以下に、実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
<スピンドル装置の構成>
図1から図3を参照して、実施形態に係るスピンドル装置100の構成を説明する。図1に示すように、スピンドル装置100は、回転軸1(スピンドル)と、ハウジング2とを備える。
回転軸1は、軸部と、スラスト板部とを含む。以下、回転軸1の軸部およびスラスト板部の中心軸の延在方向をスラスト方向とよび、回転軸1の当該中心軸に対する径方向をラジアル方向とよぶ。回転軸1の軸部の中心軸は、スラスト板部の中心軸と同軸上に配置されている。回転軸1は、後述するハウジング2によって、当該中心軸を中心とする周方向に回転可能に支持されている。
回転軸1の軸部は、第1部分1a、第2部分1bおよび第3部分1cを有している。回転軸1の軸部は、円筒形状を有している。スラスト方向において、第1部分1aは第2部分1bと間隔を隔てて配置されている。第2部分1bは、第1部分1aよりも、カップ40(図5参照)が取り付けられる回転軸1の端部の近くに配置されている。以下、スピンドル装置100においてカップが取り付けられるスラスト方向の一方側を前側、他方側を後側とよぶ。
第1部分1aと第2部分1bとの間には、第3部分1cが配置されている。第3部分1cのスラスト方向の長さは、例えば第1部分1aおよび第2部分1bのスラスト方向の各長さよりも短い。
回転軸1の第3部分1cの外周面には、1つ以上の開口部1dが設けられている。1つ以上の開口部1dは、複数の開口部1dであってもよい。複数の開口部1dは、回転軸1の回転方向、すなわち上記周方向に対向する内壁面を有している。複数の開口部1dは、上記周方向において互いに間隔を隔てて配置されている。スラスト方向に垂直な断面において、1つの開口部1dの上記周方向の一端と他端とが回転軸1の中心軸に対して成す角度(中心角)は、360度未満であり、好ましくは90度以下であり、より好ましくは45度以下である。回転軸1を構成する材料は、例えば鉄(Fe)を含む。好ましくは、回転軸1を構成する材料は、比較的高強度な材料であり、例えば、マルテンサイト系ステンレスまたは炭素鋼である。強度は、例えば曲げ強度または硬度などにより評価され得る。回転軸1において少なくとも複数の開口部1dが面している部分を構成する材料は、焼入れ鋼である。言い換えると、回転軸1において少なくとも複数の開口部1dが面している部分には、焼入れ処理が施されていることが好ましい。
回転軸1において、スラスト板部は、軸部よりも後側に配置されている。第1部分1aは、第2部分1bよりもスラスト板部の近くに配置されている。スラスト板部は、軸部よりもラジアル方向に突出している。軸部とスラスト板部とは、一体として設けられてもよいし、別体として設けられてもよい。
スラスト板部には、複数の回転翼1eが設けられている。複数の回転翼1eは、例えばスラスト板部において軸部側に位置する面上に設けられている。複数の回転翼1eの各々は、上記周方向に互いに間隔を隔てて配置されている。
回転軸1には、貫通孔1fが設けられている。貫通孔1fは、スラスト方向に回転軸1を貫通している。貫通孔1fの孔軸は、スラスト方向に沿って延びている。
ハウジング2は、第1軸受スリーブ3および第2軸受スリーブ4と、第1ハウジングアッシ5および第2ハウジングアッシ6と、第1カバー7および第2カバー8と、ロック部9と、保持部10と、第3軸受スリーブ11と、ノズル板12とを含む。ハウジング2の内部には、回転軸1を駆動するための回転駆動用気体の流通路13、回転軸1を回転可能に支持する静圧気体軸受を形成するために加圧された軸受用気体の流通路14,15、およびロック部9を駆動するためのロック部駆動用気体の流通路16が設けられている。
第1軸受スリーブ3には、貫通孔3aが設けられている。貫通孔3aは、スラスト方向に第1軸受スリーブ3を貫通している。貫通孔3aの孔軸は、スラスト方向に沿って延びている。貫通孔3aの孔軸は、回転軸1の中心軸と同軸上に配置されている。スラスト方向に垂直な断面において、貫通孔3aの形状は円形である。貫通孔3aの内部に、回転軸1の第1部分1aが配置されている。貫通孔3aの内周面と、回転軸1の第1部分1aの外周面との間には、第1軸受隙間が設けられている。さらに、第1軸受スリーブ3の後側に向いた面と、回転軸1のスラスト板部の前側に向いた面との間には、第3軸受隙間が設けられている。
