JP6961519B2 - カーボンナノチューブ素線、送電線、カーボンナノチューブ素線の製造方法及び送電線の工事方法 - Google Patents
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Description
一方、カーボンナノチューブは、鋼線やアルミ線よりも比重が小さいうえ、鋼線よりも引張強さが強く、アルミ線よりも導電率が高いという特徴を有しており、カーボンナノチューブを用いた電線の開発が進められている(例えば特許文献2参照)。
そのため、上記のカーボンナノチューブの優れた特性を、架空送電線等の送電線で生かすことができないという問題があった。
カーボンナノチューブのみで形成されたカーボンナノチューブ繊維と、パイプと、を備え、
複数本の前記カーボンナノチューブ繊維が、長手方向の全域にわたって前記パイプにより外側から固く把持された状態で前記パイプ内に収納されていることを特徴とする。
金属製のパイプの中に複数本のカーボンナノチューブ繊維を挿通する工程と、
前記パイプを細線化して、長手方向の全域にわたって前記パイプで前記複数本のカーボンナノチューブ繊維を外側から固く把持する状態を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
熱収縮性樹脂製のパイプの中に複数本のカーボンナノチューブ繊維を挿通する工程と、
加熱により前記パイプを収縮させて、長手方向の全域にわたって前記パイプで前記複数本のカーボンナノチューブ繊維を外側から固く把持する状態を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
なお、以下の各図では、カーボンナノチューブ繊維2を見やすくするために、カーボンナノチューブ素線1やパイプ3等に比べてカーボンナノチューブ繊維2が実際よりも非常に太く記載されている。
まず、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線について説明する。図1は、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1の構成を表す断面図である。
カーボンナノチューブ素線1は、カーボンナノチューブ繊維2と、パイプ3とを備えており、複数本のカーボンナノチューブ繊維2が、長手方向の全域にわたってパイプ3により外側から固く把持された状態でパイプ3内に収納されている。
カーボンナノチューブ繊維2は、カーボンナノチューブのみで形成されている。
カーボンナノチューブは、炭素原子の六角形格子構造を有するグラフェンシートを単層又は略同軸の多層の円筒状に丸めた構造を有している繊維状の物質である。
パイプ3が金属製であれば、後述するように(後述する図2参照)、複数本のカーボンナノチューブ繊維2が挿通されたパイプ3を細線化して素線1を製造する際に、細線化されて径方向に縮んだパイプ3が複数本のカーボンナノチューブ繊維2をその長手方向の全域にわたって外側から固く把持する状態になるため、本実施形態に係る素線1を容易かつ的確に形成することが可能となる。
パイプ3が熱収縮性樹脂製であれば、後述するように、複数本のカーボンナノチューブ繊維2が挿通されたパイプ3を加熱して細線化して素線1を製造する際に、加熱により収縮したパイプ3が、その中に収納されている複数本のカーボンナノチューブ繊維2をその長手方向の全域にわたって外側から固く把持する状態になり、本実施形態に係る素線1を容易かつ的確に形成することが可能となる。
そのため、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1は銅線やアルミ線、鋼線等のように硬い。そのため、例えば、前述した特許文献2に記載されているCNT電線の場合と同じようにしてカーボンナノチューブ素線1をかしめて端子等を取り付けようとしても困難であり、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1への端子の取り付けは、銅線やアルミ線、鋼線等への端子の取り付けと同様にして行われる。
以上のように、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1によれば、引張強度が強く、軽量で、導電率が高いといったカーボンナノチューブの優れた特性を生かした素線を提供することが可能となる。
そのため、後述するように、素線1同士を撚り合わせたり、アルミ線や導線、鋼線等と撚り合わせて、上記のカーボンナノチューブの特性を生かした送電線を形成することが可能となる。なお、この点については後で説明する。
そのため、後述するように、素線1同士を撚り合わせたり、アルミ線や導線、鋼線等と撚り合わせて、上記のカーボンナノチューブの特性を生かした送電線を形成することが可能となる。なお、この点については後で説明する。
次に、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1の製造方法について説明する。カーボンナノチューブ素線1は、パイプ3内に複数本のカーボンナノチューブ繊維2を挿通したものに対して伸線処理や押し出し処理、圧延処理等を行うことによって製造することができる。
