以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤ1のトレッド面3を示す平面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。トレッド面3には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝20と、タイヤ幅方向に延びるラグ溝30とが、それぞれ複数形成されており、この周方向主溝20とラグ溝30とにより、トレッド面3には陸部であるブロック10が複数形成されている。
詳しくは、周方向主溝20は、4本がタイヤ幅方向に並んで形成されており、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に位置する2本の第1主溝であるセンター主溝21と、2本のセンター主溝21のそれぞれのタイヤ幅方向外側に位置し、センター主溝21と隣り合う2本の第2主溝であるショルダー主溝22と、が設けられている。
これらのセンター主溝21とショルダー主溝22とは、タイヤ赤道面CLからのタイヤ幅方向における距離が、トレッド面3の接地端T同士のタイヤ幅方向における間隔であるタイヤ接地幅TWの、3%以上50%以下の範囲内に配置されている。この場合における接地端Tは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みして正規内圧を充填し、静止状態にて平板に対して垂直に置かれて正規荷重の88%に相当する荷重を加えられたときの、トレッド面3における平板に接触する領域のタイヤ幅方向の両最外端をいい、タイヤ周方向に連続する。
正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、或いは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、或いはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
また、ラグ溝30は、2本のセンター主溝21同士の間に位置するセンターラグ溝31と、隣り合うセンター主溝21とショルダー主溝22との間に位置する主ラグ溝であるセカンドラグ溝32と、ショルダー主溝22のタイヤ幅方向外側に位置するショルダーラグ溝33と、が設けられている。ここでいう周方向主溝20は、溝幅が3mm以上15mm以下の範囲内になっており、溝深さが7mm以上10mm以下の範囲内になっている。また、ラグ溝30は、溝幅が2mm以上12mm以下の範囲内になっており、溝深さが7mm以上10mm以下の範囲内になっている。
複数のラグ溝30のうち、センターラグ溝31は、2本のセンター主溝21の間でタイヤ幅方向に延びて形成され、両端がセンター主溝21に接続されている。また、セカンドラグ溝32は、隣り合うセンター主溝21とショルダー主溝22との間でタイヤ幅方向に延びて形成され、タイヤ幅方向における内側の端部がセンター主溝21に接続され、タイヤ幅方向における外側の端部がショルダー主溝22に接続されている。また、ショルダーラグ溝33は、ショルダー主溝22のタイヤ幅方向外側の位置でタイヤ幅方向に延びて形成され、タイヤ幅方向における内側の端部がショルダー主溝22に接続されている。また、ショルダーラグ溝33は、第1外側ラグ溝である第1ショルダーラグ溝34と、第2外側ラグ溝である第2ショルダーラグ溝35とを有している。このうち、第1ショルダーラグ溝34は、セカンドラグ溝32のタイヤ幅方向外側への延長上に配置されており、第2ショルダーラグ溝35は、タイヤ周方向において隣り合う第1ショルダーラグ溝34同士の間に配置されている。
詳しくは、第1ショルダーラグ溝34は、セカンドラグ溝32から延長する位置に形成され、ショルダー主溝22への開口部34aと、セカンドラグ溝32のショルダー主溝22への開口部32aとで、タイヤ周方向における範囲の少なくとも一部が重なり、少なくとも一部がタイヤ幅方向において対向している。また、第2ショルダーラグ溝35は、タイヤ周方向における位置がセカンドラグ溝32のタイヤ周方向における位置と異なる位置に形成され、ショルダー主溝22への開口部35aと、セカンドラグ溝32のショルダー主溝22への開口部32aとで、タイヤ周方向における位置が異なっている。この第1ショルダーラグ溝34と第2ショルダーラグ溝35とは、タイヤ周方向における間隔がそれぞれほぼ同じ間隔で、タイヤ周方向において交互に配置されている。
また、これらのラグ溝30は、それぞれタイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に湾曲したり傾斜したりしている。タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への湾曲や傾斜等のラグ溝30の形態は、目的とするトレッドパターンに応じて適宜設定される。
ブロック10は、周方向主溝20とラグ溝30とにより区画され、ブロック10としては、2本のセンター主溝21同士の間に位置するセンターブロック11と、隣り合うセンター主溝21とショルダー主溝22との間に位置するセカンドブロック12と、ショルダー主溝22のタイヤ幅方向外側に位置するショルダーブロック13と、が設けられている。
このうち、センターブロック11は、タイヤ赤道面CL上に位置しており、センター主溝21とセンターラグ溝31とによって区画されている。このセンターブロック11には、セカンドラグ溝32を延長した位置に近い位置に、切欠き部36が形成されている。切欠き部36は、一端がセンター主溝21に接続され、他端がセンターブロック11内で終端している。このように形成される切欠き部36は、このセンターブロック11を区画する2本のセンター主溝21の双方側に設けられている。
