以下に図面を用いて本開示に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下において、特に断らない限り、エレベーターとは、乗りかごと乗場を主とした乗客運搬装置を示し、エレベーターシステムは、エレベーターの昇降制御やかご扉等の扉開閉制御等を含む運行制御システムを示す。以下において、エレベーターシステムが設けられる建物を6階とし、2つのエレベーターが平行して昇降するものとするが、これは説明のための例示である。建物に応じて、1つのエレベーターで構成されるエレベーターシステムでもよく、高層の建物で、より多くのエレベーターで構成されてもよい。以下では、荷物掛け部は、乗場及び乗りかご内の双方に設けられるものとするが、これは説明のための例示であって、エレベーターシステムの仕様に応じ、乗場のみに荷物掛け部を設けてもよく、乗りかご内にのみ荷物掛け部を設けてもよい。
以下で述べる形状、個数等は説明のための例示であって、エレベーターシステムの仕様等に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1に荷物掛け部を備えたエレベーターシステム10の全体構成を示す。以下では、特に断らない限り、荷物掛け部を備えたエレベーターシステム10を、エレベーターシステム10と呼ぶ。エレベーターシステム10は、2つのエレベーターを1つの制御装置140で運行制御するシステムであるが、図1では、エレベーターシステム10において、制御装置140を共通とする2つのエレベーターのうちの1つのエレベーターの部分が示されている。以下では、特に断らない限り、制御装置140を共通とする1つのエレベーターの部分をエレベーターシステム10として述べる。
エレベーターシステム10は、建物8を上下方向に貫通する昇降路12を用い、各階の乗場30からの乗客を乗りかご70に乗せ、乗客の要求に応じて昇降路12の中を昇降させて、所望の乗場30に着床して乗客を降ろすエレベーターの運行制御システムである。
昇降路12の最上部には機械室14が設けられ、建物8の1階よりもさらに下方にピット16が設けられる。機械室14には、巻上機18が設置される。巻上機18は、主ロープ20を制御装置140の制御のもとで巻上げあるいは巻き戻しを行う電動機で構成される。主ロープ20の一端は乗りかご70に接続され、他端は釣合おもり22に接続される。釣合おもり22は、乗りかご70の質量に釣り合わせて設定された質量を有し、これによって、巻上機18の負荷を軽減することができる。ピット16は、乗りかご70と釣合おもり22の過度の降下を受け止めるダンパ等が設けられ、また、保守点検の際の作業スペースとして用いられる。
建物8の各階に設けられる乗場30にはそれぞれ乗降口が設けられる。乗降口には、それぞれ乗場扉32が設けられる。各階の乗場30には、それぞれ、乗場30の荷物掛け部34が設けられる。各階の乗場30の荷物掛け部34と、制御装置140との間に設けられる信号線36,37は、各乗場30における荷掛検出信号と荷掛情報に関する信号である荷掛情報信号を伝送するための信号線である。乗場30における荷掛検出信号と荷掛情報については後述する。
乗りかご70は、乗客を乗せて昇降路12内を昇降する乗客運搬かごである。乗りかご70には、かご扉72が設けられる。かご扉72は、乗りかご70が所望の乗場30に着床した場合に、制御装置140の制御のもとで動作するかご扉開閉機構71(図5参照)の作用によって開閉する。乗場30における乗場扉32は、かご扉72の開閉と共に開閉する。乗りかご70には、乗りかごの荷物掛け部74が設けられる。乗りかご70の荷物掛け部74と、制御装置140との間に設けられる信号線36,37は、乗りかご70における荷掛検出信号と荷掛情報信号を伝送するための信号線である。乗りかご70における荷掛検出信号と荷掛情報については後述する。
図1において、直交する上下方向と奥行方向と幅方向とを示す。上下方向は、昇降路12が延びる方向で、建物8の上層階に向かう方向が上方側で、下層階に向かう方向が下方側である。奥行方向は、建物8の乗場30と昇降路12を結ぶ方向に平行な方向である。幅方向は、乗場30における乗場扉32の幅方向に対応する方向で、乗場30から昇降路12に向かって右方向が右側で、左方向が左側である。以下の図においても同様である。
以下では、エレベーターシステム10を用いて、荷物4を持った乗客2(図2、図4参照)が2階から4階に移動する場合の例を述べる。また、特に断らない限り、乗客2以外の乗客はいないものとする。これは説明のための例示であって、これ以外の利用方法であっても構わない。例えば、乗客2を含む複数の乗客がいる場合でもよく、2階から4階以外のエレベーターによる移動であっても構わない。荷物4を持った乗客2は、エレベーターシステム10の構成要素ではないので、以下の図では二点鎖線で示す。
図2は、建物8の2階の乗場30の構成図である。図2において、エレベーターシステム10の2台のエレベーターの乗場扉32が示される。2台のエレベーターのそれぞれを区別して、乗場30から昇降路12側に向かって右側をNo.1のエレベーターと呼び、左側をNo.2のエレベーターと呼ぶ。これに対応して、No.1のエレベーターに対応する乗りかご70をNo.1の乗りかご70と呼び、No.2のエレベーターに対応する乗りかご70をNo.2の乗りかご70と呼ぶ。No.1のエレベーターとNo.2のエレベーターは全く同じ構成であり、No.1の乗りかご70とNo.2の乗りかご70も全く同じ構成である。
