子342の振動位相と反対になる。さらに、駆動同期要素351は、第5のコリオリ素子331の振動位相が、第7のコリオリ素子341の位相と反対になり、第6のコリオリ素子332の振動位相が、第8のコリオリ素子342の振動位相と反対になるように、一次振動モードを同期させる。
換言すれば、第3の電気機械共振器および第4の電気機械共振器の一次振動モードは、結合構成によって共通逆位相一次振動モードに同期される。第3の電気機械共振器および第4の電気機械共振器の面外二次振動モードの位相関係は、図1cの第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器について示した関係に対応する。
第1のコリオリ素子対および第2のコリオリ素子対の振動を測定するセンストランスデューサに加えて、ジャイロスコープは、第5のコリオリ素子331および第6のコリオリ素子332の振動を測定するための2つ以上の第3のセンストランスデューサと、第7のコリオリ素子341および第8のコリオリ素子342の振動を測定するための2つ以上の第4のセンストランスデューサとを備える。両方ともx軸を中心とした角回転の大きさを示す第3のセンス信号および第4のセンス信号は、上記センストランスデューサから読み取ることができる。
Y軸およびXY軸の実施形態の同期
前述したように、対を形成する2つのコリオリ素子が逆位相で振動するように、一次振動モードは好ましくは、各コリオリ素子対内で同期されるべきである。これは、たとえば、上述した同期フレーム161〜162を用いて達成することができる。さらに、図3は、各コリオリ素子対の二次振動を同期させるために利用することができる任意選択のシーソーバー381〜384も示す。これらのシーソーバーは、各共振器内の内部同期をもたらすが、異なる共振器間の二次モードの同期はもたらさない。各コリオリ素子対の一次(および任意選択的に二次)モードの同期に起因して、各微小機械共振器はロバストな角回転速度センサになる。
最初に、図3のシーソー同期について詳細に説明する。追加のアンカーポイント371〜374が、対を形成する2つのコリオリ素子の間にある。各シーソーバー381〜384は、ねじれに柔軟な取り付け機構を用いて、対応する追加のアンカーポイント371〜374に取り付けられている。結果、それぞれジャイロスコープがy軸およびx軸を中心とした角回転を受けるとき、シーソーバー381および382は、交差軸39を中心に回転することができ、シーソーバー383および384は、横軸38を中心に回転することができる。結果、シーソーバーは各コリオリ素子対の共通同相振動を拒絶することができる。各コリオリ素子と対応するシーソーバーとの間の取り付け手段は、一次モードにおける回転面内振動を可能にするために面内曲げに対して十分に柔軟であるべきである。図3に示したシーソーバーはまた、上記の図1a〜図1cに示したY軸の実施形態における同じ目的に利用することもできる。
第1のコリオリ素子対および第2のコリオリ素子対の一次振動モード(ならびに、XY軸の実施形態では、第3のコリオリ素子対および第4のコリオリ素子対の一次モード)は、横軸が交差軸と交差するジャイロスコープ中心点に位置する駆動同期要素131/351を用いて同期される。ただし、第1の微小機械共振器および第2の微小機械共振器(ならびに第3の微小機械共振器および第4の微小機械共振器)は、それぞれの入力軸を中心とした角回転速度の独立した測定を実行するように構成されるべきであるため、駆動同期要素131/351は、好ましくは、第1のコリオリ素子対および第2のコリオリ素子対(ならびに第3のコリオリ素子対および第4のコリオリ素子対)の二次振動モードを同期させるべきではない。
したがって、第1の微小機械共振器内の任意の特定のコリオリ素子の二次振動運動は、好ましくは、駆動同期要素131/351を介して第2の微小機械共振器内のコリオリ素子に伝達されるべきではない。二次振動モードの振幅は一般的に小さいため、当該目的は多くの異なる同期要素を用いて十分に達成することができる。
図4a〜図4bは、先行するY軸およびXY軸の実施形態からの例示的な中央同期要素をより詳細に示している。参照符号43は、先行する参照符号131または35のいずれかに相当し得る。上記のY軸の実施形態のように、同期要素の対向する両側にある2つのコリオリ素子対の駆動振動を同期させるか、または、上記のXY軸の実施形態のように、同期要素の周りに位置する4つのコリオリ素子対の駆動振動を同期させるために、同じ同期要素を使用することができる。
図4aは、先行する図に示した位置でもある、静止位置にある同期要素を示す。図4bは、同期フレーム161および162または同期バー361および362が中央アンカーポイント445に向かって移動した振動周期の一部における同期要素を示している。
同期要素43は、4つのコーナ要素431〜434を備える。各コーナ要素は、比較的剛性な方法でともに接合された第1のバーおよび第2のバーを備えてもよい。同期要素の静止位置では、各第1のバーは横方向に向けられ得、各第2のバーは交差方向に向けられ得る。コーナ要素はともに、図4aに示すように、中央アンカーポイント445の周りにほぼ正方形の構造を形成してもよい。
