以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
図1には、本発明の実施の形態に係る液晶表示装置における配向膜の基本的構成の概略図を示した。本液晶表示装置では、下地層4の上に配向膜3が形成され、その上に液晶層5が形成されており、特に図示はされていないが、同様の構成の配向膜が形成された対向基板が組み合わされている。その配向膜3の液晶層側の表面には、元素の割合が膜厚方向に向けて変化する層1が形成されており、その下にはその他の層2が形成されている。ここで、膜厚方向をz方向とし、液晶層に接する配向膜の最上位置をz0、元素の割合が膜厚方向に向けて変化する層1の下端位置をz1、その下のその他の層2の下端をz2とする。
図2には、図1で示した液晶表示装置における配向膜の元素のうち、酸素O原子の割合の膜厚方向に向けての変化の状態を模式的に示した。z0〜z1の範囲が層1であるが、図2(a)と図2(b)はその割合が膜表面から減少してから後に増加する場合、図2(c)はゆるやかに減少する場合である。図2(a)と図2(b)の違いは層2の酸素原子の割合が層1の下端よりも低い場合が図2(a)、同じである場合が図2(b)である。このように、層1内ではその元素組成が複雑に変化することが可能であるが、後に説明するように優れた残像特性を得るためには、配向膜表面の疎水性の状態を維持しつつ配向膜表面の酸素原子割合を高めることが必要である。層1を特徴づけるパラメータとして、その層厚方向における酸素原子割合の最大値Cmaxと最小値Cminがあり、z=z0においてCmaxとなることが望ましい。なお、素子によっては層2を設けず、元素組成が変化する層のみから、配向膜を形成する場合もあるが、ここでは一般的な形として、図1のような2層構造を例示した。
このような元素組成の変化は、各種薄膜表面分析、例えばX線光電子分光(XPS)、オージェ電子分光、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)等を用いて分析することができる。まず、対象となる液晶表示装置の液晶パネルを解体し、液晶をシクロヘキサン等のアルカン溶媒にて洗浄、乾燥させたものを試料として、各種分析を行う。特に、膜厚方向の深さ方向の分析を行うには、Ar等のガスイオンによってスパッタしながら各種分析を行うことによって評価することが可能である。
このような配向膜表面に酸素原子割合を増加させた状態にするためには、以下のような手順で作製することが可能である。すなわち、下地層上に光配向することが可能なポリイミドの前駆体を塗布し、加熱によってポリイミド薄膜となし、その薄膜表面に偏光紫外線を照射することによって、配向規制力を付与する。この偏光紫外線照射前、または照射中、または偏光紫外線照射後に、薄膜表面を酸化雰囲気に曝すことによって、薄膜表面から内部にかけて酸素原子の割合の多い層が形成される。酸化処理の手法には、紫外線光源による空気からのオゾンガスや、各種酸化剤(過酸化水素水、次亜塩素酸水、オゾン水、次亜ヨウ素酸水、過マンガン酸水、等)この際、薄膜表面から内部に向かってどのような分布で酸素原子の割合が変化するかは、用いる酸化雰囲気やその暴露条件によって異なる。また、偏光紫外線照射と酸化雰囲気への暴露に加えて、これら処理前後または処理最中に、加熱乾燥や赤外線を含む別の波長の光照射を行うことも可能であり、あるいはその前後に表面異物等の除去のための水を含めた各種溶媒処理を行うことも可能である。どの程度の割合で光配向膜表面に酸素原子割合を増加させた層を形成すべきかについては、光配向処理による液晶配向規制力を低下させない程度であることが望ましく、具体的には光配向することが可能な配向膜層の液晶に接する表面からの膜厚の半分以下であることが望ましく、より望ましくはその膜厚の10分の1以下であることが望ましい。このような光配向膜表面に限定された酸素原子割合を増加させた層を形成することでは、それ以上の割合で酸素原子割合を増加させ、配向膜表面が過度に酸化されることによる弊害、例えば配向膜表面が親水性に変化して、水に対する接触角が20度以上低下し、配向膜と液晶分子の相互作用が変化してしまうことは抑制される。その一方で、未だその発現機構は解明されていないが、光配向によって液晶配向規制力の保持特性を向上させることが可能であり、例えば液晶表示装置形成直後には同じ液晶配向規制力を有していても、電場によって長時間液晶配向規制力が誘起する液晶配向方向とは異なる方向に液晶層を配向し続け、電場を除去した後に初期の配向方向に戻るまでの残像時間が短縮することが可能である。
また、本配向膜作製には、2種類以上の配向膜を重ねて塗布、イミド化したり、あるいは2種類以上のポリイミド前駆体をブレンドして塗布、イミド化したりして、その組成を調整することも可能である。
このような処理を終えた配向膜は通常の手法によって、液晶表示装置に組み立てることができる。
