JP6948192B2 - 海洋生物用着生基質ユニット及び人工海洋構造物 - Google Patents

海洋生物用着生基質ユニット及び人工海洋構造物 Download PDF

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本発明は、自然状態で剥離が生じることなく、更新作業時に、交換作業や清掃作業なしに、一定の剥離操作によって、作業性良く新たな着生面に切り替えることが可能で、使用上の管理も容易化でき、また、簡単かつ低コストな構成を備えて、着生し生育する種々の海洋生物に使用することが可能な海洋生物用着生基質ユニット及び人工海洋構造物に関する。
稚貝や海藻の胞子等の海洋生物を着生して育成させる海洋生物用着生基質ユニットとしては、特許文献1〜3が知られている。特許文献1の「海草着生基板」は、魚礁ブロックの表面に海藻が着生しやすい板体を着脱自在に組み付けるもので、板状に造られた基板をプラスチックボルトナット等で礁体ブロック表面に取り外し取付自由に組み付けられた海藻着生基板であって、中心部に組付け用ボルトを通す孔を有し、板状体の表面を素焼き陶板のような多孔質に成型し、板状体の表面を粗としたものである。
特許文献2の「軟弱海底用電着藻魚礁」は、コンクリートブロックに固定され導電性材料で形成された載置台に導電性材料で金網状に形成された各種形状の陰極部材を載置し、かつ該陰極部材に近接して導電性材料で形成された陽極部材を設置するとともに、前記陰極部材の表面に硬質無機化合物と軟質無機化合物とを交互に多重積層させた電着層を形成するようにしている。
特許文献3の「岩牡蠣の養殖床及びそれを用いた養殖方法」は、基台上に岩牡蠣を着床させる着床盤を保持させて成り、着床盤は、岩牡蠣の着床力よりも脆弱で、着床した岩牡蠣を剥脱する際に該着床盤の表面の一部が岩牡蠣と共に剥落する程度の強度を有する素材により形成され、具体的には、頁岩等の層間において剥離し易い薄葉層が積層された素材や、大谷石等の3次元的に脆い素材により形成されるようにしている。
実開昭63−155366号公報 実開昭61−191769号公報 特開2007−37496号公報
特許文献1は、自然に着生し生育した海藻を収穫する目的で用いられる。しかしながら、海藻以外の目的外の他の海洋生物が着生し、海藻を収穫することが困難になってしまったような場合には、潜水作業者が潜って、魚礁ブロックから海藻着生基板を取り外し、その後、改めて新たな海藻着生基板を魚礁ブロックに取り付けなければならない。この交換作業には、多大な手間と時間がかかるという課題がある。
なお、他の海洋生物が着生してしまった場合、交換作業を行うのではなく、海藻着生基板の表面に対し清掃作業を行うことも考えられるが、清掃作業に伴う水質環境の悪化が懸念されるため、作業活動が制限され、従って作業時間も長引くこととなって、清掃で対処することは望ましい方策とは言えなかった。
また、特許文献1は、海藻を対象としてその着生・育成を目的とするが、例えば岩牡蠣などのように、一旦収穫したら、その後で、着生個所を更新する必要がある海洋生物を対象とする場合には、特許文献1の技術では、結局、手間と時間のかかる交換作業を実施しなければならなかった。
特許文献2では、電着作用により、海藻類胞子が着生する硬質電着層と、硬質電着層を剥がすための軟質電着層とを交互に多層に形成して、交換作業を要することなく、硬質電着層を更新するようにしている。しかしながら、電着層を生成するために、電源設備が必要で設備コストが嵩むと共に、その管理に手間と時間を要するという課題がある。
また、特許文献2は、海藻類程度であれば、その着生や育成が可能な電着層を生成する技術であり、例えば岩牡蠣などの貝類を対象とした場合には、電着層でこれを保持することは難しく、波力や潮流等の外力によって、貝類が着生している硬質電着層が軟質電着層から、意図せずに自然に引き剥がされてしまうことが考えられる。
