JP6948168B2 - 化合物、分散液組成物、樹脂組成物、膜、積層構造体及び発光装置 - Google Patents

化合物、分散液組成物、樹脂組成物、膜、積層構造体及び発光装置 Download PDF

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Description

本発明は、化合物、分散液組成物、樹脂組成物、膜、積層構造体及び発光装置に関する。
従来から有機物の陽イオン、ハロゲン化物イオン、及び2価の金属イオンからなる有機−無機ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が知られている。近年、金属イオンの位置に第14族元素(Ge、Sn、及びPb)のイオンを有するペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の導電性及び発光特性に対する関心が高まっている。
特に前記2価の金属イオンがPb(II)の場合、紫外域から赤色のスペクトル領域の範囲で、室温での強い発光現象が観察されている(非特許文献1)。またハロゲン化物イオンの種類により、発光波長を調整することも可能になっている(非特許文献2)。
M.Era, A.Shimizu and M.Nagano, Rep.Prog.Polym.Phys.Jpn., 42,473−474(1999) L.Protesescu, S.Yakunin, M.I.Bodnarchuk, F.Krieg, R.Caputo, C.H.Hendon, R.X.Yang, A.Walsh, and M.V.Kovalenko, Nano Letter. 15, 3692−3696(2015)
しかしながら、上記非特許文献1又は2に記載のようなペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を発光材料として産業応用するためには、前記化合物のさらなる発光強度又は量子収率の向上が求められている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、発光強度が高いペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、及び前記化合物を含む量子収率が高い、該化合物を含む分散液組成物、及び前記化合物を含む樹脂組成物、これを用いた膜、積層構造体及び発光装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の本発明に至った。
すなわち、本発明の実施態様は、下記[1]〜[11]の発明を包含する。
[1]A、B、X、M1及びM2を成分とし、M1及びM2の合計モル数量をM1、M2及びBの合計モル数量で除したモル比[(M1+M2)/(M1+M2+B)]の値が0.7以下である、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物。
(Aは、前記ぺロブスカイト型結晶構造においてBを中心とする6面体の各頂点に位置する成分であって、セシウムイオン、有機アンモニウムイオン、又はアミジニウムイオンである。Bは、鉛イオンである。
M1は、6配位におけるイオン半径が0.5Å以上1.6Å以下である、1価の金属元素の陽イオンである。
M2は、6配位におけるイオン半径が0.3Å以上1.6Å以下である、3価の金属元素の陽イオンである。
M1及びM2の少なくとも一部は、前記ぺロブスカイト型結晶構造においてBの一部を置換する。
Xは、前記ぺロブスカイト型結晶構造においてBを中心とする8面体の各頂点に位置する成分を表し、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる1種以上の陰イオンである。)
[2]前記M1が、アルカリ金属元素の陽イオンである[1]に記載の化合物。
[3]前記M2が、希土類元素の陽イオンである[1]又は[2]に記載の化合物。
[4]前記M1がナトリウムイオン又はリチウムイオンであり、前記M2がランタンイオンである、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の化合物。
[5]前記Aが有機アンモニウムイオンである[1]〜[4]のいずれか1つに記載の化合物。
[6][1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物が液体中に分散している分散液組成物。
[7][1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物が樹脂中に分散している樹脂組成物。
[8][1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物を含む膜。
[9][1]〜[5]のいずれか1つに記載の化合物を含む層を有する積層構造体。
[10][9]に記載の積層構造体と、光源とを有する発光装置。
[11]液晶ディスプレイである、[10]に記載の発光装置。
本発明によれば、発光強度が高いペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、ならびに、量子収率が高い、前記化合物を含む分散液組成物及び前記化合物を含む樹脂組成物、これを用いた膜、積層構造体及び発光装置を提供することができる。
本実施形態の積層構造体の構成を模式的に示す断面図である。 本実施形態の液晶ディスプレイの構成を模式的に示す断面図である。
以下、実施形態を示して本発明を詳細に説明する。
<化合物>
本発明は、A、B、X、M1及びM2を構成成分とし、M1及びM2の合計モル数量をM1、M2及びBの合計モル数量で除したモル比[(M1+M2)/(M1+M2+B)]の値が0.7以下である、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物である。
本発明の化合物において、Aは、前記ぺロブスカイト型結晶構造においてBを中心とする6面体の各頂点に位置する成分であって、セシウムイオン、有機アンモニウムイオン、またはアミジニウムイオンである。Bは、鉛イオンである。M1は、6配位におけるイオン半径が0.5Å以上1.6Å以下である、1価の金属元素の陽イオンである。M2は、6配位におけるイオン半径が0.3Å以上1.6Å以下である、3価の金属元素の陽イオンである。M1及びM2の少なくとも一部は、前記ぺロブスカイト型結晶構造においてBの一部を置換する。Xは、前記ぺロブスカイト型結晶構造においてBを中心とする8面体の各頂点に位置する成分を表し、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる1種以上の陰イオンである。
本明細書において、セシウムイオン、有機アンモニウムイオン、又はアミジニウムイオンを「A成分」と記載する場合がある。
本明細書において、鉛イオンを「B成分」と記載する場合がある。
A、B、X、M1、及びM2を構成成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、特に限定されず、特に限定されず、3次元構造、2次元構造、疑似2次元構造のいずれの構造を有する化合物であってもよい。
3次元構造の場合には、ペロブスカイト型結晶構造は、AB(1−a−b)M1M2(3+δ)で表される。
2次元構造の場合には、ペロブスカイト型結晶構造は、A(1−a−b)M1M2(4+δ)で表される。
aは、M1の量をM1、M2、及びBの合計モル数量で除したモル比[(M1)/(M1+M2+B)]を表し、bは、M2の量をM1、M2、及びBの合計モル数量で除したモル比[M2/(M1+M2+B)]を表す。
δは、B及びMの電荷バランスに応じて適宜変更が可能な数であり、0以上0.7以下である。
通常、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の基本構造は、3次元構造又は2次元構造である。
3次元構造の場合、その組成式は、A’B’X’で表される。ここで、A’は有機カチオン又は無機カチオンを表し、B’は金属カチオンを表し、X’はハロゲン化物イオン又はチオシアン酸イオンを表す。
2次元構造の場合、その組成式は、A’B’X’で表される。ここで、A’、B’ 及びX’は、前述と同じ意味を表す。
上記3次元構造の場合、B’を中心とし、頂点をX’とする、B’X’で表される頂点共有八面体の3次元ネットワークを有する。
上記2次元構造の場合、B’を中心とし、頂点をX’とする、B’X’で表される8面体が同一平面上の4つの頂点のX’を共有することにより、2次元的に連なったBX’からなる層とA’からなる層が交互に積層された構造を形成する。
B’は、X’の八面体配位をとることができる金属カチオンである。
A’は、B’を中心とする六面体の各頂点に位置する。
本明細書において、ペロブスカイト型結晶構造は、X線回折パターンにより確認することができる。
前記3次元構造のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の場合、X線回折パターンにおいて、通常、2θ=12〜18°の位置に(hkl)=(001)に由来するピーク、又は2θ=18〜25°の位置に(hkl)=(100)に由来するピークが確認される。2θ=13〜16°の位置に、(hkl)=(001)に由来するピークが、又は2θ=20〜23°の位置に、(hkl)=(100)に由来するピークが確認されることがより好ましい。
前記2次元構造のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の場合、X線回折パターンにおいて、通常、2θ=1〜10°の位置に、(hkl)=(002)由来のピークが確認され、2θ=2〜8°の位置に、(hkl)=(002)由来のピークが確認されることがより好ましい。
本発明において、A、B、X、M1、及びM2、を成分とするペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、特に限定されず、3次元構造、2次元構造、疑似2次元構造のいずれの構造を有する化合物であってもよい。
3次元構造の場合には、ペロブスカイト型結晶構造は、AB(1−a−b)M1M2(3+δ)で表される。
2次元構造の場合には、ペロブスカイト型結晶構造は、A(1−a−b)M1M2(4+δ)で表される。
ここで、前記aは、前述のモル比[M1/(M1+M2+B)]を表し、前記bは、前述のモル比[M2/(M1+M2+B)]を表す。
前記δは、B、M1及びM2の電荷バランスに応じて適宜変更が可能な数であり、0以上0.7以下である。例えば、Aが1価の陽イオン、Bが2価の陽イオン(Pbイオン)、M1が1価の金属イオン、M2が3価の金属イオン及びXが1価の陰イオンである場合、前記化合物が中性(電荷が0)となるようにδを選択することができる。
本発明者らが鋭意検討した結果、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物において、複数あるA成分又はB成分のいずれか一方又は両方の一部を、M1成分、ならにび、M2成分で置換することにより、発光強度または量子収率を向上させることができることを見出した。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物におけるM1、及びM2の少なくとも一部は、Bで表される鉛イオンの一部を置換する成分を意味する。M1、及びM2は、前述の基本構造において、B成分が存在する位置に存在しているか、A成分が存在する位置に存在しているか、又は基本構造を構成する骨格の格子間隙に存在していてもよい。但し、M1、及びM2の少なくとも一部は、前記ペロブスカイト型結晶構造においてBの一部を置換していることが好ましい。
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物であることが好ましい。
APb(1−a−b)M1M2(3+δ) (0<a<0.7,0<b<0.7、0<a+b≦0.7、0≦δ≦0.7) …(1)
[一般式(1)中、Aはセシウムイオン、有機アンモニウムイオン、又はアミジニウムイオンであり、M1は、6配位におけるイオン半径が0.5Å以上1.6Å以下である、1価の金属元素の陽イオンである。M2は、6配位におけるイオン半径が0.3Å以上1.6Å以下である、3価の金属元素の陽イオンである。Xは塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる1種以上の陰イオンである。]
一般的にペロブスカイトの基本的構造形態は、ABX構造であり、頂点共有BX八面体の3次元ネットワークを有する。ABX構造中のB成分は、Xアニオンの八面体配位をとることができる金属カチオンである。Aカチオンは、B原子を中心とする六面体の各頂点に位置し、一般に有機カチオン又は無機カチオンである。ABX構造のX成分は、通常、ハロゲン化物イオンである。
本発明者らが鋭意検討した結果、上記ABXで表されるペロブスカイト型結晶構造の基本構造において、B成分の金属カチオンを鉛とし、前記3次元ネットワーク中に複数ある鉛イオンの一部を他の原子で置換することにより、発光強度が向上することができることを見出した。
本発明において、一般式(1)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、A、B成分として鉛、M1、M2及びXを主成分とする。ここで、M1及びM2は金属カチオンである鉛イオンの一部を置換する原子を意味する。尚、M1及びM2は前記基本構造でB成分(鉛イオン)が存在する位置を置換しているか、A成分が存在する位置を置換しているか、又は前記基本構造を構成する骨格の格子間隙に存在してもよい。但し、M1、及びM2の少なくとも一部は、前記ペロブスカイト型結晶構造においてBの一部を置換していることが好ましい。
以下、本発明に係る、A、B、X、M1及びM2を構成成分とするペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物について説明する。
〔A〕
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物において、Aはセシウムイオン、有機アンモニウムイオン、またはアミジニウムイオンである。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物において、Aがセシウムイオン、炭素原子数が3以下の有機アンモニウムイオン、又は炭素原子数が3以下のアミジニウムイオンである場合、一般的にペロブスカイト型結晶構造は、AB(1−a−b)M1で表される、3次元構造を有する。
