JP6942542B2 - ガラスの製造方法、レンズの製造方法および溶融装置 - Google Patents

ガラスの製造方法、レンズの製造方法および溶融装置 Download PDF

Info

Publication number
JP6942542B2
JP6942542B2 JP2017132040A JP2017132040A JP6942542B2 JP 6942542 B2 JP6942542 B2 JP 6942542B2 JP 2017132040 A JP2017132040 A JP 2017132040A JP 2017132040 A JP2017132040 A JP 2017132040A JP 6942542 B2 JP6942542 B2 JP 6942542B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
raw material
melting
glass
melting furnace
gas
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017132040A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018012636A (ja
JP2018012636A5 (ja
Inventor
真悟 江口
真悟 江口
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Publication of JP2018012636A publication Critical patent/JP2018012636A/ja
Publication of JP2018012636A5 publication Critical patent/JP2018012636A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6942542B2 publication Critical patent/JP6942542B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Glass Melting And Manufacturing (AREA)

Description

本発明は、無容器溶融法を用いたガラス材料の製造方法およびレンズの製造方法に関する。また、本発明は、無容器溶融法に用いる溶融装置に関する。
無容器溶融法は、容器を用いずに材料を溶融、固化させる製造方法であり、固液界面における核生成を避けられることから、従来の容器を用いた製造方法ではガラス化させることができなかった材料も一部ガラスとすることが可能である。しがって、従来実現できなかった新たな特性を有するガラス材料の製法として期待されている。
無容器溶融法においては、原材料を空中に浮遊させることで溶融炉と非接触状態を維持するが、その浮遊の方法として静電浮遊方式、音波浮遊方式、電磁浮遊方式、ガス浮遊方式などが挙げられる。これらのうち、ガス浮遊方式は、煩雑な設備を必要とせず比較的安定して非接触状態を作り出すことができる方式として有望である。
ガス浮遊方式は加熱手段により溶融され粘性体となった材料をガス流の力で溶融炉上に浮遊させる手法である。加熱手段としては、材料のみを選択的に加熱することが可能であることからレーザー光を用いることが一般的であり、環境を室温に近い状態に維持したまま材料を溶融できるためレーザー光照射終了後に室温に戻して材料を急冷することができる。このように材料の冷却速度を高めることで、冷却時の結晶成長を抑える効果が得られるためガラスとして得られる材料組成の選択範囲をより広げることが期待できる。
一方、レーザー光を用いて材料を溶融する場合において、レンズ等で集光させたレーザー光を材料に照射すると照射された箇所の温度が高くなりすぎるため、材料のアブレーション等が生じ、得られるガラスが不均質な特性をもつという課題がある。このような課題に対し、特許文献1には、レーザー光のスポット径を、ガラス原料の直径に対して0.2〜1.2倍とするという製造方法が提案されている。
特開2015−129061号公報
しかし、特許文献1に記載のガラスの製造方法では、大きなガラスを作製しようとすると、レーザーが照射された箇所の粘性が下がり溶融状態のガラス原料が少し変形するだけで、ガラス原料が揺れて溶融炉に接触しやすいといった課題がある。特許文献1に記載のガラスの製造方法では、このような理由から大きなガラスを再現性よく作製することが難しく、溶融時の粘度が比較的低い材料組成などを選択する場合はさらに困難である。
本発明は、レーザー光を用いたガス浮遊方式の無容器溶融法において、大きなガラスの作製を可能とすることを目的とする。
本発明のガラスの製造方法は、ガス流路を有する溶融炉を用いて、ガラスを生成するための原料を前記ガス流路より噴出するガスにより前記溶融炉から浮上させた状態で、前記原料にレーザー光を照射することにより加熱して溶融した後に、冷却することによりガラスを生成するガラスの製造方法であって、前記原料におけるレーザー光の照射位置を走査させながら前記原料を加熱して溶融し、溶融している原料を冷却してガラスを生成し、前記レーザー光の走査軌道が、前記溶融炉の中心軸に対して点対称であることを特徴とする。
本発明のガラスの製造方法は、ガス流路を有する溶融炉を用いて、ガラスを生成するための原料を前記ガス流路より噴出するガスにより前記溶融炉から浮上させた状態で、前記原料にレーザー光を照射することにより加熱して溶融した後に、冷却することによりガラスを生成するガラスの製造方法であって、前記原料におけるレーザー光の照射位置を走査させながら前記原料を加熱して溶融し、溶融している原料を冷却してガラスを生成し、前記溶融炉から前記原料が浮上している状態で、前記原料を上方の高さから見て円運動した状態で加熱して溶融することを特徴とする。
本発明の溶融装置は、無容器溶融法に用いる溶融装置であって、原料を浮上させるために、ガス流路を有する溶融炉と、前記原料を加熱するためのレーザー発振器と、前記複数のガス流路からガスを噴出させるために、前記溶融炉に前記ガスを供給するガス供給手段と、前記レーザー発振器より発せられるレーザーを反射する単数もしくは複数のミラーと、前記単数もしくは複数のミラーの位置及び/又は角度を制御するミラー制御手段を有し、前記レーザー光の走査軌道が、前記溶融炉の中心軸に対して点対称であることを特徴とする。
本発明の溶融装置は、無容器溶融法に用いる溶融装置であって、原料を浮上させために、ガス流路を有する溶融炉と、前記原料を加熱するためのレーザー発振器と、前記複数のガス流路からガスを噴出させるために、前記溶融炉に前記ガスを供給するガス供給手段と、前記レーザー発振器より発せられるレーザー光を反射する単数もしくは複数のミラーと、前記単数もしくは複数のミラーの位置及び/又は角度を制御し前記レーザー光を走査するミラー制御手段を有し、前記溶融炉から前記原料が浮上している状態で、前記原料を上方の高さから見て円運動した状態で加熱して溶融することを特徴とする。
本発明によれば、レーザー光を用いた無容器溶融法において、浮上中の溶融されたガラス原料と溶融炉との接触を抑制して、大きなガラス材料を作製することができる。
