本発明のバイオセンサ基板の要部拡大概略図である。
本発明のバイオセンサ基板の上方平面視概略図である。
本発明のバイオセンサ基板の断面概略図である。
本発明にバイオセンサ基板のウェル形成工程の概要図である。
まず、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を適用するバイオセンサ基板を図1〜3を用いて説明する。
図1を参照すると、基板1は、ベース基板10上にウェル形成層11が形成されている。当該ウェル形成層により区画した微小のウェル15が、後述する物質間の相互作用の場となる反応室3として機能する。
ベース基板10の素材としては、例えば、PET、COC、COP、プラスチック(アクリル樹脂等)等の樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、環状オレフィンコポリマー(COC)、非晶質ポリオレフィン等のポリマー、シリコン等の金属、ガラス、石英ガラス、またポリマーとガラスや金属等を張り合わせたような複数の素材を組み合わせたもの(例えばPDMSとガラス)等が適用できる。
ベース基板10の上面には、微細な凹凸形状に加工された情報ピット12が存在している。情報ピット12のピッチ幅dは、蛍光標識した細胞の検出対象の寸法に応じて調整することができる。ここで、ピッチ幅dは検出対象の幅よりも小さく設定されることが通常である。
情報ピット12は、レーザー光等を照射することで読み取りを可能にしている。かかる情報ピット12を利用して、バイオセンサ用基板1の各反応領域の位置情報を光学的に読み取ることにより、反応室のどの中にどの反応領域の蛍光検出作業を行っているかを特定することが可能となる。そして、情報ピット12に記録して有る情報内容と、その真上にある反応領域とを対応させておくことにより、特定の反応領域のみにレーザー光を照射して検出作業を行うことができる。
ここで、上記では情報ピット12を用いた場合について説明したが、ピットの内溝を用いて、当該溝をバイオセンサ基板の径方向に蛇行させることにより、情報が保持されてもよい。この場合、溝の蛇行波形によって情報が保持される。また、溝の蛇行形状は、既存の光ディスクに適用される技術と同様、トラッキングエラー信号に基づいて再生され得る。また、ピットと溝の組み合わせによって情報が保持されてもよい。
情報ピット12の上面には、反射膜13が形成されていても良い。通常、反射膜は情報ピット12上に(真空)蒸着することで数μm(例えば、1〜10μm)の厚みで形成されている。反射膜13を形成した場合には、反射膜13は、情報ピット12に照射されるレーザー光等を選択的に反射する役割を担う。反射膜13はアルミニウム、金合金、銀合金等の金属によって構成されている。
ここで、反射膜13の代わりに透光性の誘電体材料で形成される誘電体膜14を適用しても良い。この場合にはベース基板10と誘電体材料の屈折率を異なるものとすることにより反射を生じさせることができる。かかる誘電体材料としては、例えば、酸化チタン等を用いることができる。
また、反射膜13と誘電体膜14のいずれか一方のみを使用する場合以外にも、反射膜13と誘電体膜14を両方積層して形成しても構わない。
ベース基板上には、反射膜13若しくは誘電体膜14が積層された状態、又はこれらの膜が存在しない状態で、ウェル形成材料11によってウェル15が形成されている。ウェル形成材料としては、後述する本願発明の紫外線硬化型樹脂組成物によって、ウェル15を形成することができる。本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、後述するように、細胞への影響が少なく、樹脂の細胞への浸潤・細胞の溶出が生じにくいため、細胞はほとんど損傷なくそのままの状態でウェル15内に保持される。他にも、本願発明の樹脂組成物以外の材料として、シリコーン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等で構成されていてもよい。
ウェル15の形状としては図1では円筒状の形状を示しているが、かかる形状に限定されない。円筒形、逆半球形、逆円錐形、逆角錐形(逆三角錐形、逆四角錐形、逆五角錐形、逆六角錐形、七角以上の逆多角錐形)、直方体等、さらにこれらの形状の二つ以上を組み合わせた形状が例示される。前記円筒形や直方体の場合はウェルの底部は通常平坦であるが、曲面、凸面、凹面とすることもできる。また、前記逆円錐形や逆角錐形の場合は底面がウェルの開口となるが、逆円錐形、逆角錐形の頂上から一部を切り取った形状(ウェルの底部は平坦な形状)も例示できる。さらに、逆円錐形、逆角錐形の頂上から一部を切り取った形状の場合は、前述と同様に、ウェル15の底部を曲面等とすることもできる。ウェルの形状は好ましくは円筒形、逆半球形、逆円錐形、逆角錐形であり、より好ましくは円筒形、逆半球形であり、最も好ましくは円筒形である。また、ウェル15は、一枚のバイオセンサ基板において、好ましくは一種類の形状からなる。
このように各ウェル15に細胞を格納できる限り、各ウェル15の寸法は限定されない。ウェル15の寸法は、好ましくは各ウェル15に同数程度の細胞を格納されるように決定される。このため、各ウェル15の寸法は同一であることがさらに好ましい。なお、ウェル15の開口部が円形である場合には、「内径」とはウェル15における開口部の直径を意味する。ウェル15の開口部が円形でない場合には、「内径」とはウェル15の開口部の一辺の長さを意味する。また、「深さ」とは、ウェル15の開口部と、ウェル15の最も深い場所の距離を意味する。
ウェル15は、サンプル溶液等の液体が滴下された時にその液体を保留することができる程度の深さ及び大きさに設定されている。対象物を保留することができれば、特に深さ及び大きさは問わないが、例えば直径20〜800μm、深さ2〜10μm程度で形成することができる。より具体的には、ウェルの内径は好ましくは20〜500μm、より好ましくは20〜400μm、さらに好ましくは20〜300μm、よりさらに好ましくは30〜250μm、特に好ましくは30〜200μmである。また、その深さは、内径の値にもよるが、好ましくは2〜200μm、より好ましくは2〜100μm、さらに好ましくは2〜80μm、よりさらに好ましくは2〜70μm、特に好ましくは3〜70μmである。
ウェル15の内径と深さは、一定の比の関係にあることが好ましい。具体的には(内径:深さ)の比が(1:0.35〜1)であることが好ましく、(1:0.35〜0.85)であることがより好ましく、(1:0.4〜0.85)であることがさらに好ましく、(1:0.45〜0.8)であることがよりさらに好ましい。
なお、上述の好ましい(内径:深さ)の比により、内径の値が決まれば、ウェルの深さの好ましい値を決めることができる。ただし、ウェルは細胞を格納するため、2μm以上の深さを有することが好ましい。すなわち、ウェルは、内径及び深さが上述の比の関係を有し、内径が上述の値を有し、かつ深さが2μm以上であるものが特に好ましい。
ウェル形成層11の上面は、適宜表面処理を行うか、固相層16を設けることができる。
表面処理方法は限定されず、プラズマ処理、コロナ放電処理等が例示される。好ましくは、プラズマ処理であり、酸素プラズマ処理等が例示される。例えば、ベース基板10が疎水性の材料(ポリスチレン、PMMA等のポリマー)である場合には、酸素プラズマ処理等の親水化処理を行うことが好ましい。また、ベース基板10が親水性の材料(シリコンやガラス等)である場合には、このような処理をする必要はない。さらに、タンパク質や脂質等でコーティングして表面処理をして調整しても良い。
固相層16は、対象物の固定に適する材料で形成される。例えば、シラン化合物によって表面修飾が可能なSiO2が50nm程度の厚さに成膜される。SiO2などで形成された固相層16は、ウェル15の底面に露出し、その露出した表面部分は、例えば、シランカップリング剤などで表面処理される。このシランカップリング剤の遊離アミノ基に対して、直接又は間接にプローブ物質の修飾末端の官能基を化学結合させることができる。即ち、プローブ物質を固定化できる。あるいは、ジアゾカップリング反応を利用して、プローブ物質を固定化してもよい。
尚、必要により固相層16とベース基板10との間にITO等からなる透明電極層を備えさせても良い。このような透明電極層は、例えば100〜200μm程度の厚さに成膜される。
ウェル形成層が形成されたベース基板10とカバー部材20は後述する紫外線硬化型樹脂組成物50によって貼り合される。
カバー部材20は、その全体を金属製の基板又はシートで形成することができる。或いは、PET、COC、COP、プラスチック(アクリル樹脂等)等の樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、環状オレフィンコポリマー(COC)等のポリマー、シリコン等の金属、ガラス、石英ガラス、またポリマーとガラス、合成樹脂製の基板やシートで形成することもできる。ここで、当該合成樹脂製の基板やシートの一部にITO膜等の電極層を形成しても良い。このカバー部材20は、ウェル内へ細胞溶液を注入するための孔を形成することができる。この孔のサイズ(口径)は、ウェルの開口部のサイズよりも小さく、かつ細胞溶液を精度よくウェル内導入できるようなサイズに形成することが好適である。
このようにして区画形成された反応室3は、ウェル15、紫外線硬化型樹脂組成物50の硬化物層、及びカバー部材20によって規定されている。反応室3のウェル15に細胞を保持させることができ、かつ各ウェル15に2個以上の細胞を格納できる限り、各ウェル15に格納される細胞の数は限定されない。ウェル15に保持される細胞数が多ければ多いほど、検出標的である特定の細胞を高感度に検出することができるという観点から、各ウェル15に10個以上の細胞を格納できるようにすることが好ましく、より好ましくは50〜500個、さらに好ましくは100〜300個の細胞を格納できるようにする。
ここで、細胞のバイオセンサ基板1への接触は、細胞をバイオセンサ基板1に接触させられる限り、その方法は限定されない。
例えば、培養細胞や生体から採取した細胞そのものをバイオセンサ基板1に接触させることにより行ってもよく、これらを緩衝液や培養液等の溶液と混合させ、得られた混合液をバイオセンサ基板1に接触させることによりおこなってもよい。
