JP6946683B2 - 繊維強化難燃性樹脂組成物および成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維強化難燃性樹脂組成物および成形体に関する。
複写機、プリンター等の画像出力機器、家電製品などの電気電子機器、自動車の内装部品等には樹脂部品が数多く利用されているが、これらの部品には延焼を防止する目的で、樹脂材料に難燃性が求められている。
特に複写機においては、内部に高温になる定着ユニットがあり、定着ユニット付近にも樹脂材料が使用されている。また、帯電ユニットのような高電圧を発生させるユニットや、電源ユニットは100Vの交流電源ユニットがあり、これらの最大消費電力は数100W〜500Wであり、100V、15A電源系統を利用するユニットで構成されている。
このような複写機、主にマルチファンクションプリンターに代表される複合機は据え置き式の電気電子機器であり、このような機器は、安全性規格の一つである樹脂材料の難燃性に関する国際規格(IEC60950)が適用される。例えば、発火源もしくは発火の恐れがある部分はUL94規格(Underwriters Laboratories Inc.,standard)の難燃性「5V」のエンクロージャー部品で覆うことが求められている。UL94規格の「5V」に関する試験方法については、国際規格IEC60695−11−20(ASTM D5048)に「500W試験炎による燃焼試験」として定義されている。また、複写機本体におけるエンクロージャー内の内部部品についても、UL94規格の「V−2」以上が求められている。UL94規格の「V−2」以上に関する試験方法については、国際規格IEC60695−11−10 B法(ASTM D3801)に「20mm垂直燃焼試験」として定義されている。
ここで、樹脂材料に添加される難燃剤にはいくつかの種類があり、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、及び無機系難燃剤が一般的である。これら難燃剤の難燃機構については、幾つかの文献で既に公知であり、ここでは、特に多用される3種類の難燃機構について説明する。
第1は、臭素系難燃剤に代表されるハロゲン系化合物である。燃焼した炎に対し、ハロゲン系化合物を酸化反応負触媒として働かせることなどにより燃焼速度を低下させる。
第2は、リン系難燃剤またはシリコーン系難燃剤である。燃焼中に樹脂の表面にシリコーン系難燃剤をブリードさせたり、リン酸系難燃剤を樹脂内で脱水反応を起こさせたりすることにより、表面に炭化物(チャー)を生成させて断熱皮膜の形成などにより燃焼を止める。
第3は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機系難燃剤である。樹脂の燃焼によってこれらの化合物が分解するときの吸熱反応や、生成した水の持つ蒸発潜熱などにより、樹脂全体を冷却させるなどして燃焼を止める。
一方、従来の樹脂材料は、石油を原料とするプラスチック材料で作られているが、近年、植物などを原材料にしたバイオマス由来樹脂が注目されている。ここで、バイオマス資源とは、植物や動物などの生物を資源にしているという意味であり、木材、トウモロコシ、大豆、動物から取れる油脂、生ゴミなどを示すものである。バイオマス由来樹脂はそれらのバイオマス資源を原料として作られている。一般には生分解性樹脂というものもあるが、生分解とは温度・湿度などのある一定環境下において、微生物などにより分解される機能のことをいう。
なお、生分解性樹脂として、バイオマス由来樹脂ではなく、石油由来樹脂であって生分解する機能を持つ樹脂もある。
バイオマス由来樹脂には、ジャガイモ、サトウキビ、トウモロコシなどの糖質を醗酵した乳酸をモノマーとし、化学重合により作られるポリ乳酸PLA(Poly Lactic Acid)、澱粉を主成分としたエステル化澱粉、微生物が体内に生産するポリエステルである微生物産生樹脂PHA(Poly Hydroxy alkanoate)、醗酵法で得られる1,3−プロパンジオールと石油由来のテレフタル酸を原料とするPTT(Poly Trimethylene Terephthalate)などがある。中でもポリ乳酸は、融点が180℃前後と高く、成形加工性に優れ、かつ市場への供給量も安定しており、ポリ乳酸を応用した製品が実現し始めている。
しかし、ポリ乳酸はガラス転移点が56℃と低く、このため、熱変形温度は55℃前後であって耐熱性が低い。また結晶性樹脂であることから、耐衝撃性も低くアイゾッド衝撃強度は1〜2kJ/mであり、電気・電子機器製品のような耐久部材への採用は困難であるという課題がある。
その対策として、石油系樹脂であるポリカーボネート樹脂とのポリマーアロイなどによって物性向上を図っている。しかし、石油系樹脂の含有割合が高くなり、バイオマス由来樹脂の含有割合が50%前後になってしまい、その結果、地球温暖化対策などの環境負荷削減のための化石使用量削減や二酸化炭素排出量削減に対する効果は半減してしまうという問題がある。
そこで、例えば特許文献1では、植物資源由来の樹脂100質量部に対して、天然由来の有機充填剤1〜350重量部を配合してなる樹脂組成物を成形してなる電気・電子部品であり、植物資源由来の樹脂がポリ乳酸樹脂であり、天然由来の有機充填剤が紙粉及び木粉から選ばれる少なくとも一種であり、紙粉の50質量%以上が古紙粉末である電気・電子部品が提案されている。この提案では、ポリ乳酸に紙紛等の天然由来の有機充填材を添加することにより、樹脂の機械的強度等を向上させている。しかし、難燃性については、ポリ乳酸100質量部に対して、リン系難燃剤等の化石資源を原料とした難燃剤を23質量部〜29質量部添加することが必要であり、これでは環境負荷削減のためにベースになる樹脂材料をバイオマス材料に変えたとしても、その効果が下がってしまう。
特許文献2には、ケナフ繊維を含有した生分解性樹脂組成物であって、ケナフ繊維の含有量を10〜50質量%とする技術が提案されている。しかし、電気電子機器製品に必要な難燃性を確保できる材料ではない。
