JP6958919B2 - 硬化促進剤及びラジカル重合性樹脂組成物 - Google Patents

硬化促進剤及びラジカル重合性樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、ラジカル重合性樹脂に好適に適用できる硬化促進剤、及びこれを用いたラジカル重合性樹脂組成物に関する。
ラジカル重合性樹脂組成物は、成形加工、接着剤、プライマー、塗料、また、コンクリートの断面修復やクラック注入、止水等のための無機構造物修復材、さらに、繊維強化複合材料等、幅広い用途で利用されている。
ラジカル重合性樹脂の硬化には、通常、重合開始剤としては有機過酸化物等のレドックス系重合開始剤が用いられ、併せて、樹脂組成物が硬化する時間を短縮する観点から、硬化促進剤が添加される。
硬化促進剤としては、例えば、非特許文献1に、コバルト石鹸にアミン化合物を配合したものが記載されている。
また、特許文献1には、アルカリもしくはアルカリ土類金属化合物が溶解したヒドロキシ官能性溶媒と窒素含有塩基とを含む液状配合物に、遷移金属塩又は錯体に添加することにより、過酸化物を用いたレドックス硬化に適した促進剤溶液を調製する方法が記載されている。
一方、(メタ)アクリル基を有する化合物を用いた二液型硬化性樹脂組成物において、アミン化合物や硫黄化合物を硬化促進剤として用いた場合、可使時間が短く、制御困難となり、また、硬化物の物性が低下することも知られている(特許文献2参照)。
これに対して、特許文献2には、銅化合物及び/又はバナジウム化合物とチオール化合物とサッカリンの添加により、可使時間の長時間化及び硬化物物性の維持の両立を図ることが記載されている。
また、特許文献3においては、人体への影響が懸念されるコバルト金属石鹸を用いない酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤として、脂肪酸鉄塩、鉄錯体及びサレン系化合物を含有するものが提案されている。
特許5809346号公報 国際公開第2013/084753号公報 特開2015−151468公報
松永茂樹,"DIC Technical Review No.5",DIC株式会社編,1999年6月,p.51−56
上記のように、硬化促進剤としては、特定金属化合物と特定配位子を有する化合物とを組み合わせたものが有効であることが経験的に知られている。
しかしながら、上述したような従来の硬化促進剤は、ラジカル重合性樹脂の良好な硬化促進能のみならず、保存安定性及び可使時間の点においても十分な性能を有しているとは言えないものであった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ラジカル重合性樹脂の硬化反応の際、十分な可使時間を保持しつつ、良好な硬化促進能を発揮することができ、かつ、保存安定性にも優れたラジカル重合性樹脂用の硬化促進剤、及びこれを用いたラジカル重合性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、所定の金属含有化合物、チオール化合物及び溶媒を組み合わせた組成物が、ラジカル重合性樹脂の硬化反応において、保存安定性にも、硬化促進能にも優れた硬化促進剤として機能することを見出したことに基づくものである。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]を提供するものである。
[1]金属含有化合物(A)、チオール化合物(B)及び非プロトン性溶媒(C)を含有し、前記金属含有化合物(A)が、金属石鹸(A1)及びβ−ジケトン骨格を有する金属錯体(A2)のうちから選ばれる1種以上の化合物であり、前記チオール化合物(B)が、単官能1級チオール化合物(B1)、2級チオール化合物(B2)及び3級チオール化合物(B3)のうちから選ばれる1種以上の化合物であり、前記非プロトン性溶媒(C)の含有量が、金属含有化合物(A)及びチオール化合物(B)の合計100質量部に対して10〜1000質量部である、ラジカル重合性樹脂用の硬化促進剤。
[2]前記チオール化合物(B)が、下記一般式(Q−1)で表されるエステル構造を有する、上記[1]に記載の硬化促進剤。
Figure 0006958919

(式(Q−1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜18の芳香族基である。*は任意の有機基に連結していることを示す。aは0〜2の整数である。)
[3]前記チオール化合物(B)が、2級チオール化合物(B2)及び3級チオール化合物(B3)のうちから選ばれる1種以上であり、下記一般式(S)で表されるメルカプト基含有カルボン酸と、多価アルコールとのエステル化合物である、上記[2]に記載の硬化促進剤。
Figure 0006958919

(式(S)中、R1は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜18の芳香族基であり、R2は炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜18の芳香族基である。aは0〜2の整数である。)
[4]前記非プロトン性溶媒(C)が、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、ケトン、エステル、及び鎖状炭酸エステルのうちから選ばれる1種以上の化合物である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の硬化促進剤。
[5]前記チオール化合物(B)の含有量が、前記金属含有化合物(A)の金属成分1モルに対して0.01〜15モルである、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の硬化促進剤。
[6]上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の硬化促進剤、及びラジカル重合性化合物(D)を含有する、ラジカル重合性樹脂組成物。
[7]さらにラジカル重合開始剤(E)を含有する、上記[6]に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
