以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、以下では液晶表示装置を例示するが、本発明は液晶表示装置に限定されるものではなく、有機EL表示装置などの他の表示装置にも好適に用いられる。
図1に、本実施形態における液晶表示装置100を示す。液晶表示装置100は、図1に示すように、多原色表示パネル10と、信号変換回路20とを備え、4つ以上の原色を用いて表示を行う多原色表示装置である。
図1には示されていないが、多原色表示パネル10は、複数の行および複数の列を含むマトリクス状に配置された複数の画素を有する。複数の画素のそれぞれは、複数のサブ画素によって構成される。各画素を構成する複数のサブ画素は、互いに異なる色を表示する少なくとも4つのサブ画素を含む。図2に、多原色表示パネル10の具体的な画素構造(サブ画素配列)の例を示す。
図2に示す多原色表示パネル10では、マトリクス状に配置された複数の画素Pのそれぞれは、6つのサブ画素SP1〜SP6によって構成される。各画素P内で、6つのサブ画素SP1〜SP6は、1行6列に配列されている。6つのサブ画素SP1〜SP6は、例えば、赤を表示する赤サブ画素R、緑を表示する緑サブ画素G、青を表示する青サブ画素B、シアンを表示するシアンサブ画素C、マゼンタを表示するマゼンタサブ画素Mおよび黄を表示する黄サブ画素Yeである。
なお、多原色表示パネル10のサブ画素配列は、図2に示す例に限定されない。図3および図4に、多原色表示パネル10のサブ画素配列の他の例を示す。
図3に示す多原色表示パネル10では、マトリクス状に配置された複数の画素Pのそれぞれは、5つのサブ画素SP1〜SP5によって構成される。各画素P内で、5つのサブ画素SP1〜SP5は、1行5列に配列されている。5つのサブ画素SP1〜SP5は、例えば、赤サブ画素R、緑サブ画素Gおよび青サブ画素Bと、シアンサブ画素C、マゼンタサブ画素Mおよび黄サブ画素Yeのうちのいずれか2つとである。
図4に示す多原色表示パネル10では、マトリクス状に配置された複数の画素Pのそれぞれは、4つのサブ画素SP1〜SP4によって構成される。各画素P内で、4つのサブ画素SP1〜SP4は、1行4列に配列されている。4つのサブ画素SP1〜SP4は、例えば、赤サブ画素R、緑サブ画素Gおよび青サブ画素Bと、シアンサブ画素C、マゼンタサブ画素Mおよび黄サブ画素Yeのうちのいずれか1つとである。
なお、各画素Pを構成する複数のサブ画素は、必ずしも互いに異なる色を表示するサブ画素だけを含んでいる必要はない。例えば、シアンサブ画素C、マゼンタサブ画素Mおよび黄サブ画素Yeのいずれかに代えて、赤を表示するさらなる赤サブ画素Rを設けてもよい。1つの画素P内に赤サブ画素Rを2つ設けると、明るい(明度の高い)赤を表示することができる。
また、図2〜図4には、複数のサブ画素が各画素P内で1行複数列に配列されている構成を例示したが、画素P内におけるサブ画素配列はこれに限定されず、例えば、各画素P内で複数のサブ画素が複数行1列に配列されていてもよい。ただし、ある方向について解像度の向上効果を得るためには、各画素P内でその方向に沿ってサブ画素が複数存在することが好ましい。従って、行方向について解像度の向上効果を得る観点からは、各画素P内で複数のサブ画素が2列以上に配列されていることが好ましく、列方向について解像度の向上効果を得る観点からは、各画素P内で複数のサブ画素が2行以上に配列されていることが好ましい。また、人間の目の分解能は、水平方向よりも垂直方向に対して低いので、少なくとも水平方向の解像度を向上させることが好ましく、さらに、典型的には、行方向が(つまり複数の画素Pによって構成される複数の行が)表示面の水平方向に略平行である。従って、一般的な用途では、各画素P内で複数のサブ画素が1行複数列に配列されていることが好ましいといえる。以下では、特にことわらない限り、画素行が表示面の水平方向に略平行であり、各画素P内で複数のサブ画素が1行複数列に配列されている場合を例として説明を行う。
信号変換回路20は、図1に示すように、三原色(RGB)に対応した入力画像信号(三原色画像信号)を、4つ以上の原色に対応した画像信号(「多原色画像信号」と称する。)に変換する。信号変換回路20から出力された多原色画像信号が多原色表示パネル10に入力され、4つ以上の原色を用いたカラー表示が行われる。信号変換回路20の具体的な構成については後に詳述する。
