以下に、図面を参照しながら開示技術を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
開示技術を適用した第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。図1に示す車両用空調装置1は、車室内に設定された異なる複数の空間を異なる温度に空調することもできるデュアルエアコンと呼ばれる空調装置である。
車両用空調装置1は、空調対象となる空間に供給される空気を少なくとも冷却する冷凍サイクル装置10を備えている。冷凍サイクル装置10は、複数の機器と配管とによって冷媒が循環する冷凍サイクルを構成している。冷凍サイクル装置10は、冷媒を吸引し、圧縮し、吐出する圧縮機11を備えている。本実施形態の圧縮機11は、吐出する冷媒の容量を変更可能な冷媒吐出容量可変型の圧縮機である。圧縮機11は、車両に搭載された内燃機関であるエンジンの回転出力により駆動される。圧縮機11はエンジン駆動タイプに限定されず、例えば電動圧縮機であってもよい。
冷凍サイクル装置10は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒から放熱させ、冷媒を冷却する放熱器12を備えている。冷媒として凝縮性の冷媒が用いられる場合、放熱器12は凝縮器とも呼ばれる。
冷凍サイクル装置10が提供する冷媒の通路は、圧縮機11と放熱器12とが配置された共通通路部分と、この共通通路部分に対して並列に設けられた複数の並列通路とを有している。冷凍サイクル装置10が提供する冷媒の通路は、放熱器12の下流において複数の並列通路に分岐している。複数の並列通路のそれぞれには、蒸発器が設けられている。複数の並列通路は、蒸発器の下流において合流している。合流した通路は、圧縮機11に連通している。
第1の並列通路には、蒸発器14が設けられている。蒸発器14は、本実施形態における第1熱交換器に相当する。蒸発器14は、冷媒の通路と、第1外部流体である空気の通路とを備え、冷媒と空気との間での熱交換が可能となっている。蒸発器14は、圧縮機11が運転されているときに内部で蒸発する冷媒によって空気を冷却する。
蒸発器14は、例えば車室内の前方部に配置された室内ユニット30の空調ダクト31内に配設されている。蒸発器14は、車室内のうち例えば前席空間に吹き出す空気を冷却するための冷却用熱交換器である。室内ユニット30は、本実施形態における第1ユニットに相当し、空調ダクト31は、第1ダクトに相当する。
車両用空調装置1は、蒸発器14の外表面に設けられた温度センサを備えている。この温度センサは、例えば蒸発器14の冷媒管に熱的に接続されたアウターフィンに装着されたフィン温度センサにより提供することができる。温度センサは、蒸発器14の外表面温度TEを、蒸発器14の吸熱能力の関連物理量として検出する温度検出手段である。温度センサは、蒸発器14によって冷却された空気の温度を蒸発器14の吸熱能力の関連物理量として検出する、所謂エバ後温度センサと呼ばれる温度検出手段によって提供するものであってもよい。
冷凍サイクル装置10は、放熱器12と蒸発器14との間のうち第1の並列通路部分に膨張弁13を備えている。膨張弁13は、放熱器12から流出した冷媒を減圧膨張させて蒸発器14に供給する膨張弁である。膨張弁13は、蒸発器14の出口部位における冷媒過熱度を適正値に維持するように冷媒流量を調節するようになっている。膨張弁13は、所謂温度感応型の膨張弁によって提供することができる。
第2の並列通路には、蒸発器24が設けられている。蒸発器24は、本実施形態における第2熱交換器に相当する。蒸発器24は、冷媒の通路と、第2外部流体である空気の通路とを備え、冷媒と空気との間での熱交換が可能となっている。蒸発器24は、圧縮機11が運転されているときに内部で蒸発する冷媒によって空気を冷却する。
蒸発器24は、例えば車室内の天井部に配置されたリア用室内ユニット40の空調ダクト41内に配設されている。蒸発器24は、車室内のうち例えば後席空間に吹き出す空気を冷却するための冷却用熱交換器である。室内ユニット40は、本実施形態における第2ユニットに相当し、空調ダクト41は、第2ダクトに相当する。