例えば、血液細胞のウェル15への接触は、採取した血液そのものをウェル15に接触(添加、滴下等)させることにより行ってもよく、採取した血液を緩衝液や培養液等の溶液と混合させ、得られた混合液をウェル15に接触させることにより行ってもよい。また、血液細胞のウェル15への接触は、採取した血液から血液細胞を分取し、これを緩衝液や培養液等の溶液と混合させた後に、該混合液をウェル15に接触させることにより行ってもよい。
また、培養細胞(例えば哺乳類又は昆虫由来細胞、及び酵母等)のバイオセンサ基板1への接触は、培養した細胞を培地ごとバイオセンサ基板1に接触(添加、滴下等)させることにより行ってもよく、培養細胞をふくむ培地を緩衝液や培養液等の溶液と混合させ、得られた混合液をバイオセンサ基板1に接触させることにより行ってもよい。また、培養細胞を培地から回収し、これを緩衝液や培養液等の溶液と混合させた後に、該混合液をバイオセンサ基板1に接触させることにより行ってもよい。
また、細胞のバイオセンサ基板1上への展開も、細胞をウェル15上に展開できる限り、その方法は限定されない。複数の細胞(細胞群)そのものをウェル15に接触させることにより細胞をウェル15上に展開させてもよく、接触させた後さらに展開液を用いて展開させてもよい。展開液としては、緩衝液、培養液、界面活性剤等が例示される。
例えば、ウェル15上への展開させる細胞が血液細胞の場合、前述のように血液細胞をウェル15に接触させることにより血液細胞をウェル15上に展開させてもよく、また前述のように接触させた血液細胞を、さらに展開液を用いて展開させてもよい。また例えば、展開させる細胞が培養細胞の場合であっても、血液細胞と同様にしてウェル15上に展開させることができる。少なくともこのような手順を経ることにより、細胞(例えば血液細胞や培養細胞)を各ウェル15に格納することができる。また、細胞がチップに展開しにくい場合(特にチャンバーの底に空気が残るような場合)、予め培地や緩衝液等の溶液中にチップを入れて超音波処理を行ったり、ブラシ等でチップ表面を擦る等して、ウェル15内に空気が入らないように溶液を展開してから細胞をバイオセンサ基板1に接触、展開しても問題ない。
ウェル15上に細胞を展開する際の細胞の濃度は特に制限されず、細胞種にもよるが、例えば1×1010〜1×104(cells/ml)が例示できる。細胞を展開後、過剰な細胞の除去を行うことで、各ウェル15内にほぼ均一に単層として細胞を格納することができる。また、用いる細胞種やウェル15に応じて適宜展開させる細胞濃度を調整してもよい。
過剰な細胞のバイオセンサ基板1からの除去(洗浄)も、バイオセンサ基板1から(すなわちウェル15内及びウェル15外から)過剰な細胞を除去できる限り、その方法は限定されない。
例えば、ピペットマン等を用いて、バイオセンサ基板1を軽く傾けて緩衝液、培養液、界面活性剤、酵素等の洗浄液を流すことにより過剰な細胞を除去してよい。また、ウェル15以外の部分に吸着した余分な細胞を除去、洗浄する際には、セルスクレイパー等の器具を使用しても良い。
なお、展開する細胞の濃度を薄め(例えば赤血球細胞の場合1×106cells/ml以下)にすることにより、展開する細胞の濃度を濃いめ(例えば赤血球細胞の場合1×108cells/ml以上)にした場合に比べ、除去操作後に各ウェル15に格納される細胞数を少なくすることができる。この場合でも、各ウェル15に格納される細胞数はほぼ同数となる。よって、展開する細胞の濃度を薄めに設定することにより、各ウェル15に1〜数個の細胞が均一に単層として格納されるよう調整することも可能である。逆に、展開する細胞の濃度を濃くしても、除去操作後にはウェル15に均一に単層として格納されることから、ウェル15に格納できる細胞数が増えるわけではない。格納される細胞数はウェル15の底面積によって制限される。
また、過剰な細胞のウェル15からの除去(洗浄)は、ウェル15に細胞を接触、展開させた後、ウェル15に細胞を適度に吸着させた後に実施することが好ましい。該吸着に要する時間は限定されず、当業者により適宜調整される。
検出標的である特定の細胞の有無を確認するにあたっては、当該特定の細胞を検出できる限り、その方法は限定されない。
例えば、当該特定の細胞に特異的に結合する物質が存在する場合、当該物質を用いて結合の有無を確認することで検出することができる。このような物質としては、例えば抗体やアプタマー等を挙げることができるが、これらに限定されない。またあるいは、当該特定の細胞に特異的に反応する物質が存在する場合、当該物質を用いて反応の有無を確認することで検出することもできる。
このような結合や反応の有無を確認する方法も特に限定されないが、蛍光を用いるのが好適である。例えば、特定の細胞に特異的に結合する物質に蛍光標識を施してから用いれば、試料中の特定の細胞のみを標識することができる。よって、蛍光の有無により該特定の細胞の有無を容易に確認できる。
特に、ウェル15に試料を接触させる前に、該試料中の特定の細胞のみが標識されるよう蛍光標識を施し、細胞がウェル15内に保持された後に当該蛍光標識を検出して特定の細胞の有無を確認することができる。また、細胞がウェル15内に保持された後、特定の細胞のみを蛍光標識してもよい。
例えば、血液細胞中から病原性微生物が感染した血液細胞を検出する場合、ウェル15に血液細胞を接触させる前に、感染した血液細胞中の病原性微生物の核を蛍光染色し、後述する検出装置を用いて、該蛍光に基づき感染した血液細胞を検出できる。あるいは、バイオセンサ基板1に形成されたウェル15に血液細胞を格納した後に、血液細胞中の病原性微生物の核を蛍光染色し、同様に感染した血液細胞を検出してもよい。例えばベッドサイド等において感染した血液細胞を検出しようとする場合には、ウェル15に血液細胞を接触、展開させる前に感染した血液細胞中の病原性微生物の核等を蛍光染色させたほうが、接触、展開後の処理が簡便になるため、一層簡単に感染した血液細胞を検出することができる。また、例えば、血液細胞中の病原性微生物の核に限定されず、例えば蛍光標識された抗体を用いることによって特定タンパク質(特定アミノ酸配列)を標的としたり、蛍光標識されたプローブを用いることによって特定の遺伝子配列を標的としてもよい。
また、例えば、培養細胞中特定のマーカーを発現した細胞を検出したい場合は、当該マーカーに特異的であって蛍光標識された抗体を予め培養細胞に作用させておき、ウェル15内に保持された後、後述する検出装置を用いて該蛍光に基づき当該特定の細胞を検出できる。あるいは、バイオセンサ基板1に形成されたウェル15に培養細胞を格納した後に、培養細胞中の特定のマーカーを発現した細胞を蛍光標識された抗体を用いて標識し、該蛍光に基づき当該細胞を検出してもよい。
具体的に一例を説明すると、まず、感染赤血球細胞を含む赤血球細胞懸濁液において、原虫等の感染微生物の核が染まるように蛍光染色して感染赤血球細胞を標識し、場合によっては赤血球細胞も蛍光物質等で標識を行う。この標識された感染赤血球細胞を含む赤血球細胞懸濁液をウェル15上に展開し、過剰な血液細胞を除去・洗浄した後、後述する検出装置によって、蛍光検出を行う。これにより、蛍光強度や標識された細胞の数等を調べることによって、感染症の有無はもちろん、程度及び種類等についても解析することができる。
例えば図2のように、バイオセンサ基板1上に複数個になるようにウェル15を配置させ、各ウェル15に100個ずつ血液細胞を格納させることもできる。そして、1つのウェル15あたり1つの感染した血液細胞が検出された場合には、その感染率は1%と判断することができる。
また、例えばウェル15に合計100万個の血液細胞を保持させ、そのうち1つの血液細胞が感染した場合であっても、この感染した血液細胞を検出することができる。この場合、本発明の検出方法によれば感染した血液細胞が試料中に0.0001%しか存在していなくとも、検出することが可能であるといえる。
本発明の検出対象において、検出標的となる特定の細胞、及びこれを含む多数の細胞(すなわち、細胞群)は特に限定されない。
例えば、特定の遺伝子を発現している細胞や、核酸、タンパク質、脂質、糖等の生体物質が通常より過剰である、又は不足している細胞を、特定の細胞として種々の細胞群から検出することができる。このような特定の細胞は自然界に存在する細胞であってもよいし、人為的処理が施された細胞であってもよい。当該自然界に存在する細胞としては、特に限定されないが、例えば病原細胞、病変細胞、病原菌又は病原生物に感染された細胞、突然変異した細胞、特定の性質を有する未知の細胞等が挙げられる。また、当該人為的処理は特に限定されないが、例えば物理的処理(例:電磁波照射)、化学的処理(例:薬剤処理)、遺伝子工学的処理(例:遺伝子組み換え処理)等を挙げることができる。
また、このような人為的処理のうち、細胞に与える影響が既知である処理を細胞群に施し、当該影響が表れない細胞又は当該影響がより強く表れる細胞を特定の細胞として検出することもできる。例えば、薬剤処理へ耐性又は高感受性を示す細胞を特定の細胞として検出することができる。
また、当該細胞群も特に限定はされない。単細胞生物の群はもちろん、多細胞生物由来の細胞の群であってもよい。多細胞生物由来の細胞としては、例えば生物の正常組織又は病態組織から得られた細胞、及びこれらの細胞に由来する培養細胞等が挙げられる。また、これらの細胞を得る生物は特に限定されない。例えば動物由来細胞又は植物由来細胞であってよく、より具体的には例えば脊椎動物(特に哺乳類及び鳥類)由来細胞、昆虫由来細胞、植物培養細胞等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、同一の細胞の群であっても、複数種の細胞が混在する群であってもよい。
