JP6971201B2 - 水溶性セルロースエーテルの製造方法 - Google Patents

水溶性セルロースエーテルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、建材分野、化学分野、医薬品分野、食品分野等で利用される水溶性セルロースエーテル及びその製造方法に関する。
セルロースの結晶化度は、セルロース分子の骨格構造を構築する分子内の水酸基間の水素結合に大きく起因するものと考えられる。この水素結合は、水中の水分子との水和を妨げるほど強いため、セルロースは非水溶性である。そのため、水溶性セルロースエーテルは、セルロースを水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ金属水酸化物溶液により処理し、結晶構造が破壊されたアルカリセルロースとし、そして、エーテル化剤と反応し、セルロースの水酸基が置換されることによって製造される。
従来から、水溶性セルロースエーテルは、医薬、食品用バインダー、各種溶媒の増粘剤、押し出し成形製法やセラミック形成材料用におけるバインダーとして使用されている。水溶性セルロースエーテルは、水溶液中において分子レベルで溶解して透明な状態なものではないと、製品に欠陥部分が生じたり、製品の機能が劣ったりすることがあった。水溶性セルロースエーテルの水溶液粘度は、各種バインダーや増粘用途において高粘性のものが望まれるが、高粘性の水溶性セルロースエーテルは低粘性の水溶性セルロースエーテルに比べて未溶解繊維数が多くなり、透明なものを得るのは困難であると考えられていた。
また、高粘性の水溶性セルロースエーテルは低粘性の水溶性セルロースエーテルに比べて、ゆるめ嵩密度が低くなる傾向がある。通常ゆるめ嵩密度が低いと、流動性を低下させるような繊維状セルロースエーテルの割合が多く、粉末の流動性に劣る。流動性に劣る場合、例えばホッパーから粉末を投入する際に、ブリッジ等のトラブルが発生しやすくなる。
水溶液としたときに高粘性で未溶解性繊維分が少ない水溶性セルロースエーテルの製造方法としては、細孔体積が特定のシート状パルプをシート状のまま、又はチップ状でアルカリ金属水酸化物溶液と接触させた後、余剰のアルカリ金属水酸化物溶液を脱液してアルカリセルロースを得て、その後エーテル化剤と反応し水溶性セルロースエーテルを得る製造方法がある。この方法は、粉末パルプをアルカリ金属水酸化物溶液と接触させる方法と比較してアルカリセルロースのアルカリ分布の均一性に優れており、そのため未溶解繊維数が少ない(特許文献1)。
また、水溶性セルロース誘導体中の非水溶性繊維数を低減する方法としては、水溶性セルロース誘導体に50℃以上の水を添加して、含水率35〜90質量%とし、品温が50℃を下回ることなく、乾燥、粉砕装置に供される方法がある(特許文献2)。
高粘性の水溶性セルロースから水溶性セルロースエーテルを得る方法としては、水で湿っているセルロースエーテルに水を加えて混合することにより、含水率50〜80質量%のセルロースエーテル供給組成物を生じさせ、これを高速回転インパクトミル内で加熱しながら粉砕する方法がある(特許文献3)。
特開2009−173907号公報 特表2014−510183号公報 特開2001−240601号公報
特許文献1で開示される製法で得られる高粘性の水溶性セルロースエーテルは、水溶性セルロースエーテル粉末中に、流動性を低下させる繊維状セルロースエーテルの割合が高い場合があり、ゆるめ嵩密度に改善の余地があった。
また、特許文献2で開示される製造方法で得られる高粘性の水溶性セルロースエーテルは、水溶性セルロース誘導体と接触させる水の温度が高いためセルロースエーテル繊維形状が消失し難く、繊維状セルロースエーテルが残存してしまう。そのため、特許文献1と比較して、流動性を低下させる繊維状セルロースエーテルの割合は少ないが、それでも満足できるゆるめ嵩密度を有する水溶性セルロースエーテルを得ることはできない。
また、特許文献3で開示される製法では、水で湿っているセルロースエーテルに水を加えて混合する際に、セルロースエーテルの塊の表面のみが溶解し、表面に高粘性のゲル状の膜を形成するため、塊の内部まで水が到達せず、水の分布が不均一となり、結果として繊維形状が消失しなかった部分が繊維状のセルロースエーテルとして残存してしまうため、ゆるめ嵩密度が劣る場合があるという問題があった。
これらのことから、未溶解繊維分が少なく、ゆるめ嵩密度が高い高粘性の水溶性セルロースエーテル及びその製造方法が求められていた。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、水溶性セルロースの製造方法において、水溶性セルロースエーテル生成物の洗浄後に含水率を調整し、その後粗粉砕することによって、未溶解繊維数が少なく高いゆるめ嵩密度を有する高粘性の水溶性セルロースエーテルが製造できることを見出し、本発明をなすに至った。
本発明の一つの態様によれば、シート状又はチップ状のセルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液を接触させてアルカリセルロース混合物を得る工程と、前記アルカリセルロース混合物を脱液してアルカリセルロースを得る工程と、前記アルカリセルロースとエーテル化剤を反応させて、水溶性セルロースエーテル生成物を得る工程と、前記水溶性セルロースエーテル生成物を60〜100℃の水を用いて洗浄、脱液して第1の湿潤セルロースエーテルを得る工程と、前記第1の湿潤セルロースエーテルと80〜100℃の水を混合して含水率が60〜90質量%である第2の湿潤セルロースエーテルを得る工程と、前記第2の湿潤セルロースエーテルを粗粉砕して、粗粉砕セルロースエーテルを得る工程と、前記粗粉砕セルロースエーテルを冷却する工程と、前記冷却後、前記粗粉砕セルロースエーテルを乾燥、粉砕して水溶性セルロースエーテルを得る工程とを少なくとも含む水溶性セルロースエーテルの製造方法が提供される

本発明によれば、ゆるめ嵩密度が高く、未溶解繊維数の少ない高粘性の水溶性セルロースエーテルを効率よく製造することができる。例えば、ゆるめ嵩密度が0.36〜0.60g/mlであり、且つ20℃における2質量%水溶液粘度が30,000〜500,000mPa・sであり、且つ25℃における0.1質量%水溶液2mL中でコールターカウンター法を用いて測定したときの8〜200μmのサイズを有する未溶解繊維数が800個以下である水溶性セルロースエーテルを製造することができる。
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
まず、セルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液を接触させてアルカリセルロース混合物を得る工程について説明する。
セルロースパルプの原料としては、木材パルプ、コットンリンターパルプ等が挙げられるが、未溶解繊維数を減らす観点から、木材パルプが好ましい。木材パルプの樹種は、マツ、トウヒ、ツガ等の針葉樹及びユーカリ、カエデ等の広葉樹等を用いることができ、未溶解繊維数を減らす観点から、好ましい樹種はマツである。
セルロースパルプの重合度の指標である固有粘度は、高粘性の水溶性セルロースエーテルを得る観点から、JIS P8215による粘度測定法において、好ましくは1300〜3000ml/g、より好ましくは1400〜2500ml/gである。
セルロースパルプは、アルカリセルロースの取り扱いのしやすさ及び脱液性の観点からシート状パルプ又はチップ状パルプであることが好ましい。
シート状パルプの厚みは、脱液工程時の取り扱いの観点から、好ましくは0.1〜5.0mm、より好ましくは0.5〜2.0mmである。
シート状パルプにおける密度は、未溶解繊維数を減らす観点から、好ましくは0.60g/ml以下である。シート状パルプにおける密度の下限については、工業的に得られるものであれば特に制限はないが、通常0.30g/mlである。
シート状パルプのアルファセルロース分率はアルカリ吸収速度の低下を抑制し、未溶解繊維数を減らす観点から、90質量%以上が好ましい。アルファセルロース分率は、TAPPI(パルプ製紙業界技術協会)のTEST METHOD T429による方法で測定できる。
また、シート状パルプをそのまま用いる他、チップ状パルプとして用いることもできる。
チップ状パルプの形状は、浸漬操作における取り扱い及び未溶解繊維数を減らす観点から、通常一辺が好ましくは2〜100mm、より好ましくは3〜50mmの四角形である。チップ状パルプの厚みは、シート状パルプの厚みと同様である。
チップ状パルプは、シート状パルプを裁断することにより製造できる。チップ状パルプの製造方法は限定されないが、スリッターカッター等の既存の裁断装置を利用することができる。裁断装置は、連続的に処理できるものが投資コスト上有利である。