隣接するコーナ要素431および432、432および433、433および434、ならびに434および431は、対応するヒンジ要素451〜454を用いて互いに接合することができる。当該ヒンジ要素は、取り付けられたコーナ要素が、図4bに示すように、ヒンジ要素と交差する垂直軸を中心に反対方向に回転することを可能にする。最後に、同期要素43はまた、各コーナ要素431〜434のコーナを中央アンカーポイント445に取り付ける対角支持バー471〜474も備える。
XY軸の実施形態では、同期バー361〜364は、対応するヒンジ要素451〜454に取り付けることができる。図4bに示すように、中央アンカーポイント445に向かう同期バー361および362(ならびにヒンジ要素451および452)の同時運動は、中央アンカーポイント445から外方への、同期バー363および364(ならびにヒンジ要素453および454)の同時運動を伴う。
第1の微小機械共振器11の二次振動モードは、中央同期要素43の要素が垂直方向に十分に厚く作られている場合、第2の微小機械共振器12の二次振動モードから効果的に分離される。したがって、中央同期要素は、ヒンジ要素451〜454および中央同期要素の他の部分の垂直剛性に起因して、1つの共振器から他の共振器に面外運動を容易に伝達しない。
第1の共振器11の二次モードの全体の振幅が第2の共振器12の振幅より突然小さくなる場合(たとえば、第1の微小機械共振器のサスペンション構成の機械的故障に起因して)、中央同期要素は(相当程度まで)当該不一致を第2の共振器12に伝達する。第1の微小機械共振器および第2の微小機械共振器は、二次振動モードにおいて独立しているため、第1のセンス信号および第2のセンス信号は異なる値を示し、結果、機械的故障を検出することができる。代替的に、以下により詳細に説明するように、第1の微小機械共振器および第2の微小機械共振器の二次モードの独立性を利用して、当該微小機械共振器を、異なる大きさの角回転の測定専用にすることができる。
他の中央同期要素を使用して、相当量の二次振動を伝達せずに、対向する微小機械共振器間で一次振動を伝達することもできる。
Z軸の実施形態
隣接するz軸ジャイロスコープ(または、本開示の文言では、2つの隣接するz軸検知共振器)間でも、駆動振動モードを結合することができ、センス振動モードを分離することができる。当該実施形態では、z軸が入力軸である。第1の微小機械共振器と第2の微小機械共振器の両方を用いてz軸を中心とした角回転速度のロバストな測定を行うためには、第1の微小機械共振器と第2の微小機械共振器の両方のコリオリ素子の数を少なくとも4つに増やすことが好ましい。任意選択的に、さらに多くのコリオリ素子を追加してもよい。
当該実施形態では、1つまたは複数の第1のコリオリ素子対は2つの第1のコリオリ素子対を含み、1つまたは複数の第2のコリオリ素子対は2つの第2のコリオリ素子対を含む。2つの第1のコリオリ素子対は、第1の共振器中心点を中心として対称に位置整合され、2つの第2のコリオリ素子対は、第2の共振器中心点を中心として対称に位置整合される。
2つの第1のコリオリ素子対の一次振動モードは、第1の共振器中心点に向かうおよび第1の共振器中心点から外方への半径方向面内振動を含む。2つの第2のコリオリ素子対の一次振動モードは、第2の共振器中心点に向かうおよび第2の共振器中心点から外方への半径方向面内振動を含む。
結合構成は、第1の共振器中心点に対する2つの第1のコリオリ素子対の振動位相が、第2の共振器中心点に対する2つの第2のコリオリ素子対の振動位相と逆位相である、共通逆位相一次振動モードを同期させる。
本開示では、「半径方向」振動は、xy平面内の、中心点から外方への線形運動および中心点に向かう線形運動を指す。「接線方向」振動とは、中心点を中心とした仮想円の接線に沿ったxy平面内の動きを指す。接線方向の動きは、中心点に対して時計回りまたは反時計回りのいずれかの方向において発生する。本開示における「時計回り」および「反時計回り」運動への言及は、図に見られるようなxy平面を参照する。
図5aは、ともに第1のコリオリ素子対511+512を形成する第1のコリオリ素子511および第2のコリオリ素子512を備える第1の微小機械共振器51と、ともに第2のコリオリ素子対521+522を形成する第3のコリオリ素子521および第4のコリオリ素子522を備える第2の微小機械共振器52とを有するz軸ジャイロスコープを示す。第1のコリオリ素子、第2のコリオリ素子、第3のコリオリ素子および第4のコリオリ素子は、すべて横軸58上で対称に位置整合している。
第1の微小機械共振器51はまた、第5のコリオリ素子531および第6のコリオリ素子532をも備える。当該2つのコリオリ素子はともに、別の第1のコリオリ素子対531+532を形成する。第5のコリオリ素子および第6のコリオリ素子は、第1の交差軸591上に対称に位置整合される。対応して、第2の微小機械共振器52は、別の第2のコリオリ素子対541+542を形成する第7のコリオリ素子541および第8のコリオリ素子542をも備える。第7のコリオリ素子および第8のコリオリ素子は、第2の交差軸592上に対称に位置整合される。
