JP6973149B2 - フレキシブルプリント配線板用基板 - Google Patents
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Description
本発明の一態様に係るフレキシブルプリント配線板用基板製造方法は、ポリイミドを主成分とするベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層される導体層とを備えるフレキシブルプリント配線板用基板の製造方法であって、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面を改質する改質工程と、上記ベースフィルムの上記改質工程で改質した面に上記導体層を積層する積層工程とを備え、上記改質工程が、上記ベースフィルムをアルカリ性液に浸漬するアルカリ処理工程と、上記アルカリ処理工程後のベースフィルムを酸性液で洗浄する酸洗工程と、上記酸洗工程後のベースフィルムを2価の金属イオンを含有する水溶液に浸漬する金属導入工程とを有し、上記積層工程が、上記ベースフィルムの改質した面側に金属粒子を含有する金属粒子分散液を塗布する塗布工程と、上記金属粒子分散液塗膜を焼成する焼成工程とを有する。
以下、本発明に係るフレキシブルプリント配線板用基板及びフレキシブルプリント配線板用基板製造方法の実施形態について図面を参照しつつ詳説する。
ベースフィルム1は、導体層2を支持する基材であり、可撓性を有するシート状に形成される。
導体層2は、金属粒子を主体とする層を焼成して形成される焼結体層によって構成することができる。より具体的には、導体層2は、金属粒子を分散した金属粒子分散液の塗布及び焼成により形成することができる。導体層2をこのような焼結体層により形成することで、真空設備等の大がかりな装置を必要とせず、比較的容易かつ安価に形成することができるので、当該フレキシブルプリント配線板用基板の製造コストを抑制することができる。
フレキシブルプリント配線板の製造方法が、例えば導電パターンを被覆するカバーレイを熱圧着する工程等のようにベースフィルム1に圧力が加わる工程を有する場合にも、当該フレキシブルプリント配線板用基板は、ベースフィルム1の最表面における弾性率が厚さ方向中央における弾性率よりも大きくなるようベースフィルム1が改質されているため、寸法安定性が向上している。このため、当該フレキシブルプリント配線板用基板を用いてフレキシブルプリント配線板を製造する際にスクラッチ傷が付くことを抑制できる。また、当該フレキシブルプリント配線板用基板は、ベースフィルムの1寸法安定せいが向上していることにより、ベースフィルム1の寸法変化によってベースフィルム1と導体層2との界面に剪断力が生じにくいので、ベースフィルムと導体層との密着性に優れる。
当該フレキシブルプリント配線板用基板は、図2に示すように、ベースフィルム1の少なくとも一方の面を改質する改質工程<ステップS1>と、ベースフィルム1の改質工程で改質した面に導体層2を積層する積層工程<ステップS2>とを備える。
ステップS1の改質工程は、ベースフィルム1をアルカリ性液に浸漬するアルカリ処理工程(ステップS11)と、アルカリ処理工程後のベースフィルムを酸性液で洗浄する酸洗工程(ステップS12)と、酸洗工程後のベースフィルムを2価の金属イオンを含有する水溶液に浸漬する金属導入工程(ステップS13)とを有する。
ステップS2の積層工程は、ベースフィルム1の改質した面側に金属粒子を含有する金属粒子分散液を塗布する塗布工程(ステップS21)と、金属粒子分散液の塗膜を乾燥する乾燥工程(ステップS22)と、乾燥した金属粒子分散液の塗膜を焼成する焼成工程(ステップS23)とを有する。
ステップS11のアルカリ処理工程では、ベースフィルム1の導体層2を積層する予定の面にアルカリ性液を接触させることによって、ベースフィルム1の主成分であるポリイミドのイミド環の一部を開環する。このアルカリ処理によって、ベースフィルム1と導体層2との密着性(剥離強度)を向上することができる。
ステップS12の酸洗工程では、ベースフィルム1を酸性液で洗浄することによって、ベースフィルム1に残留するアルカリ性液を中和する。
ステップS13の金属導入工程では、酸洗工程後のベースフィルム1を2価の金属イオンを含有する水溶液に浸漬することによって、ベースフィルム1の表面近傍領域に金属元素を導入する。この金属元素は、ベースフィルム1のポリイミドを架橋する
