[第1実施形態]
図1を用いて、第1実施形態の表示装置1を説明する。表示装置1は、映像信号処理装置10と、液晶表示デバイス20とを備える。液晶表示デバイス20は、表示画素部30と、水平走査回路40と、垂直走査回路50とを備える。
表示画素部30は、水平方向に配置された複数(x)本の列データ線D(D1〜Dx)と、垂直方向に配置された複数(y)本の行走査線G(G1〜Gy)との各交差部にマトリクス状に配置された複数(x×y)個の画素60を有する。即ち、表示画素部30には、複数の画素60が水平方向及び垂直方向に配置されている。画素60は、列データ線D1〜Dxに列毎に接続され、行走査線G1〜Gyに行毎に接続されている。
映像信号処理装置10には、デジタル信号である映像データVDが入力される。映像信号処理装置10は、映像データVDに基づいて画素単位で輝度値が補正された補正映像データSVDを生成し、水平走査回路40へ出力する。映像信号処理装置10における映像データVDの具体的な映像信号処理方法については後述する。
水平走査回路40は、列データ線Dを介して表示画素部30の画素60に接続されている。例えば列データ線D1は、表示画素部30の1列目のy個の画素60に接続されている。列データ線D2は、表示画素部30の2列目のy個の画素60に接続され、列データ線Dxは、表示画素部30のx列目のy個の画素60に接続されている。
水平走査回路40には、補正映像データSVDが、1水平走査期間単位で、1本の行走査線Gのx個の画素60に対応する輝度信号DLとして順次入力される。輝度信号DLは、nビットの輝度データを有している。例えばnを8とすると、表示画素部30は、画素60毎に256階調で画像を階調表示させることができる。
水平走査回路40は、nビットの輝度データを並列に順次シフトし、列データ線D1〜Dxへ出力する。表示画素部30が、例えば4K解像度(x=4096)の液晶パネルの場合には、水平走査回路40は、1水平走査期間に4096個分の画素60のそれぞれに対応したnビットの輝度データを順次シフトし、列データ線D1〜Dxへ出力する。
垂直走査回路50は、行走査線Gを介して、表示画素部30の画素60に接続されている。例えば、行走査線G1は表示画素部30の1行目のx個の画素60に接続され、行走査線G2は表示画素部30の2行目のx個の画素60に接続されている。行走査線Gyは、表示画素部30のy行目のx個の画素60に接続されている。
垂直走査回路50は、行走査線Gを、1水平走査期間単位で行走査線G1から行走査線Gyへ1本ずつ順次選択する。表示画素部30の各画素60は、水平走査回路40により列データ線Dが選択され、垂直走査回路50により行走査線Gが選択されることにより、選択された画素60に対応する輝度値が液晶駆動電圧として印加される。これにより、各画素60は、印加される液晶駆動電圧の電圧値に応じて階調表示される。液晶表示デバイス20は、全ての画素60が階調表示されることにより、画像を階調表示させることができる。
図2は、映像信号処理装置10の構成例を示している。映像信号処理装置10は、画素データ保持部11と、ディスクリネーション低減処理部12と、空間フィルタリング処理部13と、係数設定部14と、乗算器15と、加算器16とを備える。
画素データ保持部11には、映像データVDが画素60ごとの輝度データとして入力される。画素データ保持部11は、複数のラインメモリ111〜11yを有する。ラインメモリ111〜11yは、画素行に対応して構成されている。ラインメモリ111〜11yは、画素行ごとに画素60の輝度データを保持する。例えば3×3画素、即ち1個の対象画素と8個の近接画素とにより映像信号処理を実行する場合にはy=3となる。図2では、y=3の場合のラインメモリ111〜113を示している。ラインメモリ111〜113は、画素行ごとに3個の画素60の輝度データを保持する。
図3は、図1に示す表示画素部30の第n−1〜第n+1行(n≧2)及び第m−1〜第m+1列(m≧2)の画素60を示している。各画素60を区別するために、第n行で第m列の画素60を対象画素60m_nとする。対象画素60m_nの周囲に位置する8個の画素60を近接画素60m−1_n−1,60m_n−1,60m+1_n−1,60m−1_n,60m+1_n,60m−1_n+1,60m_n+1,及び60m+1_n+1とする。