本発明の一実施形態において用いる製造装置を示す模式図である。 本発明の実施例1において用いる溶融炉の断面図である。 本発明の実施例1において用いる溶融炉の平面図である。 本発明の実施例1におけるレーザー照射位置を示す図である。 本発明の比較例1におけるレーザー照射位置を示す図である。 本発明の実施例3において用いる溶融炉の断面図である。 本発明の実施例3において用いる溶融炉の平面図である。 本発明におけるレンズの成形型を示す模式図である。 本発明の一実施形態において用いる製造装置を示す模式図である。 本発明の実施例5におけるガラス原料を示す模式図である。 本発明の実施例6における溶融炉が発する音響波を示す図である。 本発明の実施例5において用いる溶融炉の断面図である。 本発明の実施例5において用いる溶融炉の平面図である。
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。
(溶融装置)
図1は、本発明の一実施形態において用いる溶融装置の模式図である。溶融装置14は、ガラス原料1を浮上させる溶融炉2と、溶融炉2を設置するステージ3とを備えており、ガスボンベなどの浮上ガス供給源5から導入された浮上ガスが、ステージ3の内部をとおって溶融炉2に設けられたガス噴出口(不図示)から噴出される。ステージ3と浮上ガス供給源5との間のガス配管上に設けた浮上ガス流量制御手段4により浮上ガスの流量を制御することができる。溶融炉2に設けるガス噴出口を複数の系統に分離し、それぞれの系統の噴出口から噴出するガスの流量を個別に制御する場合は、系統数に応じて複数のガス流量制御手段4を設ける必要がある。ガラス原料1を溶融するためのレーザー光としては炭酸ガスレーザーを用いることができる。レーザー光はレーザー発振器6から発せられ、反射ミラー7で反射してレーザースキャナー8に導入される。レーザースキャナー8内にはモーターなどにより機械的に角度及び/又は位置を制御できるガルバノミラー9が単数もしくは複数設けられている。導入されたレーザー光は、レーザー光の照射軌道上に設けたガルバノミラー9を介して溶融炉2内に置かれたガラス原料1に照射される。ガルバノミラー9とガラス原料1の間のレーザー光路20にはfθレンズ10が設けられ、レーザー光は集光されながらガラス原料1に照射される。レーザースキャナー8に接続された制御コンピュータ(ミラー制御手段)10を用いて、ガルバノミラー9の動作を制御することにより、ガラス原料1におけるレーザー照射位置は任意の軌道上で走査させることができる。ステージ3は連結したステージ昇降機構13を用いて昇降させることができ、ガラス原料1がレーザーに当たる高さを任意に変えることができる。これにより、ガラス原料1におけるレーザー光照射位置を集光位置から離すことで、任意のビーム径にデフォーカスされたレーザー光をガラス原料1に照射させることができる。溶融炉2から浮上させた溶融されるガラス原料1の挙動を観察するためカメラ12を備えている。また、より大きなガラスを作製する場合には、溶融検知手段で原料の溶融状態を検知することが好ましい。溶融検知手段は、カメラ12を用いて原料の溶融状態を検知することができる。また、図9に示すように、溶融検知手段は、溶融炉2に接触した音響波センサー30を用いて原料の溶融状態を検知することもできる。音響波センサーを用いる場合は、音響波を増幅するためのアンプ31や音響波データをモニターするためのオシロスコープ32を備える。
溶融装置は、ガラスを製造するガラス製造装置として好適に用いることができる。
(溶融炉)
本発明の一実施形態で用いた溶融炉2の断面図及び平面図を図2、図3にそれぞれ示す。溶融炉2の材質は特に限定されず、ガラス原料溶融時に受ける熱に耐え得ることができればよい。例えば、ステンレス、アルミニウム、カーボン、窒化珪素、炭化ケイ素、窒化アルミなどで作製することが好ましい。
溶融炉2の中央部にはガラス原料塊1を収容するための凹部15が設けられている。凹部15の形状は図2に示すように内壁が曲率をもつように凹形状となっており、その曲率は単一の曲率半径でもよいし、複数の曲率半径の組み合わせでもよい。凹部15には図2に示すように、ガスを噴出するための単数または複数のガス流路16及び17が設けられている。
図2、図3では鉛直方向に向かうガス流路16(第1のガス流路)と中心軸(図2の点線)方向へ向かうガス流路(第2のガス流路)17から構成された溶融炉を用いることが大きなガラスを作製できるので好ましいが、本発明はこの構成に限定されない。鉛直方向とは、厳密に鉛直である方向だけでなく、鉛直方向から±5度の範囲も含む。中心軸方向へ向けてガスを噴出するためのガス流路(第2のガス流路)17は、溶融炉2の中心軸に対して対向して設けられていることが好ましい。また、鉛直方向へ向けてガスを噴出するためのガス流路16及び中心軸方向へ向けてガスを噴出するためのガス流路17は、溶融炉2の中心Cに対して対称になるように配置されていることが好ましい。
鉛直方向に向かうガス流路16だけでなく中心軸方向へ向かうガス流路17を有する溶融炉を用いることで、ガラス原料1を上方の高さから見て回転および円運動をさせながら加熱溶融することができる。
溶融炉2を設置するステージ3には浮上ガス導入路19が設けられ、浮上ガス供給源5より送られるガスを溶融炉2へと導入する。図2に示したように、溶融炉2より噴出するガスを垂直方向と中心軸方向の2系統にする場合には、浮上ガス導入路19を複数設け、溶融炉内には隔壁18を設けることにより浮上ガスの導入経路を分岐する必要がある。この場合、それぞれの浮上ガス導入経路19に対して浮上ガス流量調整手段4を設けることにより、各系統の噴出ガス流量を個別に制御できる。本発明における浮上ガス流路は2系統化されたものに限定されるものではなく、1系統や3系統以上でもよい。
(ガラスの製造方法)
本実施形態では、例えば網目形成酸化物の含有量が少なく、従来の容器を用いた溶融方法ではガラスとして得られない組成を有するガラス材料の製造方法について説明する。例えば、ホウ素−ランタン−ニオブ系ガラス材などであり、ホウ素イオンの含有率が40cat%以下であるような組成である。ここで、cat%とは、ガラスに含まれるカチオン成分の合計含有量を100%とした百分率である。
所望の組成となるよう混合したガラス原料粉末を用いてガラス原料塊1を準備する。ガラス原料塊1の形態は、原料粉末をプレス成形した圧粉体や焼結させた焼結体、あるいはレーザー照射や溶解炉を用いて一度溶解させ結晶化させた多結晶体などでもよい。
作製したガラス原料塊1を溶融炉2の凹部15内に設置し、ガス流量制御手段4を用いて所定の流量の浮上ガスを溶融炉2に設けられたガス流路より噴出する。浮上ガスの種類は特に限定されない。浮上ガスは、空気、酸素、又は窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることが好ましい。
