本発明は、そのいくつかの実施形態において、療法に関し、排他的ではなくより詳細には、ケモカイン生物活性の調節、癌細胞の死滅、キナーゼの阻害、ケモカイン依存性細胞遊走の阻害、ならびに/あるいはケモカインの生物活性および/または細胞遊走および/またはキナーゼ活性と関連する疾患および障害(例えば、癌や、炎症性の疾患および障害)の治療に有用な小分子化合物、ならびにこれら化合物を利用する方法に関する。
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、必ずしもその用途が、以下の記載によって提供される説明または実施例で示される具体例によって明示されるような詳細に限定されるものではないことを理解するべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、また、さまざまな方法で実践若しくは遂行することが可能である。
ケモカイン活性の調節およびケモカインの生物活性に関連する病態の治療に適した化合物の探索において、本発明者らは、約3,500種の天然化合物のライブラリーをケモカイン結合活性についてスクリーニングし、次いで、ケモカイン結合分子について、個々のケモカインの細胞に対する効果を調節する能力のみならず、癌細胞に対する(例えば、癌細胞の死滅、癌細胞の成長阻害、および/または癌細胞のケモカイン依存性遊走の阻害による)影響および/または癌細胞などの病原性細胞を死滅させる能力についてさらにスクリーニングした。
本発明者らは、このような骨の折れるスクリーニングプロセスを使用して、本明細書においてBKT300と称する化合物(後述する実施例を参照)を、ケモカイン活性の有望な調節物質、SDF−1/CXCR4活性の選択的阻害剤、および/または癌細胞死のエンハンサーとして同定した。BKT300による、ケモカインMIP3a、SDF−1への細胞遊走、またはケモカインMCP−1への細胞遊走の阻害を示す、図1、2A、2Bおよび3、ならびに小分子BKT300が、癌細胞に対して細胞死を誘導し、in vivoマウスモデルにおいて癌細胞数を低減させるを示す図4A〜12Cに参照する。
小分子BKT300はまた、選択したヒトキナーゼのリストに対するその効果についてのスクリーニングを行い、特定のキナーゼの活性を阻害することが示された(以下の実施例中の表2および実施例4を参照)。
BKT300の明白な活性によって勇気づけられた本発明者らは、BKT300とキナーゼ結合部位との相互作用を、コンピュータによるモデル化を使用して研究した(例えば、図14〜16を参照)。そして、これらのコンピュータによる研究において想起されたデータに基づいて、BKT300の構造的類似体であり、その活性に起因すると考えられたBKT300の構造的特徴の少なくとも一部を維持する小分子を設計した(限定されない例について、図17および18を参照)。
本発明者らは、BKT300の例示的なこのような構造的類似体は、ケモカインの生物活性を調節するように作用し、または癌細胞死を誘導するおよび/または癌細胞を遊走させることによって抗癌剤として作用することを示した。例えば、図19A〜37Cに参照されたい。
本明細書に記載の構造的類似体は、ケモカインの生物活性の調節において有用である。したがって、ケモカインの生物活性と関連する疾患または障害の治療において有用である。本明細書に記載の構造的類似体は、本明細書において後述するように、(血管新生および/または転移を阻害することによって)癌細胞死を誘導するおよび/または癌細胞を遊走させることによって、抗癌剤として特に有用となる。本明細書に記載の構造的類似体は、キナーゼ(例えば、MELK、MAPK4KおよびIP3K)の活性阻害、ならびに癌や炎症などの、キナーゼの阻害が有益である疾患または障害の治療においてさらに有用である。
本発明のいくつかの実施形態に係わる化合物の一般的な効果は、ケモカイン誘導性細胞遊走およびアポトーシスを含む種々の生物学的現象に対して示されている。これらの知見によって、本明細書に記載の化合物は、炎症(例えば、自己免疫疾患)、癌および非癌性過剰増殖性疾患を含む種々の医学状態の治療に使用可能な医薬となる。
したがって、本発明の実施形態は、概して、新規に設計された小分子およびその使用に関する。
化合物(小分子):
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、式Iaによって集合的に表すことのできる、新規に設計された小分子(化合物)を提供する。
[式中、
Aは、長さが少なくとも炭素原子数4のアルキルであり、
Bは、ヒドロキシル、アルコキシおよびアリールオキシから選択されるか、またはヒドロキシルおよびアルコキシから選択され、
D、EおよびGは、各々独立に、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシおよびアルキルから選択され、
R1は、水素、アルキルおよびシクロアルキルから選択されるか、または水素およびアルキルから選択され、
R2〜R5の各々は独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、チオアルコキシ、チオール、チオアルコキシ、アミンおよび任意選択で、アルキン、アリールオキシ、チオアリールオキシ、カルボキシレート、カルボニル、スルホニル、スルホネート、スルフィニル、シアノ、ニトロおよび本明細書に記載の他の置換基から選択される。]
式Iaの化合物は、ケトン基(カルボニル)を特徴とし、「エノール」型へのケト−エノール互換異性を受けることができる。したがって、式Ibによって表すこともできる。
ケト−エノール互換異性は、カルボニル基(C=O)とそのエノール互変異性体との間の迅速な平衡を示すものとして当技術分野で公知である。
ケト−エノール互換異性は、ほとんどの場合、熱力学的に駆動され、室温では、平衡は、通常、ケト型の形成を好む。しかし、例えば、溶液のpHまたはイオン強度、化合物の濃度、温度、エノール型を安定化する薬剤の存在などの環境条件によって、同等に存在するか、または優勢であるエノール型の方へ平衡が移動することもある。
