JP6959992B2 - タービン及びターボチャージャ - Google Patents

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Description

本開示は、タービン及びターボチャージャに関する。
タービン動翼に流入する排ガス流れを調整するノズルベーンを備えたターボチャージャが用いられている。
例えば、特許文献1には、タービンインペラの外周側に設けられる流れ空間(スクロール流路)からタービンインペラへ流入する排ガスが通る流れ空間(中間流路)にガイドベーン(ノズルベーン)が設けられたターボチャージャが開示されている。上述の中間流路は、ガイドベーンを支持する翼支持リングと、該翼支持リングに向き合うように配置されるカバーディスクとの間に形成されている。ガイドベーンは、翼支持リングを貫通する翼支持ピンを介して翼支持リングに回転可能に取り付けられている。また、翼支持リングとともに中間流路を形成するカバーディスクには、翼支持ピンの延長線上に、該翼支持ピンと同じ方向に延びる貫通孔が設けられている。これにより、カバーディスクの両側の圧力差(すなわち、スクロール流路と中間流路の圧力差)に起因する力を、ガイドベーンを介して翼支持ピンに対して与えることで、翼支持ピンに作用する力を相殺し、ガイドベーン等の摩耗を抑制するようになっている。
米国特許出願公開第2013/0272847号明細書
ところで、本発明者らの鋭意検討の結果、ノズルベーンを備えたターボチャージャの運転中に、ハウジング内部で圧力分布が生じ、特に、スクロール流路を形成するハウジングの壁面と、ノズルベーンが設けられる中間流路を形成するプレートとの間に形成される隙間の圧力が比較的大きくなるのに対し、ノズルベーンの負圧面近傍の圧力が低くなることがわかった。上述の隙間とノズルベーンの負圧面近傍との間の圧力差は、タービンにおける圧力損失の原因となり得るため、この圧力差を低減することが望まれる。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、ハウジング内部の圧力分布に起因する圧力損失を低減可能なタービン及びターボチャージャを提供することを目的とする。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るタービンは、
タービンインペラと、
前記タービンインペラを覆うように設けられ、前記タービンインペラの外周側に位置するスクロール流路及び前記スクロール流路の内周側境界を画定する内周壁部を含むハウジングと、
排ガス流れ方向において前記スクロール流路の下流側且つ前記タービンインペラの上流側に位置する中間流路に設けられる複数のノズルベーンと、
前記内周壁部に対して軸方向に隙間を空けて前記中間流路側に、前記中間流路に面して設けられるプレートと、
を備え、
前記プレートは、前記中間流路と前記隙間とを連通させる少なくとも1つの貫通孔を有し、
前記少なくとも1つの貫通孔は、前記プレートのうち前記中間流路に対向する面上において、前記複数のノズルベーンのうち少なくとも1つの負圧面に対して径方向外側の位置に開口する。
タービンの運転中、ハウジングの内周壁部と、中間流路を形成するプレートとの間の隙間は比較的高圧となる一方、中間流路に設けられたノズルベーンの負圧面近傍には、比較的低圧の領域が形成される場合がある。この場合、ノズルベーン負圧面近傍と上述の隙間との圧力差に起因して、上述の隙間からプレートの外周端を経由してノズルベーンの負圧面へ向かう乱れを伴う流れが生じることがある。このような乱れを伴う流れは圧力損失の原因となり得る。
この点、上記(1)の構成によれば、上述の中間流路と隙間とを連通させるとともに、中間流路側においてノズルベーンの負圧面に対して径方向外側の位置に開口する貫通孔をプレートに設けたので、該貫通孔を介して、中間流路のノズルベーンの負圧面近傍と、隙間とが均圧化される。よって、ノズルベーンの負圧面近傍と隙間との間の圧力差に起因する、隙間からプレートの外周端を経由してノズルベーンの負圧面へ向かう乱れを伴う流れが抑制されるので、タービンにおける圧力損失を低減することができる。
また、ノズルベーンの負圧面近傍と隙間との間に上述の圧力差がある場合、この圧力差に起因してノズルベーンがプレートに向かって傾斜し、ノズルベーンとプレートとの間で摩擦が生じることがある。この点、上記(1)の構成によれば、上述の貫通孔を介して中間流路と隙間とが均圧化されるので、上述の圧力差に起因するノズルベーンの傾斜を抑制することができ、ノズルベーンとプレートとの間の摩耗を抑制することができる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記複数のノズルベーンは、前記中間流路内において周方向に配列されるとともに、前記軸方向に沿って延びる回動軸の周りを回動可能に設けられ、