第1の共振器中心点は、第1の交差軸591と横軸58との交差点に位置する。第2の共振器中心点は、第2の交差軸592と横軸58との交差点に位置する。
各微小機械共振器はまた、それぞれの共振器中心点の周りに対称に配置され、横軸58に対して45度の角度でそれぞれの中心点と交差する対角軸上に位置整合する4つの任意選択のコーナマス571〜574をも備える。各コーナマス571〜574は、図5aに示すように、1つの細長い交差方向ばね551および1つの細長い横方向ばね552を用いて、隣接するコリオリ素子に接続されている。以下により詳細に説明するように、細長い交差方向ばねおよび細長い横方向ばねは、コリオリ素子の接線方向の振動をコーナマス571〜574に伝達する。
ジャイロスコープは、それぞれ第1の共振器中心点および第2の共振器中心点に配置された2つの中心アンカーポイント561〜562を備える。コリオリ素子は、任意の適切なサスペンション構成により、中央アンカーポイント561〜562から懸架することができる。サスペンション構成は、各共振器の中心点を中心とする2つのコリオリ素子対の半径方向および接線方向の振動(以下で詳細に説明)に対応しており、同期させることもできる。図5aに示されるように、サスペンション構成は、たとえば、以下の図4aおよび4bに示された中央同期要素43と同じ構造を有してもよい。各コリオリ素子は、中央サスペンション構成のヒンジ要素に接続することができる。当該実施形態では、サスペンション構成は、上記の中央同期要素43について説明したものと同じ同期機能を実行することができる。
図5aに示されるように、第1の微小機械共振器の第1のコリオリ素子対511+512および531+532は、第1のフレーム581によって互いに接合することができ、第2の微小機械共振器の第2のコリオリ素子対521+522および541+542は、第2のフレーム582によって互いに接合することができる。各コリオリ素子は、共振器中心点に対する半径方向および接線方向の振動を可能にするフレームばね553によって対応するフレームに接続することができる。いくつかの実施形態では、周辺においてコリオリ素子に追加の機械的支持を提供するように、フレーム581および582を周辺アンカーポイントから懸架することが有利であり得る。図5aのデバイスが多軸ジャイロスコープとして使用される場合、フレーム581および582はまた、x軸およびy軸の二次振動モードにおけるコリオリ素子対の面外運動も同期させることができる。当該事例において、x軸およびy軸は測定軸と呼ばれる場合がある一方、z軸は二重測定が実行される入力軸である。図5aのデバイスがz軸ジャイロスコープとしてのみ使用され、コリオリ素子が中央アンカーポイント561および562の周りのサスペンション構成によって十分に支持されている場合、フレーム581および582はまったく必要ない場合がある。
ジャイロスコープは、図5aには示されていない1つまたは複数の駆動トランスデューサを備える。当該駆動トランスデューサは、たとえば、アンカーポイント561および562の周りの中央サスペンション構成の周りの開口部(図示せず)内に配置された容量性トランスデューサであってもよい。以下に説明するように、トランスデューサに印加される駆動信号は、駆動コリオリ素子を半径方向の振動運動に設定する振動力を生成することができる。代替的に、1つまたは複数の駆動トランスデューサはピエゾトランスデューサであってもよく、代替的に、当該トランスデューサは、第1のフレームおよび第2のフレームの外側のいずこかに配置されてもよい。
ジャイロスコープは、第2のコリオリ素子512を第3のコリオリ素子521に接合する駆動同期要素56を含む結合構成をさらに備える。駆動同期要素56は、第2のコリオリ素子512の任意の半径方向の動きが第3のコリオリ素子521に直接伝達され、逆も同様であるように、横方向において相対的に剛直である。しかしながら、駆動同期要素56は、接線方向の動きが第2のコリオリ素子から第3のコリオリ素子に伝達されず、逆も同様であるように、交差方向において柔軟である。結果、駆動同期要素は、共振器の一次振動を同期させる場合であっても、第1の共振器および第2の共振器の二次振動における任意の位相関係を柔軟に可能にする。
各微小機械共振器内のコリオリ素子の一次振動モードは、対応する共振器中心点を囲むサスペンション構成によって同期され得る。第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の一次振動モードは、駆動同期要素56によって同期される。
図5aに示されるコリオリ素子511〜542およびコーナ要素571〜574の形状は例に過ぎない。他の形状を使用することもできる。
ここで、一次振動モードおよび二次振動モードをより詳細に説明するが、白色矢印を利用して一次振動を示し、黒色矢印を利用して、ジャイロスコープがz軸を中心とした角回転を受けるときにコリオリの力によって誘導される二次振動モードにおける振動を示す。2つの一次と二次との組み合わせが可能である。
