以下、本発明の実施の形態に係るプレート式熱交換器及びヒートポンプ式給湯システムについて図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一又は同等の部分には同一の符号を付す。図に示す直交座標系XYZにおいて、プレート式熱交換器が備える第一補強プレートが正面に向けられ、かつ第二補強プレートが背面に向けられたときの左右方向がX軸、上下方向がZ軸、X軸とZ軸とに直交する方向がY軸である。以下、適宜、この座標系を引用して説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1に係るプレート式熱交換器は、第一流体を流すための流路が形成された第一伝熱プレートと、第二流体を流すための流路が形成された第二伝熱プレートと、が積層されたプレート式熱交換器である。このプレート式熱交換器では、第一流体が気相と液相が混合した二相状態の冷媒である場合に、その冷媒の偏在を抑制するため、第一伝熱プレートに、第一流体の流入量を絞るための開口を有する囲み部が形成されている。
まず、図1−図5を参照して、プレート式熱交換器の構成を説明する。続いて、図6及び図7を参照して、第一伝熱プレートが備える囲み部について説明する。次に、図8−図14を参照して、囲み部とその開口の作用を説明する。
図1は、実施の形態1に係るプレート式熱交換器1Aの分解斜視図である。図2は、プレート式熱交換器1Aの斜視図である。図3は、図2に示すIII-III切断線の断面図である。図4は、プレート式熱交換器1Aが備える第一伝熱プレート30Aの正面図である。図5は、プレート式熱交換器1Aが備える第二伝熱プレート40の正面図である。なお、図3では、理解を容易にするため、図1に示すインナーフィン70を省略している。また、外壁部25、35、45、管状壁37、47等の内部構造を実際の大きさよりも大きく表示している。
図1に示すように、プレート式熱交換器1Aは、最正面側で装置の強度を高める第一補強プレート10と、第一補強プレート10の背面側に配置された第一サイドプレート20と、その第一サイドプレート20の背面側で、交互に積層された第一伝熱プレート30A及び第二伝熱プレート40と、それら積層された第一伝熱プレート30A及び第二伝熱プレート40の背面側に設けられた第二サイドプレート50と、最背面側で装置の強度を高める第二補強プレート60と、を備えている。
第一補強プレート10は、図2に示すように、角が丸められた矩形状に形成されている。その厚みは、強度を高めるため、図3に示すように、第一伝熱プレート30A及び第二伝熱プレート40のいずれの厚みよりも大きい。そして、第一補強プレート10の下部領域には、X方向、すなわち左右方向に並んで貫通孔110、140が形成されている。図示しないが、第一補強プレート10の上部領域にも、左右方向に並んで貫通孔が2つ形成されている。これらの貫通孔には、第一流体又は第二流体を供給、排出するため、円管11−14が挿入され固定されている。
図2に戻って、円管11と12は、上記の貫通孔110と図示しない貫通孔に挿入されることにより、第一補強プレート10の左下領域と左上領域に配置されている。円管11、12は、外部機器の円管が接続されることにより、プレート式熱交換器1A内に第一流体を供給する。または、円管11、12は、プレート式熱交換器1Aから第一流体を排出する。
これに対して、円管13と14は、図示しない貫通孔と上記の貫通孔140に挿入されることにより、第一補強プレート10の右上領域と右下領域に配置されている。円管13、14は、外部機器の円管が接続されてプレート式熱交換器1A内に第二流体を供給する。または、プレート式熱交換器1Aから第二流体を排出する。円管11−14の背面側には、図1に示すように、第一サイドプレート20が配置される。
第一サイドプレート20は、第一補強プレート10と正面視、すなわち、−Y方向視で同じ形状、同じ大きさに形成されている。そして、第一サイドプレート20は、第一補強プレート10と外縁をそろえて重ね合わされる。第一サイドプレート20には、第一補強プレート10と重ね合わされた状態で、円管11−14とY方向に重なる位置に円形状の貫通孔21−24が形成されている。これにより、第一サイドプレート20は、第一流体と第二流体が円管11と13に供給されると、それら第一流体と第二流体を、積層された第一伝熱プレート30A及び第二伝熱プレート40の側へ供給する。また、第一サイドプレート20は、積層された第一伝熱プレート30A及び第二伝熱プレート40から排出される第一流体と第二流体を円管12と14側へ排出する。
また、第一サイドプレート20には、図3に示すように、背面側に延在すると共に、その外周を取り囲む外壁部25が設けられている。第一サイドプレート20の背面側には、第一伝熱プレート30Aが配置されている。その第一伝熱プレート30Aは、後述するように、外周を取り囲む外壁部35を備えている。第一サイドプレート20は、第一伝熱プレート30Aに正面側から覆い被され、その外壁部25が第一伝熱プレート30Aの外壁部35に当接している。これにより、第一サイドプレート20は、第一伝熱プレート30Aの正面側に流路となる空間を形成している。
第一伝熱プレート30Aと第二伝熱プレート40は、図1に示すように、第一サイドプレート20と同様に、正面視で第一補強プレート10と同じ形状、同じ大きさに形成されている。また、第一伝熱プレート30Aと第二伝熱プレート40は、図3に示すように、背面側に延在すると共に、その外周を取り囲む外壁部35、45を備えている。そして、第一伝熱プレート30Aと第二伝熱プレート40は、正面側から、第一伝熱プレート30A、第二伝熱プレート40、の順序で交互に積層されている。また、第一伝熱プレート30Aと第二伝熱プレート40は、外壁部35、45に互いに当接している。これにより、プレート部36と46の間には、流路となる空間が形成されている。