次に、本配向膜が作製された液晶表示装置について説明する。図3A〜図3Dは、本発明の実施の形態に係る液晶表示装置の概略構成の一例を示す模式図である。図3Aは、本液晶表示装置の概略構成の一例を示す模式ブロック図である。図3Bは、液晶表示パネルの1つの画素の回路構成の一例を示す模式回路図である。図3Cは、液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式平面図である。図3Dは、図3CのA−A’線における断面構成の一例を示す模式断面図である。
疎水性の状態を維持しつつ表面の酸素原子割合が高められた配向膜は、たとえば、アクティブマトリクス方式の液晶表示装置に適用される。アクティブマトリクス方式の液晶表示装置は、たとえば、携帯型電子機器向けのディスプレイ(モニター)、パーソナルコンピュータ用のディスプレイ、印刷やデザイン向けのディスプレイ、医療用機器のディスプレイ、液晶テレビなどに用いられている。
アクティブマトリクス方式の液晶表示装置は、たとえば、図3Aに示すように、液晶表示パネル101、第1の駆動回路102、第2の駆動回路103、制御回路104、およびバックライト105を有する。
液晶表示パネル101は、複数本の走査信号線GL(ゲート線)および複数本の映像信号線DL(ドレイン線)を有し、映像信号線DLは第1の駆動回路102に接続しており、走査信号線GLは第2の駆動回路103に接続している。なお、図3Aには、複数本の走査信号線GLのうちの一部を示しており、実際の液晶表示パネル101には、さらに多数本の走査信号線GLが密に配置されている。同様に、図3Aには、複数本の映像信号線DLのうちの一部を示しており、実際の液晶表示パネル101には、さらに多数本の映像信号線DLが密に配置されている。
また、液晶表示パネル101の表示領域DAは、多数の画素の集合で構成されており、表示領域DAにおいて1つの画素が占有する領域は、たとえば、隣接する2本の走査信号線GLと隣接する2本の映像信号線DLとで囲まれる領域に相当する。このとき、1つの画素の回路構成は、たとえば、図3Bに示すような構成になっており、アクティブ素子として機能するTFT素子Tr、画素電極PX、共通電極CT(対向電極と呼ぶこともある)、液晶層LCを有する。またこのとき、液晶表示パネル101には、たとえば、複数の画素の共通電極CTを共通化する共通化配線CLが設けられている。
また、液晶表示パネル101は、たとえば、図3Cおよび図3Dに示すように、アクティブマトリクス基板(TFT基板)106と対向基板107の表面に配向膜606および705をそれぞれ形成し、それら配向膜の間に液晶層LC(液晶材料)を配置した構造になっている。また、ここでは特に図示していないが、配向膜606とアクティブマトリクス基板106の間、または配向膜705と対向基板107の間に、適宜中間層(例えば位相差板や色変換層、光拡散層等の光学的中間層)を設けてもよい。
このとき、アクティブマトリクス基板106と対向基板107とは、表示領域DAの外側に設けられた環状のシール材108で接着されており、液晶層LCは、アクティブマトリクス基板106側の配向膜606、対向基板107側の配向膜705、およびシール材108で囲まれた空間に密封されている。またこのとき、バックライト105を有する液晶表示装置の液晶表示パネル101は、アクティブマトリクス基板106、液晶層LC、および対向基板107を挟んで対向配置させた一対の偏光板109a、109bを有する。
なお、アクティブマトリクス基板106は、ガラス基板などの絶縁基板の上に走査信号線GL、映像信号線DL、アクティブ素子(TFT素子Tr)、画素電極PXなどが配置された基板である。また、液晶表示パネル101の駆動方式がIPS方式などの横電界駆動方式である場合、共通電極CTおよび共通化配線CLはアクティブマトリクス基板106に配置されている。また、液晶表示パネル101の駆動方式がTN方式やVA(Vertically Alignment)方式などの縦電界駆動方式である場合、共通電極CTは対向基板107に配置されている。縦電界駆動方式の液晶表示パネル101の場合、共通電極CTは、通常、すべての画素で共有される大面積の一枚の平板電極であり、共通化配線CLは設けられていない。
また、本発明の実施の形態に係る液晶表示装置では、液晶層LCが密封された空間に、たとえば、それぞれの画素における液晶層LCの厚さ(セルギャップということもある)を均一化するための柱状スペーサ110が複数設けられている。この複数の柱状スペーサ110は、たとえば、対向基板107に設けられている。