いくつかの実施形態では、環境条件に応じて、本実施形態に係わる化合物は、ケト互変異性体(式Ia)の形態、もしくはエノール型(式Ib)の形態のいずれかであるか、またはケト型とエノール型との間の平衡、したがって、式IaおよびIbの両方の形態をとり得る。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、B、D、EおよびGのうち少なくとも1つは、アルコキシまたはアリールオキシであり、好ましくはアルコキシであり、いくつかの実施形態では、B、D、EおよびGのうち、少なくとも2つはアルコキシおよび/またはアリールオキシであり、好ましくは各々がアルコキシである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、アルコキシは、炭素原子数が1〜6、好ましくは炭素原子数が1〜4である。例として、これらに限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシおよびイソブトキシが挙げられる。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、アルコキシはメトキシである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Bはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、D、EおよびGのうち1つ以下がアルキルである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、D、EおよびGのうち2つ以下がアルコキシまたはアリールオキシである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、D、EおよびGのうち2つがアルコキシおよび/またはアリールオキシであるとき、D、EおよびGのうち1つもアルキルではない。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、D、EおよびGのうち1つは水素であり、他の2つは、アルコキシ、アリールオキシおよび/またはアルキル、好ましくはアルコキシおよび/またはアルキルである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Dは水素であり、Eはアルコキシであり、Gはアルキルである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Dは水素であり、EおよびGは各々独立にアルコキシであり、例えば、EおよびGは各々メトキシである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、DおよびEは各々独立にアルコキシであり、例えば、DおよびEは各々独立にメトキシであり、Gは水素である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、DおよびGは各々独立にアルコキシであり、例えば、DおよびGは各々メトキシであり、Eは水素である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Dは水素であり、Eはアルキルであり、Gはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Eは水素であり、Dはアルキルであり、Gはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Gは水素であり、Eはアルキルであり、Dはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Dは水素であり、Gはアルキルであり、Eはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Eは水素であり、Gはアルキルであり、Dはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Gは水素であり、Dはアルキルであり、Eはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Eはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、BおよびEの各々はアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Dはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Gは水素である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Eは、アルコキシ(例えば、メトキシ)であり、Dはアルコキシ(例えば、メトキシ)であり、Gは水素である。これらの実施形態のいくつかでは、Bはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Eはアルコキシ(例えば、メトキシ)であり、Gはアルコキシ(例えば、メトキシ)であり、Dは水素である。これらの実施形態のいくつかでは、Bはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Eはアルコキシ(例えば、メトキシ)であり、DおよびGは両方とも水素である。これらの実施形態のいくつかでは、Bはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Dはアルコキシ(例えば、メトキシ)であり、EおよびGは両方とも水素である。これらの実施形態のいくつかでは、Bはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Gはアルコキシ(例えば、メトキシ)であり、DおよびEは両方とも水素である。これらの実施形態のいくつかでは、Bはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Dは前記アルキルである。
これらの実施形態のいくつかでは、GおよびEのうち一方は、水素である。これらの実施形態のいくつかでは、Gは水素であり、Eはアルコキシである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Eはアルコキシ(例えば、メトキシ)であり、Dはアルキルであり、Gは水素である。これらの実施形態のいくつかでは、Bはアルコキシ(例えば、メトキシ)である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、D、EおよびGのうちの1つが、アルキルであるときには常に、アルキルは、長さが少なくとも炭素原子数4である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、長さが少なくとも炭素原子数4のアルキルは、例えば、炭素原子数1〜20、または1〜10、または1〜8の長さであり得る。長さが少なくとも炭素原子数4である例示的アルキルとして、置換または非置換ブチル、置換または非置換ペンチル、置換または非置換ヘキシル、置換または非置換ヘプチル、置換または非置換オクチル、置換または非置換ノニル、置換または非置換デシル、置換または非置換ウンデシル、置換または非置換ドデシルなどが挙げられる。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、長さが炭素9原子数4のアルキルは、非置換アルキルである。いくつかの実施形態では、ヘキシルであり、いくつかの実施形態では、非置換ヘキシルである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、Aは、長さが少なくとも炭素原子数4のアルキルであり、任意選択で、D、EおよびGのうち1つは、長さが少なくとも炭素原子数4のアルキルである。
Aと、D、EおよびGのうちの1つとが、長さが炭素原子数4のアルキルであるときには、これらのアルキルは、同一であっても、異なっていてもよい。
