JP2015151468A - 酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤、印刷インキ及び塗料 - Google Patents

酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤、印刷インキ及び塗料 Download PDF

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Abstract

【課題】人体への影響が懸念されるコバルト金属石鹸を使用しなくても、コバルト金属石鹸が有する優れた硬化性能と同等以上の硬化性能を有し、有機溶剤への溶解性が高く、屋外での使用も可能な、汎用性に優れる酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤と、これを用いた印刷インキ及び塗料を提供すること。【解決手段】脂肪酸鉄塩(A)、又はβ−ジケトエステル(b1)、β−ジケトン(b2)若しくはβ−ジカルボン酸エステル(b3)を含有する鉄錯体(B)と、サレン系化合物(C)と、を含有することを特徴とする酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤、及びこれを用いた印刷インキ及び塗料。【選択図】 なし

Description

本発明は、酸化重合型不飽和樹脂の硬化性に優れる硬化促進剤と、これを用いた印刷インキと塗料に関する。
印刷インキ、塗料など、構成成分として酸化重合型樹脂を用いる分野においては該樹脂を乾燥させるための硬化促進剤としてドライヤーが添加される。該インキや塗料に用いられるドライヤーとしては、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛等の重金属と種々のカルボン酸との金属塩(以下、「金属石鹸」と略記することがある。)が一般的である。
コバルト金属石鹸は、優れた乾燥性能を有しているが、さらなる乾燥性能を得るため、多量に用いるとインキや塗膜の表面乾燥が非常に早く進行してしまい、シワや縮みの原因となる問題があった。そこで、このしわや縮みを防止しつつ、高い乾燥性能を得る方法として、コバルト金属石鹸とビピリジルとを併用した硬化促進剤が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この硬化促進剤は、しわや縮みを防止し、かつ高い乾燥性能を有していた。
しかし、コバルト化合物は、国際がん研究機関の発ガン性リスク一覧において「ヒトに対する発癌性が疑われる」とされるグループ2Bにリストアップされており発ガン性が懸念される点、金属コバルトは希少金属であるため供給が不安定であり、コバルト金属石鹸はコスト的に高価である点などがあり、コバルト金属石鹸の使用量を低減あるいは使用しないで、高い乾燥性能を有する硬化促進剤が求められている。
コバルト金属石鹸を用いることなくシワや縮みを防止するする方法として、マンガン金属石鹸とビピリジルとを併用した乾燥促進剤(硬化促進剤)が、前記特許文献1が開示される以前にすでに提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、特許文献2に記載されている乾燥促進剤は、コバルト金属石鹸を全く用いない利点はあるものの、印刷インキや塗料の硬化促進剤として用いた場合、乾燥時間が長くなってしまう問題がある。
実用的な乾燥時間で使用可能な硬化促進剤として、脂肪酸マンガン塩と特定のアミノアルコールとを併用することが提案されている(例えば、特許文献3〜6参照)が、依然としてコバルト金属石鹸に匹敵するような硬化性が得られていない。
一方、植物性油を含有する酸化重合性化合物の硬化触媒として、特定の四座配位子化合物と金属とからなる錯体を用いる方法が提供されている(例えば、特許文献7参照。)が、植物性油としてカシュー樹より得られるカシューナット殻液のごとき、アナカルド酸、アナギガン酸、ペランジュ酸、ギンクゴ酸、ギンクゴリン酸、カルダノール、カルドール、メチルカルドール、ウルシオール、チチオール、レンゴール、ラッコール等のフェノール化合物を50%以上含有するものに限定されている。即ち、当該文献における硬化反応は、フェノール化合物が脱水素反応を受けて生成した、フェノキシラジカルのラジカルカップリング反応によるものであるため、フェノール性化合物を含有しない系での使用は不可能である。更に、この錯体は有機溶剤への溶解性に乏しいため、汎用のインキ又は塗料用組成物への展開が困難である。また、系内で錯体を形成させて硬化反応を行うこともできるとされているが、当該系内に過酸化水素水、エチレンジアミン等、屋外での取り扱いが困難である材料を用いなければならず、やはり汎用性に劣るものである。
特開平06−172689号公報 米国特許第2565897号明細書 国際公開2011/158694号 国際公開2013/077267号 国際公開2013/084823号 国際公開2013/084824号 国際公開2001/000702号
本発明が解決しようとする課題は、人体への影響が懸念されるコバルト金属石鹸を使用しなくても、コバルト金属石鹸が有する優れた硬化性能と同等以上の硬化性能を有し、有機溶剤への溶解性が高く、屋外での使用も可能な、汎用性に優れる酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤と、これを用いた印刷インキ及び塗料を提供することである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、脂肪酸金属塩として、非コバルトの脂肪酸鉄塩又は鉄錯体と、下記一般式(4)に示すようなサレン系化合物とを混合して使用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、脂肪酸鉄塩(A)、又は下記一般式(1)
Figure 2015151468
〔式(1)中、Rは炭素数が1〜4のアルキル基またはアルケニル基であり、Rは炭素数が1〜4のアルキル基である〕
で表されるβ−ケトエステル(b1)、下記一般式(2)
Figure 2015151468
〔式(2)中、R、Rはそれぞれ独立に炭素数が1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基である〕で表されるβ−ジケトン(b2)若しくは下記一般式(3)
Figure 2015151468
〔式(3)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である〕
で表されるβ−ジカルボン酸エステル(b3)、を含有する鉄錯体(B)と、
下記一般式(4)
Figure 2015151468
