JP6963033B2 - 細胞画像処理装置、細胞画像処理方法および細胞画像処理プログラム - Google Patents

Description

本発明は、培養画像処理装置、細胞画像処理方法および細胞画像処理プログラムに関するものである。

細胞の増殖の経時変化を定量的に観察するために、細胞の画像を解析して細胞の状況変化を表すパラメータを取得する技術が知られている（例えば、特許文献１参照。）。具体的には、画像内の細胞の占める面積の割合であるコンフルエント率に基づいて継代のタイミングを判定している。

また、コロニーの形成など細胞の凝集と細胞分裂との関係を観察するために、細胞の凝集を表すパラメータとして注目画素と周辺画素の位置関係の統計量を取得する技術が知られている（例えば、特許文献２参照。）。

ＷＯ２０１６／０９８２７１号公報 特開２００９−２２９２７４号公報

細胞の培養を精度よく管理するには、細胞が増殖しているか否かを精度よく検出する必要がある。しかしながら、特許文献１のようなコンフルエント率や特許文献２のような注目細胞周辺での細胞の凝集などのパラメータを取得しただけでは細胞の増殖を精度よく検出することはできないという不都合がある。

本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、細胞の増殖を精度よく検出して、細胞の培養を精度よく管理することができる細胞画像処理装置、細胞画像処理方法および細胞画像処理プログラムを提供することを目的としている。

本発明の一態様は、時間間隔をあけて細胞を撮影することにより取得された複数枚の画像が入力され、入力された前記画像の内のいずれか２枚の評価画像を処理して該評価画像の所定の計数領域内の単位時間当たりの前記細胞の量の変化を表す細胞数変化率を算出する増殖パラメータ算出部と、各前記評価画像の前記計数領域の単位時間当たりの前記細胞の流入量を表す細胞流入率および流出量を表す細胞流出率を算出する遊走パラメータ算出部と、過去の細胞増殖率、前記細胞流入率および前記細胞流出率に基づいて、誤差評価の指標が所定の許容誤差以下となるように前記計数領域の大きさを算出し、前記計数領域を算出した大きさに設定する領域サイズ算出部と、該領域サイズ算出部により設定された前記計数領域について算出された前記細胞数変化率、前記細胞流入率および前記細胞流出率に基づいて、前記細胞数変化率から前記細胞流入率を減算し、前記細胞流出率を加算することにより、細胞増殖率を算出する増殖率算出部とを備える細胞画像処理装置である。

本態様によれば、時間間隔をあけて撮影することにより取得された複数枚の画像が入力されると、入力された画像の内のいずれか２枚の評価画像が増殖パラメータ算出部により処理されて計数領域内の増殖パラメータが算出される。また、評価画像が遊走パラメータ算出部により処理されて計数領域の遊走パラメータが算出される。

そして、領域サイズ算出部により、過去の増殖パラメータおよび過去の遊走パラメータに基づいて計数領域の大きさが算出され、算出された大きさの計数領域について算出された増殖パラメータおよび遊走パラメータに基づいて増殖率算出部により処理されて細胞増殖率が算出される。
細胞増殖率が、時間間隔をあけた２枚の画像における細胞量の変化を示す増殖パラメータのみならず、細胞流入量および細胞流出量を表す遊走パラメータをも考慮して求められるので、細胞分裂による細胞の増殖の度合をより精度よく検出して、細胞培養を精度よく管理することができる。

この場合において、増殖パラメータは計数領域の面積に比例し、遊走パラメータは計数領域の周囲長に比例するので、計数領域が小さくなればなるほど、細胞増殖率の算出における遊走パラメータの影響が大きくなり誤差が大きくなる。したがって、適正な大きさに設定された計数領域について算出された増殖パラメータおよび遊走パラメータに基づいて細胞増殖率を算出することにより、細胞増殖率を精度よく算出することができる。

ここで、評価画像と増殖測定画像とは、同じ画像を用いてもよいし異なる画像を用いてもよい。すなわち、２枚の評価画像の時間間隔と２枚の増殖測定画像の時間間隔は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。例えば、評価画像については隣接する全ての２枚の画像を用いてもよいし、周期的にあるいは非周期的に選択した２枚の画像を用いてもよい。