これらの実施形態のいくつかでは、Aと、D、EおよびGのうち1つとが、非置換アルキルであり、いくつかの実施形態では、両方とも非置換ヘキシルである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、R1は水素である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、R2〜R5の各々は独立に、水素、ヒドロキシ、ハロ、アルコキシ、チオアルコキシ、チオール、チオアルコキシおよびアミンから選択される。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、R2〜R5の各々は水素である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、R1〜R5の各々は水素である。
あるいは、R1〜R5のうち1つ以上は水素以外であり、それぞれの置換基(単数または複数)の性質は、小分子の、その生物学的標的(単数または複数)(例えば、ケモカイン結合および/またはキナーゼ阻害)との相互作用を干渉しないようなものである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の化合物は、そのケトおよびエノール互換異性体によって表される以下の化学構造を有する。
この化合物は、本明細書においてBKT300−3−c5と命名した。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の化合物は、そのケトおよびエノール互換異性体である、以下の化学構造を有する。
この化合物は、本明細書においてBKT300−11−a5と命名した。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の化合物は、そのケトおよびエノール互換異性体である以下の化学構造を有する。
この化合物は、本明細書においてB1と命名した。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の化合物は、そのケトおよびエノール互換異性体である、以下の化学構造を有する。
この化合物は、本明細書においてD1と命名した。
治療適用:
本明細書に記載の化合物は、それぞれの実施形態のいずれか1つおよびそれらの任意の組合せにおいて、BKT300の構造的類似体と見なすことができる。これらは、ケモカインの生物活性を調節することによって、ケモカイン結合化合物として作用し、ケモカイン依存性細胞遊走の阻害剤、癌細胞の阻害剤として(例えば、癌細胞成長の阻害剤、および/またはアポトーシスの誘導剤、および/または癌細胞遊走の阻害剤)として、および/またはキナーゼ阻害剤として作用すると本明細書において示される。
したがって、本明細書に記載の化合物の各々は、キナーゼ生物活性の阻害、ならびに/または癌細胞の阻害、ならびに/または癌細胞の死滅、ならびに/またはアポトーシスの誘導、ならびに/または成長停止の誘導、ならびに/またはケモカイン依存性細胞遊走の阻害、ならびに/またはケモカインの生物活性(例えば、細胞遊走)の調節、ならびに/またはキナーゼ活性および/もしくは細胞遊走と関連する疾患および障害(例えば、癌や、炎症性の疾患および障害)の治療、ならびに/または(アポトーシスの誘導および/または成長停止が望ましい場合に)増殖性の疾患または障害の治療が可能である、またはこれらにおいて有用である。
炎症および癌は、通常、細胞遊走(例えば、浸潤、転移)と、細胞増殖と関連することが多いキナーゼ活性とによって支配されているので、本発明のいくつかの実施形態の化合物による治療の対象と考えられる。
癌以外の医学的状態(本明細書において、「非癌性過剰増殖性疾患」とも称する)を含む、本明細書に記載の増殖性疾患および障害もまた、当該化合物のアポトーシス誘導性効果故に、本発明のいくつかの実施形態の化合物による治療の対象と考えられる。
いずれか特定の理論によって拘束されるものではないが、本明細書に記載の化合物は、本明細書において詳細に後述するように、癌細胞死の誘導、(例えば、転移を阻害することによる)ケモカイン依存性癌細胞遊走および/または血管新生の発生、キナーゼ活性(例えば、増殖促進性キナーゼ活性)の阻害、癌細胞におけるアポトーシスの誘導、癌細胞の成長停止の誘導故に、抗癌剤として特に有用であると考えられ、ケモカイン依存性免疫細胞の遊走(例えば、免疫細胞浸潤)、および/またはキナーゼ活性(例えば、炎症性キナーゼ活性)の阻害故に、抗炎症薬として特に有用であると考えられる。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の式Iaおよび/またはIbの小分子化合物は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて、病原性細胞(例えば、癌細胞または免疫細胞または過剰増殖細胞)の死について、誘導可能であるか、またはそのために使用可能である。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の式Iaおよび/またはIbの小分子化合物は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて、病原性細胞の細胞死について、誘導可能であるか、またはそのために使用可能である。
本明細書において、用語「アポトーシス」とは、細胞の内因性自己破壊または自殺プログラムを指す。誘因となる刺激に応答して、細胞は、細胞収縮、細胞膜の小疱形成ならびにクロマチン凝縮およびフラグメンテーションを含む事象のカスケードを起こす。これらの事象は、結果的に、細胞を膜結合粒子(アポトーシス小体)のクラスターへと変換し、その後マクロファージによって貪食される。
化合物によって誘導される細胞変化をモニタリングする方法は、当技術分野で公知であり、例えば、本明細書において上述した、下記の方法が挙げられる。生細胞が黄色塩MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾリル−2)−2、5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(米国、ミズーリ州、セントルイスのSigma、Aldrich社製)を還元して、紫−青の不溶性ホルマザン沈殿物を選択的に発生させる能力に基づくMTT試験、BrDuアッセイ[Cell Proliferation ELISA BrdU比色分析キット(ドイツ国、マンハイム、Roche社製];TUNELアッセイ[ドイツ国、マンハイム、Roche社製];アネキシンVアッセイ[ApoAlert(登録商標)アネキシンVアポトーシスキット(米国、カリフォルニア州、Clontech Laboratories、Inc.