第1の駆動回路102は、映像信号線DLを介してそれぞれの画素の画素電極PXに加える映像信号(階調電圧ということもある)を生成する駆動回路であり、一般に、ソースドライバ、データドライバなどと呼ばれている駆動回路である。また、第2の駆動回路103は、走査信号線GLに加える走査信号を生成する駆動回路であり、一般に、ゲートドライバ、走査ドライバなどと呼ばれている駆動回路である。また、制御回路104は、第1の駆動回路102の動作の制御、第2の駆動回路103の動作の制御、およびバックライト105の輝度の制御などを行う回路であり、一般に、TFTコントローラ、タイミングコントローラなどと呼ばれている制御回路である。また、バックライト105は、たとえば、冷陰極蛍光灯などの蛍光灯、または発光ダイオード(LED)などの光源であり、当該バックライト105が発した光は、図示していない反射板、導光板、光拡散板、プリズムシートなどにより面状光線に変換されて液晶表示パネル101に照射される。
図4は、本発明の実施の形態に係る液晶表示装置のIPS方式液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式図である。アクティブマトリクス基板106は、ガラス基板601などの絶縁基板の表面に、走査信号線GLおよびここでは図示していないが共通化配線CLと、それらを覆う第1の絶縁層602が形成されている。第1の絶縁層602の上には、TFT素子Trの半導体層603、映像信号線DL、および画素電極PXと、それらを覆う第2の絶縁層604が形成されている。半導体層603は、走査信号線GLの上に配置されており、走査信号線GLのうちの半導体層603の下部に位置する部分がTFT素子Trのゲート電極として機能する。
また、半導体層603は、たとえば、第1のアモルファスシリコンからなる能動層(チャネル形成層)の上に、第1のアモルファスシリコンとは不純物の種類や濃度が異なる第2のアモルファスシリコンからなるソース拡散層およびドレイン拡散層が積層された構成になっている。またこのとき、映像信号線DLの一部分および画素電極PXの一部分は、それぞれ、半導体層603に乗り上げており、当該半導体層603に乗り上げた部分がTFT素子Trのドレイン電極およびソース電極として機能する。
ところで、TFT素子Trのソースとドレインは、バイアスの関係、すなわちTFT素子Trがオンになったときの画素電極PXの電位と映像信号線DLの電位との高低の関係によって入れ替わる。しかしながら、本明細書における以下の説明では、映像信号線DLに接続している電極をドレイン電極といい、画素電極に接続している電極をソース電極という。第2の絶縁層604の上には、表面が平坦化された第3の絶縁層605(有機パッシベーション膜)が形成されている。第3の絶縁層605の上には、共通電極CTと、共通電極CTおよび第3の絶縁層605を覆う配向膜606が形成されている。
共通電極CTは、第1の絶縁層602、第2の絶縁層604、および第3の絶縁層605を貫通するコンタクトホール(スルーホール)を介して共通化配線CLと接続している。また、共通電極CTは、たとえば、平面における画素電極PXとの間隙Pgが7μm程度になるように形成されている。配向膜606は以下の実施例に記載された高分子材料が塗布され、表面に液晶配向能を付与するための表面処理(光配向処理)及び酸化処理が施され、疎水性が維持された状態で配向膜表面の酸素原子割合が高められている。
一方、対向基板107には、ガラス基板701などの絶縁基板の表面に、ブラックマトリクス702およびカラーフィルタ(703R,703G,703B)と、それらを覆うオーバーコート層704が形成されている。ブラックマトリクス702は、たとえば、表示領域DAに画素単位の開口領域を設けるための格子状の遮光膜である。また、カラーフィルタ(703R,703G,703B)は、たとえば、バックライト105からの白色光のうちの特定の波長領域(色)の光のみを透過する膜であり、液晶表示装置がRGB方式のカラー表示に対応している場合は、赤色の光を透過するカラーフィルタ703R、緑色の光を透過するカラーフィルタ703G、および青色の光を透過するカラーフィルタ703Bが配置される(ここでは一つの色の画素について代表して示している)。
また、オーバーコート層704は、表面が平坦化されている。オーバーコート層704の上には、複数の柱状スペーサ110および配向膜705が形成されている。柱状スペーサ110は、たとえば、頂上部が平坦な円錐台形(台形回転体ということもある)であり、アクティブマトリクス基板106の走査信号線GLのうちの、TFT素子Trが配置されている部分および映像信号線DLと交差している部分を除く部分と重なる位置に形成されている。また、配向膜705は、たとえば、ポリイミド系樹脂で形成されており、表面に液晶配向能を付与するための表面処理(光配向処理)及び酸化処理が施され、疎水性が維持された状態で配向膜表面の酸素原子割合が高められている。
また、図4の方式の液晶表示パネル101における液晶層LCの液晶分子111は、画素電極PXと共通電極CTの電位が等しい電界無印加時には、ガラス基板601、701の表面にほぼ平行に配向された状態であり、配向膜606、705に施された配向規制力処理で規定された初期配向方向に向いた状態でホモジニアス配向している。そして、TFT素子Trをオンにして映像信号線DLに加えられている階調電圧を画素電極PXに書き込み、画素電極PXと共通電極CTとの間の電位差が生じると、図中に示したような電界112(電気力線)が発生し、画素電極PXと共通電極CTとの電位差に応じた強度の電界112が液晶分子111に印加される。
