JP6946683B2 - 繊維強化難燃性樹脂組成物および成形体 - Google Patents
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Description
特に複写機においては、内部に高温になる定着ユニットがあり、定着ユニット付近にも樹脂材料が使用されている。また、帯電ユニットのような高電圧を発生させるユニットや、電源ユニットは100Vの交流電源ユニットがあり、これらの最大消費電力は数100W〜500Wであり、100V、15A電源系統を利用するユニットで構成されている。
第1は、臭素系難燃剤に代表されるハロゲン系化合物である。燃焼した炎に対し、ハロゲン系化合物を酸化反応負触媒として働かせることなどにより燃焼速度を低下させる。
第2は、リン系難燃剤またはシリコーン系難燃剤である。燃焼中に樹脂の表面にシリコーン系難燃剤をブリードさせたり、リン酸系難燃剤を樹脂内で脱水反応を起こさせたりすることにより、表面に炭化物(チャー)を生成させて断熱皮膜の形成などにより燃焼を止める。
第3は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機系難燃剤である。樹脂の燃焼によってこれらの化合物が分解するときの吸熱反応や、生成した水の持つ蒸発潜熱などにより、樹脂全体を冷却させるなどして燃焼を止める。
なお、生分解性樹脂として、バイオマス由来樹脂ではなく、石油由来樹脂であって生分解する機能を持つ樹脂もある。
その対策として、石油系樹脂であるポリカーボネート樹脂とのポリマーアロイなどによって物性向上を図っている。しかし、石油系樹脂の含有割合が高くなり、バイオマス由来樹脂の含有割合が50%前後になってしまい、その結果、地球温暖化対策などの環境負荷削減のための化石使用量削減や二酸化炭素排出量削減に対する効果は半減してしまうという問題がある。
すなわち本発明は、石油依存度が低くかつバイオマス度が高いことにより環境負荷を低くすることができ、なおかつ、優れた難燃性および剛性を兼ね備えた繊維強化難燃性樹脂組成物を提供することを目的とする。
1)熱可塑性樹脂と、天然リグニンを由来とするリグニン誘導体にリン酸を付加してなるリン酸化リグニン誘導体からなる難燃剤と、リグニン成分を5質量%以上含む植物繊維とを含み、前記植物繊維が、繊維長50μmから500μmの範囲の繊維を80質量%以上含有する粉末であることを特徴とする繊維強化難燃性樹脂組成物。
本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、天然リグニンを由来とするリグニン誘導体にリン酸を付加してなるリン酸化リグニン誘導体を含む難燃剤と、リグニン成分を5質量%以上含む植物繊維とを含むことを特徴とする。
本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物は、天然リグニンを由来とするリン酸化リグニン誘導体を含むことにより、難燃性能を有した、バイオマス度の高い低環境負荷型の難燃性樹脂材料を得ることができる。また、リグニン誘導体は高分子物質であるために粘結性を有し、樹脂中の分散状態も安定していることから、使用時のブリードアウトを抑えることができるとともに、燃焼時における発泡層形成にも作用し、難燃性が向上する。また、本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物は、リグニン成分を5質量%以上含む植物繊維を含むことにより、繊維同士の絡み合い作用から曲げ弾性率などの剛性を向上させることができる。
したがって本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物からなる成形体は、優れた難燃性および剛性を兼ね備えていることから、複写機、プリンター等の画像出力機器、家電製品等の電気・電子機器などの部品に有用である。
前記熱可塑性樹脂はとくに制限されないが、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルおよびカーボネート結合を有するポリマーから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの熱可塑性樹脂を含むことにより、さらに難燃性能および剛性を高めることができる。
また熱可塑性樹脂は、原料の少なくとも一部にバイオマスを使用していることが好ましい。
前記芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、液晶ポリマー(LCP)、非晶ポリアリレート等を使用することができる。
前記脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸(PLA)、微生物産生ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等を使用することができる。
前記カーボネート結合を有するポリマーとしては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂等を使用することができる。
前記芳香族ポリカーボネート樹脂としては、適宜合成されたものでもよいし、市販品を用いることもできる。該市販品としては、例えば帝人化成株式会社のパンライト(商品名)、三菱化学エンジニアプラスチックス株式会社のユーピロン(商品名)などが挙げられる。