Aで表される有機アンモニウムイオンとしては、例えば、下記一般式(A1)で表される有機アンモニウムイオンが挙げられる。
Figure 0006948168
一般式(A1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基としてアミノ基を有していてもよいアルキル基、又は置換基としてアミノ基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。但し、R〜Rの全てが水素原子となることはない。
〜Rで表されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、置換基としてアミノ基を有していてもよい。
〜Rで表されるアルキル基の炭素原子数は、通常1〜20であり、1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
〜Rで表されるシクロアルキル基は、置換基としてアミノ基を有していてもよい。
〜Rで表されるシクロアルキル基の炭素原子数は、通常3〜30であり、3〜11であることが好ましく、3〜8であることがより好ましい。
〜Rで表される基としては、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
一般式(A1)に含まれるアルキル基及びシクロアルキル基の数を少なくすること、並びにアルキル基およびシクロアルキル基の炭素原子数を小さくすることにより、発光強度が高い3次元構造のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を得ることができる。
アルキル基又はシクロアルキル基の炭素原子数が4以上の場合、2次元、及び/又は擬似二次元(quasi―2D)のペロブスカイト型の結晶構造を一部あるいは全体に有する化合物を得ることができる。2次元のペロブスカイト型結晶構造が無限大に積層すると3次元のペロブスカイト型結晶構造と同等になる(参考文献:P.P.Boixら、J.Phys.Chem.Lett.2015,6,898−907など)。
〜Rに含まれる炭素原子の合計数は1〜4であることが好ましい。R〜Rで表されるアルキル基およびシクロアルキル基に含まれる炭素原子数の合計数は3〜4であることが好ましい。Rが炭素原子数1〜3のアルキル基であり、R〜Rが水素原子であることがより好ましい。
Aは、CHNH (メチルアンモニウムイオンともいう。)、CNH (エチルアンモニウムイオンともいう) 又はCNH (プロピルアンモニウムイオンともいう)であることが好ましく、CHNH またはCNH であることより好ましく、CHNH であることがさらに好ましい。
Aで表されるアミジニウムイオンとしては、例えば、下記一般式(A2)で表されるアミジニウムイオンが例として挙げられる。
(RN=CH−NR・・・(A2)
一般式(A2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換基としてアミノ基を有していてもよいアルキル基、又は置換基としてアミノ基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。
〜Rで表されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、置換基としてアミノ基を有していてもよい。
〜Rで表されるアルキル基の炭素原子数は、通常1〜20であり、1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
〜Rで表されるシクロアルキル基は、置換基としてアミノ基を有していてもよい。
〜Rで表されるシクロアルキル基の炭素原子数は、通常3〜30であり、3〜11であることが好ましく、3〜8であることがより好ましい。
〜Rで表される基としては、水素原子又はアルキル基が好ましい。
一般式(A2)に含まれる、アルキル基及びシクロアルキル基の数を少なくすること、並びにアルキル基及びシクロアルキル基の炭素原子数を小さくすることにより、発光強度が高い3次元構造のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を得ることができる。
アルキル基又はシクロアルキル基の炭素原子数が4以上の場合、2次元、及び/又は擬似2次元(quasi―2D)のペロブスカイト型結晶構造を一部あるいは全体に有する化合物を得ることができる。また、R〜Rで表されるアルキル基に含まれる炭素原子の合計数は1〜4であることが好ましく、R〜Rで表されるシクロアルキル基に含まれる炭素原子の合計数は3〜4であることが好ましく、Rが炭素原子数1〜3のアルキル基であり、R〜Rが水素原子であることがより好ましい。
〔M1、M2〕
M1およびM2は、A成分及び/又はB成分の一部を置換する成分を意味し、前述のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の基本構造において、基本構造を構成する骨格の格子間隙に存在していてもよい。M1は、6配位におけるイオン半径が0.5Å以上1.6Å以下である、金属原子の1価の陽イオンである。
M2は、6配位におけるイオン半径が0.3Å以上1.6Å以下である、金属原子の3価の陽イオンである。M2の6配位におけるイオン半径は、0.5Å以上1.3Å以下であることが好ましい。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物のペロブスカイト型結晶構造を維持させ、十分な発光強度を得る観点から、M1としては、例えば、ナトリウムイオン(6配位におけるイオン半径;1.02Å)、リチウムイオン(6配位におけるイオン半径;0.76Å)、ルビジウムイオン(6配位におけるイオン半径;1.52Å)、カリウムイオン(6配位におけるイオン半径;1.38Å)、銀イオン(6配位におけるイオン半径;1.15Å)、銅イオン(6配位におけるイオン半径;0.77Å)等の陽イオンが挙げられる。
なかでも、M1は、アルカリ金属元素のイオンであることが好ましく、ナトリウムイオン、またはリチウムイオンであることがより好ましい。
M2としては、例えば、アルミニウムイオン(6配位におけるイオン半径;0.54Å)、ビスマスイオン(6配位におけるイオン半径;1.03Å)、ランタンイオン(6配位におけるイオン半径;1.03Å)、バナジウムイオン(6配位におけるイオン半径;0.64Å)、セリウムイオン(6配位におけるイオン半径;1.01Å)、ジスプロシウムイオン(6配位におけるイオン半径;0.91Å)、インジウムイオン(6配位におけるイオン半径;0.80Å)等の元素の陽イオンが挙げられる。
なかでも、M2は、希土類元素のイオン、又はアルミニウムイオンであることが好ましく、ランタンイオン、又はアルミニウムイオンであることがより好ましく、ランタンイオンであることがさらに好ましい。
〔a、b〕
aは、[M1/(B+M1+M2)]を表し、[M1/(B+M1+M2)]は、M1のモル数量をM1、M2およびBの合計モル数量で除したモル比を表す。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の結晶構造を維持させ、十分な発光強度および量子収率を得る観点から、aは0より大きく0.7未満である。ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の結晶構造を維持させ、十分な発光強度および量子収率を得る観点から、aは、0.001以上0.7未満であることが好ましく、0.005以上0.5以下であることがより好ましく、0.007以上0.3以下であることがさらに好ましく、0.01以上0.1以下であることが特に好ましく、0.01以上0.05以下であることがもっとも好ましい。
bは、[M2/(B+M1+M2)]を表し、[M2/(B+M1+M2)]は、M2のモル数量をM1、M2およびBの合計モル数量で除したモル比を表す。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の結晶構造を維持させ、十分な発光強度および量子収率を得る観点から、bは0より大きく0.7未満である。ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の結晶構造を維持させ、十分な発光強度および量子収率を得る観点から、bは、0.001以上0.7未満であることが好ましく、0.005以上0.5以下であることがより好ましく、0.007以上0.3以下であることがさらに好ましく、0.01以上0.1以下であることが特に好ましく、0.01以上0.05以下であることがもっとも好ましい。
a+bは、[(M1+M2)/(B+M1+M2)]を表し、[(M1+M2)/(B+M1+M2)]は、M1およびM2の合計モル数量をM1、M2およびBの合計モル数量で除したモル比を表す。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の結晶構造を維持させ、十分な発光強度および量子収率を得る観点から、a+bは、0.7以下である。ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の結晶構造を維持させ、十分な発光強度および量子収率を得る観点から、a+bは、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましい。
本発明において、a、及びbの値は、下記≪aの算出方法≫、及び≪bの算出方法≫に記載している通り、合成後の化合物中のM1、M2及びBのモル数量をICP−MSにより測定した値から算出した値である。
〔X〕
Xは、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる1種以上の陰イオンである。なかでも塩化物イオン、臭化物イオンが好ましく用いられる。Xが、塩化物イオン又は臭化物イオンを含有する場合、Xの合計モル数量に対する塩化物イオン又は臭化物イオンの含有量は、10モル%以上100モル%以下が好ましく、30モル%以上100モル%以下がより好ましく、70モル%以上100モル%以下がさらに好ましく、80モル%以上100モル%以下が特に好ましい。
Xが2種以上のハロゲン化物イオンを含む場合、塩化物イオン又は臭化物イオンの含有率は、Xの合計モル数量に対して、10モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が特に好ましい。
なかでも、Xは臭化物イオンを含むことが好ましい。Xが2種以上のハロゲン化物イオンである場合、前記ハロゲン化物イオンの含有比率は、発光波長により適宜選ぶことができる。本発明の別の側面としては、Xが塩化物イオン及び臭化物イオンを含むことが好ましく、Xの合計モル数量に対して塩化物イオンの含有量が20モル%以上40モル%以下、臭化物イオンの含有量が50モル%以上80モル%以下であることが好ましい。
本発明のさらに別の側面としては、Xが塩化物イオン及び臭化物イオンを含むことが好ましく、[臭化物イオン/塩化物イオン]で表されるモル比が1.5〜2.0であることが好ましい。
Xとして2種以上のイオンを選択する場合には、臭化物イオンと塩化物イオンとの組み合わせ、又は、臭化物イオンとヨウ化物イオンとの組み合わせが好ましい。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物であって、AB(1−a−b)M1M2(3+δ)で表される、3次元構造のペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物の具体例としては、CHNHPb(1−a−b)NaLaBr(3+δ)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7)、CHNHPb(1−a−b)NaAlBr(3+δ)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7)、CHNHPb(1−a−b)LiLaBr(3+δ)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、CsPb(1−a−b)NaLaBr(3+δ)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7)、CsPb(1−a−b)NaAlBr(3+δ)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7)、CsPb(1−a−b)LiLaBr(3+δ)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7)、CHNHPb(1−a−b)NaLaBr(3+δ-y)(0<a+b≦0.7,0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<3)、CHNHPb(1−a−b)NaAlBr(3+δ-y)y(0<a+b≦0.7,0<a, 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<3)、CHNHPb(1−a−b)LiLaBr(3+δ-y)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<3)、CHNHPb(1−a−b)NaLabBr(3+δ-y)Cl(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<3)、CHNHPb(1−a−b)NaAlBr(3+δ-y)Cl(0<a+b≦0.7,0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<3)、CHNHPb(1−a−b)LiLaBr(3+δ-y)Cl(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<3)、(HN=CH−NH)Pb(1−a−b)NaLabBr(3+δ)(0<a+b≦0.7,0<a, 0<b、 − 0.7< δ < 0.7)、