No.1のエレベーターの乗場扉32とNo.2のエレベーターの乗場扉32は、いずれも三方枠と呼ばれる開口枠で囲まれている。三方枠は、中間壁部38と、上部枠部42と、横枠部43である。
中間壁部38は、No.1のエレベーターの乗場扉32とNo.2のエレベーターの乗場扉32の三方枠で共通となる壁部であり、「2階」を示す表示板40が貼付される。中間壁部38には、かご呼び盤50と、乗場30の荷物掛け部34が設けられる。
最初に、かご呼び盤50の構成と作用を述べ、次に、乗場30の荷物掛け部34の構成と作用を説明する。
かご呼び盤50は、一般的なエレベーターの乗場30に設けられて、乗場30において乗客2が乗りかご70を呼ぶための呼び登録を行う操作盤である。かご呼び盤50は、昇階呼びボタン52と、降階呼びボタン54の2種類のかご呼びボタンを有する。乗客2が2階よりも上層階へ移動したい場合には、昇階呼びボタン52を押し、2階よりも下層階である1階へ移動したい場合には、降階呼びボタン54を押す。
今の場合、乗客2は、2階から4階に移動したいので、昇階呼びボタン52を押せばよい。昇階呼びボタン52を押すと昇階呼び登録が行われ、制御装置140に伝送される。制御装置140は、2階の乗場30における昇階呼び登録を受けて、N0.1の乗りかご70またはNo.2の乗りかご70の内で適切な方を2階の乗場30へ向けて昇降させる運行制御を行う。図2の例では、No.1の乗りかご70が2階の乗場30へ向けて昇降し、かご呼び盤50の昇階呼びボタン52と、No.1のエレベーターの乗場扉32の上部枠部42に設けられる昇降ランプ44とが点灯する。昇降ランプ44は、「昇階呼び中」と「降階呼び中」を示す2つのランプが上下一対で配置され、図2の例では、二点鎖線で囲んだ「昇階呼び中」を示す上側のランプ45が点灯する。No.1の乗りかご70が2階の乗場30に着床すると、かご扉72と共に、No.1のエレベーターの乗場扉32が開き、乗客2は、乗りかご70に乗りこむことができる。このタイミングと前後して、かご呼び盤50の昇階呼びボタン52と、昇降ランプ44の上側のランプ45は消灯する。なお、消灯のタイミングは説明のための例示であって、エレベーターシステム10の仕様に応じ適宜変更が可能である。
以上が、かご呼び盤50を用いた呼び登録とその作用である。図2に示す乗客2のように、片手に荷物4を持ちもう一方の片手で幼児6の手を引いている場合や、乗客2が両手に荷物を持っている場合等では、乗客2がかご呼び盤50の操作を行い難いことが生じ得る。これらの場合、乗場30の荷物掛け部34を用いることで、かご呼び盤50を操作しなくても呼び登録を行うことができる。
乗場30の荷物掛け部34は、2つの荷物掛けフック56,57と、荷物掛けフック56,57のそれぞれに対応して設けられる2つの荷掛検出センサ64,65と、2つの荷物掛けフック56,57を区別する呼びマーク66,67とを有する。
2つの荷物掛けフック56,57は、それぞれ、かご呼び盤50の近傍に設けられる。荷物掛けフック56は、かご呼び盤50の昇階呼びボタン52に隣接して設けられ、荷物掛けフック57は、かご呼び盤50の降階呼びボタン54に隣接して設けられる。荷物掛けフック56に対応する呼びマーク66は、昇階呼びボタン52と同じ「上層階を目指す矢印マーク」であり、荷物掛けフック57に対応する呼びマーク67は、降階呼びボタン54と同じ「下層階を目指す矢印マーク」である。したがって、荷物4を持って2階から4階へ移動したい乗客2は、「上層階を目指す矢印マーク」である呼びマーク66に対応する荷物掛けフック56に荷物4を掛ける。なお、2階から下層階である1階に移動したい場合には、「下層階を目指す矢印マーク」である呼びマーク67に対応する荷物掛けフック57に荷物4を掛ければよい。
2つの荷物掛けフック56,57及びこれらに対応する2つの荷掛検出センサ64,65の構成は同じであるので、荷物掛けフック56と荷掛検出センサ64に代表させて、これらの構成と作用について図3を用いて説明する。
荷物掛けフック56と荷掛検出センサ64とは一体化されて、乗場30の中間壁部38の凹部58内に配置される。
荷掛検出センサ64は、本体部110と、荷掛検出子112とを備える。本体部110は、略直方体の外形を有し、内部に、センサ部と、信号形成回路を含む。センサ部は、接点と、ばね復元力を有する操作部と、操作部を押しまたは開放して復元させる荷掛検出子112とを有し、荷掛検出子112の軸方向の移動を検出して接点の開閉を行う押ボタンスイッチである。信号形成回路は、荷掛検出子112が軸方向に移動して接点を閉じることで、荷掛検出信号を出力する。さらに、荷掛検出信号の出力開始の時点で、荷掛情報に関する信号である荷掛情報信号を出力する。荷掛検出信号と荷掛情報信号とは互いに独立の信号で、荷掛検出信号は、信号線36を用いて制御装置140に伝送され、荷掛情報信号は、信号線37を用いて制御装置140に伝送される。荷掛検出信号は、センサ部の接点が閉じている期間に出力され、センサ部の接点が開くと、荷掛検出信号は出力されない。荷掛情報信号は、制御装置140における乗りかご70の昇降制御に用いられる信号であり、荷掛検出信号の出力開始の時点で制御装置140に伝送された後は、荷掛検出信号の出力の有無に関わらず、制御装置140の制御処理に従う。
