以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1乃至図5(a)(b)(c)は、本発明の機械式駐車装置の第1実施形態として、本発明を、エレベータ方式の機械式駐車装置に適用した例を示すものである。
図1は本実施形態の機械式駐車装置の入出庫部の位置での概略切断平面図、図2は入出庫部の概略切断側面図である。図3は図1のA−A方向からの正面図である。図4は、表示制御器の接続関係を示す概要図である。図5は表示器の表示例を示すもので、図5(a)は前進を指示するときの表示例を、図5(b)は車両が入庫可能範囲内に収まったときの表示例を、図5(c)は後退を指示するときの表示例をそれぞれ示す図である。
本実施形態の機械式駐車装置は、図1、図2に示すように、建屋1と、建屋1の乗り入れ階の内部に設けられた入出庫部2と、建屋1の壁面1aに入出庫部2に連通するように設けられた入出庫口3とを備えた構成とされている。
ここで、説明の便宜上、建屋1の外側の入出庫口3に正対する位置から入出庫部2を見た状態での左手側と右手側を、本実施形態の機械式駐車装置についての左と右という。
入出庫口3には、開閉式の扉18が設けられている。なお、扉18は、図1、図2では、平板状の部材が昇降動作する形式のものを例示したが、入出庫口3を開閉する機能を備えていれば、扉18は、平板状の部材が左右方向に移動する形式のものや、シャッター形式のものなど、図示した以外の任意の形式のものであってもよいことは勿論である。
建屋1の壁面1aにおける入出庫口3の付近には、操作盤19が設けられている。操作盤19は、利用者が入出庫操作を行うためのものである。
本実施形態の機械式駐車装置に車両5の入庫を行うときには、図1、図2に示すように、入出庫部2の床のほぼ中央部に、図示しない格納棚から呼び出された空のパレット4が、入出庫口3から入出庫部2に乗り入れる車両5の進行方向に沿って配置される。
入出庫部2では、図1、図2に一点鎖線で示すように、床に配置されたパレット4の上側となる領域に、入庫可能範囲9が設定されている。入庫可能範囲9における入出庫口3に近い側の端部9bは、以下、入口側端部9bという。また、入庫可能範囲9における入出庫口3から離反する側の端部9aは、以下、反入口側端部9aという。
更に、入出庫部2には、入庫可能範囲9の入口側端部9bの位置で車両5の有無を検出する機能を備える第1のセンサ14と、入庫可能範囲9の反入口側端部9aの位置で車両5の有無を検出する機能を備える第2のセンサ15が設けられている。
第1のセンサ14は、たとえば、入庫可能範囲9の入口側端部9bの左右両側位置に、入口側端部9bに沿い左右方向に光13を投光する投光部11と、投光部11からの光13を受光する受光部12とを設置した構成の透過型の光電管式のセンサとされている。これにより、第1のセンサ14では、受光部12で受光している光13が遮られるか否かに応じて、入庫可能範囲9の入口側端部9bでの車両5の有無を検出することができる。
第2のセンサ15は、たとえば、入庫可能範囲9の反入口側端部9aの左右両側位置に、第1のセンサ14と同様に、反入口側端部9aに沿い左右方向に光13を投光する投光部11と、投光部11からの光13を受光する受光部12とを設置した構成の透過型の光電管式のセンサとされている。これにより、第2のセンサ15では、受光部12で受光している光13が遮られるか否かに応じて、入庫可能範囲9の反入口側端部9aでの車両5の有無を検出することができる。
なお、図1では、入庫可能範囲9の入口側端部9bと、第1のセンサ14における光13の通過位置は、図示する便宜上、位置をずらして記載したが、実際の配置は平面視で重なっている。同様に、図1では、入庫可能範囲9の反入口側端部9aと、第2のセンサ15における光13の通過位置は、図示する便宜上、位置をずらし記載したが、実際の配置は平面視で重なっている。
第1のセンサ14および第2のセンサ15は、それぞれ対応する入庫可能範囲9の入口側端部9bと反入口側端部9aにおける車両5の有無の検出結果を、後述する表示制御器8(図4参照)へ送る機能を備えている。