このとき、液晶層LCが持つ誘電異方性と電界112との相互作用により、液晶層LCを構成する液晶分子111は電界112の方向にその向きを変えるので、液晶層LCの屈折異方性が変化する。またこのとき、液晶分子111の向きは、印加する電界112の強度(画素電極PXと共通電極CTとの電位差の大きさ)によって決まる。したがって、液晶表示装置では、たとえば、共通電極CTの電位を固定しておき、画素電極PXに加える階調電圧を画素毎に制御して、それぞれの画素における光透過率を変化させることで、映像や画像の表示を行うことができる。
図5は、本発明の実施の形態に係る他の液晶表示装置のFFS方式液晶表示パネルの概略構成の一例を示す模式図である。アクティブマトリクス基板106は、ガラス基板601などの絶縁基板の表面に、共通電極CT、走査信号線GL、および共通化配線CLと、それらを覆う第1の絶縁層602が形成されている。第1の絶縁層602の上には、TFT素子Trの半導体層603、映像信号線DL、およびソース電極607と、それらを覆う第2の絶縁層604が形成されている。このとき、映像信号線DLの一部分およびソース電極607の一部分は、それぞれ、半導体層603に乗り上げており、当該半導体層603に乗り上げた部分がTFT素子Trのドレイン電極およびソース電極として機能する。
また、図5の液晶表示パネル101では、第3の絶縁層605が形成されておらず、第2の絶縁層604の上に画素電極PXと、画素電極PXを覆う配向膜606が形成されている。ここでは図示していないが、画素電極PXは、第2の絶縁層604を貫通するコンタクトホール(スルーホール)を介してソース電極607と接続している。このとき、ガラス基板601の表面に形成された共通電極CTは、隣接する2本の走査信号線GLと隣接する2本の映像信号線DLで囲まれた領域(開口領域)に平板状に形成されており、当該平板状の共通電極CTの上に、複数のスリットを有する画素電極PXが積層されている。またこのとき、走査信号線GLの延在方向に並んだ画素の共通電極CTは、共通化配線CLによって共通化されている。一方、図5の液晶表示パネル101における対向基板107は、図3Dの液晶表示パネル101の対向基板107と同じ構成である。そのため、対向基板107の構成に関する詳細な説明は省略する。
図6は、本発明の実施の形態に係る他の液晶表示装置のVA方式液晶表示パネルの主要部の断面構成の一例を示す模式断面図である。縦電界駆動方式の液晶表示パネル101は、例えば、図6に示すように、アクティブマトリクス基板106に画素電極PXが形成されており、対向基板107に共通電極CTが形成されている。縦電界駆動方式の1つであるVA方式の液晶表示パネル101の場合、画素電極PXおよび共通電極CTは、たとえば、ITOなどの透明導電体によりベタ形状(単純な平板形状)に形成されている。
このとき、液晶分子111は、画素電極PXと共通電極CTの電位が等しい電界無印加時には、配向膜606、705によりガラス基板601、701の表面に対して垂直に並べられている。そして、画素電極PXと共通電極CTとの間に電位差が生じると、ガラス基板601、701に対してほぼ垂直な電界112(電気力線)が発生し、液晶分子111が基板601、701に対して平行な方向に倒れ、入射光の偏光状態が変化する。またこのとき、液晶分子111の向きは、印加する電界112の強度によって決まる。
したがって、液晶表示装置では、たとえば、共通電極CTの電位を固定しておき、画素電極PXに加える映像信号(階調電圧)を画素毎に制御して、それぞれの画素における光透過率を変化させることで、映像や画像の表示を行う。また、VA方式の液晶表示パネル101における画素の構成、たとえば、TFT素子Trや画素電極PXの平面形状は、種々の構成が知られており、図6に示したVA方式での液晶表示パネル101における画素の構成は、それらの構成のいずれかであればよい。ここでは、その液晶表示パネル101における画素の構成に関する詳細な説明を省略する。なお、符号608は導電層、符号609は突起形成部材、符号609aは半導体層、符号609bは導電層を示す。
本発明の実施の形態は、上記のようなアクティブマトリクス方式の液晶表示装置のうち、液晶表示パネル101、特に、アクティブマトリクス基板106および対向基板107において液晶層LCに接する部分およびその周辺の構成に関する。そのため、従来の技術をそのまま適用できる第1の駆動回路102、第2の駆動回路103、制御回路104、およびバックライト105の構成についての詳細な説明は省略する。