また、セカンドブロック12は、センターブロック11のタイヤ幅方向における両側に配設され、センター主溝21を介してセンターブロック11と隣り合って形成されている。また、セカンドブロック12は、タイヤ幅方向において隣り合うセンター主溝21とショルダー主溝22と、タイヤ周方向において隣り合う2本のセカンドラグ溝32とによって区画されている。
また、ショルダーブロック13は、セカンドブロック12のタイヤ幅方向における外側に配設され、ショルダー主溝22を介してセカンドブロック12と隣り合って形成されている。また、ショルダーブロック13は、ショルダー主溝22とショルダーラグ溝33とによって区画されており、具体的には、タイヤ周方向において隣り合う第1ショルダーラグ溝34及び第2ショルダーラグ溝35と、ショルダー主溝22とによって区画されている。
また、トレッド面3には、多数のサイプ55が形成されている。サイプ55は、センターブロック11、セカンドブロック12、ショルダーブロック13の各ブロック10に形成され、それぞれタイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に振幅する、ジグザグ状の形状で形成されている。
なお、ここでいうサイプ55は、トレッド面3に細溝状に形成されるものであり、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、正規内圧の内圧条件で、無負荷時には細溝を構成する壁面同士が接触しないが、平板上で垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面の部分に細溝が位置する際、または細溝が形成される陸部の倒れ込み時には、当該細溝を構成する壁面同士、或いは壁面に設けられる部位の少なくとも一部が、陸部の変形によって互いに接触するものをいう。本実施形態では、サイプ55は、幅が0.2mm以上1.0mm以下の範囲内になっており、深さが3mm以上10mm以下の範囲内になっている。
図2は、図1のA部詳細図である。トレッド面3には、隣り合うセンター主溝21とショルダー主溝22との間に、周方向細溝50と、第1副ラグ溝41と、第2副ラグ溝42とが形成されている。このうち、周方向細溝50は、タイヤ幅方向におけるセンター主溝21とショルダー主溝22との間に位置しており、センター主溝21及びショルダー主溝22の溝幅よりも狭い溝幅でタイヤ周方向に延びている。また、第1副ラグ溝41は、センター主溝21と周方向細溝50との間でタイヤ幅方向に延びて形成され、両端がセンター主溝21と周方向細溝50とに接続されている。また、第2副ラグ溝42は、ショルダー主溝22と周方向細溝50との間でタイヤ幅方向に延びて形成され、両端がショルダー主溝22と周方向細溝50とに接続されている。
隣り合うセンター主溝21とショルダー主溝22との間に位置するセカンドブロック12は、周方向細溝50によって第1ブロック領域15と第2ブロック領域17とに区画されている。このうち、第1ブロック領域15は、タイヤ周方向に隣り合う2本のセカンドラグ溝32と、センター主溝21と、周方向細溝50とにより区画されている。また、第2ブロック領域17は、タイヤ周方向に隣り合う2本のセカンドラグ溝32と、ショルダー主溝22と、周方向細溝50とにより区画されている。
第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42とは、第1ブロック領域15や第2ブロック領域17に位置する陸部を、それぞれ複数のブロック10に分割している。つまり、第1副ラグ溝41は、第1ブロック領域15に位置する陸部を、複数のブロック10である第1ブロック16に分割している。同様に、第2副ラグ溝42は、第2ブロック領域17に位置する陸部を、複数のブロック10である第2ブロック18に分割している。これらのように、セカンドブロック12は、タイヤ周方向に隣り合う2本のセカンドラグ溝32の間に、第1ブロック領域15と第2ブロック領域17とを備えるブロックユニット14を有している。ショルダー主溝22のタイヤ幅方向外側に位置するショルダーブロック13は、ショルダー主溝22を介して、セカンドブロック12が有するブロックユニット14における第2ブロック領域17と隣り合っている。
1つのブロックユニット14では、第1ブロック領域15のブロック10を分割する第1副ラグ溝41と、第2ブロック領域17のブロック10を分割する第2副ラグ溝42とは、異なる数で配設されており、1つの第2ブロック領域17に配設される第2副ラグ溝42は、1つの第1ブロック領域15に配設される第1副ラグ溝41の本数よりも多い本数で配設されている。つまり、1つの第2ブロック領域17に配設される第2副ラグ溝42は、周方向細溝50を介して当該第2ブロック領域17と隣り合う第1ブロック領域15に配設される第1副ラグ溝41よりも数が多くなっている。このため、1つのブロックユニット14では、第1ブロック領域15が有する第1ブロック16よりも、第2ブロック領域17が有する第2ブロック18の方が数が多くなっている。また、これにより、第1ブロック16と第2ブロック18のタイヤ周方向における長さは、第1ブロック16の長さよりも、第2ブロック18の長さの方が短くなっている。
本実施形態では、1つのブロックユニット14の第2ブロック領域17が有する第2副ラグ溝42の本数は、第1ブロック領域15が有する第1副ラグ溝41の2倍になっている。具体的には、第1ブロック領域15には、第1副ラグ溝41は1本配設され、第2ブロック領域17には、第2副ラグ溝42は2本配設されている。このため、第1ブロック領域15は、2つの第1ブロック16を有しており、第2ブロック領域17は、3つの第2ブロック18を有している。