本発明の硬化促進剤は、ラジカル重合性樹脂の硬化反応の際、十分な可使時間を保持しつつ、良好な硬化促進能を発揮するものであり、かつ、保存安定性にも優れている。
したがって、本発明の硬化促進剤を用いれば、ラジカル重合性樹脂組成物の硬化物を得る際の作業性を向上させることができる。
また、本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、前記硬化促進剤を含有していることにより、該樹脂組成物の硬化物をより速やかに得ることができる。
以下、本発明の硬化促進剤、及びこれを用いたラジカル重合性樹脂組成物を詳細に説明する。
[硬化促進剤]
本発明の硬化促進剤は、ラジカル重合性樹脂用の硬化促進剤であり、金属含有化合物(A)、チオール化合物(B)及び誘電率10以下の非プロトン性溶媒(C)を含有するものである。そして、金属含有化合物(A)が、金属石鹸(A1)及びβ−ジケトン骨格を有する金属錯体(A2)のうちから選ばれる1種以上の化合物である。また、チオール化合物(B)が、単官能1級チオール化合物(B1)、2級チオール化合物(B2)及び3級チオール化合物(B3)のうちから選ばれる1種以上の化合物である。また、非プロトン性溶媒(C)の含有量が、金属含有化合物(A)及びチオール化合物(B)の合計100質量部に対して、10〜1000質量部である。
このような硬化促進剤は、ラジカル重合性樹脂の硬化反応の際、良好な硬化促進能を発揮することができ、かつ、保存安定性と可使時間とのバランスにも優れたものである。
前記硬化促進剤は、金属含有化合物(A)、チオール化合物(B)及び非プロトン性溶媒(C)以外に、添加されるラジカル重合性樹脂の種類や用途等に応じて、界面活性剤、水、還元剤、可塑剤、重合禁止剤、フィラー、顔料等を含有していてもよい。ただし、十分な効果促進能を発揮させる観点から、硬化促進剤中の金属含有化合物(A)、チオール化合物(B)及び非プロトン性溶媒(C)の合計含有量が、50〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。
(金属含有化合物(A))
本発明の硬化促進剤に用いられる金属含有化合物(A)は、金属石鹸(A1)及びβ−ジケトン骨格を有する金属錯体(A2)から選ばれる化合物である。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
硬化促進剤中の金属含有化合物(A)の含有量は、反応制御、もしくは保存安定性(金属成分の凝集等)、金属化合物の値段(希少性)の観点から、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜40質量%である。
<金属石鹸(A1)>
金属石鹸(A1)は、長鎖脂肪酸又はその他の有機酸の金属塩である。なお、金属石鹸とは、一般的には、ナトリウム塩及びカリウム塩は含まないが、本発明においては、これらの金属塩であってもよい。
長鎖脂肪酸は、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸のいずれでもよい。また、炭素数は、特に限定されるものではないが、非プロトン性溶媒(C)に対する金属石鹸(A1)の溶解性の観点から、6〜30であることが好ましく、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜16である。具体的には、ヘプタン酸、カプリル酸及び2−エチルヘキサン酸等のオクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、トリアコンタン酸、ナフテン酸等の鎖状又は環状構造を有する飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。また、その他の天然物由来のロジン酸、亜麻仁油抽出脂肪酸、大豆油抽出脂肪酸、トール油抽出脂肪酸等も挙げられる。これらのうち、オクタン酸、ナフテン酸が好ましく、より好ましくは2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸である。
その他の有機酸としては、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エノール基等を有する弱酸であって、有機溶剤に溶解するものが好ましい。
カルボキシ基を有する弱酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸等のカルボン酸;クエン酸、胆汁酸、糖酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシケイ皮酸、葉酸等のヒドロキシ酸;アラニン、アルギニン等のアミノ酸;安息香酸、フタル酸等の芳香族酸等が挙げられる。
また、ヒドロキシ基又はエノール基を有する化合物としては、例えば、アスコルビン酸、α酸、イミド酸、エリソルビン酸、クロコン酸、コウジ酸、スクアリン酸、スルフィン酸、タイコ酸、デヒドロ酢酸、デルタ酸、尿酸、ヒドロキサム酸、フミン酸、フルボ酸、ホスホン酸等が挙げられる。
金属塩を構成する金属元素としては、後述するチオール化合物(B)が配位し、錯体化合物を形成し得るものが用いられ、後述する配位安定化エネルギーの観点から、適宜選択して用いることができる。これらのうち、バナジウム、鉄、銅、コバルト、マンガン、チタン、錫、鉛、ビスマス、ジルコニウム、カルシウム等が好ましく、反応性制御の観点から、鉄、コバルト、マンガン、チタン、ジルコニウムがより好ましく、さらに保存安定性の観点から、マンガン、ジルコニウムが好ましい。
金属石鹸(A1)とチオール化合物(B)との配位安定化エネルギーは、Gaussian社製のGaussian09プログラムパッケージを用いて計算することができる。ここで、配位安定化エネルギーとは、チオール化合物(B)の配位反応後と反応前のギブズ自由エネルギーの差である。これが負の値である場合、配位反応が進行しやすく、また、負の値であり、かつ、絶対値が大きいほど、金属石鹸(A1)対してチオール化合物(B)が強く配位することを意味する。