アルカリ金属水酸化物溶液は、アルカリセルロースが得られれば、特に限定しないが、経済的観点から、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液である。
アルカリ金属水酸化物溶液の濃度は、エーテル化剤の反応効率を高くする観点から、好ましくは23〜60質量%、より好ましくは35〜55質量%である。アルカリ金属水酸化物溶液は、水溶液が好ましいが、エタノール等のアルコール溶液や水溶性アルコールと水との混合溶液であってもよい。
セルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液を接触させる温度は、生産性及びアルカリセルロースの組成のばらつき抑制の観点から、好ましくは5〜70℃、より好ましくは15〜60℃である。
セルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液を接触させる時間は、アルカリセルロースの組成のばらつきを抑制し、所望の組成のアルカリセルロースを得る観点から、好ましくは10〜600秒間であり、より好ましくは15〜120秒間である。
アルカリセルロース混合物中に含まれるアルカリ金属水酸化物溶液とパルプ中の固体成分との質量比(アルカリ金属水酸化物溶液/パルプ中の固体成分)は、設備の規模及び未溶解繊維数を減らす観点から、好ましくは3〜5,000、より好ましくは10〜200、更に好ましくは20〜60である。
アルカリ金属水酸化物溶液の使用量は、上記質量比に応じて適宜選択すればよい。
パルプ中の固体成分は、パルプ中の水分以外の成分を意味する。パルプ中の固体成分には、主成分のセルロースの他、ヘミセルロース、リグニン、樹脂分等の有機物、Si分、Fe分等の無機物が含まれる。パルプ中の固体成分は、JIS P8203:1998のパルプ−絶乾率の試験方法により求められた絶乾率より算出できる。絶乾率(dry matter content)は、試料を105±2℃で乾燥し、恒量に達したときの質量と乾燥前の質量の比率であり、質量%で表示する。
次に、アルカリセルロース混合物を脱液してアルカリセルロースを得る工程について説明する。アルカリセルロースは、セルロースパルプをアルカリ金属水酸化物溶液に接触させた後に得られたアルカリセルロース混合物を脱液し、余分なアルカリ金属水酸化物溶液を除去することによって得られる。
脱液する方法としては、シート状パルプをアルカリ金属水酸化物溶液の入ったバスに浸漬させた後、ローラーその他の装置で加圧圧搾する方法や、チップ状パルプをアルカリ金属水酸化物溶液の入ったバスに浸漬させた後、遠心分離や他の機械的方法により圧搾する方法等が挙げられる。
アルカリセルロースにおけるアルカリ金属水酸化物成分とパルプ中の固体成分の質量比(アルカリ金属水酸化物成分/パルプ中の固体成分)は、未溶解繊維数を減らす観点から、好ましくは0.50〜2.00、より好ましくは0.60〜1.80である。
なお、加圧圧搾するときの加圧時間や条件、遠心分離の回転数及び遠心分離機内の滞留時間を任意に設定することで、所望のアルカリ金属水酸化物成分とパルプ中の固体成分の質量比(アルカリ金属水酸化物成分/パルプ中の固体成分)であるアルカリセルロースを製造することできる。
加圧圧搾、遠心分離等による脱液の温度として、例えば、セルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液を接触させて得られたアルカリセルロース混合物の温度を加熱又は冷却することなくそのまま使用してもよい。
アルカリ金属水酸化物成分の質量は、中和滴定法によって算出することができる。
次に、アルカリセルロースとエーテル化剤を反応させて、水溶性セルロースエーテル生成物を得る工程について説明する。
アルカリセルロースは、そのまま又は必要に応じて裁断、解砕してエーテル化反応機に供給することができる。エーテル化反応機としては、未溶解繊維数を減らす観点から、アルカリセルロースを機械的な力によりほぐしながらエーテル化反応することができる撹拌機構を内部に持つものが好ましく、例としてスキ型ショベル羽根式混合機等が挙げられる。また、アルカリセルロースを反応機に供給後、反応機内の酸素を真空ポンプ等で除去し、不活性ガス、好ましくは窒素で置換することが好ましい。
エーテル化反応機内における局所的な発熱を抑制の目的で、アルカリセルロース供給後に、エーテル化反応に供さない有機溶媒、例えばジメチルエーテルを系内に添加することができる。
エーテル化剤としては、塩化メチル、塩化エチル等のアルキル化剤、酸化エチレン、酸化プロピレン等のヒドロキシアルキル化剤等が挙げられる。エーテル化剤は、反応機にアルカリセルロースを供給した後に、供給することが好ましい。エーテル化剤の供給量は、得られる水溶性セルロースエーテルが所望の置換度となるように調整を行う。
エーテル化剤を供給するときのエーテル化反応機の内温は、反応制御の観点から、好ましくは40〜90℃、より好ましくは50〜85℃である。エーテル化剤を供給するときの供給時間は、反応制御又は生産性の観点から、好ましくは10〜120分間、より好ましくは10〜100分間である。
エーテル化剤の供給後は、エーテル化反応を完了させるために撹拌混合を続けることが好ましい。エーテル化剤供給後の撹拌混合時間は、生産性の観点から、好ましくは10〜80分間、より好ましくは20〜60分間である。エーテル化剤供給後の反応機の内温は、反応制御性の観点から、好ましくは70〜120℃、より好ましくは80〜110℃である。
なお、均一な置換反応が行われなかった水溶性セルロースエーテルは、水に溶解した時に25℃における0.1質量%水溶液2mL中でコールターカウンター法を用いて測定したときの8〜200μmのサイズを有する未溶解繊維が多数残存してしまうことになる。
エーテル化反応完了後、エーテル化反応機内のガスを排出した後に、エーテル化反応機から水溶性セルロースエーテル生成物を取り出す。
次に、水溶性セルロースエーテル生成物を洗浄、脱液して第1の湿潤セルロースエーテルを得る工程について説明する。
水溶性セルロースエーテルのゲル化温度超過の水等の液体による洗浄、脱液は、洗浄と脱液を別々に行っても同時に行ってもよく、例えば、洗浄後に濾過又は圧搾を行ってもよいし、洗浄のための水を注ぎながら濾過又は圧搾を行ってもよい。洗浄、脱液は、公知の技術を用いて行うことができる。例えば、水溶性セルロースエーテル生成物を洗浄のためにゲル化温度超過の水に分散させて、水溶性セルロースエーテル生成物のスラリーを形成させ、これを脱液し、必要に応じ圧搾する。
水溶性セルロースエーテル生成物の洗浄は、所定の温度の水を用いて洗浄することを含む。水溶性セルロースエーテル生成物に加える洗浄のための水の温度は、灰分の低い水溶性セルロースエーテルを得る観点から、好ましくは60〜100℃、より好ましくは85〜100℃である。水溶性セルロースエーテル生成物のスラリー濃度は、灰分の低い水溶性セルロースエーテルを得る観点から、好ましくは1〜15質量%である。
洗浄の対象となる水溶性セルロースエーテル生成物の温度は、エーテル化反応後の温度であり、好ましくは70〜120℃、より好ましくは80〜110℃である。
脱液に使用する装置としては、減圧濾過器、加圧濾過器、遠心脱水機、フィルタープレス、スクリュープレス、V型ディスクプレス等を用いることができる。圧搾に使用する装置は、脱液に使用する装置と同様の装置を用いることができる。
必要に応じ、洗浄後の水溶性セルロースエーテル生成物の脱液物に、引き続き洗浄のための水を通過させ更に洗浄したり、洗浄後の水溶性セルロースエーテル生成物の濾過物又は圧搾物を再度洗浄のための水に分散しスラリー化して脱液、圧搾したりしてもよい。
洗浄、脱液によって得られた第1の湿潤セルロースエーテルは、脱液工程によりブロック状形態であっても、ブロック状形態が解れた形態であっても良いが、脱液に使用する装置の形状及び機能が複雑となる事を避ける観点から、好ましくはブロック状形態である。
洗浄、脱液によって得られた第1の湿潤セルロースエーテルの含水率は、灰分の低い水溶性セルロースエーテルを得る観点から、好ましくは35〜55質量%、より好ましくは40〜50質量%である。第1の湿潤セルロースエーテルの含水率は、第17改正日本薬局方の「乾燥減量試験法」に従って測定できる。含水率は、{(乾燥前の全質量−乾燥後の質量)/(乾燥前の全質量)}×100%を用いて算出できる。
洗浄、脱液によって得られた第1の湿潤セルロースエーテルの温度は、後述する第2の湿潤セルロースエーテルを得る工程を考慮すると、好ましくは60〜100℃、より好ましくは80〜95℃である。
次に、第1の湿潤セルロースエーテルと水を混合して第2の湿潤セルロースエーテルを得る工程について説明する。