特許文献3は、着生し生育した岩牡蠣を収穫する目的で用いられる。岩牡蠣以外の海洋生物が着生した場合、これを除去するには、特許文献1と同様であって、交換作業を行うか、清掃作業を行わなければならず、このため、多大な手間と時間がかかるという課題がある。
着床盤の素材は、着床盤の表面の一部が岩牡蠣と共に剥落する程度の強度を有するもので、着床盤全体として、岩牡蠣の着床力よりも脆弱であるため、例えば、収穫の度毎に壊れ方が相違し、岩牡蠣の着生の可否や、使用可能か否かの管理に手間がかかったり、また、複数の着床盤で、収穫に伴う剥落の態様が激しく剥落したものやその程度がさほどでないものなど、種々様々であって、それに伴い、耐用期間などに関し個々に異なる管理を要するなど、表面の一部が岩牡蠣と共に剥落する程度の強度の素材を有する着床盤であるために、海中に設置される当該着床盤の管理がきわめて煩雑であるという課題もある。
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、自然状態で剥離が生じることなく、更新作業時に、交換作業や清掃作業なしに、一定の剥離操作によって、作業性良く新たな着生面に切り替えることが可能で、使用上の管理も容易化でき、また、簡単かつ低コストな構成を備えて、着生し生育する種々の海洋生物に使用することが可能な海洋生物用着生基質ユニット及び人工海洋構造物を提供することを目的とする。
本発明にかかる海洋生物用着生基質ユニットは、稚貝や海藻の胞子等の海洋生物が着生可能な着生面を有する着生基質体を基板に設けた海洋生物用着生基質ユニットであって、上記着生基質体は、表裏面のいずれか一方が上記着生面となる複数枚の着生基質板を重ね合わせて、これら着生基質板同士の間に設けられる積層用結合剤層で一体的に結合して積層することにより形成され、上記着生基質体と上記基板とは、これらの間に設けられる取付用結合剤層により一体的に結合され、これら結合剤層内には、これら板の板面に沿って、結合剤による板同士の結合強度を調整するシート材が複数枚、所定の間隔を空けて、分散して配設され、該シート材は、これら結合剤層を、板同士の結合状態を保持することが可能な強度であると同時に、上記着生基質板を順次除去していく更新作業で破壊され、板同士の結合が解かれ剥離することが可能な強度に形成するように、該シート材がある部分は、当該シート材の無い部分に対して、これら板の板面に沿って板同士の結合強度に強弱があるように調整することを特徴とする。
前記シート材は、繊維材料で形成されることを特徴とする。
前記シート材は、分解性を有する材料で形成されることを特徴とする。
前記着生基質体は、互いに重ね合わされる一方の前記着生基質板が他方の前記着生基質板よりも外方へはみ出すように積層されることを特徴とする。
本発明にかかる人工海洋構造物は、上記海洋生物用着生基質ユニットの前記基板に、設置個所に固定可能な固定部が設けられ、該固定部を介して上記海洋生物用着生基質ユニットが固定されていることを特徴とする。
本発明にかかる海洋生物用着生基質ユニット及び人工海洋構造物にあっては、自然状態で剥離が生じることなく、更新作業時に、交換作業や清掃作業なしに、一定の剥離操作によって、作業性良く新たな着生面に切り替えることができ、使用上の管理も容易化でき、また、簡単かつ低コストな構成を備えて、着生し生育する種々の海洋生物に使用することができる。
本発明にかかる海洋生物用着生基質ユニットの好適な一実施形態を示す斜視図である。 図1に示した海洋生物用着生基質ユニットの平面図である。 図1に示した海洋生物用着生基質ユニットの部分側面図である。 図1に示した海洋生物用着生基質ユニットに適用される着生基質板の平面図である。 図1に示した海洋生物用着生基質ユニットに適用される基板の平面図である。 図2中、A−A線矢視断面図である。 本発明にかかる人工海洋構造物の好適な一実施形態を示す斜視図である。 本発明にかかる海洋生物用着生基質ユニットに適用される着生基質板の変形例を示す斜視図である。 本発明にかかる海洋生物用着生基質ユニットに適用される着生基質板の他の変形例を示す斜視図である。 本発明にかかる海洋生物用着生基質ユニットに適用されるシート材の変形例を示す平面図である。
