JP6958318B2 - 電子部品の製造方法および電子部品の製造装置 - Google Patents

電子部品の製造方法および電子部品の製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子部品の製造方法および電子部品の製造装置に関するものである。
電子部品の中には、たとえば特許文献1や特許文献2に示すように、金属磁性粉末を用いて形成されるものがある。特許文献1では、フェライトコアや金属磁性体粉末を圧縮成形した、外観が略T字形状の圧粉コアとコイルとを組み合わせた半製品を金型内に設置する。その後に磁性材料および樹脂を含むスラリー状またはパテ状の混合材(以下、パテ材とする)を、金型内部に所定の低圧で充填し、常温で低圧成形した後に、金型内部から半製品を取り出す。その後に、取り出した半製品に熱硬化処理を行っている。かかるパテ材を用いた成形は、後述する特許文献2に示す粉末の圧縮成形と比較して、成形の際の圧力を低くすることができる、というメリットがある。
また、特許文献2では、金属磁性粉末と熱硬化性の樹脂を混合し、その後に粉末化した、流れ性の良い造粒粉末を形成する。また、上方および下方に圧縮用のパンチを備える金型内部に空芯コイルをセットし、その後に、上述の造粒粉末を金型内部に充填する。その後に、上方および下方のパンチで、コイルと共に造粒粉末を圧縮成形し、その圧縮成形後に金型から半製品を取り出し、その取り出し後に半製品に対して熱硬化処理を行っている。この製造方法では、流れ性の良い造粒粉末がコイルの導線間等のような半製品の細部に入り込むので、半製品に空隙が形成され難い、というメリットがある。
特開2017−37891号公報 特開2012−230972号公報
ところで、上述の特許文献1に開示の製造方法では、パテ材は粘着性が高いので、精度の良い秤量が難しい、という問題がある。また、パテ材は、造粒粉末に比べて流動性は優れるが空気を通し難く内部の空隙に存在する空気が抜け難いため、たとえばコイルの導線間等のような、半製品の細部にパテ材が入り込むのが困難となっている。また、常温で、成形の際の圧力が低い状態での成形には、長時間を要する、という問題もある。
また、上述の特許文献2に開示の製造方法では、圧縮成形の際に、高い圧力(たとえば、3−5ton/cm)が必要である。そのため、造粒粉末と共に金型内部にセットされるコイルを変形させ、それによって所望の特性が得られなくなる、という問題がある。また、上述した変形は、半製品の個体毎に異なるので、完成した製品において、特性のバラつきが生じる、という問題もある。
そのため、造粒粉末の状態で、容易に秤量や金型内部への充填が行えることで、コイルの導線間等のような、半製品の細部に造粒粉末が入り込んで空隙を生じ難い状態とすると共に、パテ材での成形のように、常温で、かつ圧力が低い状態で、成形することが可能な電子部品の製造方法が望まれている。しかしながら、その実現は、非常に困難となっている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、造粒粉末の状態で容易に秤量や金型内部への充填が行えると共に、半製品の細部に造粒粉末が入り込み、しかも常温で、かつ圧力が低い状態で、成形することが可能な電子部品の製造方法および電子部品の製造装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の電子部品の製造方法の一側面は、絶縁被覆を有する導線が巻回されたコイルを備える電子部品の製造方法であって、金型の内筒部にコイルを設置するコイル設置工程と、内筒部に、金属系磁性粉にバインダ樹脂を混合して形成される顆粒が集合した造粒粉末を投入する投入工程と、投入工程における造粒粉末の投入中または投入の後に、バインダ樹脂を溶解、軟化または膨潤させる溶剤を供給する溶剤供給工程と、溶剤供給工程の後に、造粒粉末を加圧成形して成形体を形成する加圧成形工程と、加圧成形工程の後に成形体を熱処理してバインダ樹脂を熱硬化させる熱硬化工程と、を備えることを特徴とする電子部品の製造方法が提供される。
また、本発明の電子部品の製造方法の他の側面は、上述の発明に加えて更に、溶剤供給工程の後に、溶剤を造粒粉末に所定の拡散時間を経過するように拡散浸透させる拡散浸透工程を備える、ことが好ましい。
また、本発明の電子部品の製造方法の他の側面は、上述の発明に加えて更に、投入工程では、造粒粉末の投入を間欠的に行うと共に、溶剤供給工程では、間欠的な造粒粉末の投入中断タイミングにおいて溶剤の供給を行う、ことが好ましい。
また、本発明の電子部品の製造方法の他の側面は、上述の発明に加えて更に、加圧成形工程では、造粒粉末への成形圧力を2kg/cmから200kg/cmの間としている、ことが好ましい。
また、本発明の電子部品の製造方法の他の側面は、上述の発明に加えて更に、溶剤供給工程では、バインダ樹脂に対する溶剤の供給量を15wt%から150wt%の範囲内としている、ことが好ましい。
また、本発明の電子部品の製造方法の他の側面は、上述の発明に加えて更に、加圧成形工程では、溶剤供給工程における溶剤の供給量を100wt%から150wt%の範囲内としたときには造粒粉末への成形圧力を5kg/cmから200kg/cmの間としている、ことが好ましい。
また、本発明の電子部品の製造方法の他の側面は、上述の発明に加えて更に、加圧成形工程では、溶剤供給工程における溶剤の供給量を50wt%から100wt%の範囲内としたときには造粒粉末への成形圧力を50kg/cmから200kg/cmの間としている、ことが好ましい。
また、本発明の電子部品の製造方法の他の側面は、上述の発明に加えて更に、加圧成形工程では、溶剤供給工程における溶剤の供給量を30wt%から50wt%の範囲内としたときには造粒粉末への成形圧力を100kg/cmから200kg/cmの間としている、ことが好ましい。
また、本発明の電子部品の製造方法の他の側面は、上述の発明に加えて更に、加圧成形工程では、溶剤供給工程における溶剤の供給量を15wt%から30wt%の範囲内としたときには造粒粉末への成形圧力を200kg/cmとしている、ことが好ましい。
また、本発明の電子部品の製造装置の一側面は、絶縁被覆を有する導線が巻回されたコイルを備える電子部品を製造する電子部品の製造装置であって、コイルを配置可能な内筒部を備える金型と、内筒部に投入された、金属系磁性粉末にバインダ樹脂を混合して形成される顆粒が集合した造粒粉末に対して、バインダ樹脂を溶解、軟化または膨潤化する溶剤を供給する供給手段と、溶剤が供給された造粒粉末を加圧する加圧手段と、を備えることを特徴とする電子部品の製造装置が提供される。
本発明によると、造粒粉末の状態で容易に秤量や金型内部への充填が行えると共に、半製品の細部に造粒粉末が入り込み、しかも常温で、かつ圧力が低い状態で、成形することが可能となる。
本発明の各実施形態に係る電子部品の構成を示す側断面図である。 本発明の第1実施形態に係る電子部品の製造方法を説明する図であり、半製品が内筒部にセットされた状態を示す図である。 図2の後に、造粒粉末が内筒部に投入された状態を示す図である。 図3の後に、造粒粉末に対して溶剤を供給するイメージを示す図である。 図4の後に、上パンチで上方から蓋をして、溶剤を造粒粉末に拡散浸透させるイメージを示す図である。 図5の後に、上パンチによって造粒粉末を加圧成形するイメージを示す図である。 第1比較例に係る電子部品の製造方法を説明する図であり、半製品が内筒部にセットされた状態を示す図である。 図7の後に、パテ材が内筒部に投入された状態を示す図である。 図8の後に、上パンチをセットする状態を示す図である。 図9の後に、上パンチを内筒部に挿入して、パテ材を加圧成形するイメージを示す図である。 第2実施形態に係る電子部品の製造方法を説明する図であり、コイルが内筒部にセットされた状態を示す図である。 図11の後に、造粒粉末が内筒部に投入された状態を示す図である。 図12の後に、造粒粉末に対して溶剤を供給するイメージを示す図である。 図13の後に、上パンチで上方から蓋をして、溶剤を造粒粉末に拡散浸透させるイメージを示す図である。 図14の後に、上パンチおよび下パンチによって造粒粉末を加圧成形するイメージを示す図である。 第2比較例に係る電子部品の製造方法を説明する図であり、コイルが内筒部にセットされた状態を示す図である。 図16の後に、造粒粉末が内筒部に投入された状態を示す図である。 図17の後に、上パンチおよび下パンチによって造粒粉末を加圧成形するイメージを示す図である。