(HN=CH−NH)Pb(1−a−b)NaLaBr(3+δ-y)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<3)、(HN=CH−NH)Pb(1−a−b)NaLabBr(3+δ-y)Cly(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<3)、等が好ましいものとして挙げられる。但し、前記(3+δ―y)は必ず0以上となる。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物であって、A(1−a−b)M1M2(4+δ)で表される、2次元構造のペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物の具体例としては、(CNH)Pb(1−a−b)NaLaBr(4+δ)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7)、(CNH)Pb(1−a−b)NaAlBr(4+δ)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7)、(CNH)Pb(1−a−b)LiLaBr(4+δ)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7)、(C15NH)Pb(1−a−b)NaLaBr(4+δ)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7)、(C15NH)Pb(1−a−b)NaAlBr(4+δ)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7)、(C15NH)Pb(1−a−b)LiLaBr(4+δ)(0<a+b≦0.7、0<a、 0<b、 − 0.7< δ < 0.7)、(CNH)Pb(1−a−b)NaLaBr(4+δ-y)(0<a+b≦0.7,0<a, 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<4)、(CNH)Pb(1−a−b)NaAlBr(4+δ-y)(0<a+b≦0.7,0<a, 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<4)、(CNH)Pb(1−a−b)LiLaBr(4+δ-y)(0<a+b≦0.7,0<a, 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<4)、(CNH)Pb(1−a−b)NaLaBr(4+δ-y)Cl(0<a+b≦0.7,0<a, 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<4)、(CNH)Pb(1−a−b)NaAlBr(4+δ-y)Cl(0<a+b≦0.7,0<a, 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<4)、(CNH)Pb(1−a−b)LiLaBr(4+δ-y)Cl(0<a+b≦0.7,0<a, 0<b、 − 0.7< δ < 0.7、 0<y<4)、等が好ましいものとして挙げられる。
≪発光スペクトル≫
本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、可視光波長領域に蛍光を発する発光体であり、Xが臭化物イオンの場合は、波長範囲が通常480nm以上の範囲に発光ピークがある蛍光を発し、500nm以上が好ましく、520nm以上がより好ましい。また、通常700nm以下であり、600nm以下が好ましく、580nm以下がより好ましい。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
本発明の別の側面としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物中のXが臭化物イオンの場合、発する蛍光のピークは、通常480nm以上700nm以下であり、500nm以上600nm以下であることが好ましく、520nm以上580nm以下であることがより好ましい。
Xがヨウ化物イオンの場合は、通常520nm以上であり、530nm以上が好ましく、540nm以上がより好ましい。また、通常800nm以下であり、750nm以下が好ましく、730nm以下の波長範囲の範囲にピークがある蛍光を発するものがより好ましい。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
本発明の別の側面としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物中のXがヨウ化物イオンの場合、発する蛍光のピークは、通常520nm以上800nm以下であり、530nm以上750nm以下であることが好ましく、540nm以上730nm以下であることがより好ましい。
Xが塩化物イオンの場合は、通常300nm以上であり、310nm以上が好ましく、330nm以上がより好ましい。また、通常600nm以下であり、580nm以下が好ましく、550nm以下の波長範囲の範囲にピークがある蛍光を発するものがより好ましい。
上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
本発明の別の側面としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物中のXが塩化物イオンの場合、発する蛍光のピークは、通常300nm以上600nm以下であり、310nm以上580nm以下であることが好ましく、330nm以上550nm以下であることがより好ましい。
本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の最大発光強度は、蛍光光度計を用いて測定した可視光波長領域の最大強度と、紫外可視吸光光度計を用いて測定した励起光の透過率から求めることができる。
蛍光光度計としては、例えば、島津製作所製蛍光分光光度計RF−1500や、分光蛍光光度計FT−6500を用いることができる。紫外可視吸光光度計としては、例えば、日本分光製の紫外可視吸光光度計V−670(日本分光製)を用いることができる。
本発明において前記化合物の最大発光強度は、下記式(S)に従って補正した値とすることができる。下記式(S)中、Pmaxは、可視光波長領域の最大強度であり、Epは、励起光の透過率(%)を示す。
Pmax/(100−Ep) ×100 …(S)
本発明の1つの側面は、X成分として臭化物イオンを含む本発明の化合物であって、波長530nm付近の最大発光強度が10以上である化合物である。
前記波長530nm付近の最大発光強度は、下記式(S)−1で求めることができる。
[波長530nm付近の最大発光強度/(100−波長430nmの透過率)]×100… (S)−1
式(S)−1中、波長530nm付近の最大強度とは、波長520〜540nmの間に確認された最も強度の高いピークの発光強度を意味する。
前記波長500nm付近の最大発光強度は、下記式(S)−2で求めることができる。
[波長500nm付近の最大発光強度/(100−波長430nmの透過率)]×100… (S)−2
式(S)−2中、波長500nm付近の最大強度とは、波長490〜510nmの間に確認された最も強度の高いピークの発光強度を意味する。
本発明のさらに別の側面は、X成分として臭化物イオン及びヨウ化物イオンを含む本発明の化合物であって、波長540nm付近の最大発光強度が10以上である化合物である。
前記540nm付近の最大発光強度は、下記式(S)−3で求めることができる。
[波長540nm付近の最大発光強度/(100−波長430nmの透過率)]×100… (S)−3
式(S)−3中、波長500nm付近の最大強度とは、波長530〜550nmの間に確認された最も強度の高いピークの発光強度を意味する。
本発明において、a及びbの値は、下記≪aの算出方法≫、及び≪bの算出方法≫に記載の、合成後の化合物をICP−MSを用いて測定した値から算出した値である。
なお、a及びbの値は、簡易的に、本発明の化合物を合成する際に、本発明の化合物におけるa及びbが所望の値になるように調整した仕込み比の値から算出することもできる。
≪aの算出方法≫
本発明に係る化合物中において、上述のモル比(M1)/(M1+M2+B)の値は、ICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)を用いて測定する。ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を硝酸等を用いて溶解した後に測定を行う。
具体的には、モル比[M1/(M1+M2+B)]の値は、下記式(T)に従って算出した値とする。下記式(T)中、M1molは、ICP−MSで測定したM1のモル数であり、M2molは、ICP−MSで測定したM2のモル数であり、Pbmolは、ICP−MSで測定したPbのモル数を示す。
[M1/(M1+M2+B)]=(M1mol)/(M1mol+M2mol+Pbmol) …(T)
≪bの算出方法≫
本発明に係る化合物中において、上述のモル比(M2)/(M1+M2+B)の値は、ICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)を用いて測定する。ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を硝酸等の溶媒を用いて溶解した後に測定を行う。
具体的には、モル比[M2/(M1+M2+B)]の値は、下記式(U)に従って算出した値とする。下記式(T)中、M1molは、ICP−MSで測定したM1のモル数であり、M2molは、ICP−MSで測定したM2のモル数であり、Pbmolは、ICP−MSで測定したPbのモル数を示す。
[M2/(M1+M2+B)]=(M2mol)/(M1mol+M2mol+Pbmol) …(U)
本発明においては、合成後の化合物中のM1のPbとM2に対する置換量、及びM2のPbとM1に対する置換量をより正確に算出できる観点から、前記≪aの算出方法≫、及び≪bの算出方法≫により算出した値を「a」、及び「b」とすることが好ましい。なお、a、及びbの値は、簡易的に、本発明の化合物を合成する際に、本発明の化合物におけるa、及びbが所望の値になるように調整した仕込み比の値から算出することもできる。
<組成物>
本発明は、上述のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物と、溶媒又は樹脂のいずれか一方又は両方とを含む組成物を提供する。
当該組成物は、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物以外のその他の成分を有していてもよい。その他の成分としては、例えば、若干の不純物、並びにA、B、X、M1及びM2を成分とするアモルファス構造を有する化合物が挙げられる。
当該組成物としては、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が媒質中に溶解している組成物、及び本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が媒質中に分散している組成物が挙げられる。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が媒質中に分散している組成物としては、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が液体中に分散している分散液組成物、および上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が樹脂中に分散している樹脂組成物が挙げられる。不純物としては、例えば、A、B、M1及び/又はM2を含むハロゲン化物、B、M1及び/又はM2の酸化物や複合酸化物、並びに、A、B、X、M1及び/又はM2を含むその他の化合物が挙げられる。
<分散液組成物>
本発明に係る分散液組成物は、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物と、液体とを含み、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が液体中に分散している分散液組成物である。本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を分散液組成物にすることで、さらに量子収率を向上させることができる。本明細書において「液体」とは、1気圧、25℃において液体状態をとる物質のことをいう。
本明細書において「液体中に分散している」とは、粒子が液体中に浮遊あるいは懸濁している状態のことをいう。前記粒子の平均粒子径としては、例えば1nm以上1000nm以下が例として挙げられる。
分散液組成物は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物及び液体以外のその他の成分を含んでいてもよい。当該成分としては、例えば、不純物、A、B、X、M1及び/又はM2を構成成分とするアモルファス構造を有する化合物、並びにキャッピング配位子が挙げられる。
不純物としては、たとえば、A、B、M1及び/又はM2を含むハロゲン化物、B、M1又はM2の何れか一方又は両方の酸化物や複合酸化物、ならびに、A、B、X、M1又はM2の何れか一方又は両方を含むその他の化合物が挙げられる。その他の成分は、分散液組成物全体の総質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
分散液組成物に含まれる液体(但し、樹脂は除く。)は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を分散させることができる液体であれば特に限定されない。
分散液組成物に含まれる液体(但し、樹脂は除く。)は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解し難いものが好ましい。
