JP6963311B2 - ナノシート積層型分離膜及びその製造方法 - Google Patents
ナノシート積層型分離膜及びその製造方法 Download PDFInfo
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Description
以下、本発明を示す。
(2)前記金属酸化物ナノシートを支持基材に積層させて、支持基材と金属酸化物ナノシート積層体とアルカノールアミンとを有する分離膜を形成する工程とを備えることを特徴とする分離膜の製造方法。
NR1R2R3 (1)
R4R5R6SiR7 (2)
具体的には、アミノ基含有シランカップリング剤、四級アンモニウム基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤等を用いることができ、これらのシランカップリング剤を用いれば、シランカップリング剤が有するアミノ基や四級アンモニウム基やエポキシ基やメルカプト基が金属酸化物ナノシートや支持基材と相互作用して、金属酸化物ナノシートと支持基材との密着性を高めることができる。シランカップリング剤の有するアミノ基含有基としては、3−アミノプロピル基、3−(2−アミノエチル)アミノプロピル基、3−(6−アミノヘキシル)アミノプロピル基、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル基、N−フェニルアミノメチル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−ベンジル−3−アミノプロピル基、N−シクロヘキシルアミノメチル基等が挙げられる。四級アンモニウム基としては、トリメチルアンモニウムプロピル基、トリメチルアンモニウムベンジル基、テトラデシルジメチルアンモニウムプロピル基、オクタデシルジメチルアンモニウムプロピル基等が挙げられる。エポキシ基含有基としては、グリシドキシ基、3−グリシドキシプロピル基、8−(グリシドキシ)−n−オクチル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等が挙げられる。メルカプト基含有基としては、3−メルカプトプロピル基、2−メルカプトエチル基、2−メルカプトプロピル基、6−メルカプトヘキシル基等が挙げられる。シランカップリング剤は、これらの基が反応性官能基としてケイ素原子に結合しており、これ以外に加水分解性基としてアルコキシ基、アセトキシ基、もしくはハロゲン基がケイ素原子に結合しているものを用いることができる。シランカップリング剤としては、中でも、アミノ基含有シランカップリング剤を用いることが好ましい。
(1−1)ニオブ酸ナノシートコロイド溶液の調製
K.Nakagawa et al., Chem. Commun., 2014, vol.50, p.13702-13705に記載の方法に従って、ニオブ酸ナノシートコロイド溶液を調製した。具体的には、ペンタエトキシニオブ(高純度化学研究所社製)1.989gとトリエタノールアミン(和光純薬工業社製)3.735gとを混合し、さらにそこに25〜28質量%濃度のアンモニア水を25mL加えた。得られた溶液を100mL容のオートクレーブに移し、24時間、160℃で反応させ、その後常温まで冷却した。得られた反応溶液は粘性が高いゾルの状態であったため、これに超純水製造装置(「milli−Q(登録商標) Direct」Merck社製)にて精製して得た超純水を50mL加えて希釈し、粘性を下げ、ニオブ酸(Nb3O8 -)ナノシートを含有する粗コロイド懸濁液を得た。当該粗コロイド懸濁液には、反応時に生じた不溶性固体が含まれていたため、それを除去するために、遠心分離を不溶性固体がなくなるまで繰り返し行い、上澄み液をニオブ酸ナノシートコロイド溶液として得た。このようにして得られたニオブ酸ナノシートコロイド溶液の濃度を、超純水を加えて10g/Lに調製した。