特定の細胞を検出する、より具体的な例としては、例えば、マラリア原虫感染症患者の血液細胞中から、マラリア原虫感染赤血球を検出する例が挙げられる。マラリア原虫感染症であれば、100万個程度という多数の血液細胞中感染した血液細胞が一つしか存在しない場合であっても、この感染した血液細胞を検出することができる。また、例えば、癌細胞群中に存在する癌幹細胞を探索するにあたっても、好ましく用いることができる。さらに、例えば、人為的処理された細胞の群のなかから、当該処理により特定の性質を有するようになった細胞を選択することができる。また、特に強く当該特定の性質を有する細胞を選択することもできる。より具体的には、例えば、遺伝子組み換え処理により特定の物質を生産するよう形質転換させた複数の細胞の中から、特に効率よく当該物質を生産する細胞を検出することもできる。あるいは、例えば、電磁波照射処理若しくは薬剤処理により特定の機能を失った細胞を検出することができる。また、これらの処理に対し耐性又は高感受性を有する細胞を検出することができる。
また、本発明は、例えば、特定の性質(例えば薬剤耐性、薬剤感受性、特定遺伝子の発現、特定生体物質の過剰含有又は不足、等)を有する細胞の検出(ひいてはスクリーニング)、及び検出した細胞のさらなる解析等に用いることができる。
臨床現場においては、例えば、病気の診断(特に細胞診)に好適に用いることができる。病気が疑われる人間の組織を回収し、当該組織の細胞群中に病原細胞、病変細胞、病原菌又は病原生物に感染された細胞等が存在しないかを検出し、診断に役立てることができる。またさらに、このようにして検出された該各種細胞の薬剤耐性や感受性の調査、PCRやFISH等による遺伝子解析等をウェル15内で行うこともできる。また、ウェル15内外において、当該各種細胞を培養してその性質をさらに詳細に検討することもできる。より具体的には、例えばベッドサイド等において、感染症に感染したおそれのある患者のそばで感染細胞の有無・程度を迅速に把握することができる。また、外科的手術により採取された癌(例えば血液癌)組織を用いて、抗ガン剤に耐性又は感受性を有する癌細胞がどの程度の割合で存在するのかを検討し、治療に役立てることもできる。
また、複数の細胞(細胞群)をバイオセンサ基板1が備える各ウェル15に格納(保持)させた後、この格納された細胞中、検出標的である特定の細胞を特異的に検出し得る標識を施すことができる。また、複数の細胞(細胞群)を含む試料において、検出標的とする特定の細胞をあらかじめ標識しておくことも可能である。特定の細胞を予め標識しておく方が、標識効率が均一になりやすいため、好ましい。このような標識の方法としては特に限定されず、検出標的である特定の細胞の性質に応じて適宜選択することができるが、検出の簡便性及び毒性等を考慮すると、特に蛍光標識が好適である。そして、該標識の有無(例えば蛍光標識の有無)に基づき当該特定の細胞を検出することができ、さらに、検出される標識の数(例えば蛍光標識の数)に基づけば、試料中の細胞のうち特定の細胞がどの程度存在しているのかについて定量的な分析を行うこともできる。またさらに、該標識の強度(例えば蛍光標識の蛍光強度)に基づき、検出した特定の細胞が有する性質の強度を分析することもできる。具体的には例えば、標的とする特定の細胞が感染症病原体に感染された細胞である場合は、当該定量的データや個々の細胞の標識の強さ(例えば蛍光標識の場合は蛍光強度)に着目することにより、感染症の重傷度やステージを分析することもできる。また、標的とする特定の細胞が人為的処理により特定の性質を与えられた細胞である場合は、その特定の人為的処理により当該特定の性質を与えることのできる割合や各細胞の有する当該性質の発現強度を求めることができる。よって、どのような人為的処理によりどの程度の効率で細胞の性質を変化させることができるか、またどのように性質を変化させることができるかを検討することができる。
よって、本発明のバイオセンサ基板1により検出標的である特定の細胞を検出した後、当該特定の細胞をウェル15内で培養することも可能である。これにより、ウェル15内において、当該特定の細胞に対して経時的な検討を行うことができる。例えば、当該特定の細胞に刺激を与えて培養することで、当該刺激への応答を検討することができる。当該刺激としては、特に制限されないが成長因子やビタミン等の薬剤の添加、培養温度の変化、必須栄養源の無添加等が例示できる。さらに、当該刺激により当該特定の細胞に分化誘導が起こる場合には、ウェル15内で当該特定の細胞の検出及び分化誘導を行えることとなり、好ましい。ウェル15内で培養ができない場合は、一度培養シャーレ中で分化誘導刺激を与えて培養し、ウェル15へ戻すこととなり、手間であるからである。また、シャーレに細胞が接着する場合、当該接着を酵素等により剥がす操作が必要となり、当該操作により細胞を傷つけ、細胞の機能が損なわれるおそれがあるからである。
具体的には、例えば、ウェル15内でPC12細胞(Rat adrenal pheochromocytoma cell line)を検出し、これに神経成長因子 (NGF) を添加して数日培養することで、神経細胞様に分化させシナプスネットワークを形成させることができる。
さらにまた、下述する薬剤候補物質のスクリーニングにおいて、薬剤候補物質の中には、添加後すぐに(数分〜数時間)細胞に与える影響が観察できる物質の他に、添加後数日間しなければ細胞に与える影響が観察できない物質も存在することが考えられる。よって、薬剤候補物質のスクリーニングを行うにあたり、薬剤候補物質を添加した後細胞を数日間培養して維持した後、細胞の状態を観察することが求められることがある。このため、本発明のバイオセンサ基板1は薬剤候補物質のスクリーニングに好ましく用いることができる。
本発明のバイオセンサ基板1によれば、前述のように、種々の細胞を検出標的とすることができる。例えば、これまでにも例示した血液細胞、ヒト由来の細胞や動物細胞、酵母細胞、微生物細胞幹細胞、ガン細胞等の培養細胞も標的とすることが可能である。そして、本発明のバイオセンサ基板1を使用することにより、試料中に存在する細胞の中から、標的とする特定の細胞のみを迅速、簡便かつ高感度に検出、測定、解析等できる。
薬剤候補物質のスクリーニング方法により、種々の薬剤候補物質が細胞に与える影響を簡便かつ迅速に測定し、所望の活性を示す物質を効率よく選択することができる。
本発明の薬剤候補物質のスクリーニング方法には、複数のウェル15を備え、該ウェル15内には細胞が保持されているバイオセンサ基板1を用いる。
本発明の薬剤候補物質のスクリーニング方法では、まず、前記細胞が保持されたウェル15に薬剤候補物質を添加する。バイオセンサ基板1が備える全てのウェル15に同一の薬剤候補物質を添加してもよいし、ウェル15によって添加する薬剤候補物質を変えてもよい。また、いくらかのウェル15には薬剤候補物質を加えず、これらのウェル15に保持された細胞をコントロールとして用いるのが好ましい。
薬剤候補物質を添加した後、該薬剤候補物質がウェル15内に保持される細胞に与える影響を測定する。当該影響の測定の方法は、用いる薬剤候補物質、用いる細胞、及び所望の活性に応じて適宜設定すればよい。
例えば、抗ガン剤として作用する物質をスクリーニングしたい場合は、ウェル15内に癌細胞を保持し、薬剤候補物質を添加して、当該癌細胞がどの程度の割合及び時間で死滅するかを測定すればよい。
そして、当該測定結果に基づいて、実験に供した薬剤候補物質の中から所望の活性を示す物質を選択すればよい。例えば、上記の抗ガン剤として作用する物質をスクリーニングする例であれば、癌細胞が高効率で死滅する作用を示した物質を選択すればよい。
このようにすることで、多数の薬剤候補物質を簡便かつ迅速にスクリーニングすることができる。
また、本発明の薬剤候補物質のスクリーニング方法に用いられるバイオセンサ基板1は、特に制限されないが、上述の本発明のバイオセンサ基板1であることが好ましい。本発明のバイオセンサ基板1であれば、細胞をより均一かつ効率よく、単層として、ウェル15に格納させることができる。
また、上述のように、本発明のバイオセンサ基板1によれば、細胞をウェル15内で少なくとも数日以上培養することができる。このため、本発明のバイオセンサ基板1を用いて本発明の薬剤候補物質のスクリーニング方法を実施すれば、薬剤候補物質を添加した後細胞を数日以上培養して維持した後、当該物質が細胞に与える影響を測定することができる。
またさらに、本発明のバイオセンサ基板1では、各ウェル15にほぼ同数の細胞が保持されるため、各ウェル15内の細胞の状態を均一とすることができる。よって、本発明のバイオセンサ基板1を用いて本発明の薬剤候補物質のスクリーニング方法を実施すれば、異なる薬剤候補物質を各ウェル15へと添加した際、それぞれの薬剤候補物質がどのような影響を細胞へ与えるのかを比較評価しやすい。
図2はバイオセンサ基板1の形態の一例を上方からみた平面図である。この図2に示すバイオセンサ基板1は、物質間の相互作用を検出するために用いられ、全体形状は、例えば、CD、DVD等の光ディスクと同様に、主面が円形とされた平板状となっている、なお、本発明に係るバイオセンサ基板1は円盤状の形態に狭く限定されないが、円盤状の形態であれば、既存の光ディスクに用いられる装置や技術を利用できるので、有利である。
バイオセンサ基板1の中心には、中心孔2が形成されている。中心孔2は、当該基板が所定の解析装置に装着されるときに、当該基板を保持及び回転させるための着金具機構が挿入される部位となる。
バイオセンサ基板1は、上述したウェルが形成されたベース基板10とカバー部材20を後述する紫外線硬化型樹脂組成物で貼り合わせて得られる。カバー部材20には、ベース基板10に存在するウェル形成層によって形成されたウェルと同数の孔が上方視放射状に整列されて多数形成されている(図2参照)。なお、本実施形態においてカバー部材20は、電極として利用するために導電性の材料で形成されていてもよい。
図3は、図2の断面図である。図3を参照すると、ウェルが多数形成され、かつ、その下方に存在するベース基板1の表面上に情報ピット12が多数整列形成(図示略)された光透過性のベース基板1を備えている。
上記では、バイオセンサ基板を回転させる際にウェル15の上部のカバー部材20の孔を、蓋部材等によってさらに塞いでも良い。このようにすることで、ウェル15からの試料の予定しない流出、蒸発または移動を防ぐことができる。