本願明細書では、多原色表示パネル10が有する複数の画素Pの総数を「パネル解像度」と称する。複数の画素Pが行方向にA個、列方向にB個配置されているときのパネル解像度は「A×B」と表記される。また、本願明細書では、入力画像の最小表示単位も便宜的に「画素」と呼び、入力画像の総画素数を「入力画像の解像度」と称する。この場合も、行方向にA個、列方向にB個の画素から構成される入力画像の解像度は「A×B」と表記される。
本実施形態における液晶表示装置100は、各画素Pを構成する複数のサブ画素を複数の仮想的な画素(以下では「仮想画素」と呼ぶ。)に振り分け、これら複数の仮想画素のそれぞれを最小のカラー表示単位として表示を行うことができる。図5、図6および図7に、複数の仮想画素への複数のサブ画素の振り分けパターンの例を示す。
図5に示す振り分けパターンでは、各画素Pを構成する6つのサブ画素SP1〜SP6は、2つの仮想画素(第1および第2仮想画素)VP1およびVP2に振り分けられる。第1仮想画素VP1は、6つのサブ画素SP1〜SP6のうちの3つのサブ画素SP1、SP2およびSP3によって構成される。また、第2仮想画素VP2は、残りの3つのサブ画素SP4、SP5およびSP6によって構成される。
図6に示す振り分けパターンでは、各画素Pを構成する5つのサブ画素SP1〜SP5は、2つの仮想画素(第1および第2仮想画素)VP1およびVP2に振り分けられる。第1仮想画素VP1は、5つのサブ画素SP1〜SP5のうちの3つのサブ画素SP1、SP2およびSP3によって構成される。また、第2仮想画素VP2は、残りの2つのサブ画素SP4およびSP5によって構成される。
図7に示す振り分けパターンでは、各画素Pを構成する4つのサブ画素SP1〜SP4は、2つの仮想画素(第1および第2仮想画素)VP1およびVP2に振り分けられる。第1仮想画素VP1は、4つのサブ画素SP1〜SP4のうちの2つのサブ画素SP1およびSP2によって構成される。また、第2仮想画素VP2は、残りの2つのサブ画素SP3およびSP4によって構成される。
図8、図9および図10に、振り分けパターンの他の例を示す。図8、図9および図10に示す例は、各仮想画素を構成する2つ以上のサブ画素が、他の仮想画素と共通のサブ画素を含んでいる点において、図5、図6および図7に示した振り分けパターンと異なる。
図8に示す振り分けパターンでは、各画素Pを構成する6つのサブ画素SP1〜SP6は、2つの仮想画素(第1および第2仮想画素)VP1およびVP2に振り分けられる。第1仮想画素VP1は、6つのサブ画素SP1〜SP6のうちの4つのサブ画素SP1、SP2、SP3およびSP4によって構成される。また、第2仮想画素VP2は、3つのサブ画素SP4、SP5およびSP6によって構成される。図8に示す例では、画素P内で左側から4番目に位置するサブ画素SP4は、第1仮想画素VP1および第2仮想画素VP2の両方を構成する。つまり、第1仮想画素VP1および第2仮想画素VP2は、共通のサブ画素SP4を含んでおり、そのサブ画素SP4を共用する。
図9に示す振り分けパターンでは、各画素Pを構成する5つのサブ画素SP1〜SP5は、2つの仮想画素(第1および第2仮想画素)VP1およびVP2に振り分けられる。第1仮想画素VP1は、5つのサブ画素SP1〜SP5のうちの3つのサブ画素SP1、SP2およびSP3によって構成される。また、第2仮想画素VP2は、3つのサブ画素SP3、SP4およびSP5によって構成される。図9に示す例では、画素P内で中央に位置するサブ画素SP3は、第1仮想画素VP1および第2仮想画素VP2の両方を構成する。つまり、第1仮想画素VP1および第2仮想画素VP2は、共通のサブ画素SP3を含んでおり、そのサブ画素SP3を共用する。
図10に示す振り分けパターンでは、各画素Pを構成する4つのサブ画素SP1〜SP4は、2つの仮想画素(第1および第2仮想画素)VP1およびVP2に振り分けられる。第1仮想画素VP1は、4つのサブ画素SP1〜SP4のうちの3つのサブ画素SP1、SP2およびSP3によって構成される。また、第2仮想画素VP2は、2つのサブ画素SP3およびSP4によって構成される。図10に示す例では、画素P内で左側から3番目に位置するサブ画素SP3は、第1仮想画素VP1および第2仮想画素VP2の両方を構成する。つまり、第1仮想画素VP1および第2仮想画素VP2は、共通のサブ画素SP3を含んでおり、そのサブ画素SP3を共用する。
なお、図5〜図10に例示した振り分けパターンでは、仮想画素の個数は2であるが、仮想画素の個数は2に限定されるものではなく、3以上であってもよい。図11に、振り分けパターンの他の例を示す。
