《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態等に係る造形物製造装置40の構成例を示す図である。図2は第1の実施形態等に係る造形物製造方法のフローチャートの例である。以下、図1及び図2を参照して、造形物製造装置40の構成及び動作の例を説明する。造形物製造装置40は、例えば溝加工部41・充填材料調合部42・充填加工部43・被覆加工部44を具える。第1の実施形態に係る造形物製造方法は、例えば溝加工工程S41・充填材料調合工程S42・充填加工工程S43・被覆加工工程S44を含む。各部又は各工程の順序が変更されてもよい。各部又は各工程が他の各部又は各工程を含んでもよい。各部又は各工程の一部が繰り返されてもよく、省略されてもよい。洗浄・研磨等の既知の他の部工程が適宜追加されてもよい。
溝加工部41は材料板20等を取得し、レーザ加工部411又は切削加工・金型加工・射出成形・ウォーターカット・3Dプリンティング等既知の加工を行う装置により材料板20に溝部Gを形成する(S41)。溝部Gは、材料板20の表面部F又はそれと対向する裏面部Rの少なくとも一方の側に開口部Oを有してもよい。充填材料調合部42は充填材料21を取得し、計量・混合攪拌する(S42)。充填材料21は既製品でもよい。充填加工部43は溝部Gに充填材料21を充填する(S43)。充填加工部43は、例えば材料板20の溝部G以外の部分に付着した不要な充填材料21を拭き取ったり、溝部G以外の部分を覆ったりすることで、充填材料21が開口部Oからはみ出さないようにすることができる。溝部G内の充填材料21が硬化し充填部Lとなる。被覆加工部44は、別の材料板20を溝部Gの開口部O側に図3bのように接合して被覆部Tとし、溝部Gを密封してもよい(S44)。被覆部Tを有する造形物Zの表面部F及び裏面部Rは、被覆部T接着後の外側の露出面である。
材料板20は、加工後の造形物Zで基材部M等となる。材料板20は特に制限されないが、ABS・セルロースアセテート・エポキシ(EP)・メラミン・ポリアミド・ポリカーボネート(PC)・フェノール・ポリエチレン(PE)・ポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリイミド・PLA・アクリル(PMMA)・ポリオレフィン・ポリプロピレン(PP)・ポリスチレン(PS)・ポリウレタン(PU)・ポリ塩化ビニル(PVC)・シリコーン(SI)・ユリア・不飽和ポリエステル(UP)・ビニルエステル(VE)等の各種樹脂やガラス等からなる板状体でもよい。本発明に係る造形物は、屋外等に設置される場合には、自立でき、たわみにくく、傷がつきにくいことが望ましい。ゆえに、材料20が樹脂である場合には硬質樹脂でもよい。硬質樹脂とは、JIS K 7161−1等に記載のように、曲げ弾性率が700MPaを超える樹脂である。基材部Mはさらに変形しにくくてもよく、その曲げ弾性率は、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上、さらに好ましくは2000以上、一層好ましくは2500ないし3000以上であり、割れにくさや加工適性から好ましくは20000以下、より好ましくは10000以下、さらに好ましくは5000以下である。曲げ弾性率の数値は、単位をMPaとし、基本的にはJIS K 7171又はISO178等に記載の方法により測定される。測定の試験片は、本来は上記規格が定める形状及び寸法通りに作製されるべきである。しかし、実際の造形物Zの各部から、上記規格の定め通りの試験片を作成することは困難な場合がある。そのようなやむを得ない場合には、測定値は、近似的な測定方法による測定値でもよく、当該材料20と同じ又は同様の製品について製造元が公表している測定値ないし公称値でもよい。また、JIS及びISOは本発明出願時点の最新版を基本とし、当該JIS等の規定に適合しない事項については本発明出願時の技術常識に準拠する。以下同様である。一般に基材部Mは、大きい曲げ弾性率であるほど、低可撓性であって、衝撃等により充填部Lと剥離しやすいので、本実施形態の適用をより必要とする。また、基材部Mの引張強さ(JIS K 7161−1・JIS K 7162・JIS K 7127、又はISO527−1・2・3等)は、好ましくは30MPa以上、より好ましくは40MPa以上、さらに好ましくは50MPa以上、一層好ましくは60MPa以上である。基材部Mの曲げ強さ(JIS K 7171等)及び圧縮強さ(JIS K 7181等)は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは60MPa以上、さらに好ましくは70MPa以上、一層好ましくは80MPa以上であり、好ましくは200Mpa以下、より好ましくは170Mpa以下、さらに好ましくは150Mpa以下である。測定には、株式会社島津製作所製のAG−100kNXplus等の測定装置が用いられる。ただし、室内用等では、材料板20はフィルム状でもよく、その可撓性や曲げ弾性率等は制限されない。
本発明に係る造形物Zでは、時に溝部Gの両側又は片側の側面Sが透過して見える必要があるので、材料板20は透過性を有してもよい。透過性とは光学的な透過性であり、無色透明(可視光線全域に対して透過性を有する)と有色透明(可視光線のうち一部の帯域と別の帯域とで透過性が異なる)の両方を含む。基材部M及び側面S等の全光線透過率(JIS K 7375、一部はISO 13468−1等)は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、一層好ましくは90%以上である。上限は100%でもよい。ただし、基材部Mが透過性を有さなくても、溝部Gが剥離すると脱落につながるので、本実施形態が適用されてもよい。また、有色透明の場合、分光透過率における400〜780nm(前数値以上後数値以下を示す。以下同様である。)の範囲内での波長間の透過率の差が好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、一層好ましくは40%以上でもよい。上限は100%でもよいが、蛍光色の場合100%を超えることもある。加えて、一部の波長において透過率が好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上でもよい。この条件は充填部L・上面部U・色帯部K・液体充填部Q・色膜H等に適用されてもよい。測定は株式会社島津製作所製SolidSpec 3700DUV等で行われるが、試験片が小さすぎて測定できない場合には、基準となる試験片との目測比較でもよい。なお、本明細書において、数値範囲の上限ないし下限は、より高性能の材料及び加工方法が開発される可能性があるので、特に定めないことがある。造形物Zでは光の拡散が低い方がいい場合があるので、基材部M及び側面Sのヘーズ(JIS K 7136又はISO 14782等)は、好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜2%、さらに好ましくは0〜1%である。なお、本明細書において色とは、色相・彩度・明度・透過率・ヘーズ・屈折率・反射率等の光学的ないし視覚的要素を含む。接合された2つの材料がいずれも無色透明であっても、屈折率等が異なり、それらの接合部分が識別可能であれば、それらは互いに異なる色である。
材料板20・基材部M・造形物Zの厚さは特に制限されないが、例えば1mmから30mmでもよく、さらに薄いフィルムも含めて0.5mm以上・0.2mm以上でもよく、100mm以下でもよい。溝部Gの深さdGは、材料板20の厚さの50%から90%程度が、強度・費用対効果等からは好適であることが多い。微細な場合には深さdGが0.4mm又は0.1mm以上でもよい。それ未満であると、温度変化等による剥離が生じにくいので、必ずしも本実施形態が適用されなくてもよい。溝部Gの幅wは、0.2mm以上、0.1mm以上、0.01mm以上でもよい。複数の溝部Gが互いに平行である場合、そのピッチpは、0.1mm以上でもよく、0.5mm以上でもよい。レーザ加工等、特にCo2レーザ加工の場合には、加工限界から、溝部Gの深さdG及びピッチは1mm以上・2mm以上・3mm以上・4mm以上・5mm以上・6mm以上でもよい。なお、深さdGは表面部Fに垂直な方向の長さである。幅wは表面部Fに平行かつ溝部Gの長さ方向に垂直な方向の、最大の部分の長さである。楔状の溝部Gでは開口部Oの幅であることが多い。楔状の溝部Gの先端部分の幅は溝部Gの幅に対して無視できるほどに狭い。また、造形物Zは平面的板状体でもよく、曲面状・球状・立方体状・円柱状・多角柱状等様々な形状でもよく、そのサイズも自由である。造形物Zが楔状で、表面部Fが裏面部Rに平行でなくてもよい。
溝加工部41は、文字・ロゴ・図形・模様等の画像30のデータに基づいて溝部Gを加工してもよい。これにより製造された造形物Zは、画像・文字・ロゴ・図形・模様の少なくともいずれかを表示してもよい。溝部Gの両側の側面Sがなす二面角のうち溝部側の角度を溝部楔角θGとする。溝部Gがレーザ加工部411によってなる場合には、図3aのように楔状になることが多く、θG≦10(°)、機種によってはθG≦5(°)の場合がある。θGが略0で、両側の側面Sが略平行でもよい(図3b)。複数の溝部Gの長さ方向が互いに平行でもよい。楔状の溝部Gの両側の側面Sがなす二分角を二等分するか、溝部Gの互いに平行な両側の側面Sと互いに平行で、それらから等距離にある面を二分面とする。二分面は平面でも曲面でもよい。二分面の各部が表面部F(ないし裏面部R)に垂直であることを溝部Gが表面部F(ないし裏面部R)に垂直であると記載する。溝部Gは表面部Fに垂直でもよく、そうでなくてもよい。それらのなす角度が造形物Zの各部で一定でもよく、複数でもよい。例えばガルバノ式のレーザ加工部411では、その角度が各部で異なり、かつ、溝部G各部の長さ方向に垂直な断面と溝部Gの二分面との複数の交線の延長が1点で交差する(ただし、溝部G各部から前記1点を見込む角度のずれが10°以下・特記時には5°以下又は2°以下の場合、誤差の範囲内とする。)。なお、二分面は仮想上の面であるため図示されない。本発明では、幅と長さが互いに異なり、溝状に長い溝部Gを中心に記載するが、幅と長さが略同一で、溝部Gが円錐・楕円錐・円柱・円錐台・角錐状等多様な形状でもよい。溝加工部41の動作及び基材部M・溝部Gの特徴は、以下の実施形態の多くで以上と共通でもよい。
充填材料調合部42は展色剤V・着色剤C・分散剤D等の充填材料21を混合攪拌してもよい。なお、本明細書では混合前・混合後の両方を充填材料21と記載する。展色剤Vが着色剤Cを兼ね、着色なしで充填材料21となってもよい。そうでない場合には、展色剤Vの色は、着色の容易さ及び発色の良好さから無色透明又は白色がよい。着色剤Cは有機化合物からなる有機顔料でも無機化合物からなる無機顔料でもよい。顔料の色や種類により屈折率が異なり、後述のように適する屈折率の展色剤Vも変化する。造形物Zの用途・加工方法・所望の色・実現すべき装飾効果等に応じて基材部Mと着色剤Cが決定されたのちに、それらの屈折率等から展色剤Vが選定されてもよい。
展色剤Vは、上記樹脂の1つ以上からなってもよいが、本実施形態では、溝部Gへの充填加工の容易さから、熱硬化性樹脂が特に好適である。展色剤Vが、熱硬化性樹脂とともに、その硬化を妨げない程度の比率で熱可塑性樹脂を含んでもよい。基材部Mが硬質樹脂である場合、充填部Lが基材部Mから剥離しやすい。とりわけ充填部Lと基材部Mの線膨張率が異なると、温度変化の繰り返しによりしばしば剥離が発生する。ゆえに、充填部Lが基材部Mの伸縮や衝撃に追従できれば、剥離しにくくなる。そのためには、充填部Lの引張伸び率が好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上、一層好ましくは50%以上であればよい。数値が大きいほど、充填部Lが変形しやすいので、充填部Lと基材部Mとの線膨張率の差による剥離を防止する効果が向上する。なお、引張伸び率は、試験片が引張により破壊に至った時の、試験片の伸びの試験片の長さに対する比である。また、充填部Lの引張伸び率は、基材部Mの引張伸び率の好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは6倍以上・8倍以上、一層好ましくは10倍以上・15倍以上・20倍以上でもよい。この数値が大きいほど、衝撃が加わった際の基材部Mの伸びに対して、充填部Lが余裕をもって追従可能となり、また衝撃を吸収可能となるので、界面の耐衝撃性・難剥離性が向上する。あるいは、充填部Lの引張伸び率から基材部Mの引張伸び率を減じた差が、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、一層好ましくは40%以上でもよい。充填部Lの圧縮強さが基材部Mより低くてもよい。