前記脂肪族ポリカーボネート樹脂としては、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート等や、環状構造を持つ脂環式ポリカーボネート等を使用することができる。
また熱可塑性樹脂としては、前記以外の樹脂を、本発明の効果を損なわない範囲で用いることもできる。
本発明における難燃剤は、天然リグニンを由来とするリグニン誘導体にリン酸を付加してなるリン酸化リグニン誘導体からなる。
天然リグニンとしては、天然木材に含まれるリグニン、稲わら、麦わら等の草本植物に含まれるリグニン等が挙げられる。
リグニン誘導体は、天然リグニンに所定の処理を施して得ることができる。所定の処理としては、天然木材からリグニンを取り除きパルプを得る処理方法が代表的な処理方法である。その1つとして、クラフト法によるパルプ処理がある。水酸化ナトリウム水溶液と硫化ナトリウム水溶液を蒸解液とする方法であり、天然木材からリグニンを分離するために低分子化処理を行い、リグニン誘導体が得られる(クラフトリグニン)。また、木材等の原料から硫酸を用いて糖化した残渣リグニンを、アルカリ水溶液中で水熱処理し、水溶化処理することにより、リグニン誘導体が得られる(水熱処理した硫酸リグニン)、また、稲わら、麦わら等の草本原料をアルカリ水溶液中で処理し、水溶化処理することによりリグニン誘導体が得られる(アルカリリグニン)。また、酵素糖化リグニンも使用できる。
本発明では、クラフトリグニン、水熱処理した硫酸リグニンまたはアルカリリグニンのいずれかが好ましい。前記リグニン誘導体が、クラフトリグニンであることにより、安価な原料を使用して、難燃性能を得ることができる。また、燃料としてカスケード利用されているクラフトリグニン(黒液)を高機能材料として使用することができ、環境負荷削減に寄与することができる。前記リグニン誘導体が、水熱処理した硫酸リグニンであることにより、安価な原料を使用して、難燃性能を得ることができる。前記リグニン誘導体が、アルカリリグニンであることにより、今まで、未利用資源であった糖化残渣リグニンを利用することが可能となり、安価な原料を使用して、難燃性能を得ることができる。
含窒素化合物としては、ジメチルアミン、グアニジン、メラミン等が挙げられ、グアニジンとしてはメチル基を含むものが好ましい。
その他の含窒素化合物としては次のものを挙げることができる。
N−ブチルジメチルアミン、N−アセチルジメチルアミン、N−アセトアセチルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセチルアセトングアニジン、ニトログアニジン、1−メチル−3−ニトログアニジン、シアノグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、トリクロロメラミン、2,4,6−トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(シクロプロピルアミノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ジアリルアミノ−1,3,5−トリアジン。
また、難燃剤中の窒素含有率は、2〜15質量%以上が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。
植物繊維としては、スギ、竹、綿、苧麻(ラミー)、亜麻(リネン)、マニラ麻、サイザル麻、黄麻(ジュート)、ケナフ、バナナ、ココナッツ、わら、サトウキビ、ヒノキ、トウヒ、松、モミ、カラマツ等を原料とする繊維が挙げられ、これら原料を公知の装置によって粉砕、分級したものを用いることができる。
植物繊維中のリグニン成分は、硫酸で他のセルロース、ヘミセルロース成分を溶解した後の残渣をリグニン量とする硫酸法により測定できる。
前記リン系難燃剤としては、特に制限はなく、例えば市販のリン系難燃剤を使用することができる。例えば、トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(t−ブチル化フェニル)ホスフェート、トリス(i−プロピル化フェニル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート、ビスフェノールA(ジフェニルホスフェート)、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、2,2−ビス(クロロメチル)トリメチレンビス(ビス(2−クロロエチル)ホスフェート)、ポリオキシアルキレンビスジクロロアルキルホスフェート、赤リン等が使用できる。
前記窒素化合物系難燃剤としては、特に制限はなく、例えばリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、等を使用することができる。
前記シリコーン系難燃剤としては、特に制限はなく、例えばシリコーン樹脂、シリコーンゴム、シリコーンオイル、等を使用することができる。
前記シリコーン樹脂としては、SiO2、RSiO3/2、R2SiO、R3SiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などが挙げられる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、ベンジル基等の芳香族基;前記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。
