本発明は、2系統巻線を有するモータをFETで成るインバータで駆動制御する2系統制御のモータ制御装置及びそれを搭載した電動パワーステアリング装置に関し、特に2系統制御の一方が異常若しくは故障となって片方制御系でアシスト制御を行っているときに、外力によってモータが高速回転しても過電圧によって、正常系統のインバータ(FET)が破損することを防止するようにしたモータ制御装置及びそれを搭載した電動パワーステアリング装置に関する。
モータ制御装置を搭載し、車両のステアリング機構にモータの回転力で操舵補助力(アシスト力)を付与する電動パワーステアリング装置(EPS)は、モータの駆動力を減速機を介してギア又はベルト等の伝達機構により、ステアリングシャフト或いはラック軸に操舵補助力を付与するようになっている。かかる従来の電動パワーステアリング装置は、操舵補助力のトルクを正確に発生させるため、モータ電流のフィードバック制御を行っている。フィードバック制御は、操舵補助指令値(電流指令値)とモータ電流検出値との差が小さくなるようにモータ印加電圧を調整するものであり、モータ印加電圧の調整は、一般的にPWM(Pulse Width Modulation)制御のデューティの調整で行っている。
電動パワーステアリング装置(EPS)の一般的な構成を図1に示して説明すると、ハンドル1のコラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)2は減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a及び4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、更にハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。また、コラム軸2には、ハンドル1の操舵トルクを検出するトルクセンサ10が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介してコラム軸2に連結されている。電動パワーステアリング装置を制御するコントロールユニット(ECU(Electronic Control Unit))30には、電源としてのバッテリ13から電力が供給されると共に、イグニションキー11を経てイグニションキー信号が入力される。コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクThと車速センサ12で検出された車速Vsとに基づいてアシスト(操舵補助)指令の電流指令値の演算を行い、演算された電流指令値に補償等を施した電圧制御値Vrefによってモータ20に供給する電流を制御する。舵角センサ14は必須のものではなく、配設されていなくても良く、モータ20に連結された回転センサから得ることもできる。
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40が接続されており、車速VsはCAN40から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/ディジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続されている。
このような電動パワーステアリング装置において、コントロールユニット30は主としてMCU(Micro Controller Unit)(CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等を含む)の制御部で構成されるが、制御部でプログラムにより実行される一般的な機能を示すと、例えば図2に示されるような構成となっている。
図2を参照してコントロールユニット30の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10からの操舵トルクTh及び車速センサ12からの車速Vsは電流指令値演算部31に入力され、電流指令値演算部31は操舵トルクTh及び車速Vsに基づいてアシストマップ等を用いて電流指令値Iref1を演算する。演算された電流指令値Iref1は加算部32Aで、特性を改善するための補償部34からの補償信号CMと加算され、加算された電流指令値Iref2が電流制限部33で最大値を制限され、最大値を制限された電流指令値Irefmが減算部32Bに入力され、モータ電流検出値Imと減算される。