特許文献3には、アセチルセルロース(A)と、該アセチルセルロース(A)100質量部に対しアルコキシシラン化合物(B)を0.1質量部〜150質量部までの間で配合し均一分散させた後、アセチル基を部分的に又は完全に脱離させるとともに、アルコキシシラン化合物を加水分解及び縮合させる有機無機ハイブリッド難燃性セルロース材料の製造方法が提案されている。しかし、この提案の方法で得られた有機無機ハイブリッド難燃性セルロース材料は、アセチルセルロースとアルコキシシラン化合物を単に混練させた態様であり、UL94燃焼試験に準ずる方法による試験結果において、試験片の燃焼時間は長くなるものの、試験片は完全に燃え尽きており、難燃性能は不十分なものであった。また、成形性に関しても成形加工が可能になるとの記載はあるが、具体的な実施例については開示されていない。
また、特許文献4には、高分子と難燃剤とを含む高分子組成物であって、前記難燃剤は難燃性化合物を側鎖に有する重合体を含む、高分子組成物が提案されている。詳細には、前記難燃剤は窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する重合体であり、重合体のモノマーの一部に核酸塩基等の生物起源の物質が使用されている。しかし、この提案の難燃剤は、高分子材料に難燃可能なヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する態様であるが、元となる高分子材料がバイオマス材料ではなく、かつ添加量も多く環境負荷が小さいものではない。このような従来技術は、熱可塑性樹脂に難燃剤を混練している技術である。この方法では、難燃性は発現するものの成形加工して成形品として使用することを考慮した場合、熱可塑性樹脂と難燃剤との親和性の低下により、樹脂の流動性が低下し成形性が悪くなるという問題があり、また物性も低下してしまうことがある。
また、特許文献5では、天然物由来の生分解性ポリエステル樹脂(A)50質量%〜80質量%と、有機リン化合物が共重合された熱可塑性ポリエステル樹脂(B)50質量%〜20質量%とからなる難燃性ポリエステル樹脂組成物が提案されている。詳細には、有機リン化合物を共重合したポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンサクシネート(PBS)と、ポリ乳酸をブレンドしている。しかし、この提案のポリエチレンテレフタレートは石油由来の原料からなり、ポリブチレンサクシネートの原料であるコハク酸、ブタンジオールも現在は石油由来の原料からなるため、バイオマス度の点では、従来の難燃剤と大差ないものになってしまう。この従来技術は、熱可塑性ポリエステル樹脂の構造に有機リン化合物が共重合された態様であり、熱可塑性ポリエステル樹脂の主鎖に有機リン化合物が導入されることになる。そして、有機リン化合物による難燃性発現の特長上、リンが脱離することにより難燃性を発現するが、主鎖に導入されていることにより脱離しづらくなる。仮に脱離したとしても、主鎖が切れることになるため、分子量の低下が起こりドリップし易くなってしまい難燃性の確保が困難になる。その結果、低い石油依存へ移行するために、有機リン化合物が共重合されたバイオマス由来の熱可塑性ポリエステル樹脂を用いたとしても、物性と難燃性の全てを満たすという課題は解決できていない。
また、特許文献6には、熱可塑性樹脂と難燃剤を含む難燃性樹脂組成物であって、前記難燃剤が、少なくとも天然リグニンに所定の処理を施したリグニン誘導体にリン酸を付加してなるリン酸化リグニン誘導体を含むことにより、難燃性能を有した、バイオマス度の高い低環境負荷型の難燃性樹脂材料が提案されている。しかし、この提案の材料は難燃剤として、20%以上の添加が必要であり、かつ発泡炭化層の形成がないため、剛性などの物性の確保と難燃効果を同時に満たすことは解決できていない。
また、特許文献7には、熱可塑性樹脂と難燃剤を含む難燃性樹脂組成物であって、前記難燃剤が、天然リグニンに対して少なくとも天然リグニンを低分子化又は水溶化する処理を施して得たリグニン誘導体に含窒素構造が導入され、かつリン酸が付加されてなる含窒素構造導入リン酸化リグニン誘導体を含むことにより、難燃性能を有した、バイオマス度の高い低環境負荷型の難燃性樹脂材料が、提案されている。しかし、この提案の材料は難燃剤として、10%以上の添加が必要であり、曲げ弾性率の低下が発生し、剛性の低下が発生している。
したがって、前記従来技術では、石油依存度が低く、バイオマス度が高く、環境負荷も低いと共に、難燃性や高い曲げ弾性率などの剛性を兼ね備えた難燃性樹脂組成物としては、未だ十分満足できる性能を有するものは得られておらず、更なる改良、開発が求められているのが現状である。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち本発明は、石油依存度が低くかつバイオマス度が高いことにより環境負荷を低くすることができ、なおかつ、優れた難燃性および剛性を兼ね備えた繊維強化難燃性樹脂組成物を提供することを目的とする。
前記課題は、下記構成1)により解決される。
1)熱可塑性樹脂と、天然リグニンを由来とするリグニン誘導体にリン酸を付加してなるリン酸化リグニン誘導体からなる難燃剤と、リグニン成分を5質量%以上含む植物繊維とを含み、前記植物繊維が、繊維長50μmから500μmの範囲の繊維を80質量%以上含有する粉末であることを特徴とする繊維強化難燃性樹脂組成物。
本発明によれば、石油依存度が低くかつバイオマス度が高いことにより環境負荷を低くすることができ、なおかつ、優れた難燃性および剛性を兼ね備えた繊維強化難燃性樹脂組成物を提供できる。
以下、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、天然リグニンを由来とするリグニン誘導体にリン酸を付加してなるリン酸化リグニン誘導体を含む難燃剤と、リグニン成分を5質量%以上含む植物繊維とを含むことを特徴とする。