前記シリコーンオイルとしては、例えばポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1つのメチル基が、水素原子、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、及びトリフロロメチル基から選ばれる少なくとも1つの基により変性された変性ポリシロキサン、又はこれらの混合物などが挙げられる。
前記臭素系難燃剤としては、特に制限はなく、市販の臭素系難燃剤を使用することができる。例えば、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、1,2−ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,6−or(2,4−)ジブロモフェノール、臭素化ポリスチレン、ポリ臭素化スチレン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモベンジルアクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、等を使用することができる。
前記無機系難燃剤としては、特に制限はなく、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、等を使用することができる。
前記ポリフルオロオレフィンとしては、特に制限はなく、例えば市販のポリフルオロオレフィンを使用することができる。また、ポリフルオロオレフィンがメチルメタアクリレート樹脂で被覆されたものとしては、商品名メタブレンAタイプ(三菱レイヨン)等が使用できる。
前記難燃助剤の含有量は、難燃剤の種類に応じて、最適な添加割合が異なり特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、公知の添加剤の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば相溶化剤、可塑化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、加水分解抑制剤、結晶化核剤、繊維表面処理剤などが挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択した量を使用することができ、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記加水分解抑制剤としては、例えばカルボジイミド変性イソシアネート、有機ホスファイト金属塩化合物、テトライソシアネートシラン、モノメチルイソシアネートシラン、アルコキシシラン、スチレン・2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合体、2,2−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、などが挙げられる。
前記結晶化核剤としては、例えばタルク系核剤、フェニル基を持つ金属塩系材料からなる核剤、ベンゾイル化合物系からなる核剤などが好適に挙げられる。その他公知の結晶化核剤、例えば乳酸塩、安息香酸塩、シリカ、リン酸エステル塩系などを用いても問題はない。
前記繊維表面処理剤としては、繊維表面を変性させるためのシランカップリング剤やマレイン酸変性などが挙げられる。
本発明の成形体は、本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
本発明の成形体は、本発明の前記繊維強化難燃性樹脂組成物を成形してなること以外には、特に制限はなく、その形状、構造、大きさ等については目的に応じて適宜選択することができる。
前記成形の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、フィルム成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファ成形、カレンダー成形、熱成形、流動成形、積層成形、などが挙げられる。これらの中でも、成形体を複写機、プリンター等の画像出力機器、家電製品等の電気・電子機器などとして使用する場合には、フィルム成形、押出成形、及び射出成形から選択されるいずれかが好ましく、射出成形が特に好ましい。
例えば複写機の外装カバー等の筐体部品の成形には、350トンの電動射出成形機を用いて水温度調節器で温度設定が可能な金型を用いて、金型温度40℃、射出圧力90MPa、射出速度10mm/sec、の成形条件で成形することにより、外観、寸法を満足する成形品を得ることが可能になる。
本発明の成形体は、石油依存度が低くかつバイオマス度が高いことにより環境負荷を低くすることができ、なおかつ、優れた難燃性および剛性を兼ね備えていることから、複写機、プリンター等の画像出力機器、家電製品等の電気・電子機器などの部品に有用である。その他、自動車の内装部品等にも好適である。
<植物繊維の作製>
植物繊維の原料として、製材後のスギ間伐材を使用した。
この原料を一次破砕機(奈良機械製作所、ハンマーミル HM-5)にて破砕し、恒温槽にて120℃12時間乾燥した後、さらに二次粉砕機(奈良機械製作所、自由粉砕機(Mill)M-2型)にて微粉砕を行い、さらに分級機により分級し、繊維長50μm〜100μm、リグニン含有量が30質量%のスギ植物繊維(B−1)を得た。
リグニン誘導体には、クラフトリグニンを使用した。
