以下、本発明の3次元積層造形装置の実施の形態例について、図1〜図18を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
1.第1の実施の形態例
1−1.3次元積層造形装置の構成
まず、本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる3次元積層造形装置の第1の実施の形態例について図1を参照して説明する。
図1は、本例の3次元積層造形装置を模式的に示す概略断面図である。
図1に示す3次元積層造形装置1は、例えば、チタン、アルミニウム、鉄等の金属粉末からなる粉末材料に電子ビームを照射して粉末材料を溶融させ、この粉末材料が凝固した層を積み重ねて立体物を造形する装置である。
図1に示すように、3次元積層造形装置1は、中空の処理室2と、造形ボックス3と、平板状のステージ4と、ステージ駆動機構5と、支持台6と、粉末供給機構7と、電子銃8と、粉末タンク9とを備えている。ここで、ステージ4の一面4aと平行をなす方向を第1の方向Xとし、第1の方向Xと直交し、かつステージ4の一面4aと平行をなす方向を第2の方向Yとする。また、ステージ4の一面4aと直交する方向を第3の方向Zとする。
処理室2には、図示しない真空ポンプが接続されている。処理室2内の空気が真空ポンプにより排気されることで、処理室2内は、真空に維持されている。この処理室2内には、造形ボックス3と、ステージ4と、ステージ駆動機構5、支持台6、粉末供給機構7及び粉末タンク9が配置されている。処理室2の第3の方向Zの一端部側、すなわち処理室2の上部には、電子銃8が装着されている。また、電子銃8と第3の方向Zで対向する位置には、支持台6に支持された造形ボックス3が配置されている。
造形ボックス3は、筒部3aと、基準板を示すフランジ部3bとを有している。筒部3aの軸方向は、第3の方向Zと平行をなし、筒部3aは、第3の方向Zの両端部が開口している。筒部3aの筒孔内には、後述する粉末供給機構7によって供給された粉末材料M1及び粉末材料M1によって形成された造形物が収容される。
フランジ部3bは、筒部3aにおける第3の方向Zの一端部側である上端部の外縁部に設けられている。フランジ部3bは、筒部3aの外縁部から略垂直に屈曲している。そして、フランジ部3bは、第1の方向X及び第2の方向Yと平行に配置される。また、フランジ部3bの外縁部には、第3の方向Zの一端部側に向けて突出する縁部3c(図2参照)が設けられている。
フランジ部3bは、処理室2内に配置された支持台6に支持されている。そのため、造形ボックス3は、筒部3aの軸方向の一端部、すなわち上端部側が固定端となり、筒部3aの軸方向の他端部、すなわち下端部側が自由端となる。なお、造形ボックス3の詳細な構成及び支持台6における造形ボックス3の支持構造については、後述する。
また、フランジ部3bの第1の方向Xの両端部には、粉末材料M1を貯留する粉末タンク9が配置されている。粉末タンク9は、フランジ部3bにおける第3の方向Zの一端部側、すなわち上方に配置されている。粉末タンク9におけるフランジ部3bと対向する側には、所定量の粉末材料M1を排出する定量供給部が配置されている。この定量供給部からフランジ部3bに向けて所定量の粉末材料M1が供給される。
また、粉末タンク9とフランジ部3bとの間には、粉末供給機構7が配置されている。粉末供給機構7は、フランジ部3bに供給された粉末材料M1をステージ4に搬送し、かつステージ4に粉末材料M1を敷き詰める。粉末供給機構7の詳細な構成については、後述する。
造形ボックス3の筒部3aの筒孔内には、ステージ4が第3の方向Zに沿って摺動可能に配置されている。ステージ4は、略平板状に形成されている。ステージ4における第3の方向Zの一端部側の一面4aには、粉末材料M1が積層される。また、ステージ4の側端部には、耐熱性及び柔軟性を有する摺動部材14が設けられている。摺動部材14は、筒部3aの内壁面に摺動可能に接触している。
また、ステージ4の一面4aとは反対側の他面には、軸部4dが設けられている。軸部4dは、ステージ4の他面から第3の方向Zの他方に向けて突出している。軸部4dは、造形ボックス3の第3の方向Zの他端部側に配置されたステージ駆動機構5に接続されている。ステージ駆動機構5は、軸部4dを介してステージ4を第3の方向Zに沿って移動可能に支持する。ステージ駆動機構5としては、例えば、ラックとピニオンやボールねじからなる軸部4dを駆動する駆動部等が適用される。
ステージ4の一面4aは、処理室2に装着された電子銃8と対向する。加熱機構の一例を示す電子銃8は、予め準備された設計上の造形物(3次元CAD(Computer−Aided Design)データにより表された造形物)を所定の間隔でスライスした2次元形状に従い、粉末材料M1に対して電子ビームLを出射する。電子銃8から出射された電子ビームLにより、その2次元形状に対応する領域の粉末材料が溶融する。
1−2.粉末供給機構の構成
次に、粉末供給機構7の詳細な構成について図1から図3を参照して説明する。
図2は、3次元積層造形装置1を図1とは異なる方向から見た断面図である。
図1及び図2に示すように、粉末供給機構7は、アーム部21と、均し板22と、ガイド機構23と、駆動機構24と、接続部25とを有している。
ガイド機構23は、ガイドレール23aと、スライダ23bとを有している。ガイドレール23aは、造形ボックス3のフランジ部3bにおける第2の方向Yの一端部に固定されている。ガイドレール23aは、第1の方向Xと平行に延在している。ガイドレール23aには、スライダ23bが摺動可能に支持されている。スライダ23bには、アーム部21が接続されている。
アーム部21は、所定の長さを有する長尺状の部材により形成されている。アーム部21の長手方向の一端部には、スライダ23bが固定されている。そして、アーム部21は、ガイド機構23に支持されて、その長手方向が第2の方向Yと平行に延在している。アーム部21の長手方向の長さは、少なくともステージ4の第2の方向Yの一端部から他端部までの長さよりも長く設定されている。そのため、アーム部21は、ステージ4における第2の方向Yの一端部から他端部に亘って延在する。アーム部21の第3の方向Zの他端部、すなわち造形ボックス3やステージ4と対向する側の端部には、均し板22が設けられている。
均し板22は、略平板状に形成されている。均し板22は、アーム部21と同様に、その長手方向が第2の方向Yと平行に延在している。そして、アーム部21及び均し板22がガイド機構23のガイドレール23aに沿って第1の方向Xに沿って移動することで、ステージ4の一面4aに粉末材料M1を供給し、粉末材料M1を第3の方向Zに所定の高さで平坦に均す。これにより、ステージ4の一面4aには、粉末材料M1からなる粉末層が形成される。
