JP6960812B2 - セルロース含有固形物およびスピーカーボックス - Google Patents
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Description
このセルロースナノファイバーは、軽量、高強度、低熱膨張率等の優れた性質を有することで知られている(たとえば、特許文献1)。
このように、セルロースナノファイバーは水分散状態で市場に供給される場合が多いため、セルロースナノファイバーを含有する固形物を得るためには、セルロースナノファイバーの水分散体(以下、CNFスラリーと称する場合がある)を乾燥させる必要がある。
そこで、CNFスラリーを型に充填した状態で多孔質素材を介して脱水、乾燥する工夫が提案されている(特許文献3)。
また、内部損失の大きい固形物で形成された、スピーカーボックスなどの音響装置の提供が望まれる。
また、本発明は、内部損失の大きい固形物で形成されたスピーカーボックスを提供することを目的とする。
吸水性の多孔質粒子と、セルロースナノファイバーとを含む点にある。
しかし、この混合物スラリーを所望の形状に整えた後、当該混合物スラリーにおけるCNFスラリーが含む水分は、次第に吸水性の多孔質粒子に吸収される。そして、混合物スラリーの流動性は低下して、半固形状の(ゲル状の、または、ゲル状態に近い)前駆体になる。つまりこの混合物スラリーは、金型などに充填して所望の形状に整えた後に、自然とその流動性が低下して、ある程度その形状を保つことができるようになる。
その後、当該前駆体を乾燥させると、所望の形状の、セルロースナノファイバーを含むセルロース含有固形物を得ることができるのである。
混合物スラリー中のCNFスラリーから水分が奪われると、CNFスラリーが減容(収縮)するため、この前駆体は、多孔質粒子の粒子間に、濃縮された(低含水率の)CNFスラリー(ないしゲル化したCNFスラリー)が架橋した構造のものとなる。
そして、このような前駆体を乾燥すると、多孔質粒子の間にセルロースナノファイバーの構造体が架橋した状態で乾燥固化して固定される。そして、多孔質粒子同士がセルロースナノファイバーで強固に結合されたセルロース含有固形物を得ることができる。
ここで、多孔質粒子は減容しないから、前駆体の乾燥中に伴って、多孔質粒子同士の粒子間距離が徐々に小さくなる(粒子間距離が近づく)。多孔質粒子同士がある程度近づくと、それぞれの多孔質粒子は、立体障害により、互いの位置関係をおよそ維持するようになる。そのため、この前駆体は、乾燥に伴う収縮やひずみ等の変形を生じにくいものとなる。またこの前駆体は、変形を生じにくいため、変形に伴うひび割れも生じにくい。
そのため、収縮やひずみ等の変形や、変形に伴うひび割れを有しないセルロース含有固形物を得ることができる。
したがって上記構成によれば、セルロースナノファイバーを含む、成型性のよいセルロース含有固形物を提供することができるのである。
前記多孔質粒子が、セルロースで形成されている点にある。
また、セルロースは水に対する親和性が高いから、セルロースで形成された多孔質粒子は高い吸水性を発揮する。そのため、セルロースで形成された多孔質粒子を含む混合物スラリーは、金型などで所望の形状に整えた際に、その形状をより良く保持できるものとなる。
さらに、多孔質粒子とCNFスラリーとがともにセルロースを主体としたものとなるから、多孔質粒子とセルロースナノファイバーとが互いに高い親和性、すなわち、濡れ性が高く、また、界面の密着性が高いものとなる。そのため、多孔質粒子同士がセルロースナノファイバーの架橋部分を介してより強固に結合されたセルロース含有固形物を得ることができる。
前記セルロースナノファイバーを、1体積%以上10体積%未満含有する点にある。
なぜならば、セルロースナノファイバーを、1体積%以上10体積%未満含有する場合には、多孔質粒子同士がそれぞれ互いに近接する状態で、セルロースナノファイバーで架橋されるためである。