引張伸び率の測定方法等はJIS K7161及び関連規格等に基づくが、個々の造形物Zの充填部Lに対しては、その規定通りの測定は困難であることが多い。試験片の形状はJIS K 7127の試験片タイプ2が望ましいが、一般に充填部Lは、造形物Zから剥がされるか削ぎ落され試験片となった場合、前記規格の定める通りの形状にはならない。特に図3aのように溝部Gの長さ方向(y方向)に垂直な断面の形状が楔状の溝部Gでは、充填部Lの先端部分の厚さ(x方向の長さ)が開口部O付近の厚さより小さいため、引張時に楔状の先端部分から裂けてしまうことが多い。開口部Oが凹状でその肩部が尖っている部分についても同様である。これでは本来の値が測定されないので、造形物Zから取り出された充填部Lの厚さが溝部Gの深さ方向で異なる場合には、充填部Lのz方向の長さがx方向の最大の長さの90〜100%となるよう充填部Lのz方向の片側又は両側が切断されて試験片となる。いずれの長さも大きい方がよいので、開口部Oに近く凹状の部分を除く部分がよい。これによりx方向の長さの各部での差が相対的に小さくなる。整形には、ピコ秒又はフェムト秒以下の超短パルスレーザーが、試験片への熱影響が無視できるので使用可能である。また、Co2レーザ加工等によってなる充填部Lでは、楔状の先端部分に凹凸があり、側面Sの先端付近及び開口部O側にも凹凸があるが、これも除去され、試験片の形状由来の測定誤差が低減される。ソーカッターも使用可能である。ただし試験片のy方向に平行な面はRz50未満とする。試験片の長さは50mm以上が好ましい。チャッキング幅は10mm以上が好ましい。チャック間の距離は115mmが好ましいが、それができない場合には30mm以上が好ましい。図3aのz方向の両側からのチャッキングがよい。試験速度は5mm/分、許容範囲±20%である。比較対象である基材部Mの試験片も同様に整形・測定される。基材部Mと充填部Lとで試験片のサイズの差は大きい方の10%未満が望ましい。上記条件による[引張による破断時のチャックの長さの増加量]/[引張前のチャックの長さ]が引張伸び率である。破断前に降伏が発生した場合には降伏時で測定される。この試験は、株式会社島津製作所製AG−100kNXplus・AG−10TD等で可能であり、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターによる依頼試験でもよい。試験片ごとに、あるいは各部で引張伸び率が異なる場合には、その平均を測定値とする。試験片の数は5以上が望ましいが、可能な最大数でもよい。充填部Lの二分面は溝部Gの長さ方向に平面であることが望ましく、曲面であれば平面に近いほうがよい。このように、造形物Zの事情により、規格に定められた条件を満たさずに測定する必要がある場合には、本来の値より低い測定値となる可能性が大きいことに留意されるべきである。つまり、充填部Lが凹凸部分から破断することで、引張伸び率が、本来よりも小さい値で測定されるといった可能性である。そのため、なるべく試験回数を増やし、平均から極端に離れた外れ値は除外する等の対応が必要である。すなわち、複数の測定値を数値順に並べた分布図のうち第1四分位点から第3四分位点までに属する複数の測定値から暫定平均値が導かれ、暫定平均値の75〜125%の範囲の測定値のみからさらに平均値が算出される。
通常の熱硬化性樹脂は硬質樹脂で脆性が大きく、伸びしろが少ないため、上記の条件を満たすことができない。例えば注型用のUPは、透過率には優れるものの、引張伸び率は5%以下である。一方PMMAの引張伸び率も5%程度である。従って、通常のUP等によってなる充填部Lは、PMMAによってなる基材部Mの伸縮や衝撃に追従できず、界面応力や内部破壊の蓄積により剥離しやすい。可塑剤は熱可塑性樹脂には有効であるが、一般の熱硬化性樹脂には添加できない。しかし、伸縮性が求められる防水工事用のコーキング材やシーリング材、例えばTPC(TPEE)等のエラストマーや、UP・VE・エポキシアクリレート・EPといった熱硬化性樹脂のうち一部の特殊なものは、50から200%ときわめて大きな引張伸び率を示す。本発明の発明者は、かかる樹脂が展色剤Vであれば、充填部Lが剥離しにくくなることを見出した。なお、赤外分光光度計・近赤外分析計(具体的な機材名としては、日本分光株式会社製FT/IR−6100又はFT/IR−670Plus等・Thermo Scientific社製Nicolet 6700・ブラン・ルーベ製450LR等が挙げられる。)等により、充填部L等の赤外吸収スペクトル等が測定可能である。その測定データと既知の物質のデータとの対照から、展色剤V等の樹脂の種類が特定可能である。
SI・PU・フッ素系等の熱硬化性エラストマー(又は樹脂)は、特に大きい引張伸び率を呈する。しかしこれらは、通常では低屈折率であり、後述のように基材部Mの屈折率と視線角度によっては全反射を発生させるため、展色剤Vには適さないことがある。またこれらでは線膨張率やタックが大きい傾向にある。充填部Lの線膨張率が基材部Mの線膨張率より極端に大きくない方が、高温時に充填部Lが基材部Mに応力をかけにくい。よって、充填部Lの引張伸び率は、好ましくは1000%以下、より好ましくは500%以下、さらに好ましくは300%以下でもよい。充填部Lの引張伸び率は基材部Mの引張伸び率の好ましくは200倍以下、より好ましくは100倍以下、さらに好ましくは50倍以下でもよい。また、PUには熱可塑性と熱硬化性とがあるが、一般に、熱可塑性PUは流動点が100から200℃であり、熱硬化性PUは硬化のために100℃以上の加熱を要する。揮発成分が多い常温硬化型PUは、硬化時に収縮のため剥離する。なお、PUでは、引張伸び率が大きいものほどタックが残り、加水分解・熱や短波長光による黄変等の経時劣化が激しいため適さないことがある。これらの理由から、充填部LはSI・PU・フッ素系の少なくともいずれか以外の熱硬化性樹脂によってなってもよい。ただし、SI・PU・フッ素系樹脂とUP等との混合樹脂は、屈折率及び引張伸び率の可変性により有用である。
造形物Zで発生する界面の剥離現象の原因を考察する。(1)屋外等で温度変化により造形物Z各部が伸縮する際、基材部Mと充填部Lとで線膨張率が異なるために、伸縮のたびに残留応力が蓄積し、あるいは界面にせん断力が働き、やがて剥離する。これは溝部Gの両端近くでよく見られる。(2)基材部Mの吸水性が比較的高いと、基材部Mの表面部Fや裏面部Rが雨水等を吸って膨張するが、内部は膨張しないので、造形部3全体にゆがみが生じたり、反ったりする。気温上昇時及び下降時の造形物Z表面と内部との温度差によっても、同様の現象が発生する。これにより、主として溝部Gの深さ方向にせん断力がかかって、界面が耐えきれなくなり、各部で剥離する。(3)図3aのように開口部O側が露出している場合、温度や湿度の変化により、基材部Mの開口部側が開いたり閉じたりする。すなわち基材部Mの溝部楔角が変化する。充填部L及び界面には幅方向に軸力がかかるが、幅方向の伸縮には限界があるので剥離する。(4)造形物Zは商業施設等の屋内の公共空間に設置されることもあるが、その場合も含めて人や荷物等の往来が多い場所では、振動や衝突の衝撃も多い。衝撃により、曲げモーメントやねじりモーメント等を含む多様な方向の内力が各部の界面にかかった際、界面が剥離してその衝撃を吸収する。このように、造形物Zが受ける界面応力は、図3の溝部Gの(1)長さ(y)方向(2)深さ(z)方向(3)幅(x)方向(4)多方向とさまざまであり、それらが複合して界面剥離をもらたらすと考えられる。充填部Lの引張伸び率を大きくすることは、(1)から(4)の界面応力への耐性向上に有効であるが、とりわけ(4)の耐衝撃性の改善に大きな効果をもたらす。
充填部Lは、それ自体を基材部Mに接着する接着剤と考えることができる。その界面の結合力が充填部Lの引張強さを上回ってもよい。つまり、充填部Lの剥離は広い範囲での溝部Gの色の消失をもたらし、その上、その部分は光を全反射するので、白く見えて目障りである。一方、充填部Lの破断(溝部Gの長さ方向又は深さ方向に垂直な面が断面である。)は、通常ごく細い筋状であり、その亀裂部分には光が届かず暗いので、ほとんど目につかない。ゆえに、剥離よりは破断の方が、造形物Zの装飾性に及ぼす悪影響が少ないと言える。また、基材部Mが溝部Gの幅方向に膨張した時、充填部Lが、二分面で2つの部分に破断して、2つの部分それぞれが両側の側面Sに接合したままであれば、剥離を避けられる。それゆえ、場合によっては、充填部Lが、基材部Mの変形に追従できない時に、破断することで剥離しないですむことが望ましい。そのためには、充填部Lの接着強さが、充填部Lの引張強さ以上であればよい。これは充填部Lの剥離にかかる応力(N)と充填部Lの引張切断にかかる応力(N)との比較に相当する。具体的には、この測定は次のように行われる。造形物Zが固定され、側面Sを境界として両側に分離するように、底面部B側と、必要があれば開口部O側の基材部Mが切断される。加工時の応力が充填部Lに極力かからないように加工される必要がある。次に、基材部Mが両側に分離されるが、ここで両側の基材部Mに充填部Lが引き裂かれたら、接着強さが引張強さより大きい。充填部Lが、片側のみ露出し、もう片側は基材部Mに残ったら、残った部分の先端部分の両側が10mm以上のつかみ部分として露出される。ここで、つかみ部分が測定装置のチャックに固定され、90°はく離接着強さ(JIS K 6854−1等)に準じる方法で剥離にかかる応力が測定され、同等の断面形状の充填部Lの引張切断時の応力に比較される。あるいは、試験者が指でつかみ部分を挟んで略90°の角度で引張、充填部Lの終端まで切れずに剥がせるか途中で切れるかを調べることで代替することもできる。
造形物Zの長期的な耐久性のためには、展色剤V及び着色剤C等は化学的に安定し、耐光性が高いことが望ましい。着色剤Cの種類と充填部Lに占める着色剤Cの比率によって、溝部Gの濃度・透過率・発色度合が変化する。充填作業前の充填材料21に対する着色剤Cの重量比は、通常は0.1から20%、好ましくは0.5から10%であるが、溝部Gの幅・着色剤Cの種類・展色剤Vに対する着色剤Cの比重・求める視覚的効果によってはそれ以外でもよい。充填材料調合部42は、凝集した着色剤Cをロールミル・ボールミル・ビーズミル等により粉砕してより微細な粒子とし、さらに攪拌や分散剤Dの混合等により、展色剤V中に充分に分散させてもよい。ただし、粒子サイズが大きい着色剤Cによるざらざらした質感等、なめらかで透明感のある発色とは別の効果が求められる場合にはその限りではない。分散剤Dは、亜鉛・アルミニウム・カリウム・カルシウム・ナトリウム・バリウム・マグネシウム・リチウム等の金属石鹸、例えばステアリン酸石鹸・ヒドロキシステアリン酸石鹸・ベヘン酸石鹸・モンタン酸石鹸・ラウリン酸石鹸を含む既知の群から、展色剤V及び着色剤Cとの適性に応じて適宜選択され、配合率等を決められてもよい。通常の顔料等と分散剤Dの組み合わせに代えて、易分散加工済の着色剤Cや分散済の塗料等が用いられてもよい。また、充填材料調合部42と充填加工部43が連携し、1つの造形物Zの加工中に着色剤Cの調合を漸次変更していくことで、複数の溝部Gの色をグラデーション状に徐々に変化させてもよく、それぞれの溝部G内の一部から別の一部にかけて、色をグラデーション状に変化させてもよい。また、充填加工後の減圧により気泡の抑制が可能である
被覆部Tのための材料板20は、無色透明で、全光線透過率又は可視光線透過率が高いほうがよいが、用途によっては有色透明でもよい。簡易的には、被覆部Tは厚さ0.5mm以下のPET等の薄い粘着性軟質フィルムでもよい。長期用途には、板状の被覆部Tが接合されるのがよい。板状の被覆部Tは造形物Zを割れにくくするだけでなく、基材部Mが溝部Gの幅方向に伸縮することを抑制し、上記(3)が原因の剥離を防止する。平面的板状の被覆部Tが、基材部Mと同一・同種・類似の材質でより薄ければ、溝部Gを有する側の材料板20と物性が近いので好ましい。例えばPMMAのキャスト板と押出し板とは同一の材質ではないが、いずれもPMMAであり、上記の各種樹脂のうちの同じ分類に属するので、同種である。また、硬質PVCとPMMAとが、近似した線膨張率であり、同じ溶剤により溶着可能であれば、その点でこれらは類似である。
充填部Lは、着色剤Cの含有により、基材部M及び被覆部Tとは異なる色となる。造形物Zの複数の部分の色において、色相・彩度・明度・全光線透過率・可視光線透過率のいずれかが明らかに相違してもよい。色相では、複数の色を比較した際、マンセル色相環において近い側が25〜50歩度分離れていれば明らかに別の色と識別でき、35〜50なら主要原色のいずれかの色の色相の差に相当し、45〜50なら補色どうしに近いので、いずれも明らかに色が異なる。又は複数の色がHSV色空間のH値において離れている小さい側の角度が、90〜180°なら明らかに別の色と識別でき、120〜180°ならRGB系又はCMY系の一方の原色系等のいずれかの色の色相の差に相当し、150〜180°なら補色どうしに近いので同様に異なる。彩度では、色相にもよるが、複数の色の差が概してマンセル表色系における彩度で4以上であれば明らかに色が異なり、6以上、8以上であればより明確に異なる。明度では、複数の色の差が3以上であれば明らかに色が異なり、4以上・5以上でより明確に異なる。それらが組合わさればさらに判然と異なる。これらの測色には例えばコニカミノルタ株式会社製CM−5等の分光測色計やCR−5等の色彩色差計が用いられるが、測色範囲が狭い等の理由で測定が困難な場合には、目視比較が併用されてもよい。全光線透過率又は可視光線透過率では、複数の色の差が40%以上で明らかに色が異なり、60%以上・80%以上でより明確に異なる。求める効果によっては、造形物Zの一部と他の一部とが、上記の範囲より狭い測定値で異なってもよい。なお、異なる色の上限は、技術の進歩により、出願時に可能な範囲より拡張される可能性があるので、特に限定しない。
以上に加えて、次のような条件を具える造形物では、難剥離性のために本実施形態の導入が望ましい。ただし、これらの条件を具えない場合でも、本実施形態の適用は有効である。溝部Gの剥離は、環境要因を度外視すれば、難接着材の樹脂等が充填部Lを有する場合に特有の問題ということができる。具体的には、基材部Mのぬれ張力が充填部Lのぬれ張力に近い又はそれ以下である場合に、充填部Lが基材部Mと良好に接着されないという問題である。基材部Mのぬれ張力が高ければ、界面剥離は起こりにくい。さらに基材部Mの表面(側面S)が粗面なら、より強固に接着される。溝部Gが浅く、その幅が狭ければ、温度変化に伴う充填部Lと基材部Mとの伸縮量の差が小さいので、剥離が発生しにくい。溝部Gの溝部楔角が充分に大きければ、溝部の両側の複数の側面に塗料がそれぞれ片側ずつ付着し、その間に空隙があるので、双方からの引張による剥離がない。よって必ずしも本発明が適用されなくてもよい。溝部楔角が小さくても、溝部Gの側面Sのみに展色剤V等が塗布され、溝部Gの中央が空隙であれば、基材部Mが溝部Gの幅方向に伸縮した時に、空隙がクッションとなって剥離に至らずにすむことがある。しかし、図3のように溝部Gに空隙がなく、溝部Gのほぼ全体が充填部Lであると、基材部Mが膨張し、溝部楔角が幅方向に開いた時に、その伸びが充填部Lの伸びを超えていれば剥離する。本発明が特に必要となるのは、基材部Mのぬれ張力が比較的小さく、側面Sが平滑で、溝部Gが深く、その溝部楔角が小さい場合である。さらに、側面Sが基材部Mを透過して見える程度に基材部Mの透過率が高いことも条件の1つである。