上記態様においては、前記増殖パラメータ算出部が、単位時間当たりに前記計数領域内において増加した細胞数を前記増殖パラメータとして算出してもよい。
このようにすることで、時間間隔をあけて取得された２枚の評価画像を処理してそれぞれの計数領域内に存在する細胞数を計数してその差分を時間間隔で除算することにより簡易に増殖パラメータを算出することができる。
また、上記態様においては、前記増殖パラメータ算出部が、前記計数領域の面積に対する細胞領域の面積の割合であるコンフルエンシーの変化率を増殖パラメータとして算出してもよい。

また、上記態様においては、前記遊走パラメータ算出部が、単位時間当たりに前記計数領域の外縁から流入した細胞数と流出した細胞数との差を前記遊走パラメータとして算出してもよい。
このようにすることで、時間間隔をあけて取得された２枚の評価画像を処理してそれぞれの計数領域の外縁を超えて流入した細胞数および流出した細胞数を計数してその差分を時間間隔で除算することにより簡易に遊走パラメータを算出することができる。
また、上記態様においては、前記遊走パラメータ算出部が、前記計数領域を撮影した２枚の画像の射影変換の変換パラメータである画像変形量を遊走パラメータとして算出してもよい。
また、上記態様においては、前記遊走パラメータ算出部が、画像処理で検出したいくつかの注目細胞の移動量の平均値である注目細胞移動量を遊走パラメータとしてもよい。
また、上記態様においては、前記遊走パラメータ算出部が、前記細胞の長さを前記細胞の速度で除算した時間以下の間隔をあけて撮影した、前記画像を用いてもよい。

また、上記態様においては、前記領域サイズ算出部が、過去の前記増殖パラメータに対する過去の前記遊走パラメータの比率と所定の許容誤差とを比較して、前記計数領域の大きさの下限を算出してもよい。
このようにすることで、増殖率算出部により、許容誤差以下の精度の高い細胞増殖率を算出することができる。

また、上記態様においては、前記計数領域が長方形であってもよい。
このようにすることで、増殖パラメータ、遊走パラメータおよび細胞増殖率を簡易に算出することができる。

また、上記態様においては、前記計数領域内における単位時間当たりの前記細胞の死亡数である細胞死亡率を算出する細胞死亡率算出部を備えていてもよい。
また、上記態様においては、前記細胞死亡率は、領域内に単位時間当たりに浮遊した細胞数を計数することにより検出されてもよい。
また、上記態様においては、前記増殖パラメータ、前記遊走パラメータ、前記細胞増殖率および前記細胞死亡率のうちの少なくとも１つをグラフとして出力してもよい。
また、上記態様においては、前記増殖パラメータ、前記遊走パラメータ、前記細胞増殖率および前記細胞死亡率のうちの少なくとも１つを時間変化を表すグラフとして出力してもよい。

また、本発明の他の態様は、時間間隔をあけて細胞を撮影することにより取得された複数枚の画像が入力され、入力された前記画像の内のいずれか２枚の前記画像を処理して該画像の所定の計数領域内の単位時間当たりの前記細胞の量の変化を表す増殖パラメータを算出する増殖パラメータ算出ステップと、各前記画像の前記計数領域の単位時間当たりの前記細胞の流入量または流出量を表す遊走パラメータを算出する遊走パラメータ算出ステップと、過去の前記増殖パラメータおよび過去の前記遊走パラメータに基づいて、前記計数領域の大きさを算出する領域サイズ算出ステップと、該領域サイズ算出ステップにより算出された大きさの前記計数領域について算出された前記増殖パラメータおよび前記遊走パラメータに基づいて、細胞増殖率を算出する増殖率算出ステップとを含む細胞画像処理方法である。