すなわち、混合物スラリーが乾燥すると、多孔質粒子同士がセルロースナノファイバーで架橋された状態のセルロース含有固形物を得ることができる。この混合物スラリーの乾燥の過程において、多孔質粒子同士がそれぞれ互いに近接する状態で乾燥が進行するため、多孔質粒子同士の立体障害が生じることになる。そしてこの多孔質粒子同士の立体障害により、乾燥過程にある混合物スラリー(半固形物)は、収縮やひずみ等の変形や、変形に伴うひび割れを回避する。このようにひび割れを回避しながら、多孔質粒子同士がセルロースナノファイバーを介して密着していく。その結果、セルロース含有固形物は、成型不良を回避するのである。
一方、セルロースナノファイバーを10体積%以上含む場合には、多孔質粒子の粒子間の架橋は十分に行われる。しかし、セルロースナノファイバーを過剰に含むことになり、互いに距離を隔てて存在する多孔質粒子が増加する。そうすると、互いに距離を隔てて存在する多孔質粒子の間に存在するCNFスラリーが、乾燥中に大きく収縮するため、乾燥過程にある混合物スラリー(半固形物)は、収縮やひずみ等の変形や、変形に伴うひび割れを生じることがある。また、セルロースナノファイバーと多孔質粒子との密着性が低下する。このように、セルロースナノファイバーを10体積%以上含む場合には、セルロース含有固形物の成型不良が生じるおそれがある。
前記セルロースナノファイバーの繊維長が、50μm以上300μm未満である点にある。
セルロースナノファイバーの繊維長が50μm以上あれば、セルロースナノファイバーの繊維同士が良く絡まってその固形物が十分な強度を有することになる。そのため、セルロース含有固形物中において、セルロースナノファイバーが多孔質粒子同士を強固に結合させて、セルロース含有固形物の成型不良を回避し、またセルロース含有固形物の強度を十分なものとすることができる。
セルロースナノファイバーの繊維長が、50μm未満になると、セルロース含有固形物が成型不良を生じる場合や、十分な強度を有さない場合がある。
セルロースナノファイバーの繊維長が300μm以上になる場合は、セルロース含有固形物の成型不良が直ちに生じたりするわけではない。しかし、このような繊維長を有するCNFスラリーは一般に高価になる。そのため経済的に不利になる場合がある。また、セルロースナノファイバーの繊維長が300μm以上となっても、セルロース含有固形物の成型性が著しく向上したり、強度が有意に向上したりするわけではない。むしろ、強度が低下する場合もある。
上記に記載のセルロース含有固形物を成型した点にある。
このように、スピーカーボックスを内部損失の大きい固形物を材料として形成することで、当該スピーカーボックスに収容したスピーカーが発する音の共振を抑制し、クリアな音を発するスピーカーユニットの提供が可能になる。
また、上記に記載のセルロースナノファイバーを含むセルロース含有固形物は、比重(見かけの密度)が軽いため、スピーカーボックスを軽量化することもできる。
以下では、セルロース含有固形物でスピーカーボックス200を形成する場合を例示して説明する。
まず、セルロース含有固形物としての成型体100、および、セルロース含有固形物で形成したスピーカーボックス200の概要を説明する。
本実施形態に係る成型体100は、図1に示すように、吸水性の多孔質粒子2と、セルロースナノファイバー1とを含んでいる。
本実施形態では、スピーカーボックス200が、所定の厚みを有する半球形状に形成された成型体100である場合を示している。
以下、成型体100について詳細を説明する。
〔成型体についての説明〕
セルロースナノファイバー1は、微細なセルロース繊維である。
セルロースナノファイバー1は、本実施形態では、繊維幅(繊維の直径、以下では繊維径と称する)が10nm以上150nm以下で、アスペクト比が500以上のセルロース繊維を用いることが好ましい。