また、アーム部21を支持するガイド機構23が造形ボックス3に固定されている。そのため、造形ボックス3が熱膨張し、第3の方向Zに変位しても、アーム部21及びガイド機構23も造形ボックス3と共に第3の方向Zに変位する。これにより、アーム部21及び均し板22と、造形ボックス3との位置関係を一定に保つことができ、アーム部21や均し板22が造形ボックス3と干渉することを防ぐことができる。
また、アーム部21の第2の方向Yの一端部には、接続部25が接続されている。接続部25は、駆動機構24によって第1の方向Xに移動可能に支持されている。駆動機構24は、処理室2における第2の方向Yの一端部側の内壁面に固定されている。また、駆動機構24は、チェーン駆動、ベルト駆動やギア駆動等の駆動機構によって接続部25を第1の方向Xに沿って移動させる。
図3は、接続部25とアーム部21の接続状態を示す平面図である。
図3に示すように、接続部25には、アーム部21の一端部が挿入される接続凹部25aが形成されている。接続凹部25aは、第2の方向Yの他端部から一端部に向かって凹んでいる。接続凹部25aにおける第3の方向Zの両端部と、第2の方向Yの他端部が開放されている。
アーム部21の一端部を接続凹部25aに挿入した際、接続部25は、アーム部21の移動方向である第1の方向Xの両側からアーム部21を支持する。さらに、接続凹部25aにおける第2の方向Yの一端部とアーム部21との間には、隙間が形成されている。
また、接続凹部25aにおけるアーム部21と第1の方向Xで対向する面には、略半球状の当接ピン26が設けられている。当接ピン26は、アーム部21と点接触で当接する。当接ピン26としては、駆動機構24からの振動を吸収可能なQ値が比較的低い衝撃吸収材を適用することが好ましい。
そして、接続部25は、アーム部21に対して第1の方向Xへの力を伝達する。なお、上述したように、接続凹部25aの第3の方向Zの両端部が開放されており、アーム部21と接続凹部25aの第2の方向Yの一端部との間には、隙間が形成されている。すなわち、接続部25は、アーム部21に対してその移動方向である第1の方向Xへのみ力を伝達し、アーム部21の移動方向とは異なる第2の方向Y及び第3の方向Zへの力を伝達させない。
これにより、駆動機構24における第2の方向Y及び第3の方向Zへの振動がアーム部21に伝達されることを防ぐことができる。その結果、粉末材料M1をアーム部21に固定された均し板22によって、粉末材料M1を平坦に均すことができる。
また、アーム部21が造形ボックス3の熱膨張によって第3の方向Zに変位しても、アーム部21は、接続凹部25a内を第3の方向Zに沿って変位することができる。これにより、造形ボックス3の熱膨張によってアーム部21と接続部25との接続箇所に負荷がかかることを防ぐことができる。
また、駆動機構24は、造形ボックス3とは異なる部材である処理室2の内壁面に固定されている。そのため、駆動機構24が駆動する際に生じる振動が、造形ボックス3に伝達することを抑制することができる。
なお、本例では、駆動機構24を支持する支持部材として処理室2を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。支持部材としては、造形ボックス3とは異なる部材であればよく、例えば、支持部材を処理室2内に設けてもよい。
さらに、本例では、アーム部21と接続部25が接続する例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、接続部25とガイド機構23のスライダ23bとを接続させてもよい。
1−3.造形ボックスの構成及び造形ボックスの支持構造
次に、造形ボックス3の構成例及び造形ボックス3の支持構造について図4及び図5を参照して説明する。
図4は、造形ボックス3を示す平面図、図5は、造形ボックス3及び支持台6を示す断面図である。
図4及び図5に示すように、造形ボックス3の筒部3aは、円筒状に形成されており、フランジ部3bは、円板状に形成されている。また、フランジ部3bには、3つの支持溝31が形成されている。支持溝31は、フランジ部3bにおける第3の方向Zの他端部側の面、すなわち下面に形成されている。3つの支持溝31は、筒部3aを囲むようにして、フランジ部3bの周方向に沿って等間隔に形成されている。
支持溝31は、フランジ部3bの下面から第3の方向Zの一端部側、すなわち上方に向けてV字状に凹ませた凹部である。支持溝31における第3の方向Zの一端部側の頂部は、造形ボックス3の中心Q1から放射状に延びている。この支持溝31には、支持台6に設けた支持ピン32が挿入される。そして、支持溝31は、支持ピン32により、筒部3aの中心Q1から放射状、すなわち半径方向に摺動可能に支持される。支持ピン32は、支持台6における第3の方向Zの一端部側の面である支持面6aに設けられている。この支持溝31と支持ピン32により造形ボックス3を支持する支持機構が構成される。
造形ボックス3が加熱された場合、筒部3aだけでなくフランジ部3bも熱膨張する。そのため、従来の3次元積層造形装置では、造形ボックスにおける固定されている箇所と固定されていない箇所によって膨張率に差が発生し、造形ボックスに歪みが生じていた。その結果、従来の3次元積層造形装置では、造形ボックスが熱膨張した際に、造形ボックスの中心Q1の位置が変化し、造形精度が低下していた。
これに対して、本例の造形ボックス3では、フランジ部3bが第1の方向X及び第2の方向Yに向けて熱膨張した場合、3つの支持溝31が支持ピン32上を摺動する。また、3つの支持溝31は、フランジ部3bの周方向に等間隔に配置されており、その頂部が中心Q1に対して放射状に形成されているため、フランジ部3b全体は、フランジ部3bの半径方向の外側に向けて等しく膨張する。これにより、造形ボックス3の熱膨張によって、造形ボックス3の中心Q1の位置が変化することを防ぐことができ、造形精度を向上させることができる。
また、造形ボックス3の筒部3aにおける第3の方向Zの他端部は固定されておらず、自由端となっている。そのため、造形ボックス3が熱膨張した場合、筒部3aは、自由端である第3の方向Zの他端部側に向けて膨張する。これにより、造形ボックス3における第3の方向Zの一端部の位置が変化することを抑制することができる。
また、造形ボックス3の筒部3aと支持台6の間には、不図示のヒートシールドが配置されている。このヒートシールドにより、造形ボックス3の筒部3aから支持台6に熱が輻射されること及び熱が伝達することを防ぐことができる。