混合ニトロセルロースの支持基材(孔径0.05μm、ミリポア社製)を、2.5容量%濃度の3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製)水溶液に15分間以上浸し、次いで超純水に浸した後、吸引ろ過器にセットして超純水を流して洗浄することで、シランカップリング剤で処理した混合ニトロセルロース製の支持基材を得た。この支持基材上に、ニオブ酸ナノシートコロイド溶液を供給して吸引ろ過し、支持基材上にニオブ酸ナノシート積層体を形成した。なお、全てのニオブ酸ナノシートコロイド溶液のろ過が終了後も吸引ろ過(減圧ろ過)を継続し、ニオブ酸ナノシート積層体に含まれる水分を除去し、層間の密着性を高めた。支持基材上に形成されたニオブ酸ナノシート積層体は、ナノシートの表面にトリエタノールアミンが配位し、カチオンとしてアンモニウムイオンまたはこれが乾燥過程で揮発してプロトンが配されていると考えられる。支持基材上に供給するニオブ酸ナノシートコロイド溶液の濃度と量は、形成するニオブ酸ナノシート積層体の厚みに応じて適宜調整し、例えば1μmの厚みのニオブ酸ナノシート積層体を形成する場合は、上記(1−1)項で得られたニオブ酸ナノシートコロイド溶液0.337mLを超純水50mLに混合した溶液を供給した。
ニオブ酸ナノシートコロイド溶液にポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDDA、シグマアルドリッチ社製)溶液を加えて混合し、これを、吸引ろ過器にセットした混合ニトロセルロースの支持基材(孔径0.05μm、ミリポア社製)上に供給し、吸引ろ過を行うことで、支持基材上に、PDDAを含むニオブ酸ナノシート積層体を形成した。なお、全てのPDDAとニオブ酸ナノシートコロイドの混合溶液のろ過が終了後も吸引ろ過(減圧ろ過)を2時間継続し、積層体に含まれる水分を除去し、層間の密着性を高めた。支持基材上に形成されたニオブ酸ナノシート積層体は、ナノシートの表面にトリエタノールアミンが配位し、カチオンとして主にPDDA(部分的にアンモニウムイオンまたはこれらが乾燥過程で揮発してプロトンに代わる)が配されていると考えられる。ニオブ酸ナノシートコロイド溶液に加えるPDDA溶液の濃度と量、および支持基材上に供給するニオブ酸ナノシートコロイド溶液の濃度と量は、形成するニオブ酸ナノシート積層体の厚みに応じて適宜調整した。例えば1μmの厚みのPDDAを含むニオブ酸ナノシート積層体を形成する場合は、上記(1−1)項で得られたニオブ酸ナノシートコロイド溶液0.337mLを超純水50mLに混合した溶液に、2g/Lの濃度のPDDA溶液0.68mLを滴下して、得られた混合溶液を支持基材上に供給した。
上記(1−2)項で作製した分離膜Aを吸引ろ過器に固定したまま、アルミニウムイオンを含む硝酸溶液(Al含有硝酸溶液)50mLを吸引ろ過器に注ぎ、まず約25mLのAl含有硝酸溶液を吸引し、残りの25mLのAl含有硝酸溶液はフィルターホルダに残したまま2時間静置した。静置後、残りのAl含有硝酸溶液を吸引ろ過し、2時間真空引きを行った。真空引き後、100mLの超純水を吸引ろ過し、分離膜の洗浄を行った。なお、全ての超純水のろ過が終了後も吸引ろ過(減圧ろ過)を2時間継続し、積層体に含まれる水分を除去し、層間の密着性を高めた。
作製した分離膜を、S.Kawada et al., Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects, 2014, vol.451, p.33-37に記載された方法に準じて、クロスフロー式の透水装置により評価した。
超純水製造装置(「milli−Q(登録商標) Direct」Merck社製)にて精製して得た超純水を、一次側(供給側)圧力0.4MPaの条件で透水装置に供給し、単位時間当たりの透水量を有効膜面積および圧力で除することにより、透水速度を求めた。
上記(2−1)項で使用した同じ透水装置を用いて、分離膜の分離性能を調べた。分子量1kDa、2kDa、6kDa、14kDaまたは20kDaのポリエチレングリコール1gを、超純水製造装置(「milli−Q(登録商標) Direct」Merck社製)にて精製して得た超純水1Lに溶かし、PEG溶液を調製した。6kDaと20kDaのポリエチレングリコールはシグマアルドリッチ社製のものを使用し、それ以外は和光純薬工業社製のものを使用した。各PEG溶液にはさらにNaClを50mg加えた。各PEG溶液を、一次側(供給側)圧力0.4MPaの条件で透水装置に供給し、膜透過液の電気伝導率を測定し、電気伝導率の値が安定したところで(すなわち膜内へのPEG溶液の置換が完了したと判断されたところで)、膜透過液を1mL以上採取した。採取した膜透過液を超純水で20倍に希釈し、全有機炭素分析装置(島津製作所製、TOC−VCSH)によりTOC測定を行い、膜透過液に含まれるPEGの濃度を求め、次式から阻止率を算出した。