図11に示す振り分けパターンでは、各画素Pを構成する6つのサブ画素SP1〜SP6は、3つの仮想画素(第1、第2および第3仮想画素)VP1、VP2およびVP3に振り分けられる。第1仮想画素VP1は、6つのサブ画素SP1〜SP6のうちの3つのサブ画素SP1、SP2およびSP3によって構成される。また、第2仮想画素VP2は、3つのサブ画素SP3、SP4およびSP5によって構成される。さらに、第3仮想画素VP3は、2つのサブ画素SP5およびSP6によって構成される。図11に示す例では、画素P内で左側から3番目に位置するサブ画素SP3は、第1仮想画素VP1および第2仮想画素VP2の両方を構成する。つまり、第1仮想画素VP1および第2仮想画素VP2は、共通のサブ画素SP3を含んでおり、そのサブ画素SP3を共用する。また、画素P内で左側から5番目に位置するサブ画素SP5は、第2仮想画素VP2および第3仮想画素VP3の両方を構成する。つまり、第2仮想画素VP2および第3仮想画素VP3は、共通のサブ画素SP5を含んでおり、そのサブ画素SP5を共用する。
上述したように、本実施形態における液晶表示装置100では、各画素Pを構成する複数のサブ画素を複数の仮想画素に振り分け、各仮想画素を最小のカラー表示単位として表示を行うことができる。そのため、表示解像度(表示面に表示される画像の解像度)をパネル解像度(画素Pの総数によって規定されるパネル固有の物理的な解像度)よりも高くすることができる。
例えば、図5〜図10に示した振り分けパターンによれば、各画素Pについて行方向(水平方向)に隣接した2つの仮想画素VP1およびVP2が構成されるので、表示解像度を水平方向について2倍にすることができる。そのため、解像度が「2A×B」の入力画像を、パネル解像度が「A×B」の多原色表示パネル10で表示することができる。また、図11に示した振り分けパターンによれば、各画素Pについて行方向(水平方向)に隣接した3つの仮想画素VP1、VP2およびVP3が構成されるので、表示解像度を水平方向について3倍にすることができる。そのため、解像度が「3A×B」の入力画像を、パネル解像度が「A×B」の多原色表示パネル10で表示することができる。
従って、本実施形態における液晶表示装置100では、入力画像の解像度がパネル解像度よりも高い場合であっても好適に表示を行うことができる。あるいは、表示面の一部に入力画像の解像度を保存したまま縮小して表示することもできる。
このように、本実施形態における液晶表示装置(多原色表示装置)100は、表示解像度をパネル解像度よりも高くすることができるので、三原色表示装置と同一のサブ画素サイズおよび画面サイズで、同等またはより高い解像度の画像を表示することができ、また、三原色表示装置と同等のコストで生産することができる。
液晶表示装置100は、複数の仮想画素への複数のサブ画素の振り分けパターンを変え得ることが好ましい。これにより、表示解像度の向上度合を調整することができる。例えば、図8に示した振り分けパターンと、図11に示した振り分けパターンとを切り替えることにより、水平方向の表示解像度の向上度合を2倍と3倍とに切り替えることができる。
なお、サブ画素の「振り分けパターンを変える」とは、1つの画素Pあたりの仮想画素の個数を変化させることだけを意味しているわけではない。サブ画素の「振り分けパターンを変える」とは、仮想画素を構成するサブ画素の個数・組み合わせを変化させることも意味している。複数の仮想画素同士で、最大出力時における色差(輝度差および色度差)をゼロにすることは難しい場合もあるが、仮想画素を構成するサブ画素の個数・組み合わせを変化させることにより、輝度差が小さい仮想画素のセットや、色度差が小さい仮想画素のセットなどを、入力画像の種類や表示目的などに応じて適宜選択することができる。
仮想画素を用いて高解像度の表示を行う際、振り分けパターンによっては、十分に高い高域再現性が得られないことがある。高い高域再現性を得る観点からは、複数の仮想画素のそれぞれは、複数のサブ画素のうちの一部のサブ画素から構成される(つまり全部のサブ画素からは構成されない)ことが好ましい。また、複数の仮想画素のそれぞれは、複数のサブ画素のうちの2つ以上のサブ画素から構成される(つまり1つのサブ画素のみからは構成されない)ことが好ましい。
(信号変換回路の具体例1)
次に、信号変換回路20の具体的な構成を説明する。信号変換回路20としては、例えば、図12に示す信号変換回路20Aを用いることができる。図12に示す信号変換回路20Aは、図13に示すサブ画素配列の多原色表示パネル10と組み合わせて用いられる。図13に示すサブ画素配列では、各画素P内で、赤サブ画素R、緑サブ画素G、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeが水平方向に沿って(つまり1行4列に)配列されている。また、ここでは、多原色表示パネル10の水平方向(行方向)の画素数はmである。