第1軸受スリーブ3には、第1軸受隙間および第3軸受隙間に連なる流通路14の一部が設けられている。流通路14において第1軸受スリーブ3内に位置する部分の一端は、第1軸受隙間または第3軸受隙間に連なるように配置されており、他端は第1軸受スリーブ3のラジアル方向の外周面に配置されている。
第2軸受スリーブ4は、第1軸受スリーブ3と、スラスト方向において間隔を隔てて配置されている。第2軸受スリーブ4には、貫通孔4aが設けられている。貫通孔4aは、スラスト方向に第2軸受スリーブ4を貫通している。貫通孔4aの孔軸は、スラスト方向に沿って延びている。貫通孔4aの孔軸は、貫通孔3aの孔軸と同軸上に配置されている。スラスト方向に垂直な断面において、貫通孔4aの形状は円形である。貫通孔4aの内部に、回転軸1の第2部分1bが配置されている。貫通孔4aの内周面と、回転軸1の第1部分1aの外周面との間には、第2軸受隙間が設けられている。
第2軸受スリーブ4には、第2軸受隙間に連なる流通路14の一部が設けられている。流通路14において第2軸受スリーブ4内に位置する部分の一端は、第2軸受隙間に連なるように配置されており、他端は第2軸受スリーブ4のラジアル方向の外周面に配置されている。
第1ハウジングアッシ5には、貫通孔5aが設けられている。貫通孔5aは、スラスト方向に第1ハウジングアッシ5を貫通している。貫通孔5aの孔軸は、スラスト方向に沿って延びている。貫通孔5aの孔軸は、例えば回転軸1の中心軸と同軸上に配置されている。貫通孔5aの内周面は、第1軸受スリーブ3の外周面に対向するように配置されている。つまり、貫通孔5aの内部に、第1軸受スリーブ3が配置されている。
第1ハウジングアッシ5の後側に位置する部分は、第1ハウジングアッシ5の前側に位置する部分よりも、ラジアル方向に突出している。第1ハウジングアッシ5の後側に位置する部分は、スラスト方向において、回転軸1の複数の回転翼1eと対向している。
第1ハウジングアッシ5の後側に位置する部分には、流通路13の一部が設けられている。第1ハウジングアッシ5の前側に位置する部分には、流通路14の一部が設けられている。第1ハウジングアッシ5に設けられた流通路14の一部は、第1軸受スリーブ3に設けられた流通路14の一部を介して第1軸受隙間および第3軸受隙間に接続されている。
第2ハウジングアッシ6は、第1ハウジングアッシ5と、スラスト方向において間隔を隔てて配置されている。第2ハウジングアッシ6には、貫通孔6aが設けられている。貫通孔6aは、スラスト方向に第2ハウジングアッシ6を貫通している。貫通孔6aの孔軸は、スラスト方向に沿って延びている。貫通孔6aの孔軸は、貫通孔5aの孔軸と同軸上に配置されている。貫通孔6aの内周面は、第2軸受スリーブ4の外周面に対向するように配置されている。つまり、貫通孔6aの内部に、第2軸受スリーブ4が配置されている。
第2ハウジングアッシ6には、流通路14の一部が設けられている。第2ハウジングアッシ6に設けられた流通路14の一部は、第2軸受スリーブ4に設けられた流通路14の一部を介して第2軸受隙間に接続されている。
第1カバー7には、貫通孔7aが設けられている。貫通孔7aは、スラスト方向に第1カバー7を貫通している。貫通孔7aの孔軸は、スラスト方向に沿って延びている。貫通孔7aの孔軸は、例えば回転軸1の中心軸と同軸上に配置されている。貫通孔7aの内周面は、第1ハウジングアッシ5の外周面に対向するように配置されている。つまり、貫通孔7aの内部に、第1ハウジングアッシ5が配置されている。
第1カバー7には、流通路13の一部が設けられている。さらに、第1カバー7には、流通路14の一部が設けられている。第1カバー7に設けられた流通路14の一部は、ラジアル方向の内周側において1つの流通路が2つの流通路に分岐されている分岐部を含んでいる。流通路14において第1カバー7の内部で分岐された一方の流通路は、第1軸受スリーブ3および第1ハウジングアッシ5に設けられた流通路14の各一部を介して第1軸受隙間および第3軸受隙間に接続されている。流通路14において第1カバー7の内部で分岐された他方の流通路は、保持部10、第2軸受スリーブ4および第2ハウジングアッシ6に設けられた流通路14の各一部を介して第2軸受隙間に接続されている。