以下、本発明の各実施の形態に係る電子部品10の製造方法および電子部品10の製造装置について、図面を参照しながら説明する。
<電子部品10の概略的な構成について>
図1は、電子部品10の構成を示す側断面図である。図1に示す電子部品10は、たとえばインダクタであるが、電子部品はインダクタには限られず、トランスであっても良い。この電子部品10は、内部コア20と、コイル30と、外装コア40とを有している。
内部コア20は、図1に示す構成では、棒状の脚部21とプレート状のフランジ部22を備え、これらが一体化されている。そのため、内部コア20を側面視した形状はT字形状に設けられているが、その形状は略T字形状には限られず、棒状やU字形状、E字形状、リング形状等、種々の形状とすることが可能である。
また、内部コア20は1つのコア部材から構成されるものには限られず、2つ以上のコア部材を組み合わせて構成しても良い。この内部コア20は、たとえば金属粒子を圧縮成形することで形成された、いわゆる圧粉コアである。上記の金属磁性粉としては、たとえば純鉄粉、パーマロイ、センダスト、アモルファス金属等の金属系磁性粉に、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、潤滑剤や架橋剤、あるいは必要に応じて無機物等の絶縁物を混合することにより絶縁コーティングされた金属粒子が挙げられるが、これら以外の各種材料を含んでいても良い。
また、コイル30は、内部コア20の少なくとも一部を平角線が巻回するように配置されている。図1に示す構成では、コイル30は、脚部21を巻回する状態で配置されている。コイル30は、図1に示す構成では平角線を巻回して構成されているが、平角線を巻回した構成には限られず、たとえば断面が円形の丸線を巻回して構成されても良い。このコイル30の端末は、外装コア40から外側に突出しており、外部の電気的な接続部位に接続される。
また、外装コア40は、内部コア20およびコイル30を覆うように設けられる。この外装コア40は、後述するように、造粒粉末70を主成分としている。造粒粉末70は、造粒粉(顆粒)の集合体であり、その造粒粉は、鉄を主成分とする鉄系合金の金属系磁性粉に、常温で固体状態のエポキシ樹脂のようなバインダ樹脂を未硬化の状態で混合したものである。この造粒粉を所定の圧力で加圧することで外装コア40が形成されている。なお、造粒粉の集合体の造粒粉末70を形成するために混合されるバインダ樹脂は、上述のエポキシ樹脂に限られるものではなく、常温で固体状態であれば、たとえばシリコン樹脂、ポリイミド樹脂等、エポキシ樹脂以外の樹脂であっても良い。
<電子部品10の製造方法について>
上述したような構成の電子部品10の製造方法について、以下に説明する。なお、以下の説明においては、最初に本発明の第1実施形態に係る製造方法について説明し、その後に、現状の製造方法(第1比較例に係る製造方法)について説明し、その後に両者を比較する。次に、本発明の第2実施形態に係る製造方法について説明し、その後に、現状の別の製造方法(第2比較例に係る製造方法)について説明し、その後に両者を比較する。
[第1実施形態に係る電子部品の製造方法について]
(E11)半製品および造粒粉末の製作
本発明の第1実施形態に係る電子部品10の製造方法としては、先ず、半製品50(図2参照)および造粒粉末70(図3参照)をそれぞれ別途に製作する。造粒粉末70は、上述のように造粒粉(顆粒)の集合体であるが、その造粒粉末は、鉄を主成分とする鉄系合金の金属系磁性粉末に対して、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を混合したものであり、その混合により、未硬化の熱硬化性樹脂が金属系磁性粉末に対してコーティング状態で付着している。かかる造粒粉末70は、顆粒同士で粘着性がほとんどない粉末状であるので、パテ材60と比較して他の部材に粘着しなく、流動性が高い。したがって、後述するように、内筒部102aの半製品50の外面に存在する隙間に容易に充填される。
(E12)半製品のセット(コイル設置工程に対応)
図2は、第1実施形態に係る電子部品10の製造方法を説明する図であり、半製品50が内筒部102aにセットされた状態を示す図である。上述した半製品50を製作した後に、半製品50を金型100にセットする。このとき用いられる金型100は、下型101と臼102とを備えている。下型101は、図2に示す構成では、プレート状に設けられている。この下型101に対して、筒状の臼102を突合せ状態で配置することで、金型100が構成されている。そして、臼102の内筒部102aに、上述の半製品50をセットする。このとき、内部コア20は下型101に載置された状態となっている。
(E13)造粒粉末の投入(投入工程に対応)
上述した半製品50の内筒部102aへのセット後に、規定量の造粒粉末70を内筒部102aに投入する。図3は、図2の後に、造粒粉末70が内筒部102aに投入された状態を示す図である。この造粒粉末70の投入においては、半製品50が造粒粉末70で完全に覆われる状態となる。このとき、50μm〜500μmの粒径を有する細かな造粒粉(顆粒)は、内筒部102aにおいて容易に移動可能であるので、内部コア20とコイル30の微細な隙間や、コイル30の導線の間の隙間といった、半製品50の外面に存在する隙間に移動可能となっている。このとき、金型100に対して、所定の振動数にて振動を加えているが、加えないようにしても良い。
(E14)溶剤の供給(溶剤供給工程に対応)
次に、内筒部102aの造粒粉末70に対して、噴射ノズル104から液状の溶剤80を供給する。図4は、図3の後に、造粒粉末70に対して溶剤80を供給するイメージを示す図である。この溶剤80は、造粒粉末70が粘着性を有するような粘度状となって粉末状態が損なわれる程度にまでは供給せず、造粒粉末70の顆粒が膨潤する程度だけ供給して、上記の粉末状態が維持される程度としている。なお、噴射ノズル104は、供給手段に対応する。
ここで、溶剤80は、造粒粉末70の顆粒のバインダ樹脂を溶解、軟化または膨潤させるものであり、バインダ樹脂の種類に応じて適切なものが選択される。たとえば、バインダ樹脂がエポキシ樹脂である場合には、溶剤80はトルエン、ブチルセロソルブやイソプロピルアルコールを始めとするアルコール系有機溶剤、MEK(メチルエチルケトン;Methyl Ethyl Ketone)のようなケトン系有機溶剤等が好適である。また、バインダ樹脂がシリコン樹脂の場合には、溶剤80はトルエン、MEK(メチルエチルケトン;Methyl Ethyl Ketone)のようなケトン系有機溶剤、エタノールを始めとするアルコール系有機溶剤、NMP(N-メチル-2-ピロリドンN-Methyl-2-Pyrrolidone)、メチルピロリドン等が好適である。また、バインダ樹脂がポリイミド樹脂の場合には、NMP(N−メチルピロリドン)等が好適である。しかしながら、溶剤80はこれらには限られず、バインダ樹脂を溶解、軟化または膨潤させるものであれば、どのようなものであっても良い。
なお、溶剤80の供給は、図4に示すように、造粒粉末70の投入後に行うものとしても良いが、造粒粉末70を内筒部102aに投入している途中段階で、造粒粉末70に対して溶剤80を供給するようにしても良い。たとえば、造粒粉末70の内筒部102aへ投入開始時間T1から投入終了時間T2までの時間(すなわち投入中)において、溶剤80を投入開始時間T1と投入終了時間T2の間において、いずれのタイミングで溶剤80の供給を開始しても良い。また、投入開始時間T1と投入終了時間T2の間において溶剤80の供給を開始すると共に、投入終了時間T2を過ぎた後でも溶剤80の供給を継続するようにしても良い。