製];老化関連β−ガラクトシダーゼアッセイ(Dimri GP, Lee X, et al. 1995. A biomarker that identifies senescent human cells in culture and in aging skin in vivo. Proc Natl Acad Sci U S A 92:9363-9367);7−ADD生存率染色(MD systemsから入手可能)、カスパーゼ−3アッセイ(MDsystemsから入手可能)ならびに種々のRNAおよびタンパク質検出法(発現および/または活性のレベルを検出する)。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の式Iaおよび/またはIbの小分子化合物について、それぞれの実施形態のいずれかにおける細胞変化は、カスパーゼ−3の切断などによるアポトーシスである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の式Iaおよび/またはIbの小分子化合物について、それぞれの実施形態のいずれかにおいて、小分子化合物はカスパーゼ−3の切断によってアポトーシスを誘導しうるものであり、または誘導するために使用可能なものである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、本明細書に記載の式Iaおよび/またはIbの小分子化合物について、それぞれの実施形態のいずれかにおいて、小分子化合物は細胞の成長停止を誘導しうるものであり、または誘導するために使用可能なものであり、いくつかの実施形態では、当該停止は、細胞周期のG2M期で生じる。これらの実施形態のいくつかでは、細胞は、癌細胞である。
ケモカイン調節:
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、本明細書に記載の式Iaおよび/またはIbの小分子化合物は、それぞれの実施形態のいずれかまたはそれらの任意の組合せにおいて、本明細書に記載のケモカイン生物活性の調節しうるものであり、または調節するために使用可能である。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、ケモカイン生物活性を調節する方法であって、ケモカインと、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物とを接触させることを含む方法を提供する。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、ケモカインの生物活性を調節するための医薬の製造における、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の使用を提供する。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、ケモカインの生物活性の調節における、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の使用を提供する。
いくつかの実施形態では、ケモカイン活性を調節するための使用および/または方法は、例えば、ケモカイン活性の調節を必要とする患者に治療有効量の化合物を投与することによって、in vivoで達成される。
いくつかの実施形態では、ケモカイン活性を調節するための使用および/または方法は、例えば、研究において、ex vivoで(例えば、in vitroで)達成される。
ケモカインの生物活性を調節するための方法、使用または医薬に関して本明細書に記載する実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、方法、使用または医薬は、例えば、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の治療上有効量を患者に投与することによって、ケモカインの生物活性と関連する疾患または障害の治療を必要とする患者において、ケモカインの生物活性と関連する疾患または障害を治療するためのものである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、ケモカイン生物活性の調節は、ケモカイン生物活性の阻害を含む。これは、異なる種類の複数の細胞種で本明細書において例示されるような、本明細書に記載の小分子がケモカイン誘導性細胞遊走を阻害する能力によって証明することができる。
ケモカインの生物活性を調節するための方法、使用または医薬に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、方法、使用または医薬は、例えば、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の治療上有効な量を、患者に投与することによって、それを必要とする患者においてケモカインの生物活性を調節すること(例えば、阻害すること)が有益である疾患または障害を治療するためのものである。
ケモカインの生物活性を調節するための方法、使用または医薬に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、方法、使用または医薬は、例えば、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の治療上有効な量を、ケモカイン生物活性の調節(例えば、阻害)によって治療可能な疾患または障害を患う患者に投与することによって、ケモカイン生物活性の調節(例えば、阻害)によって治療可能な疾患または障害を治療するためのものである。
ケモカインの生物活性を調節するための方法、使用または医薬に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物(それぞれの実施形態のいずれかに係るもの)は、ケモカイン依存性細胞遊走の調節に有効である。これらの実施形態のいくつかでは、ケモカイン依存性細胞遊走は、本明細書に記載の癌および/または炎症と関連する。
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、ケモカインは、MIP3aである。
MIP3aの活性と関連する(例えば、MIP3a活性の阻害が有益である)疾患および障害の例としては、これらに限定されるものではないが、乾癬、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節リウマチ、多発性硬化症(MS)、アトピー性皮膚炎、ドライアイ疾患および加齢性黄斑変性症(AMD)などの自己免疫疾患および障害が挙げられる。
疾患または障害の治療に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、疾患または障害は、細菌感染ではない。
ケモカインの生物活性の調節のための方法または使用に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、ケモカインは、MCP−1および/またはSDF−1である。いくつかのこのような実施形態では、ケモカインは、MCP−1である。いくつかのこのような実施形態では、ケモカインは、SDF−1である。