浮上ガスの噴出後にレーザー発振器6からレーザー光を発し原料塊1を加熱溶融する。ここで、浮上ガスの噴出とガラス原料塊1の加熱はどちらか一方が先でもよいし、同時でもよい。溶融を始めたガラス原料1は表面張力により、球状又は碁石状になり、ガス流路16から噴出されるガスの力により浮上を開始する。その直後、底面から浮きあがったガラス原料1はガス流路17から噴出されるガスの力で溶融炉2内で回転および円運動を開始する。図4に本発明の一実施形態におけるガラス原料1のレーザー照射位置を示す。図4(a)は浮上前の断面図、図4(b)は浮上前のレーザー照射側から見た平面図、図4(c)は浮上後の断面図、図4(d)は浮上後のレーザー照射側から見た平面図である。制御コンピュータ11を用いてガルバノミラー9の動作を制御し、レーザーの照射位置を所望の軌道上に走査させる。レーザー光の走査軌道は、溶融炉2とガラス原料1が接触しないように、溶融炉2の中心軸に対して点対称であることが好ましい。溶融炉2内を円運動するガラス原料1に対し、図4(d)のようにその円軌道と略重なるようにレーザーの走査軌道を選択することが好ましく、ガラスの円軌道に対して±1mmの範囲にあることが好ましい。ガラスの円軌道は溶融炉2の形状やガラス原料1の大きさ、噴出するガス流量により異なるため、事前実験等により円運動の軌道径を把握してもよいし、円運動の軌道径を確認しながらそれに合わせて走査軌道を調整してもよい。
また、ステージ昇降機構13を用いてステージを焦点位置23から下に下げることによりレーザー光の照射径21を所望の大きさにしてガラス原料塊1に照射させる。fθレンズ10に入る前のビーム径と焦点距離から、ガラス原料1の位置におけるレーザー光照射径21を求めることができる。照射径21は小さすぎるとエネルギー強度が高過ぎるため原料の揮発が生じ、大きすぎると原料塊の周辺にもレーザー光が照射されるため加熱効率が低下するといった問題がある。そのため、ガラス原料塊1の大きさや材料の熱的特性及び走査軌道を考慮してレーザー光照射径21を決定する必要がある。レーザー光照射径21は、ガラス原料1の加熱状態を均一化するため、溶融するガラス原料1の外径に対して0.2〜0.7倍であることが好ましい。
図4を用いて、本発明におけるガラス原料1の溶融挙動について以下に説明する。ガラス原料塊1は溶融炉2から噴出するガス流の力で浮上した状態で、図4(a)及び(b)に示すように円状に走査したレーザー光のエネルギーにより溶融が進行する。溶融が始まり溶融炉底面から浮きあがったガラス原料1は回転および円運動を行う。ここで図4(c)及び(d)に示すように、ガラス原料1における中心点の軌道に重なるようにレーザーを走査させることにより、レーザーはガラス原料1の略中心を通るように照射される。これにより、ガラス原料1をより効率的に加熱することができる。ガラス原料1は上部から徐々に溶けだし、原料内で徐々に熱が下部に伝わり全域にわたって溶融する。全域が完全に溶融し終えると、回転運動の遠心力による変形がわずかに大きくなるため、その現象を確認した後にレーザー照射を止め、急冷固化しガラスを得る。
本発明と異なり、レーザーの照射位置が一か所に固定される場合は、図5(c)及び(d)に示すようにレーザーの照射位置は円運動開始後のガラス原料1の中心を通らないため、ガラス原料1は外周部から加熱されることになる。これにより外周部がより低粘度化しやすくなるため、ガス流路17から噴出されるガスが溶融した原料1に巻き込まれる問題が生じ易くなる。また、ガス流を受け変形することにより原料塊全体が大きく揺らいでしまう問題などが生じやすくなる。このため、大きなガラスを再現よく製造することが困難となる。さらに、溶融している原料1の表面は球面形状であるため、外周部ではレーザーの入射角度は入射表面に対して鋭角になるため、レーザーの吸収率が落ちるなどして、加熱効率が下がるという問題も生じる。原料塊1が大きい場合や溶融時の粘性が低い組成の材料を溶融する場合においては、上述の問題はより顕在化することになる。
ガラス原料1の溶融時間を決定する際には、以下に留意する必要がある。ガラス原料1の溶融が完了する前にレーザー照射を止めると、原料の溶け残りが起点となりガラス原料1の全体が結晶化してしまう。また、ガラス原料1が完全に溶融した後に長時間レーザー照射を続けると、過剰に熱せられ低粘度化したガラス原料1がガスの力を受け大きく振動することで型に接触したり、レーザー照射領域から外れて徐冷されたりしてガラス原料が結晶化してしまう。更にガラス原料1に過剰なエネルギーを与えると、ガラス原料1の揮発の進行を促すため、所望の組成、重量のガラスを得られないといった問題もある。
このような問題を回避するためには、ガラス原料1全体が溶融したことを知る必要があるが、無容器溶融法で一般的に用いる放射光を利用した温度計測手段では、これを実現することは難しい。放射光を利用した温度計測手段を用いる場合、溶融したガラス原料1の上部に温度計測手段を設置し、ガラス原料1から発せられる放射光により温度を計測する。しかし、ガラス原料1が大きい場合、レーザーが照射される上面と溶融炉底面に対向する下面との温度差が大きく、下面の温度を正確に測定できない。また、温度計測を用いずに実験的に最適な溶融時間を求める手段も考えられる。しかし、同一の作製条件でガラスを作製しても、ガラス原料1の密度、形状などの状態や浮上中の原料の揺れなどを厳密に統一することが難しく、最適な溶融時間で加熱することは困難である。溶融検知手段によって、ガラス原料1の溶融が完了することを検知することにより、適切なレーザー照射時間を決定して、より大きなガラスの作製が実現可能となる。
ガラス原料1の溶融検知の方法の一つは、カメラを用いてガラス原料1の形状を観察して、変形から溶融が完了したことを検知する方法である。図10にガラス原料1が溶融する様子を示す。溶融の初期では、図10(b)に示すようにガラス原料1の下面全体が未溶部33であり、未溶部33は密度が高いため重心が安定しガラス原料1は上下にぶれることなく浮上している。ガラス原料1の溶融が進行すると、図10(c)に示すように未溶部33が小さくなり、浮上ガス流による摩擦力で原料が上下に揺れながら浮上する。最終的には図10(d)に示すように、より小さくなった未溶部が上面方向まで移動し、レーザーが照射されて溶ける。カメラのシャッタースピードを調整し、発光量の異なる溶融部と未溶部温度を可視化することにより、この瞬間をとらえることができる。
もう一つの溶融検知の方法は、音響波の検出による方法である。図9に示すように、溶融炉2と接触させた音響波センサー30で検出された音響波を、アンプ31を介してオシロスコープ32でモニターしながら原料の溶融を行う。この方法を用いると、図11(b)に示すように電圧に変換された音響波信号を取得できる。図11(a)は予めガラス原料1の溶融を行う前に溶融炉2に何もない状態で浮上ガスを噴出させたときの音響波のレベルを示す。ガラス原料1の溶融中に、このレベルまで音響波が収束する時点、即ち図11(b)中の矢印で示すタイミングにおいて溶融が完了したと判断できる。
この現象のメカニズムについては以下のように推測される。ガラス原料1の溶融が完了すると、ガラス底部に軸対称な曲面が形成される。このとき、浮上するガラス原料1と溶融炉2との間隔が均一化されることにより音響波信号が収束するので、この方法で溶融を検知することができる。
溶融前には均一な曲面が形成されておらず、また出発原料の形態によっては微小な突起などを有するため、浮上ガスが抜ける経路が不均一となる。これにより極端に狭くなった箇所を浮上ガスが抜ける際に、収束時と比較して大きな音響波が検出される。