阻止率(%)=(1−[膜透過液のPEG溶液のPEG濃度(g/L)]/[供給側のPEG溶液のPEG濃度(g/L)])×100
(3−1)金属酸化物ナノシート積層体の厚みの影響
上記(1−2)項に記載の方法に従って作製したニオブ酸ナノシート積層体を有する分離膜Aについて、ニオブ酸ナノシート積層体の厚みを20nm、50nm、100nmと変えた分離膜を作製し、各分離膜の透水試験と分離試験を行った。透水試験の結果を図6に示し、分離試験の結果を図7に示す。ニオブ酸ナノシート積層体の厚みが厚くなるほど、透水速度は低下する結果となったが、ニオブ酸ナノシート積層体の厚みが20nmと薄くても、それより厚いニオブ酸ナノシート積層体を有する分離膜と比べて、分離性能に大きな差が出なかった。分子量6kDa以上のポリエチレングリコールでは約90%の阻止率を示した。分離膜Aは、ニオブ酸ナノシートどうしの密着性が高く形成されているため、少ない積層数でも所望の大きさの細孔が堅固な構造で形成され、厚みが薄くても十分な分画分離性能を示したものと考えられる。
上記(1−2)項に記載の方法に従って作製した厚さ20nmのニオブ酸ナノシート積層体を有する分離膜Aと、上記(1−3)項に記載の方法に従って作製した厚さ20nmのPDDA改質ニオブ酸ナノシート積層体を有する分離膜Bについて、透水試験と分離試験を行った。透水試験の結果を図8に示し、分離試験の結果を図9に示す。分離膜Aでは、ニオブ酸ナノシートの層間にトリエタノールアミンとアンモニウムイオンが配されており、層間距離が狭く形成されていたため、透水試験における透水速度は14.1L/m2・h・barと低く、分離性能試験においても、1kDaや2kDaの小さい分子量のポリエチレングリコールでもより高い阻止率で阻止する結果となった。分子量6kDa以上のポリエチレングリコールでは約90%の阻止率を示した。分離膜Bは、ニオブ酸ナノシートの層間にトリエタノールアミンとカチオン性ポリマーであるポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)が配されており、下記に示すように、層間距離が分離膜Aよりも広く形成されていたため、透水試験における透水速度は55.5L/m2・h・barと高く、分離性能試験においても、1kDaや2kDaの低分子量のポリエチレングリコールで低い阻止率を示した。なお、分子量6kDa以上のポリエチレングリコールでは、分離膜Aと同程度の約90%の阻止率を示した。分離膜Aと分離膜Bのいずれも、ニオブ酸ナノシート積層体が支持基材から剥がれることなく、安定した膜性能評価が行えた。
上記(1−2)項に記載の方法に従って作製した厚さ500nmのニオブ酸ナノシート積層体を有する分離膜Aと、上記(1−3)項に記載の方法に従って作製した厚さ500nmのPDDA改質ニオブ酸ナノシート積層体を有する分離膜Bと、(1−4)項に記載の方法に従って作製した厚さ500nmのアルミニウムイオン改質ニオブ酸ナノシート積層体を有する分離膜CのX線回折測定結果を図10に示す。分離膜Aでは2θ=8.76°に回折ピークが観測され、これはニオブ酸ナノシート積層体の層間距離が1.01nmであったことを示している。一方、分離膜Bでは2θ=4.30°に回折ピークが観測され、分離膜Cでは2θ=7.46°に回折ピークが観測され、各々ニオブ酸ナノシート積層体の層間距離が2.05nmと1.19nmであったことを示している。ニオブ酸ナノシート積層体にカチオンとしてPDDAまたはアルミニウムイオンを配することにより、ニオブ酸ナノシート積層体の層間距離が広がったことが確認された。
上記(1−1)〜(1−2)と同様の条件により、3−アミノプロピルトリエトキシシランで表面処理された混合ニトロセルロース支持基材上に、厚さ90nmのニオブ酸ナノシート積層体を形成した。