減算部32Bでの減算結果I(=Irefm−Im)はPI制御部35でPI(Proportional-Integral)制御され、PI制御された電圧制御値Vrefが変調信号CFと共にPWM制御部36に入力されてデューティを演算され、デューティを演算されたPWM信号でインバータ37を介してモータ20をPWM駆動する。モータ20のモータ電流値Imはモータ電流検出手段38で検出され、減算部32Bに入力されてフィードバックされる。
補償部34は、検出若しくは推定されたセルフアライニングトルク(SAT)を加算部344で慣性補償値342と加算し、その加算結果に更に加算部345で収れん性制御値341を加算し、その加算結果を補償信号CMとして加算部32Aに入力し、特性改善する。
モータ20が3相ブラシレスモータの場合、PWM制御部36及びインバータ37の詳細は例えば図3に示すような構成となっており、PWM制御部36は、電圧制御値Vrefを所定式に従って3相分のPWMデューティ値D1〜D6を演算するデューティ演算部36Aと、PWMデューティ値D1〜D6で駆動素子としてのFETのゲートを駆動すると共に、デッドタイムの補償をしてON/OFFするゲート駆動部36Bとで構成されている。デューティ演算部36Aには変調信号CFが入力されており、デューティ演算部36Aは変調信号CFに同期してPWMデューティ値D1〜D6を演算する。インバータ37はFETの3相ブリッジで構成されており、各FETがPWMデューティ値D1〜D6でON/OFFされることによってモータ20を駆動する。
なお、インバータ37とモータ20との間には、アシスト制御停止時等にモータ20への電流の供給を遮断するためのモータリレー23が介挿されている。モータリレー23は、各相に介挿された寄生ダイオード付きのFETで構成されている。
このような電動パワーステアリング装置では、近年、安全性の面から操舵系の冗長化が要請され、アシスト制御用のモータも2系統モ−タ巻線を有するモータが使用される。例えば図4はスター結線(Y結線)の2系統巻線を有する3相モータを示しており、1系統がU相巻線UW1、V相巻線VW1、W相巻線WW1で構成され、他の1系統がU相巻線UW2、V相巻線VW2、W相巻線WW2で構成されている。巻線UW1〜WW1及び巻線UW2〜WW2に3相電流を流すことによってモータが駆動される。また、図5はデルタ結線(Δ結線)の2系統巻線を有する3相モータを示しており、1系統がU相巻線UW1、V相巻線VW1、W相巻線WW1で構成され、他の1系統がU相巻線UW2、V相巻線VW2、W相巻線WW2で構成されている。巻線UW1〜WW1及び巻線UW2〜WW2に3相電流を流すことによってモータが駆動される。
このような2系統モータ巻線を有するモータのモータ制御装置の構成例は図6に示すようになっており、全体の制御や演算等を行うMCU210SがECU200S内に設けられ、モータ120の第1系統の巻線#1は、FETU1,V1,W1で成るモータリレー122Aを介してインバータ121Aで駆動され、モータ120の第2系統の巻線#2は、FETU2,V2,W2で成るモータリレー122Bを介してインバータ121Bで駆動される。インバータ121Aには、逆接保護FET11A及び電源遮断FET10Aで成る電源リレー123Aを介して電源(バッテリ)VRB1から電力が供給され、インバータ121Bには、逆接保護FET11B及び電源遮断FET10Bで成る電源リレー123Bを介して電源VRB2(バッテリ)から電力が供給される。インバータ121A及び121Bの各上下段FETは、MCU210Sで演算されたPWMデューティ値DSA及びDSBでON/OFFされ、モータ120が駆動制御される。また、電源リレー123A及び123BはMCU210Sからの切換信号BLA1及びBLB1によってON/OFFされ、モータリレー122A及び122BはMCU210Sからの切換信号BLA2及びBLB2によってON/OFFされる。なお、図6では異常(故障を含む)検出手段の表示を省略している。
一方の制御系統が異常となり、異常系統の電源リレー、モータリレーをOFFした状態で、片方の制御系でアシスト制御しているとき、走行中にタイヤが縁石等に乗り上げる等の理由から、モータ120の回転数が大きくなり、それに従って大きな誘起電圧(逆起電圧)が発生することがある。通常この逆起電圧はバッテリに回生されるのであるが、異常系統は電源リレー、モータリレーがOFFしているため回生ができない。このため、誘起電圧が過電圧になると、回生経路の回路素子であるFETが破損する恐れがある。