これらの検知方法のいずれかもしくは両方で、溶融完了を検知してから所定時間経過後にレーザー照射を止めることにより、直径8mmを越えるような大きいガラスをより高い確率で製造できる。溶融検知後で冷却を開始するまでの時間については、ガラス原料1の大きさや組成に応じて時間が異なるため、実験的に求める必要がある。
(レンズの製造方法)
上記のガラスの製造方法で得られたガラスを、ガラスモールド成形等の公知の成形方法により成形することによりレンズを製造することができる。ガラスモールドに使用する成形型を図8に示す。成形型24は所望のレンズ形状になるように面形状が形成された上型25、下型26と成形する際にそれらを同一軸上で収納する胴型27から構成されている。上型はプレス軸に連結しており、プレス軸の上下移動により下型に設置したガラス素材29をプレス成形することができる。胴型内にはヒーター28が内蔵されており、上下型の温度を制御することができる。ガラス素材の熱物性等を考慮し上下型の温度を加熱した後に、所望の圧力でプレス成形し、その後冷却することによりガラスレンズを成形することができる。
以下に、本発明について、具体的な実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1では、構成されるカチオン成分がB3+が30cat%、La+3が60cat%、Nb5+が5cat%、Ti4+が5cat%となるように酸化物原料を秤量、混合して原料とした。混合した原料粉をCIP成形により棒状に成形し、成形体を1400℃で熱処理した。熱処理後の成形体を切断し、質量0.76gのガラス原料塊1を得た。
このガラス原料塊1を図1に示す溶融装置で溶融した。レーザー発振器6として最大出力200Wの二酸化炭素レーザー用発振器を用いた。レーザーは2個の反射ミラー7を介してレーザースキャナー8内に導入され、さらにレーザースキャナー8内に内蔵されているガルバノミラー9を介して溶融炉へと向かうように光路を調整した。レーザースキャナー8に接続した制御コンピュータ11用いて、ガルバノミラー9の動作を制御し溶融炉に向かうレーザーを制御コンピュータ11からの指令で走査することを可能とした。また、レーザー発振器6からはビーム径4.5mmのレーザーは発せられるが、これをビームエキスパンダーによりビーム径11.25mmに拡大させた後にレーザースキャナー8に導入した。スキャンヘッドの出口には焦点距離100mm、材質ZnSeのfθレンズ10を設置し、レーザーをfθレンズ10より100mm離れた位置に集光させた。溶融炉2を設置したステージ3は連結したステージ昇降機構13により機械的に昇降することを可能とし、溶融炉2内に設置するガラス原料塊1上部がレーザー集光位置より17.4mm下方に位置するよう調整した。これにより、ガラス原料塊1に照射されるレーザー光照射径21を2mmとした。
溶融炉2は材質がアルミであり、ガラス原料塊1を収容するための凹部15を要している。実施例1で用いた溶融炉2の断面図及び平面図を図2、図3にそれぞれ示す。凹部15は底面が半径6.6mm、外周部が半径3.0mmとなるように湾曲しており、その内径は10mmである。凹部15には、鉛直方向へ向けてガスを噴出するためのガス流路(第1のガス流路)16と中心軸方向へ向けてガスを噴出するためのガス流路(第2のガス流路)17が設けられている。ガス流路はいずれも直径0.3mmであり、第1のガス流路16は71個、第2のガス流路17は120個設けられている。第1のガス流路16は型の中心に1個、型中心を中心として直径1mmの円周上の等間隔に6個、同様に直径2mm、3mm、4mm、5mmの円周上に等間隔にそれぞれ8個、16個、16個、24個設けられている。第2のガス流路17は、型底面中心よ0.9mm、1.4mm、2.2mm、3.0mmの高さ位置に、型中心軸に対してそれぞれ42.5度、58.2度、75.6度、90度の向きに設けられている。それらは、型中心を中心軸とした円周上に等間隔にそれぞれ30個ずつ設けられている。図2に示すように、第1のガス流路と第2のガス流路はステージ3より各々に対応した浮上ガス導入路19を介して浮上ガスが導入される。各々の流路を通る浮上ガスの流量は流量調整手段4として用いた2つのマスフローコントローラにより、個別で制御した。
ガラス原料塊1を溶融炉2の凹部15の略中心に設置させ、第1のガス流路には2.0l/min、第2のガス流路には4.0l/minの流量の酸素を浮上ガス導入路19より導入し、各噴出口より酸素を噴出させた。次に二酸化炭素レーザー光によりガラス原料塊1の加熱溶融を行った。図4に実施例1におけるレーザー照射位置を示す。図4(a)は断面図、図4(b)はレーザー照射側から見た平面図である。レーザー光走査円径22は直径3mmの円周軌道上を走査速度10mm/秒の速度で走査させながら原料塊1に照射させた。レーザーの出力は照射開始から5秒間で140Wまで少しずつ上昇させ、その後一定とした。ガラス原料1は溶融が進行するとともに表面張力により球に近い形状となるとともに、底面からの噴出ガスにより浮上し、直後に上方の高さから見て回転および円運動を開始した。円運動の軌道は直径2.5mmの円周上であった。レーザー照射開始から30秒後に浮上しているガラス原料1の変形が大きくなり、その後3秒間レーザー照射を続けたところでレーザーを停止、ガラス原料1を冷却させた。その結果、直径7.0mmのガラスが得られた。
同量のガラス原料塊1を用いて、同様の工程を繰り返し5回行った結果、5回ともガラスが得られた。レーザー照射開始からガラスを得るまでの時間はそれぞれ、30秒、26秒、22秒、28秒であった。
(実施例2)
実施例2は、レーザー照射方法以外は実施例1と同様に行った。溶融炉2内に設置するガラス原料塊1上部はレーザー集光位置より26.1mm下方に位置するよう調整し、ガラス原料塊1に照射されるレーザービーム光照射径21の計算値を3mmとした。
ガラス原料塊1を溶融炉2の凹部15の略中心に設置させ、実施例1と同一の浮上ガス条件、レーザー出力条件及び走査条件(レーザー光走査円形が3mm)を用いて、ガラスの製造を行った。ガラス原料1は溶融が進行するとともに表面張力により球に近い形状となるとともに、底面からの噴出ガスにより浮上し、直後に回転および円運動を開始した。円運動の軌道は直径2.5mmの円周上であった。レーザー照射開始から30秒後に浮上しているガラス原料1の変形が大きくなり、その後3秒間レーザー照射を続けたところでレーザーを停止、ガラス原料1を冷却させた。その結果、直径7.0mmのガラスが得られた。
同量のガラス原料塊1を用いて、同様の工程を繰り返し5回行った結果、5回ともガラスが得られた。レーザー照射開始からガラスを得るまでの時間はそれぞれ、28秒、25秒、28秒、24秒であった。
(実施例3)
実施例3は、実施例1と同じ材料で質量0.91gのガラス原料塊1を用いてガラスの製造を行った。使用した溶融装置は実施例1と同一である。溶融炉2内に設置するガラス原料塊1上部はレーザー集光位置より17.4mm下方に位置するよう調整し、ガラス原料塊1に照射されるレーザービーム光照射径21の計算値を2mmとした。