ケモカイン活性の調節に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、化合物、方法および/または医薬(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに係るもの)は、ケモカインの生物活性を阻害するものである。いくつかのこのような実施形態では、ケモカインは、MCP−1および/またはSDF−1である。いくつかのこのような実施形態では、ケモカインは、MCP−1である。いくつかのこのような実施形態では、ケモカインは、SDF−1である。
MCP−1阻害:
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の式Iaおよび/またはIbの小分子化合物は、それぞれの実施形態のいずれかまたはそれらの任意の組合せにおいて、本明細書に記載のように、MCP−1の生物活性を調節可能である、または調節するために使用可能である。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、MCP−1の生物活性を阻害する方法であって、MCP−1を、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物と接触させることを含む方法を提供する。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、MCP−1の生物活性を阻害するための医薬の製造における、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の使用を提供する。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、MCP−1の生物活性の阻害における、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の使用を提供する。
MCP−1生物活性を阻害するための使用および/または方法に関する実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、使用および/または方法は、例えば、MCP−1生物活性の阻害を必要とする患者に治療上有効な量の化合物を投与することによって、in vivoで達成される。
いくつかの実施形態では、MCP−1生物活性の阻害のための使用および/または方法は、例えば研究において、ex vivoで(例えば、in vitroで)達成される。
MCP−1生物活性を阻害するための方法、使用または医薬に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、方法、使用または医薬は、例えば、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の治療上有効な量を患者に投与することによって、MCP−1生物活性と関連する疾患または障害の治療を必要とする患者における、MCP−1生物活性関連疾患または障害を治療するためのものである。
MCP−1生物活性を阻害するための方法、使用または医薬に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、方法、使用または医薬は、例えば、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の治療上有効な量を患者に投与することによって、MCP−1生物活性の阻害が有益である疾患または障害の治療を必要とする患者における、MCP−1生物活性の阻害が有益な疾患または障害を治療するためのものである。
MCP−1の生物活性を阻害するための方法、使用または医薬に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、方法、使用または医薬は、例えば、患者に、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の治療上有効な量の投与が、それを必要とする患者における、MCP−1の生物活性の阻害が有益である疾患または障害を治療するためのものである。
MCP−1活性と関連する(例えば、MCP−1活性の阻害が有益である)疾患および障害の例として、これらに限定されるものではないが、単球性浸潤物によって特徴付けられる疾患および障害が挙げられる。
いくつかの実施形態によれば、MCP−1の活性と関連する(例えば、MCP−1活性の阻害が有益である)疾患および障害の例として、これらに限定されるものではないが、本明細書に記載の、結核、HIV−1、増殖性糸球体腎炎、神経管欠損、黄色肉芽腫性腎盂腎炎、強膜炎、急速進行性糸球体腎炎、塵肺症、脳炎、腹膜炎、アテローム性動脈硬化症、乾癬、デングショック症候群、側頭動脈炎、再発性多発性軟骨炎、糖尿病性血管障害、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、交感性眼炎、尿管疾患、ループス腎炎、肺炎、歯根肉芽腫、エルトハイム・チェスター病、糸球体腎炎、動脈疾患、ウイルス性脳炎、原発性皮膚アミロイドーシス、動脈硬化症、非特異的間質性肺炎、急性連鎖球菌感染後糸球体腎炎、冠動脈疾患、ベネズエラウマ脳炎、糖尿病黄斑浮腫、肺外結核、腎炎、関節リウマチ、川崎病、関節炎、マラリア、肥満症、精神障害、癌(例えば、本明細書に記載の)、炎症(例えば、本明細書に記載の炎症性疾患および障害)、神経変性障害および加齢性黄斑変性症(AMD、例えば、ドライ型またはウェット型)が挙げられる。
特定の実施形態によれば、疾患として、これらに限定されるものではないが、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、糸球体腎炎、てんかん、アルツハイマー病、脳虚血、外傷性脳損傷、II型糖尿病およびAMDが挙げられる。
SDF−1および/またはCXCR4阻害:
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の式Iaおよび/またはIbの小分子化合物は、それぞれの実施形態のいずれかまたはそれらの任意の組合せにおいて、本明細書に記載の、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性を調節しうるものである、または調節に使用可能なものである。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性を阻害する方法であって、SDF−1および/またはCXCR4を、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物と接触させることを含む方法を提供する。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性を阻害するための医薬の製造における本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の使用を提供する。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性の阻害における、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の使用を提供する。