以下、具体的に説明する。図2〜図4は、素線1の製造方法の一例を示す図である。
そして、まとめた複数本のカーボンナノチューブ繊維2を繊維束形成機械13にかけて繊維束20を形成する。そして、形成された繊維束20はサプライボビン14に巻き取られる。
また、カーボンナノチューブ繊維2に撚りをかけると、撚りをかけない場合に比べて引っ張る力に対してより伸びるようになり、また直線的にカーボンナノチューブ繊維2に力が加わらなくなるため引っ張り強度が低下し、上記のように鋼線よりも高く引張強さを有するカーボンナノチューブの特性の効果が低減してしまう可能性がある。
そこで、そのような場合には、例えば図3(B)に示すように、カーボンナノチューブ繊維2を所定本数ずつまとめて、それを1本のカーボンナノチューブ繊維2aで束ねて繊維束20を形成するように構成することが可能である。1本のカーボンナノチューブ繊維2aで束ねる代わりに複数本のカーボンナノチューブ繊維2aで束ねるように構成することも可能である。
そのため、複数のカーボンナノチューブ繊維2を束ねるカーボンナノチューブ繊維2aを除くほぼ全てのカーボンナノチューブ繊維2で、カーボンナノチューブの引張強さが低減されることなくそのまま発揮されるようになるため、カーボンナノチューブの特性(この場合は引張強さ)の効果が十分に発揮された素線1を形成することが可能となる。
なお、アルミニウム板の代わりにステンレス板や銅板あるいはその合金で形成された板でもよい。
なお、上記のようにして繊維束20すなわち複数本のカーボンナノチューブ繊維2が挿通されたパイプ3を細線化した後、さらに細線化処理を1回又は複数回行うように構成してもよい。
そのため、カーボンナノチューブ繊維2がパイプ3内で動き、次第にそれらの間に隙間がなくなっていく。
そして、図5(B)に示すように、パイプ3の中でカーボンナノチューブ繊維2の間に隙間がない状態になり、さらにパイプ3が細線化されることでカーボンナノチューブ繊維2が内向きに押圧される。
なお、上記の場合、パイプ3が細線化される際、パイプ3は長手方向に伸びるがカーボンナノチューブ繊維2はほとんど伸びない。そのため、パイプ3がダイス17に送り込まれる速度よりも早い速度でカーボンナノチューブ繊維2がダイス17に送り込まれる状態になる。
その際、図3(B)に示したのと同様に、所定本数の繊維束20等を1本又は複数本のカーボンナノチューブ繊維2aで束ねるように構成してもよい。すなわち、図3(B)におけるカーボンナノチューブ繊維2を繊維束20と見立て、複数の繊維束20をカーボンナノチューブ繊維2aで束ねることができる。これにより、カーボンナノチューブの引張強さが撚りによって低減されることなくそのまま発揮されるため、素線1の引張強さを非常に強くすることができる。
すなわち、ボビン11から引き出した複数本のカーボンナノチューブ繊維2をローラ12、12等で例えば図3(A)、(B)に示したように束ねる。
また、アルミニウム板30の代わりに熱収縮性の樹脂シートをフォーミングロール15a、15bで管状に成形し、端部同士を溶接したり接着する等してパイプ3を形成する。
そして、複数本のカーボンナノチューブ繊維2が挿通されたパイプ3を、ダイス17に通す代わりに加熱装置で加熱することで、パイプ3を熱収縮させて細線化することで、上記のように長手方向の全域にわたってパイプ3で複数本のカーボンナノチューブ繊維2を外側から固く把持する状態を形成するように構成することができる。
そのため、図5(B)に示したように、パイプ3の中でカーボンナノチューブ繊維2の間に隙間がない状態になるとともに、パイプ3から内向きの押圧を受ける。そのため、このようにしてパイプ3を細線化することで、長手方向の全域にわたってパイプ3で複数本のカーボンナノチューブ繊維2を外側から固く把持する状態が形成される。
また、この場合は、パイプ3とカーボンナノチューブ繊維2とが同じ速度で移動しながら(すなわちパイプ3とカーボンナノチューブ繊維2に速度差がない状態で)パイプ3を細線化するように構成される。
そのため、カーボンナノチューブの優れた特性を生かしたカーボンナノチューブ素線1を容易かつ的確に製造することが可能となる。
次に、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1を用いた送電線40について説明する。以下、具体例をいくつか挙げて説明する。
また、カーボンナノチューブ素線1を含む複数本の素線を撚るようにして送電線40を形成することも可能である。
また、逆に、図7(A)に示すように、中心側にアルミニウム等で形成された素線41を配置し、その周りをカーボンナノチューブ素線1取り囲むように配置したものを撚ったり、図7(B)に示すように、カーボンナノチューブ素線1とアルミニウム等で形成された素線41とを混在させたものを撚るようにして送電線40を形成することも可能である。
このように構成すると、送電線40に落雷があった場合に、雷は素線42に落ち、内部のカーボンナノチューブ素線1には直接、雷電流が流れることがなくなる。そのため、このように構成することで、送電線40の耐雷特性(雷防御性能)すなわちカーボンナノチューブ素線1の耐雷特性を向上させることが可能となる。