これら液晶表示装置を製造するためには、既に液晶表示装置に用いられている各種配向膜材料や配向処理方法、各種液晶材料等を用いることが可能であり、それらを液晶表示装置に組立加工する際の各種プロセスを適用することも可能である。その一例を図8に示す。まず、アクティブマトリクス基板と対向基板をそれぞれの製造プロセスを経て準備し、配向膜を形成する下地層表面をUV/オゾン法、エキシマUV法、酸素プラズマ法等の各種表面処理方法を用いて清浄化する。次に、配向膜の前駆体をスクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の各種印刷方法を用いて塗布し、所定の条件で均一な膜厚となるようなレベリング処理を施した後、例えば180℃以上の温度で加熱することで前駆体のポリアミドをポリイミドにイミド化反応を行わせる。更に、所望の手段を用いて、偏光紫外線を照射や適度な後処理をすることにより、ポリイミド配向膜表面に配向規制力を発生させる(光配向)。この偏光紫外線照射や照射後処理の段階で加熱や別の波長の光を照射することも可能である。また、この偏光紫外線照射の前から後のいずれかの段階において、先に説明したような酸化雰囲気に暴露する過程を加えることにより、疎水性が維持された状態で表面の酸素原子割合の高い光配向膜が形成される。このこのようにして形成された配向膜付きのアクティブマトリクス基板と対向基板をその配向規制力の方向が所望の方位となるようにしつつ、一定の間隔を保持して上下2枚貼り合わせ、しかる後、その間隔を保持した部分に液晶を充填し、基板端部を封止することにより、液晶パネルが完成し、そのパネルに偏光板、位相差板等の光学フィルムを貼りつけ、駆動回路やバックライト等を併せて、液晶表示装置を得る。なお、上記の説明ではアクティブマトリクス基板(TFT基板)に形成した配向膜と対向基板(CF基板)に形成した配向膜の両者とも酸化雰囲気に暴露したが、いずれか一方だけであっても残像特性に対する改善効果を得ることができる。但し、両者とも酸化処理することにより、より残像特性が改善されることは言うまでもない。
次に、配向規制力の大きさを表す液晶のアンカリング力は次の方法で測定できる。すなわち、2枚一組のガラス基板に配向膜を塗布して光配向処理を行い、その2枚の配向膜の配向方向が平行となるようにして、適当な厚みdのスペーサを介在させて、評価用ホモジニアス配向液晶セルを作製する。これに材料物性が既知のカイラル剤入りネマチック液晶材料(らせんピッチp、弾性定数K2)を封入し、配向を安定化させるために一度液晶等方相に評価用セルを保持した後、室温に戻し、以下の方法でツイスト角φ2を測定する。
次に、空気の圧力または遠心力でセル内の大部分の液晶を除去し、セル内を溶媒洗浄、乾燥させてから、同じ液晶でカイラル剤のないものを封入し、同様に配向を安定化させてから、ツイスト角φ1を測定する。この時、アンカリング強度は次式によって与えられる。
また、ツイスト角は、図7に示すような光学系を用いて測定した。すなわち、可視光源6とフォトマル10を同一直線上にコリメートし、その間に偏光子7、評価用セル8、検光子9の順に配置する。可視光源6にはタングステンランプを用い、まず偏光子7の透過軸と検光子9の吸収軸を評価用セル8の配向膜の配向方向(L−L’)とほぼ平行に合わせる。次に、偏光子のみを回転し、透過光強度が最小になるように角度を変化させる。次に、検光子のみを回転し、透過光強度が最小になるように角度を変化させる。以下、同様に偏光子のみの回転、検光子のみの回転を繰り返し、角度が一定になるまで繰り返す。最終的に収束した時点での偏光子の透過軸回転角度φ偏光子と、検光子の吸収軸回転角度φ検光子に対して、ツイスト角φ=φ検光子−φ偏光子と定義する。ここで、測定の読み取り誤差は用いる液晶の屈折率異方性Δnと液晶セルの厚みdとを調節することで低減できる。
次に、輝度緩和定数を決定する方法について以下に説明する。先に詳細に述べたような手順によって、配向膜を含む各種液晶表示装置を作製する。この液晶表示装置に、白黒のウィンドウパターンを所定時間連続表示後(これを焼付け時間と称する)、直ちに全画面中間調のグレーレベルの表示電圧に切り替え、ウィンドウパターン(焼き付き、残像ともいう)が消失する時間を計測する。
理想的には配向膜においては、液晶表示装置のいずれの部分にも残留電荷が発生せず、配向規制力方向も乱されることがないため、表示電圧の切り替えと共に、直ちに全画面グレーレベルの表示になるが、駆動の伴う残留電荷の発生や配向規制力方向の乱れ等によって、明領域(白パターンの部分)は実効的な配向状態が理想的なレベルからずれるために、輝度が異なって見えてしまうが、この中間調表示の電圧で更に長時間保持すると、この電圧での残留電荷や配向規制力方向にやがて落ち着くことになり、均一表示に見えてくる。液晶表示素子の面内輝度分布をCCDカメラによって測定し、均一表示になるまでの時間を焼き付き時間とし、この焼き付き時間をもって、その液晶表示素子の輝度緩和定数とした。但し、480時間経過しても緩和しない場合には、そこで評価を打切り、≧480と記載した。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
