JP6951482B2 - エアフィルタ用濾材及びその製造方法、並びにエアフィルタ - Google Patents

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Description

本開示は、エアフィルタ用濾材及びエアフィルタの製造方法に関する。更に詳しくは、半導体、液晶、バイオ・食品工業関係のクリーンルーム若しくはクリーンベンチ、ビル空調、内燃機関又は室内空間などの空気浄化用途に好適なエアフィルタ用濾材及びエアフィルタの製造方法に関する。
空気中のサブミクロン乃至ミクロン単位の粒子を捕集するためには、一般的に、エアフィルタが用いられている。ここでいうエアフィルタとは、エアフィルタ用濾材(シート)を、例えばジグザク状に折り畳んで濾過面積を大きくし(プリーツ加工)、設置や交換が容易になるよう金属やプラスチックなどの枠材と一体化されたエアフィルタユニットのことをいう。エアフィルタは通常、ロール状に巻かれた長尺のエアフィルタ用濾材を成形加工することで得ることができる。
エアフィルタは、その捕集性能によって、粗塵フィルタ、中性能フィルタ、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ又はULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタに大別される。これらエアフィルタにおける基本的な特性としては、微細なダスト粒子の捕集効率が高いことのほかに、フィルタに空気を通気させるためのエネルギーコストを低減させるために、圧力損失が低いことが求められている。そのため、エアフィルタは一般的に、エアフィルタ用濾材をジグザク状に折り畳んで濾過面積を大きくさせている。これにより、エアフィルタを通過する風量は同じであっても、濾材単位面積当たりの風量を減らすことが可能となり、エアフィルタの圧力損失を低下させたり、寿命を延ばしたりすることができる。一般的な縦610mm×横610mmサイズのエアフィルタであっても、濾材を折り畳んで濾過面積を大きく取るため、濾材の長さとしては数十mに及ぶこともある。
近年、ナノセルロースの利用が注目されている。一般的にナノセルロースとはセルロースナノファイバーとも呼ばれ、数平均繊維径が1〜100nmの(1)微細なセルロース繊維、又は(2)化学処理(改質)した微細なセルロース繊維をいう。(1)のナノセルロースとしては、例えば、セルロース繊維を高圧下で剪断して解繊したマイクロフィブリレーテッドセルロース、ナノフィブリレーテッドセルロース(以降、MFC、NFCと略す。)又は微生物が産生する微細なバクテリアセルロース(以降、BCと略す。)である。(2)の改質したナノセルロースとしては、例えば、天然セルロースを40%以上の濃硫酸で処理して得られるセルロースナノクリスタル(以降、CNCと略す。)又は木材パルプを構成している繊維の最小単位であるミクロフィブリルを常温常圧の温和な化学処理及び軽微な機械処理で水分散体として単離した超極細、かつ、繊維径の均一な微細セルロース繊維である(例えば、特許文献1を参照。)。
これらのナノセルロースは、フィルタ材料又は多孔質体としての利用が期待されている。例えば、平均孔径が1.0μm以上100μm未満の多孔質素子と、該多孔質素子に保持された平均繊維径が0.01μm以上1.0μm未満の繊維構造体からなる白血球除去フィルタ材の製造方法が示されている(例えば、特許文献2を参照。)。特許文献2では、繊維構造体として酢酸菌が産出するバクテリアセルロース、又はレーヨンを硫酸処理して、ホモジナイザーで微細化したセルロース繊維を用いている。
ナノセルロースは親水性が高いため、乾燥時に働く凝集力は熱可塑性ポリマー由来のナノファイバーよりも強く、エアフィルタのような通気性を有する材料を得るのは難しい。そこで、ナノセルロースを用いて通気性を有する材料を得る方法として、水と水に溶解する有機溶媒との混合液にナノセルロースを分散させ、当該混合液を凍結乾燥させて分散媒を除去するセルロース多孔質体の製造方法が示されている(例えば、特許文献3を参照。)。
特開2008−1728号公報 特許第3941838号公報 特開2013−253137号公報
R.Daoussi,E,Bogdani,S.Vessot,J.Andrieu,O.Monnier,「Drying Technology」Vol.29(2011),p.1853〜1867
特許文献2では、最も細い繊維として、酢酸菌が産出するバクテリアセルロースを用いており、実験室レベルで小面積のフラットシートを作る方法しか開示されていない。その平均繊維径は0.02μm(=20nm)である。その他繊維として、レーヨンを硫酸処理して、ホモジナイザーで微細化したセルロース繊維を用いており、最も細いもので平均繊維径0.19μm(=190nm)であった。バクテリアセルロースを用いる場合、多孔質素子に酢酸菌を培養させるが、培養条件には制約が多く、かつ、生産量も少ないため、工業利用するには適さない。また、当該繊維構造体は多孔質素子の表面にだけ形成されるもので、多孔質素子の孔の内部に繊維構造体は形成されない。レーヨンを微細化したセルロース繊維は、ナノというよりサブミクロン繊維であり、従来からあるマイクロガラス繊維で十分代用可能なものである。さらに、特許文献2のフィルタ材は液体用のフィルタ材であり、エアフィルタ用濾材としては空隙率が低すぎるという問題があった。
特許文献3では、セルロース多孔質体をエアフィルタ用濾材として実用することについて検討されていない。特許文献3では凍結乾燥を用いてガラス繊維からなる不織布内にナノセルロースの多孔質体を形成させているが、凍結乾燥では乾燥時に真空状態を維持するため密閉容器が必要となる。特許文献3で使用されている不織布は平面状であるため、密閉容器のサイズ以上の多孔質体は得られず、エアフィルタの製造に必要とされる長尺なエアフィルタ用濾材として多孔質体を実用するのは困難であった。また、通常エアフィルタ用濾材はジグザク状に折り畳まれるプリーツ加工が施されるが、その際に、エアフィルタ用濾材の折り目部分に存在するナノセルロースネットワークの破壊や脱落が生じ、フィルタ性能を低下させることがある。しかし、この課題を解決する手段はこれまで示されていなかった。
本開示は、ナノセルロースを用い、フィルタ性能、特に粒子捕集性能を向上させたエアフィルタ用濾材の製造方法及びエアフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係るエアフィルタ用濾材の製造方法は、支持体が一方の面ともう一方の面とを有する多孔質体であり、前記一方の面と前記もう一方の面との間に空気が通過するエアフィルタ用濾材の製造方法であって、プリーツ加工が施された流体透過性を有する前記支持体に、ナノセルロースを含む分散液を付着させる付着工程と、該付着工程を経た前記支持体を乾燥させる乾燥工程とを有し、前記エアフィルタ用濾材は、前記支持体の内部及び/又は表面にナノセルロースの網目状のネットワークを有し、かつ、前記支持体の孔の全体または一部を塞ぐ膜状物を有さず、前記ネットワークは、前記ナノセルロースが特定の方向性を持たずに配向せず絡み合った構造を有しており、前記膜状物は、前記ナノセルロースが物理的な絡み合い又は化学的な凝集によって特定の方向性を持って配向した構造を有していることを特徴とする。
本発明に係るエアフィルタ用濾材の製造方法では、前記乾燥工程で行われる乾燥方法が凍結乾燥法であることが好ましい。これにより、ナノセルロースの凝集を抑制し、良好なナノセルロースネットワークを構築できることから、エアフィルタ用濾材のフィルタ性能を更に向上させることができる。