そして、このような送電線40は、カーボンナノチューブの優れた特性により、例えば前述したACSRよりも引張強度が強く、軽量で、導電率が高い優れたものになる。
また、送電線40の張設工事では、鉄塔間に、最初にパイロットロープが張設され、それが順次太いロープに張り替えられて最後に送電線40が張設されるように工事が行われる場合があるが、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1を用いた送電線40は軽量であるため、ACSRを張設するような場合に比べてロープを引き替える回数(段階)をより少なくすることができ、また、架線機材も軽量化されることで送電線40の張設工事をより容易にかつ短時間で行うことが可能となる。そのため、架線工事の工期短縮が可能となる。これは、電力会社の送電停止期間の短縮に寄与することになり、電力会社にとっても非常に好ましいこととなる。
ここで、本実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1を用いた送電線40とACSRの特性を対比したシミュレーションについて説明する。シミュレーションは、JCS(日本電線工業会規格)等に基づいて行った。
その際、カーボンナノチューブ素線1の諸特性については種々の数値情報があるため、以下のような適切と思われる値に設定した。
・引張強さ:11000MPa(=11GPa)
・比重:2.0g/cm3
・導電率:97%
・弾性係数:500GPa
・線膨張係数:0/℃
・周囲温度:40℃
・風速:40m/s
・風向:45°
・日射:0.1w/cm2
・放射率:0.9
特に、300m径間長において既設電線(ACSR)の弛度よりも約40%弛度を小さくすることが可能となることから、低張力で架線しても問題がない。そのため、例えば新規に鉄塔を建設する際には、鉄塔強度や部材、基礎強度等を、従来のACSR等の場合よりも小さく設計することが可能となり、鉄塔建設のコストダウンを図ることが可能となるといったメリットもある。
また、上記の実施形態に係るカーボンナノチューブ素線1やそれを用いた送電線40は、架空送電線だけでなく、例えば地中送電線や海中ケーブル等にも用いることが可能である。
2 カーボンナノチューブ繊維
2a 1本又は複数本のカーボンナノチューブ繊維
3 パイプ
40 送電線
41、42 素線
Claims (12)
- カーボンナノチューブのみで形成されたカーボンナノチューブ繊維と、パイプと、を備え、
複数本の前記カーボンナノチューブ繊維が、長手方向の全域にわたって前記パイプにより外側から固く把持された状態で前記パイプ内に収納されていることを特徴とするカーボンナノチューブ素線。 - 前記パイプは、金属製であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ素線。
- 前記金属製のパイプは、アルミニウム、ステンレス鋼若しくは銅、又はその合金で形成されていることを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノチューブ素線。
- 前記パイプは、熱収縮性樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ素線。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ素線が複数本撚られて形成されていることを特徴とする送電線。
- 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ素線を含む複数本の素線が撚られて形成されていることを特徴とする送電線。
- 前記素線に、アルミニウム若しくは銅、又はその合金で形成された素線が含まれていることを特徴とする請求項6に記載の送電線。
- 前記素線に、アルミニウム被覆鋼線又は亜鉛めっき鋼線が含まれていることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の送電線。
- 金属製のパイプの中に複数本のカーボンナノチューブ繊維を挿通する工程と、
前記パイプを細線化して、長手方向の全域にわたって前記パイプで前記複数本のカーボンナノチューブ繊維を外側から固く把持する状態を形成する工程と、
を含むことを特徴とするカーボンナノチューブ素線の製造方法。 - 熱収縮性樹脂製のパイプの中に複数本のカーボンナノチューブ繊維を挿通する工程と、
加熱により前記パイプを収縮させて、長手方向の全域にわたって前記パイプで前記複数本のカーボンナノチューブ繊維を外側から固く把持する状態を形成する工程と、
を含むことを特徴とするカーボンナノチューブ素線の製造方法。 - 前記カーボンナノチューブ繊維は、前記パイプの中に挿通される前に、所定本数ごとに1本又は複数本のカーボンナノチューブ繊維で束ねられることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のカーボンナノチューブ素線の製造方法。
- 請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の送電線を用いた送電線の工事方法。
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