第1の組み合わせにおいて、1つまたは複数の駆動トランスデューサは、コリオリ素子対511+512、521+522、531+532、および541+542を、図5bの白色矢印で示されている一次振動モードに設定するように構成されている。図に見られるように、コリオリ素子対531+532が半径方向において第1の共振器中心点に向かって動くと、コリオリ素子対511+512は、半径方向において第1の共振器中心点から外方に動く(図示されていない振動周期の反対の半分においては逆になる)。
第2の微小機械共振器52内の第2のコリオリ素子対521+522の動きと541+542の動きとの間で、同じ位相関係が得られる。
さらに、図5bに示すように、各第1のコリオリ素子対(511+512または531+532)は、対応する第2のコリオリ素子対(それぞれ521+522または541+542)が第2の共振器中心点に向かって動くときに、第1の共振器中心点から外方に動く(振動周期の反対の半分においては逆になる)。換言すれば、第1の共振器中心点に対する2つの第1のコリオリ素子対(511+512および531+532)の振動位相は、第2の共振器中心点に対する2つの第2のコリオリ素子対(521+522および541+542)の振動位相と逆位相である。結果、共通逆位相一次振動モードが駆動同期要素56によって同期される。
一次振動モードでは、第1のコリオリ素子(511)および第4のコリオリ素子(522)は横軸に沿って同じ位相で振動し(図5bの左方向)、第2のコリオリ素子および第3のコリオリ素子は横軸に沿って同じ位相で振動する(図5bの右方向)。対応して、第3のコリオリ素子521が右に動くと第1のコリオリ素子511が左に動き、逆のときは逆になるため、第1のコリオリ素子(511)および第3のコリオリ素子(521)は、横軸に沿って逆位相で振動する。同様に、第2のコリオリ素子(512)および第4のコリオリ素子(522)も、横軸に沿って逆位相で振動する。
中央サスペンション構成によって実行される対同期に起因して、図5bに示すように、第5〜第8のコリオリ素子531、532、541、および542の間で同じ位相関係が得られるが、当該コリオリ素子はすべてが同じ交差軸に沿って振動するわけではない。
コーナマス571〜574は、コリオリ素子511〜542の一次振動によって並進振動運動するように作動されない。図5cは、コリオリ素子511〜542とコーナマス571〜574の両方の二次振動モードを黒色矢印で示している。各コリオリ素子は、コリオリの力の作用に起因して接線方向の振動を受ける。
異なるコリオリ素子の接線方向の振動間の位相関係は、一次モードにおける位相関係と同じになる。二次モードにおいて、隣接するコリオリ素子の二次振動が細長い交差方向ばね551および細長い横方向ばね552(図5aに示す)によって各コーナマスに伝達されるため、各コーナマス571〜574は対角軸に沿って並進振動するように作動される。
ジャイロスコープは、第1の電気機械共振器51の二次振動を測定するための2つ以上の第1のセンストランスデューサと、第2の電気機械共振器52の二次振動を測定するための2つ以上の第2のセンストランスデューサとを備える。コリオリ素子の振動は、センストランスデューサをコリオリ素子に接続することによって直接的に、または、センストランスデューサをコーナマス571〜574に接続することによって間接的に、のいずれかで測定することができる。
言い換えれば、2つ以上の第1のセンストランスデューサは第1のコリオリ素子対に接続することができ、2つ以上の第2のセンストランスデューサは第2のコリオリ素子対に接続することができる。ただし、図5cに示すように、コリオリ素子対の接線方向の振動は、多くの場合、回転成分を含み得る。線形変位に対する当該回転成分の大きさは、並進偏向についてコリオリ素子511〜542がどのように懸架されているかに依存する。
第1のセンストランスデューサおよび第2のセンストランスデューサは、各微小機械共振器内のコーナマス571〜574に接続することができる。コーナマス571〜574は、二次振動モードにおいて対角方向に沿って実質的に線形並進を受けるように懸架することができ、結果、一般的に、動きから信頼できる第1のセンス信号および第2のセンス信号をより測定しやすくなる。
センストランスデューサは、たとえば、コリオリ素子またはコーナマスに、および、隣接する固定構造に固定された容量性平行板を備えてもよい。2つ以上の第1のセンストランスデューサを、差動増幅器を通じて読み取って、望ましくない共通モード振動の影響が少なくとも部分的に相殺されている第1のセンス信号を生成することができる。第2のセンス信号を、2つ以上の第2のセンストランスデューサから同じ方法で読み取ることができる。
一次振動モードと二次振動モードとの組み合わせを図5dおよび図5eに示す。ここで、1つまたは複数の駆動トランスデューサは、コリオリ素子対511+512、521+522、531+532、および541+542を、図5dの白色矢印で示されている一次振動モードに設定するように構成されている。図に見られるように、コリオリ素子対531+532が半径方向において第1の共振器中心点から外方に動くと、コリオリ素子対511+512も、半径方向において第1の共振器中心点から外方に動く(図示されていない振動周期の反対の半分においては逆になる)。