車両5の前端部と後端部は、通常、前後のバンパーであるが、前後のバンパーの高さ位置は、車両5ごとに相違していることがある。そこで、第1のセンサ14および第2のセンサ15は、図3に示すように上下方向の複数位置で投受光を行う構成、更には、図示しない左右に傾斜した方向への投受光を行う構成として、車両5ごとに前端部や後端部の高さ位置が相違しているとしても、その有無を検出できるようにしてある。
なお、第1のセンサ14および第2のセンサ15は、それぞれ入庫可能範囲9における入口側端部9bと反入口側端部9aの位置で車両5の有無を検出することができれば、回帰反射型や拡散反射型のセンサを用いるようにしてもよく、また、半導体素子を用いた光電センサや、光以外の情報用いる形式のセンサを採用してもよいことは勿論である。
入出庫部2には、更に、入出庫口3がある壁面1aとは反対側の奥側の壁1bに、車両5の位置を図示しない利用者(運転者)が確認するために用いる鏡10と、距離計測手段としてのレーザ距離計7と、表示器6とが備えられている。
鏡10は、既存の機械式駐車装置の入出庫部に備えられた車両の位置確認用の鏡と同様であるため、説明は省略する。
レーザ距離計7は、入出庫口3の方向に向く姿勢で設置されていて、レーザ光を使用して、入庫する車両5の前端部までの距離を測定するものである。なお、前記したように、車両5ごとに前端部の高さ位置が相違することがある点を考慮して、レーザ距離計7は、図2に示すように、上下方向の複数位置でレーザ光による距離測定を行い、得られた複数の測定結果のうち、最小の値となる測定結果を、車両5の前端部までの距離として、後述する表示制御器8(図4参照)へ送る機能を備えている。なお、図2に示したレーザ距離計7の上下方向の距離測定位置の上下方向の配置と数は、図示するための便宜上のものであり、実際の距離測定位置の上下方向の配置と数を反映したものではない。
なお、レーザ距離計7を図2に示すように鏡10の裏側に設ける場合は、鏡10には、レーザ距離計7がレーザ光の投受光を行う部分と対応する個所に、切欠きや開口を備える構成とすればよい。また、図示しないが、レーザ距離計7は、鏡10の表側に設ける構成としてもよい。
表示器6は、図2、図3に示すように、パレット4上に進行する車両を運転する利用者がほぼ正面に見ることができるように、入出庫部2の奥側の壁1bにおける鏡10より僅かに高い位置に設置されている。
なお、表示器6は、表示する内容をパレット4上に進行する車両5を運転する利用者が視認できるようにしてあれば、図示した以外の配置としてもよいことは勿論である。
表示器6は、後述するように、表示制御器8(図4参照)より受け取る指令に従って情報20a,20b,21,22a,22b(図5(a)(b)(c)参照)を表示する機能を備えている。
次に、表示制御器8の機能について説明する。また、以下においては、表示制御器8の機能の説明と共に、表示器6に表示する情報20a,20b,21,22a,22bについても併せて説明する。
表示制御器8は、図4に示すように、操作盤19で入庫の操作が行われると、その入庫操作が行われたという信号aを、操作盤19から受け取る機能と、第1のセンサ14から入庫可能範囲9の入口側端部9bにおける車両5の有無の検出結果を受け取る機能と、第2のセンサ15から入庫可能範囲9の反入口側端部9aにおける車両5の有無の検出結果を受け取る機能と、レーザ距離計7から車両5の前端部までの距離の測定結果を受け取る機能とを備えている。
また、表示制御器8は、レーザ距離計7から車両5の前端部までの距離の測定結果を受け取ると、その測定結果を基に、車両5の前端部と、入庫可能範囲9の反入口側端部9aとの距離を計算する機能を備えている。
本実施形態の機械式駐車装置では、レーザ距離計7が設置された位置と、入庫可能範囲9の反入口側端部9aが設定された位置は決まっているので、設計事項、あるいは、実測により、レーザ距離計7の設置位置から入庫可能範囲9の反入口側端部9aまでの距離は既知となる。表示制御器8では、この距離bを、予め記憶しておく。
