JP6966663B1 - 生分解性樹脂水系分散体とそれを用いた皮膜形成剤及び皮膜を形成する方法 - Google Patents

生分解性樹脂水系分散体とそれを用いた皮膜形成剤及び皮膜を形成する方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6966663B1
JP6966663B1 JP2021094852A JP2021094852A JP6966663B1 JP 6966663 B1 JP6966663 B1 JP 6966663B1 JP 2021094852 A JP2021094852 A JP 2021094852A JP 2021094852 A JP2021094852 A JP 2021094852A JP 6966663 B1 JP6966663 B1 JP 6966663B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
biodegradable resin
aqueous dispersion
film
acid
molecular weight
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2021094852A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2022187053A (ja
Inventor
匠平 伊藤
正宏 奥谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Miyoshi Oil and Fat Co Ltd
Original Assignee
Miyoshi Oil and Fat Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Miyoshi Oil and Fat Co Ltd filed Critical Miyoshi Oil and Fat Co Ltd
Priority to JP2021094852A priority Critical patent/JP6966663B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6966663B1 publication Critical patent/JP6966663B1/ja
Publication of JP2022187053A publication Critical patent/JP2022187053A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】生分解性に優れ、樹脂本来の物性を損なうことなく、特別な加熱処理を施さずに透明な皮膜を得ることができる生分解性樹脂水系分散体とそれを用いた皮膜形成剤及び皮膜を形成する方法を提供する。【解決手段】本発明の生分解性樹脂水系分散体は、生分解性樹脂が非イオン性分散剤の存在下で水系溶媒に分散されている水系分散体であって、前記生分解性樹脂として重量平均分子量が20000〜90000のポリカプロラクトンを含有し、前記生分解性樹脂に対する前記非イオン性分散剤の質量比が0.03〜0.23であることを特徴としている。【選択図】なし