配位反応としては、金属石鹸(A1)にチオール化合物(B)が付加する付加反応と、金属石鹸のカルボキシ基がチオール化合物に置き換わる置換反応の2種類が考えられる。
代表例として、金属石鹸(A1)が(CH3COO)n(n)であり、チオール化合物(B)がCH3OCOCH2CH(CH3)SHである場合、付加反応の反応式は下記式(1)で表され、置換反応の反応式は下記式(2)で表される。
(CH3COO)n(n)+[CH3OCOCH2CH(CH3)SH]m
→(CH3COO)n[CH3OCOCH2CH(CH3)SH]m(n) …(1)
(CH3COO)n(n)+[CH3OCOCH2CH(CH3)SH]m
→(CH3COOH)m+(CH3COO)n-m[CH3OCOCH2CH(CH3)S]m(n) …(2)
式(1)及び(2)において、M(n)はn価の金属原子Mを表す。
非プロトン性溶媒(C)の代表例として酢酸エチルを用い、各種金属元素Mについての配位安定化エネルギーを計算した結果を下記表1にまとめて示す。
なお、計算においては、密度汎関数としてwB97XDを用いた。また、基底関数として、炭素原子、水素原子、酸素原子及び硫黄原子に対しては6−31+G*基底を、ランタノイドに対してはSDD基底を、それ以外の元素に対してはLANL2DZ基底を用いた。溶媒効果を取り込むためにSMD法を適用し、さらに、並進回転のエントロピーを1/2にスケールしてギブズ自由エネルギーを算出した。
Figure 0006958919
表1に示したように、金属石鹸(A−1)において、主な金属元素Mのうち、カルシウム、バリウム及びガリウム以外は、配位安定化エネルギーが負の値となった。このことから、カルシウム、バリウム及びガリウム以外の表1に示す金属元素を含む金属石鹸は、チオール化合物(B)が配位し、錯体化合物を形成しやすいと言える。
金属石鹸(A1)としては、具体的には、2−エチルヘキサン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸マンガン、2−エチルヘキサン酸イットリウム、2−エチルヘキサン酸錫、2−エチルヘキサン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ビスマス(III)、ナフテン酸イットリウム、ナフテン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち、2−エチルヘキサン酸コバルト、2−エチルヘキサン酸マンガン、ナフテン酸コバルトが好適に用いられる。
<金属錯体(A2)>
金属錯体(A2)は、金属元素に、2個のカルボニル基の間に炭素が1個ある構造、すなわち、β−ジケトン骨格を有する化合物が配位した錯体である。例えば、金属元素とアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ベンゾイルアセトン等とが錯形成したものが挙げられ、これらの金属錯体(A2)も前記金属石鹸(A1)と同様の機能を発現する。
金属錯体(A2)を構成する金属元素としては、前記金属石鹸(A1)と同様の金属元素を用いることができる。
金属錯体(A2)としては、具体的には、バナジルアセチルアセトネート、コバルトアセチルアセトネート、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、鉄アセチルアセトネート、アセト酢酸エチルエステルコバルト等が挙げられる。これらのうち、反応性制御等の観点から、チタニウムアセチルアセトネート、チタニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)が好ましい。
(チオール化合物(B))
本発明の硬化促進剤に用いられるチオール化合物(B)は、単官能1級チオール化合物(B1)、2級チオール化合物(B2)及び3級チオール化合物(B3)のうちから選ばれる化合物である。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ここで、「1級チオール化合物」とは、1級炭素原子に結合するメルカプト基を有する化合物を指し、また、「単官能」とは、化合物中にメルカプト基を1個有するものであることを意味する。同様に、「2級チオール化合物」とは、2級炭素原子に結合するメルカプト基を有する化合物、また、「3級チオール化合物」とは、3級炭素原子に結合するメルカプト基を有する化合物を指す。なお、本発明では、2級チオール化合物が、1級炭素原子に結合するメルカプト基を有する場合であっても、該化合物は2級チオール化合物(B2)とみなす。同様に、3級チオール化合物が、1級炭素原子に結合するメルカプト基及び2級炭素原子に結合するメルカプト基の少なくともいずれか1個以上を有する場合も、該化合物は3級チオール化合物(B3)とみなす。
本発明では2級チオール化合物(B2)、3級チオール化合物(B3)は、単官能であっても多官能であってもよい。
硬化促進剤中のチオール化合物(B)の含有量は、金属含有化合物(A)の金属元素へのチオール化合物(B)の配位しやすさ、及びコストと硬化促進能のバランスを考慮して、金属含有化合物(A)の金属成分1モルに対して、0.1〜15モルであることが好ましく、より好ましくは0.3〜12モル、さらに好ましくは0.6〜10モルである。
チオール化合物(B)は、下記一般式(Q−1)で表されるエステル構造を有するものが好ましい。
Figure 0006958919
式(Q−1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜18の芳香族基である。*は任意の有機基に連結していることを示す。aは0〜2の整数である。
式(Q−1)中のaは1であることが好ましく、チオール化合物(B)がこのようなエステル構造を有することにより、下記式(T)で表すように、金属含有化合物(A)の金属元素Mに、カルボニル酸素及びメルカプト基が配位しやすくなり、金属含有化合物(A)の金属元素がチオール化合物(B)に囲まれた形になると考えられる。硬化促進剤を湿潤条件下で用いる場合、このようにチオール化合物(B)が配位することにより、金属元素と水との接触が抑制され、安定的に硬化促進能を発揮することができる。また、3級チオール化合物(B3)は、R1及びR2がともに水素よりもかさ高い置換基であり、メルカプト基の金属元素への配位における立体障害を生じやすいことから、2級チオール化合物(B2)の方が、硬化促進能をより発揮し得るものと考えられる。