〔式(4)中、R、R11はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基又は置換アミノ基を表し、R、R12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表し、R10、R13はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、又は置換炭化水素基を表し、R14は二価の炭化水素基又は置換炭化水素基を表す。RとRとが及び/又はR11とR12とが環を形成してもよい。〕で表される化合物(C)と、を含有することを特徴とする酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤を提供するものである。
また、本発明は、前記酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤と酸化重合型不飽和樹脂を含有することを特徴とする印刷インキ及び塗料を提供するものである。
本発明の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤は、金属コバルトが有する発ガン性の懸念、原料の供給不安及びコスト高の問題を解決し、硬化時間が短く、優れた硬化性能を有している。更に汎用の有機溶剤への溶解性にも優れ、屋外での使用も可能であり、平版印刷用インキに代表される酸化重合乾燥型印刷インキや塗料の硬化促進剤として好適に利用できる。
≪酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤≫
本発明の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤は、脂肪酸鉄塩(A)、
又は下記一般式(1)
Figure 2015151468
〔式(1)中、Rは炭素数が1〜4のアルキル基またはアルケニル基であり、Rは炭素数が1〜4のアルキル基である〕
で表されるβ−ケトエステル(b1)、下記一般式(2)
Figure 2015151468
〔式(2)中、R、Rはそれぞれ独立に炭素数が1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基である〕で表されるβ−ジケトン(b2)若しくは下記一般式(3)
Figure 2015151468
〔式(3)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である〕
で表されるβ−ジカルボン酸エステル(b3)、を含有する鉄錯体(B)と、
下記一般式(4)
Figure 2015151468
〔式(4)中、R、R11はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基又は置換アミノ基を表し、R、R12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表し、R10、R13はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、又は置換炭化水素基を表し、R14は二価の炭化水素基又は置換炭化水素基を表す。RとRとが及び/又はR11とR12とが環を形成してもよい。〕で表される化合物(C)
と、を含有するものである。
前記脂肪酸鉄塩(A)としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、オクチル酸(2−エチルヘキサン酸)、ナフテン酸、ネオデカン酸、イソノナン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸、トール油脂肪酸等の鉄塩が挙げられる。特に炭素数6以上の脂肪酸は、汎用の有機溶剤、特に印刷インキや塗料に含まれる植物油やミネラルスピリット、トルエン、キシレン等への溶解性を確保できるものであり、好ましい。脂肪酸に含まれる炭素数の上限としては、工業的に入手が可能である脂肪酸であれば良く、特に限定されるものではないが、取扱いの容易さの観点より、炭素数25以下であることが好ましい。なお、当該脂肪酸に含まれる炭素数は、カルボン酸の炭素原子を含むものである。これらの脂肪酸鉄塩(A)は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記脂肪酸鉄塩(A)の中でも、脂肪酸がオクチル酸、ネオデカン酸、イソノナン酸及びナフテン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸であるものが、印刷インキ及び塗料の原料として用いる溶剤への溶解性が更に優れる点から好ましい。
前記脂肪酸鉄塩(A)は、脂肪酸を水に可溶な塩、通常はナトリウム塩として水に溶解し、これに水に可溶な鉄塩を加え、複分解といわれるイオン交換反応を行い、水洗、脱水、ろ過することによって得ることができる。
また、前記鉄錯体(B)は、下記一般式(1)
Figure 2015151468
〔式(1)中、Rは炭素数が1〜4のアルキル基またはアルケニル基であり、Rは炭素数が1〜4のアルキル基である〕
で表されるβ−ケトエステル(b1)、下記一般式(2)
Figure 2015151468
〔式(2)中、R、Rはそれぞれ独立に炭素数が1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基である〕で表されるβ−ジケトン(b2)若しくは下記一般式(3)
Figure 2015151468
〔式(3)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である〕
で表されるβ−ジカルボン酸エステル(b3)、を含有する。
前記一般式(1)で表されるβ−ケトエステル(b1)としては例えば、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸メチルエステルが挙げられ、前記一般式(2)で表されるβ−ジケトン(b2)としては例えば、アセチルアセトンが挙げられる。また、前記一般式(3)で表されるβ−ジカルボン酸エステル(b3)としては例えば、マロン酸ジメチルエステル、マロン酸ジエチルエステルなどが挙げられる。これらの鉄錯体(B)としては、例えば、アセチルアセトン鉄(III)等が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を併用しても良い。また、前述の脂肪酸鉄塩(A)と併用してもよい。
前記鉄錯体(B)としては、市販されているものをそのまま使用することができる。また、例えば、アセチルアセトンに塩化第二鉄水溶液を加え水浴中で加熱攪拌した後、アンモニア水を加え、析出物を濾過して得られたものを用いてもよい。
前記化合物(C)は下記一般式(4)で表される化合物である。
Figure 2015151468