第2の微小機械共振器52内の第2のコリオリ素子対521+522の動きと541+542の動きとの間で、同じ位相関係が得られる。
さらに、各第1のコリオリ素子対(511+512または531+532)は、対応する第2のコリオリ素子対(それぞれ521+522または541+542)が第2の共振器中心点に向かって動くと、第1の共振器中心点から外方に動く(振動周期の反対の半分においては逆になる)。換言すれば、第1の共振器中心点に対する2つの第1のコリオリ素子対(511+512および531+532)の振動位相はここでも、第2の共振器中心点に対する2つの第2のコリオリ素子対(521+522および541+542)の振動位相と逆位相である。結果、共通逆位相一次振動モードが駆動同期要素56によって同期される。
図5fは、コリオリ素子511〜542とコーナマス571〜574の両方の二次振動モードを黒色矢印で示している。各コリオリ素子およびコーナマスは、コリオリの力の作用に起因して接線方向の振動を受ける。
当該振動モードでは、フレーム581および582は、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の二次振動モードを内部で同期させることができる。すなわち、第1のフレーム581は、2つの第1のコリオリ素子対511+512および531+523の二次振動を同期させることができ、一方、第2のフレーム582は、2つの第2のコリオリ素子対521+522および541+542の二次振動を同期させることができる。しかしながら、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の二次振動モードは互いに同期されない。内部同期を強化するために、各コリオリ素子は、図5fに示されるフレームばね553のように、半径方向に柔軟性があるが接線方向に柔軟性のないフレームばね553によってフレームに取り付けることができる。
駆動同期要素56ならびに第1のフレーム581および第2のフレーム582は、駆動同期要素が横軸58に沿って動くことができるように、異なる垂直高さに位置することができる。代替的に、横方向結合ばねならびに第1のフレームおよび第2のフレームは同じ平面内にあってもよく、第1のフレーム581および第2のフレーム582の両方は、駆動同期要素56と交差する点において、可撓性要素(図示せず)を用いて駆動同期要素56に取り付けられてもよい。当該可撓性要素は、第1のフレーム581および第2のフレーム582が静止したままであるか、またはそれぞれの中心点を中心に回転している間に、横方向ばね56が横軸58に沿って振動することを可能にする。しかしながら、当該事例において、可撓性は、駆動同期要素56を介した第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の二次振動モードの結合を回避するのに十分に可撓性であるべきである。
したがって、中央同期要素を形成し、2つの共振器の一次モードを結合する駆動同期要素56が交差方向の曲げについて柔軟である場合、第1の微小機械共振器51の二次振動モードは、第2の微小機械共振器52の二次振動モードから効果的に分離される。横方向の曲げについての駆動同期要素のばね定数は、たとえば、交差方向の曲げについてのばね定数よりも少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも15倍大きくてもよい。
結果、第1の共振器および第2の共振器は、二次モードにおいて互いに独立するようになり、結果、当該2つの共振器からの2つの独立したセンス信号の測定が可能になる。この独立性はさまざまな方法で利用することができる。たとえば、第1の微小機械共振器のサスペンション構成の機械的故障に起因して、第1の共振器の二次モードの全体の振幅が第2の共振器の振幅より突然小さくなると言える。すべてのコリオリ素子が各共振器内で互いに強く結合しているため、コリオリ素子512の接線方向の振動の振幅も、521の振幅よりも小さくなる。しかし、駆動同期要素56は、交差方向に柔軟であり、当該不一致を要素512から要素521に(相当程度まで)伝達しない。第1のセンス信号および第2のセンス信号が異なる値を示すため、不一致(および機械的故障)を検出することができる。代替的に、以下により詳細に説明するように、第1の微小機械共振器および第2の微小機械共振器の二次モードの独立性を利用して、当該微小機械共振器を、異なる測定範囲内の角回転の測定専用にすることができる。
一次振動モードにおいて結合されているが、二次振動モードにおいては独立している2つの隣接する共振器を用いてz軸角回転を測定するための他の構成も利用することができる。
測定実施形態
上述のすべての実施形態において、一次振動モードおよび二次振動モードの駆動、結合、およびサスペンション構成の背後にある一般原則は、第1のセンス信号および第2のセンス信号において、振動が誘導する干渉が相対的になくなるように、すべてのコリオリ素子対が逆位相で振動することである。当該信号は、対応する第1の差動増幅器および第2の差動増幅器を通じて読み取ることができる。各コリオリ素子対内で発生する共通モード振動は、第1のセンス信号および第2のセンス信号において(少なくともある程度)自動的に相殺される。