荷物掛けフック56は、凹部58内に収納され中間壁部38の壁面から突出しない折畳収納状態と、凹部58から凹部58の外側に引き出された荷物掛け状態の2つの状態をとり得る。図3(a)は、折畳収納状態の荷物掛けフック56aを示し、(b)は、荷物掛け状態の荷物掛けフック56bを示す。
荷物掛けフック56は、中間壁部38の凹部58において、荷掛検出センサ64の本体部110の上面に設けられたヒンジ部60と、ヒンジ部60に回動可能に支持されたフック部62を含む。フック部62は、ヒンジ部60からほぼ真っ直ぐに延びる軸部120と、軸部120の一部に設けられる引掛け部122と、引掛け部122の先端側で軸部120に対しほぼ直角に曲げられた先端部124とを有する。引掛け部122は、乗客2がフック部62を凹部58から引き出す際に指を掛ける部分であり、引き出した後に荷物4を掛ける部分である。先端部124は、引掛け部122に掛けた荷物4が落ちないようにするストッパの作用を有する。軸部120から突き出す突出部126は、荷掛検出センサ64の荷掛検出子112を軸方向に押す操作子としての作用を有する。
ヒンジ部60は、フック部62の軸部120の延伸方向が中間壁部38の壁面と平行な状態から、軸部120の延伸方向が壁面に垂直な状態との間で、所定の荷物掛け角度として、略90度の角度で回動させる回動部である。軸部120が壁面に平行な状態が図3(a)の折畳収納状態であり、引掛け部122も突出部126も中間壁部38の壁面から飛び出さない。軸部120が壁面に垂直な状態が図3(b)の荷物掛け状態であり、軸部120は、壁面に垂直な状態が固定位置でこれ以上は下方側に下がることがない。突出部126は、荷掛検出センサ64の荷掛検出子112に突き当たり、荷掛検出子112を本体部110側に押し込むようにして軸方向に移動させる。これにより、荷掛検出センサ64のセンサ部である押しボタンスイッチがオンし、荷掛検出信号と荷掛情報信号とが出力される。軸方向の最大移動量は予め定められており、この最大移動量によっても突出部126を含むフック部62の最大回動角度が規制される。
図2に戻り、2階の乗場30において、荷物4を持った乗客2が2階から上層階側の4階に移動したい場合には、荷物掛け部34において、「上層階を目指す矢印マーク」である呼びマーク66に対応する荷物掛けフック56に荷物4を掛ける。具体的には、中間壁部38の凹部58に図3(a)の折畳収納状態となっているフック部62の引掛け部122に指を掛け、ヒンジ部60を回動中心として、凹部58からフック部62を引き出し、図3(b)の荷物掛け状態にする。そして、引掛け部122に荷物4を掛ける。この状態で、突出部126は荷掛検出センサ64の荷掛検出子112を軸方向に移動させるので、荷掛検出センサ64は、荷掛検出信号と、荷掛情報信号とを出力する。荷掛検出信号は、荷物掛けフック56に荷物4が掛かっている状態を示す信号である。
荷掛情報信号は、乗客2の荷掛昇降方向情報に関する信号である。今の場合、乗客2は、「下層階を目指す矢印マーク」である呼びマーク67に対応する荷物掛けフック57でなく、「上層階を目指す矢印マーク」である呼びマーク66に対応する荷物掛けフック56に荷物4を掛けている。すなわち、乗客2は、荷掛昇降方向として、昇階方向を意図しているので、荷掛昇降方向情報としては、昇階方向情報が出力される。
制御装置140は、信号線37を介して荷掛情報である荷掛昇降方向情報として荷掛昇階情報を取得した場合に、かご呼び盤50に基づく昇階の呼び登録がされていない場合には、荷掛昇階情報に基づいて昇階の呼び登録を行う。これによって、乗客2は、かご呼び盤50を用いて昇階の呼び登録を行うことなく、単に荷物掛けフック56に荷物4を掛けるだけで、昇階の呼び登録を行うことができる。
上記では、2階から4階に移動したい場合を述べたが、2階から下層階である1階に移動したい場合には、「下層階を目指す矢印マーク」である呼びマーク67に対応する荷物掛けフック57に荷物4を掛ければよい。これによって、荷掛検出センサ65は、荷掛昇降方向情報として、降階方向情報を出力する。制御装置140は、信号線37を介して荷掛昇降方向情報として荷掛降階情報を取得した場合に、かご呼び盤50に基づく降階の呼び登録がされていない場合には、荷掛降階情報に基づいて降階の呼び登録を行う。これによって、乗客2は、かご呼び盤50を用いて降階の呼び登録を行うことなく、単に荷物掛けフック57に荷物4を掛けるだけで、降階の呼び登録を行うことができる。
以上が、乗場30の荷物掛け部34を用いた乗りかご70の呼び登録に関する説明である。次に、乗りかご70の荷物掛け部74を用いた乗りかご70の行先階登録について、図4を用いて説明する。
図4は、No.1の乗りかご70内の構成図である。乗りかご70内は、6つの壁部に囲まれた乗客運搬空間である。図4では、図2で示した乗客2が乗りかご70に乗り込み、片手に荷物4を持ちもう一方の片手で幼児6の手を引いている例が示される。
図4では、乗りかご70における乗客運搬空間を形成する6つの壁部の内、乗りかご70のかご扉72の両側の側壁78,79、乗りかご70の荷物掛け部74が設けられる側壁80、乗りかご70の床部73、天井部75が示される。
側壁78には、昇降状態盤82、表示部84、非常連絡ボタン86、かご扉72の強制開ボタン88、かご扉72の強制閉ボタン90、保守サービス盤92、複数の行先階ボタン94を含む行先階盤96が設けられる。乗客2の利便性を図るため、側壁79には、側壁78に設けられるものと同じ内容を有する強制開ボタン89、強制閉ボタン91、行先階盤97が設けられる。さらに、かご扉72が開状態の場合に、開状態のかご扉72を通る乗客2を検出して通過客検出信号を出力する通過客検出部98,99が側壁78,79に設けられる。