以下に、本発明にかかる海洋生物用着生基質ユニット及び人工海洋構造物の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態にかかる海洋生物用着生基質ユニット1は、図1〜図3に示すように、主に、岩牡蠣などの貝類の稚貝やホヤ類、イカ類の卵、海藻の胞子等の様々な海洋生物を着生させ育成するための着生基質体2と、この着生基質体2が取り付けられて、当該着生基質体2を海洋等の所定箇所に設置するための基板3とから構成される。着生基質体2は、追って詳述するように、複数枚の着生基質板4を積層することで形成される。
以下の説明では便宜上、上下方向を積層方向として説明する。しかしながら、着生基質体2の製造や設置の向きにより、積層方向は、上下方向だけに限られるものではない。また、着生基質体2や着生基質板4、基板3の左右方向を幅方向、それらの前後方向を長さ方向と称して説明する。
着生基質体2は、板面4aを向かい合わせる配列で順次上下方向に重ね合わされる複数枚の着生基質板4と、重ね合わせにより隣り合う着生基質板4同士それぞれの間に設けられ、これら着生基質板4の板面4a相互を結合する複数層の積層用結合剤層5とから構成され、積層用結合剤層5により複数枚の着生基質板4を一体的に結合することによって、当該着生基質板4が積層されて形成される。
図示例にあっては、各着生基質板4の平面外形輪郭は、長方形状に形成されている。しかしながら、着生基質板4の平面外形輪郭はその他、三角形状や四角形状、他の多角形状、楕円形状、円形状など、どのような形状であってもよい。
着生基質板4は、FRPや天然樹脂材、合成樹脂材を素材として形成される。積層用結合剤層5と接する着生基質板4の板面4aは図4に示すように、積層用結合剤層5との結合性を向上するために、凹凸を有する粗面で形成される。これら着生基質板4は、幅寸法がすべて同一寸法で形成される一方、長さ寸法は、複数枚で順次に長いものから短いものまですべて異なる寸法で形成される。
複数枚の着生基質板4は、重ね合わされる際、それらの幅方向両端が揃えられる。他方、複数枚の着生基質板4は、長さ寸法が異なる長さ方向については、一端側で揃えられる一方、他端側では、隣り合って互いに重ね合わされる上下の着生基質板4相互で、下方に配置される長さ寸法の長い着生基質板4が、上方に配置される長さ寸法の短い着生基質板4よりも外方へはみ出すように積層される。
このはみ出しにより、積層方向頂部の着生基質板4を除き、それよりも下方の着生基質板4それぞれには、直上に重ねられる着生基質板4との間の各積層用結合剤層5へ連なる案内用棚部2aが形成される。長さ寸法の異なる複数枚の着生基質板4を、それらの長さ方向一端側で揃えて、長さの長いものから順次短いものへ積み上げて積層して形成される着生基質体2の外観は、長さ方向他端側に階段部2bを有するおおよそ直方体状に形成される。
複数枚の着生基質板4を積層した構造の着生基質体2では、上方から下方へ向けて順次着生基質板4を除去していく更新作業が行われるもので、各着生基質板4は、その直上の着生基質板4が除去されると、その表裏(上下)の板面4aのうち、下面は積層用結合剤層5との結合が維持される一方で、上面は、海中等に曝露され海洋生物の着生が可能な着生面Bとなる。
初期状態では、着生基質体2の頂部に位置する着生基質板4の板面(上面)4aが着生面Bとなり、更新作業でこの頂部に位置していた着生基質板4が除去されると、その直下の着生基質板4が着生基質体2の頂部に位置することとなって、その板面(上面)4aが着生面Bとなる。