第1の湿潤セルロースエーテルと水を混合して第2の湿潤セルロースエーテルを得る方法は、第2の湿潤セルロースエーテルの水分分布が均一であり、第2の湿潤セルロースエーテルの温度及び含水率を所望の値に調整することができれば、特に制限はないが、第2の湿潤セルロースエーテルの水分分布を均一にする観点から、第1の湿潤セルロースエーテルの量に対し、第2の湿潤セルロースエーテル含水率が好ましい範囲になるために必要な量の水を、第1の湿潤セルロースエーテルと同時に混合機へ供給することが好ましい。
第1の湿潤セルロースエーテルと混合する水の温度は、高いゆるめ嵩密度の水溶性セルロースエーテルを得る観点及び以降の工程で良好な操作性とする観点から、バッチ方式、連続方式を問わず、好ましくは80〜100℃、より好ましくは90〜100℃である。
水と混合する第1の湿潤セルロースエーテルの温度は、上述したように、好ましくは60〜100℃、より好ましくは80〜95℃である。第1の湿潤セルロースエーテルの温度が60℃未満であると、第1の湿潤セルロースエーテルの表面が溶解し、表面に高粘性のゲル状の膜を形成するため、第2の湿潤セルロースエーテルを得る工程で水を添加した際、塊状の第1の湿潤セルロースエーテルの内部まで水が到達せず、水分の分布が不均一となり、結果として水溶性セルロースエーテルのゆるめ嵩密度が劣る場合がある。100℃を超える第1の湿潤セルロースエーテルを得ることは、困難である。
水と混合して得られる第2の湿潤セルロースエーテルの温度は、粗粉砕セルロースエーテルの水分分布を均一にし、未溶解繊維数が低く、ゆるめ嵩密度が高い水溶性セルロースエーテルを得る観点から、好ましくは50〜100℃、より好ましくは70〜95℃である。
第1の湿潤セルロースエーテルと水を混合して得られる第2の湿潤セルロースエーテルの含水率は、高いゆるめ嵩密度の水溶性セルロースエーテルを得る観点から、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは60〜85質量%、更に好ましくは65〜80質量%である。
第1の湿潤セルロースエーテルと水を混合して得られる第2の湿潤セルロースエーテルの含水率は、第1の湿潤セルロースエーテルの含水率と同様に、第17改正日本薬局方の「乾燥減量試験法」に従って測定できる。
第1の湿潤セルロースエーテルと水を混合する方式は、バッチ方式、連続方式どちらの方法も可能だが、第2の湿潤セルロースエーテルの水分分布の均一化及び工業的な生産の観点から連続方式のほうが好ましい。
バッチ方式の場合は、ジャケット付の撹拌混合装置に第1の湿潤セルロースエーテルを仕込むと同時に水を供給し、撹拌混合させることで第2の湿潤セルロースエーテルとする。撹拌混合装置は公知のものを用いることができ、例えば、リボン型混合機、スクリュー型混合機、ピン付きローター型混合機、パドル型混合機、複数パドル型混合機、プローシェア型混合機、双腕型ねっか機、コニーダー、ボテーター型ねっか機、セルフクリーニング型ねっか機、二軸混練機等が挙げられる。
バッチ方式の場合の第1の湿潤セルロースエーテルへ水を添加する方法は、好ましくは撹拌混合装置の入口又は内部に滴下、スプレーする方法を用いることができる。滴下、スプレーする箇所は1箇所又は複数個所に分けて行うことができる。
バッチ方式に用いる撹拌混合装置の撹拌速度は、撹拌のための消費電力が過大となること又は撹拌による熱で撹拌混合物中の水分が蒸発することを抑制する観点から、撹拌羽根の円周速度として好ましくは0.05〜150m/s、より好ましくは0.1〜20m/s、更に好ましくは0.2〜10m/sである。撹拌混合時間は、第2の湿潤セルロースエーテルの水分分布の不均一化を抑制する又は工業的な生産の観点から、好ましくは1秒〜60分間、より好ましくは1秒〜30分間である。
バッチ方式に用いる撹拌混合装置は、第1の湿潤セルロースエーテルの表面のみが溶解し、表面に高粘性のゲル状の膜を形成することを防止する観点から、適当な手段により保温又は加熱されることが好ましい。例えば、断熱材で撹拌混合装置表面を覆ったり、撹拌混合装置としてジャケット付きのものを使用し、ジャケット温度を80〜100℃に保つことが好ましい。
連続方式の場合は、第1の湿潤セルロースエーテルの量に対し、第2の湿潤セルロースエーテル含水率が好ましい範囲になるために必要な量の水を、第1の湿潤セルロースエーテルと同時に移送混合機へ供給することで第2の湿潤セルロースとする。移送混合機は公知のものを使用することができ、特に制限はないが、第1の湿潤セルロースエーテルを定量的に供給することが可能なスクリューコンベア型移送混合機が好ましい。スクリューコンベア型移送混合機のスクリューの形状は、特に制限はないが、第2の湿潤セルロースエーテルの水分分布を均一にする観点から、パドル付スクリューやリボンスクリューが好ましい。
連続方式に用いる移送混合機の運転条件としては、第2の湿潤セルロースエーテルの水分分布が不均一になることの抑制及び移送混合機の大きさの観点から、移送時間が、好ましくは1秒〜60分間、より好ましくは1秒〜30分間となるようにスクリューの形状やピッチ及び回転数を設定することが好ましい。移送混合機内の温度は、第1の湿潤セルロースエーテルの表面のみが溶解し、表面に高粘性のゲル状の膜を形成するのを防止する観点から、好ましくは80〜100℃、より好ましくは90〜100℃である。
第2の湿潤セルロースエーテルは、ブロック状形態であっても、混合機によりせん断力を与えることによりブロック状形態が解れた形態であっても良い。
ブロック状形態が解れた形態とした場合における第2の湿潤セルロースエーテルの平均粒子径は10〜30mmである。平均粒子径は、篩法による積算重量粒度分布における積算値50%粒子径を用いる。具体的には、目開きが45.0mm(篩−1)、37.5mm(篩−2)、22.4mm(篩−3)、16.0mm(篩−4)、11.2mm(篩−5)、8.0mm(篩−6)、4.0mm(篩−7)、2.0mm(篩−8)、1.0mm(篩−9)、0.425mm(篩−10)の篩を用意し、JIS Z 8815篩分け試験法則通則の手動篩分け法に従うことで篩分けを行い、積算篩上百分率をロジンラムラ―線図に打点し、積算篩上分布が50%となるときの粒子径を平均粒子径とした。ここで、算出値の再現性又は正確性の観点から、用意した異なる目開きの篩の中から5つ以上を選定して、第2の湿潤セルロースエーテルの篩分けを行うことが好ましい。前記異なる目開きの篩の中から5つ以上を選定する場合は、算出値の再現性又は正確性の観点から、ハイフンで結ばれた番号が連続するように、例えば篩−2から篩−6又は篩−3から篩−7のように、篩を選定することが好ましい。
次に、第2の湿潤セルロースエーテルを粗粉砕して、粗粉砕セルロースエーテルを得る工程について説明する。
粗粉砕に用いる粗粉砕機は、一般的に岩石等の硬度が高い物質であって500〜2000mmの粒度を有する粉砕原料を強い外力によって3〜70mm程度まで粉砕するために使用され、乾燥した原料を粉砕する乾式粉砕が通例である。そのため、第2の湿潤セルロースエーテルのような湿潤しており、付着性の強い原料の場合は、粗粉砕機内で付着成長してしまい、粗粉砕処理はできないと予想された。
ところが、驚くべきことに本発明者は粗粉砕機が、第2の湿潤セルロースエーテルのような湿潤しており、繊維状で付着性の強い原料に対して、過度に粉砕することなく、且つ粗粉砕機内での滞留時間が短いという特徴を有するために、粗粉砕機機内で付着成長を伴うことなく適用でき、更には、第2の湿潤セルロースエーテルにおける水の分布を内部まで均一にすることに適していることを見出した。
粗粉砕機は、例えば回転するローターに取り付けられた粉砕刃に原料を直接接触させ、原料に圧縮、衝撃、せん断といった外力を与えることができるものが好ましい。第2の湿潤セルロースエーテルに強い圧縮及び衝撃を加えることで、添加によって表面付近に多く存在していた水が、第2の湿潤セルロースエーテルの内部まで均一に浸透するのみならず、せん断を同時に与えることで、第2の湿潤セルロースエーテルの粒子が細かくなり、表面から内部への水の移動が容易になる。これらの効果によって第2の湿潤セルロースエーテルよりも、より均一な水分分布を有する粗粉砕セルロースエーテルを得ることができる。一般的に粉砕と乾燥は併用されることが多いが、この粗粉砕は、より均一な水分分布を達成するものであり、乾燥と併用されない。
粗粉砕の温度は、使用する粗粉砕機によって変動するため、各粗粉砕機の粉砕に適応する温度を選択すればよいが、例えば10〜90℃である。
第2の湿潤セルロースエーテル及び粗粉砕セルロースエーテルの水分分布は、第2の湿潤セルロースエーテル及び粗粉砕セルロースエーテルの表面部と中心部の含水率の差の絶対値及び表面部と中心部の含水率の比を用いて評価することができる。