比較のために、上記混合ニトロセルロース支持基板上に、同じく厚さ90nmの酸化グラフェン膜を形成した。具体的には、先ず、D.C.Marcano et al.,ACS Nano,2010,vol.4,p.4806-4814に記載の方法に従って、酸化グラフェンコロイド溶液を調製した。500mL容丸底フラスコ中、グラファイト粉末(アルドリッチ社製)3gを硫酸360mLとリン酸40mLで調製した溶液に分散させた後に、過マンガン酸カリウム18.0gを加えた。混合液を50℃で12時間撹拌した後に、室温まで冷却した。氷400mLを入れた1L容ビーカーに混合液を注いだ後、30質量%過酸化水素水3mLを注ぎ、30分間撹拌した。混合物を3500rpmで5分間遠心分離し、沈殿物を除去した。得られた懸濁液を6000rpmで20分間遠心分離に付し、上澄み液をゆっくり取り除いた。沈殿物を、200mLの水、200mLの30%塩酸、200mLのエタノールで2回ずつ連続的に洗浄した。沈殿物の上部の粘性液を回収し、これを超純水製造装置(「milli−Q(登録商標) Direct」Merck社製)にて精製して得た超純水に分散させたものを酸化グラフェン分散溶液とした。酸化グラフェン分散液を超遠心分離に付し、酸化グラフェンを沈殿させた。沈殿物を回収し、60℃にて乾燥させ、酸化グラフェン粉末を得た。アセトンを溶剤としたソックスレー抽出を60℃で行うことにより、酸化グラフェン粉末にわずかに残っている溶媒を取り除いた。酸化グラフェン粉末0.5gを超純水に加え、10g/Lの酸化グラフェンコロイド溶液を調製した。別途、混合ニトロセルロース支持基材(孔径0.05μm,ミリポア社製)を2.5容量%の3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製)水溶液に15分間以上浸し、次いで超純水に浸した後、吸引ろ過器にセットして上から超純水を流して洗浄することでシランカップリング剤で処理した混合ニトロセルロース支持基材を得た。この支持基材の上に、上記酸化グラフェンナノシートコロイド溶液を吸引ろ過することで、酸化グラフェンナノシート積層体を支持基材上に作製した。また、酸化グラフェンナノシートコロイド溶液を全て吸引ろ過した後も、そのまま吸引ろ過を続け、酸化グラフェンナノシートを十分に減圧乾燥させた。このように減圧乾燥させることで、酸化グラフェンナノシート積層体中のナノシート間の水分を除去しシート同士の密着性を高めた。なお、形成された酸化グラフェンナノシート積層体の厚みは酸化グラフェンナノシートコロイド溶液の濃度や量に依存し、例えば1μmの積層体を作る場合には1g/Lの酸化グラフェンナノシートコロイド溶液を7.04mL採って超純水で希釈し全量50mLにした溶液を吸引ろ過した。供給する溶液の濃度や量を適宜調節することで積層体の厚みを変化させた。
上記分離膜を、それぞれ水に浸漬し、72時間後、外観を観察し、且つ上記(3−3)と同様の条件でX線回折測定を行い、層間距離を求めた。浸漬前後の各分離膜の外観写真を図11に、X線回折測定結果を図12に示す。図11,12の通り、酸化グラフェン分離膜は、水への浸漬により層間距離が2倍に広がり、その結果一部が支持基板から分離してしまった。それに対して本発明に係る分離膜は、水へ浸漬しても層間距離も外観もほとんど変化しなかった。このように本発明に係る分離膜は、構造安定性に優れていることが証明された。
上記(1−1)〜(1−2)において、ニオブ酸ナノシートコロイド溶液の濃度と吸引ろ過時間を調整し、3−アミノプロピルトリエトキシシランで表面処理された混合ニトロセルロース支持基材上に、厚さ20nm、50nmまたは70nmのニオブ酸ナノシート積層体を形成した。上記(3−1)と同様に、得られた各分離膜の透水性と分離性能を試験した。ニオブ酸ナノシート積層体の膜厚と、透水速度およびPEG阻止率との関係を図13(1)に、ニオブ酸ナノシート積層体の膜厚とPEGの分子量とPEG阻止率との関係を図13(2)に示す。
図13に示す結果の通り、ニオブ酸ナノシート積層体の膜厚が薄いほど透水性が高かった。また、一般的な分離膜では膜厚が厚いほど分離性能が優れているといえるが、本発明の分離膜の場合、ニオブ酸ナノシート積層体の膜厚が薄いほど分離性能はかえって優れていることが示された。