なお、本例では、フランジ部3bに支持溝31を形成し、支持ピン32によって摺動可能に支持する例を説明したが、造形ボックス3の支持機構は、これに限定されるものではない。支持機構としては、例えば、支持台6に支持溝を形成し、フランジ部3bに支持ピンを設けてもよく、あるいは、放射状に延びるレールによって造形ボックス3を支持してもよい。
また、造形ボックス3を3つの支持機構によって3点で支持する例を説明したが、これに限定されるものではなく、支持機構を4つ以上設け、4点以上で造形ボックス3を支持してもよい。
1−4.3次元積層造形装置の動作
次に、図1、図6を参照して上述した構成を有する3次元積層造形装置1の動作について説明する。
図6は、3次元積層造形装置1で造形物を形成した状態示す概略断面図である。
まず、図1に示すように、ステージ駆動機構5を駆動させて、造形ボックス3のフランジ部3bの上面より第3の方向Zに所定の間隔分下がった位置、又はステージ4の一面4aとフランジ部3bの上面が同じ高さとなる位置にステージ4を配置する。この所定の間隔が、その後に敷き詰められる粉末材料Mの第3の方向Zの層厚に相当する。
次に、粉末供給機構7の駆動機構24が駆動し、接続部25が第1の方向Xに沿って移動する。これにより、接続部25に接続されたアーム部21は、ガイド機構23のガイドレール23aに沿って移動し、粉末タンク9から排出された粉末材料M1をステージ4の一面4aまで搬送する。さらに、アーム部21が第1の方向Xに沿って移動することで、ステージ4の一面4aには、均し板22により粉末材料M1の層が形成される。
上述したように、駆動機構24における第2の方向Y及び第3の方向Zへの振動は、アーム部21に伝達されないため、ステージ4の一面4aに粉末材料M1の層を平坦に形成することができる。
予め準備された設計上の造形物を所定の厚さ間隔でスライスした2次元形状に従い、電子銃8から粉末材料M1の層に対して電子ビームLが照射される。電子銃8から照射された電子ビームLにより、その2次元形状に対応する粉末材料M1が溶融する。溶融した粉末材料M1は、材料に応じた所定時間が経過すると凝固し、凝固粉末P1となる。
一層分の粉末材料M1が溶融及び凝固した後、ステージ駆動機構5によりステージ4を所定の高さ分下げる。次に、粉末材料M1を直前に敷き詰められた層(下層)の上に敷き詰める。そして、その層に相当する2次元形状に対応する領域の粉末材料M1に電子ビームLを照射し、粉末材料M1を溶融及び凝固させる。この一連の処理を繰り返し、溶融及び凝固した粉末材料M1の層を積み重ねることにより、図6に示すように、造形ボックス3の筒部3a内には、造形物K1が構築される。
なお、造形物K1を構築する際に、造形ボックス3が加熱されて熱膨張しても、上述したように、アーム部21及び均し板22を支持するガイド機構23は、造形ボックス3に配置されている。これにより、アーム部21及び均し板22と造形ボックス3との位置関係を一定に維持することができ、アーム部21や均し板22が造形ボックス3と干渉することを防ぐことができる。
さらに、上述したように、熱膨張によって、造形ボックス3の中心Q1の位置や、造形ボックス3における第3の方向Zの一端部の位置が、変化しないため、造形ボックス3と電子銃8との位置関係を一定に保つことができる。これにより、構築される造形物K1の造形精度を向上することができる。
2.第2の実施の形態例
2−1.第2の実施の形態例の構成例
次に、図7を参照して第2の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置ついて説明する。
図7は、第2の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を示す概略断面図である。
この第2の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置51が、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と異なる点は、粉末供給機構の構成である。そのため、ここでは、粉末供給機構について説明し、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図7に示すように、粉末供給機構57は、アーム部21と、均し板22と、第1ガイド機構23Aと、第2ガイド機構23Bと、駆動機構24と、接続部25とを有している。第1ガイド機構23Aは、造形ボックス3のフランジ部3bにおける第2の方向Yの一端部に配置されている。第2ガイド機構23Bは、造形ボックス3のフランジ部3bにおける第2の方向Yの他端部に配置されている。
アーム部21の長手方向の一端部、すなわち第2の方向Yの一端部は、第1ガイド機構23Aによって支持されている。また、アーム部21の長手方向の他端部、すなわち第2の方向Yの他端部は、第2ガイド機構23Bによって支持されている。そのため、アーム部21は、第1ガイド機構23Aと第2ガイド機構23Bによって長手方向(第2の方向Y)の両端部が支持されている。これにより、アーム部21が第1の方向Xに移動する際に生じる振動を抑制することができる。
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような粉末供給機構57を有する3次元積層造形装置51によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様の作用効果を得ることができる。
2−2.変形例
次に、図8A及び図8Bを参照して、第2の実施の形態例にかかる3次元積層装置の変形例いついて説明する。
図8Aはアーム部を示す平面図、図8Bは粉末供給機構を示す概略断面図である。
図8Aに示すように、アーム部21Bにおける長手方向(第2の方向Y)の他端部には、固定孔21aが形成されている。固定孔21aは、第2の方向Yに所定の長さで延びる長孔である。図8A及び図8Bに示すように、固定孔21aには、固定ねじ59の軸部が挿入されている。そして、アーム部21Bの第2の方向Yの他端部は、固定ねじ59によって第2ガイド機構23Bのスライダ23bに取り付けられている。
また、固定ねじ59の頭部と、アーム部21Bの他端部の間には、付勢部材として圧縮コイルばね59aが介在されている。そして、アーム部21Bの他端部は、圧縮コイルばね59aによりスライダ23bに向けて付勢されている。これにより、アーム部21Bの他端部は、第2ガイド機構23Bのスライダ23bに第2の方向Yに摺動可能に支持される。
なお、付勢部材としては、圧縮コイルばね59aに限定されるものではなく、板ばねやゴム等のその他各種の弾性を有する部材を適用できるものである。