Description

本発明は、生分解性樹脂水系分散体とそれを用いた皮膜形成剤及び皮膜を形成する方法に関する。
塗料基剤、被覆剤、接着剤等の様々な分野、用途においてポリマーを水へ分散させた水系樹脂分散体が使用されている。中でもオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等は、皮膜に求める性能を考慮した上で構造設計することができ、種類によっては特別な加熱処理を必要とすることなく均一な皮膜を形成できるため、機能性、利便性に優れることから様々な分野、用途で活用されている。
しかし、これらのポリマーは生分解性機能を有しておらず、使用後は環境中に半永久的に存在し、環境への負荷が懸念されている。そこで、生分解性機能を有するポリマーへの置き換えが種々検討されている。
生分解性樹脂に限らず、水系樹脂分散体が塗工後に機能を発揮するためには、水に分散されている微粒子状のポリマーが水の蒸発後にそれぞれが融着して均一な皮膜を形成することが必要である。水の蒸発後も樹脂同士が融着しない場合は、塗工面において白色状態で存在する。例えば加熱処理を施すことで、樹脂が融着して均一な皮膜を形成することができるが、利便性が悪く、様々な用途への展開を考えると、少なくとも室温付近で造膜することが求められる。
代表的な生分解性樹脂としてポリ乳酸が知られているが、ポリ乳酸は造膜性に難点がある。ポリ乳酸水系分散体を室温付近で造膜するために、特定の可塑剤を併用することでポリ乳酸のガラス転移点を低下させ、最低造膜温度(MFT)を下げる方法が知られているが、可塑剤の添加により得られる皮膜の耐水性が低下するなど、樹脂本来の物性を損なうという欠点がある。
従来、生分解性樹脂にポリカプロラクトンを用いた水系分散体としては、特許文献1〜9の技術が提案されている。
特開2002−356612号公報 特開2004−018744号公報 特開2001−247392号公報 特開2001−011294号公報 特開2002−371259号公報 特開2005−047998号公報 特開2006−077186号公報 特開2005−103783号公報 特開2003−073233号公報
しかしながら、これらの従来技術では、透明性の高い皮膜を形成すること、特に室温付近で透明な皮膜を形成することについて着目しておらず、そのような観点からポリカプロラクトンの分子量、分散剤の種類や比率は検討されていない。例えば、特許文献1、2等にはポリ乳酸とポリカプロラクトンを併用した水系分散体が記載されているが、塗工後に熱処理を行わないと透明な皮膜が得られない問題点や、ポリカプロラクトンの分子量が比較的大きいと得られる皮膜の透明性を欠く問題点等に対する十分な解決手段を示していない。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、生分解性に優れ、樹脂本来の物性を損なうことなく、特別な加熱処理を施さずに透明な皮膜を得ることができる生分解性樹脂水系分散体とそれを用いた皮膜形成剤及び皮膜を形成する方法を提供することを課題としている。
前記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、生分解性樹脂として重量平均分子量が特定範囲のポリカプロラクトン樹脂を用い、生分解性樹脂に対する非イオン性分散剤の質量比を特定範囲とすることで、特別な加熱処理を施さずに透明な皮膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の生分解性樹脂水系分散体は、生分解性樹脂が非イオン性分散剤の存在下で水系溶媒に分散されている水系分散体であって、
前記生分解性樹脂として重量平均分子量が20000〜90000のポリカプロラクトンを含有し、
前記生分解性樹脂に対する前記非イオン性分散剤の質量比が0.03〜0.23であることを特徴としている。
本発明の皮膜形成剤は、前記生分解性樹脂水系分散体である。
本発明の皮膜を形成する方法は、次の工程を含む:
前記生分解性樹脂水系分散体を含有する組成物を対象物の表面に適用する工程;及び
前記組成物を乾燥し、前記対象物の表面に皮膜を形成する工程。
本発明によれば、生分解性に優れ、樹脂本来の物性を損なうことなく、特別な加熱処理を施さずに透明な皮膜を得ることができる。
実施例11、5、7、比較例3、2について、生分解性樹脂水分散体をスライドガラスへ塗工し乾燥させて得た皮膜の下に、黒丸を印字した紙を置いた写真と、生分解性樹脂Dを酢酸エチルに溶解し、これを乾燥することで成膜を試みたキャスト膜の写真である。
以下に、本発明の実施形態を説明する。
(生分解性樹脂水系分散体)
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、生分解性樹脂が非イオン性分散剤の存在下で水系溶媒に分散されている水系分散体である。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、生分解性樹脂として重量平均分子量が20000〜90000のポリカプロラクトンを含有する。
ポリカプロラクトンは、融点とガラス転移温度が比較的低い生分解性ポリエステルである。ポリカプロラクトンは、例えば、環状エステル及びラクトンの一つで化学式が(CH25CO2の七員環化合物であるε−カプロラクトンの開環重合によって、触媒を使用して製造される。
ポリカプロラクトンの重量平均分子量が20000以上であると、実用上十分な強度の皮膜を得ることができる。この点を考慮すると、ポリカプロラクトンは、重量平均分子量が好ましくは22000以上、より好ましくは25000以上である。
重量平均分子量が90000以下であると、特別な加熱処理を施さずに透明な皮膜を得ることができる。この点を考慮すると、ポリカプロラクトンは、重量平均分子量が好ましくは88000以下、より好ましくは80000以下である。
ポリカプロラクトンの重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、分子量が既知の標準物質と比較することにより後記の方法で求めることができる。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、生分解性樹脂に対する非イオン性分散剤の質量比が0.03〜0.23である。
前記質量比が0.03以上であると、生分解性樹脂水系分散体の分散物の粒子径を小さくすることができ、分散体の凝集及び沈降を抑制し良好な分散状態を維持することができる。また、特別な加熱処理を施さずに透明な皮膜を得ることができる。この点を考慮すると、ポリカプロラクトンは、前記質量比が好ましくは0.04以上である。
前記質量比が0.23以下であると、非イオン性分散剤がポリカプロラクトンの物性及び皮膜の透明性に与える影響が小さく、特別な加熱処理を施さずに透明な皮膜を得ることができる。この点を考慮すると、ポリカプロラクトンは、前記質量比が好ましくは0.20以下である。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、生分解性樹脂として、前記ポリカプロラクトン以外の樹脂を含有してもよい。このような生分解性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレートサクシネートや、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート等の二塩基酸ポリエステル等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