本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物は、天然リグニンを由来とするリン酸化リグニン誘導体を含むことにより、難燃性能を有した、バイオマス度の高い低環境負荷型の難燃性樹脂材料を得ることができる。また、リグニン誘導体は高分子物質であるために粘結性を有し、樹脂中の分散状態も安定していることから、使用時のブリードアウトを抑えることができるとともに、燃焼時における発泡層形成にも作用し、難燃性が向上する。また、本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物は、リグニン成分を5質量%以上含む植物繊維を含むことにより、繊維同士の絡み合い作用から曲げ弾性率などの剛性を向上させることができる。
したがって本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物からなる成形体は、優れた難燃性および剛性を兼ね備えていることから、複写機、プリンター等の画像出力機器、家電製品等の電気・電子機器などの部品に有用である。
<熱可塑性樹脂>
前記熱可塑性樹脂はとくに制限されないが、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルおよびカーボネート結合を有するポリマーから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの熱可塑性樹脂を含むことにより、さらに難燃性能および剛性を高めることができる。
また熱可塑性樹脂は、原料の少なくとも一部にバイオマスを使用していることが好ましい。
前記芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、液晶ポリマー(LCP)、非晶ポリアリレート等を使用することができる。
前記脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸(PLA)、微生物産生ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等を使用することができる。
前記カーボネート結合を有するポリマーとしては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂等を使用することができる。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂としては、適宜合成されたものでもよいし、市販品を用いることもできる。該市販品としては、例えば帝人化成株式会社のパンライト(商品名)、三菱化学エンジニアプラスチックス株式会社のユーピロン(商品名)などが挙げられる。
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂としては、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート等や、環状構造を持つ脂環式ポリカーボネート等を使用することができる。
また熱可塑性樹脂としては、前記以外の樹脂を、本発明の効果を損なわない範囲で用いることもできる。
本発明においては、原料の少なくとも一部にバイオマスを使用している熱可塑性樹脂が好ましく、例えば熱可塑性樹脂中、バイオマス由来樹脂を20質量%以上使用することが好ましく、50質量%以上使用することがより好ましい。
本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物において、熱可塑性樹脂は、例えば50〜80質量%配合され、好ましくは60〜70質量%配合される。
<難燃剤>
本発明における難燃剤は、天然リグニンを由来とするリグニン誘導体にリン酸を付加してなるリン酸化リグニン誘導体からなる。
天然リグニンとしては、天然木材に含まれるリグニン、稲わら、麦わら等の草本植物に含まれるリグニン等が挙げられる。
リグニン誘導体は、天然リグニンに所定の処理を施して得ることができる。所定の処理としては、天然木材からリグニンを取り除きパルプを得る処理方法が代表的な処理方法である。その1つとして、クラフト法によるパルプ処理がある。水酸化ナトリウム水溶液と硫化ナトリウム水溶液を蒸解液とする方法であり、天然木材からリグニンを分離するために低分子化処理を行い、リグニン誘導体が得られる(クラフトリグニン)。また、木材等の原料から硫酸を用いて糖化した残渣リグニンを、アルカリ水溶液中で水熱処理し、水溶化処理することにより、リグニン誘導体が得られる(水熱処理した硫酸リグニン)、また、稲わら、麦わら等の草本原料をアルカリ水溶液中で処理し、水溶化処理することによりリグニン誘導体が得られる(アルカリリグニン)。また、酵素糖化リグニンも使用できる。
本発明では、クラフトリグニン、水熱処理した硫酸リグニンまたはアルカリリグニンのいずれかが好ましい。前記リグニン誘導体が、クラフトリグニンであることにより、安価な原料を使用して、難燃性能を得ることができる。また、燃料としてカスケード利用されているクラフトリグニン(黒液)を高機能材料として使用することができ、環境負荷削減に寄与することができる。前記リグニン誘導体が、水熱処理した硫酸リグニンであることにより、安価な原料を使用して、難燃性能を得ることができる。前記リグニン誘導体が、アルカリリグニンであることにより、今まで、未利用資源であった糖化残渣リグニンを利用することが可能となり、安価な原料を使用して、難燃性能を得ることができる。
本発明におけるリン酸化リグニン誘導体は、前記リグニン誘導体にリン酸を付加して得られる。リン酸を付加する方法としては、例えば、ピリジン溶液下で塩化ホスホリルを加えて反応させる方法を挙げることができる。
