JP6364950B2 - ガラス材の製造方法及びガラス材の製造装置 - Google Patents

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本発明は、ガラス材の製造方法及びガラス材の製造装置に関する。
近年、ガラス材の製造方法として、無容器浮遊法に関する研究がなされている。例えば、特許文献1には、ガス浮遊炉で浮遊させたバリウムチタン系強誘電体の試料にレーザービームを照射して加熱溶融した後に、冷却することにより、バリウムチタン系強誘電体の試料をガラス化させる方法が記載されている。容器を用いてガラスを溶融する従来の方法では、溶融ガラスが容器の壁面に接触することによって、結晶が析出することがあるが、無容器浮遊法では、容器の壁面との接触に起因する結晶化の進行を抑制できる。そのため、従来の容器を用いた製造方法ではガラス化させることができなかった材料であっても、無容器浮遊法ではガラス化し得る場合がある。従って、無容器浮遊法は、新規な組成を有するガラス材を製造し得る方法として注目に値すべき方法である。
特開2006−248801号公報
無容器浮遊法の課題は、ガラス材の均質性の向上である。そこで、特許文献1では、複数のレーザーを用いてガラス原料塊の広い範囲にレーザーを照射することが行われている。しかしながら、この方法においても、十分に均質なガラスを得ることは難しい。
本発明の主な目的は、無容器浮遊法により、優れた均質性を有するガラス材を製造し得る方法を提供することにある。
本発明に係るガラス材の製造方法では、成形型の成形面に開口するガス噴出孔からガスを噴出させることにより、成形面の上方にガラス原料塊を浮遊させて保持した状態で、ガラス原料塊にレーザー光を照射することにより加熱融解させて溶融ガラスを得た後に、溶融ガラスを冷却することによりガラス材を得る工程を行う。ガラス原料塊の姿勢をレーザー光に対して相対的に変化させながら、ガラス原料塊にレーザー光を照射する。
本発明に係るガラス材の製造方法では、ガラス原料塊を振動又は揺動させながら、ガラス原料塊にレーザー光を照射してもよい。
本発明に係るガラス材の製造方法では、ガラス原料塊を回転させながら、ガラス原料塊にレーザー光を照射してもよい。
本発明に係るガラス材の製造方法では、レーザー光のガラス原料塊に対する照射位置を変化させながら、ガラス原料塊にレーザー光を照射してもよい。
本発明に係るガラス材の製造方法では、溶融工程において、溶融ガラスが冷却されて固化するまで、ガラス原料塊及び溶融ガラスの姿勢を変化させることが好ましい。
本発明に係るガラス材の製造方法では、ガラス原料塊として、下記式(1)の関係を満たす形状を有するガラス原料塊を用いることが好ましい。
A1/A2≦1 ・・・(1)
A1=前記ガラス原料塊の厚み
A2=前記ガラス原料塊の投影像の長径
本発明に係るガラス材の製造装置は、成形型の成形面に開口するガス噴出孔からガスを噴出させることにより、成形面の上方にガラス原料塊を浮遊させて保持した状態で、ガラス原料塊を加熱融解させて溶融ガラスを得た後に、溶融ガラスを冷却することによりガラス材を製造する装置である。本発明に係るガラス材の製造装置は、ガラス原料塊にレーザー光を照射するときにガラス原料塊の姿勢をレーザー光に対して相対的に変化させる姿勢変化機構を備えている。
本発明によれば、無容器浮遊法により、優れた均質性を有するガラス材を製造し得る方法を提供することができる。
第1の実施形態に係るガラス材の製造装置の模式的断面図である。 第1の実施形態における成形面の一部分の略図的平面図である。 第2の実施形態に係るガラス材の製造装置の模式的断面図である。 第3の実施形態に係るガラス材の製造装置の模式的断面図である。 第4の実施形態に係るガラス材の製造装置の模式的断面図である。 第5の実施形態に係るガラス材の製造装置の模式的断面図である。
以下、本発明を実施した好ましい形態のについて説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
(第1の実施形態)
本実施形態では、通常のガラス材をはじめ、例えば、網目形成酸化物を含まないような、容器を用いた溶融法によってはガラス化しない組成を有するガラス材であっても好適に製造し得る。具体的には、例えば、チタン酸バリウム系ガラス材、ランタン−ニオブ複合酸化物系ガラス材、ランタン−ニオブ−アルミニウム複合酸化物系ガラス材、ランタン−ニオブ−タンタル複合酸化物系ガラス材、ランタン−タングステン複合酸化物系ガラス材等を好適に製造し得る。
図1は、第1の実施形態に係るガラス材の製造装置1の模式的断面図である。図1に示すように、ガラス材の製造装置1は、成形型10を有する。成形型10は、曲面の成形面10aを備える。具体的には、成形面10aは、球面状である。
成形型10は、成形面10aに開口しているガス噴出孔10bを有する。図2に示すように、本実施形態では、ガス噴出孔10bが複数設けられている。具体的には、複数のガス噴出孔10bは、成形面10aの中心から放射状に配列されている。
なお、成形型10は、連続気泡を有する多孔質体により構成されていてもよい。その場合、ガス噴出孔10bは、連続気泡により構成される。