好ましい実施形態において、生分解性樹脂水系分散体は、前記ポリカプロラクトンを生分解性樹脂の全量を基準として50質量%以上含有する。これにより、樹脂本来の物性を損なうことなく、特別な加熱処理を施さずに透明な皮膜を得ることができる。この観点より、生分解性樹脂水系分散体は、生分解性樹脂における前記ポリカプロラクトンの含有量が高い程好ましく、より好ましい順に示すと、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上のポリカプロラクトンを生分解性樹脂の全量を基準として含有する。最も好ましくは、生分解性樹脂の全てがポリカプロラクトンである。これらの中でも、生分解性樹脂水系分散体は、例えば生分解性樹脂であるポリ乳酸の含有量が、生分解性樹脂の全量を基準として50質量%未満であることが好ましく、生分解性樹脂におけるポリ乳酸の含有量が低い程好ましく、より好ましい順に示すと、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、2質量%以下のポリ乳酸を生分解性樹脂の全量を基準として含有する。
あるいは、生分解性樹脂水系分散体は、生分解性樹脂として前記ポリカプロラクトン以外の樹脂を含有する場合、最低造膜温度(MFT)が30℃以下であることが好ましく、より好ましい順に示すと、28℃以下、25℃以下、23℃以下、20℃以下である。これにより、樹脂本来の物性を損なうことなく、特別な加熱処理を施さずに透明な皮膜を得ることができる。
本発明の生分解性樹脂水系分散体において、水系溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、及び水と相溶する有機溶媒との混合溶媒等が挙げられる。
前記混合溶媒において、水の比率は、特に限定されないが、混合溶媒の全量を基準として90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
前記混合溶媒において、有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、一価アルコール、多価アルコール等が挙げられる。一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルプロピルアルコール、ブタノール等が挙げられ、多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ブチレングリコール等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の生分解性樹脂水系分散体において、非イオン性分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリオキシアルキレン縮合物、セルロース誘導体等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリビニルアルコールとしては、鹸化度が70〜95%、数平均分子量が5万〜30万のものが好ましい。鹸化度、数平均分子量がこの範囲であると樹脂粒子の不均一化、凝集及び沈降を抑制し良好な分散状態を維持することができる。ポリビニルアルコールの数平均分子量(Mn)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、分子量が既知の標準物質と比較することにより後記の方法で求めることができる。またポリビニルアルコールの鹸化度は、ポリビニルアルコールの水酸基価から算出することができる。
ポリオキシアルキレン縮合物としては、酸化エチレンと酸化プロピレンとの共重合体が好ましい。酸化エチレン(EО)と酸化プロピレン(PO)のモル比率は、EО:PO=70:30〜20:80が好ましく、EO:PO=60:40〜30:70がより好ましい。
セルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
非イオン性分散剤の含有量は、特に限定されないが、生分解性樹脂の全量を基準として3〜23質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、固形分が、生分解性樹脂水系分散体の全量を基準として30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましい。固形分がこの範囲内であると、水分散体に占める樹脂粒子の割合が多いため乾燥効率が向上する。また水分散体の粘度が適正な範囲となることで、増粘剤等の粘度調整剤を要することなく樹脂粒子が安定的に分散する。また、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。固形分がこの範囲内であると、水分散体の粘度が高くなりすぎず、水分散体を塗工する際のハンドリング性が良好となる。ここで固形分とは、生分解性樹脂水系分散体の全体量に対して、水分量を差し引いた質量の百分率のことである。
好ましい実施形態において、生分解性樹脂水系分散体は、水系溶媒に分散されている生分解性樹脂の樹脂粒子の平均粒子径が4.0μm未満である。平均粒子径がこの範囲内であると、乾燥工程において樹脂同士がより密に存在することができ、粒子同士の融着がし易いことから、特別な加熱処理を施さずに透明な皮膜を得ることができる。この点を考慮すると、平均粒子径は、好ましくは2.0μm以下である。
ここで樹脂粒子の平均粒子径は、後記の方法で測定して得た値である。
好ましい実施形態において、生分解性樹脂水系分散体は、更に重量平均分子量30万以上のイオン性分散剤を含有する。このイオン性分散剤を含有することで、特別な加熱処理を施さずに得られる皮膜の透明性を高めることができる。イオン性分散剤の重量平均分子量は、好ましくは100万以上、より好ましくは500万以上である。
イオン性分散剤の重量平均分子量(Mw)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、分子量が既知の標準物質と比較することにより後記の方法で求めることができる。
重量平均分子量30万以上のイオン性分散剤としては、アニオン性、カチオン性、又は両性の化合物が挙げられる。当該化合物としては、高分子、界面活性剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重量平均分子量30万以上のアニオン性分散剤としては、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体、不飽和スルホン酸系単量体等の単量体の単独重合体やこれら単量体相互の共重合体、これら不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体、不飽和スルホン酸系単量体等の単量体と、共重合可能な他の単量体(以下、単に他の単量体と呼ぶ。)との共重合体等が挙げられる。不飽和モノカルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸やこれらの酸の中和物、部分中和物等が挙げられ、不飽和ジカルボン酸系単量体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸やこれらの酸の中和物、部分中和物等が挙げられ、不飽和スルホン酸系単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタクリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸やこれらの中和物、部分中和物等が挙げられる。