前記周方向に隣接する一対のノズルベーンの各々のコード方向がなす角度をAとし、前記複数のノズルベーンの各々の開度が最大であるときの前記角度をAとしたとき、
前記角度Aが0.5×A以上となるノズルベーンの大開度域の少なくとも一部において、前記少なくとも1つの貫通孔は、前記面上において、前記負圧面に対して径方向外側の位置に開口する。
本発明者らの知見によれば、タービン運転中に生じ得るノズルベーン負圧面近傍と隙間との圧力差は、ノズルベーンの開度が比較的大きいときに大きくなり、該圧力差に起因する圧力損失が顕著になることが分かった。
この点、上記(2)の構成では、上述の角度Aが0.5×A以上となるノズルベーンの大開度域の少なくとも一部において、貫通孔は、プレートのうち中間流路に対向する面上において、ノズルベーンの負圧面に対して径方向外側の位置に開口するようにしたので、ノズルベーンの大開度域において、該貫通孔を介して、中間流路のノズルベーンの負圧面近傍と、隙間とを確実に均圧化させることができる。よって、上述の圧力差に起因する隙間からプレートの外周端を経由してノズルベーンの負圧面へ向かう乱れを伴う流れを抑制して、タービンにおける圧力損失をより効果的に低減することができる。
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記複数のノズルベーンは、前記軸方向に沿った回動軸の周りを回動可能に設けられ、
前記少なくとも1つの貫通孔は、前記プレートの前記面上において、前記少なくとも1つのノズルベーンの前記回動軸よりも周方向において前記排ガス流れ方向の上流側の位置に開口する。
上記(3)の構成によれば、上述の貫通孔は、プレートのうち中間流路に対向する面上において、ノズルベーンの回動軸よりも周方向において排ガス流れ方向の上流側の位置に開口するようにしたので、ノズルベーンの開度が大きくなるときに、貫通孔の上述の面上での開口がノズルベーンの負圧面に近づきやすい。よって、上述の圧力差に起因する隙間からプレートの外周端を経由してノズルベーンの負圧面へ向かう乱れを伴う流れを抑制して、タービンにおける圧力損失をより効果的に低減することができる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記複数のノズルベーンは、前記中間流路内において周方向に配列されるとともに、前記軸方向に沿った回動軸の周りを回動可能に設けられ、
前記周方向に隣接する一対のノズルベーンの各々のコード方向がなす角度をAとし、前記複数のノズルベーンの開度が最大であるときの前記角度をAとしたとき、
前記角度Aが0.75×Aとなる前記複数のノズルベーンの開度において、前記少なくとも1つの貫通孔と前記少なくとも1つのノズルベーンの前記負圧面との間の径方向における距離Lが前記少なくとも1つの貫通孔の直径D以下である。
上記(4)の構成によれば、上述の角度Aが0.75×Aとなるノズルベーンの開度において、貫通孔とノズルベーンの負圧面との間の径方向における距離Lが該貫通孔の直径D以下となるように設定したので、ノズルベーンの大開度域(例えば、上述の角度Aが0.5×A以上である開度域)において、貫通孔と、ノズルベーンの負圧面とが比較的近くに位置することとなる。よって、ノズルベーンの大開度域において、中間流路のうちノズルベーン負圧面近傍の領域と、上述の隙間とを、貫通孔を介して連通させることができ、該貫通孔を介して、中間流路のノズルベーンの負圧面近傍と隙間とをより円滑に均圧化させることができる。よって、ノズルベーンの負圧面近傍と隙間との間の圧力差に起因する、隙間からプレートの外周端を経由してノズルベーンの負圧面へ向かう乱れを伴う流れをより効果的に抑制することができる。
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記複数のノズルベーンは、前記中間流路内において周方向に配列されるとともに、前記軸方向に沿った回動軸の周りを回動可能に設けられ、
前記複数のノズルベーンの各々の開度が最大であるときに、前記少なくとも1つの貫通孔の少なくとも一部は、前記プレートの前記面において、前記少なくとも1つのノズルベーンから前記径方向の外側にずれて位置する。