冷凍サイクル装置10は、放熱器12と蒸発器24との間のうち第2の並列通路部分に膨張弁23を備えている。膨張弁23は、放熱器12から流出した冷媒を減圧膨張させて蒸発器24に供給する膨張弁である。膨張弁23は、蒸発器24の出口部位における冷媒過熱度を適正値に維持するように冷媒流量を調節するようになっている。膨張弁23は、所謂温度感応型の膨張弁によって提供することができる。
第2の並列通路のうち、膨張弁23の上流側の部位には、冷媒の通路を開閉する開閉手段としての電磁弁22が設けられている。電磁弁22は、第2の並列通路における冷媒の流通を断続することができる。したがって、電磁弁22が開いているときには、第2の並列通路、及びそこに設けられた蒸発器24に冷媒が流れる。一方、電磁弁22が閉じているときには、第2の並列通路、及びそこに設けられた蒸発器24には冷媒が流れない。
電磁弁22及び膨張弁23からなる構成は、放熱器12から流出した冷媒を減圧膨張させる減圧モードと放熱器12から流出した冷媒の流通を禁止する流通禁止モードとを切り換え可能な第2減圧手段23Aである。電磁弁22は、本実施形態において、蒸発器24への冷媒の流通を許可する許可モードと蒸発器24への冷媒の流通を禁止する禁止モードとを切り替え可能な流通モード切替装置に相当する。
放熱器12と膨張弁13との間の冷媒通路には、具体的には、放熱器12の冷媒出口と複数の並列通路の分岐点との間には、冷媒通路の冷媒圧力を検出する圧力センサが設けられている。圧力センサは、圧縮機11から吐出されて膨張弁13で減圧される前の冷媒圧力を検出する圧力検出手段である。圧力センサは、冷凍サイクルの高圧側の圧力を検出する高圧側圧力検出手段である。
室内ユニット30は、空調ダクト31、送風機35、蒸発器14、及びヒータコア38等から構成されている。空調ダクト31は、車室内に空調空気を導く空気通路を内部に形成する。送風機35は、空調ダクト31の内部に空気流を発生させる。送風機35は、本実施形態における第1送風機に相当する。蒸発器14は、冷媒との熱交換により空調ダクト31内を流れる空気を冷却する。ヒータコア38は、空調ダクト31内を流れる空気を加熱するための加熱用熱交換器である。
空調ダクト31は、例えば車室内の前方部に配設されている。その空調ダクト31の最も空気流れ上流側は内外気切替箱を構成する部分で、車室内空気を取り入れる内気吸込口32、及び車室外空気を取り入れる外気吸込口33を有している。以下、車室内空気を内気と呼び、車室外空気を外気と呼ぶ場合がある。
内気吸込口32及び外気吸込口33の内側には、内外気切替ダンパ34が回動自在に取り付けられている。この内外気切替ダンパ34は、サーボモータ等のアクチュエータにより駆動されて、吸込口モードを内気導入モードと外気導入モードとで切り替える。内外気切替ダンパ34は、空調ダクト31内への空気導入モードを内気導入モードと外気導入モードとで切り替える内外気切替手段である。
空調ダクト31の最も空気流れ下流側は吹出口モード切替部を構成する部分で、図示を省略したデフロスタ開口部、フェイス開口部及びフット開口部等が形成されている。また、吹出口モード切替部を構成する部分には、上記した各開口部の開閉状態を調節して各種吹出モードを設定可能な吹出モードドアが設けられている。
送風機35は、空調ダクト31と一体的に構成されたスクロールケースに回転自在に収容された遠心式ファン36、及びこの遠心式ファン36を回転駆動するブロワモータ37を有している。ブロワモータ37は、ブロワ駆動回路を介して印加されるブロワ電圧に基づいて遠心式ファン36の回転速度が制御され、送風量を調節する。送風機35は、蒸発器14に第1外部流体である空気を送風する送風手段である。
ヒータコア38は、空調ダクト31内において蒸発器14よりも下流側に配設され、このヒータコア38の空気上流側には図示を省略したエアミックスダンパが回動自在に取り付けられている。このエアミックスダンパは、その回動位置によって、ヒータコア38を通過する空気量とヒータコア38を迂回する空気量との割合を調節して、車室内へ吹き出す空気の吹出温度を調整する。
室内ユニット40は、空調ダクト41、送風機45、蒸発器24等から構成されている。空調ダクト41は、車室内に空調空気を導く空気通路を内部に形成する。送風機45は、空調ダクト41の内部に空気流を発生させる。送風機45は、本実施形態における第2送風機に相当する。蒸発器24は、冷媒との熱交換により空調ダクト41内を流れる空気を冷却する。空調ダクト41は、例えば車室内の天井部下面側の部位に配設されている。室内ユニット40では、送風機45の駆動状態と停止状態との切り替えによって、蒸発器24において冷媒と熱交換する第2外部流体である空気の流通の有無が切り換えられる。