これらのように、異なる数で配設される第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42とは、タイヤ周方向において隣り合うセカンドラグ溝32同士の間で、それぞれ等間隔で配設されている。つまり、第1副ラグ溝41は、タイヤ周方向において隣り合う2本のセカンドラグ溝32同士の間を、ほぼ二等分する位置に配設されている。また、第2副ラグ溝42は、タイヤ周方向において隣り合う2本のセカンドラグ溝32同士の間を、ほぼ三等分する位置に配設されている。このため、第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42とは、周方向細溝50に接続されるそれぞれの端部のタイヤ周方向における位置が、互いに異なっている。つまり、周方向細溝50に接続される第1副ラグ溝41のタイヤ幅方向外側の端部である外側端部41oと、周方向細溝50に接続される第2副ラグ溝42のタイヤ幅方向内側の端部である内側端部42iとは、タイヤ周方向における位置がそれぞれ異なっている。
また、第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42とは、タイヤ周方向に隣り合うセカンドラグ溝32同士の間において異なる数で配設されているため、1つの第1ブロック領域15が有する第1ブロック16と、1つの第2ブロック領域17が有する第2ブロック18とでは、数が異なっている。即ち、1つのブロックユニット14が有する第1ブロック領域15と第2ブロック領域17とのうち、第1ブロック領域15は、2つの第1ブロック16を有しているのに対し、第2ブロック領域17は、第2ブロック18を3つ有している。
図3は、図2に示す第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42の説明図である。第1ブロック領域15に配設される第1副ラグ溝41と、第2ブロック領域17に配設される第2副ラグ溝42とは、それぞれタイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向に傾斜している。詳しくは、第1副ラグ溝41の、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角αは、40°以上85°以下の範囲内になっている。同様に、第2副ラグ溝42も、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角βが、40°以上85°以下の範囲内になっている。また、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向は、セカンドラグ溝32と、第1副ラグ溝41と、第2副ラグ溝42とで、全て同じ方向になっている。
なお、この場合における、第1副ラグ溝41の傾斜角αは、第1副ラグ溝41におけるセンター主溝21に接続されている端部と周方向細溝50に接続されている端部との、それぞれの第1副ラグ溝41の溝幅方向における中心同士を結ぶ直線の、タイヤ周方向に対する角度になっている。同様に、第2副ラグ溝42の傾斜角βは、第2副ラグ溝42におけるショルダー主溝22に接続されている端部と周方向細溝50に接続されている端部との、それぞれの第2副ラグ溝42の溝幅方向における中心同士を結ぶ直線の、タイヤ周方向に対する角度になっている。また、第1副ラグ溝41の傾斜角αと、第2副ラグ溝42の傾斜角βとは、60°以上75°以下の範囲内であるのが好ましい。
また、第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42とは、互いに溝幅が異なっており、第1副ラグ溝41の溝幅W1よりも、第2副ラグ溝42の溝幅W2の方が狭くなっている。具体的には、第2副ラグ溝42の溝幅W2は、第1副ラグ溝41の溝幅W1の30%以上70%以下の範囲内になっている。
図4は、図3のB−B断面図である。図5は、図3のC−C断面図である。第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42とは、溝深さがセカンドラグ溝32の溝深さよりも浅くなっている。即ち、第1副ラグ溝41の溝深さD1と、第2副ラグ溝42の溝深さD2とは、共にセカンドラグ溝32の溝深さDSに対して1mm以上5mm以下の範囲内で浅くなっている。また、第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42とでは、第1副ラグ溝41の溝深さD1よりも第2副ラグ溝42の溝深さD2の方が浅くなっている。即ち、セカンドラグ溝32と第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42とは、セカンドラグ溝32、第1副ラグ溝41、第2副ラグ溝42の順で溝深さが浅くなっている。
これらのように形成される第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42とのうち、第1副ラグ溝41は、溝幅W1が2mm以上7mm以下の範囲内になっており、溝深さD1が5mm以上10mm以下の範囲内になっている。また、第2副ラグ溝42は、溝幅W2が1mm以上5mm以下の範囲内になっており、溝深さD2が3mm以上8mm以下の範囲内になっている。
