JP6966047B2 - 糖タンパク質におけるフコシル糖鎖の量を測定する方法およびキット - Google Patents
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Description
非特許文献1には、血中AGPの測定法が記載されており、多くのがん腫で担がん患者でのAGP濃度は有意に高値を示すこと、術後の予後予測にはAGP濃度との相関はないものの、AGP糖鎖の高フコシル化がその判定に強く関連することが明らかにされている。特許文献1には、術後がん患者の予後予測判定方法が示されている。
加ががん・非がんで有意に変わること、またフコシル化量が予後予測や化学療法の効果判定に極めて有用な診断マーカーになり得ることを明らかにしてきた(非特許文献2)。
フォームをもつAGPを捕捉してそれぞれの量比をもとめる交叉親和性免疫電気泳動法(crossed-affinoimmunoelectrophoresis (CAIE法))(非特許文献1)や、血清から非特許文献
3に記載の方法でAGPを精製し、その糖タンパク質から分離・精製した糖鎖について、質量分析法により糖鎖を網羅的に解析すること等が行われている(非特許文献2)。また血中のAGP量については、抗AGP抗体を用いたサンドイッチELISA法が一般的である。
しかしながら、本発明者らは、従来法では、例えば、悪性腫瘍と関連してAGPが高シアリル化している場合、AGPの量は実際よりも低値を示すことを見出した。つまり、従来法では、AGPの正確な量が測定できないことを見出した。
本発明は、上記課題に鑑み、従来法に比べて、簡便かつ迅速に、より正確に、AGPにおけるフコシル糖鎖の量を測定する方法およびキットの提供を課題とする。
リル化すること、基材に固定され、糖鎖が脱フコシル化された抗AGP抗体によって血清中のAGPを捕捉し、AGPの糖鎖のフコシル基を、フコース結合レクチンで検出することで上記課題が解決できることを見出し、本発明に到達した。本発明は下記の通りである。
検体中のAGPを脱シアリル化する工程、及び
基材に固定され、糖鎖が脱フコシル化された抗AGP抗体と、前記脱シアリル化されたAGPのフコシル基を認識するレクチンとを用いて、酵素免疫測定法(EIA法)によりフコシル糖鎖の量を測定する工程を含む、方法。
〔2〕 前記脱シアリル化がシアリダーゼ処理による、〔1〕に記載の方法。
〔3〕 前記脱フコシル化が過ヨウ素酸酸化による、〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記レクチンがヒイロチャワンタケレクチン(AAL)である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕 さらに、以下の工程を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
前記検体中のAGPを定量する工程、及び
前記フコシル糖鎖の量を前記AGP量で規格化する工程。
〔6〕 検体中のヒトα1‐酸性糖タンパク質(AGP)におけるフコシル糖鎖の量を測定するためのキットであって、下記の要素を含むキット:
(A)脱シアリル化用試薬、
(B)抗AGP抗体が固定されたEIA用基材、および
(C)EIA用基材に固定化された抗AGP抗体を脱フコシル化するための試薬。
〔7〕 さらに、(D)標識レクチンを含む、〔6〕に記載のキット。
〔8〕 前記レクチンがヒイロチャワンタケレクチン(AAL)である、〔7〕に記載のキット。
〔9〕 標識レクチンがビオチン標識レクチンである、〔7〕又は〔8〕に記載のキット。
〔10〕 さらに、(E)アビジン標識酵素を含む、〔9〕に記載のキット。
〔11〕 さらに、
(F)検体中のAGPを定量するための、抗AGP抗体が固定されたサンドイッチELISA用基材、及び
(G)酵素標識抗AGP抗体を含む溶液
を含む、〔6〕〜〔10〕のいずれかに記載のキット。
