JP6964938B2 - スナップリングの支持構造 - Google Patents
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Description
そのため、スナップリングは、合口の周方向の幅を狭める方向の応力が作用すると、変形して外径が小さくなる。
(a)スナップリングに合口の周方向の幅を狭める方向の応力を作用させて、スナップリングを、外径を狭める方向に変形させる。
(b)外径が狭められたスナップリングを、係合溝の内径側に配置する。
(c)スナップリングに作用させていた応力を開放することで、変形の解消により外径が大きくなったスナップリングの外周側を係合溝の内周に圧接させる。
そのため、スナップリングが、周方向の応力の経時的な変動に連動して、合口を狭める形状に変形して、スナップリングの外径が変速機ケースの係合溝の内径より小さくなると、スナップリングが係合溝から脱落してしまうことがある。
合口を有するスナップリングの支持構造であって、
前記スナップリングの係合溝を内周に有する環状部材と、
前記係合溝に係合させた前記スナップリングの合口に挿入されて、外径が小さくなる形
状への前記スナップリングの変形を規制する規制部材と、を有し、
前記規制部材は、前記環状部材に設けた連通孔に係止される係止片を有し、
前記環状部材では、前記連通孔が、前記係合溝から前記スナップリングの中心軸方向に離間した位置に設けられており、
前記規制部材は、前記環状部材の内周に沿って前記連通孔に近づく方向に延びる延出部を有しており、
前記延出部に、前記係止片が設けられている構成のスナップリングの支持構造である。
スナップリングが係合溝から脱落するためには、スナップリングが、合口を狭めて環状部材の内径よりも小さい外径となる形状まで変形する必要がある。そのため、規制部材によりスナップリングの変形を阻止することで、スナップリングが、係合溝から脱落することを好適に防止できる。
図1の(a)は、実施の形態にかかるスナップリング2の支持構造1を採用したクラッチ3(摩擦締結装置)の要部を拡大して示した断面を模式的に示すである。
図1の(b)は、図1の(a)におけるA−A矢視図である。
図1の(c)は、クラッチ3におけるスナップリング2の合口20の位置を説明する図であり、図1の(b)におけるクリップ4の記載を省略したものである。
図2は、実施の形態にかかるスナップリング2の支持構造1の分解斜視図である。
図1の(a)に示すように、クラッチ3は、クラッチハブ30の外周にスプライン嵌合した内径側摩擦板31と、クラッチドラム39の内周にスプライン嵌合した外径側摩擦板32と、クラッチドラム39の内周にスプライン嵌合したリテーニングプレート34と、内径側摩擦板31と外径側摩擦板32とを回転軸Xの軸方向(以下、回転軸X方向と標記する。)に押圧するピストン35と、を有している。
外径側摩擦板32とクラッチドラム39の内周とのスプライン嵌合でも同様である。
この際に、リテーニングプレート34には、ピストン35の押圧力が、内径側摩擦板31と外径側摩擦板32とを介して作用する。よって、リテーニングプレート34はピストン35から離れる方向へ移動する。
以下の説明では、説明の便宜上、スナップリング2の中心軸をクラッチドラム39の回転軸Xと同じ符号を用いて、回転軸Xと標記する。
以下、スナップリング2について説明する。
図3は、実施の形態にかかるスナップリング2を説明する図である。
図3の(a)は、スナップリング2における合口20近傍を説明する図である。
図3の(b)は、図3の(a)のA−A矢視図である。仮想線は、外径が狭まる方向に変形したスナップリング2の形状を示すものである。
なお、スナップリング2の位置関係を分かりやすくするために、図3の(a)では、クラッチドラム39の一部を仮想線で記載してある。図3の(b)では、リテーニングプレート34の一部を仮想線で記載してある。
この合口20は、スナップリング2の回転軸X周りの周方向における所定範囲を切欠いて形成したものである。
図3の(b)に示すように、スナップリング2の回転軸X方向の厚みWxは、回転軸X周りの周方向の全周に亘って同じ厚みである。
回転軸X方向におけるスナップリング2の一方の面2aと他方の面2bは、回転軸Xに直交する平坦面である。スナップリング2の他方の面2bは、回転軸X方向でリテーニングプレート34と対向している。
(a)スナップリング2に合口20の幅をWsからWs’へと狭める方向の応力を作用させて(Ws>Ws’)、スナップリング2の合口20近傍の外径をrからr’へと狭める方向(r>r’)に変形させる(図3の(a)の仮想線参照)。
(b)外径が狭められたスナップリング2を、係合溝394(図1の(a)参照)の内径側に配置する。
(c)回転軸X周りの周方向におけるスナップリング2の合口20の位置を、スプライン山部391aと一致させる(図1の(c)、図3の(a)参照)。