より具体的には、次のような場合に充填部Lが剥離しやすく、又は剥離が目立ちやすく、本実施形態が顕著な効果を発揮する。1、溝部Gが空隙を有さない。2、基材部Mと充填部Lの線膨脹率(JIS K 7197等)が、大きい方の10%以上、又は5%以上異なる。3、基材部MがPE・PMMA・PP・PS等の難接着材、基材部Mのぬれ張力(JIS K 6768又はISO8296等)が45mN/m以下、基材部Mのぬれ張力から充填部Lのぬれ張力を減じた差が10mN/m以下、の少なくともいずれかである。なお、ぬれ張力は、試験片との接触角が0°になるぬれ張力が既知の液体等から得られる。4、側面Sの算術平均粗さRaが好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.25以下、最大高さ粗さRzが好ましくは4以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1以下、下限は測定限界である(JIS B 0601又はISO 4287等、単位はμm、後述の凹凸のためカットオフλcは通常は0.08mmでもよく、特に凹凸のピッチが大きい場合は0.25でもよい。基準長さlrも同様である。カットオフλsは最小又は2.5μmでもよい。Taylor−Hobson社製TALYSURF2等で測定可能である。)。側面Sの平滑性は、上記の全光線透過率及びヘーズの値によっても定義可能である。5、深さdGがmmオーダー以上、例えば5mm以上である。溝部Gが深いほど、開口部O側とその反対側とで温度変化等による変位量が大きくなり、界面応力も増大する。溝部Gが深い造形物Zは概してx及びy方向のサイズも大きいので、溝部Gの長さ方向の界面応力も大きくなり、結果として、浅く短い溝部の造形物では発生しなかった問題が顕在化する。6、基材部Mの側面Sに熱影響がある。7、側面Sが造形物Zの表面部F又は裏面部Rへの垂線又は法線となす溝部G側の角度が90−2arcsin(1/nM)以下である(nMは基材部Mの屈折率)。
上記3・4は基材部Mと充填部Lとの接着性に関連する。4・5・6・7は、レーザ加工による溝部Gで見られる特徴である。特に、Co2レーザによる切断加工では、切断面すなわち側面Sは赤外線で加熱されて融解し、冷却後に硬化する。これにより、側面Sが4のように平滑となるため、押出成形・キャスト成形・機械加工の表面よりも接着性に劣る。また、側面Sには、融解した樹脂の流れによるとみられる、溝部Gの長さ方向に平行な複数の線状の凹凸と、その凹凸に垂直又はそれと70°から110°の角度をなす、レーザのパルスを反映した複数の凹凸とが形成されることが多い。後者は、レーザ出力・速度・周波数等により変動するが、通常50〜2000μm・多くは100〜1200μm・典型的には200〜700μmピッチで、溝部Gの先端付近では算術平均うねりWa又は最大高さうねりWzが好ましくは0.3〜16、より好ましくは0.5〜8、さらに好ましくは1〜4である(JIS B 0601等)。これらは16以上でもよいが、最大でも幅w又はその1/2以下である。ピッチに応じてカットオフλcは0.08でもよく、凹凸のピッチが小さければ0.025mmでもよい。後者は、幅wの1/20〜10倍・あるいは1/10〜3倍・時に1/5〜1倍のピッチで、1/4000〜1/20倍・あるいは1/2000〜1/50倍・時に1/1000〜1/100倍の深さでもよい。前者は後者と同じ範囲の深さでもよい。この凹凸は、側面Sに発生する加工誤差由来の凹凸で最大であることが多い。7について次に説明する。
基材部Mと充填部Lとが剥離し、それらの界面が密着していない状態であっても、側面Sが全反射を起こして充填部Lの色が見えない場合だけでなく、充填部Lの色が側面Sを透過して見える場合がある。以下にそれら両者の臨界となる条件を示す。
図4は楔状の溝部Gの長さ方向に垂直な断面の図である。図4では、入射角θI(θI<0)で側面Sに入射した光が、反射角−θIで反射し、この反射光が裏面部Rで屈折して視点Eに届いている。ただし、充填部Lが側面Sで剥離していなければ、側面Sでの反射光は入射光の一部であり、残りは充填部Lに吸収されるか、充填部Lを透過するか、側面Sで拡散する。図4において、視点Eからの視線が表面部Rへの垂線又は法線となす角度(以下視線角度又はθEと記載する。)は裏面部Rからの光の出射角に等しい。側面Sが表面部Fへの垂線又は法線となす角度をθS、基材部Mの屈折率をn
M、充填部Lの屈折率をn
G、空気の屈折率を1とする。右回りを正方向とするので、θS>0であれば図4aの右側の側面S又は図4bの左側の側面S、θS<0であれば図4bの右側の側面S又は図4aの左側の側面Sに対応する。被覆部T・着色剤C等は図4では省略される。被覆部Tの両面が互いに平行かつ平面状で、被覆部Tの屈折率がn
Mであれば、被覆部Tの有無は屈折角等に影響しない。n
G<n
M又は充填部Lが側面Sで剥離している場合、反射角θIの絶対値が臨界角arcsin(n
G/n
M)以上であれば、側面Sでの反射が全反射となり、充填部Lの色は視点Eに届かない。この状態を式で示すと、スネルの法則より、
(1)図4a(θS≧0)の場合
側面Sでの反射が全反射となるようなθSの範囲は、
充填部Lが剥離しているか、溝部Gが空隙で側面Sに基材部Mが露出しているならば、空気ないし真空が充填部Lに相当し、n
G=1なので
θE=−90(°)までのθEがとりうる範囲のすべてにおいて、側面Sで全反射が発生して充填部Lの色が見えなくなるようなθSの範囲は、数3より
θS≦90−2arcsin(1/n
M)…(i)
θE=0(°)、すなわち視点Eが溝部Gを表面部Fの正面から見た時に、充填部Lの色が見えなくなるθSの範囲は、数3より
θS≦90−arcsin(1/n
M)…(ii)
(2)図4b(θS<0)の場合
側面Sでの反射が基材部M側から見える最大のθEとなる(図4bの最も左寄りである)視点Eは、
arcsin[(sinθE)/n
M]=θS
となる位置であるから、
arcsin[(sinθE)/n
M]≦θS
側面Sでの全反射が視点Eで観察される最大のθSでは、θE=−90(°)の時のみ反射が観察可能となるので、
θS≧arcsin(−1/n
M)…(iii)
図4aにおけるθS<0の場合及び図4bにおけるθS≧0の場合、すなわち図4a・bの溝部Gのそれぞれ左側の側面Sに関する場合は、上記の場合に対し左右対称の関係であり、上記各数式において各項の正負及び不等号の向きが逆になる。ゆえに、(iii)から、図4bのように溝部Gの開口部O側のみから観察される場合には、
|θS|≦arcsin(1/n
M)
であれば、溝部Gの手前に側面Sが見えるようなθEのすべての範囲において、側面Sで全反射が発生して充填部Lの色が見えなくなるので、本実施形態の適用によってその事態が回避される。本明細書等では、arcsin(1/n
M)を全反射可視側面角と記載する。例えばn
M=1.5とすると、θSの絶対値が約41.8°以下ならば、可能な全θEに対し、剥離した充填部Lの色は側面Sを通しては見えない。
次に、開口部O側からだけでなく、図4aのように溝部Gの開口部Oの反対側からも観察される場合には、(i)から、
|θS|≦90−2arcsin(1/n
M)
であれば、溝部Gの手前に側面Sが見えるようなθEのすべての範囲において、側面Sで全反射が発生して充填部Lの色が見えなくなるので、本実施形態の適用によってその事態が回避される。本明細書等では、90−2arcsin(1/n
M)を最大全部全反射側面角と記載する。例えばn
M=1.5とすると、θSが約6.38°以下ならば、表面部F及び裏面部R側の可能な全θEに対し、剥離した充填部Lの色は側面Sを通しては見えない。二分面が表面部Fに垂直な溝部Gでは、θGが約12.76°以下ならば同様である。基材部MがPMMAで、n
M=1.49ならば、θSの絶対値が約5.69°以下、又は二分面が表面部Fに垂直な溝部GでθGが約11.38°以下の場合、本実施形態により充填部Lの剥離が生じないことで、どこから見ても充填部Lの色が鮮明に見える効果が得られる。また、(ii)から、
|θS|≦90−arcsin(1/n
M)
であれば、少なくとも一部のθEにおいて、側面Sで全反射が発生して充填部Lの色が見えなくなるので、本実施形態が適用された方がよい。本明細書では、90−arcsin(1/n
M)を一部全反射側面角と記載する。n
M=1.5とすると、θSが約48.19°以下ならば、剥離した充填部Lの色は正面からは見えない。二分面が表面部Fに垂直な溝部Gでは、θGが約96.38°以下ならば同様である。なお、数3より、充填部Lの色が見えないθEの範囲は、
である。図4aにおいて、θEがこれより小さい時、すなわち視点Eが右寄りの時には、側面Sで全反射が起こらず、充填部Lが剥離していても側面Sを透過してその色が見える。
溝部Gの幅wが深さdGに対して充分に大きければ、正面から開口部Oの充填部Lの色が見えるので、側面Sが剥離していても色の消失はない。それゆえ本実施形態は必ずしも適用されなくてもよい。これは、溝部Gが底面部Bを有し、台形状であれば、θGが小さくてもあてはまる。dG/wが5倍以上であれば、視線Eが斜め方向から側面Sを見た時、屈折により見かけの深さが浅くなるものの幅の約2・5倍以上に見えるので、本実施形態が適用された場合に一定の効果を呈する。10倍以上であれば、見かけの深さが幅の約5倍以上に見えるので、本実施形態が明確な効果を奏する。15倍以上なら本実施形態が充分な効果を示し、20倍以上なら本実施形態が適用されないと側面Sがほとんど見えない可能性がある。また、溝部Gの幅方向の断面は、U字状のようにθSが複数又は変化する形状でもよい。その場合、両側の側面S・底面部B・開口部Oの長さの合計のうち、表面部Fへの垂線又は法線となす角度が最大全部全反射側面角(又は一部全反射側面角)以下である範囲の長さの合計が、好ましくは1/2以上であれば最大全部全反射側面角が明確な効果を奏し、より好ましくは4/5以上、さらに好ましくは9/10以上、一層好ましくは19/20以上であれば、溝部Gの大部分が上記条件を満たしていると見なすことができ、本実施形態の適用による利得が大きい。ただし、溝部Gが上記条件を満たさなくても、剥離時には色が見えづらくなり、またθEによっては側面Sでの全反射が発生するので、本実施形態の適用により一定の効果がある。
ただし、nM<21/2であると、θEが−90°に近い時、数3からθS<0となることがあるが、数3は(1)すなわちθS≧0の場合の式であるから、成立しない。θS<0の場合も同様に成立しない。つまり、屈折率が約1.41未満の材料板20、例えばPFA・FEP等の透明なフッ素樹脂によってなる造形物Zでは、図4aのように開口部Oの反対側の視点からは、θS=0を含むすべてのθSの溝部Gにおいて、充填部Lと基材部Mとが剥離していても、基材部Mの側面Sを透過して充填部Lの色が見えることがある。θSが大きいほど、θEの絶対値が小さくてもこれが成立するので、充填部Lの色が見える範囲が拡がる。よって、前段落の条件に加えて、nM≧21/2の場合に、本実施形態の必要性が比較的高い。とはいえ、nM<21/2の場合でも、θEによっては剥離した充填部Lの色が見えなくなるので、本実施形態が適用されてもよい。
次に、充填部Lが剥離していない溝部Gにおける、充填部Lの屈折率と基材部Mの屈折率との関係について検討する。
(1)nG≧nMの場合
基材部Mの屈折率が充填部Lの屈折率以下であれば、臨界角の作用による全反射は起こらない。この逆も真であり、表面部F及び裏面部R側のすべてのθEにおいて、基材部Mから側面Sへの入射光に対し側面Sで全反射が起こらず、反射があっても部分反射ないし拡散反射であり、その側の側面Sが見えるどの視点からも側面Sを通して充填部Lの色が見えていれば、基材部Mの屈折率は充填部Lの屈折率以下である。屈折率は、アッベ屈折計等により測定可能である。アッベ屈折計は、例えば株式会社アタゴNAR‐1T SOLIDであり、ナトリウムD線で測定し、他詳細はJIS K 7142・一部はISO489等又は出願時の技術常識に準拠する。本明細書の他の箇所でも同様である。アッベ屈折計は、臨界角法を用いて試験片表面の屈折率を測定するので、この用途に適する。その測定値は、充填部Lに含まれる着色剤C等の屈折率には基本的に影響されず、展色剤Vの屈折率を示す。一般に、SIやシリコーンゴムの屈折率は1.43以下、PETE等のフッ素樹脂やフッ素ゴムの屈折率は1.3台である。一般にPMMAの屈折率は1.49以上であり、硬質樹脂の屈折率はSIの屈折率より高い。すべてのθEで溝部Gの色が鮮明に見えるためには、基材部M以上の屈折率の展色剤Vがよい。各部の屈折率を比較すると、着色剤C≧展色剤V≧基材部Mであれば、すべてのθEで全反射が起こらず、色が常に鮮明に見える。また、真空蒸着・スパッタリング等により金属が側面Sの界面に密着していれば、屈折率の大小にかかわらず、金属光沢が生じ、臨界角による全反射とは異なる反射効果が得られる。反射防止のため、溝部Gはかかる金属膜を有さなくてもよい。これと異なり、金属パウダーを混入させた塗料等では、側面Sに密着しているのは透明樹脂等の展色剤Vであるため、その展色剤Vの屈折率が影響する。