ここで、レーザー光を対象試料に照射した際に、蛍光標識した検体が蛍光を発するメカニズムについて説明する。ウェル15の底面部に配置されている蛍光標識が施された検体に励起光(レーザー光等)が照射されると、検体から蛍光が発生する。かかる蛍光のビーム径は、励起光のビーム径よりも大きくなっている。また、波長も変化している。よって、このような蛍光を、特許文献2、国際公開第2013/146364号、又は国際公開第2014/068951号に記載の装置等を用いて蛍光の状態を検出することとなる。
次に、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物について説明する。
本発明のバイオセンサ基板用紫外線硬化型樹脂組成物は、上述したバイオセンサ基板のウェル形成部材又はバイオセンサ基板の各部材の貼り合わせに用いる樹脂組成物であって、(メタ)アクリレート化合物(A)、柔軟化剤(B)及び光重合開始剤(C)を含有する。(メタ)アクリレート化合物(A)とは、重量平均分子量7000以上の(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)、当該重量平均分子量に満たない(メタ)アクリレートモノマー(A2)を包含する(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
なお、「光学用に使用する紫外線硬化型樹脂組成物に添加可能」とは、硬化物の透明性を、光学用に使用出来ない程度に低下させる添加物が含まれないことを意味する。
本発明に使用する紫外線硬化型樹脂組成物で、硬化後の厚さが200μmとなる硬化物のシートを作製したとき、該シートの、400〜800nmの波長の光での好ましい平均透過率は、少なくとも90%である。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、(メタ)アクリレート化合物(A)及び柔軟化剤(B)を含有している。紫外線硬化型樹脂でも多様な種類があるが、(メタ)アクリレート化合物(A)及び柔軟化剤(B)を併用する組み合わせが、細胞への浸潤・細胞試料の樹脂硬化物層への溶出を防げること効果を奏する。一般に細胞試料は生理食塩水等を含んだ親水性であることから、当該試料の親水度の状態に対して、これらの化合物が悪影響を及ぼさないためと考えられる。
さらに、当該組み合わせの樹脂組成物は、貼り合わせた時に剥離が生じにくいため、ウェル形成材料を形成したベース基板10とカバー部材20との剥離を有効に防止する。そして、高温・多湿下でも強靭性があり剥離強度も高いことから、このような環境下でも剥離を防止できる。さらに、透過率が高いために、細胞検出を阻害しない。
よって、当該組み合わせにより、バイオセンサ基板10用に極めて適した樹脂組成物として利用することが可能である。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物における(メタ)アクリレート化合物として、(メタ)アクリレートオリゴマーを使用できる。(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)としては、特に限定されないが、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリイソプレン又は水添ポリイソプレン骨格を有する(メタ)アクリレート、ポリブタジエン又は水添ポリブタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートからなる群から選択されるいずれかを使用することが好ましい。中でも、接着強度の観点からウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、さらに、耐湿性の観点から、ポリブタジエン/水添ポリブタジエン/ポリイソプレン/水添ポリイソプレンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上の骨格をもつウレタン(メタ)アクリレートがより好ましい。
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール、ポリイソシアネート及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られる。
多価アルコールとしては、例えば、ポリブタジエングリコール、水添ポリブタジエングリコール、ポリイソプレングリコール、水添ポリイソプレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の炭素数1〜10のアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のトリオール、トリシクロデカンジメチロール、ビス−〔ヒドロキシメチル〕−シクロヘキサン等の環状骨格を有するアルコール等;及びこれら多価アルコールと多塩基酸(例えば、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等)との反応によって得られるポリエステルポリオール、多価アルコールとε−カプロラクトンとの反応によって得られるカプロラクトンアルコール、ポリカーボネートポリオール(例えば1,6−ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートジオール等)又はポリエーテルポリオール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA等)等が挙げられる。接着強度と耐湿性の観点から、上記多価アルコールとしては、プロピレングリコール、ポリブタジエングリコール、水添ポリブタジエングリコール、ポリイソプレングリコール、水添ポリイソプレングリコールが好ましく、透明性と柔軟性の観点から重量平均分子量が2000以上のプロピレングリコール、水添ポリブタジエングリコール、水添ポリイソプレングリコールが特に好ましい。耐熱着色性等の変色性、相溶性の観点から水添ポリブタジエングリコール、又はポリプロピレングリコールが好ましい。このときの重量平均分子量の上限は特に限定されないが、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましい。また、必要に応じて二種以上の多価アルコールを併用してもよい。
有機ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート又はジシクロペンタニルイソシアネート等が挙げられる。中でも、強靭性の観点からイソホロンジイソシアネートが好ましい。
又、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシC2〜C4アルキル(メタ)アクリレート、ジメチロールシクロヘキシルモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシカプロラクトン(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等を使用することができる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートを得るための反応は、例えば、以下のようにして行う。即ち、多価アルコールにその水酸基1当量あたり有機ポリイソシアネートをそのイソシアネート基が好ましくは1.1〜2.0当量、さらに好ましくは1.1〜1.5当量になるように混合し、反応温度を好ましくは70〜90℃で反応させ、ウレタンオリゴマーを合成する。次いで、ウレタンオリゴマーのイソシアネート基1当量あたり、ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物をその水酸基が好ましくは1〜1.5当量となるように混合し、70〜90℃で反応させて目的とするウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。
上記ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量としては7000〜100000程度が好ましく、10000〜60000がより好ましい。重量平均分子量が7000より小さいと収縮が大きくなり、重量平均分子量が100000より大きいと硬化性が乏しくなる。また分子量分布(Mw/Mn)値が1.5以上であることが好ましい。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物においては、ウレタン(メタ)アクリレートは、1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。ウレタン(メタ)アクリレートの本発明の光硬化型透明接着剤組成物中における重量割合は通常5〜90重量%、好ましくは10〜50重量%である。
上記ポリイソプレン骨格を有する(メタ)アクリレートは、ポリイソプレン分子の末端又は側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する。ポリイソプレン骨格を有する(メタ)アクリレートは「UC−203」(クラレ社製)として入手することができる。ポリイソプレン骨格を有する(メタ)アクリレートはポリスチレン換算の数平均分子量が1000〜50000が好ましく、25000〜45000程度がより好ましい。
ポリイソプレン骨格を有する(メタ)アクリレートの本発明の光硬化型透明接着剤組成物中における重量割合は通常5〜90重量%、好ましくは10〜50重量%である。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物では、(メタ)アクリレート化合物として、(メタ)アクリレートモノマー(A2)を含有させることができる。(メタ)アクリレートモノマー(A2)としては、好適には分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを使用することができる。ここで、光重合性モノマー(C)とは、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリイソプレン又は水添ポリイソプレン骨格を有する(メタ)アクリレート、ポリブタジエン又は水添ポリブタジエン骨格を有する(メタ)アクリレートを除いた(メタ)アクリレートを示す。