着生基質体2の下方には基板3が配置される。着生基質体2、具体的には着生基質体2底部の着生基質板4の板面4aと基板3の板面3aとはそれらの間に設けられる取付用結合剤層6により一体的に結合される。基板3も、着生基質板4と同様に、FRPや天然樹脂材、合成樹脂材を素材として形成される。
取付用結合剤層6と接する基板3の板面3aは図5に示すように、取付用結合剤層6との結合性を向上するために、凹凸を有する粗面で形成される。取付用結合剤層6と接する着生基質体2底部の着生基質板4の板面4aも、取付用結合剤層6との結合性を向上するために同様の粗面で形成される。基板3の平面外形寸法は、ほぼ直方体状の着生基質体4から外方へ突出する広がりを持つように、当該着生基質体4の平面外形輪郭よりも大きく形成される。
図示例では、基板3の平面外形輪郭は長方形状に形成されている。しかしながら、基板3の平面外形輪郭もその他、三角形状や四角形状、他の多角形状、楕円形状、円形状など、どのような形状であってもよい。
平面長方形状の基板3の幅寸法は、左右両端部が着生基質体2の両側から外方へ突出する寸法で形成され、これにより基板3の左右両端部には、後述するように海洋生物用着生基質ユニット1を設置箇所に固定可能な一対の固定部3bが形成される。各固定部3bには、固定部材7を挿入するための挿通孔3cが間隔を隔てて複数形成される。
また、基板3の長さ寸法は、着生基質体2底部の着生基質板4の長さ寸法よりも長い寸法で形成される。そして、基板3は、着生基質体2に対し、当該着生基質体2の階段部2b側で着生基質体2よりも外方へはみ出し、反対側で着生基質体2と上下方向に揃うように配置されて、着生基質体2からはみ出した基板3の長さ方向端部の上方の板面3aが、直上に重ねられる着生基質体2底部の着生基質板4との間の取付用結合剤層6へ連なる案内面3dとして形成される。
基板3は、更新作業により全ての着生基質板4が除去されたとき、すなわち、着生基質体2底部の着生基質板4が除去されたとき、その上方の板面3aが海中等に曝露され海洋生物の着生が可能な着生面Bとなる。
積層用結合剤層5及び取付用結合剤層6は、波力や潮流等の外力に抗して板3,4同士の結合状態を保持することが可能な強度であると同時に、潜水作業者による作業具を用いた人的な作業によっては、これらが破壊されて板3,4同士の結合が解かれ、上側の板4を下側の板3,4から剥離することが可能な強度で形成される。
潜水作業者による人的な作業は、案内用棚部2aや基板3の案内面3dが利用され、着生基質板4同士の隙間や基板3と着生基質体2底部の着生基質板4との隙間からマイナスドライバやスクレーパ等の先端が楔状に薄く尖った作業具が押し入れられ、これによりこれら結合剤層5,6の破壊がなされるようになっている。
積層用結合剤層5及び取付用結合剤層6を形成する結合剤は例えば、不飽和ポリエステル樹脂に硬化剤を混合して作製され、板面3a,4aに塗布されることで板3,4同士の間に結合剤層5,6を形成する。
これら結合剤層5,6には、結合剤による板3,4同士の結合強度を調整するために、図2及び図6に示すように、これら板3,4の板面3a,4aに沿ってシート材8が埋め込んで設けられる。
本実施形態では、シート材8の素材として繊維材料で形成されたシート材8が設けられる。これにより、結合剤の結合力だけで板3,4同士を結合する結合剤層5,6を形成する場合に比べて、結合剤層5,6の内部に繊維材料で形成されたシート材8を設けると、その繊維によってシート材8と結合剤とが結合して結合力を発揮する面積が獲得され、結合強度を高めるように調整することが可能となる。
また、本実施形態にあっては繊維材料で形成されたシート材8は、結合剤層5,6中に、所定の間隔を空けて、複数枚が分散して配設される。このように、シート材8を分散して配設すると、結合剤層5,6だけで板3,4同士を結合すると結合強度が板面3a,4a全面で一定になってしまう場合と異なり、シート材8がある部分は、シート材8の無い部分に対して、結合強度が高まり、板面3a,4aに沿って結合強度に強弱があるように調整される。