その流路となる空間には、図1に示すように、熱交換効率を高めるため、インナーフィン70が設けられている。インナーフィン70は、流路に流される第一流体又は第二流体との接触する面積を増加させるため、波状の突起を多数有する。これにより、インナーフィン70は、第一流体又は第二流体から熱が伝わりやすくして、熱交換効率を高めている。
また、第一伝熱プレート30Aと第二伝熱プレート40それぞれは、図1、図4及び図5に示すように、第一サイドプレート20の貫通孔21−24とY方向に重なる位置に、貫通孔21−24と同径、同形状に形成された4つの貫通孔を有する。4つの貫通孔のうち、2つの貫通孔は、円管11と13に第一流体が供給されると、第一伝熱プレート30Aと第二伝熱プレート40の上記流路に、その第一流体と第二流体を供給する。残りの2つの貫通孔は、第一流体と第二流体を第一伝熱プレート30Aと第二伝熱プレート40の流路から円管12と14へ排出する。
ここで、プレート式熱交換器1Aでは、円管11−14に接続される外部機器が第一流体と第二流体の流れる方向を切り換えることがある。例えば、第一流体が円管11に供給され、かつ第一流体が円管12から排出される状態から、第一流体が円管12に供給され、かつ第一流体が円管11から排出される状態へ、その第一流体の流れの向きが切り換えられることがある。このことは、第二流体でも同様である。以下の説明では、理解を容易にするため、第一流体は、円管11に供給され、円管12から排出されるものとする。また、第二流体は、円管13から供給され、円管14から排出されるものとする。この前提のもと、本明細書では、第一伝熱プレート30Aの上記4つの貫通孔を、第一流入孔31、第一流出孔32、第二通路孔33、第二通路孔34と称する。さらに、第二伝熱プレート40の上記4つの貫通孔を、第一通路孔41、第一通路孔42、第二流入孔43、第二流出孔44と称する。
なお、第一流入孔及び第一流出孔とは、第一伝熱プレート30Aに設けられたインナーフィン70を基準に、第一流体が流入する側にある孔及び、流出する側にある孔のことである。第二流入孔及び第二流出孔とは、第二伝熱プレート40に設けられたインナーフィン70を基準に、第二流体が流入する側にある孔及び、流出する側にある孔のことである。また、第一通路孔とは、第一流体を第一伝熱プレート30Aへ流すため、第二伝熱プレート40に設けられた、第一流体が通る通路となる孔のことである。第二通路孔とは、第部流体を第二伝熱プレート40へ流すため、第一伝熱プレート30Aに設けられた、第二流体が通る通路となる孔のことである。
第一伝熱プレート30Aの、第一流入孔31、第一流出孔32、第二通路孔33、第二通路孔34は、図1に示すように、第一サイドプレート20の貫通孔21、22、23、24とY方向に重なっている。これらの孔のうち、第二通路孔33、第二通路孔34は、図3及び図4に示す管状壁37に囲まれている。残りの第一流入孔31、第一流出孔32は、管状壁37に囲まれていない。このため、第一流体が円管11から供給され、かつ、第二流体が円管13から供給されると、第一流体は、第一流入孔31の側から第一伝熱プレート30A内のインナーフィン70へ流入する。そして、インナーフィン70へ流入した第一流体がインナーフィン70から第一流入孔31の側へ流出する。一方、第二流体は、第二通路孔33、第二通路孔34を通過して第一伝熱プレート30Aの流路に流入しない。また、第二流体は、第一伝熱プレート30Aの流路からも流出しない。その結果、第一伝熱プレート30Aの流路には、第一流体だけが流れる。
また、第二伝熱プレート40の、第一通路孔41、第一通路孔42、第二流入孔43、第二流出孔44は、図1に示すように、第一サイドプレート20の貫通孔21、22、23、24とY方向に重なっている。これらの孔のうち、第一通路孔41、第一通路孔42は、図3及び図5に示す管状壁47に囲まれている。これに対して、第二流入孔43、第二流出孔44は、管状壁47に囲まれていない。このため、第一流体が円管11から供給され、かつ、第二流体が円管13から供給されると、第一流体は、第一通路孔41、第一通路孔42を通過して第二伝熱プレート40の流路に流入せず、また、その第二伝熱プレート40の流路からも流出しない。一方、第二流体は、第二流入孔43の側から第二伝熱プレート40内のインナーフィン70へ流入する。そして、インナーフィン70へ流入した第二流体は、インナーフィン70から第二流出孔44の側へ流出する。その結果、第二伝熱プレート40の流路には、第二流体だけが流れる。
一方、図3に示すように、積層された第一伝熱プレート30Aと第二伝熱プレート40の最も背面側には、これらプレートが交互に積層された結果、第二伝熱プレート40が位置する。第二伝熱プレート40には、上述した第一通路孔41、第一通路孔42が形成されている。このため、第一流体が円管11から供給され、かつ第一流体が円管12へ排出されると、第一通路孔41、第一通路孔42を介して、第二伝熱プレート40の背面側へ第一流体が流れ出てしまうおそれがある。
そこで、第一流体の流出を防ぐため、積層された第一伝熱プレート30Aと第二伝熱プレート40の背面側には、第一流体を流す流路を有する第二サイドプレート50が配置されている。
第二サイドプレート50は、図1に示すように、4つの貫通孔のうち、2つの貫通孔が形成されていないことを除いて、第一伝熱プレート30Aと同じ構成である。詳細には、第二サイドプレート50は、第一伝熱プレート30Aと同じ形状、大きさに形成されている。第二サイドプレート50には、第一流入孔31と同じ構成を備える第一流入孔51と、第一流出孔32と同じ構成を備える第一流出孔52と、が形成されている。また、第二サイドプレート50の流路には、流れ込んだ第一流体で熱交換するため、インナーフィン70が設けられている。そして、第二サイドプレート50の背面側には、第一流入孔31及び第一流出孔32を塞ぐため、第二補強プレート60が配置されている。