言い換えれば、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器のそれぞれは、単独で部分的にロバストな回転速度センサを形成する。さらに、一次振動モードでは、第1の電気機械共振器のコリオリ素子対(複数可)は、第2の電気機械共振器のコリオリ素子対に対して共通逆位相または共通同相で振動する。ジャイロスコープが角回転を受ける場合に、コリオリの力は、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器に二次振動モードを誘導する。第1のコリオリ素子対および第2のコリオリ素子対の二次振動モードは、同じ逆位相または同相関係振動を呈する。
第1のコリオリ素子対および第2のコリオリ素子対は、逆位相で振動するときに、対向する方向における入力軸を中心とした角回転を測定すると言うことができる。入力軸を中心とした任意の所与の回転速度は、(第1の共振器から測定される)第1のセンス信号に特定の正の大きさを与え、(第2の共振器から測定される)第2のセンス信号に、ほぼ等しいが負の大きさを与える(またはその逆になる)。第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器のコリオリ素子が同相で振動する場合、第1のセンストランスデューサおよび第2のセンストランスデューサにおいて反対の順序でセンス電極を結合することにより、対応する符号反転が、電気的に生成され得る。
上述のように、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の二次振動モードは、当該共振器間のいかなる直接リンクによっても、互いに機械的に結合されない。代わりに、各共振器は、好ましくは、他方の共振器とは独立して、単独で振動することが可能にされる。二次振動モードの軽度の間接的な結合が、共有駆動構造または結合/サスペンション構成を通じて、依然として発生する場合がある。ただし、当該間接的結合は、適切なデバイス設計によって最小限に抑えることができる。
第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器が、相互駆動機構または駆動信号によって生成される同期された一次振動に強く結合しているが、二次振動モードでは弱く結合している、またはまったく結合していない場合、2つの共振器は実効的に、同じ入力軸に対する、2つの隣接する独立した角度回転速度センサとして機能する。共有されている駆動機構または駆動信号に起因して、2つの共振器の一次振動は、常に同じ振幅および周波数を有するべきである。当該機能を利用して、少なくとも2つの異なる利点を得ることができる。1つ目は、共通の原因の干渉から生じる誤差信号の相殺に関するものである。2つ目は、測定範囲の拡大に関するものである。当該応用形態については、以下で説明する。
センス信号の誤差は、たとえば、搭載およびパッケージングにより誘導される応力に起因する共振器の特性、コリオリ素子もしくはセンス構造のサスペンションまたは結合構成、あるいは付随するトランスデューサの寸法または対称性のいずれかの変化によって引き起こされる可能性がある。読み取り、制御、および信号処理電子機器も、センス信号の測定誤差の原因になる場合がある。上記誤差は、たとえば温度、湿度、または何らかの外部機械力の変化に起因して発生する場合がある。当該変化は、電気機械共振器の二次振動を変化させ、結果、センス信号に誤差を生じさせる可能性がある。
同じ基板上で互いに非常に近接して製造された2つの隣接する電気機械共振器は、ほぼ同じ干渉を受けることになることが多い。したがって、干渉に関連する誤差の相当部分が等しくなる可能性がある。
第1の電気機械共振器の出力(換言すれば、第1のセンス信号の瞬間値)はO1Sとラベル付けされ、第2の電気機械共振器の出力(第2のセンス信号の瞬間値)はO2Sとラベル付けされ得る。第1のセンス信号および第2のセンス信号が、たとえば、アナログからデジタルへの変換、復調、フィルタリングおよびスケーリングのような適切な信号処理および調整後に差動増幅を通じて組み合わされるとき、速度信号の対応する瞬時出力は、ORS=O1S−O2Sになる。
第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器が、対向する方向における入力軸を中心とした角回転を測定するとき、当該共振器のセンス信号は異なる符号を有し、出力速度信号は2つの差になる。ただし、重要な利点は、(たとえば正の方向の)第1の電気機械共振器のセンス信号において発生する誤差が、(負の方向の)第2の電気機械共振器のセンス信号における対応する誤差によって補償されることである。大きさが等しい共通の誤差成分は互いに相殺するが、差分速度信号は2倍になり、したがって、結果としての速度信号の誤差成分は大幅に減少している。換言すれば、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器のセンス信号に生じる任意の共通の偏差は、速度信号出力において自動的に相殺される。