溶融炉2は材質がアルミであり、ガラス原料塊1を収容するための凹部15を要している。実施例3で用いた溶融炉2の断面図及び平面図を図6、図7にそれぞれ示す。凹部15は底面が半径10.0mm、外周部が半径3.0mmとなるように湾曲しており、その内径は12mmである。凹部15には、鉛直方向へ向けてガスを噴出するためのガス流路(第1のガス流路)16と中心軸方向へ向けてガスを噴出するためのガス流路(第2のガス流路)17が設けられている。ガス流路はいずれも直径0.3mmであり、第1のガス流路16は71個、第2のガス流路17は120個設けられている。第1のガス流路16は型の中心に1個、型中心を中心として直径1mmの円周上の等間隔に6個、同様に直径2mm、3mm、4mm、5mmの円周上に等間隔にそれぞれ8個、16個、16個、24個設けられている。第2のガス流路17は、型底面中心よ0.5mm、1.0mm、1.8mm、3.0mmの高さ位置に、型中心軸に対してそれぞれ29.8度、41.0度、65.9度、90度の向きに設けられている。それらは、型中心を中心軸とした円周上に等間隔にそれぞれ30個ずつ設けられている。図6に示すように、第1のガス流路と第2のガス流路はステージ3より各々の浮上ガス導入路19を介して浮上ガスが導入される。各々の流路を通る浮上ガスの流量は流量調整手段4として用いた2つのマスフローコントローラにより、個別で制御した。
ガラス原料塊1を溶融炉2の凹部15の略中心に設置させ、第1のガス流路には2.0l/min、第2のガス流路には6.0l/minの流量の酸素を浮上ガス導入口12より導入し、各噴出口より酸素を噴出させた。次に実施例1と同一のレーザー出力条件及び走査条件(レーザー光走査円形が3mm)により、ガラス原料塊1の加熱溶融を行った。ガラス原料1は溶融が進行するとともに表面張力により球に近い形状となるとともに、底面からの噴出ガスにより浮上し、直後に回転運動および円運動を開始した。円運動の軌道は直径3.0mmの円周上であった。レーザー照射開始から25秒後に浮上しているガラス原料1の変形が大きくなり、その後3秒間レーザー照射を続けたところでレーザーを停止、ガラス原料1を冷却させた。その結果、直径7.5mmのガラスが得られた。
同量のガラス原料塊1を用いて、同様の工程を繰り返し5回行った結果、4回ガラスが得られ、1回はガラスが得られなかった。ガラスが得られた4回の工程におけるレーザー照射開始からガラスを得るまでの時間はそれぞれ、30秒、58秒、38秒、26秒であった。ガラスが得られなかった1回の工程においては、レーザー照射開始から65秒の間浮上ガスの巻き込みと思われる泡が連続的に発生し、レーザー停止後に原料は結晶化した。これは、溶融中の原料に連続的に生じる泡が原料全域の加熱効率を大きく下げ、未溶解部分が存在したため、冷却過程でそれを核とした結晶成長が起こったためと推測される。
(実施例4)
実施例4は、実施例3と同じ材料で同量のガラス原料塊1、同一の溶融炉2及び溶融装置14を用いてガラスの作製を行った。溶融炉2内に設置するガラス原料塊1上部はレーザー集光位置より26.1mm下方に位置するよう調整し、ガラス原料塊1に照射されるレーザービーム照射径21の計算値を3mmとした。
ガラス原料塊1を溶融炉2の凹部15の略中心に設置させ、実施例1と同一の浮上ガス条件、レーザー出力条件及び走査条件(レーザー光走査円形22が3mm)を用いて、ガラスの製造を行った。ガラス原料1は溶融が進行するとともに表面張力により球に近い形状となるとともに、底面からの噴出ガスにより浮上し、直後に回転および円運動を開始した。円運動の軌道は直径3.0mmの円周上であった。レーザー照射開始から25秒後に浮上しているガラス原料1の変形が大きくなり、その後3秒間レーザー照射を続けたところでレーザーを停止、ガラス原料1を冷却させた。その結果、直径7.5mmのガラスが得られた。
同量のガラス原料塊1を用いて、同様の工程を繰り返し5回行った結果、5回ともガラスが得られた。レーザー照射開始からガラスを得るまでの時間はそれぞれ、23秒、31秒、28秒、26秒であった。
(実施例5)
実施例5は、実施例1と同じ材料で質量1.28gのガラス原料塊1を用いてガラスの製造を行った。使用した溶融装置は、実施例1と同一である。溶融炉2内に設置するガラス原料塊1上部はレーザー集光位置より26.1m下方に位置するよう調整し、ガラス原料塊1に照射されるレーザービーム光照射径21の計算値を3mmとした。
溶融炉2は材質がアルミであり、ガラス原料塊1を収容するための凹部15を要している。実施例5で用いた溶融炉2の断面図及び平面図を、図12、図13にそれぞれ示す。凹部15は底面が半径10.0mm、外周部が半径3.0mmとなるように湾曲しており、その内径は14mmである。凹部15には、鉛直方向へ向けてガスを噴出するためのガス流路(第1のガス流路)16と中心軸方向へ向けてガスを噴出するためのガス流路(第2のガス流路)17が設けられている。ガス流路はいずれも直径0.3mmであり、第1のガス流路16は95個、第2のガス流路17は150個設けられている。第1のガス流路16は型の中心に1個、型中心を中心として直径1mmの円周上の等間隔に6個、同様に直径2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mmの円周上に等間隔にそれぞれ8個、16個、16個、24個、24個、24個設けられている。第2のガス流路17は、型底面中心よ0.9mm、1.3mm、1.8mm、2.3mm、3.8mmの高さ位置に、型中心軸に対してそれぞれ75度、75度、75度、75度、90度の向きに設けられている。それらは、型中心を中心軸とした円周上に等間隔にそれぞれ30個ずつ設けられている。図6に示すように、第1のガス流路と第2のガス流路には、ステージ3より各々の浮上ガス導入路19を介して浮上ガスが導入される。各々の流路を通る浮上ガスの流量は流量調整手段4として用いた2つのマスフローコントローラにより、個別に制御した。
ガラス原料塊1を溶融炉2の凹部15の略中心に設置させ、第1のガス流路には2.8l/min、第2のガス流路には6.0l/minの流量の酸素を浮上ガス導入口12より導入し、各噴出口より乾燥空気を噴出させた。次に、実施例1と同一のレーザー走査条件(レーザー光走査円形が3mm)にてレーザー照射を行い、ガラス原料塊1の加熱溶融を行った。レーザー出力は照射開始から5秒間で180Wまで少しずつ上昇させ、その後一定とした。ガラス原料1は溶融が進行するとともに表面張力により球に近い形状となるとともに、底面からの噴出ガスにより浮上し、直後に回転運動および円運動を開始した。円運動の軌道は直径3.0mmの円周上であった。カメラのシャッタースピードを10000分の1秒に設定し、ガラス原料1の観察を行ったところレーザー照射を開始してから55秒後に未溶部と想定される黒色部が出現し、その後3秒後にレーザーを停止、ガラス原料1を冷却させた。その結果、直径8.5mmのガラスが得られた。
同量のガラス原料塊1を用いて、同様の工程を繰り返し5回行った結果、5回ガラスが得られた。ガラスが得られた5回の工程におけるレーザー照射開始から溶融完了検知までの時間はそれぞれ、46秒、43秒、53秒、46秒であり、いずれも溶融完了を検知した後3秒後にレーザーを停止した。
(実施例6)
