JP6942494B2 - グラウト材及びグラウト注入工法 - Google Patents

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Description

本発明は、地盤内の間隙や空洞、岩盤内の破砕帯やクラック、地盤及び岩盤と構造物との境界面の空洞、地盤と引張補強材との隙間に充填するグラウト材、及びグラウト充填方法に関する。
地盤内の間隙や空洞、岩盤内の破砕帯やクラック、地盤及び岩盤と構造物との境界面の空洞、地盤と引張補強材との隙間に充填するグラウト材として、流動性の懸濁液及び流動性の膨潤液を別々のポンプで圧送し、注入口付近で懸濁液及び膨潤液を合流混合することにより、非流動性の可塑状に変質させる2液性のグラウト材が用いられる。
上述した2液性のグラウト材としては、例えば流動性のモルタルを含む流動性の懸濁液と、モンモリロナイト粘土鉱物を含む流動性の膨潤液を合流混合させて非流動性の可塑状に変質させたグラウト材が挙げられる(特許文献1参照)。また、この他に、流動性のモルタルを含む流動性の懸濁液と、モンモリロナイト粘土鉱物とアルミニウム粉末を含む流動性の粘性液とを合流混合させ、流動性の粘性液に含まれるアルミニウム粉末と流動性の懸濁液に含まれるアルカリ成分との発泡反応を生じさせるグラウト材も挙げられる(特許文献2参照)。
特許第3514614号公報 特許第3600502号公報
しかしながら、特許文献1に記載のグラウト材は、主にセメントを主成分とする流動性の懸濁液において、2〜5%程度のブリーディングが生じる。その結果、流動性の懸濁液及び流動性の膨潤液を合流混合させた後も流動性の懸濁液のブリーディング水は可塑状グラウト内に存在し、可塑状グラウトの均一性が損なわれる。また、特許文献1に記載のグラウト材は、合流混合後6時間経過するまでに、粘度鉱物の収縮に伴った体積収縮が生じ、確実な充填効果が得られない。
また、特許文献2に記載のグラウト材は、アルミニウム粉末の発泡による膨張は、2液の合流混合から例えば100分等の所定時間内に完了するが、膨張が完了した後は、粘土鉱物の収縮に伴う体積収縮が生じ、確実な充填効果が得られない。また、特許文献2に記載のグラウト材も、流動性の懸濁液のブリーディング水が2液混合後も残存することから、均一性が損なわれる。さらに、流動性の膨潤液に含まれるアルミニウム粉末の発泡による膨張度合いは、充填箇所の密閉、開放状態などの周辺の環境に影響されるため、密閉状態では周辺構造物に過大な力を加えたり、開放状態では開放部からグラウト材が漏出する懸念がある。
上述したグラウト材の他に、可塑性を高めることを目的として、水中不分離性コンクリート等に用いられる水溶性セルロースを架橋剤として添加した2液性のグラウト材も提案されている。しかしながら、架橋剤の添加により凝集が促進されて2液混合後に2〜4%程度の収縮が発生するという問題がある。
ここで、「可塑性が高い」とは、グラウト材を注入する現場において先流れが生じないと判断される場合を意味する。また、「可塑性がやや低い」とはグラウト材を注入する現場において先流れが生じることも考えられるが実用上問題ないレベルであると判断される場合を意味し、「可塑性が低い」とは、グラウト材を注入する現場において先流れが生じることが想定され未充填箇所の手当てが必要となり得ると判断される場合を意味する。
本発明は、ブリーディングに伴う体積収縮を軽減し、アルミニウム粉末を添加することなく体積収縮量を抑えることができるようにしたグラウト材及びグラウト注入工法を提供することを目的としている。
上述した課題を解決するため、本発明のグラウト材は、地盤、構造物及び地盤と構造物の境界面の空洞や隙間を充填するグラウト材において、高炉セメントB種を含む硬化発現材、減水剤、及び微生物発酵増粘剤を含む流動性の懸濁液である第1溶液と、モンモリロナイト粘土鉱物を含み、アルミニウム粉末を含まない流動性の膨張液である第2溶液と、を有し、前記微生物発酵増粘剤は、ダイユータンガム、又はウェランガムであり、前記第1溶液に含まれる前記減水剤、及び前記微生物発酵増粘剤の配合率は、前記第1溶液に含まれる前記硬化発現材の添加量を84w/v%としたとき、前記減水剤の添加量を0.28〜0.84w/v%、前記微生物発酵増粘材の添加量を0.016〜0.0176w/v%とする配合率であり、前記第1溶液、及び前記第2溶液を混合することで非流動性で且つ可塑状に変質させることを特徴とする。
あるいは、本発明のグラウト材は、地盤、構造物及び地盤と構造物の境界面の空洞や隙間を充填するグラウト材において、高炉セメントB種を含む硬化発現材、減水剤、及び微生物発酵増粘剤を含む流動性の懸濁液である第1溶液と、モンモリロナイト粘土鉱物を含み、アルミニウム粉末を0.002〜0.003w/v%の範囲で含む流動性の膨張液である第2溶液と、を有し、前記微生物発酵増粘剤は、ダイユータンガム、又はウェランガムであり、前記第1溶液に含まれる前記減水剤、及び前記微生物発酵増粘剤の配合率は、前記第1溶液に含まれる前記硬化発現材の添加量を84w/v%としたとき、前記減水剤の添加量を0.28〜0.84w/v%、前記微生物発酵増粘材の添加量を0.016〜0.0176w/v%とする配合率であり、前記第1溶液、及び前記第2溶液を混合することで非流動性で且つ可塑状に変質させることを特徴とする。
また、本発明のグラウト注入工法は、地盤、構造物及び地盤と構造物の境界面の空洞や隙間を充填するグラウト材を注入充填するグラウト注入工法において、第1溶液と、第2溶液と、を、別々のポンプで圧送し、注入口付近で前記第1溶液と前記第2溶液とを合流混合することで非流動性で且つ可塑状に変質させたグラウト材を注入することを特徴とする。ここで、前記第1溶液は、高炉セメントB種を含む硬化発現材、減水剤、及び微生物発酵増粘剤を含む流動性の懸濁液であり、前記第2溶液は、モンモリロナイト粘土鉱物をみ、アルミニウム粉末を含まない流動性の膨張液であり、前記微生物発酵増粘剤は、ダイユータンガム、又はウェランガムであり、前記第1溶液に含まれる前記減水剤、及び前記微生物発酵増粘剤の配合率は、前記第1溶液に含まれる前記硬化発現材の添加量を84w/v%としたとき、前記減水剤の添加量を0.28〜0.84w/v%、前記微生物発酵増粘材の添加量を0.016〜0.0176w/v%とする配合率である。