また、本発明の他の態様は、時間間隔をあけて細胞を撮影することにより取得された複数枚の画像が入力され、入力された前記画像の内のいずれか２枚の前記画像を処理して該画像の所定の計数領域内の単位時間当たりの前記細胞の量の変化を表す増殖パラメータを算出する増殖パラメータ算出ステップと、各前記画像の前記計数領域の単位時間当たりの前記細胞の流入量または流出量を表す遊走パラメータを算出する遊走パラメータ算出ステップと、過去の前記増殖パラメータおよび過去の前記遊走パラメータに基づいて、前記計数領域の大きさを算出する領域サイズ算出ステップと、該領域サイズ算出ステップにより算出された大きさの前記計数領域について算出された前記増殖パラメータおよび前記遊走パラメータに基づいて、細胞増殖率を算出する増殖率算出ステップとをコンピュータに実行させる細胞画像処理プログラムである。

本発明によれば、細胞の増殖を精度よく検出して、細胞の培養を精度よく管理することができるという効果を奏する。

本発明の一実施形態に係る細胞画像処理装置を示す全体構成図である。 図１の細胞画像処理装置における細胞数変化率算出部の作用を説明する図である。 図１の細胞画像処理装置における細胞流入率算出部および細胞流出率算出部の作用を説明する図である。 図１の細胞画像処理装置における増殖率算出部の作用を説明する図である。 図３の細胞流入あるいは細胞流出を判定する閾値の例を説明する図である。 図１の細胞画像処理装置を用いた細胞が像処理方法を説明するフローチャートである。 図１の細胞画像処理装置の変形例による処理を説明する図である。 図７の細胞画像処理装置を示す全体構成図である。 図７の細胞画像処理装置を用いた細胞が像処理方法を説明するフローチャートである。

本発明の一実施形態に係る細胞画像処理装置１、細胞画像処理方法および細胞画像処理プログラムについて、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る細胞画像処理装置１は、図１に示されるように、顕微鏡等の撮像部５０により時間間隔をあけた撮影により取得された複数枚の画像Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１が入力され、細胞Ｘの増殖率等の情報をモニタ等の表示部６０に向けて出力する装置である。

細胞画像処理装置１は、撮像部５０から入力されてきた画像Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１をその画像Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１を撮影した時刻情報と対応づけて逐次記憶するメモリ２と、メモリ２に記憶された画像を処理する処理部３とを備えている。
処理部３は、メモリ２に記憶されている画像Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１を処理して、画像（評価画像）Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１内の所定の計数領域Ｒ内における細胞数の単位時間当たりの変化率である細胞数変化率（増殖パラメータ）を算出する細胞数変化率算出部（増殖パラメータ算出部）４と、画像（評価画像）Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１内の計数領域Ｒ内への単位時間当たりの細胞Ｘの流入数である細胞流入率（遊走パラメータ）を算出する細胞流入率算出部（遊走パラメータ算出部）５と、画像（評価画像）Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１内の計数領域Ｒ内からの単位時間当たりの細胞Ｘの流出数である細胞流出率（遊走パラメータ）を算出する細胞流出率算出部（遊走パラメータ算出部）６と、算出された細胞数変化率、細胞流入率および細胞流出率から増殖測定画像内の計数領域Ｒにおける細胞増殖率を算出する増殖率算出部７とを備えている。
また、本実施形態に係る細胞画像処理装置１は、計数領域Ｒの大きさを設定する領域サイズ算出部８を備えている。

細胞数変化率算出部４は、図２に示されるように、第１時間Δｔ１だけ時間間隔をあけて取得された２枚の画像Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１内の計数領域Ｒにおける細胞数Ｎ_ｎ，Ｎ_ｎ＋１をそれぞれ計数し、各画像Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１において計数された細胞数Ｎ_ｎ，Ｎ_ｎ＋１の差分を第１時間Δｔ１で除算することにより、単位時間当たりの細胞数Ｎ_ｎ，Ｎ_ｎ＋１の変化率である細胞数変化率ΔＮ／Δｔを算出するようになっている。

細胞流入率算出部５は、図３に示されるように、第２時間Δｔ２だけ時間間隔をあけて取得された２枚の画像Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１に基づいて画像Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１内の計数領域Ｒに、隣接する領域から境界を横切って進入した細胞Ｘの流入数ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮｎ＋１}を計数し、計数された細胞Ｘの流入数ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮｎ＋１}を第２時間Δｔ２で除算することにより、単位時間当たりの細胞Ｘの流入数ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮ}である細胞流入率ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮ}／Δｔ２を算出するようになっている。