第二補強プレート60は、第一補強プレート10と同じ大きさ、同じ形状に形成されている。そして、第二補強プレート60には、貫通孔が形成されていない。図3に示すように、第二補強プレート60は、第二サイドプレート50に当接している。これにより、第二補強プレート60は、第二サイドプレート50から第一流体が漏れることを防いでいる。
また、第二補強プレート60の厚みは、第一伝熱プレート30A、第二伝熱プレート40及び第二サイドプレート50のいずれの厚みよりも大きい。これにより、第二補強プレート60は、これらのプレートを補強している。
プレート式熱交換器1Aでは、上述したように、外部機器が第一流体と第二流体の流れる方向を切り換えることがある。その場合、第一流体が気相の単相状態から気相と液相の二相状態に変化することがある。この場合、上述した第一流入孔31が第一流出孔32よりも下側に位置すると、第一流体の気相の部分が第一流入孔31の上方に向かって流れ、その結果、気相の部分が第一流入孔31の左右方向に流れにくくなってしまうことがある。これにより、インナーフィン70全体に第一流体を均一に分配できないことがある。
そこで、第一流体を均一に分配するため、第一伝熱プレート30Aには、図4に示すように、開口80Aを有する囲み部81Aが形成されている。続いて、図6及び図7を参照して、囲み部81Aの構成について説明する。
図6は、プレート式熱交換器1Aが備える第一伝熱プレート30Aの第一流入孔31近傍の拡大斜視図である。図7は、第一流入孔31近傍の拡大正面図である。
図6及び図7に示すように、第一伝熱プレート30Aは、第一流入孔31と同心の円環状の囲み部81Aと、囲み部81Aの円環の一部を開放する開口80Aと、を備えている。
囲み部81Aは、プレート部36のプレート面が屈曲した、いわゆるビードの形状に形成されている。ここで、ビードとは、プレス加工により成形された突起のことである。
詳細には、囲み部81Aは、+Y側、すなわち、正面側に突出している。囲み部81Aの高さは、図3に示すように、第一伝熱プレート30Aのプレート部36から正面側の第一サイドプレート20又は第二伝熱プレート40までの高さと同じである。また、図6に示す囲み部81Aの幅W1は、ロウ付けが可能な1−2mmの大きさに形成されている。
また、囲み部81Aは、ロウ付けによって、正面側の第一サイドプレート20又は第二伝熱プレート40に接合される。これにより、囲み部81Aは、第一流入孔31を囲んで、第一流入孔31に供給された第一流体が第一伝熱プレート30A内の流路に流入することを阻止している。
これに対して、開口80Aは、図6及び図7に示すように、囲み部81Aの中心Cから径方向に囲み部81Aを横断する形状に形成されている。その径方向は、囲み部81Aの中心Cから右側斜め下方、すなわち、第二通路孔34側と反対側の斜め下方に延在する方向である。開口80Aが囲み部81Aを横断する幅、すなわち、開口幅Lは、囲み部81Aの幅W1と同等又はそれ以下である。そして、開口80Aは、その開口幅Lを保ったまま、上述した方向に直線的に延在している。これにより、開口80Aは、第一流入孔31に供給された第一流体が流れ出す箇所を限定してその流量を絞り込んでいる。これにより、開口80Aは、第一流体の流速を大きくする。そして、開口80Aは、第一流体が気相と液相の二相状態であるときに、その気相と液相を混合しやすくしている。その結果、開口80Aは、気相の偏在を抑制している。
なお、開口80Aが延在する上記径方向は、後述するように、熱交換効率を高めるため、囲み部81Aの中心Cから第二通路孔34側と反対側の斜め下方向のほか、囲み部81Aの中心Cから囲み部81Aの下方向、囲み部81Aの中心Cから第二通路孔34側の斜め下方向又は、囲み部81Aの中心Cから第二通路孔34側の斜め上方向であることが望ましい。換言すると、囲み部81Aの中心Cから鉛直方向に向かう直線と、中心Cから開口80Aの延在方向へ延びる直線と、が形成する角度をθとし、その角度θが上記中心Cから鉛直方向に向かう直線の右側に形成される場合をプラス、左側に形成される場合をマイナスとする場合に、その角度θは、−60°以上+120°以下の角度範囲にあることが望ましい。
また、開口80Aの開口幅Lは、後述するように、第一流入孔31の流入口周長をDとする場合に、流入口周長Dの1/20以下であることが望ましい。
次に、図8−図11を参照して、開口80Aを有する囲み部81Aの作用について説明する。以下の説明では、外部機器の円管が、プレート式熱交換器1Aの円管11−14に接続されている形態を説明する。
この形態では、円管11−14のうち、円管11に、液相と気相を有する二相状態の第一流体が供給され、円管13に、液相だけの単相状態の第二流体が供給される。また、図2に示すように、プレート式熱交換器1Aの正面視での長手方向が鉛直方向に向けられ、短手方向が水平方向に向けられる。これにより、第一伝熱プレート30Aの第一流入孔31と第二通路孔34が水平方向に並べられ、第一流出孔32と第二通路孔33が水平方向に並べられる。また、第二伝熱プレート40の第一通路孔41と第二流出孔44が水平方向に並べられ、第一通路孔42と第二流入孔43が水平方向に並べられる。また、円管11、14が円管12、13よりも下に位置する。さらに、プレート式熱交換器1Aの円管12から第一流体が排出され、円管14から第二流体が排出される。
なお、円管11に供給される第一流体は、液相と気相をあわせた二相のうちの、気相の比率、すなわち、いわゆる乾き度が0.05−0.3程度である一般的な乾き度の冷媒である。