なお本発明では、前記リン酸を付加する前に、リグニン誘導体をヒドロキシメチル化処理することが好ましい。ヒドロキシメチル化処理を行うことにより、リグニン誘導体に親水基が付与され、樹脂中へ高い分散性が得られ、使用時のブリードアウトを抑えることができる。ヒドロキシメチル化処理は、リグニン誘導体にホルムアルデヒドを反応させることによって行うことができる。
また本発明では、リン酸化リグニン誘導体が、含窒素構造を有することが好ましい。この形態によれば、燃焼時に発泡層が形成され、難燃性能を高めることができる。好適な含窒素構造としては、アミノ基、グアニジノ基またはメラミン基が挙げられ、リグニン誘導体に含窒素構造を導入するには、リグニン誘導体と含窒素化合物を反応させればよい。
含窒素化合物としては、ジメチルアミン、グアニジン、メラミン等が挙げられ、グアニジンとしてはメチル基を含むものが好ましい。
その他の含窒素化合物としては次のものを挙げることができる。
N−ブチルジメチルアミン、N−アセチルジメチルアミン、N−アセトアセチルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセチルアセトングアニジン、ニトログアニジン、1−メチル−3−ニトログアニジン、シアノグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、トリクロロメラミン、2,4,6−トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(シクロプロピルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン。
難燃剤中のリン含有率は3〜15質量%が好ましく、7〜15質量%がより好ましい。
また、難燃剤中の窒素含有率は、2〜15質量%以上が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物は、難燃剤を5〜30質量%含有することが好ましく、10〜20質量%含有することがより好ましい。
<植物繊維>
植物繊維としては、スギ、竹、綿、苧麻(ラミー)、亜麻(リネン)、マニラ麻、サイザル麻、黄麻(ジュート)、ケナフ、バナナ、ココナッツ、わら、サトウキビ、ヒノキ、トウヒ、松、モミ、カラマツ等を原料とする繊維が挙げられ、これら原料を公知の装置によって粉砕、分級したものを用いることができる。
本発明で使用される植物繊維は、リグニン成分を5質量%以上含む。この形態によれば、難燃剤であるリン酸化リグニン誘導体との親和性が向上し、リン酸化リグニン誘導体が熱可塑性樹脂内で植物繊維とともに分散性が向上するという理由から難燃性が高まるとともに、剛性をさらに向上させることができる。本発明で使用される植物繊維におけるリグニン成分の含有量は、10〜40質量%がさらに好ましく、20〜40質量%がとくに好ましい。
植物繊維中のリグニン成分は、硫酸で他のセルロース、ヘミセルロース成分を溶解した後の残渣をリグニン量とする硫酸法により測定できる。
また本発明で使用される植物繊維は、繊維長50μmから3000μmの範囲の繊維を80質量%以上含有する粉末であることが好ましい。この形態によれば、植物繊維同士が絡み合いながら良好な分散状態を確保でき、剛性の更なる向上を実現することができる。該繊維長は、50μmから500μmの範囲がさらに好ましく、50μmから200μmの範囲がとくに好ましい。また、アスペクト比(繊維長/粒径)は、50〜500が好ましい。
なお、繊維長および粒径は、植物繊維のSEM像を300個無作為にサンプリングし、その画像情報を画像解析装置に導入して解析を行うことにより算出することができる。
本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物において、植物繊維は、例えば10〜50質量%配合され、好ましくは10〜30質量%配合される。この形態によれば、バイオマス割合が高くなり、かつ、難燃性と剛性を同時に確保することができる。
本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物は、難燃助剤をさらに含有し、前記難燃助剤が、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、臭素系難燃剤、無機系難燃剤およびポリフルオロオレフィンから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。この形態によれば、難燃性がさらに高まり、かつ高い剛性を付与することができる。
−リン系難燃剤−
前記リン系難燃剤としては、特に制限はなく、例えば市販のリン系難燃剤を使用することができる。例えば、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(t−ブチル化フェニル)ホスフェート、トリス(i−プロピル化フェニル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート、ビスフェノールA(ジフェニルホスフェート)、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、2,2−ビス(クロロメチル)トリメチレンビス(ビス(2−クロロエチル)ホスフェート)、ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェート、赤リン等が使用できる。
−窒素化合物系難燃剤−
前記窒素化合物系難燃剤としては、特に制限はなく、例えばリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、等を使用することができる。
−シリコーン系難燃剤−
前記シリコーン系難燃剤としては、特に制限はなく、例えばシリコーン樹脂、シリコーンゴム、シリコーンオイル、等を使用することができる。
