JP6964293B2 - 力触覚伝達システム、力触覚伝達方法及びプログラム - Google Patents
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Description
また、近年の情報通信技術の発達により、遠隔地において、バイラテラル制御が行われるケースも増加しつつある。
例えば、特許文献1には、遠隔地においてバイラテラル制御を行うための技術が記載されている。
即ち、従来の技術においては、遠隔で行われるバイラテラル制御における力の制御精度が十分なものではなかった。
通信経路を介して接続されたマスタ装置とスレーブ装置とを含む力触覚伝達システムであって、
前記マスタ装置は、
前記マスタ装置の動作から取得される情報と、前記スレーブ装置の応答に関する情報とに基づいて、前記マスタ装置の動作における位置を制御する位置制御部と、
前記マスタ装置の動作から取得される情報と、前記スレーブ装置の応答に関する情報とに基づいて、前記マスタ装置の動作における力を制御する力制御部と、
前記力制御部の制御に対し、前記通信経路における通信遅延の補償を行う遅延補償部と、を備え、
前記スレーブ装置は、
前記スレーブ装置の動作から取得される情報と、前記マスタ装置からの制御に関する情報とに基づいて、前記スレーブ装置の動作における速度を制御する速度制御部と、
前記スレーブ装置の動作から取得される情報と、前記マスタ装置からの制御に関する情報とに基づいて、前記スレーブ装置の動作における力を制御する力制御部と、
を備えることを特徴とする。
[本発明の基本的概念]
本発明に係る力触覚伝達システムは、通信経路を介して遠隔的に接続されたマスタとスレーブとの間でバイラテラル制御を行う際に、通信遅延による影響を抑制し、力及び位置の制御精度を適切に確保することを可能とするものである。
このような機能を実現するために、本発明に係る力触覚伝達システムにおいては、マスタに位置制御器と力制御器とを実装し、スレーブに速度制御器と力制御器とを実装する。また、マスタには、力制御器に対する通信遅延補償が適用される。
この結果、スレーブ側では、操作者がマスタ側に加えた力と同じ力で環境(接触対象物)と接触する。即ち、マスタ側からスレーブ側に力触覚が伝達されるといった、マスタ操作者が支配的となる柔らかい接触動作が実現される。これにより、通信遅延下での正確な力のつり合いが達成され、高精度な力触覚の伝達が実現される。
以下、本発明における基本的概念について具体的に説明する。
図1は、バイラテラル制御を実現する基本的なシステムのブロック線図である。
図1において、Mはモータ慣性、Mnはモータ慣性のノミナル値、Z(s)はラプラス演算子sを変数とする環境インピーダンスを表すものとする。
なお、図1のブロック線図では、ラプラス変換のs領域の関数として各ブロックを表している(以下のブロック線図も同様である)。
図1に示すシステムは、通信経路を介することなく、通信遅延が生じないシステムにおいて、マスタとスレーブとの間で力触覚伝達を実現するものである。
図1に示すシステムでは、マスタ及びスレーブにおける位置xと力Fとの間で、式(1)、(2)が成立する。
xm−xs=0 (1)
Fm+Fs=0 (2)
ただし、添え字mはマスタを表し、添え字sはスレーブを表している。
ここで、図1に示すバイラテラル制御では、マスタ側及びスレーブ側それぞれに外乱オブザーバDOB(Disturbance Observer)及び反力推定オブザーバRFOB(Reaction Force Observer)が実装されている。そして、DOBによりロバストな制御が達成され、RFOBにより力センサを用いない反力推定が実現される。
図1に示すシステムにおけるマスタ及びスレーブそれぞれの加速度参照値d2/dt2xm(ref)、d2/dt2xs(ref)は、式(3)、(4)のように表される。
Cp=Kp+Kvs (5)
Cf=Kf (6)
ただし、Kpは位置ゲインを表し、Kvは速度ゲインを表し、Kfは力ゲインを表している。
式(3)、(4)に基づく制御を行うことで、マスタ−スレーブ間で位置追従および力のつり合いが同時に達成される。そのため、図1に示すシステムにおいては、正確な力触覚の伝達がバイラテラル制御により実現される。
図2は、通信遅延が存在する場合のバイラテラル制御を示すブロック線図である。
図2に示すシステムでは、図1に示すシステムに対し、マスタとスレーブとの間に存在する通信経路によって、マスタからスレーブに対しては通信遅延T1が発生し、スレーブからマスタに対しては通信遅延T2が発生している。
図2に示すシステムにおけるマスタ及びスレーブそれぞれの加速度参照値d2/dt2xm(ref)、d2/dt2xs(ref)は、式(7)、(8)のように表される。