分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとしては、具体的にはオクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等の炭素数5〜25のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−エチル−2−アダマンチルアクリレート、1−アダマンチルメタクリレート、ポリプロピレンオキサイド変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレート、等の環状骨格を有する(メタ)アクリレート、水酸基を有する炭素数3〜7のアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキサイド変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フェノキシ化リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ブトキシ化リン酸(メタ)アクリレート及びエチレンオキシド変性オクチルオキシ化リン酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラフルフリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
中でも、柔軟性と反応性の観点から、下記式(1)
X−O−R2 (1)
(式中、Xはアクリロイル基を示し、R2 は炭素数8〜20個のアルキル基を表す)
で表される単官能アクリレートが好ましく、さらに接着強度の観点から下記式(1’)
X−O−R3 (1’)
(式中、Xはアクリロイル基を示し、R3 は炭素数12〜18個のアルキル基を表す)
で表される単官能アクリレートがより好ましい。中でも、低揮発性と反応性、及び柔軟性の観点から、イソステアリルアクリレートがさらに好ましい。
ここで、樹脂組成物自体白濁を回避して透明性を確保しつつ、相溶性を向上させる観点から、上記式(1)のR2のアルキル基の数をMRとし、前記式(1)で表される化合物においては、アクリロイル基を除く総炭素数をMC、炭素の分岐鎖の個数をMBとした際に一定の比率を示すことが好ましい。具体的には、MR/(MC+MB)(以下、特殊比率と称す。)が、5.5以下であるような両化合物を含有する樹脂組成物であることが好ましく、5以下であることが特に好ましい。また、耐白化性も特に優れたものにする観点から、上記低揮発・耐白化性アクリレートを含有しつつ、上記特殊比率が5.5以下であるような両化合物を含有する樹脂組成物であることが好ましく、5以下であることが特に好ましい。
本発明の組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で(分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレート)を含有することができる。例えば、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びエチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールC2〜C10アルカントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールC2〜C10アルカンポリアルコキシトリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクロイルオキシエチル]イソシアヌレ−ト、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートペンタエリスリトールポリエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
本発明においては、併用する場合は、硬化収縮を抑えるために、1又は2官能の(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物においては、これら(メタ)アクリレートモノマー成分は、1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。(メタ)アクリレートモノマー(A2)の本発明の光硬化型透明接着剤組成物中における重量割合は通常5〜90重量%、好ましくは10〜50重量%である。5重量%より少ないと硬化性が乏しくなり、90重量%より多いと収縮が大きくなる。
該紫外線硬化型樹脂組成物における(A1)成分、及び、(A2)成分の合計含量は、該接着剤組成物の総量に対して、通常、20〜90重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%である。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物には、本発明の特性を損なわない範囲でエポキシ(メタ)アクリレートを使用することができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、硬化性の向上や硬化物の硬度や硬化速度を向上させる機能がある。また、エポキシ(メタ)アクリレートとしては、グリシジルエーテル型エポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸を反応させることにより得られたものであればいずれも使用できるが、好ましく使用されるエポキシ(メタ)アクリレートを得るためのグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールF或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールF或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、へキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等を挙げることができる。
エポキシ(メタ)アクリレートは、これらグリシジルエーテル型エポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸を、下記のような条件で反応させることにより得られる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物のエポキシ基1当量に対して、(メタ)アクリル酸を0.9〜1.5モル、より好ましくは0.95〜1.1モルの比率で反応させる。反応温度は80〜120℃が好ましく、反応時間は10〜35時間程度である。反応を促進させるために、例えばトリフェニルフォスフィン、TAP、トリエタノールアミン、テトラエチルアンモニウムクロライド等の触媒を使用するのが好ましい。又、反応中、重合を防止するために重合禁止剤として、例えば、パラメトキシフェノール、メチルハイドロキノン等を使用することもできる。
本発明において好適に使用することができるエポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型のエポキシ化合物より得られた、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレートである。エポキシ(メタ)アクリレートの重量平均分子量としては500〜10000が好ましい。
エポキシ(メタ)アクリレートの本発明の紫外線硬化型樹脂組成物中における重量割合は通常1〜80重量%、好ましくは5〜30重量%である。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物には、柔軟化成分(B)を使用する。使用できる柔軟化成分の具体的としては、組成物中に相溶するポリマー、オリゴマー、フタル酸エステル類、、水添フタル酸エステル類、リン酸エステル類、グリコールエステル類、クエン酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、脂肪酸エステル類、エポキシ系可塑剤、ヒマシ油類、ロジン系樹脂、水素添加ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂、および液状テルペン等が挙げられる。上記オリゴマー、ポリマーの例としては、ポリイソプレン骨格、水添ポリイソプレン骨格、ポリブタジエン骨格、水添ポリブタジエン骨格又はキシレン骨格を有するオリゴマー又はポリマー及びそのエステル化物、ポリブテン等を例示することができる。透明性の観点から、水素添加ロジン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、ポリブテン、液状テルペン、水添フタル酸エステル類が好ましい。さらに、接着強度とその他材料との相溶性の観点から、ヒドロキシル基を末端若しくは側鎖に含有する水素添加テルペン系樹脂、ヒドロキシル基を末端若しくは側鎖に含有する水添ポリイソプレン、ヒドロキシル基を末端若しくは側鎖に含有する水添ポリブタジエン等のヒドロキシル基含有ポリマー、水素添加ロジン系樹脂、水添フタル酸エステル類が特に好ましい。
かかる柔軟化成分の紫外線硬化型樹脂組成物中における重量割合は、固体の柔軟化成分を使用する場合は、通常5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%である。液状の柔軟化成分を使用する場合は、通常10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%である。