信号変換回路20Aは、図12に示すように、低域多原色信号生成部21と、高域輝度信号生成部22と、レンダリング処理部23とを有する。信号変換回路20Aは、さらに、純色度合判定部24を有する。
信号変換回路20Aへの入力画像信号は、三原色(RGB)に対応した三原色画像信号である。ここでは、入力画像の水平方向(行方向)の画素数は2mであり、水平解像度はn(=2m)である。入力画像信号は、まず、低域多原色信号生成部21と、高域輝度信号生成部22とにそれぞれ入力される。
低域多原色信号生成部21は、入力画像信号に基づいて、低域多原色信号を生成する。低域多原色信号は、入力画像信号の低域成分(相対的に空間周波数が低い成分)が多原色化された(つまり4つ以上の原色に対応するように変換がなされた)信号である。ここでは、低域多原色信号は、赤、緑、青、黄の4つの原色(RGBYe)に対応している。
低域多原色信号生成部21は、具体的には、低域成分抽出部(ここではローパスフィルタ:LPF)21aと、多原色変換部21bとを有する。ローパスフィルタ21aは、入力画像信号から低域成分を抽出する。ローパスフィルタ21aによって抽出された入力画像信号の低域成分は、多原色変換部21bによって多原色化される。多原色化された低域成分は、低域多原色信号として出力される。出力された低域多原色信号に対応する、水平方向の画素数は2mである。なお、多原色変換部21bにおける多原色化の手法としては、公知の種々の手法を用いることができる。例えば、国際公開第2008/065935号や国際公開第2007/097080号に開示されている手法を用いることができる。
高域輝度信号生成部22は、入力画像信号に基づいて、高域輝度信号を生成する。高域輝度信号は、入力画像信号の高域成分(相対的に空間周波数が高い成分)が輝度変換された信号である。
高域輝度信号生成部22は、具体的には、高域成分抽出部(ここではハイパスフィルタ:HPF)22aと、輝度変換部22bとを有する。ハイパスフィルタ22bは、入力画像信号から高域成分を抽出する。ハイパスフィルタ22bによって抽出された入力画像信号の高域成分は、輝度変換部22bによって輝度変換される。輝度変換された高域成分は、高域輝度信号として出力される。出力された高域輝度信号に対応する、水平方向の画素数は2mである。なお、輝度変換部22bにおける輝度変換の手法としては、公知の種々の手法(マトリックス演算等)を用いることができる。
レンダリング処理部23は、低域多原色信号生成部21によって生成された低域多原色信号と、高域輝度信号生成部22によって生成された高域輝度信号とに基づいて、複数の仮想画素へのレンダリング処理を行う。
レンダリング処理部23は、具体的には、サブ画素マッピング部23aと、ダウンサンプリング部23bとを有する。サブ画素マッピング部23aは、高域輝度信号を複数のサブ画素(ここでは赤サブ画素R、緑サブ画素G、青サブ画素B、黄サブ画素Ye)に割り当てる。ダウンサンプリング部23bは、低域多原色信号を多原色表示パネル10の解像度でサンプリングする。入力画像の解像度よりもパネル解像度の方が低い(入力画像の水平方向の画素数が2mであるのに対し、多原色表示パネル10の水平方向の画素数はmである)ので、ダウンサンプリング部23bによりダウンサンプリングが行われる。
純色度合判定部24は、入力画像信号に対応する色が純色にどれほど近いか(つまり各サブ画素によって表示される原色にどれほど近いか)を示す「純色度合(純色係数)」を判定する。図12に示す例では、純色度合判定部24には、低域多原色信号生成部21から出力された低域多原色信号が入力され、純色度合判定部24は、低域多原色信号に基づいて純色度合を判定する。つまり、純色度合判定部24は、低域多原色信号生成部21によって低域多原色信号が生成された後に、純色度合を判定する。
信号変換回路20Aは、純色度合判定部24によって判定された純色度合に基づいて、高域輝度信号の大きさを調整する。図12に示す例では、信号変換回路20Aは、サブ画素マッピング部23aによって複数のサブ画素に割り当てられた後の高域輝度信号の大きさを調整する。具体的には、複数のサブ画素に割り当てられた後の高域輝度信号に対し、純色度合に応じて、高域輝度信号が0〜1の間でゲイン制御される。高域輝度信号のゲイン(高域ゲイン)は、純色度合が高い場合には小さく(0方向に)、純色度合が低い場合には大きく(1方向に)制御される。また、高域ゲインは、各サブ画素について独立に設定され、乗算される。