また、造粒粉末70の投入開始時間T1から投入終了時間T2の間において、造粒粉末70の供給が間欠的に行われるようにしても良い。この場合、投入開始時間T1から投入終了時間T2の間において造粒粉末70の投入が中断している中断時間に、溶剤80の供給を開始するようにしても良く、中断するよりも前のタイミングで溶剤80を供給しつつ、中断時間においても溶剤80の供給を継続するようにしても良い。
なお、噴射ノズル104からの溶剤80の供給は、液状の溶剤80を霧状とするのが好ましい。この場合には、造粒粉末70に対して、一部に溶剤80が偏った状態で供給されるのを防止することができる。
(E15)溶剤の造粒粉末への拡散浸透(拡散浸透工程に対応)
上述したように、溶剤80を造粒粉末70に供給した後に、上パンチ103(加圧手段に対応)で上方から蓋をした状態で、溶剤80を造粒粉末70に拡散浸透させる。すなわち、溶剤80の造粒粉末70に対する付着部位から溶剤80が付着部位以外へと行き渡るように、所定の拡散時間だけ待機する。図5は、図4の後に、上パンチ103で上方から蓋をして、溶剤80を造粒粉末70に拡散浸透させるイメージを示す図である。なお、この拡散時間の一例としては、たとえば60秒とするものがあるが、溶剤80の種類や溶剤80の拡散度合によって、適宜の拡散時間に設定することが可能である。
(E16)造粒粉末の加圧(加圧成形工程に対応)
次に、上パンチ103により、造粒粉末70を下側(下型101側)に向けて所定の加圧力で押圧する加圧成形を行う。このときの加圧力は、10kg/cm〜100kg/cmの範囲内が好適となっている。図6は、図5の後に、上パンチ103によって造粒粉末70を加圧成形するイメージを示す図である。この加圧成形により、電子部品10の外形を有する成形体11が得られる。
(E17)成形体の取り出しおよび熱硬化(熱硬化工程に対応)
上述した加圧成形の後に、成形体11を内筒部102aから取り出し、その取り出しの後に、成形体11を恒温槽に設置して、所定の恒温(たとえば150℃)にて所定の時間(たとえば1時間)だけ加熱する熱硬化処理を行う。この熱硬化処理により、成形体11が硬化して、電子部品10が得られる。
[第1比較例に係る電子部品の製造方法について]
(C11)半製品およびパテ材の製作
次に、第1比較例に係る電子部品10の製造方法について述べる。現状の電子部品10の製造方法の一例としては、先ず、半製品50Cおよびパテ材60C(図7参照)をそれぞれ別途に製作する。半製品50Cは、内部コア20Cの脚部21Cにコイル30Cが取り付けられた状態のものである。また、パテ材60Cは、金属磁性粉末と、常温で液状のエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂と、トルエンのような溶剤を混合して形成されたものであり、粘着性が高い粘度状に設けられている。
(C12)半製品のセット
図7は、第1比較例に係る電子部品10の製造方法を説明する図であり、半製品50Cが内筒部102Caにセットされた状態を示す図である。上述した半製品50Cを製作した後に、半製品50Cを、臼102Cおよび下型101Cを有する金型100Cにセットする。なお、この半製品50Cのセットは、上述した(E12)の工程と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
(C13)パテ材の投入
上述した半製品50Cの内筒部102Caへのセット後に、パテ材60Cを内筒部102Caに投入する。図8は、図7の後に、パテ材60Cが内筒部102Caに投入された状態を示す図である。このとき、金型100Cに対して、所定の振動数にて振動を加えているが、加えないようにしても良い。
(C14)パテ材の加圧
次に、上パンチ103Cを内筒部102Caの上側(内筒部102Caのうち下型101Cから離れる側)から挿入し、パテ材60Cを下側(下型101C側)に向けて所定の加圧力で押圧する加圧成形を行う。このときの加圧力は、10kg/cmとなっており、後述する第2比較例の場合よりも低圧で成形される。図9は、図8の後に、上パンチ103Cをセットする状態を示す図である。また、図10は、図9の後に、上パンチ103Cを内筒部102Caに挿入して、パテ材60Cを加圧成形するイメージを示す図である。図10に示すような加圧成形により、電子部品10の外形を有する成形体11Cが得られる。
(C15)成形体の取り出しおよび熱硬化
上述した加圧成形の後に、成形体11Cを内筒部102aから取り出し、その取り出しの後に、成形体11Cを恒温槽に設置して、所定の恒温(たとえば150℃)にて所定の時間(たとえば1時間)だけ加熱する熱硬化処理を行う。この熱硬化処理により、成形体11Cが硬化して、電子部品10が得られる。
[第1比較例に係る電子部品の製造方法と、第1実施形態に係る電子部品の製造方法の比較]
上述した第1比較例に係る電子部品10の製造方法と、第1実施形態に係る電子部品10の製造方法とを比較すると、次のような相違がある。すなわち、第1比較例に係る電子部品10の製造方法では、粘着性が高く粘度状であり空気を通し難いパテ材60Cを用いている。これに対して、第1実施形態に係る電子部品10の製造方法では、パテ材60Cと比較して粘着性が低く粉末として流動性が高く、かつ空気を通し易い造粒粉末70が用いられ、その造粒粉末70の投入後に溶剤80を供給している。したがって、両者を比較すると、パテ材60Cと造粒粉末70に、それぞれ同じ加圧力を与えた場合、パテ材60Cにおいては内部に気泡のような空隙が生じ易く加圧しても気泡が抜け難いが、造粒粉末70においては内部に気泡のような空隙が生じ難く空隙が生じても加圧時に空気が抜け易い、という相違がある。
また、パテ材60Cは粘着性が高いため、内筒部102Caに供給手段を介してパテ材60Cを投入する際に、その供給手段に付着して残存するものが存在するので、精密な分量だけ供給するのが難しい。一方、造粒粉末70は、粉末状であり粘着性が低く粉末としての流動性が高い。したがって、パテ材60Cと比較すると、造粒粉末70を供給する供給手段に残存するものが、パテ材60Cと比較して大幅に低減でき、精密な分量の造粒粉末70を内筒部102aに供給することができる、という相違がある。
[第2実施形態に係る電子部品の製造方法について]
次に、上述した第1実施形態に係る電子部品10の製造方法とは異なる第2実施形態に係る電子部品10の製造方法について説明する。
(E21)半製品および造粒粉末の製作
本発明の第2実施形態に係る電子部品10の製造方法の一例としては、先ず、コイル30(図11参照)および造粒粉末70(図12参照)をそれぞれ別途に製作する。
(E22)コイルのセット(コイル設置工程に対応)
図11は、第2実施形態に係る電子部品10の製造方法を説明する図であり、コイル30が内筒部205にセットされた状態を示す図である。上述のようにコイル30を製作した後に、そのコイル30を金型200にセットする。このとき用いられる金型200は、上側臼201と、下側臼202と、上パンチ203と、下パンチ204とを備えている。
上側臼201と下側臼202は、上述した臼102と同様の筒状部材であり、同一の直径の内筒を有している。上側臼201と下側臼202とは、軸方向に移動することで、互いに突き合わされた接合状態と、互いに離れた開放状態とを実現可能となっている。なお、接合状態においては、上側臼201と下側臼202に亘るような内筒部205が形成される。また、接合状態では、後述する造粒粉末70を投入しても、金型200の外部に漏れ出るような隙間が形成されない状態となっている。