図8は、プレート式熱交換器1Aに供給される液相と気相を有する二相状態の第一流体200の概念図である。図9は、囲み部81Aが設けられていない第一伝熱プレート500を備えるプレート式熱交換器に、液相と気相を有する二相状態の第一流体200を供給したときの、第一伝熱プレート500の拡大正面図である。図10は、プレート式熱交換器1Aに液相と気相を有する二相状態の第一流体200を供給したときの、第一伝熱プレート30Aの拡大正面図である。図11は、プレート式熱交換器1Aに液相と気相を有する二相状態の第一流体200を供給したときの、第一伝熱プレート30Aに流入する第一流体200の概念図である。
まず、円管11には、図8に示す状態の第一流体200が供給される。第一流体200は、液相210内に、気相220が大型の気泡の状態で存在している、いわゆるプラグ流の状態で供給される。
円管11に第一流体200が供給されると、その第一流体200は、第一サイドプレート20の貫通孔21を通過する。これにより、第一流体200は、最も正面側にある第一伝熱プレート30Aの第一流入孔31まで供給される。続いて、第一流体200は、第二伝熱プレート40の第一通路孔41を通過して、さらに、背面側にある第一伝熱プレート30Aの第一流入孔31まで供給される。これにより、第一流体200が全ての第一伝熱プレート30Aの第一流入孔31まで供給される。
第一流体200が第一流入孔31まで供給されると、第一流体200は、第一流入孔31が図4に示す管状壁37に囲まれていないことから、第一伝熱プレート30Aの流路内に流入する。
このとき、図9に示すように、囲み部81Aが形成されていない第一伝熱プレート500である場合、第一流体200がプラグ流の状態で大型の気泡を含むため、その気相220が第一流入孔31の上方に向かって流れる。その結果、第一流体200は、第一伝熱プレート500の左右方向、すなわち、X方向に均一に広がらない。その結果、第一流体200は、第一流入孔31の上方かつ第一伝熱プレート500の左側領域に偏在してしまう。
一般に気相220の熱伝導率は、液相210の概ね10%である。このため、大型の気泡を含む状態のままで第一流体が流れると、インナーフィン70での熱交換効率が低下してしまう。
これに対して、第一伝熱プレート30Aでは、図10に示すように、囲み部81Aが形成されている。このため、第一流入孔31から孔周辺に流出した第一流体200は、囲み部81Aによって流路への拡散が阻止されて、第一流入孔31の上方に向かって流れることができない。
一方、囲み部81Aには、その囲みの一部を開放する開口80Aが形成されている。このため、第一流体200は、開口80Aから囲み部81Aの外へ流れる。
このとき、第一流体200は、第一流入孔31の中心Cから開口80Aが開口する方向に流れる。第一流体200は、矢印A1に示すように、開口80Aから外壁部35に向かって流れる。その後、第一流体200は、外壁部35にぶつかって、矢印A2−A4に示すように、第一流入孔31と第二通路孔34との間、第一流入孔31よりも−X側及び、第二通路孔34よりも+X側に分流する。その結果、第一流体200は、矢印A5に示すように、第一伝熱プレート30AのX方向全体に均一に広がった状態で、インナーフィン70を通過する。これにより、プレート式熱交換器1Aの熱交換効率が図9に示す第一伝熱プレート500の場合よりも高められる。
また、第一流体200は、囲み部81Aの内側からその外側へ流れるときに、開口80Aにその流量が絞り込まれる。これにより、第一流体200の流速が大きくなる。その結果、気相と液相が混合されやすくなり、第一流体200は、プラグ流の状態から、図11に示す、より小型の気泡を含む気泡流の状態に変化する。これにより、第一流体200は、少数の大型の気泡が存在する状態から、小型の気泡が存在する状態へ変化する。すなわち、第一流体200は、気泡と液が均等な割合の状態へ変化する。その結果、プレート式熱交換器1Aの熱交換効率が高くなる。
図示しないが、第一流体200は、インナーフィン70を通過し、第一伝熱プレート30Aの上部領域にある第一流出孔32まで達する。第一流出孔32まで達した第一流体は、第一流出孔32から第一サイドプレート20の貫通孔22へ流れる。その後、第一流体200は、円管12から、プレート式熱交換器1Aの外部へ排出される。そして、円管12に接続された外部機器に戻る。
上述したように、開口80Aは、第一流体200を第一伝熱プレート30AのX方向に均一に広げる。また、開口80Aは、プレート式熱交換器1Aの熱交換効率を高める。続いて、図12−図14を参照して、開口80Aの詳細な効果について説明する。
図12は、プレート式熱交換器1Aに液相と気相を有する二相状態の第一流体200を供給したときの、第一伝熱プレート30A内の第一流体200の分布を示すグラフの図である。図13は、開口80Aの大きさとプレート式熱交換器1Aの熱交換効率の関係を示すグラフの図である。図14は、開口80Aの位置とプレート式熱交換器1Aの熱交換効率の関係を示すグラフの図である。
なお、図12のグラフの横軸は、図7に示す第一伝熱プレート30Aの左端面を原点O、右端面を位置Wとしたときの、X方向の各位置の流量を示している。また、図12のグラフに記載の「流入口絞り有」は、第一伝熱プレート30Aが開口80Aを有する囲み部81Aを備え、開口80Aによって第一流体200の流量が絞られたときのプレート式熱交換器1Aの流量を示している。また同グラフに記載の「流入口絞り無」は、囲み部81Aを有さず、囲み部81Aの開口80Aによって第一流体200の流量が絞られていない、図9に示す第一伝熱プレート500を備えるプレート式熱交換器の流量を示している。
また、図13では、図7に示す、開口80Aの開口幅をL、第一流入孔31の流入口周長をDとしたときの、L/Dを絞り率としている。図13は、その絞り率を変化させたときのプレート式熱交換器1Aの熱交換効率を示している。その熱交換効率は、絞り率=1の状態の熱交換効率を1としたときの、相対的な熱交換効率である。すなわち、図13に示す熱交換効率は、図12の「流入口絞り無」の状態の熱交換効率を1としたときの、相対的な熱交換効率である。図13では、この相対的な熱交換効率を「熱交換性能」と表示している。