そこで、図2に示す構成において、マスタの制御に用いられるDOB、RFOBに加えて、通信遅延補償のためのDOB、RFOBを新たにマスタ側に実装する。
また、図4は、力制御器に対する通信遅延補償の作用を示すブロック線図である。
図3及び図4に示すブロック線図において、外乱の推定値(Fnetのハット)は、式(9)のように表される。
通信遅延T1、T2は、通信外乱D1、D2とみなすことができるため、式(9)は式(10)のように書き換えることができる。
そのため、式(10)は式(11)のように書き換えられる。
そのため、式(11)における第1項と第2項との差は、式(12)に示すように通信遅延に対する通信遅延補償値となる。
即ち、式(12)によれば、通信遅延による影響を含まない外乱が推定され、力制御器に対する通信遅延補償が実現されていることがわかる。
なお、スレーブ側に加わる外乱Fdisが、式(13)示すように環境反力(Fenv)だけでなく、摩擦力(Ffric)や重力(Fg)等の外乱を含んでいる場合、式(14)に示すように、RFOB内でこれらの余分な外乱項が補償される。
したがって、マスタ側の加速度参照値は、式(15)のように表される。
次に、本発明によって通信遅延補償を実現した場合の制御剛性について考察する。
モーションコントロールにおける出力は位置と力であり、位置をx、力をfとした場合、制御剛性kは式(17)のように表される。
接触動作では力制御が支配的となるとすると、バイラテラル制御が通信遅延下にある場合には、接触動作時に大きな位置の誤差が発生することとなる。そのため、位置制御器が位置の誤差をなくすよう作用することから、マスタの操作者がシステムに加えた力よりも大きな力がスレーブ側に発生する場合がある。この場合、力のつり合いが達成されなくなる。
なお、スレーブ側で余分に発生する力は式(18)のように表され、位置制御器のゲインに依存することがわかる。
そこで、本発明においては、位置制御器のゲインを0に設定する。
このような制御器設計とすることにより、通信遅延下での正確な力のつり合いが実現される。
仮に、マスタの位置制御器のゲインが高く(通信遅延がない場合と同等に)設定されている場合、マスタは高い制御剛性でスレーブの位置に追従しようとするため、自由動作時には通信遅延の影響により、過度に大きな操作力が生じてしまう。
これに対し、マスタの位置制御器のゲインを通信遅延がない場合よりも小さく設定することで、通信遅延の影響により生じる操作力を抑制することができる。
したがって、本発明においては、マスタ側に生じる操作力を低減するために、位置制御器のゲインを通信遅延がない場合に比べて小さく設定する。
図5に示すシステムでは、マスタには位置制御と力制御とが実装されており、スレーブには速度制御と力制御とが実装されている。また、マスタ側では力制御器に対する通信遅延補償が施されている。
図5に示すシステムにおけるマスタ及びスレーブそれぞれの加速度参照値d2/dt2xm(ref)、d2/dt2xs(ref)は、式(19)、(20)のように表される。
そのため、通信遅延下での正確な力のつり合いが達成され、高精度な力触覚の伝達が実現される。
したがって、遠隔で行われるバイラテラル制御における力の制御精度を向上させることが可能となる。
[構成]
図6は、本発明を適用した力触覚伝達システム1の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、力触覚伝達システム1は、マスタ装置10と、スレーブ装置20とを含んで構成され、マスタ装置10とスレーブ装置20とは、専用の伝送路あるいはインターネット等の公衆ネットワーク等によって構成されるネットワーク30を介して通信可能に構成されている。
マスタ装置10における位置制御部13、力制御部14及び遅延補償部15は、例えば、図5に示すブロック線図の位置制御、力制御及び遅延補償の機能を備えている。
スレーブ装置20における速度制御部及び力制御部は、例えば、図5に示すブロック線図の速度制御及び力制御の機能を備えている。
図6に示す構成において、スレーブ装置20の接触子21が接触対象物に接触していない状態では、遅延補償部15がマスタ装置10とスレーブ装置20とにおける遅延補償を行うことにより、マスタ装置10には通信遅延の影響が抑制された状態で、スレーブ装置20からの力触覚が伝達される。このとき、スレーブ装置20においては、速度制御部23の機能により、接触子の移動速度が抑制され、通信遅延下での正確な力のつり合いが実現される。また、マスタ装置10においては、通信遅延がない場合よりも位置制御のゲインが小さく設定されているため、マスタ装置10に過度な操作力(スレーブ装置20の位置に追従する力)が発生する事態を抑制できる。