映像データVDにおける対象画素60m_nに対応する輝度値Axyを輝度値Am_nとする。近接画素60m−1_n−1,60m_n−1,60m+1_n−1,60m−1_n,60m+1_n,60m−1_n+1,60m_n+1,及び60m+1_n+1に対応する輝度値Axyを、輝度値Am−1_n−1,Am_n−1,Am+1_n−1,Am−1_n,Am+1_n,Am−1_n+1,Am_n+1,及びAm+1_n+1とする。
図2に示すように、ディスクリネーション低減処理部12は、画素データ保持部11から対象画素及び近接画素に対応する輝度値Axyを読み出し、ディスクリネーション低減処理を実行する。例えば、ディスクリネーション低減処理部12は、画素データ保持部11から、対象画素60m_nの輝度値Am_nと、近接画素60m−1_n−1,60m_n−1,60m+1_n−1,60m−1_n,60m+1_n,60m−1_n+1,60m_n+1,及び60m+1_n+1の輝度値Am−1_n−1,Am_n−1,Am+1_n−1,Am−1_n,Am+1_n,Am−1_n+1,Am_n+1,及びAm+1_n+1とを読み出す。
ディスクリネーション低減処理部12は、近接画素の輝度値Am−1_n−1,Am_n−1,Am+1_n−1,Am−1_n,Am+1_n,Am−1_n+1,Am_n+1,及びAm+1_n+1から対象画素の輝度値Am_nを減算して、対象画素と近接画素との輝度値Axyの差分を演算する。
ディスクリネーション低減処理部12は、演算された差分と予め設定されている正数の閾値とを比較し、閾値を超えている差分に対してディスクリネーション低減処理を実行する。具体的には、ディスクリネーション低減処理部12は、閾値を超えている差分から最大差分値Cm_nを特定する。ディスクリネーション低減処理部12は、式(1)に基づいて、最大差分値Cm_nに係数αを乗算し、対象画素60m_nにおける差分補正値Bm_nを演算する。ディスクリネーション低減処理部12は、差分補正値Bm_nの端数を切り捨てまたは切り上げて正の整数にする。
Bm_n=α×Cm_n …(1)
係数αは定数である。ディスクリネーションが低減され、かつ、対象画素と近接画素とのダイナミッレンジが小さくなり過ぎないように、係数αを差分の数%〜数十%程度に設定することが好ましい。
差分補正値Bm_nは、ディスクリネーションの発生を抑制するために、対象画素60m_nと近接画素との輝度値Axyの差分が減少するように対象画素60m_nの輝度値Am_nを増加させる。ディスクリネーション低減処理部12は、最大差分値Cm_nが閾値を超えない、または負数の場合には、差分補正値Bm_n=0とする。
ディスクリネーション低減処理部12は、輝度値Am_n及び差分補正値Bm_nを加算器16へ出力し、差分補正値Bm_nを係数設定部14へ出力する。
空間フィルタリング処理部13は、画素データ保持部11から対象画素及び近接画素に対応する輝度値Axyを読み出し、空間フィルタリング処理を実行する。例えば、空間フィルタリング処理部13は、画素データ保持部11から、対象画素60m_nの輝度値Am_nと、近接画素60m−1_n−1,60m_n−1,60m+1_n−1,60m−1_n,60m+1_n,60m−1_n+1,60m_n+1,60m+1_n+1の輝度値Am−1_n−1,Am_n−1,Am+1_n−1,Am−1_n,Am+1_n,Am−1_n+1,Am_n+1,及びAm+1_n+1とを読み出す。
空間フィルタリング処理部13は、式(2)に基づいて、対象画素60m_nにおける空間フィルタリング補正値Dm_nを演算し、乗算器15へ出力する。
Dm_n=γ0,0×Am−1_n−1+γ1,0×Am_n−1+γ2,0×Am+1_n−1+γ0,1×Am−1_n+γ1,1×Am_n+γ2,1×Am+1_n+γ0,2×Am−1_n+1+γ1,2×Am_n+1+γ2,2×Am+1_n+1 …(2)