表示制御器8は、レーザ距離計7より車両5の前端部までの距離の測定結果を受け取ると、その測定結果をcとして、距離bと測定結果cとの差分dを、たとえば、c−b=dの計算式で求める機能を備えている。これにより、差分dは、その絶対値が、入庫可能範囲9の反入口側端部9aの位置を基準(零)とする車両5の前端部までの距離を示すものとなる。また、差分dの値の正負が、車両5の前端部と入庫可能範囲9の反入口側端部9aの位置との相対的な配置を示すものとなる。前記計算式の場合、差分dの値が正であれば、車両5の前端部が、入庫可能範囲9の反入口側端部9aの位置よりも入出庫口3に近い側に存在していることを意味し、差分dの値が負であれば、車両5の前端部が、入庫可能範囲9の反入口側端部9aの位置に対し、入出庫口3とは反対側(入出庫部2の奥側)に存在していることを意味することになる。差分dの値が零の場合は、車両5の前端部が、入庫可能範囲9の反入口側端部9aの位置に存在していることを意味している。
表示制御器8は、入庫操作が行われたという信号aを操作盤19から受け取ると、表示器6に、図5(a)に示すように、入庫可能範囲9に車両5を収めるための位置修正に関する情報20aと、前記差分dの絶対値を反映し且つ距離の単位を明示する距離情報20bとを共に表示する指令を与える。
入庫を開始する時点では、入庫可能範囲9に車両5を収めるための車両5の移動方向は前進方向になるので、表示制御器8は、表示器6に、位置修正に関する情報20aとして、車両5の前進を指示する情報の表示、たとえば、「前進してください」という表示を行う指令を与える。
同時に、表示制御器8は、表示器6に、前記差分dの絶対値を反映し且つ距離の単位を明示する距離情報20bとして、差分dの絶対値を「cm」の単位に換算した値Xを基に、車両5が前進できる距離の情報の表示、たとえば、「あとXcm前進できます」という表示を行う指令を与える。
以上の表示制御器8からの指令に従い、表示器6は、図5(a)に示すように、位置修正に関する情報20aおよび距離情報20bの表示を行う。
なお、距離情報20b、および、後述する距離情報22bを表示するときの距離の単位としては、レーザ距離計7が出力する測定結果の単位にかかわらず、「cm」を用いる設定とすることが好ましい。更に、この際、小数点以下については、切り捨て、四捨五入、切り上げなどを行って、整数のみを表示することが好ましい。これは、車両5の前進、後退により車両5の位置を調整する場合、「mm」の単位での調整は困難であること、および、数値を表示する桁数をできるだけ少なくして、表示された内容を利用者が把握し易くするためである。しかし、距離の単位は、「cm」を用いる設定のみに限定されるものではない。
表示制御器8は、表示器6に図5(a)に示した如き情報20a,20bの表示を指令した後は、第1のセンサ14から受け取る検出結果を監視して、第1のセンサ14により入庫可能範囲9の入口側端部9bで車両5の存在が検出された後、入口側端部9bでの車両5の存在が検出されなくなるまで、表示器6に図5(a)に示した情報20a,20bの表示を継続させる機能を備えている。
入出庫部2に対する車両5の入庫を開始した後、第1のセンサ14により入庫可能範囲9の入口側端部9bで車両5の存在が検出されるという状態は、車両5が入口側端部9bから入出庫口3側へはみ出している状態である。また、その後、入口側端部9bでの車両5の存在が検出されなくなるのは、車両5の前進に伴い、車両5の後端部が入庫可能範囲9の入口側端部9bを通過した状態である。よって、本実施形態の機械式駐車装置では、入出庫部2に対する車両5の入庫を開始した後、車両5が入口側端部9bから入出庫口3側へはみ出している間は、表示器6に、図5(a)に示した如き情報20a,20bの表示が行われる。この際、表示器6に表示される距離情報20bにおける前記Xの値は、車両5の前進に伴い、数値が徐々に減少する。