ガス噴出孔10bは、ガスボンベなどのガス供給機構11に接続されている。このガス供給機構11からガス噴出孔10bを経由して、成形面10aにガスが供給される。
ガスの種類は、特に限定されない。ガスは、例えば、空気や酸素であってもよいし、窒素ガスやアルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスであってもよい。
製造装置1を用いて、ガラス材を製造するに際しては、まず、ガラス原料塊12を成形面10a上に配置する。ガラス原料塊12は、例えば、ガラス材の原料粉末をプレス成形等により一体化したものであってもよい。ガラス原料塊12は、ガラス材の原料粉末をプレス成形等により一体化した後に焼結させた焼結体であってもよい。また、ガラス原料塊12は、目標ガラス組成と同等の組成を有する結晶の集合体であってもよい。
ガラス原料塊12の形状は、特に限定されない。ガラス原料塊12は、例えば、レンズ状、球状、円柱状、多角柱状、直方体状、楕球状等であってもよい。
次に、ガス噴出孔10bからガスを噴出させることにより、ガラス原料塊12を成形面10a上で浮遊させる。すなわち、ガラス原料塊12が成形面10aに接触していない状態で、ガラス原料塊12を空中で保持する。その状態で、レーザー照射装置13からレーザー光をガラス原料塊12に照射する。これによりガラス原料塊12を加熱溶融してガラス化させ、溶融ガラスを得る。その後、溶融ガラスを冷却することにより、ガラス材を得ることができる。ガラス原料塊12を加熱溶融する工程と、溶融ガラス、さらにはガラス材の温度が少なくとも軟化点以下となるまで冷却する工程において、少なくともガスの噴出を継続し、ガラス原料塊12、溶融ガラスまたはガラス材と成形面10aとが接触することを抑制することが好ましい。
ところで、ガラス原料塊12の一部にレーザー光が照射されると、ガラス原料塊12の一部が他の部分よりも高温になる。また、ガラス原料塊12の全体にレーザー光を照射したとしても、レーザー光がエネルギー分布を有するため、ガラス原料塊12に温度むらが生じる。ガラス原料塊12の全体を融解させるためには、ガラス原料塊12の加熱されにくい部分の温度が所定の温度になるまで加熱する必要がある。このため、ガラス原料塊12の一部は、必要以上に高い温度にまで加熱されることとなる。その結果、揮発等が生じやすくなり、得られるガラス材の均質性が低下しやすくなる。また、ガラス原料塊12の溶融に要する時間が長くなりやすい。
本実施形態の製造装置1は、姿勢変化機構14を備えている。この姿勢変化機構14は、少なくとも、ガラス原料塊12にレーザー光を照射するときに、ガラス原料塊12の姿勢をレーザー光に対して相対的に変化させる。このため、ガラス原料塊12を融解させる工程において、ガラス原料塊12へのレーザー光の照射位置が変化する。よって、ガラス原料塊12の一部が過剰に加熱されることを抑制でき、ガラス原料塊12を均一に加熱することができる。従って、揮発等が生じることを抑制できる。その結果、高い均質性を有するガラス材を製造することができる。
なお、揮発等は、ガラス原料塊12を融解させるときのみならず、溶融ガラスになってからも生じる。このため、より高い均質性を有するガラス材を得る観点からは、溶融ガラスが冷却されて固化するまでの間にわたってガラス原料塊12及び溶融ガラスの姿勢を変化させることが好ましい。
本発明において、「姿勢を変化させる」とは、ガラス原料塊を振動させる、揺動させる等の変位させることのみならず、変位させることなく、回転させることも意味する。
すなわち、姿勢変化機構14は、例えば、ガラス原料塊12を振動又は揺動させる機構であってもよい。また、姿勢変化機構14は、ガラス原料塊12を回転させる機構であってもよい。姿勢変化機構14は、ガラス原料塊12を振動又は揺動させながら回転させる機構であってもよい。
このような姿勢変化機構14は、例えば、ガラス原料塊12に気体を吹き付ける気体吹付機構により構成することができる。
姿勢変化機構14を気体吹付機構により構成する場合、ガラス原料塊12として、下記式(1)の関係を満たす形状を有するガラス原料塊を用いることが好ましい。
A1/A2≦1 ・・・(1)
A1=ガラス原料塊12の厚み
A2=ガラス原料塊12の投影像の長径
例えば、ガラス原料塊12が楕円体の場合は、A1は短径、A2は長径を指す。ガラス原料塊12が直方体の場合は、A1は最短の辺の長さ、A2は最短の辺と垂直な面の対角線の長さを指す。ガラス原料塊12が円柱状の場合は、A1は高さ、A2は底面の直径を指す。
ガラス原料塊12が上記の関係を満たす場合、ガラス原料塊12の姿勢が変化しやすくなる。A1/A2は0.7以下であることがより好ましい。なお、A1/A2が小さすぎると、ガラス原料塊12が上下方向に回転しにくくなり、かえって姿勢変化が小さくなる傾向がある。よって、A1/A2は0.2以上であることが好ましい。 以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