第1カバー7のスラスト方向の前側に位置する面上には、スラスト方向に垂直な方向、すなわちラジアル方向および周方向において、後述する保持部10との相対的な位置を保持するための位置決め部が設けられてもよい。例えば、第1カバー7のスラスト方向の前側に位置する面上に、当該面よりも前側に突出している複数の凸部が設けられてもよい。
第2カバー8は、第1カバー7と、スラスト方向において間隔を隔てて配置されている。第2カバー8には、貫通孔8aが設けられている。貫通孔8aは、スラスト方向に第2カバー8を貫通している。貫通孔8aの孔軸は、スラスト方向に沿って延びている。貫通孔8aの孔軸は、貫通孔7aの孔軸と同軸上に配置されている。貫通孔8aの内周面は、第2ハウジングアッシ6の外周面に対向するように配置されている。つまり、貫通孔8aの内部に、第2ハウジングアッシ6が配置されている。
第2カバー8には、流通路14の一部が設けられている。第2カバー8に設けられた流通路14の一部は、第2軸受スリーブ4および第2ハウジングアッシ6に設けられた流通路14の各一部を介して第2軸受隙間に接続されている。
第2カバー8のスラスト方向の後側に位置する面上には、スラスト方向に垂直な方向、すなわちラジアル方向および周方向において、後述する保持部10との相対的な位置を保持するための位置決め部が設けられてもよい。例えば、第2カバー8のスラスト方向の後側に位置する面上に、当該面よりも後側に突出している複数の凸部が設けられてもよい。
ロック部9は、スラスト方向において、第1軸受スリーブ3と第2軸受スリーブ4との間、第1ハウジングアッシ5と第2ハウジングアッシ6との間、および第1カバー7と第2カバー8との間に配置されている。
図1および図3に示されるように、ロック部9は、ピン9a、弾性部材9b、メンテナンスタップ9c、および蓋部9dを有している。ロック部9は、後述する保持部10の貫通孔10bの内部に配置されている。
固定部材であるピン9aは、軸部と、フランジ部とを含む。ピン9aの軸部およびフランジ部の各中心軸は、ラジアル方向に沿って延在している。ピン9aの軸部の中心軸は、フランジ部の中心軸と同軸上に配置されている。ピン9aにおいて、フランジ部は、ラジアル方向の外周側の軸部の端部に接続されている。ピン9aのフランジ部は、ピン9aの軸部よりも該中心軸に対して外側に突出している。ラジアル方向に垂直な断面において、ピン9aのフランジ部の最大幅は、ピン9aの軸部の最大幅よりも大きい。
ピン9aの軸部の少なくとも一部は、複数の開口部1dの内部に配置され得る。つまり、ピン9aの軸部の上記周方向の幅は複数の開口部1dの上記周方向の幅以下であり、ピン9aの軸部の上記スラスト方向の幅は複数の開口部1dの上記スラスト方向の幅以下である。ピン9の軸部の上記中心軸の延在方向に垂直な断面形状は、例えば円形状である。ピン9を構成する材料は、例えば鉄(Fe)を含む。好ましくは、ピン9を構成する材料は、比較的高強度な材料であり、例えば焼入れ鋼である。強度は、例えば曲げ強度または硬度などにより評価され得る。
弾性部材9bは、一端および他端を有し、その一端と他端との間の距離の変化に応じた弾性力を生じ得る。弾性部材9bは、例えばバネである。弾性部材9bの一端は、後述する保持部10に接続されており、保持部10によってラジアル方向の内周側への移動が制限されている。弾性部材9bの他端は、ピン9aのフランジ部と接続されている。これにより、弾性部材9bは、ピン9aに対して、ラジアル方向の外周側に向けてピン9aを付勢する弾性力を付与可能である。
ラジアル方向の外周側のピン9aの端部には、ラジアル方向に沿った孔軸を有するネジ孔9e(図3参照)が設けられている。ピン9aのフランジ部には、例えばメンテナンスタップ9cが設けられている。ネジ孔9eは、メンテナンスタップ9cに形成されている。