係数γ0,0,γ1,0,γ2,0,γ0,1,γ1,1,γ2,1,γ0,2,γ1,2,及びγ2,2は、対応する画素60の係数γi,j(0≦i≦2,0≦j≦2)である。空間フィルタリング処理前後で画像平均輝度が変化しないように、Σγi,j=0とすることが望ましい。なお、式(2)は、1個の対象画素及び8個の近傍画素の3×3画素の2次元フィルタリング処理の一例である。式(2)以外の空間フィルタリング処理により空間フィルタリング補正値Dm_nを演算してもよい。
空間フィルタリング補正値Dm_nは、映像を鮮鋭化させたりコントラストを拡大させたりするために、対象画素60m_nと近接画素との輝度値Axyの差分が増加するように対象画素60m_nの輝度値Am_nを減少させる。
係数設定部14は、差分補正値Bm_nが0であるか否かを判定する。係数設定部14は、差分補正値Bm_nが0であると判定された場合には係数βaを1に設定し、0でないと判定された場合には係数βaを0に設定し、乗算器15へ出力する。即ち、係数βaは差分補正値Bに基づく変数である。
乗算器15は、空間フィルタリング補正値Dm_nに係数βaを乗算し、加算器16へ出力する。加算器16は、式(3)に基づいて、輝度値Am_nに差分補正値Bm_nと係数βaが乗算された空間フィルタリング補正値Dm_nとを加算し、対象画素60m_nに対応する輝度信号DLm_nを生成する。
DLm_n=Am_n+Bm_n+βa×Dm_n …(3)
映像信号処理装置10は、各画素60に対応する輝度データに対して、画素60n_mと同様の映像信号処理を実行する。映像信号処理装置10は、映像データVDにおける各画素60に対応する輝度信号DLを生成し、補正映像データSVDとして水平走査回路40へ順次出力する。
図4に示すフローチャートを用いて、映像データVDの映像信号処理方法の一例を説明する。画素データ保持部11は、ステップS1にて、映像データVDを画素60ごとの輝度データとして保持する。
ディスクリネーション低減処理部12は、ステップS2にて、画素データ保持部11から各画素60に対応する輝度値Axyを読み出す。例えば、ディスクリネーション低減処理部12は、画素データ保持部11から、対象画素60m_nの輝度値Am_nと、近接画素60m−1_n−1,60m_n−1,60m+1_n−1,60m−1_n,60m+1_n,60m−1_n+1,60m_n+1,及び60m+1_n+1の輝度値Am−1_n−1,Am_n−1,Am+1_n−1,Am−1_n,Am+1_n,Am−1_n+1,Am_n+1,及びAm+1_n+1とを読み出す。
ディスクリネーション低減処理部12は、ステップS3にて、近接画素の輝度値Am−1_n−1,Am_n−1,Am+1_n−1,Am−1_n,Am+1_n,Am−1_n+1,Am_n+1,及びAm+1_n+1から対象画素の輝度値Am_nを減算して、対象画素と近接画素との輝度値Axyの差分を演算する。ディスクリネーション低減処理部12は、ステップS4にて、演算された差分と閾値とを比較し、閾値を超えている差分から最大差分値Cm_nを特定する。
ディスクリネーション低減処理部12は、ステップS5にて、最大差分値Cm_nに係数αを乗算し、対象画素60m_nに対応する差分補正値Bm_nを演算する。ディスクリネーション低減処理部12は、最大差分値Cm_nが閾値を超えない、または負数の場合には、差分補正値Bm_n=0とする。
係数設定部14は、ステップS6にて、差分補正値Bm_nが0であるか否かを判定し、判定結果に基づいて係数βaを設定する。例えば、係数設定部14は、差分補正値Bm_nが0である場合には係数βaを1に設定し、0でない場合には係数βaを0に設定する。
空間フィルタリング処理部13は、ステップS7にて、画素データ保持部11から、対象画素60m_nの輝度値Am_nと、近接画素60m−1_n−1,60m_n−1,60m+1_n−1,60m−1_n,60m+1_n,60m−1_n+1,60m_n+1,60m+1_n+1の輝度値Am−1_n−1,Am_n−1,Am+1_n−1,Am−1_n,Am+1_n,Am−1_n+1,Am_n+1,及びAm+1_n+1とを読み出す。