〔式(4)中、R、R11はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基又は置換アミノ基を表し、R、R12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表し、R10、R13はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、又は置換炭化水素基を表し、R14は二価の炭化水素基又は置換炭化水素基を表す。RとRとが及び/又はR11とR12とが環を形成してもよい。〕
本発明では、この一般式(4)の構造を有するサレン系化合物を用いることで、印刷インキや塗料の乾燥時間(硬化時間)が短く、優れた硬化性能を発揮することができる。また、インキや塗料の表面乾燥が早く進行することにより起こる塗膜表面のシワや縮みの発生を防止することもできる。
前記一般式(4)における置換炭化水素オキシ基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基等で置換された炭化水素オキシ基であり、具体例としては、トリフルオロメトキシ基、2−t−ブチルオキシエトキシ基、3−ジフェニルアミノプロポキシ基等が挙げられる。
又、置換アミノ基としては炭素原子数1〜20の置換アミノ基が好ましく、具体的には、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等が挙げられる。
前記一般式(4)における炭化水素オキシカルボニル基としては、炭素原子数1〜20の炭化水素オキシカルボニル基が好ましく、具体的には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等が挙げられる。
前記一般式(4)における置換炭化水素オキシカルボニル基は、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基等で置換された炭化水素オキシカルボニル基であり、具体例としては、トリフルオロメトキシカルボニル基、2−t−ブチルオキシエトキシカルボニル基、3−ジフェニルアミノプロポキシカルボニル基等が挙げられる。
前記一般式(4)におけるハロゲン原子として好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、さらに好ましくは塩素原子、臭素原子である。
又、前記一般式(4)において、R12は二価の炭化水素基または置換炭化水素基であり、具体例としては、メチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基等のアルキレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,2−シクロヘキシレン基等のシクロアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基等を挙げることができ、好ましくは、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−シクロヘキシレン基であり、印刷インキや塗料に含まれる植物油やミネラルスピリット、トルエン、キシレン等への溶解性がさらに良好という点から、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基が更に好ましい。
前記一般式(4)で表される化合物(C)としては、N,N’−ジサリシリデンエチレンジアミン、N−(3−オキソペンチリデン)−N’−サリシリデンエチレンジアミン、N,N’−ビス(3−メトキシサリチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(5−ブロモサリチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−メトキシサリチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−デシルオキシサリチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビスサリチリデン−1,2−プロパンジアミン、N,N’−ビスサリチリデン−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソブチリデン)−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソブチリデン)−1,2−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(1−メチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソペンチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(3−オキソヘキシリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−メチル−3−オキソペンチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4,4−ジメチル−3−オキソペンチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−フェニル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチル−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノ3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−シアノ−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−ニトロ−3−オキソブチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−カルボキシルエチリデン)エチレンジアミン、N,N’−ビス[2−(メトキシカルボニル)エチリデン]エチレンジアミン、N,N’−ビス[2−(ジメチルアミノカルボニル)エチリデン]エチレンジアミン、N,N’−(1,2−エチレン)−ビス(サリチル酸アミド)、N,N’−(1,2−エチレン)−ビス(マロン酸モノメチルモノアミド)等が挙げられる。
特にこれらの中でも、下記一般式(5)で表される化合物(c)
Figure 2015151468
〔式(5)中、R10、R13はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、又は置換炭化水素基を表し、R14は二価の炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、R15〜R22はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、水酸基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表す。〕