本発明によれば、ブリーディングに伴う体積収縮を軽減し、アルミニウム粉末を添加することなく体積収縮量を抑えることができる。
実施例1から実施例9及び比較例1から比較例7に示すグラウト材の添加量をまとめた図である。 図1に示す実施例1から実施例9及び比較例1から比較例7に示すグラウト材の性能試験の結果をまとめた図である。 実施例2のグラウト材と、実施例2のグラウト材に対して、第1溶液と第2溶液との混合比を変えたグラウト材の混合率をまとめた図である。 第1溶液と第2溶液との混合比を変えたグラウト材の性能試験の結果をまとめた図である。 実施例2のグラウト材を用いたフロー試験の結果を示す図である。 実施例2のグラウト材を用いた一軸圧縮強度試験の結果を示す図である。 実施例2のグラウト材を用いた単位体積重量を示す図である。 充填性試験で用いる試験装置を示す図である。 実施例2のグラウト材を用いた充填性試験の結果を示す図である。 非漏出性試験で用いる試験装置を示す図である。 実施例2のグラウト材を用いた非漏出性試験の結果を示す図である。 水中分離抵抗性試験で用いる試験装置を示す図である。 実施例2のグラウト材を用いた水中分離抵抗性試験の結果を示す図である。 非収縮性試験で用いる試験装置を示す図である。 実施例2のグラウト材を用いた非収縮性試験の結果を示す図である。 長距離圧送試験に用いた試験装置の概略図である。 (a)第1溶液を用いた2km圧送試験の結果、(b)第2溶液を用いた2km圧送試験の結果を示す図である。 第1溶液及び第2溶液の注入速度が50L/min、100L/min、150L/min、200L/minとなるときにショットされるグラウト材のフロー試験の結果を示す図である。 (a)第1溶液を用いた4km圧送試験の結果、(b)第2溶液を用いた4km圧送試験の結果を示す図である。 第1溶液及び第2溶液の注入速度が100L/min、75L/min、50L/min、25L/minとなるときにショットされるグラウト材のフロー試験の結果を示す図である。 第1溶液及び第2溶液の注入速度が100L/min、75L/min、50L/min、25L/minとなるときにショットされるグラウト材の比重を示す図である。 第1溶液及び第2溶液の注入速度が100L/min、75L/min、50L/min、25L/minとなるときにショットされるグラウト材の一軸圧縮強度を示す図である。 沈降試験を行う試験装置の概略図である。
以下、本実施形態のグラウト材について説明する。本発明におけるグラウト材は、硬化発現材と微生物発酵系増粘材を含有する流動性の懸濁液を第1溶液とし、モンモリロナイト粘土鉱物を含有した流動性の膨張液を第2溶液とし、これら溶液を注入口付近で合流混合させて、非流動性の可塑状に変質させる2液性のグラウト材である。
まず、第1溶液及び第2溶液のうち、第1溶液の配合を変えた複数のグラウト材を用いた性能確認試験を行った。なお、実施例1から実施例9のグラウト材及び比較例1から比較例7のグラウト材においては、第1溶液500Lと第2溶液500Lとを合流混合させる場合について説明している。
図1に示すように、実施例1から実施例9における第1溶液は、固化剤B、減水剤、微生物発酵系増粘剤及び水を混合したものである。なお、実施例8及び実施例9における第1溶液は、実施例2における第1溶液と同一のものを使用した。
一方、比較例1における第1溶液は、固化剤A、減水剤、水溶性セルロース及び水を混合したものである。比較例2における第1溶液は、固化剤B、減水剤、水溶性セルロース及び水を混合したものである。比較例3における第1溶液は、固化剤A、微生物発酵系増粘剤及び水を混合したものである。比較例4における第1溶液は、固化剤A、減水剤、微生物発酵系増粘剤及び水を混合したものである。比較例5における第1溶液は、固化剤B、微生物発酵系増粘剤及び水を混合したものである。比較例6における第1溶液は、固化剤A、減水剤、微生物発酵系増粘剤及び水を混合したものである。また、比較例7における第1溶液は、実施例2の第1溶液と同一のものを使用した。
固化剤Aは、普通ポルトランドセメント及び高炉スラグ微粉末を混合したものである。また、固化剤Bは、例えば高炉セメントB種と、高炉スラグ微粉末とを混合したものである。微生物発酵系増粘材は、実施例1から実施例4、実施例6及び実施例7及び比較例3から比較例6ではダイユータンガム、実施例5ではウェランガムを用いている。また、減水剤は、実施例1から実施例7、比較例3から比較例6はナフタリン系の減水剤を、比較例1及び比較例2はポリカルボン酸系の減水剤を用いている。実施例1から実施例7の各材料の添加量は、以下の通りである。なお、以下に示す「w/v%」は、例えば100mLあたりに含まれる重量を示す。
実施例1における第1溶液は、固化剤Bの添加量84.0w/v%、減水剤の添加量0.280w/v%、微生物発酵系増粘材の添加量0.016w/v%である。
実施例2、実施例8、実施例9及び比較例7における第1溶液は、固化剤Bの添加量84.0w/v%、減水剤の添加量0.280w/v%、微生物発酵系増粘材の添加量0.044w/v%である。
実施例3における第1溶液は、固化剤Bの添加量84.0w/v%、減水剤の添加量0.546w/v%、微生物発酵系増粘材の添加量0.044w/v%である。
実施例4における第1溶液は、固化剤Bの添加量84.0w/v%、減水剤の添加量0.840w/v%、微生物発酵系増粘材の添加量0.044w/v%である。
実施例5における第1溶液は、固化剤Bの添加量84.0w/v%、減水剤の添加量0.280w/v%、微生物発酵系増粘材の添加量0.044w/v%である。
実施例6における第1溶液は、固化剤Bの添加量84.0w/v%、減水剤の添加量0.280w/v%、微生物発酵系増粘材の添加量0.088w/v%である。
実施例7における第1溶液は、固化剤Bの添加量84.0w/v%、減水剤の添加量0.280w/v%、微生物発酵系増粘材の添加量0.176w/v%である。
比較例1における第1溶液は、固化剤Aの添加量84.0w/v%、減水剤の添加量0.280w/v%、水溶性セルロースの添加量0.016w/v%である。