このような電動パワーステアリング装置において、例えば特開2013−215040号公報(特許文献1)では2系統のいずれかのインバータが故障したとき、故障系統のインバータに接続する電源リレーのうち、電源遮断FETのみを遮断して電力供給を停止し、外力による回転でモータが発生する誘起電圧によって故障系統の回路素子が破損することを防止するモータ制御装置が開示されている。即ち、第1系統にて故障検出手段がインバータ121Aの故障を検出すると、MCU210Sはインバータ121Aの駆動を停止すると共に、電源遮断FET10AをOFFして逆接保護FET11AをONする。インバータ121Aの駆動が停止した状態で、外力による回転でモータ120の第1系統の巻線#1に発生した誘起電圧は、インバータ121Aから逆接保護FET11Aを通り、さらに電源遮断FET10Aの寄生ダイオードを通ってバッテリへ回生するようにして、故障系統の回路素子の破損を防止している。
特開2013−215040号公報
特開2016−167971号公報
しかしながら、特許文献1の装置では、以下のような問題点がある。逆接保護FET11AのON操作の場合、回生電流は電源へと回生される。電源回生の場合、バッテリの内部抵抗及びバッテリ-ECU間の配線抵抗によって、ECUの端子間電圧が上昇する可能性がある。バッテリが弱っている等の状況下でバッテリの内部抵抗が大きい場合を考えると、電源電圧は上昇し過ぎる可能性がある。例えば、回生電流を70[A]と仮定し、配線抵抗+バッテリ内部抵抗が100mΩと仮定すると、電源電圧が7[V]程度上昇し、正常な電源電圧を12[V]としても19[V]まで上昇することになる。
一般的に電動パワーステアリングのECUは、一定の電圧以上では、ECUは素子保護のためFETの駆動を停止す制御を行っているので、この様に電源回生により電源電圧が上昇し、FETの駆動が停止されてしまうと逆接保護FETもOFFとなってしまい、所望のFET保護効果が得られないといった問題がある。
また、電源リレーのFETを過電圧から保護するために、モータ回転数を基に電源リレーFETを通電して誘起電圧を回生させる経路を設けるモータ制御装置が、特開2016−167971号公報(特許文献2)に開示されている。しかしながら、特許文献2は2系統モータ巻線を有する2系統制御ではなく、2系統の一方が故障した場合の対策を想定したものではない。
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、2系統巻線を有するモータを2系統制御系のインバータで駆動し、2系統制御系とモータとの間にモータリレーが接続されている構成であり、一方の制御系のインバータが異常(故障を含む)となり、電源リレーが遮断状態となった場合に、他方の正常な制御系のインバータでEPS制御を続けているときに、タイヤが縁石に乗り上げる等の理由からモータに大きな逆起電圧が発生し、停止している異常系統の回路素子であるFETの破損を防止するため、異常系統の上段FET若しくは下段FETとモータリレーをONにして、回生電流経路を形成するモータ制御装置及びそれを搭載した電動パワーステアリング装置を提供することにある。
本発明は、ECUで演算された電流指令値に基づくデューティ値により、上段FET及び下段FETのブリッジ回路で成る2系統のインバータを介して、2系統モータ巻線を有するモータを駆動制御するモータ制御装置に関し、本発明の上記目的は、前記2系統巻線と前記2系統の前記インバータとの間に、それぞれFETで成るモータリレーが介挿されると共に、前記モータの回転数を検出して、前記回転数が所定回転数以上であるか否かを判定するモータ回転数判定部が設けられており、前記インバータのいずれか一方の異常が検出されたとき、前記異常が検出された系統のインバータの上段FET及び下段FETを全てOFFすると共に、前記異常が検出された系統のモータリレーのFETを全てOFFし、前記モータ回転数判定部により前記モータ回転数が所定回転数に達していないことが判定されているときには、前記異常が検出された系統のインバータの上段FET及び下段FETを全てOFFに維持していると共に、前記異常が検出された系統のモータリレーのFETを全てOFFに維持しており、前記モータ回転数が前記所定回転数以上であることが判定されたときに、前記異常が検出された系統のインバータの上段FET又は下段FETをONすると共に、前記異常が検出された系統のモータリレーのFETを全てONする制御機能を具備し、前記制御機能をMCUによって実行することにより達成される。