蓋部9dは、ピン9a、弾性部材9bおよびメンテナンスタップ9cよりも、ラジアル方向の外周側に配置されている。蓋部9dは、ピン9aのラジアル方向の外周側への移動を制限し、かつ流通路16の一部を構成し得る限りにおいて、任意の構成を備えていればよい。例えば、蓋部9dは、ラジアル方向に貫通している貫通孔が設けられている。これにより、ピン9aのラジアル方向の外周側への移動は、蓋部9dによって制限されている。また、蓋部9dの貫通孔は、ピン9aの外周側に、ロック部9を駆動するためのロック部駆動用気体が流通され得る空間10g(流通路16の一部)を形成している。空間10gに供給されたロック部駆動用気体は、ピン9aに対してラジアル方向の内側に向かう力を付与し得る。
ロック部9は、ピン9aが開口部1dの外部に配置されている第1状態と、ピンが開口部1dの内部に配置されている第2状態とを切替可能に設けられている。第1状態と第2状態との切替は、保持部10の内部においてピン9aの外周側に配置されている空間10gへの気体の供給の有無により、制御される。第1状態では、ピン9aは後述する保持部10の貫通孔10bの内部に収容されており、保持部10の貫通孔10aの内周面よりも内側に突出していない。第1状態では、ピン9aの先端部は、例えば貫通孔10bの内周部分の内部に配置されている。第2状態では、ピン9aは保持部10の貫通孔10aの内周面よりも内側に突出している。第2状態では、蓋部9dの貫通孔内に供給された気体の圧力により、ピン9aに対しラジアル方向の外側から内側に向いた力が付与されている。第2状態での弾性部材9bは、第1状態での弾性部材9bよりも圧縮され、付勢されている。
ロック部9は、保持部10に保持されている。保持部10は、第1軸受スリーブ3と第2軸受スリーブ4との間、第1ハウジングアッシ5と第2ハウジングアッシ6との間、および第1カバー7と第2カバー8との間に配置されている。
図1および図2に示されるように、保持部10には、貫通孔10aが設けられている。貫通孔10aは、スラスト方向に保持部10を貫通している。貫通孔10aの孔軸は、スラスト方向に沿って延びている。貫通孔10aの孔軸は、例えば回転軸1の中心軸と同軸上に配置されている。貫通孔10aの内周面は、回転軸1の第3部分1cの外周面と、ラジアル方向に間隔を隔てて対向して配置されている。つまり、貫通孔10aの内部に回転軸1の第3部分1cが配置されており、かつ貫通孔10aの内周面と回転軸1の第3部分1cの外周面との間には上記周方向に連なる隙間が設けられている。
図1から図3に示されるように、保持部10には、貫通孔10bがさらに設けられている。貫通孔10bは、ラジアル方向に保持部10を貫通している。貫通孔10bの一端は貫通孔10aの内周面上に開口しており、貫通孔10bの他端は保持部10の外周面上に開口している。
図1および図2に示されるように、貫通孔10bは、ラジアル方向の内側に位置する内周部分の孔径がラジアル方向の外側に位置する外周部分の孔径よりも小さくなるように設けられている。貫通孔10bの内周部分の孔径は、ピン9aの軸部の外径よりも大きいが、ピン9aのフランジ部の外径および弾性部材9bの外径よりも小さい。ロック部9は、貫通孔10bの上記外周部分の内部に配置されているが、ピン9aの軸部のみが貫通孔10bの上記内周部分の内部に移動可能である。これにより、ロック部9のラジアル方向の内周側への移動は、保持部10によって制限されている。
貫通孔10bの上記内周部分の孔径は、回転軸1の複数の開口部1dの各々の上記周方向の長さよりも小さくてもよい。貫通孔10bの上記内周部分の孔径は、回転軸1の複数の開口部1dの各々の上記周方向の長さ以上であってもよい。
図1から図3に示されるように、保持部10の貫通孔10bの上記他端は、蓋部9dにより縮径されている。蓋部9dは、例えば貫通孔10bに着脱可能に固定されている。蓋部9dは、例えば貫通孔10bに嵌め合されている。
図1から図3に示されるように、保持部10には、貫通孔10cがさらに設けられている。貫通孔10cは、ラジアル方向に保持部10を貫通している。貫通孔10cの一端は貫通孔10aの内周面上に開口しており、貫通孔10cの他端は保持部10の外周面上に開口している。貫通孔10cは、保持部10の内部において貫通孔10bと接続されていない。貫通孔10cは、貫通孔10aの内周面と回転軸1の第3部分1cの外周面との間に設けられた上記隙間を介して貫通孔10bに連通している。貫通孔10cは、上記周方向において、貫通孔10bと間隔を隔てて配置されている。貫通孔10cの孔径は、例えば貫通孔10bの上記外周部分の孔径よりも小さい。