第2の湿潤セルロースエーテル及び粗粉砕セルロースエーテルの表面部及び中心部の含水率は、表面部及び中心部について、各々異なる5カ所から数gずつ採取し、5カ所の含水率の平均値から算出する。
表面部は、第2の湿潤セルロースエーテル又は粗粉砕セルロースエーテルの空気に接している部分及びその周辺であり、それらの中心を通る断面に関して、中心から第2の湿潤セルロースエーテルの外周までの直線距離が最長となる距離を基準にして、「中心からの距離/中心から第2の湿潤セルロースエーテル又は粗粉砕セルロースエーテルの外周までの直線距離が最長となる距離の比」が0.75〜1.00となる点の集合にあたる部分である。
中心部は、第2の湿潤セルロースエーテル又は粗粉砕セルロースエーテルの中心を通る断面に関して、中心から第2の湿潤セルロースエーテル又は粗粉砕セルロースエーテルの外周までの直線距離が最長となる距離を基準にして、「中心からの距離/中心から第2の湿潤セルロースエーテル又は粗粉砕セルロースエーテルの外周までの直線距離が最長となる距離の比」が0〜0.25となる点の集合にあたる部分である。
第2の湿潤セルロースエーテル及び粗粉砕セルロースエーテルの表面部と中心部の含水率の平均値の差の絶対値が小さいほど、また、表面部と中心部の含水率の比が1.00:1.00に近いほど、中心部まで水が浸透しており、水分分布が均一である。
粗粉砕セルロースエーテルの表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、良好な緩め嵩密度を得る観点から、好ましくは0.0〜2.5質量%、より好ましくは0.0〜1.5質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、好ましくは1.03:1.00〜1.00:1.00、より好ましくは1.02:1.00〜1.00:1.00である。
粗粉砕機としては、コーンクラッシャー、インパクトクラッシャ、ハンマーミル、フェザーミル等が挙げられるが、粉砕熱による湿潤セルロースエーテルの含水率の低下と過粉砕を防止する観点から、フェザーミルが好ましい。
粗粉砕機の運転条件は、粗粉砕機の種類によって異なるが、粗粉砕セルロースエーテルの平均粒子径が好ましくは3〜12mmとなるように、粗粉砕機の回転数や粗粉砕機の粉砕刃の設置取り付け状態を設定し、粗粉砕機の種類によっては、必要に応じて粗粉砕機内部に分級機能を有する設備を配置して調整する。粉砕刃としては、ナイフ型、ハンマー型、フラット型等が挙げられるが、第2の湿潤セルロースエーテルの水分分布を均一にする観点から、ナイフ型が好ましい。
粗粉砕セルロースエーテルの平均粒子径は、好ましくは3〜12mm、より好ましくは5〜10mmである。粗粉砕セルロースエーテルの平均粒子径が3mm未満であると、湿潤セルロースエーテルの含水率が低下したり、過粉砕されてしまう場合があり、12mmを超えると、粗粉砕処理によって中心部まで水が浸透せずに、第2の湿潤セルロースエーテルよりも、より均一な水分分布を有する粗粉砕セルロースエーテルが得られない場合がある。粗粉砕セルロースエーテルの平均粒子径は、篩法による積算重量粒度分布における積算値50%粒子径を用いる。具体的には、目開きが45.0mm(篩−1)、37.5mm(篩−2)、22.4mm(篩−3)、16.0mm(篩−4)、11.2mm(篩−5)、8.0mm(篩−6)、4.0mm(篩−7)、2.0mm(篩−8)、1.0mm(篩−9)、0.425mm(篩−10)の篩を用意し、JIS Z 8815篩分け試験法則通則の手動篩分け法に従うことで篩分けを行い、積算篩上百分率をロジンラムラ―線図に打点し、積算篩上分布が50%となるときの粒子径を平均粒子径とした。ここで、算出値の再現性又は正確性の観点から、用意した異なる目開きの篩の中から5つ以上を選定して、粗粉砕セルロースエーテルの篩分けを行うことが好ましい。前記異なる目開きの篩の中から5つ以上を選定する場合は、算出値の再現性又は正確性の観点から、ハイフンで結ばれた番号が連続するように、例えば篩−2から篩−6又は篩−3から篩−7のように、篩を選定することが好ましい。
粗粉砕機内における第2の湿潤セルロースエーテルの滞留時間は、好ましくは0.1秒〜3分間、より好ましくは0.1秒〜2分間、更に好ましくは0.1秒〜1分間である。粗粉砕機内における第2の湿潤セルロースエーテルの滞留時間を0.1秒未満とすることは困難であり、3分を超えると粉砕熱によって湿潤セルロースエーテルの含水率が低下したり、過粉砕されてしまう場合がある。
混練機等によってせん断力を与える際には通常5〜10分程度の時間を要するが、粗粉砕機による処理は上述のようにそのような時間を要しない。そのため、せん断力が過度にかかることによる解重合や過粉砕等が生じにくく、特に高粘性の水溶性セルロースエーテルについて粘度やゆるめ嵩密度の低下、未溶解繊維数の増加を防ぐことができる。
粗粉砕機における第2の湿潤セルロースエーテルに外力を与える粉砕部の円周速度としては、好ましくは0.05〜200m/s、より好ましくは0.1〜150m/sである。0.05m/sを下回ると、所望の平均粒子径まで粗粉砕できない場合があり、200m/sを超えると、撹拌のための消費電力が過大になったり、粗粉砕時に水分が蒸発し、高いゆるめ嵩密度の水溶性セルロースエーテルが得られない場合がある。
粗粉砕時に過度の粉砕エネルギーが発生してしまうと、粉砕エネルギーが熱に転化し第2の湿潤セルロースエーテルが熱せられ、その結果水分が蒸発し、第2の湿潤セルロースエーテルの含水率が低下する可能性がある。
第2の湿潤セルロースエーテルを粗粉砕機にかけることによる含水率低下割合は、高いゆるめ嵩密度の水溶性セルロースエーテルを得る観点から、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%である。含水率低下割合とは、{100質量%−(粗粉砕セルロースエーテルの含水率/第2の湿潤セルロースエーテルの含水率)×100}で定義される。
粗粉砕に供する第2の湿潤セルロースエーテルの含水率は、高いゆるめ嵩密度の水溶性セルロースエーテルを得る観点から、好ましくは60〜90質量%、より好ましくは60〜85質量%、更に好ましくは65〜80質量%である。
なお、粗粉砕に供する第2の湿潤セルロースエーテルの含水率は、第1の湿潤セルロースエーテルの含水率と同様に、第17改正日本薬局方の「乾燥減量試験法」に従って測定できる。
粗粉砕に供する第2の湿潤セルロースエーテルの温度は、粗粉砕セルロースエーテルの水分分布を均一にし、未溶解繊維数が低く、ゆるめ嵩密度が高い水溶性セルロースエーテルを得る観点から、好ましくは50〜100℃、より好ましくは70〜95℃である。
次に、粗粉砕セルロースエーテルを冷却する工程と、冷却後、粗粉砕セルロースエーテルを乾燥、粉砕して水溶性セルロースエーテルを得る工程について説明する。
粗粉砕セルロースエーテルは、高いゆるめ嵩密度の水溶性セルロースエーテルを得る観点から、好ましくは0〜40℃、より好ましくは5〜30℃、更に好ましくは5〜20℃に冷却される。粗粉砕セルロースエーテルを冷却する方法は、公知の技術を用いることができる。例えば、冷却された伝熱面に接触させる方法、冷風に接触させる方法、気化熱を利用する方法等が挙げられる。いずれの冷却法においても、冷却に使用する装置は、バッチ式、連続式どちらも使用できる。
冷却によって、粗粉砕セルロースエーテルの繊維形状が消失するため、高いゆるめ嵩密度の水溶性セルロースエーテルを得ることができる。
冷却された伝熱面に接触させる方法により粗粉砕セルロースエーテルを冷却する場合、冷却に使用する装置は、ジャケット付きのものを使用するのが好ましい。ジャケット温度は、好ましくは40℃以下、より好ましくは−40〜30℃である。40℃を超えると、ゆるめ嵩密度が高い水溶性セルロースエーテルを得られない場合がある。
冷却された伝熱面に接触させる方法による冷却に使用する装置内における滞留時間は、好ましくは10秒〜60分、より好ましくは1分〜30分である。10秒を下回ると、冷却が不十分で、高いゆるめ嵩密度の水溶性セルロースエーテルを得られない場合があり、60分を超えると、装置の大きさが過大になる場合がある。
冷却された伝熱面に接触させる方法による冷却は、静置冷却、撹拌冷却のいずれも可能だが、より効率的に冷却する観点から、撹拌冷却が好ましい。
撹拌冷却に使用する装置は、公知のものを用いることができる。例えば、リボン型混合機、スクリュー型混合機、ピン付きローター型混合機、パドル型混合機、複数パドル型混合機、プローシェア型混合機、双腕型ねっか機、コニーダー、ボテーター型ねっか機、セルフクリーニング型ねっか機、二軸混練機等が挙げられる。