上記モータ制御装置を搭載し、少なくとも操舵トルクに基づいて演算された電流指令値により、車両の操舵系にアシスト力を付与する電動パワーステアリング装置により上記目的は達成される。
本発明のモータ制御装置によれば、片側制御において、異常系統のモータで発生した逆起電圧を閉回路の回生電流経路の形成によって確実に回生することができるため、FETの耐圧を超えて異常系統のFETの2次的な破損を防止することができる。インバータの下段FET若しくは上段FETとモータリレーのONでインバータ内での回生電流経路となるため、電源への回生は行われず、電源電圧の上昇によるFETの駆動不可というリスクが低減されるというメリットがある。
上記機能を有するモータ制御装置を電動パワーステアリング装置に搭載することにより、信頼性高いECUを具備した電動パワーステアリング装置を提供できる。
電動パワーステアリング装置の概要を示す構成図である。
電動パワーステアリング装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
PWM制御部及びインバータの構成例を示す結線図である。
2系統巻線(スター結線、Y結線)を有するモータの巻線模式図である。
2系統巻線(デルタ結線、Δ結線)を有するモータの巻線模式図である。
2系統巻線(スター結線、Y結線)を有するモータの2系統制御の構成例を示す結線図である。
本発明の構成作例を示す結線図である
モータ回転数と逆起電圧の特性例を示す特性図である。
本発明の動作例を示すフローチャートである
電流経路の一例を示す結線図である。
本発明の動作を従来例と比較して示す図である。
本発明は冗長系の2系統制御システムを前提としているため、一方の制御系統のインバータが異常となったが、他方の制御系統のインバータは正常という片系統制御の状況を考慮する必要がある。これは、一方のインバータが異常停止状態のまま、他方の正常な制御系統のみでアシスト制御(車両走行)が継続的に行われることを意味する。そして、一方の制御系統が異常停止状態でアシスト制御が継続的に行われている場合、車両の縁石乗り上げ等の過大な外力によって、モータが高速回転することがあり得る。本発明は、このような2系統制御の内の一方の制御系統が異常停止しているときに、過大な外力によってモータが高速回転すると、その異常系統内のFETが過電圧により破損してしまうので、モータの高速回転を検出したときに、異常系統のFETを再度ONしてFETの破損を防止するようにしている。
そのため、モータ回転数がFETの耐圧近くの所定回転数になったことを判定し、モータ回転数が所定回転数以上となったときに関連するFETをONして、閉回路の回生電流経路を形成してモータ誘起電圧(逆起電圧)に基づく電流をインバータ内で回生している。
本発明では片側異常時に、異常系統のインバータ及び電源リレー、モータリレーをOFFする。縁石乗り上げ等の高速回転時は、インバータ、モータリレー及び電源リレーがOFFのために異常系統の誘起逆起電圧を回生できない。そのため、異常系統のFETが破壊されてしまう恐れがある。異常系統のFETの破壊が問題となる理由は、停止させている系統はモータリレーのOFFによってこのモータを停止させており、逆起電圧によってモータリレーが短絡故障を起こしてしまうと、モータの停止機能が確保できなくなるためである。このため、異常系統のFETが逆起電圧によって破壊されないようにするため、高速回転時のみ、異常系統のモータリレーとインバータ下段FET若しくは下段FETとをONさせ、逆起電圧を回生させる。高速回転時のみに実行するのは、低速回転で同じ動作をさせると電磁ブレーキになってしまうからである。高速回転時に電磁ブレーキが許容されるのは、FETが破壊される程の高速回転は、通常の制御では使用されないからである。