アニオン性高分子化合物として、上記不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体、不飽和スルホン酸系単量体等の単量体と他の単量体との共重合体を用いる場合、他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリルアミド、イソプロピルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、ポリエチレングリコールモノプレノールエステル、ポリプロピレングリコールモノプレノールエステル、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、ポリエチレングリコールモノイソプレンアルコールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレンアルコールエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノアリルエーテル、ビニルアルコール等の水酸基含有単量体、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸メチルエステル、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸等のリン含有単量体、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アニオン性高分子化合物は、前記不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体、不飽和スルホン酸系単量体等の単量体の単独重合体やこれら単量体相互の共重合体、及びこれらの単量体と他の単量体との共重合体等を、更にシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の二塩基酸類や、これら二塩基酸類のアルキルエステル類、ヘキサメチレンジイソシアネートグリシジルエーテル、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート類、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、オルソフタル酸ジグリシジルエーテル等のジエポキシ類、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類、尿素、グアニジン類、二塩基酸ジハライド、ジアルデヒド等で架橋したものであってもよい。
アニオン性高分子化合物は、通常、適当な塩基性化合物の塩として用いるのが好ましく、このような塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアミン化合物、アンモニア等が挙げられる。
アニオン性高分子化合物としては、例えば、上記したものの中から重量平均分子量30万以上のものを選択して用いることができるが、具体例としては、前記アニオン性高分子化合物のうち、不飽和モノカルボン酸系単量体やその中和物の少なくとも1種を主成分とする重合体が好ましく、特にアミド系単量体と、不飽和モノカルボン酸系単量体やその中和物との共重合体が好ましく、例えば、(メタ)アクリルアミド/(メタ)アクリル酸ナトリウム共重合体が好ましい。
重量平均分子量30万以上のカチオン性高分子分散剤としては、カチオン性アクリル系重合体、カチオン性ポリアミン系重合体が挙げられる。
カチオン性アクリル系重合体としては、例えば、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のカチオン性アクリル系モノマーや、これらカチオン性アクリル系モノマーにハロゲン化アルキル、ジアルキル硫酸、モノクロル酢酸等を反応して得られる、例えばメタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸ジエチルアミノエチルジメチル硫酸塩、メタクリル酸ジメチルアミノプロピルクロル酢酸塩等の4級アンモニウム塩等の単独重合体や共重合体が挙げられる。
共重合体としては、上記カチオン性アクリル系モノマー及びその4級アンモニウム塩と、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、アクリル酸ポリオキシエチレンエステル、アクリル酸アルコキシポリオキシエチレンエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸ポリオキシエチレンエステル、メタクリル酸アルコキシポリオキシエチレンエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、モルホリルアクリルアミド等のアクリルモノマー、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルエーテル、メトキシトリエチレングリコールビニルエーテル等のビニルエーテル類、ヒドロキシエチルアリルエーテル、テトラエチレングリコールアリルエーテル、メトキシエチレングリコールアリルエーテル等のアリルエーテル類、酢酸ビニル、モノクロル酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、メチルビニルイミダゾール等のビニルアミン類、ジアリルアンモニウムクロライド、あるいは上記カチオン性アクリル系モノマー及びその4級アンモニウム塩と共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体等が挙げられる。
カチオン性ポリアミン系重合体としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリ−3−メチルプロピルイミン、ポリ−2−エチルプロピルイミン等の環状イミンの重合体、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の不飽和アミンの重合体等や、これらの4級アンモニウム塩等のポリアミン系ポリマーが挙げられる。またこれらのポリアミン系ポリマーに、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アシル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシアルキル基等を付加したものであってもよい。アルキル基はアルキルハライドを、ヒドロキシアルキル基は1,2−エポキシアルカンを、アシル基はアシルハライドを、ポリオキシアルキレン基は酸化エチレンを、カルボキシアルキル基はモノクロル酢酸やアクリル酸等を、それぞれポリアミン系ポリマーと反応させることにより付加させることができる。
カチオン性高分子化合物は、前記カチオン性アクリル系重合体及びカチオン性ポリアミン系重合体を、更にシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の二塩基酸類や、これら二塩基酸類のアルキルエステル類、ヘキサメチレンジイソシアネートグリシジルエーテル、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート類、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、オルソフタル酸ジグリシジルエーテル等のジエポキシ類、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類、尿素、グアニジン類、二塩基酸ジハライド、ジアルデヒド等で架橋したものであってもよい。
本発明において、カチオン性高分子化合物としてカチオン性アクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体を用いる場合、カチオン性高分子化合物中におけるカチオン性アクリル系モノマーの含有率は30モル%以上であることが好ましい。カチオン性高分子化合物は、通常、適当な酸性化合物の塩として用いるのが好ましく、このような酸性化合物としては、塩酸、硫酸、蟻酸、リン酸等の無機酸、酢酸、蓚酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、安息香酸等の有機酸のいずれでもよいが、中でも酢酸、リン酸、乳酸が安全性、価格、熱安定性、着色性等の点で好ましい。本発明においてカチオン性高分子化合物としては、例えば、上記した化合物の中から、重量平均分子量30万以上の化合物を選択して用いることができる。
本発明においては、上記したカチオン性高分子化合物のうち、特にアクリルアミド系共重合体を主成分とする重合体が好ましい。
重量平均分子量30万以上のイオン性分散剤の含有量は、特に限定されないが、生分解性樹脂の全量を基準として0.005〜1質量%が好ましく、0.01〜0.8質量%がより好ましく、0.02〜0.5質量%が更に好ましい。