撹拌冷却に使用する装置の撹拌速度は、撹拌羽根の円周速度として、好ましくは0.05〜150m/s、より好ましくは0.1〜20m/s、更に好ましくは0.2〜10m/sである。0.05m/sを下回ると、効率的に冷却できない場合があり、150m/sを超えると、撹拌のための消費電力が過大になったり、撹拌混合物中の水分が蒸発し、高いゆるめ嵩密度の水溶性セルロースエーテルが得られない場合がある。
乾燥、粉砕は、乾燥と粉砕を別々に行っても同時に行ってよく、例えば、乾燥後に粉砕してもよいし、又は乾燥と同時に粉砕を行ってもよい。乾燥、粉砕の温度は、粘度低下又はエネルギー消費の抑制の観点から、70〜140℃が好ましい。
乾燥、粉砕の温度は、粗粉砕セルロースエーテルの繊維形状が消失する温度より高く、繊維形状に影響を与えないため、高いゆるめ嵩密度を得るために乾燥、粉砕の温度の制御を厳密に行う必要はない。
乾燥機としては、パドルドライヤー等の撹拌乾燥機、流動層乾燥機、バンド乾燥機等を用いることができる。粉砕機としては、ボールミル、振動ミル、衝撃粉砕機、ローラーミル、ジェットミル等を用いることができる。乾燥と同時に粉砕を行う方法としては、加熱ガスを冷却後の粗粉砕セルロースエーテルとともに衝撃粉砕機に導入する方法等が挙げられる。
乾燥、粉砕によって得られた水溶性セルロースエーテルは、必要に応じ、篩い分け又は篩い分けを行ったもの同士の混合を行ってもよい。
水溶性セルロースエーテルとしては、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース等が挙げられる。
アルキルセルロースとしては、低い未溶解繊維数の水溶性セルロースエーテルを得る観点から、メトキシ基のDSが1.8〜2.2のメチルセルロース、エトキシ基のDSが2.0〜2.6のエチルセルロース等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、低い未溶解繊維数の水溶性セルロースエーテルを得る観点から、ヒドロキシエトキシ基のMSが2.0〜3.0のヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロポキシ基のMSが2.0〜3.3のヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースとしては、低い未溶解繊維数の水溶性セルロースエーテルを得る観点から、メトキシ基のDSが1.3〜2.2、ヒドロキシエトキシ基のMSが0.1〜0.6のヒドロキシエチルメチルセルロース、メトキシ基のDSが1.3〜2.2、ヒドロキシプロポキシ基のMSが0.1〜0.6のヒドロキシプロピルメチルセルロース、エトキシ基のDSが1.3〜2.2、ヒドロキシエトキシ基のMSが0.1〜0.6のヒドロキシエチルエチルセルロース等が挙げられる。
DSは、置換度(degree of substitution)を表し、セルロースのグルコース環単位当たりに存在するアルコキシ基の個数であり、MSは、置換モル数(molar substitution)を表し、セルロースのグルコース環単位当たりに付加したヒドロキシアルコキシ基の平均モル数である。DS及びMSは、第17改正日本薬局方に基づき測定して得られた値を換算することによって求めることができる。
水溶性セルロースエーテルの平均粒子径は、流動性又は溶解速度の観点から、好ましくは30〜300μm、より好ましくは40〜200μm、更に好ましくは50〜100μmである。平均粒子径は、レーザー回折法粒度分布測定装置マスターサイザー3000(Malvarn社製)を用いて、乾式法にて、Fraunhofer回析理論により、分散圧2bar、散乱強度2〜10%の条件により測定を行い、体積基準の累積分布曲線の50%累積値に相当する径を算出することで決定することができる。
水溶性セルロースエーテルのゆるめ嵩密度は、好ましくは0.36〜0.60g/ml、より好ましくは0.37〜0.55g/mlである。ゆるめ嵩密度が0.36g/mlより小さいと、粉末の流動性が劣る場合がある。0.60g/mlより大きいと、水等に溶解させる際に溶解速度が遅くなる場合がある。「ゆるめ嵩密度」とは、疎充填の状態の嵩密度をいい、ホソカワミクロン社製の粉体特性評価装置POWDER TESTER PT−Sを用いて、直径5.05cm、高さ5.05cm(容積100ml)の円筒容器(材質:ステンレス)へ試料を目開き1mmの篩を通して、上方(23cm)から均一に供給し、上面をすり切って秤量することによって測定できる。
水溶性セルロースエーテルの20℃における2質量%水溶液粘度は、用途に適した粘性及び溶解性の観点から、好ましくは30,000〜500,000mPa・s、より好ましくは50,000〜300,000mPa・sである。水溶性セルロースエーテルの20℃における2質量%水溶液粘度は、第17改正日本薬局方ヒプロメロースの粘度測定法第2法に基づき、単一円筒形回転粘度計ブルックフィールド型粘度計LV型を用いて測定できる。
水溶性セルロースエーテルの25℃における0.1質量%水溶液2ml中で測定した時の8〜200μmのサイズを有する未溶解繊維数は、製品の品質の観点から、好ましくは800個以下、より好ましくは750個以下である。未溶解繊維数は、コールターカウンター法によりコールターカウンター又はマルチサイザー機を用いて測定することができる。具体的には、水溶性セルロースエーテルを0.1質量%水溶液となるようにコールターカウンター用電解質水溶液ISOTON II(ベックマンコールター社製)の恒温槽内に、25℃で溶解し、この溶液2ml中に存在する8μm以上200μm以下の未溶解繊維数を径400μmのアパーチャーチューブを用いてコールター社製のコールターカウンターTA II型又はマルチサイザー機により測定する。
以下に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
固有粘度が1,800ml/gであり、厚みが1.5mmのシート状パルプを39℃の49質量%NaOH水溶液に31秒間浸漬した。アルカリセルロース混合物における49質量%NaOH水溶液/パルプ中の固体成分の質量比は200だった。その後、圧搾することにより余剰の49質量%NaOH水溶液を除去し、アルカリセルロースを得た。また、得られたアルカリセルロースのNaOH成分/パルプ中の固体成分の質量比は1.06だった。
得られたアルカリセルロース17.9kgをジャケット付内部撹拌型耐圧反応器に仕込み、真空窒素置換を行い、十分に反応機内の酸素を除去した。次に、反応機内温を60℃となるように、温調しながら内部を撹拌し、続いて、ジメチルエーテルを2.2kg添加し、反応機内温が60℃を保持するように温調した。ジメチルエーテル添加後、反応機内温を60℃から80℃に温調しながら、(塩化メチル)/(アルカリセルロース中のNaOH成分)のモル比が1.3となるように塩化メチルを、(酸化プロピレン)/(パルプ中の固体成分)の質量比が0.26となるように酸化プロピレンをそれぞれ添加した。塩化メチルと酸化プロピレンの添加後、反応機内温を80℃から90℃に温調し、更に90℃で反応を20分間継続した。その後、反応機内のガスを排出し、反応機から粗ヒドロキシプロピルメチルセルロースを取り出した。
得られた粗ヒドロキシプロピルメチルセルロースを95℃の熱水に分散させた後、脱液させることでブロック状形態の第1の湿潤セルロースエーテルを得た。第1の湿潤セルロースエーテルの温度は85℃で、含水率は50質量%であった。
得られた第1の湿潤セルロースエーテルを、ジャケット温度90℃に保温したバッチ式スプレーノズル付きプローシェア型混合機を用いて撹拌混合しながら、同時にスプレーノズルより第2の湿潤セルロースエーテルの含水率が80質量%になるように85℃の水を5分間かけて連続的に供給し、その後、撹拌混合を5分間継続し第2の湿潤セルロースエーテルを得た。第2の湿潤セルロースエーテルの温度は85℃で、含水率は80質量%であった。目開きの異なる5つの篩、すなわち、目開きが、22.4mm、16.0mm、11.2mm、8.0mm、4.0mmの篩を用いて、第2の湿潤セルロースエーテルがその目開きを通過する割合によって求めた積算重量粒度分布における積算値50%粒子径を別途測定したところ、平均粒子径が15mmであった。
得られた第2の湿潤セルロースエーテルの表面部及び中心部について、各々異なる5カ所から数gずつ採取し、5カ所の含水率の平均値を算出した。表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、3.5質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.05:1.00であった。