クラフトリグニンは、クラフト法(水酸化ナトリウム水溶液と硫化ナトリウム水溶液を蒸解液とするもの)によってパルプを製造する際に排出される蒸解液(黒液)中に含まれる。実施例1では、Aldrich社製の試薬、Lignin,alkali(370959)を使用した。
リグニン誘導体をピリジンに溶解し、塩化ホスホリルを加え、室温で1時間攪拌した。この反応においてピリジンはリグニン誘導体が全て溶解する量を用いた。反応後、生じた沈殿物を濾過により回収した。反応生成物のリン含有率をフラスコ燃焼法(滴定法)により測定した結果から、リン含有率が7.2%のリン酸化リグニン誘導体(C−1:クラフトリグニンのリン酸化物)が得られていることを確認した。
ポリ乳酸70質量部に対して、前記スギ植物繊維(B−1)15質量部、リン酸化リグニン誘導体(C−1)15質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で170℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
ポリ乳酸には、ネイチャーワークスジャパン株式会社製のIngeo3001Dを使用した。また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製のメタブレンA−3800(E−1)を使用した。
上述のようにして作製したペレットを、棚式の熱風乾燥機を用いて60℃で5時間乾燥処理を施し、その後、型締力100トンの電動式射出成形機を使用して金型温度40℃、シリンダー温度190℃、射出速度20mm/sec、射出圧力100MPa、冷却時間30secの設定で、UL94垂直燃焼試験用の短冊試験片を作製した。 作製した短冊試験片は、幅13mm、長さ125mm、厚さ1.6mmである。
上述のようにして作製した試験片を、50℃で72時間のエージングした後、湿度20%のデシケータ内で3時間冷却した。 次いで、試験片を5本で1セットとし、UL94規格に準拠した垂直燃焼試験を行った。 試験方法について以下に説明する。
各試験片の上端部をクランプし、垂直状態で保持し、各試験片の下端部から300±10mm下方に脱脂綿(0.8g以下、50mm角)を置き、後述する燃焼試験によって溶融物が脱脂綿上に落下することを確認する。 各試験片の下端部からバーナーで接炎(1回目)を10±1秒間行い、その後、約300mm/秒の速度でバーナーを試験片から離す。 燃焼が消えたら直ちにバーナーをサンプルの下端部に戻し、接炎(2回目)を10±1秒間行った。 5本1セットの試験片について、合計10回の接炎を行い、各試験片の燃焼時間を記録した。 ここで、「燃焼時間」とは、離炎後の燃焼継続時間を意味する。 1回目の燃焼時間をt1、2回目の燃焼時間をt2、2回目の燃焼後火種継続時間をt3とした。 ここで、「2回目の燃焼後火種継続時間」とは、試験片において炎は消えているが、試験片に赤く火種が残った状態が続く時間を言うものとする。
上述したUL94垂直燃焼試験による判定を下記の方法により行った。
(1)各試験片の、測定された離炎後の燃焼継続がt1、t2であり、これらが10秒以下ならV-0、30秒以下ならV-1もしくはV-2と判定した。 V-1、V-2判定上区別する境界については、下記(5)記載の評価による、燃焼時の滴下物でコットン着火するかどうかが基準となる。コットン着火した場合はV-2になり、着火が無い場合には、V-1となる。
(2)5本の試験片全ての燃焼継続時間(t1+t2)が、50秒以下ならばV-0、250秒以下ならばV-1もしくはV-2と判定した。
(3)2回目接炎後の燃焼継続時間と火種継続時間の合計(t2+t3)が、30秒以下ならばV-0、60秒以下ならばV-1もしくはV-2と判定した。
(4)クランプまで燃える燃焼がないことを確認できれば、合格とした。
(5)燃焼物や落下物による脱脂綿の発火について評価した。発火無しならばV-0もしくはV-1と判定し、発火ありならV-2と判定した。
ここで、発火が無い場合のV-0とV-1の境界は、上記(2)、(3)の燃焼継続時間(t1+t2)と(t2+t3)の測定結果が基準となる。t1+t2が50秒以下ならばV-0となり、50秒より大きく250秒以下ならばV-1となる。 また、t2+t3が30秒以下ならばV-0となり、30秒より大きく60秒以下ならばV-1となる。上記(1)〜(5)のそれぞれについて、V-0、V-1、V-2の条件を全て満たすものが実用上合格レベルにあるものと評価した。
上記で製作したペレットを、棚式の熱風乾燥機を用いて80℃で5時間乾燥処理を施し、その後、型締力100トンの電動式射出成形機を使用して金型温度40℃、シリンダー温度190℃、射出速度20mm/sec、射出圧力100MPa、冷却時間30secの設定で、曲げ試験用の万能試験片を作製した。 作製した短冊試験片は、幅10mm、長さ80mm、厚さ4mmである。
曲げ試験は作製した試験片を島津製作所製のオートグラフAG-10kNXを用いて、ISO 178に準拠し、荷重速度2mm/minの3点曲げ試験を行い、曲げ弾性率を式(1)で評価した。
以上、評価した実施例1の燃焼試験、曲げ試験の結果を表1に記した。
<植物繊維の作製>
実施例1のスギ植物繊維(B−1)を使用した。
<リグニン誘導体の作製>
リグニン誘導体には、実施例1のクラフトリグニンを使用した。
<マンニッヒ反応によるジメチルアミンの導入>