コイル30をセットする場合、上側臼201と下側臼202を開放状態として、たとえば下側臼202の上面の所望の位置に、コイル30の端末31をセットする。その後に、上側臼201と下側臼202の接合状態として、端末31が上側臼201と下側臼202とで挟持された状態とする。なお、コイル30をセットするのに前後して、下パンチ204を内筒部205の下側(Z2側)から挿入するようにしても良い。その場合、下パンチ204は、造粒粉末70を投入する際の規定位置まで挿入しても良いが、その規定位置よりも下側(Z2側)に下パンチ204を待機させても良い。
(E23)造粒粉末の投入(投入工程に対応)
上述したコイル30の内筒部205へのセット後に、規定量の造粒粉末70を内筒部205に投入する。図12は、図11の後に、造粒粉末70が内筒部205に投入された状態を示す図である。この造粒粉末70の投入においては、下パンチ204が造粒粉末70を下側(Z2側)から受け止める状態で投入され、またコイル30が造粒粉末70で完全に覆われる状態となる。このとき、上述の造粒粉末70の造粒粉(顆粒)は、内筒部205において容易に移動可能であるので、内部コア20とコイル30の微細な隙間や、コイル30の導線の間の隙間といった、半製品50の外面に存在する隙間に移動可能となっている。
(E24)溶剤の供給(溶剤供給工程に対応)
次に、内筒部205の造粒粉末70に対して、噴射ノズル206から液状の溶剤80を供給する。図13は、図12の後に、造粒粉末70に対して溶剤80を供給するイメージを示す図である。この(E24)の工程においても、(E14)の工程と同様に、溶剤80は、造粒粉末70が粘着性を有するような粘度状となって粉末状が損なわれる程度にまでは供給せず、造粒粉末70の顆粒が膨潤する程度だけ供給して、造粒粉末70の粉末状態が維持される程度としている。なお、溶剤80を供給するタイミングは、上述した(E14)の工程と同様に行うことが可能である。したがって、溶剤80の供給タイミングに関する詳細な説明は省略する。
(E25)溶剤の造粒粉末への拡散浸透(拡散浸透工程に対応)
次に、(E15)の工程と同様に、上パンチ203を上側(Z1側)から内筒部205に挿入し、上パンチ203で上方から蓋をした状態で、溶剤80を造粒粉末70に拡散浸透させる。すなわち、溶剤80の造粒粉末70に対する付着部位から溶剤80が付着部位以外へと行き渡るように、所定の拡散時間だけ待機する。図14は、図13の後に、上パンチ203で上方から蓋をして、溶剤80を造粒粉末70に拡散浸透させるイメージを示す図である。なお、上記の拡散時間としては、上述した(E15)の工程と同様に、たとえば60秒とするものがあるが、それよりも長くても(たとえば120秒)、短くても良い。
(E26)造粒粉末の加圧(加圧成形工程に対応)
次に、上パンチ203を上側(Z1側)から内筒部205に挿入する。その後に、上パンチ203および下パンチ204により、造粒粉末70を上下両側から所定の加圧力で押圧する加圧成形を行う。このときの加圧力は、10kg/cm〜100kg/cmの範囲内が好適となっている。図15は、図14の後に、上パンチ203および下パンチ204によって造粒粉末70を加圧成形するイメージを示す図である。この加圧成形により、電子部品10の外形を有する成形体11が得られる。
(E27)成形体の取り出しおよび熱硬化(熱硬化工程に対応)
上述した加圧成形の後に、成形体11を内筒部205から取り出し、その取り出しの後に、成形体11を恒温槽に設置して、所定の恒温(たとえば150℃)にて所定の時間(たとえば1時間)だけ加熱する熱硬化処理を行う。この熱硬化処理により、成形体11が硬化して、電子部品10が得られる。
[第2比較例に係る電子部品の製造方法について]
次に、現状の製造方法のうち、第1比較例に係る電子部品10の製造方法とは異なる第2比較例に係る電子部品10の製造方法について説明する。
(C21)半製品およびパテ材の製作
現状の電子部品10の製造方法の他の一例としては、先ず、コイル30C(図16参照)および造粒粉末70C(図17参照)をそれぞれ別途に製作する。
(C22)コイルのセット
次に、(E22)の工程と同様に、コイル30Cを金型200Cにセットする。図16は、第2比較例に係る電子部品10の製造方法を説明する図であり、コイル30Cが内筒部205Cにセットされた状態を示す図である。このとき、(E22)の工程と同様に、コイル30Cの端末31Cが上側臼201Cと下側臼202Cとで挟持された状態で、内筒部205Cにコイル30Cがセットされる。なお、(E22)の工程と同様に、コイル30Cをセットするのに前後して、下パンチ204Cを内筒部205Cの下側(Z2側)から挿入するようにしても良い。
(C23)造粒粉末の投入
次に、(E23)の工程と同様に、コイル30Cの内筒部205Cへのセット後に、規定量の造粒粉末70Cを内筒部205Cに投入する。この工程は、図12で説明したのと同様である。図17は、図16の後に、造粒粉末70Cが内筒部205Cに投入された状態を示す図である。この造粒粉末70Cの投入により、コイル30Cが造粒粉末70Cで完全に覆われる状態となる。このとき、上述の造粒粉末70Cの粒子は、内筒部205Cにおいて容易に移動可能であるので、内部コア20Cとコイル30Cの微細な隙間や、コイル30Cの導線の間の隙間といった、半製品50Cの外面に存在する隙間に移動可能となっている。
(C24)造粒粉末の加圧
次に、(E26)の工程と同様に、上パンチ203Cおよび下パンチ204Cにより、造粒粉末70Cを上下両側から所定の加圧力で押圧する加圧成形を行う。このときの加圧力は、第2実施形態と同様に10kg/cm〜100kg/cmの範囲内で行った。図18は、図17の後に、上パンチ203Cおよび下パンチ204Cによって造粒粉末70Cを加圧成形するイメージを示す図である。この加圧成形により、電子部品10の外形を有する成形体11Cが得られる。
(C25)成形体の取り出しおよび熱硬化
上述した加圧成形の後に、上述した(E27)の工程と同様に、成形体を内筒部205Cから取り出し、その取り出しの後に、成形体11Cを恒温槽に設置して、所定の恒温(たとえば150℃)にて所定の時間(たとえば1時間)だけ加熱する熱硬化処理を行う。この熱硬化処理により、成形体11Cが硬化して、電子部品10が得られる。
[第2比較例に係る電子部品の製造方法と第2実施形態に係る電子部品の製造方法の比較]
上述した第2比較例に係る電子部品10の製造方法と、第2実施形態に係る電子部品10の製造方法とを比較すると、次のような相違がある。すなわち、第2比較例に係る電子部品10の製造方法では、造粒粉末70Cの投入後に造粒粉末70Cの加圧成形を行っている。これに対し、第2実施形態に係る電子部品10の製造方法では、造粒粉末70の投入後に、造粒粉末70に対して溶剤80を供給している。したがって、第2比較例に係る電子部品10の製造方法においては、造粒粉末70Cの顆粒が硬いままで、加圧成形される。これに対し、第2実施形態に係る電子部品10の製造方法においては、溶剤80の供給により造粒粉末70の顆粒が膨潤して柔らかくなり、その柔らかな状態で加圧成形される。
このため、第2実施形態に係る電子部品10の製造方法では、第2比較例に係る電子部品10の製造方法と比較して、加圧力を低くしても顆粒同士が結合するので、成形の際の加圧力を低くすることが可能となる。なお、第2比較例に係る電子部品10の製造方法では、粉末成形と同様の手法であるので、第1比較例に係る電子部品10の製造方法と比較しても高い成形圧力が必要となっている。
<実験結果について>
次に、上述した第1比較例、第1実施形態、第2比較例および第2実施形態のそれぞれの電子部品10の製造方法により製作された電子部品10について、実験を行った。その実験結果について、以下に説明する。
[密度、特性(インダクタンス)および内部空隙(気泡)について]