実施例6は、実施例5と同様の原料塊1を図9に示す溶融装置を用いて溶融した。図9に示す通り、溶融炉2に接するように音響波センサー30を設け、音響波センサー30とアンプ31、オシロスコープ32を同軸ケーブルで接続した。溶融炉2も実施例5と同一のものを用い、浮上ガス流量も同一条件とした。ガラス原料塊1を溶融する前に、溶融炉2上に何もない状態で浮上ガスのみを導入し、音響波センサー30で検知した音響波レベルをオシロスコープ32で記録した。続いて、溶融炉2にガラス原料塊1を設置し、実施例5と同様のレーザーのビーム光照射径、走査条件、出力にて溶融を開始した。ガラス原料1は、溶融が進行するとともに表面張力により球に近い形状となるとともに、底面からの噴出ガスにより浮上し、直後に回転運動および円運動を開始した。浮上ガス導入直後に、円運動の軌道は直径3.0mmの円周上であった。浮上ガス導入後から音響波をモニターし、図11の矢印に示すように事前に記録した浮上ガスのみで生じる音響波レベルまで収束した時点を溶融完了と捉え、その後3秒後にレーザーを停止、ガラス原料1を冷却させた。その結果、直径8.5mmのガラスが得られた。レーザー照射開始から音響波レベル収束までにかかった時間は45秒であった。
同量のガラス原料塊1を用いて、同様の工程を繰り返し5回行った結果、5回ガラスが得られた。ガラスが得られた5回の工程におけるレーザー照射開始から溶融完了検知までの時間はそれぞれ、55秒、49秒、53秒、41秒であり、いずれも溶融完了を検知した後3秒後にレーザーを停止した。
(比較例1)
比較例1は、レーザー光を走査させない以外は実施例1と同様に行った。
ガラス原料塊1を溶融炉2の凹部15の略中心に設置させ、実施例1と同一の浮上ガス条件、レーザー出力条件を用いて、ガラスの製造を行った。図5に比較例1におけるレーザー照射位置を示す。図5(a)は断面図、図5(b)はレーザー照射側から見た平面図である。図5に示すように、レーザーは走査させずガラス原料塊1の中央一点に照射させた。ガラス原料1は溶融が進行するとともに表面張力により球に近い形状となるとともに、底面からの噴出ガスにより浮上し、直後に回転運動を開始した。回転軌道は直径2.5mmの円形であった。その後レーザー照射開始から65秒の間浮上ガスの巻き込みと思われる泡が連続的に発生し、レーザー停止後に原料は結晶化した。これは実施例3において結晶化した工程と同じ理由によるものと推測される。
同量のガラス原料塊1を用いて、同様の工程を繰り返し5回行った結果、2回はガラスが得られたが、3回はガラスが得られなかった。ガラスが得られた工程におけるレーザー照射開始からガラスを得るまでの時間はそれぞれ、43秒、38秒であった。ガラスが得られなかった3回の工程のうち1回は泡の発生により結晶化し、2回は溶融時に原料が溶融炉内壁に接触し結晶化した。これはレーザー照射部が低粘性化し、ガス流の力で変形しやすくなることから、原料全域が溶融した際の揺れがより大きなものとなったためであると推測される。
(比較例2)
比較例2は、レーザーを走査させない以外は実施例2と同様に行った。
ガラス原料塊1を溶融炉2の凹部15の略中心に設置させ、実施例2と同一の浮上ガス条件、レーザー出力条件(レーザービーム光照射径21の計算値を2mm)を用いて、ガラスの製造を行った。比較例1と同様にレーザーは走査させず、ガラス原料塊1の中央一点に照射させた。ガラス原料1は溶融が進行するとともに表面張力により球に近い形状となるとともに、底面からの噴出ガスにより浮上し、直後に回転および円運動を開始した。円運動の軌道は直径2.5mmの円周上であった。その後レーザー照射開始から65秒の間浮上ガスの巻き込みと思われる泡が連続的に発生し、レーザー停止後に原料は結晶化した。
同量のガラス原料塊1を用いて、同様の工程を繰り返し5回行った結果、1回はガラスが得られたが、4回はガラスが得られなかった。ガラスが得られた工程におけるレーザー照射開始からガラスを得るまでの時間は53秒であった。ガラスが得られなかった4回の工程はいずれも泡の発生により結晶化した。
(比較例3)
比較例3は、レーザーを走査させない以外は実施例3と同様に行った。
ガラス原料塊1を溶融炉2の凹部15の略中心に設置させ、実施例3と同一の浮上ガス条件、レーザー出力条件を用いて、ガラスの製造を行った。比較例1と同様にレーザーは走査させず、ガラス原料塊1の中央一点に照射させた。ガラス原料1は溶融が進行するとともに表面張力により球に近い形状となるとともに、底面からの噴出ガスにより浮上し、直後に回転および円運動を開始した。円運動の軌道は直径3.0mmの円周上であった。その後レーザー照射開始から65秒の間浮上ガスの巻き込みと思われる泡が連続的に発生し、レーザー停止後に原料は結晶化した。
同量のガラス原料塊1を用いて、同様の工程を繰り返し5回行った結果、1回はガラスが得られたが、4回はガラスが得られなかった。ガラスが得られた工程におけるレーザー照射開始からガラスを得るまでの時間は38秒であった。ガラスが得られなかった4回の工程はいずれも泡の発生により結晶化した。
(比較例4)
比較例4は、レーザーを走査させない以外は実施例4と同様に行った。
ガラス原料塊1を溶融炉2の凹部15の略中心に設置させ、実施例2と同一の浮上ガス条件、レーザー出力条件を用いて、ガラスの製造を行った。比較例1と同様にレーザーは走査させず、ガラス原料塊1の中央一点に照射させた。ガラス原料1は溶融が進行するとともに表面張力により球に近い形状となるとともに、底面からの噴出ガスにより浮上し、直後に回転および円運動を開始した。円運動の軌道は直径3.0mmの円周上であった。その後レーザー照射開始から65秒の間浮上ガスの巻き込みと思われる泡が連続的に発生し、レーザー停止後に原料は結晶化した。
同量のガラス原料塊1を用いて、同様の工程を繰り返し5回行った結果、1回はガラスが得られたが、4回はガラスが得られなかった。ガラスが得られた工程におけるレーザー照射開始からガラスを得るまでの時間は43秒であった。ガラスが得られなかった4回の工程のうち3回は泡の発生により結晶化し、1回は溶融時に原料が溶融炉内壁に接触し結晶化した。
(評価)
実施例1〜4では、ガラス原料におけるレーザーの照射位置を走査させることにより、高い確率で直径が7.0mm以上のガラスを高い確率で製造することができた。
比較例1〜4では、原料におけるレーザーの照射位置を原料中央に固定すると、泡の発生や型接触の頻度が高まり、直径が7.0mm以上のガラスを製造することが困難であることが解った。また、ガラスが得られた場合においても実施例1〜4と比較すると溶融までの時間は長く、ばらつきが大きいことが解った。
1 ガラス原料(塊)
2 溶融炉
3 ステージ
4 浮上ガス流量制御手段
5 浮上ガス供給源
6 レーザー発振器
7 反射ミラー
8 レーザースキャナー
9 ガルバノミラー
10 fθレンズ
11 制御コンピュータ
12 カメラ
13 ステージ昇降機構
14 溶融装置
15 凹部
16 鉛直方向へ向けてガスを噴出するためのガス流路(第1のガス流路)
17 中心軸方向へ向けてガスを噴出するためのガス流路(第2のガス流路)
18 隔壁
19 浮上ガス導入路
20 レーザー光路
21 レーザー光照射径
22 レーザー光走査円径
23 レーザー集光位置
24 成形用型
25 上型
26 下型
27 胴型
28 ヒーター
29 ガラス素材