その大きさを調整された(ゲイン制御された)高域輝度信号と、ダウンサンプリングされた低域多原色信号とは、サブ画素単位で合成され、多原色画像信号として出力される。出力される多原色画像信号は、4つの原色(RGBYe)に対応しており、この多原色画像信号により、水平方向(行方向)の画素数がmである多原色表示パネル10で、水平輝度解像度n(=2m)の表示(ただし水平色解像度はn/2)を行うことができる。
このように、信号変換回路20Aでは、色信号に対してよりも輝度信号に対して感度が優れる(つまり輝度の視感度に比べて色差の視感度は低い)という人間の視覚特性を考慮し、入力画像信号の低域成分に対しては多原色化処理を行い、高域成分に対しては輝度変換処理を行う。これらの処理によって得られた低域多原色信号と高域輝度信号とを組み合わせ、仮想画素へレンダリングすることにより、4つ以上の原色に対応した画像信号(多原色画像信号)を出力することができる。
また、信号変換回路20Aでは、純色度合判定部24によって判定された純色度合に基づいて高域輝度信号の大きさが調整されるので、入力画像信号に対応した色が純色や純色に近い色であっても、色の濁り(白色化)が抑制される。
図14に、純色度合(純色係数)と高域ゲインとの関係の例を示す。図14に示す例では、純色度合が0から所定の値(1より小さい)までの範囲では高域ゲインは一定(1)であり、純色度合が上記所定の値から1までの範囲では、高域ゲインは純色度合の増加につれて低下する。純色度合がある程度高くなるまでは、高域再現性を優先させた方が総合的に良好な画質が得られることが多いと考えられるので、純色度合と高域ゲインとの関係は、線形(単純な直線で表される)よりも、図14に例示しているように非線形であることが好ましい。
純色度合と高域ゲインとの関係は、図14に示しているような単純な直線の組み合わせで表される場合には組み合わせ回路を用いて実現することができ、複雑な曲線で表される場合にはルックアップテーブル(LUT)を用いて実現することができる。
上述したようなゲイン制御は、例えば、多原色変換が行われた後のRGBYeデータの値(つまり低域多原色信号によって示されるRGBYeの階調レベル)を、図15(a)〜(d)に示すようなテーブルに通すことによって実現することができる。図15(a)〜(d)は、R、G、B、Yeのそれぞれについて、正規化されたデータ値と高域ゲインとの関係を示している。ここで、RGBYeデータ値のうちの最も大きな値をMax.(R, G, B, Ye)とし、2番目に大きな値を2ndMax.(R, G, B, Ye)としたとき、Rに対するゲインオフセット(R Gain Offset)は、例えば下記式で定義される。G、B、Yeに対するゲインオフセットも同様である。
入力画像信号に対応する色が赤の純色に近い(つまり赤サブ画素Rによって表示される赤に近い)場合、図15中に点線の円で示しているように、Rの高域ゲインは1に近いが、G、B、Yeの高域ゲインは0に近くなる。そのため、赤サブ画素Rはほぼ本来の輝度で点灯するが、緑サブ画素G、青サブ画素および黄サブ画素Yeは、本来よりも低い輝度で点灯する(あるいは点灯しない)。従って、色の濁りが抑制される。
なお、輝度解像度の再現性と、純色の再現性とはトレードオフの関係にあるので、純色度合と高域ゲインとの関係は、外部から調整可能とし、入力画像の特徴に応じて制御可能としておくことが好ましい。また、上述したようなゲイン制御を実現するためのテーブルは、信号変換回路20Aにおいて純色度合判定部24よりも前段に位置するLPF21aやHPF22aの特性にも影響を受けるので、それらの特性に合わせて調整できることが好ましい。
ここで、図16を参照しながら、純色度合に基づいて高域輝度信号の大きさが調整されることによる色の濁りの抑制効果を具体的に説明する。図16(a)および(b)は、入力画像において水平方向に沿って1画素単位で明るい赤、暗い赤が交互に繰り返される場合の、多原色表示パネル10における3画素分の表示を示している。図16(b)は、純色度合に基づいて高域輝度信号の大きさの調整が行われる場合を示し、図16(a)は、そのような調整が行われない場合を示している。
純色度合に基づく調整が行われない場合、つまり、特許文献2に開示されているような手法をそのまま用いる場合、図16(a)に示すように、暗い赤の高域成分に応じて青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeが点灯し、それによって灰色が表示される。そのため、暗い赤が灰色に濁ってしまい、明るい赤、暗い赤の繰り返しとなるべきところが明るい赤、灰色の繰り返しになってしまう。