比較例2における第1溶液は、固化剤Bの添加量84.0w/v%、減水剤の添加量0.280w/v%、水溶性セルロースの添加量0.016w/v%である。
比較例3における第1溶液は、固化剤Aの添加量84.0w/v%、微生物発酵系増粘材の添加量0.044w/v%である。
比較例4における第1溶液は、固化剤Aの添加量84.0w/v%、減水剤の添加量0.280w/v%、微生物発酵系増粘材の添加量0.044w/v%である。
比較例5における第1溶液は、固化剤Bの添加量84.0w/v%、微生物発酵系増粘材の添加量0.044w/v%である。
比較例6における第1溶液は、固化剤Bの添加量84.0w/v%、減水剤の添加量0.280w/v%、微生物発酵系増粘材の添加量0.008w/v%である。
第2溶液は、実施例1から実施例7のグラウト材及び比較例1から比較例6のグラウト材ともに、モンモリナイト粘土鉱物、減水剤及び水を配合したものである。一例として、モリナイト粘土鉱物、減水剤の添加量は、モンモリナイト粘土鉱物13.52w/v%、減水剤0.2w/v%である。ここで、減水剤としては、リン酸塩系の減水剤である。
一方、実施例8、実施例9及び比較例7は、モンモリナイト粘土鉱物、減水剤及び水の他に、アルミニウム粉末を配合したものである。実施例8における第2溶液は、モンモリナイト粘土鉱物の添加量13.52w/v%、減水剤の添加量0.2w/v%、アルミニウム粉末0.002w/v%である。実施例9における第2溶液は、モンモリナイト粘土鉱物の添加量13.52w/v%、減水剤の添加量0.2w/v%、アルミニウム粉末0.003w/v%である。比較例7における第2溶液は、モンモリナイト粘土鉱物の添加量13.52w/v%、減水剤の添加量0.2w/v%、アルミニウム粉末0.004w/v%である。
図2は、実施例1から実施例9のグラウト材及び比較例1から比較例7のグラウト材の性能試験の結果を示す。グラウト材の性能試験は、ブリーディング試験、フロー試験(流動性試験)、収縮量試験及び一軸圧縮強度試験である。なお、実施例8、実施例9及び比較例7における第1溶液は、実施例2の第1溶液と同一であることから、これら実施例においては、第1溶液に対するブリーディング試験は省略した。
ブリーディング試験は、実施例1から実施例7のグラウト材及び比較例1から比較例6のグラウト材における第1溶液をブリーディング袋に詰め、30分経過後、3時間経過後のブリーディング量の比率を測定することで実施した。
フロー試験は、「JHS313 コンシステンシー試験方法」のシリンダー法を用いて実施した。周知のように、フロー試験は、静置時のフロー試験と、打撃時のフロー試験とを有する。静置時のフロー試験は、生成したグラウト材をテーブル上で規定の型枠に充填し、型枠を外した後のグラウト材の広がりを計測することで、グラウト材の性状を測定するものである。また、打撃時のフロー試験は、生成したグラウト材をテーブル上で規定の型枠に充填し、型枠を外した後、所定時間(例えば15秒後)内に所定回数(例えば15回)の落下運動による振動を与えた後のグラウト材の広がりを計測することで、グラウト材の性状を測定するものである。
収縮量試験は、φ100mm、高さ1000mmの硬質塩化ビニール管に下端に漏れが生じないように平板を取り付けた容器に、混合直後のグラウト材を入れて28日経過後の収縮率を計測した。
一軸圧縮強度試験は、「JHS313 圧縮強度試験方法」を用いて、寸法φ50mm×100mmの大きさの供試体を作成し、供試体を作成してから28日経過後に、3本の供試体の圧縮強度を測定し、測定された3本の供試体の圧縮強度の平均値を測定した。
図2に示すように、ブリーディング試験の結果において、微生物発酵系増粘材ではなく、水溶性セルロースを混合した比較例1及び比較例2や、微生物発酵系増粘材を混合したが減水剤を混合していない比較例3及び比較例5において、ブリーディング率が、30分経過後に1.5〜3%、3時間経過後に5.5〜13.0%となる。
また、比較例4及び比較例6は30分経過後に1〜1.5%であるが、3時間経過後に4から5.5%であり、3時間程度以上となる長距離圧送条件においては配管内で材料分離のリスクが高いことがわかった。
一方、実施例1から実施例7においては、30分経過後に0〜0.9%、3時間経過後に0〜3.7%であることから、長距離圧送条件においては配管内で材料分離のリスクが低い。特に実施例3、実施例4及び実施例7は3時間経過後においても0%であることから長距離圧送条件においては配管内で材料分離のリスクが極めて低いことがわかった。
次に、フロー試験の結果について説明する。実施例1から実施例9及び比較例1から比較例7のグラウト材は、フロー値が88〜130mmであり、「矢板工法トンネルの背面空洞注入工 設計・施工要領(H18.10)」の「背面空洞注入材の品質規格(2)」で示される「フロー値:80〜155mm」を満足する結果が得られた。
次に、収縮量試験の結果について説明する。比較例1、比較例2のグラウト材は、28日経過後の収縮量は2.5〜4.2%であった。また、比較例3、比較例4のグラウト材は、28日経過後の収縮量は0.5〜0.8%であった。また、比較例5のグラウト材は、28日経過後の収縮量は0.2、比較例6のグラウト材は、28日経過後の収縮量は、1.8%であった。比較例7のグラウト材は、28日経過後の収縮量は、−0.12%であった。一方、実施例1から実施例7のグラウト材は、28日経過後の収縮量は0.20〜0.48%であった。さらに、実施例8及び実施例9のグラウト材は、28日経過後の収縮量は0.00〜0.10%であった。したがって、実施例1から実施例7、及び減水剤を用いていない比較例5のグラウト材は、28日経過後の収縮量が0.5%未満の良好な結果が得られることがわかった。同様にして、実施例8、実施例9のグラウト材は、28日経過後の収縮量が0.5%未満の良好な結果が得られることがわかった。一方、比較例7のグラウト材は、28日経過後の収縮量が−0.12%、つまり体積膨張が発生するという、好ましくない結果が得られた。
最後に、一軸圧縮強度試験の結果について説明する。比較例4のグラウト材において、一軸圧縮強度が0.9N/mmとなるが、その他の事例においては、1.55N/mm以上であることがわかった。つまり、比較例4を除いた事例では、「矢板工法トンネルの背面空洞注入工 設計・施工要領(H18.10)」の「背面空洞注入材の品質規格(2)」で示される「一軸圧縮強度:1.5N/mm以上」を満足する結果が得られることがわかった。