上記(5)の構成によれば、ノズルベーンの開度が最大であるときに(即ち、上述の角度AがAであるときに)、貫通孔の少なくとも一部は、プレートの中間流路に対向する面において、ノズルベーンから径方向の外側にずれて位置する。すなわち、ノズルベーンの開度が最大となり、ノズルベーンの負圧面が最も貫通孔に近づくときであっても、該貫通孔のプレートの上述の面における開口が、ノズルベーンによって閉じられない。
よって、ノズルベーンの開度が最大であるときであっても、中間流路のうちノズルベーンの負圧面近傍の領域と隙間とを、貫通孔を介して確実に連通させることができる。これにより、該貫通孔を介して、中間流路のノズルベーンの負圧面近傍と隙間とを均圧化させることができ、ノズルベーンの負圧面近傍と隙間との間の圧力差に起因する、隙間からノズルプレートの外周端を経由してノズルベーンの負圧面へ向かう乱れを伴う流れをより効果的に抑制することができる。
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記軸方向に直交する断面において、前記タービンの回転軸を中心として、スクロール舌部の位置における角度を0度とし、周方向における前記排ガス流れの向きを正の角度方向としたとき、前記少なくとも1つの貫通孔は、220度以上360度以下の範囲内に位置する。
本発明者らの知見によれば、スクロール流路の出口付近において、ノズルベーン負圧面近傍と上述の隙間との圧力差が特に大きくなる傾向があり、タービンにおける圧力損失の要因となり得る乱れを伴う流れが生じやすい。
この点、上記(6)の構成によれば、周方向における上述の角度が220度以上360度以下の範囲内(即ちスクロール流路の出口付近)に、上述の貫通孔を設けたので、当該周方向領域において、該貫通孔を介して、中間流路のノズルベーンの負圧面近傍と隙間とが均圧化される。よって、ノズルベーンの負圧面近傍と隙間との間の圧力差に起因する、隙間からプレートの外周端を経由してノズルベーンの負圧面へ向かう乱れを伴う流れを効果的に抑制して、タービンにおける圧力損失を効果的に低減することができる。
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、
前記軸方向を含む断面において、前記少なくとも1つの貫通孔は、前記少なくとも1つのノズルベーンの前記負圧面の延在方向に沿って延びている。
上記(7)の構成によれば、貫通孔を、ノズルベーンの負圧面の延在方向に沿って延びるように形成したので、貫通孔から中間流路に流入する流れの乱れを低減することができる。よって、タービンにおける圧力損失をより効果的に低減することができる。
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、
前記軸方向を含む断面において、前記負圧面は、前記軸方向に対して傾斜して延在し、前記少なくとも1つの貫通孔は、前記負圧面の前記軸方向に対する傾斜方向に沿って延びている。
上記(8)の構成によれば、ノズルベーンの負圧面が軸方向に対して傾斜している場合に、該負圧面の傾斜方向に沿うように貫通孔を傾斜させて形成したので、上記(7)で述べた効果を得ることができる。
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係るターボチャージャは、
上記(1)乃至(8)の何れかに記載のタービンと、
前記タービンによって駆動されるように構成された圧縮機と、を備える。
上記(9)の構成によれば、上述の中間流路と隙間とを連通させるとともに、中間流路側においてノズルベーンの負圧面に対して径方向外側の位置に開口する貫通孔をプレートに設けたので、該貫通孔を介して、中間流路のノズルベーンの負圧面近傍と隙間とが均圧化される。よって、ノズルベーンの負圧面近傍と隙間との間の圧力差に起因する、隙間からプレートの外周端を経由してノズルベーンの負圧面へ向かう乱れを伴う流れが抑制されるので、タービンにおける圧力損失を低減することができる。
また、ノズルベーンの負圧面近傍と隙間との間に上述の圧力差がある場合、この圧力差に起因してノズルベーンがプレートに向かって傾斜し、ノズルベーンとプレートとの間で摩擦が生じることがある。この点、上記(9)の構成によれば、上述の貫通孔を介して中間流路と隙間とが均圧化されるので、上述の圧力差に起因するノズルベーンの傾斜を抑制することができ、ノズルベーンとプレートとの間の摩耗を抑制することができる。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、ハウジング内部の圧力分布に起因する圧力損失を低減可能なタービン及びターボチャージャが提供される。