〔12〕 前記脱シアリル化用試薬がシアリダーゼを含む、〔6〕〜〔11〕のいずれかに記載のキット。
〔13〕 前記脱フコシル化試薬が過ヨウ素酸ナトリウムを含む、〔6〕〜〔12〕のいずれかに記載のキット。
〔14〕 がんの診断用である、〔6〕〜〔13〕のいずれかに記載のキット。
〔15〕 がん治療の予後診断用である、〔6〕〜〔14〕のいずれかに記載のキット。〔16〕 がん治療ががんに対する手術、化学療法、免疫療法、抗体療法及び放射線療法から選択される、〔15〕に記載のキット。
尚、本明細書において、ヒトα1‐酸性糖タンパク質を「AGP」と記載することがある。また、ヒイロチャワンタケレクチンを「AAL」と記載することがある。
本発明の一実施態様に係る測定方法は、検体中のAGPを脱シアリル化する工程を含む。
検体中のAGPの糖鎖が高シアリル化されたままであると、後工程におけるEIA法における抗AGP抗体によるAGPの捕捉及びレクチンによるフコシル基の検出が阻害されてしまう。
検体の由来動物は、ヒトやラットなどのほ乳動物が好ましく、ヒトがより好ましい。検体としては、ヒト由来の体液が好ましく、例えば、血液、リンパ液、髄液、尿などが挙げられる。採取や保存は常法に従うことができる。また、血液の場合、血漿、血清が好ましく、その調製や保存は常法に従うことができる。
脱シアリル化は、AGP糖鎖の非還元末端のシアル酸結合であるα2,3及びα2,6のシアル酸残基を遊離できるものであれば特に制限されない。脱シアリル化酵素を用いて行われることが好ましく、例えば、シアリダーゼ(別名:ノイラミニダーゼ)が挙げられる。
シアリダーゼとしては、AGP糖鎖で非還元末端に存在するα2,3及びα2,6のシアリル基に対して特異性を持つエキソ型であれば特に限定されない。また、種々の生物由来のシアリダーゼを使用することもできる。シアリダーゼは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、両シアリル結合を効率よく加水分解するアルスロバクター・ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)由来のシアリダーゼを用いることが好ましい。
尚、基質としてシアリルラクトースを使用し、pH5.0、37℃において1分間に1μmolのシアル酸を分解するのに要する酵素量を1U(ユニット)とする。
本発明に係る測定方法は、上記検体中のAGPを脱シアリル化する工程の後、基材に固定され、糖鎖が脱フコシル化された抗AGP抗体と、前記脱シアリル化されたAGPのフコシル基を認識するレクチンとを用いて、酵素免疫測定法(EIA法)によりフコシル糖鎖の量を測定する工程を含む。
脱フコシル化されたものである。
EIAに用いる、基材に固定され、糖鎖が脱フコシル化された抗AGP抗体は、脱フコシル化前の抗AGP抗体を基材に固定した後に該基材上で脱フコシル化したものであってもよいし、基材に固定する段階で予め糖鎖が脱フコシル化されているものであってもよい。脱フコシル化前の抗AGP抗体でも、予め糖鎖が脱フコシル化された抗AGP抗体でも、基材に固定する方法は、従来のEIA法で用いられる方法を用いることができる。
EIAに用いる基材に固定された脱フコシル化前の抗AGP抗体に対して脱フコシル化を行う場合、その方法は特に制限されないが、脱フコシル化用溶液を用いた処理によることが好ましく、例えば、過ヨウ素酸ナトリウム溶液を用いた過ヨウ素酸酸化が挙げられる。
また、過ヨウ素酸を用いる脱フコシル化の後には、基材を緩衝液で洗浄し、1%BSA含有PBSで室温2時間乃至は4℃一晩保温し、洗浄液(例えば、0.05%Tween20含有PBS)で洗浄してからEIAを行うなど、従来のEIAに用いる基材の調製と同様の調製をすることができ
る。
該レクチンは、AGP糖鎖に存在するFucα1,3GlcNAc糖鎖に結合するものであればよく、好ましくはヒイロチャワンタケレクチン(AAL)である。これらは、天然のものでもよく人工的に作製されたものでもよい。また、天然のAALと相同性の高い組換えタンパク質でもよく、相同性が高いとは、例えば、80%以上の相同性であることを指す。該AALは、従来のEIA法に用いられる標識や修飾がなされていてもよい。