この変形例にかかる粉末供給機構57Bによれば、アーム部21Bが熱膨張により第2の方向Yに伸びた場合、アーム部21Bの他端部は、固定ねじ59に支持されて、第2の方向Yに沿ってスライドする。これにより、熱膨張によってアーム部21Bや第1ガイド機構23A、第2ガイド機構23Bに負荷がかかることを防ぐことができる。
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような粉末供給機構57Bを有する3次元積層造形装置によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様の作用効果を得ることができる。
3.第3の実施の形態例
次に、図9及び図10を参照して第3の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置について説明する。
図9は、第3の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置の造形ボックス及び支持台を示す平面図、図10は、第3の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置の造形ボックス及び支持台を示す側面図である。
この第3の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置が、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と異なる点は、造形ボックス及び支持台の構成である。そのため、ここでは、造形ボックス及び支持台について説明し、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図9及び図10に示すように、造形ボックス63は、四角筒状の筒部63aと、矩形状のフランジ部63bとを有している。フランジ部63bには、3つの支持溝71が形成されている。支持溝71は、フランジ部63bにおける第3の方向Zの他端部側の面、すなわち下面に形成されている。
3つの支持溝71は、仮想円R1の周方向に等間隔に配置されている。仮想円R1の中心Q1は、造形ボックス63の重心上に位置している。支持溝71は、V字状に凹ませた凹部である。支持溝71における第3の方向Zの一端部側の頂部は、中心Q1から放射状に延びている。この支持溝71には、後述する支持台66に設けた支持ピン72が挿入される。そして、造形ボックス63は、支持台66によってフランジ部63bが支持されている。
支持台66は、処理室2の内壁面に固定されている。支持台66は、処理室2の内壁面から第1の方向Xに向けて突出している。支持台66は、造形ボックス63の筒部63aの周囲において、フランジ部63bと対向する。また、支持台66は、3つの支持部66aを有している。3つの支持部66aは、支持台66における第3の方向Zの一端部側の一面から第3の方向Zの一端部側に向けて突出している。
また、3つの支持部66aは、フランジ部63bに設けた3つの支持溝71と対向する。この支持部66aには、支持溝71に挿入される支持ピン72が設けられている。そして、造形ボックス3のフランジ部63bが熱膨張すると、支持溝71は支持ピン72上を摺動する。
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような造形ボックス63及び支持台66を有する3次元積層造形装置によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様の作用効果を得ることができる。
4.第4の実施の形態例
次に、図11を参照して第4の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置について説明する。
図11は、第4の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を示す概略断面図である。
この第4の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置81が、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と異なる点は、造形ボックス及び造形ボックスの支持機構の構成である。そのため、ここでは、造形ボックス及び造形ボックスの支持機構について説明し、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図11に示すように、造形ボックス83は、筒部87と、平板状の基準板88とを有している。基準板88は、支持台6や処理室2の壁面に固定されている。この基準板88には、粉末供給機構7のガイド機構が固定される。また、基準板88の第3の方向Zの他端部側の面である下面には、筒部87が着脱可能に装着される。
筒部87の筒孔内には、ステージ駆動機構5によって第3の方向Zに沿って移動するステージ4が配置される。また、第3の方向Zの一端部は、基準板88の下面に当接している。筒部87の第3の方向Zの他端部には、押圧機構を示す押圧ばね86が取り付けられている。
押圧ばね86における第3の方向Zの一端部は、筒部87に取り付けられており、押圧ばね86における第3の方向Zの他端部は、処理室2に設置されたばね受け部85に取り付けられている。そして、押圧ばね86は、筒部87を第3の方向Zの一端部側に向けて付勢している。これにより、筒部87は、押圧ばね86により基準板88に向けて押圧されて、押圧ばね86と基準板88によって挟持される。
筒部87が熱膨張した場合、基準板88が固定されているため、筒部87は、押圧ばね86の付勢力に抗して、第3の方向Zの他端部側に向けて変位する。これにより、粉末供給機構7のガイド機構が固定された基準板88が、熱膨張により第3の方向Zに向けて変位することを防ぐことができる。
また、基準板88と押圧ばね86によって筒部87を挟持することで、造形ボックス83の筒部87を固定ねじ等の固定機構を用いずに保持することができる。これにより、造形ボックス83の筒部87を容易に脱着することができる。
なお、押圧機構として押圧ばね86を用いた例を説明したが、これに限定されるものではなく、押圧機構としては、例えば、空圧を用いた空気ばねやエアシリンダー等を適用してもよい。
また、熱膨張によって造形ボックス83の基準板88における第3の方向Zへの変位は発生しないが、熱膨張によってステージ4を移動させる軸部4dが熱膨張により第3の方向Zの一端部側に向けて伸びる。そのため、軸部4dが熱膨張により、ステージ4の一面4aにおける第3の方向Zの位置が変位し、ステージ4の移動量に誤差が発生する。その結果、従来の3次元積層造形装置では、ステージを移動させる移動機構の熱膨張によって所定の厚さの粉末層を形成することができない、という問題を有していた。