一実施形態に係るターボチャージャの回転軸に沿った概略断面図である。 図1に示すタービンの回転軸に直交する概略断面図である。 図2の部分的な拡大図であり、周方向に隣接する一対のノズルベーン及びその周辺を示したものである。 図3に示すタービンの軸方向に沿った断面図である。 図3に対応する図であり、ノズルベーンの開度が最大であるときを示す図である。 典型的なタービンの軸方向に沿った断面図である。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
まず、幾つかの実施形態に係るターボチャージャの全体構成について説明する。
図1は、一実施形態に係るターボチャージャの回転軸Oに沿った概略断面図である。図1に示すように、ターボチャージャ100は、不図示のエンジンからの排ガスにより回転駆動されるように構成されたタービンインペラ4を含むタービン1と、軸受3によって回転可能に支持される回転シャフト2を介してタービン1と接続されたコンプレッサ(不図示)と、を備える。コンプレッサは、タービンインペラ4の回転により同軸駆動されて、エンジンへの吸気を圧縮するように構成されている。
なお、図1に示すタービン1は、作動流体である排ガスが半径方向に流入するラジアルタービンであるが、タービン1の作動方式はこれに限定されない。例えば、幾つかの実施形態では、タービン1は、流入する作動流体が半径方向及び軸方向の速度成分を有する斜流タービンであってもよい。
タービンインペラ4は、該タービンインペラ4を覆うように設けられたハウジング6に収容されており、回転シャフト2に連結されるハブ17と、ハブ17の外周面に周方向に配列される複数の動翼5とを含む。
ハウジング6は、タービンインペラ4の外周側に位置するスクロール流路8と、スクロール流路8の内周側境界9を画定する内周壁部22と、を含む。なお、図1に示すように、ハウジング6は、タービンインペラ4を収容する部分であるタービンハウジング6aと、軸受3を収容する部分である軸受ハウジング6bと、を含んでいてもよい。
タービンインペラ4の外周側には、スクロール流路8からタービンインペラ4へと流入する排ガス流れが通過する中間流路10が形成されている。すなわち、中間流路10は、排ガス流れ方向において、スクロール流路8の下流側かつタービンインペラ4の上流側に位置している。
図2は、図1に示すタービン1の回転軸Oに直交する概略断面図である。なお、図2は、図1に示す矢印Bの方向にタービン1を視た図であり、説明の簡略化のため、ハウジング6のうちスクロール流路8を含む部分の断面、ノズルプレート12、及び、ノズルベーン14が示されており、タービンインペラ4等の図示を省略している。
図1及び図2に示すように、中間流路10には、タービンインペラ4に流入する排ガス流れを調節するための複数のノズルベーン14が周方向に配列されている。
中間流路10は、ノズルベーン14が取り付けられるノズルマウント16と、タービン1の軸方向(以下、単に「軸方向」ともいう。)においてノズルベーン14を挟んで反対側に設けられたノズルプレート12(本発明のプレート)との間に形成される。ノズルマウント16は、ボルト(不図示)等によって軸受ハウジング6bに固定されている。ノズルマウント16とノズルプレート12との間には、例えば軸方向に延びる柱状部材(不図示)等が設けられており、該柱状部材等によって、ノズルプレート12がノズルマウント16から軸方向に離間して支持されている。ノズルプレート12とハウジング6の内周壁部22との間には、環状のシール部材26が設けられており、スクロール流路8からタービンインペラ4の下流側の空間への排ガスの漏れ(即ちタービンインペラ4を介さない排ガスの漏れ)が抑制されるようになっている。
ノズルベーン14は、ノズルマウント16とノズルプレート12との間に延びる前縁34及び後縁36(図2参照)を有する翼型部を含む。また、ノズルベーン14は、前縁34から後縁36にかけて延在する圧力面38及び負圧面40を含む。軸方向に直交する断面(図1参照)において、負圧面40は、圧力面38よりも径方向外側に位置する。
複数のノズルベーン14の各々は、ノズルシャフト20を介してレバープレート18の一端側に連結されている。また、レバープレート18の他端側は、円盤状のドライブリング19に連結されている。
ドライブリング19は、アクチュエータ(不図示)により駆動されて回転軸Oを中心として回転可能になっている。ドライブリング19が回転すると、各レバープレート18が回転し、これに伴い、ノズルシャフト20が、軸方向に沿った回動軸Qを中心として回動して、該ノズルシャフト20を介してノズルベーン14の開度(翼角)が変化するように構成されている。