図2に示すように、室内ユニット40は、車両50の天井部のうち前席60に着座する乗員の頭上位置に配置されている。室内ユニット40は、室内ユニット30のフェイス吹出口31aから前席空調領域に吹き出された空調空気を吸い込んで、後席70に着座する乗員が存在する後席空調領域に空調空気を吹き出すことができるようになっている。室内ユニット40の空調ダクト41には、吸込口から内気が導入される。空調ダクト41の吸込口は、車両前方側に向かって開口している。一方、空調ダクト41の吹出口は、車両後方側に向かって開口している。室内ユニット40は、車両前方側から導入した内気を、車両後方側の後席空調領域に向かって吹き出す。
送風機45は、空調ダクト41と一体的に構成されたスクロールケースに回転自在に収容された遠心式ファン、及びこの遠心式ファンを回転駆動するブロワモータを有している。送風機45のブロワモータは、ブロワ駆動回路を介して印加されるブロワ電圧に基づいて遠心式ファンの回転速度が制御され、送風量を調節する。送風機45は、蒸発器24に第2外部流体である空気を送風する送風手段である。送風機45は、遠心式ファンを備えるものに限定されない。送風機45のファンは、例えばクロスフロー式ファンであってもかまわない。
制御手段である空調用の制御装置100は、図示を省略したCPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピータを備えている。制御装置100は、冷凍サイクル装置10や室内ユニット30、40内の各構成要素の動作を制御するものである。制御装置100は、各送風機35、45のブロワ電圧を調整してその回転数を制御するとともに、電磁弁22の開閉動作制御を行なう。また、制御装置100は、圧縮機11の冷媒吐出容量制御、各ドア・ダンパの位置制御等を行なう。
制御装置100には、車室内の操作パネルに設置された空調操作部からの入力信号が入力される。前席用の空調操作部には、空調装置の自動制御状態を設定するAUTOスイッチ、及び圧縮機11の作動を許可するためのフロントエアコンスイッチ16が設けられている。また、内外気吸込モードを手動で切替設定するための内外気切替スイッチ、吹出モードを手動で切替設定するための吹出モード切替スイッチ等も設けられている。また、前席用の空調操作部には、送風機35の送風量を手動で切替設定するための送風量切替スイッチ、乗員の好みの車室内温度を設定するための温度設定スイッチ15等が設けられている。一方、後席用の空調操作部には、電磁弁22を開いて蒸発器24への冷媒の流通を許可するためのリアクーラスイッチ17、送風機45の送風量を手動で切替設定するための送風量切替スイッチ18等が設けられている。
また、制御装置100には、車室内の空調状態に影響を及ぼす環境条件を検出する各種センサからの信号が入力される。具体的には、車室内の内気温度TRを検出する内気温センサ19、車室外の外気温度TAMを検出する外気温センサ、車室内に入射する日射量TSを検出する日射センサからの各信号が入力される。また、蒸発器14温度TEを検出する蒸発器温度センサ、ヒータコア38を循環するエンジン水温TWを検出する水温センサ等からの各信号が入力される。各センサからのセンサ信号は、制御装置100内の図示しない入力回路によってA/D変換された後にマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
制御装置100は、操作パネルの各スイッチからの入力信号及び各センサからの入力信号等に基づいて、送風機回転数調整信号、各ダンパの作動制御信号、圧縮機容量調整信号、電磁弁開閉信号等を出力する。これにより、送風機35、45、内外気切替ダンパ34、圧縮機11、電磁弁22等を作動制御するようになっている。
図1には、圧縮機11を運転することによって、車室内の前席空調領域と後席空調領域との両方を空調するときの冷媒の流れが矢印によって図示されている。すなわち、図1には、所謂、空調装置の室内ユニット30、40のデュアル運転モード時の冷媒の流れを示している。制御装置100は、蒸発器温度センサが検出する蒸発器14の外表面温度TEが、蒸発器14の目標温度TEOに極力近づくように、圧縮機11の冷媒吐出容量を調節する。なお、目標温度TEOは、車室内を空調するために必要な空調風の目標吹出温度TAOを達成するために必要な蒸発器14の外表面温度である。