Figure 0006958919

(式(T)中、R1及びR2は、前記式(Q−1)におけるR1及びR2と同義であり、Mは、金属含有化合物(A)に由来する金属元素を示す。)
このため、特に、硬化促進剤を湿潤条件下で使用する場合は、後述するラジカル重合性樹脂組成物を硬化させる際の可使時間の観点から、チオール化合物(B)は、2級チオール化合物(B2)及び3級チオール化合物(B3)のうちから選ばれる1種以上であることが好ましく、多官能チオールであることがより好ましい。なお、ここで言う「多官能チオール」とは、官能基であるメルカプト基を2個以上有するチオール化合物を意味する。
これらのうち、下記式(S)で表されるメルカプト基含有カルボン酸と、多価アルコールとのエステル化合物がより好ましい。このような化合物は、メルカプト基含有カルボン酸と多価アルコールとの公知の方法でのエステル化反応により得られる。
Figure 0006958919

(式(S)中、R3は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜18の芳香族基であり、R4は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜18の芳香族基である。aは0〜2の整数である。)
前記式(S)で表されるメルカプト基含有カルボン酸は、2級チオール化合物(B2)の由来化合物である場合、具体的には、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、3−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸等が挙げられる。
また、3級チオール化合物(B3)の由来化合物である場合は、具体的には、2−メルカプトイソ酪酸、3−メルカプト−3−メチル酪酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、2,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールFアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールSアルキレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]フルオレン等の2価のアルコール;グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ヘキサントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ショ糖、2,2−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルオキシフェニル)プロパン等の3価以上のアルコール;その他、ポリカーボネートジオール、ダイマー酸ポリエステルポリオール等が挙げられる。
これらのうち、入手容易性や湿潤条件下でも硬化促進能を発揮させる観点から、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等の2価のアルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2,2−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピルオキシフェニル)プロパン等の3価以上のアルコール;ポリカーボネートジオール、ダイマー酸ポリエステルポリオールが好ましく、官能基数及び蒸気圧の観点から、1,4−ブタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ポリカーボネートジオール、ダイマー酸ポリエステルポリオールがより好ましい。
<1級チオール化合物(B1)>
本発明における1級チオール化合物(B1)は、単官能チオールであり、具体的には、3−メルカプトプロピオン酸、4−メルカプト酪酸等が挙げられる。
多官能1級チオール化合物では、理由は明らかではないが、硬化促進剤の十分な保存安定性が得られず、また、ラジカル重合性樹脂の硬化の際に、十分な硬化促進能が得られない。
<2級チオール化合物(B2)>
2級チオール化合物(B2)としては、具体的には、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、3−メルカプトフタル酸ジ(1−メルカプトエチル)、フタル酸ジ(2−メルカプトプロピル)、フタル酸ジ(3−メルカプトブチル)、エチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、オクタンジオールビス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトプロピオネート)、ブタンジオールビス(2−メルカプトプロピオネート)、オクタンジオールビス(2−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(4−メルカプトバレレート)、ジエチレングリコールビス(4−メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(4−メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(4−メルカプトバレレート)、トリメチロールプロパントリス(4−メルカプトバレレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(4−メルカプトバレレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(4−メルカプトバレレート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトバレレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプトバレレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトバレレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプトバレレート)、オクタンジオールビス(3−メルカプトバレレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトバレレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトバレレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトバレレート)、水素化ビスフェノールAビス(3−メルカプトブチレート)、ビスフェノールAジヒドロキシエチルエーテル−3−メルカプトブチレート、4,4’−(9−フルオレニリデン)ビス(2−フェノキシエチル(3―メルカプトブチレート))、エチレングリコールビス(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)、ブタンジオールビス(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)、オクタンジオールビス(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)、トリス−2−(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)エチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプト−3−フェニルプロピオネート)、1,3,5−トリス[2−(3−メルカプトブチリルオキシエチル)]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等が挙げられる。
2級チオール化合物(B2)のうち、分子中に2級メルカプト基を2個以上有する化合物の市販品としては、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標)BD1」)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標)PE1」)、1,3,5−トリス[2−(3−メルカプトブチリルオキシエチル)]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標)NR1」)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製「TEMB」)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製「TPMB」)等が好適に用いられる。
<3級チオール化合物(B3)>
3級チオール化合物(B3)としては、具体的には、フタル酸ジ(2−メルカプトイソブチル)、エチレングリコールビス(2−メルカプトイソブチレート)、プロピレングリコールビス(2−メルカプトイソブチレート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトイソブチレート)、ブタンジオールビス(2−メルカプトイソブチレート)、オクタンジオールビス(2−メルカプトイソブチレート)、トリメチロールエタントリス(2−メルカプトイソブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトイソブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトイソブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−メルカプトイソブチレート)、フタル酸ジ(3−メルカプト−3−メチルブチル)、エチレングリコールビス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)、プロピレングリコールビス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)、ブタンジオールビス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)、オクタンジオールビス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプト−3−メチルブチレート)等が挙げられる。
(非プロトン性溶媒(C))
本発明の硬化促進剤における非プロトン性溶媒(C)としては、上述した金属含有化合物(A)のチオール化合物(B)への配位安定化エネルギーの観点から、非プロトン性溶媒を用いる。非プロトン製溶媒としては、誘電率10以下の非極性又は低極性溶媒であることが好ましい。
各種非プロトン性溶媒及びプロトン性溶媒について、金属元素Mがマンガンで、n=2、m=1の場合の前記式(1)の付加反応における配位安定化エネルギーを、上記と同様の計算方法により計算した結果を下記表2に示す。
Figure 0006958919
表2に示したように、非プロトン性溶媒において、配位安定化エネルギーが負の値であり、かつ、絶対値が5以上と大きかった。このことから、非プロトン性溶媒を用いることにより、金属石鹸(A1)にチオール化合物(B)が強く配位して錯体化合物を形成すると言える。
これに対して、極性のプロトン性溶媒であるメタノール及び水においては、配位安定化エネルギーが正の値であり、金属石鹸(A1)にチオール化合物(B)が配位した錯体化合物が形成されないと考えられる。
非プロトン性溶媒(C)としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、ケトン、エステル、鎖状炭酸エステル等が好ましい。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