このように構成されるターボチャージャ100のタービン1では、入口流路30(図2参照)から流入してスクロール流路8を流れた排ガス(図1及び図2の矢印G参照)は、ノズルマウント16とノズルプレート12との間の中間流路10に流れ込み、ノズルベーン14によって流れ方向が制御されて、ハウジング6の中心部へと流れる。そして、タービンインペラ4に作用した後に、排気出口7から外部に排出される。
また、ノズルベーン14の開度を、タービン1に流入する排ガス流量に応じて適切に変化させることにより、ハウジング6内の排ガス通路面積を変化させて、タービンインペラ4への排ガスの流速を調節し、良好なタービン効率を得ることができる。
以下、幾つかの実施形態に係るタービン1の特徴について説明する。
図1及び図2に示すように、ノズルプレート12(プレート)は、ハウジング6の内周壁部22に対して、軸方向に隙間24を空けて中間流路10側に、該中間流路10に面して設けられる。該ノズルプレート12には、中間流路10と隙間24とを連通させる少なくとも1つの貫通孔28が形成されている。そして、この貫通孔28は、ノズルプレート12のうち中間流路10に対向する面13上において、複数のノズルベーン14のうち少なくとも1つ(以下、「貫通孔28に対応するノズルベーン14」等ともいう。)の負圧面40に対して径方向外側の位置に開口する。
なお、本実施形態では、図2に示すように、複数のノズルベーン14の各々に対応して1つずつ貫通孔28が設けられているが(すなわち、ノズルベーン14の枚数と同数の貫通孔28がノズルプレート12に形成されている)、他の実施形態では、複数のノズルベーン14のうちの一部に対応して1つずつ貫通孔28が設けられていてもよい(すなわち、貫通孔28の数はノズルベーン14よりも少なくてもよい)。
ここで、図6は、典型的なタービン1’の軸方向に沿った断面図である。図6に示すタービン1’は、基本的には図1に示すタービン1と同様の構成を有するが、ノズルプレート12に上述の貫通孔28が設けられていない点で図1に示すタービン1と異なる。
タービン1,1’の運転中、ハウジング6の内周壁部22と、中間流路10を形成するノズルプレート12との間の隙間24は比較的高圧(図6の領域P)となる一方、中間流路10に設けられたノズルベーン14の負圧面40近傍には、比較的低圧の領域Pが形成される場合がある(図6参照)。この場合、ノズルベーン14の負圧面40近傍と隙間24との圧力差に起因して、上述の隙間24からノズルプレート12の外周端を経由してノズルベーンの負圧面へ向かう乱れを伴う流れS(図6参照)が生じることがある。このような乱れを伴う流れは圧力損失の原因となり得る。
この点、上述の実施形態に係るタービン1では、中間流路10と隙間24とを連通させるとともに、中間流路10側においてノズルベーン14の負圧面40に対して径方向外側の位置に開口する貫通孔28をプレートに設けたので、該貫通孔28を介して、中間流路10のノズルベーン14の負圧面40近傍と隙間24とが均圧化される。よって、ノズルベーン14の負圧面40近傍と隙間24との間の圧力差に起因する、隙間24からノズルプレート12の外周端を経由してノズルベーン14の負圧面40へ向かう乱れを伴う流れ(図6参照)が抑制されるので、タービン1における圧力損失を低減することができる。
また、ノズルベーン14の負圧面40の近傍と隙間24との間に上述の圧力差がある場合、図6に示すように、この圧力差に起因した力Fがノズルベーン14に作用してノズルベーン14がノズルプレート12に向かって傾斜し、ノズルベーン14とノズルプレート12との間で摩擦が生じることがある。
この点、上述の実施形態に係るタービン1では、上述の貫通孔28を介して中間流路10と隙間24とが均圧化されるので、上述の圧力差に起因するノズルベーン14の傾斜を抑制することができ、ノズルベーン14とノズルプレート12との間の摩耗を抑制することができる。
図3は、図2の部分的な拡大図であり、周方向に隣接する一対のノズルベーン14及びその周辺を示したものである。図4は、図3に示すタービン1の軸方向に沿った断面図であり、すなわち、図1の部分的な拡大図である。図5は、図3に対応する一対のノズルベーン14及びその周辺を示す図であり、ノズルベーン14の開度が最大であるときを示す図である。
ここで、ノズルベーン14の開度は、周方向に隣接する一対のノズルベーン14の各々のコード方向(前縁34と後縁36とを結ぶ方向)がなす角度Aに対応し、角度Aが大きいほど、ノズルベーン14の開度が大きい。図5には、ノズルベーン14の開度が最大のときの周方向に隣接する一対のノズルベーン14が示されており、このとき、これらの一対のノズルベーンのコード方向がなす角度AはA1である。なお、図3及び図5中の直線Lcは、ノズルベーン14のコード方向の直線である。