脱シアリル化されたAGPのフコシル基を認識するレクチンが該フコシル基を認識してAGPに結合したことを検出する方法としては、従来のEIAを用いることができる。レクチン自体を標識して使用してもよいし、あるいは、例えば、レクチンを予めビオチン標識しておいて、AGPのフコシル基と該ビオチン標識レクチンとを結合させた後、アビジン標識した酵素を結合させ、該酵素の反応による発色または発光を用いて検出してもよい。
本工程におけるEIAは、従来法と同様に行うことができる。反応温度や反応時間のほか、試薬の種類や試薬の濃度、蛍光や発色の検出方法等のいずれも常法に従うことができる。
一例として、脱シアリル化されたAGPのフコシル基を認識して結合するレクチンをビオチン標識AALとし、アビジン標識酵素HRPを加えて基質TMBに対する発色によりその結合を検出する場合を記載する。
グを行ってもよい。
次に、脱シアリル化されたAGPを含む試料を用いて、基材に固定され、脱フコシル化された抗AGP抗体と、該脱シアリル化されたAGPとを結合させた後、結合しなかった成分を洗浄液(例えば、0.05%Tween20 を含むPBS)で洗浄して除去する。
次に、ビオチン標識AALを用いて、該抗AGP抗体に結合した脱シアリル化AGPにおけるフコシル糖鎖と、該ビオチン標識AALとを結合させ、結合しなかったビオチン標識AALを洗浄液による洗浄で除去する。
次に、アビジン標識酵素HRPを用いて、該ビオチン標識AALとアビジン標識酵素HRPとを結合させ、結合しなかったアビジン標識酵素HRPを洗浄液による洗浄で除去する。
次に、該酵素HRPの基質TMBを加え、従来の抗体‐レクチンEIA法と同様にして発色を検出する。
本発明に係る測定方法では、さらに、前記発色量からフコシル化AGPの量を換算する工程を含むことが好ましい。
本工程で用いる方法としては、上記EIAで測定された発色量または発光量から、検量線を用いて検体中のフコシル化AGP量を換算する方法が挙げられる。
検量線は、例えば、血清または腹水から非特許文献3に記載された方法で得た高フコシル化AGPに対して脱シアリル化を行い、これに対して同様のEIA法によって得たフコシル化AGP量と発色量または発光量との関係から作成することが好ましい。
本発明に係る測定方法は、検体中のAGPを定量する工程を含むことが好ましい。
検体中のAGPを定量する方法は制限されないが、例えば、検体中のAGPを脱シアリル化した後、それを希釈して得た溶液を用いて、基材に固定された抗AGP抗体と酵素標識した抗AGP抗体とを用いたサンドイッチELISA法を行い、検量線を用いて酵素反応に基づく発色量または発光量から検体中のAGPの濃度に換算する方法等が挙げられる。
検量線は、例えば、標準試料とする市販のAGP(濃度が既知)に対して脱シアリル化を行い、これを用いて、基材に固定された抗AGP抗体と酵素標識した抗AGP抗体とを用いたサンドイッチELISA法を行い、AGP量(濃度)と発色量または発光量との関係から作成することが好ましい。
本発明に係る測定方法は、さらに、上記で得られた検体中のフコシル糖鎖の量を、上記「検体中のAGPを定量する工程」で得られたAGP量で規格化する工程を含むことが好ましい。
従来法では、N型糖鎖に付加したフコースの分析がCAIE法やMALDI-TOF-MSにより可能であったが、その操作は煩雑であり、結果を迅速に得ることができず、その定量化は困難であるのに対し、本工程により、簡便かつ迅速に、検体中のAGPの単位量あたりのフコシル糖鎖の量を算出することができる。
本発明の他の実施態様は、検体中のヒトα1‐酸性糖タンパク質(AGP)におけるフコシル糖鎖の量を測定するためのキットであって、下記の要素(A)〜(C)、好ましくは(A)〜(D)、より好ましくは(A)〜(E)を含むキットである。