Claims (16)

  1. ガス流路を有する溶融炉を用いて、ガラスを生成するための原料を前記ガス流路より噴出するガスにより前記溶融炉から浮上させた状態で、前記原料にレーザー光を照射することにより加熱して溶融した後に、冷却することによりガラスを生成するガラスの製造方法であって、
    前記原料におけるレーザー光の照射位置を走査させながら前記原料を加熱して溶融し、溶融している原料を冷却してガラスを生成し、
    前記レーザー光の走査軌道が、前記溶融炉の中心軸に対して点対称であることを特徴とするガラスの製造方法。
  2. 前記溶融炉から前記原料が浮上している状態で、前記原料を上方の高さから見て円運動した状態で加熱して溶融することを特徴とする請求項1に記載のガラスの製造方法。
  3. ガス流路を有する溶融炉を用いて、ガラスを生成するための原料を前記ガス流路より噴出するガスにより前記溶融炉から浮上させた状態で、前記原料にレーザー光を照射することにより加熱して溶融した後に、冷却することによりガラスを生成するガラスの製造方法であって、
    前記原料におけるレーザー光の照射位置を走査させながら前記原料を加熱して溶融し、溶融している原料を冷却してガラスを生成し、
    前記溶融炉から前記原料が浮上している状態で、前記原料を上方の高さから見て円運動した状態で加熱して溶融することを特徴とするガラスの製造方法。
  4. 前記溶融炉から前記原料が浮上している状態で、前記原料を上方の高さから見て回転および円運動した状態で加熱して溶融することを特徴とする請求項2又は3に記載のガラスの製造方法。
  5. 前記レーザー光の走査軌道が円状であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のガラスの製造方法。
  6. 前記レーザー光の走査は、前記レーザー光の照射軌道上に設けたミラーの角度及び/又は位置を制御することで行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガラスの製造方法。
  7. 溶融検知手段が前記加熱された原料の全体が溶融したことを検知した後、前記原料を冷却することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガラスの製造方法。
  8. 前記溶融検知手段は、カメラを有し、
    前記溶融検知手段は、前記加熱された原料の変形によって、前記原料が溶融したことを検知することを特徴とする請求項7に記載のガラスの製造方法。
  9. 前記溶融検知手段は、音響センサーを有し、
    前記溶融検知手段は、前記加熱された原料の音響波によって、前記原料が溶融したことを検知することを特徴とする請求項7に記載のガラスの製造方法。
  10. 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の製造方法でガラスを製造し、
    前記ガラスを成形してレンズを製造することを特徴とするレンズの製造方法。
  11. 無容器溶融法に用いる溶融装置であって、
    原料を浮上させために、ガス流路を有する溶融炉と、
    前記原料を加熱するためのレーザー発振器と、
    前記複数のガス流路からガスを噴出させるために、前記溶融炉に前記ガスを供給するガス供給手段と、
    前記レーザー発振器より発せられるレーザー光を反射する単数もしくは複数のミラーと、前記単数もしくは複数のミラーの位置及び/又は角度を制御し前記レーザー光を走査するミラー制御手段を有し、
    前記レーザー光の走査軌道が、前記溶融炉の中心軸に対して点対称であることを特徴とする溶融装置。
  12. 無容器溶融法に用いる溶融装置であって、
    原料を浮上させために、ガス流路を有する溶融炉と、
    前記原料を加熱するためのレーザー発振器と、
    前記複数のガス流路からガスを噴出させるために、前記溶融炉に前記ガスを供給するガス供給手段と、
    前記レーザー発振器より発せられるレーザー光を反射する単数もしくは複数のミラーと、前記単数もしくは複数のミラーの位置及び/又は角度を制御し前記レーザー光を走査するミラー制御手段を有し、
    前記溶融炉から前記原料が浮上している状態で、前記原料を上方の高さから見て円運動した状態で加熱して溶融することを特徴とする溶融装置。
  13. 前記溶融炉は、前記溶融炉の鉛直方向に向かう第1のガス流路と、前記溶融炉の中心軸方向に向かう複数の第2のガス流路を有することを特徴とする請求項11又は12に記載の溶融装置。
  14. 前記第2のガス流路は、前記溶融炉の中心軸に対して対向して設けられていることを特徴とする請求項13に記載の溶融装置。
  15. 前記原料が溶融したことを検知する溶融検知手段を更に有することを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の溶融装置。
  16. 前記溶融検知手段は、音響波センサーを有することを特徴とする請求項15に記載の溶融装置。
JP2017132040A 2016-07-06 2017-07-05 ガラスの製造方法、レンズの製造方法および溶融装置 Active JP6942542B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016134448 2016-07-06
JP2016134448 2016-07-06