引き続き、フェザーミル(ホソカワミクロン社製)を用いて第2の湿潤セルロースエーテルの粗粉砕を行い、粗粉砕セルロースエーテルを得た。粗粉砕セルロースエーテルの温度は60℃で、含水率は78質量%であった。得られた粗粉砕セルロースエーテルの表面部及び中心部について、各々異なる5カ所から数gずつ採取し、5カ所の含水率の平均値を算出した。続いて、各々の平均値の差の絶対値を算出したところ0.5質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.01:1.00であった。また、目開きの異なる5つの篩、すなわち、目開きが、16.0mm、11.2mm、8.0mm、4.0mm、2.0mmの篩を用いて、粗粉砕セルロースエーテルがその目開きを通過する割合によって求めた積算重量粒度分布における積算値50%粒子径を別途測定したところ、平均粒子径が8mmであった。
粗粉砕時の粉砕機滞留時間は約1秒、粗粉砕機の粉砕刃はナイフ型を使用し、その周速度は79m/sであった。
得られた粗粉砕セルロースエーテルは、ジャケット温度5℃に冷却したバッチ式プローシェア型混合機を用いて撹拌造粒しながら15℃まで冷却した後、120℃に昇温した窒素を含む高温ガスが800m/hrの速度で供給され、粉砕刃の先端の周速度が108m/sで運転されている、Ultra Rotor IIS衝撃粉砕機(Altenburger Maschinen Jaeckering社製)に導入し、乾燥と粉砕を同時に行いヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末を得た。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末の置換度はメトキシ基(DS)が1.80、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.16であり、20℃における2質量%水溶液の粘度は110,000mPa・sであった。ホソカワミクロン社製の粉体特性評価装置POWDER TESTER PT−Sを用いてヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末のゆるめ嵩密度を測定したところ、0.48g/mLであった。ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末の平均粒子径、すなわちレーザー回析式粒度分布測定装置マスターサイザー3000(Malvern社製)を用いて、乾式法にて、体積基準の累積分布曲線から算出した積算値50%粒子径は59μmであった。また、マルチサイザー3(ベックマンコールター社製)を用いて測定した、25℃における0.1質量%水溶液2mL中で測定したときの8〜200μmのサイズを有する未溶解繊維数は720個だった。結果を下記表1にまとめる。
実施例2
実施例1と同様の方法でブロック状形態の第1の湿潤セルロースエーテルを得た。第1の湿潤セルロースエーテルの温度は85℃で、含水率は45質量%であった。
得られた第1の湿潤セルロースエーテルを、含水率が75質量%となるように水を供給する以外は実施例1と同様の方法で第2の湿潤セルロースエーテルを得た。第2の湿潤セルロースエーテルの温度は85℃で、含水率は75質量%であった。また、実施例1と同様の方法で算出した平均粒子径は16mmであった。
得られた第2の湿潤セルロースエーテルの実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、3.8質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.05:1.00であった。
続いて、実施例1と同様の方法で第2の湿潤セルロースエーテルの粗粉砕を行い、粗粉砕セルロースエーテルを得た。粗粉砕セルロースエーテルの温度は60℃で、含水率は73質量%であった。また、実施例1と同様の方法で算出した平均粒子径は8mmであった。得られた粗粉砕セルロースエーテルの実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、0.8質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.01:1.00であった。
得られた粗粉砕セルロースエーテルは実施例1と同様の方法で15℃まで冷却した後、乾燥と粉砕を同時に行いヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末を得た。得られたヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末の置換度はメトキシ基(DS)が1.80、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.16であり、20℃における2質量%水溶液粘度は103,000mPa・sであった。また、実施例1と同様に測定したところ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末のゆるめ嵩密度は0.46g/mLであり、乾式レーザー回析法による体積基準の平均粒子径は62μm、25℃における0.1質量%水溶液2mL中で測定したときの8〜200μmのサイズを有する未溶解繊維数は680個だった。結果を下記表1にまとめる。
実施例3
固有粘度が2,000ml/gであり、厚みが1.2mmのシート状パルプを39℃の49質量%NaOH水溶液に40秒間浸漬した。アルカリセルロース混合物における49質量%NaOH水溶液/パルプ中の固体成分の質量比は、200だった。その後、圧搾することにより余剰の49質量%NaOH水溶液を除去し、アルカリセルロースを得た。また、得られたアルカリセルロースのNaOH成分/パルプ中の固体成分の質量比は1.25だった。
得られたアルカリセルロース20.0kgをジャケット付内部撹拌型耐圧反応器に仕込み、真空窒素置換を行い、十分に反応機内の酸素を除去した。次に、反応機内温を60℃となるように、温調しながら内部を撹拌し、続いて、ジメチルエーテルを2.2kg添加し、反応機内温が60℃を保持するように温調した。ジメチルエーテル添加後、反応機内温を60℃から80℃に温調しながら、(塩化メチル)/(アルカリセルロース中のNaOH成分)のモル比が1.3となるように塩化メチルを、(酸化プロピレン)/(パルプ中の固体成分)の質量比が0.52となるように酸化プロピレンをそれぞれ添加した。塩化メチルと酸化プロピレンの添加後、反応機内温を80℃から90℃に温調し、更に90℃で反応を20分間継続した。その後、反応機内のガスを排出し、反応機から粗ヒドロキシプロピルメチルセルロースを取り出した。
得られた粗ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、実施例1と同様の方法でブロック状形態の第1の湿潤セルロースエーテルを得た。第1の湿潤セルロースエーテルの温度は85℃で、含水率は49質量%であった。
得られた第1の湿潤セルロースエーテルを、ジャケット温度を80℃とし、含水率が65質量%となるように水を供給する以外は実施例1と同様の方法で第2の湿潤セルロースエーテルを得た。第2の湿潤セルロースエーテルの温度は75℃で、含水率は65質量%であった。また、実施例1と同様の方法で算出した平均粒子径は16mmであった。
得られた第2の湿潤セルロースエーテルの実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、2.8質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.05:1.00であった。
続いて、実施例1と同様の方法で第2の湿潤セルロースエーテルの粗粉砕を行い、粗粉砕セルロースエーテルを得た。粗粉砕セルロースエーテルの温度は55℃で、含水率は64質量%であった。また、実施例1と同様の方法で算出した平均粒子径は7mmであった。得られた粗粉砕セルロースエーテルの実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、0.5質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.01:1.00であった。
得られた粗粉砕セルロースエーテルは実施例1と同様の方法で15℃まで冷却した後、乾燥と粉砕を同時に行いヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末を得た。得られたヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末の置換度はメトキシ基(DS)が1.90、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.24であり、20℃における2質量%水溶液粘度は110,000mPa・sであった。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末のゆるめ嵩密度は0.43g/mLであり、乾式レーザー回析法による体積基準の平均粒子径は65μm、25℃における0.1質量%水溶液2mL中で測定したときの8〜200μmのサイズを有する未溶解繊維数は260個だった。結果を下記表1にまとめる。