このような動作により、スレーブ装置20は、操作者がマスタ装置10の操作子11に加えた力と同じ力で環境(接触対象物)と接触する。即ち、マスタ装置10からスレーブ装置20に力触覚が伝達されるといった、マスタ装置10の操作者が支配的となる柔らかい接触動作が実現される。これにより、通信遅延下での正確な力のつり合いが達成され、高精度な力触覚の伝達が実現される。
図7は、本発明を適用したバイラテラル制御における力の応答を示す模式図である。
図7に示すように、本発明を適用したバイラテラル制御においては、マスタにおける力制御に通信遅延補償を行った結果、マスタとスレーブとの間で正確な力の伝達が実現されていることがわかる。
なお、図8においては、500[ms]の固定的な通信遅延が生じた場合の力の応答を示している。
図8に示すように、基本的なバイラテラル制御において通信遅延が生じた場合(図2のブロック線図の場合)、力のつり合いが大きく崩れ、正確なバイラテラル制御が実現できないことがわかる。
そのため、スレーブ装置20においては、操作者がマスタ装置10に加えた力と同じ力で環境と接触することができる。即ち、マスタ装置10からスレーブ装置20に力触覚が伝達され、マスタ装置10の操作者が支配的となる柔らかい接触動作が実現される。
したがって、通信遅延下での正確な力のつり合いが達成され、高精度な力触覚の伝達を実現することができる。
マスタ装置10において、位置制御部13は、マスタ装置10の動作から取得される情報と、スレーブ装置20の応答に関する情報とに基づいて、マスタ装置10の動作における位置を制御する。
力制御部14は、マスタ装置10の動作から取得される情報と、スレーブ装置20の応答に関する情報とに基づいて、マスタ装置10の動作における力を制御する。
遅延補償部15は、力制御部14の制御に対し、通信経路における通信遅延の補償を行う。
スレーブ装置20において、速度制御部23は、スレーブ装置20の動作から取得される情報と、マスタ装置10からの制御に関する情報とに基づいて、スレーブ装置20の動作における速度を制御する。
力制御部24は、スレーブ装置20の動作から取得される情報と、マスタ装置10からの制御に関する情報とに基づいて、スレーブ装置20の動作における力を制御する。
これにより、スレーブ装置20においては、操作者がマスタ装置10に加えた力と同じ力で環境と接触することができる。即ち、マスタ装置10からスレーブ装置20に力触覚が伝達され、マスタ装置10の操作者が支配的となる柔らかい接触動作が実現される。
したがって、通信遅延下での正確な力のつり合いが達成され、高精度な力触覚の伝達を実現することができる。
これにより、スレーブ装置20の接触動作時に、位置制御が位置の誤差をなくすよう作用することに起因して、マスタ装置10の操作者がシステムに加えた力よりも大きな力がスレーブ装置20に発生することを防ぐことができる。
したがって、スレーブ装置20における接触動作時に、マスタ装置10との力のつり合いを実現することができる。
これにより、スレーブ装置20の動作における速度にブレーキをかける作用が生まれ、通信遅延が発生する状況において、マスタ装置10との正確な力のつり合いを実現することができる。
これにより、スレーブ装置20において、通信遅延の影響により生じる操作力を抑制することができる。
例えば、上述の実施形態においては、マスタ装置10の操作子11の位置及びスレーブ装置20の接触子21の位置等、可動部材の位置を検出し、検出された位置から速度あるいは力を算出するものとしたが、これに限られない。即ち、可動部材の位置、速度、力等、マスタ装置10の動作から取得される情報やスレーブ装置20の動作から取得される情報は、センサによって検出することが可能であると共に、検出された他の物理量を基に算出することのいずれも可能である。
即ち、上述の実施形態における処理は、ハードウェア及びソフトウェアのいずれにより実行させることも可能である。
換言すると、上述の処理を実行できる機能が力触覚伝達システム1に備えられていればよく、この機能を実現するためにどのような機能構成及びハードウェア構成とするかは上述の例に限定されない。
上述の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにネットワークや記憶媒体からインストールされる。
Claims (7)
- 通信経路を介して接続されたマスタ装置とスレーブ装置とを含む力触覚伝達システムであって、
前記マスタ装置は、
前記マスタ装置の動作から取得される情報と、前記スレーブ装置の応答に関する情報とに基づいて、前記マスタ装置の動作における位置を制御する位置制御部と、
前記マスタ装置の動作から取得される情報と、前記スレーブ装置の応答に関する情報とに基づいて、前記マスタ装置の動作における力を制御する力制御部と、