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図7は本発明の実施形態を図6に対応させて示しており、インバータ121Aの異常(故障を含む)を検出する異常検出手段201Aが設けられており、異常検出手段201Aが異常を検出したときに異常検出信号ALAが出力され、異常検出信号ALAはECU200内のMCU210に入力される。同様に、インバータ121Bの異常(故障を含む)を検出する異常検出手段201Bが設けられており、異常検出手段201Bが異常を検出したときに異常検出信号ALBが出力され、異常検出信号ALBはMCU210に入力される。また、2系統巻線(巻線#1及び巻線#2)を有するモータ120の出力軸120Sには、レゾルバ等のモータ回転センサ130が設けられており、モータ回転センサ130からのモータ回転数rpmはモータ回転数判定部140に入力される。モータ回転数判定部140はモータ回転数rpmを設定された所定回転数rpm1と比較し、モータ回転数rpmが所定回転数rpm1以上となったときに、回転数判定信号RVを出力する。回転数判定信号RVはMCU210に入力される。
モータ回転数rpmとモータ120の誘起電圧(逆起電圧)EMFの関係は、例えば図8に示すような特性であるので、FETを破損する寸前の逆起電圧EMF1に対応するモータ回転数rpm1を所定回転数とする。図8では、FETを破損する逆起電圧がEMF2となっており、逆起電圧がEMF2より小さい逆起電圧に対応するモータ回転数を所定回転数rpm1として設定する。
MCU210は、モータ回転数判定部140からrpm1以上の回転数判定信号RVが入力されたときに、例えば第1系統が異常のときは、切換信号BLA1による電源リレー123Aの電源遮断FET10A及び逆接保護FET11AのOFFを継続し、切換信号BLA2によりモータリレー122AのFETU1〜W1をONすると共に、切換信号MRAによりインバータ121Aの下段FET4A〜6AをONする。また、第2系統が異常のときは、切換信号BLB1による電源リレー123Bの電源遮断FET10B及び逆接保護FET11BのOFFを継続し、切換信号BLB2によりモータリレー122BのFETU2〜W2をONすると共に、切換信号MRBによりインバータ121Bの下段FET4B〜6BをONする。
このような構成において、本発明の動作例を図9のフローチャートを参照して説明する。
動作がスタートすると操舵トルクTh及び車速VsがECU200内のMCU210に入力され(ステップS10)、MCU210は操舵トルクTh及び車速Vsに基づいて電流指令値を演算すると共に、電流指令値からPWM制御のデューティ値DSA及びDSBを演算する(ステップS11)。演算されたデューティ値DSA及びDSBに基づいて2系統巻線を有するモータ120が駆動されてアシスト制御が行われ(ステップS12)、異常検出手段201A又は201Bがインバータ121A又は121Bの異常を検出するまで上記動作が繰り返される(ステップS13)。
そして、異常検出手段201A又は201Bがインバータ121A又は121Bの異常を検出すると(ステップS13)、正常系統のFETはそのままで、異常系統のFETをOFFにする(ステップS20)。
例えば第1系統の異常検出手段201Aがインバータ121Aの異常を検出したとすると、異常検出手段201Aからの異常検出信号ALAがMCU210に入力されるので、MCU210は第1系統が異常になったことを把握し、切換信号BLA1で電源リレー123Aの電源遮断FET10A及び逆接保護FET11AをOFFすると共に、切換信号BLA2でモータリレー122Aの全てのFETU1,V1,W1をOFFする。これにより異常となった第1系統の駆動は停止される。同様に、第2系統の異常検出手段201Bがインバータ121Bの異常を検出した場合には、MCU210は切換信号BLB1で電源リレー123Bの電源遮断FET10B及び逆接保護FET11BをOFFすると共に、切換信号BLB2でモータリレー122Bの全てのFETU2,V2,W2をOFFする。
異常が検出されるとモータ回転数判定部140はモータ120のモータ回転数rpmを監視し(ステップS21)、モータ回転数rpmが設定されている所定回転数rpm1以上となったときに回転数判定信号RVを出力し(ステップS22)、回転数判定信号RVはMCU210に入力される。これにより、MCU210は異常な系統のインバータの下段FET及びモータリレーの全てのFETをONする(ステップS23)。例えば第1系統が異常で、第2系統が正常な場合には、インバータ121Aの下段FET4A,5A,6Aを切換信号MRAによりONにすると共に、切換信号BLA2によりモータリレー122Aの全てのFETU1,V1,W1をONする。