本発明の組成物に含有される光重合開始剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184;BASF製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー(エサキュアONE;ランバルティ製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュアー2959;BASF製)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュアー127;BASF製)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(イルガキュアー651;BASF製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173;BASF製)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(イルガキュアー907;BASF製)、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルの混合物(イルガキュアー754;BASF製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等を挙げることができる。
本発明においては、前記光重合開始剤(C)において、アセトニトリル又はメタノール中で測定した302nm又は313nmにおけるモル吸光係数が300ml/(g・cm)以上であって、365nmでのモル吸光係数が100ml/(g・cm)以下である光重合開始剤を使用することが好ましい。このような光重合開始剤を使用することで、接着強度の向上に寄与させることができる。
このような光重合開始剤(C)としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184;BASF製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(ダロキュア1173;BASF製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(イルガキュアー2959;BASF製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル(ダロキュアMBF;BASF製)等が挙げられる。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物においては、これら光重合開始剤(C)は、1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。光重合開始剤(C)の本発明の紫外線硬化型接着剤組成物中における重量割合は通常0.2〜5重量%、好ましくは0.3〜3重量%である。5重量%より多いと、樹脂硬化物層の透明性が悪くなったりするおそれがある。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、その他の成分として、後記する添加剤等を含むことができる。本発明の紫外線硬化型樹脂組成物の総量に対する該その他の成分の含有割合は、該総量から、前記(A)〜(C)成分の合計量を減じた残部である。具体的には該その他の成分の総量で、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物の総量に対して5〜75重量%、好ましくは15〜75重量%、より好ましくは35〜65重量%程度である。
更に、光重合開始助剤となりうるアミン類等を上記の光重合開始剤と併用することもできる。使用しうるアミン類等としては、安息香酸2−ジメチルアミノエチルエステル、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルまたはp−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等が挙げられる。該アミン類等の光重合開始助剤を使用する場合、本発明の接着用接着剤組成物中の含有量は通常0.005〜5重量%、好ましくは0.01〜3重量%である。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤、有機溶剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、レベリング剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、蛍光増白剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン化合物等)、充填剤等の添加剤を加えてもよい。
有機溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
シランカップリング剤の具体例としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプロプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤;イソプロピル(N−エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニウムジ(ジオクチルピロフォスフェート)オキシアセテート、テトライソプロピルジ(ジオクチルフォスファイト)チタネート、ネオアルコキシトリ(p−N−(β−アミノエチル)アミノフェニル)チタネート等のチタン系カップリング剤;Zr−アセチルアセトネート、Zr−メタクリレート、Zr−プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノフェニル)ジルコネート、アンモニウムジルコニウムカーボネート、Al−アセチルアセトネート、Al−メタクリレート、Al−プロピオネート等のジルコニウム、或いはアルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
重合禁止剤の具体例としては、パラメトキシフェノール、メチルハイドロキノン等が挙げられる。
光安定剤の具体例としては、例えば、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアルコール、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアルコール、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート(アデカ(株)製、LA−82)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、テトラキス(2,2,6,6−トトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールおよび3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート、2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル−メタアクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル,1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、N,N’,N″,N″′−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ラウリルオキシカルボニル)エチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ〔5・1・11・2〕ヘネイコサン−21−オン、β−アラニン,N,−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ドデシルエステル/テトラデシルエステル、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、2,2,4,4−テトラメチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ〔5,1,11,2〕ヘネイコサン−21−オン、2,2,4,4−テトラメチル−21−オキサ−3,20−ジアザジシクロ−〔5,1,11,2〕−ヘネイコサン−20−プロパン酸ドデシルエステル/テトラデシルエステル、プロパンジオイックアシッド、〔(4−メトキシフェニル)−メチレン〕−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールの高級脂肪酸エステル、1,3−ベンゼンジカルボキシアミド,N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)等のヒンダートアミン系、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系化合物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールの反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系化合物、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕フェノール等のトリアジン系化合物等が挙げられるが、特に好ましくは、ヒンダートアミン系化合物である。
ヒンダードアミン(B)として、例えば、下式の構造で示される化合物が好ましい。
(式中、R
1は炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基を表し、R2はカーボネート基、又は、1〜4価の有機カルボン酸のカルボキシル基から水素原子を除いた残基を表し、kは1〜4の整数を表す。)
R
1としては、炭素数1〜3のアルキル基又は、炭素数6〜12のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基が特に好ましい。
R
2としては、カーボネート基、(メタ)アクリロイル基含有を含有しても良い炭素数1〜10のアルキル基を有するカルボン酸のカルボキシル基から水素原子を除いた有機基が好ましく、カーボネート基又は(メタ)アクリロイル基含有を含有する炭素数1〜10のアルキル基を有するカルボン酸のカルボキシル基から水素原子を除いた有機基がより好ましい。