図14は、図7に示す角度θを変化させたときの、プレート式熱交換器1Aの熱交換効率を示している。図14でも、図12の「流入口絞り無」の状態であるときの熱交換効率を1としたときの、相対的な熱交換効率を示している。その相対的な熱交換効率を「熱交換性能」と表示している。なお、図14での絞り率は、0.02である。
図12を参照すると、開口80A及び囲み部81Aを備える第一伝熱プレート30Aでは、開口80A及び囲み部81Aを備えない第一伝熱プレート500よりも、第一流体200が第一伝熱プレート30AのX方向全体に均一に流れていることがわかる。
また、図13を参照すると、絞り率が0.05、すなわちL/Dが1/20以下である場合に、プレート式熱交換器1Aの熱交換効率が高まることがわかる。この結果から、上述したように、開口80Aの開口幅Lは、第一流入孔31の流入口周長Dに対して1/20以下であることが望ましいことがわかる。
図14を参照すると、開口80Aの角度θは、−60°以上+120°以下であると、開口80Aの角度θが−60°よりも小さく、又は120°よりも大きい場合と比較して、プレート式熱交換器1Aの熱交換効率が高まることがわかる。この結果から、上述したように、図7に示す囲み部81Aの中心Cから鉛直方向に延びる直線と、中心Cから開口80Aが延在する方向に延びる直線と、が形成する角度をθとするときに、その角度θが、−60°以上+120°以下であることが望ましいことがわかる。
以上のように、実施の形態1に係るプレート式熱交換器1Aでは、第一伝熱プレート30Aが、囲み部81Aの一部を開放して第一流体200の流出を絞る開口80Aを備えている。これにより、開口80Aを通過するときの第一流体200の流速が大きくなる。その結果、プレート式熱交換器1Aでは、第一流体200が気相と液相の二相状態である場合に、第一流体を混合して、その気相の気泡を小さくすることができる。これにより、プレート式熱交換器1Aの熱交換効率を高めることができる。
第一伝熱プレート30Aでは、開口80Aが斜め下方に向けられている。そして、第一伝熱プレート30Aのプレート部36は、外壁部35によって囲まれている。このため、第一流体200は、開口80Aから流出した後、外壁部35にぶつかる。これにより、第一流体200は、第一伝熱プレート30AのX方向に均一に広がる。その結果、第一伝熱プレート30A内で第一流体200が偏在せず、プレート式熱交換器1Aの熱交換効率が高まる。
第一伝熱プレート30Aそれぞれに、開口80Aを有する囲み部81Aが形成されている。また、その囲み部81A及び開口80Aは、第一伝熱プレート30Aと一体である。このため、第一伝熱プレート30A毎に、開口80Aの向きを調整する必要がない。第一伝熱プレート30Aと第二伝熱プレート40を積層するだけで、プレート式熱交換器1Aを組み立てることができる。その結果、その組立が容易である。
(実施の形態2)
実施の形態1に係るプレート式熱交換器1Aでは、囲み部81Aがいわゆるビードの形状であり、そのビードに開口80Aが形成されている。しかし、囲み部81Aと開口80Aはこれに限定されない。囲み部81Aと開口80Aは、第一流体の流れを制御するものであればよい。囲み部81Aと開口80Aの形状はその限りにおいて任意である。実施の形態2では、囲み部81Aと開口80Aの変形例の形状について説明する。
実施の形態2に係るプレート式熱交換器1Aでは、囲み部81Bが、いわゆるバーリングの形状である。また、開口80Bが細孔である。以下、図15−図17を参照して、実施の形態2に係るプレート式熱交換器1Bを説明する。実施の形態2では、実施の形態1と異なる構成について説明する。
図15は、実施の形態2に係るプレート式熱交換器1Bが備える第一伝熱プレート30Bの正面図である。図16は、プレート式熱交換器1Bが備える第一伝熱プレート30Bの第一流入孔31近傍の拡大斜視図である。図17は、プレート式熱交換器1Bの断面図である。なお、図17は、図2に示すIII-III切断線と同じ箇所の切断線でプレート式熱交換器1Bを切断したときの断面図である。図17では、理解を容易にするため、図1に示すインナーフィン70を省略している。また、外壁部25、35、45、管状壁37、47等の内部構造を実際の大きさよりも大きく表示している。
図16に示すように、プレート式熱交換器1Bが備える第一伝熱プレート30Bは、第一流入孔31がバーリング加工することにより形成された囲み部81Bと、囲み部81Bが立ち上がった高さよりも小さい細孔の形状の開口80Bと、を備える。ここで、バーリング加工とは、第一流入孔31の外縁部を立ち上げる加工のことである。
囲み部81Bは、図16及び図17に示すように、円管状に形成されている。その管軸は、Y方向に延在し、プレート部36に垂直である。また、囲み部81Bの+Y側、すなわち、正面側には、管壁が円管外側へ折れ曲がった形状のフランジ部が設けられている。
囲み部81Bは、図16に示すプレート部36から、図示しない隣り合う第一サイドプレート20又は第二伝熱プレート40までの距離と同じY方向高さに形成されている。そして、囲み部81Bが有するフランジ部の先端部は、図17に示す第一サイドプレート20又は第二伝熱プレート40にロウ付けにより接合される。
これに対して、開口80Bは、一定の円形状のまま、囲み部81Bの側壁を貫通している。その貫通方向は、Y方向視での、実施の形態1で説明した開口80Aの、第一流入孔31の中心Cに対する方向と同じ方向である。また、その開口80Bの貫通方向は、プレート部36に平行である。さらに、開口80Bの径は、実施の形態1で説明した開口80Aの幅と同じである。なお、開口80Bの貫通方向は、実施の形態1で説明した望ましい角度θの方向と同方向であるとよい。また、開口80Bの径は、実施の形態1で説明した望ましい幅Lと同じ大きさであるとよい。