上記(1−1)〜(1−2)において、シランカップリング剤で処理した混合ニトロセルロース製の支持基材上でニオブ酸ナノシートコロイド溶液を供給して吸引ろ過し、支持基材上にニオブ酸ナノシート積層体を形成した後、更なる吸引ろ過を行わないか、または更なる吸引ろ過の時間を10分間、30分間または2時間とした以外は同様にして、分離膜を作製した。
得られた各分離膜につき上記(3−3)と同様の条件でX線回折測定を行い、回折角度2θを求めた。また、上記(3−1)と同様に、得られた各分離膜の透水性と分離性能を試験した。各ニオブ酸ナノシート積層体の回折角度2θを図14(1)に、透水速度とPEG阻止率を図14(2)に示す。図14(1)に示す結果の通り、追加ろ過時間が長いほど回折角度2θが大きくなり、ニオブ酸ナノシート間の距離が小さくなっていることが分かった。また、図14(2)に示す結果の通り、追加ろ過時間が長いほど透水速度が小さくなる傾向があるのに対して、溶質の阻止率は高くなった。かかる結果は、追加ろ過により水が除去され、ニオブ酸ナノシートの表面とトリエタノールアミンとの配位結合や水素結合が有効に形成されることにより、阻止率が向上したことを示す。このように、本発明の分離膜の作製時においてろ過を十分に行って金属酸化物ナノシートから水を除去することは、高性能な分離膜の作製に重要であることが明らかとなった。
塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、アシッドレッド265またはエチレンブルー(EB)を0.5〜1.0質量%の割合で溶解し、そのpHを、塩酸、硫酸または水酸化ナトリウムにより7に調整した。また、上記(1−1)〜(1−2)と同様にして、厚さ20μmのニオブ酸ナノシート積層体を有する分離膜を作製した。上記(2)と同様にして、上記溶液(40mL)を透過させ、透過液における各溶質の濃度を紫外可視近赤外分光光度計(「V−650」Jasco社製)およびコンパクトナトリウムイオンメータ(「LAQUAtwin B−722」堀場製作所社製)により測定し、各溶質の阻止率を算出した。結果を図15(1)に示す。
また、上記塩化ナトリウム溶液のpHを3〜10に調整し、同様に塩化ナトリウムの阻止率を算出した。更に、pHを3〜10に調整した水溶液中で、ゼータ電位・粒径・分子量測定システム(「ELSZ1000」大塚電子社製)によりニオブ酸ナノシートのゼータ電位を測定した。結果を図15(2)に示す。
図15(1)に示す結果の通り、特に比較的大きな硫酸ナトリウム、アシッドレッド265およびエチレンブルーに対する本発明の分離膜の阻止率は高かった。両イオンが比較的小さい塩化ナトリウムに対する阻止率は比較的低かったが、pHが高くなるにつれ阻止率は向上した。その理由としては、ゼータ電位の測定結果の通り、低pHの場合にはM−OH+H+→M+OH2 +の反応によりアルカノールアミンと反応する表面水酸基が失われるのに対して、高pHの場合にはM−OH+OH-→M−O-+H2Oの反応によりナノシート表面にマイナス電位が生じ、アニオンが静電反発により除去され、且つカチオンが吸着されたことによると考えられる。
上記(1−2)項に記載の方法に準じて、ニオブ酸ナノシート積層体の厚みが20nm、50nmおよび100nmの本発明に係る分離膜を作製した。
別途、炭酸カリウムと酸化ニオブを1.1:3のモル比でメノウ乳鉢を用いて粉砕混合し、600℃で2時間、900℃で3時間焼成することによりKNb3O8の粉末を得た。当該KNb3O8粉末を2M塩酸に60℃で1週間浸漬することによりカチオン交換し、150℃で3時間焼成することによりHNb3O8の粉末を得た。当該粉末をテトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に添加して常温で3週間振とうすることにより、層状のHNb3O8粉末を剥離してHNb3O8単層のコロイド液を得た。当該コロイド液を用いた以外は上記(1−2)項と同様にして、ニオブ酸ナノシート積層体を有する分離膜を作製した。但し、当該分離膜の積層体は、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAOH)を含む。以下、当該分離膜を「TBAOH−分離膜」と略記する。