(2)n
G<n
Mの場合
充填部Lの屈折率が基材部Mの屈折率より小さいと、θEが小さい時には全反射が起こり、充填部Lの色が見えないことがある。θS=0ならば、そのようなθEの絶対値の範囲は
基材部Mの屈折率を1.5とする。
a 充填部Lの屈折率が基材部Mの屈折率に近ければ、側面Sの臨界角が90°に近づくため、界面での反射がほとんど起こらない。充填部Lの屈折率が1.49ならば、数5より|θE|が0から約9.96°までの範囲で側面Sでの全反射が見える。この範囲内では、側面Sへの入射角の絶対値が臨界角以上であるため充填部Lの色は見えない。9.96<|θE|<90(°)の範囲では充填部Lの色が見える。この範囲では、裏面部R側に文字等が貼られていると、充填部Lの色に隠れて見えなくなる効果が得られる。この効果は、側面Sで全反射が起こると、側面Sに裏面部Rが映って見えるために低下する。よって、この効果のためには、充填部Lの屈折率が基材部Mの屈折率以上であればよい。あるいはその差が小さいほうがよく、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.03以下でもよい。ただし、正面に近い一部のθEでは全反射が見え、それ以外の範囲では充填部Lの色が見える、という対比効果が望ましい場合にはその限りではない。他の技術事項でも同様である。
b 充填部Lの屈折率と基材部Mの屈折率との差が大きいほど、側面Sでの反射が起きやすくなる。充填部Lの屈折率が1.4ならば、数5より|θE|が0から約32.6°までの範囲で側面Sでの全反射が見え、それ以外の範囲では充填部Lの色が見える。充填部Lの屈折率が1.3ならば、|θE|が0から約48.4°までの範囲で側面Sでの全反射が見える。これらの場合、正面からある程度のθEまでは、光源の位置によっては、側面Sが背景を反射して充填部Lの色が見えず、側面Sが平滑で背景が近ければ背景が映って見え、背景が遠ければぼんやりと映るか光って見える。光源がしかるべき位置になければ、側面Sは暗く落ち込んで見える。θEが数5の範囲を超えると、充填部Lの色が見えるようになる。ただし、界面での反射は多少残る。全反射から充填部Lの色への転換は、臨界角の作用により、中間段階がなく急激に起こる。それは、常に充填部Lの色が見えているのとは異なる意外さを観察者に感じさせ、用途によっては有用な効果をもたらす。正面に近いθEでは充填部Lの色が見えず、θEが大きくなると充填部Lの色が見える、という効果が意図される場合には、充填部Lと基材部Mの屈折率の差は0.3以下・0.2以下・0.1以下でもよく、0.05以上でもよい。
θSが、わずかではあっても一部全反射側面角以下だと、|θE|が小さい時に剥離した側面Sでの全反射が発生するので、全反射が目につきやすい。つまり、図4aの場合には正面付近からの観察時に全反射が見える。全反射可視側面角でも同様に、|θE|が大きい(90°に近い)時よりも小さい時に全反射が見える。図4bの場合には少なくとも|θE|がarcsin(nMsinθS)にきわめて近い時だけは全反射が見える。つまり、θSが一部全反射側面角や全反射可視側面角を下回った時の変化は、一瞬ではあれ明確に現れる。しかもそれは、表面部Fへの正対に近い、最も高頻度の観察状態で起こるから、直ちに視認される。ゆえに、この事態が望ましくない場合、側面Sが一部全反射側面角以下又は全反射可視側面角以下であるかどうかは大いに臨界的意義を有するといえる。また、剥離していない充填部Lで充填部Lの屈折率が基材部Mの屈折率をごくわずかに下回る場合でも、少なくとも正面付近から見た時だけは全反射が発生するので、同様に臨界的意義が大きい。
特許文献1に記載の発明のように、透明の基材部Mに色つきの溝部Gが形成された装飾体や装飾体製造方法が知られている。同明細書段落0022及び図4において、溝側面Fを塗料等で着色する加工方法、及び溝部Gを透明又は不透明の樹脂等や塗料等で埋め充填部Fiとする加工方法が記載されている。しかし、特許文献1の図4aのように溝部Gが充填部Fiを有さず、溝側面Fのみが着色される場合、耐光性の高い着色剤によって深い溝の奥まで充分な濃度で均一に、かつ低コストで着色することは難しかった。そのため、図4aのような溝部Gを有する造形物3を屋外の長期用途等に用いることはできなかった。
一方、特許文献1の図4b・c・dのような、着色された充填部Fiを有する造形物3では、紫外線による劣化が少ない高級有機顔料や無機顔料等の着色剤が採用可能であるから、高い耐光性が得られる。ところが、かかる造形物3が特に屋外に設置された場合、温度変化等のため、充填部Fiと基材部Mとの界面の剥離が避けられなかった。つまり、日照による加熱と夜間の冷却を主とする温度変化や雨の吸水・乾燥により、造形物3各部で伸縮のサイクルが長期にわたり繰り返される。特に冬季の寒暖差は大きい。造形物3が赤外線の吸収率が高い樹脂等によってなる場合、日中には直射日光に含まれる赤外線により50〜60℃まで熱せられるが、夜間には氷点下まで冷えることもある。また、風等による振動も常時起こっている。そのため充填部Fiと基材部Mとの界面に界面応力や内部破壊が蓄積し、この界面がやがて剥離する。さらに、造形物3が交通量の多い場所等に設置されていると、人や物が接触した衝撃で一瞬にして界面が剥離することがある。特に溝部楔角θGが小さい溝部Gの場合、溝側面Fが剥離すると、臨界角の関係で色が見えなくなる。いずれにせよ、特許文献1に記載の発明による装飾体は、屋外等の過酷な環境には耐えられないという問題を抱えていた。本実施形態は、特許文献1に記載の発明に係る装飾体より溝部の剥離が起きにくい装飾体・その装飾体を製造する装飾体製造装置及び装飾体製造方法の提供を課題としてもよい。
本発明の1つの態様は、基材部と、前記基材部に形成された溝部と、を有する装飾体であって、前記溝部が充填部を有し、前記充填部の引張伸び率が前記基材部の引張伸び率の3倍以上であることを特徴とする装飾体である。前記基材部の少なくとも一部が硬質樹脂でもよい。本発明の別の態様は上記装飾体の製造装置及び製造方法である。
《第2の実施形態》
本実施形態は、第1の実施形態に類似の課題等を、基本的には別の方法で解決する。本実施形態では、例えば、図3に示す造形物Zにおいて、側面Sでの充填部L及び基材部Mの接合がより強固となることで、界面剥離が起きにくくなる。そのためには、充填部Lと基材部Mとの接合が物理的接合ではなく、化学拡散接合であってもよい。具体的には、例えば充填材料21が、材料板20を常温で溶解するジクロロメタン・クロロホルム等の溶剤を含有していれば、充填後に側面Sの材料板20を溶解し、材料板20の成分と溶け合いながら硬化する。あるいは、充填材料21の一部がメタクリル酸メチル(MMA)であれば、ABS・PC等の樹脂によってなる材料板20を溶解しつつ重合する。それらの結果、接合面が明確な界面でなく、その両側の成分が互いに移動し混ざり合った連続部分となる。このような接合状態を、本明細書では化学拡散接合と記載する。充填材料調合部42は、例えば三菱ケミカル株式会社製アクリエステルM等のMMA60重量部とPMMA粉末30〜60重量部を混合攪拌し、過酸化ベンゾイル等の重合開始剤やフタル酸ジシクロヘキシル等の可塑剤等を0.1部程度(温度等に応じて調整可)の微量添加し、さらに着色剤C等を適量混ぜ合わせて充填材料21を作成してもよい。この充填材料21はMMAを含むため、材料板20がPMMAであれば、重合によって一体化しやすく、さらに強い化学拡散接合となる場合がある。このように、充填部Lと基材部Mの成分の少なくとも一部が共通すると、化学拡散接合が容易に得られる。またその場合、充填部Lと基材部Mの組成が近いために、それらの屈折率が近く、その差が0.1以下・0.05以下・0.03以下のいずれかであることが多い。さらに、充填材料21の硬化性等の特別な必要から、充填部Lの分子量や密度等が基材部Mのそれらより小さいため、充填部Lの屈折率が基材部Mの屈折率より小さいことがある。これらはいずれも充填部Lと基材部とが同等の組成であることがもたらす特徴である。また、被覆部T・基材部M・後述の接着剤A・基材上層M1及び基材下層M2等の間が化学拡散接合してもよい。
充填材料21が溶剤を含む場合、通常、硬化時に、まず開口部O側から溶剤が揮発し、溝部Gを塞ぐ。次に内部の充填材料21が硬化する際、気化した溶剤が逃げられずに溝部G内に残留し、気泡となりやすい。また、揮発する溶剤の分の体積減少が大きく、気泡が大きくなりがちである。一般的なアクリル塗料やアクリル絵の具は、有機溶剤や水を大量に含むので、硬化収縮率が50〜90%程度と大きく、特に大きい空隙ができることが多い。すなわち、気泡が両側の側面Sにまたがる、溝部Gの深さ方向における気泡の割合が1/4以上・1/3以上・1/2以上のいずれか、溝部Gの長さ方向における気泡の長さのdGに対する比率が1/2以上・1以上・2以上のいずれか、といった気泡である。この気泡は空隙なので、臨界角により全反射を呈し、充填部Lの中で目につく。これが装飾効果をもたらす場合もあるが、そうではない場合には、充填材料21が溶剤をほとんど又は全く含まず、材料板20に対する溶解力の強い又は材料板20と重合可能なモノマー(MMA・スチレン等)を含む方がよい。また、アクリル塗料等が含む溶剤は、ジクロロメタン・クロロホルム等の強力な溶剤と異なり、側面Sをわずかに白濁させる程度で、材料板20をほとんど溶解できないことが多い。
本実施形態による造形物Zの特徴として、充填部Lが基材部Mから機械的に分離されると、側面Sで截然と剥離するのではなく、充填部L又は基材部Mの少なくとも一方が破壊される。つまり、充填部Lと基材部Mとの間の接着強さが充填部L等の引張強さ等より大きく、分離しようとする応力が界面剥離(界面破壊)に代わり充填部L等の内部裂損に働くことで、充填部Lを凝集破壊する。実際には、溝部Gが長さ方向に沿って割れる時に、充填部Lが片側の側面Sのみに付着したままもっていかれずに、両側の側面Sに残ることが多い。その表面には充填部Lの色がこびりつき、ざらざらしている。充填部Lの引張強さが基材部Mのそれより大きい場合には、基材部Mが同様に割れる。また、界面を強制分離した場合の表面では、おそらく応力が分散するため、波状の凹凸が発生することがある。この凹凸のピッチの範囲は、剥離物の厚さ等により変動するが、好ましくは50μm〜2000μm以下、より好ましくは100μm〜1000μm、さらに好ましくは200μm〜500μmである。これは、Co2レーザによってなる溝部Gにおいても、側面Sのうち先端付近だけでなく開口部O付近までの、充填部Lと接合していた部分に現れることで、レーザのパルス由来の凹凸と区別できる。化学拡散接合部分の剥離面には波状に限らず様々な形状の凹凸があり、カットオフλc0.8mm・カットオフλs2.5μmでのRaは好ましくは1以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上、一層好ましくは10以上、Rzが好ましくは5以上、より好ましくは12以上、さらに好ましくは25以上、一層好ましくは50以上である。そのカットオフλc0.08mm・カットオフλs0.25μmでのRaは好ましくは0.25以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上、Rzが好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは2以上である。そのカットオフλc0.08mmでのWaは好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上、Wzは好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。いずれも最大は幅wないしその1/2である。充填部Lと基材部Mとが化学拡散接合している場合、それらの間には、明確な界面があるというより、略一定又は各部で異なる幅で、それらが互いに融け合い連続的に変化する部分が挟まれる。この部分では着色剤Cの分布が変化する。この部分が広いほど界面の結合が強固である。着色剤Cの割合が略一定の部分から着色剤Cが含まれない部分までの幅は、5μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましく、100μm以上が一層好ましく、上限はw又はw/2である。このように界面が連続的であることから、側面部Sでの反射は70%以上・80%以上が拡散反射でもよく、界面での45度鏡面光沢度(JIS Z8741等、ただし基材部Mを通るので近似値である。基準となるガラス面が試験片と同等の屈折率・厚さ・全光線透過率の基材部Mとアクリル系接着剤により接合されることで、測定条件が同等となる。)は30%以下・20%以下・10%以下・5%以下・2%以下・1%以下のいずれかでもよい。充填部Lと基材部Mとの界面での全反射が少ないほうがよい場合には、充填部Lあるいは展色剤Vの屈折率は基材部Mの屈折率以上でもよく、基材部Mの屈折率と0.1以下(又は0.2以下・0.05以下)の差でもよく、それらの両方でもよい。第5の実施形態等との組み合わせの場合、先端部分では充填部Lが化学拡散接合していなくてもよい。