前記のように車両5の入庫を開始した後、第1のセンサ14により入庫可能範囲9の入口側端部9bでの車両5の存在が検出されなくなったときに、第2のセンサ15により入庫可能範囲9の反入口側端部9aでの車両5の存在の検出も行われない状態は、車両5が入庫可能範囲9に収まったことを意味している。そこで、この場合は、表示制御器8は、表示器6に、図5(b)に示すように、車両5の停止を指示する情報21として、たとえば、「入庫完了」という表示を行う指令を与える機能を備えている。
この表示制御器8からの指令に従い、表示器6は、図5(b)に示すように、車両の停止を指示する情報21の表示を行う。なお、車両5を運転する利用者に対して車両5の停止を指示することができれば、表示器6に表示する車両の停止を指示する情報21としては、たとえば、「停止」という表示としてもよい。
なお、第1のセンサ14により入庫可能範囲9の入口側端部9bでの車両5の存在が検出されている状態で、第2のセンサ15により入庫可能範囲9の反入口側端部9aでの車両5の存在の検出も行なわれる場合は、その車両5の全長が入庫可能範囲9に収まらないこと、すなわち、本実施形態の機械式駐車装置に格納できないことを意味するので、この場合は、本実施形態の機械式駐車装置に別途備えた音声などによる情報伝達手段を用いて、入出庫部2からの車両5の退出を指示するようにすればよい。
更に、前記のように第1のセンサ14により入口側端部9bでの車両5の存在が一旦検出されなくなって、車両5が入庫可能範囲9に収まった後、第1のセンサ14による入口側端部9bでの車両5の存在が再び検出されるようになる場合は、表示制御器8は、表示器6に、図5(a)に示した如き情報20a,20bを再び表示する指令を与える機能を備えている。
一方、前記のように第1のセンサ14により入口側端部9bでの車両5の存在が一旦検出されなくなって、車両5が入庫可能範囲9に収まった後、第2のセンサ15による入庫可能範囲9の反入口側端部9aでの車両5の存在が検出される場合は、表示制御器8は、表示器6に、位置修正に関する情報22aとして、車両5の後退を指示する情報の表示、たとえば、「後退してください」という表示を行う指令を与える。同時に、表示制御器8は、表示器6に、前記差分dの絶対値を反映し且つ距離の単位を明示する距離情報22bとして、差分dの絶対値を「cm」の単位に換算した値Xを基に、車両5の後退すべき距離の情報の表示、たとえば、「あとXcm後退する必要があります」という表示を行う指令を与える機能を備えている。
この表示制御器8からの指令に従い、表示器6は、図5(c)に示すように、位置修正に関する情報22aおよび距離情報22bの表示を行う。この表示器6に表示される距離情報22bにおける前記Xの値は、車両5の後退に伴い、数値が徐々に減少する。
なお、本実施形態の機械式駐車装置は、操作盤19における入庫操作に伴い開始される入庫の処理に関して、前記したように表示制御器8が前記各センサ14,15の検出結果とレーザ距離計7の測定結果とを基に表示器6に指令して表示を行う点以外は、既存の機械式駐車装置と同様の入庫処理を行う機能を備えている。すなわち、本実施形態の機械式駐車装置は、操作盤19で入庫操作が行われると、入出庫部2の床に図示しない格納棚から呼び出したパレット4を配置して、入出庫部2を入庫可能な状態としてから入出庫口3の扉18を開く。この状態で、本実施形態の機械式駐車装置は、利用者が、車両5を入出庫口3から入出庫部2へ乗り入れてパレット4上の入庫可能範囲9に止めることができる。その後、利用者が建屋1の外部へ退出して操作盤19にて扉18を閉める操作を行うと、本実施形態の機械式駐車装置は、入出庫口3の扉18を閉じた後、入出庫部2から格納棚への車両5の搬送を行うものとしてある。
この点に鑑みて、表示制御器8は、操作盤19における扉閉の操作により入出庫口3の扉18が閉じられてから設定された時間が経過すると、表示器6に、表示を消す指令を与える機能を備えている。
また、本実施形態の機械式駐車装置は、既存の機械式駐車装置と同様の出庫処理を行う機能を備えている。