しかしながら、基準板88の第3の方向Zの位置は変化しないため、基準板88を基準とすることで、熱膨張により軸部4dが伸びた量を温度測定により算出することができる。そして、ステージ駆動機構5は、ステージ4の移動量を、算出した軸部4dの伸び量によって補正することで、ステージ4を適正な位置に移動させることができ、適正な厚さの粉末層を形成することができる。
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する3次元積層造形装置81によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様の作用効果を得ることができる。
5.第5の実施の形態例
次に、図12を参照して第5の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置について説明する。
図12は、第5の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を示す概略断面図である。
この第5の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置91が、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と異なる点は、ステージ駆動機構5の設置位置である。そのため、ここでは、ステージ駆動機構5の設置位置について説明し、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図12に示すように、ステージ駆動機構5は、取付部材95を介して、造形ボックス3の筒部3aにおける第3の方向Zの他端部に取り付けられている。ステージ4の軸部4dが、熱膨張により第3の方向Zの一端部側に向けて伸びる際には、造形ボックス3の筒部3aは、熱膨張により第3の方向Zの他端部側に向けて伸びる。そのため、軸部4dの伸びと筒部3aの伸びが互いに相殺される。これにより、熱膨張により、ステージ4の一面4aの位置が変位することを抑制することができ、ステージ4を適正な位置に移動させることができる。
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する3次元積層造形装置91によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様の作用効果を得ることができる。
6.第6の実施の形態例
次に、図13及び図14を参照して第6の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置について説明する。
図13及び図14は、第6の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置の造形ボックスを示す図である。図14は、図13に示すA−A線から造形ボックスを見た平面図である。
この第6の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置が、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置と異なる点は、造形ボックス及び支持台の構成である。そのため、ここでは、造形ボックス及び支持台について説明し、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図13及び図14に示すように、造形ボックス103は、円筒状に形成されている。造形ボックス103の筒部103aの外周面には、3つの支持ピン112が設けられている。支持ピン112は、筒部103aの外周面から略垂直に突出し、半径方向の外側に向けて突出している。また、3つの支持ピン112は、筒部103aの周方向に沿って等角度間隔に配置されている。そして、3つの支持ピン112は、造形ボックス103の中心Q1から放射状に突出している。この支持ピン112は、後述する支持台106に設けた支持溝115に配置される。
また、支持ピン112の数は、3つに限定されるものではなく、4つ以上設けてもよい。なお、支持ピン112を4つ以上設ける場合でも、支持ピン112は、筒部103aの中心Q1の周りに等角度間隔、すなわち回転対称となる位置に配置されることが好ましい。
なお、造形ボックス103の筒部103aの形状は、円筒状に限定されるものではなく、上述した第3の実施の形態例にかかる造形ボックス63と同様に、四角筒状に形成してもよく、あるいは六角筒やその他各種の形状に形成してもよい。
支持台106における第3の方向Zの一端部側の面である支持面106aには、3つの支持溝115が形成されている。支持溝115は、支持面106aから第3の方向Zの他端部側、すなわち下方に向けて凹ませた凹部である。また、支持溝115は、支持台106における内壁面から半径方向の外側に向けて所定の長さで延在している。そして、支持溝115は、支持台106及びこの支持台106に支持される造形ボックス103の中心Q1から放射状に延びている。この支持溝115には、支持ピン112が配置される。
また、支持溝115の幅方向の長さ及び深さ方向(第3の方向Z)の長さは、支持ピン112の外径の長さと略等しく設定されている。そのため、支持ピン112を支持溝115に配置した際に、造形ボックス103が周方向への移動することを支持ピン112と支持溝115で規制することができる。
さらに、図14に示すように、支持ピン112における筒部103aとは反対側の端部、すなわち先端部と、支持溝115における支持台106の内壁面とは反対側の端部には、隙間W1が設けられている。隙間W1は、造形ボックス103及び支持ピン112が熱膨張した場合でも、造形ボックス103と支持台106が干渉しない長さ以上に設定されている。
造形ボックス103及び支持ピン112が第1の方向X及び第2の方向Yに向けて熱膨張した場合、支持ピン112と支持溝115との間に設けた隙間W1により、支持ピン112は、支持溝115内を摺動することができる。また、3つの支持ピン112及び3つの支持溝115は、造形ボックス103の中心Q1から放射状で、かつ回転対称に配置されている。そのため、3つの支持ピン112は、造形ボックス103の中心Q1から半径方向の外側に向けて等しく熱膨張する。これにより、造形ボックス103の熱膨張によって、造形ボックス103の中心Q1の位置が変化することを防ぐことができ、造形精度を向上させることができる。
また、支持台106の支持面106aには、ピン押さえ部107が着脱可能に取り付けられている。ピン押さえ部107は、支持面106aにおける支持溝115が形成された箇所に配置される。ピン押さえ部107は、固定ボルト107aによって支持台106に取り付けられる。また、ピン押さえ部107は、支持溝115に配置された支持ピン112が第3の方向Zの一端部側、すなわち上下方向の上方への移動を規制している。