細胞流出率算出部６も、図３に示されるように、第２時間Δｔ２だけ時間間隔をあけて取得された２枚の画像Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１に基づいて画像Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１内の計数領域Ｒから隣接する領域に境界を横切って退出した細胞Ｘの流出数ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴｎ＋１}を計数し、計数された細胞Ｘの流出数ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴｎ＋１}を第２時間Δｔ２で除算することにより、単位時間当たりの細胞Ｘの流出数ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴ}である細胞流出率ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴ}／Δｔ２を算出するようになっている。

細胞Ｘの計数領域Ｒへの流入および計数領域Ｒからの流出を算出するための第２時間Δｔ２は、下式の条件式（１）を満たすことが好ましい。
Δｔ２≦Ｄ／Ｖ （１）
ここで、Ｄは細胞Ｘの長さ、Ｖは細胞Ｘの遊走速度である。

細胞Ｘの長さＤおよび遊走速度Ｖとしては過去の計数時の基準値に設定してもよいし、計数領域Ｒ内の平均値に設定してもよい。また、図５に示されるように、進入または退出を判定する長さの閾値Ｅを用いて、計数領域Ｒと隣接領域との境界から閾値Ｅだけ細胞Ｘが入ったら進入と判断し、境界から閾値Ｅだけ細胞Ｘが計数領域Ｒから隣接領域へ出たら退出と判断してもよい。

領域サイズ算出部８は、細胞Ｘ毎に算出された過去の細胞増殖率ΔＮ_{ＢＩＲＴＨ}／Δｔ、過去の細胞流入率ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮ}／Δｔおよび過去の細胞流出率ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴ}／Δｔを記憶するメモリ２に接続され、メモリ２に記憶されている過去の細胞増殖率ΔＮ_{ＢＩＲＴＨ}／Δｔ、細胞流入率ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮ}／Δｔおよび細胞流出率ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴ}／Δｔに基づいて、誤差評価の指標が所定の許容誤差Ｋａ以下となるように計数領域Ｒの大きさを決定するようになっている。

具体的には、以下の条件式が成立する。
ΔＮ_{ＢＩＲＴＨ}／Δｔ＝Ａ×Ｌ^２ （２）
（ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮ}−ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴ}）／Δｔ＝４×Ｌ×（Ｂ−Ｃ） （３）
Ｋ＝（（ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮ}−ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴ}）／Δｔ）／（ΔＮ_{ＢＩＲＴＨ}／Δｔ）
＝４（Ｂ−Ｃ）／Ａ×Ｌ （４）
ここで、
Ａは計数領域Ｒにおいて、単位面積当たり単位時間に発生する細胞数、
Ｂは計数領域Ｒの境界線において、単位長さ当たり単位時間に計数領域Ｒに進入する細胞数、
Ｃは計数領域Ｒの境界線において、単位長さ当たり単位時間に計数領域Ｒから退出する細胞数、
Ｌは正方形からなる計数領域Ｒの一辺の長さである。

領域サイズ算出部８は、計数の許容誤差をＫａとして、条件式（４）を変形して得られる下記の条件式（５）を用いて、計数領域Ｒの一辺の長さＬ（大きさ）を算出するようになっている。
Ｌ＝４（Ｂ−Ｃ）／Ａ×Ｋａ （５）

メモリ２には過去に算出され、あるいは細胞Ｘ毎に定められた過去の細胞増殖率ΔＮ_{ＢＩＲＴＨ}／Δｔを表す過去の細胞数Ａ，Ｂ，Ｃ、および計数の許容誤差Ｋａが記憶されている。
領域サイズ算出部８は、過去の細胞数Ａ，Ｂ，Ｃおよび許容誤差Ｋａをメモリ２から読み出し、読み出された細胞数Ａ，Ｂ，Ｃおよび許容誤差Ｋａを用いて条件式（５）を用いて計数領域Ｒの一辺の長さを算出するようになっている。

増殖率算出部７は、図４に示されるように、計数領域Ｒにおける単位時間当たりの細胞分裂数である細胞増殖率ΔＮ_{ＢＩＲＴＨ}／Δｔを算出するようになっている。具体的には、下式（６）により細胞数変化率ΔＮ／Δｔから細胞流入率ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮ}／Δｔを減算し、細胞流出率ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴ}／Δｔを加算することにより、細胞増殖率ΔＮ_{ＢＩＲＴＨ}／Δｔを算出するようになっている。
ΔＮ_{ＢＩＲＴＨ}／Δｔ＝ΔＮ／Δｔ−ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮ}／Δｔ＋ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴ}／Δｔ （６）