本発明に係るエアフィルタ用濾材は、支持体が一方の面ともう一方の面とを有する多孔質体であり、前記一方の面と前記もう一方の面との間に空気が通過するエアフィルタ用濾材であって、前記支持体は、プリーツ加工が施された流体透過性を有する支持体であり、前記エアフィルタ用濾材は、前記支持体の内部及び/又は表面にナノセルロースの網目状のネットワークを有し、かつ、前記支持体の孔の全体または一部を塞ぐ膜状物を有さず、前記ネットワークは、前記ナノセルロースが特定の方向性を持たずに配向せず絡み合った構造を有しており、前記膜状物は、前記ナノセルロースが物理的な絡み合い又は化学的な凝集によって特定の方向性を持って配向した構造を有しており、前記ネットワークは、前記支持体の内部及び/又は表面に加えて、前記支持体の前記プリーツ加工の折り目の山部分にも形成されていることを特徴とする。
本発明に係るエアフィルタ用濾材では、前記エアフィルタ用濾材は、前記支持体を構成する繊維間の空隙に加えて、前記ネットワークを構成する前記ナノセルロース間に空隙を更に有することが好ましい
本発明に係るエアフィルタ用濾材では、前記エアフィルタ用濾材は、前記折り目の山部分に前記ネットワークの破壊及び脱落を有さないことが好ましい。本発明に係るエアフィルタは、本発明に係るエアフィルタ用濾材が枠体に固定されていることを特徴とする。
本開示によれば、ナノセルロースを用い、フィルタ性能、特に粒子捕集性能を向上させたエアフィルタ用濾材の製造方法及びエアフィルタの製造方法を提供することができる。
実施例1のエアフィルタをSEMにより観察した画像(観察倍率5000倍)を示す図である。 実施例1のエアフィルタをSEMにより観察した画像(観察倍率10000倍)を示す図である。 比較例1のエアフィルタをSEMにより観察した画像(観察倍率5000倍)を示す図である。 比較例1のエアフィルタをSEMにより観察した画像(観察倍率10000倍)を示す図である。
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
本実施形態に係るエアフィルタ用濾材は、プリーツ加工が施された流体透過性を有する支持体に、ナノセルロースを含む分散液を付着させる付着工程と、該付着工程を経た前記支持体を乾燥させる乾燥工程とを有する。予めプリーツ加工が施された支持体を用いることにより、容積の限られた乾燥領域内で長尺な支持体を乾燥させることができ、効率的にナノセルロースが付着されたエアフィルタ用濾材を得ることができる。さらに、プリーツ加工による折り目部分のナノセルロースネットワークの破壊や脱落が生じないことから、高いフィルタ性能を有するエアフィルタ用濾材を提供することが可能となる。
<支持体>
支持体は、流体透過性を有するものであれば特に限定するものではなく、例えば、不織布、織布、紙又はスポンジなどの多孔質な材料を用いることができる。これらの中でも不織布が好ましく、特にガラス繊維や有機繊維を主成分とする濾材用不織布であることが好ましい。ガラス繊維や有機繊維を主成分とするとは、支持体の全質量に対する当該繊維の質量が50質量%以上であることをいう。より好ましくは、80質量%以上である。支持体が当該繊維を主成分とする不織布であるとき、目付は10〜300g/mであることが好ましく、30〜200g/mであることがより好ましい。流体透過性とは、少なくとも気体を透過させることができる性質をいい、より好ましくは気体及び液体を透過させることができる性質をいう。
支持体に用いられるガラス繊維は、例えば、火焔延伸法若しくはロータリー法によって製造されるウール状の極細ガラス繊維、又は所定の繊維径となるように紡糸されたガラス繊維の束を所定の繊維長に切断して製造されるチョップドストランドガラス繊維である。これらの中から、必要とされる物性に応じて、種々の繊維径及び繊維長を有するものが選択され、単独又は混合して使用される。また、半導体製造工程用途におけるシリコンウェハの硼素汚染を防止する目的で、低硼素ガラス繊維又はシリカガラス繊維を使用することもできる。ガラス繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、0.05〜20μmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜5μmである。ガラス繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、0.5〜10000μmであることが好ましい。より好ましくは、1〜1000μmである。一方、有機繊維は、例えば、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維又はアラミド繊維である。有機繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、0.05〜100μmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜50μmである。有機繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、短繊維である場合は0.5〜10000μmであることが好ましい。より好ましくは、10〜5000μmである。不織布の製造方法は、特に限定されず、例えば、乾式法又は湿式法である。
支持体に施されるプリーツ加工は、例えば、支持体の材料に山折りと谷折りとを繰り返したジグザグ状の構造を有する折り目を形成する加工である。
また、支持体の平均孔径は、0.1〜50μmであることが好ましい。より好ましくは0.5〜10μmである。0.1μm未満では、流体透過性に劣る場合がある。50μmを超えると、ナノセルロースが支持体の孔内に網目状構造体を均一に形成しにくくなる場合がある。本実施形態においては、ナノセルロースを含有する分散液を支持体の孔内に付着させ、その後乾燥してエアフィルタとすることができるが、適切な平均孔径を有する支持体を用いることで、この乾燥時にナノセルロースに対して生じる凝集力が分散しやすくなるため、乾燥後も網目状構造を維持させやすくなる。ここで、平均孔径は、ASTM E1294‐89「ハーフドライ法」に従って計測することができる。
支持体は、支持体自体がエアフィルタ用濾材として使用できる素材であることが好ましい。本実施形態に係るエアフィルタの製造方法では、このような支持体を用いることで、従来のエアフィルタ用濾材(支持体自体)よりも粒子捕集性能の高いエアフィルタを得ることが容易となる。
<ナノセルロース>
ナノセルロース(以降、ナノファイバーと呼ぶこともある。)は、化学処理(改質)したナノセルロースを包含する。ナノセルロースでは、セルロース分子鎖が2本以上の束を形成している。セルロース分子鎖が2本以上の束を形成しているとは、2本以上のセルロース分子鎖が集合してミクロフィブリルと呼ばれる集合体を形成している状態をいう。本実施形態では、セルロース分子鎖は、分子中のC6位水酸基の一部若しくは全部がアルデヒド基若しくはカルボキシル基などに酸化されたもの、C6位以外の水酸基の一部若しくは全部がカルボニル基に酸化されたもの、C6位以外の水酸基を含む水酸基の一部若しくは全部が硝酸エステル、酢酸エステル若しくはリン酸エステルなどのようにエステル化されたもの、又はメチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル若しくはカルボキシメチルエーテルなどのようにエーテル化されたものなど他の官能基に置換されている形態を含む。また、セルロース分子鎖が改質されてカルボキシル基を含む場合は、その対イオンがカチオン系界面活性剤に置換されているもの、各種金属イオンに置換されているもの、当該金属イオンが還元されて粒子状になっているものも含む。