ニオブ酸ナノシート積層体の厚みが20nmの本発明に係る分離膜とTBAOH−分離膜の透水速度を測定した。結果を図16(1)に示す。また、様々な分子質量のPEGに対する上記分離膜の阻止率を測定した。結果を図16(2)に示す。図16に示す結果の通り、ニオブ酸ナノシート積層体中にアルカノールアミンを含む本発明に係る分離膜は、第四級アンモニウム塩を含む分離膜に比べ、透水性と阻止性能の両方に優れていた。その理由としては、本発明に係る分離膜では、アルカノールアミンによりニオブ酸ナノシート間の密着性が顕著に向上することにより、分離性能が改善されていると考えられる。
上記(1−1)〜(1−2)において、トリエタノールアミンをトリイソプロパノールアミンに変更した以外は同様にして分離膜を作製した。
トリエタノールアミン含む分離膜とトリイソプロパノールアミンを含む分離膜について、透水速度、硫酸ナトリウムの阻止率、およびPEGの阻止率を測定した。各結果を図17(1)〜(3)に示す。図17に示す結果の通り、ニオブ酸ナノシート積層体にトリイソプロパノールアミンを含む分離膜は、トリエタノールアミンを含む分離膜と同等の透水性能と分離性能を示すことが明らかとなった。
上記(1−2)項に記載の方法に準じて、ニオブ酸ナノシート積層体の厚みが20nmの本発明に係る分離膜を作製した。
酸化グラフェン(GO)に超純水を加え、超音波処理を10分間行うことで、100mg/LのGO懸濁液を調製した。膜の厚みを制御するため、当該懸濁液を希釈して、濃度を3.0〜22.5μg/mLに調整した。希釈したGO懸濁液を、ポリアクリルニトリルナノファイバーマット上に30mLずつ吸引ろ過を行った後、空気中で乾燥して、厚さ128nmのGO層を含む分離膜を得た。以下、当該分離膜を「G1」という。
また、50mLの水に適量のGOを加え、超音波処理を10分間行ってGO懸濁液を得た。膜の厚みを制御するため、得られた懸濁液を希釈して濃度を0.36μg/mLから0.864μg/mLへ調整した。希釈したGO懸濁液50mLを、200nmの孔径の陽極酸化アルミナ膜上に吸引ろ過を行った後、40℃で24時間乾燥して、厚さ53μmのGO層を含む分離膜を得た。以下、当該分離膜を「G2」という。
塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを0.5〜1.0質量%の割合で溶解し、そのpHを、塩酸、硫酸または水酸化ナトリウムにより7に調整した。得られた溶液を用いて、上記分離膜の透水速度と溶質阻止率を測定した。結果を図18に示す。
図18に示す結果の通り、本発明に係る分離膜は、酸化グラフェン分離膜に比べて透水性が明らかに優れている。本発明に係る分離膜の透水性能が優れているのは、酸化グラフェンシートは平面方向長さで1μm以上と比較的大きいのに対して、本発明に係る分離膜の金属酸化物ナノシートは平面方向長さで50〜200nm程度と比較的小さいため、分離膜表面での開孔率が高く、また膜構造の空隙率が高いことが挙げられる。また酸化グラフェンシート間の間隔は比較的広いので、酸化グラフェン分離膜では液体が酸化グラフェンシート間を透過するのに対して、金属酸化物ナノシートはシート間の密着性が高いため、図2の通り、液体がシート積層体の隙間を透過するため、透水経路が短くなる。上記のことが、本発明分離膜の透水性能が高い理由として考えられる。また、本発明分離膜の分離性能は、シート積層体厚さが薄いにもかかわらず、酸化グラフェン分離膜と同等またはより優れていた。
Claims (21)
- 支持基材と金属酸化物ナノシート積層体とアルカノールアミンとを有し、
前記金属酸化物ナノシート積層体は前記支持基材上に金属酸化物ナノシートが積層したものであり、少なくとも前記金属酸化物ナノシート間に前記アルカノールアミンが存在していることを特徴とする分離膜。 - 前記支持基材が、少なくとも表面に水酸基を有し、且つ、当該水酸基を介してイオン性基を有するシランカップリング剤が結合しているものである請求項1に記載の分離膜。
- 前記アルカノールアミンがトリアルカノールアミンである請求項1または2に記載の分離膜。