(d)スナップリング2に作用させていた応力を開放することで、スナップリング2は、変形の解消により外径が元に戻る方向に広がる。これにより、スナップリング2の外周側は係合溝394の内周に圧接する(図3の(a)の実線参照)。
これにより、クラッチドラム39の内周の係合溝394に外径側を係合させたスナップリング2が、係合溝394から脱落することを防止している。
以下、クリップ4について説明する。
図4は、実施の形態にかかるクリップ4を説明する模式図である。
図4の(a)は、クリップ4の斜視図である。
図4の(b)は、図4の(a)におけるクリップ4を面Aで切断した断面の模式図である。
図4の(c)は、クリップ4の上面図である。
図4の(d)は、クリップ4の正面図である。
図4に示すように、クリップ4は、均一な厚みT1の板状部材を折り曲げて一体に形成したものである。
図4の(d)に示すように、クリップ4は、正面視において矩形形状を成す基部40を有している。
この場合、基部40は、短手方向が直径線Lmに沿う方向に配置され、長手方向が直径線Lmに直交する直線Lnに沿う方向に配置される。なお、直線Lnに沿う方向は、合口20を挟んだ回転軸X周りの周方向と略一致する。
そこで、図4の(d)に示すように、クリップ4では、正面視における基部40の短手方向を直径線Lm方向と標記し、基部40の長手方向を直線Ln方向と標記する。
また、直径線Lm方向における第2当接部42の一端(図中、下側)には、第2規制壁425が設けられている。
第1規制壁415と第2規制壁425における基部40の厚み方向の幅は、それぞれ第1当接部41と第2当接部42における基部40からの延出距離W2と略同じ幅となっている。
これら第1当接部41と第2当接部42並びに第1規制壁415と第2規制壁425は、前記したスナップリング2の回転軸X方向の厚みWx(図3の(b)参照)よりも大きい幅W2を有している(W2>Wx)。
図4の(b)に示すように、延出部46は、基部40の厚み方向における他方側(図中、左側)に延出している。延出部46は、直径線Lmに直交する平坦面となっている。
この係止片47は、延出部46の先端46a側から基端46b側に向かうにつれて、高さhが高くなるように切り起こされている(図4の(b)中、上側)。
クリップ4のスナップリング2の合口20への挿入は、スナップリング2をクラッチドラム39の係合溝394に係合させた後に行う。
基部40の厚み方向は、回転軸Xに沿う方向となるように配置される(以下、基部40の厚み方向を回転軸X方向と標記する。)。
従って、図1の(b)に示すように、クリップ4が合口20に挿入されると、直線Ln方向で第1当接部41がスナップリング2の一方側の側縁21と当接し、第2当接部42がスナップリング2の他方側の側縁22と当接する。
さらに、スナップリング2の一方側の端縁21と他方側の端縁22とが、回転軸Xの径方向で内径側に変位(図3の(a)の仮想線参照)することは、クリップ4の第1規制壁415と第2規制壁425により規制される。
よって、従来公知の合口のあるスナップリングのように、捻れ力が作用しても、変形して当該スナップリングの合口近傍の外径がクラッチドラムの内径よりも小さくなることが無い。
これにより、クラッチドラム39の内周の係合溝394に外径側を係合させたスナップリング2が、係合溝394から脱落しない。
スナップリング2に捻れ力が作用した際に、当該スナップリング2の一方側の端縁21と他方側の端縁22が、回転軸X方向に変位する可能性があるが、かかる事態の発生を好適に防止できる。
また、スナップリング2の回転軸X方向の他方の面2bも、リテーニングプレート34との対向面となっている。この面2bも、回転軸X方向に直交する平坦面である。
よって、クリップ4を設けない従来の場合よりもスナップリング2に作用する捻れ力を低減させることができる。
これにより、回転トルクの変動が大きいときに、スナップリング2が係合溝394から脱落する事態の発生を好適に防止できる。
(1)合口20を有するスナップリング2の支持構造1であって、
スナップリング2の係合溝394を内周に有するクラッチドラム39(環状部材)と、
係合溝394に係合させたスナップリング2の合口20に挿入されて、外径が小さくなる形状へのスナップリング2の変形を規制するクリップ4(規制部材)と、を有する構成とした。
スナップリング2が係合溝394から脱落するためには、スナップリング2が、回転軸X周りの周方向における合口20の幅Wsを狭めてクラッチドラム39の内径よりも小さい外径となる形状まで変形する必要がある。そのため、クリップ4によりスナップリング2の変形を阻止することで、スナップリング2が、係合溝394から脱落することを好適に防止できる。