開口80Bの作用は、実施の形態1の開口80Aと同じである。このため、実施の形態2では、開口80Bの作用の説明を省略する。
以上のように、実施の形態2に係るプレート式熱交換器1Bでは、管状の囲み部81Bに形成された細孔の形状の開口80Bを備える。このため、開口80Bが第一流入孔31からその外へ流出する第一流体200の流量を絞り込みことができる。その結果、プレート式熱交換器1Bでは、第一流体200の流速を大きくして、第一流体200が気相と液相の二相状態である場合に、気相の気泡を小さくすることができる。これにより、実施の形態1と同様に、プレート式熱交換器1Bの熱交換効率が高められる。
また、プレート式熱交換器1Bでは、管状の囲み部81Bに孔を形成するだけで、開口80Bを形成できるので、プレート式熱交換器1Bの製造が容易である。また、開口80Bによる第一流体200の流量調整も容易である。
(実施の形態3)
実施の形態1に係るプレート式熱交換器1Aは、囲み部81A及び開口80A以外の構成を備えてもよい。実施の形態3に係るプレート式熱交換器1Cは、実施の形態1の囲み部81A、開口80Aに加えて、第一流入孔31に挿入され、第一流体の流量を絞り込む絞り管90を備える。以下、図18−図20を参照して、実施の形態3に係るプレート式熱交換器1Cを説明する。実施の形態3では、実施の形態1、2と異なる構成について説明する。
図18は、実施の形態3に係るプレート式熱交換器1Cの斜視図である。図19は、プレート式熱交換器1Cが備える絞り管90の斜視図である。図20は、プレート式熱交換器1Cが備える第一伝熱プレート30Cの変形例の正面図である。
図18に示すように、プレート式熱交換器1Cは、円管11に挿入された絞り管90を備える。なお、絞り管90は、本明細書でいうところの、流体が流れる流体管の一例である。
絞り管90の外径は、円管11の内径よりも小さい。また、図示しないが、第一伝熱プレート30Cの第一流入孔31の内径よりも小さい。そして、絞り管90は、円管11と第一流入孔31の管軸と同軸である。絞り管90は、図示しないが、円管11の正面側から第二補強プレート60まで延在している。また、絞り管90は、プレート式熱交換器1C内で、第一伝熱プレート30Cの第一流入孔31と、第二伝熱プレート40の第一通路孔41と、を挿通している。
また、絞り管90には、図19に示すように、実施の形態2で説明した開口80Bと同径の円形状の細孔91が複数個、形成されている。細孔91のピッチは、積層された第一伝熱プレート30Cと第二伝熱プレート40のプレート間隔と同じである。そして、細孔91は、絞り管90の管面部を貫通し、その貫通方向を実施の形態1で説明した開口80Bと同じ方向に向けている。
上述したように、絞り管90は、第一伝熱プレート30Cの第一流入孔31の内径よりも小さい。このため、絞り管90に第一流体200が供給された場合に、絞り管90内の第一流体200の流速は、実施の形態1で説明した第一流入孔31内の第一流体200よりも大きい。その結果、第一流体200が気相と液相の二相状態であるときの、第一流体200内の気泡が小さい。
以上のように、実施の形態3に係るプレート式熱交換器1Cは、第一伝熱プレート30Cの第一流入孔31の内径よりも小さい絞り管90を備えるので、絞り管90に気相と液相の二相状態である第一流体200が供給された場合に、絞り管90を備えないときよりも第一流体200の流速が大きくなる。これにより、プレート式熱交換器1Cでは、第一流体200内の気泡を小さくして、プレート式熱交換器1Cの熱交換効率を高めることができる。
なお、図20に示すように、プレート式熱交換器1Cが絞り管90を備える場合、第一伝熱プレート30Cの第一流入孔31と第一流出孔32は、第二通路孔33と第二通路孔34と同径であるとよい。この場合、第二伝熱プレート40の第一通路孔41と第一通路孔42は、第二流入孔43と第二流出孔44と同径であるとよい。このような形状であれば、第一伝熱プレート30Cと第二伝熱プレート40が向きを除いて同じ構成となる。これにより、プレート式熱交換器1Cで、第一伝熱プレート30Cと第二伝熱プレート40を共用化することができる。また、図20に示すように、プレート式熱交換器1Cが絞り管90を備えるため、囲み部81Aと開口80Aは省略されてもよい。この場合においても、絞り管90によって第一流体200の流速を大きくすることができる。
(実施の形態4)
実施の形態4は、実施の形態1に係るプレート式熱交換器1Aが用いられたヒートポンプ式給湯システム300である。以下、図21を参照して、実施の形態4に係るヒートポンプ式給湯システム300について説明する。
図21は、実施の形態4に係るヒートポンプ式給湯システム300のブロック図である。
図21に示すように、ヒートポンプ式給湯システム300は、冷媒回路310と、冷媒回路310と熱交換をする水回路320と、を備えている。
冷媒回路310は、冷媒を圧縮する圧縮機311と、冷媒を水回路320の水と熱交換させるプレート式熱交換器1Aと、膨張弁312と、膨張弁312で膨張された冷媒を外気と熱交換させる熱交換器313と、を備えている。圧縮機311、プレート式熱交換器1A、膨張弁312及び、熱交換器313は、この順序で接続されている。そして、圧縮機311は、プレート式熱交換器1Aの円管12に接続され、膨張弁312は、円管11に接続されている。これにより、冷媒回路310は、プレート式熱交換器1Aに冷媒を第一流体として供給している。また、冷媒回路310は、図示しない四方弁を備える。