下段FET4A,5A,6AのONは、切換信号MRAに代えて、デューティ値DSAを下段FETが100%ONとなる値に設定することでも可能である。
これにより、例えば図10に示すように、巻線#1の巻線UW1からの電流I1は、モータリレー122AのFETU1を経て流れ(電流I2)、FETU1からの電流I3はインバータ121Aの下段FET4Aに入力される。そして、FET4Aからの電流I4は電流I5及びI10に分流され、電流I5はインバータ121Aの下段FET5Aに入力され、その出力電流I6がモータリレー122AのFETV1を経て流れ(電流I7)、巻線#1の巻線VW1に電流I8として流れる。また、分流された電流I10はインバータ121Aの下段FET6Aに入力され、その出力電流I11がモータリレー122AのFETW1を経て流れ(電流I12)、巻線#1の巻線WW1に電流I13として流れる。その結果、I1=I8+I13となる。このように外力で発生された電流は、モータ120、モータリレー122A、インバータ121Aの下段FETの間で閉回路を形成して回生される。
なお、上述ではインバータ121Aの下段FET4A〜6AをONして閉回路の回生電流経路を形成する例を説明しているが、インバータ121Aの上段FET1A〜3AをONして閉回路の回生電流経路を形成することも可能である。また、モータ120がデルタ結線の2系統巻線を有する場合も、全く同様な閉回路の回生電流経路を形成することができる。
上述のように閉回路の回生電流経路が形成されるため、FETのソース(S)−ドレイン(D)間の電圧は略0[V]となり、FETの耐圧を超えることがなくなる。外力が低下し、モータ回転数rpmが所定回転数rpm1より小さくなると(ステップS24)、回生電力によるFETの破損の可能性がない状態となるので、再度異常系統のFETをOFFとし(ステップS25)、正常系統のFETによりアシスト制御を継続する。
本発明の動作と特許文献1及び特許文献2を比較すると図11に示すようになっており、図11は第1系統に異常が発生した場合を示している。本発明は2系統システムを前提としており、正常時にはモータリレー122AのFETU1,V1,W1はON、電源リレー123Aの電源遮断FET10A及び逆接保護FET11AはONであり、インバータ121AのFET1A〜6Aはデューティ値に従ってON/OFF制御されている。そして本発明は、片系統のインバータが異常(例えば第1系統)で、他系統(例えば第2系統)は正常という状況を考慮しており、片系統(本例では第1系統)が異常停止しているときに、過大な外力によってモータが高速回転すると、その異常系統内のFETが逆起電圧の過電圧により破壊されてしまうので、モータ120の高速回転を検出したときに、異常系統(本例では第1系統)のFET(本例ではFET4A〜6A)を再度ONしてFETの故障を防ぐようにしている。
これに対して、特許文献1も2系統制御であるがモータリレーを開示していないと共に、モータ回転数の監視については全く言及していない。本発明の電源リレー123Aの逆接保護FET11Aに相当するFETをONしている。そして、インバータについては上下段の全てのFETをOFFしている。また、特許文献2は単一系統のインバータを前提としている。異常が発生したときに、モータ回転数が高い状態でモータリレーのFETがOFFしてしまうと回生電流を流すことができず、FETが破壊してしまう。これを防ぐため、回転数を監視してモータ回転数が下がった時点でOFFするようにしているが、故障発生時点にのみ言及しており、本発明のように故障発生後に、正常系統によるアシスト継続中に、モータが外力で回されることで、FETが破損するという事象を想定していない。
上述ではECU内の1個のMCUで2系統を駆動制御しているが、系統毎に別個のMCUを設けても良い。
1 ハンドル
2 コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)
10 トルクセンサ
12 車速センサ
13 バッテリ
20、120 モータ
23、122、122A、122B モータリレー
30,200、200S コントロールユニット(ECU)
37、121A、121B インバータ
210、210S MCU
120S モータ出力軸
130 モータ回転センサ
140 モータ回転数判定部
201A,201B 異常検出手段