本実施形態では、ナノセルロースの数平均繊維径は、1〜100nmであることが好ましい。高い粒子捕集性能と低圧力損失とを両立させるエアフィルタとするためには、繊維径の極めて細いナノセルロースによる均一な繊維ネットワークを支持体中に形成することが重要である。数平均繊維径が1〜100nmである極細のナノセルロースを用いると、エアフィルタ用濾材中の単位体積あたりの繊維の本数が著しく増加し、気体中の粒子を捕捉しやすくなり、高い捕集性能を得ることが可能となる。また、スリップフロー効果によって、単繊維の通気抵抗が極めて低くなり、エアフィルタとしての圧力損失が上昇しにくくなる。ナノセルロースの数平均繊維径は2〜30nmが好ましく、3〜20nmがより好ましい。数平均繊維径が1nm未満では、ナノセルロースの単繊維強度が弱く、エアフィルタ用濾材中で繊維ネットワークを維持することが困難となる場合がある。100nmを超えると、エアフィルタ用濾材中の単位体積あたりの繊維の本数が少なくなり、粒子を捕捉するのに効果的なナノセルロースネットワークが形成できなくなる場合がある。ここで、数平均繊維径は、次に従って算出する。カーボン膜被覆グリッド上にキャストしたナノセルロースを透過型電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)を用いて電子顕微鏡画像による観察を行う。得られた観察画像に対し、1枚の画像あたり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交差する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このとき、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍又は50000倍のいずれかの倍率で観察を行う。なお、試料又は倍率は、20本以上の繊維が軸と交差する条件とする。こうして最低3枚の重なっていない表面部分の画像を電子顕微鏡で撮影し、各々二つの軸に交差する繊維の繊維径の値を読み取る。したがって、最低20本×2×3=120個の繊維情報が得られる。こうして得られた繊維径のデータから数平均繊維径を算出した。なお、枝分かれしている繊維については、枝分かれしている部分の長さが50nm以上であれば1本の繊維として繊維径の算出に組み込む。また、数平均繊維径は、次に従って算出してもよい。支持体表面又は内部に存在するナノセルロースを走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いて電子顕微鏡画像による観察を行う。得られた観察画像に対し、1枚の画像あたり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交差する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このとき、構成する繊維の大きさに応じて5000〜50000倍のいずれかの倍率で観察を行う。複数の重なっていない表面部分の画像を電子顕微鏡で撮影し、各々二つの軸に交差する繊維の繊維径の値を読み取る。少なくとも120本の繊維径データから数平均繊維径を算出する。なお、枝分かれしている繊維については、枝分かれしている部分の長さが50nm以上であれば1本の繊維として繊維径の算出に組み込む。尚、試料は歪みの無い観察画像を得るため、予め導電性コーティングを行うが、コーティング膜厚による影響も考慮する。例えば、イオンスパッター(E−1045、日立ハイテクノロジー社製)を用いる場合、放電電流15mA、試料−ターゲット間距離30mm、真空度6Pa、コーティング時間2分とすると、コーティング膜厚は12nmである。ただし、繊維径を測定する際は、コーティング膜の堆積方向が想定される方向と垂直になるため、コーティング膜厚は想定の半分とする。つまり、上記条件でコーティングした場合、SEMから求めた繊維径から両端のコーティング膜厚12nm(=6nm+6nm)分を除く。
また、ナノセルロースの数平均繊維長は、特に限定するものではないが、0.01〜20μmであることが好ましい。より好ましくは、0.05〜10μmである。更に好ましくは0.08〜1.0μmである。数平均繊維長が0.01μm未満では、ナノファイバーが粒子に近くなり、エアフィルタ用濾材中で繊維ネットワークを形成できないおそれがある。20μmを超えると、ナノファイバー同士の絡み合いが多くなり、繊維同士が凝集して均一なネットワークが形成できなくなる場合がある。なお、数平均繊維長は、ナノセルロースを走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いて電子顕微鏡画像による観察から算出する。得られた観察画像に対し、1枚の画像あたり10本ずつ独立した繊維を無作為に選び、その繊維長を目視で読み取っていく。このとき、構成する繊維の長さに応じて1000〜30000倍のいずれかの倍率で行う。なお、試料又は倍率は、繊維の始点と終点とが同じ画像内に収まっているものを対象とする。こうして最低12枚の重なっていない表面部分の画像をSEMで撮影し、繊維長を読み取る。したがって、最低10本×12枚=120本の繊維情報が得られる。こうして得られた繊維径のデータから数平均繊維長を算出できる。なお、枝分かれしている繊維については、その繊維の最も長い部分の長さを繊維長とする。
本実施形態に係るエアフィルタ用濾材の製造方法では、ナノセルロースの数平均繊維長が、支持体の平均孔径よりも小さいことが好ましい。ナノセルロースの数平均繊維長を支持体の平均孔径よりも小さくすることで、ナノセルロースが支持体の内部まで入り込んで、支持体の内部でネットワークを形成することができる。その結果、ナノセルロースの充填密度が比較的低くとも粒子捕集性能がより高いエアフィルタ用濾材とすることができる。ナノセルロースは繊維同士が繋がってネットワークを形成する能力が非常に高いため、数平均繊維長が支持体の平均孔径より小さくても、また、充填密度が比較的低くてもエアフィルタ用濾材として十分なネットワーク強度有している。ナノセルロースの数平均繊維長の値は、支持体の平均孔径の値に対して、0.1〜99%であることが好ましく、5〜36%であることがより好ましい。0.1%未満では、ナノセルロース同士やナノセルロースと支持体との接点が少なくなり、ナノセルロースが支持体から脱落してしまう場合がある。99%を超えると、ナノセルロースが支持体の内部まで入り込めない場合がある。
ナノセルロースの種類は、特に限定するものではないが、例えば、前述のMFC、NFC、CNC、又は特許文献1に記載のTEMPOなどのN‐オキシル化合物を用いてセルロースを酸化して得られるナノセルロースである。MFC及びNFCは、セルロース繊維を機械的な処理によって剪断してナノファイバー化するため、繊維径の分布が広いという特徴がある。CNCは、比較的均一な繊維径を有するが、繊維長が0.1〜0.2μmで短いという特徴がある。特許文献1に記載のナノセルロースは、セルロースシングルミクロフィブリルである。天然セルロースは、ミクロフィブリルが多束化して高次な個体構造を構築している。ここで、ミクロフィブリル間は、セルロース分子中の水酸基由来の水素結合によって強固に凝集している。セルロースシングルミクロフィブリルとは、天然セルロースに化学処理及び軽微な機械処理を行い、単離したミクロフィブリルをいう。特許文献1に記載されているように、セルロース原料を、N‐オキシル化合物、臭化物、ヨウ化物又はそれらの混合物の存在下で、酸化剤を用いて酸化し、該酸化されたセルロースを更に湿式微粒化処理して解繊し、ナノファイバー化することによって水分散体として製造され、均一な繊維径を有するという特徴がある。この中で、特許文献1に記載の微細セルロースが、生産に必要なエネルギーが他のセルロース繊維よりも少ない点及び生産性が高い点で特に好ましい。特許文献1に記載のナノセルロースは、セルロース分子の水酸基の一部がカルボキシル基及びアルデヒド基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基に酸化されており、かつ、セルロースI型結晶構造を有する。最大繊維径は、1000nm以下である。このナノセルロースは、水に分散すると透明な液体となる。