前記シリコーン樹脂としては、SiO2、RSiO3/2、R2SiO、R3SiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などが挙げられる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、ベンジル基等の芳香族基;前記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。
前記シリコーンオイルとしては、例えばポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1つのメチル基が、水素原子、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、及びトリフロロメチル基から選ばれる少なくとも1つの基により変性された変性ポリシロキサン、又はこれらの混合物などが挙げられる。
−臭素系難燃剤−
前記臭素系難燃剤としては、特に制限はなく、市販の臭素系難燃剤を使用することができる。例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、1,2−ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,6−or(2,4−)ジブロモフェノール、臭素化ポリスチレン、ポリ臭素化スチレン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモベンジルアクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、等を使用することができる。
−無機系難燃剤−
前記無機系難燃剤としては、特に制限はなく、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、等を使用することができる。
−ポリフルオロオレフィン−
前記ポリフルオロオレフィンとしては、特に制限はなく、例えば市販のポリフルオロオレフィンを使用することができる。また、ポリフルオロオレフィンがメチルメタアクリレート樹脂で被覆されたものとしては、商品名メタブレンAタイプ(三菱レイヨン)等が使用できる。
前記難燃助剤の含有量は、難燃剤の種類に応じて、最適な添加割合が異なり特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができる。
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、公知の添加剤の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば相溶化剤、可塑化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、加水分解抑制剤、結晶化核剤、繊維表面処理剤などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択した量を使用することができ、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記加水分解抑制剤としては、例えばカルボジイミド変性イソシアネート、有機ホスファイト金属塩化合物、テトライソシアネートシラン、モノメチルイソシアネートシラン、アルコキシシラン、スチレン・2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合体、2,2−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、などが挙げられる。
前記結晶化核剤としては、例えばタルク系核剤、フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤、ベンゾイル化合物系からなる核剤などが好適に挙げられる。その他公知の結晶化核剤、例えば乳酸塩、安息香酸塩、シリカ、リン酸エステル塩系などを用いても問題はない。
前記繊維表面処理剤としては、繊維表面を変性させるためのシランカップリング剤やマレイン酸変性などが挙げられる。
(成形体)
本発明の成形体は、本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
本発明の成形体は、本発明の前記繊維強化難燃性樹脂組成物を成形してなること以外には、特に制限はなく、その形状、構造、大きさ等については目的に応じて適宜選択することができる。
前記成形の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、フィルム成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、カレンダー成形、熱成形、流動成形、積層成形、などが挙げられる。これらの中でも、成形体を複写機、プリンター等の画像出力機器、家電製品等の電気・電子機器などとして使用する場合には、フィルム成形、押出成形、及び射出成形から選択されるいずれかが好ましく、射出成形が特に好ましい。
例えば複写機の外装カバー等の筐体部品の成形には、350トンの電動射出成形機を用いて水温度調節器で温度設定が可能な金型を用いて、金型温度40℃、射出圧力90MPa、射出速度10mm/sec、の成形条件で成形することにより、外観、寸法を満足する成形品を得ることが可能になる。
−用途−
本発明の成形体は、石油依存度が低くかつバイオマス度が高いことにより環境負荷を低くすることができ、なおかつ、優れた難燃性および剛性を兼ね備えていることから、複写機、プリンター等の画像出力機器、家電製品等の電気・電子機器などの部品に有用である。その他、自動車の内装部品等にも好適である。
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
(実施例1)
<植物繊維の作製>
植物繊維の原料として、製材後のスギ間伐材を使用した。
この原料を一次破砕機(奈良機械製作所、ハンマーミル HM-5)にて破砕し、恒温槽にて120℃12時間乾燥した後、さらに二次粉砕機(奈良機械製作所、自由粉砕機(Mill)M-2型)にて微粉砕を行い、さらに分級機により分級し、繊維長50μm〜100μm、リグニン含有量が30質量%のスギ植物繊維(B−1)を得た。