本発明の1つの態様は、基材部と、前記基材部に形成された溝部と、を有する装飾体であって、前記溝部が充填部を有し、前記溝部における前記充填部と前記基材部との界面の少なくとも一部において、前記充填部と前記基材部とが化学拡散接合していることを特徴とする装飾体である。前記充填部と前記基材部とが強制的に分離される場合、前記充填部と前記基材部の一方の一部が他方に残るか、又は両方の一部が互いの他方に残ってもよい。前記残った部分の凹凸の高さが10um以上でもよく、30um以上でもよく、100um以上でもよく、前記溝部の幅以下でもよい。前記分離された面のカットオフλc0.8mm・カットオフλs2.5μmでの算術平均粗さRaが1μm以上でもよい。また、前記装飾体のうち前記基材部の少なくとも一部が透過性を有してもよく、前記充填部がPMMAを含んでもよく、前記基材部がPMMAを含んでもよい。前記充填部又は前記基材部におけるPMMAの比率は好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上でもよい。前記充填部が溝部の深さ方向の1/2以上を占める気泡を含まなくてもよい。本発明の別の態様は、材料に溝部を加工する溝加工部と、前記溝部に材料を充填する充填加工部と、を具え、それらにより前記装飾体を製造する装飾体製造装置及び、材料に溝部を加工する溝加工工程と、前記溝部に材料を充填する充填加工工程と、を具え、それらにより前記装飾体を製造する装飾体製造方法である。
《第3の実施形態》
特許文献1は、同明細書段落0027において、造形物3の表面に保護用の板を接着することを記載している。しかし、溝部Gの開口部側が接着剤等によって接合されると、溝部Gから空気が逃げ、保護板と基材部Mとの間に入って気泡となり、品質を低下させる。同公報はこの問題を記載も示唆もしていない。粘着剤付きの保護シート等が用いられればこれらの問題は起こらないが、保護シート自体の劣化や剥離のため、保護の目的には不充分である。保護板が接合されずに造形物3の前面に位置する場合には、それらを係合する外枠等が必要である。また保護板と造形物3の間に2面の反射面が介在する。そのため全体の全光線透過率が約10%低下し、文字等が暗く見え、不要な反射が増えるので不利である。
本実施形態は上記等の問題を解決する装飾体製造装置及び装飾体製造工程、並びにその装飾体の提供を課題としてもよい。例えば、その課題とは、板材等が溝部に特許文献1より良好に接合された装飾体等の提供である。特許文献1より良好な接合は、接合面に混入した気泡が少ない接合・耐久性の高い接合・立体文字効果があり溝部Gの汚染が少ない接合を含む。図5は第3の実施形態に係る造形物製造装置50の構成例を示す図である。図6は第3の実施形態に係る造形物製造方法のフローチャートの例である。以下、図5・6を参照して、造形物製造装置50の構成及び動作の例を説明する。造形物製造装置50は、例えば溝加工部41・上面部切断部52・上面部接合部53・被覆加工部44を具える。第3の実施形態に係る造形物製造方法は、例えば溝加工工程S41・上面部切断工程S52・上面部接合工程S53・被覆加工工程S44を含む。
溝加工部41(S41)は第1の実施形態でのそれと基本的に同様である。溝加工部41は画像30に基づいて材料板20に溝部Gを加工してもよい。溝部Gの断面形状は特に制限されず、楔状以外でもよい。溝部Gは空隙でもよく、充填されてもよい。
上面部切断部52(S52)は、例えば画像30に基づき、上面部材料22を溝部Gと近似した形状に切断する(S52)。その際、上面部切断部52は、画像30に含まれる文字等の輪郭を拡張して、文字等の各構成要素の幅を太く加工してもよい。反対に、溝加工部41が画像30の文字等を細くして溝加工してもよい。図7aのように、上面部Uが溝部Gの形状に沿った形状でもよい。これは、上面部Uの形状が互いに平行な複数の溝部Gの全体の外形に近似し、上面部Uが複数の溝部Gの開口部を塞ぐ場合を含む。上面部材料22は、桜井株式会社・3M Company・トーヨーケム株式会社・株式会社中川ケミカル・リンテック株式会社・ORAFOL等製のマーキングフィルムやその他のフィルムでもよく、より厚い樹脂板や、金属板・金属箔、紙等でもよい。上面部材料22の色は制限されない。上面部材料22の色は基材部M等と実用上同じ色でもよく、別の色であれば、上面部Uが文字等を表示できる。実用上同じ色とは、マンセル表色系において色相・彩度・明度の差がいずれも2ステップ以下かつ屈折率の差が0.5以下、特記時には1又は0.5ステップ以下かつ屈折率の差が0.2以下のことである。さらに被覆部Tがあれば、その文字等が透明体に封入され浮いているかのように見える。上面部切断部52は、PVC等のフィルムをカッティングプロッタやNCルータで切断してもよく、オレフィン系・PMMA系等のフィルムをレーザ加工機で切断してもよい。マーキングフィルムの多くの厚さは、好ましくは10〜400μm、より好ましくは20〜200μmであり、基材部M又は造形物Zの厚さの好ましくは1/5〜1/2000、より好ましくは1/10〜1/1000、さらに好ましくは1/20〜1/500、一層好ましくは1/40〜1/250である。
上面部接合部53(S53)は、必要な形状に切断された上面部材料22を、溝加工された材料20の所定位置に接合し、上面部Uとする(S53)。上面部材料22がマーキングフィルムであれば、塗布済の粘着剤により容易に接合可能である。この際、図7bのように、上面部Uが溝部Gの開口部Oを塞ぐことが望ましい。上面部Uは、溝部Gの側面Sの肩部から溝部Gの幅方向で外側にかけて、基材部Mとの接合部分Jを有してもよい。接合部分Jの接合幅jは、上面部Uの厚さtU以上が好ましく、幅wの1/2以上が好ましく、幅w以上がより好ましく、wの2倍・3倍以上がさらに好ましい。また、接合幅jは、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましく、1mm以上が一層好ましい。接合幅jが大きいほど、被覆部Tがない場合に接合部分Jが剥がれにくく、上面部Uによる溝部Gの保護効果が向上する。ただし、接合幅jが大きいほど上面部Uのはみ出し量が大きくなり、立体文字の効果が低下する場合がある。接合幅jは、これら2つの相反する効果の兼ね合いで決定されてもよい。また、接合幅jは各部で均等でもよい。造形物Z各部で接合幅jが最大の部分と最小の部分の差の接合幅jの平均に対する割合は、1以下が好ましく、1/2以下がより好ましく、1/3以下がさらに好ましい。このばらつきが大きいと、接合幅jが狭い部分の開口部Oで穴が開くことがある。ただし、ばらつきが意匠性に寄与する場合もあり、その場合はその割合が2以下でもよい。上面部接合部53は、上面部Uに転写シート(アプリケーションシート)を併用し、さらに温度管理により作業中の伸縮を抑えることで、精密かつ効率的に位置決めを行える。なお、接合は接着剤だけでなく、粘着剤N等による貼付等も含み、上面部Uが接した状態で固定されていれば接合されている。充填部Lのない溝部Gの表面部Fのみにマーキングフィルムが貼付された場合、側面Sが外気に対して露出する。そのため、特に屋外用途では、埃等が溝部Gに入り込んで汚れやすい。レーザ加工等による楔状の溝部Gでは、先端部分の幅が狭いため、清掃によってこの汚れを除去することも難しい。一方、上面部Uが開口部Oを塞いでいれば、この問題は解消する。上面部Uの最も広い面が溝部G(の二分面)となす角度は様々でよい。しかし、上面部Uが溝部Gに平行であると、上面部Uは開口部Oを塞げないので、上面部Uの最も広い面は溝部Gに平行でなくてもよい。なお、実際には造形物Zの内部は屈折して見えるので、図7aのようには見えない。図7aは屈折現象を無視し、造形物Zの内部の溝部Gを点線により透過図として図示してある。図10も同様である。また、説明の便宜上、図7の各部で拡大率が異なる。
被覆加工部44(S44)は、上面部接合済の材料板20に別の材料板20を既知の接着剤A等で接合し、被覆部Tとする(S44)。なお、図7・9以外の図面の断面図は、接着剤Aを図示していないが、それらの造形物Zも接着剤Aや被覆部Tを有する場合がある。被覆部Tは厚さが一定の板状体でもよく、その場合上面部Uの最も広い面は表面部Fに(被覆部Tの凹凸等の範囲内で)平行である。被覆部Tの表面部F側が例えば凸状で、上面部Uの最も広い面が表面部Fに平行でなくてもよい。被覆部Tは、厚いほど保護性能が向上する。短期用途や屋内用途であれば被覆部Tがなく、上面部が露出してもよい。被覆加工が行われる場合、上面部Uが溝部Gを塞いでいるので、接着剤Aが溝部Gに流れ込むことがない。そのため、溝部Gが充填されずに空隙のまま密封されるので、臨界角の作用により、溝部Gが光を反射して輝く。段落0031に記載の各条件の場合、この反射効果がより高い。溝部Gは、充填部Lを有さずに、側面Sの表面部分のみに着色されてもよい。これにより、第1の実施形態と異なり、溝部Gが着色された色の光を全反射して輝く。この場合も含め、上面部Uは無色透明ないし基材部M等と略同じ色で、開口部Oの蓋の役割だけを果たしてもよい。また、上面部Uが溝部Gを塞がない場合、被覆加工時に、溝部Gから漏れ出た空気が基材部Mと被覆部Tとの間に気泡として残りがちである。本実施形態はこのトラブルを回避する効果を奏する。造形物Zが被覆部Tを有する場合、接合部分Jは被覆加工時だけ表面部Fと密着していればよい。よって、被覆部Tがない場合より、その接合力は弱くてもよく、接合幅jは0でもよい。また、上面部Uのうち溝部Gの幅方向で最も外側の部分が、対応する溝部Gのうち開口部Oにおける幅方向に最も外側の部分に対し幅方向で同位置かより外側にあるならば、上面部Uは溝部Gを塞いでいるといえることが、図7から理解される。上面部Uの端部と開口部Oの端部とが幅方向において同位置であっても、接合方法によっては開口部Oを密閉することができる。なお、造形物Zが被覆部Tを有さない場合、表面部Fは上面部Uの側の露出部分であって、上面部U以外の部分である。
上面部Uのうち最も広い面における最も外側の部分の少なくとも一部が、表面部Fの最も外側の部分より内側でもよい。図7では、z方向の高さの差を無視すると、上面部Uの輪郭は表面部Fの輪郭によって区分される領域の内部に包含されている。そのため、被覆部Tと基材部Mとが、上面部Uの外側で上面部Uを挟まずに直接接合し、全体の接合強度が向上する。ただし、上面部Uが基材部Mの全面に接合され、その最も外側の部分が表面部の最も外側の部分と同じ位置でもよい。これにより上面部切断加工が省略可能となる。また、溝部Gは閉領域状でもよい。すなわち、始点と終点が略一致し、円・多角形やさらに複雑な図形のように閉じた図形でもよい。図7aの文字Aのように複数の溝部Gが包含関係にあり、複合する閉領域状であれば、上面部Uはそれに対応する穴を有してもよい。これにより基材部Mと被覆部Tとの接合部分が増え、それらが密着する。このように、上面部Uと溝部Gとが互いに対応する形状であってもよい。それらが互いに同相でもよい。つまり、互いの形状が連続的に変形可能でもよい。その場合それらの穴の数が同じである。また、溝部Gは図7aのG0のように、始点と終点とが離れた開領域状でもよい。すなわち、上面部Uが両側の接合部分J及びそれらの間のみで、表面部Fとの接合部分を間に挟まなくてもよい。上面部Uが連続している箇所で、溝部Gが途切れて開領域状であってもよい。溝部Gの幅wは1mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましい。幅wが狭い方が密封性が高いからである。また、図7bのように、上面部Uのうち開口部O付近の一部が凹状又は凸状になることがある。この凹凸は、開口部Oの肩部の基材部Mの凹又は凸形状によることもある。この凹凸により被覆部Tの密閉性が向上することもあるが、装飾性の点からは、凹凸が小さいほうがよい。この凹凸の深さをdUとすると、dU/tUは16以下が好ましく、8以下がより好ましく、4以下がさらに好ましく、2以下が一層好ましく、1/4以上が好ましく、1/2以上がより好ましく、1以上がさらに好ましい。dU/wは2以下が好ましく、1以下がより好ましく、1/2以下がさらに好ましく、1/3以下が一層好ましく、1/16以上が好ましく、1/8以上がより好ましく、1/4以上がさらに好ましい。
第1の実施形態のように溝部Gが充填部Lを有する場合でも、充填材料21の不要部分の除去時の掻き取り・硬化時の収縮・表面張力により、充填部Lの開口部O側は図3aのように凹状となることが多い。この凹部内の空気が、充填部Lがない場合と同様、被覆加工時に気泡となりがちである。図3b・4のように充填部Mと基材部Mとが面一であるためには、研磨等の工程が必要となり、コスト・研磨痕・接合部への粉塵の混入・開口部Oの角の欠けの点から好ましくない。この場合にも、幅wが小さい方が、凹部の深さが小さく抑えられるので好ましい。一方、溝部G0のように充填部Lの開口部O側が凹状であって、その部分を塞ぐ上面部Uが略平坦であれば、それらの隙間に空気が残る。この空気がクッションとなり、充填部Lと基材部Mとの膨張率の差を吸収するので、充填部Lが剥離しにくくなる。それゆえ、上面部Uが溝部Gの開口部Oを塞ぐことは、溝部Gに充填部Lが充填された造形物Zにおいても有効である。
溝加工部14は、画像30を左右反転し、裏面部R側から見た場合に文字等が正像となるように加工してもよい。これにより、観察者が裏面部R側の正面から造形物Zを見た場合のみに文字等の内部に上面部Uが見え、斜めからは上面部Uがほとんど見えない効果等が得らえる。また、裏面部R側のみから観察される場合、被覆部Tは低透過率や高ヘーズでもよい。同様に、表面部F側のみから観察される場合、裏面部R側に濃色で不透明に近い板等が装着・接合されてもよい。図7cの上面部U1・2のように、複数の上面部Uが同じ箇所で重なってもよい。つまり例えば、溝部Gに直に接する上面部U1が無色透明で溝部Gを塞ぎ、その表面部F側に、上面部U1とは別の形状の有色の上面部U2が乗ってもよい。これにより有色の上面部Uの形状が自由になる。上面部接合部53は、上面部U2を被覆部Tに接合してもよい。図7dのように、複数層の上面部Uが裏面部R側にあってもよい。複数の上面部Uが間に被覆部Tを挟んでもよい。なお、上面部Uが無色透明であっても、基材部Mとの屈折率の差等により、上面部Uの影が見え、識別可能なことがある。