デュアル運転モード時には、冷媒は、膨張弁13によって減圧され、蒸発器14において蒸発する。この結果、冷媒は、前席空調領域に供給される空気を冷却して、前席空間が空調される。一方、開かれた電磁弁22を通過した冷媒は、膨張弁23によって減圧され、蒸発器24において蒸発する。この結果、冷媒は、後席空調領域に供給される空気を冷却して、後席空間が空調される。
これに対して、電磁弁22を閉じ、送風機45の運転を停止すると、車室内の前席空間のみを空調する状態となる。すなわち、所謂、空調装置の室内ユニット30のみのシングル運転モードとなる。シングル運転モード時には、冷媒は、膨張弁13によって減圧され、蒸発器14において蒸発する。この結果、冷媒は、前席空調領域に供給される空気を冷却して、前席空間が空調される。一方、閉じられた電磁弁22によって蒸発器24には冷媒が供給されず、停止した送風機45により空調ダクト41内の送風が停止される。この結果、後席空間の空調は行われない。
本実施形態の車両用空調装置1では、上述した通常のデュアル運転モードに対して、所定条件が成立したときには、電磁弁22を閉じる制御が実行される。以下に、制御装置100が行なう制御動作に関してフローチャートを参照して説明する。
図3に示すように、制御装置100は、電力供給を受けた際には、まず、ステップ110において各種データの初期化を行なった後、ステップ120において、各スイッチからの入力信号及び各センサからの入力信号を読み込む。ステップ120を実行したら、ステップ130において、ステップ120で読み込んだ環境条件信号及び設定温度信号等に基づいて、室内ユニット30から車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOを算出する。算出した目標吹出温度TAOは、空調装置の各種構成の作動制御に用いられる。
ステップ130を実行したら、ステップ140において、車両50のエンジンがオン状態であるか否か判断する。ステップ140では、エンジン出力により圧縮機11が駆動可能であるか否かを判断する。ステップ140においてエンジンがオン状態であると判断した場合には、ステップ150において、フロントエアコンスイッチ16がオンされているか否かを判断する。一方、ステップ140においてエンジンがオン状態でないと判断した場合には、ステップ190へ進む。
ステップ150において、フロントエアコンスイッチがオンされていると判断した場合には、ステップ160へ進み、リアクーラスイッチ17がオンされており、且つ、送風機45の送風量切替スイッチ18がオンされているか否かを判断する。一方、ステップ150においてフロントエアコンスイッチがオンされていないと判断した場合には、ステップ190へ進む。
ステップ160において、リアクーラスイッチ17及び送風量切替スイッチ18が共にオン状態であると判断した場合には、ステップ170へ進み、室内ユニット30の吹出モードがフェイスモード又はバイレベルモードであるか否か判断する。ステップ170では、フロント空調ユニットである室内ユニット30が、フェイス吹出口31aから冷風を吹き出すモードが設定されているか否かを判断する。ステップ160において、リアクーラスイッチ17及び送風量切替スイッチ18の少なくともいずれかがオン状態でないと判断した場合には、ステップ210へ進む。
ステップ170において、室内ユニット30の吹出モードがフェイスモード又はバイレベルモードであると判断した場合には、ステップ180へ進む。一方、ステップ170において、室内ユニット30の吹出モードがフェイスモード又はバイレベルモード以外であると判断した場合には、ステップ190へ進む。
ステップ180では、温度設定スイッチ15で設定された設定温度Tsetと内気温センサ19が検出した内気温度TRとの差Tset−TRが所定温度T1未満であるか否かを判断する。Tset−TRは、車室内を冷房する際の冷房熱負荷であると言える。ステップ180では、Tset−TRで表される冷房熱負荷が所定量T1未満であるか否かを判断している。ステップ180は、冷房熱負荷が所定量以上である高熱負荷状態であるか冷房熱負荷が所定量未満である低熱負荷状態であるかを判定する熱負荷判定部に相当する。ステップ180においてTset−TRがT1未満であると判断した場合には、ステップ200へ進む。一方、ステップ180においてTset−TRがT1以上であると判断した場合には、ステップ190へ進む。