このように構成された本実施形態に係る細胞画像処理装置１を用いた細胞画像処理方法について以下に説明する。
ここでは、本実施形態に係る細胞画像処理方法を、
Δｔ１＝Δｔ２＝Δｔ
として説明する。

まず、図６に示されるように、計数の開始時刻ｔ１、終了時刻ｔ_ｍおよび計数の時間間隔Δｔが設定される（ステップＳ１）。
次に、メモリ２から細胞数Ａ，Ｂ，Ｃおよび許容誤差Ｋａが読み出される（ステップＳ２）。そして、読み出された細胞数Ａ，Ｂ，Ｃおよび許容誤差Ｋａを用いて計数領域Ｒの一辺の長さＬが算出される（領域サイズ算出ステップＳ３）。

次に、カウンタｎ＝１が設定され（ステップＳ４）、時刻ｔ_ｎにおいて取得された画像Ｐ_ｎが細胞数変化率算出部４において処理されて、一辺の長さＬの正方形の計数領域Ｒ内の細胞数Ｎ_ｎが計数される（増殖パラメータ算出ステップＳ５）。さらに、時刻ｔ_ｎから時間間隔Δｔだけ経過した時刻ｔ_ｎ＋１において取得された画像Ｐ_ｎ＋１が細胞数変化率算出部４において処理されて計数領域Ｒ内の細胞数Ｎ_ｎ＋１が計数される（増殖パラメータ算出ステップＳ６）。

次いで、画像Ｐ_ｎと画像Ｐ_ｎ＋１が用いられて両者の対比により、計数領域Ｒ外から計数領域Ｒ内に進入してきた細胞数ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮｎ＋１}と計数領域Ｒ内から計数領域Ｒ外に退出した細胞数ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴｎ＋１}とが算出される（遊走パラメータ算出ステップＳ７，Ｓ８）。
そして、増殖率算出部７において、下式（７）により単位時間当たりの細胞増殖率ΔＮ_{ＢＩＲＴＨｎ＋１}／Δｔが算出される（増殖率算出ステップＳ９）。
ΔＮ_{ＢＩＲＴＨｎ＋１}／Δｔ
＝（Ｎ_ｎ＋１−Ｎ_ｎ）／Δｔ−ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮｎ＋１}／Δｔ＋ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴｎ＋１}／Δｔ （７）

ここで、細胞数変化率ΔＮ／Δｔ、細胞流入率ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮｎ＋１}／Δｔ、細胞流出率ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴｎ＋１}／Δｔおよび細胞増殖率ΔＮ_{ＢＩＲＴＨｎ＋１}／Δｔは、全て、同じ隣接画像に基づいて算出しているので、上式（７）の全ての項には分母にΔｔが存在する。したがって、全ての項にΔｔを乗算して、以下の条件式（８）に等価的に変換することができる。
ΔＮ_{ＢＩＲＴＨｎ＋１}＝（Ｎ_ｎ＋１−Ｎ_ｎ）−ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮｎ＋１}＋ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴｎ＋１} （８）

計数された細胞数Ｎ_ｎ＋１および算出された増殖細胞数ΔＮ_{ＢＩＲＴＨｎ＋１}は表示部６０に出力されて、横軸を時間とした時間変化を表すグラフとして表示される（ステップＳ１０）。これとともに、カウンタｎがｎ＝ｍか否かが判定され（ステップＳ１１）、ｎ＜ｍである場合には、ｎがインクリメントされてステップＳ５からの工程が繰り返される（ステップＳ１２）。

このように構成された本実施形態に係る細胞画像処理装置１および細胞が像処理方法によれば、細胞増殖率ΔＮ_{ＢＩＲＴＨｎ＋１}／Δｔが、時間間隔Δｔをあけた２枚の画像Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１における細胞数変化率ΔＮ／Δｔのみならず、細胞流入率ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮｎ＋１}／Δｔおよび細胞流出率ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴｎ＋１}／Δｔをも考慮して求められるので、細胞分裂による細胞Ｘの増殖の度合をより精度よく検出して、細胞培養を精度よく管理することができるという利点がある。