また、周方向細溝50は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲しており、隣り合うセカンドラグ溝32同士の間に位置する第2副ラグ溝42の数と同じ数で屈曲している。即ち、隣り合うセカンドラグ溝32同士を接続する周方向細溝50は、本実施形態では、屈曲している部分である屈曲部51を2箇所有している。周方向細溝50の屈曲部51は、詳しくは、周方向細溝50が、周方向細溝50の延在方向に向かいつつ、周方向細溝50の溝幅方向にずれる方向に屈曲することにより形成されている。このように形成される2箇所の屈曲部51は、タイヤ周方向において隣り合う2本のセカンドラグ溝32同士の間を、ほぼ三等分する位置に形成されている。周方向細溝50に接続される第2副ラグ溝42は、内側端部42iがそれぞれ周方向細溝50の屈曲部51に接続されている。この周方向細溝50は、溝幅が2mm以上7mm以下の範囲内になっており、溝深さが3mm以上8mm以下の範囲内になっている。
周方向細溝50は、隣り合うセンター主溝21とショルダー主溝22との間に配設されているが、その位置は、タイヤ幅方向におけるセンター主溝21とショルダー主溝22との中央よりも、センター主溝21寄りの位置になっている。このため、第1ブロック領域15が有する第1ブロック16と、第2ブロック領域17が有する第2ブロック18とでは、面積がほぼ同じ大きさになっている。換言すると、周方向細溝50は、第1ブロック領域15の各第1ブロック16と、第2ブロック領域17の各第2ブロック18とで、面積がほぼ同じ大きさになる位置に配設されている。1つの第1ブロック16の面積と、1つの第2ブロック18の面積とは、互いに±5%の範囲内であるのが好ましい。即ち、例えば、第1ブロック16の面積a1は、第2ブロック18の面積a2に対して、95%以上105%以下の範囲内であるのが好ましい。
図6は、1つのブロックユニット14とショルダーブロック13との関係を示す説明図である。ショルダーラグ溝33は、セカンドラグ溝32を延長する位置に配設される第1ショルダーラグ溝34と、タイヤ周方向における位置がセカンドラグ溝32とは異なる位置に配設される第2ショルダーラグ溝35とが交互に配設されている。このため、第2ショルダーラグ溝35を挟んで隣り合う第1ショルダーラグ溝34同士の間には、ショルダーブロック13が2つ形成されている。一方、第2ショルダーラグ溝35を挟んで隣り合う第1ショルダーラグ溝34同士の間隔とタイヤ周方向において隣り合うセカンドラグ溝32同士の間隔とは、同じ間隔になっている。このため、2つのショルダーブロック13及びこれらの間に位置する第2ショルダーラグ溝35を合わせたタイヤ周方向における長さと、1つのブロックユニット14のタイヤ周方向における長さとは、ほぼ同じ長さになっている。
換言すると、1つのブロックユニット14は、タイヤ周方向において2つのショルダーブロック13が配設される範囲とほぼ同じ範囲に配設されている。このため、ブロックユニット14が有する第2ブロック領域17の第2ブロック18は、2つのショルダーブロック13が配設される範囲に3つが配設されており、即ち、第2ブロック18は、タイヤ周方向における所定の範囲における数が、同じ範囲におけるショルダーブロック13の数よりも多い数で配設されている。
なお、この場合における同じ範囲とは、互いに延長上に位置するセカンドラグ溝32及び第1ショルダーラグ溝34を、連続する1つのラグ溝とする場合に、隣り合う当該ラグ溝同士の間に位置する範囲をいう。つまり、セカンドラグ溝32と第1ショルダーラグ溝34とは、共にタイヤ幅方向に傾斜しているため、隣り合うセカンドラグ溝32同士のタイヤ周方向における位置や、隣り合う第1ショルダーラグ溝34同士のタイヤ周方向における位置は、タイヤ幅方向における位置によって異なっている。このため、互いに延長上に位置するセカンドラグ溝32及び第1ショルダーラグ溝34を1つのラグ溝とする場合における、隣り合う当該ラグ溝同士の間に位置する範囲を、ここでいう同じ範囲とする。
また、センター主溝21は、トレッド面3への開口部を形成する2つのエッジが、互いに異なる形状で形成されている。センター主溝21のエッジのうち、タイヤ幅方向内側に位置する内側エッジ21iは、タイヤ周方向に沿って直線状に形成されている。これに対し、センター主溝21のエッジのうち、タイヤ幅方向外側に位置する外側エッジ21oは、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲している。このため、センター主溝21の開口部の溝幅は、外側エッジ21oがタイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し屈曲することに伴って、タイヤ周方向における位置によって変化している。
具体的には、センター主溝21は、溝底の溝幅は一定で、開口部における外側エッジ21o側に、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に屈曲する切欠きが形成されている。これにより、センター主溝21は、外側エッジ21oが屈曲しており、溝底の溝幅は一定である一方で、開口部の溝幅が、タイヤ周方向における位置によって変化している。
センター主溝21の外側エッジ21oにおいて、センター主溝21の溝幅が大きくなる方向に凸となって、即ち、タイヤ幅方向外側に凸となって屈曲している部分である屈曲部23は、隣り合うセカンドラグ溝32同士の間に1箇所が形成されており、1箇所の屈曲部23は、セカンドラグ溝32同士の間のほぼ中央付近に位置している。センター主溝21に接続される第1副ラグ溝41は、タイヤ幅方向内側の端部である内側端部41iが、センター主溝21における外側エッジ21oの屈曲部23が位置する部分に接続されている。
なお、本実施形態では、センター主溝21は、開口部における外側エッジ21o側に切欠きが形成されることにより、外側エッジ21oに屈曲部23が形成されているが、外側エッジ21o側の溝壁における開口部寄りの位置のみが屈曲するのではなく、溝壁全体が屈曲してもよい。即ち、本実施形態では、センター主溝21は、開口部と溝底とで形状が異なっているが、開口部と溝底とが同じ形状で形成されていてもよい。