上述したグラウト材の性能確認試験の結果を考慮すると、実施例1から実施例9に示すグラウト材は、長距離圧送条件において、比較例1から比較例7に示すグラウト材よりも機能的に優れていることがわかった。
また、実施例1から実施例7のグラウト材に示すように、第1溶液に含まれる減水剤の配合率が0.280〜0.840w/v%の範囲であれば、グラウト材の性能を維持できることがわかった。また、実施例1から実施例7のグラウト材に示すように、第1溶液に含まれる微生物発酵系増粘材の配合率が0.016〜0.176w/v%の範囲であれば、グラウト材の性能を維持できることがわかった。また、実施例1から実施例7のグラウト材に示すように、第1溶液に含まれる微生物発酵系増粘材の種類を変化させても、グラウト材の性能を維持することがわかった。
さらに、実施例8及び実施例9のグラウト材に示すように、第2溶液に含まれるアルミニウム粉末の配合率が0.002〜0.003w/v%(言い換えれば、第1溶液に含まれる硬化発現材(固化剤B)に対して0.0025〜0.0035w/w%)の範囲であれば、グラウト材の性能を維持できることがわかった。なお、上述した特許文献2では、グラウト材の膨張率を5〜40%を目的としてアルミニウム粉末を硬化発現材に対して0.01〜0.1w/w%となるように添加しているが、本実施形態では、特許文献2に比べてアルミニウム粉末の配合率を抑えた場合であっても、グラウト材の性能を維持できることがわかった。
次に、第1溶液と第2溶液との混合比を変更したグラウト材について性能試験を行った。なお、グラウト材としては、第1溶液と第2溶液と等量混合する場合のグラウト材として実施例2のグラウト材を用いた。図3に示すように、実施例10から実施例13のグラウト材、比較例8及び比較例9のグラウト材において、第1溶液及び第2溶液の各溶液は、実施例2のグラウト材における第1溶液及び第2溶液と同一のものを用いている。
実施例2のグラウト材は、第1溶液500L、第2溶液500Lを混合したグラウト材である。また、実施例10のグラウト材は、第1溶液450L、第2溶液550Lを混合したグラウト材である。実施例11のグラウト材は、第1溶液400L、第2溶液600Lを混合したグラウト材である。実施例12のグラウト材は、第1溶液550L、第2溶液450Lを混合したグラウト材である。実施例13のグラウト材は、第1溶液600L、第2溶液400Lを混合したグラウト材である。比較例8のグラウト材は、第1溶液300L、第2溶液700Lを混合したグラウト材である。実施例9のグラウト材は、第1溶液700L、第2溶液300Lを混合したグラウト材である。
図4は、図3に示す実施例10から実施例13のグラウト材、比較例8及び比較例9のグラウト材の性能試験の結果を示す。
まず、フロー試験の結果について説明する。上述したように、実施例2のグラウト材、実施例10から実施例13のグラウト材及び比較例8のグラウト材におけるフロー値は、83〜145mmである。したがって、「矢板工法トンネルの背面空洞注入工 設計・施工要領(H18.10)」の「背面空洞注入材の品質規格(2)」で示される「フロー値:80〜155mm」を満足する結果が得られた。一方、比較例9のグラウト材におけるフロー値は195mmであり、上記規格から外れるという結果が得られた。
次に、収縮量試験の結果について説明する。実施例2のグラウト材、実施例10から実施例13のグラウト材及び比較例8のグラウト材における28日経過後の収縮量は、0.15〜0.42%であり、28日後の収縮量が0.5%であるという良好は結果が得られた。一方、実施例9のグラウト材における28日経過後の収縮量は1.2%であり、収縮量が大きいという結果が得られた。
最後に、一軸圧縮強度試験の結果について説明する。実施例2のグラウト材、実施例10及び実施例13のグラウト材及び比較例9のグラウト材における一軸圧縮強度は、1.50から3.10N/mmとなり、「矢板工法トンネルの背面空洞注入工 設計・施工要領(H18.10)」の「背面空洞注入材の品質規格(2)」で示される「一軸圧縮強度:1.50N/mm以上」を満足する結果が得られることがわかった。一方、比較例8のグラウト材における一軸圧縮強度は、1.10となり、上記規格を満足する結果を得ることができなかった。
これらを考慮すると、グラウト材1000Lを生成するときの第1溶液及び第2溶液の混合比は、第1溶液:第2溶液=400L:600L〜600L:400Lの範囲で良好であることがわかった。つまり、第1溶液及び第2溶液の混合比は、第1溶液:第2溶液=2:3〜3:2の範囲であることが好ましい。
次に、上述した実施例2のグラウト材を用いた各種性能評価試験を行った。各種性能評価試験は、フロー試験(流動性試験)、一軸圧縮強度試験、単位体積重量試験、充填性試験、非漏出性試験、水中分離抵抗性試験及び非収縮性試験である。これら性能評価試験のうち、充填性試験、非漏出性試験、水中分離抵抗性試験及び非収縮性試験は、「矢板工法トンネルの背面空洞注入工 設計・施工要領(H18.10)」に準じて実施された。
まず、フロー試験は、静置時のフロー試験と、打撃時のフロー試験とを有する。静置時のフロー試験は、「JHS313 コンシステンシー試験方法のシリンダー法」に基づいて行った。また、打撃時のフロー試験は、「JIS R5201 フロー試験」で用いるフローコーンに代わって「JHS313 コンシステンシー試験方法」のシリンダーを用いて行った。なお、静置時のフロー試験は、静置した直後、5分経過後、10分経過後、30分経過後、60分経過後の値を測定した。同様に、打撃時のフロー試験は、打撃した直後、5分経過後、10分経過後、30分経過後、60分経過後の値を測定した。
図5に示すように、静置時のフロー試験では、静置した直後、5分経過後、10分経過後、30分経過後、60分経過後の測定値が規格値である「80〜155mm」の範囲に含まれ、同時に、60分経過後の測定値が60分経過後の規格値である「100mm以下」となる。