SDF−1および/またはCXCR4の生物活性を阻害するための使用および/または方法に関する実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、使用および/または方法は、例えば、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性の阻害を必要とする患者に治療上有効量の化合物を投与することによって、in vivoで達成される。
いくつかの実施形態では、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性を阻害するための使用および/または方法は、例えば研究において、ex vivoで(例えば、in vitroで)達成される。
SDF−1および/またはCXCR4の生物活性を阻害するための方法、使用または医薬に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、方法、使用または医薬は、例えば、対象に、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の治療上有効な量を投与することによって、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性と関連する疾患または障害の治療を必要とする対象における、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性と関連する疾患または障害を治療するためのものである。
SDF−1および/またはCXCR4の生物活性を阻害するための方法、使用または医薬に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、方法、使用または医薬は、例えば、対象に、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の治療上有効な量を投与することによって、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性を阻害することが有益である疾患または障害の治療を必要とする対象における、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性を阻害することが有益である疾患または障害を治療するためのものである。
SDF−1および/またはCXCR4の生物活性を阻害するための方法、使用または医薬に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、方法、使用または医薬は、例えば、対象に、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の治療上有効な量を投与することによって、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性を阻害することによって治療可能な疾患または障害の治療を必要とする対象における、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性を阻害することによって治療可能な疾患または障害を治療するためのものである。
当業者ならば、CXCR4は、SDF−1の活性を媒介する受容体であることおよびSDF−1の活性およびCXCR4の活性が、通常、重複することを理解するであろう。
SDF−1および/またはCXCR4の活性と関連する(例えば、SDF−1および/またはCXCR4活性阻害が有益である)疾患および障害の例として、これらに限定されるものではないが、Whim症候群、子宮頸部腺癌、乳癌、滑液包炎、結核、眼球内リンパ腫、サイトメガロウイルス網膜炎、慢性炎症性脱髄性多発神経根筋障害、高眼圧症、多発神経根筋障害、樹状細胞腫瘍、網膜血管芽腫、マラリア、内皮炎、白血病、関節リウマチ、関節炎、前立腺炎、前立腺癌、結腸直腸癌、慢性リンパ性白血病、膵炎、ニューロン炎、肺癌、変形性関節症、低酸素症、腺癌、膵臓癌、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、骨髄性白血病、星状細胞腫、歯周炎、神経膠芽腫、子癇前症、黒色腫、肝炎、食道炎、骨髄腫、子癇、子宮頸管炎、歯周病、中枢神経系リンパ腫、弧発性乳癌、肝細胞癌、全身性エリテマトーデス、喘息、腎細胞癌、心筋梗塞、髄芽腫、子宮内膜癌、紅斑性狼瘡、食道癌、未熟卵巣機能不全、腹膜炎、血管病、アルコール性肝炎、腎臓病、皮膚リーシュマニア症、脳炎、円形脱毛症、リンパ性白血病、腺腫、マントル細胞リンパ腫、乏突起神経膠腫、マルトリンパ腫、百日咳、虚血、ブドウ膜黒色腫、歯肉炎、下垂体腺腫、細気管支炎、視神経脊髄炎、中皮腫、脱毛症、子宮頸癌、体細胞性、多形神経膠芽腫、閉塞性細気管支炎、脳損傷、結腸直腸腺腫、舌扁平上皮癌、B細胞リンパ腫、外傷性脳損傷、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、アレルギー性喘息、マダニ媒介脳炎、芽細胞性形質細胞様樹状細胞、乏突起星細胞腫、小児期皮膚筋炎、腎膨大細胞腫、子宮内膜腺癌、視神経炎、セミノーマ、シェーグレン症候群、胸膜炎、神経炎、炎症性腸疾患、サイトメガロウイルス感染、悪性胸腔中皮腫、口腔扁平上皮癌、骨格筋再生、エメリ・ドレフュス型筋ジストロフィー、優性型が挙げられる。
いくつかの実施形態では、SDF−1および/またはCXCR4の活性と関連する(例えば、SDF−1および/またはCXCR4活性阻害が有益である)例示的疾患および障害として、これらに限定されるものではないが、有害な血管新生、腫瘍転移、WHIM症候群、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症(WM)およびオピオイド誘導性痛覚過敏が挙げられる。
本明細書において、用語「有害な血管新生」とは、臨床上および/または美容上望ましくない結果を伴う血管新生を指す。
腫瘍と関連する血管新生は、有害な血管新生の限定的ではない例である。
本明細書において、語句「腫瘍転移」とは、その原発性位置から身体の他の部分に広がる悪性腫瘍、例えば、肺に転移する乳癌を指す。腫瘍転移は、腫瘍細胞遊走を含むことが多い。
ケモカインの生物活性を調節するための方法または使用に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、当該調節は、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに従う、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性の阻害を含む。