好ましい実施形態において、生分解性樹脂水系分散体は、更に長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩及びポリオキシエチレンジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種を含有する。これらの化合物を含有することで、特別な加熱処理を施さずに透明な皮膜を得ることができると共に、皮膜の耐水性をより高めることができる。
長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩における長鎖アルキル基は、好ましくは炭素数12〜22である。長鎖アルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよいが、好ましくは直鎖状である。長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩としては、特に限定されないが、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチアンモニウム塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。対アニオンとしては、特に限定されないが、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン等が挙げられ、これらの中でも塩化物イオンが好ましい。
ポリオキシエチレンジアルキルスルホコハク酸塩におけるオキシエチレンの付加モル数は、特に限定されないが、好ましくは1.0〜10モル、より好ましくは2.0〜5.0モルである。アルキル基は、好ましくは炭素数8〜22である。ポリオキシエチレンジアルキルスルホコハク酸塩としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンジラウリルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンジミリスチルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンジセチルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンジステアリルスルホコハク酸塩等が挙げられる。対カチオンとしては、特に限定されないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。
長鎖アルキルトリメチル4級アンモニウム塩及びポリオキシエチレンジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種の含有量は、特に限定されないが、生分解性樹脂の全量を基準として0.005〜1質量%が好ましく、0.01〜0.8質量%がより好ましく、0.02〜0.5質量%が更に好ましい。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、本発明の効果を損なわない範囲内において、以上に示した以外の他の成分を含有してもよい。
他の成分としては、特に限定されないが、例えば、重量平均分子量30万未満のイオン性分散剤、粘度調整剤、表面平滑剤、撥水剤(疎水性向上剤)、離型剤、防錆剤、流動性調整剤、ワックス類等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、可塑剤を含有してもよいが、その含有量は少ない程好ましく、含有しないことがより好ましい。ポリ乳酸水系分散体を室温付近で造膜するために、特定の可塑剤を併用することでポリ乳酸のガラス転移点を低下させ、最低造膜温度(MFT)を下げる方法が知られているが、可塑剤の添加により得られる皮膜の耐水性が低下するなど、添加量と可塑剤の種類によっては樹脂本来の物性を損なうという欠点がある。この観点より、生分解性樹脂水系分散体は、可塑剤の含有量が、生分解性樹脂の全量を基準として好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下であり、最も好ましくは可塑剤を含有しない。
可塑剤としては、脂肪酸エステル系の可塑剤が好ましく、例えばアジピン酸エステル系、クエン酸エステル系、ポリグリセリン脂肪酸エステル系等が挙げられる。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、その製造方法は特に限定されないが、例えば、生分解性樹脂と、非イオン性分散剤等の分散剤とを、水系溶媒と共に混合攪拌することで製造することができる。
具体的には、例えば、攪拌装置を有する密閉槽を用い、生分解性樹脂、非イオン性分散剤等の分散剤、必要に応じて更に粘度調整剤と水を同時に仕込み、加熱攪拌しながら加圧して生分解性樹脂を分散させる加圧分散法、加圧下で保持されている熱水中に、生分解性樹脂、非イオン性分散剤等の分散剤、必要に応じて更に粘度調整剤を含む溶融物を添加攪拌して分散させる直接分散法;生分解性樹脂を加熱溶融させ、これに非イオン性分散剤等の分散剤、必要に応じて更に粘度調整剤を含む水溶液を添加攪拌して生分解性樹脂を水に分散させる転相法;有機溶媒、水、生分解性樹脂、非イオン性分散剤等の分散剤、必要に応じて更に粘度調整剤を添加攪拌して分散させた後、有機溶媒を除去する方法;生分解性樹脂の有機溶媒溶液中に、非イオン性分散剤等の分散剤、必要に応じて更に粘度調整剤を含む水溶液を添加攪拌して分散させた後、有機溶媒を除去する方法等が挙げられる。
生分解性樹脂の幅広い種類に適応が可能な点、加水分解の進行を考慮すると、攪拌装置を有する密閉槽に、有機溶媒、水、前記した生分解性樹脂、非イオン性分散剤等の分散剤、必要に応じて更に粘度調整剤を仕込み、攪拌しながら昇温し、固体原料を溶解、分散させた後、冷却し、その後、減圧下に有機溶媒を除去する方法が好ましい。
あるいは、攪拌装置を有する密閉槽に、有機溶媒、生分解性樹脂を仕込み攪拌昇温し溶解して生分解性樹脂溶解溶液を調製し、別の攪拌槽に水、非イオン性分散剤等の分散剤、必要に応じて更に粘度調整剤を仕込み、溶解した水溶液を前記密閉槽に添加し、攪拌、樹脂溶解温度以上に昇温しながら分散させた後、冷却し、その後、減圧下に有機溶媒を除去する方法が好ましい。
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル等の蟻酸エステル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類等のエステル系有機溶媒、クロロホルム、四塩化炭素等の塩素系有機溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、樹脂の溶解性が良好なエステル系有機溶媒、特に蟻酸エステル類、酢酸エステル類が好ましい。有機溶媒と水との割合は、樹脂の十分な溶解及び分散剤と粘度調整剤の十分な溶解を考慮すると、質量比で、有機溶媒:水=1:9〜9:1の割合が好ましく、7:3〜3:7の割合がより好ましい。
生分解性樹脂水系分散体の製造における分散攪拌装置としては、ホモミキサーや高圧乳化機等を用いてもよいが、これらの特殊な装置を使用せずとも、通常の分散や混合攪拌に使用される、例えば、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼、アンカー翼、リボン翼等の攪拌翼を有する回転式攪拌機を用いることができる。また、攪拌速度及び回転速度についても通常の分散や混合で使用する条件であってよい。例えば、分散時の攪拌翼の翼径(d1)と攪拌槽の内径(d2)の比(翼比:d1/d2)が0.5〜0.85である攪拌翼を用いることができる。また、攪拌翼の周速は1〜8m/sとすることができる。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、簡単かつ安価に安定的に提供され、皮膜の形成に優れているため、化粧料、塗料基剤、被覆剤、接着剤等に好適に用いることができる。