また、造形ボックス103及び支持台106における第3の方向Zの一端部側、すなわち上下方向の上方には、プレート110が配置される。このプレート110は、造形ボックス103の筒部103aにおける第3の方向Zの一端部、すなわち上端部に例えば、固定ねじ等により固定されている。さらに、プレート110は、支持台106に接触していない。これにより、プレート110の熱が支持台106に伝達することを抑制することができる。なお、プレート110と支持台106との間に、ヒートシールドを配置し、プレート110から支持台106に熱が輻射されることを防止してもよい。
プレート110には、略円形の開口部110aが形成されている。プレート110の開口部110aは、造形ボックス103における筒部103aの筒孔と略等しい大きさに形成されており。そして、プレート110の開口部110aは、筒部103aの筒孔及びステージ4を臨む。プレート110の第3の方向Zの一端部側の面、すなわち上面部には、粉末タンク9(図1等参照)から供給された粉末材料M1が載置される。そして、プレート110は、ピン押さえ部107を覆う。このプレート110は、上述した第1の実施の形態例にかかる造形ボックス3のフランジ部3bや第4の実施の形態例にかかる基準板88の役割を有している。
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する3次元積層造形装置によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様の作用効果を得ることができる。
ここで、完成した造形物K1を取り出す際、ステージ4を第3の方向Zの一端部側、すなわち上下方向の上方に向けて上昇させる。また、造形処理中においても、粉末材料M1を敷き直す際に、ステージ4を一層分、又は所定数の層分だけ上昇させる場合がある。このようにステージ4を上昇させる際に、造形物K1や粉末材料M1、摺動部材14と造形ボックスの摩擦により、造形ボックスがステージ4と共に浮き上がるおそれがあった。
これに対して、第6の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置では、上述したように、造形ボックス103に設けた支持ピン112は、ピン押さえ部107により第3の方向Zへの移動が規制されている。これにより、ステージ4を上昇させた際に、造形物K1や粉末材料M1、摺動部材14との摩擦により、造形ボックス103がステージ4と共に浮き上がることを防止することができる。その結果、粉末材料M1を敷き直す際に、造形ボックス103における第3の方向Zの位置が変化することが防止することができ、粉末材料M1を精度良く敷き直すことができる。
7.第7の実施の形態例
次に、図15を参照して第7の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置について説明する。
図15は、第7の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置の概略構成を示す図である。
この第7の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置が、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置と異なる点は、粉末供給機構の構成である。そのため、ここでは、粉末供給機構について説明し、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図15に示すように、粉末供給機構207は、アーム部221と、均し板22と、第1ガイド機構223Aと、第2ガイド機構223Bと、駆動機構24と、接続部25とを有している。なお、均し板22、駆動機構24及び接続部25の構成は、第1の実施の形態例にかかる均し板22、駆動機構24及び接続部25と同様であるため、その説明は省略する。
第1ガイド機構223Aは、造形ボックス3における第2の方向Yの一端部に配置されている。第1ガイド機構223Aは、スライダ226と、ガイドレール227とを有している。ガイドレール227は、造形ボックス3における第2の方向Yの一端部に配置されている。ガイドレール227は、第1の方向Xと平行に延在している。
ガイドレール227は、略円柱状のガイド部227aを有している。ガイド部227aは、ガイドレール227における第3の方向Zの一端部、すなわち上下方向の上部に配置されている。ガイド部227aには、スライダ226が第1の方向Xに沿って摺動可能に支持されている。
また、スライダ226は、アーム部221における長手方向の一端部、すなわち第2の方向Yの一端部に配置されている。スライダ226は、ガイド部227aの外周面の曲率に対応して、円形に凹んだ摺動面226aを有している。そして、摺動面226aは、ガイド部227aの外周面を摺動する。そのため、スライダ226は、ガイドレール227に第1の方向Xだけでなく、ガイド部227aの中心軸周りに沿って回動可能に支持されている。
また、第2ガイド機構223Bは、造形ボックス3における第2の方向Yの他端部に配置されている。第2ガイド機構223Bは、ガイドローラ228と、ガイド面部229とを有している。ガイド面部229は、略平板状に形成されており、造形ボックス3における第2の方向Yの一端部に配置されている。ガイド面部229は、第1の方向Xと平行に延在している。
ガイドローラ228は、アーム部221における長手方向の他端部、すなわち第2の方向Yの他端部に回転可能に配置されている。ガイドローラ228は、ガイド面部229における第3の方向Zの一端部側の一面、すなわち上面部に回転可能に接触している。また、ガイドローラ228におけるガイド面部229に接触する接触面228aは、第2の方向Y及び第3の方向Zに対して湾曲した曲面状に形成されている。
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する3次元積層造形装置によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様の作用効果を得ることができる。
ここで、造形ボックス3内の温度ムラや、粉末供給機構207の温度勾配、第1ガイド機構223Aや第2ガイド機構223Bの熱伝導の違い等により、第1ガイド機構223Aと第2ガイド機構223Bの第3の方向Zの位置にずれが生じるおそれがある。これに対して、第7の実施の形態例にかかる粉末供給機構207では、スライダ226がガイドレール227におけるガイド部227aの中心軸周りに回動可能に支持されている。