図3に示されるように、保持部10には、貫通孔10dがさらに設けられている。貫通孔10dは、スラスト方向に保持部10を貫通している。貫通孔10dの一端は、第1カバー7の前側に位置する面と対向する、保持部10の後側に位置する面上に開口している。貫通孔10dの一端は、第2カバー8の後側に位置する面と対向する、保持部10の前側に位置する面上に開口している。貫通孔10dは、保持部10の内部において貫通孔10a,10b,10cと接続されていない。
保持部10には、流通路14の一部が設けられている。保持部10内に設けられた流通路14の一部は、貫通孔10dにより構成されている。さらに、保持部10には、流通路16の一部が設けられている。保持部10内に設けられた流通路16の一部は、貫通孔10bおよび貫通孔10cにより構成されている。
保持部10のスラスト方向の両端面には、スラスト方向に垂直な方向、すなわちラジアル方向および周方向において、第1カバー7または第2カバー8との相対的な位置を保持するための位置決め部が設けられてもよい。例えば、図2に示されるように、保持部10の前側に位置する面上に、当該面に対して凹んでいる複数の凹部10eが設けられてもよい。複数の凹部10eは、第2カバー8の上記複数の凸部と嵌合可能に設けられてもよい。保持部10の後側に位置する面上に、当該面に対して凹んでいる複数の凹部が設けられてもよい。当該複数の凹部は、第1カバー7の上記複数の凸部の各々と嵌合可能に設けられてもよい。
第3軸受スリーブ11には、貫通孔11aが設けられ、貫通孔11aは、スラスト方向に第3軸受スリーブ11を貫通している。貫通孔11aの孔軸は、スラスト方向に沿って延びている。貫通孔11aの孔軸は、回転軸1の中心軸および貫通孔3aの孔軸と同軸上に配置されている。第3軸受スリーブ11の前側の面は、回転軸1のスラスト板部の後側の面と対向するように配置されている。第3軸受スリーブ11の前側の面と、回転軸1のスラスト板部の後側の面との間には、第4軸受隙間が設けられている。第3軸受スリーブ11には、流通路15の一部が設けられている。
ノズル板12は、スラスト方向において、回転軸1のスラスト板部の後側に向いた面と対向する、前側に向いた面12aを有している。さらに、ノズル板12には、前側に向いた面12aに開口している貫通孔12bが設けられている。貫通孔12bは、スラスト方向にノズル板12を貫通している。貫通孔12bの孔軸は、スラスト方向に沿って延びている。貫通孔12bの孔軸は、回転軸1の中心軸および貫通孔3aの孔軸と同軸上に配置されている。貫通孔12bの前側部分の孔径は、回転軸1のスラスト板部の外径よりも小さい。貫通孔12bの前側部分の内周面は、第3軸受スリーブ11の外周面と対向するように配置されている。貫通孔12bの前側部分の内部に、第3軸受スリーブ11が配置されている。ノズル板12には、流通路15の一部が設けられている。ノズル板12に設けられた流通路15の一部は、第3軸受スリーブ11に設けられた流通路15の一部を介して第4軸受隙間に接続されている。
ノズル板12は、前側に向いた面12aよりもスラスト方向の前側に突出している凸部をさらに有している。ノズル板12の当該凸部の前側の面は、スラスト方向において第1カバー7の後側の面と対向するように配置されている。ノズル板12の上記凸部には、流通路13の一部が設けられている。
ノズル板12には、回転センサ挿入口12cが設けられている。回転センサ挿入口12cは、スラスト方向にノズル板12を貫通している。
流通路13の給気口は、ノズル板12の後側に位置する面に設けられている。流通路13の排気口は、第1カバー7の外周面に設けられている。流通路14の給気口は、例えば第1カバー7の外周面に設けられている。流通路14において、第1軸受隙間および第3軸受隙間と連なる部分と、第2軸受隙間と連なる部分とは、例えば第1カバー7の内部で接続されている。具体的には、流通路14において第2軸受隙間と連なる部分は、第2カバー8および保持部10の内部を通って、第1カバー7の内部に設けられている流通路14において第1軸受隙間および第3軸受隙間と連なる部分に接続されている。流通路15の給気口は、ノズル板12の後側に位置する面に設けられている。流通路15の給気口および排気口は、保持部10の外周面に設けられている。流通路16の給気口および排気口は、保持部10の外周面に設けられている。流通路16の給気口は、保持部10の貫通孔10bであり、流通路16の排気口は、保持部10の貫通孔10cである。