(皮膜形成剤及び皮膜を形成する方法)
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、皮膜形成剤として用いることができる。
本発明の生分解性樹脂水系分散体を用いた皮膜を形成する方法は、次の工程を含む:
生分解性樹脂水系分散体を含有する組成物を対象物の表面に適用する工程;及び
前記組成物を乾燥し、前記対象物の表面に皮膜を形成する工程。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、水に分散されている樹脂粒子が水系溶媒の蒸発後にそれぞれ融着して均一な皮膜を形成する。皮膜を形成する温度は、特に限定されないが、15℃以上が好ましく、25℃以上がより好ましい。室温付近で容易に造膜し、特別な加熱処理を施さずに樹脂粒子が融着して均一な膜を形成する。
本発明の生分解性樹脂水系分散体は、透明性の高い皮膜を形成する。指標の一つとして、生分解性樹脂水系分散体を単独で用いて、スライドガラスに塗工して20℃で形成した皮膜は、未塗工のスライドガラスの光沢度が100であるとして、光沢度が60以上、好ましくは70以上、より好ましくは85以上である。
生分解性樹脂水系分散体を含有する組成物は、特に限定されないが、前記した用途、例えば、化粧品、塗料、被覆剤、接着剤等が挙げられる。
対象物の表面に適用する方法は特に限定されず、目的に応じて塗布、噴霧等が挙げられる。均一な薄い膜ができるように適用することが好ましい。コーティング装置等の装置や道具を使用してもよい。
組成物を乾燥し、対象物の表面に皮膜を形成する際には、乾燥条件は特に限定されず、前記したような温度条件で行うことができ、水等の溶媒成分が次第に飛散するのであれば大気下での自然乾燥であってもよい。
以上に、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.生分解性樹脂水系分散体の調製
実施例及び比較例において、生分解性樹脂、非イオン性分散剤、イオン性分散剤、及び他の成分として次のものを用いた。
(生分解性樹脂)
A ポリカプロラクトン 重量平均分子量10000
B ポリカプロラクトン 重量平均分子量25000
C ポリカプロラクトン 重量平均分子量37000
D ポリカプロラクトン 重量平均分子量50000
E ポリカプロラクトン 重量平均分子量80000
F ポリカプロラクトン 重量平均分子量120000
G ポリ乳酸 重量平均分子量200000
(非イオン性分散剤)
A ポリビニルアルコール 数平均分子量100000 鹸化度80%
B エチレン変性ポリビニルアルコール 重合度1700 鹸化度93%((株)クラレ製「エクセバールRS−1717」)
C 酸化エチレン(EO)と酸化プロピレン(PO)との共重合体 数平均分子量3300 EOPO比率(EО:PO)=46:54
(イオン性分散剤)
A ポリアクリル酸/アクリルアミド(質量比80:20) 重量平均分子量1800万
B カチオン性ポリアクリルアミド 重量平均分子量800万
(他の成分)
A ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド
B ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド
C ポリオキシエチレン(2)スルホコハク酸ジラウリル2ナトリウム
表1に示した成分割合で、密閉分散槽に仕込み、仕込んだ各成分の合計質量が固形分換算で40質量%になるようイオン交換水を仕込む。そして、仕込んだイオン交換水の1.5倍量の酢酸エチルを更に仕込み、70℃に加熱して所定の攪拌分散装置を用いた分散方法によって分散後、40℃まで急冷した。その後、減圧下に酢酸エチルを除去して生分解性樹脂水系分散体を得た。
平均分子量
生分解性樹脂や分散剤の平均分子量、すなわち、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、下記の装置及び条件で測定したポリスチレン換算の平均分子量をいう。
[GPC測定装置]
カラム: 日本分光株式会社製
検出器: 液体クロマトグラム用RI検出器 日本分光株式会社製RI−1530
[測定条件]
溶媒: クロロホルム(特級)
測定温度: 50℃
流速: 1.0ml/分
試料濃度: 15mg/ml
注入量: 2μl
検量線:Universal Calibration
解析プログラム:ChromNAV (Ver.1.19.02)
平均粒子径
樹脂粒子の平均粒子径は、島津レーザ回折型粒度分布測定装置((株)島津製作所製、SALD−2300型、屈折率1.45−0.00i)を用いて測定した。
2.評価
実施例及び比較例の生分解性樹脂水系分散体について、次の評価を行った。
生分解性樹脂水系分散体を用いて、皮膜を次の手順で作製した。
生分解性樹脂水系分散体をバーコーターNо.4を用いて2.5cm×7.5cmのスライドガラスに塗工し、20℃で24時間乾燥させることで皮膜を得た。
[皮膜の透明性]
得られた皮膜の透明性を次の基準で評価した。皮膜形成したスライドガラス表面を株式会社堀場製作所製ハンディ光沢計「グロスチェッカIG−330」を用いて光沢度を測定した。未塗工のスライドガラスの光沢度を100として、以下の5水準で評価した。
<評価基準>
◎+:光沢度が85以上
◎:光沢度が70以上85未満
○:光沢度が60以上70未満
△:光沢度が50以上60未満
×:光沢度が50未満
上記評価の結果を表1及び表2に示す。
[皮膜の耐水性]
得られた皮膜の耐水性を次の基準で評価した。
<評価基準>
A:皮膜に水を滴下後10秒経過しても白化しない。
B:皮膜に水を滴下後10秒以内に白化する。
上記評価の結果を表2に示す。
Figure 0006966663
Figure 0006966663
表1より、実施例1,5,6と比較例1,2から、樹脂の重量平均分子量が20000〜90000の範囲で透明な皮膜が得られることが確認できる。光沢度、すなわち入射光と正反射光との強度比の値による上記評価は、後記にも記した図1の目視結果における透明さの度合いとも相関している。比較例1では、水分の蒸発が進むにつれて膜のひび割れが認められ、重量平均分子量20000を下回るとポリマーとしての性質が小さく、得られる皮膜の強度が実用上十分でないことも確認された。実施例4と比較例3から、透明な皮膜を得るには、非イオン性分散剤/樹脂の比率は0.03が下限値であることが認められる。下限値を下回ると、樹脂の粒子径が大きくなり、得られる皮膜の透明性が十分でない。一方、実施例6,7と比較例4から、非イオン性分散剤/樹脂の比率が上限値である0.23に近づくことで皮膜の透明性が低下していき、0.23を超えると皮膜がくすみ透明性が損なわれることを確認できる。実施例2,3から、ポリカプロラクトンとは異なる生分解性樹脂を混合しても透明な皮膜を得ることができ、全生分解性樹脂中にポリカプロラクトンを質量比50質量%以上含むことで透明性が向上することがわかる。また、実施例9〜11に示す通り、イオン性高分子分散剤を含むことで皮膜の透明性が向上することが確認された。
図1は、皮膜の透明性の評価が◎+、◎、○、△、×である順に、実施例11、5、7、比較例3、2について、生分解性樹脂水分散体をスライドガラスへ塗工し乾燥させて得た皮膜の下に、黒丸を印字した紙を置いた写真である。黒丸がはっきり見えるほど透明性が高い。図1に示すように、上記光沢度による評価が良くなる順に、黒丸がはっきり見えるようになり、一方で比較例3、2では白っぽさが目立つようになることが確認される。生分解性樹脂Dを酢酸エチルに溶解し、これを乾燥することで成膜を試みたが(キャスト膜)、皮膜の外観は白色であり、均一な皮膜は得られなかった。
表2より、実施例12〜14から、特定の化合物(成分A〜C)を含むことで皮膜の耐水性が向上することが確認できる。また、これはイオン性分散剤A,Bを併用しても支障なく、これより得られる皮膜は透明性に優れながらも耐水性も良好であり、実用上有用な方法である。