- 前記金属酸化物ナノシートが、ニオブ酸化物、チタン酸化物、マンガン酸化物、ジルコニウム酸化物、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、コバルト酸化物、鉄酸化物、タンタル酸化物、亜鉛酸化物、ゲルマニウム酸化物、ルテニウム酸化物、および複合金属酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物から構成される請求項1〜3のいずれか一項に記載の分離膜。
- 前記支持基材が、有機材料または無機材料から構成される請求項1〜4のいずれか一項に記載の分離膜。
- 前記支持基材がセルロースから構成される請求項1〜5のいずれか一項に記載の分離膜。
- 前記支持基材が、フィルターろ材、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、または逆浸透膜である請求項1〜6のいずれか一項に記載の分離膜。
- 前記金属酸化物ナノシート積層体が、さらにカチオンを有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の分離膜。
- 前記カチオンが、プロトン、金属イオン、アンモニウムイオン、およびカチオン性ポリマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載の分離膜。
- (1)金属アルコキシド化合物をアルカノールアミンの存在下で反応させて、金属酸化物ナノシートを生成させ、金属酸化物ナノシート分散液を得る工程と、
(2)前記金属酸化物ナノシート分散液を支持基材でろ過し、金属酸化物ナノシートを支持基材に積層させて、支持基材と金属酸化物ナノシート積層体とアルカノールアミンとを有する分離膜を形成する工程とを備えることを特徴とする分離膜の製造方法。 - さらに、(3)前記支持基材と金属酸化物ナノシート積層体とアルカノールアミンとを有する分離膜、およびカチオンとを接触させて、前記金属酸化物ナノシート積層体の層間距離を変える工程を備える請求項10に記載の分離膜の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の分離膜に被処理水を透過させる工程を含むことを特徴とする水処理方法。
- 支持基材と金属酸化物ナノシート積層体とアルカノールアミンとを有し、前記金属酸化物ナノシート積層体は前記支持基材上に金属酸化物ナノシートが積層したものであり、少なくとも前記金属酸化物ナノシート間に前記アルカノールアミンが存在している膜の分離膜としての使用。
- 前記支持基材が、少なくとも表面に水酸基を有し、且つ、当該水酸基を介してイオン性基を有するシランカップリング剤が結合しているものである請求項13に記載の使用。
- 前記アルカノールアミンがトリアルカノールアミンである請求項13または14に記載の使用。
- 前記金属酸化物ナノシートが、ニオブ酸化物、チタン酸化物、マンガン酸化物、ジルコニウム酸化物、タングステン酸化物、モリブデン酸化物、コバルト酸化物、鉄酸化物、タンタル酸化物、亜鉛酸化物、ゲルマニウム酸化物、ルテニウム酸化物、および複合金属酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物から構成される請求項13〜15のいずれか一項に記載の使用。
- 前記支持基材が、有機材料または無機材料から構成される請求項13〜16のいずれか一項に記載の使用。
- 前記支持基材がセルロースから構成される請求項13〜17のいずれか一項に記載の使用。
- 前記支持基材が、フィルターろ材、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、または逆浸透膜である請求項13〜18のいずれか一項に記載の使用。
- 前記金属酸化物ナノシート積層体が、さらにカチオンを有する請求項13〜19のいずれか一項に記載の使用。
- 前記カチオンが、プロトン、金属イオン、アンモニウムイオン、およびカチオン性ポリマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項20に記載の使用。
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