ハウジング2は、流通路14を経て第1軸受隙間および第2軸受隙間に供給される気体の静圧により、回転軸1をラジアル方向に非接触で支持可能である。つまり、第1軸受スリーブ3および第2軸受スリーブ4は、ジャーナル軸受を構成し得る。
さらに、ハウジング2は、流通路14を経て第3軸受隙間に供給される気体の静圧、および流通路15を経て第4軸受隙間に供給される気体の静圧により、回転軸1をスラスト方向に非接触で支持可能である。つまり、第1軸受スリーブ3および第3軸受スリーブ11は、スラスト軸受を構成し得る。
流通路16は、例えば複数のOリング19(図1参照)により流通路13,流通路14,および流通路15と分離されている。1つのOリング19は、第1ハウジングアッシ5の外周面と第1カバー7の貫通孔7aの内周面との間に配置されている。1つのOリング19は、流通路13および流通路14において第1カバー7の内部の上記分岐部と第1軸受隙間および第3軸受隙間との間の流通路よりも前側に配置されている。別のOリング19は、第2ハウジングアッシ6の外周面と第2カバー8の貫通孔8aの内周面との間に配置されている。別のOリング19は、流通路14において第1カバー7の内部の上記分岐部と第2軸受隙間との間の流通路よりも後側に配置されている。
<塗装装置の構成>
図4は、実施形態に係る塗装装置200において、スピンドル装置100が取り付けられるスピンドルホルダ41を示す断面図である。図5は、実施形態に係る塗装装置200において、カップ40が取り付けられたスピンドル装置100を示す断面図である。塗装装置200は、スピンドル装置100と、カップ40と、スピンドルホルダ41とを備えている。
カップ40は、回転軸1の前端部に取り付けられている。スピンドルホルダ41には、スピンドル装置100のハウジング2の少なくとも一部が挿入され得る受入部41aが設けられている。受入部41aのラジアル方向に内側に向いた面は、第1カバー7および保持部10の外周面と、第2カバー8の外周面の一部と接触可能に設けられている。
スピンドルホルダ41には、スピンドル装置100の流通路13に回転駆動用気体を供給するためのタービン気体給気口42と、流通路13から回転駆動用気体を排気するためのタービン気体排気口43と、流通路14に軸受用気体を供給するための軸受気体給気口44と、流通路15に軸受用気体を供給するための軸受気体給気口45と、流通路16にロック部駆動用気体を供給するためのロック気体給気口46と、貫通孔10cからロック部駆動用気体を排気するためのロック気体排気口47と、塗料を供給するための塗料供給口48と、回転センサを挿入するための挿入口49とが設けられている。
塗料供給口48には、塗料噴射ノズル50が取り付けられている。塗料噴射ノズル50は、スピンドル装置100がスピンドルホルダ41に取り付けられた状態で回転軸1の貫通孔1f内に挿通されて、その先端部がカップ40内に配置される。挿入口49には、回転センサ51が挿入されている。
<スピンドル装置および塗装装置の動作>
スピンドルホルダ41のタービン気体給気口42から流通路13内に駆動用気体が供給されることにより、回転軸1およびカップ40は上記周方向に回転する。このとき、軸受気体給気口44,45から流通路14,15内に軸受用気体が供給されることにより、回転軸1は、ハウジング2により非接触で回転可能に支持される。
塗料供給口48から塗料噴射ノズル50を経てカップ40内に塗料が供給されると、該塗料はカップ40の回転による遠心力でカップ40の外側に拡がり、カップ40から離れるときに噴霧化する。噴霧化された塗料が被塗装面に着くことにより、塗装装置200を用いた塗装が行われる。
このとき、スピンドル装置100の流通路16には、ロック部駆動用気体は供給されておらず、ロック部9は、ピン9aが開口部1dの外部に配置されている第1状態とされている。