また、本実施形態においては、細胞流入率ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮｎ＋１}／Δｔ２および細胞流出率ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴｎ＋１}／Δｔ２を算出するための第２時間Δｔ２については、条件式（１）を満足することにより、計数領域Ｒに進入する細胞Ｘおよび退出する細胞Ｘを適正に検出することができる。すなわち、Δｔ２が短すぎると多数の画像Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１について逐一細胞流入率ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮｎ＋１}／Δｔ２および細胞流出率ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴｎ＋１}／Δｔ２を算出する必要があり、データ量が増加して計数の負担が大きくなる一方、Δｔ２が長すぎると細胞Ｘの遊走を捕捉できず、細胞流入率ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮｎ＋１}／Δｔ２および細胞流出率ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴｎ＋１}／Δｔ２が算出できなくなるが、条件式（１）を満たすことによりそのような不都合はない。

なお、本実施形態に係る細胞画像処理装置１の説明では、Δｔ１＝Δｔ２＝Δｔ、第１領域＝第２領域＝計数領域Ｒとして説明したが、異なっていてもよい。この場合、細胞数変化率ΔＮ／Δｔ１を算出するための時間Δｔ１は最も短く設定し、細胞流入率ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮｎ＋１}／Δｔ２および細胞流出率ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴｎ＋１}／Δｔ２を算出するための時間Δｔ２は時間Δｔ１より大きく条件式（１）を満たす適正な時間に設定することが好ましい。

また、本実施形態においては、処理部３が細胞数変化率算出部４、細胞流入率算出部５、細胞流出率算出部６、増殖率算出部７および領域サイズ算出部８を備えることとした、処理部３は、電気回路によって構成してもよいし、１以上のプロセッサによって構成してもよい。
プロセッサにより構成する場合、本発明は、増殖パラメータ算出ステップＳ５，Ｓ６、遊走パラメータ算出ステップＳ７，Ｓ８および増殖率算出ステップＳ９および領域サイズ算出ステップＳ３をコンピュータにより実行可能な細胞画像処理プログラムにより構成してもよい。

また、本実施形態においては、図７から図９に示されるように、計数領域Ｒ内における単位時間当たりの細胞Ｘの死亡数である細胞死亡率ΔＮ_{ＤＥＡＴＨｎ＋１}／Δｔを算出する細胞死亡率算出部９をさらに備えていてもよい。
この場合には、増殖率算出部７は、下式（９）により細胞増殖率ΔＮ_{ＢＩＲＴＨｎ＋１}／Δｔを算出すればよい（ステップＳ１３）。
ΔＮ_{ＢＩＲＴＨｎ＋１}／Δｔ
＝（Ｎ_ｎ＋１−Ｎ_ｎ）／Δｔ−ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮｎ＋１}／Δｔ
＋ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴｎ＋１}／Δｔ＋ΔＮ_{ＤＥＡＴＨｎ＋１}／Δｔ （９）

このようにすることで、細胞Ｘが死亡する事象が発生する環境下においても、細胞分裂による細胞Ｘの増殖の度合をより精度よく検出して、細胞培養を精度よく管理することができるという利点がある。
ここで、細胞Ｘとして培養容器の底面に接着して増殖する細胞Ｘを観察している場合には、細胞Ｘの死亡数ΔＮ_{ＢＩＲＴＨｎ＋１}は、底面に接着できずに浮遊した細胞数Ｎ_ｎ＋１を計数することにより容易に検出することができる。

また、本実施形態においては、表示部６０に、計数された細胞数Ｎおよび算出された増殖細胞数ΔＮ_{ＢＩＲＴＨ}の時間変化をグラフ表示することとしたが、これに代えて、あるいは、これに加えて、細胞Ｘの死亡数ΔＮ_{ＤＥＡＴＨ}、細胞流入数ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮ}および細胞Ｘの流出数ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴ}の少なくとも１つをグラフ表示することにしてもよい。