最初に、配向膜を構成する元素の割合が膜厚方向に向けて変化する層を配向膜表面に有し、配向膜表面が配向膜内部よりも酸素原子の割合が高いことを特徴とする液晶表示装置を作製し、アンカリング特性や残像特性を比較した結果について、図表を用いて説明する。
基板には無アルカリガラス(旭硝子AN−100)を用い、更に、スパッタ法で酸化インジウムスズ(ITO)薄膜を形成したもの、窒化シリコン(SiNx)薄膜を形成したものの3種を用いた。このようにして準備した下地基板は、配向膜の前駆体を塗布する前に中性洗剤等の薬液で洗浄後、UV/O3処理にて表面を清浄化した。試験用の配向膜には、以下のようなものを用いた。(化2)のポリイミドの前駆体となるポリアミド酸の骨格について、第1の配向膜の成分として
のような化学構造を選んで、既存の化学合成方法に従って、原料となる酸二無水物とジアミンからポリアミド酸を合成した。また、第2の配向膜の成分として
を選んだ。これらの各ポリアミド酸の分子量はGPC(ゲル浸透クロマトグラフ分析)によってポリスチレン換算分子量から求め、それぞれ16000、14000であった。ブチルセロソルブ、N−メチルピロリドン、γ―ブチロラクトン、等の各種溶媒を混合したものに第1の配向膜:第2の配向膜=1:1の比率で溶解させた。これを所定の下地基板にフレキソ印刷で薄膜化し、40℃以上の温度で仮乾燥した後、150℃以上のベーク炉にてイミド化を行った。この時の膜厚が概ね100nmとなるように、薄膜化条件は事前に調整した。次に、偏光した光によって高分子化合物の一部分子骨格が切断されることにより液晶配向規制力を付与するために、紫外線ランプ(低圧水銀灯)とワイヤグリッド偏光子、干渉フィルタにて、偏光化した紫外線(主波長280nm)を集光照射した。この際、紫外線ランプ周辺で発生するオゾンガスを強制的に吹き付けながら光配向させたものと、通常のように紫外線のみを照射したものを作製した。しかる後、純水シャワー洗浄、加熱乾燥等の表面の異物を除去したものを配向膜試料とした。また、得られた配向膜の元素組成はXPS法によって測定した。装置には、島津/Kratos社製X洗光電子分光装置AXIS−HSを用いた。測定条件は、X線源モノクロAl(管電圧15kV、管電流15mA)、レンズ条件Hybrid(分析面積600×1000μm□)、分解能Pass Energy 40、走査速度20eV/min(0.1eVステップ)であり、表面から深さ方向の元素組成を分析する際には、Ar+イオンでスパッタして分析した。表1に評価結果を示す。
表1には、得られた膜の元素組成の深さ方向(z方向)の変化を示した。ここで、オゾンガスを吹き付けた膜を表1(a)、吹き付けなかった膜を表1(b)に示した。配向膜を構成する元素の組成比を炭素C、窒素N、酸素Oの割合で見ると、吹き付けなかった膜はz=0〜40nmではC=74〜75%、N=7%、O=17〜19%、z=60〜100nmでは、C=75〜76%、N=10%、O=13〜14%となった。ここで、第1の配向膜単独ではC=74.1%、N=7.4%、O=18.5%、第2の配向膜単独ではC=75.6%、N=10.3%、O=13.8%であり、第1の配向膜と第2の配向膜が膜厚方向に混合比の1:1で二層に相分離していることを示している。これに対して、オゾンガスを吹き付けた膜は、z=0nmではC=69%、N=7%、O=24%、z=10〜40nmではC=73〜74%、N=7%、O=18〜19%、z=60〜100nmでは、C=75〜76%、N=10%、O=13〜14%となった。このことは最表層でのみ、酸素Oの割合が増加し、相対的に炭素Cの割合が減少していることを示している。膜内部に比べて、最表層の酸素割合は、第1の配向膜に対しては(24−19)÷19=0.26と、26%ほど増加していることがわかる。なお、オゾン吹き付けの有無に関わらず両膜とも疎水性であった。
この配向膜を用いて、アンカリングエネルギを測定したところ、オゾンを吹き付けなかった膜では2.0mJ/m2であったが、オゾンを吹き付けた膜では2.4mJ/m2と、アンカリング特性が向上した。
また、この配向膜を用いて、IPS方式の液晶表示装置を作製し、輝度緩和定数を測定したところ、オゾンを吹き付けなかった膜では54時間であったが、オゾンを吹き付けた膜では42時間と、輝度緩和特性が向上した。
以上のことから、光配向処理時にオゾンガスを用いることで、配向膜を構成する元素の割合が膜厚方向に向けて変化する層を配向膜表面に有し、配向膜表面が配向膜内部よりも酸素原子の割合が高いことを特徴とする液晶表示装置を作製し、アンカリング特性や残像特性が向上することが確認された。
以上本実施例によれば、光配向技術を用いた場合であっても、良好な残像特性が安定して得られる液晶表示装置およびその製造方法を提供することができる。