クラフトリグニン10gを80%ジオキサン300mlと酢酸30mLの混合液に溶かし、攪拌しながら50%ジメチルアミン液22.5mL (0.25 mol)と37%ホルムアルデヒド液18.7mL (0.25 mol)を加え、60℃ウォーターバス中で4時間反応させた。その後、反応液をアセトンに滴下し沈殿を吸引ろ過し、残渣を水洗し、デシケータ内で乾燥することで生成物を得た。
<塩化ホスホリルによるリン酸エステル化>
上記の反応生成物をピリジン250mLに溶かし、攪拌しながら塩化ホスホリル20mL (0.21 mol)を加え、1時間反応させた。その後、反応液を水に滴下することで反応を止め、遠心分離し(11000rpm、10min)、沈殿をアセトンにより繰り返し洗浄し、ドラフト内で風乾することで生成物を得た。反応生成物のリン含有率をフラスコ燃焼法(滴定法)により測定した。また、窒素含有量は元素分析(PerkinElmer社製 全自動元素分析装置(CHNS/O) 2400II)により測定した結果を合わせ、リン含有率が6〜7%台、窒素含有率が3〜4%の含窒素構造を有するリン酸化リグニン誘導体(C−2:アミノ基導入リン酸化リグニン)が得られていることを確認した。
ポリ乳酸70質量部に対して、前記スギ植物繊維(B−1)15質量部、前記アミノ基導入リン酸化リグニン(C−2)15質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
ポリ乳酸には、ネイチャーワークスジャパン株式会社製のIngeo3001Dを使用した。また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製のメタブレンA−3800(E−1)を使用した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
<植物繊維の作製>
植物繊維の原料として、孟宗竹(直径10〜15cm)を使用した。
この原料を一次破砕機(奈良機械製作所、ハンマーミル HM-5)にて破砕し、恒温槽にて120℃12時間乾燥した後、さらに二次粉砕機(奈良機械製作所、自由粉砕機(Mill)M-2型)にて微粉砕を行い、さらに分級機により分級し、繊維長50μm〜100μmのリグニン含有量が15質量%の竹植物繊維(B−2)を得た。
<リン酸化リグニン誘導体の作製>
実施例2のアミノ基導入リン酸化リグニン(C−2)を使用した。
<繊維強化難燃性樹脂組成物の作製>
ポリ乳酸70質量部に対して、前記作製した竹植物繊維(B−2)15質量部、前記アミノ基導入リン酸化リグニン(C−2)15質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
ポリ乳酸には、ネイチャーワークスジャパン株式会社製のIngeo3001Dを使用した。また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製のメタブレンA−3800(E−1)を使用した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
<植物繊維の作製>
実施例3の竹植物繊維(B−2)を使用した。
<リン酸化リグニン誘導体の作製>
実施例2のアミノ基導入リン酸化リグニン(C−2)を使用した。
<繊維強化難燃性樹脂組成物の作製>
PC/ABS樹脂65質量部に対して、前記竹植物繊維(B−2)15質量部、前記アミノ基導入リン酸化リグニン(C−2)15質量部、リン系難燃剤5質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
PC/ABS樹脂には、帝人化成株式会社製のマルチロンT-3714(A−2)を使用した。リン系難燃剤には株式会社ADEKA製アデカスタブFP−800(D−1)を使用し、また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製メタブレンA−3800(E−1)を使用した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
<パルプ繊維の作製>
紙を原料に粉砕機(奈良機械製作所、自由粉砕機(Mill)M-2型)にて微粉砕を行い、さらに分級機により分級し、繊維長50〜100μmのリグニン含有量が0.1質量%未満のパルプ繊維(B−3)を得た。
<リグニン誘導体の作製>
リグニン誘導体には、クラフトリグニンを使用した。
このクラフトリグニンは、クラフト法(水酸化ナトリウム水溶液と硫化ナトリウム水溶液を蒸解液とするもの)によってパルプを製造する際に排出される蒸解液(黒液)中に含まれる。比較例1では、Aldrich社製の試薬、Lignin,alkali(370959)(C−3)を使用した。
ポリ乳酸70質量部に対して、前記作製したパルプ繊維15質量部、前記クラフトリグニン15質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
ポリ乳酸には、ネイチャーワークスジャパン株式会社製のIngeo3001Dを使用した。また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製のメタブレンA−3800(E−1)を使用した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
<繊維強化難燃性樹脂組成物の作製>
実施例1で作製したスギ植物繊維(B−1)を使用し、ポリ乳酸85質量部に対して、スギ植物繊維(B−1)15質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