ナノセルロースの原料となるセルロース原料は、特に限定されるものではないが、植物系パルプ、とりわけ木質系パルプであることが好ましい。植物系パルプは、例えば、広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)若しくは針葉樹さらしクラフトパルプ(NBKP)などの各種木材由来のクラフトパルプ;サルファイトパルプ;脱墨パルプ(DIP)などの古紙パルプ;グランドパルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナー砕木パルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)若しくはケミグランドパルプ(CGP)などの機械パルプ;それらを高圧ホモジナイザー若しくはミルなどによって粉砕した粉末状セルロース;又は、それらを酸加水分解などの化学処理によって精製した微結晶セルロース粉末を使用できる。また、ケナフ、麻、イネ、バガス、竹又は綿などの植物由来の非木材パルプも使用できる。本実施形態は、ナノファイバーの原料及び製造方法に制限されない。
ナノファイバーの製造方法は、例えば、特許文献1に記載した製造方法である。特許文献1によると、ナノファイバーの製造方法は、天然セルロースを原料とし、水中においてTEMPOなどのN‐オキシル化合物を酸化触媒とし、共酸化剤を作用させることによって該天然セルロースを酸化して反応物繊維を得る酸化反応工程と、不純物を除去して水を含んだ反応物繊維を得る精製工程と、水を含んだ反応物繊維をナノセルロースとして分散媒に分散させる解繊工程と、を含む。
本実施形態に係る製造方法で得られるエアフィルタ用濾材は、支持体の孔内でナノセルロース同士が絡み合って該ナノセルロース間に空隙が形成されており、ナノセルロースが絡み合った膜又はナノセルロースが凝集した膜を有さないことが好ましい。圧力損失が上昇することを防止し、粒子捕集効率を高めることができる。ナノセルロースが絡み合った膜又はナノセルロースが凝集した膜とは、ナノセルロースが物理的な絡み合い又は化学的な凝集などによって形成された、支持体の孔の全体又は一部を塞ぐ膜状物をいう。
本実施形態に係るエアフィルタの製造方法においては、本実施形態に係るエアフィルタ用濾材の製造方法によって得られたエアフィルタ用濾材を枠材に固定することによってエアフィルタを得ることができる。例えば、本実施形態に係るエアフィルタの製造方法は、プリーツ加工が施された流体透過性を有する支持体に、ナノセルロースを含む分散液を付着させる付着工程と、該付着工程を経た前記支持体を乾燥させてエアフィルタ用濾材を得る乾燥工程と、前記エアフィルタ用濾材を枠材に固定する固定工程とを有する。
また、本実施形態に係るエアフィルタの製造方法は、プリーツ加工が施された流体透過性を有する支持体を枠材に固定する固定工程と、該固定工程を経た前記支持体に、ナノセルロースを含む分散液を付着させる付着工程と、該付着工程を経た前記支持体を乾燥させる乾燥工程とを有する。すなわち、予め枠材に固定された支持体にナノセルロースを含む分散液を付着させ、乾燥させてエアフィルタを得ることもできる。枠材に固定された支持体にナノセルロースを付着させることにより、従来エアフィルタの製造に必要とされる長尺なエアフィルタ用濾材を用いなくても、支持体をジグザク状に折り畳んで濾過面積を大きくしたエアフィルタを得ることができる。また、支持体を枠材に固定してからナノセルロースを含む分散液を付着させ、乾燥させることで、より効率的にエアフィルタを得ることができる。
枠材としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又はパルプのような繊維状物を固めた成形物などを使用することができる。支持体又はエアフィルタ用濾材を枠材に固定する形状は様々である。例えば、支持体又はエアフィルタ用濾材がジグザク状に折り畳まれて固定されている形態である。枠材の形状も様々であり、四角形に厚みを持たせた角型のもの、円筒形のものなどがある。エアフィルタ用濾材又は支持体と枠材との接着は、漏れが無いことが重要であり、接着剤により、枠材とエアフィルタ用濾材又は支持体とに隙間が生じないよう固定する方法であることが好ましい。ここで接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂などのホットメルト系接着剤を用いることができる。
本実施形態においては、支持体に対するナノセルロースの付着量の割合を0.001〜0.500質量%とすることが好ましい。好ましくは0.010〜0.300質量%であり、より好ましくは0.050〜0.200質量%である。このような付着量とすることによって粒子捕集性能が高く、圧力損失が比較的低いエアフィルタとすることができる。支持体に対するナノセルロースの付着量が0.001質量%を下回ると、粒子捕集性能に劣る場合がある。逆に0.500質量%を上回ると、圧力損失が高くなりすぎる場合がある。支持体に対するナノセルロースの付着量は、主に、分散液中のナノセルロースの濃度と、支持体への分散液の付着量でコントロールすることができ、分散液中のナノセルロースの濃度を高くするほど、また、支持体への分散液の付着量を多くするほど、支持体へのナノセルロースの付着量は多くなる。
本実施形態においては、枠材に固定された支持体にナノセルロースを含む分散液を付着させた後、乾燥することによってエアフィルタを得ることができる。分散液は、ナノセルロースを分散媒に分散させることで得ることができる。分散液中のナノセルロースの形態は、例えば、ナノセルロースがバラバラに分散した形態、又は部分的に凝集した形態である。このうち、分散液中のナノセルロースの形態は、ナノセルロースがバラバラに分散した形態であることが好ましい。
<分散媒>
分散媒としては水を用いることができる。分散媒を水とする場合は、界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤には、液体の表面張力を低下させる効果及び界面活性剤の親水性部位がナノセルロースに吸着し、疎水性部位が外側に向くことによる疎水化効果あり、乾燥時にナノセルロース同士の凝集を弱める働きがあると考えられる。界面活性剤としては、特に限定するものではなく、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を使用することができるが、カチオン系界面活性剤であることが好ましい。ナノセルロース表面は、アニオン性を示すため、カチオン性界面活性剤が吸着しやすく、ナノセルロースの表面が界面活性剤で覆われやすくなる。その結果、乾燥時のナノセルロース同士の凝集を弱める効果がより高まり、ナノセルロースの均一なネットワーク形成に寄与する。カチオン性界面活性剤は、例えば、第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩、スルホニウム塩又はホスホニウム塩である。水溶性が高い点で、第4級アンモニウム塩であることがより好ましい。分散液中の界面活性剤の含有量としては、特に限定するものではないが、ナノセルロースの乾燥質量に対して、固形分濃度で0.10〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.50〜50.0質量%である。特に好ましくは、1.00〜40.0質量%である。0.10質量%未満では、界面活性剤を添加する効果が得られない場合がある。100質量%を超えると、ナノセルロースが繊維状態を維持するのが困難となる場合がある。