図7dのように、表面部F側と裏面部R側の両側に上面部Uがあってもよい。例えば、まず、溝加工部41が開領域状の溝部Gを、材料板20を貫通させて加工する。次に、上面部接合部53が、表面部F側に無色透明の上面部U3を、裏面部R側に無色透明の上面部U4を接合する。有色透明の上面部U5が追加されてもよい。さらに、被覆加工部44が、被覆部T1及び被覆部T2を接着剤A等で両側に接合する。加工の順序は任意に変更可能である。これにより深さdGが一定となる。また、上面部U3・4により、接着剤Aが溝部Gに浸入したり、気泡を含んだりする問題等が解消される。被覆部T1等は有色不透明でも有色透明でも無色透明でも基材部Mと実用上同じ色でもよい。閉領域状の溝部Gであれば、上面部接合部53は、切断された複数の材料板20の位置合わせ後にそれらを上面部U1・2で接合してもよく、内側の材料板20を省いて中空にしてもよい。この造形物Zでは、例えば、表面部F側から、溝部Gの奥に表面部Fに平行な色の面が見える。溝部Gはさらに充填部Lを有してもよい。溝加工部14がdGを一定に加工できるならば、貫通しない溝部Gが開口部O側に上面部U3及び被覆部T1のみを有し、上面部U4及び被覆部T2を有さなくても、開口部Oの反対側から観察されれば同様の効果が得らえる。また、閉領域状の溝部Gの場合、溝部Gの内側と外側とで異なる色の材料板20が組み合わされてもよい。
本発明の1つの態様は、表面部と、裏面部と、溝部と、上面部と、を有する装飾体であって、前記裏面部が前記表面部に対向し、前記上面部と前記溝部とが少なくとも一部で互いに接し(溝部が充填部を有する場合や、溝部が充填部と上面部との間に空気層等を有する場合を含む。また、上面部と溝部とが間に接着剤等を挟む場合を含む。)、前記上面部が前記溝部より前記表面部又は裏面部のいずれかの側にあり、前記上面部のうち前記溝部の幅方向で最も外側の部分が、前記溝部のうち前記いずれかの側であって前記幅方向に最も外側の部分に対し前記幅方向で同位置かより外側にあることを特徴とする装飾体である。前記上面部のうち前記幅方向で最も外側の部分の少なくとも一部が、前記いずれかのうち前記幅方向で最も外側の部分より前記幅方向で内側でもよく、前記上面部が前記溝部の形状に沿う形状でもよく、前記上面部の色が前記表面部又は前記裏面部の少なくとも一方の色と異なってもよく、前記上面部が前記表面部及び前記裏面部に露出しなくてもよく、前記溝部が前記表面部又は前記裏面部の少なくとも一方に平行でなくてもよく、前記上面部のうち最も広い面が前記溝部に平行でなくてもよく、前記上面部の最も広い面の少なくとも一部が前記表面部又は前記裏面部の少なくとも一方に平行でもよく(上面部Uが凹状等の曲面である場合等を含む。上面部の曲面が前記表面部又は前記裏面部となす角度は好ましくは10°以下であり、より好ましくは5°以下であり、さらに好ましくは2°以下である。)、前記溝部が前記表面部又は前記裏面部の少なくとも一方を透過して観察可能でもよく、前記上面部が前記表面部又は前記裏面部の少なくとも一方の側から観察可能でもよい。本発明の別の態様は、材料に溝部を加工する溝加工部と、前記溝部に上面部を接合させる上面部接合部と、をそなえ、それらにより前記装飾体を製造することを特徴とする装飾体製造装置及び、材料に溝部を加工する溝加工工程と、前記溝部に上面部を接合させる上面部接合工程と、をそなえ、それらにより前記装飾体を製造することを特徴とする装飾体製造方法である。
複数の上面部Uが重なる場合、例えば上面部U1に上面部U2が重なる部分と上面部U2のみの部分との境界部分(上面部U4に上面部U5が重なる部分と上面部U5のみの部分との境界部分)付近で段差ができるか、上面部U2(U5)と基材部Mとの隙間に空気が残ることがある(図7c・d)。いずれも装飾性を低下させ好ましくない。またこの空気が、被覆部T(T2)の接合時に接着剤Aへ漏れ出し気泡となることがある。これらの問題を避けるため、充填加工部43が、上面部U2(U5)となる上面部材料22の接合前に接着剤A0を上面部U1(U4)となる上面部材料22の輪郭部分に塗布してもよい。あるいは、上面部接合部53がこの部分を接合せずに浮かしておき、被覆部T(T2)となる材料板20の接合時にこの隙間へ接着剤Aを流れ込ませてもよい。これらにより、接着剤A0が、上面部U2(U5)が浮いた部分の隙間を埋める。接着剤A0は接着剤Aと同じでもよく、異なってもよい。接着剤A0の厚さは、図7cのように、一定であるか、上面部U1の端部に近い部分では上面部U1の厚さに近く、前記端部から離れるにつれて小さくなり、0に近づくか一定になることが多い。なお、接着剤A0の厚さは、接着剤A0に近い表面部F又は裏面部Rに垂直な方向の長さである。接着剤A0の厚さが0の部分では、上面部U2の粘着剤Nが基材部Mに直接接合している。なお図7b・dは粘着剤Nの図示を省略しているが、各上面部Uはそれぞれの粘着剤Nを含むことがある。粘着剤Nの多くは、各種アルコール・酢酸ブチル・シクロヘキサン等の溶剤で除去可能である点で接着剤A0の多くと異なる。接着剤A0の厚さの変化がなだらかなほど、段差が目立たないのでよい。接着剤A0において、最大の厚さをtA0、厚さが最大の部分(U4の端面との境界等)から最小の部分までの最短距離をdA0とすると、dA0/tA0は3以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、15以上が一層好ましい。これらの範囲は、接着剤A0の厚さが一定の場合及び前記厚さが上面部U1(U4)の端面に接する部分よりそこから離れた部分の方が大きい場合を含む。dA0は接着剤A0の粘度の調整や上面部材料22を支える治具により拡大可能である。表面部Fないし裏面部Rの片側につき3層以上の上面部Uが重なってもよい。上層の上面部Uの接合前に下層の上面部Uの重複部分近辺に接着剤A0が塗布され、その後に上層の上面部Uが接合され、接着剤A0の硬化前に接着剤Aによって被覆部Tが接合されてもよい。接着剤A0と接着剤Aとが同じ接着剤の場合、これにより自然に一体化する。各層の重なり順は任意に変更可能である。
本実施形態の以下の態様は粘着フィルム等を用いた装飾体又は表示体及びその製造装置・製造方法に関する。特開2013−72064号公報に記載のような、複数のマーキングフィルムを重ねて貼る方法が知られている。同公報は、段落0007において、貼付済の装飾用マーキングフィルムが剥がされずに、その上に新しいフィルムが重ね貼りされる場合、下の古いフィルムの形状が、新しいフィルムの表面に浮き上がるという問題を記載している。同公報は、この問題を解決するため、マーキングフィルムを薄くすることで段差を小さくするという発明を記載している。しかし、上層のフィルムが下層のフィルムの上にそのまま重ね貼りされる限り、端部に隙間が必ずでき、段差となる。その部分の上層のフィルムが他の部分に比べて大きく傾斜し、他と顕著に異なる反射等を示すことは避けられなかった。段差が低ければその程度が軽減されるとはいえ、根本的な解決にはならなかった。本実施形態は、重ね貼りされた粘着フィルム等の段差が従来技術より目立ちにくいことを課題としてもよい。次の態様により、重ねて貼られた粘着フィルム等の段差が目立たず、気泡が抑制される。この態様では、上面部Uは溝部Gを密封しなくてもよく、造形物Zが溝部Gを有さなくてもよい。被覆部Tはなくてもよい。
本発明の1つの態様は、基材部と、前記基材部に接合された複数のフィルム層と、を有する装飾体であって、前記複数のフィルム層のうち2以上のフィルム層及び前記基材部が互いに重なる部分と前記2以上のフィルム層のうち前記基材部から最も離れたフィルム層(例えば上面部U2)を除く1以上のフィルム層(例えば上面部U1)を含まない部分との境界部分から前記含まない部分の少なくとも一部にかけての部分において、前記2以上のフィルム層のうち前記1以上のフィルム層以外のフィルム層と前記基材部との間に接着剤(例えば接着剤A0)が充填されていることを特徴とする装飾体である。前記接着剤の厚さが一定でもよい。前記装飾体が前記2以上のフィルム層に対する前記基材部の反対側に被覆部を有し、さらに前記被覆部と前記基材部との間に接着層(例えば接着剤A)を有してもよく、前記接着剤と前記接着層とが同じ成分でもよい。前記接着剤と前記基材部とが化学拡散接合でもよい。前記複数のフィルム層の少なくとも一部が接合層(例えば粘着剤N)を含み、前記接合層と前記基材部とが化学拡散結合でなくてもよい。前記接合層の厚さが前記接着剤の最大の厚さの好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下でもよい。[前記接着剤の厚さが最大の部分から、前記最大の部分より前記境界部分から遠く前記厚さが最小の部分までの最短距離]/[前記接着剤の最大の厚さ]≧3でもよい。前記接着剤は、前記基材部が含むのと同じ樹脂(又はポリマー)を含んでもよく、PMMAを含んでもよい。前記接着剤における前記樹脂又はPMMAの比率が、好ましくは50%以上でもよく、より好ましくは70%以上でもよく、さらに好ましくは90%以上でもよい。前記樹脂が前記接合層にも含まれる場合、前記接着剤と前記接合層とにおける前記樹脂が占める比率の差は好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上でもよい。前記複数のフィルム層の各部の色が互いに異なってもよい。前記複数のフィルム層の少なくとも1つの色が前記基材部の色と異なってもよい。前記基材部又は前記複数のフィルム層の少なくとも一部が透過性を有してもよい。本形態の別の態様は、材料に複数のフィルム層を接合する接合部(例えば被覆加工部44)と、前記材料と前記複数のフィルム層の一部との間に接着剤を充填する充填部(例えば充填加工部43)とを有し、それらにより前記装飾体と同じ特徴を具える造形物を製造する造形物製造装置及び、材料に複数のフィルム層を接合する接合工程と、前記材料と前記複数のフィルム層の一部との間に接着剤を充填する充填工程とを有し、それらにより前記装飾体と同じ特徴を具える造形物を製造する造形物製造方法である。
《第4の実施形態》
特許文献1は、明細書段落0021・0041等において、溝部Gの先端部分が凹凸状であり、溝部Gの深さが一定でない造形物3を記載している。かかる加工結果は、レーザ加工に付随して発生することが多い。特に、溝部の始点や終点でレーザ出力の変動が大きいため、この凹凸が顕著となることが多い。また、特許文献1は記載していないが、溝部が複雑な形状であると、角の部分や曲率の大きい曲線部分で大きな凹凸が発生する。この凹凸は、特に立体文字において、立体的な装飾効果を低下させるため、排除又は抑制されたほうがよい。しかし、特許文献1は、段落0041において「溝部Gの一部に凹凸があればさらに細かく光って見える。」と記載し、これを解決すべき課題とするのではなく、むしろ積極的な装飾効果を呈する特徴と認めている。それゆえ、特許文献1は、この問題に対する解決手段も記載していない。
本実施形態は、上記等の問題の解決を課題としてもよい。すなわちその課題とは、例えば、透過性を有する基材部に形成された溝部が一定の深さに見える装飾体、並びにその装飾体を製造する装飾体製造装置及び装飾体製造工程の提供である。第4の実施形態に係る造形物製造装置は、造形物製造装置40又は50と少なくとも一部が同じ構成を有してもよい。第4の実施形態に係る造形物製造方法は、第1又は第3の実施形態に係る造形物製造方法と少なくとも一部が同じ工程を有してもよい。
本実施形態において、溝加工部41は、複数の材料板20を取得することができる。そのうちの1つである上層材料板201は透過性を有する。それとは別の下層材料板202は上層材料板201より透過性が低くてもよく、全光線透過率が低いか、又はヘーズが多くてもよい。下層材料板202は例えば白・乳半・フロスト・ラメ入り・不透明又は透明な黒・青・緑等でもよい。下層材料板202は、上層材料板201との接合の容易さから、上層材料板201と同一・同種・類似の材質でもよいが、金属板等の異なる材質でもよい。下層材料板202の明度が高いほど、溝部Gからの光を受けて明るく輝く。その明度はマンセル表色系においてv6以上・v7以上・v8以上のいずれかでもよい。下層材料板202の厚さは、上層材料板201の厚さより小さくてもよく、1−5mmでもよく、2−3mmでもよい。
図8は溝部Gの長さ方向に平行な断面図である。溝加工部41は、上層材料板201と下層材料板202とを接合後、図8aのように、レーザ加工部411によって溝部Gを形成してもよい(S41)。上層材料板201と下層材料板202とが供給元により接合済でもよい。レーザ加工部411は、溝部Gの各部の深さdGの平均を、上層材料板201の厚さより大きくしてもよい。あるいはレーザ加工部411は、溝部Gの最小の深さを上層材料板201の厚さと同等かそれ以上にしてもよい。本実施形態では、充填加工部43が充填加工を行っても行わなくてもよい。
製造後の造形物Zは、互いに透過性の異なる複数の層を含む。溝部Gのうち、先端の凹凸状部分の全部又は大部分は、図8bのように、基材部Mのうち透過性が低い基材下層M2の範囲に収まるので隠れている。観察者には、溝部Gのうち透過性が高い基材上層M1を貫通する、深さが揃った部分のみが見える。溝部Gの凹凸状部分は、一部が基材上層M1に現れてもよいが、その割合は少ないほどよい。溝部Gの総延長のうち基材上層M1に凹凸が見える部分の長さの割合は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。また、基材上層M1における溝部Gの深さのうち凹凸が見える部分の深さの割合は、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。いずれも下限は0%である。また、溝部Gの凹凸が小さく、溝部Gが概して同じ深さに見える場合、本実施形態の適用はあまり必要ではない。溝部Gの深さ方向の凹凸の深さ(又は凹凸のうち基材下層M2内の部分の深さ)が、1mm以上・2mm以上・3mm以上、又は幅w以上・wの2倍以上・5倍以上・10倍以上、あるいは深さdGの1/10以上・1/8以上・1/6以上の場合、本実施形態が特に大きな効果を示す。その効果は凹凸が大きいほど大きい。凹凸の上限は深さdG又はその1/2である。