(A)脱シアリル化用試薬、
(B)抗AGP抗体が固定化されたEIA用基材
(C)EIA用基材に固定化された抗AGP抗体を脱フコシル化するための試薬、
(D)ビオチン標識レクチンなどの標識レクチン(例えば、AAL)、及び
(E)アビジン標識酵素(例えば、HRP)。
また、該キットは、さらに、希釈用緩衝液、ブロッキング用緩衝液を含むことが好ましい。
また、前記(A)、(C)乃至(E)、(G)のいずれも、複数の溶媒や溶液を含む場合には、それらは混合されて一の容器に収容されていてもよいし、別々の容器に収容されていてもよい。
また、前記(B)及び(F)の好ましい態様としては、前述の本発明に係る測定方法の説明に記載した態様が挙げられる。
がん治療としては、手術、化学療法、放射線療法、抗体療法及び免疫療法からなる群から選択される1以上が挙げられる。好ましくは、手術、化学療法、及び放射線療法からなる群から選択される1以上である。免疫療法としては、抗体医薬や分子標的薬を用いた免疫療法が挙げられる。
[脱シアリル化]
検体であるヒト血清8μlに2mUのシアリダーゼを含む92μlのPBSを加え、37℃で2時間保温後、90℃で5分間の加熱によりシアリダーゼを失活させ、脱シアリル化サンプルを得た。そして、抗AGP抗体とHRP標識抗AGP抗体を用いた従来のサンドイッチELISA法を用いてAGP濃度を測定した。具体的には、96ウェルプレートのウェルに1
ウェル当たり0.2μgの抗AGP抗体(DAKO社)を加え固定化後、適宜希釈液(2%BSA及び0.1%Tween20を含むPBS)で希釈したサンプルを加えて室温で2時間保温し、次いでHRP標識AGP抗体を用いた。
ここで、AGP濃度を測定するのに際して検量線を用いた。検量線は、濃度が既知の精製AGP(シグマ‐アルドリッチ社)を上記同様にシアリダーゼ処理し、これを標準物質として、上記同様のサンドイッチELISA法を行って作成した。
脱シアリル化によるAGP検出への影響を検討した。具体的には、上記のようにして脱シアリル化処理をしてAGP濃度を測定した場合と、同一血清試料を用いて従来法として脱シアリル化しなかった場合とで比較した。
Pが十分検出されないことが示された。
[ウェルへの抗AGP抗体の固定]
96ウェルプレートのウェルに1ウェル当たり2μgの抗AGP抗体(DAKO社)を加え、37℃で1時間保温後または4℃で一晩放置した。洗浄液でウェルを洗浄後、該ウェルに3%BSAを含むPBSを加え、室温で2時間静置した。
洗浄液で該ウェルを3回洗浄後、10mMの過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4)を含む0.1MのT‐PBS(pH7.0)を加えて、室温で遮光下、1時間静置し、抗AGP抗体の糖鎖を酸化した(脱フコシル化)。
該ウェルを洗浄液で再び3回洗浄し、1%BSAを含むPBSを加え、室温で2時間、または4℃で一晩反応させた後、洗浄液で3回洗浄して、後述するEIAに用いた。
該脱フコシル化により、抗体に一般に存在する、ヒイロチャワンタケレクチン(AAL)が結合するフコシル糖鎖(Fucα1,6GlcNAc)は分解される。すなわち、プレートに固定された抗AGP抗体の重鎖のFc部位には、一般にN型2本鎖の糖鎖が2本存在するため、それぞれにα1,6フコシル基が付加することがあるが、該過ヨウ素酸酸化により該糖鎖
は分解される。
過ヨウ素酸酸化による抗AGP抗体の脱フコシル化による、抗AGP抗体の抗原(AGP)結合能への影響を検討した。具体的には、抗AGP抗体を過ヨウ素酸酸化したものとしなかったものに対し、精製AGP(シグマ‐アルドリッチ社)の一定量を抗原として、HRP標識抗AGP抗体を用いたサンドイッチELISAにより測定した。
その結果を図2に示す。aは、無処理抗AGP抗体、bは過ヨウ素酸酸化処理した抗AGP抗体で一定量のAGPを捕捉した場合であり、両AGP量は全く変わらず、過ヨウ素酸酸化処理の抗体活性への影響は認められなかった。