脂肪族炭化水素としては、具体的には、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ホワイトスピリット、無臭ミネラルスピリット(OMS:Odorless Mineral Spirits)等のミネラルスピリット等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、具体的には、ナフテン、ナフテンとパラフィンとの混合物、ベンゼン、トルエン、キノリン等が挙げられる。
エーテルとしては、具体的には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等が挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エステルとしては、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、2,2,4−トリメチルペンタンジオールジイソブチレート、ケトグルタル酸のモノ及びジエステル、ピルベート類、アスコルビン酸のパルミテート等のアスコルビン酸のモノ及びジエステル等が挙げられる。
鎖状炭酸エステルとしては、具体的には、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等が挙げられる。
その他、1,2−ジオキシム類、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリジノン、ジメチルホルムアミド等も用いることができる。
硬化促進剤中の非プロトン性溶媒(C)の含有量は、硬化促進剤の保存安定性、及び十分な可使時間の確保や作業性等の観点から、金属含有化合物(A)及びチオール化合物(B)の合計100質量部に対して、100〜1000質量部、好ましくは100〜500質量部、より好ましくは120〜300質量部である。
[ラジカル重合性樹脂組成物]
本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、前記硬化促進剤及びラジカル重合性化合物(D)を含有するものである。ラジカル重合性化合物は、上述した本発明の硬化促進剤を混合した樹脂組成物として構成されていることにより、速やかに硬化させることができる。
さらに、樹脂硬化物を得るための作業性を向上させ、ラジカル重合性樹脂組成物をより速やかに硬化させる観点から、ラジカル重合性樹脂組成物が、ラジカル重合開始剤(E)を含有していることが好ましい。
(ラジカル重合性化合物(D))
ラジカル重合性化合物(D)は、分子内にエチレン性不飽和炭化水素基を有し、ラジカルによって重合反応が進行する化合物である。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性樹脂組成物中のラジカル重合性化合物(D)の含有量は、ラジカル重合性樹脂の使用目的や用途等に応じて適宜設定されるが、該樹脂組成物の良好な硬化物を得る観点から、10〜99質量%、より好ましくは20〜98質量%、さらに好ましくは50〜98質量%である。
ラジカル重合性樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、硬化促進剤の十分な可使時間及び硬化促進能の観点から、硬化促進剤中の金属含有化合物(A)の合計含有量が、ラジカル重合性化合物(D)100質量部に対して、0.01〜5質量部となる量であることが好ましく、より好ましくは0.05〜2質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。
同様の観点から、ラジカル重合性樹脂組成物においては、硬化促進剤中のチオール化合物(B)の合計含有量が、ラジカル重合性化合物(D)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。
ラジカル重合性化合物(D)は、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂等のビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ラジカル重合性不飽和単量体、前記樹脂とラジカル重合性不飽和単量体との混合物等が挙げられる。これらのうち、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、また、これらの各樹脂と、ビニル基や(メタ)アクリロイル基等を有するラジカル重合性不飽和単量体との混合物が好ましい。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、また、(メタ)アクリロイル基とは、クリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
(ラジカル重合開始剤(E))
ラジカル重合開始剤(E)は、ラジカル重合性樹脂組成物のラジカル重合反応を開始させる硬化剤である。このため、ラジカル重合性樹脂組成物に対して、別途添加してもよいが、ラジカル重合性樹脂組成物中に予め含有させておくことにより、本発明の硬化促進剤と併せて、樹脂組成物の硬化物をより速やかに得ることができる。
ラジカル重合性樹脂組成物中のラジカル重合開始剤(E)の含有量は、ラジカル重合性樹脂化合物(D)の種類や該樹脂組成物の使用条件、反応条件等に応じて適宜設定される。通常、ラジカル重合性化合物(D)100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部である。
ラジカル重合開始剤(E)の種類は、ラジカル重合性樹脂化合物(D)の種類や該樹脂組成物の使用条件、反応条件等に応じて適宜選択されるが、公知の熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤等を用いることができる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