<リン酸化リグニン誘導体の作製>
リグニン誘導体には、クラフトリグニンを使用した。
クラフトリグニンは、クラフト法(水酸化ナトリウム水溶液と硫化ナトリウム水溶液を蒸解液とするもの)によってパルプを製造する際に排出される蒸解液(黒液)中に含まれる。実施例1では、Aldrich社製の試薬、Lignin,alkali(370959)を使用した。
リグニン誘導体をピリジンに溶解し、塩化ホスホリルを加え、室温で1時間攪拌した。この反応においてピリジンはリグニン誘導体が全て溶解する量を用いた。反応後、生じた沈殿物を濾過により回収した。反応生成物のリン含有率をフラスコ燃焼法(滴定法)により測定した結果から、リン含有率が7.2%のリン酸化リグニン誘導体(C−1:クラフトリグニンのリン酸化物)が得られていることを確認した。
<繊維強化難燃性樹脂組成物の作製>
ポリ乳酸70質量部に対して、前記スギ植物繊維(B−1)15質量部、リン酸化リグニン誘導体(C−1)15質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で170℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
ポリ乳酸には、ネイチャーワークスジャパン株式会社製のIngeo3001Dを使用した。また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製のメタブレンA−3800(E−1)を使用した。
<UL94垂直燃焼試験片の作製>
上述のようにして作製したペレットを、棚式の熱風乾燥機を用いて60℃で5時間乾燥処理を施し、その後、型締力100トンの電動式射出成形機を使用して金型温度40℃、シリンダー温度190℃、射出速度20mm/sec、射出圧力100MPa、冷却時間30secの設定で、UL94垂直燃焼試験用の短冊試験片を作製した。 作製した短冊試験片は、幅13mm、長さ125mm、厚さ1.6mmである。
<UL94垂直燃焼試験>
上述のようにして作製した試験片を、50℃で72時間のエージングした後、湿度20%のデシケータ内で3時間冷却した。 次いで、試験片を5本で1セットとし、UL94規格に準拠した垂直燃焼試験を行った。 試験方法について以下に説明する。
各試験片の上端部をクランプし、垂直状態で保持し、各試験片の下端部から300±10mm下方に脱脂綿(0.8g以下、50mm角)を置き、後述する燃焼試験によって溶融物が脱脂綿上に落下することを確認する。 各試験片の下端部からバーナーで接炎(1回目)を10±1秒間行い、その後、約300mm/秒の速度でバーナーを試験片から離す。 燃焼が消えたら直ちにバーナーをサンプルの下端部に戻し、接炎(2回目)を10±1秒間行った。 5本1セットの試験片について、合計10回の接炎を行い、各試験片の燃焼時間を記録した。 ここで、「燃焼時間」とは、離炎後の燃焼継続時間を意味する。 1回目の燃焼時間をt1、2回目の燃焼時間をt2、2回目の燃焼後火種継続時間をt3とした。 ここで、「2回目の燃焼後火種継続時間」とは、試験片において炎は消えているが、試験片に赤く火種が残った状態が続く時間を言うものとする。
<UL94垂直燃焼試験の判定方法>
上述したUL94垂直燃焼試験による判定を下記の方法により行った。
(1)各試験片の、測定された離炎後の燃焼継続がt1、t2であり、これらが10秒以下ならV-0、30秒以下ならV-1もしくはV-2と判定した。 V-1、V-2判定上区別する境界については、下記(5)記載の評価による、燃焼時の滴下物でコットン着火するかどうかが基準となる。コットン着火した場合はV-2になり、着火が無い場合には、V-1となる。
(2)5本の試験片全ての燃焼継続時間(t1+t2)が、50秒以下ならばV-0、250秒以下ならばV-1もしくはV-2と判定した。
(3)2回目接炎後の燃焼継続時間と火種継続時間の合計(t2+t3)が、30秒以下ならばV-0、60秒以下ならばV-1もしくはV-2と判定した。
(4)クランプまで燃える燃焼がないことを確認できれば、合格とした。
(5)燃焼物や落下物による脱脂綿の発火について評価した。発火無しならばV-0もしくはV-1と判定し、発火ありならV-2と判定した。
ここで、発火が無い場合のV-0とV-1の境界は、上記(2)、(3)の燃焼継続時間(t1+t2)と(t2+t3)の測定結果が基準となる。t1+t2が50秒以下ならばV-0となり、50秒より大きく250秒以下ならばV-1となる。 また、t2+t3が30秒以下ならばV-0となり、30秒より大きく60秒以下ならばV-1となる。上記(1)〜(5)のそれぞれについて、V-0、V-1、V-2の条件を全て満たすものが実用上合格レベルにあるものと評価した。
<機械的強度試験:曲げ試験>
上記で製作したペレットを、棚式の熱風乾燥機を用いて80℃で5時間乾燥処理を施し、その後、型締力100トンの電動式射出成形機を使用して金型温度40℃、シリンダー温度190℃、射出速度20mm/sec、射出圧力100MPa、冷却時間30secの設定で、曲げ試験用の万能試験片を作製した。 作製した短冊試験片は、幅10mm、長さ80mm、厚さ4mmである。
曲げ試験は作製した試験片を島津製作所製のオートグラフAG-10kNXを用いて、ISO 178に準拠し、荷重速度2mm/minの3点曲げ試験を行い、曲げ弾性率を式(1)で評価した。
Figure 0006946683
ここで、Efは曲げ弾性率(MPa)、Lはスパン距離 (mm)、bは試験片の幅 (mm) 、hは試験片の厚さ(mm)、ΔFは弾性域内の荷重(N)、Δσは弾性域内の荷重に対するたわみ量(mm)である。
以上、評価した実施例1の燃焼試験、曲げ試験の結果を表1に記した。
(実施例2)
<植物繊維の作製>
実施例1のスギ植物繊維(B−1)を使用した。
<リグニン誘導体の作製>
リグニン誘導体には、実施例1のクラフトリグニンを使用した。