一方、水回路320は、暖房給湯用水利用装置322、ポンプ321及び、プレート式熱交換器1Aを備えている。ここで、プレート式熱交換器1Aは、冷媒回路310と同じ装置である。水回路320では、暖房給湯用水利用装置322、ポンプ321及び、プレート式熱交換器1Aは、この順序で接続され、閉回路を形成している。そして、ポンプ321がプレート式熱交換器1Aの円管13に接続され、暖房給湯用水利用装置322が円管14に接続されている。これにより、水回路320は、プレート式熱交換器1Aに水を第二流体として供給している。
次に、ヒートポンプ式給湯システム300の動作について説明する。以下の説明では、第一流体200がR410A、R32、R290、CO2などの冷媒、第二流体が水であるものとする。
まず、ヒートポンプ式給湯システム300で暖房をする場合について説明する。第一流体200が、圧縮機311から図1に示すプレート式熱交換器1Aの円管12に供給される。このとき、第一流体200は、高温高圧の気相を有する単相状態である。続いて、第一流体200は、プレート式熱交換器1Aの第一伝熱プレート30A内に流入する。第一流体200は、第一伝熱プレート30A内に気相の単相の状態で流入するため、実施の形態1で説明した第一流体の偏在は発生しにくい。第一流体200は、第一伝熱プレート30A内で凝縮、放熱して気相と液相が混在する二相状態となる。さらに、第一流体200は、完全に液化される。その後、第一流体200は、高圧液体の単相状態でプレート式熱交換器1Aの円管11から排出される。そして、第一流体200は、再度圧縮機311に戻る。これにより、第一流体200は冷媒回路310を循環する。
これに対して、第二流体は、図1に示すプレート式熱交換器1Aの円管13に供給される。第二流体は、プレート式熱交換器1Aの第二伝熱プレート40内に流入して、第二伝熱プレート40で吸熱して温水となる。そして、第二流体は、円管14からプレート式熱交換器1Aの外部に排出される。第二流体は、暖房給湯用水利用装置322で室内を暖房する。
次に、ヒートポンプ式給湯システム300で冷房をする場合について説明する。ヒートポンプ式給湯システム300の暖房動作が冷房動作に切り替わると、図示しない四方弁が冷媒回路310の第一流体200の流れを逆転させる。第一流体200は、膨張弁312から図1に示すプレート式熱交換器1Aの円管11に供給される。このとき、第一流体200は、低圧の二相状態である。続いて、第一流体200は、プレート式熱交換器1Aの第一伝熱プレート30A内に流入する。このとき、第一流体200は、第一伝熱プレート30Aに開口80Aを有する囲み部81Aが設けられているので、第一伝熱プレート30A内で偏在しにくい。また、開口80Aで第一流体200の流速が大きくなり第一流体200内の気泡が小さくなる。その結果、第一流体200は、高い効率で熱交換される。第一流体200は、第一伝熱プレート30A内で蒸発、吸熱して気相が多い二相状態となる。さらに第一流体200は完全に気化される。その後、第一流体200は、円管12からプレート式熱交換器1Aの外部に排出される。
これに対して、第二流体は、図1に示すプレート式熱交換器1Aの円管14に供給される。第二流体は、プレート式熱交換器1Aの第二伝熱プレート40内に流入して、第二伝熱プレート40で放熱して冷水となる。そして、第二流体は、円管13からプレート式熱交換器1Aの外部に排出され、暖房給湯用水利用装置322で室内を冷房する。
以上のように、実施の形態4に係るヒートポンプ式給湯システム300は、プレート式熱交換器1Aを備えているので、熱交換効率が高い。
以上、本発明の実施の形態に係るプレート式熱交換器1A−1C及びヒートポンプ式給湯システム300について説明したが、プレート式熱交換器1A−1C及びヒートポンプ式給湯システム300は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、実施の形態1−4では、囲み部81A、81B及び開口80A、80Bが第一伝熱プレート30A、30Bに形成されている。しかし、囲み部81A、81B及び開口80A、80Bはこれに限定されない。囲み部81A、81B及び開口80A、80Bは、第一伝熱プレート30A、30B又は第二伝熱プレート40に備えられていればよい。これは、第一流体200又は第二流体が二相状態で流されることがあるからである。
なお、第一伝熱プレート30A、30B又は第二伝熱プレート40は、本明細書でいうところの伝熱プレートの一例である。
また、実施の形態1−4では、囲み部81A、81Bが第一流入孔31を囲んでいるが、囲み部81A、81Bはこれに限定されない。外部機器の接続によって、第一流出孔32から第一流体200が流入し、第一流入孔31へ第一流体200が流出することがあることから、囲み部81A、81Bは、第一流出孔32を囲んでもよい。この場合、第一流出孔32に、二相状態の第一流体200を流入させるとよい。また、囲み部81A、81Bは、第二流入孔43又は第二流出孔44を囲んでもよい。この場合、第二流入孔43又は第二流出孔44に二相状態の第二流体を流入させるとよい。このような形態であれば、二相状態の第一流体200又は第二流体を流入させる第一流出孔32、第二流入孔43、第二流出孔44がインナーフィン70よりも下側に位置する場合でも、熱交換効率が低下しにくい。
なお、第一流入孔31、第一流出孔32、第二流入孔43、第二流出孔44は、本明細書でいうところの流出入孔の一例である。
実施の形態1−4では、プレート式熱交換器1A−1Cの向きが、正面視で長手方向を鉛直方向に向け、さらに、円管11と14を円管12、13に対して下側に配置している。しかし、円管11−14の位置はこれに限定されない。二相状態の第一流体200又は第二流体を流す場合、その二相状態の第一流体200又は第二流体が供給される円管11−14が他の円管11−14よりも下に配置されていればよい。