昇降状態盤82は、乗りかご70がNo.1の乗りかご70であること、及び、乗りかご70が現在は2階にあって昇階中であることを示す「2」の数字と上向きの白抜矢印マークを示す昇降状態表示盤である。かかる昇降状態盤82としては、液晶表示盤やLED(Light Emission Device)表示盤が用いられる。
表示部84は、乗りかご70の着床を示す音声アナウンス、ブザー音等の警告表示を出力する表示装置である。また、表示部84は、後述する忘れ物注意の音声アナウンスを出力する。音声アナウンスやブザー音等の音声表示に代えて、液晶表示やLED表示等の視覚表示を用いてもよく、音声表示と視覚表示を併用してもよい。
非常連絡ボタン86は、No.1の乗りかご70に異常状態が生じた場合に、乗客2が外部と連絡するための押しボタンである。かご扉72の強制開ボタン88,89は、かご扉72が閉動作中に開状態に戻すことができる押しボタンである。かご扉72は、全開状態から予め定めた全開時間が経過すると自動的に閉状態に入るが、強制閉ボタン90,91は、この予め定めた全開時間を待たずにかご扉72を閉状態とすることができる押しボタンである。
行先階盤96,97は、一般的なエレベーターの乗りかご70に設けられて、乗りかご70において乗客2が行先階を指定するための行先階登録を行う操作盤である。エレベーターシステム10は、行先階として1階から6階を有するので、行先階盤96,97は、それぞれ、6つの行先階ボタン94,95を備える。乗客2が4階に移動したい場合には、行先階盤96,97のいずれかにおいて、「4」と表示されている行先階ボタン94,95を押せばよい。「4」と表示される行先階ボタン94,95を押すと、No.1の乗りかご70について行先階登録が行われ、制御装置140に伝送される。制御装置140は、この行先階登録を受けて、No.1の乗りかご70を4階の乗場30へ向けて昇階させる運行制御を実行する。この際に、行先階盤96,97の「4」と表示されている行先階ボタン94,95が点灯し、昇降状態盤82において、乗りかご70が現在は2階にあって昇階中であることを示す「2」の数字と上向きの白抜矢印マークが表示される。No.1の乗りかご70が行先階登録された4階の乗場30に着床すると、かご扉72と共に、No.1のエレベーターの乗場扉32が開き、乗客2は、4階の乗場30に降りることができる。このタイミングと前後して、表示部84は「4階です」のアナウンス表示を行い、行先階盤96,97の「4」と表示されている行先階ボタン94,95が消灯する。昇降状態盤82においては、乗りかご70が4階に着床したことを示す「4」の数字が表示され、上向きの白抜矢印マークの表示が消える。なお、消灯のタイミングは説明のための例示であって、エレベーターシステム10の仕様に応じ適宜変更が可能である。
以上が、行先階盤96,97を用いた行先階登録とその作用である。図4に示す乗客2のように片手に荷物4を持ちもう一方の片手で幼児6の手を引いている場合や、乗客2が両手に荷物を持っている場合等では、乗客2がかご呼び盤50の操作を行い難いことが生じ得る。乗りかご70の荷物掛け部74を用いることで、行先階盤96,97を操作しなくても行先階登録を行うことができる。
乗りかご70の荷物掛け部74は、乗りかご70内において行先階盤96,97が設けられた側壁78,79とは別の側壁80に設けられる。側壁80には、荷物掛け部74の他に、手摺100、足元桟102が設けられる。荷物掛け部74は、手摺100の上方側に配置される。乗りかご70の荷物掛け部74は、エレベーターシステム10の1階から6階の行先階に対応して、6つの荷物掛けフック56と、6つの荷物掛けフック56を区別する6つの荷掛行先階マーク68を有する。荷掛行先階マーク68は、荷物4を持つ乗客2が移動したい行先階を荷掛行先階として、荷掛行先階を示すマークであり、1階から6階の荷掛行先階に対応して「1」から「6」の数字の表示を有するマークである。6つの荷物掛けフック56は、それぞれ6つの荷掛行先階マーク68に対応付けて割り当てられる。
図4の場合、荷物4を持った乗客2は、2階から4階に移動したいので、4階を示す「4」の数字の表示を有する荷掛行先階マーク68に対応する荷物掛けフック56に荷物4を掛ける。具体的には、図3で述べたように、側壁80に設けられた凹部58において折畳収納状態にある荷物掛けフック56のフック部62を引き出して荷物掛け状態とし、フック部62の引掛け部122に荷物4を掛ける。これによってフック部62の突出部126が荷掛検出センサ64の荷掛検出子112を軸方向に移動させるので、荷掛検出センサ64は、荷掛検出信号と、荷掛情報信号を出力する。荷掛検出信号は、荷物掛けフック56に荷物4が掛かっている状態を示す信号である。荷掛情報信号は、乗客2の荷掛行先階情報に関する信号である。
図4の例では、乗客2は、4階を示す「4」の数字の表示を有する荷掛行先階マーク68に対応する荷物掛けフック56に荷物4を掛けているので、荷掛行先階は4階である。したがって、乗客2の荷掛行先階情報は、「荷掛行先階は4階である」ことを内容とする。各荷物掛けフック56に対応する各荷掛検出センサ64からは、荷掛検出信号を制御装置140に伝送する信号線76と、荷掛行先階情報に関する信号を制御装置140に伝送する信号線77とがそれぞれ備えられている。4階を示す「4」の数字の表示を有する荷掛行先階マーク68に対応する荷物掛けフック56に荷物4が掛けられると、荷掛検出信号が信号線76を介して制御装置140に伝送される。また、荷掛行先階情報である「荷掛行先階は4階である」ことを内容とする信号が信号線77を介して制御装置140に伝送される。