であることが、より硬化時間を短くできる観点から好ましい。
前記一般式(5)中のR10、R13、R14については、前述の一般式(4)で記載したものと同様である。これらの中でも、R10、R13がそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基であり、R14がアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基であり、R15〜R22がそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子であることが好ましい。特に好ましくは、R10、R13がそれぞれ独立に水素原子、メチル基、フェニル基であり、R14が1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,2−フェニレン基であり、R15〜R22がそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ベンジル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、ジメチルアミノ基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子である。
これらの中でも、R10、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22が水素原子であり、R14が炭素数3以上の二価の炭化水素基または置換炭化水素基である化合物を用いることが、印刷インキや塗料に含まれる植物油やミネラルスピリット、トルエン、キシレン等への溶解性がさらに良好となり、好ましい。
硬化性能をより向上するためには、前記脂肪酸鉄塩(A)及び/又は、前記鉄錯体(B)中の鉄金属と前記化合物(C)とのモル数基準での配合比〔(A)+(B)〕/(C)は、0.1から20倍の範囲であることが好ましく、0.2から10倍の範囲であることがより好ましく、0.5から5倍の範囲であることがさらに好ましい。
本発明では、前記脂肪酸鉄塩(A)及び/又は前記鉄錯体(B)と前記化合物(C)とを混合して用いるものであるが、よりハンドリング性を高める観点から、希釈剤(D)を用いて希釈して用いることが好ましい。
前記希釈剤(D)としては、硬化させる酸化重合型不飽和樹脂を溶解させることができる化合物(溶剤)や、当該樹脂を溶解させることができる溶剤と任意に混合しうる化合物(溶剤)であることが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、ヘキサン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、オクチル酸、イソノナン酸、ネオデカン酸、オレイン酸、トール油脂肪酸などの脂肪酸類、大豆油、亜麻仁油、菜種油、サフラワー油等の植物油脂、R−COOR’(式中、Rは炭素原子数5〜21のアルキル基であり、R’は炭素原子数1〜3のアルキル基である。)で表される脂肪酸エステル等を例示することができる。これらの希釈剤(D)は、1種類のみで用いることも2種以上併用することもできる。これらの中でも、酸化重合型不飽和樹脂を用いる印刷インキや塗料に使用されている植物油脂、特に大豆油や、アルコール又はミネラルスピリットを用いることがインキや塗料とした時の均一性に優れ、保存安定性も良好である点から好ましい。
前記R−COOR’は、炭素原子数6〜22のカルボン酸と、炭素原子数1〜3のアルコールとをエステル化反応することにより得られるもので、前記カルボン酸及びアルコールの炭素鎖は、直鎖状でも分岐状でも構わない。
前記R−COOR’としては、例えば、カプロン酸メチルエステル、エナント酸メチルエステル、カプリル酸メチルエステル、ペラルゴン酸メチルエステル、カプリン酸メチルエステル、ラウリン酸メチルエステル、ミリスチン酸メチルエステル、ミリストル酸メチルエステル、オレイン酸メチルエステル、リノール酸メチルエステル、エルカ酸メチルエステル、カプロン酸エチルエステル、エナント酸エチルエステル、カプリル酸エチルエステル、ペラルゴン酸エチルエステル、カプリン酸エチルエステル、ラウリン酸エチルエステル、ミリスチン酸エチルエステル、オレイン酸エチルエステル、カプロン酸プロピルエステル、エナント酸プロピルエステル、カプリル酸プロピルエステル、ペラルゴン酸プロピルエステル、カプリン酸プロピルエステル、ラウリン酸プロピルエステル等が挙げられる。これらの脂肪酸エステルは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの脂肪酸エステルの中でも、カプロン酸メチルエステル、カプリン酸メチルエステル、ラウリン酸メチルエステルは、臭気が少ないため好ましい。特に、ラウリン酸メチルエステルは、本発明の硬化促進剤における粘度を有効に低下させることと、臭気の低減との両立を図ることができるため好ましい。
本発明においては、硬化促進作用は前述の脂肪酸鉄塩(A)及び/又は前記鉄錯体(B)と、前記化合物(C)とを併用することにより達成できるものであるが、用途によって、その他の硬化促進作用を有する化合物を併用してもよい。
その他の硬化促進作用を有する化合物を併用する場合、あらかじめ前述の脂肪酸鉄塩(A)及び/又は前記鉄錯体(B)と、化合物(C)、必要により希釈剤(D)を含む混合物に、その他の硬化促進作用を有する化合物を混合し、硬化促進剤として調整してもよく、又、後述する印刷インキあるいは塗料を調製する際に、前述の脂肪酸鉄塩(A)及び/又は前記鉄錯体(B)と、化合物(C)、必要により希釈剤(D)を含む混合物と、その他の硬化促進作用を有する化合物又はその溶液とを混合し調整する方法であってもよい。
前記その他の硬化促進作用を有する化合物としては、例えば、アルミニウムキレート化合物(E)や、コバルト、鉄以外の金属からなる脂肪酸金属塩を挙げることができる。
前記アルミニウムキレート(E)としては、例えば、アルミニウムジイソプロポキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−i−ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジ−sec−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセトナート)、アルミニウムモノ−アセチルアセトナートビス(エチルアセトアセトナート)等が挙げられる。中でも、印刷インキや塗料の原料として用いられる溶剤への溶解性が良好なことから、アルミニウムジイソプロポキシドモノエチルアセトアセテートが好ましい。