当該相殺を促進するために、第1のセンス信号および第2のセンス信号の振幅は、好ましくは実質的に等しくなるべきである。当該事項は、一般的に、第1のセンストランスデューサおよび第2のセンストランスデューサのサイズおよび幾何形状を実質的に等しくすることにより達成することができる。さらに、何らかの形態の力フィードバックが第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器において実施される場合、第1の共振器における力フィードバックの利得は好ましくは、第2の共振器における力フィードバックの利得と実質的に等しくなるべきである。センサの較正中に、2つのセンス信号の利得を等しいレベルに調整することも可能である。
第1の利益を得るために、2つ以上の第1のセンストランスデューサは、2つ以上の第2のセンストランスデューサによって生成される第2のセンス信号の振幅に実質的に等しい振幅を有する第1のセンス信号を生成するように構成され、第1のセンス信号は、第1の差動増幅器を通じて2つ以上の第1のセンストランスデューサの出力を読み取ることによって生成され、第2のセンス信号は、第2の差動増幅器を通じて2つ以上の第2のセンストランスデューサの出力を読み取ることによって生成され、第1の差動増幅器の利得は、第2の差動増幅器の利得と実質的に等しく、読み取り回路は、第1のセンス信号および第2のセンス信号を入力とする主差動増幅器を備え、読み取り回路は、主差動増幅器から速度信号を読み取るように構成される。
図6は、1つまたは複数の第1のセンストランスデューサ621から第1のセンス信号1Sを読み取るように構成された第1の差動増幅器611と、1つまたは複数の第2のセンストランスデューサ622から第2のセンス信号2Sを読み取るように構成された第2の差動増幅器612とを有する読み取り回路を示す。
第1のセンストランスデューサ621は、第1の電気機械共振器のセンス振動に比例する電圧または電流出力を生成するように構成され、第2のセンストランスデューサ622は、第2の電気機械共振器のセンス振動に比例する電圧または電流出力を生成するように構成される。各共振器において、電圧または電流出力は、1つまたは複数のコリオリ素子対からの出力の合成であり、各コリオリ素子対は逆位相で振動する素子を含む。
読み取り回路はまた、差動的に組み合わされた第1のセンス信号1Sおよび第2のセンス信号2Sから速度信号RSを生成する主差動増幅器613も備える。好ましくは、当該事項は、2つのコリオリ信号、すなわち第1のセンス信号および第2のセンス信号をベースバンドに復調した後に行われる。
また、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器の出力を合計することにより、自己診断機能を実施することも可能である。上記で紹介した表記では、自己診断出力OSTはO1S+O2Sとして計算できる。前述のように、2つの出力O1SおよびO2Sは異なる符号を有し得る。第1の電気機械共振器と第2の電気機械共振器の両方が適切に動作している限り(かつ、共通のドリフトが発生していない限り)、自己診断出力はゼロに等しくなるはずである。一方の電気機械共振器の出力が、他方の電気機械共振器の出力から、所定の自己診断制限を超える程度まで逸脱する場合、制御回路は潜在的な問題を示す自己診断誤差信号を出力することができる。
読み取り回路は、第1のセンス信号および第2のセンス信号を入力とする加算自己診断回路を備えることができ、読み取り回路は、自己診断回路から自己診断信号を読み取るように構成することができる。制御回路は、自己診断信号が所定の自己診断閾値を超えた場合に誤差信号を出力するように構成することができる。上記のように、第1のセンス信号は、第1の差動増幅器を通じて2つ以上の第1のセンストランスデューサの出力を読み取ることによって生成され、第2のセンス信号は、第2の差動増幅器を通じて2つ以上の第2のセンストランスデューサの出力を読み取ることによって生成される。
図7は単純な自己診断読み取り回路を示し、参照符号711〜712および721〜722は、それぞれ図6の参照符号611〜612および621〜622に対応する。自己診断信号は、2つのセンス信号の1つを反転させ、自己診断差動増幅器713を通じて反転した信号を読み取ることによって生成される。
図7に示す自己診断読み取り回路は、図6に示す主読み取り回路と組み合わせて実施することができる。主センス信号において共通のドリフトが相殺されることがわかっているため、第1のセンス信号1Sおよび第2のセンス信号2Sにおいて許容できるわずかなドリフト量が発生したときに誤差信号が生成されないように、自己診断の制限または閾値を適切に選択することができる。