次に、別の作製条件で、配向膜を構成する元素の割合が膜厚方向に向けて変化する層を配向膜表面に有し、配向膜表面が配向膜内部よりも酸素原子の割合が高いことを特徴とする液晶表示装置を作製し、アンカリング特性や残像特性を比較した結果について、図表を用いて説明する。
配向膜材料には実施例1と同じ材料を用い、同様の作製条件で、配向膜の塗布、イミド化焼成を行い、同じ偏光紫外線光源を用いて、オゾンガスを吹き付けずに配向処理を行った。しかる後、純水シャワー洗浄、加熱乾燥等の表面の異物を除去した。(ここまでは実施例1の比較として示した配向膜と同じ。)この薄膜に対して、過酸化水素水(3%)に1分間浸漬し、もう一度純水シャワー洗浄、加熱乾燥等の表面の異物を除去したものを配向膜試料とした。表2に評価結果を示す。
表2には、得られた膜の元素組成の深さ方向(z方向)の変化を示した。配向膜を構成する元素の組成比を炭素C、窒素N、酸素Oの割合で見ると、このような処理を施した膜は、z=0nmではC=69%、N=7%、O=24%、z=10nmではC=71%、N=7%、O=22%となったが、z=20〜40nmではC=73〜74%、N=7%、O=18〜19%、z=60〜100nmでは、C=75〜76%、N=10%、O=13〜14%となった。このことは最表層に近い領域でのみ、酸素Oの割合が増加し、相対的に炭素Cの割合が減少していることを示している。膜内部に比べて、最表層の酸素割合は、第1の配向膜に対しては(24−19)÷19=0.26と、26%ほど増加していることがわかる。なお、本実施例で作製した配向膜は疎水性を示した。
この配向膜を用いて、アンカリングエネルギを測定したところ、比較膜では2.0mJ/m2であったが、過酸化水素水で処理した膜では2.7mJ/m2と、アンカリング特性が向上した。また、この配向膜を用いて、IPS方式の液晶表示装置を作製し、輝度緩和定数を測定したところ、比較た膜では54時間であったが、過酸化水素で処理した膜では36時間と輝度緩和特性が向上した。
以上のことから、光配向処理後に過酸化水素水で酸化処理することで、配向膜を構成する元素の割合が膜厚方向に向けて変化する層を配向膜表面に有し、配向膜表面が配向膜内部よりも酸素原子の割合が高いことを特徴とする液晶表示装置を作製し、アンカリング特性や残像特性が向上することが確認された。
以上本実施例によれば、光配向技術を用いた場合であっても、良好な残像特性が安定して得られる液晶表示装置およびその製造方法を提供することができる。
次に、別の作製条件で、配向膜を構成する元素の割合が膜厚方向に向けて変化する層を配向膜表面に有し、配向膜表面が配向膜内部よりも酸素原子の割合が高いことを特徴とする液晶表示装置を作製し、アンカリング特性や残像特性を比較した結果について、図表を用いて説明する。
配向膜材料には実施例1と同じ材料を用い、同様の作製条件で、配向膜の塗布、イミド化焼成を行い、同じ偏光紫外線光源を用いて、オゾンガスを吹き付けずに配向処理を行った。しかる後、純水シャワー洗浄、加熱乾燥等の表面の異物を除去した。(ここまでは実施例1の比較として示した配向膜と同じ。)この薄膜に対して、オゾン水(1ppm)に1分間浸漬し、もう一度純水シャワー洗浄、加熱乾燥等の表面の異物を除去したものを配向膜試料とした。表3に評価結果を示す。
表3には、得られた膜の元素組成の深さ方向(z方向)の変化を示した。配向膜を構成する元素の組成比を炭素C、窒素N、酸素Oの割合で見ると、このような処理を施した膜は、z=0nmではC=68%、N=7%、O=24%となったが、以降z=10〜40nmではC=70〜73%、N=7%、O=23〜20%、z=60〜100nmでは、C=75〜76%、N=10%、O=13〜14%となった。このことは最表層に近い領域でのみ、酸素Oの割合が増加し、相対的に炭素Cの割合が減少していることを示している。なお、本実施例で作製した配向膜は疎水性を示した。
この配向膜を用いて、アンカリングエネルギを測定したところ、比較膜では2.0mJ/m2であったが、オゾン水処理した膜では3.0mJ/m2と、アンカリング特性が向上した。また、この配向膜を用いて、IPS方式の液晶表示装置を作製し、輝度緩和定数を測定したところ、比較した膜では54時間であったが、オゾン水で処理した膜では30時間と、輝度緩和特性が向上した。
以上のことから、光配向処理後にオゾン水で酸化処理することで、配向膜を構成する元素の割合が膜厚方向に向けて変化する層を配向膜表面に有し、配向膜表面が配向膜内部よりも酸素原子の割合が高いことを特徴とする液晶表示装置を作製し、アンカリング特性や残像特性が向上することが確認された。
以上本実施例によれば、光配向技術を用いた場合であっても、良好な残像特性が安定して得られる液晶表示装置およびその製造方法を提供することができる。
次に、別の作製条件で、配向膜を構成する元素の割合が膜厚方向に向けて変化する層を配向膜表面に有し、配向膜表面が配向膜内部よりも酸素原子の割合が高いことを特徴とする液晶表示装置を作製し、アンカリング特性や残像特性を比較した結果について、図表を用いて説明する。