また、実施の形態1では、囲み部81Aの幅W1がロウ付け可能な大きさに形成されているが、囲み部81Aの幅W1の大きさも任意である。
図22は、実施の形態1に係るプレート式熱交換器1Aが備える囲み部81Aの変形例の拡大正面図である。
図22に示すように、囲み部81Cの幅W2は、実施の形態1で説明した囲み部81Aの幅W1よりも大きい。囲み部81Cの幅W2が大きい場合、第一流体200が開口80Cを通過するとき、プレート部36の表面付近に流速の小さい流れの層、すなわち境界層が発達する。第一流体200はその境界層が発達するまで流速が大きく変化する。このため、囲み部81Cの幅W2は、境界層が発達する程度の大きさであることが望ましい。
また、囲み部81A−81Cと開口80A−80Cの数も任意である。
図23は、実施の形態1に係るプレート式熱交換器1Aが備える囲み部81Aの他の変形例の拡大正面図である。図24は、囲み部81Aのさらに他の変形例の拡大正面図である。
図23に示すように、第一流入孔31は、同心かつ円形の複数の囲み部81D、81Eで囲まれてもよい。この場合、囲み部81D、81Eそれぞれに開口80D、80Eが形成されるとよい。そして、開口80D、80Eは、第一流入孔31の中心Cに対して異なる方向に位置してもよい。さらに、図23に示す、第一流体200が囲み部81D、81Eを通過するまでの距離W3が、上記幅W2よりも大きくなるとよい。これにより、上述した境界層が発達するまで、第一流体200の流速を大きくすることができる。
また、図24に示すように、囲み部81Fには、複数の開口80F、80Gが形成されてもよい。この場合、複数の開口80F、80Gは、実施の形態1で説明した角度θの望ましい角度範囲内に形成されるとよい。また、複数の開口80F、80Gの開口幅L2、L3を合計したときの総合計幅が、実施の形態1で説明した望ましい絞り率を満たすとよい。なお、開口80F、80Gは、囲み部81Fの外側に向かって狭まってもよく、図23の開口80D、80Eと同様に、幅が一定であってもよい。
実施の形態1−4では、囲み部81A−81Eの形状が円環状又は円管状である。しかし、囲み部81A−81Eはこれに限定されない。プレート式熱交換器1A−1Cでは、囲み部81A−81Eは、第一流入孔31、第一流出孔32等の流体の流出入孔を囲んでいればよい。これにより、囲み部81A−81Eが流体の流出入を阻止しているとよい。そして、開口80A−80Eが囲み部81A−81Eの一部を開放すればよい。これにより、開口80A−80Eが流体の流出入を絞っているとよい。従って、この限りにおいて、囲み部81A−81Eの形状は任意である。例えば、囲み部81A−81Eは、楕円、長円等の環の形状であってもよい。また、囲み部81A−81Eは角管の形状であってもよい。
実施の形態1−4では、第一伝熱プレート30A、30B又は第二伝熱プレート40の外壁部35、45が−Y方向に延在している。そして、これらのプレートがY方向に積層されることにより、外壁部35、45がプレート部36、46に当接して、第一伝熱プレート30A、30B又は第二伝熱プレート40の流路となる空間が+Y側に形成されている。しかし、外壁部35、45はこれに限定されない。プレート式熱交換器1A−1Cでは、外壁部35、45が流路を形成し、その流路が形成された第一伝熱プレート30A、30B、第二伝熱プレート40が積層された状態で、囲み部81A−81Eが隣り合う第一伝熱プレート30A、30B、第二伝熱プレート40のプレート部36、46まで突出し、かつその囲み部81A−81Eがプレート部36、46に当接していればよい。従って、この限りにおいて、外壁部35、45の向き、形状は、任意である。例えば、外壁部35、45は、プレート部36、46から+Y方向に延在してもよい。
実施の形態1−4では、第一伝熱プレート30A、30B又は第二伝熱プレート40が有する流路の空間に波状の突起を多数有するインナーフィン70が配置されている。しかし、インナーフィン70はこれに限定されない。インナーフィン70の具体的な形状は任意である。
図25A−図25Fは、実施の形態1に係るプレート式熱交換器1Aが備えるインナーフィン70に設けられた突起71の第1−第6変形例の斜視図である。
図25Aに示すように、インナーフィン70は、細長い直方体の形状の突起71が複数個、互いに平行に並び、それら複数の突起71の側壁に出っ張り部が交互に出っ張るオフセット型フィンであってもよい。また、図25Bに示すように、平板状の突起71を複数個有する平板型フィンであってもよい。さらに、インナーフィン70は、図25Cに示すように、平面視で波状の突起71を複数個有する波型フィンであってもよい。
また、インナーフィン70は、図25Dに示す、断面視ルーバー状の突起71を有するルーバー型フィン、図25Eに示す、断面視コルゲート状の突起71を有するコルゲート型フィン、又は図25Eに示す、ピン状の突起71を有するピン型フィンであってもよい。
実施の形態4では、プレート式熱交換器1Aがヒートポンプ式給湯システム300に使用されている。しかし、プレート式熱交換器1A−1Cの用途はこれに限定されない。プレート式熱交換器1A−1Cは、冷房用チラーにも適用可能である。また、プレート式熱交換器1A−1Cは、発電装置、食品用加熱殺菌処理機器等の産業用及び家庭用機器に利用可能である。このような機器にプレート式熱交換器1A−1Cを用いることで、熱交換効率を高めることができる。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
本出願は、平成30年11月26日に出願された日本国特許出願特願2018−220602号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2018−220602号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。