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2018012636A JP2018012636A (ja) 2018-01-25
JP2018012636A5 JP2018012636A5 (ja) 2020-08-13
JP6942542B2 true JP6942542B2 (ja) 2021-09-29

Family

ID=61019305

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017132040A Active JP6942542B2 (ja) 2016-07-06 2017-07-05 ガラスの製造方法、レンズの製造方法および溶融装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6942542B2 (ja)

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4953234B2 (ja) * 2006-09-14 2012-06-13 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 チタン系酸化物ガラスおよびその製造方法
JP5399103B2 (ja) * 2009-03-11 2014-01-29 オリンパス株式会社 光学素子の製造方法及び製造装置
JP2013057573A (ja) * 2011-09-07 2013-03-28 Honda Motor Co Ltd 溶融物の固化状態検出方法
JP6364950B2 (ja) * 2014-05-22 2018-08-01 日本電気硝子株式会社 ガラス材の製造方法及びガラス材の製造装置
JP6274042B2 (ja) * 2014-07-23 2018-02-07 日本電気硝子株式会社 ガラス材の製造方法及びガラス材の製造装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018012636A (ja) 2018-01-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
RU2141887C1 (ru) Устройство и способ лазерного спекания порошка
CN114160813A (zh) 可见光激光增材制造
US5437820A (en) Process for manufacturing a three-dimensional shaped product
CN109622954A (zh) 层叠造型装置和层叠造型物的制造方法
US20180264726A1 (en) Additive manufacturing apparatus, processing device, and additive manufacturing method
JP2004514053A (ja) 電磁放射線束によって焼結、物質除去および/またはラベリングを行う装置およびその装置を操作する方法
JP6800627B2 (ja) ガラスの製造方法、レンズの製造方法および溶融装置
CN206200123U (zh) 一种选择性激光熔化成形熔池实时监测装置
US11534968B2 (en) Nozzle and additive manufacturing apparatus
CN111565883B (zh) 用于激光可透过的工件的表面结构化的方法和激光加工机
JP2017144691A (ja) 粉末床溶融結合装置
JP2020131700A (ja) 造形装置、造形方法および造形システム
JP6942542B2 (ja) ガラスの製造方法、レンズの製造方法および溶融装置
JP2022067408A (ja) 造形状態推定システム、方法、コンピュータプログラム、及び学習モデルの学習方法
JP3077066B2 (ja) ガラスゴブとその中間体の各製造方法
RU159233U1 (ru) Устройство для лазерной обработки материалов
US20180311735A1 (en) Manufacturing method and manufacturing apparatus for additively shaped article
JP6364950B2 (ja) ガラス材の製造方法及びガラス材の製造装置
JP3186706B2 (ja) 半導体ウェハのレーザマーキング方法及び装置
JP6864056B1 (ja) 積層造形装置
CN113500297A (zh) 一种激光抛光方法及激光抛光设备
WO2016009882A1 (ja) ガラス材の製造方法及びガラス材の製造装置
JP2015129061A (ja) ガラス材の製造方法及びガラス材の製造装置
JP6848010B2 (ja) 積層造形装置
JP2018111645A (ja) ガラス材の製造方法及びガラス材の製造装置

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200702

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200702

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210520

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210601

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210708

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210810

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210908

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6942542

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151