測定範囲の拡大という第2の利益を達成するために、2つ以上の第1のセンストランスデューサは、2つ以上の第2のセンストランスデューサによって生成される第2のセンス信号よりも実質的に大きい振幅を有する第1のセンス信号を生成するように構成することができる。第1の差動増幅器の利得は、第2の差動増幅器の利得よりも大きくなるべきである。当該事例において、制御ユニットは、第1のセンス信号および第2のセンス信号を別個に保存または監視するように構成することができる。
第1のセンストランスデューサおよび第2のセンストランスデューサは、たとえば、サイズまたは幾何形状が著しく異なるように設計することにより、著しく異なる振幅を有する第1のセンス信号および第2のセンス信号を生成するように構成され得る。代替的に、力フィードバックが第1のおよび第2の共振器において実施される場合、第1の共振器の力フィードバックの利得は、第2の共振器の力フィードバックの利得とは著しく異なり得る。
第1のセンス信号の振幅が第2のセンス信号の振幅よりも大幅に大きく、対応する増幅器の利得が上記のように選択される場合、第1の電気機械共振器および第2の電気機械共振器は、2つの異なる種類の測定に使用することができる。第1の電気機械共振器の出力は、第2の電気機械共振器の出力よりも広い範囲をカバーするが、ノイズも多くなる。
第1のセンス信号は、たとえば、ジャイロスコープが測定するように設計されている角回転値の最も大きい共通の範囲をカバーするように適合され得る。次いで、第2のセンス信号は、小さい角回転値の範囲、言い換えればゼロに近い角回転を高精度でカバーするように適合され得る。代替的に、第2のセンス信号が、最も大きい共通の範囲をカバーするように適合されてもよく、第1のセンス信号が、例外的に大きい角回転値を含むはるかに広い範囲をカバーするように適合されてもよい。いずれの場合でも、共通の範囲の値を、1つの電気機械共振器を通じて高精度で測定することができ、当該範囲の一端に近い値またはこの範囲を超える値を、他方の電気機械共振器を通じて高精度で測定することができる。
図8は、1つまたは複数の第1のセンストランスデューサ821から第1のセンス信号1Sを読み取るように構成された第1の差動増幅器811と、1つまたは複数の第2のセンストランスデューサ822から第2のセンス信号2Sを読み取るように構成された第2の差動増幅器812とを有する読み取り回路を示す。
第1のセンストランスデューサ821および第2のセンストランスデューサ822は、図6のセンストランスデューサ621および622と同じ機能を実行するが、当該センストランスデューサの利得は異なる。結果、センストランスデューサ821および822によって生成される電圧または電流も互いに異なる。第1のセンス信号1Sと第2のセンス信号2Sは両方とも同じ角回転の測度を提供するにもかかわらず、第1のセンス信号1Sは、第2のセンス信号2Sの振幅よりも実質的に大きい振幅を得る。図6のように、第1のセンストランスデューサ821および第2のセンストランスデューサ822の電圧または電流出力は、1つまたは複数のコリオリ素子対からの出力の組み合わせである。各コリオリ素子対は、逆位相で振動する素子を含む。
換言すれば、第1の差動増幅器を通じて2つ以上の第1のセンストランスデューサの出力を読み取ることによって、第1のセンス信号を生成することができ、第2の差動増幅器を通じて2つ以上の第2のセンストランスデューサの出力を読み取ることによって、第2のセンス信号を生成することができる。2つ以上の第1のセンストランスデューサは、2つ以上の第2のセンストランスデューサによって生成される第2のセンス信号よりも実質的に大きい振幅を有する第1のセンス信号を生成するように構成することができる。第1の差動増幅器の利得は、第2の差動増幅器の利得より大きくすることができ、制御ユニットは、第1のセンス信号と第2のセンス信号とを別個に保存または監視するように構成することができる。
異なる角回転範囲を測定するために2つの完全に別個のジャイロスコープが同じ回路基板に固定される状況と比較して、上記の構成では、1つのパッケージ、たとえば、測定の間の駆動機能のような多くの共通ブロックを共有する1つの統合電子機器、および、1つの統合された検知素子しか必要とされず、コストが大幅に削減される。2つのコリオリ素子が互いに隣接して製造されるため、構成はよりロバストでもある。また、2つのコリオリ素子ははるかにより類似してもいるため、較正が単純になる。
一部のジャイロスコープでは、3つ以上の共振器を同じ駆動機構または駆動信号に接続し、所与の入力軸を中心とした角回転を3回以上測定し、または、測定範囲を3つ以上の別個に測定される範囲に分割することが可能であり得る。
図7に示すもののような、自己診断読み取り回路は、図8に示す主読み取り回路と組み合わせて実装することもできる。ただし、当該事例において、第1のセンス信号1Sおよび第2のセンス信号2Sの振幅が等しくないため、両方の共振器が適切に動作しているときの自己診断出力信号の期待値は一般的に、ゼロではあり得ない。ただし、好ましくは、自己診断機能の2つの信号の利得は、信号の利得と比較して反比例するべきであり、当該事例において、当該利得の合計は理想的にはゼロに等しくなる。図8の主読み取り回路を、センス信号1Sのための1つの回路と、センス信号2Sのためのもう1つの回路との、2つの異なる自己診断読み取り回路と組み合わせることも可能である。