分散液組成物に含まれる液体(但し、樹脂は除く。)としては、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等のエステル;γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のアルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド基を有する有機溶媒;アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭化水素基を有する有機溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒;ジメチルスルホキシド、1−オクタデセン等が挙げられる。
これらの中でもメチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等のエステル;γ−ブチロラクトン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル、アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボート基を有する有機溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒は、極性が低く本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解し難いと考えられるため好ましく、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系有機溶媒がより好ましい。
本発明に係る分散液組成物は、キャッピング配位子を含んでいてもよい。キャッピング配位子とは、粒子(本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物)の表面に吸着して分散溶媒中に安定して分散させるための化合物であり、キャッピング配位子としては、例えば、後述する一般式(A3)で表されるアンモニウム塩、及び(A4)で表されるカルボキシ基を有する化合物が挙げられる。本発明に係る分散液組成物は、一般式(A3)で表されるアンモニウム塩、及び一般式(A4)で表されるカルボキシ基を有する化合物のいずれか一方を含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。
分散液組成物は、一般式(A3)で表されるアンモニウム塩を含んでいてもよい。
Figure 0006948168
一般式(A3)中、R〜R12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基としてアミノ基を有していてもよいアルキル基、置換基としてアミノ基を1つ有していてもよい不飽和炭化水素基、又は置換基としてアミノ基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。
〜R12で表されるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、置換基としてアミノ基を有していてもよい。
〜R12で表されるアルキル基の炭素原子数は、通常1〜20であり、5〜20であることが好ましく、8〜20であることがより好ましい。
〜R12で表される不飽和炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、置換基としてアミノ基を1つ有していてもよい。R〜R12で表される不飽和炭化水素基の炭素原子数は、通常2〜20であり、5〜20であることが好ましく、8〜20であることがより好ましい。
〜R12で表されるシクロアルキル基は、置換基としてアミノ基を有していてもよい。
〜R12で表されるシクロアルキル基の炭素原子数は、通常3〜30であり、3〜20であることが好ましく、3〜11であることがより好ましい。
〜R12は、水素原子、アルキル基、又は不飽和炭化水素基であることが好ましい。不飽和炭化水素基としては、アルケニル基が好ましい。
一般式(A3)で表されるアンモニウム塩は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の表面に吸着していてもよく、溶媒中に分散していてもよい。前記アンモニウム塩のカウンターアニオンとしては、特に制限は無いがBr、Cl、I、Fのハロゲン化物イオンが挙げられる。
一般式(A3)で表されるアンモニウム塩としては、n−オクチルアミンの塩、オレイルアミンが好ましい。
分散液組成物は、(A4)で表されるカルボキシ基を有する化合物を含んでいてもよい。
13―COH・・・(A4)
一般式(A4)中、R13は、置換基としてカルボキシ基を1つ有していてもよいアルキル基、置換基としてカルボキシ基を1つ有していてもよい不飽和炭化水素基、又は置換基としてカルボキシ基を1つ有していてもよいシクロアルキル基を表す。
13で表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、置換基としてカルボキシ基を1つ有していてもよい。R13で表されるアルキル基の炭素原子数は、通常1〜20であり、5〜20であることが好ましく、8〜20であることがより好ましい。
13で表される不飽和炭化水素基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、置換基としてカルボキシ基を1つ有していてもよい。R13で表される不飽和炭化水素基の炭素原子数は、通常2〜20であり、5〜20であることが好ましく、8〜20であることがより好ましい。
13で表されるシクロアルキル基は、置換基としてカルボキシ基を1つ有していてもよい。
13で表されるシクロアルキル基の炭素原子数は、通常3〜30であり、3〜20であることが好ましく、3〜11であることがより好ましい。
13はアルキル基、又は不飽和炭化水素基であることが好ましい。不飽和炭化水素基としては、アルケニル基が好ましい。
(A4)で表されるカルボキシ基を有する化合物は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の表面に吸着していてもよく、溶媒中で分散していてもよい。
(A4)で表されるカルボキシ基を有する化合物としては、オレイン酸が好ましい。
分散液組成物に含まれる、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を凝集させにくくする観点、及び濃度消光を防ぐ観点から、前記分散液組成物の総質量に対して、50質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。また、十分な量子収率を得る観点から、1質量ppm以上とすることが好ましく、10質量ppm以上とすることがより好ましい。
本発明の別の側面としては、分散液組成物に含まれる、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の含有量は、前記分散液組成物の総質量に対して、1質量ppm以上50質量%以下とすることが好ましく、10質量ppm以上10質量%以下とすることがより好ましい。
本明細書において、分散液組成物の総質量に対する、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の含有量は、例えば、ICP−MS、ICP-AES、イオンクロマトグラフ等によって、前記ペロブスカイト型結晶構造を構成する元素を分析する事で測定する事ができ、また前記ペロブスカイト型結晶構造を構成する元素の一部を測定し、モル比から算出することにより測定することもできる。
分散液組成物中に分散している、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の平均粒径は、特に限定されるものではないが、十分に結晶構造を維持させる観点から、平均粒径が1nm以上であることが好ましく、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることがさらに好ましい。また、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を沈降させにくくする観点から、平均粒径が10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、500nm以下であることがさらに好ましい。
本発明の別の側面としては、分散液組成物に分散している、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の平均粒径が1nm〜10μmであることが好ましく、2nm〜1μmであることがより好ましく、3nm〜500nmであることがさらに好ましい。
本明細書において、分散液組成物中に分散している、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の平均粒径は、例えば、TEM、SEMにより測定することができる。
分散液組成物に含まれる本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒度分布は、特に限定されるものではないが、十分に結晶構造を維持させる観点から、メディアン径のD50が3nm以上であることが好ましく、4nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることがさらに好ましく、また、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を沈降させにくくする観点から、5μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。本発明の別の側面としては、分散液組成物に含まれる前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒度分布においてメディアン径のD50が3nm以上5μm以下であることが好ましく、4nm以上500nm以下であることがより好ましく、5nm以上100nm以下であることが更に好ましい。
本明細書において、分散液組成物中に分散している、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒度分布は、例えば、TEM、SEMにより測定することができる。
≪aの算出≫
本発明に係る分散液組成物中において、上述のM1のモル数量をM1、M2及びBの合計モル数量で除したモル比[M1/(M1+M2+B)]の値は、ICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)を用いて測定することができる。
分散液組成物中のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は硝酸、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒を用いて溶解した後に測定することができる。具体的な算出方法は、前記の本発明に係る化合物の算出方法と同様である。
≪bの算出≫
本発明に係る分散液組成物中において、上述のM2のモル数量をM2、M2及びBの合計モル数量で除したモル比[M2/(M1+M2+B)]の値は、ICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)を用いて測定することができる。
分散液組成物中のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は硝酸、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒を用いて溶解した後に測定することができる。具体的な算出方法は、前記の本発明に係る化合物の算出方法と同様である。
≪量子収率の測定≫
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物の量子収率は、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス製、商品名C9920−02、測定条件:励起光450nm、室温、大気下)を用いて測定することができる。分散液組成物の量子収率は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が前記分散液組成物の総質量に対して、100〜2000ppm(μg/g)の濃度となるように調節して測定することができる。
<樹脂組成物>
本発明に係る樹脂組成物は、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物と、樹脂とを含み、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が樹脂中に分散している樹脂組成物である。本明細書において「樹脂」とは、有機高分子化合物を意味する。
本明細書において「樹脂中に分散している」とは、粒子が樹脂中に浮遊あるいは懸濁している状態のことをいう。
樹脂組成物は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物及び樹脂以外のその他の成分を有していてもよい。その他の成分としては、前記の本発明に係る分散液組成物が含んでいてもよいその他の成分と同様である。その他の成分は、分散液組成物の総質量に対して10質量%以下であることが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物の形態は特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜決定することができる。ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が分散している樹脂組成物を膜状にしたものでもよく、板状に成形したものでもよい。
本発明に係る樹脂組成物において、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が分散している樹脂は、特に限定されるものではないが、前記樹脂組成物を製造する温度において、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が低いものが好ましい。
前記樹脂としては、例えば、ポリスチレン、メタクリル樹脂、等が挙げられる。