これらのように構成される空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、トレッド面3のうち下方に位置するトレッド面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。また、濡れた路面を走行する際には、トレッド面3と路面との間の水が周方向主溝20やラグ溝30等に入り込み、これらの溝でトレッド面3と路面との間の水を排水しながら走行する。これにより、トレッド面3は路面に接地し易くなり、トレッド面3と路面との間の摩擦力により、車両は走行することが可能になる。
また、雪上路面を走行する際には、空気入りタイヤ1は路面上の雪をトレッド面3で押し固めると共に、路面上の雪が周方向主溝20やラグ溝30に入り込むことにより、これらの雪も溝内で押し固める状態になる。この状態で、空気入りタイヤ1に駆動力や制動力が作用したり、車両の旋回によってタイヤ幅方向への力が作用したりすることにより、溝内の雪に対して作用するせん断力である、いわゆる雪柱せん断力が空気入りタイヤ1と雪との間で発生する。雪上路面を走行する際には、この雪柱せん断力によって空気入りタイヤ1と路面との間で抵抗が発生することにより、駆動力や制動力を路面に伝達することができ、車両は雪上路面での走行が可能になる。
また、雪上路面や氷上路面を走行する際には、周方向主溝20やラグ溝30、サイプ55のエッジ効果も用いて走行する。つまり、雪上路面や氷上路面を走行する際には、周方向主溝20のエッジやラグ溝30のエッジ、サイプ55のエッジが雪面や氷面に引っ掛かることによる抵抗も用いて走行する。また、氷上路面を走行する際には、氷上路面の表面の水をサイプ55で吸水し、氷上路面とトレッド面3との間の水膜を除去することにより、氷上路面とトレッド面3は接触し易くなる。これにより、トレッド面3は、摩擦力やエッジ効果によって氷上路面との間の抵抗が大きくなり、空気入りタイヤ1を装着した車両の走行性能を確保することができる。
これらのように、雪上路面の走行時は、溝に雪が入り込むことにより発生する雪柱せん断力の寄与度が高いため、雪上性能を高めるには、周方向主溝20やラグ溝30等の溝面積を大きくすることが有効である。これに対し、氷上路面の走行時は、トレッド面3が路面に接触した際における摩擦力やエッジ効果の寄与度が高いため、氷上性能を高めるには、溝面積を小さくして接地面積を大きくすることが有効である。即ち、雪上性能を高める際のトレッドパターンと、氷上性能を高める際のトレッドパターンとでは、好ましい傾向が相反するものになっている。
ここで、本願の発明者らは、氷上性能を高めるためのトレッドパターンについて鋭意研究を行った結果、トレッド面3におけるタイヤ赤道面CLと接地端Tとの間の中間領域のエッジ量が、氷上性能に対する寄与度が最も高い事が分かった。つまり、同じ量のエッジを、タイヤ赤道面CL付近の領域に追加した場合と、接地端T付近の領域に追加した場合と、タイヤ赤道面CLと接地端Tとの間の中間領域に追加した場合とで比較すると、タイヤ赤道面CLと接地端Tとの間の中間領域への追加が、氷上性能を効率よく向上させることができることが分かった。
このため、本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、トレッド面3におけるタイヤ赤道面CLと接地端Tとの間の中間領域のエッジ量を増加させるために、センター主溝21とショルダー主溝22との間に、第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42と周方向細溝50とが形成されている。これにより、トレッド面3全体の接地面積が低下することを極力抑えつつ、氷上性能の向上に効果的な領域のエッジ量を増加させることができる。また、センター主溝21とショルダー主溝22との間の領域では、溝面積が増加するため、雪柱せん断力を増加させることができ、雪上性能を向上させることができる。これにより、氷上性能と雪上性能とを共に向上させることができる。
さらに、センター主溝21とショルダー主溝22との間の領域では、1つの第2ブロック領域17に配設される第2副ラグ溝42は、1つの第1ブロック領域15に配設される第1副ラグ溝41の本数よりも多い本数で配設されるため、氷上路面の走行時における走行性能を、より高めることができる。つまり、車両の走行時において、制動時や旋回時等、トレッド面3に比較的大きな荷重が作用した際には、トレッド面3におけるタイヤ幅方向外側寄りの位置に、大きな荷重が作用し易くなる。このため、第1副ラグ溝41よりもタイヤ幅方向外側に配設される第2副ラグ溝42の本数を、第1副ラグ溝41の本数よりも多くすることにより、大きな荷重が作用し易くなる領域のエッジを増加させることができ、氷上性能を高めることができる。これらの結果、氷上性能を大幅に向上させながら雪上性能も向上させることができ、氷上性能と雪上性能とを両立することができる。
また、センター主溝21とショルダー主溝22とは、タイヤ赤道面CLからのタイヤ幅方向における距離がタイヤ接地幅TWの3%以上50%以下の範囲内に配置されているため、センター主溝21とショルダー主溝22との間に第1副ラグ溝41、第2副ラグ溝42、周方向細溝50を配設することにより、氷上性能に対する寄与度が高い領域のエッジ量を、より確実に増加させることができる。この結果、より確実に氷上性能を向上させることができ、氷上性能と雪上性能とを両立することができる。
また、セカンドラグ溝32同士の間に配設される第2副ラグ溝42は、セカンドラグ溝32の延長上に配設される第1ショルダーラグ溝34同士の間に位置する第2ショルダーラグ溝35よりも、多い数で配設されている。このため、氷上性能に対する寄与度が高い、タイヤ赤道面CLと接地端Tとの間の中間領域のエッジ量を、より確実に増加させることができる。この結果、より確実に氷上性能を向上させることができ、氷上性能と雪上性能とを両立することができる。