ステップS21の塗布工程では、上記改質工程で改質したベースフィルム1の改質面に金属粒子を含有する金属粒子分散液を塗工する。
ステップS22の焼成工程では、上記金属粒子分散液の塗膜を乾燥する。この塗膜の乾燥は、短時間で行うほど、塗膜を焼結して得られる導体層2の空隙率を小さくすることができる。このため、加熱又は送風によって、金属粒子分散液の乾燥を促進することが好ましく、金属粒子分散液の塗膜に温風を吹き付けることによって塗膜を乾燥することがより好ましい。
ステップS23の焼成工程では、乾燥した金属粒子分散液の塗膜を加熱することによって、塗膜中の分散剤や各種添加剤を蒸発又は熱分解し、残る金属粒子を焼結して導体層2を形成する。
当該フレキシブルプリント配線板用基板製造方法は、酸洗工程後のベースフィルム1を2価の金属イオンを含有する水溶液に浸漬する金属導入工程を有することで、ベースフィルム1の主成分であるポリイミドを金属原子によって架橋し、ベースフィルム1の表面弾性率を向上することができる。これにより、当該フレキシブルプリント配線板用基板製造方法によって得られるフレキシブルプリント配線板用基板を用いてフレキシブルプリント配線板を製造する際のスクラッチ傷を抑制することができる。また、当該フレキシブルプリント配線板用基板製造方法によって得られるフレキシブルプリント配線板用基板は、ベースフィルム1と導体層2との間の密着力に優れる。
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
本発明の効果を検証するために、製造条件の異なる試作品No.1〜8の8種類のプリント配線板用基材を製造した。
絶縁性を有するベースフィルムとして平均厚さ25μmのポリイミドフィルム(カネカ社の「アピカルNPI」)を用い、以下に説明する条件で改質工程及び積層工程を行ってプリント配線板用基材の試作品No.1を複数試作した。上記ベースフィルムの表面弾性率をOxford社の「MFP−3D Origin」を用いて測定したところ、その値は3.30GPaであった。
プリント配線板用基材の試作品No.2は、金属導入工程でベースフィルムを、金属イオン濃度0.09mmol/L、温度25±5℃の塩化カルシウム(CaCl2)水溶液に240秒浸漬してベースフィルムの表面にカルシウムを導入した以外は、上記試作品No.1と同じ条件で試作した。金属導入工程後のベースフィルムの表面近傍のカルシウム含有量は0.22μg/cm2で、また、このベースフィルムの表面弾性率は4.95GPaであった。
プリント配線板用基材の試作品No.3は、金属導入工程でベースフィルムを、金属イオン濃度0.18mmol/L、温度25±5℃の塩化カルシウム(CaCl2)水溶液に240秒浸漬してベースフィルムの表面にカルシウムを導入した以外は、上記試作品No.1と同じ条件で試作した。金属導入工程後のベースフィルムの表面近傍のカルシウム含有量は0.54μg/cm2で、また、このベースフィルムの表面弾性率は6.93GPaであった。
プリント配線板用基材の試作品No.4は、金属導入工程でベースフィルムを、金属イオン濃度0.45mmol/L、温度25±5℃の塩化カルシウム(CaCl2)水溶液に240秒浸漬してベースフィルムの表面にカルシウムを導入した以外は、上記試作品No.1と同じ条件で試作した。金属導入工程後のベースフィルムの表面近傍のカルシウム含有量は0.79μg/cm2で、また、このベースフィルムの表面弾性率は7.59GPaであった。
プリント配線板用基材の試作品No.5は、金属導入工程でベースフィルムを、金属イオン濃度0.90mmol/L、温度25±5℃の塩化カルシウム(CaCl2)水溶液に240秒浸漬してベースフィルムの表面にカルシウムを導入した以外は、上記試作品No.1と同じ条件で試作した。金属導入工程後のベースフィルムの表面近傍のカルシウム含有量は1.00μg/cm2で、また、このベースフィルムの表面弾性率は7.92GPaであった。
プリント配線板用基材の試作品No.6は、金属導入工程でベースフィルムを、金属イオン濃度1.80mmol/L、温度25±5℃の塩化カルシウム(CaCl2)水溶液に240秒浸漬してベースフィルムの表面にカルシウムを導入した以外は、上記試作品No.1と同じ条件で試作した。金属導入工程後のベースフィルムの表面近傍のカルシウム含有量は1.19μg/cm2で、また、このベースフィルムの表面弾性率は8.15GPaであった。