樹脂組成物に含まれる、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の量は、特に限定されるものではないが、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を凝集させにくくする観点、及び濃度消光を防ぐ観点から、前記樹脂組成物の総質量に対して50質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましく、また、十分な量子収率を得る観点から、1質量ppm以上とすることが好ましく、10質量ppm以上とすることがより好ましい。本発明の別の側面としては、樹脂組成物に含まれる、前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の含有量は、前記樹脂組成物の総質量に対して、1質量ppm以上50質量%以下とすることが好ましく、10質量ppm以上10質量%以下とすることがより好ましい。
樹脂組成物に分散している、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の平均粒径は、特に限定されるものではないが、前記の分散液組成物中に分散している、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の平均粒径と同様である。
樹脂組成物に含まれる本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒度分布は、特に限定されるものではないが、前記の分散液組成物に含まれる本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒度分布と同様である。
≪aの算出≫
本発明に係る樹脂組成物中において、上述のM1のモル数量をM1、M2及びBの合計モル数量で除したモル比[M1/(M1+M2+B)]の値は、前記の本発明に係る分散液組成物と同様に、ICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)を用いて測定することができる。
≪bの算出≫
本発明に係る樹脂液組成物中において、上述のM2のモル数量をM1、M2及びBの合計モル数量で除したモル比[M2/(M1+M2+B)]の値は、前記の本発明に係る分散液組成物と同様に、ICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)を用いて測定することができる。
≪量子収率の測定≫
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む樹脂組成物の量子収率は、前記の本発明に係る分散液組成物と同様に、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス製、商品名C9920−02、測定条件:励起光450nm、室温、大気下)を用いて測定することができる。
<ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の製造方法>
本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、溶液を用いた自己組織化反応によって合成することができる。
例えば、Pb及び上述のXを含む化合物と、上述のM1、M2及び上述のXを含む化合物と、上述のA及び上述のXを含む化合物とを溶媒に溶解させた溶液を基板に塗布し、溶媒を除去することにより、本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を合成することができる。
その他の方法としては、Pb及び上述のXを含む化合物と、上述のM1、M2及び上述のXを含む化合物とを溶媒に溶解させた溶液を基板に塗布し、溶媒を除去することで塗布膜を形成し、上述のA及び上述のXを含む化合物を溶媒に溶解させた溶液を上記塗布膜上に塗布し、溶媒を除去することにより、本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を合成することができる。
合成する際、aとb、及びδが所望の値になるように、上記配合する化合物の種類とその量を調整すればよい。
塗布方法としては、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等が挙げられる。
溶媒を除去する方法としては、減圧、乾燥及び送風のいずれか1以上を行い、溶媒を揮発させることが挙げられる。乾燥は常温下で行ってもよく、加熱して行ってもよい。加熱する場合の温度は、乾燥にかかる時間と基板の耐熱性とを考慮して適宜決定することができるが、50〜200℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。
化合物の製造方法に用いられる溶媒は、上述のA、B、M1、M2、X、及びその他の成分を溶解し得るものであれば特に限定されるものではなく、例えば、前記の分散液組成物に含まれる液体(但し、樹脂は除く。)と同様のものが挙げられる。 なかでも上述のA、B、M1、M2、X、及びその他の成分の溶解性を確保し易い観点から、N‐メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド基を有する有機溶媒、ジメチルスルホキシドが好ましく用いられ、とりわけN,N−ジメチルホルムアミドが好ましく用いられる。
上記有機溶媒は、分岐構造又は環状構造を有していてもよく、−O−、−CO−、−COO−、−OH等の官能基を複数有していてもよく、水素原子がフッ素等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
前記ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の製造方法において用いられる溶液中に含まれる溶媒の量は、前記溶液の総質量に対して50質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。
<分散液組成物の製造方法の第1実施形態>
本発明に係る分散液組成物は、既知文献(ACSNano,2015,9,4533−4542)を参考に、以下に述べる方法によって製造することができる。
例えば、本発明に係る分散液組成物の製造方法としては、BおよびXを含む化合物と、M1、M2及びXを含む化合物と、A及びXを含む化合物とを溶媒に溶解させ、溶液を得る工程と、得られた溶液と、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が、溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒とを混合する工程とを含む製造方法、並びに、B及びXを含む化合物と、M1、M2及びXを含む化合物と、A及びXを含む化合物とを高温の溶媒に添加して溶解させ、溶液を得る工程と、得られた溶液を冷却する工程とを含む製造方法が挙げられる。
以下、B及びXを含む化合物と、M1、M2及びXを含む化合物と、A及びXを含む化合物とを溶媒に溶解させ、溶液を得る工程と、得られた溶液と、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が、溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒とを混合する工程とを含む製造方法について説明する。
なお、溶解度とは、混合する工程をおこなう温度における溶解度を意味する。
当該製造方法は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を安定して分散できる観点から、キャッピング配位子を加える工程を含んでいることが好ましい。キャッピング配位子は、前述の混合する工程の前に添加する事が好ましく、A、B、X、M1及びM2を溶解させた溶液にキャッピング配位子を添加してもよいし、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が、溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒に添加してもよく、A、B、X、M1及びM2を溶解させた溶液、及びペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が、溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒の両方に添加してもよい。
当該製造方法は、前述の混合する工程のあと、遠心分離、ろ過などの手法により粗大粒子を除去する工程を含んでいていることが好ましい。当該除去する工程によって除去する粗大粒子のサイズは、好ましくは10μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは500nm以上である。
前述の、溶液と、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が、溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒とを混合する工程は、(a)溶液を、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒に滴下する工程であってもよく、(b)溶液に、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒を滴下する工程であってもよいが、分散性を高める観点から(a)であることが好ましい。
滴下する際には攪拌を行う事が分散性を高める観点から好ましい。
溶液と、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が、溶液を得る工程で用いた溶媒よりも低い溶媒とを混合する工程において、温度には特に制限は無いが、析出し易さを確保する観点から、0〜40℃の範囲であることが好ましく、10〜30℃の範囲であることがより好ましい。
製造する際、aとb、及びδが所望の値になるように、上記配合する化合物の種類とその量を調整すればよい。
当該製造方法で用いるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度の異なる2種類の溶媒としては、特に限定されるものではないが、たとえば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド基を有する有機溶媒;ジメチルスルホキシド、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等のエステル;γ−ブチロラクトン、N‐メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル;アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボート基を有する有機溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒からなる群より選ばれる2種の溶媒が挙げられる。
当該製造方法に含まれる、溶液を得る工程で用いる溶媒としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が高い溶媒が好ましく、例えば、室温(10℃〜30℃)で当該工程をおこなう場合、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド基を有する有機溶媒;ジメチルスルホキシドが挙げられる。
当該製造方法に含まれる、混合する工程で用いる溶媒としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対する溶解度が低い溶媒が好ましく、例えば、室温(10℃〜30℃)で当該工程をおこなう場合、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等のエステル;γ−ブチロラクトン、N‐メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル;アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボート基を有する有機溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒が挙げられる。
溶解度の異なる2種類の溶媒において、溶解度の差は100μg/溶媒100g〜90g/溶媒100gであることが好ましく、1mg/溶媒100g〜90g/溶媒100gであることがより好ましい。溶解度の差を100μg/溶媒100g〜90g/溶媒100g)にする観点から、例えば、室温(10℃〜30℃)で混合する工程をおこなう場合、溶液を得る工程で用いる溶媒が、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド基を有する有機溶媒やジメチルスルホキシドであり、混合する工程で用いる溶媒が塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒であることが好ましい。
以下、BおよびXを含む化合物と、M1、M2およびXを含む化合物と、AおよびXを含む化合物とを高温の溶媒に添加して溶解させ、溶液を得る工程と、得られた溶液を冷却する工程とを含む製造方法について説明する。
当該製造方法では、温度の差による溶解度の差によって本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の粒子を析出させ、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物が溶媒中に分散している分散液組成物を製造することができる。
当該製造方法は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を安定して分散できる観点から、キャッピング配位子を加える工程を含んでいることが好ましい。
当該製造方法は、冷却する工程のあと、遠心分離、ろ過などの手法により粗大粒子を除去する工程を含んでいていることが好ましい。上記除去工程によって除去する粗大粒子のサイズは、好ましくは10μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは500nm以上である。
ここで、高温の溶媒とは、BおよびXを含む化合物と、M1、M2およびXを含む化合物と、AおよびXを含む化合物とが、溶解する温度の溶媒であればよく、例えば、60〜600℃の溶媒であることが好ましく、80〜400℃の溶媒であることがより好ましい。