空間フィルタリング処理部13は、ステップS8にて、対象画素60m_nに対応する空間フィルタリング補正値Dm_nを演算する。乗算器15は、ステップS9にて、空間フィルタリング補正値Dm_nに係数βaを乗算する。加算器16は、ステップS10にて、輝度値Am_nと差分補正値Bm_nと係数βaが乗算された空間フィルタリング補正値Dm_nとを加算し、対象画素60m_nに対応する輝度信号DLm_nを生成する。
図5A、図5B、及び図6を用いて、画素601が対象画素60m_nであって、画素602が近接画素である場合を例として、対象画素60m_nと近接画素との輝度値Axyの差分が大きい場合の映像信号処理を説明する。図5Aに示すように、対象画素601が黒画素、近接画素602が白画素である場合、図6の(a)に示すように対象画素601と近接画素602との輝度値Axyの差分が大きい。対象画素601と近接画素602との輝度値Axyの差分が大きい場合、図5Bに示すように、近接画素602にディスクリネーションが発生する。
輝度値Axyの差分が大きい場合には、図6の(b)に示すように、輝度値Am_nにはディスクリネーションを低減するための差分補正値Bm_nが加算される。差分補正値Bm_nは0でないため、係数βaは0に設定される。空間フィルタリング補正値Dm_nに係数βaが乗算されることにより、ダイナミッレンジを拡大するための空間フィルタリング補正値Dm_nは輝度値Am_nに加算されない。
従って、図6の(c)に示すように、対象画素60m_nの輝度値Am_nには差分補正値Bm_nのみが加算される。対象画素と近接画素との輝度値Axyの差分が大きい場合には、ディスクリネーションが発生しやすいため、結果としてディスクリネーション低減処理のみが実行される。なお、近接画素602に対しては空間フィルタリング処理のみが実行される。
図5A、図5B、及び図7を用いて、画素603が対象画素60m_nであって、画素604が近接画素である場合を例として、対象画素60m_nと近接画素との輝度値Axyの差分が図6の(a)に示す差分よりも小さい場合の映像信号処理を説明する。図7の(a)、図7の(b)、及び図7の(c)は図6の(a)、図6の(b)、及び図6の(c)に対応する。図5Aに示すように、対象画素603が画素601よりも輝度値Axyが高く、近接画素604が白画素の場合、図7の(a)に示すように、対象画素603と近接画素604との輝度値Axyの差分は、図6の(a)に示す差分よりも小さくなる。
図7の(a)に示す差分が閾値を超える場合、図5Bに示すように、近接画素604にディスクリネーションが発生する。そこで、差分が閾値を超える場合には、図7の(b)に示すように、輝度値Am_nには差分補正値Bm_nが加算される。対象画素603と近接画素604との輝度値Axyの差分は、対象画素601と近接画素602との輝度値Axyの差分よりも小さいため、ディスクリネーションの発生の度合いは小さい。
係数αは定数であるため、差分補正値Bm_nは図6の(b)と比較して小さい値となる。差分補正値Bm_nは0でないため、係数βaは0に設定される。空間フィルタリング補正値Dm_nに係数βaが乗算されることにより、空間フィルタリング補正値Dm_nは輝度値Am_nに加算されない。
従って、図7の(c)に示すように、対象画素60m_nの輝度値Am_nには差分補正値Bm_nのみが加算される。対象画素と近接画素との輝度値Axyの差分が図6の(a)に示す差分よりも小さい場合には、図6の(c)と比較して小さい差分補正値Bm_nが加算される。差分が閾値を超える場合には、結果としてディスクリネーション低減処理のみが実行される。なお、近接画素604に対しては空間フィルタリング処理のみが実行される。
図5A、図5B、及び図8を用いて、画素605が対象画素60m_nであって、画素606が近接画素である場合を例として、対象画素60m_nと近接画素との輝度値Axyの差分が図7の(a)に示す差分よりもさらに小さい場合の映像信号処理を説明する。図8の(a)、図8の(b)、及び図8の(c)は、図7の(a)、図7の(b)、及び図7の(c)に対応する。図5Aに示すように、対象画素605が画素603よりも輝度値Axyが高く、近接画素606が白画素の場合、図8の(a)に示すように、対象画素601と近接画素602との輝度値Axyの差分は、図7の(a)に示す差分よりも小さくなる。