制御装置140は、信号線37を介して荷掛情報である荷掛行先階情報を取得した場合に、行先階盤96,97に基づく行先階登録がされていない場合には、荷掛行先階情報に基づいて行先階登録を行う。乗客2は、行先階盤96,97を用いずに、単に、4階を示す「4」の数字の表示を有する荷掛行先階マーク68に対応する荷物掛けフック56に荷物4を掛けるだけで、4階を荷掛行先階とする行先階登録を行うことができる。
図5は、上記のエレベーターシステム10のブロック図である。乗場30の荷物掛け部34からは、荷掛検出信号を伝送する信号線36と、荷掛情報信号を伝送する信号線37が引き出され、制御装置140に接続される。乗りかご70の荷物掛け部74の6つの荷物掛けフック56のそれぞれからは、荷掛検出信号を伝送する信号線36と、荷掛情報信号を伝送する信号線37が引き出され、制御装置140に接続される。乗場30のかご呼び盤50、乗りかご70の行先階盤96,97、表示部84、及び、通過客検出部98,99と、制御装置140との間は、それぞれ適当な信号線で接続される。また、巻上機18、及び、かご扉開閉機構71と、制御装置140との間は、それぞれ適当な信号線で接続される。
制御装置140は、上記の各信号線を介して、エレベーターシステム10の各要素の動作を統合的に制御する装置である。かかる制御装置140としては、エレベーターの運行制御に適した制御盤が用いられる。制御盤は、ソフトウェアを実行するコンピュータ、及び各種のハードウェアを含む。制御装置140は、運行制御部142と、忘れ物防止部144を有する。
運行制御部142は、昇降路12内の乗りかご70の昇降制御、及び、乗りかご70が乗場30に着床した場合のかご扉72の開閉制御を行う。昇降制御は、かご呼び盤50による呼び登録及び行先階盤96,97による行先階登録に従って実行されるとともに、乗場30の荷物掛け部34による呼び登録、及び、乗りかご70の荷物掛け部74による行先階登録に従って実行される。乗場30の荷物掛け部34による呼び登録による運行制御には、信号線37を経由して伝送される乗場30の荷物掛け部34からの荷掛昇降方向情報に関する信号が用いられる。乗りかご70の荷物掛け部74による行先階登録による運行制御には、信号線77を経由して伝送される乗りかご70の荷物掛け部74からの荷掛行先階情報に関する信号が用いられる。
運行制御部142によって、呼び登録及び行先階登録に従って乗りかご70の運行が制御され、登録された行先階に乗りかご70が着床してかご扉72が開状態となる。これにより、乗場30と乗りかご70の間で、乗客2は乗降することができる。この場合に、乗客2が乗場30の荷物掛け部34に荷物4を掛け忘れたまま乗りかご70に乗り込み、あるいは、乗客2が乗りかご70の荷物掛け部74に荷物4を掛け忘れたま乗場30に降りる場合が生じ得る。忘れ物防止部144は、このような場合における乗客2の利便性を図るために以下の制御を行う。
運行制御部142によって、乗りかご70の運行制御が行われ登録された行先階に乗りかご70が着床してかご扉72が開状態となった場合に、忘れ物防止部144は、信号線36を介して、着床した乗場30の荷物掛け部34からの荷掛検出信号の有無を判定する。そして、乗場30の荷掛検出信号があると判定する場合には、乗場30の荷掛検出信号を取得し、乗場30の荷掛検出信号の取得中は、かご扉72を開状態のままに維持する。かご扉72が開状態の場合は、これに連動して乗場扉32も開状態であるので、乗場30の荷物掛け部34に荷物4を掛けたまま乗りかご70に乗り込んだ乗客2は、乗場30の荷物掛け部34に戻って荷物4を取り外し、再び乗りかご70に乗り込むことができる。乗場30の荷物掛け部34から荷物4を外せば乗場30の荷掛検出信号の出力がなくなり、運行制御部142の機能によって、例えば、乗客2が行先階の登録を行えば、通常の運行制御に戻る。乗場30の荷掛検出信号の出力がなくなると同時にかご扉72と乗場扉32が閉状態となると、乗場30の荷物掛け部34から荷物4を外した乗客2が乗りかご70に乗り込むことができないので、適当な遅れ時間が設けられる。
また、乗りかご70の運行制御が行われ登録された行先階に乗りかご70が着床してかご扉72が開状態となった場合に、忘れ物防止部144は、着床した乗場30が荷掛行先階であるか否かを判定する。着床した乗場30が荷掛行先階であると判定する場合には、信号線76を介して乗りかご70の荷物掛け部74からの荷掛検出信号の有無を判定する。乗りかご70の荷掛検出信号があると判定する場合には、乗りかご70の荷掛検出信号を取得し、乗りかご70の荷掛検出信号の取得中は、かご扉72を開状態のままに維持する。かご扉72が開状態の場合は、これに連動して乗場扉32も開状態であるので、乗りかご70の荷物掛け部74に荷物4を掛けたまま乗場30へ降りた乗客2は、乗りかご70の荷物掛け部74に戻って荷物4を取り外し、再び乗場30に降りることができる。乗りかご70の荷物掛け部74から荷物4を外せば乗りかご70の荷掛検出信号の出力がなくなり、通常の運行制御に戻る。この場合も、乗りかご70の荷掛検出信号の出力がなくなると同時にかご扉72と乗場扉32が閉状態となると、乗りかご70の荷物掛け部74から荷物4を外した乗客2が乗場30へ降りることができないので、適当な遅れ時間が設けられる。