また、第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42とは、タイヤ周方向において隣り合うセカンドラグ溝32同士の間で、それぞれ等間隔で配設されるため、第1ブロック領域15が有する第1ブロック16同士の大きさや、第2ブロック領域17が有する第2ブロック18同士の大きさを、それぞれほぼ同じ大きさにすることができる。これにより、第1ブロック16同士や、第2ブロック18同士で、ブロック剛性をほぼ均一にすることができ、ブロック剛性が小さくなり過ぎるブロックが発生することを防ぐことができるため、トレッド面3の接地時にブロックが大きく変形することに起因して氷上性能が低下することを抑制することができる。また、ブロック剛性が小さくなり過ぎるブロックが発生することを防ぐことができるため、ブロックの剛性差に起因する偏摩耗の発生を抑制することができる。この結果、偏摩耗を抑制しつつ、より確実に氷上性能を向上させることができる。
また、周方向細溝50は、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に屈曲するため、周方向細溝50のエッジの長さを長くすることができると共に、周方向細溝50のエッジ効果を発揮する方向を、複数の方向にすることができる。これにより、より確実に氷上性能を向上させることができる。また、第2副ラグ溝42は、周方向細溝50の屈曲部51に接続されるため、周方向細溝50と第2副ラグ溝42との接続部分の開口面積を大きくすることができる。これにより、雪上路面の走行時に周方向細溝50内や第2副ラグ溝42内に雪が入り込んで雪柱せん断力を発揮した後、トレッド面3における当該周方向細溝50や第2副ラグ溝42が形成されている位置が雪上路面から離れた際に、溝内の雪を容易に排雪することができる。即ち、周方向細溝50や第2副ラグ溝42の排雪性能を向上させることができるため、トレッド面3における周方向細溝50や第2副ラグ溝42が形成されている位置が雪上路面に接地した際に、路面上の雪が順次周方向細溝50内や第2副ラグ溝42内に入り込むことができ、より確実に雪柱せん断力を発揮することができる。これらの結果、より確実に氷上性能と雪上性能とを共に向上させることができる。
また、第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42とは、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角α、βが40°以上85°以下の範囲内であるため、ブロックの剛性差の発生を抑えつつ、より多くの方向に対してエッジ効果を発揮させることができる。つまり、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42の傾斜角α、βが、40°未満である場合は、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42がタイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜し過ぎるため、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42によるエッジ効果の、タイヤ周方向への作用が小さくなる可能性がある。この場合、氷上路面でのトラクション性能や制動性能を向上させ難くなる可能性がある。また、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42がタイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に大きく傾斜し過ぎる場合、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42と、ショルダー主溝22及び周方向細溝50との接続部分との相対角が小さくなり過ぎ、ブロック剛性が低くなり過ぎる部分が発生する可能性がある。この場合、ブロック剛性が局所的に低くなることに起因して、偏摩耗が発生し易くなる可能性がある。また、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42の傾斜角α、βが、85°を超える場合は、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42の、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜が小さ過ぎるため、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42によるエッジ効果の、タイヤ幅方向への作用が小さくなる可能性がある。この場合、氷上路面での旋回性能を向上させ難くなる可能性がある。
これに対し、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42の傾斜角α、βが、40°以上85°以下の範囲内である場合は、ブロック剛性が局所的に低くなる部分が発生することを抑制しつつ、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42のエッジ効果を、より多くの方向に対して発揮させることができる。この結果、耐偏摩耗性の低下を抑制しつつ、より確実に氷上性能を向上させることができる。