これにより、波力等の外力に抗し得る結合剤層5,6の結合強度は、結合剤層5,6全体で、特にシート材8のある部分で高く確保されつつ、着生基質板4の剥離に対しては、シート材8が設けられない部分、すなわち比較的結合強度が低い箇所があることで、その作業が円滑に行われるようになっている。
図示例では、四角形状の複数枚の繊維材料で形成されたシート材8が、板3,4の長さ方向及び幅方向に等間隔を隔てて、縦横に均等に配設されている。シート材8は、四角形状の他、多角形状や円形状など、どのような形態であってもよい。板3,4の平面外形寸法に対するシート材8の平面外形寸法(大きさ)は、適宜に設定すればよい。シート材8の枚数や配列も、適宜に設定すればよい。
なお、シート材8の素材は、本実施形態では板3,4同士の結合強度を高めるために繊維材料で形成されたシート材8を例示したが、結合強度を調整できればどのようなものでも採用可能である。例えば、板3,4同士を結合する結合剤として結合力が非常に強いものを使用する場合には、合成樹脂を材料としたシート材8を採用して、結合剤層5,6の結合強度を低くするように調整しても良い。この場合においても、結合剤層5,6の結合強度は、当該結合剤層5,6全体で、特にシート材8が無い部分で高く確保されつつ、着生基質板4の剥離に対しては、シート材8を設けた部分、すなわち比較的結合強度が低い箇所があることで、上述したのと同様に、その作業が円滑に行われる。
また、シート材8は、環境保全の観点から、海中等で分解性を有する材料が好ましく、アルミ箔や繊維材料、例えば和紙や半紙などの紙類とされる。
以上のように構成される本実施形態に係る海洋生物用着生基質ユニット1は、例えば図7に示すように、コンクリート製基台9に、鋼製の柱材10及び梁材11を組んで形成した直方体状の枠組体12を搭載した人工海洋構造物13に取り付けられる。
具体的には、柱材10や梁材11に設けられる通孔に挿通される固定部材7としてのボルトが、海洋生物用着生基質ユニット1の基板3に形成された固定部3bの各挿通孔3cに挿通されナットで締結され、これにより、基板3が直方体状の枠組体12の各面に取り付けられて、海洋生物用着生基質ユニット1が人工海洋構造物13に固定して設けられる。
なお、鋼製の枠組体12に代えて、コンクリート製からなる中実な柱状体に海洋生物用着生基質ユニット1の基板3を取り付ける場合には、予め固定部材(アンカーボルト)7を柱状体に打ち込んでおく。
次に、本実施形態に係る海洋生物用着生基質ユニット1及び人工海洋構造物13の作用について説明する。海洋生物用着生基質ユニット1の製作にあたっては、1枚の基板3と複数枚の着生基質板4をそれぞれ作製する。
次いで、着生基質体2の頂部に配置する着生基質板4については、粗面とされた板面(下面)4aに、また底部に配置する着生基質板4については、粗面とされた板面(上面)4aに、他の着生基質板4については、粗面とされた表裏の板面4aにそれぞれ結合剤を塗布した後、上下に隣り合う着生基質板4同士の間それぞれに複数枚のシート材8を挟み込むようにして、結合剤で着生基質板4同士を張り付けて結合し、これにより複数枚の着生基質板4が積層用結合剤層5で積層状態に一体的に結合された案内用棚部2bを有する着生基質体2を形成する。
次いで、着生基質体2の底部に位置する着生基質板4の粗面とされた板面(下面)4a及び基板3の粗面とされた板面(上面)3aそれぞれに結合剤を塗布した後、底部の着生基質板4と基板3との間に複数枚のシート材8を挟み込むようにして、かつ案内面3d及び固定部3bが現れるように位置づけして、結合剤で着生基質体2と基板3を張り付けて結合し、これにより着生基質体2と基板3とを取付用結合剤層6で一体的に結合した海洋生物用着生基質ユニット1を完成する。