また、分散媒としては、水と水に溶解する有機溶媒とを混合した混合分散媒を用いることもできる。後述するように、本実施形態においては、ナノセルロースを含有する分散液を支持体に付着させた後、凍結乾燥することによってエアフィルタ用濾材を得ることができるが、この凍結乾燥を行う場合には水と水に溶解する有機溶媒とを混合した混合分散媒を用いることが好ましい。ここで有機溶媒とは、常温常圧で液体である有機化合物のことをいう。また、水に溶解するとは、水と有機溶媒とを混合した混合分散媒において、水と有機溶媒が任意の割合で、両者が分子レベルで互いに混ざり合い、相分離しないことをいう。分散媒が、水と水に溶解する有機溶媒との混合物であることは、凍結乾燥時に分散媒の結晶化を抑制し、ナノセルロースの均一なネットワーク形成に寄与する。本実施形態において、混合分散媒中の有機溶媒の濃度は、2〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは、5〜40質量%であり、更に好ましくは10〜30質量%である。有機溶媒の濃度が50質量%を超えると、疎水性の高い分散媒となり、親水性を有するナノセルロースが分散液中に均一に分散しなくなり、ナノセルロースの均一なネットワーク形成を損ねる可能性がある。また、有機溶媒の濃度が2質量%未満では、分散媒の凍結時における水の結晶(氷晶)の形成が著しく、ナノセルロースの凝集や構造破壊を引き起こされてしまい、支持体に均一なナノセルロースのネットワークを形成できなくなるおそれがある。
有機溶媒としては、アルコール類、カルボン酸類又はカルボニル化合物類のうちの少なくとも一種を含むことが好ましい。このような有機溶媒を含むことで、凍結乾燥時に生じる水の結晶(氷晶)をより小さくすることができ、支持体におけるナノセルロースのネットワーク形成をより均一なものとすることができる。また、有機溶媒は、アルコール類として(1)メタノール、(2)エタノール、(3)1‐プロパノール若しくは(4)t‐ブチルアルコール、カルボン酸類として(5)酢酸、カルボニル化合物類として(6)アセトン、の(1)〜(6)の少なくとも1種を含むことが水との相溶性の観点からより好ましい。このうち、有機溶媒は、t‐ブチルアルコールだけであることが特に好ましい。水とt‐ブチルアルコールとを混合した混合分散媒の凝固点は、最も低くても−10℃程度であり、他の有機溶媒と水との混合分散媒に比べ高くなっており、凍結させることが容易である。t‐ブチルアルコール水溶液では、t‐ブチルアルコール濃度が20質量%付近で、水とt‐ブチルアルコールとが共晶となり、凍結時の結晶サイズが小さくなることが知られている。有機溶媒がt‐ブチルアルコールだけである場合、混合分散媒中のt‐ブチルアルコールの濃度は、15〜35質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。
<分散液>
本実施形態では、分散液中のナノセルロースの固形分濃度を0.001〜0.150質量%とすることが好ましい。より好ましくは0.005〜0.100質量%であり、更に好ましくは0.010〜0.080質量%である。流体透過性を有する支持体に、ナノセルロースによるネットワークを形成してエアフィルタ用濾材とするにあたっては、ナノセルロースのネットワークが一定の方向性を持たずに均一に張り巡らされることが好ましい。支持体中のナノセルロースのネットワークが特定の方向性を持って(配向して)張り巡らされない方が、エアフィルタ用濾材としての粒子補足性能を満足させやすい。分散液中のナノセルロースの固形分濃度が0.150質量%を超えると、繊維が配向したドメインが多数形成されやすい。繊維が配向するということは、繊維がある程度同じ方向に並ぶことを意味し、繊維の分散度合いが高いほど粒子補足性能が高くなるエアフィルタ用濾材にとって、配向は好ましくない。また、エアフィルタ用濾材中でのナノセルロースの充填密度が過度に高くなると、エアフィルタ用濾材中に分布するナノセルロース間の距離を適度に保てず、空気中の水分によって凝集などをおこし、エアフィルタ用濾材として好適なナノセルロースによるネットワークの形成を阻害するおそれがある。TEMPOなどのN−オキシル化合物を用いてセルロースを酸化して得られるナノセルロースの分散液は、水中での透明度が高く、均一に分散しているが、濃度が高くなると繊維が特に配向しやすい。本実施形態では、分散液中のナノセルロースの固形分濃度を0.150質量%以下とすることで、分散液中の繊維間の距離が適度に離れて、ナノセルロースが全く又はほとんど配向しない。そのため、ナノセルロースをエアフィルタへ組み込んだ際も、特定の方向性を持たずに均一な繊維ネットワークを形成することができ、エアフィルタ用濾材としての粒子捕集性能を著しく高める効果をもつ。一方、分散液中のナノセルロースの濃度が0.001質量%未満では、ナノセルロース同士の絡み合いが少なくなり、ネットワーク構造が維持できなくなるおそれがある。
<分散液の調製>
本実施形態では、分散液の調製方法は特に限定するものではなく、前述した分散媒にナノセルロースを分散させて分散液とすればよい。水と水に溶解する有機溶媒とを混合した混合分散媒を用いる場合は、水にナノセルロースを分散させてナノセルロース水分散液を調製した後、ナノセルロース水分散液に、有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶媒を添加して行うことが好ましい。尚、有機溶媒にナノセルロース水分散液を加えると、凝集物が生じる場合がある。
本実施形態では、分散液に各種助剤を配合してもよい。乾燥工程で凍結乾燥を用いる場合には、凍結乾燥安定化剤として、例えば、ショ糖、トレハロース、L‐アルギニン又はL‐ヒスチジンを配合することができる。また、ナノセルロースの表面改質剤として、例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を配合することもできる。
<付着工程>