具体的には、セルロースナノファイバー1の繊維長は、50μm以上300μm未満であるとよい。セルロースナノファイバー1がこの範囲の繊維長であれば、成型不良を起こすことなく、セルロース含有固形物を成型して成型体100を得ることができるためである。
本実施形態では、セルロースナノファイバー1として、平均の繊維長がおよそ100μmで、平均の繊維径がおよそ100nmのセルロース繊維を用いている。
セルロースナノファイバー1の平均の繊維径は、上記繊維長と同様に、電子顕微鏡(SEM)による画像解析によって計測(解析)することができる。
本実施形態で用いるセルロースナノファイバー1は、多糖を含む原料スラリーを、高圧ホモジナイザーで、250MPaに加圧して解繊して作成したものを用いている。
そのため、セルロースナノファイバー1は、水分散されたCNFスラリー11として供給される。CNFスラリー11は、たとえば、その粘度が2000から4000mPas程度(B型粘度計で計測した値)の流動性のよいペースト状のスラリーである。
CNFスラリー11における、セルロースナノファイバー1の含有量が2質量%以上6質量%未満であると、分散液3得る際に、CNFスラリー11と多孔質粒子2との混合を適切に行えるため好ましい。また、分散液3を得た後に、形状を整えることが可能な程度に適切に流動性を低下させた半固形物3aを得ることができるため好ましい。
本実施形態で説明しているCNFスラリー11の粘度は、たとえばセルロースナノファイバー1の含有量が2質量%の場合、約2000mPasである。
なお、CNFスラリー11における、セルロースナノファイバー1の含有量が6質量%以上10質量%未満であると、やや粘度が高く、また流動性の悪いものとなる。そのため、CNFスラリー11と多孔質粒子2とを混合する際に、気泡が生じやすく、また、生じた気泡が消失しにくくなる。したがって、成型不良を起こすおそれが生じやすくなる。
なお、CNFスラリー11における、セルロースナノファイバー1の含有量が0.5質量%以上2質量%未満であると、半固形物3aを得た後これを乾燥させる際に、乾燥にともなう半固形物3aの収縮量が大きくなって成型不良を起こすおそれが生じやすくなる。
多孔質粒子2は、図2に示すように、多孔質粒子2の本体部分であり、その粒子を形成する基材となる基材部21と、基材部21の内部に形成された複数の細孔22を空隙として有する。
多孔質粒子2は、およそ球形の粒子である。なお、本実施例における、およそ球形の粒子とは、その粒子の長軸径と短軸径との比(長軸径/短軸径)が、3以下のものを言う。
特に多孔質粒子2の粒子径が1mm以上3mm未満であると分散液3を得た後に、形状を整えることが可能な程度に適切に流動性を低下させた半固形物3aを得ることができ好ましく、また、成型体100を得る場合にも、収縮やひずみ等の変形や、変形に伴うひび割れなどの成型不良を生じないため好ましい。
多孔質粒子2の粒子径は2mm程度が特に好ましい。分散液3を特に調製しやすく、また、成型不良を特に生じにくいためである。
細孔22は、多孔質粒子2の本体である基材部21の表面に開口部23を備える。そして細孔22は、基材部21の壁部21aで囲われた、多孔質粒子2の内側に向けて設けられた空間部分24として形成されている。
多孔質粒子2の外側に存在する水分は、開口部23を介して粒子内部(細孔22)に取り込まれ、空間部分24に保持される。細孔22に取り込まれた水分は、空間部分24を囲う壁部21aに対して分子間力などで吸着された状態で保持される。
本実施形態では、細孔22は、多孔質粒子2のおよそ中心部分から粒子の表面に向けて広がるような放射形状に形成されている。
基材部21は、親水性の有機物で形成すると、多孔質粒子2の吸水性を高めることができるためである。多孔質粒子2の吸水性が高まると、分散液3を効率よくゲル化して成型することができる。
本実施形態では、基材部21は、親水性の有機物であるセルロースで形成されている。