SDF−1および/またはCXCR4の生物活性を阻害することに関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、SDF−1および/またはCXCR4の生物活性の阻害は、免疫刺激を与えるためのものである。
いくつかの実施形態では、免疫刺激は、癌治療の一部として、例えば、癌細胞に対する免疫活性を刺激するために与えられる。
いくつかの実施形態では、免疫刺激は、対象の末梢血中の造血幹細胞のレベルを高めることを含む。
いくつかの実施形態では、対象の末梢血中の造血幹細胞のレベルを高めることは、造血幹細胞移植の予備的部分として(例えば、採取および後の移植によって患者に戻すための造血幹細胞を生成するために)実施する。造血幹細胞移植によって治療され得る病態の例として、これらに限定されるものではないが、白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病)、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、神経芽細胞腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、ユーイング肉腫、絨毛癌、脊髄形成異常症、貧血(例えば、発作性夜間ヘモグロビン尿症、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、ファンコニ貧血、後天性赤芽球癆)、異常ヘモグロビン症、鎌形赤血球疾患、重症型βサラセミア、骨髄増殖性疾患(例えば、真性赤血球増加症、本態性血小板増多症、骨髄線維症)、アミロイド軽鎖アミロイドーシス、放射線中毒、ウイルス性疾患(例えば、HTLVおよび/またはHIV感染)、神経セロイドリポフスチン症、ニーマン・ピック病、ゴーシェ病、白質ジストロフィー(副腎白質ジストロフィー、異染性白質ジストロフィー、クラッベ病)、ムコ多糖症、糖タンパク質症(glycoproteinoses)(例えば、ムコリピドーシスII、フコシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、αマンノース症)、ウォルマン病、免疫不全(例えば、毛細血管拡張性運動失調症、ディジョージ症候群、重症複合免疫不全症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、コストマン症候群、シュワックマン・ダイアモンド症候群、グリセリ症候群、NF−κ−B本態性調節物質欠乏症)、無巨核球性血小板減少症および血球貪食性リンパ組織球症が挙げられる。
いくつかの実施形態では、造血幹細胞移植は、増殖性疾患、例えば、癌(例えば、それぞれの実施形態のいずれかに従う、本明細書に記載の癌)を治療するためのものである。
造血幹細胞に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、治療は、対象の末梢血中の造血幹細胞のレベルを高めること、対象の末梢血から造血幹細胞を得ること、対象に細胞傷害性療法を投与すること(例えば、抗増殖性化学療法および/または放射線療法)、および細胞傷害性療法に続いて幹細胞の少なくとも一部を患者に移植して戻すことを含む。
キナーゼの阻害:
本明細書に記載の実施形態のうちのいくつかによれば、本明細書において式Iaおよび/またはIbによって表される化合物は、キナーゼの生物活性の阻害しうるものである、または阻害のために使用可能なものである。
本明細書に記載の実施形態のうちのいくつかによれば、本明細書において式Iaおよび/またはIbによって表される化合物は、キナーゼの生物活性を阻害することが有益である疾患もしくは障害またはキナーゼの生物活性を阻害することによって治療可能である疾患もしくは障害を治療しうるものである、または治療に使用可能である。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物は、キナーゼ生物活性の阻害において使用するためのものである。
本発明のいくつかの実施形態の別の態様によれば、キナーゼ生物活性を阻害する方法であって、キナーゼと、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物とを接触させることを含む方法を提供する。
いくつかの実施形態では、キナーゼを阻害するための使用および/または方法は、例えば研究において、ex vivoで(例えば、in vitroで)達成される。
いくつかの実施形態では、キナーゼを阻害するための使用および/または方法は、例えば、キナーゼの阻害を必要とする対象に治療上有効量の化合物を投与することによって、in vivoで達成される。
本発明のいくつかの実施形態の別の態様によれば、キナーゼ生物活性の阻害を必要とする患者におけるキナーゼ生物活性の阻害に使用するための医薬の製造における、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる化合物の使用を提供する。
キナーゼ生物活性を阻害するための使用、方法および/または医薬に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、使用、方法および/または医薬(本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれかに係るもの)は、キナーゼの生物活性と関連する疾患または障害の治療を必要とする患者における、キナーゼの生物活性と関連する疾患または障害の治療用である。
キナーゼの生物活性を阻害するための使用、方法および/または医薬に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、使用、方法および/または医薬は、キナーゼ生物活性の阻害が有益である疾患または障害の治療用である。
キナーゼの生物活性を阻害するための使用、方法および/または医薬に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、使用、方法および/または医薬は、キナーゼ生物活性の阻害によって治療可能な疾患または障害を治療するためのものである。
キナーゼ生物活性を阻害するための方法または使用に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、阻害されるキナーゼは、以下の表2中に示されるキナーゼ、例えば、DYRK3、EPHA8、GRK4、GRK5、MAP4K1、MAP4K2、MAP4K4、MELK、PAK7、SGK2、SRC N1、ACVRL1、BMPR1A、CDC7/DBF4、CDK1/サイクリンA2、CDK11、CDK8/サイクリンC、CLK4、DAPK2、DURK2、ICK、MAPK10、MLCK、MYLK、NUAK2、STK17A、STK17B、STK38、STK38L、TGFBR2、TTK、DAPK1、PIK3CAおよび/またはPIK3CDであり得る。
特定の実施形態によれば、キナーゼはPI3Kである。
キナーゼ生物活性の阻害のための方法または使用に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、阻害するキナーゼは、セリン/トレオニンキナーゼである。いくつかの実施形態では、セリン/トレオニンキナーゼは、以下の表2に示されるセリン/トレオニンキナーゼである。