溝部Gが裏面部Rを貫通すると、屋外等においてその穴から浸水して破損の原因となるので、貫通しないほうがよい。ただし、貫通孔がφ0.5mm以下・0.3mm以下・0.1mm以下といった微小なものであれば、浸水が少ないので、許容範囲内である。また、溝部Gのこのように細い部分では、充填加工時に、充填材料21が突起状に深い部分の先端まで届かないことがある。かかる突起状部分の先端は、空気を残すため、光を全反射して目立つ。よって、前記のφの突起状部分は、深い方が基材下層M2に隠れるので好都合である。溝加工部41は、充填時の空気の残留を避けるため、図8bの一部のように突起状部分を裏面部Rまで貫通させてもよい。被覆加工部44は、裏面部R側にさらに別の材料板20を接合する等により、下層材料板202に開いた貫通孔を密封してもよい。一方、造形物Zが壁等に直接接合される場合、接着剤が貫通孔を塞げば浸水等の問題はない。のみならず、貫通穴に浸透した接着剤の投錨効果により接着力が向上するので、貫通孔があってもよい。
本発明の1つの態様は、複数の層と、溝部と、を有する装飾体であって、前記複数の層が透過性を有する層及び該透過性を有する層より透過性が低い層を含み、前記透過性を有する層が前記溝部を有し、前記溝部の少なくとも一部が前記透過性が低い層に連続し、前記透過性が低い層に連続する前記溝部の少なくとも一部が、前記透過性が低い層において深さ方向の凹凸を有することを特徴とする装飾体である。本発明の別の態様は、複数の層を貼り合わせる貼合部と溝加工部を具え前記装飾体を製造する装飾体製造装置及び、材料を加工して前記装飾体を製造する装飾体製造方法である。
《第5の実施形態》
本実施形態は、第4の実施形態に類似の課題等を、基本的には別の方法で解決する。第4の実施形態と同様の工程において、例えば溝加工部41は、接合前の上層材料板203に溝加工してもよい。この場合、溝加工部41は、溝部Gが一部で上層材料板203を貫通し、一部で貫通しないように加工する。貫通しない溝部Gの先端部分は上層材料板203の裏面に近いほどよい。ただし、溝部Gを挟んで対向する基材部Mどうしがつながっている部分が弱すぎると、自重等により分離して抜き加工状態になってしまうので、後加工に耐える最大限まで溝部Gが深いのがよい。これにより、図9aが断面を示すように、溝部Gが点線状に貫通し、それ以外の部分で両側の側面Sがつながった状態となる。この溝部Gは深い突起状部分を有さない。造形物製造装置40は、このまま造形物Zとしてもよいが、強度の確保と、さらなる溝部Gの凹凸の低減のため、溝加工後の上層材料板203に下層材料板204を接合してもよい。それらは同一・同種の材質でもよく、互いに異なる色でもよく、いずれも透過性を有してもよく、同一メーカの同一銘柄の材料でもよく、実用上同じ色でもよい。接合のための接着剤Aには、溶剤のみの接着剤よりも、ジクロロメタンやジクロロエタン等の溶剤に、PMMAや上層材料板203と同種の樹脂粉末等が溶解された接着剤・MMA等の主剤及び重合開始剤・硬化剤等の助剤によってなり、溶剤を含まない接着剤・MMA及び触媒によってなるMMAシラップ等が適する。接着剤Aは、上層材料板203等と実用上同じ色である方がよい。造形物製造装置40は、突起部分が下向きの上層材料板203と下層材料板204とを接合する。この時、接着剤Aが、接合時の貼り合わせ圧及び毛細管現象によって、溝部Gの貫通した部分に浸透する。硬化後の接着剤Aのうち溝部Gに露出した部分は先端充填部Pとなり、図9bのように溝部Gの突起や凹凸を埋める。接着剤Aの体積は、溶剤やMMA等の揮発により硬化後に減少することがある。接着剤Aの硬化収縮率・粘度・溶剤の沸点・塗布膜厚・貼り合わせ圧等の調整により、溝部G内での先端充填部Pの深さの制御が可能である。造形物製造装置40は、下層材料板204をPP等の難接着材とし、これを接着剤Aの硬化後に剥がしてもよく、下層材料板204を接合せず、上層材料板203を接着剤Aに浸漬することで、同様の結果を得てもよい。
具体的には、例えばULS社製VLS6.60を具えるレーザ加工部411が、8mm厚のPMMAの上層材料板203に溝部Gを加工する。加工後の溝部Gでは、加工側の反対側まで貫通した部分と、一例としては0.2〜0.5mmの深さで貫通せずに残っている部分とが、点線状に連続している。次に、充填加工部43が、基材部Mと実用上同じ色等の下層材料板204に接着剤Aを0.1〜0.5mm程度均一に塗布し、その上に、上層材料板203を接合する。例えば、第2の実施形態に記載の充填材料21例が接着剤Aとして採用可能である。接着剤Aは着色剤Cを含まなくてもよい。その動粘度は400〜2000でもよい。動粘度の単位はmm2/s、25℃、測定方法は、展色剤Vが石油製品であればJIS K 2283、一部ISO2909及びISO3104等に、それ以外の液体であればJIS Z 8803等に準拠する。以下同様である。接合時には上層材料板203が毎秒2〜5mmの速度で降下する。これらのパラメータは、材料板の面積と溝部Gの長さの兼ね合い・室温・上層材料板203の分子量等に応じて、適切な値に変更されてよい。上層材料板203が降下するにつれ、溝部Gの先端部分に接着剤Aが浸入する。あるいは、充填加工部43は、溝部Gに接着剤Aを充填した後、薄いフィルム・針・楔状の板等により不要な接着剤Aを掻き出して、溝部Gの先端部分のみに先端充填部Pが形成されるようにしてもよい。これにより、レーザ加工によりながら、深さ方向の凹凸の少ない溝部Gが得られる。この溝部Gでは、側面Sはレーザ加工特有の波状凹凸を有し、かつ平滑であり、さらに少なくとも一部の先端部分の深さdGの差/幅w又はdGの差/側面Sの波状凹凸のうち長さ方向に平行でない方向の凹凸のピッチが、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは1/2以下、一層好ましくは1/4以下である。先端充填部Pは、突起部のみを埋めてもよく、突起部以外の細かな凹凸までも埋めてもよく、dGを一定にしてもよく、わずかな凹凸を残してもよい。これにより、完成後の造形物Zの溝部Gにおいて、底面部BのRaは好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは20以下、一層好ましくは10以下でもよい。深さ方向の凹凸が最大である部分の凹凸の量が、凹凸が最小である部分の凹凸の量の、好ましくは4倍以下、より好ましくは2倍以下、さらに好ましくは3/2倍以下でもよい。また、溝部Gの少なくとも一部の凹凸の量は、wの2倍以下・1倍以下・1/2以下、前記側面Sの凹凸のピッチの2倍以下・1倍以下・1/2以下、最大のdGの1/10以下・1/20以下・1/30以下、又は0.2mm以下・0.1mm以下・0.05mm以下のいずれかでもよく、小さいほどよい。その下限は0又は測定限界である。先端充填部Pの深さは、dGの1/4以下・1/8以下・1/12以下、又は2mm以下・1mm以下・0.5mm以下でもよく、小さいほどよい。また、先端充填部Pの屈折率は基材部Mの屈折率と異なることが多い。その差は、0.01以上・0.02以上・0.03以上・0.04以上・0.05以上の場合もある。それらの間では、屈折率以外にも赤外吸収スペクトル・結晶方向等さまざまな特性が異なる可能性がある。また、レーザ加工部411が溝加工した上層材料板203は、熱影響により、各部で異なる屈折率を示し、特に側面Sの近くほど大きな複屈折を示すことがある。一方、先端充填部P及び下層材料板204は複屈折をほとんど示さず、各部で屈折が等方的であることが多い。側面Sのある方向及びそれと直交方向からの少なくとも一部の波長に対する屈折率の差が、好ましくは0.002以上、より好ましくは0.005以上、さらに好ましくは0.008以上であり、先端充填部Pのそれが好ましくは0.0005以下、より好ましくは0.0001以下、さらに好ましくは0.00005以下でもよい。また、側面Sの平行方向又は垂直方向の2次複屈折位相差が好ましくは100nm以上、より好ましくは200nm以上、さらに好ましくは400nm以上であり、先端充填部Pのそれが好ましくは80nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下でもよい。これらはエリプソメータM−2000V−Te等で測定可能である。造形物Zが複数の層によってなることが、これらの特徴から特定可能である。先端充填部Pの屈折率等の測定にあたっては、溝部Gが分割され、露出した先端充填部Pの表面が研磨されてもよく、一定の厚さに成形されてもよい。
通常、レーザ加工によってなる溝部Gは、楔状であり、さらに、開領域状の場合、始点及び終点が図9のようにテーパー状となる。これと第1の実施形態に記載の溝部Gの深さ方向及び側面Sの凹凸はレーザ加工結果に固有の特徴である。ところが、本実施形態の適用により、深さ方向の凹凸は解消される。これにより、レーザによる良好な加工性・低コストと、略一定の深さの溝部の意匠性とが両立する。この造形物Zは、立体的効果を目的とする場合にも、一定の深さdGにより優れた立体感をもたらす。この装飾体は、従来の切り文字と異なり、レーザ加工等によって1枚の板上に製造できるので、壁等へ容易に取り付け可能である。この装飾体では、溝部Gが、屈折作用により、装飾体の表面部と側面とで屈折の作用により変化して見えるので、従来の切り文字とは異なる装飾効果を呈する。従来の切り文字は外形に凹凸の突起を有するため、汚れやすく、清掃も面倒であり、破損しやすい。本実施形態はこれらの点も改善する。
本発明の1つの態様は、溝部を有し、前記溝部の長さ方向に垂直な断面形状が楔状又はテーパー状であり、前記楔状の断面形状における前記溝部の対向する両側の側面のなす角度が10°以下であり、前記側面が、前記溝部の深さ方向における1/2の部分から前記楔状の先端方向にかけて、前記深さ方向から20°以内の方向の複数の凹凸を有し、前記溝部の少なくとも一部における前記深さ方向の凹凸の深さが、前記溝部の幅の2倍以下又は前記側面の波状凹凸のうち長さ方向に平行でない方向の凹凸のピッチの2倍以下の少なくとも一方であることを特徴とする装飾体である。前記溝部が楔状の先端部分に先端充填部を有してもよく、前記先端充填部の深さが前記溝部の深さの1/4以下でもよく、前記側面が、前記溝部の深さ方向における1/2の部分から前記楔状の先端部分の反対方向にかけて、前記長さ方向と平行な凹凸を有してもよく、前記側面のヘーズが5%以下でもよく、前記側面の全光線透過率が80%以上でもよい。前記溝部の少なくとも一部が、底面部と、該底面部に対して前記溝部の反対側に2つの層の界面を有し、該界面の凹凸が前記底面部の凹凸より大くてもよい。本発明の別の態様は、材料に溝部を加工する溝加工部と前記溝部の先端部に材料を充填する充填加工部を有し前記装飾体を製造する製造装置及び、材料に溝部を加工する溝加工工程と前記溝部の先端部に材料を充填する充填加工工程を具え前記装飾体を製造する製造方法である。
《第6の実施形態》
特許文献1は、段落0055等において、無色透明の溝部Gが、照明光の色で着色されて見えたり、光の色の変更によりさまざまな色に変化して見えたりする、という発明を記載している。しかし、この効果のためには光に色がなければならなかった。そのため、屋外に設置された造形物3が、自然光でこの効果を発揮することはできなかった。また、造形物3の広い面積の部分がこの効果を示すには、その部分全面が溝部Gを有していなければならず、高額の加工費用を要した。さらに、Co2レーザ加工等の場合、溝幅を狭くできないため、万線状の溝部Gのピッチの微細化にも限界があり、小サイズの造形物3では細かい絵柄の再現に無理があるという問題があった。本実施形態は、特許文献1に記載の発明と異なり、光源色に依存せず、自然光によって、無色透明の溝部Gが各部に色を投光するような装飾体等の提供を課題としてもよく、溝部Gの色が正面からは見えず、端面からは見える効果を課題としてもよい。
図10のように、溝部Gが有色透明のフィルムよりなる色帯部Kを挟み、この色帯部Kが両側の側面Sに接合されていなければ、造形物Zの側方等からの光が両側の側面S及び色帯部Kを透過し、入射方向の反対側に色帯部Kの色の影を投影する。一方、溝部Gの側面角θSが前記の範囲内で充分に小さければ、観察者が溝部Gを表面部F又は裏面部Rを通して見る限り、色帯部Kの色は臨界角の作用により見えない。つまり、色帯部Kの色は直接は見えず、透過光が投影された影としてのみ観察可能である。ただし、色帯部Kの色は造形物Zの端面部分では側面Sを通して見え、観察者の意表を突く。図10aは、造形物Zの端面から見える溝部G2を点線で図示するが、これは溝部G2の概念的な位置を示すものである。実際には端面からは色帯部K2が見え、その位置は屈折によって図10aとは異なる。色帯部Kが不透明でも、端面からのみ見える効果は得られる。色帯部Kが片側の側面Sのみに接合されれば、表面部Fからは、色帯部Kが、接合された側の側面Sを透過してだけ見える。色帯部Kは色や凹凸による模様を有してもよい。色帯部Kの深さに応じて、造形物Z各部で色の強さが変化する。この造形物Zは、例えば造形物製造装置40により製造される。その際、溝加工部41が材料に溝加工し、充填材料調合部42が色帯部Kを取得し、充填加工部43が色帯部Kを溝部G内に挿入してもよい。その後に被覆加工部44が被覆部Tを接合してもよい。これにより、色帯部Kが外側に露出せず、溝部Gから脱落しない。また、開口部O又は底面部Bにおいても色帯部Kが基材部Mや被覆部Tに接合されていない場合、θEが大きければ上記と同様の効果を奏することがある。よって、溝部Gの全体が色帯部Kとの間に空隙を有してもよい。なお、溝部Gが色帯部Kとの間に空隙を有するとは、両者が互いに密着しておらず、両者の間に薄い空気の層があり、又は両者が接していても接合されておらず、結果として両者の界面での臨界角が空気との臨界角と同等である状態を指す。