<マンニッヒ反応によるジメチルアミンの導入>
クラフトリグニン10gを80%ジオキサン300mlと酢酸30mLの混合液に溶かし、攪拌しながら50%ジメチルアミン液22.5mL (0.25 mol)と37%ホルムアルデヒド液18.7mL (0.25 mol)を加え、60℃ウォーターバス中で4時間反応させた。その後、反応液をアセトンに滴下し沈殿を吸引ろ過し、残渣を水洗し、デシケータ内で乾燥することで生成物を得た。
<塩化ホスホリルによるリン酸エステル化>
上記の反応生成物をピリジン250mLに溶かし、攪拌しながら塩化ホスホリル20mL (0.21 mol)を加え、1時間反応させた。その後、反応液を水に滴下することで反応を止め、遠心分離し(11000rpm、10min)、沈殿をアセトンにより繰り返し洗浄し、ドラフト内で風乾することで生成物を得た。反応生成物のリン含有率をフラスコ燃焼法(滴定法)により測定した。また、窒素含有量は元素分析(PerkinElmer社製 全自動元素分析装置(CHNS/O) 2400II)により測定した結果を合わせ、リン含有率が6〜7%台、窒素含有率が3〜4%の含窒素構造を有するリン酸化リグニン誘導体(C−2:アミノ基導入リン酸化リグニン)が得られていることを確認した。
<繊維強化難燃性樹脂組成物の作製>
ポリ乳酸70質量部に対して、前記スギ植物繊維(B−1)15質量部、前記アミノ基導入リン酸化リグニン(C−2)15質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
ポリ乳酸には、ネイチャーワークスジャパン株式会社製のIngeo3001Dを使用した。また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製のメタブレンA−3800(E−1)を使用した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
(実施例3)
<植物繊維の作製>
植物繊維の原料として、孟宗竹(直径10〜15cm)を使用した。
この原料を一次破砕機(奈良機械製作所、ハンマーミル HM-5)にて破砕し、恒温槽にて120℃12時間乾燥した後、さらに二次粉砕機(奈良機械製作所、自由粉砕機(Mill)M-2型)にて微粉砕を行い、さらに分級機により分級し、繊維長50μm〜100μmのリグニン含有量が15質量%の竹植物繊維(B−2)を得た。
<リン酸化リグニン誘導体の作製>
実施例2のアミノ基導入リン酸化リグニン(C−2)を使用した。
<繊維強化難燃性樹脂組成物の作製>
ポリ乳酸70質量部に対して、前記作製した竹植物繊維(B−2)15質量部、前記アミノ基導入リン酸化リグニン(C−2)15質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
ポリ乳酸には、ネイチャーワークスジャパン株式会社製のIngeo3001Dを使用した。また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製のメタブレンA−3800(E−1)を使用した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
(実施例4)
<植物繊維の作製>
実施例3の竹植物繊維(B−2)を使用した。
<リン酸化リグニン誘導体の作製>
実施例2のアミノ基導入リン酸化リグニン(C−2)を使用した。
<繊維強化難燃性樹脂組成物の作製>
PC/ABS樹脂65質量部に対して、前記竹植物繊維(B−2)15質量部、前記アミノ基導入リン酸化リグニン(C−2)15質量部、リン系難燃剤5質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
PC/ABS樹脂には、帝人化成株式会社製のマルチロンT-3714(A−2)を使用した。リン系難燃剤には株式会社ADEKA製アデカスタブFP−800(D−1)を使用し、また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製メタブレンA−3800(E−1)を使用した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
(比較例1)
<パルプ繊維の作製>
紙を原料に粉砕機(奈良機械製作所、自由粉砕機(Mill)M-2型)にて微粉砕を行い、さらに分級機により分級し、繊維長50〜100μmのリグニン含有量が0.1質量%未満のパルプ繊維(B−3)を得た。
<リグニン誘導体の作製>
リグニン誘導体には、クラフトリグニンを使用した。
このクラフトリグニンは、クラフト法(水酸化ナトリウム水溶液と硫化ナトリウム水溶液を蒸解液とするもの)によってパルプを製造する際に排出される蒸解液(黒液)中に含まれる。比較例1では、Aldrich社製の試薬、Lignin,alkali(370959)(C−3)を使用した。
<繊維強化難燃性樹脂組成物の作製>
ポリ乳酸70質量部に対して、前記作製したパルプ繊維15質量部、前記クラフトリグニン15質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
ポリ乳酸には、ネイチャーワークスジャパン株式会社製のIngeo3001Dを使用した。また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製のメタブレンA−3800(E−1)を使用した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
(比較例2)
<繊維強化難燃性樹脂組成物の作製>
実施例1で作製したスギ植物繊維(B−1)を使用し、ポリ乳酸85質量部に対して、スギ植物繊維(B−1)15質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