前記アルミニウムキレート(E)の含有量は、脂肪酸鉄塩(A)及び/又は鉄錯体(B)中の鉄金属1質量部に対してアルミニウムキレート(E)中のアルミニウムの量が0.1〜20質量部となるようにアルミニウムキレート(E)を含有させることが好ましく、アルミニウムキレート(E)中のアルミニウムの量が0.25〜10質量部となるようにアルミニウムキレート(E)を含有させることがより好ましい。
前記、コバルト、鉄以外の金属からなる脂肪酸金属塩としては、例えば、脂肪酸ビスマス塩、脂肪酸ジルコニウム塩、脂肪酸バリウム塩、脂肪酸カルシウム塩、脂肪酸ストロンチウム塩、脂肪酸マグネシウム塩、脂肪酸カリウム塩、脂肪酸ニッケル塩、脂肪酸銅塩、脂肪酸亜鉛塩、脂肪酸セリウム塩、脂肪酸バナジウム塩等が挙げられる。中でも脂肪酸ビスマス塩、脂肪酸ジルコニウム塩、脂肪酸亜鉛塩、脂肪酸セリウム塩、脂肪酸バリウム塩、脂肪酸カルシウム塩、脂肪酸ストロンチウム、脂肪酸マグネシウム塩はより乾燥性に優れる点から好ましく、脂肪酸カルシウム塩、脂肪酸ストロンチウム塩は、塗膜の指触乾燥性に優れる点から好ましい。また、脂肪酸としては、溶剤溶解性に優れる観点より、炭素数が6以上のものであることが好ましい。
後述する酸化重合型不飽和樹脂は空気中の酸素によって酸化して不飽和結合が重合し硬化する。一般に脂肪酸鉄塩は、酸化重合型不飽和樹脂を含む印刷インキや塗料等の組成物に空気中の酸素を取り込ませ、この酸素により酸化重合型不飽和樹脂を硬化させる。前記脂肪酸ビスマス塩、脂肪酸ジルコニウム塩、脂肪酸亜鉛塩、脂肪酸セリウム塩、は、脂肪酸鉄塩による空気中の酸素の取り込みを促進することにより酸化重合型不飽和樹脂の硬化性が向上するものと考えられる。
更に前記脂肪酸バリウム塩、脂肪酸カルシウム塩、脂肪酸ストロンチウム塩、脂肪酸マグネシウム塩は、自らが塗料及び印刷インキ中の顔料成分に吸着することによって、前述の脂肪酸鉄塩(A)及び/又は前記鉄錯体(B)の顔料成分への吸着を防止し、硬化性を向上させる効果もある。
前記脂肪酸ビスマス塩は脂肪酸のビスマス塩であり、該脂肪酸としては、例えば、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、イソノナン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸、トール油脂肪酸等が挙げられる。
前記脂肪酸ジルコニウム塩は脂肪酸のジルコニウム塩であり、該脂肪酸としては、例えば、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、イソノナン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸、トール油脂肪酸等が挙げられる。
前記脂肪酸亜鉛塩は脂肪酸の亜鉛塩であり、該脂肪酸としては、例えば、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、イソノナン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸、トール油脂肪酸等が挙げられる。
前記脂肪酸セリウム塩は脂肪酸のセリウム塩であり、該脂肪酸としては、例えば、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、イソノナン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸、トール油脂肪酸等が挙げられる。
前記脂肪酸バリウム塩は脂肪酸のバリウム塩であり、該脂肪酸としては、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、イソノナン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸、トール油脂肪酸等が挙げられる。
前記脂肪酸カルシウム塩は脂肪酸のカルシウム塩であり、該脂肪酸としては、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、イソノナン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸、トール油脂肪酸等が挙げられる。
前記脂肪酸ストロンチウム塩は脂肪酸のストロンチウム塩であり、該脂肪酸としては、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、イソノナン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸、トール油脂肪酸等が挙げられる。
脂肪酸マグネシウム塩は脂肪酸のマグネシウム塩であり、該脂肪酸としては、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、イソノナン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸、トール油脂肪酸等が挙げられる。
併用する脂肪酸の金属塩として脂肪酸ビスマス塩、脂肪酸ジルコニウム塩、脂肪酸亜鉛塩、脂肪酸セリウム塩および脂肪酸バリウム塩からなる群から選ばれる1種以上の脂肪酸の金属塩を用いた場合、脂肪酸鉄塩(A)及び/又は前記鉄錯体(B)中の鉄金属1質量部に対してこれら金属塩中の金属の量が1〜200質量部となるように金属塩を含有させることが好ましく、これら金属塩中の金属の量が3〜40質量部となるように金属塩を含有させることがより好ましい。
併用する脂肪酸の金属塩として脂肪酸カルシウム塩、脂肪酸ストロンチウム塩、脂肪酸マグネシウム塩を用いた場合、脂肪酸鉄塩(A)及び/又は前記鉄錯体(B)中の鉄金属1質量部に対して脂肪酸カルシウム塩、ストロンチウム塩、マグネシウム塩中の金属の量が1〜200質量部となるような量が好ましい。
尚、前記脂肪酸ビスマス塩、ジルコニウム塩、亜鉛塩、セリウム塩、バリウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、マグネシウム塩(以下脂肪酸金属塩)は、市販品として販売されているものを使用することができるが、必要に応じて製造することもできる。脂肪酸金属塩を製造するには、例えば前記した脂肪酸にビスマス、ジルコニウム、亜鉛、セリウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム或いはこれらの水和物、水酸化物、炭酸塩等の化合物を加えた後、高温の雰囲気下で撹拌し、反応させることにより得られる。
また、前記脂肪酸金属塩は、脂肪酸を水に可溶な塩、通常はナトリウム塩として水に溶解し、これに水に可溶な金属塩を加え、複分解といわれるイオン交換反応を行い、水洗、脱水、ろ過することによっても得ることができる。
≪印刷インキ≫