冷却する温度としては、−20〜50℃であることが好ましく、0〜30℃であることがより好ましい。
製造する際、aとb、及びδが所望の値になるように、上記配合する化合物の種類とその量を調整すればよい。
当該製造方法に用いる溶媒としては、BおよびXを含む化合物と、M1、M2およびXを含む化合物と、AおよびXを含む化合物とを溶解しうる溶媒であれば、特に限定されるものではないが、たとえば、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等のエステル;γ−ブチロラクトン、N‐メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のアルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド基を有する有機溶媒;アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボート基を有する有機溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒;ジメチルスルホキシドが挙げられる。
<分散液組成物の製造方法の第2実施形態>
鉛イオン及びX成分を含む化合物と、M成分及びX成分を含む化合物と、A成分を含む化合物又はA成分及びX成分を含む化合物とを、高温の溶媒に添加して溶解させ、溶液を得る工程と、得られた溶液を冷却する工程とを含む製造方法について説明する。
前記製造方法では、温度の差による溶解度の差によって本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を析出させ、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液を製造することができる。
前記製造方法は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を安定して分散できる観点から、キャッピング配位子を加える工程を含んでいることが好ましい。
前記製造方法は、冷却する工程のあと、遠心分離、ろ過などの手法により粗大粒子を除去する工程を含んでいることが好ましい。上記除去工程によって除去する粗大粒子のサイズは、好ましくは10μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは500nm以上である。
ここで、高温の溶媒とは、鉛イオン及びX成分を含む化合物と、M成分及びX成分を含む化合物と、A成分を含む化合物又はA成分及びX成分を含む化合物とが、溶解する温度の溶媒であればよく、例えば、60〜600℃の溶媒であることが好ましく、80〜400℃の溶媒であることがより好ましい。
冷却する温度としては、−20〜50℃であることが好ましく、−10〜30℃であることがより好ましい。
冷却速度としては、特に制限は無いが、0.1〜1500℃/minであることが好ましく、10〜150℃/minであることがより好ましい。
前記製造方法に用いる溶媒としては、B成分及びX成分を含む化合物と、A成分を含む化合物又はA成分及びX成分を含む化合物とを溶解しうる溶媒であれば、特に限定されるものではないが、例えば、前記の分散液組成物に含まれる液体(但し、樹脂は除く。)と同様のものが挙げられる。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液から、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を取り出す方法としては、固液分離を行うことでペロブスカイト型結晶構造を有する化合物のみを回収する方法が挙げられる。
前述の固液分離方法は、ろ過などの方法や、溶媒の蒸発を利用した方法などが挙げられる。
<樹脂組成物の製造方法>
例えば、本発明に係る樹脂組成物の製造方法としては、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、溶媒に樹脂が溶解している溶液とを混合する工程と、溶媒を除去する工程とを含む製造方法が挙げられる。
また、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、モノマーとを混合する工程と、モノマーを重合させて樹脂組成物を得る工程とを含む製造方法が挙げられる。
以下、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、溶媒に樹脂が溶解している溶液とを混合する工程と、溶媒を除去する工程とを含む、樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、溶媒に樹脂が溶解している溶液とを混合する工程においては、本発明に係るペロブスカイト化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、モノマーとを混合する工程は(a)本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、または本発明に係る分散液組成物を溶媒に樹脂が溶解している溶液に滴下してよいし、(b)溶媒に樹脂が溶解している溶液を本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物に滴下してもよいが、分散性を高める観点から(a)であることが好ましい。
混合する際には攪拌を行う事が分散性を高める観点から好ましい。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、溶媒に溶解している樹脂とを混合する工程において、温度には特に制限は無いが、均一に混合する観点から、0〜100℃の範囲であることが好ましく、10〜80℃の範囲であることがより好ましい。
溶媒を除去する方法としては、室温静置による自然乾燥でもよいし、真空乾燥機を用いた減圧乾燥や加熱によって溶媒を蒸発させる方法等が挙げられる。
上述の樹脂を溶解させる溶媒としては、樹脂を溶解しうる溶媒であれば特に限定されないが、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解し難いものが好ましい。
上述の樹脂が溶解している溶媒としては、例えば、前記の分散液組成物に含まれる液体(但し、樹脂は除く。)と同様のものが挙げられる。 中でもメチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等のエステル類;γ−ブチロラクトン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル、アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系有機溶媒;塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒は極性が低く、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解し難いと考えられるため好ましく、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化した炭化水素基を有する有機溶媒;n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素基を有する有機溶媒がより好ましい。
以下、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、または本発明に係る分散液組成物と、モノマーとを混合する工程と、モノマーを重合させて樹脂組成物を得る工程とを含む製造方法について説明する。
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、または本発明に係る分散液組成物と、モノマーとを混合する工程は、(a)本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物をモノマーに滴下してよいし、(b)モノマーを本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物に滴下してもよいが、分散性を高める観点から(a)であることが好ましい。
混合する際には攪拌を行う事が分散性を高める観点から好ましい。
本発明に係るペロブスカイト化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、モノマーとを混合する工程において、温度には特に制限は無いが、均一に混合する観点から、0〜100℃の範囲であることが好ましく、10〜80℃の範囲であることがより好ましい。
前記製造方法において用いるモノマーとしては、スチレン、メチルメタクリレートが挙げられる。
前記製造方法において、モノマーを重合させる方法としては、ラジカル重合などの公知の重合反応を適宜用いる事ができる。例えばラジカル重合の場合は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、又は本発明に係る分散液組成物と、モノマーとの混合物に、ラジカル重合開始剤を添加し、ラジカルを発生させることで重合反応を用い、ラジカルを発生させることで重合反応が進行する。
ラジカル重合開始剤は特に限定されるものではないが、光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えばbis(2,4,6−trimethylbenzoyl)−phenylphosphineoxideが挙げられる。
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
<膜>
本発明に係る膜は、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む膜である。本発明に係る膜は、上述の本発明に係る樹脂組成物を含む膜であってもよい。
本発明に係る膜の厚みは、通常、0.01μm以上10mm以下であり、0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上0.5mm以下であることがより好ましい。
本発明に係る膜は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
<膜の製造方法>
本発明に係る膜は、例えば、溶液を用いた自己組織化反応によって製造することができる。ここで、溶液を用いた自己組織化反応は、上述の本発明に係る化合物の製造方法と同様である。
本発明に係る膜の製造方法のその他の方法としては、例えば、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物を用いた塗布方法、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む溶液組成物を用いた塗布方法が挙げられる。
ここで、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物は、上述の本発明に係る分散液組成物と同様である。本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む溶液組成物は、上述の溶液組成物と同様である。分散液組成物および溶液組成物は、上述の本発明に係る樹脂組成物を含む組成物であってもよい。
分散液組成物または溶液組成物を用いた塗布方法の一形態としては、分散液組成物または溶液組成物を基板に塗布し、溶媒を除去することにより、本発明に係る膜を製造する方法が挙げられる。
分散液組成物または溶液組成物を用いた塗布方法の他の一形態としては、モノマーをさらに含む分散液組成物またはモノマーをさらに含む溶液組成物を基板に塗布し、溶媒を除去し、モノマーを重合させることにより、本発明に係る膜を製造する方法が挙げられる。
<積層構造体>
本発明に係る積層構造体は、上述の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層を有する積層構造体である。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層の厚みは、通常、0.01μm以上10mm以下であり、0.1μm以上1mm以下であることが好ましく、1μm以上0.5mm以下であることがより好ましい。
本発明に係る積層構造体は、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層を、一層のみ有していても、二層以上有していてもよい。
本発明に係る積層構造体が有していてもよい、本発明に係る本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層以外の層としては、基板、バリア層、光散乱層等が挙げられる。
(基板)
基板は、特に制限は無いが、発光した光を取り出す観点から、透明な基板が好ましい。基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等から構成されるフレキシブル基板、ガラス基板が挙げられる。
(バリア層)
バリア層とは、大気中の水蒸気等から、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層を保護する機能を有する層である。
バリア層は、特に制限は無いが、発光した光を取り出す観点から、透明な層が好ましい。バリア層としては、例えば、SiO膜、Al膜等の公知のバリア層を用いることができる。
(光散乱層)
光散乱層は、発光した光を散乱する機能を有する層である。
光散乱層は、特に制限は無いが、発光した光を取り出す観点から、透明な層が好ましい。光散乱層としては、例えば、シリカ粒子等の光散乱粒を含む層、増幅拡散フィルムが挙げられる。
図1は、本実施形態の積層構造体の構成を模式的に示す断面図である。積層構造体1aは、基板20および21の間に、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層10が設けられている。そして、膜10は、封止層22によって封止されている。
<積層構造体の製造方法>
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層の製造方法は、上述の本発明に係る膜の製造方法と同様である。そのため、本発明に係る積層構造体は、上述の本発明に係る膜の製造方法と、公知の方法とを組み合せることにより、製造することができる。