また、第2副ラグ溝42の溝幅W2は、第1副ラグ溝41の溝幅W1の30%以上70%以下の範囲内であるため、センター主溝21とショルダー主溝22との間の領域の接地面積を確保しつつ、第2副ラグ溝42のエッジ効果を確保することができる。つまり、第2副ラグ溝42の溝幅W2が、第1副ラグ溝41の溝幅W1の30%未満である場合は、第2副ラグ溝42の溝幅W2が狭過ぎるため、第2副ラグ溝42のエッジが十分に機能せず、第2副ラグ溝42のエッジ効果を十分に発揮し難くなる可能性がある。この場合、氷上性能を効果的に向上させ難くなる可能性がある。また、第2副ラグ溝42の溝幅W2が、第1副ラグ溝41の溝幅W1の70%を超える場合は、第2副ラグ溝42を有する第2ブロック領域17の溝面積が大きくなり過ぎ、接地面積が小さくなり過ぎることに起因して、氷上性能を効果的に向上させ難くなる可能性がある。
これに対し、第2副ラグ溝42の溝幅W2が、第1副ラグ溝41の溝幅W1の30%以上70%以下の範囲内である場合は、第2ブロック領域17が位置するセンター主溝21とショルダー主溝22との間の領域の接地面積を確保しつつ、第2副ラグ溝42の溝幅W2を、エッジ効果を十分に発揮することのできる大きさにすることができる。つまり、相対的に本数の多い第2副ラグ溝42の溝幅W2を狭く設定することにより、接地面積を確保しつつエッジ成分を増加させることができ、氷上制動等の氷上性能を向上させることができる。また、相対的に本数の少ない第1副ラグ溝41の溝幅W1を広く設定することにより、接地面積を確保しつつ雪柱せん断力を増加させることができ、氷上性能を確保しつつ雪上性能を向上させることができる。この結果、より確実に氷上性能と雪上性能とを共に向上させることができる。
また、第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42とは、共にセカンドラグ溝32の溝深さDSに対する溝深さが1mm以上5mm以下の範囲内で浅くなっているため、第1ブロック16や第2ブロック18のブロック剛性を確保しつつ、雪柱せん断力を確保することができる。つまり、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42の溝深さD1、D2の、セカンドラグ溝32の溝深さDSに対して浅くなる度合が1mm未満である場合は、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42の溝深さD1、D2が深過ぎるため、第1ブロック16や第2ブロック18のブロック剛性が低下し過ぎる可能性がある。この場合、第1ブロック16や第2ブロック18に作用する荷重を適切に受けに難くなり、氷上性能を向上させ難くなる可能性がある。また、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42の溝深さD1、D2が、セカンドラグ溝32の溝深さDSに対して5mm以上浅い場合は、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42の溝深さD1、D2が浅過ぎるため、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42での雪柱せん断力を確保するのが困難になる可能性がある。この場合、雪上性能を向上させ難くなる可能性がある。
これに対し、第1副ラグ溝41の溝深さD1と第2副ラグ溝42の溝深さD2とが、セカンドラグ溝32の溝深さDSに対して1mm以上5mm以下の範囲内で浅くなっている場合は、第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42の溝深さD1、D2を、第1ブロック16や第2ブロック18のブロック剛性が低くなり過ぎることを抑制しつつ、雪柱せん断力を確保することのできる深さにすることができる。この結果、より確実に氷上性能と雪上性能とを共に向上させることができる。
また、センター主溝21は、外側エッジ21oに、センター主溝21の溝幅が大きくなる方向に凸となって屈曲する屈曲部23が形成され、第1副ラグ溝41は、センター主溝21の屈曲部23に接続されるため、センター主溝21と第1副ラグ溝41との接続部分の開口面積を大きくすることができる。これにより、雪上路面の走行時にセンター主溝21内や第1副ラグ溝41内に雪が入り込んで雪柱せん断力を発揮した後、トレッド面3における当該センター主溝21や第1副ラグ溝41が形成されている位置が雪上路面から離れた際に、溝内の雪を容易に排雪することができる。即ち、センター主溝21や第1副ラグ溝41の排雪性能を向上させることができるため、トレッド面3におけるセンター主溝21や第1副ラグ溝41が形成されている位置が雪上路面に接地した際に、路面上の雪が順次センター主溝21内や第1副ラグ溝41内に入り込むことができ、より確実に雪柱せん断力を発揮することができる。これらの結果、より確実に雪上性能を向上させることができる。
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、周方向主溝20は、2本のセンター主溝21と2本のショルダー主溝22との合計4本が形成されているが、周方向主溝20の数は、4本以外であってもよい。また、ラグ溝30の構成も、実施形態以外の構成であってもよい。周方向主溝20の数やラグ溝30の構成に関わらず、タイヤ赤道面CLに対してタイヤ幅方向における同じ方向側に配設されて隣り合う2本の周方向主溝20同士の間に、第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42と周方向細溝50とによって、複数の第1ブロック16を有する第1ブロック領域15と複数の第2ブロック18を有する第2ブロック領域17とが形成されていれば、周方向主溝20やラグ溝30の形態は問わない。