また、打撃時のフロー試験では、打撃した直後、5分経過後、10分経過後、30分経過後、60分経過後の測定値が規格値である「130〜205mm」の範囲に含まれ、同時に、60分経過後の測定値が60分経過後の規格値である「170mm以下」となる。つまり、フロー試験において、実施例2のグラウト材の性能は規格値を満足することがわかった。
一軸圧縮強度試験は、JSCE−Fに基づいた供試体(φ50mm×高さ100mm)を作成し、JIS A 1108に基づく圧縮強度試験を行った。一軸圧縮強度試験は、3本の供試体を作成してから7日経過後、28日経過後の圧縮強度を測定し、その平均値を算出した。
図6に示すように、7日経過後の供試体3本の圧縮強度の測定値の平均値は1.00N/mmであり、また、28日経過後の供試体3本の圧縮強度の測定値の平均値は、1.63N/mmである。ここで、28日経過後の圧縮強度の規格値は、1.5N/mm以上で、最低強度が95%以上であることから、実施例2のグラウト材は、一軸圧縮強度試験において、規格値を満足することがわかった。
単位体積重量試験は、質量法に基づいて実施された。図7に示すように、単位体積重量試験における規格値は、例えばエア系グラウト材(発泡により気泡が混入したグラウト材)の場合は11〜12kN/mであり、エア系グラウト材以外の場合は11〜15kN/mである。例えば実施例2のグラウト材の単位体積重量は12.7kN/mであり、単位体積重量試験における規格値の範囲に含まれることがわかった。
次に、充填性試験について説明する。図8は、充填性試験を行う試験装置を示す。試験装置は、高さ300mm、幅300mm、長さ4000mmの排水溝と、排水溝の底部に所定の傾斜を付けて打設されたモルタルの表面の下端側の4カ所に設けられた、高さ100mm程度のコンクリート(モルタル)ブロックと、排水溝の上部4カ所に固定される100mm程度の角材(木材)と、排水溝の上部2カ所に固定されるH型鋼と、排水溝の上面に固定され、充填状況等を視認可能な透明のアクリル板とを有する。なお、試験装置のアクリル板は、グラウト材の注入圧力による浮き上がりを防止するため、適当な間隔で排水溝の上部に鋼材で固定される。また、注入口と注入口から2mの位置との計2箇所に圧力ゲージが設置される。
充填性試験は、以下に示す流れで実施された。
1)上述した試験装置内に注入材を注入する。注入材の注入流量(注入ホースからの吐出量)は30L/minとする。
2)アクリル板から充填状況を観察する。
3)2カ所に設置した圧力ゲージにて、注入時の圧力を計測する。
4)注入材の注入は、先端部の吐出口から注入材が流出した時点で終了とする。
5)注入開始時点から約2時間経過後に、容器を解体して充填状況の確認を行う。この時、容器内の上端・下端に設置した角材やH型鋼等の周辺にかけて、注入材が隙間なく密実に充填がなされているか詳細に観察して記録する。
上述した充填性試験の結果を図9に示す。図9に示すように、グラウト材を試験装置に注入したときの注入圧力は、注入口で0.04Mpa、注入口から2mの位置で0.01MPaである。また、グラウト材の充填性については、表面、角材周囲、H型鋼周囲及び底部ブロック周囲の各範囲で隙間なく充填されており、充填性試験の結果が良好であることがわかった。
非漏出性試験について説明する。図10は、非漏出性試験を行う試験装置を示す。図10に示すように、試験装置は、木枠、木板、透明アクリル板を加工した所定の容器と、容器の前面に設けられ、隙間への逸走防止(グラウト材の進入深さ)を確認するための透明のアクリル板と、容器の片側に設けられ、長さ400mm程度のシュート状の投入口と、容器内の下部に設けられ、1,3,5,7,10mmの隙間を有する発泡スチロールとを含む。
非漏出試験は、以下に示す流れで実施された。
1)容器の片側に設けたシュートに1クッションおいて、試験装置の内部にグラウト材を流し込む。
2)グラウト材の吐出量は30L/minの速度とする。
3)グラウト材の注入は、発泡スチロールの天端から、高さ300mmに達した時点で終了とする。
4)各隙間に入り込んだ(進入した)グラウト材の深さ(流下長)を注入直後、5,10,30,60分経過後で計測する。
図11は、非漏出性試験の結果を示す。図11に示すように、隙間幅が1mmの場合、注入直後、5分経過後、10分経過後、30分経過後、60分経過後のいずれの場合にも、流下長の測定値は15mmであった。また、隙間幅が3mmの場合、注入直後では流下長の測定値は40mmであったが、5分経過後、10分経過後、30分経過後、60分経過後の各場合において、流下長の測定値は50mmであった。隙間間隔が5mmの場合、注入直後及び5分経過後の場合に、流下長の測定値は40mmであったが、10分経過後、30分経過後、60分経過後のいずれの場合も流下長の測定値は45mmであった。隙間幅が7mmの場合、注入直後では流下長の測定値は130mmであったが、5分経過後、10分経過後、30分経過後、60分経過後の各場合において、流下長の測定値は135mmであった。隙間間隔が10mmの場合、注入直後及び5分経過後の場合に、流下長の測定値は55mmであったが、10分経過後、30分経過後、60分経過後のいずれの場合も流下長の測定値は60mmであった。なお、非漏出試験では、注入してから60分経過後において、隙間幅5mm以下で、完全流出が発生していないこと(隙間に進入したグラウト材の深さが350mm)が規格となっている。したがって、実施例2のグラウト材は、非漏出性試験において、規格を満足する性能であることがわかった。
例えば、セメント350kg/m、アクアグラウト用ベントナイト285kg/m、アクアグラウト混和剤5kg/m及び水777kg/mを混合したグラウト材の場合、隙間幅が10mmとなる場合、流下長の測定値は280mmである。この結果を考慮すると、実施例2のグラウト材の非漏出性試験の結果は極めて良好であることがわかった。
水中分離抵抗性試験について説明する。図12に示すように、水中分離抵抗試験に用いる試験装置は、長さ約450mm程度、幅300mm程度、高さ300mm程度の水槽にpHが7〜8程度の水(水道水でも可)を26L張る。水槽の水面から10cmの位置にpH計が設けられる。
水中分離抵抗性試験の試験方法は、以下の通りである。
1)φ80mm、高さ80mm(JHS規格)のフローコーンにグラウト材を注ぐ。