幾つかの実施形態では、上述の角度Aが0.5×A以上となるノズルベーン14の大開度域の少なくとも一部において、貫通孔28は、例えば図4に示すように、ノズルプレート12の中間流路10に対向する面13上においてノズルベーン14の負圧面40に対して径方向外側の位置に開口する。すなわち、例えば図3〜図4及び図5に示すように、貫通孔28の面13上における開口28aの少なくとも一部は、ノズルベーン14の負圧面40よりも径方向外側に位置する。
本発明者らの知見によれば、タービンの運転中に生じ得るノズルベーン14の負圧面40近傍と隙間24との圧力差(図6参照)は、ノズルベーン14の開度が比較的大きいときに大きくなり、該圧力差に起因する圧力損失が顕著になることが分かった。
この点、上述の実施形態では、上述の角度Aが0.5×A以上となるノズルベーン14の大開度域の少なくとも一部において、貫通孔28が、ノズルプレート12の面13上において、ノズルベーン14の負圧面40に対して径方向外側の位置に開口するようにしたので、ノズルベーン14の大開度域において、該貫通孔28を介して、中間流路10のノズルベーン14の負圧面40近傍と隙間24とを確実に均圧化させることができる。よって、上述の圧力差に起因する隙間24からノズルプレート12の外周端を経由してノズルベーン14の負圧面40へ向かう乱れを伴う流れS(図6参照)を抑制して、タービン1における圧力損失をより効果的に低減することができる。
幾つかの実施形態では、例えば図3及び図5に示すように、貫通孔28は、ノズルプレート12の面13上において、該貫通孔28に対応するノズルベーン14の回動軸Qよりも周方向において排ガス流れ方向の上流側の位置に開口する。すなわち、貫通孔28の面13上における開口28aは、ノズルベーン14の回動軸Qを通る径方向の直線L(図3及び図5参照)よりも周方向において排ガス流れの上流側に位置する。
この場合、上述の貫通孔28は、ノズルプレート12のうち中間流路10に対向する面13上において、ノズルベーン14の回動軸Qよりも周方向において排ガス流れ方向の上流側の位置に開口するようにしたので、ノズルベーン14の開度が大きくなるときに、貫通孔28の面13上での開口28aがノズルベーン14の負圧面40に近づきやすい。よって、上述の圧力差に起因する隙間24からノズルプレート12の外周端を経由してノズルベーン14の負圧面40へ向かう乱れを伴う流れ(図6参照)を抑制して、タービン1における圧力損失をより効果的に低減することができる。
幾つかの実施形態では、上述の角度Aが0.75×Aとなる複数のノズルベーン14の開度において、貫通孔28と該貫通孔28に対応するノズルベーン14の負圧面40との間の径方向における距離L(図3及び図4参照)が、該貫通孔28の直径D(図3参照)以下である。
この場合、上述の角度Aが0.75×Aとなるノズルベーン14の開度において、貫通孔28とノズルベーン14の負圧面40との間の径方向における距離Lが該貫通孔28の直径D以下となるように設定したので、ノズルベーン14の大開度域(例えば、上述の角度Aが0.5×A以上である開度域)において、貫通孔28と、ノズルベーン14の負圧面40とが比較的近くに位置することとなる。よって、ノズルベーン14の大開度域において、中間流路10のうちノズルベーン14の負圧面40近傍の領域と、隙間24とを貫通孔28を介して連通させることができ、該貫通孔28を介して、中間流路10のノズルベーン14の負圧面40近傍と隙間24とをより円滑に均圧化させることができる。よって、ノズルベーン14の負圧面40近傍と隙間24との間の圧力差に起因する、隙間24からノズルプレート12の外周端を経由してノズルベーン14の負圧面40へ向かう乱れを伴う流れS(図6参照)をより効果的に抑制することができる。
幾つかの実施形態では、複数のノズルベーン14の各々の開度が最大であるときに(図5参照)、貫通孔28の少なくとも一部は、ノズルプレート12の面13において、該貫通孔28に対応するノズルベーン14から径方向の外側にずれて位置する。すなわち、貫通孔28の面13上における開口28aは、少なくとも部分的に、ノズルベーン14の負圧面40よりも径方向外側に位置する。
この場合、ノズルベーン14の開度が最大であるときに(即ち、上述の角度AがAであるときに)、貫通孔28の少なくとも一部は、ノズルプレート12の中間流路10に対向する面13において、ノズルベーン14から径方向の外側にずれて位置する。すなわち、ノズルベーン14の開度が最大となり、ノズルベーン14の負圧面40が最も貫通孔28に近づくときであっても、該貫通孔28のノズルプレート12の上述の面13における開口28aが、ノズルベーン14によって閉じられない。