忘れ物防止部144は、かご扉72が開状態であって乗場30の荷物掛け部34における荷掛検出信号を取得している場合には、乗りかご70の表示部84に忘れ物防止の表示を出力させる。同様に、かご扉72が開状態であって乗りかご70の荷物掛け部74の荷掛検出信号を取得している場合には、乗りかご70の表示部84に忘れ物防止の表示を出力させる。忘れ物防止の表示としては、「乗場に荷物をお忘れではありませんか」、「乗りかごに荷物をお忘れではありませんか」等の忘れ物防止の音声アナウンスを出力させる。音声アナウンスに代えて、ブザー音等の警告音を出力させてもよい。
乗りかご70が乗場30に着床してかご扉72が開状態となっても、乗客2が乗場30の荷物掛け部34、あるいは、乗りかご70の荷物掛け部74から荷物4を取外すには、幾らかの時間遅れがある。したがって、忘れ物防止の表示の出力が早すぎる場合が生じ得るので、忘れ物防止の表示の出力のタイミングは、かご扉72が開状態となってから数秒後とすることがよい。
通過客検出部98,99を利用すると、忘れ物防止の表示の出力のタイミングに留意しなくて済む。通過客検出部98,99は、開状態のかご扉72を通る乗客2を検出して通過客検出信号を出力するので、通過客検出信号が出力されたタイミングで乗場30の荷物掛け部34における荷掛検出信号の有無を確認する。荷掛検出信号がある場合には、乗客2は乗場30の荷物掛け部34に荷物4を掛け忘れたままであることが確実であるので、忘れ物防止の表示を出力する。同様に、通過客検出信号が出力されたタイミングで乗りかご70の荷物掛け部74における荷掛検出信号の有無を確認する。荷掛検出信号がある場合には、乗客2は乗りかご70の荷物掛け部74に荷物4を掛け忘れたままであることが確実であるので、忘れ物防止の表示を出力する。このようにして、忘れ物防止の表示の出力のタイミングを最適にできる。
上記構成の荷物掛け部を備えるエレベーターシステム10の作用、特に制御装置140の運行制御部142と忘れ物防止部144の作用について、さらに、図6,7を用いて時系列に従って詳細に説明する。図6,7は、荷物掛け部を備えるエレベーターシステム10における制御の手順を示すフローチャートで、図6は、乗場30における手順を示し、図7は乗りかご70における手順を示す。これらの図で、破線枠で囲んだ手順は、乗客2が実行する手順であり、実線枠で囲んだ手順は、制御装置140が実行する手順である。制御装置140が実行する各手順は、制御装置140が実行するソフトウェアの各処理手順に対応する。
図6において、荷物4を持った乗客2が2階の乗場30へ来る(S10)。この状態は、図2に示す状態である。次に、乗客2は、かご呼び盤50の操作がしにくいので、乗場30の荷物掛け部34の2つの荷物掛けフック56,57の内で昇階側の荷物掛けフック56について、中間壁部38の凹部58から凹部58の外側である乗場30側に引き出し、フック部62の引掛け部122に荷物4を掛ける(S12)。
荷物掛けフック56を乗場30側に引き出すことで、フック部62の突出部126が荷掛検出センサ64の荷掛検出子112を軸方向に移動させる。これによって、荷掛検出信号が出力し、信号線36を介して制御装置140に伝送される。また、荷掛検出信号の出力と共に、荷掛情報の荷掛昇降方向情報として荷掛昇階情報に関する信号が出力し、信号線37を介して制御装置140に伝送される。制御装置140は、かご呼び盤50による昇階の呼び登録がされていない場合に、荷掛昇階情報に基づいて呼び登録を行う(S14)。
制御装置140の運行制御部142は、2階の乗場30における昇階呼び登録を受けて、N0.1またはNo.2の乗りかご70の内で適切な方について、巻上機18の動作を制御し、2階の乗場30へ向けて昇降させる昇降制御を行う(S16)。図2の例では、No.1の乗りかご70が2階の乗場30へ向けて昇降している。そして、No.1の乗りかご70が2階の乗場30に着床する(S18)。乗りかご70が2階の乗場30に着床すると、かご扉72及び乗場扉32が開状態となる(S20)。
次に、制御装置140の忘れ物防止部144は、乗場30の荷物掛け部34からの荷掛検出信号を取得中か否かを判定する(S22)。S22の判定が肯定される場合は、かご扉72及び乗場扉32の開状態を維持する(S24)。乗場30の荷物掛け部34からの荷掛検出信号を取得中においては、乗りかご70の行先階登録を受け付けず、かご扉72の強制閉ボタン90の操作も無効とされる。そして、適当なタイミングで、表示部84に忘れ物防止の表示を出力させる(S26)。通過客検出部98,99を利用する場合は、乗客通過検出信号の出力と同時に忘れ物防止の表示を出力してよい。忘れ物防止の表示によって、乗りかご70に乗り込んだ乗客2は、乗場30の荷物掛け部34から荷物4を取り忘れたことに気づき、開状態を維持しているかご扉72及び乗場扉32を通って、乗場30に戻る(S28)。
S28によって乗場30に戻った乗客2は、乗場30の荷物掛け部34から荷物4を外し、開状態を維持しているかご扉72及び乗場扉32を通って乗りかご70へ乗り込み、S22の手順に戻る。S22の判定が否定されると、通常の運行制御に戻り、丸印で囲んでAと示す図7の手順に進む。