図8の(a)に示す差分が閾値を超えない場合、図5Bに示すように、近接画素606にはディスクリネーションが発生しない。差分が閾値を超えない場合には差分補正値Bm_nは0となり、図8の(b)に示すように輝度値Am_nに加算されない。係数βaは1に設定されるため、空間フィルタリング補正値Dm_nに係数βaが乗算されることにより、空間フィルタリング補正値Dm_nは輝度値Am_nに加算される。
従って、図8の(c)に示すように、対象画素60m_nの輝度値Am_nには空間フィルタリング補正値Dm_nのみが加算される。差分が閾値を超えない場合には、ディスクリネーションが発生しにくいため、結果として空間フィルタリング処理のみが実行される。なお、近接画素606に対しては空間フィルタリング処理のみが実行される。
[第2実施形態]
図1または図2に示すように、係数設定部14の代わりに係数設定部114を備えるのが第2実施形態の表示装置101及び映像信号処理装置110であり、係数設定部114における係数βbの設定方法は係数設定部14における係数βaの設定方法とは異なる。そこで、係数設定部114における係数βbの設定方法について説明する。なお、説明をわかりやすくするために、第1実施形態の表示装置1及び映像信号処理装置10と同じ構成部には同じ符号を付す。
係数設定部114には、ディスクリネーション低減処理部12から差分補正値Bm_nが入力される。係数設定部114は、差分補正値Bm_nが0であるか否かを判定する。係数設定部114は、差分補正値Bm_nが0でないと判定された場合には、式(4)に基づいて、差分補正値Bm_nの逆数を演算し、係数βbとする。係数設定部114は、差分補正値Bm_nが0であると判定された場合には係数βaを1に設定する。即ち、係数βbは差分補正値Bに基づく変数である。
βb=1/Bm_n …(4)
係数設定部114は、係数βbを乗算器15へ出力する。乗算器15は、空間フィルタリング補正値Dm_nに係数βbを乗算し、加算器16へ出力する。加算器16は、式(5)に基づいて、輝度値Am_nに差分補正値Bm_nと係数βbが乗算された空間フィルタリング補正値Dm_nとを加算し、対象画素60m_nに対応する輝度信号DLm_nを生成する。
DLm_n=Am_n+Bm_n+βb×Dm_n …(5)
表示装置101及び映像信号処理装置110では、係数設定部114は、図4に示すフローチャートのステップS6にて、差分補正値Bm_nが0であるか否かを判定し、判定結果に基づいて係数βbを設定する。例えば、係数設定部114は、差分補正値Bm_nが0でないと判定された場合には、式(4)に基づいて、差分補正値Bm_nの逆数を演算し、係数βbとする。係数設定部114は、差分補正値Bm_nが0であると判定された場合には係数βaを1に設定する。
乗算器15は、ステップS9にて、空間フィルタリング補正値Dm_nに係数βbを乗算する。加算器16は、ステップS10にて、輝度値Am_nに差分補正値Bm_nと係数βbが乗算された空間フィルタリング補正値Dm_nとを加算し、対象画素60m_nに対応する輝度信号DLm_nを生成する。ステップS6,S9,及びS10以外のステップは第1実施形態の映像信号処理方法と同じである。
図5A、図5B、及び図9を用いて、画素601が対象画素60m_nであって、画素602が近接画素である場合を例として、対象画素60m_nと近接画素との輝度値Axyの差分が大きい場合の映像信号処理を説明する。図9の(a)、図9の(b)、及び図9の(c)は図6の(a)、図6の(b)、及び図6の(c)に対応する。図5Aに示すように、対象画素601が黒画素、近接画素602が白画素である場合、図9の(a)に示すように対象画素601と近接画素602との輝度値Axyの差分が大きい。
輝度値Axyの差分が大きい場合、図5Bに示すように、近接画素602にディスクリネーションが発生する。そこで、図9の(b)に示すように、輝度値Am_nには差分補正値Bm_nが加算される。差分補正値Bm_nは0でないため、係数βbは1/Bm_nに設定される。輝度値Axyの差分が大きい場合には差分補正値Bm_nが大きいため、係数βbは小さい値、例えば0に近い値になる。空間フィルタリング補正値Dm_nに係数βaが乗算されることにより、空間フィルタリング補正値Dm_nは小さい値となって輝度値Am_nに加算される。