よって、ノズルベーン14の開度が最大であるときであっても、中間流路10のうちノズルベーン14の負圧面40近傍の領域と、隙間24とを、貫通孔28を介して確実に連通させることができる。これにより、該貫通孔28を介して、中間流路10のノズルベーン14の負圧面40近傍と隙間24とを均圧化させることができ、ノズルベーン14の負圧面40近傍と隙間24との間の圧力差に起因する、隙間24からノズルプレート12の外周端を経由してノズルベーン14の負圧面40へ向かう乱れを伴う流れS(図6参照)をより効果的に抑制することができる。
幾つかの実施形態では、例えば図4に示すように、軸方向を含む断面において、貫通孔28は、該貫通孔28に対応するノズルベーン14の負圧面40の延在方向に沿って延びている。
また、幾つかの実施形態では、例えば図4に示すように、軸方向を含む断面において、ノズルベーン14の負圧面40は、軸方向に対して傾斜して延在しており、貫通孔28は、該負圧面40の軸方向に対する傾斜方向に沿って延びている。
なお、図4に示す例示的な実施形態では、軸方向を含む断面において、ノズルベーン14の負圧面40は、ノズルプレート12(シュラウド側)からノズルマウント16(ハブ側)に向かうにつれて、径方向内側に近づくように傾斜している。
この場合、貫通孔28を、ノズルベーン14の負圧面40の延在方向に沿って延びるように形成したので、貫通孔28から中間流路10に流入する流れの乱れを低減することができる。よって、タービンにおける圧力損失をより効果的に低減することができる。
幾つかの実施形態では、軸方向を含む断面におけるノズルベーン14の負圧面40の軸方向に対する角度θ1(図4参照)と、貫通孔28の軸方向に対する角度θ2(図4参照)とは、|θ1−θ2|≦20°を満たしていてもよい。
この場合、上述の角度θ1と角度θ2との差を小さくしたので、貫通孔28が、ノズルベーン14の負圧面40の延在方向に沿って延びるように形成される。よって、貫通孔28から中間流路10に流入する流れの乱れを低減することができ、タービンにおける圧力損失をより効果的に低減することができる。
幾つかの実施形態では、軸方向に直交する断面において、タービン1の回転軸Oを中心として、スクロール舌部32の位置における角度を0度(図2参照)とし、周方向における排ガス流れの向きを正の角度方向としたとき、少なくとも1つの貫通孔28は、220度以上360度以下の範囲内に位置する。なお、図2中の斜線で示す範囲R1は、上記角度範囲(220度以上360度以下の範囲)を示し、角度φは、上記範囲内の角度の一例を示す。
なお、スクロール舌部32とは、ハウジング6のうち、スクロール流路8を形成するスクロール部の巻き始めと巻き終わりの接続部である。
本発明者らの知見によれば、スクロール流路8の出口付近(スクロールの巻き終わり付近)において、ノズルベーン14の負圧面40近傍と隙間24との圧力差が特に大きくなる傾向があり、タービン1における圧力損失の要因となり得る乱れを伴う流れS(図6参照)が生じやすい。
この点、上述の実施形態では、周方向における上述の角度が220度以上360度以下の範囲R1内(即ちスクロール流路8の出口付近)に少なくとも1つの貫通孔28を設けたので、当該周方向領域において、該貫通孔28を介して、中間流路10のノズルベーン14の負圧面40近傍と隙間24とが均圧化される。よって、ノズルベーン14の負圧面40近傍と隙間24との間の圧力差に起因する、隙間24からノズルプレート12の外周端を経由してノズルベーン14の負圧面40へ向かう乱れを伴う流れを効果的に抑制して、タービン1における圧力損失を効果的に低減することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
1 タービン
2 回転シャフト
3 軸受
4 タービンインペラ
5 動翼
6 ハウジング
6a タービンハウジング
6b 軸受ハウジング
7 排気出口
8 スクロール流路
9 内周側境界
10 中間流路
12 ノズルプレート
13 面
14 ノズルベーン
16 ノズルマウント
17 ハブ
18 レバープレート
19 ドライブリング
20 ノズルシャフト
22 内周壁部
24 隙間
26 シール部材
28 貫通孔
28a 開口
30 入口流路
32 スクロール舌部
34 前縁
36 後縁
38 圧力面
40 負圧面
100 ターボチャージャ

Claims (7)

  1. タービンインペラと、