図6においてS22の判定が否定されると、図7において、荷物4を持った乗客2が乗りかご70へ乗り込む(S30)。この状態は、図4に示す状態である。次に、乗客2は、行先階盤96,97の操作がしにくいので、乗りかご70の荷物掛け部74の6つの荷物掛けフック56の内で荷掛行先階である4階を示す「4」の荷掛行先階マーク68に対応する荷物掛けフック56を利用する。すなわち、荷物掛けフック56について、側壁80の凹部58から凹部58の外側である乗りかご70の室内側に引き出しフック部62の引掛け部122に荷物4を掛ける(S32)。
荷物掛けフック56を乗りかご70の室内側に引き出すことで、フック部62の突出部126が荷掛検出センサ64の荷掛検出子112を軸方向に移動させる。これによって、荷掛検出信号が出力し、信号線76を介して制御装置140に伝送される。また、荷掛検出信号の出力と共に、荷掛情報の荷掛行先階情報に関する信号が出力し、信号線77を介して制御装置140に伝送される。制御装置140は、行先階盤96,97による行先階登録がされていない場合に、荷掛行先階情報に基づいて行先階登録を行う(S34)。
制御装置140の運行制御部142は、荷掛行先階である4階の行先階登録を受けて、巻上機18の動作を制御し、乗りかご70を2階の乗場30から4階の乗場30へ向けて上昇させる昇階制御を行う(S36)。そして、乗りかご70が荷掛行先階である4階の乗場30に着床する(S38)。乗りかご70が4階の乗場30に着床すると、かご扉72及び乗場扉32が開状態となる(S40)。
次に、制御装置140の忘れ物防止部144は、乗りかご70の荷物掛け部74からの荷掛検出信号を取得中か否かを判定する(S42)。S42の判定が肯定される場合は、かご扉72及び乗場扉32の開状態を維持する(S44)。乗りかご70の荷物掛け部74からの荷掛検出信号を取得中においては、乗りかご70の行先階登録を受け付けず、かご扉72の強制閉ボタン90の操作も無効とされる。そして、適当なタイミングで、表示部84に忘れ物防止の表示を出力させる(S46)。通過客検出部98,99を利用する場合は、乗客通過検出信号の出力と同時に忘れ物防止の表示を出力してよい。忘れ物防止の表示によって、乗場30に降りた乗客2は、乗りかご70の荷物掛け部74から荷物4を取り忘れたことに気づき、開状態を維持しているかご扉72及び乗場扉32を通り、乗りかご70に戻る(S48)。
S48によって乗りかご70に戻った乗客2は、乗りかご70の荷物掛け部74から荷物4を外し、開状態を維持しているかご扉72及び乗場扉32を通って4階の乗場30へ降り、S42の手順に戻る。S42の判定が否定されると、通常の運行制御に戻り、一連の制御シーケンスは終了する。
上記では、乗りかご70において、荷物掛けフック56に荷物4を掛けることで、荷掛検出センサ64から荷掛検出信号と荷掛情報信号とが出力され、制御装置140に伝送される。この方法により、乗客2は、乗りかご70において荷掛行先階に対応する荷物掛けフック56に荷物4を掛けるだけで、行先階盤96,97を操作する必要がない。これに代えて、乗客2は、荷物掛けフック56に荷物4を掛けるが、荷掛行先階は、ボタン操作で登録するものとしてもよい。荷掛行先階を登録する操作盤を荷掛行先階盤と呼ぶと、荷掛行先階盤は、荷物掛けフック56に隣接して設けられることがよい。「隣接して設けられる」とは、荷物4を荷物掛けフック56に掛ける動作と、ボタン操作等の荷掛行先階の入力動作とを続けて行っても、乗客2があまり不便を感じない、という意味である。
図8は、図4の荷物掛け部74とは別の乗りかご70の荷物掛け部150を示す図である。荷物掛け部150は、2つの荷物掛けフック56と、これらにそれぞれ設けられる荷掛検出センサ64と、荷掛行先階盤152とを備える。荷物掛け部150は、乗りかご70内において行先階盤96,97が設けられた側壁78,79とは別の側壁80において、荷物掛けフック56に隣接して設けられる。
荷物掛けフック56は、図3で述べたものと同じである。2つの荷物掛けフック56は特に区別がなく、乗客2は、2つのうちのいずれか都合のよい方に荷物4を掛けてよい。場合によっては、2つの荷物4を持っている場合、2つの荷物掛けフック56に分けて掛けてもよい。また、2つの荷物掛けフック56の内の一方に他の乗客がすでに荷物を掛けている場合でも、乗客2は残りの1つの荷物掛けフック56に荷物4を掛けてよい。荷物掛けフック56の数は説明のための例示であって、1つの荷物掛けフック56でもよく、3つ以上の荷物掛けフック56であってもよい。
2つの荷物掛けフック56にそれぞれ設けられる荷掛検出センサ64は、荷掛検出信号を制御装置140に伝送する信号線76と、荷掛検出信号を荷掛行先階盤152に伝送する信号線156を備える。
荷掛行先階盤152は、複数の荷掛行先階ボタン154が配列されたボタン操作盤である。ここでは、建物8の荷掛行先階として1階から6階があるので、6つの荷掛行先階ボタン154が配列される。荷掛行先階ボタン154は、側壁78,79に設けられた行先階盤96,97の行先階ボタン94,95と同じ形状のボタンである。荷掛行先階盤152は、側壁78,79に設けられた行先階盤96,97と異なり、荷物掛けフック56に荷物4が掛けられていない場合には、動作しない。例えば、荷物掛けフック56に荷物4を掛けない乗客が、行先階ボタン94,95よりも荷掛行先階盤152が自分の近くにあるからといって荷掛行先階ボタン154を押しても、行先階登録は行われない。