<発光装置>
本発明に係る発光装置は、本発明に係る積層構造体と、光源とを有する発光装置である。積層構造体に光源から発光した光が照射されると、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層に吸収され、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層が発光し、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層から発光した光を取り出す装置である。本発明に係る発光装置において、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層は、通常、波長変換発光層として機能する。
本発明に係る発光装置において、本発明に係る積層構造体が有していてもよい上述以外の層としては、例えば、光反射部材層、輝度強化層、プリズムシート、導光板、要素間の媒体材料層が挙げられる。
(光源)
光源は、特に制限は無いが、積層構造体におけるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層を発光させるという観点から、600nm以下の発光波長を有する光源が好ましい。光源としては、例えば、青色発光ダイオード等の発光ダイオード(LED)、レーザー、ELが挙げられる。
本発明に係る発光装置の具体例としては、ELディスプレイ、液晶ディスプレイが挙げられる。ELディスプレイ、液晶ディスプレイにおいて、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層は、通常、波長変換発光層として機能する。
本発明に係る発光装置の他の具体例としては、照明が挙げられる。青色発光ダイオードを光源として使用し、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む層を波長変換発光層として機能させることで、白色発光の照明を実現することができる。
<液晶ディスプレイ>
図2に示すように、本実施形態の液晶ディスプレイ3は、液晶パネル40と、本実施形態の発光装置2とを、視認側からこの順に備える。発光装置2は、積層構造体1bと光源30とを備える。積層構造体1bは、前述の積層構造体1aが、プリズムシート50と、導光板60と、をさらに備えたものである。ディスプレイは、任意の適切なその他の部材をさらに備えていてもよい。
<用途>
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、並びにこれを含む分散液組成物および樹脂組成物の用途としては、例えば、ELディスプレイや液晶ディスプレイ用の波長変換材料が挙げられ、具体的には、(1)本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物をガラスチューブ等の中に入れて封止し、これを導光板の端面(側面)に沿うように、光源である青色発光ダイオードと導光板の間に配置して、青色光を緑色光や赤色光に変換するバックライト(オンエッジ方式のバックライト)、(2)本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を樹脂等に分散させてシート化し、これを2枚のバリアーフィルムで挟んで封止したフィルムを、導光板の上に設置して、導光板の端面(側面)に置かれた青色発光ダイオードから導光板を通して前記シートに照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換するバックライト(表面実装方式のバックライト)、(3)本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を、樹脂等に分散させて青色発光ダイオードの発光部近傍に設置し、照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換するバックライト(オンチップ方式のバックライト)、及び(4)本発明に係るペロブスカイト構造を有する化合物を、レジスト中に分散させて、カラーフィルター上に設置し、光源から照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換するバックライトが挙げられる。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の用途としては、例えば、レーザーダイオード用の波長変換材料が挙げられ、具体的には、本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を樹脂等に分散させて成形し、光源である青色発光ダイオードの後段に配置して、青色光を緑色光や赤色光に変換して白色光を発する照明が挙げられる。
また、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、例えば、LEDの発光層の材料として用いることができる。
本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含むLEDとしては、例えば、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物とZnSなどの導電性粒子を混合して膜状に積層し、片面にn型輸送層を積層し、もう片面をp型輸送層で積層した構造をしており、電流を流すことで、p型半導体の正孔と、n型半導体の電子が接合面のペロブスカイト結晶構造を有する化合物中で電荷を打ち消すことで発光する方式が挙げられる。
さらに、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、太陽電池の活性層に含まれる電子輸送性材料として利用することができる。
前期太陽電池としては、構成は特に限定されないが、例えば、フッ素ドープされた酸化スズ(FTO)基板、酸化チタン緻密層、多孔質酸化アルミニウム層、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む活性層、2,27,7tetrakis−(N,N’−di−p−methoxyphenylamine)−9,9’−spirobifluorene (Spiro−OMeTAD)などのホール輸送層、及び、銀(Ag)電極をこの順で有する太陽電池が挙げられる。
酸化チタン緻密層は、電子輸送の機能、FTOのラフネスを抑える効果、及び、逆電子移動を抑制する機能を有する。
多孔質酸化アルミニウム層は、光吸収効率を向上させる機能を有する。
活性層に含まれる、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、電荷分離および電子輸送の役割をはたす。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(ペロブスカイト構造を有する化合物の合成)
[実施例1]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr)をN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載する)の溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化ナトリウム(NaBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化ナトリウム溶液を作製した。同様に、70℃で臭化ランタン(LaBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化ランタン溶液を作製した。次いで、70℃で臭化メチルアンモニウム(CHNHBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化ナトリウム溶液、及び臭化ランタン溶液をモル比で[Na/(La+Na+Pb)]が0.03、及び[La/(La+Na+Pb)]が0.02となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[臭化メチルアンモニウム/(Na+La+Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で該溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
[実施例2]
モル比[Na/(La+Na+Pb)]を0.03とし、[La/(La+Na+Pb)]を0.03とする以外は、上記実施例1と同様の方法でペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
前記塗布膜の化合物のX線回折パターンをX線回折測定装置(XRD、Cu Kα線、X’pert PRO MPD、スペクトリス社製)で測定した所、2θ=14°の位置に(hkl)=(001)由来のピークを有しており、3次元のペロブスカイト型結晶構造を有していることを確認した。
[実施例3]
モル比[Na/(La+Na+Pb)]を0.05とし、[La/(La+Na+Pb)]を0.01とする以外は、上記実施例1と同様の方法でペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
[実施例4]
モル比[Na/(La+Na+Pb)]を0.05とし、[La/(La+Na+Pb)]を0.02とする以外は、上記実施例1と同様の方法でペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
[実施例5]
モル比[Na/(La+Na+Pb)]を0.05とし、[La/(La+Na+Pb)]を0.03とする以外は、上記実施例1と同様の方法でペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
[比較例1]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。70℃で臭化メチルアンモニウム(CHNHBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。次いで、モル比で[臭化メチルアンモニウム/Pb]=1となるように溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で該溶液をスピンコートにより塗布し、100℃で10分間乾燥させることで、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
前記塗布膜の化合物のX線回折パターンをX線回折測定装置(XRD、Cu Kα線、X’pert PRO MPD、スペクトリス社製)で測定した所、2θ=14°の位置に(hkl)=(001)由来のピークを有しており、3次元のペロブスカイト型結晶構造を有していることを確認した。
[比較例2]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化ナトリウム(NaBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化ナトリウム溶液を作製した。次いで、70℃で臭化メチルアンモニウム(CHNHBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化ナトリウム溶液をモル比で[Na/(Na+Pb)]が0.03となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[臭化メチルアンモニウム/(Na+Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で該溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
前記塗布膜の化合物のX線回折パターンをX線回折測定装置(XRD、Cu Kα線、X’pert PRO MPD、スペクトリス社製)で測定した所、2θ=14°の位置に(hkl)=(001)由来のピークを有しており、3次元のペロブスカイト型結晶構造を有していることを確認した。
[比較例3]
モル比[Na/(Na+Pb)]を0.05とする以外は上記比較例2と同様の方法でペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
[比較例4]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化ランタン(LaBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化ランタン溶液を作製した。次いで、70℃で臭化メチルアンモニウム(CHNHBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化ランタン溶液をモル比で[La/(La+Pb)]が0.01となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[臭化メチルアンモニウム/(La+Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
[比較例5]
モル比[La/(La+Pb)]を0.03とする以外は上記比較例4と同様の方法でペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
前記塗布膜の化合物のX線回折パターンをX線回折測定装置(XRD、Cu Kα線、X’pert PRO MPD、スペクトリス社製)で測定した所、2θ=14°の位置に(hkl)=(001)由来のピークを有しており、3次元のペロブスカイト型結晶構造を有していることを確認した。
(発光スペクトル測定)
実施例1〜4及び比較例1で得られたペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜の発光スペクトルを、蛍光光度計(島津製作所製、商品名RF−1500、測定条件:励起光430nm、感度LOW)を用いて測定した。また、紫外可視吸光光度計(日本分光製、商品名V−670)を用いて、前記塗布膜の紫外可視吸光高度計を用いて波長430nmの透過率(%)を測定した。
尚、前記塗布膜間の発光強度の比較は、波長530nm付近の最大発光強度を、以下の式(S)−1で補正して行った。