ステップ190では、室内ユニット30及び室内ユニット40のデュアル運転モードが設定される。ステップ190では、電磁弁22を開いて蒸発器24にも冷媒を循環可能とするとともに、送風機35、45を共に駆動状態とする。ステップ190が実行されると、室内ユニット30及び室内ユニット40の両者が空調運転され、両ユニットから車室内へ空調風が吹き出される。ただし、ステップ140、150のいずれかでNOと判断されてステップ190を実行する場合には、デュアル運転モードが設定されるものの圧縮機11が駆動しないので、室内ユニット30及び室内ユニット40では送風のみが行なわれる。
ステップ200では、室内ユニット30が空調運転されるシングル運転モードが設定されるとともに、室内ユニット40が車室内の空気を循環する空気循環モードが設定される。ステップ200では、電磁弁22を閉じて蒸発器24への冷媒循環を禁止するとともに、送風機35、45を共に駆動状態とする。ステップ200が実行されると、室内ユニット30のみが空調運転され、室内ユニット40は送風のみが行なわれる。室内ユニット30は空調風を車室内へ吹き出し、室内ユニット40はサーキュレータとして機能する。室内ユニット30がフェイス吹出口31aから吹き出した冷風の一部は、室内ユニット40の吸込口から吸い込まれて吹出口から吹き出される。
ステップ200を実行するときには、ステップ190実行時よりも、送風機35に印加するブロワ電圧を上昇して、送風機35の送風量を増大させる。また、ステップ200が実行するときには、ステップ190実行時よりも、送風機45に印加するブロワ電圧を下降して、送風機35の送風量を減少させる。
ステップ210では、室内ユニット30が空調運転されるシングル運転モードが設定される。ステップ210では、電磁弁22を閉じて蒸発器24への冷媒循環を禁止するとともに、送風機35を駆動状態とする。ステップ160において送風量切替スイッチ18がオフ状態であると判断してステップ210を実行する場合には、送風機45を駆動させない。これにより、室内ユニット30のみが空調風を吹き出すシングル運転モードが設定される。
これに対して、ステップ160においてリアクーラスイッチ17はオフ状態であるものの送風量切替スイッチ18がオン状態であると判断してステップ210を実行する場合には、送風機35も駆動状態とする。これにより、室内ユニット30は空調風を車室内へ吹き出し、室内ユニット40はサーキュレーションを行なう、シングル運転モード+空気循環モードが設定される。
制御装置100は、ステップ190、200、210のいずれかを実行したら、ステップ120へリターンし、所定周期でフローチャートの制御動作を繰り返す。なお、ステップ180で判断に用いる所定温度T1は、3℃〜5℃とすることができる。例えば、図4に示すように、Tset−TRの値が低下するときと増加するときとで判断基準となるT1を変更して、電磁弁22等のハンチングを防止することができる。
本実施形態では、ステップ180の判定結果に基づいて、ステップ190を実行するかステップ200を実行するかが決定される。熱負荷判定部であるステップ180が高熱負荷状態と判定した場合には、ステップ190で送風機35及び送風機45を駆動させるとともに電磁弁22を冷媒流通許可モードとする第1運転状態に設定する。ステップ180が低熱負荷状態と判定した場合には、ステップ200で送風機35及び送風機45を駆動させるとともに電磁弁22を冷媒流通禁止モードとする第2運転状態に設定する。すなわち、ステップ190により設定される運転状態が本実施形態における第1運転状態であり、ステップ200により設定される運転状態が本実施形態における第2運転状態である。ステップ190、200は、本実施形態における運転状態設定部に相当する。