Claims (7)

  1. 生分解性樹脂が非イオン性分散剤の存在下で水系溶媒に分散されている水系分散体であって、
    前記生分解性樹脂として重量平均分子量が20000〜90000のポリカプロラクトンを含有し、
    前記生分解性樹脂に対する前記非イオン性分散剤の質量比が0.03〜0.23である生分解性樹脂水系分散体。
  2. 前記ポリカプロラクトンを前記生分解性樹脂の全量を基準として50質量%以上含有する請求項1に記載の生分解性樹脂水系分散体。
  3. 前記水系溶媒に分散されている前記生分解性樹脂の樹脂粒子は、平均粒子径が4.0μm未満である請求項1又は2に記載の生分解性樹脂水系分散体。
  4. 更に重量平均分子量30万以上のイオン性分散剤を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の生分解性樹脂水系分散体。
  5. 更にアルキルトリメチル4級アンモニウム塩及びポリオキシエチレンジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の生分解性樹脂水系分散体。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の生分解性樹脂水系分散体である皮膜形成剤。
  7. 次の工程を含む皮膜を形成する方法:
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の生分解性樹脂水系分散体を含有する組成物を対象物の表面に適用する工程;及び
    前記組成物を乾燥し、前記対象物の表面に皮膜を形成する工程。
JP2021094852A 2021-06-07 2021-06-07 生分解性樹脂水系分散体とそれを用いた皮膜形成剤及び皮膜を形成する方法 Active JP6966663B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021094852A JP6966663B1 (ja) 2021-06-07 2021-06-07 生分解性樹脂水系分散体とそれを用いた皮膜形成剤及び皮膜を形成する方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021094852A JP6966663B1 (ja) 2021-06-07 2021-06-07 生分解性樹脂水系分散体とそれを用いた皮膜形成剤及び皮膜を形成する方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6966663B1 true JP6966663B1 (ja) 2021-11-17
JP2022187053A JP2022187053A (ja) 2022-12-19