前記力制御部の制御に対し、前記通信経路における通信遅延の補償を行う遅延補償部と、を備え、
前記スレーブ装置は、
前記スレーブ装置の動作から取得される情報と、前記マスタ装置からの制御に関する情報とに基づいて、前記スレーブ装置の動作における速度を制御すると共に、物体との接触時における前記通信遅延に基づく位置の変化を抑制する速度制御部と、
前記スレーブ装置の動作から取得される情報と、前記マスタ装置からの制御に関する情報とに基づいて、前記スレーブ装置の動作における力を制御する力制御部と、
を備えることを特徴とする力触覚伝達システム。 - 前記スレーブ装置の動作における位置の制御ゲインは0であることを特徴とする請求項1に記載の力触覚伝達システム。
- 通信経路を介して接続されたマスタ装置とスレーブ装置とを含む力触覚伝達システムであって、
前記マスタ装置は、
前記マスタ装置の動作から取得される情報と、前記スレーブ装置の応答に関する情報とに基づいて、前記マスタ装置の動作における位置を制御する位置制御部と、
前記マスタ装置の動作から取得される情報と、前記スレーブ装置の応答に関する情報とに基づいて、前記マスタ装置の動作における力を制御する力制御部と、
前記力制御部の制御に対し、前記通信経路における通信遅延の補償を行う遅延補償部と、を備え、
前記スレーブ装置は、
前記スレーブ装置の動作から取得される情報と、前記マスタ装置からの制御に関する情報とに基づいて、前記スレーブ装置の動作における速度を制御する速度制御部と、
前記スレーブ装置の動作から取得される情報と、前記マスタ装置からの制御に関する情報とに基づいて、前記スレーブ装置の動作における力を制御する力制御部と、
を備え、
前記スレーブ装置の前記速度制御部は、前記通信経路の遅延がない場合に比べて、前記スレーブ装置の動作における速度を低下させることを特徴とする力触覚伝達システム。 - 前記マスタ装置の前記位置制御部は、前記通信経路の遅延がない場合に比べて、前記マスタ装置の動作における位置の追従性を低下させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の力触覚伝達システム。
- 通信経路を介して接続されたマスタ装置とスレーブ装置とを含む力触覚伝達システムで実行される力触覚伝達方法あって、
前記マスタ装置が、
前記マスタ装置の動作から取得される情報と、前記スレーブ装置の応答に関する情報とに基づいて、前記マスタ装置の動作における位置を制御する位置制御ステップと、
前記マスタ装置の動作から取得される情報と、前記スレーブ装置の応答に関する情報とに基づいて、前記マスタ装置の動作における力を制御する力制御ステップと、
前記力制御ステップにおける制御に対し、前記通信経路における通信遅延の補償を行う遅延補償ステップと、を含み、
前記スレーブ装置が、
前記スレーブ装置の動作から取得される情報と、前記マスタ装置からの制御に関する情報とに基づいて、前記スレーブ装置の動作における速度を制御すると共に、物体との接触時における前記通信遅延に基づく位置の変化を抑制する速度制御ステップと、
前記スレーブ装置の動作から取得される情報と、前記マスタ装置からの制御に関する情報とに基づいて、前記スレーブ装置の動作における力を制御する力制御ステップと、
を含むことを特徴とする力触覚伝達方法。 - 請求項1に記載のマスタ装置とスレーブ装置とを含む力触覚伝達システムにおけるマスタ装置を制御するコンピュータに、
前記マスタ装置の動作から取得される情報と、前記スレーブ装置の応答に関する情報とに基づいて、前記マスタ装置の動作における位置を制御する位置制御機能と、
前記マスタ装置の動作から取得される情報と、前記スレーブ装置の応答に関する情報とに基づいて、前記マスタ装置の動作における力を制御する力制御機能と、
前記力制御機能の制御に対し、前記通信経路における通信遅延の補償を行う遅延補償機能と、を実現させることを特徴とするプログラム。 - 請求項1に記載のマスタ装置とスレーブ装置とを含む力触覚伝達システムにおけるスレーブ装置を制御するコンピュータに、
前記スレーブ装置の動作から取得される情報と、前記マスタ装置からの制御に関する情報とに基づいて、前記スレーブ装置の動作における速度を制御すると共に、物体との接触時における前記通信遅延に基づく位置の変化を抑制する速度制御機能と、
前記スレーブ装置の動作から取得される情報と、前記マスタ装置からの制御に関する情報とに基づいて、前記スレーブ装置の動作における力を制御する力制御機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
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