本実施形態の車両用空調装置1によれば、以下に述べる効果を得ることができる。車両用空調装置1は、第1ユニットである室内ユニット30、第2ユニットである室内ユニット40、流通モード切替装置である電磁弁22、及び制御装置100を備えている。室内ユニット30は、第1ダクトである空調ダクト31、第1送風機である送風機35、及び第1熱交換器である蒸発器14を有する。空調ダクト31は、車室内へ吹き出す空気の通路を内部に形成する。送風機35は、空調ダクト31の内部に空気流を発生させる。蒸発器14は、冷媒との熱交換により空調ダクト31の内部を流れる空気を冷却する。室内ユニット40は、第2ダクトである空調ダクト41、第2送風機である送風機45、及び第2熱交換器である蒸発器24を有する。空調ダクト41は、車室内へ吹き出す空気の通路を内部に形成する。送風機45は、空調ダクト41の内部に空気流を発生させる。蒸発器24は、冷媒との熱交換により空調ダクト41の内部を流れる空気を冷却する。電磁弁22は、蒸発器24への冷媒の流通を許可する許可モードと蒸発器24への冷媒の流通を禁止する禁止モードとを切り替え可能である。制御装置100は、送風機35、送風機45、及び電磁弁22の作動を制御する。
制御装置100は、熱負荷判定部としてのステップ180と、運転状態設定部としてのステップ190、200を有している。熱負荷判定部は、車室内を冷房する際の冷房熱負荷が所定量以上である高熱負荷状態であるか冷房熱負荷が所定量未満である低熱負荷状態であるかを判定する。運転状態設定部は、熱負荷判定部が高熱負荷状態と判定した場合には、送風機35及び送風機45を駆動させるとともに電磁弁22を許可モードとする第1運転状態に設定する。運転状態設定部は、熱負荷判定部が低熱負荷状態と判定した場合には、送風機35及び送風機45を駆動させるとともに電磁弁22を禁止モードとする第2運転状態に設定する。
これによると、室内ユニット30及び室内ユニット40を共に運転して車室内を冷房する際に、制御装置100の運転状態設定部は、送風機35及び送風機45を共に運転しつつ、熱負荷判定部の判定結果に基づいて電磁弁22のモード設定を切り替える。冷房熱負荷が高熱負荷状態である場合には、両送風機35、45を駆動しつつ蒸発器24への冷媒の流通を許可して、両ユニットを冷風吹出ユニットとして機能させ、車室内を冷房する。一方、冷房熱負荷が低熱負荷状態である場合には、両送風機35、45を駆動しつつ蒸発器24への冷媒の流通を禁止して、室内ユニット30を冷風吹出ユニットとして機能させ、室内ユニット40は、空気を循環させるエアサーキュレータとして機能させる。したがって、低熱負荷状態である場合には、冷媒を蒸発器24へ循環させるためのエネルギーが不要となる。このようにして、快適性を維持しつつ省エネルギー性を向上することができる。
また、室内ユニット30は、車室内の前席60に着座した乗員に向けて空気を吹き出し可能な構成であり、室内ユニット40は、車室内の後席70に着座した乗員に向けて空気を吹き出すための構成である。これによると、高熱負荷状態である場合には、室内ユニット30、40を冷房運転して車室内を確実に冷房する。また、低熱負荷状態である場合には、室内ユニット30を冷房運転しつつ、後席用の室内ユニット40で空気循環を行ない、エネルギー消費を抑制することができる。
また、室内ユニット30は、車室内の前方部に配置され、室内ユニット40は、車室内の天井部に配置される。これによると、高熱負荷状態である場合には、車室内の前方部に配置された室内ユニット30及び天井部に配置された室内ユニット40を冷房運転して車室内を確実に冷房することができる。また、低熱負荷状態である場合には、車室内前方部の室内ユニット30を冷房運転するとともに、車室内天井部の室内ユニット40をエアサーキュレーション運転し、エネルギー消費を抑制しつつ、乗員の快適性を維持することができる。
また、制御装置100は、運転状態設定部としてのステップ190、200を有している。そして、ステップ200で送風機35、45を駆動し電磁弁22を流通禁止モードとする第2運転状態を設定したときには、ステップ190で電磁弁22を流通許可モードとする第1運転状態を設定したときよりも、送風機45の送風量を減少させる。これによると、両送風機35、45を駆動しつつ蒸発器24への冷媒の流通を禁止する第2運転状態を設定したときには、両送風機35、45を駆動しつつ蒸発器24への冷媒の流通を許可する第1運転状態を設定したときよりも、送風機45の送風量を減少できる。したがって、第2運転状態設定時には、送風機45の駆動エネルギーを抑制して、省エネルギー性を更に向上することができる。