実施例4
実施例1と同様の方法でブロック状形態の第1の湿潤セルロースエーテルを得た。第1の湿潤セルロースエーテルの温度は85℃で、含水率は45質量%であった。
得られた第1の湿潤セルロースエーテルを、80℃に保温したスクリューコンベア型移送機に10kg/hrで供給し、同時に95℃の熱水をスクリューコンベア型移送機入口から8.33kg/hrで第1の湿潤セルロースに対して添加することで、スクリューコンベア型移送機出口からブロック状の形態の第2の湿潤セルロースエーテルを得た。第2の湿潤セルロースエーテルの温度は80℃で、含水率は70質量%であった。得られたブロック状の形態の第2の湿潤セルロースエーテルを手によって解した後に、実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、3.6質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.05:1.00であった。
続いて、実施例1と同様の方法で第2の湿潤セルロースエーテルの粗粉砕を行い、粗粉砕セルロースエーテルを得た。粗粉砕セルロースエーテルの温度は60℃で、含水率は69質量%であった。また、実施例1と同様の方法で算出した平均粒子径は7mmであった。得られた粗粉砕セルロースエーテルの実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、0.6質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.01:1.00であった。
得られた粗粉砕セルロースエーテルは実施例1と同様の方法で15℃まで冷却した後、乾燥と粉砕を同時に行いヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末を得た。得られたヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末の置換度はメトキシ基(DS)が1.80、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.16であり、20℃における2質量%水溶液粘度は106,000mPa・sであった。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末のゆるめ嵩密度は0.41g/mLであり、乾式レーザー回析法による体積基準の平均粒子径は63μm、25℃における0.1質量%水溶液2mL中で測定したときの8〜200μmのサイズを有する未溶解繊維数は550個だった。結果を下記表1にまとめる。
実施例5
実施例1と同様の方法でブロック状形態の第1の湿潤セルロースエーテルを得た。第1の湿潤セルロースエーテルの温度は85℃で、含水率は45質量%であった。
得られた第1の湿潤セルロースエーテルを、95℃の熱水を5.71kg/hrで供給する以外は実施例4と同様の方法でブロック状の形態の第2の湿潤セルロースエーテルを得た。第2の湿潤セルロースエーテルの温度は75℃で、含水率は65質量%であった。得られたブロック状の形態の第2の湿潤セルロースエーテルを手によって解した後に、実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、3.5質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.06:1.00であった。
続いて、実施例1と同様の方法で第2の湿潤セルロースエーテルの粗粉砕を行い、粗粉砕セルロースエーテルを得た。粗粉砕セルロースエーテルの温度は50℃で、含水率は64質量%であった。また、実施例1と同様の方法で算出した平均粒子径は8mmであった。得られた粗粉砕セルロースエーテルの実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、0.7質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.01:1.00であった。
得られた粗粉砕セルロースエーテルは実施例1と同様の方法で15℃まで冷却した後、乾燥と粉砕を同時に行いヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末を得た。得られたヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末の置換度はメトキシ基(DS)が1.80、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.16であり、20℃における2質量%水溶液の粘度は110,000mPa・sであった。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末のゆるめ嵩密度は0.37g/mLであり、乾式レーザー回析法による体積基準の平均粒子径は63μm、25℃における0.1質量%水溶液2mL中で測定したときの8〜200μmのサイズを有する未溶解繊維数は500個だった。結果を下記表1にまとめる。
実施例6
実施例3と同様の方法でブロック状形態の第1の湿潤セルロースエーテルを得た。第1の湿潤セルロースエーテルの温度は85℃で、含水率は48質量%であった。
得られた第1の湿潤セルロースエーテルを、95℃の熱水を5.41kg/hrで供給する以外は実施例4と同様の方法でブロック状形態の第2の湿潤セルロースエーテルを得た。第2の湿潤セルロースエーテルの温度は75℃で、含水率は65質量%であった。
得られたブロック状の形態の第2の湿潤セルロースエーテルを手によって解した後に、実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、4.0質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.07:1.00であった。
続いて、実施例1と同様の方法で第2の湿潤セルロースエーテルの粗粉砕を行い、粗粉砕セルロースエーテルを得た。粗粉砕セルロースエーテルの温度は55℃で、含水率は64質量%であった。また、実施例1と同様の方法で算出した平均粒子径は7mmであった。得られた粗粉砕セルロースエーテルの実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、0.6質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.01:1.00であった。
得られた粗粉砕セルロースエーテルは実施例1と同様の方法で15℃まで冷却した後、80℃に設定した送風乾燥機で8時間乾燥させた後、振動ミルCH−20(中央化工機社製)で粉砕を行い、ジャイロシフターGS−A1H(徳寿製作所社製)、を用いて篩過を行い、粗大なセルロースエーテルを取り除くことで、ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末を得た。得られたヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末の置換度はメトキシ基(DS)が1.90、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.24であり、20℃における2質量%水溶液粘度は83,000mPa・sであった。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末のゆるめ嵩密度は0.38g/mLであり、乾式レーザー回析法による体積基準の平均粒子径は70μm、25℃における0.1質量%水溶液2mL中で測定したときの8〜200μmのサイズを有する未溶解繊維数は320個だった。結果を下記表1にまとめる。
実施例7
固有粘度が1,900ml/gであり、厚みが1.2mmのシート状パルプを、15mm角のチップ状形態とした。チップ形態のパルプを32℃の49質量%NaOH水溶液に34秒間浸漬した。アルカリセルロース混合物における49質量%NaOH水溶液/パルプ中の固体成分の質量比が15だった。その後、遠心効果600の回転バスケットを用いて圧搾することにより余剰の49質量%NaOH水溶液を除去し、アルカリセルロースを得た。また、得られたアルカリセルロースのNaOH成分/パルプ中の固体成分の質量比は1.059だった。得られたアルカリセルロースを原料に、実施例1と同様の粗ヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。