そのため、第1ガイド機構223Aと第2ガイド機構223Bの第3の方向Zの位置でずれが発生すると、スライダ226がガイド部227aを中心に回動する。これより、第1ガイド機構223Aと第2ガイド機構223Bが第3の方向Zに位置ずれが発生しても、スライダ226は、ガタつくことなく、ガイド部227aをスムーズに摺動する。
また、第1ガイド機構223Aと第2ガイド機構223Bの第3の方向Zの位置ずれにともなってアーム部221が第2の方向Yに対して傾く。しかしながら、ガイドローラ228の接触面228aは、曲面状に形成されている。そのため、アーム部221が傾いた場合でも、ガイドローラ228の接触面228aを確実にガイド面部229に接触させることができる。
このように、第7の実施の形態例にかかる粉末供給機構207によれば、各種部品に非対称な熱膨張が生じた場合でも、粉末供給機構207の動作に過剰な摩擦抵抗や負担等が発生することを抑制することができる。その結果、アーム部221及び均し板22をスムーズに移動させることができるだけでなく、均し板22と造形ボックス3が干渉することを防止することができ、粉末材料M1を平坦に均すことができる。
8.第8の実施の形態例
次に、図16から図18を参照して第8の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置について説明する。
図16は、第8の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置の概略構成を示す図である。図17は、接続部とアーム部との接続状態を拡大して示す斜視図、図18は、アーム部お示す正面図である。
この第8の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置が、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置と異なる点は、粉末供給機構の構成である。そのため、ここでは、粉末供給機構について説明し、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図16に示すように、粉末供給機構307は、アーム部321と、均し板22と、第1ガイド機構323Aと、第2ガイド機構323Bと、駆動機構24と、接続部325とを有している。なお、均し板22及び駆動機構24の構成は、第1の実施の形態例にかかる均し板22及び駆動機構24と同様であるため、その説明は省略する。
アーム部321には、第1アーム支持部331と、第2アーム支持部332とを有している。第1アーム支持部331は、アーム部321における長手方向の一端部、すなわち第2の方向Yの一端部に配置されている。
第1アーム支持部331は、第1部材333と、第2部材334とを有している。第1部材333及び第2部材334は、互いに略平板状に形成されている。第1部材333と第2部材334は、固定ネジ340により固定されている。具体的には、第1部材333と第2部材334は、第3の方向Zの他端部、すなわち上下方向の下端部において互いに固定されている。また、第2部材334における第1部材333との固定箇所とは反対側の端部である第3の方向Zの一端部、すなわち上下方向の上端部は、アーム部321の長手方向の一端部に固定ネジ340によって固定されている。
第1部材333における第2部材334との固定箇所とは反対側の端部である第3の方向Zの一端部には、第1ガイド機構323Aを構成するスライダ326が固定されている。スライダ326は、第7の実施の形態例にかかるスライダ226と同様に、円形に凹んだ摺動面326aを有している。なお、第8の実施の形態例にかかるスライダ326は、摺動面326aが第3の方向Zの一端部側、すなわち上下方向の上方を向いている。そして、スライダ326は、第1ガイド機構323Aを構成するガイドレール327に摺動可能に支持されている。
ガイドレール327は、造形ボックス3における第2の方向Yの一端部に配置されている。ガイドレール327は、第7の実施の形態例にかかるガイドレール227と同様に、略円柱状のガイド部327aを有している。なお、第8の実施の形態例にかかるガイド部327aは、ガイドレール327における第3の方向Zの他端部、すなわち上下方向の下部に配置されており、上下方向の下方を向いている。これにより、第8の実施の形態例にかかるガイドレール327によれば、ガイド部327aに粉末材料M1等が付着することを防止することができる。これにより、スライダ326をガイド部327aに沿ってスムーズに摺動させることができる。
また、図16及び図17に示すように、第2部材334には、接続孔334aが形成されている。接続孔334aには、接続部325に設けた接続ピン325aが挿入される。接続ピン325aは、接続部325から第2の方向Yの他端部に向けて突出している。
第2部材334に設けた接続孔334aは、第3の方向Zに沿って延びる長孔である。また、接続孔334aにおける第1の方向Xの開口の長さは、接続ピン325aの外径と略等しく設定されている。そのため、接続ピン325aを接続孔334aに挿入した際、接続ピン325aは、接続孔334aにおける第1の方向Xの側面部に当接する。これにより、接続部325は、接続ピン325aを介してアーム部321に対して第1の方向Xへの力を伝達することができる。
また、接続孔334aが第3の方向Zに沿って延びる長孔であるため、接続部325における第3の方向Zへの力は、第2部材334、すなわちアーム部321には伝達されない。さらに、接続部325と第2部材334との間には、第2の方向Yに沿って間隔が空いている。そのため、接続部325における第2の方向Yへの力も、第2部材334、すなわちアーム部321には伝達されない。
これにより、アーム部321に対して接続部325から第1の方向へのみ力を伝達させることができ、駆動機構24における第2の方向Y及び第3の方向Zへの振動がアーム部321に伝達されることを防ぐことができる。
なお、第8の実施の形態例では、接続部325に接続ピン325aを設け、アーム部321である第2部材334に接続孔334aを設けた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、接続部325に接続孔を設け、第2部材334に接続ピンを設けてもよい。
さらに、接続ピン325aと接続孔334aによる接続機構は、上述した第1から第7の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置に適用してもよい。