先ず、第1実施形態に係る電子部品10の製造方法を用いて、電子部品10を第1条件で製作すると共に、第1比較例に係る電子部品10の製造方法を用いて、電子部品10を第2条件で製作した。ここで、第1条件により作製される電子部品10は、実施例1に対応する。この実施例1では、造粒粉末70を内筒部102aに投入しているが、その造粒粉末70は、鉄を主成分とする合金系の金属磁性粉に、バインダ樹脂を溶解する有機溶剤(トルエン)と共に熱硬化型のエポキシ樹脂を4wt%(質量%)添加して混合し、撹拌しながら溶剤を蒸発させ、造粒粉末70を作製した。なお、金属磁性粉の組成は、具体的には、Fe-Si-Cr、Fe-Al-Cr、Fe-Ni等の合金である。また、半製品50としては、幅2.0mm、厚みが0.3mmの平角線を、内部コア20の脚部21の周囲に5ターン巻回し、縦および横の寸法がそれぞれ8.0mmである矩形状で、かつ高さが2.0mmとなるように形成した。なお、内部コア20は、上記と同様のFeを主成分とした合金粉末を材質として圧縮成形しかつ焼成したものであり、脚部21の寸法は直径2.0mm、高さが4.0mm、フランジ部22の寸法は、直径が8.0mm、厚みが0.8mmとなっている。
かかる半製品50を内筒部102aに設置した後に、縦および横の寸法が10mmの矩形状の内筒部102aに、2gの造粒粉末70を投入した。なお、造粒粉末70を内筒部102aに投入した後に、50Hzの振動を10秒加えて、造粒粉末70の充填を促進させた。
この造粒粉末70の投入の後に、溶剤80として、トルエン0.08gを、内筒部102aの造粒粉末70に対して噴霧した。なお、この溶剤80の分量は、造粒粉末70を作製する際のバインダ樹脂であるエポキシ樹脂に対して100wt%(質量%)となっている。この後に、上パンチ103で上方から蓋をして、溶剤80を60秒間、拡散浸透させた。この後に、上パンチ103により、10kg/cmの加圧力を2.0秒間加えて、加圧成形した。その加圧成形の後に、成形体11を金型100から取り出し、恒温槽に成形体11を設置し、150℃の温度で1時間、熱硬化処理を行った。
一方、第2条件により作製される電子部品10は、比較例1に対応する。この比較例1では、実施例1とは異なり、パテ材60Cを内筒部102Caに投入している。このパテ材60Cは、鉄を主成分とする合金系の金属磁性粉に、バインダ樹脂である常温で液状の熱硬化型のエポキシ樹脂を4wt%(質量%)と、溶剤としてトルエン1wt%(質量%)とを添加して混合し、パテ材60を作製した。なお、金属磁性粉の組成は、具体的には、Fe-Si-Cr、Fe-Si、Fe-Al-Cr、Fe-Ni等である。なお、内部コア20Cは、上述した実施例1と同一条件で形成されたものとなっている。
なお、比較例1では、パテ材60Cを内筒部102Caに投入した後に、50Hzの振動を10秒加えて、パテ材60Cの充填を促進させた。これ以降の製造工程では、溶剤80を内筒部102Caに投入せず、したがって溶剤80を拡散浸透させていない、という点で相違するが、それ以外は、実施例1と同一条件で、電子部品10を形成した。かかる実施例1と比較例1の実験結果を表1に示す。
Figure 0006958318
上記の表1においては、成形体11,11Cの密度に関しては、その測定値が設計値に対して±3.0%以内であれば「A」、+3.0%より大きく+5.0%以下または−3.0%よりも小さく−5.0%以上であれば「B」、+5.0%より大きいかまたは−5.0%より小さいもの(密度の測定値が、設計値に対し絶対値で5.0%より大きいもの)であれば「C」で表している。なお、成形体の密度の設計値は5.4g/cmとなっている。
また、成形体のインダクタンスの測定値が設計値に対して、±15%以内であれば「A」、+15%より大きく+30%以下または−15%よりも小さく−30%以上であれば「B」、+30%より大きいかまたは−30%より小さいもの(インダクタンスの測定値が、設計値に対し絶対値で30%より大きいもの)であれば「C」で表している。なお、インダクタンスの設計値は1.0μHとなっている。
さらに、成形体を切断または破壊して、気泡のような空隙が存在するか否かも測定した。この測定では、気泡のような空隙が目視で存在しない場合には「A」、気泡のような空隙が目視で多数存在する場合には「C」で表している。
上記の表1では、比較例1の成形体では、インダクタンスの測定値が設計値よりも16%低くなっている。また、比較例1の成形体では、気泡のような空隙が目視で多数存在している。したがって、比較例1の成形体は、実施例1と比較して、製品として劣るものとなっている。
次に、第2実施形態に係る電子部品10の製造方法を用いて、電子部品10を第3条件で製作すると共に、第2比較例に係る電子部品10の製造方法を用いて、電子部品10を第4条件で製作した。ここで、第3条件により作製される電子部品10は、実施例3に対応する。この実施例3では、造粒粉末70を内筒部205に投入しているが、その造粒粉末70は、鉄を主成分とする合金系の金属磁性粉に、バインダ樹脂を溶解する有機溶剤(MEK)と共に常温で固体状態の熱硬化型のシリコン樹脂を3wt%(質量%)添加して混合し、撹拌しながら溶剤を蒸発させ、造粒粉末70を作製した。なお、金属磁性粉の組成は、具体的には、Fe-Si-Cr、Fe-Si、Fe-Al-Cr、Fe-Ni等である。また、コイル30としては、幅2,0mm、厚みが0.15mmの平角線を、内部コア20の脚部21の周囲に13.5ターン巻回し、外径が7.5mmとなるように形成した。
かかるコイル30を上側臼201と下側臼202とで挟持させたが、このときの内筒部205の寸法は、上述の実施例1におけるものと同様に、縦および横の寸法が10mmの矩形状となっている。そして、この内筒部205に、1gの造粒粉末70を投入した。なお、造粒粉末70を内筒部205に投入した後に、10Hzの振動を10秒加えて、造粒粉末70の充填を促進させた。
この造粒粉末70の投入の後に、溶剤80として、MEK(メチルエチルケトン;Methyl Ethyl Ketone)0.03gを、内筒部102aの造粒粉末70に対して噴霧した。なお、この溶剤80の分量は、造粒粉末70を作製する際のバインダであるシリコン樹脂に対して100wt%(質量%)となっている。この後に、上パンチ203で上方から蓋をして、溶剤80を120秒間、拡散浸透させた。この後に、上パンチ203により、200kg/cmの加圧力を2秒間加えて、加圧成形した。その加圧成形の後に、成形体を金型200から取り出し、恒温槽に成形体を設置し、150℃の温度で1時間、熱硬化処理を行った。
一方、第4条件により作製される電子部品10は、比較例2に対応する。この比較例2では、実施例2とは異なり、溶剤80を内筒部205に投入せず、したがって溶剤80を拡散浸透させていない、という点で相違している。なお、比較例2では、この相違点以外は、実施例2と同一条件で、電子部品10を形成した。かかる実施例2と比較例2の実験結果を表2に示す。
Figure 0006958318
上記の表2においても、上記の表1におけるものと同一基準の評価を行っている。上記の表2では、比較例2の成形体では、インダクタンスの測定値が設計値よりも62%低くなっている。また、比較例2の成形体では、成形体の密度が設計値よりも20%低くなっている。したがって、比較例2の成形体は、実施例2と比較して、製品として劣るものとなっている。
[溶剤の種類と、その溶剤に対する成形圧力および溶剤添加量について]
次に、上述した実施例1において、溶剤の添加量と成形圧力を変更した場合の実験結果について説明する。この実験では、3種類の溶剤(イソプロピルアルコール、トルエン、ブチルセロソルブ)について実験を行った。また、それぞれの溶剤を用いた場合において、成形圧力と分量を変更した。なお、その他の実験条件は、上述した第1条件と同じ条件とした。これらの中で、溶剤をイソプロピルアルコールとした実験結果を示すものが表3である。
なお、以下の表3〜表8では、マトリクス状の表における縦軸は成形圧力(kg/cm)を示し、横軸はバインダ樹脂であるエポキシ樹脂に対する溶剤80の添加量(wt%;質量%)を示している。縦軸の成形圧力は2kg/cmから5000kg/cmの間で段階的に実験した。また、横軸の溶剤80の添加量は、0wt%から180wt%の間で段階的に実験した。