また、本実施形態においては、増殖パラメータとして細胞増殖率ΔＮ_{ＢＩＲＴＨｎ＋１}／Δｔを例示したが、これに代えて、計数領域Ｒの面積に対する細胞領域の面積の割合であるコンフルエンシーの変化率を採用してもよい。
また、遊走パラメータとして、細胞流入率ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮｎ＋１}／Δｔと細胞流出率ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴｎ＋１}／Δｔとの差分を例示したが、これに代えて、計数領域Ｒを撮影した２枚の画像Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１の射影変換の変換パラメータである画像変形量、あるいは、画像処理で検出したいくつかの注目細胞の移動量の平均値である注目細胞移動量を採用してもよい。

また、本実施形態においては、過去の増殖パラメータおよび遊走パラメータと許容誤差Ｋａとに基づいて計数領域Ｒの大きさを算出することとしたが、計数領域Ｒの大きさが予め定められている場合に、誤差の大きさを見積もることにしてもよい。

また、本実施形態においては、計数領域Ｒの大きさとして、正方形の計数領域Ｒの一辺の長さＬを算出することとしたが、これに代えて、計数領域Ｒが円形の場合、半径ｒの長さを下式（１０）により算出することにしてもよい。
ｒ＝２×（Ｂ−Ｃ）／（Ａ×Ｋ） （１０）

また、長辺Ｌ１と短辺Ｌ２とを有する長方形の計数領域Ｒの、例えば、長辺Ｌ１を規定して短辺Ｌ２を下式（１１）により算出することにしてもよい。
Ｌ２＝２×（Ｂ−Ｃ）×Ｌ１／（Ａ×Ｌ１×Ｋ＋２×（Ｃ−Ｂ）） （１１）

１ 細胞画像処理装置
４ 細胞数変化率算出部（増殖パラメータ算出部）
５ 細胞流入率算出部（遊走パラメータ算出部）
６ 細胞流出率算出部（遊走パラメータ算出部）
７ 増殖率算出部（増殖率算出部）
Ｘ 細胞
Ｎ_ｎ，Ｎ_ｎ＋１ 細胞数
ΔＮ／Δｔ 細胞数変化率
ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴ}／Δｔ，ΔＮ_{ＭＯＶＥＩＮ}／Δｔ２ 細胞流入率（遊走パラメータ）
ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴ}／Δｔ，ΔＮ_{ＭＯＶＥＯＵＴ}／Δｔ２ 細胞流出率（遊走パラメータ）
ΔＮ_{ＢＩＲＴＨ}／Δｔ 細胞増殖率（増殖パラメータ）
Ｐ_ｎ，Ｐ_ｎ＋１ 画像（評価画像）
Ｓ３ 領域サイズ算出ステップ
Ｓ５，Ｓ６ 増殖パラメータ算出ステップ
Ｓ７，Ｓ８ 遊走パラメータ算出ステップ
Ｓ９ 増殖率算出ステップ

Claims (13)