なお、図1において、16はエレベータ方式の機械式駐車装置の場合の搬器としてのケージである。ケージ16は、図示しない2列の格納棚の間の昇降路を昇降装置の吊索17を介して昇降できるようにしてある。また、ケージ16またはケージ16下方のピットには、図示しないターンテーブルが備えられており、ターンテーブルにより、パレット4は、90度旋回させられ、図1に示す入庫時の状態と、ケージ16上にケージ16と平行に載置される搬送時の状態に切り替えられるようになっている。
本実施形態の機械式駐車装置に車両5の入庫を行う場合は、利用者が操作盤19で入庫操作を行う。これにより、呼び出されたパレット4が入出庫部2へ搬送される。更に、ターンテーブルによりパレット4が旋回させられて、パレット4が図1に示す姿勢に配置されると、入出庫口3の扉18が開かれる。
この状態で、レーザ距離計7による入庫する車両5の前端部までの距離測定が可能になるため、表示器6には、図5(a)に示した如き、車両5の前進を指示する位置修正に関する情報20aと、車両5が前進できる距離が距離の単位と共に明示された距離情報20bとが表示される。
車両5を運転して入出庫口3から入出庫部2に乗り入れる利用者は、正面に配置されている表示器6に表示された情報20a,20bを視認することで、車両5を現在の位置から前進させればよいことが分かり、また、車両5を前進できる距離も分かる。よって、利用者は、表示器6に表示された情報20a,20bに従って、車両5を前進させればよい。
車両5が前進することに伴い、表示器6に表示されている情報20a,20bのうちの距離情報20bでは、車両5を前進できる距離の数値が徐々に減少するので、利用者は、現在の位置から前進が必要なこと、および、車両5を前進できる距離の残りも容易に把握することができる。よって、利用者は、車両5を前進できる距離の残りが少なくなるにしたがって、車両5の前進速度を遅くするという調整を容易に実施することができる。
その後、車両5が前進して入庫可能範囲9に収まると、第1のセンサ14による車両5の検出が行われなくなるので、表示器6では、図5(a)に示した情報20a,20bが消えて、図5(b)に示した車両の停止を指示する情報21の表示に切り替わる。これにより、利用者は、車両5の前進を終了して、その場で停止させればよいことが分かる。よって、図5(b)の表示が行われているときに利用者が車両5を停止させれば、車両5は入庫可能範囲に収まった状態で停止された状態になる。
よって、この状態で、利用者は、車両5にパーキングブレーキをかけて、車両5から降りることが可能となる。
前記のように表示器6に図5(b)に示した車両の停止を指示する情報21が表示された時点で利用者が車両5の前進を速やかに停止しなかった場合は、車両5の前端側が入庫可能範囲9の反入口側端部9aよりはみ出すことがある。万一、このような状況になった場合は、第2のセンサ15による車両5の検出が行われるため、表示器6に、車両5の後退を指示する位置修正に関する情報22aと、車両5の後退すべき距離が距離の単位と共に明示された距離情報22bとが表示される。
これにより、利用者は、表示器6に表示された情報22a,22bを視認することで、車両5を現在の位置から後退させればよいことが分かり、また、車両5を後退すべき距離も分かる。よって、利用者は、表示器6に表示された情報20a,20bに従い、特に、車両5の後退すべき距離が示されている距離情報22bに注意して車両5を後退させればよい。
車両5が後退することに伴い、表示器6に表示されている情報22a,22bのうちの距離情報22bでは、車両5を後退すべき距離の数値が徐々に減少するので、利用者は、あと何cm後退すればよいかを容易に把握することができ、その後退すべき距離の残りが少なくなるにしたがって、車両5の後退速度を遅くするという調整を容易に実施することができる。
この車両5の後退により車両5が入庫可能範囲9に収まると、第2のセンサ15による車両5の検出が行われなくなるので、表示器6では、図5(c)に示した情報22a,22bが消えて、図5(b)に示した車両の停止を指示する情報21の表示に切り替わる。これにより、利用者は、車両5の後退を終了して、その場で停止させればよいことが分かる。よって、図5(b)の表示が行われているときに利用者が車両5を停止させれば、車両5は入庫可能範囲に収まった状態で停止された状態になる。