また、制御装置100の運転状態設定部は、ステップ200で第2運転状態を設定したときには、ステップ190で第1運転状態を設定したときよりも、送風機35の送風量を増加させる。これによると、両送風機35、45を駆動しつつ蒸発器24への冷媒の流通を禁止する第2運転状態を設定したときには、両送風機35、45を駆動しつつ蒸発器24への冷媒の流通を許可する第1運転状態を設定したときよりも、送風機35の送風量を増加できる。したがって、第2運転状態設定時には、室内ユニット30からの冷風吹出量を増大させて、車室内を確実に冷房し、乗員の快適性を確実に確保することができる。
本実施形態の車両用空調装置1では、室内ユニット30、40で車室内を冷房する両ユニットのデュアル運転モードが設定されているときには、例えば図5に示すような作動が行なわれる。冷房開始後のクールダウン期には、両送風機35、45を駆動しつつ蒸発器24への冷媒の流通を許可する第1運転状態が設定され、所謂通常のデュアル運転が行なわれる。これにより内気温度が低下しTset−TRが所定温度T1未満に到達すると、両送風機35、45を駆動しつつ蒸発器24への冷媒の流通を禁止する第2運転状態が設定される。第2運転状態は、室内ユニット30を冷房運転としたまま、室内ユニット40を冷房運転からサーキュレーション運転へ変更した状態である。第2運転状態を設定して内気温度が上昇しTset−TRが所定温度T1以上になると、再度第1運転状態が設定される。以降、第1運転状態と第2運転状態との設定が繰り返され、クールダウン後の安定的な冷房運転が行なわれる。
図5では、デュアル運転モードが設定されているときに通常のデュアル運転を継続する比較例の作動を一点鎖線で示している。本実施形態の車両用空調装置1は、車室内設定温度と実内気温度との乖離の度合いに応じて電磁弁22をオンオフ制御し、両室内ユニット30、40で車室内を冷房する。したがって、車室内設定温度と実内気温度との乖離の度合いが小さいときには、圧縮機11の冷媒吐出量を減少できるので、比較例に対して圧縮機11消費動力を低減することができる。また、電磁弁22をノーマルクローズタイプとした場合には、通電時間を低減できるので、電磁弁22の消費電力を低減することが可能である。
また、電磁弁22をオフ状態とする第2運転状態を設定したときには、電磁弁22をオン状態とする第1運転状態を設定したときよりも、送風機45の送風量を減少させている。これにより、第2運転状態設定時には、送風機45の駆動エネルギーを抑制して、省エネルギー性を更に向上することができる。また、室内ユニット40をサーキュレータとして機能させる際には、送風に伴う騒音を低減することが可能である。
また、電磁弁22をオフ状態とする第2運転状態を設定したときには、電磁弁22をオン状態とする第1運転状態を設定したときよりも、送風機35の送風量を増加させている。これにより、第2運転状態設定時には、室内ユニット30からの冷風吹出量を増大させて、車室内を確実に冷房し、乗員の快適性を確実に確保することができる。なお、制御装置100は、第2運転状態設定時には、第1運転状態設定時よりも、送風機35の送風量を増加させるものに限定されない。例えば、図5の比較例と同様に、送風機35の送風量変更制御を行なわないものであってもよい。
また、上述した実施形態では、ステップ180においてTset−TRがT1未満であると判断した場合には、ステップ200へ進み、電磁弁22を閉じて蒸発器24への冷媒循環を禁止するとともに、送風機35、45を共に駆動状態とすると説明した。ステップ200を実行して第1運転状態から第2運転状態への設定変更を行なう際には、電磁弁22を速やかに閉じなくてもかまわない。例えば、電磁弁22のオン状態からオフ状態への切換えを所定時間遅延させるものであってもよい。
(他の実施形態)
この明細書に開示される技術は、その開示技術を実施するための実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。開示される技術は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。実施形態は追加的な部分をもつことができる。実施形態の部分は、省略される場合がある。実施形態の部分は、他の実施形態の部分と置き換え、又は組み合わせることも可能である。実施形態の構造、作用、効果は、あくまで例示である。開示技術の技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示技術のいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