2)水槽内にフローコーンを入れ、素早くフローコーンを除去する。この時、振動等の衝撃を与えず初期の濁り等はできるだけ発生しないようにするものとする。
3)グラウト材を水槽に投入する前、投入直後、5分経過後、10分経過後、30分経過後、60分経過後の各々のpHと光透過率(濁度)を測定する。
4)水面から10cmの位置よりスポイトで水をサンプリングし、分光光度計により波長800nmでの光透過率を測定する。
図13は、水中分離抵抗性試験の結果を示す。光透過率は、グラウト材を投入する前を100%とした場合、投入した直後、5分経過後、10分経過後、30分経過後及び60分経過後の各々において、99.2〜99.8%で、変化率は、−0.2〜−0.8%である。ここで、水中分離抵抗性試験において、グラウト材の投入前と、投入してから60分経過後の光透過率の変化率の規格値は±2%であり、実施例2のグラウト材は、水中抵抗性試験において、規格値の範囲に含まれており、規格値を満足する性能であることがわかった。
また、pH値は、グラウト材を投入する前の値がpH7.79とした場合、投入した直後、5分経過後、10分経過後、30分経過後及び60分経過後の各々において、7.84〜8.19である。ここで、水中分離抵抗性試験において、グラウト材の投入前と、投入してから60分経過後のpH値の測定比率の規格値は、±10%であり、実施例2のグラウト材は、水中抵抗性試験において、規格値の範囲に含まれており、規格値を満足する性能であることがわかった。
非収縮性試験について説明する。図14に示すように、非収縮性試験に用いる試験装置は、φ300mm、高さ1000mmの硬質塩化ビニール管の下端にグラウト材の漏れが生じないように平板を取り付けた容器である。
非収縮性試験の試験方法は、以下の通りである。
1)上述した容器にグラウト材を注入する。
2)グラウト材の水分発散防止のためにキャッピングを行い、室内にて養生する。
3)7日経過後、14日経過後、21日経過後、28日経過後の収縮量を計測する。
なお、図15に示すように、収縮量の計測は、硬質塩化ビニール管に注入したグラウト材の上面における中心(図15中、位置No.1)及び該上面の周縁部で且つ90°間隔を開けて設けた4カ所(図15中、位置No.2〜No.5)の計5カ所としている。
図15は、非収縮性試験の結果を示す。図15に示すように、7日経過後における測定値は、位置No.1の測定値は1.5mm、位置No.2の測定値は0.8mm、位置No.3の測定値は1.2mm、位置No.4の測定値は0.7mm、位置No.5の測定値は1.1mmである。したがって、7日経過後における測定値の平均は、1.1mmである。
14日経過後における測定値は、位置No.1の測定値は2.0mm、位置No.2の測定値は1.1mm、位置No.3の測定値は1.9mm、位置No.4の測定値は1.7mm、位置No.5の測定値は1.8mmである。したがって、14日経過後における測定値の平均は、1.7mmである。
21日経過後における測定値は、位置No.1の測定値は2.3mm、位置No.2の測定値は1.2mm、位置No.3の測定値は2.1mm、位置No.4の測定値は1.8mm、位置No.5の測定値は1.9mmである。したがって、21日経過後における測定値の平均は、1.9mmである。
28日経過後における測定値は、位置No.1の測定値は2.3mm、位置No.2の測定値は1.2mm、位置No.3の測定値は2.1mm、位置No.4の測定値は1.8mm、位置No.5の測定値は1.9mmである。したがって、28日経過後における測定値の平均は、1.9mmである。
ここで、非収縮性試験において、28日経過後の収縮量の規格値は、5mm未満である。したがって、実施例2のグラウト材は、非収縮性試験における収縮量の規格値を満足する性能を有することがわかった。
このように、上述した実施例2のグラウト材を用いた各種性能評価試験は、各評価試験における規格値を満足する性能を有することがわかった。
次に、上述した実施例2のグラウト材を用いて、長距離圧送試験を実施した結果について説明する。長距離圧送試験では、圧送時の圧送管内の圧力損失を計測する他、圧送可能距離や長距離圧送後のグラウト材の品質を確認した。
図16は、長距離圧送試験に用いる試験装置の概略図である。図16に示すように、長距離圧送試験を行う試験装置10は、第1溶液送出部11、第2溶液送出部12、スタティックミキサ13を有する。第1溶液送出部11は、グラウトミキサ15、第1溶液の流量を検出する検出部16、注入ポンプ17を有する。第2溶液送出部12は、アジテータ21、第2溶液の流量を検出する検出部22、注入ポンプ23を有する。第1溶液送出部11が有する検出部16の出力は記録部18に、第2溶液送出部12が有する検出部22の出力は記録部24に、各々記録される。
試験装置10は、第1溶液送出部11の出力側の配管25と、第2溶液送出部12の出力部の配管26とがスタティックミキサ13に接続される。また、第1溶液送出部11とスタティックミキサ13とを接続する配管25において、スタティックミキサ13の手前側には、第1溶液をグラウトミキサ15に還流させる還流路を形成する配管27が設けられる。同様に、第2溶液送出部12とスタティックミキサ13とを接続する配管26において、スタティックミキサ13の手前側には、第2溶液をアジテータ21に還流させる還流路を形成する配管28が設けられる。長距離圧送試験では、第1溶液送出部11が有する注入ポンプ17から還流路を形成する配管27が設けられる分岐点までの距離L1や、第2溶液送出部12が有する注入ポンプ23から還流路を形成する配管28が設けられる分岐点までの距離L2を変化させている。なお、配管25,26,27,28は、ライネックス株式会社製 グリーンライン50Aを使用した。
まず、2km圧送試験の結果について説明する。2km圧送試験は、第1溶液及び第2溶液の注入速度を100L/minに設定して、各液をL1=L2=2km(注入ポンプとスタティックミキサとの距離は2052m)圧送する試験である。この圧送試験において、配管の0m、912m及び2052mの各地点に圧力センサを配置して、各地点の圧力を測定した。