よって、この状態で、利用者は、前記と同様に車両5にパーキングブレーキをかけて、車両5から降りることが可能となる。
なお、車両5が後退し過ぎて入庫可能範囲9の入口側端部9bからはみ出た場合は、表示器6では、図5(a)に示した情報20a,20bが再び表示されるようになるので、利用者は、距離情報20bを基に前進できる距離の残りを把握した状態で、車両5を速度を抑えた状態で前進させて、入庫可能範囲9に収めるようにすればよい。
このように、本実施形態の機械式駐車装置によれば、車両5の入庫を行うときに、表示器6に、車両5の前進を指示する位置修正に関する情報20aが表示されるときには、前進できる距離に関する距離情報20bを一緒に明示することができ、車両5の後退を指示する位置修正に関する情報22aが表示されるときには、後退すべき距離に関する距離情報22bを一緒に表示することができる。
そのため、たとえば、車両5として、全長が入庫可能範囲9の反入口側端部9aから入口側端部9bまでの長さ寸法とあまり差がない大きさの車両5を入庫するときであっても、本実施形態によれば、前記のように、表示器6の表示により、入庫時に前進するときには前進できる距離が分かり、万一、後退するときには、入庫可能範囲9に車両5を納めるための後退すべき距離が容易に分かる。よって、利用者は、前記各距離が少なくなるにしたがって前進速度や後退速度を遅くする調整を行うようにすれば、前進、後退を繰り返すことなく、表示器6に図5(b)に示し如き車両の停止を指示する情報21が表示された状態での車両5の停止を行うことが容易になる。このため、車両5の入庫を行うときには、車両5が入庫可能範囲9に収まる時間の短縮化を図る効果が期待できて、入庫し易さの向上化を図る効果が期待できる。
[第2実施形態]
図6は機械式駐車装置の第2実施形態を示すもので、入出庫部の概略切断側面図である。図7は表示器の表示例を示す図である。
なお、図6、図7において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の機械式駐車装置は、第1実施形態と同様の構成において、表示制御器8が、各センサ14,15の検出結果と、レーザ距離計7による測定結果cとを基に、表示器6に、図5(a)(b)(c)に示した各情報20a,20b、情報21、各情報22a,22bを表示する指令を与える機能に加えて、表示制御器8が、入庫を開始した車両5が入庫可能範囲9に最初に収まったときの状況に応じて、表示器6に、図7に示す如く、車両5を入庫可能範囲9の中央へ導く情報23を表示する指令を与える機能を、更に備える構成としたものである。
ここで、本実施形態における表示制御器8が追加で備える機能の導出について説明する。
前記第1実施形態の機械式駐車装置では、車両5の入庫を開始した後、第1のセンサ14により入庫可能範囲9の入口側端部9bでの車両5の存在が検出されなくなり、第2のセンサ15による反入口側端部9aでの車両5の存在の検出も行われない状態になると、入庫を開始して前進する車両5が入庫可能範囲9に最初に収まったことになる。よって、表示制御器8は、表示器6に、図5(a)に示した情報20aと距離情報20bに代えて、図5(b)に示すように、車両5の停止を指示する情報21の表示を行う指令を与えるようにしてある。
そのため、表示器6に情報21が表示された直後に、表示された情報21に従って利用者が前進している車両5を停止させると、車両5は、図6に示すように、車両5の後端部が入口側端部9bに近接する配置で入庫可能範囲9に収まることになる。
このように入庫可能範囲9に車両5が収まった状態で、車両5の後端部の位置が入庫可能範囲9の入口側端部9bに近接する配置となることは、車両5の全長の長短の影響は受けない。そのため、前記のように入庫可能範囲9に車両5が収まった状態では、車両5の全長が、入庫可能範囲9の反入口側端部9aから入口側端部9bまでの長さ寸法(以下、入庫可能範囲9の前後長という)に近いほど、車両5の前端部から入庫可能範囲9の反入口側端部までの余裕が小さくなり、一方、車両5の全長が短いほど、車両5の前端部から入庫可能範囲9の反入口側端部までの余りが大きくなる。