ポリ乳酸には、ネイチャーワークスジャパン株式会社製のIngeo3001Dを使用した。また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製のメタブレンA−3800(E−1)を使用した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
<難燃性樹脂組成物の作製>
実施例1で作製したリン酸化リグニン誘導体を使用し、ポリ乳酸85質量部に対して、リン酸化リグニン誘導体15質量部、ポリフルオロオレフィン0.5質量部を添加した。 これらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
ポリ乳酸には、ネイチャーワークスジャパン株式会社製のIngeo3001Dを使用した。また、ポリフルオロオレフィンには、三菱レイヨン株式会社製のメタブレンA−3800(E−1)を使用した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
<植物繊維の作製>
比較例1のパルプ繊維(B−3)を使用した。
<リン酸化リグニン誘導体の作製>
実施例2のアミノ基導入リン酸化リグニン(C−2)を使用した。
<繊維強化難燃性樹脂組成物の作製>
ポリ乳酸65質量部に対して、パルプ繊維(B−3)15質量部、リン系難燃剤(D−1)5質量部、ポリフルオロオレフィン(E−1)0.5質量部を添加した。続いてこれらをドライブレンドした後に、2軸混練押出機で190℃の温度で溶融混練して、3mm角程度の成形用ペレットを作製した。
以下、実施例1と同様に試験片を作製し、燃焼試験、曲げ試験を実施した。その結果を表1に示す。
A−2:PC/ABS樹脂 帝人化成株式会社 マルチロンT−3714
B−1:スギ植物繊維
B−2:竹植物繊維
B−3:パルプ繊維
B−4:スギ植物短繊維
C−1:クラフトリグニンのリン酸化物
C−2:アミノ基導入リン酸化リグニン
C−3:クラフトリグニン Aldrich社 Lignin, alkali(370959)
D−1:リン系難燃剤 株式会社ADEKA アデカスタブFP−800
E−1:ポリフルオロオレフィン 三菱レイヨン株式会社 メタブレンA−3800
難燃試験の結果において、実施例1〜3では燃焼試験はV−2を満たした結果となり、実施例4ではV−1の結果となった。また、曲げ試験において、実施例1〜4では共に曲げ弾性率は2000MPa以上の結果となった。
一方、比較例1は、燃焼試験がNGとなり、曲げ弾性率も2000MPaを下回る結果となった。比較例2は曲げ弾性率が2000MPa以上であったが、難燃性がNGとなった。比較例3は、燃焼試験結果がV−2であったが、曲げ弾性率は2000MPaを下回る結果となった。比較例4は、燃焼試験がNGとなり、曲げ弾性率も2000MPaを下回る結果となった。
Claims (10)
- 熱可塑性樹脂と、
天然リグニンを由来とするリグニン誘導体にリン酸を付加してなるリン酸化リグニン誘導体からなる難燃剤と、
リグニン成分を5質量%以上含む植物繊維と
を含み、
前記植物繊維が、繊維長50μmから500μmの範囲の繊維を80質量%以上含有する粉末であることを特徴とする繊維強化難燃性樹脂組成物。 - 前記植物繊維を、10質量%から50質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
- 前記リグニン誘導体が、ヒドロキシメチル化処理されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
- 前記リグニン誘導体が、クラフトリグニン、水熱処理した硫酸リグニンまたはアルカリリグニンのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
- 前記リン酸化リグニン誘導体が、含窒素構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
- 前記含窒素構造が、アミノ基、グアニジノ基またはメラミン基のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂が、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルおよびカーボネート結合を有するポリマーから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂が、原料の少なくとも一部にバイオマスを使用している熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化難燃性樹脂組成物。
- 難燃助剤をさらに含有し、前記難燃助剤が、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、臭素系難燃剤、無機系難燃剤およびポリフルオロオレフィンから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の繊維難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の繊維強化難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
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