プリント配線板用基材の試作品No.7は、金属導入工程でベースフィルムを、金属イオン濃度9mmol/L、温度25±5℃の塩化カルシウム(CaCl2)水溶液に240秒浸漬してベースフィルムの表面にカルシウムを導入した以外は、上記試作品No.1と同じ条件で試作した。金属導入工程後のベースフィルムの表面近傍のカルシウム含有量は1.2μg/cm2で、また、このベースフィルムの表面弾性率は8.25GPaであった。
プリント配線板用基材の試作品No.8は、金属導入工程でベースフィルムを、金属イオン濃度18mmol/L、温度25±5℃の塩化カルシウム(CaCl2)水溶液に240秒浸漬してベースフィルムの表面にカルシウムを導入した以外は、上記試作品No.1と同じ条件で試作した。金属導入工程後のベースフィルムの表面近傍のカルシウム含有量は1.42μg/cm2で、また、このベースフィルムの表面弾性率は8.20GPaであった。
プリント配線板用基材の試作品No.9は、金属導入工程でベースフィルムを金属イオンを含まない純水に浸漬した以外は、上記試作品No.1と同じ条件で試作した。金属導入工程後のベースフィルムの表面近傍のカルシウム含有量は測定限界である0.01μg/cm2に満たなかった、また、このベースフィルムの表面弾性率は3.30GPaであった。
プリント配線板用基材の試作品No.1〜8について、製造直後に導体層のベースフィルムからの剥離強度(初期密着力)を測定し、耐候性試験を実施してから再度導体層の剥離強度(耐候性密着力)を測定した。なお、導体層の剥離強度は、ベースフィルムをたわみ性被着材としてJIS−K6854−2(1999)「接着剤−はく離接着強さ試験方法−2部:180度はく離」に準じた方法により測定した。また、耐候性試験は、JIS−D0205(1987)に準拠して、温度63±3℃、湿度50±5%の環境下で、サンシャインカーボンアーク灯(255W/m2)を1000時間照射した。
2 導体層
S1 改質工程
S11 アルカリ処理工程
S12 酸洗工程
S13 金属導入工程
S2 積層工程
S21 塗布工程
S22 乾燥工程
S23 焼成工程
Claims (8)
- ポリイミドを主成分とするベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面側に積層される導体層とを備えるフレキシブルプリント配線板用基板であって、
上記導体層が金属粒子を主体とする焼結体層を含み、
上記ベースフィルムの上記導体層が積層される側の最表面における弾性率が、厚さ方向中央における弾性率よりも大きいフレキシブルプリント配線板用基板。 - 上記ベースフィルムの上記導体層が積層される側の最表面における弾性率が、上記厚さ方向中央における弾性率の1.1倍以上3.0倍以下である請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板用基板。
- 上記導体層は、無電解めっき層と電気めっき層をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板用基板。
- 上記ポリイミドが、熱硬化性ポリイミドである請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板用基板。
- 上記ベースフィルムの平均厚さが5μm以上2mm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板用基板。
- 上記ベースフィルムの平均厚さが12μm以上1.6mm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板用基板。
- 上記焼結体層を形成する金属粒子の平均粒子径が、1nm以上500nm以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板用基板。
- 上記焼結体層の平均厚さが、50nm以上2μm以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板用基板。
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