なお、成形圧力と溶剤80の添加量で特定される各セルにおいては、右側にインダクタンスLの評価結果、左側にコイル30の変形の有無の評価結果が表されている。セル内の右側のインダクタンスLについては、インダクタンスLの測定値が設計値に対して、±15%以内であれば「A」、+15%より大きく+30%以下または−15%よりも小さく−30%以上であれば「B」、+30%より大きいかまたは−30%より小さいもの(インダクタンスLの測定値が、設計値に対し絶対値で30%より大きいもの)であれば「C」で表している。ここで、インダクタンスLの測定値は、1μHとなっている。なお、インダクタンスLの評価においては、成形体の強度不足により形状保持が不能であることにより、インダクタンスLの測定が行えなかったものが存在した。その場合を、「*」で表している。また、インダクタンスLの評価においては、半製品50の破損により、インダクタンスLの測定が行えなかったものが存在した。その場合を、「×」で表している。
また、同じセル内の左側のコイル30の変形の有無については、コイル30の変形がないものを「A」、コイル30の変形があるものを「C」で表している。
Figure 0006958318
表3の実験結果から、溶剤80がイソプロピルアルコールである場合、いずれかの成形圧力でインダクタンスLの測定値が設計値に対して「A」となったのは、バインダ樹脂(エポキシ樹脂)に対する溶剤80の添加量が、15wt%から150wt%の間である。したがって、溶剤80の添加量は、15wt%から150wt%の間であることが好ましい。
一方、成形圧力が2kg/cmから200kg/cmの間では、コイル30の変形が生じていない。したがって、成形圧力は、2g/cmから200g/cmの間であることが好ましい。
また、インダクタンスLの評価が「A」であると共に、コイル30の変形がないもの(評価「A」であるもの)については、バインダ樹脂(エポキシ樹脂)に対する溶剤80の添加量(以下、溶剤添加量とする)が15wt%および30wt%のときは、成形圧力が50g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が50wt%のときは、成形圧力が10g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が100wt%および150wt%のときは、成形圧力が5g/cmから200g/cmの間が該当する。
なお、溶剤添加量が15wt%から150wt%の間のいずれの場合においても、成形圧力が50g/cmから200g/cmの間であれば、インダクタンスLの評価が「A」であると共に、コイル30の変形がなく(評価「A」であり)、特に好ましい。
次に、溶剤をトルエンとした実験結果を示すものについて、表4に示す。
Figure 0006958318
表4の実験結果から、溶剤80がトルエンである場合、いずれかの成形圧力でインダクタンスLの測定値が設計値に対して「A」となったのは、バインダ樹脂(エポキシ樹脂)に対する溶剤80の添加量(溶剤添加量)が、15wt%から150wt%の間である。したがって、溶剤添加量は、15wt%から150wt%の間であることが好ましい。
一方、成形圧力が2g/cmから200g/cmの間では、コイル30の変形が生じていない。したがって、成形圧力は、2g/cmから200g/cmの間であることが好ましい。
また、インダクタンスLの評価が「A」であると共に、コイル30の変形がないもの(評価「A」であるもの)については、溶剤添加量が15wt%および30wt%のときは、成形圧力が100g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が50wt%のときは、成形圧力が50g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が100wt%のときは、成形圧力が10g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が150wt%のときは、成形圧力が5g/cmから200g/cmの間が該当する。
なお、溶剤添加量が15wt%から150wt%の間のいずれの場合においても、成形圧力が100g/cmから200g/cmの間であれば、インダクタンスLの評価が「A」であると共に、コイル30の変形がなく(評価「A」であり)、特に好ましい。
次に、溶剤をブチルセロソルブとした実験結果を示すものについて、表5に示す。
Figure 0006958318
表5の実験結果から、溶剤80がブチルセロソルブである場合、いずれかの成形圧力でインダクタンスLの測定値が設計値に対して「A」となったのは、バインダ樹脂(エポキシ樹脂)に対する溶剤80の添加量(溶剤添加量)が、15wt%から150wt%の間である。したがって、溶剤添加量は、15wt%から150wt%の間であることが好ましい。
一方、成形圧力が2g/cmから200g/cmの間では、コイル30の変形が生じていない。したがって、成形圧力は、2g/cmから200g/cmの間であることが好ましい。
また、インダクタンスLの評価が「A」であると共に、コイル30の変形がないもの(評価「A」であるもの)については、溶剤添加量が15wt%のときは、成形圧力が200g/cmの場合が該当し、溶剤添加量が30wt%のときは、成形圧力が100g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が50wt%のときは、成形圧力が50g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が100wt%のときは、成形圧力が10g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が150wt%のときは、成形圧力が5g/cmから200g/cmの間が該当する。
なお、溶剤添加量が15wt%から150wt%の間のいずれの場合においても、成形圧力が200g/cmの場合には、インダクタンスLの評価が「A」であると共に、コイル30の変形がなく(評価「A」であり)、特に好ましい。
次に、上述した実施例2において、溶剤の添加量と成形圧力を変更した場合の実験結果について説明する。この実験では、3種類の溶剤(MEK(メチルエチルケトン;Methyl Ethyl Ketone)、エタノール、メチルピロリドン)について実験を行った。また、それぞれの溶剤を用いた場合において、成形圧力と分量を変更した。なお、その他の実験条件は、上述した第3条件と同じ条件とした。これらの中で、溶剤をMEKとした実験結果を示すものが表6である。
Figure 0006958318
表6の実験結果から、溶剤80がMEKである場合、いずれかの成形圧力でインダクタンスLの測定値が設計値に対して「A」となったのは、バインダ樹脂(シリコン樹脂)に対する溶剤80の添加量(溶剤添加量)が、15wt%から150wt%の間である。したがって、溶剤添加量は、15wt%から150wt%の間であることが好ましい。
一方、成形圧力が2g/cmから200g/cmの間では、コイル30の変形が生じていない。したがって、成形圧力は、2g/cmから200g/cmの間であることが好ましい。
また、インダクタンスLの評価が「A」であると共に、コイル30の変形がないもの(評価「A」であるもの)については、溶剤添加量が15wt%のときは、成形圧力が200g/cmの場合が該当し、溶剤添加量が30wt%のときは、成形圧力が100g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が50wt%のときは、成形圧力が50g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が100wt%のときは、成形圧力が10g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が150wt%のときは、成形圧力が5g/cmから200g/cmの間が該当する。