(脱フコシル化による抗AGP抗体に対するレクチンの結合への影響)
過ヨウ素酸酸化処理した抗AGP抗体に対するレクチンへの結合の有無を検討した。具体的には、過ヨウ素酸酸化処理をした抗AGP抗体、又はしなかった抗AGP抗体が固定されたプレートを用いて、一定量のAGPを該抗AGP抗体に結合させ、これにビオチン標識AALを反応させた後、HRP標識アビジンを加えてその発色量を比較した。
その結果を図3に示す。aは抗AGP抗体を過ヨウ素酸酸化処理しなかった場合、bは抗AGP抗体を過ヨウ素酸酸化処理した場合であり、AALの結合を比較すると、過ヨウ素酸酸化によって著しい減弱が認められた。フコース結合レクチンであるAALはα1,6フコシル基に最も強く親和性を持つが、抗体に存在するフコシル基はα1,6フコシル基のみで
あることから、抗AGP抗体のフコシル基(Fucα1,6GlcNAc)の脱フコシル化が示された。
(脱フコシル化後の還元処理の有無による抗AGP抗体の抗原結合能への影響)
抗AGP抗体の過ヨウ素酸酸化処理後の還元保護化の必要性の有無を検討した。具体的には、(a)無処理抗AGP抗体、(b)過ヨウ素酸酸化処理抗AGP抗体、又は(c)過ヨウ素酸酸化と還元処理をした抗AGP抗体が固定されたプレートを用いて、一定量の脱シアリル化AGPを捕捉させて、ビオチン標識AALを用いたEIAの結果を比較した。還元処理は、0.25Mジメチルアミンボランおよび0.5%BSAを含むPBS溶液で室温90分処理を行った(対照としてbは0.5%BSAを含むPBS溶液で室温90
分処理)。
その結果を図4に示す。a、bより、過ヨウ素酸酸化処理をするとビオチン標識AALの結合が著しく減弱するものの、b、cより、その後の還元処理による結果の差は殆ど認められなかった。従って、過ヨウ素酸酸化処理抗AGP抗体の還元保護は不要とした。
[EIA]
脱シアリル化したサンプルを、希釈液で1μg/100μlに調製し、脱フコシル化された抗AGP抗体が固定されているウェルに添加して室温で2時間反応させた。
反応後、洗浄液で3回洗浄し、希釈液で0.5μg/mlに調製したビオチン標識AALを加えて、室温で1時間反応させた。
反応後、洗浄液で3回洗浄し、希釈液で100ng/mlに調整したホースラデッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)で標識したアビジンを加えて、室温で30分間反応させた。
反応後、洗浄液で3回洗浄し、基質としてTMB Blue Substrate Chromogen液(DAKO社)100μlを加えて、室温で5分間静置した。
その後、1Nの硫酸50μlを加えて反応を停止し、比色定量(検出波長450nm)を行った。
[化学療法施行症例におけるがん患者の予後予測]
術後(術前も含む)抗がん剤の化学療法施行症例における予後と血清のフコシル化AGP
量の経時的解析を行った。
その結果を図6に示す。
A(食道がんステージI)では、術前に1st line、術後2nd及び3rd lineの化学療法を施行した。術後99日目(POD)でがんの転移が認められ、334日目(POD)にがん死した。
血清フコシル化AGP量は化学療法2nd line以降漸次上昇を続けた。
B(大腸がんステージIV)では術後311日目(POD)に再発を認め、713日目(POD)にがん死した。再発直後の化学療法開始直後に一旦は低下した血清フコシル化AGP量はその後上昇に転じ、いずれも著しい高値を示した。
一方、C(胃がんステージII)では術後の1st line、及び再発が認められた術後370日
目以降の2nd、3rd lineの化学療法施行で奏功が認められたが、血清フコシル化AGP量も長期間低値であった。
更に、D(大腸がんステージII)では長期間のfollow-upでがんの再発・転移は認められ