従って、図9の(c)に示すように、対象画素60m_nの輝度値Am_nには大きい値の差分補正値Bm_nと小さい値の空間フィルタリング補正値Dm_nとが加算される。対象画素と近接画素との輝度値Axyの差分が大きい場合には、ディスクリネーションが発生しやすいため、空間フィルタリング処理に対してディスクリネーション低減処理による効果の割合を高める映像信号処理が実行される。なお、近接画素602に対しては空間フィルタリング処理のみが実行される。
図5A、図5B、及び図10を用いて、画素603が対象画素60m_nであって、画素604が近接画素である場合を例として、対象画素60m_nと近接画素との輝度値Axyの差分が図9の(a)に示す差分よりも小さい場合の映像信号処理を説明する。図10の(a)、図10の(b)、及び図10の(c)は図9の(a)、図9の(b)、及び図9の(c)に対応する。図5Aに示すように、対象画素603が画素601よりも輝度値Axyが高く、近接画素604が白画素の場合、図10の(a)に示すように、対象画素603と近接画素604との輝度値Axyの差分は、図6の(a)に示す差分よりも小さくなる。
図10の(a)に示す差分が閾値を超える場合、図5Bに示すように、近接画素604にディスクリネーションが発生する。そこで、図10の(b)に示すように輝度値Am_nには差分補正値Bm_nが加算される。係数αは定数であるため、差分補正値Bm_nは図9の(b)と比較して小さい値となる。
差分補正値Bm_nは0でないため、係数βbは1/Bm_nに設定される。図9の(b)と比較して差分補正値Bm_nが小さい値となるため、係数βbは大きい値、例えば1に近い値になる。空間フィルタリング補正値Dm_nに係数βaが乗算されることにより、図9の(b)と比較して大きい値の空間フィルタリング補正値Dm_nが輝度値Am_nに加算される。
従って、図10の(c)に示すように、対象画素60m_nの輝度値Am_nには図9の(c)と比較して小さい値の差分補正値Bm_nと大きい値の空間フィルタリング補正値Dm_nとが加算される。対象画素と近接画素との輝度値Axyの差分が図9の(a)と比較して小さい場合には、図9の(b)と比較してディスクリネーション低減処理に対して空間フィルタリング処理による効果の割合を高める映像信号処理が実行される。なお、近接画素604に対しては空間フィルタリング処理のみが実行される。
対象画素と近接画素との輝度値Axyの差分が図10の(a)に示す差分よりもさらに小さい場合は、図8の(a)、図8の(b)、及び図8の(c)と同様の映像信号処理が実行される。従って、図8の(c)に示すように、対象画素60m_nの輝度値Am_nには空間フィルタリング補正値Dm_nのみが加算される。差分が閾値を超えない場合には、ディスクリネーションが発生しにくいため、結果として空間フィルタリング処理のみが実行される。なお、近接画素606に対しては空間フィルタリング処理のみが実行される。
[比較例]
図11を用いて、比較例の映像信号処理装置210を説明する。映像信号処理装置210は、映像データVDに対してディスクリネーション低減処理を実行した後に空間フィルタリング処理を実行する。映像信号処理装置210は、画素データ保持部211,217と、ディスクリネーション低減処理部212と、空間フィルタリング処理部213と、加算器216,218とを備える。
画素データ保持部211には、映像データVDが画素60ごとの輝度データとして入力される。画素データ保持部211は画素データ保持部11に対応し、ディスクリネーション低減処理部212はディスクリネーション低減処理部12に対応する。ディスクリネーション低減処理部212は、画素データ保持部211から各画素60に対応する輝度値Axyを読み出し、ディスクリネーション低減処理部12と同様のディスクリネーション低減処理を実行する。
ディスクリネーション低減処理部212は、対象画素60m_nの差分補正値Bm_nを演算し、輝度値Am_n及び差分補正値Bm_nを加算器216へ出力する。加算器216は、輝度値Am_nと差分補正値Bm_nとを加算し、ディスクリネーション補正輝度値Fm_nとして画素データ保持部217へ出力する。画素データ保持部217は画素データ保持部211に対応する。画素データ保持部217は画素行ごとに各画素60に対応するディスクリネーション補正輝度値Fを保持する。