1. 時間間隔をあけて細胞を撮影することにより取得された複数枚の画像が入力され、
   入力された前記画像の内のいずれか２枚の評価画像を処理して該評価画像の所定の計数領域内の単位時間当たりの前記細胞の量の変化を表す細胞数変化率を算出する増殖パラメータ算出部と、
   各前記評価画像の前記計数領域の単位時間当たりの前記細胞の流入量を表す細胞流入率および流出量を表す細胞流出率を算出する遊走パラメータ算出部と、
   過去の細胞増殖率、前記細胞流入率および前記細胞流出率に基づいて、誤差評価の指標が所定の許容誤差以下となるように前記計数領域の大きさを算出し、前記計数領域を算出した大きさに設定する領域サイズ算出部と、
   該領域サイズ算出部により設定された前記計数領域について算出された前記細胞数変化率、前記細胞流入率および前記細胞流出率に基づいて、前記細胞数変化率から前記細胞流入率を減算し、前記細胞流出率を加算することにより、細胞増殖率を算出する増殖率算出部とを備える細胞画像処理装置。
2. 前記増殖パラメータ算出部が、単位時間当たりに前記計数領域内において増加した細胞数を前記細胞数変化率として算出する請求項１に記載の細胞画像処理装置。
3. 前記増殖パラメータ算出部が、前記計数領域の面積に対する細胞領域の面積の割合であるコンフルエンシーの変化率を前記細胞数変化率として算出する請求項１に記載の細胞画像処理装置。
4. 前記遊走パラメータ算出部が、単位時間当たりに前記計数領域の外縁から流入した細胞数と流出した細胞数との差を算出する請求項１から請求項３のいずれかに記載の細胞画像処理装置。
5. 前記遊走パラメータ算出部が、前記細胞の長さを前記細胞の速度で除算した時間以下の間隔をあけて撮影した、前記画像を用いる請求項１から請求項４のいずれかに記載の細胞画像処理装置。
6. 前記領域サイズ算出部が、過去の前記細胞増殖率に対する過去の前記細胞流入率と前記細胞流出率との差分の比率と前記所定の許容誤差とを比較して、前記計数領域の大きさの下限を算出する請求項１から請求項５のいずれかに記載の細胞画像処理装置。
7. 前記計数領域が長方形である請求項１から請求項６のいずれかに記載の細胞画像処理装置。
8. 前記計数領域内における単位時間当たりの前記細胞の死亡数である細胞死亡率を算出する細胞死亡率算出部を備える請求項１から請求項７のいずれかに記載の細胞画像処理装置。
9. 前記細胞死亡率は、領域内に単位時間当たりに浮遊した細胞数を計数することにより検出される請求項８に記載の細胞画像処理装置。
10. 前記細胞数変化率、前記細胞流入率、前記細胞流出率および前記細胞増殖率のうちの少なくとも１つをグラフとして出力する請求項１から請求項９のいずれかに記載の細胞画像処理装置。
11. 前記細胞数変化率、前記細胞流入率、前記細胞流出率、前記細胞増殖率および前記細胞死亡率のうちの少なくとも１つを時間変化を表すグラフとして出力する請求項８または請求項９に記載の細胞画像処理装置。
12. 時間間隔をあけて細胞を撮影することにより取得された複数枚の画像が入力され、
    入力された前記画像の内のいずれか２枚の前記画像を処理して該画像の所定の計数領域内の単位時間当たりの前記細胞の量の変化を表す細胞数変化率を算出する増殖パラメータ算出ステップと、
    各前記画像の前記計数領域の単位時間当たりの前記細胞の流入量を表す細胞流入率および流出量を表す細胞流出率を算出する遊走パラメータ算出ステップと、
    過去の細胞増殖率、前記細胞流入率および前記細胞流出率に基づいて、誤差評価の指標が所定の許容誤差以下となるように前記計数領域の大きさを算出し、前記計数領域を算出した大きさに設定する領域サイズ算出ステップと、
    該領域サイズ算出ステップにより設定された前記計数領域について算出された前記細胞数変化率、前記細胞流入率および前記細胞流出率に基づいて、前記細胞数変化率から前記細胞流入率を減算し、前記細胞流出率を加算することにより、細胞増殖率を算出する増殖率算出ステップとを含む細胞画像処理方法。
13. 時間間隔をあけて細胞を撮影することにより取得された複数枚の画像が入力され、
    入力された前記画像の内のいずれか２枚の前記画像を処理して該画像の所定の計数領域内の単位時間当たりの前記細胞の量の変化を表す細胞数変化率を算出する増殖パラメータ算出ステップと、
    各前記画像の前記計数領域の単位時間当たりの前記細胞の流入量を表す細胞流入率および流出量を表す細胞流出率を算出する遊走パラメータ算出ステップと、
    過去の細胞増殖率、前記細胞流入率および前記細胞流出率に基づいて、誤差評価の指標が所定の許容誤差以下となるように前記計数領域の大きさを算出し、前記計数領域を算出した大きさに設定する領域サイズ算出ステップと、
    該領域サイズ算出ステップにより設定された前記計数領域について算出された前記細胞数変化率、前記細胞流入率および前記細胞流出率に基づいて、前記細胞数変化率から前記細胞流入率を減算し、前記細胞流出率を加算することにより、細胞増殖率を算出する増殖率算出ステップとをコンピュータに実行させる細胞画像処理プログラム。

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