ヒンダードアミン(B)の市販品としては、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−52)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−57)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル、及びトリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−62)、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジノールとトリデシルアルコールと1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸との縮合物(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−67)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)−ジエタノールとの縮合物(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−68LD)、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−77Y、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名TINUVIN 123)、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−82、日立化成社製、商品名FA-711MM)、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−81)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート(ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−87、日立化成社製、商品名FA-712HM)、高分子量ヒンダードアミン系光安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名CHIMASSORB 119FL、CHIMASSORB 2020FDL、)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名CHIMASSORB 944FDL)、高分子立体障害型アミン誘導体(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名TINUVIN 622LD)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名TINUVIN144)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名TINUVIN 765)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名TINUVIN 770)などが入手できる。
本発明の光硬化型接着組成物は、ヒンダードアミンを、(メタ)アクリレートオリゴマー100重量部に対して、好ましくは0.01〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部、最も好ましくは0.1〜3重量部含む。
本発明において、好適には酸化防止剤(C)を含有することができる。酸化防止剤(C)を含有させることで、耐熱性、耐湿性を向上させ、変色等の劣化をより有効に防ぐことが可能となる。酸化防止剤としては、BHT、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、オクチル化ジフェニルアミン、2,4,−ビス[(オクチルチオ)メチル]−O−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジブチルヒドロキシトルエン、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール等を例示できる。
これらの酸化防止剤は1種類または2種類以上で使用できる。酸化防止剤の量は、(メタ)アクリレートオリゴマー100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。
充填剤の具体例としては、例えば、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられる。
各種添加剤の組成物中に存在する場合、各種添加剤の光硬化型透明接着剤組成物中における重量割合は、0.01〜3重量%、好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.02〜0.5重量%である。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、前記した各成分を常温〜80℃で混合溶解して得ることができ、必要により夾雑物をろ過等の操作により取り除いてもよい。本発明の接着用接着剤組成物は、塗布性、消泡性の観点から、25℃の粘度が300〜50000mPa・sの範囲となるように、成分の配合比を適宜調節することが好ましい。
得られた樹脂組成物の表面張力が一定の範囲内にあることが、塗布性の観点から好ましい。本発明においては、樹脂組成物の表面張力が20〜40mN/mであることが好ましく、22〜32mN/mであることが特に好ましい。
次に、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を使用したバイオセンサ基板の製造工程の好ましい形態について説明する。本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、上述の通りウェル形成材料又はウェル形成層を備えたベース基板10とカバー部材との貼り合わせに用いることができる。
まず、図4(a)に示すようにベース基板10が射出成型により形成される。ここで、ベース基板10の上面には前述した情報ピット12が形成されている。続いて、必要により、ベース基板10の上面に反射膜又は誘電層膜が蒸着によって形成される。その後、図4(b)に示すようにベース基板上又は反射膜若しくは誘電層膜上にスリットコーター、ロールコーター、スピンコーター、スクリーン印刷法等により本発明の紫外線硬化型樹脂組成物により底面層41aが積層される。その後、当該底面層41aに紫外線が照射され、底面層41aが形成される。次いで、図4(c)に示すように底面層12aの上面に、2P成形により上面層41bが形成される。そして、当該上面層41bに紫外線が照射され、硬化物層となる。これにより、複数のウェルが形成されたウェル形成層が形成されることになる。
この場合、上記では底面層41aと上面層41bを2段階によって形成した態様を説明したが、底面層41aと上面層41bを鋳型等にはめて、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を注入して、その後一度に紫外線を照射することで一度にウェル形成層を形成しても良い。
又、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、上述の通りウェル形成層を備えたベース基板10とカバー部材との貼り合わせに用いることができる。
ここで、上述の通りウェル形成層は、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物、又はシリコーン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等から構成されている。このように構成されたウェル形成層11上にスリットコーター、ロールコーター、スピンコーター、スクリーン印刷法等により、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を塗布する。その後、カバー部材20を積層し、ベース基板10又はカバー部材20越しに紫外線を照射することで、本発明のバイオセンサ基板を得ることが出来る。
紫外線の照射量は積算光量で約100〜4000mJ/cm2が好ましく、特に好ましくは、200〜3000mJ/cm2程度である。紫外〜近紫外の光線照射による硬化に使用する光源については、紫外〜近紫外の光線を照射するランプであれば光源を問わない。例えば、低圧、高圧若しくは超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、(パルス)キセノンランプ、または無電極ランプ等が挙げられる。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物の硬化収縮率は4.0%以下であることが好ましく、3.0%以下であることが特に好ましい。これにより、紫外線硬化型樹脂組成物が硬化する際に、樹脂硬化物に蓄積される内部応力を低減することができ、基材と紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる層との界面に歪みができることを有効に防止することができる。
また、ガラス等の基材が薄い場合には、硬化収縮率が大きい場合には硬化時の反りが大きくなるころから、表示性能に大きな悪影響を及ぼすため、当該観点からも、硬化収縮率は少ない方が好ましい。
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物の400nm〜800nmでの透過率が90%以上であることが好ましい。透過率が90%未満である場合、光が透過し難く、表示装置に使用した場合に視認性が低下してしまうためである。
また、硬化物の400〜450nmでの透過率が高いと視認性の向上が一層期待できることから、400〜450nmでの透過率が90%以上であることが好ましい。
光学基材を張り合わせる接着材として使用した場合に、視認性向上のために硬化物の屈折率が1.45〜1.55であるとき、検出性能がより向上するため、が好ましい。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
紫外線硬化型樹脂組成物の調整