よって、入庫可能範囲9に収まった車両5が載るパレット4は、車両5の全長が入庫可能範囲9の前後長に近いほど、パレット4の長手方向に関する車両5の重量のバランスの偏りは小さくなり、一方、車両5の全長が短いほど、パレット4の長手方向に関する車両5の重量のバランスの偏りが大きくなるという傾向が生じる。
ところで、車両5を搬送する搬器としてのケージ16および各吊索17は、その形式によっては、車両5を搬送するときに各吊索17にかかる荷重ができるだけ不均等にならないようにすることが望まれる場合がある。
また、入出庫部2やケージ16に備えるターンテーブル(図示せず)は、パレット4の長手方向の両端側を除く中央部分を支持した状態で旋回させる形式のものが多い。そのため、ターンテーブルは、その形式によっては、車両5が載置されたパレット4を旋回させるときに、車両5の重量がパレット4の長手方向の一端側に偏ってかからないようにすることが望まれる場合がある。
そこで、このような場合の対応として、本実施形態の機械式駐車装置は、入庫する車両5が設定された基準よりも全長が短い車両5である場合は、その車両5を、入庫可能範囲9に収まった直後のままではなく、入庫可能範囲9の中央まで導いて停止させることができるようにする。
そのため、表示制御器8は、以下の機能を備えている。
表示制御器8は、第1実施形態と同様に、車両5が入庫するときに、差分dを求める機能を備え、更に、入出庫口3から入出庫部2に乗り入れる車両5が入庫可能範囲9に最初に収まった時点、すなわち、第1のセンサ14により入庫可能範囲9の入口側端部9bで車両5の存在が検出されなくなる時点で、そのときに求めた差分dの値を、車両5の前端部から入庫可能範囲9の反入口側端部9aまでの余りの距離d1として一旦記憶する機能を備えている。
この余りの距離d1は、入庫可能範囲9の前後長と、入庫した車両5の全長との差を表している。
したがって、入庫した車両5の全長が設定された基準よりも短いか、否かという点は、該基準の値を入庫可能範囲9の前後長から引いて算出される値に比して、前記余りの距離d1が大きいか、否かで判断することができる。
この点に鑑みて、表示制御器8は、前記余りの距離d1と比較するために設定された基準値Dを記憶する機能を備えている。この基準値Dは、たとえば、100cm、120cm、150cmのように、任意の定数で設定される。なお、この基準値Dの値は例であり、入庫可能範囲9の前後長などに応じて自在に変更してよいことは勿論である。
表示制御器8は、車両5の入庫時には、先ず、表示器6に、図5(a)に示した如き情報20a,20bの表示を指令する機能を備えている。この点は、第1実施形態と同様である。
表示制御器8は、その後、第1のセンサ14により入庫可能範囲9の入口側端部9bでの車両5の存在が検出されなくなり、第2のセンサ15により入庫可能範囲9の反入口側端部9aでの車両5の存在の検出も行われない状態になると、その時点で求まる余りの距離d1を、基準値Dと比較する機能を備えている。
その結果、余りの距離d1が基準値D以内の場合(d1≦Dの場合)は、表示制御器8は、表示器6に、図5(b)に示すように、車両5の停止を指示する情報21の表示を行う指令を与える機能を備えている。この情報21の表示を行う指令を表示器6に与える点は、第1実施形態と同様である。
一方、前記比較の結果、余りの距離d1が基準値Dよりも大となる場合(d1>Dの場合)は、表示制御器8は、距離bとレーザ距離計7の測定結果cとの差分dの絶対値から、前記余りの距離d1の1/2の値を引き、その結果を「cm」の単位に換算した値Yを求め、図7に示すように、車両5を入庫可能範囲9の中央へ導く情報23として、前記値Yを基に、たとえば、「あとYcm前進すると中央に停止できます」という表示を行う指令を与える。
この表示制御器8からの指令に従い、表示器6は、図7に示すように、情報23の表示を行う。