得られた粗ヒドロキシプロピルメチルセルロースを実施例1と同様の方法で熱水に分散させた後、脱液させ、ブロック状形態の第1の湿潤セルロースエーテルを得た。第1の湿潤セルロースエーテルの温度は85℃で、含水率は48質量%であった。
得られた第1の湿潤セルロースエーテルを、95℃の熱水を8.03kg/hrで供給する以外は実施例4と同様の方法でブロック状形態の第2の湿潤セルロースエーテルを得た。第2の湿潤セルロースエーテルの温度は80℃で、含水率は70質量%であった。
得られたブロック状の形態の第2の湿潤セルロースエーテルを手によって解した後に、実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、4.8質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.07:1.00であった。
続いて、実施例1と同様の方法で第2の湿潤セルロースエーテルの粗粉砕を行い、粗粉砕セルロースエーテルを得た。粗粉砕セルロースエーテルの温度は60℃で、含水率は69質量%であった。また、実施例1と同様の方法で算出した平均粒子径は7mmであった。得られた粗粉砕セルロースエーテルの実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、0.6質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.01:1.00であった。
得られた粗粉砕セルロースエーテルは実施例1と同様の方法で15℃まで冷却した後、実施例6と同様の方法でヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末を得た。得られたヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末の置換度はメトキシ基(DS)が1.80、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.16であり、20℃における2質量%水溶液粘度は83,000mPa・sであった。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末のゆるめ嵩密度は0.37g/mLであり、乾式レーザー回析法による体積基準の平均粒子径は65μm、25℃における0.1質量%水溶液2mL中で測定したときの8〜200μmのサイズを有する未溶解繊維数は680個だった。結果を下記表1にまとめる。
比較例1
実施例1と同様の方法でブロック状の形態の第1の湿潤セルロースエーテルを得た。第1の湿潤セルロースエーテルの温度は85℃で、含水率は46質量%であった。
得られた第1の湿潤セルロースエーテルは、実施例1と同様な手法により、ジャケット温度60℃に温調したスプレーノズル付きプローシェア型混合機を用いて撹拌造粒しながら、同時にスプレーノズルより含水率が70質量%になるように60℃の水を5分間かけて連続的に供給し、その後、撹拌混合を20分間継続し第2の湿潤セルロースを得た。第2の湿潤セルロースエーテルの温度は60℃で、含水率は70質量%であった。また、目開きの異なる5つの篩、すなわち、目開きが、16.0mm、11.2mm、8.0mm、4.0mm、2.0mmの篩を用いて、湿潤セルロースエーテルがその目開きを通過する割合によって求めた積算重量粒度分布における積算値50%粒子径を別途測定したところ、平均粒子径が10mmであった。
得られた第2の湿潤セルロースエーテルの実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、4.5質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.07:1.00であったことから水の中心部への浸透が十分でないことが確認された。
得られた第2の湿潤セルロースエーテルは、粗粉砕処理を行うことなく実施例1と同様の方法で乾燥と粉砕を同時に行いヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末を得た。得られたヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末の置換度はメトキシ基(DS)が1.80、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.16であり、20℃における2質量%水溶液粘度は100,000mPa・sであった。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末のゆるめ嵩密度は0.10g/mLと低く、乾式レーザー回析法による体積基準の平均粒子径は150μm、25℃における0.1質量%水溶液2mL中で測定したときの8〜200μmのサイズを有する未溶解繊維数は1100個と多かった。結果を下記表1にまとめる。
比較例2
実施例1と同様の方法でブロック状の形態の第1の湿潤セルロースエーテルを得た。第1の湿潤セルロースエーテルの温度は85℃で、含水率は45質量%であった。
得られた第1の湿潤セルロースエーテルを、80℃に保温したスクリューコンベア型移送機に10kg/hrで供給し、同時に95℃の熱水をスクリューコンベア入口から8.33kg/hrで添加することで、スクリューコンベア出口からブロック状形態の第2の湿潤セルロースエーテルを得た。第2の湿潤セルロースエーテルの温度は80℃で、含水率は70質量%であった。得られた第2の湿潤セルロースエーテルの実施例1と同様に算出した表面部と中心部の含水率の差の絶対値は、3.2質量%であり、表面部と中心部の含水率の比は、1.05:1.00であったことから水の中心部への浸透が十分でないことが確認された。
得られた第2の湿潤セルロースエーテルは、粗粉砕処理を行うことなく実施例1と同様の方法で冷却した後、乾燥と粉砕を同時に行いヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末を得た。得られたヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末の置換度はメトキシ基(DS)が1.80、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.16であり、20℃における2質量%水溶液粘度は100,000mPa・sであった。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末のゆるめ嵩密度は0.21g/mLと低く、乾式レーザー回析法による体積基準の平均粒子径は80μm、25℃における0.1質量%水溶液2mL中で測定したときの8〜200μmのサイズを有する未溶解繊維数は900個と多かった。結果を下記表1にまとめる。
Figure 0006971201

Claims (4)

  1. シート状又はチップ状のセルロースパルプとアルカリ金属水酸化物溶液を接触させてアルカリセルロース混合物を得る工程と、
    前記アルカリセルロース混合物を脱液してアルカリセルロースを得る工程と、
    前記アルカリセルロースとエーテル化剤を反応させて、水溶性セルロースエーテル生成物を得る工程と、
    前記水溶性セルロースエーテル生成物を60〜100℃の水を用いて洗浄、脱液して第1の湿潤セルロースエーテルを得る工程と、
    前記第1の湿潤セルロースエーテルと80〜100℃の水を混合して含水率が60〜90質量%である第2の湿潤セルロースエーテルを得る工程と、
    前記第2の湿潤セルロースエーテルを粗粉砕して、粗粉砕セルロースエーテルを得る工程と、
    前記粗粉砕セルロースエーテルを冷却する工程と、
    前記冷却後、前記粗粉砕セルロースエーテルを乾燥、粉砕して水溶性セルロースエーテルを得る工程と
    を少なくとも含む水溶性セルロースエーテルの製造方法。
  2. 前記粗粉砕セルロースエーテルを得る工程で得られる粗粉砕セルロースエーテルの篩法による平均粒子径が3〜12mmである請求項1に記載の水溶性セルロ−スエーテルの製造方法。
  3. 前記粗粉砕セルロースエーテルを冷却する工程が、前記粗粉砕セルロースエーテルを0〜40℃に冷却することを含む請求項1又は請求項2に記載の水溶性セルロースエーテルの製造方法。
  4. 前記水溶性セルロースエーテルが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースである請求項1〜のいずれか一項に記載の水溶性セルロースエーテルの製造方法。
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