本発明の印刷インキは、本発明の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤と酸化重合型不飽和樹脂と着色剤とを配合したものである。通常、印刷インキは、顔料分散及び造膜機能を有する液状樹脂成分(以下ワニス)、顔料又は染料である着色剤、印刷インキ粘度及び乾燥性を調節する希釈剤からなるものである。本ワニスに用いる酸化重合型不飽和樹脂としては、例えばロジン変性フェノール樹脂や、ポリエステル、アルキッド樹脂、石油樹脂、PET、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等を組み合わせることが可能であり、これらを不飽和二重結合を有する植物油等(以下、乾性油等と記載)で変性または溶解して用いる。更に必要に応じてポリエチレンワックス、フルオンワックス、シリコン化合物などの表面改質剤や、酸化重合速度、あるいは該ワニス組成物の表面皮張り特性を調節するために、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン等の乾燥遅延剤などを併用することも可能である。
更に上記のワニスに着色剤として顔料、染料等を加えることで、空気中の酸素により自然乾燥する酸化重合乾燥型印刷インキを作ることができる。平版オフセットインキ、平版水なしインキ、凸版インキ等への応用が考えられるが、平版オフセットインキの場合にはその乳化性能を調節するために各種界面活性剤を添加しても良い。
本発明の酸化重合乾燥型印刷インキを利用する場合において、乾性油等として、乾性油、乾性油の変成物、半乾性油および半乾性油の変成物から成る群から選ばれる一種以上が一般にインキ中に5〜40質量%の範囲で使用される。
前記乾性油等としては、酸素の存在下で重合するものであれば特に限定しないが、例えば、アマニ油、大豆油、桐油、ヒマシ油、トール油、サフラワー油、シナキリ油、パーム油、エノ油、麻実油、カラシ油、ヌカ油、オイチシカ油、キョウニン油、ククイ油、ダイコン種油、大風子油、ニガー油、ブドウ種子油、ヘントウ油、グレープヒップ油、ゴマ油、コーン油、レイプシード油(ナタネ油)、ヒマワリ油、綿実油、アボガド油(オレイン酸69%)、オリーブ油、ホホバ油(不飽和脂肪酸と不飽和アルコール含有)、落花生油、(カポック油、ツバキ油、茶油)及び又はそれらの変成物を用いることができる。
本発明の印刷インキの製造方法としては、前記ワニス、着色剤、希釈溶剤、本発明の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤、さらに必要に応じてワックス等のその他の添加剤を三本錬肉ロール等の錬肉機で錬肉する方法が挙げられる。この際、本発明の硬化促進剤は、前記脂肪酸エステル又は植物油で希釈したものを用いることが好ましい。
本発明の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤の印刷インキへの配合量は、短い乾燥時間と皮張り防止を両立できることから、印刷インキ中のワニス100質量部に対して、鉄原子に換算して、0.001〜1質量部の範囲が好ましく、0.01〜0.5質量部の範囲がより好ましい。
≪塗料≫
本発明の塗料は、本発明の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤と酸化重合型不飽和樹脂とを含有することを特徴とする。
前記酸化重合型不飽和樹脂としては、例えば、酸化重合硬化型アルキッド樹脂、酸化重合硬化型ウレタン樹脂、酸化重合硬化型変性エポキシ樹脂等が挙げられ、特に本発明では安価で、入手が容易であり、また、塗料の乾燥性(実用性)に優れる点から酸化重合硬化型アルキッド樹脂を用いることが好ましい。
上記酸化重合硬化型アルキッド樹脂としては、多塩基酸成分、多価アルコール成分及び油脂肪酸を主たる原料成分とするエステル系樹脂が挙げられる。
上記多塩基酸成分としては、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸等の二塩基酸;及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられる。更に必要に応じて、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸等の3価以上の多塩基酸;スルホフタル酸、スルホイソフタル酸及びこれらのアンモニウム塩、ナトリウム塩や低級アルキルエステル化物等を使用することができる。また、酸成分として、安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸等の一塩基酸を分子量調整等の目的で併用することができる。
前記多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の二価アルコールが挙げられる。更に必要に応じて、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール;ポリオキシエチレン基を有する多価アルコール等を併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。また、前記酸成分、アルコール成分の一部をジメチロールプロピオン酸、オキシピバリン酸、パラオキシ安息香酸等;これらの酸の低級アルキルエステル;ε−カプロラクトン等のラクトン類等のオキシ酸成分に置き換えることもできる。
前記油脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸等を挙げることができる。
また、アルコール成分の一部としてエポキシ化合物を使用してエポキシ化合物を部分エステル化したエポキシ変性アルキッド樹脂;アルキッド樹脂に無水マレイン酸を導入してなるマレイン化アルキッド樹脂;マレイン化アルキッド樹脂と水酸基含有アルキッド樹脂とを付加してなるグラフト化アルキッド樹脂;アルキッド樹脂にスチレン、(メタ)アクリル酸エステル等のビニルモノマーをグラフト重合させたビニル変性アルキッド樹脂等も使用することができる。
更に、資源のリサイクルのために回収されたポリエチレンテレフタレート(例えば、PETボトル)、産業廃棄物ポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸を主原料とするポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル製品(フィルム、繊維、自動車部品、電子部品等)の製造に際して発生する屑等から再生されたテレフタル酸を主原料とするポリエステル樹脂(以下、「再生PES」と略す。)を利用して、上述のアルコール成分と多塩基酸成分との混合物中に、この再生PESを溶解させ、解重合するとともに、エステル化反応させることにより得られるアルキッド樹脂や、該アルキッド樹脂を無水マレイン酸と反応させて得られるマレイン化アルキッド樹脂、該アルキッド樹脂とエチレン性不飽和基を有さない酸無水物とを反応させて得られる変性アルキッド樹脂等も使用することができる。