(第2及び第3の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係るガラス材の製造装置1aの模式的断面図である。図4は、第3の実施形態に係るガラス材の製造装置1bの模式的断面図である。
第1の実施形態では、ガラス原料塊12を動かす例について説明した。但し、本発明は、これに限定されない。例えば、ガラス原料塊12を動かさず、またはガラス原料塊12を動かしながら、レーザー照射装置13の姿勢を変化させてもよい。
具体的には、図3に示すように、第2の実施形態のガラス材の製造装置1aは、レーザー照射装置13の姿勢を変化させる姿勢変化機構15を備えている。この姿勢変化機構15によりレーザー照射装置13が揺動される。これにより、レーザー光のガラス原料塊12に対する照射位置が変化する。そうすることにより、ガラス原料塊12の姿勢をレーザー光に対して相対的に変化させてもよい。
また、図4に示すように、第3の実施形態のガラス材の製造装置1bは、レーザー照射装置13から出射されたレーザー光をガラス原料塊12に導くミラー16と、そのミラー16の姿勢を変化させる姿勢変化機構17を備えている。この姿勢変化機構17によりミラー16が揺動される。これにより、レーザー光のガラス原料塊12に対する照射位置が変化する。そうすることにより、ガラス原料塊12の姿勢をレーザー光に対して相対的に変化させてもよい。
これらの場合であっても、第1の実施形態と実質的に同様の効果が奏される。
(第4の実施形態)
図5は、第4の実施形態に係るガラス材の製造装置の模式的断面図である。
本実施形態の製造装置1cは、成形型10を揺動させる揺動装置18を有する。本実施形態では、成形型10を動かすことにより、成形型10に形成されたガス噴出孔10bのガラス原料塊12に対する相対的な位置が変化する。それにより、ガラス原料塊12と成形面10aとの間におけるガスの気流が乱れ、それに伴いガラス原料塊12の姿勢がレーザー光に対して相対的に変化する。このようにすることで、第1の実施形態等と同様の効果が得られる。
(第5の実施形態)
図6は、第5の実施形態に係るガラス材の製造装置1dの模式的断面図である。
第1〜第4の実施形態では、複数のガス噴出孔10bが成形面10aに開口している例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図5に示されるガラス材の製造装置1cのように、成形面10aの中央に開口しているひとつのガス噴出孔10bが設けられていてもよい。
1,1a,1b,1c,1d 製造装置
10 成形型
10a 成形面
10b ガス噴出孔
11 ガス供給機構
12 ガラス原料塊
13 レーザー照射装置
14,15,17 姿勢変化機構
16 ミラー
18 揺動機構

Claims (6)

  1. 成形型の成形面に開口するガス噴出孔からガスを噴出させることにより、前記成形面の上方にガラス原料塊を浮遊させて保持した状態で、前記ガラス原料塊にレーザー光を照射することにより加熱融解させてガラス化させ、溶融ガラスを得た後に、前記溶融ガラスを冷却することによりガラス材を得る工程を含み、
    前記レーザー光の前記ガラス原料塊に対する照射位置を変化させることによって、前記ガラス原料塊の姿勢を前記レーザー光に対して相対的に変化させながら、前記ガラス原料塊にレーザー光を照射する、ガラス材の製造方法であって、
    前記ガラス原料塊がガラス材の原料粉末のプレス成形体もしくは焼結体、または、目標ガラス組成と同等の組成を有する結晶の集合体である、ガラス材の製造方法。
  2. 前記ガラス原料塊を振動又は揺動させながら、前記ガラス原料塊にレーザー光を照射する、請求項1に記載のガラス材の製造方法。
  3. 前記ガラス原料塊を回転させながら、前記ガラス原料塊にレーザー光を照射する、請求項1または2に記載のガラス材の製造方法。
  4. 前記工程において、前記溶融ガラスが冷却されて固化するまで、前記ガラス原料塊及び前記溶融ガラスの姿勢を変化させる、請求項1〜のいずれか一項に記載のガラス材の製造方法。
  5. 前記ガラス原料塊として、下記式(1)の関係を満たす形状を有するガラス原料塊を用いる、請求項1〜のいずれか一項に記載のガラス材の製造方法。
    A1/A2≦1 ・・・(1)
    A1=前記ガラス原料塊の厚み
    A2=前記ガラス原料塊の投影像の長径
  6. 成形型の成形面に開口するガス噴出孔からガスを噴出させることにより、前記成形面の上方にガラス原料塊を浮遊させて保持した状態で、前記ガラス原料塊を加熱融解させてガラス化させ、溶融ガラスを得た後に、前記溶融ガラスを冷却することによりガラス材を製造する装置であって、
    前記ガラス原料塊にレーザー光を照射するときに、前記レーザー光の前記ガラス原料塊に対する照射位置を変化させることによって、前記ガラス原料塊の姿勢を前記レーザー光に対して相対的に変化させる姿勢変化機構を備える、ガラス材の製造装置であって、
    前記ガラス原料塊がガラス材の原料粉末のプレス成形体もしくは焼結体、または、目標ガラス組成と同等の組成を有する結晶の集合体である、ガラス材の製造装置。
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