空間フィルタリング処理部213は、画素データ保持部217から各画素60に対応するディスクリネーション補正輝度値Fを読み出し、空間フィルタリング処理部13と同様の空間フィルタリング処理を実行する。空間フィルタリング処理部213は、ディスクリネーション低減処理された輝度値Axyに対して空間フィルタリング処理を実行し、空間フィルタリング補正値Dm_nを演算する。
空間フィルタリング処理部213は、ディスクリネーション補正輝度値Fm_n及び空間フィルタリング補正値Dm_nを加算器218へ出力する。加算器218は、ディスクリネーション補正輝度値Fm_nと空間フィルタリング補正値Dm_nとを加算し、対象画素60m_nにおける輝度信号DLm_nを生成する。
比較例の映像信号処理装置210では、ディスクリネーション低減処理と空間フィルタリング処理とを実行する場合にそれぞれ画素データ保持部が必要である。即ち、処理ごとに画素データ保持部を構成するラインメモリが必要となるため、実装規模が増大する。
図12及び図13を用いて、比較例の映像信号処理装置210における映像信号処理を説明する。図13の(a)、図13の(b)、及び図13の(c)は図12の(a)、図12の(b)、及び図12の(c)に対応する。図12の(a)に示す対象画素と近接画素との輝度値Axyの差分では、図13の(a)に示すように、近接画素にディスクリネーションが発生する。
ディスクリネーション低減処理部212が差分補正値Bm_nを演算し、加算器216が図12の(b)に示すように輝度値Am_nに差分補正値Bm_nを加算する。これにより、図13の(b)に示すように、対象画素と近接画素との輝度値Axyの差分が小さくなるため、ディスクリネーションの発生を抑制できる。
空間フィルタリング処理部213は、ディスクリネーション補正輝度値Fm_nに対して空間フィルタリング処理を実行し、空間フィルタリング補正値Dm_nを演算する。加算器218は、図12の(c)に示すようにディスクリネーション補正輝度値Fm_nと空間フィルタリング補正値Dm_nとを加算する。これにより、図13の(c)に示すように、ディスクリネーション補正輝度値Fm_nが空間フィルタリング補正値Dm_nにより相殺される。
近接画素に対しては空間フィルタリング処理が実行されるため、結果として対象画素と近接画素との輝度値Axyの差分が映像信号処理により増大し、ディスクリネーションが発生する。従って、比較例の映像信号処理装置210では、ディスクリネーション低減処理を空間フィルタリング処理により相殺してしまう。
それに対して、第1及び第2実施形態の表示装置1及び101によれば、画素データ保持部11に保持されている輝度データに対してディスクリネーション低減処理と空間フィルタリング処理とを実行することにより、比較例の映像信号処理装置210よりも実装規模を縮小させることができる。
第1及び第2実施形態の表示装置1及び101は、差分補正値Bm_nに応じて係数βa及びβbを設定し、空間フィルタリング補正値Dm_nに乗算する。これにより、対象画素と近接画素との輝度値Axyの差分が大きい場合にはディスクリネーションが発生しやすいため、空間フィルタリング補正に対してディスクリネーション低減補正による効果の割合を高める映像信号処理を実行する。また、対象画素と近接画素との輝度値Axyの差分が小さい場合にはディスクリネーションが発生しにくいため、ディスクリネーション低減補正に対して空間フィルタリング補正による効果の割合を高める映像信号処理を実行する。
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
第1及び第2実施形態の表示装置1及び101では、1個の対象画素に対してその周囲の8個の画素を近接画素として、3×3画素に対して映像信号処理を実行したが、対象画素に対して近接画素を任意に設定してもよい。例えば、4×4画素、即ち1個の対象画素及び15個の近接画素に対して映像信号処理を実行してもよい。