本発明の塗料は、更に、有機溶剤を含有することが好ましい。ここで使用し得る有機溶剤としては、例えば、前記炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤が挙げられる。
本発明の塗料は、上記した各成分に加え、更に必要に応じて、顔料等の色材;顔料分散剤、表面調整剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤等の各種塗料用添加剤を含有させることができる。
前記塗料に対する本発明の硬化促進剤の配合量は、特に限定されないが、酸化重合型不飽和樹脂100質量部に対する、鉄金属成分の合計質量が0.001〜1.0質量部の範囲となることが好ましい。
以上詳述した本発明の塗料は、常法により被塗物に塗布、乾燥・硬化させることにより塗膜を得ることができる。ここで、本発明の塗料を塗工することが可能な基材(被塗物)としては、例えば、鉄鋼等が挙げられる。また、塗布後の乾燥条件(硬化条件)としては常乾が挙げられる。更に、本発明の塗料は塗膜を厚くしても優れた硬化性を発現させることができることから、厚塗り用塗料としてとりわけ有用であり、具体的には、硬化塗膜の膜厚を1〜500μmの範囲とすることができる。従って、本発明の塗料は建築用塗料として有用である。
以下に具体的な例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。例中、特に断りのない限り「部」、「%」は質量基準である。
塗料の乾燥性試験方法
調製した塗料を、ガラス板上に3ミルのアプリケーターを使用して塗付した後、ドライングタイムレコーダー(太佑機材株式会社製「型式No.404」)を用いて試験を行った。測定は、恒温恒湿室(25℃、50%RH)内で行った。なお、塗料の乾燥時間は、ガラス板上に塗料を塗布後、ドライングタイムレコーダーの針により塗料の乾燥が始まると見られるキズが、塗料が完全に乾燥して見られなくなるまでの時間とした。
印刷インキの乾燥性試験方法
調製した印刷インキを、ガラス板上に1.5ミルのアプリケーターを使用して塗付した後、ドライングタイムレコーダー(太佑機材株式会社製「型式No.404」)を用いて試験を行った。測定は、恒温恒湿室(25℃、50%RH)内で行った。なお、インキの乾燥時間は、ガラス板上にインキを塗布後、ドライングタイムレコーダーの針によりインキの乾燥が始まると見られるキズが、インキが完全に乾燥して見られなくなるまでの時間とした。
実施例1〜9<硬化促進剤の調製>
脂肪酸鉄塩(A)としてオクチル酸鉄を、鉄錯体(B)としてトリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)を、化合物(C)として、N,N’−ビスサリチリデン−1,2−プロパンジアミン及びN,N’−ビスサリチリデン−1,3−プロパンジアミンを用い、下表に示した割合で希釈剤を配合し、本発明の硬化促進剤1〜9を得た。
Figure 2015151468
実施例10〜20<塗料の調製とその評価)>
チタンホワイト顔料(テイカ株式会社製「JR−701」)1960g、塗料用樹脂「ベッコゾールP−470−70」(DIC株式会社製の分子内に不飽和脂肪酸基を有するアルキッド系樹脂)3340g、ミネラルスピリット280g、皮張防止剤(メチルエチルケトオキシム)20gを3本ロールで混練して得た混合物40gに、上表の硬化促進剤を下表に示す割合(樹脂不揮発分100部に対する鉄金属分の割合)で添加して、塗料を調製した。
得られた塗料について、乾燥性の試験を行った。結果を以下に示す。
Figure 2015151468
実施例21〜24<インキの調製とその評価>
(ワニスの調製)
ロジン変性フェノール樹脂(DIC株式会社製「ベッカサイトF8301」)40部、大豆油(日清オイリオグループ株式会社製「大豆サラダ油(S)」)50部、大豆油脂肪酸メチルエステル(当栄ケミカル株式会社製「TOEOL 3120」)10部及びアルミニウムキレート(ホープ製薬株式会社製「アルミキレート」)0.3部を210℃で1時間加熱してワニスを調製した。
(評価用インキの調製)
実施例1〜4から得られた硬化促進剤1〜4を用いて、下記の配合量で配合した後、三本ロールミルで練肉して評価用印刷インキを調製した。なお、フタロシアニンブルー顔料は、DIC株式会社製「ファーストゲンブルーTGR−L」を用い、大豆油は日清オイリオグループ株式会社製「大豆サラダ油(S)」を用いた。
ワニス 65.5部
フタロシアニンブルー顔料 16部
大豆油 17部
硬化促進剤 下表に示す部
得られた印刷インキについて、乾燥性の試験を行った。結果を以下に示す。
Figure 2015151468
従来技術における硬化促進剤の平均水準的性能を示す目的で、下記比較例1〜3で作成した硬化促進剤を、比較例4〜6に示す割合(樹脂不揮発分100部に対するコバルト金属分、マンガン金属分の割合)で添加して、得られた塗料の乾燥時間を測定した。
比較例1
ナフテン酸コバルト12部及びオクチル酸ジルコニウム38部をミネラルスピリット50部に溶解させて、比較対照用硬化促進剤1’を得た。この硬化促進剤は、コバルト金属石鹸を含む従来技術の金属石鹸の平均水準の性能を示す目的で作成したものである。
比較例2
ナフテン酸マンガン56部及び2,2’−ビピリジル18部をミネラルスピリット26部に溶解させて、比較対照用硬化促進剤2’を得た。
比較例3
オクチル酸マンガン18部、2−[(2−ジメチルアミノエチル)メチルアミノ]エタノール4部、オクチル酸ビスマス50部、ミネラルスピリット13部、大豆油15部を溶解させ、比較対照用硬化促進剤3’を得た。
比較例4
硬化促進剤1を用いるかわりに比較対照用硬化促進剤1’を樹脂不揮発分100部に対するコバルト金属分の割合が0.06%になるように添加した以外は実施例9と同様にして、比較対照用塗料1’を得た。実施例9と同様に乾燥時間を測定し、その結果を下表に示す。
比較例5
硬化促進剤1を用いるかわりに比較対照用硬化促進剤2’を樹脂不揮発分100部に対するマンガン金属分の割合が0.06%になるように添加した以外は実施例9と同様にして、比較対照用塗料2’を得た。実施例9と同様に乾燥時間を測定し、その結果を下表に示す。
比較例6
硬化促進剤1を用いるかわりに比較対照用硬化促進剤3’を樹脂不揮発分100部に対するマンガン金属分の割合が0.06%になるように添加した以外は実施例9と同様にして、比較対照用塗料3’を得た。実施例9と同様に乾燥時間を測定し、その結果を下表に示す。
Figure 2015151468
比較例7
硬化促進剤1を用いる変わりに、オクチル酸カルシウム(DIC株式会社製Ca−OCTOATE 4%)を樹脂不揮発分100部に対するカルシウム金属割合が0.2%になるように添加した以外は実施例9と同様にして比較対照用塗料を作成し、実施例9と同様に乾燥時間を測定したが、24時間で乾燥しなかった。
比較例8