なお、溶剤添加量が15wt%から150wt%の間のいずれの場合においても、成形圧力が200g/cmの場合には、インダクタンスLの評価が「A」であると共に、コイル30の変形がなく(評価「A」であり)、特に好ましい。
次に、溶剤をエタノールとした実験結果を示すものについて、表7に示す。
Figure 0006958318
表7の実験結果から、溶剤80がエタノールである場合、いずれかの成形圧力でインダクタンスLの測定値が設計値に対して「A」となったのは、バインダ樹脂(シリコン樹脂)に対する溶剤80の添加量(溶剤添加量)が、15wt%から150wt%の間である。したがって、溶剤添加量は、15wt%から150wt%の間であることが好ましい。
一方、成形圧力が2g/cmから200g/cmの間では、コイル30の変形が生じていない。したがって、成形圧力は、2g/cmから200g/cmの間であることが好ましい。
また、インダクタンスLの評価が「A」であると共に、コイル30の変形がないもの(評価「A」であるもの)については、溶剤添加量が15wt%のときは、成形圧力が100g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が30wt%のときは、成形圧力が50g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が50wt%のときは、成形圧力が10g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が100wt%および150wt%のときは、成形圧力が5g/cmから200g/cmの間が該当する。
なお、溶剤添加量が15wt%から150wt%の間のいずれの場合においても、成形圧力が100g/cmから200g/cmの間であれば、インダクタンスLの評価が「A」であると共に、コイル30の変形がなく(評価「A」であり)、特に好ましい。
次に、溶剤をメチルピロリドンとした実験結果を示すものについて、表8に示す。
Figure 0006958318
表8の実験結果から、溶剤80がメチルピロリドンである場合、いずれかの成形圧力でインダクタンスLの測定値が設計値に対して「A」となったのは、バインダ樹脂(シリコン樹脂)に対する溶剤80の添加量(溶剤添加量)が、15wt%から150wt%の間である。したがって、溶剤添加量は、15wt%から150wt%の間であることが好ましい。
一方、成形圧力が2g/cmから200g/cmの間では、コイル30の変形が生じていない。したがって、成形圧力は、2g/cmから200g/cmの間であることが好ましい。
また、インダクタンスLの評価が「A」であると共に、コイル30の変形がないもの(評価「A」であるもの)については、溶剤添加量が15wt%および30wt%のときは、成形圧力が100g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が50wt%のときは、成形圧力が50g/cmから200g/cmの間が該当し、溶剤添加量が100wt%および150wt%のときは、成形圧力が5g/cmから200g/cmの間が該当する。
なお、溶剤添加量が15wt%から150wt%の間のいずれの場合においても、成形圧力が100g/cmから200g/cmの間であれば、インダクタンスLの評価が「A」であると共に、コイル30の変形がなく(評価「A」であり)、特に好ましい。
<効果>
以上のような電子部品10の製造方法においては、金型100,200の内筒部102a,205にコイル30を設置するコイル設置工程と、この内筒部102a,205に、金属系磁性粉にバインダ樹脂を混合して形成される顆粒が集合した造粒粉末70を投入する投入工程と、投入工程と同時または投入の後に、バインダ樹脂を軟化または膨潤させる溶剤80を噴射する噴射工程と、噴射工程の後に、造粒粉末70を加圧成形する加圧成形工程と、を備えている。
このため、投入工程では、顆粒の集合である造粒粉末70が投入されることで、コイル30の導線間等のような微細な隙間に、顆粒が入り込み、空隙が生じ難い状態とすることができる。また、造粒粉末70は顆粒の集合体であり粘着性が低い。したがって精度の高い秤量を行うことができる。したがって、製作された電子部品10においては、外装コア40に空隙が形成されたり、秤量のバラつきが生じるのを防止できるので、特性のバラつきが生じるのを防止可能となる。
また、噴射工程で溶剤80が造粒粉末70に噴射されることで、造粒粉末70の顆粒のバインダ樹脂を軟化または膨潤させることができる。そのため、加圧成形工程で造粒粉末70を加圧成形する際の成形圧力を低下させることができる。このように、成形圧力を低下させることで、加圧成形の際にコイル30が変形するのを防止可能となる。
また、上述の各実施形態では、噴射工程の後に、溶剤80を造粒粉末70に所定の拡散時間を経過するように拡散浸透させる拡散浸透工程を備えることができる。このようにする場合には、溶剤80を造粒粉末70の一部のみならず、全体的に拡散浸透させることができる。それにより、外装コア40の一部が、強度不足で形状保持不能となるのを防止可能となる。
また、上述の各実施形態では、造粒粉末70の投入工程では、造粒粉末70の投入を間欠的に行うと共に、溶剤80の噴射工程では、間欠的な造粒粉末70の投入中断タイミングにおいて溶剤80の噴射を行うようにすることができる。このようにする場合には、溶剤80を造粒粉末70の全体に行き渡らせ易くなる。そのため、外装コア40の一部が、強度不足で形状保持不能となるのを一層防止可能となる。また、溶剤80を拡散浸透させる時間を短縮化させることも可能となる。
また、上述の各実施形態では、加圧成形工程では、造粒粉末70への成形圧力を2kg/cmから200kg/cmの間とすることができる。このようにする場合には、表3〜表8で示される実験結果から、コイル30の変形を防止することができる。
また、上述の各実施形態では、溶剤80の噴射工程では、バインダ樹脂に対する溶剤80の噴射量を15wt%から150wt%の範囲内とすることができる。このようにする場合には、製作後の電子部品10の特性が設計値からバラ付くのを小さくすることができる。
また、上述の各実施形態では、加圧成形工程では、噴射工程における溶剤80の噴射量を100wt%から150wt%の範囲内としたときには造粒粉末70への成形圧力を5kg/cmから200kg/cmの間とすることができる。このようにする場合には、表3〜表8で示される実験結果から、インダクタンスLの測定値が設計値に対して、±15%以内であると共に、コイル30の変形も生じていない。このため、製作後の電子部品10の特性が設計値からバラ付くのを小さくすることができると共に、コイル30に変形が生じるのを防止可能となる。
また、上述の各実施形態では、加圧成形工程では、噴射工程における溶剤80の噴射量を50wt%から100wt%の範囲内としたときには造粒粉末70への成形圧力を50kg/cmから200kg/cmの間とすることができる。このようにする場合には、表3〜表8で示される実験結果から、インダクタンスLの測定値が設計値に対して、±15%以内であると共に、コイル30の変形も生じていない。このため、製作後の電子部品10の特性が設計値からバラ付くのを小さくすることができると共に、コイル30に変形が生じるのを防止可能となる。また、溶剤80の添加量を少なくすることができる。
また、上述の各実施形態では、加圧成形工程では、噴射工程における溶剤80の噴射量を30wt%から50wt%の範囲内としたときには造粒粉末70への成形圧力を100kg/cmから200kg/cmの間とすることができる。このようにする場合には、表3〜表8で示される実験結果から、インダクタンスLの測定値が設計値に対して、±15%以内であると共に、コイル30の変形も生じていない。このため、製作後の電子部品10の特性が設計値からバラ付くのを小さくすることができると共に、コイル30に変形が生じるのを防止可能となる。また、溶剤80の添加量を一層少なくすることができる。