このように着生基質ユニット1は、繊維材料等のシート材8が埋設される結合剤層5,6で、FRP等で作製される着生基質板4や基板3を積層状態で一体的に結合して形成するだけなので、簡単かつ低コストで構成することができる。
そして、完成した海洋生物用着生基質ユニット1は、人工海洋構造物13に固定され、海中に設置される。海中へ設置する際、着生基質ユニット1は、予め陸上で人工海洋構造物13に固定しておいて、人工海洋構造物13と共に海中に沈めても、潜水作業者が潜行して、沈められている人工海洋構造物13に対して固定するようにしてもよい。
人工海洋構造物13についても、着生基質ユニット1を、その固定部3bを介して固定できる構成を備えるだけでよく、構造が簡単であって、安価に製作することができる。
海中に沈めて設置された海洋生物用着生基質ユニット1では、着生基質体2の頂部の着生基質板4が露出され、その板面(上面)4aが海中に曝露されて着生面Bとなる。この着生面Bに種々様々の海洋生物を着生させ育成することができる。
設置時、波力等の外力が着生基質ユニット1に作用しても、結合剤層5,6の結合強度により、殊に繊維材料のシート材8によって結合強度が増強するように調整できることにより、全体の一体化を確実に維持することができ、着生基質板4が意図せず剥がれてしまうなど、自然状態で損傷が発生することを防止することができる。
設置後、適宜期間を経て、育成された海洋生物は、収穫される。収穫に際しては、潜水作業員が潜水し、海洋生物が着生している頂部の着生基質板4を着生基質体2から分離する。分離する際には、上述したスクレーパ等の作業具を用いる。
分離対象である頂部の着生基質板4とその直下の着生基質板4の位置関係は、着生基質体2に階段部2bとなって現れる案内用棚部2aで判別することができ、作業具を案内用棚部2aに当てて、着生基質板4の間の積層用結合剤層5に容易かつ的確に作業具を押し入れることができる。
作業具を積層用結合剤層5に押し入れると、シート材8の分散配置により結合強度が比較的小さい箇所をきっかけとして積層用結合剤層5に破壊を生じさせることができ、作業具をさらに押し入れることで、シート材8がある箇所も含めて連鎖的に結合を解くことができて、頂部の1枚の着生基質板4を着生基質体2から剥がし取って収穫することができ、また同時に、直下の着生基質板4の板面(上面)4aを海中に曝露させて新規の着生面Bに切り替えることができ、このような良好な剥離作業だけで、交換作業や清掃作業なしに、収穫と着生面Bの更新作業とを完了することができる。
本実施形態に係る海洋生物用着生基質ユニット1の着生基質体2は、複数枚の着生基質板4すべてが剥がし取られるまで、すなわち、シート材8が埋設されている取付用結合剤層5で基板3に結合されている着生基質体2底部の着生基質板4が剥がし取られるまで、一定の剥離操作の繰り返しで、確実に複数回収穫することができる。そしてまた、この1枚1枚の剥離操作そのもので使用状況を知ることができ、きわめて容易に着生基質ユニット1の使用上の管理を行うことができる。
本実施形態に係る海洋生物用着生基質ユニット1では、着生基質板4がすべて基板3から取り去られて最後に現れる基板3の板面(上面)3aも新たな着生面Bとして利用することができ、基板3を人工海洋構造物13から取り外すことにより、基板3によっても海洋生物を収穫することができる。また、海洋生物用着生基質ユニット1を、基板3からすべて回収するものであるため、環境保全にも資することができる。
図8及び図9には、着生基質体2の案内用棚部2aの変形例が示されている。図8では、同一寸法の複数枚の着生基質板4の隅角部4bを切り欠くようにし、この切り欠き寸法を底部の着生基質板4から頂部の着生基質板4に向かって大きくすることで、階段状に案内用棚部2aを形成するようにしている。
図9では、同一寸法の複数枚の着生基質板4の一側縁4cを部分的に一定幅で切り欠くようにし、この切り欠きの長さ寸法を底部の着生基質板4から頂部の着生基質板4に向かって大きくすることで、階段状に案内用棚部2aを形成するようにしている。これら変形例にあっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