色帯部Kを透過した光は、造形物Zが基材上層M5と、それより低透過性の基材下層M6を有する場合に、基材下層M2に反射してより鮮明に見える。基材下層M6が白色かそれに近い明るい色であり、全光線透過率20%以下・15%以下・10%以下で5%以上・8%以上・10%以上、可視光域の分光透過率が全域で20%以下・10%以下、さらに分光透過率の可視光域内の差が20%以下・10%以下、ヘーズ90%以上・95%以上・99%以上、マンセル表色系における明度がv5以上・v6以上・v7以上・v8以上、彩度がc4以下・c3以下・c2以下(以上分光色差計・色彩輝度計等による計測、厚さにより変動する値は2mm厚換算時)、の少なくともいずれかの場合に特に効果的である(それぞれ後の値の方が効果が高い)。基材上層M5と基材下層M6との接合部分は、互いに溶け合うように連続的に変化してもよいが、その層が薄いほど、界面で透過光を鮮明に反射する。そのためには、基材上層M5と基材下層M6、さらに場合により接着剤Aの色が変化する部分の厚さは、1mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.2mm以下がさらに好ましく、dGの1/10以下又は1/20以下でもよい。また、接合部分が平滑であれば透過光の反射に乱れがないので、その凹凸の深さが1mm以下・0.5mm以下・0.2mm以下のいずれかでもよい。反対に、その凹凸が0.2mm以上・0.5mm以上・1mm以上であるか、基材上層M5と基材下層M6とが連続していれば、透過光の反射に独特なマチエールが生じる。この造形物Zは基材下層M6を有さなくてもよい。
色帯部Kの可撓性が高い方が溝部Gへの挿入作業が容易であるから、色帯部Kの曲げ弾性率は700MPa以下でもよい。色帯部Kの厚さは100μm以下・70μm以下・50μm以下・30μm以下、又はwの1/4以下・1/5以下・1/8以下・1/10以下・1/20以下であれば、色帯部Kが楔状の溝部Gの先端近くまで届き、その点では小さいほどよい。なお、色帯部Kの厚さは色帯部Kの最も広い面と垂直な方向の長さである。色帯部Kの厚さは一定又は略一定でもよい。色帯部Kにおいて厚さが最も薄い部分の厚さが厚さが最も厚い部分の厚さの好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上でもよい。この数値が高いほど、楔状の溝部G内の位置が一定となり、また色ムラが減ることが多い。熱による融着予防のため、色帯部Kの融点は80℃以上・100℃以上・150℃以上でもよい。色帯部Kは、上記樹脂からなるフィルム・照明用カラーフィルター・セロファン等でもよい。その場合、色帯部Kのうち互いに対向する最も面積の広い2つの面は互いに平行である。色帯部Kは、ビーズ状の粒体・糸状体・ダイクロイックミラーの細片・干渉膜・偏光膜等の上記作用ないし類似作用を呈する材料からなってもよい。色帯部Kと側面Sとの隙間が狭すぎると、ニュートンリングが発生することがあり、また融着することがあるので、その防止のためには、隙間がある程度大きいほうがよい。具体的には、色帯部Kと側面Sとの間の距離は、少なくとも一部で、0.03mm以上・0.05mm以上・0.1mm以上・0.15mm以上・0.2mm以上のいずれかでもよく、大きいほど前記問題が起きにくい。上限は溝部Gの幅と色帯部Kの厚さとの差である。
色帯部Kの彩度がマンセル表色系においてc6以上又はc8以上であれば、鮮やかな透過光が得られる。溝部Gの各部の色帯部Kの色が互いに異なってもよい。例えば図10において、菱形のうちx負方向側の溝部G1の色帯部K1が赤、x正方向側の溝部G2の色帯部K2が青であれば、x負方向側から光が当たった時に菱形内の基材上層M1と基材下層M2との界面が赤く見え、x正方向側から光が当たった時に菱形が青く見える。この造形物Zが北半球の屋外に南向きで設置された場合、太陽光の向きから朝は青、夕方は赤に光って見える。溝部G1は基材上層M5の裏面部R側まで達しているが、この場合x正方向側からの光は溝部G1で止まり、それよりx負方向には届かない。そのため菱形内のみが青に染まって見える。溝部G1・2は正面からは太陽光の色か黒に見える。この造形物Zに人感センサ及び光源が組み合わされて門柱に設置され、人が通った時に発光したり、照射方向が変化したりしてもよい。照明が照度センサにより夜間のみ発光してもよい。
この造形物Zは、例えば自然光が斜めから当たれば溝部Gを挟んで光の出射側が色帯部Kの色に見え、あるいは溝部Gに囲まれた領域がその色に見え、自然光が正面から当たればその色は消え、しかも溝部G自体は自然光の色に光る、というこれまでにない装飾効果を奏する。また、この色は造形物Z正面からはほとんど見えないが、造形物Zの端面部分からは見え、トリッキーな効果をももたらす。さらに、溝部Gが形成されていない部分まで、1本の溝部Gだけで色の光が届く。本発明は文字等を輪郭で表示できるので、複数の平行な溝部による場合より微細な文字等を表示可能である。
本発明の1つの態様は、基材部と、前記基材部に形成された溝部と、を有する装飾体であって、前記基材部の少なくとも一部が透過性を有し、前記溝部が内部に色帯部を有し、前記溝部の少なくとも一部が前記色帯部との間に空隙を有することを特徴とする装飾体である。あるいは、基材部と、前記基材部に形成された楔状又はテーパー状の溝部と、を有する装飾体であって、前記基材部の少なくとも一部が透過性を有し、前記溝部が内部に色帯部を有し、前記色帯部の厚さが一定であることを特徴とする装飾体である。前記1つの態様の溝部及び前記楔状の溝部の側面の少なくとも一部が前記色帯部との間に空隙を有してもよい。前記色帯部の色が前記透過性を有する基材部の色と異なってもよい。前記側面のθSの絶対値が最大全部全反射側面角以下でもよい。前記基材部の一部の透過性が、前記透過性を有する基材部の透過性より低く、前記基材部のうち透過性が低い一部と前記透過性を有する基材部とが互いに接し、前記透過性が低い一部と前記透過性を有する基材部との界面が前記溝部に平行でなくてもよい。前記色帯部は透過性を有してもよい。前記色帯部の最も広い面に垂直な方向の厚さが100μm以下又は前記溝部の幅の1/4以下の少なくとも一方でもよい。前記溝部と前記表面部とのなす角度が前記装飾体の少なくとも一部で一定であるか、前記溝部の長さ方向に垂直な断面と前記溝部の二分面との複数の交線の少なくとも一部が任意の1点を通ってもよい(これにより、例えば臨界角の効果が一定となる。)。本発明の別の態様は、前記装飾体と、前記装飾体に光を照射する照明具と、を具えることを特徴とする装飾体照明設備である。前記照明具が定められた条件に応じて動作してもよい。本発明の別の態様は、材料に溝部を加工する溝加工部と前記溝部に材料を挿入する充填加工部を具え前記装飾体を製造する装飾体製造装置及び、材料に溝部を加工する溝加工工程と前記溝部に材料を挿入する充填加工工程を具え前記装飾体を製造する製造方法である。
《第7の実施形態》
本実施形態は、第1の実施形態に類似の課題等を、基本的には別の方法で解決する。この方法は、第6の実施形態に関連してもよい。すなわち例えば、本実施形態では、造形物製造装置40の充填加工部43は、色帯部Kと溝部Gとの間に液体充填部Qを充填してもよい(図11a)。液体充填部Qは、流動パラフィン・各種グリス・ワックス・水・シーダー油・桐油・ミネラルオイル・シリコーンオイル・ジヨードメタン・1−ブロモナフタレン・フルオロカーボンオイル・ペルフルオロ化合物類(ペルフルオロエーテルやペルフルオロポリエーテル等)を含むフッ素化合物等からなり、常温において液体又は流動体でもよい。液体充填部Qは無色透明でもよい。液体充填部Qの材料は特に制限されないが、造形物Zが長期耐久性を要する場合には、基材部M内において化学的に安定であることが望ましい。例えば、基材部Mが水を吸収する樹脂であって、屋外用途の場合、水は液体充填部Qとして適さないこともある。また、第3の実施形態との組み合わせにより、上面部Uが液体充填部Qを密封でき、被覆加工時に液体充填部Qと接着剤Aとが混ざり合わずにすむ。本実施形態に係る溝部Gは、色帯部Kを有さなくてもよく、液体充填部Qによって色を有してもよい(図11b)。その場合、液体充填部Qは、上記着色剤Cや染料等により着色されてもよい。液体充填部Qと基材部Mとの界面での全反射が少ないほうがよい場合には、液体充填部Qの屈折率は基材部Mの屈折率以上でもよく、基材部Mの屈折率と0.1以下(又は0.2以下・0.05以下)の差でもよく、それらの両方でもよい。同様に、液体充填部Qの屈折率は色帯部Kの屈折率以下でもよく、色帯部Kの屈折率と0.1以下(又は0.2以下・0.05以下)の差でもよく、それらの両方でもよい。液体充填部Qは低粘度である方が充填工程の作業性が高いので、その動粘度は1000以下・500以下・200以下・100以下でもよく、安定性のため1以上・5以上・10以上・100以上でもよい。
本実施形態では、液体充填部Qが硬化・揮発等しない限り、側面Sでの剥離が発生しないので、剥離による色の消失は特許文献1に記載の造形物より起きにくい。そのため、溝部Gは基材部Mを貫通しないか、貫通孔が塞がれたほうがよい。液体充填部Qは、その流動性により、基材部Mの伸縮や変形にも追従しやすい。色帯部Kの高さhKが一定であれば、第3・4の実施形態によらずとも、溝部Gにおける着色部分の深さが一定となる。hKはdGの30%以上・50%以上・70%以上・80%以上でもよい。この値が大きいほど溝部G各部での色帯部Kの位置の変動が少なく、仕上がりが良好となる。hKはdGの99%以下・95%以下・90%以下・85%以下・80%以下でもよい。この値は大きすぎない方がよい。その方が、色帯部Kの挿入工程において、dGが一定でない溝部GのうちdGが小さい部分でも、色帯部Kがはみ出さず作業性がよいからである。色帯部Kが薄膜であれば、着色部分の幅がきわめて狭いので、正面からの観察では着色部分がほとんど見えず、斜め方向からの観察時との視覚的な対比効果が向上する。複数重なった色帯部Kの枚数で濃度や色相の調整も容易に可能である。溝部Gの片側の側面Sのみが液体充填部Qによって色帯部Kと密着してもよい。また、溝部Gが2枚の有色透明の色帯部Kを含み、両側の側面Sがそれぞれ色帯部Kに液体充填部Qによって密着し、2枚の色帯部Kどうしの間が空隙であれば、空隙と色帯部Kとの界面で全反射が得られる。2つの色帯部Kの色が互いに異なれば、両側から見た時の溝部Gの色が相違する。他にも、色面部Kが印刷等による印字を有する、1枚の不透明な色面部Kの色が表裏で異なる等、充填材料21の充填では得られない加飾が可能である。
本発明の1つの態様は、基材部と、前記基材部に形成された溝部と、を有する装飾体であって、前記溝部が充填部を有し、前記充填部の少なくとも一部が液体であることを特徴とする装飾体である。前記装飾体のうち前記基材部の少なくとも一部が透過性を有してもよく、前記透過性を有する基材部が前記液体である充填部に接する部分を有してもよい。前記充填部がフッ素化合物・シリコーン・パラフィンの少なくともいずれかを含んでもよく(これら3者は多様な粘度の製品を具え、化学的に安定している点で共通の特性を有する。)、固体部分を含んでもよい。本発明の別の態様は、材料に溝部を加工する溝加工部と、前記溝部に材料を充填する充填加工部を具え、それらにより前記装飾体を製造することを特徴とする装飾体製造装置及び、材料に溝部を加工する溝加工工程と、前記溝部に材料を充填する充填加工工程を具えそれらにより前記装飾体を製造することを特徴とする装飾体製造方法である。
《第8の実施形態》
溝加工部41が溝部G3に近接して別の溝部G4を加工し、さらに充填加工部43が溝部G3のみに有色透明の充填材料21を充填してもよい。溝部G3と溝部G4とは互いに平行でもよい。溝部G3と溝部G4がいずれも閉領域状で、互いに相似であるか、互いの形状に沿った形状でもよく、さらに溝部G3が外側でもよい。溝部G4は充填部Lを有さないので光を全反射し、その光が溝部G3の充填部Lを透過してその色の光となる(図12)。これにより、光の全反射を呈し、しかも無機顔料等により耐光性の高い溝部Gが実現可能となる。光の多くは溝部G3の充填部Lを透過してから溝部G4で反射し、再度充填部Lを透過するので、充填部Lの色は、第1の実施形態等より薄い方がよい。また、溝部G3とG4とが近接しているほどよい。それらの間隔sの深さdGに対する割合は、1以下が好ましく、1/2以下がより好ましく、1/3以下がさらに好ましく、1/4以下・1/8以下が一層好ましい。複数のG3がG4を挟んでもよい。
溝部Gのうち片側の側面Sのみが着色されてもよい。例えば、溝加工部41が閉領域状の溝部Gで貫通加工を行い、充填加工部43が外側の材料板20の側面Sを塗料等の色膜H1で着色し、内側の材料板20と組み合わせてもよい。ここで第3の実施形態が併用されてもよい。完成した造形物Zでは、外側の基材部M7の側面S1のみが色膜H1を有する。これにより、有色の全反射光が得られる。さらに、内側の基材部M8の側面S2が別の色の色膜H2を有してもよい(図12b)。色膜Hは、充填部L等と同様に、展色剤V・着色剤C・分散剤Dを含んでもよい。この場合、溝部Gがテーパー状となることがある。そのような溝部Gでは、長さ方向に垂直な断面が台形状である。溝部Gが平面状又は周期的な凹凸によってなる底面部Bを有し、その幅が溝部Gの幅wの1/2以上であれば、テーパー状である。
上記各実施形態はそれぞれの発明の実施の一例である。各発明の技術的範囲は上記の範囲には限定されない。当業者にとって、上記各実施形態に多様な変更又は改良を加えることが可能である。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、各実施形態は、特記されない事項を含む多くの点において互いに共通する。各実施形態は組み合わせて実施されてもよい。