分散液を支持体に付着させる方法は、特に限定するものではないが、例えば、含浸法、塗布法又は噴霧法である。支持体に対する分散液の付着量は、支持体の厚さ、材質及び平均細孔径に応じて適宜調整するものであるが、前述したように、本実施形態では、支持体に対するナノセルロースの付着量の割合を0.001〜0.500質量%とする。より好ましくは0.010〜0.300質量%であり、更に好ましくは0.050〜0.200質量%である。支持体に対するナノセルロースの付着量の割合を0.001〜0.500質量%とすることで、粒子捕集性能が向上した高効率なエアフィルタ用濾材を製造することができる。支持体に対するナノセルロースの付着量の割合が0.001質量%未満では、支持体へのナノセルロースの付着量が不十分となり、均一なナノセルロースのネットワークを形成することが難しい。結果としてエアフィルタ用濾材としての粒子捕集性能を十分に向上させることができないおそれがある。逆に0.500質量%を超えると、エアフィルタ用濾材中でのナノセルロース充填密度が過度に高くなり、圧力損失が過度に高くなるおそれがある。また、ナノセルロースのネットワークを形成して、高いPF値を得るために、支持体に対するナノセルロースの付着量の割合は、後に行われる乾燥工程での乾燥方法に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、乾燥方法が常温若しくは熱による乾燥であるとき、支持体に対するナノセルロースの付着量の割合は、0.001〜0.100質量%であることが好ましく、0.010〜0.050質量%であることがより好ましい。また、乾燥方法が凍結乾燥であるとき、支持体に対するナノセルロースの付着量の割合は、0.001〜0.500質量%であることが好ましく、0.010〜0.300質量%であることがより好ましい。本発明において、支持体に対するナノセルロースの付着量の割合の算出方法は特に限定するものではないが、例えば支持体が無機繊維のみで構成されている場合は、ナノセルロースのみを燃焼させて、燃焼後の減量割合から算出することができる。また、支持体が有機合成繊維を含む場合は、例えば銅エチレンジアミン溶液を用いてセルロースのみを溶解させて、その溶解量から算出することもできる。また、支持体に対するナノセルロースの付着量の割合は、湿潤付着量から換算して求めてもよい。すなわち、支持体に対するナノセルロースの付着量の割合(単位%)は、{(湿潤付着量×分散液中のナノセルロースの固形分濃度)/分散液を付着させる前の支持体の質量}×100である。ここで、湿潤付着量は、分散液を付着させた湿潤状態での支持体の質量と付着させる前の支持体の質量との差であり、乾燥工程の開始時に支持体に付着している分散液の質量を意味する。このため、湿潤付着量は、乾燥工程の直前に測定した値であることが好ましく、例えば乾燥工程の開始前10分以内に測定することが好ましく、5分以内に測定することがより好ましい。
含浸法は、例えば、支持体を分散液に完全に浸漬する方法又は支持体の表面だけを浸す方法がある。支持体を分散液に完全に浸漬する方法は、支持体の孔内の奥部まで分散液を効率的に、かつ、確実に浸透することができるため、より均一なナノセルロースのネットワークを形成できる点で優れている。また、支持体を分散液に完全に浸漬したまま減圧すると、支持体内のエアーが抜けやすくなるため、分散液を浸透させるにはより効果的である。なお、過剰に付着した分散液は、ロール脱水機などで絞り出したり、吸水フェルト又は吸水紙などの吸水部材で除去したりすることが好ましい。支持体の表面だけを浸す方法は、支持体の厚み方向で、孔内のナノセルロースのネットワーク構造の密度差(支持体の一方の面側ともう一方の面とでナノセルロースのネットワーク構造の存在比率が異なる)を設ける場合に有効である。
塗布法は、公知の塗布機または刷毛で分散液を支持体表面に塗布する方法である。公知の塗布機は、例えば、カーテンコーター(ダイコーター)である。塗布法は、支持体への分散液の付着量の制御が容易な点で優れている。
噴霧法は、霧吹き又はスプレーなどの公知の噴霧器を用いて分散液を支持体表面に噴霧する方法である。噴霧法は、例えば、支持体の孔のうち、支持体の表面近傍にだけにナノセルロースのネットワーク構造を形成したい場合、又は支持体に大量の含浸液、又は塗工機のロール若しくはバーを接触させたくない場合に有効である。塗布法や噴霧法では、支持体の一方の面を減圧して空気の流れを起こし、他方の面から塗布または噴霧することで支持体内部にまで分散液を浸透させることができる。
本実施形態では、支持体にプリーツ加工を施した後にナノセルロースを付着させるため、プリーツ加工時のナノセルロースネットワークへのダメージを抑制することができる。最も一般的なプリーツ加工では、支持体は山折り加工と谷折り加工とを繰り返し受けてプリーツ状に折加工される。折り目の山部分は180度に近い鋭角となり、支持体はある程度損傷を受ける。ガラス繊維や有機繊維を主体とする一般的な支持体(従来のエアフィルタ用濾材)は、通常このような折加工にも耐えられる設計になっているが、支持体の表層に存在するナノセルロースのネットワークは、折加工によって破壊や脱落が生じ、エアフィルタ用濾材の性能を低下させることがある。一方本発明では、支持体をプリーツ加工した後にナノセルロースを支持体へ付着させるため、折り目の山部分にもナノセルロースのネットワークを形成させることができる。
<乾燥工程>
本実施形態では、前述のようにして分散液を支持体に付着させ、支持体を湿潤状態とした後、乾燥を行う。乾燥方法としては、特に限定するものではなく、常温若しくは熱による乾燥又は凍結乾燥を使用することができる。また、減圧による乾燥を行ってもよい。乾燥方法は凍結乾燥法であることがより好ましい。これにより、ナノセルロースの凝集を抑制し、良好なナノセルロースネットワークを構築できることから、エアフィルタ用濾材又はエアフィルタのフィルタ性能を更に向上させることができる。
本実施形態では、乾燥方法によって、分散液(分散媒)の構成を選択することが好ましい。すなわち、常温又は熱による乾燥を行う場合は、分散媒に水(界面活性剤を含有してもよい)を用いることが好ましい。また、凍結乾燥を行う場合は、水と水に溶解する有機溶媒とを混合した混合分散媒を用いることが好ましい。
熱乾燥する場合の温度としては、支持体及びナノファイバーが分解又は変形などを受けない温度であればよく、例えば、支持体としてガラス繊維で構成された不織布を用い、ナノファイバーとして特許文献1に記載のナノファイバーを用いた場合には、50〜200℃とすればよい。本実施形態では、多孔質の支持体を用いることで、分散液の乾燥時にナノファイバーに対して生じる凝集力を分散し、更には多数の微小薄膜を支持体の各孔内で形成してから乾燥することによって、微小薄膜中に分散していたナノファイバーは水が蒸発しても網目状構造を維持したまま残っているものと考えられる。
凍結乾燥は、支持体ごと分散液を凍結し(凍結工程)、凍結状態のまま減圧して分散媒を昇華させることによって乾燥する(乾燥工程)手法である。凍結工程における分散液の凍結方法は特に限定されないが、例えば、分散液の付着した支持体を液体窒素などの冷媒の中に入れて凍結させる方法、分散液の付着した支持体を冷却した板の上に置いて凍結させる方法、分散液の付着した支持体を低温雰囲気下に置いて凍結させる方法、又は分散液の付着した支持体を減圧下に置いて凍結させる方法がある。好ましくは、分散液の付着した支持体を冷媒の中に入れて凍結させる方法である。分散液の凍結温度は、分散液中の混合分散媒の凝固点以下としなければならず、−50℃以下であることが好ましく、−100℃以下であることがより好ましい。凍結温度が高い、つまり凍結速度が遅いと、水と有機溶媒とを混合した混合分散媒を用いても、分散媒の結晶が大きくなる場合があり、その結晶周囲にナノセルロースが濃縮され凝集体を生じてしまう場合がある。一方、凍結温度を混合分散媒の凝固点よりも十分に低くすること、つまり凍結速度を速くすることで分散媒を非晶に近い状態で凍結することができる。
本実施形態では、凍結乾燥過程における乾燥工程にて、試料の周囲温度を分散液の融点以下の温度とすることが好ましい。ここで、凍結乾燥過程における乾燥工程とは、減圧下にて凍結状態の試料から分散媒を昇華させている期間をいう。試料の周囲温度は、特別に制御しない限り、通常、室温となる。このように、試料の周囲温度が分散液の融点を超えると、凍結した分散液の一部が融解し、ナノセルロースネットワークの均一性が失われることがある。例えば、分散媒が水とt‐ブチルアルコールとの混合分散媒であって、混合分散媒中のt‐ブチルアルコールの濃度が0を超え50質量%以下であるとき、ナノセルロースと分散媒とを含有する分散液の融点は、分散媒の融点に等しい。非特許文献1によれば、水とt‐ブチルアルコールとの混合分散媒の融点は、最も低くても−8.2℃である。したがって、分散媒が水とt‐ブチルアルコールとの混合分散媒であって、混合分散媒中のt‐ブチルアルコールの濃度が0を超え50質量%以下であるとき、試料の周囲温度を−8.2℃以下とすることが好ましく、−15℃以下とすることがより好ましく、−20℃以下とすることが更に好ましい。試料の周囲温度の下限は、分散媒の種類によって異なるが、例えば水とt‐ブチルアルコールとの混合分散媒を用いるとき、−30℃以上であることが好ましい。