これに対し、純色度合に基づく調整が行われる場合、つまり、図12に示した信号変換回路20Aを用いる場合、図16(b)に示すように、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeの輝度が本来よりも低くなるので、色の濁りを抑制することができる。
なお、信号変換回路20Aを用いる場合、純色や純色に近い色については、一部のサブ画素の高域ゲインが小さくなるので、輝度解像度が低下することがあるが、純色から遠い色については、各サブ画素の高域ゲインはほぼそのままであるので、輝度解像度は低下しない。
(信号変換回路の具体例2)
図17に、液晶表示装置100に用いることができる他の信号変換回路20Bを示す。以下では、信号変換回路20Bが図12に示した信号変換回路20Aと異なる点を中心に説明を行う。
図12に示した信号変換回路20Aは、サブ画素マッピング部23aによって複数のサブ画素に割り当てられた後の高域輝度信号の大きさを調整する。これに対し、図17に示す信号変換回路20Bは、サブ画素マッピング部23aによって複数のサブ画素に割り当てられる前の高域輝度信号の大きさを調整する。つまり、図17に示す例では、純色度合に応じた高域ゲインが、サブ画素マッピングされる前の高域輝度信号そのものに乗算される。
この場合、高域輝度信号は各画素について1つであるので、高域ゲインの乗算を行う乗算器の個数を1系統分(つまり水平方向について1×2m個)に減らすことができる。そのため、信号変換回路20Bでは、図12に示した信号変換回路20Aに比べて、回路規模を削減することが可能である。図12に示した信号変換回路20Aでは、サブ画素マッピングされた高域輝度信号に対して高域ゲインが乗算されるので、乗算器は、赤、緑、青、黄の4系統分(つまり水平方向について4×m個)必要である。
なお、図12に示した信号変換回路20Aでは、サブ画素マッピングされた後の高域輝度信号にゲイン処理が行なわれるので、図17に示す信号変換回路20Bに比べ、サブ画素単位での階調制御の精度という点においては有利である。
図17に示す信号変換回路20Bでは、サブ画素マッピングされる前の高域輝度信号に乗算するための高域ゲインを得る必要がある。そのような高域ゲインは、例えば図18に示す構成により得ることができる。
図18に示す構成では、まず、低域多原色信号のRGBYeデータから、比較器24aにより最も大きな値を有するデータと2番目に大きな値を有するデータとが取り出される。次に、最も大きな値を有するデータから、2番目に大きな値を有するデータを減算し、この結果を純色度合とする。例えば、10ビット表記でR=1020、G=200、B=242、Ye=56の場合、Rが最も大きく、Bが2番目に大きいので、純色度合は1020−242=778となる(1を最大値として表すと0.76)。
続いて、求めた純色度合は、純色度合と高域ゲインとの関係が格納されたゲインLUT24bに通され、これによって高域ゲインが得られる。ゲインLUT24bは、入力される純色度合が高くなるにつれ、出力される高域ゲインが小さくなるように作成されている。
図17に示す信号変換回路20Bを用いても、色の濁りを抑制することができる。ここで、図19を参照しながら、この効果を具体的に説明する。図19は、入力画像において水平方向に沿って1画素単位で明るい赤、暗い赤が交互に繰り返される場合の、多原色表示パネル10における3画素分の表示を示している。
図17に示す信号変換回路20Bを用いる場合にも、純色度合に基づく調整が行われるので、図19に示すように、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeの輝度が本来よりも低くなるので、色の濁りを抑制することができる。ただし、この場合、赤サブ画素Rの輝度も本来より低下するので、表示される赤の輝度は多少低下する。
(信号変換回路の具体例3)
図20に、液晶表示装置100に用いることができるさらに他の信号変換回路20Cを示す。以下では、信号変換回路20Cが図17に示した信号変換回路20Bと異なる点を中心に説明を行う。
図17に示した信号変換回路20Bでは、純色度合判定部24には、低域多原色信号生成部21から出力された低域多原色信号が入力され、純色度合判定部24は、低域多原色信号に基づいて純色度合を判定する。つまり、純色度合判定部24は、低域多原色信号生成部21によって低域多原色信号が生成された後に、純色度合を判定する。