上記実施形態では、ステップ170において、室内ユニット30の吹出モードがフェイスモード又はバイレベルモードであるか否かを判断していた。すなわち、室内ユニット30がフェイス吹出口31aから吹き出すモードは、フェイス吹出モード及びバイレベル吹出モードであるとしていた。しかしながら、これに限定されるものではない。例えば、フロント空調ユニットである室内ユニット30が、フェイス吹出モード時よりも上方に向けて空気を吹き出すアッパベント吹出モードを設定可能であれば、アッパベント吹出モードも判定に加えることができる。フロント空調ユニットのアッパベント吹出モードは、後席空間に向けて送風可能であるので、室内ユニット40をサーキュレータとして機能させる際に極めて好ましい。
また、上記観点から、図6に示すような室内ユニット230を採用することも有効である。図6に示すフロント空調ユニットとしての室内ユニット230は、フェイス開口部30aからフェイス吹出口31aへ導風するためのフェイスダクト231に、フェイス開口部30aからアッパベント吹出口31bへ導風するダクト部を有している。アッパベント吹出口31bは、例えばインストルメントパネル201の上面部201aに設けられた、フェイス吹出口31aやデフロスタ吹出口31cとは別の吹出口である。アッパベント吹出口31bは、フェイス吹出口31aから空調風を吹き出すモード時には、フェイス吹出口31aからの吹出風よりも上方に向けて、後席空間に向かって空調風が吹き出される。アッパベント吹出口31bから吹き出された空調風は、車室内を天井部に沿って後席側へ流れる。このようなアッパベント吹出口31bを有するフロント空調ユニットを採用することは、開示技術を適用する車両用空調装置において極めて有効である。
また、上記実施形態では、送風機35、45を駆動し電磁弁22を流通禁止モードとする第2運転状態を設定したときには、電磁弁22を流通許可モードとする第1運転状態を設定したときよりも、送風機45の送風量を減少させていた。しかしながら、これに限定されるものではない。例えば、第1運転状態設定時と第2運転状態設定時とで、送風機45の送風量変更を行なわないものであってもよい。
また、上記実施形態では、熱負荷判定部であるステップ180では、車室内を冷房する際の冷房熱負荷としてTset−TRを用いていたが、冷房熱負荷はこれに限定されるものではない。冷房熱負荷は、例えばTAO−TRであってもよい。また、冷房熱負荷は、例えばTset−TE又はTAO−TEであってもよい。
また、上記実施形態では、流通モード切替装置として電磁弁22を採用していたが、これに限定されるものではない。例えば、流通モード切替装置は、全閉機能を有する減圧装置であってもよい。
また、上記実施形態では、第1熱交換器である蒸発器14及び第2熱交換器である蒸発器24は共通の冷凍サイクル装置10に設けられていたが、これに限定されるものではない。第1熱交換器及び第2熱交換器をそれぞれ個別の冷凍サイクル装置に備えるものであってもよい。
また、上記実施形態では、第1ユニットである室内ユニット30を車室内の前方部に配置し、第2ユニットである室内ユニット40を車室内の天井部に配置していたが、これに限定されるものではない。第1ユニットは、車室内の前席に着座した乗員に向けて空気を吹き出し可能なユニットであり、第2ユニットは、車室内の後席に着座した乗員に向けて空気を吹き出すためのユニットであればよい。例えば、第2ユニットは、後席の側方部位に配置される、所謂トリム置きクーラユニットであってもよい。
また、第1ユニットが車室内の前席に着座した乗員に向けて空気を吹き出し可能なユニットであり、第2ユニットが車室内の後席に着座した乗員に向けて空気を吹き出すためのユニットであるものに限定されない。複数のユニットで共通の車室内を冷房する装置に開示技術を適用することができる。例えば、バス等の大型車両の車室内の複数の空調領域に対応して複数のユニットを設け、複数のユニットの少なくとも2つのユニットを含む構成に開示技術を適用してもよい。