分散液の融点は、分散液が固体から液体へと変化する時に生じる最初の吸熱点から判断できる。分散液の融点は、例えば示差走査熱量計(DSC)で得られるDSC曲線の、最初の吸熱ピークの始点から測定してもよい。
本実施形態では、凍結乾燥過程における乾燥工程の圧力は、200Pa以下であることが好ましく、50Pa以下であることがより好ましい。圧力が200Paを超えると凍結した分散液中の分散媒が融解してしまう可能性がある。
<エアフィルタ>
本実施形態に係る製造方法で得られるエアフィルタは、例えば、粗塵フィルタ、中性能フィルタ、HEPAフィルタ又はULPAフィルタである。本実施形態に係る製造方法で得られるエアフィルタは、枠材と本実施形態に係る製造方法で得られるエアフィルタ用濾材とを有し、エアフィルタ用濾材が枠材に固定されている。また、本実施形態に係る製造方法によって得られるエアフィルタは、防塵マスク、花粉・ウィルスなどの汚染物質防御用マスクとして応用することができる。
本実施形態に係る製造方法で得られるエアフィルタ又はエアフィルタ用濾材は、数1の式によって定義するPF値が高いことが好ましい。PF値は、圧力損失と粒子捕集性能とのバランスの優劣を評価する指標であり、数1に示す式を用いて計算される。PF値が高いほど、対象粒子の捕集効率が高くかつ低圧力損失のエアフィルタ又はエアフィルタ用濾材であることを示す。
Figure 0006951482
数1において、圧力損失は、例えば、マノメーターを用いて測定される。また、粒子透過率は、ラスキンノズルで発生させた多分散ポリアルファオレフィン(PAO)粒子を含む空気を通過させたときの、PAO粒子がエアフィルタ又はエアフィルタ用濾材を透過する割合である。粒子透過率は、例えば、レーザーパーティクルカウンターを用いて測定される。
エアフィルタ又はエアフィルタ用濾材のPF値は、支持体の種類や構成によっても影響を受けるが、エアフィルタ用濾材のナノセルロースの充填密度又はナノセルロースによるネットワークの形成度合いが大きく影響する。本実施形態に係る製造方法で得られるエアフィルタ用濾材は、支持体に対するナノセルロースの付着量の割合が0.001〜0.200質量%であるのが好ましいが、このような付着量であっても、例えば、支持体の表層付近のみにナノセルロースの付着が集中し、部分的に過度にナノセルロースの充填密度が高くなると、圧力損失の過度な上昇を招き、結果的にPF値は低下する。エアフィルタ用濾材は、支持体の内部及び/又は表面にナノセルロースの網目状のネットワークを有し、ナノセルロースのフィルム状の凝集体を有さないことが好ましい。より具体的には、ナノセルロースの濃度が高い分散液を支持体に付着させた場合、支持体の表面にナノセルロースの付着が集中し、支持体表面でナノセルロース同士が凝集を起こすことが考えられる。その結果、支持体の表層ではナノセルロースの網目状のネットワークが形成されず、フィルム状の凝集体が生じることがある。このようなフィルム状の凝集体が部分的にでも生じたエアフィルタ用濾材を用いると、圧力損失の上昇や、粒子捕集性能の低下(すなわちPF値の低下)が生じ、場合によってはエアフィルタとしての通気性を保持できなくなる。尚、支持体の表層付近のみにナノセルロースの付着が集中したとしても、ナノセルロースのネットワークが適度に形成されていれば(過度にナノセルロースの充填密度が高くなければ)圧力損失はそれほど上昇せず、エアフィルタとして好適なPF値を得ることができる。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
[ナノセルロース水分散液の調製工程]
乾燥重量で2.00g相当分のNBKP(主に1000nmを超える繊維径の繊維から成るもの)と、0.025gのTEMPO(2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐1‐オキシラジカル)と、0.25gの臭化ナトリウムとを水150mlに分散した後、13%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、パルプ(NBKP)1.00gに対して、次亜塩素酸ナトリウムの量が5.00mmolとなるように次亜塩素酸ナトリウムを加えて反応を開始した。反応中は、0.50mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10に保った。2時間反応した後、反応物をろ過し、十分水洗することで酸化セルロース(TEMPO酸化セルロース)スラリーを得た。0.5質量%のTEMPO酸化セルローススラリーを、バイオミキサー(BM−2、日本精機製作所社製)を用いて、15000回転で5分間解繊処理し、固形分濃度を0.2質量%に希釈後、更に超音波分散機(型式US−300E、日本精機製作所社製)で8分間解繊処理した。その後、遠心分離によって粗大繊維の除去を行い、TEMPO酸化ナノセルロースを水に分散させた、ナノセルロース水分散液を得た。このナノセルロース水分散液を、TEM(JEM2000−EXII、日本電子社製)を用いて倍率50000倍で観察した観察画像から解析した結果、数平均繊維径は4nmであった。また、SEM(SU8010、日立ハイテクノロジー社製)を用いて倍率10000倍で観察した観察画像から解析した結果、数平均繊維長は0.8μmであった。ナノセルロース水分散液に、水とt‐ブチルアルコールとを加え、容器に蓋をしてマグネティックスターラーで5分間攪拌してナノセルロース分散液を得た。分散液の全質量に対するナノセルロースの固形分濃度は0.02%であった。また、ナノセルロース分散液中の水とt‐ブチルアルコールとの混合比率は、質量比で70:30であった。
(実施例1)
ポリプロピレン繊維から成る支持体がジグザグ状にプリーツ加工されて枠材に固定されたPPプリーツコンパクトカートリッジフィルタ(以降、「支持体エアフィルタ」と呼ぶ。)(MCP−7−C10S、アドバンテック製)をナノセルロース分散液に含浸した。含浸から1分後に「支持体エアフィルタ」を引き上げて、枠材に付着した余分なナノセルロース分散液を吸水紙にて取り除き、湿潤状態(乾燥前)での「支持体エアフィルタ」の質量を測定した。湿潤状態での「支持体エアフィルタ」の質量と湿潤させる前の「支持体エアフィルタ」の質量との差から支持体に付着した分散液の湿潤付着量を求めた。湿潤付着量から換算した支持体に対するナノセルロースの付着量の割合は、0.1%であった。湿潤状態の「支持体エアフィルタ」を液体窒素(−196℃)にて凍結させ、予め−20℃に冷やしておいた凍結乾燥瓶に凍結させた「支持体エアフィルタ」を入れた。その後、凍結乾燥瓶全体を−20℃に設定した冷凍庫に入れ、減圧チューブで接続された凍結乾燥機(VD−250F TAITEC社製)で減圧し、「支持体エアフィルタ」中の分散媒を昇華させることで、「支持体エアフィルタ」にナノセルロースが付着したエアフィルタを得た。尚、真空到達時の圧力は50Pa以下であった。また、「支持体エアフィルタ」の公称孔径は7μmであった。
(比較例1)