ていない。術後1st line及び2nd lineの化学療法が施行されたが、血清フコシル化AGP量はいずれも低値を維持した。従って、化学療法施行症例の予後については、予後不良(A、B)と良好(C、D)とで血清中のフコシル化AGP量の変動にはっきりとした相違が示され、血清中のフコシル化AGP測定の化学療法の効果判定への応用が示唆された。
[抗PD‐1抗体投与肺がん患者の予後予測]
免疫チェックポイント阻害剤としての抗PD‐1抗体の臨床応用が進んでいるが、化学療法同様、免疫療法など、とりわけ膨大な医療費負担に繋がる治療法についてはその効果判定のためのバイオマーカーの開発が急務とされている。そこで、オプジーボ投与の肺が
ん患者における血清フコシル化AGP量の変動を調べた。
その結果を図7に示す。肺がん患者A〜Cに対するオプジーボ投与開始前(図中の「pre.」)と3回目投与直前の投与開始1ヶ月目(図中の「1M」)のそれぞれの血清フ
コシル化AGP量を測定した。A及びBは1ヶ月目の腫瘍の画像診断からPD (progressive disease)、つまり腫瘍の大きさの和が20%以上増加し、一方、CではPR (partial response)、つまり腫瘍の大きさの和が30%以上減少したことが認められた。それぞれの
血清フコシル化AGP量は、A、B共に高値が変わらなかったが、Cでは極めて高い値は投与によって急速に低下した。化学療法同様、免疫療法においても、フコシル化AGP量測定の治療効果判定への有用性が示された。
Claims (14)
- 検体中のヒトα1‐酸性糖タンパク質(AGP)におけるフコシル糖鎖の量を測定する方法であって、
検体中のAGPを脱シアリル化する工程、
基材に固定され、糖鎖が脱フコシル化された抗AGP抗体と、前記脱シアリル化されたAGPのフコシル基を認識するレクチンとを用いて、酵素免疫測定法(EIA法)によりフコシル糖鎖の量を測定する工程であって、前記検体中のAGPは、脱シアリル化された後に、前記基材に固定された前記脱フコシル化された抗AGP抗体と結合するものである工程、
前記検体中のAGPを定量する工程であって、前記検体中のAGPは脱シアリル化されているものである工程、及び
前記フコシル糖鎖の量を前記AGP量で規格化する工程
を含む、方法。 - 前記脱シアリル化がシアリダーゼ処理による、請求項1に記載の方法。
- 前記脱フコシル化が過ヨウ素酸酸化による、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記レクチンがヒイロチャワンタケレクチン(AAL)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により、検体中のヒトα1‐酸性糖タンパク質(AGP)におけるフコシル糖鎖の量を測定するためのキットであって、下記の要素を含むキット:
(A)脱シアリル化用試薬、
(B)抗AGP抗体が固定されたEIA用基材、
(C)EIA用基材に固定化された抗AGP抗体を脱フコシル化するための試薬
(F)検体中のAGPを定量するための、抗AGP抗体が固定されたサンドイッチELISA用基材、及び
(G)酵素標識抗AGP抗体を含む溶液。 - さらに、(D)標識レクチンを含む、請求項5に記載のキット。
- 前記レクチンがヒイロチャワンタケレクチン(AAL)である、請求項6に記載のキット。
- 標識レクチンがビオチン標識レクチンである、請求項6又は7に記載のキット。
- さらに、(E)アビジン標識酵素を含む、請求項8に記載のキット。
- 前記脱シアリル化用試薬がシアリダーゼを含む、請求項5〜9のいずれか1項に記載のキット。
- 前記脱フコシル化試薬が過ヨウ素酸ナトリウムを含む、請求項5〜10のいずれか1項に記載のキット。
- がんの診断用である、請求項5〜11のいずれか1項に記載のキット。
- がん治療の予後診断用である、請求項5〜12のいずれか1項に記載のキット。
- がん治療ががんに対する手術、化学療法、免疫療法、抗体療法及び放射線療法から選択される、請求項13に記載のキット。
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