また、上述の各実施形態では、加圧成形工程では、噴射工程における溶剤80の噴射量を15wt%から30wt%の範囲内としたときには造粒粉末70への成形圧力を200kg/cmとすることができる。このようにする場合には、表3〜表8で示される実験結果から、インダクタンスLの測定値が設計値に対して、±20%以内であると共に、コイル30の変形も生じていない。このため、製作後の電子部品10の特性が設計値からバラ付くのを小さくすることができると共に、コイル30に変形が生じるのを防止可能となる。また、溶剤80の添加量をさらに一層少なくすることができる。
また、上述の各実施形態では、電子部品10の製造装置は、コイル30を配置可能な内筒部102a,205を備える金型100,200と、内筒部102a,205に投入された、金属系磁性粉末にバインダ樹脂を混合して形成される顆粒が集合した造粒粉末70に対して、バインダ樹脂を軟化または膨潤化する溶剤80を噴射する噴射ノズル104,206と、溶剤80が噴射された造粒粉末70を加圧する上パンチ103,203および下パンチ204の少なくとも一方(加圧手段)と、を備えている。
このため、内筒部102a,205に顆粒の集合である造粒粉末70が投入されることで、コイル30の導線間等のような微細な隙間に、顆粒が入り込み、空隙が生じ難い状態とすることができる。また、造粒粉末70は顆粒の集合体であり粘着性が低い。したがって精度の高い秤量を行うことができる。したがって、製作された電子部品10においては、外装コア40に空隙が形成されたり、秤量のバラつきが生じるのを防止できるので、特性のバラつきが生じるのを防止可能となる。
また、噴射ノズル104,206で溶剤80が造粒粉末70に噴射されることで、造粒粉末70の顆粒のバインダ樹脂を軟化または膨潤させることができる。そのため、上パンチ103,203および下パンチ204の少なくとも一方(加圧手段)で造粒粉末70を加圧成形する際の成形圧力を低下させることができる。このように、成形圧力を低下させることで、加圧成形の際にコイル30が変形するのを防止可能となる。
<変形例>
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
上述の各実施形態では、金型100,200の内筒部102a,205にコイル30を1つ配置する場合について説明している。しかしながら、コイルの個数は、1つには限られず、複数配置しても良い。また、内筒部102aに配置する内部コア20の個数も1つには限られず、複数配置しても良い。
また、上述の各実施形態では、成形体11を金型100,200から取り出した後に、熱硬化処理を行うようにしている。しかしながら、熱硬化処理によらずに自然硬化させるようにしても良い。また、熱硬化処理後に、別途のコアやコイルを取り付ける工程を行うようにしても良い。
また、上述の各実施形態では、溶剤80の供給は、噴射ノズル104,206から溶剤80を噴射するものとしている。しかしながら、溶剤80の供給は、噴射ノズル104,206からの噴射に限られるものではない。たとえば、所定量に分散された液滴を造粒粉末70に供給するようにしても良い。
10…電子部品、11,11C…成形体、20…内部コア、21…脚部、22…フランジ部、30,30C…コイル、31…端末、40…外装コア、50,50C…半製品、60,60C…パテ材、70,70C…造粒粉末、80…溶剤、100,100C,200,200C…金型、101,101C…下型、102,102C…臼、102a,102Ca,205…内筒部、103,103C…上パンチ、104,206…噴射ノズル(供給手段に対応)、201,201C…上側臼、202,202C…下側臼、203,203C…上パンチ、204,204C…下パンチ(加圧手段に対応)

Claims (10)

  1. 絶縁被覆を有する導線が巻回されたコイルを備える電子部品の製造方法であって、
    金型の内筒部に前記コイルを設置するコイル設置工程と、
    前記内筒部に、金属系磁性粉にバインダ樹脂を混合して形成される顆粒が集合した造粒粉末を投入する投入工程と、
    前記投入工程における前記造粒粉末の投入中または投入の後に、前記バインダ樹脂を溶解、軟化または膨潤させる溶剤を供給する溶剤供給工程と、
    前記溶剤供給工程の後に、前記造粒粉末を加圧成形して成形体を形成する加圧成形工程と、
    前記加圧成形工程の後に前記成形体を熱処理して前記バインダ樹脂を熱硬化させる熱硬化工程と、
    を備えることを特徴とする電子部品の製造方法。
  2. 請求項1記載の電子部品の製造方法であって、
    前記溶剤供給工程の後に、前記溶剤を前記造粒粉末に所定の拡散時間を経過するように拡散浸透させる拡散浸透工程を備えることを特徴とする電子部品の製造方法。
  3. 請求項1または2記載の電子部品の製造方法であって、
    前記投入工程では、前記造粒粉末の投入を間欠的に行うと共に、
    前記溶剤供給工程では、間欠的な前記造粒粉末の投入中断タイミングにおいて前記溶剤の供給を行う、
    ことを特徴とする電子部品の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法であって、
    前記加圧成形工程では、前記造粒粉末への成形圧力を2kg/cmから200kg/cmの間としている、
    ことを特徴とする電子部品の製造方法。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法であって、
    前記溶剤供給工程では、前記バインダ樹脂に対する前記溶剤の供給量を15wt%から150wt%の範囲内としている、
    ことを特徴とする電子部品の製造方法。
  6. 請求項5記載の電子部品の製造方法であって、
    前記加圧成形工程では、前記溶剤供給工程における前記溶剤の供給量を100wt%から150wt%の範囲内としたときには前記造粒粉末への成形圧力を5kg/cmから200kg/cmの間としている、
    ことを特徴とする電子部品の製造方法。
  7. 請求項5または6記載の電子部品の製造方法であって、
    前記加圧成形工程では、前記溶剤供給工程における前記溶剤の供給量を50wt%から100wt%の範囲内としたときには前記造粒粉末への成形圧力を50kg/cmから200kg/cmの間としている、
    ことを特徴とする電子部品の製造方法。
  8. 請求項5から7のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法であって、
    前記加圧成形工程では、前記溶剤供給工程における前記溶剤の供給量を30wt%から50wt%の範囲内としたときには前記造粒粉末への成形圧力を100kg/cmから200kg/cmの間としている、
    ことを特徴とする電子部品の製造方法。
  9. 請求項5から8のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法であって、
    前記加圧成形工程では、前記溶剤供給工程における前記溶剤の供給量を15wt%から30wt%の範囲内としたときには前記造粒粉末への成形圧力を200kg/cmとしている、
    ことを特徴とする電子部品の製造方法。
  10. 絶縁被覆を有する導線が巻回されたコイルを備える電子部品を製造する電子部品の製造装置であって、
    前記コイルを配置可能な内筒部を備える金型と、
    前記内筒部に投入された、金属系磁性粉末にバインダ樹脂を混合して形成される顆粒が集合した造粒粉末に対して、前記バインダ樹脂を溶解、軟化または膨潤化する溶剤を供給する供給手段と、
    前記溶剤が噴射された前記造粒粉末を加圧する加圧手段と、
    を備えることを特徴とする電子部品の製造装置。
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