硬化促進剤1を用いる変わりに、オクチル酸ジルコニウム(DIC株式会社製12% Zr−OCTOATE)を樹脂不揮発分100部に対するジルコニウム金属割合が0.2%になるように添加した以外は実施例9と同様にして比較対照用塗料を作成し、実施例9と同様に乾燥時間を測定したが、24時間で乾燥しなかった。
また、印刷インキにおける硬化促進剤の平均水準的性能を示す目的で、比較例9〜10で調製した硬化促進剤4’、5’について、前記実施例19と同様に評価用インキを調製後、得られたインキの乾燥時間を測定した。結果を表に示す。
比較例9
オクチル酸マンガン31部及び2,2’−ビピリジル14部をオレイン酸メチルエステル55部に溶解させて、比較対照用硬化促進剤4’を得た。
比較例10
オクチル酸マンガン31部をオレイン酸メチル69部に溶解させて、比較対照用硬化促進剤5’を得た。
Figure 2015151468
比較例11
鉄塩として硫酸第一鉄を用い、化合物(C)として、N,N’−ビスサリチリデン−1,2−プロパンジアミンを用いて、実施例1と同様の方法で硬化促進剤を調製したが、溶解性が悪く沈殿が析出した。

Claims (12)

  1. 脂肪酸鉄塩(A)、又は下記一般式(1)
    Figure 2015151468
    〔式(1)中、Rは炭素数が1〜4のアルキル基またはアルケニル基であり、Rは炭素数が1〜4のアルキル基である〕
    で表されるβ−ケトエステル(b1)、下記一般式(2)
    Figure 2015151468
    〔式(2)中、R、Rはそれぞれ独立に炭素数が1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基である〕で表されるβ−ジケトン(b2)若しくは下記一般式(3)
    Figure 2015151468
    〔式(3)中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である〕
    で表されるβ−ジカルボン酸エステル(b3)、を含有する鉄錯体(B)と、
    下記一般式(4)
    Figure 2015151468
    〔式(4)中、R、R11はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、アミノ基又は置換アミノ基を表し、R、R12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、炭化水素オキシカルボニル基、置換炭化水素オキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表し、R10、R13はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、又は置換炭化水素基を表し、R14は二価の炭化水素基又は置換炭化水素基を表す。RとRとが及び/又はR11とR12とが環を形成してもよい。〕で表される化合物(C)
    と、を含有することを特徴とする酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤。
  2. 前記化合物(C)が下記一般式(5)
    Figure 2015151468
    〔式(5)中、R10、R13はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、又は置換炭化水素基を表し、R14は二価の炭化水素基又は置換炭化水素基を表し、R15〜R22はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、水酸基、置換炭化水素基、炭化水素オキシ基、置換炭化水素オキシ基、置換アミノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表す。〕で表される化合物(c)である請求項1に記載の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤。
  3. 前記一般式(5)で表される化合物(c)のR10、R13、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22が水素原子であり、R14が炭素数3以上の二価の炭化水素基または置換炭化水素基である請求項2に記載の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤。
  4. 前記脂肪酸鉄塩(A)の脂肪酸の炭素数が6以上である請求項1〜3の何れか1項に記載の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤。
  5. 前記脂肪酸鉄塩(A)の脂肪酸が、オクチル酸、ネオデカン酸、イソノナン酸又はナフテン酸である請求項1〜3の何れか1項に記載の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤。
  6. 前記脂肪酸鉄塩(A)又は前記鉄錯体(B)中の鉄金属が、前記化合物(C)1モルに対して0.1から20モルの範囲である、請求項1〜5の何れか1項に記載の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤。
  7. 更に希釈剤(D)を含有する請求項1〜6の何れか1項に記載の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤。
  8. 前記希釈剤(D)が植物油、アルコール及びミネラルスピリットからなる群から選ばれる1種以上である請求項7に記載の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤。
  9. 更にアルミニウムキレート化合物(E)を含有する請求項1〜8の何れか1項に記載の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤。
  10. 更に脂肪酸ビスマス塩、脂肪酸ジルコニウム塩、脂肪酸亜鉛塩、脂肪酸セリウム塩、脂肪酸バリウム塩、脂肪酸カルシウム塩、脂肪酸ストロンチウム塩及び脂肪酸マグネシウム塩からなる群から選ばれる1種以上の脂肪酸金属塩(F)を含有する請求項1〜9の何れか1項に記載の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤。
  11. 請求項1〜10の何れか1項に記載の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤と酸化重合型不飽和樹脂を含有することを特徴とする印刷インキ。
  12. 請求項1〜10の何れか1項に記載の酸化重合型不飽和樹脂用硬化促進剤と酸化重合型不飽和樹脂を含有することを特徴とする塗料。
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