表示器6に表示される情報23における前記Yの値は、車両5の前進に伴い、数値が徐々に減少する。
更に、表示制御器8は、車両5の前進に伴って前記Yの値が零になると、表示器6に、図5(b)に示したと同様に、車両5の停止を指示する情報21の表示を行う指令を与える機能を備えている。
この表示制御器8からの指令に従い、表示器6は、図5(b)に示すように、車両の停止を指示する情報21の表示を行う。この場合も、車両5を運転する利用者に対して車両5の停止を指示することができれば、表示器6に表示する車両の停止を指示する情報21としては、たとえば、「停止」という表示であってもよい。
なお、表示器6に情報23が表示されるのは、車両5の全長と入庫可能範囲9の前後長との差がある程度大きい場合に限定されているので、車両5の停止位置は、前記Yの値が零になる位置に限定されるものではなく、前記Yの値が零になる位置に近付いていればよい。よって、表示制御器8は、たとえば、車両5の前進に伴って前記Yの値が5cmや10cm程度まで小さくなると、その時点で、表示器6に、図5(b)に示した情報21の表示を行う指令を与えるようにしてもよい。このようにすれば、車両5を運転する利用者が、表示器6における図5(b)の情報21の表示を見てから車両5を停止させる操作を行うことで、車両5を入庫可能範囲9のほぼ中央に停止させることができる。
表示制御器8では、第2のセンサ15による入庫可能範囲9の反入口側端部9aでの車両5の存在が検出される場合の機能は、第1実施形態と同様である。
以上の構成としてある本実施形態の機械式駐車装置によれば、第1実施形態と同様に使用して同様の効果を得ることができることに加えて、設定された基準よりも全長が短い車両5は、入庫可能範囲9に収まった状態から、更に入庫可能範囲9の中央まで誘導して停止させることができる。
このため、本実施形態の機械式駐車装置は、車両5を搬器であるケージ16により搬送するときに、ケージ16の各吊索17にかかる荷重が不均等になることを抑制することができる。
また、本実施形態の機械式駐車装置は、入出庫部2やケージ16に備えるターンテーブルで車両5が載置されたパレット4を旋回させるときに、車両5の重量がパレット4の長手方向の一端側に偏ることを抑制することができる。
なお、本発明は、前記した実施形態のみに限定されるものではなく、車両5の入庫時に車両5の乗り入れを行う入出庫部2を備える形式の機械式駐車装置であれば、たとえば、垂直循環方式、平面往復方式、水平循環方式、多層循環方式など、図示したエレベータ方式以外の機械式駐車装置や、入出庫部2と格納領域との間での車両5の搬送をパレット4を介さずに搬器で直接行う形式の機械式駐車装置にも同様に適用することができる。
各実施形態では、車両の入庫と出庫とを共用の入出庫部で行う形式の機械式駐車装置を例示したが、車両の入庫を行う入庫口を有する入庫部と、車両の出庫を行う出庫口を有する出庫部とを別々に備える形式の機械式駐車装置に適用してもよく、この場合は、表示器6、レーザ距離計7、表示制御器8、第1のセンサ14、第2のセンサ15は、入庫部側に装備すればよい。
各実施形態では、距離計測手段としてレーザ距離計7を例示したが、入庫する車両5の前端部までの距離を測定できるものであれば、レーザ距離計以外の距離計を用いるようにしてもよい。
表示器6に表示させる位置修正に関する情報20aは、車両5の前進を指示する表示であれば、文言は適宜変更してもよい。距離情報20bは、車両5が前進できる距離の情報の表示であれば、文言は適宜変更してもよい。情報21は、車両5の停止を指示することができれば、文言は適宜変更してもよい。位置修正に関する情報22aは、車両5の後退を指示する表示であれば、文言は適宜変更してもよい。距離情報22bは、車両5の後退すべき距離の情報の表示であれば、文言は適宜変更してもよい。情報23は、車両5を入庫可能範囲9の中央へ導く表示であれば、文言は適宜変更してもよい。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。