塗装終了後にカップ40の洗浄作業や交換作業等を行う際には、ロック部9は第1状態から第2状態とされ、回転軸1がロックされる。具体的には、スピンドルホルダ41のロック気体給気口46から流通路16内にロック部駆動用気体が供給される。ロック部駆動用気体は、例えば圧縮空気である。ロック部駆動用気体は、蓋部9dの貫通孔を経てピン9aのフランジ部に達し、ピン9aをラジアル方向の内側に向けて押圧する。ピン9aには、ロック部駆動用気体により、弾性部材9bがピン9aに付与している弾性力を超える圧力が付与される。これにより、ピン9aは回転軸1の第3部分1cに設けられた複数の開口部1dのいずれかに挿入され、ロック部9は第1状態から第2状態に切り替えられる。ロック部駆動用気体が流通路16に供給され続けることにより、ロック部9は該第2状態に維持される。
カップ40の交換作業終了後、ロック部駆動用気体の流通路16への供給が停止される。これにより、ピン9aは弾性部材9bによりラジアル方向の外側に押圧され、ロック部9は第2状態から第1状態に切り替えられる。
流通路16へのロック部駆動用気体の供給は、スピンドルホルダ41の外部に配置された図示しない電磁弁により、制御され得る。ロック部9は、電磁弁が閉止されることにより第1状態とされ、電磁弁が開放されることにより第2状態とされ得る。
<作用効果>
スピンドル装置100は、ハウジング2と、ハウジング2の内部に配置され、かつ第1部分1aと、第2部分1bと、スラスト方向において第1部分1aと第2部分1bとの間に位置する第3部分1cとを含む回転軸1とを備える。回転軸1の第3部分1cの外周面には、1つ以上の開口部1dが配置されている。1つ以上の開口部1dは、回転軸1の回転方向において対向する1対の内壁を有している。ハウジング2は、ラジアル方向において第1部分1aに面しており、回転軸1を軸支している第1ジャーナル軸受部と、ラジアル方向において第2部分1bに面しており、回転軸1を軸支している第2ジャーナル軸受部と、スラスト方向において第1ジャーナル軸受部と第2ジャーナル軸受部との間に配置されている1つのロック部9とを含む。ロック部9は、1つ以上の開口部1dのいずれかの内部に配置され得る固定部材としてのピン9aを有し、ピン9aが1つ以上開口部1dの外部に配置されている第1状態と、ピン9aが1つ以上の開口部1dの内部に配置されている第2状態とを切替可能に設けられている。
スピンドル装置100によれば、ハウジング2に含まれたロック部9によりスピンドル(回転軸1)の回転をロックし得る。そのため、スピンドル装置100は、スピンドルロック装置を設置するために必要なスペースを外部に確保することが困難である静電塗装用等のスピンドル装置に好適である。
さらに、スピンドル装置100によれば、ピン9aが回転軸1の近くに配置され得るため、ピン9aのラジアル方向の長さが短くされ得る。ラジアル方向の長さが短くされたピン9aは、例えば曲げに対して高強度を有する。
スピンドル装置100において、ハウジング2は、ロック部9を保持している保持部10とをさらに含む。スピンドル装置100によれば、保持部10を交換することによって、ロック部9は容易に交換され得る。特に、ハウジング2が複数のロック部9を含む場合には、複数のロック部9は、保持部10が交換されることによって、まとめて交換され得る。
スピンドル装置100において、ロック部9は、ピン9aが気体の圧力を受けることにより、第1状態から第2状態に切り替え可能に設けられている。
スピンドル装置100の製造コストは、ロック部が電磁的に制御可能に設けられている比較例のスピンドル装置の製造コストよりも低い。さらに、スピンドル装置100は、ロック部が電磁的に制御可能に設けられている比較例のスピンドル装置と比べて、静電塗装用スピンドル装置に好適である。なぜなら、静電塗装用スピンドル装置では、その内部を通される塗料には数万ボルトの高電圧が印加されており、スピンドル装置100は、静電塗装用スピンドル装置の内部での放電を防止し得るからである。
スピンドル装置100において、ロック部9は、ピン9aに対し、ラジアル方向に弾性力を付与する弾性部材9bをさらに有している。弾性部材9bにより第1状態が保持されている。