実施例のポリプロピレン繊維からなる「支持体エアフィルタ」をそのままエアフィルタとした。
(実施例2)
ナノセルロースが付着したエアフィルタ用濾材が、プリーツ加工により受ける影響を明らかにするため、プリーツ加工によるフィルタ性能変化を調査した。支持体としては、目付が70g/mであり、圧力損失が約215Paのガラス繊維(平均繊維径0.65μmの極細ガラス繊維48部と、平均繊維径2.7μmの極細ガラス繊維42部と、平均繊維径6μmのチョップドガラス繊維10部とから成る)からなる不織布を用いた。プリーツ加工は、1cmの山高さで山折りと谷折りとを繰り返すことにより行った。プリーツ加工が施された支持体をナノセルロース分散液に含浸し、含浸から1分後に支持体を引き上げて、付着した余分なナノセルロース分散液を吸水紙にて取り除き、湿潤状態(乾燥前)での支持体の質量を測定した。湿潤状態での支持体の質量と湿潤させる前の支持体の質量との差から支持体に付着した湿潤付着量を求めた。湿潤付着量から換算した支持体に対するナノセルロースの付着量の割合は、0.1%であった。この支持体を実施例1と同様に凍結乾燥させて、エアフィルタ用濾材を得た。
(比較例2)
支持体をナノセルロース分散液への含浸、凍結乾燥後にプリーツ加工を行った以外は、実施例2と同様にしてエアフィルタ用濾材を得た。
「圧力損失」
圧力損失は、エアフィルタに対する面風速が5.3cm/秒となる空気を通過させたときの差圧をマノメーター(ManostarWO81、山本電機製作所社製)を用いて測定した。
「粒子透過率」
粒子透過率は、ラスキンノズルで発生させた多分散ポリアルファオレフィン(PAO)粒子を含む空気を、エアフィルタ用濾材に対する面風速が5.3cm/秒となるように通過させたときの上流及び下流の個数比からの粒子透過率を、レーザーパーティクルカウンター(LASAIR−1001、PMS社製)を使用して測定した。
「PF値」
PF値は、圧力損失及び粒子透過率の測定値から、数1に示す式を用いて計算した。なお、PF値が高いほど、対象粒子の捕集効率が高くかつ低圧力損失のエアフィルタであることを示す。
Figure 0006951482
「ネットワークの観察」
ネットワークの観察は、エアフィルタ用濾材を走査型電子顕微鏡(SEMと略す、日立ハイテクノロジー社製、SU8010)を用いて倍率5千〜1万倍で観察して行った。観察前に、イオンスパッター(E−1045、日立ハイテクノロジー社製)を用いて、放電電流15mA、試料−ターゲット間距離30mm、真空度6Pa、コーティング時間2分の条件で導電性コーティングを行った。
実施例1のエアフィルタの性能は、圧力損失130Pa、粒子径0.10〜0.15μmにおける粒子透過率52.8%、PF値2.09、粒子径0.30〜0.40μmにおける粒子透過率21.0%、PF値5.11であった。一方、比較例1のエアフィルタの性能は、圧力損失85Pa、粒子径0.10〜0.15μmにおける粒子透過率71.6%、PF値1.67、粒子径0.30〜0.40μmにおける粒子透過率45.4%、PF値3.96であった。両フィルタを比べると、圧力損失は実施例1のエアフィルタの方が比較例1のエアフィルタよりも高いが、粒子透過率、PF値共に実施例1のエアフィルタの方が比較例1のエアフィルタよりも高く、実施例1のエアフィルタがより高性能であることが示された。また、図1〜図4から、比較例1のエアフィルタでは支持体を構成する繊維間の空隙だけがあるのに対して、実施例1のエアフィルタには、支持体を構成する繊維間の空隙に加えて、ナノセルロース同士が絡み合ってネットワークを形成しており、該ナノセルロース間に空隙が更に形成されていることが確認できた。
実施例2及び比較例2の比較から、ナノセルロースが付着したエアフィルタ用濾材が、プリーツ加工により受ける影響を調査した。ナノセルロース付着後にプリーツ加工を行った比較例2のエアフィルタ用濾材のエアフィルタ性能は、圧力損失243Pa、粒子径0.10〜0.15μmにおける粒子透過率0.053%、PF値13.2であった。一方、プリーツ加工後にナノセルロースを付着させた実施例2のエアフィルタ用濾材のエアフィルタ性能は、圧力損失289Pa、粒子径0.10〜0.15μmにおける粒子透過率0.005%、PF値14.6であった。両エアフィルタ用濾材のフィルタ性能を比べると、プリーツ加工後にナノセルロースを付着させた実施例2のエアフィルタ用濾材の方が、ナノセルロース付着後にプリーツ加工した比較例2のエアフィルタ用濾材よりも粒子透過率は低く、PF値は高くなり、フィルタ性能は向上した。本結果から、支持体をプリーツ加工した後にナノセルロースを付着させることで、より高性能のエアフィルタ用濾材が得られ、ひいてはより高性能なエアフィルタが得られることが示された。
以上の結果から、本実施形態に係るエアフィルタ用濾材の製造方法及びエアフィルタの製造方法は、ナノセルロースを用い、フィルタ性能を向上させたエアフィルタ用濾材及びそれを用いたエアフィルタが提供できることがわかる。

Claims (6)

  1. 支持体が一方の面ともう一方の面とを有する多孔質体であり、前記一方の面と前記もう一方の面との間に空気が通過するエアフィルタ用濾材の製造方法であって、
    プリーツ加工が施された流体透過性を有する前記支持体に、ナノセルロースを含む分散液を付着させる付着工程と、
    該付着工程を経た前記支持体を乾燥させる乾燥工程とを有し、
    前記エアフィルタ用濾材は、前記支持体の内部及び/又は表面にナノセルロースの網目状のネットワークを有し、かつ、前記支持体の孔の全体または一部を塞ぐ膜状物を有さず、
    前記ネットワークは、前記ナノセルロースが特定の方向性を持たずに配向せず絡み合った構造を有しており、
    前記膜状物は、前記ナノセルロースが物理的な絡み合い又は化学的な凝集によって特定の方向性を持って配向した構造を有していることを特徴とするエアフィルタ用濾材の製造方法。
  2. 前記乾燥工程で行われる乾燥方法が凍結乾燥法であることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ用濾材の製造方法。
  3. 支持体が一方の面ともう一方の面とを有する多孔質体であり、前記一方の面と前記もう一方の面との間に空気が通過するエアフィルタ用濾材であって、
    前記支持体は、プリーツ加工が施された流体透過性を有する支持体であり、
    前記エアフィルタ用濾材は、前記支持体の内部及び/又は表面にナノセルロースの網目状のネットワークを有し、かつ、前記支持体の孔の全体または一部を塞ぐ膜状物を有さず、
    前記ネットワークは、前記ナノセルロースが特定の方向性を持たずに配向せず絡み合った構造を有しており、
    前記膜状物は、前記ナノセルロースが物理的な絡み合い又は化学的な凝集によって特定の方向性を持って配向した構造を有しており、
    前記ネットワークは、前記支持体の内部及び/又は表面に加えて、前記支持体の前記プリーツ加工の折り目の山部分にも形成されていることを特徴とするエアフィルタ用濾材。
  4. 前記エアフィルタ用濾材は、前記支持体を構成する繊維間の空隙に加えて、前記ネットワークを構成する前記ナノセルロース間に空隙を更に有することを特徴とする請求項3に記載のエアフィルタ用濾材。
  5. 前記エアフィルタ用濾材は、前記折り目の山部分に前記ネットワークの破壊及び脱落を有さないことを特徴とする請求項3又は4に記載のエアフィルタ用濾材。
  6. 請求項3〜5のいずれか一つに記載されたエアフィルタ用濾材が枠体に固定されていることを特徴とするエアフィルタ。
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