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、第1ブロック領域15と第2ブロック領域17とを有するブロックユニット14は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に配設されているが、ブロックユニット14は、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLの一方側のみに配設されていてもよい。タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの一方側のみにブロックユニット14が配設される場合は、ブロックユニット14は、空気入りタイヤ1を車両に装着する際における車両装着方向における内側に配設されるのが好ましい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、1つのブロックユニット14では第1副ラグ溝41は1本が形成され、第2副ラグ溝42は2本が形成されているが、第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42との本数は、これ以外でもよい。1つのブロックユニット14において、第2副ラグ溝42の本数が第1副ラグ溝41の本数よりも多ければ、それぞれの本数は問わない。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、センター主溝21は、内側エッジ21iが直線状に形成され、外側エッジ21oがタイヤ幅方向に繰り返し屈曲しているが、内側エッジ21iと外側エッジ21oとの双方が直線状であってもよく、または、内側エッジ21iと外側エッジ21oとの双方がタイヤ幅方向に繰り返し屈曲していてもよい。同様に、ショルダー主溝22も、タイヤ周方向に沿った直線状以外の形状で形成されていてもよい。
〔実施例〕
図7A〜図7Dは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、氷上での制動性能を示す氷上制動と、氷上での操縦安定性を示す氷上旋回性と、雪上での操縦安定性を示す雪上操安性とについての試験を行った。
性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが195/65R15 91Qサイズの空気入りタイヤを15×6.0JサイズのJATMA標準リムのリムホイールにリム組みして、空気圧を210kPaに調整し、試験車両に装着してテスト走行をすることにより行った。
各試験項目の評価方法は、氷上制動については、氷上路面のテストコースにおいてテストドライバーによる制動試験を実施し、制動距離の逆数を、後述する従来例を100とする指数で表すことによって評価した。数値が大きいほど制動距離が短く、氷上制動が優れていることを示している。また、氷上旋回性については、氷上路面のテストコースを試験車両で走行した際の旋回タイムを計測し、旋回タイムの逆数を、後述する従来例を100とする指数で表すことによって評価した。数値が大きいほど旋回タイムが速く、氷上旋回性が優れていることを示している。また、雪上操安性については、雪上路面のテストコースを試験車両で走行した際のテストドライバーによる官能評価を実施し、官能評価を、後述する従来例を100として指数で表すことによって評価した。数値が大きいほど雪上操安性が優れていることを示している。
評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例と、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜18と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例の20種類の空気入りタイヤについて行った。これらの空気入りタイヤのうち、従来例の空気入りタイヤは、センター主溝21とショルダー主溝22との間の領域のラグ溝は、上述した実施形態におけるセカンドラグ溝(図7A〜図7Dでは一部で「2ndラグ溝」と記載)32と第2副ラグ溝42に相当する溝によって構成されており、第1副ラグ溝41に相当する溝は設けられていない。また、比較例の空気入りタイヤは、センター主溝21とショルダー主溝22との間の領域のラグ溝は、セカンドラグ溝32と第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42に相当する溝によって構成されているものの、第1副ラグ溝41に相当する溝と第2副ラグ溝42に相当する溝とが同数であり、それぞれ1本ずつになっている。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜18は、センター主溝21とショルダー主溝22との間の領域のラグ溝は、全てセカンドラグ溝32と第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42とによって構成されており、第2副ラグ溝42は、第1副ラグ溝41よりも本数が多くなっている。また、実施例1〜18に係る空気入りタイヤ1は、第1副ラグ溝41及び第2副ラグ溝42の本数や、周方向細溝50に対する第1副ラグ溝41や第2副ラグ溝42の傾斜角α、β、第1副ラグ溝41と第2副ラグ溝42の溝幅W1、W2、溝深さD1、D2が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤを用いて評価試験を行った結果、図7A〜図7Dに示すように、実施例1〜18の空気入りタイヤ1は、従来例や比較例に対して、氷上制動と氷上旋回性と雪上操安性とを全て向上させることができることが分かった。つまり、実施例1〜18に係る空気入りタイヤ1は、氷上性能と雪上性能とを両立することができる。