配向膜材料には実施例1と同じ材料を用い、同様の作製条件で、配向膜の塗布、イミド化焼成を行い、同じ偏光紫外線光源を用いて、オゾンガスを吹き付けずに配向処理を行った。しかる後、純水シャワー洗浄、加熱乾燥等の表面の異物を除去した。(ここまでは実施例1の比較として示した配向膜と同じ。)この薄膜に対して、次亜塩素酸水(20ppm)に30秒間浸漬し、もう一度純水シャワー洗浄、加熱乾燥等の表面の異物を除去したものを配向膜試料とした。表4に評価結果を示す。
表4には、得られた膜の元素組成の深さ方向(z方向)の変化を示した。配向膜を構成する元素の組成比を炭素C、窒素N、酸素Oの割合で見ると、このような処理を施した膜は、z=0nmではC=68%、N=7%、O=25%となったが、以降z=10〜40nmではC=68〜70%、N=7%、O=24〜23%、z=60〜100nmでは、C=75〜76%、N=10%、O=13〜14%となった。このことは最表層に近い領域でのみ、酸素Oの割合が増加し、相対的に炭素Cの割合が減少していることを示している。なお、本実施例で作製した配向膜は疎水性を示した。
この配向膜を用いて、アンカリングエネルギを測定したところ、比較膜では2.0mJ/m2であったが、次亜塩素酸水で処理した膜では3.5mJ/m2と、アンカリング特性が向上した。
また、この配向膜を用いて、IPS方式の液晶表示装置を作製し、輝度緩和定数を測定したところ、比較した膜では54時間であったが、次亜塩素酸水で処理した膜では31時間と、輝度緩和特性が向上した。
以上のことから、光配向処理後に次亜塩素酸水で酸化処理することで、配向膜を構成する元素の割合が膜厚方向に向けて変化する層を配向膜表面に有し、配向膜表面が配向膜内部よりも酸素原子の割合が高いことを特徴とする液晶表示装置を作製し、アンカリング特性や残像特性が向上することが確認された。
以上本実施例によれば、光配向技術を用いた場合であっても、良好な残像特性が安定して得られる液晶表示装置およびその製造方法を提供することができる。
次に、実施例1で示した方法を用いて、その配向膜表面処理時間を変えることで酸化処理状態を変化させた時の結果について、図表を用いて説明する。
配向膜材料には実施例1と同じ材料を用い、同様の作製条件で、配向膜の塗布、イミド化焼成を行い、同じ偏光紫外線光源を用いて、オゾンガスを吹き付けて配向処理を行った。所定の照射が完了すると、紫外線のみシャッタで遮断して、オゾンガスのみ継続して暴露し続け、配向膜表面の酸化時間を長くした。その後の処理は実施例1と同様にし、配向膜表面の酸素濃度と水に対する接触角を測定した。更に、同様に液晶表示装置を組み立て、その輝度緩和定数を測定した。表5にはその結果を示す。
ここで、初期と記載された表面処理条件はオゾンガスを吹き付けずに偏光紫外線照射した時の配向膜を示す。これを見ると、最表層の酸素原子割合が初期17.6%から24.4%に増加したのは、実施例1に示した結果通りであるが、偏光紫外線照射後もオゾンガスを吹き付け続けると、時間と共に最表層の酸素原子割合が増加し続けることがわかる。また、水に対する接触角を見ると、初期56度であった接触角はオゾンガスの吹き付け時間が長くなるにつれて低下し、30分で35度と20度以上低下する。一方、輝度緩和定数は初期54時間から、徐々に短時間化していくが、処理時間15分で最小値25時間を示した後は、処理時間が増えるとかえって輝度緩和時間が長くなった。このことは、光配向膜表面の酸素原子割合を増加させることによって輝度緩和定数が改善しても、極度に酸素原子割合を増加させるとかえって輝度緩和定数は悪化し、有効な処理時間内での接触角の範囲は初期から14度以下の範囲にあることがわかった。したがって、配向膜の疎水性の尺度としては、水の接触角が38度以上で効果が見られ、40度以上が望ましく、43度以上が好適である。
実施例1〜3における各種処理において、配向膜表面での水の接触角を43度となるようにしてアンカリングエネルギと輝度緩和定数とを評価したところ、良好な結果が得られた。また、液晶表示装置に本配向膜を適用した結果、良好な残像特性が得られた。
以上のことから、光配向処理後にオゾンガスで酸化処理を追加することで、配向膜を構成する元素の割合が膜厚方向に向けて変化する層を配向膜表面に有し、配向膜表面が配向膜内部よりも酸素原子の割合が高いことを特徴とする液晶表示装置を作製し、アンカリング特性や残像特性が向上するが、過度の酸化はかえって液晶表示装置の表示性能を低下させることが確認された。
以上本実施例によれば、光配向技術を用いた場合であっても、良好な残像特性が安定して得られる液晶表示装置およびその製造方法を提供することができる。なお、疎水性の尺度となる配向膜上での水の接触角を38度以上とすることにより効果が得られる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。