Family

ID=78509547

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021094852A Active JP6966663B1 (ja) 2021-06-07 2021-06-07 生分解性樹脂水系分散体とそれを用いた皮膜形成剤及び皮膜を形成する方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6966663B1 (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001011294A (ja) * 1999-07-02 2001-01-16 Miyoshi Oil & Fat Co Ltd 生分解性樹脂水系分散体及び生分解性複合材料
JP2001354841A (ja) * 2000-06-16 2001-12-25 Showa Highpolymer Co Ltd 生分解性ポリエステルの水系分散液
JP2007224062A (ja) * 2006-02-21 2007-09-06 Sanyo Chem Ind Ltd 樹脂微粒子分散ポリオール組成物
JP2008013658A (ja) * 2006-07-05 2008-01-24 Sakata Corp ポリ乳酸/ポリカプロラクトン共重合体水性分散組成物およびその用途
US20140148330A1 (en) * 2012-11-28 2014-05-29 Douglas R. Robello Semi-permeable particles having metallic catalysts and uses
JP2016053111A (ja) * 2014-09-03 2016-04-14 三洋化成工業株式会社 ポリエステル水性分散体

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001011294A (ja) * 1999-07-02 2001-01-16 Miyoshi Oil & Fat Co Ltd 生分解性樹脂水系分散体及び生分解性複合材料
JP2001354841A (ja) * 2000-06-16 2001-12-25 Showa Highpolymer Co Ltd 生分解性ポリエステルの水系分散液
JP2007224062A (ja) * 2006-02-21 2007-09-06 Sanyo Chem Ind Ltd 樹脂微粒子分散ポリオール組成物
JP2008013658A (ja) * 2006-07-05 2008-01-24 Sakata Corp ポリ乳酸/ポリカプロラクトン共重合体水性分散組成物およびその用途
US20140148330A1 (en) * 2012-11-28 2014-05-29 Douglas R. Robello Semi-permeable particles having metallic catalysts and uses
JP2016053111A (ja) * 2014-09-03 2016-04-14 三洋化成工業株式会社 ポリエステル水性分散体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2022187053A (ja) 2022-12-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2007007578A1 (ja) 水性分散液およびその製造方法、並びに組成物、接着剤およびコーティング剤
JP6778279B2 (ja) ポリビニルアルコール組成物及びその用途
TWI242575B (en) Preparation method of solvent-free water dispersible hydroxypropyl methyl cellulose phthalate nanoparticle
JP5578891B2 (ja) ポリエステル樹脂水性分散体、およびその製造方法、ならびにそれから得られる樹脂被膜
JP4864699B2 (ja) エチレン/ビニルアルコール系共重合体水性分散液の製造方法
JP6966663B1 (ja) 生分解性樹脂水系分散体とそれを用いた皮膜形成剤及び皮膜を形成する方法
JP2001011294A (ja) 生分解性樹脂水系分散体及び生分解性複合材料
US20240141161A1 (en) Biodegradable resin aqueous dispersion, film forming agent using same, and method for forming film
JP7333777B2 (ja) ポリビニルアルコール組成物及びその用途、並びにビニル系樹脂の製造方法
CA3181643A1 (en) Biodegradable resin aqueous dispersion, film forming agent using same, and method for forming film
JP4488689B2 (ja) 段ボール貼合用澱粉糊
JP4439219B2 (ja) 段ボール貼合用澱粉糊
WO2022014546A1 (ja) 樹脂分散組成物
JP2005179661A (ja) 有機無機ハイブリッド粒子及びそれから得られる無機粒子及び有機無機ハイブリッド粒子の製造方法
JP4620831B2 (ja) ポリエステル樹脂水性分散液の製造方法
JP5347217B2 (ja) ポリマーエマルジョン含有水性塗料
JP2001064440A (ja) 生分解性樹脂水系分散体及び生分解性複合材料
JP2008056764A (ja) ポリエステル樹脂水分散体、およびその製造方法、ならびにそれから得られる皮膜形成物
JP2019070092A (ja) 水性分散体
JP3295116B2 (ja) 耐水性を向上した再乳化性合成樹脂エマルジョン粉末組成物
JP2003253102A (ja) ポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法
JP2014037479A (ja) ポリエステル樹脂水性分散体およびその製造方法
JP2926408B2 (ja) 炭酸カルシウム水分散液及びその製造方法
WO2022230828A1 (ja) ビニルアルコール系重合体、これを含む粉末、これらの製造方法、紙加工剤及び乳化重合用分散剤
WO2023127712A1 (ja) アルコール含有粘性組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210607

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20210607

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210713

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211012

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211021

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6966663

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150