ポリ乳酸には、ネイチャーワークスジャパン株式会社製のIngeo3001Dを使用した。また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製のメタブレンA−3800(E−1)を使用した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
(比較例3)
<難燃性樹脂組成物の作製>
実施例1で作製したリン酸化リグニン誘導体を使用し、ポリ乳酸85質量部に対して、リン酸化リグニン誘導体15質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
ポリ乳酸には、ネイチャーワークスジャパン株式会社製のIngeo3001Dを使用した。また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製のメタブレンA−3800(E−1)を使用した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
(比較例4)
<植物繊維の作製>
比較例1のパルプ繊維(B−3)を使用した。
<リン酸化リグニン誘導体の作製>
実施例2のアミノ基導入リン酸化リグニン(C−2)を使用した。
<繊維強化難燃性樹脂組成物の作製>
ポリ乳酸65質量部に対して、パルプ繊維(B−3)15質量部、リン系難燃剤(D−1)5質量部、ポリフルオロオレフィン(E−1)0.5質量部を添加した。続いてこれらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
Figure 0006946683
A−1:ポリ乳酸 ネイチャーワークスジャパン株式会社 Ingeo3001D
A−2:PC/ABS樹脂 帝人化成株式会社 マルチロンT−3714
B−1:スギ植物繊維
B−2:竹植物繊維
B−3:パルプ繊維
B−4:スギ植物短繊維
C−1:クラフトリグニンのリン酸化物
C−2:アミノ基導入リン酸化リグニン
C−3:クラフトリグニン Aldrich社 Lignin, alkali(370959)
D−1:リン系難燃剤 株式会社ADEKA アデカスタブFP−800
E−1:ポリフルオロオレフィン 三菱レイヨン株式会社 メタブレンA−3800
表1は、実施例1〜4および比較例1〜4に使用した組成物の配合割合と、UL94垂直燃焼試験、および曲げ試験の結果を示している。難燃試験の結果はV-2条件を満たさない場合にはNGと記載した。
難燃試験の結果において、実施例1〜3では燃焼試験はV−2を満たした結果となり、実施例4ではV−1の結果となった。また、曲げ試験において、実施例1〜4では共に曲げ弾性率は2000MPa以上の結果となった。
一方、比較例1は、燃焼試験がNGとなり、曲げ弾性率も2000MPaを下回る結果となった。比較例2は曲げ弾性率が2000MPa以上であったが、難燃性がNGとなった。比較例3は、燃焼試験結果がV−2であったが、曲げ弾性率は2000MPaを下回る結果となった。比較例4は、燃焼試験がNGとなり、曲げ弾性率も2000MPaを下回る結果となった。
特開2005−23260号公報 国際公開第2004/063282号パンフレット 特開2002−356579号公報 国際公開第2003/082987号パンフレット 特開2004−256809号公報 特許5842526号公報 特開2014−169401号公報

Claims (10)

  1. 熱可塑性樹脂と、
    天然リグニンを由来とするリグニン誘導体にリン酸を付加してなるリン酸化リグニン誘導体からなる難燃剤と、
    リグニン成分を5質量%以上含む植物繊維と
    を含み、
    前記植物繊維が、繊維長50μmから500μmの範囲の繊維を80質量%以上含有する粉末であることを特徴とする繊維強化難燃性樹脂組成物。
  2. 前記植物繊維を、10質量%から50質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
  3. 前記リグニン誘導体が、ヒドロキシメチル化処理されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
  4. 前記リグニン誘導体が、クラフトリグニン、水熱処理した硫酸リグニンまたはアルカリリグニンのいずれかであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
  5. 前記リン酸化リグニン誘導体が、含窒素構造を有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
  6. 前記含窒素構造が、アミノ基、グアニジノ基またはメラミン基のいずれかであることを特徴とする請求項に記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
  7. 前記熱可塑性樹脂が、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルおよびカーボネート結合を有するポリマーから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
  8. 前記熱可塑性樹脂が、原料の少なくとも一部にバイオマスを使用している熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
  9. 難燃助剤をさらに含有し、前記難燃助剤が、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、臭素系難燃剤、無機系難燃剤およびポリフルオロオレフィンから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維難燃性樹脂組成物。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
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