荷物掛けフック56に荷物4が掛けられると、信号線156を介して荷掛検出信号が荷掛行先階盤152に伝送されてくる。荷掛行先階盤152は、荷掛検出信号の出力を取得して起動する。起動後は、荷掛行先階ボタン154を入力部として、入力部の操作によって、乗客2は、荷掛行先階を入力できる。今の場合、乗客2の荷掛行先階は4階であるので、乗客2は、「4」の荷掛行先階ボタン154を操作する。荷掛行先階盤152は、入力された「荷掛行先階は4階である」を、荷掛行先階に関する荷掛行先階情報として出力する出力部を有する。出力部から出力された荷掛行先階情報は、信号線158を介して制御装置140に伝送される。制御装置140は、荷掛行先階盤152から信号線158を介して荷掛行先階情報を取得した場合に、行先階盤96,97において荷掛行先階に対応する行先階登録がされていない場合には、荷掛行先階情報に基づいて行先階登録を行う。制御装置140の運行制御部142は、この行先階登録に従って運行制御を行うことができる。
荷物掛けフック56に荷物4が掛けられると、荷掛検出センサ64は、信号線76を介して荷掛検出信号を制御装置140に伝送する。制御装置140の忘れ物防止部144は、伝送されてきた荷掛検出信号を取得して、忘れ物防止のためのかご扉72の開状態継続や、忘れ物防止の表示を表示部84に行わせる。
このように、荷掛行先階盤152は、荷物掛けフック56に対応する荷掛検出センサ64からの荷掛検出信号に基づいて荷掛行先階情報を出力する荷掛情報出力部である。荷物掛け部150においては、荷掛検出センサ64は荷掛検出信号を出力するが、荷掛行先階情報は出力しない。荷掛行先階情報を出力するのは、荷掛行先階盤152である。したがって、乗りかご70の荷物掛け部150の荷物掛けフック56に荷物4を掛けた乗客2は、行先階盤96,97を操作することなく、荷物掛けフック56に隣接する荷掛行先階盤152を操作して荷掛行先階を入力できるので、行先階登録が簡単になる。また、荷掛行先階盤152の入力部は、行先階盤96,97の行先階ボタン94,95と同じ形状の荷掛行先階ボタン154であるので、乗客2にとって操作しやすい。
上記では、建物8が6階建であるので、荷掛行先階は、1階から6階の6つである。高層階の建物等で、多数の荷掛行先階がある場合は、目的の荷掛行先階ボタンを探すのに手間がかかる。図9は、図8の荷物掛け部150とは別の乗りかご70の荷物掛け部160を示す図である。荷物掛け部160が荷物掛け部150と相違するのは、荷掛行先階盤162である。荷掛行先階盤162は、入力部として、手書き入力パッド164を備える。手書き入力パッド164は、荷物掛け部150と同様に、荷掛検出センサ64から信号線156を介して荷掛検出信号の出力を取得することで起動する。起動後は、乗客2が指先、あるいは適当な入力棒を用いて、手書き入力パッド164に数字を手書きする操作によって、荷掛行先階を入力できる。図9の場合は、荷掛行先階を「37階」として、「37」のアラビア数字が入力されている。手書きの場合、乱雑な字体等であると文字認識が難しい場合があるが、その場合には、荷物掛け部160に備えられるメッセージ部166から、「もう1度書き直してください」等の音声メッセージが流れる。乗客2は、消去ボタン168を押すことで、一度書いた手書きを消去できるので、もう1度丁寧に「37」と手書きする。文字認識に成功すると、登録ランプ170が点灯する。
荷掛行先階盤162は、文字認識に成功した「37」に基づいて、「荷掛行先階は37階である」とする荷掛行先階に関する荷掛行先階情報として出力する出力部を有する。出力部から出力された荷掛行先階情報は、信号線158を介して制御装置140に伝送される。制御装置140は、荷掛行先階盤152から信号線172を介して荷掛行先階情報を取得した場合に、行先階盤96,97において荷掛行先階に対応する行先階登録がされていない場合には、荷掛行先階情報に基づいて行先階登録を行う。制御装置140の運行制御部142は、この行先階登録に従って運行制御を行うことができる。
荷物掛けフック56に荷物4が掛けられると、荷掛検出センサ64は、信号線76を介して荷掛検出信号を制御装置140に伝送する。制御装置140の忘れ物防止部144は、伝送されてきた荷掛検出信号を取得して、忘れ物防止のためのかご扉72の開状態継続や、忘れ物防止の表示を表示部84に行わせる。
このように、荷掛行先階盤162は、図8の荷掛行先階盤152と同様に、荷物掛けフック56に対応する荷掛検出センサ64からの荷掛検出信号に基づいて荷掛行先階情報を出力する荷掛情報出力部である。荷物掛け部160においては、荷掛検出センサ64は荷掛検出信号を出力するが、荷掛行先階情報は出力しない。荷掛行先階情報を出力するのは、荷掛行先階盤162である。したがって、乗りかご70の荷物掛け部160の荷物掛けフック56に荷物4を掛けた乗客2は、行先階盤96,97を操作することなく、荷物掛けフック56に隣接する荷掛行先階盤162を操作して荷掛行先階を入力できるので、行先階登録が簡単になる。また、荷掛行先階盤162においては、手書き入力パッド164を用いて手書きの数字で荷掛行先階を入力できるので、行先階登録が簡単になる。
上記構成の荷物掛け部を備えるエレベーターシステム10によれば、荷物掛け部を利用しながら、乗りかごの呼び登録や行先階登録を簡単に行うことができる。また、荷物掛け部に掛けた荷物4を取り忘れても、かご扉72及び乗場扉32は開状態を継続し、忘れ物防止の表示が行われるので、取り忘れた荷物4を荷物掛け部から取り外して、乗りかごや乗場に戻ることができる。