熱ラジカル重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド系、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル系、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド系、ジクミルパーオキサイド等ジアルキルパーオキサイド系、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、アルキルパーエステル系、パーカーボネート系等の有機過酸化物が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤としては、具体的には、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン、ベンジル、メチルオルソベンゾイルベンゾエート等のベンゾフェノン系、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン系、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系等が挙げられる。
(用途、及びその他の成分)
ラジカル重合性樹脂組成物は、接着剤、プライマー、塗料、コンクリートの断面修復、クラック注入、止水等のための無機構造物修復材、繊維強化複合材料等の様々な用途に使用することができる。
塗料として用いる場合には、ラジカル重合性樹脂組成物中に着色剤を含有させてもよく、また、無機構造物修復材として用いる場合には、充填材を含有させてもよい。また、繊維を含有させて繊維強化複合材料として用いる等、各種用途に応じて機能発現に必要な成分をラジカル重合性樹脂組成物に含有させることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
[硬化促進剤の調製]
各実施例及び比較例で用いた硬化促進剤の原料の詳細は以下のとおりである。
<金属含有化合物(含有液)>
(A1−1)オクチル酸マンガン(2−エチルヘキシル酸マンガン);東栄化工株式会社製「ヘキソエートマンガン」、金属石鹸、マンガン含有量8質量%、溶媒:ミネラルスピリット、分子量341.35
<単官能1級チオール化合物>
(B1−1)3MPA:3−メルカプトプロピオン酸;アルドリッチ社製、分子量106.14
<多官能1級チオール化合物>
(B’1−1)TMMP:トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート);淀化学株式会社製、3官能、分子量398.50
(B’1−2)・TBMPIC:トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート;SC有機化学株式会社製、3官能、分子量525.62
(B’1−3)PEMP:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート);SC有機化学株式会社製、4官能、分子量488.64
<2級チオール化合物>
(B2−1)3MBA:3−メルカプト酪酸;淀化学株式会社製、単官能、分子量120.17
(B2−2)BD1:1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン;昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標)BD1」、2官能、分子量299.43
(B2−3)TMPB:トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート);昭和電工株式会社製「TPMB」、3官能、分子量440.64
(B2−4)NR1:1,3,5−トリス[2−(3−メルカプトブチリルオキシ)エチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン;昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標)NR1」、3官能、分子量567.67
(B2−5)PE1:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート);昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標)PE1」、4官能、分子量544.76
<3級チオール化合物>
(B3−1)TPMIB:下記合成例1で合成したトリメチロールプロパントリス(2−メルカプトイソブチレート)、3官能、分子量440.64
<溶媒>
(C−1)酢酸エチル;三協化学株式会社製、非プロトン性、誘電率6.0(25℃)
(C−2)トルエン;純正化学株式会社製、非プロトン性、誘電率2.4(25℃)
(C’−1)メタノール;三協化学株式会社製、プロトン性、誘電率32.6(25℃)
(C’−2)水;プロトン性、誘電率78.4(25℃)
(合成例1)トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトイソブチレート)(TPMIB)の合成
トリメチロールプロパン(東京化成株式会社製)2.68g(20mmol)、2−メルカプトイソブタン酸(昭和電工株式会社製)7.57g(63mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物0.23g(1.2mmol)、トルエン(純正化学株式会社製)20gを100mLナスフラスコに仕込み、ディーン・スターク装置及び冷却管を装着した。
内容物を撹拌しながら、145℃のオイルバスを用いて加熱した。3時間撹拌した後、室温まで放冷し、5質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液50mlにて中和した。更に有機層をイオン交換水にて2回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにて脱水・乾燥した後、トルエンを留去し、残分をシリカゲルによるカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコーゲルC−200、展開溶媒:n−ヘキサン/酢酸エチル=5/1(体積比))にて精製し、白色結晶のTPMIBを得た。
(実施例1〜9、比較例1〜6)
下記表3に示す配合にて、金属含有化合物に溶媒を加え、次いで、チオール化合物を加えて撹拌混合することにより、硬化促進剤を調製した。
[保存安定性評価試験]