表1に示す配合比率で加熱混合し、実施例1〜9を調製した。
U1:ウレタンアクリレート(※修正要:ポリプロピレングリコール(分子量3000)、イソホロンジイソシアネート、2−ヒドロキシエチルアクリレートの3成分をモル比1:1.3:2の反応物)
U2:ウレタンアクリレート、1,2−水素化ポリブタジエングリコール(分子量2000)、イソホロンジイソシアネート、2−ヒドロキシエチルアクリレートの3成分をモル比1:1.2:2の反応物
S−1800A:イソステアリルアクリレート、新中村化学(株)社製
LA:ラウリルアクリレート、日油(株)社製
FA−513AS:ジシクロペンタニルアクリレ−ト、日立化成(株)社製
4−HBA:4−ヒドキシブチルアクリレート、大阪有機化学工業(株)社製
M−105:水添テルペン樹脂、軟化点105℃、ヤスハラケミカル(株)社製
KE−311:水添ロジンエステル樹脂、荒川化学(株)社製、商品名パインクリスタルKE−311
YSポリスターNH:水添テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル(株)社製
LV−100:ポリブテン、JX日鉱日石エネルギー(株)製
GI−2000:1,2−水素化ポリブタジエングリコール(分子量2000)、日本曹達(株)社製
PPG3000:ポリプロピレングリコール(重量平均分子量3200)、旭硝子(株)社製、商品名エクセノール3020
PPG1000:ポリプロピレングリコール(重量平均分子量1000)、旭硝子(株)(株)社製、商品名エクセノール1020
UP−1171:アクリルポリマー(重量平均分子量8000)、東亞合成(株)社製
Irgacure 184D:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製
Speedcure TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、LAMBSON社製
LA−82:1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−82
LA−81:ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カルボネート、ADEKA社製、商品名アデカスタブ LA−81
1520L:2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール、BASF社製、イルガノックス1520L
得られた本発明の組成物1〜9を用いて以下評価を行った。
(粘度)E型粘度計(TV−200:東機産業(株)製)を用い、25℃にて測定した。
(屈折率):硬化した紫外線硬化性樹脂層の屈折率(25℃)をアッベ屈折率計(DR−M2:(株)アタゴ製)で測定した。
(硬化収縮率):フッ素系離型剤を塗布した厚さ1mmのスライドガラス2枚を用意し、そのうち1枚の離型剤塗布面に、組成物を膜厚が200μmとなるよう塗布した。その後、2枚のスライドガラスを、それぞれの離型剤塗布面が互いに向かい合うように貼り合わせた。ガラス越しに高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で積算光量2000mJ/cm2の紫外線を該樹脂組成物に照射し、該樹脂組成物を硬化させた。その後、2枚のスライドガラスを剥離し、膜比重測定用の硬化物を作製した。JIS K7112 B法に準拠し、硬化物の比重(DS)を測定した。また、25℃で樹脂組成物の液比重(DL)を測定した。DS及びDLの測定結果から、次式より硬化収縮率を算出したところ、いずれも2.4%であった。
硬化収縮率(%)=(DS−DL)÷DS×100
(剛性率):離型処理されたPETフィルムを2枚用意し、そのうち1枚の離形面に、得られた紫外線硬化型樹脂組成物を膜厚が200μmとなるように塗布した。その後、2枚のPETフィルムを、それぞれ離型面が互いに向かい合うように貼り合せた。PETフィルム越しに高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を該樹脂組成物に照射し、該樹脂組成物を硬化させた。その後、2枚のPETフィルムを剥離し、剛性率測定用の硬化物を作製した。剛性率はARES(TA Instruments社製、1Hz)で温度を変化させて測定を行った。25℃のデータを以下に記載した。
(透過率):厚さ1mmのスライドガラス2枚を用意し、そのうちの1枚に、得られた紫外線硬化型樹脂組成物を硬化後の膜厚が200μmとなるように塗布した。その後、2枚のスライドガラスを貼り合わせた。ガラス越しに高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射し、該樹脂組成物を硬化させ、透過率測定用の硬化物を作製した。得られた硬化物の透過率については、分光光度計(U−3310、日立ハイテクノロジーズ(株))を用いて、400〜800nm及び400〜450nmの波長領域における透過率を25℃で測定した。
(誘電率):上記、剛性率測定と同様のサンプルを作成し、誘電率測定装置LCRメーター(PRECISION COMPONENT ANALYZER)6446B Wayne Kerr Electronics社製を用いて測定した。測定サンプルホルダーはSHZ−2を用いて1MHz・25℃での誘電率を測定した。
(HAZE):上記、透過率測定と同様のサンプルを作成し、 全自動ヘーズメーター(MODEL TC−H3DPK)(有)東京電色製を用いて25℃の環境で測定を行った。
(YI値測定)厚さ1mmのスライドガラス2枚を用意し、そのうちの1枚に、得られた紫外線硬化型樹脂組成物を硬化後の膜厚が200μmとなるように塗布した。その後、2枚のスライドガラスを貼り合わせた。ガラス越しに高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を照射し、該樹脂組成物を硬化させ、透過率測定用の硬化物を作製した。また、そのサンプルを85℃高温試験及び、YI 値の測定については、光光度計(U−3310、日立ハイテクノロジーズ(株))を用いて測定した。測定結果を表3に示す。
さらに、得られた本発明の樹脂組成物1〜9を用いて以下評価を行った。
(耐熱、耐湿接着性)厚さ1mmの素ガラス片(10cm×15cm)2枚、若しくは厚さ1mmのポリカーボネートシート片((株)帝人製:パンライトPC−1151)(10cm×15cm)2枚を用意し、一方に得られた紫外線硬化型樹脂組成物を膜厚が200μmとなるように塗布した後、その塗布面に他方を貼り合わせた。ガラス越しに、高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で積算光量5000mJ/cm2の紫外線を該樹脂組成物に照射し、該樹脂組成物を硬化させ、接着性評価用サンプルを作製した。また、365nm付近にUV遮蔽能の高いポリカーボネート片((株)帝人製:パンライトPC−7129や三菱ガス化学(株)製:MR−58U)の場合はUV−LED光源の405nmを用いて8000mJ/cm2の紫外線を該樹脂組成物に照射し、該樹脂組成物を硬化させ、接着性評価用サンプルを作成した。また、素ガラスとポリカーボネートシートの異種基材でも同様に試験片の作成を行った。これら試験片を用いて、95℃の耐熱試験、−40℃の低温試験、85℃85%RHの耐湿試験を行い、100時間放置した。その評価用サンプルにおいて、目視にて基板界面からの樹脂硬化物の剥がれを確認した。結果を表4に示す。
〇:剥がれや気泡の発生などの不良が発生しない。
△:一部剥がれや気泡が発生する。(全面積の半分は接着した状態)
×:9割以上剥がれてしまう。
高温高湿試験により、バイオセンサー基板上に水分を保持した状態で接着を維持できる他、−40℃、95℃の環境下でも接着を維持できる事から、そのまま凍結乾燥等の処理を行っても接着が維持できることを示している。
(金属腐食性試験)
(銀基板)厚さ1mmのポリカーボネートシート片((株)帝人製:パンライトPC−1151)(10cm×10cm)2枚を用意し、一方に銀をスパッタして薄膜(0.3μ)を形成した後、得られた紫外線硬化型樹脂組成物を膜厚が50μmとなるように塗布した後、その塗布面に他方を貼り合わせた。高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を該樹脂組成物に照射し、該樹脂組成物を硬化させた。
(銅基板)FR4(Flame Retardant Type 4)の銅張り積層板(10cm×10cm)1枚と厚さ1mmのポリカーボネートシート片((株)帝人製:パンライトPC−1151)(10cm×10cm)1枚を用意し、得られた紫外線硬化型樹脂組成物を膜厚が50μmとなるように塗布した後、その塗布面に他方を貼り合わせた。高圧水銀灯(80W/cm、オゾンレス)で積算光量3000mJ/cm2の紫外線を該樹脂組成物に照射し、該樹脂組成物を硬化させた。
上記のようにして得られた試験片を60℃80%の恒温槽の中に入れ、100時間後の金属表面の状態を確認した所、目視で確認できるような変化は発生していなかった。
この結果から、光ディスクのようにレーザー光を反射させて読み取るタイプのウェルを有する基板に対しても本発明の材料は問題なく使用する事が出来る。
○:金属表面の変化なし(目視確認)
×:金属表面に変色あり(目視確認)
(生理食塩水溶出試験)
上記、剛性率測定と同様の樹脂硬化膜サンプルを作成し、体液とほぼ等しい塩化ナトリウム水溶液として生理食塩水(大塚生食注:大塚製薬(株)製)に24時間浸漬し試験前後での重量を比較した。
その結果、実施例1、実施例2では若干の重量増が見られた。これは成分中のポリプロピレングリコール成分が吸水したためと考えられる。
実施例3〜9では若干の重量減少が見られるが、その量は極めて少ない。これは実施例で得られた樹脂組成が疎水性である事に起因すると考えられる。この結果から、生理食塩水や血液のような成分に対して溶出しにくく、当該樹脂成分がウェル内の細胞等に影響を及ぼす可能性は無いものと考えられる。
以上、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。