壁部21aが親水性であれば、細孔22に、より多くの水分を保持し、多孔質粒子2の吸水性を高めることができるためである。
壁部21aは、たとえば、親水性の有機物で形成し、親水性の表面とすることができる。
本実施形態においては、基材部21が親水性の有機物であるセルロースで形成されているため、壁部21aは、セルロースでなる表面となっている。そのため、壁部21aは、親水性の表面である。
粒子表面29が親水性であると、分散液3を調製する際に、多孔質粒子2とCNFスラリー11を適切に混合し、多孔質粒子2をCNFスラリー11に対して分散することができる。また、分散液3を調製する際に、多孔質粒子2の粒子表面29とCNFスラリー11との界面に気泡を生じることを抑制し、成型体100の強度を向上させることができる。
粒子表面29は、たとえば、親水性の有機物で形成し、親水性の表面とすることができる。
本実施形態においては、基材部21が親水性の有機物であるセルロースで形成されているため、粒子表面29は、セルロースでなる表面となっている。そのため、粒子表面29は、親水性の表面である。
このようにすると、多孔質粒子2が十分な細孔22を有し、多孔質粒子2が十分な吸水性を有することになる。多孔質粒子2の細孔22は、粒子の空隙率としてみた場合、およそ75%から95%の空隙率であるとよい。この場合、多孔質粒子2は、多孔質粒子2の質量1gあたり、およそ3.5g程度の水分を吸収して保持できる。なお、この実施形態において、粒子の空隙率とは、粒子の外部の形状に規定される粒子体積のうち、空隙に相当する部分の割合のことを言う。言い換えると、粒子の外部の形状に規定される粒子体積に対する、中実である部分の体積の差分に相当する体積の割合をいう。
また、多孔質粒子2としては、活性炭や、メソポーラスシリカなどの多孔質シリカ粒子のような無機系の微粒子を用いることもできる。
セルロースナノファイバー1の含有量が上記範囲内であれば、分散液3を調製した際には、多孔質粒子2のそれぞれの粒子間がセルロースナノファイバー1でおよそ満たされて適切に架橋する(図4参照)。また、分散液3ないし半固形物3aが乾燥する過程においては、CNFスラリー11の架橋部分CLが収縮して適度に多孔質粒子2のそれぞれの粒子間が近づいて立体障害を生じながら、多孔質粒子2のそれぞれの粒子間がセルロースナノファイバー1で適切に架橋された状態を保つことができる(図5参照)。そのため、それぞれの多孔質粒子2は、立体障害で互いの位置関係を拘束されるので、それぞれの多孔質粒子2の粒子間に存在するCNFスラリー11の架橋部分CLの収縮やずりの影響を受けることがない。そして架橋部分CLがその架橋状態を維持したまま乾燥固化して結合部CSになると、収縮やひずみ等の変形や、変形に伴うひび割れを有しない状態で、セルロースナノファイバー1の固形物10と多孔質粒子2とで成る成型体100を得ることができる(図1参照)。
ここで、成型体100における、セルロースナノファイバー1の含有量が10質量%から40質量%程度となるのは、成型体100中に、セルロースナノファイバー1を、およそ1体積%以上10体積%未満含有する場合である。
CNFスラリー11は乾燥に伴い収縮する。そのため、分散液3を調製した際には多孔質粒子2同士がCNFスラリー11で架橋していても(図6参照)、分散液3ないし半固形物3aが乾燥する過程で、成型体100における、多孔質粒子2のそれぞれの粒子間の空隙が増加する。また、一部は架橋が破壊されて多孔質粒子2のそれぞれの粒子間をセルロースナノファイバー1で適切に架橋できない(図7参照)。その結果、セルロースナノファイバー1の固形物10と多孔質粒子2とで成る成型体100を成型する場合に、収縮やひずみ等の変形や、変形に伴うひび割れなどの成型不良を生じる場合がある(図10参照)。
〔金型の説明〕
成型体100を製造する方法について図12から図14をもとに詳述する。
まず、金型5について説明する。