第2アーム支持部332は、アーム部321における長手方向の他端部、すなわち第2の方向Yの他端部に配置されている。第2アーム支持部332は、第1アーム支持部331と同様に、第1部材335と、第2部材336とを有している。
第1部材335及び第2部材336は、互いに略平板状に形成されている。第1部材335と第2部材336は、固定ネジ340により固定されている。具体的には、第1部材335と第2部材336は、第3の方向Zの他端部、すなわち上下方向の下端部において互いに固定されている。また、第2部材336における第1部材335との固定箇所とは反対側の端部である第3の方向Zの一端部、すなわち上下方向の上端部は、アーム部321の長手方向の他端部に固定ネジ340によって固定されている。
第1部材335における第2部材336との固定箇所とは反対側の端部である第3の方向Zの一端部には、第2ガイド機構323Bを構成するガイドローラ328が設けられている。第2ガイド機構323Bは、ガイドローラ328と、ガイド面部329とを有している。なお、ガイドローラ328とガイド面部329の構成は、第7の実施の形態例にかかるガイドローラ228とガイド面部229の構成と同様であるため、その説明は省略する。
また、第2アーム支持部332における第2部材336には、おもり338が固定されている。おもり338は、第2部材336における第2の方向Yの他端部に設けられている。おもり338を設けたことで、ガイドローラ328をガイド面部329に確実に接触させることができる。これにより、アーム部321をがたつきなくスムーズに移動させることができる。なお、おもり338をアーム部321に設ける構成は、上述した第1から第7の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置に適用してもよい。
次に、図18を参照して、第1アーム支持部331と、第2アーム支持部332の詳細な構成について説明する。
第1アーム支持部331の第1部材333におけるスライダ326との固定箇所から第2部材334との固定箇所までの長さS1は、第2部材334における第1部材333との固定箇所からアーム部321との固定箇所までの長さT1よりも短く設定されている。すなわち、第1部材333の第3の方向Zの長さS1は、第2部材334の第3の方向Zの長さT1よりも短い。
同様に、第2アーム支持部332の第1部材335におけるガイドローラ328との固定箇所から第2部材336との固定箇所までの長さS2は、第2部材336における第1部材335との固定箇所からアーム部321との固定箇所までの長さT2よりも短く設定されている。すなわち、第1部材335の第3の方向Zの長さS2は、第2部材336の第3の方向Zの長さT2よりも短い。
第1アーム支持部331における第1部材333と第2部材334は、異なる材質で形成されており、同様に、第2アーム支持部332における第1部材335と第2部材336は、異なる材質で形成されている。具体的には、第1部材333、335は、第2部材334、336よりも線膨張係数が大きい材質で形成されている。また、第1部材333、335と第2部材334、336の第3の方向Zの長さの比S1:T1、S2:T2は、第1部材333、335と第2部材334、336の線膨張係数の逆比と略等しくなるように設定されている。
これにより、例えば、第1アーム支持部331が温度上昇により熱膨張した場合、第1部材333は、第2部材334との固定箇所から第3の方向Zの一端部側、すなわち上下方向の上方に向けて膨張する。これに対して、第2部材334は、アーム部321との固定箇所から第3の方向Zの他端部側、すなわち上下方向の下方に向けて膨張する。上述したように、第1部材333は第2部材334よりも線膨張係数が大きい材質で形成されているため、第1部材333における第3の方向Zへの熱膨張率は、第2部材334よりも大きくなる。
上述したように、第1部材333の第3の方向Zの長さS1は、第2部材334の第3の方向Zの長さT1よりも短く、その長さの比S1:T1は、第1部材333と第2部材334の線膨張係数の逆比と等しくなるように設定されている。これにより、第1部材333が第3の方向Zの一端部に向けて熱膨張する長さと、第2部材334が第3の方向Zの他端部に向けて熱膨張する長さは、ほぼ等しくなる。したがって、第1部材333における第3の方向Zへの熱膨張による伸びを、第2部材334における第3の方向Zへの熱膨張による伸びでキャンセルすることができる。
これより、第1ガイド機構323Aのスライダ326やアーム部321における第3の方向Zの高さが変化することを抑制することができる。その結果、スライダ326をスムーズに摺動させることができると共に、アーム部321が造形ボックス3に干渉することを防ぐことができる。また、粉末供給機構307の熱膨張による粉末層の厚さが変わることを防ぐことができる。
なお、第2アーム支持部332においても、第1アーム支持部331と同様であるため、その説明は省略する。
また、第8の実施の形態例では、第1部材333、335の線膨張係数が、第2部材334、336の線膨張係数よりも大きい材質で形成する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1部材333、335の第3の方向Zの長さが、第2部材334、336の第3の方向Zの長さよりも長い場合、第1部材333、335は、その線膨張係数が第2部材334、336の線膨張係数よりも小さい材質で形成される。
また、第3の方向Zの長さに応じて線膨張係数が異なる2つの材質で形成した第1アーム支持部331及び第2アーム支持部332の構成は、上述した第1から第7の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置に適用してもよい。
その他の構成は、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有する3次元積層造形装置によっても、上述した第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、上述した実施の形態例では、粉末材料としてチタン、アルミニウム、鉄等の金属粉末を適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、粉末材料としては、樹脂等を用いてもよい。また、粉末材料を予熱や溶融させる加熱機構として電子ビームを照射する電子銃を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。加熱機構としては、例えば、レーザを照射するレーザ照射部を適用してもよい。
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。