これに対し、図20に示す信号変換回路20Cでは、純色度合判定部24には、ローパスフィルタ21aによって抽出された入力画像信号の低域成分が入力され、純色度合判定部24は、入力画像信号の低域成分に基づいて純色度合を判定する。つまり、純色度合判定部24は、低域多原色信号生成部21によって低域多原色信号が生成される前に、純色度合を判定する。
このように、図20に示す信号変換回路20Cでは、純色度合の判定を、多原色変換が行われる前のデータに基づいて行う。多原色変換は非線形変換であるので、信号変換回路20Cでは、サブ画素単位での純色度合を正確に判定することはできないものの、入力画像信号(つまり3原色に対応したデータ)に基づいて最も簡易的に純色度合を判定することができる。
図20に示す信号変換回路20Cでも、サブ画素マッピングされる前の高域輝度信号に乗算するための高域ゲインを得る必要がある。そのような高域ゲインは、例えば図21に示す構成により得ることができる。
図21に示す構成では、まず、入力画像信号の低域成分のRGBデータから、比較器24aにより最も大きな値を有するデータと2番目に大きな値を有するデータとが取り出される。次に、最も大きな値を有するデータから、2番目に大きな値を有するデータを減算し、この結果を純色度合とする。
続いて、求めた純色度合は、純色度合と高域ゲインとの関係が格納されたゲインLUT24bに通され、これによって高域ゲインが得られる。ゲインLUT24bは、入力される純色度合が高くなるにつれ、出力される高域ゲインが小さくなるように作成されている。
(信号変換回路の具体例4)
図22に、液晶表示装置100に用いることができるさらに他の信号変換回路20Dを示す。以下では、信号変換回路20Dが図12に示した信号変換回路20Aと異なる点を中心に説明を行う。
図22に示す信号変換回路20Dは、図23に示すサブ画素配列の多原色表示パネル10と組み合わせて用いられる。図23に示すサブ画素配列では、各画素P内で、赤サブ画素(第1の赤サブ画素)R1、緑サブ画素G、青サブ画素B、さらなる赤サブ画素(第2の赤サブ画素)R2、黄サブ画素Yeおよびシアンサブ画素Cが水平方向に沿って(つまり1行6列に)配列されている。
図23に示すサブ画素配列(5色6サブ画素の配列)の場合、第1の赤サブ画素R1、緑サブ画素Gおよび青サブ画素Bによって構成される仮想画素と、第2の赤サブ画素R2、黄サブ画素Yeおよびシアンサブ画素Cによって構成される仮想画素のそれぞれによって独立して白黒表現を行うことができるので、図24に示すように、パネル解像度の2倍の輝度解像度表現が可能である。図24には、2つの仮想画素を用いた黒および白の高域表現が示されている。
図22に示す信号変換回路20Dでは、低域多原色信号生成部21によって生成される低域多原色信号は、赤、緑、青、シアン、黄の5つの原色(RGBCYe)に対応している。そのため、出力される多原色画像信号も、5つの原色(RGBCYe)に対応しており、この多原色画像信号により、水平方向(行方向)の画素数がmである多原色表示パネル10で、水平輝度解像度n(=2m)の表示(ただし水平色解像度はn/2)を行うことができる。
信号変換回路20Dにおいても、純色度合判定部24によって判定された純色度合に基づいて高域輝度信号の大きさが調整されるので、入力画像信号に対応した色が純色や純色に近い色であっても、色の濁り(白色化)が抑制される。
高域輝度信号のゲイン制御は、図12に示した信号変換回路20Aについて説明したのと同様にして行うことができる。ただし、信号変換回路20Dでは、第1の赤サブ画素R1、緑サブ画素G、青サブ画素B、第2の赤サブ画素R2、黄サブ画素Yeおよびシアンサブ画素Cの6つのサブ画素に対応するように、6つのテーブルが用いられる。
ここで、図25を参照しながら、純色度合に基づいて高域輝度信号の大きさが調整されることによる色の濁りの抑制効果を具体的に説明する。図25(a)および(b)は、入力画像において水平方向に沿って1画素単位で明るい緑、暗い緑が交互に繰り返される場合の、多原色表示パネル10における3画素分の表示を示している。図25(b)は、純色度合に基づいて高域輝度信号の大きさの調整が行われる場合を示し、図25(a)は、そのような調整が行われない場合を示している。
純色度合に基づく調整が行われない場合、つまり、特許文献2に開示されているような手法をそのまま用いる場合、図25(a)に示すように、暗い緑の高域成分に応じて第2の赤サブ画素R2、黄サブ画素Yeおよびシアンサブ画素Cが点灯し、それによって灰色が表示される。そのため、暗い緑が灰色に濁ってしまい、明るい緑、暗い緑の繰り返しとなるべきところが明るい緑、灰色の繰り返しになってしまう。