図17(a)は、第1溶液を注入する配管の内部の圧力変化を示し、図17(b)は、第2溶液を注入する配管の内部の圧力変化を示す。図17(a)に示すように、第1溶液の注入が2052mに到達したときの配管の内部の圧力の最大値は0.8MPa程度である。図17(b)に示すように第2溶液の注入が2052mに到達したときの配管の内部の圧力の最大値は1.2MPa程度である。第2溶液を注入する配管の内部の圧力が高い数値を示す理由としては、例えば、第2溶液においてベントナイトの膨潤が進み、第2溶液の粘土が上昇したことが考えられる。
次に、第1溶液及び第2溶液の注入速度を、50L/min、100L/min、150L/min、200L/minと変化させてショットしたときのグラウト材に対してフロー試験(静置時)を行った。
図18に示すように、注入速度が50L/minでは、フロー値は、X方向で96mm、Y方向で93mmとなり、平均値が95mmであった。注入速度が100L/minでは、フロー値は、X方向で93mm、Y方向で93mmとなり、平均値が93mmであった。注入速度が150L/minでは、フロー値は、X方向で86mm、Y方向で89mmとなり、平均値が88mmであった。注入速度が200L/minでは、フロー値は、X方向で89mm、Y方向で89mmとなり、平均値が89mmであった。静置時のフロー値の規格値は、80〜155mmであることから、実施例2のグラウト材を用いた2kmの長距離圧送条件であっても、良好な性能を得られることがわかった。
次に、4km圧送試験を行った。4km圧送試験は、注入速度を100L/minに設定して、第1溶液又は第2溶液を距離L1=L2=4km(注入ポンプとスタティックミキサとの距離は4332m)圧送する試験である。
このとき、配管の0m,1140m,2052m,3420m,4332mの地点に圧力センサを設置して各地点の圧力を測定した。図19(a)に示すように、圧送される第1溶液が4332mに到達したときの配管の内部の圧力の最大値は3MPa程度であることがわかった。一方、図19(b)に示すように、第2溶液を圧送する場合、第2溶液が3500mに到達した時点で配管の内部の圧力が3MPaに到達したため、注入速度を75L/minに落として試験を継続した。したがって、第2溶液を圧送したときの配管の内部の圧力の最大値は3MPa程度であることがわかった。なお、第1溶液の圧送試験において、第1溶液が3500mに到達した時点での配管内部の圧力は、2.6MPaであった。
次に、4km圧送試験において、第1溶液及び第2溶液の注入速度を、100L/min、75L/min、50L/min、25L/minと変化させてショットしたときのグラウト材に対してフロー試験(静置時)を行った。
図20に示すように、注入速度が100L/minでは、フロー値は、X方向で83mm、Y方向で84mmとなり、平均値が84mmであった。注入速度が75L/minでは、フロー値は、X方向で88mm、Y方向で87mmとなり、平均値が88mmであった。注入速度が50L/minでは、フロー値は、X方向で85mm、Y方向で85mmとなり、平均値が85mmであった。注入速度が25L/minでは、フロー値は、X方向で89mm、Y方向で89mmとなり、平均値が89mmであった。静置時のフロー値の規格値は、80〜155mmであることから、実施例2のグラウト材を用いた4kmの長距離圧送条件であっても、良好な性能を得られることがわかった。
また、第1溶液及び第2溶液の注入速度を100L/min、75L/min、50L/min、25L/minと変化させてショットしたときのグラウト材の比重を測定した。図21に示すように、注入速度を100L/minとなるときのグラウト材の質量は254gであり、比重は1.29t/mであった。注入速度を75L/minとなるときのグラウト材の質量は260gで、比重は1.32t/mであった。注入速度を50L/minとなるときのグラウト材の質量は261gで、比重は1.33t/mであった。注入速度を25L/minとなるときのグラウト材の質量は250gで、比重は1.27t/mであった。エア系以外のグラウト材の比重の規格値は1.1〜1.5t/mである。したがって、4km圧送する長距離圧送条件に基づいた実施例2のグラウト材の比重において、良好な性能を有することがわかった。
次に、単位体積重量を測定したグラウト材を用いて、一軸圧縮試験を行った。なお、25L/minとなるときのグラウト材については、脱枠後に破損したため、試験を行うことができなかった。図22に示すように、注入速度100L/minとなるときのグラウト材の一軸圧縮強度は、補正前で1.55N/mm、補正後で1.51N/mmであった。注入速度75L/minとなるときのグラウト材の一軸圧縮強度は、補正前で1.58N/mm、補正後で1.54N/mmであった。注入速度50L/minとなるときのグラウト材の一軸圧縮強度は、補正前で1.65N/mm、補正後で1.62N/mmであった。一軸圧縮強度の規格値は、1.5N/mm以上であることから、4km圧送する長距離圧送条件に基づいた実施例2のグラウト材の一軸圧縮強度においても、良好な性能を有することがわかった。
つまり、実施例2のグラウト材は、長距離圧送条件下の圧送においても、良好な性能を有することがわかった。
最後に、沈降試験を行った。沈降試験は、第1溶液のみを用いた試験と、第1溶液及び第2溶液を各々1000mL混合した(1:1で混合した)グラウト材を用いた試験とを行った。なお、沈降対策試験で用いるグラウト材は、上述した実施例4に示すグラウト材である。
図23は、沈降試験に用いた試験装置を示す。沈降試験に用いる試験装置50は、ホッパー51、注入ポンプ52を有し、注入ポンプ52の排出口とホッパー51との間を、圧送ホース53、透明アクリル管54、圧送ホース55、3本の配管56,57,58、圧送ホース59の順で接続している。つまり、試験装置50は、グラウト材を循環させる装置である。なお、配管56,57,58は、ライネックス株式会社製 グリーンライン50Aを使用した。また、透明アクリル管54は、内径及び外径を、配管56,57,58と同一とするものを用いた。
沈降試験は以下の手順で実行された。
1)試料(第1溶液又はグラウト材)に対して、品質確認を行った。なお、試料として第1溶液のみを用いる場合には、品質確認として、ブリーディング試験及び温度測定を行った。試料としてグラウト材を用いる場合には品質確認として、フロー試験、密度測定、温度測定を行った。