[波長530nm付近の最大発光強度/(100−波長430nmの透過率)]×100 … (S)−1
式(S)−1中、波長530nm付近の最大強度とは、波長520〜540nmの間に確認された最も強度の高いピークの発光強度を意味する。
以下の表1に、実施例1〜5、比較例1〜5のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の構成と、最大発光強度を記載する。表1中、[M1/(M1+M2+Pb)]は、M1の量をM1、M2およびB(鉛イオン)の合計量で除したモル比を表し、[M2/(M1+M2+Pb)]は、M2の量をM1、M2およびB(鉛イオン)の合計量で除したモル比を表す。
Figure 0006948168
上記の結果から、本発明を適用した実施例1〜5のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物は、本発明を適用しない実施例1〜5のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物と比して、優れた発光強度を有していることが確認できた。
≪ICP−MSによる測定≫
実施例2で得られたガラス基板上のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に対して硝酸1mL添加し、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を溶解させた。溶解後の溶液をイオン交換水で合計10mlとし、ICP−MS(ELAN DRCII、パーキンエルマー製)によってPb、及びMのモル数量を測定し、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物に含まれるM1及びM2のモル数量を[M1/(M1+M2+B)]、[M2/(M1+M2+B)]の式に当てはめて評価した。
ICP−MSによる測定の結果、実施例3の[Na/(Pb+La+Na)]の値が0.03、[La/(Pb+La+Na)]の値が0.03であった。
(ペロブスカイト構造を有する化合物の合成)
[実施例6]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr)をN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載する)の溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化ナトリウム(NaBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化ナトリウム溶液を作製した。同様に、70℃で臭化アルミニウム(AlBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化アルミニウム溶液を作製した。次いで、70℃で臭化メチルアンモニウム(CHNHBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化ナトリウム溶液、及び臭化アルミニウム溶液をモル比で[Na/(Al+Na+Pb)]が0.03、及び[Al/(Al+Na+Pb)]が0.03となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[臭化メチルアンモニウム/(Na+Al+Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で該溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
[実施例7]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr)をN,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載する)の溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化リチウム(LiBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化リチウム溶液を作製した。同様に、70℃で臭化ランタン(LaBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化ランタン溶液を作製した。次いで、70℃で臭化メチルアンモニウム(CHNHBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化リチウム溶液、及び臭化ランタン溶液をモル比で[Li/(La+Li+Pb)]が0.03、及び[La/(La+Li+Pb)]が0.03となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[臭化メチルアンモニウム/(Li+La+Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で該溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
[比較例6]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化アルミニウム(AlBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化アルミニウム溶液を作製した。次いで、70℃で臭化メチルアンモニウム(CHNHBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化アルミ二ウム溶液をモル比で[Al/(Al+Pb)]が0.03となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[臭化メチルアンモニウム/(Al+Pb)]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で該溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
[比較例7]
2.5cm×2.5cmサイズのガラス基板を用意した。このガラス基板をオゾンUV処理した。
70℃で臭化鉛(PbBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化鉛溶液を作製した。同様に、70℃で臭化リチウム(LiBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化リチウム溶液を作製した。次いで、70℃で臭化メチルアンモニウム(CHNHBr)をDMFの溶媒に溶解して0.1Mの濃度の臭化メチルアンモニウム溶液を作製した。上記の臭化鉛溶液と臭化リチウム溶液をモル比で[Li/(Li+Pb)]が0.03となるように混合し溶液を作製した。次いで、モル比で[臭化メチルアンモニウム/(Li+Pb]=1となるように更に溶液を混合した。
上記のガラス基板に、1000rpmの回転数で該溶液をスピンコートにより塗布し、大気中100℃で10分間乾燥させることで、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物の塗布膜を得た。
(発光スペクトル測定)
実施例6〜7、比較例6〜7のぺロブスカイト型結晶構造を有する化合物について、光強度の比較方法は上記実施例1〜5及び比較例1〜5と同様の方法で行なった。
以下の表2に、実施例6〜7、比較例1〜2、及び比較例6〜7のペロブスカイト構造を有する化合物の構成と、最大発光強度を記載する。表2中、[M1/(M1+M2+Pb)]は、M1の量をM1、M2およびB(鉛イオン)の合計量で除したモル比を表し、[M2/(M1+M2+Pb)]は、M2の量をM1、M2およびB(鉛イオン)の合計量で除したモル比を表す。
Figure 0006948168
上記の結果から、本発明を適用した例6〜7のペロブスカイト構造を有する化合物は、本発明を適用しない比較例1〜2、及び比較例5〜7のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物と比して、優れた発光強度を有していることが確認できた。
[参考例1]
実施例1〜7に記載の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物と樹脂を混合した後に、液体を除去する事で、本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む樹脂組成物を得ることができ、ガラスチューブ等の中に入れて封止した後に、これを光源である青色発光ダイオードと導光板の間に配置することで、青色発光ダイオードの青色光を緑色光や赤色光に変換することができるバックライトを製造する。
[参考例2]
実施例1〜7に記載の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物と樹脂を混合した後に、溶媒を除去してシート化する事で本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む樹脂組成物を得ることができ、これを2枚のバリアーフィルムで挟んで封止したフィルムを導光板の上に設置することで、導光板の端面(側面)に置かれた青色発光ダイオードから導光板を通して前記シートに照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換することができるバックライトを製造する。
[参考例3]
実施例1〜7に記載の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物と樹脂を混合した後に、溶媒を除去する事で本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む樹脂組成物を得ることができ、青色発光ダイオードの発光部近傍に設置することで照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換することができるバックライトを製造する。
[参考例4]
実施例1〜7に記載の本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む分散液組成物とレジストを混合した後に、溶媒を除去する事で波長変換材料を得ることができる。得られた波長変換材料を光源である青色発光ダイオードと導光板の間や、光源であるOLEDの後段に配置することで、光源の青色光を緑色光や赤色光に変換することができるバックライトを製造する。
[参考例5]
実施例1〜7に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物をZnSなどの導電性粒子を混合して成膜し、片面にn型輸送層を積層し、もう片面をp型輸送層で積層することでLEDを得る。電流を流すことによりp型半導体の正孔と、n型半導体の電子が接合面のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物中で電荷を打ち消されることで発光させることができる。
[参考例6]
フッ素ドープされた酸化スズ(FTO)基板の表面上に、酸化チタン緻密層を積層させ、その上から多孔質酸化アルミニウム層を積層し、その上に実施例1〜7に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を積層し、その上から2,2−,7,7−tetrakis−(N,N−di−p−methoxyphenylamine)9,9−spirobifluorene (Spiro−OMeTAD)などのホール輸送層を積層し、その上に銀(Ag)層を積層し、太陽電池を作製する。
[参考例7]
実施例1〜7に記載のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を樹脂と混合して成形する事で本発明に係るペロブスカイト型結晶構造を有する化合物を含む樹脂組成物を得ることができ、これを青色発光ダイオードの後段に設置することで、青色発光ダイオードから前記樹脂成形体に照射される青色の光を緑色光や赤色光に変換して白色光を発するレーザーダイオード照明を製造する。
本発明によれば、発光強度が高いペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、並びに、量子収率が高い、前期化合物を含む分散液組成物、及び前期化合物を含む樹脂組成物を提供することが可能となる。
したがって、本発明のペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、前期化合物を含む分散液組成物、及び前期化合物を用いた樹脂組成物は、発光関連材料分野において好適に使用することができる。
1a,1b…積層構造体、10…フィルム、20,21…基板、22…封止材、2…発光装置、3…ディスプレイ、30…光源、40…液晶パネル、50…プリズムシート、60…導光板

Claims (8)

  1. A、B、X、M1及びM2を成分とし、M1及びM2の合計モル数量をM1、M2及びBの合計モル数量で除したモル比[(M1+M2)/(M1+M2+B)]の値が0.7以下であり、下記一般式(1)で表されるペロブスカイト型結晶構造を有する化合物。
    APb (1−a−b) M1 M2 (3+δ) (0<a<0.7,0<b<0.7、0<a+b≦0.7、0≦δ≦0.7) …(1)
    [一般式(1)中、Aはセシウムイオン、有機アンモニウムイオン、又はアミジニウムイオンであり、M1は、リチウムイオン又はナトリウムイオンである。M2は、ランタンイオン又はアルミニウムイオンである。Xは臭化物イオンである。]
  2. 前記Aが有機アンモニウムイオンである請求項1に記載の化合物。
  3. 請求項1又は2に記載の化合物が液体中に分散している分散液組成物。
  4. 請求項1又は2に記載の化合物が樹脂中に分散している樹脂組成物。
  5. 請求項1又は2に記載の化合物を含む膜。
  6. 請求項1又は2に記載の化合物を含む層を有する積層構造体。
  7. 請求項に記載の積層構造体と、光源とを有する発光装置。
  8. 液晶ディスプレイである、請求項に記載の発光装置。
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