スピンドル装置100では、第1状態が弾性力のみによって保持され得る。そのため、スピンドル装置100は、第1状態が気体の圧力や電磁力によって保持されるスピンドル装置と比べて、より安定して第1状態を保持し得る。
スピンドル装置100において、ピン9aのラジアル方向の外周端部には、ラジアル方向に沿った孔軸を有するネジ孔9eが設けられている。
スピンドル装置100では、例えばピン9aが変形したことによって回転軸1の1つ以上の開口部1dから取り外せなくなった場合に、ネジ孔9eに接続させたボルトをラジアル方向の外周側に引き出すことにより、第2状態から第1状態に切り替えることができる。
スピンドル装置100において、回転軸1を構成する材料およびピン9aを構成する材料の少なくともいずれかは、焼入れ鋼を含む。スピンドル装置100では、回転軸1およびピン9aの少なくともいずれかが高強度とされている。そのため、回転軸1およびピン9aの少なくともいずれかに対する傷の発生や変形が抑制され得る。
<変形例>
スピンドル装置100において、ハウジング2は1つのロック部9のみを含んでいるが、これに限られない。図6から図9に示されるように、ハウジング2は、複数のロック部9を含んでもよい。保持部10には、複数の貫通孔10bが設けられており、各貫通孔10bの内部に各ロック部9が収納されている。スピンドル装置100では、回転駆動用気体の回転軸1への供給が停止された後にも、回転軸1が惰性回転し得る。また、回転軸1の上記惰性回転が収まった後にも、静圧気体軸受に供給される気体や、いわゆるシェービングエアの作用により、回転軸1が回転し続けることがある。これらの場合、回転軸1が回転し続けている状態で回転軸1をロックする必要があるため、各ロック部9には負荷がかかる。ハウジング2が複数のロック部9を含むスピンドル装置では、第1状態から第2状態とされるときの各ロック部9への負荷が、1つのロック部9のみを備える場合と比べて、低減され得る。ロック部9の数が多いほど、1つのロック部9にかかる負荷は低減され得る。
例えば、図6に示されるように、ハウジング2は2つのロック部9を含んでもよい。2つのロック部9は、例えば回転軸1の中心軸を中心として180度の回転対称性を有してもよい。
図7に示されるように、ハウジング2は4つのロック部9を含んでもよい。4つのロック部9は、例えば回転軸1の中心軸を中心として90度の回転対称性を有してもよい。図7に示されるように、例えば回転軸1の開口部1dは、回転軸1の中心軸を中心として60度の回転対称性を有してもよい。図7に示されるように、複数の開口部1dの回転対称性と複数のロック部9の回転対称性とが同一でない場合には、ロック部9の少なくとも一部が開口部1dの内部に配置されることにより、第1状態から第2状態に切り替えられ得る。例えば上記中心軸を挟んでラジアル方向に対向配置された2対のロック部9のうち、1対のロック部9のみが開口部1dの内部に配置されてもよい。
図8に示されるように、例えば複数のロック部9の回転対称性が複数の開口部1dの回転対称性と同一である場合には、第1状態から第2状態に切り替えられる際に、全てのロック部9が開口部1dの内部に配置され得る。この場合、保持部10は図9に示されるような構成を備えていればよい。保持部10には、複数のロック部9の各々を収納するための複数の貫通孔10bが設けられている。
スピンドル装置100では、ロック部駆動用気体は回転軸駆動用気体の一部あるが、これに限られない。ロック部駆動用気体は、例えば軸受用気体の一部であってもよい。
スピンドル装置100では、第1軸受スリーブ3および第2軸受スリーブ4には、1つの流通路14から分岐された流通路を介して軸受用気体が供給されているが、これに限られない。第1軸受スリーブ3に軸受用気体を供給するための流通路と、第2軸受スリーブ4に軸受用気体を供給するための流通路とは、互いに独立して構成されてもよい。
スピンドル装置100では、第1ジャーナル軸受と第2ジャーナル軸受との間に、軸受として構成されていない部分が配置されており、該部分にロック部が配置されている限りにおいて、任意の構成を備え得る。例えば、保持部10は、第1軸受スリーブ3および第2軸受スリーブ4と一体として設けられてもよい。
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。