図10には、シート材8について、その形態と配列の変形例が示されている。この変形例は、着生基質板4の剥離方向に方向性を持たせる(図では、幅方向よりも長さ方向に剥離し易い)ために、シート材8を、長さが長く幅が狭い帯状に形成し、シート材8の長さ方向を着生基質板4の幅方向に向けて、複数枚を上下左右に等間隔で配設したものである。このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
本実施形態では、上下方向に着生基質板4が積層されて形成される縦向きの着生基質体2の底部に取付用結合剤層6で基板3を結合する構成を例示して説明したが、これに限らず、着生基質板4を左右方向に積層して形成した横向きの着生基質体2の底部に基板3を結合する構成であってもよい。
本実施形態では、海洋生物用着生基質ユニット1は、コンクリート製基台9に搭載した枠組体12を備える人工海洋構造物13に固定する場合を例示したが、人工海洋構造物13としてはこの他、魚礁、増殖礁、消波ブロック、防波堤、港湾施設等であってもよく、また、着生基質ユニット1は、人工物に限らず、海中の天然の岩礁に打ち込んだアンカーボルトに、その固定部3bをナットで締結固定して設置するようにしてもよい。
また、着生基質ユニット1の固定部3bの設置箇所への固定については、ボルト・ナットに限らず、釘による固定や接着による固定など、公知の各種固定手段を適用してもよいことはもちろんである。
1 海洋生物用着生基質ユニット
2 着生基質体
3 基板
3b 固定部
4 着生基質板
4a 板面
5 積層用結合剤層
6 取付用結合剤層
8 シート材
13 人工海洋構造物
B 着生面

Claims (5)

  1. 稚貝や海藻の胞子等の海洋生物が着生可能な着生面を有する着生基質体を基板に設けた海洋生物用着生基質ユニットであって、
    上記着生基質体は、表裏面のいずれか一方が上記着生面となる複数枚の着生基質板を重ね合わせて、これら着生基質板同士の間に設けられる積層用結合剤層で一体的に結合して積層することにより形成され、
    上記着生基質体と上記基板とは、これらの間に設けられる取付用結合剤層により一体的に結合され、
    これら結合剤層内には、これら板の板面に沿って、結合剤による板同士の結合強度を調整するシート材が複数枚、所定の間隔を空けて、分散して配設され、
    該シート材は、これら結合剤層を、板同士の結合状態を保持することが可能な強度であると同時に、上記着生基質板を順次除去していく更新作業で破壊され、板同士の結合が解かれ剥離することが可能な強度に形成するように、該シート材がある部分は、当該シート材の無い部分に対して、これら板の板面に沿って板同士の結合強度に強弱があるように調整することを特徴とする海洋生物用着生基質ユニット。
  2. 前記シート材は、繊維材料で形成されることを特徴とする請求項1に記載の海洋生物用着生基質ユニット。
  3. 前記シート材は、分解性を有する材料で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の海洋生物用着生基質ユニット。
  4. 前記着生基質体は、互いに重ね合わされる一方の前記着生基質板が他方の前記着生基質板よりも外方へはみ出すように積層されることを特徴とする請求項1〜3いずれかの項に記載の海洋生物用着生基質ユニット。
  5. 請求項1〜4いずれかの項に記載の海洋生物用着生基質ユニットの前記基板に、設置個所に固定可能な固定部が設けられ、該固定部を介して上記海洋生物用着生基質ユニットが固定されていることを特徴とする人工海洋構造物。
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