金型5は、成型体100を形作る(成型する)押型である。
本実施形態では、金型5は、成型体100を半球状のスピーカーボックス200として成型するための、金型である場合を示している。
金型5は、たとえば曲面の内側が球状一部を成す形状(およそ半球状)の第一金型51と、曲面の外側が球状一部を成す形状(およそ半球状)であって、その半球の径が第一金型51よりも小さな径の第二金型52とで構成される。
なお、この金型5の形状は、説明のための例示であって、所望の成型体100の形状に合わせて設定されるべきものである。
このようにすると、金型5から半固形物3aないし成型体100を取り出す際に、金型5を外部から変形させて、半固形物3aないし成型体100を金型5から剥離しやすくなる。
本実施形態では、金型5は、可塑性の樹脂であるポリエチレンテレフタレートで形成されている場合を示している。
このようにすると、金型5から半固形物3aないし成型体100を取り出す際に離型性が向上して、半固形物3aないし成型体100を金型5から剥離しやすくなる。
本実施形態では、撥水加工として、シランカップリング処理を行った場合を示している。
このようにすると、金型5から半固形物3aないし成型体100を取り出す際に離型性が向上して、半固形物3aないし成型体100を金型5から剥離しやすくなる。
本実施形態では、この凹凸加工として、2mmの直径で高さが0.2mmの曲面状突起として設けた場合を例示(図示せず)している。
分散液3について説明する。
分散液3は、CNFスラリー11と、多孔質粒子2とを混合して調製する。
CNFスラリー11は、粘度の低いスラリーである。そのため、CNFスラリー11は、そのままでは形状を保つことができない。しかし、CNFスラリー11と多孔質粒子2とを混合して分散液3とすると、CNFスラリー11の水分の一部が、多孔質粒子2に吸収されて、分散液3の粘度(粘性)が次第に増加し、分散液3は半固形物3aになる。ここで、分散液3から半固形物3aに変成する過程は連続的なものである。
CNFスラリー11は乾燥すると、たとえば4分の1程度に収縮する。
本実施形態では、第一金型51の半球の弧の内側に、CNFスラリー11と多孔質粒子2とを直接投入し、第一金型51の内側でこれらを混合して分散液3(図12参照)を得ている。
分散液3が半固形物3aとなった後に、第二金型52を取り外す。
半固形物3aは、その後乾燥に供する。
本実施形態では、半固形物3aの乾燥操作として、図14に示すように、半球状に形成された半固形物3aの弧の内側に吸湿剤6を充填した状態で室内に放置して、乾燥を促進させている。本実施形態では、吸湿剤6を充填した状態で室内に4日間放置する。
また、本実施形態では、第一金型51から取り出しても半固形物3aがその形状を保持できる程度に固化した後に、さらに室内で自然乾燥させて成型体100を得る。本実施形態では、自然乾燥として室内に7日間放置する。
このようにすると、たとえば、半径80mmで、厚みがおよそ8.5mmの半球状の成型体100を得ることができる。
そしてこの成型体100を、スピーカーボックス200として用いる。
以下では本実施形態に係る実施例を具体例として説明する。
セルロースナノファイバー1を含有するCNFスラリー11として、モリマシナリー株式会社製CNFペースト(CNF100)を準備した。このCNFスラリー11のセルロースナノファイバー1の含有量は5質量%である。また、CNFの繊維長は、約100μmである。
そして上記の成型体の製造方法の説明に沿い、成型体100を得た。
その結果、半径80mmの半球状の良好な成型体100を得ることができた。この成型体100の比重(本実施形態では見かけの密度)は約0.35kg/Lで、樹脂や木材に比べて軽量である。また、この成型体100の破断強度(引張強度)は約500MPa(0.5GPa)であり、一般の樹脂に比べて極めて強い。