    前記タービンインペラを覆うように設けられ、前記タービンインペラの外周側に位置するスクロール流路及び前記スクロール流路の内周側境界を画定する内周壁部を含むハウジングと、
    排ガス流れ方向において前記スクロール流路の下流側且つ前記タービンインペラの上流側に位置する中間流路に設けられる複数のノズルベーンと、
    前記内周壁部に対して軸方向に隙間を空けて前記中間流路側に、前記中間流路に面して設けられるプレートと、
    前記軸方向にて前記内周壁部と前記プレートの間に設けられ、前記スクロール流路から前記タービンインペラの下流側の空間への排ガスの漏れを抑制するためのシール部材と、
    を備え、
    前記隙間は、前記スクロール流路を介して前記中間流路に連通し、
    前記プレートは、前記中間流路と前記隙間とを連通させる少なくとも1つの貫通孔を有し、
    前記少なくとも1つの貫通孔は、前記プレートのうち前記中間流路に対向する面上において、前記複数のノズルベーンのうち少なくとも1つの負圧面に対して径方向外側の位置に開口し、
    前記複数のノズルベーンは、前記軸方向に沿った回動軸の周りを回動可能に設けられ、
    前記少なくとも1つの貫通孔は、前記プレートの前記面上において、前記少なくとも1つのノズルベーンの前記回動軸よりも周方向において前記排ガス流れ方向の上流側の位置に開口し、
    前記複数のノズルベーンは、前記中間流路内において周方向に配列されるとともに、前記軸方向に沿った回動軸の周りを回動可能に設けられ、
    前記複数のノズルベーンの各々の開度が最大であるときに、前記少なくとも1つの貫通孔の少なくとも一部は、前記プレートの前記面において、前記少なくとも1つのノズルベーンから前記径方向の外側にずれて位置するとともに、前記軸方向から視て、前記プレートの前記面上における前記貫通孔の開口と、前記少なくとも1つのノズルベーンとが部分的に重なる
    タービン。
  2. 前記複数のノズルベーンは、前記中間流路内において周方向に配列されるとともに、前記軸方向に沿って延びる回動軸の周りを回動可能に設けられ、
    前記周方向に隣接する一対のノズルベーンの各々のコード方向がなす角度をAとし、前記複数のノズルベーンの各々の開度が最大であるときの前記角度をAとしたとき、
    前記角度Aが0.5×A以上となるノズルベーンの大開度域の少なくとも一部において、前記少なくとも1つの貫通孔は、前記面上において、前記負圧面に対して径方向外側の位置に開口する
    請求項1に記載のタービン。
  3. 前記複数のノズルベーンは、前記中間流路内において周方向に配列されるとともに、前記軸方向に沿った回動軸の周りを回動可能に設けられ、
    前記周方向に隣接する一対のノズルベーンの各々のコード方向がなす角度をAとし、前記複数のノズルベーンの開度が最大であるときの前記角度をAとしたとき、
    前記角度Aが0.75×Aとなる前記複数のノズルベーンの開度において、前記少なくとも1つの貫通孔と前記少なくとも1つのノズルベーンの前記負圧面との間の径方向における距離Lが前記少なくとも1つの貫通孔の直径D以下である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のタービン。
  4. 前記軸方向に直交する断面において、前記タービンの回転軸を中心として、スクロール舌部の位置における角度を0度とし、周方向における前記排ガス流れの向きを正の角度方向としたとき、前記少なくとも1つの貫通孔は、220度以上360度以下の範囲内に位置する
    ことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載のタービン。
  5. 前記軸方向を含む断面において、前記少なくとも1つの貫通孔は、前記少なくとも1つのノズルベーンの前記負圧面の延在方向に沿って延びている
    ことを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載のタービン。
  6. 前記軸方向を含む断面において、前記負圧面は、前記軸方向に対して傾斜して延在し、前記少なくとも1つの貫通孔は、前記負圧面の前記軸方向に対する傾斜方向に沿って延びている
    ことを特徴とする請求項に記載のタービン。
  7. 請求項1乃至の何れか一項に記載のタービンと、
    前記タービンによって駆動されるように構成された圧縮機と、を備える
    ことを特徴とするターボチャージャ。
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