これに対し、純色度合に基づく調整が行われる場合、つまり、図22に示した信号変換回路20Dを用いる場合、図25(b)に示すように、第2の赤サブ画素R2、黄サブ画素Yeおよびシアンサブ画素Cの輝度が本来よりも低くなるので、色の濁りを抑制することができる。
(信号変換回路の具体例5)
図26に、液晶表示装置100に用いることができるさらに他の信号変換回路20Eを示す。以下では、信号変換回路20Eが図12に示した信号変換回路20Aと異なる点を中心に説明を行う。
図26に示す信号変換回路20Eは、図27に示すサブ画素配列の多原色表示パネル10と組み合わせて用いられる。図27に示すサブ画素配列では、各画素P内で、赤サブ画素R、シアンサブ画素C、青サブ画素B、黄サブ画素Ye、マゼンタサブ画素Mおよび緑サブ画素Gが水平方向に沿って(つまり1行6列に)配列されている。
図27に示すサブ画素配列(6色6サブ画素の配列)の場合、赤サブ画素Rおよびシアンサブ画素Cによって構成される仮想画素と、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeによって構成される仮想画素と、マゼンタサブ画素Mおよび緑サブ画素Gによって構成される仮想画素のそれぞれによって独立して白黒表現を行うことができるので、図28に示すように、パネル解像度の3倍の輝度解像度表現が可能である。図28には、3つの仮想画素を用いた黒および白の高域表現が示されている。
図26に示す信号変換回路20Eでは、低域多原色信号生成部21によって生成される低域多原色信号は、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、黄の6つの原色(RGBCMYe)に対応している。そのため、出力される多原色画像信号も、6つの原色(RGBCMYe)に対応しており、この多原色画像信号により、水平方向(行方向)の画素数がmである多原色表示パネル10で、水平輝度解像度n(=3m)の表示(ただし水平色解像度はn/3)を行うことができる。
信号変換回路20Eにおいても、純色度合判定部24によって判定された純色度合に基づいて高域輝度信号の大きさが調整されるので、入力画像信号に対応した色が純色や純色に近い色であっても、色の濁り(白色化)が抑制される。
高域輝度信号のゲイン制御は、図12に示した信号変換回路20Aについて説明したのと同様にして行うことができる。ただし、信号変換回路20Eでは、赤サブ画素R、シアンサブ画素C、青サブ画素B、黄サブ画素Ye、マゼンタサブ画素Mおよび緑サブ画素Gの6つのサブ画素に対応するように、6つのテーブルが用いられる。
ここで、図29を参照しながら、純色度合に基づいて高域輝度信号の大きさが調整されることによる色の濁りの抑制効果を具体的に説明する。図29(a)および(b)は、入力画像において水平方向に沿って1画素単位で明るい緑、暗い緑が交互に繰り返される場合の、多原色表示パネル10における3画素分の表示を示している。図29(b)は、純色度合に基づいて高域輝度信号の大きさの調整が行われる場合を示し、図29(a)は、そのような調整が行われない場合を示している。
純色度合に基づく調整が行われない場合、つまり、特許文献2に開示されているような手法をそのまま用いる場合、図29(a)に示すように、明るい緑および暗い緑の高域成分に応じて赤サブ画素R、シアンサブ画素C、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeが点灯し、それによって明るい灰色や暗い灰色が表示される。そのため、明るい緑や暗い緑が灰色に濁ってしまい、明るい緑、暗い緑の繰り返しとなるべきところが明るい灰色、暗い灰色、明るい緑、暗い灰色、明るい灰色、暗い緑の繰り返しになってしまう。
これに対し、純色度合に基づく調整が行われる場合、つまり、図26に示した信号変換回路20Eを用いる場合、図29(b)に示すように、赤サブ画素R、シアンサブ画素C、青サブ画素Bおよび黄サブ画素Yeの輝度が本来よりも低くなるので、色の濁りを抑制することができる。
上述した信号変換回路20A〜20Eでは、いずれも純色度合を指標として、少なくとも一部のサブ画素の高域輝度信号の大きさを低減させている。入力画像信号に対応する色の純色度合が1(例えば10ビット表記でR=1023、G=B=Ye=0)である場合、信号変換回路20A〜20Eを用いると、その純色に対応するサブ画素以外のサブ画素は点灯しない。これに対し、特許文献2に開示されているようなアルゴリズムを用いると、その純色に対応するサブ画素以外のサブ画素も点灯してしまう。