2)試料をホッパーに充填した後、注入ポンプを駆動し、圧送速度50L/minで循環圧送した。
3)循環圧送の際に、アクリル管の沈降状況を確認し、アクリル管における沈降長が6cm未満である場合は引き続き循環圧送する。アクリル管における沈降長が6cm以上となる場合には、循環圧送を中断して、連結した3本の配管を試験装置から取り外す。そして、連結した3本の配管56,57,58のいずれかに丸ピグを挿入する。3本の配管56,57,58を試験装置50に取り付け、循環圧送を再開する。
4)循環圧送を開始してから3時間経過した後、再度品質確認を行う。
5)配管を取り外し、配管内部を観察した後、配管内部に注入材が付着している場合には、ピグを用いて洗浄する。
まず、第1溶液を試料としたときの品質確認の結果は以下の通りである。
第1溶液を循環圧送したときのブリーディング試験の結果は、循環圧送を開始した直後は0%、循環圧送を開始してから3時間経過後は0.75%であった。また、循環圧送を開始した直後の温度は19.2°Cであり、循環圧送を開始してから3時間経過後の温度は、19.4°Cであった。
次に、グラウト材を試料としたときの品質確認の結果は以下の通りである。
フロー試験において、循環圧送を開始した直後のグラウト材のフロー値は、X方向100mm、Y方向104mm、平均102mmという結果であった。また、循環圧送を開始してから3時間経過後におけるグラウト材のフロー値は、X方向111mm、Y方向109mm、平均110mmという結果であった。なお、フロー値の規格値は、80〜155mmであることから、良好な品質であるという結果が得られた。
密度測定において、循環圧送を開始した直後のグラウト材の密度は1.315g/cmであった。循環圧送を開始してから3時間経過後におけるグラウト材の密度は、1.325g/cmであった。
一軸圧縮強度試験において、循環圧送を開始した直後のグラウト材で生成した3本の供試体における圧縮強度は、2.81kN/m、3.10kN/m、2.79kN/mであり、圧縮強度の平均値は2.90kN/mであった。循環圧送を開始してから3時間経過した後のグラウト材で生成した3本の供試体における圧縮強度は、2.86kN/m、3.04kN/m、3.24kN/mであり、圧縮強度の平均値は3.05kN/mであった。
また、アクリル管の沈降確認において、3時間経過後に4cmであり、グラウト材の沈降が少なく、循環圧送を中断して配管に丸ピグを挿入する必要がなかった。つまり、グラウト材の沈降状態は良好であるという結果が得られた。
最後に、グラウト材の圧送を開始してから3時間経過した後にピグを用いて配管の洗浄を行ったが、ピグを排出した時にノロ(グラウト材の成分を含んだ余剰水分)の発生はみられなかった。また、配管の内周面にグラウト材の付着はみられなかった。
その結果、循環圧送させた第1溶液の温度が20°C前後の条件では、3時間循環後の配管内部における沈降はごくわずかであり、また、配管内にグラウト材の付着はみられないという良好な結果を得られた。つまり、実施例4に示すグラウト材においては、長時間圧送条件であっても、グラウト材が沈降しないことがわかった。

Claims (3)

  1. 地盤、構造物及び地盤と構造物の境界面の空洞や隙間を充填するグラウト材において、
    高炉セメントB種を含む硬化発現材、減水剤、及び微生物発酵増粘剤を含む流動性の懸濁液である第1溶液と、モンモリロナイト粘土鉱物を含み、アルミニウム粉末を含まない流動性の膨張液である第2溶液と、を有し、
    前記微生物発酵増粘剤は、
    ダイユータンガム、又はウェランガムであり、
    前記第1溶液に含まれる前記減水剤、及び前記微生物発酵増粘剤の配合率は、
    前記第1溶液に含まれる前記硬化発現材の添加量を84w/v%としたとき、前記減水剤の添加量を0.28〜0.84w/v%、前記微生物発酵増粘材の添加量を0.016〜0.0176w/v%とする配合率であり、
    前記第1溶液、及び前記第2溶液を混合することで非流動性で且つ可塑状に変質させることを特徴とするグラウト材。
  2. 地盤、構造物及び地盤と構造物の境界面の空洞や隙間を充填するグラウト材において、
    高炉セメントB種を含む硬化発現材、減水剤、及び微生物発酵増粘剤を含む流動性の懸濁液である第1溶液と、モンモリロナイト粘土鉱物を含み、アルミニウム粉末を0.002〜0.003w/v%の範囲で含む流動性の膨張液である第2溶液と、を有し、
    前記微生物発酵増粘剤は、
    ダイユータンガム、又はウェランガムであり、
    前記第1溶液に含まれる前記減水剤、及び前記微生物発酵増粘剤の配合率は、
    前記第1溶液に含まれる前記硬化発現材の添加量を84w/v%としたとき、前記減水剤の添加量を0.28〜0.84w/v%、前記微生物発酵増粘材の添加量を0.016〜0.0176w/v%とする配合率であり、
    前記第1溶液、及び前記第2溶液を混合することで非流動性で且つ可塑状に変質させることを特徴とするグラウト材。
  3. 地盤、構造物及び地盤と構造物の境界面の空洞や隙間を充填するグラウト材を注入充填するグラウト注入工法において、
    第1溶液は、高炉セメントB種を含む硬化発現材、減水剤、及び微生物発酵増粘剤を含む流動性の懸濁液であり、
    第2溶液は、モンモリロナイト粘土鉱物を含み、アルミニウム粉末を含まない流動性の膨張液であり、
    前記微生物発酵増粘剤は、
    ダイユータンガム、又はウェランガムであり、
    前記第1溶液に含まれる前記減水剤、及び前記微生物発酵増粘剤の配合率は、
    前記第1溶液に含まれる前記硬化発現材の添加量を84w/v%としたとき、前記減水剤の添加量を0.28〜0.84w/v%、前記微生物発酵増粘材の添加量を0.016〜0.0176w/v%とする配合率であり、
    前記第1溶液と前記第2溶液と、を、別々のポンプで圧送し、注入口付近で前記第1溶液と前記第2溶液とを合流混合することで非流動性で且つ可塑状に変質させたグラウト材を注入することを特徴とするグラウト注入工法。
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