上記各実施例及び比較例で調製した硬化促進剤を、ガラス製の50mlサンプル瓶に入れて密閉し、このサンプル瓶を40℃の恒温器内に静置し、28日間保存した。
28日経過後の硬化促進剤の状態を目視にて観察することにより、保存安定性を評価した。これらの評価結果を表3に示す。
Figure 0006958919
表3に示した結果から分かるように、実施例1〜9の硬化促進剤は、特に変化はなく、十分な保存安定性を有していることが認められた。
これに対して、1級多官能チオール化合物を用いた場合(比較例1〜3)は、一部沈殿を生じ、混合すれば溶媒に再溶解することができたが、保存安定性が十分とは言えないものであった。
また、非プロトン性溶媒が金属含有化合物及びチオール化合物の合計質量よりも少ない場合(比較例4〜6)、比較例4においては、一部結晶化が生じ、溶媒に再溶解することは困難であった。プロトン性溶媒を添加した場合(比較例5及び6)は、硬化促進剤が層分離していた。
[ラジカル重合性樹脂組成物試料の調製]
JIS K 6901:2008の「5.9 常温硬化特性(発熱法)」に準じて、後述する硬化促進能評価試験用のラジカル重合性樹脂組成物試料を調製した。
下記のラジカル重合性樹脂組成物試料に用いたラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤の詳細は以下のとおりである。
<ラジカル重合性化合物>
(D−1)ビニルエステル樹脂;昭和電工株式会社製「リポキシ(登録商標) NSR−1000」
<ラジカル重合開始剤>
(E−1)クメンハイドロパーオキサイド;日油株式会社製「パークミル(登録商標)H−80」
(実施例10〜18、比較例7〜10)
ラジカル重合性化合物(D−1)100gに、上記の保存安定性評価試験を実施した後の各硬化促進剤を下記表4に示す配合にて添加し、さらに、ラジカル重合開始剤(E−1)1.0gを添加混合し、ラジカル重合性樹脂組成物試料を得た。
なお、比較例5及び6の硬化促進剤は、分離していたため、これらを用いたラジカル重合性樹脂組成物試料は調製しなかった。
(参考例1)
ラジカル重合性化合物(D−1)100gに、硬化促進剤13と同じ組成(金属含有化合物含有液(A1−1)1g、及び2級チオール化合物(B2−2)1.0gで、各成分を添加し、さらに、ラジカル重合開始剤(E−1)1.0gを添加して混合し、ラジカル重合性樹脂組成物試料を得た。
[硬化促進能評価試験]
JIS K 6901:2008の「5.9 常温硬化特性(発熱法)」に準じて、ゲル化時間(30℃になるまでの時間)、最小硬化時間(最高温度になるまでの時間)、及び最高発熱温度(最高温度)を測定することにより、硬化促進剤の硬化促進能を評価した。これらの評価結果を表4に示す。
なお、各温度の測定は、上記各実施例、比較例及び参考例で製造したラジカル重合性樹脂組成物試料を、設定温度25℃の恒温水槽中に予め設定した試験管(外径18mm、長さ165mm)に100mmの深さまで入れ、この充填物の温度を熱電対で測定することにより行った。
Figure 0006958919
表4に示した結果から分かるように、実施例1〜9の硬化促進剤(No.1〜9)を用いた場合(実施例10〜18)は、金属含有化合物及びチオール化合物をそれぞれ添加した場合(参考例1)と、ゲル化時間、最小硬化時間及び最高発熱温度はほぼ同等であった。このことから、本発明の硬化促進剤は、ラジカル重合性樹脂の硬化の際、十分な可使時間を保持しつつ、良好な硬化促進能を発揮し得ると言える。
これに対して、一部沈殿を生じた比較例1〜3の硬化促進剤(No.10〜12)を用いた場合(比較例7〜9)は、参考例1と比較して、ゲル化時間及び最小硬化時間が長く、また、最高発熱温度が低かった。これらの硬化促進剤は、保存安定性試験中に、1級多官能チオール化合物の一部がジスルフィド化の副反応を生じ、硬化促進能が低下したものと考えられる。
なお、一部結晶化を生じた比較例4の硬化促進剤(No.13)を用いた場合(比較例10)においては、結晶以外の溶液部分のみを用いたが、全く反応が進行しなかった。

Claims (5)

  1. 金属含有化合物(A)、チオール化合物(B)及び非プロトン性溶媒(C)を含有し、
    前記金属含有化合物(A)が、金属石鹸(A1)及びβ−ジケトン骨格を有する金属錯体(A2)のうちから選ばれる1種以上の化合物であり、
    前記チオール化合物(B)が、2級チオール化合物(B2)及び3級チオール化合物(B3)のうちから選ばれる1種以上の化合物であり、下記一般式(S)で表されるメルカプト基含有カルボン酸と、多価アルコールとのエステル化合物であり、
    Figure 0006958919

    (式(S)中、R 3 は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜18の芳香族基であり、R 4 は炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜18の芳香族基である。aは0〜2の整数である。)
    前記非プロトン性溶媒(C)の含有量が、金属含有化合物(A)及びチオール化合物(B)の合計100質量部に対して100〜1000質量部である、ラジカル重合性樹脂用の硬化促進剤。
  2. 前記非プロトン性溶媒(C)が、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、ケトン、エステル、及び鎖状炭酸エステルのうちから選ばれる1種以上の化合物である、請求項に記載の硬化促進剤。
  3. 前記チオール化合物(B)の含有量は、前記金属含有化合物(A)の金属成分1モルに対して0.1〜15モルである、請求項1又は2に記載の硬化促進剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化促進剤、及びラジカル重合性化合物(D)を含有する、ラジカル重合性樹脂組成物。
  5. さらにラジカル重合開始剤(E)を含有する、請求項に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
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