スナップリング2の回転軸X(中心軸)周りの周方向における合口20を挟んだ一方側の端縁21が当接する第1当接部41と、他方側の端縁22が当接する第2当接部42と、を有しており、
第1当接部41と第2当接部42の回転軸X方向の幅W2は、スナップリング2の回転軸X方向の幅Wxよりも広い幅である構成とした。
これにより、回転軸X周りの周方向における合口20の幅Wsが狭まる形状へのスナップリング2の変形をより確実に阻止することでき、スナップリング2が係合溝394から脱落することを好適に防止できる。
これにより、回転軸X周りの周方向における合口20の幅Wsが狭まる形状へのスナップリング2の変形をより確実に阻止することでき、スナップリング2が係合溝394から脱落することを好適に防止できる。
クリップ4は、クラッチドラム39(周壁部391)の内周に沿って連通孔37に近づく方向に延びる延出部46を有しており、
延出部46には、連通孔37に係止される係止片47が設けられている構成とした。
回転軸X方向における一方側から順番に、
回転軸X方向に移動可能なピストン35と、
複数の外径側摩擦板32と、
外径側摩擦板32のピストン35から離れる方向への移動を規制するリテーニングプレート34と、
クラッチドラム39の係合溝394に外径側を係合させたスナップリング2と、が位置しており、
クリップ4は、回転軸X方向でリテーニングプレート34に当接する基部40(当接部)を有しており、
回転軸X周りの周方向における基部40の一側と他側に、第1当接部41と第2当接部42とが設けられている構成とした。
これにより、クラッチ3が締結状態であるときにリテーニングプレート34から伝達される捻れ力は、スナップリング2とクリップ4とに分散される。
よって、クリップ4を設けない従来の場合よりもスナップリング2に作用する捻れ力を低減させることができる。
これにより、回転トルクの変動が大きいときに、スナップリング2が係合溝394から脱落する事態の発生を好適に防止できる。
2 スナップリング
3 クラッチ
4 クリップ
20 合口
21 側縁
22 側縁
30 クラッチハブ
31 内径側摩擦板
32 外径側摩擦板
34 リテーニングプレート
35 ピストン
37 連通孔
39 クラッチドラム
40 基部
41 第1当接部
42 第2当接部
46 延出部
47 係止片
390 底壁部
391 周壁部
415 第1規制壁
425 第2規制壁
391a スプライン山部
391b スプライン谷部
h 高さ
Lm 直径線
Ln 直線
T 空間
X 回転軸
Ws 幅
Wr 幅
Wx 厚み
W1 間隔
W2 幅
Claims (5)
- 合口を有するスナップリングの支持構造であって、
前記スナップリングの係合溝を内周に有する環状部材と、
前記係合溝に係合させた前記スナップリングの合口に挿入されて、外径が小さくなる形状への前記スナップリングの変形を規制する規制部材と、を有し、
前記規制部材は、前記環状部材に設けた連通孔に係止される係止片を有し、
前記環状部材では、前記連通孔が、前記係合溝から前記スナップリングの中心軸方向に離間した位置に設けられており、
前記規制部材は、前記環状部材の内周に沿って前記連通孔に近づく方向に延びる延出部を有しており、
前記延出部に、前記係止片が設けられている、スナップリングの支持構造。 - 前記規制部材は、
前記スナップリングの中心軸周りの周方向における前記合口を挟んだ一方側の端縁が当接する第1当接部と、他方側の端縁が当接する第2当接部と、を有しており、
前記第1当接部と前記第2当接部の前記中心軸方向の幅は、前記スナップリングの前記中心軸方向の幅よりも広い幅である、請求項1に記載のスナップリングの支持構造。 - 前記規制部材は、前記スナップリングの内径側を、前記スナップリングの内周に沿って合口から離れる方向に延びる規制壁を有している、請求項1に記載のスナップリングの支持構造。
- 前記規制部材は、前記スナップリングの内径側を、前記スナップリングの内周に沿って合口から離れる方向に延びる規制壁を有している、請求項2に記載のスナップリングの支持構造。
- 前記環状部材は、自動変速機の摩擦締結装置の摩擦板がスプライン嵌合するクラッチドラムであり、
前記環状部材の内径側では、
前記中心軸方向における一方側から順番に、
前記中心軸方向に移動可能なピストンと、
複数の前記摩擦板と、
前記摩擦板の前記ピストンから離れる方向への移動を規制するリテーニングプレートと、
前記係合溝に外径側を係合させたスナップリングと、が位置しており、
前記規制部材は、前記リテーニングプレートにおける前記中心軸方向の他方側の面に当接する当接部を有しており、
前記中心軸周りの周方向における前記当接部の一側と他側に、前記第1当接部と、前記第2当接部とが設けられている、請求項2または請求項4に記載のスナップリングの支持構造。
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