CNFスラリー11と多孔質粒子2とを、体積比で1:1として混合して分散液3を得た以外は実施例1と同様に成型体100を得た。
半径70mmの半球状の良好な成型体100を得ることができた。ただし、実施例1で得た成型体100よりもやや強度は低かった。
モリマシナリー株式会社製CNFペースト(CNF100)を予め濃縮し、セルロースナノファイバー1の含有量を10質量%としたもとをCNFスラリー11として用いた以外は、実施例1と同じとして成型体100を得ることを試みた。
しかし、CNFスラリー11と多孔質粒子2との混合や成型は可能であるものの、空隙が多くなり、十分な強度を有する成型体100を得られなかった。
多孔質粒子2の粒子径を0.7mmとした以外は、実施例1と同じとして成型体100を得ることを試みた。しかし、得られた成型体100の強度は極端に低いものであった。
実施例1で得た成型体100を、スピーカーボックス200とした。
スピーカーボックス200の音響特性として、内部損失(tanδ)を、スピーカーボックス200の任意の5カ所で計測したところ、その値の平均値は約0.08であり、大きな内部損失を有していた。
したがって、このスピーカーボックス200は、その内部に収容したスピーカーが発する音の共振を適切に抑制することができる。そして、このスピーカーボックス200を用いると、クリアな音を発するスピーカーユニットを提供することができる。
(1)上記実施形態では、多孔質粒子2がセルロースで成る場合を例示した。
しかしながら、多孔質粒子2は他の吸水性の多孔質粒子、たとえば、メソポーラスシリカとすることもできる。
しかしながら、CNFスラリー11は、水とともに、有機溶剤、たとえばエタノールやメタノールなどのアルコールを含有することもできる。CNFスラリー11がエタノールやメタノールなどのアルコールを含有すると、半固形物3aを乾燥する場合に、乾燥速度を向上させることができる場合がある。
しかしながら、金型5は、必ずしも可塑性を有する必要はなく、たとえば固い金属で形成することもできる。また、金型5は、多孔質で通気性のある材質、たとえば焼き物(セラミックス)で形成することもできる。
金型5を、多孔質で通気性のある材質で形成すると、半固形物3aを乾燥する場合に、乾燥速度を向上させることができる場合がある。
また、金型5を、半透膜で形成することもできる。金型5を、半透膜で形成すると、浸透圧を利用して、半固形物3aから脱水して乾燥を促進することができる場合がある。
このように金型5を、多孔質で通気性のある材質で形成したり、金型5を、半透膜で形成したりした場合、ビーズ状の高分子吸収材を利用して、金型5を介した脱水を促進することもできる。
しかしながら、半固形物3aを乾燥する場合に、半固形物3aを加熱して乾燥を促進する場合がある。半固形物3aを加熱する方法としては、熱風を利用(たとえば、熱風を吹き付ける)したり、マイクロ波を照射したりする方法を採用することができる。また、半固形物3aを乾燥する場合に、減圧環境下で乾燥を促進する場合もある。
また、本発明は、スピーカーボックスに適用できる。
2 :多孔質粒子
100 :成型体(セルロース含有固形物)
200 :スピーカーボックス
Claims (5)
- 吸水性の多孔質粒子と、セルロースナノファイバーとを含み、
前記多孔質粒子が、セルロースで形成されているセルロース含有固形物。 - 前記セルロースナノファイバーを、1体積%以上10体積%未満含有する請求項1に記載のセルロース含有固形物。
- 前記セルロースナノファイバーの繊維長が、50μm以上300μm未満である請求項1または2に記載のセルロース含有固形物。
- 吸水性の多孔質粒子と、セルロースナノファイバーとを含むセルロース含有固形物を成型したスピーカーボックス。
- 請求項1から3のいずれか一項に記載のセルロース含有固形物を成型したスピーカーボックス。
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