キナーゼの生物活性を阻害するための方法または使用に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、阻害するキナーゼは、チロシンキナーゼである。いくつかの実施形態では、チロシンキナーゼは、以下の表2に示されるセリン/トレオニンキナーゼである。
キナーゼの生物活性を阻害するための方法または使用に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、キナーゼは、MELK、MAP4K4および/またはPI3Kである。
癌治療:
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の式Iaおよび/またはIbの小分子化合物は、それぞれの実施形態のいずれかまたはそれらの任意の組合せにおいて、癌を治療しうるものである、または治療に使用可能なものである。
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の式Iaおよび/またはIbの小分子化合物は、それぞれの実施形態のいずれかまたはそれらの任意の組合せにおいて、癌細胞死を誘導(癌細胞を死滅させること)しうるものである、または誘導に使用可能なものである。
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の式Iaおよび/またはIbの小分子化合物は、それぞれの実施形態のいずれかまたはそれらの任意の組合せにおいて、癌細胞のアポトーシスを誘導しうるものである、または誘導に使用可能なものである。
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の式Iaおよび/またはIbの小分子化合物は、それぞれの実施形態のいずれかまたはそれらの任意の組合せにおいて、癌細胞の成長停止を誘導しうるもの、または誘導に使用可能なものであり、いくつかの実施形態では、停止は、細胞周期のG2M期で起こる。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、癌の治療を必要とする患者の癌を治療する方法であって、患者に、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係る小分子化合物の治療上有効な量を投与し、それによって癌を治療することを含む方法を提供する。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、癌治療用医薬の製造における、本明細書に記載の実施形態のいずれかに係る小分子化合物の使用を提供する。
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、癌治療における本明細書に記載の実施形態のいずれかに係る小分子化合物の使用を提供する。
本明細書において、用語「癌」および「腫瘍」は、同義的に使用される。この用語は、異常な、制御されない細胞増殖(細胞分裂)によって引き起こされる悪性成長および/または腫瘍を指す。用語「癌」は、腫瘍転移を包含する。
用語「癌細胞」は、悪性成長または腫瘍を形成する細胞を示す。
癌に関する本明細書に記載の実施形態のいずれかに係わる実施形態のいくつか(本明細書に記載の態様のいずれかを含む)に従って治療され得る癌および/または腫瘍転移の限定されない例として、これらに限定されないが、胃腸管の腫瘍(例えば、結腸癌腫、直腸癌腫、結腸直腸癌腫、結腸直腸癌、結腸直腸腺腫、遺伝性非ポリープ症1型、遺伝性非ポリープ症2型、遺伝性非ポリープ症3型、遺伝性非ポリープ症6型、結腸直腸癌、遺伝性非ポリープ症7型、小腸および/または大腸癌腫、食道癌腫、食道癌を伴う胼胝、胃癌腫、膵臓癌腫、膵臓内分泌腫瘍)、子宮内膜癌、隆起性皮膚線維肉腫、胆嚢癌、胆道腫瘍、前立腺癌、前立腺腺癌、腎癌(例えば、ウィルムス腫瘍2型または1型)、肝臓癌(例えば、胆芽腫、肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)、肝細胞癌(hepatocellular cancer))、膀胱癌、胚性横紋筋肉腫、生殖細胞腫瘍、絨毛性腫瘍、精巣生殖細胞腫瘍、卵巣の未熟奇形腫、子宮、卵巣上皮、仙尾骨腫瘍、絨毛癌、胎盤部トロホブラスト腫瘍、成人上皮性(epithelial adult)腫瘍、卵巣癌腫、漿液性卵巣癌、卵巣性索腫瘍、子宮頸癌、子宮頸部癌腫、小細胞および非小細胞肺癌、鼻咽頭、乳房癌腫(例えば、乳管癌、浸潤性乳管内癌、弧発性乳癌、乳癌に対する感受性、4型乳癌、乳癌−1、乳癌−3、乳房−卵巣癌)、扁平上皮癌(例えば、頭頸部における)、神経原性腫瘍、星状細胞腫、神経節芽腫、神経芽細胞腫、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、T細胞リンパ腫、胸腺リンパ腫)、神経膠腫、腺癌、副腎腫瘍、遺伝性副腎皮質癌腫、脳悪性腫瘍(腫瘍)、種々のその他の癌腫(例えば、気管支原性大細胞、管の、エーリッヒ−レトル(Ehrlich-Lettre)腹水、類表皮、大細胞、ルイス肺、髄様、粘膜表皮、燕麦細胞、小細胞、紡錘細胞、有棘細胞、移行細胞、未分化、癌肉腫、絨毛癌、嚢胞腺癌)、上衣芽細胞腫、上衣腫、赤白血病(例えば、フレンド、リンパ芽球)、線維肉腫、巨細胞腫、グリア腫瘍、神経膠芽腫(例えば、多形、星状細胞腫)、神経膠腫肝細胞腫、ヘテロハイブリドーマ、ヘテロミエローマ、組織芽腫、ハイブリドーマ(例えば、B細胞)、グラヴィッツ腫瘍、インスリノーマ、膵島腫瘍、角化腫、平滑筋芽細胞、平滑筋肉腫、白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性プレB細胞白血病、急性リンパ芽球性T細胞白血病、急性巨核芽球性白血病、単球性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、好酸球増加症を伴う急性骨髄性白血病、B細胞白血病、好塩基球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性B細胞白血病、好酸球性白血病、フレンド白血病、顆粒球性または骨髄球性白血病、ヘアリー細胞白血病、リンパ性白血病、巨核芽球性白血病、単球性白血病、単球性マクロファージ白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄単球性白血病、形質細胞白血病、プレB細胞白血病、前骨髄球性白血病、亜急性白血病、T細胞白血病、リンパ系新生物、骨髄性悪性腫瘍の素因、急性非リンパ性白血病)、リンパ肉腫、黒色腫、乳房腫瘍、マスト細胞腫、髄芽腫、中皮腫、転移性腫瘍、単球腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、腎芽細胞腫、神経組織グリア腫瘍、神経組織ニューロン腫瘍、神経鞘腫、神経芽細胞腫、乏突起神経膠腫、骨軟骨腫、骨骨髄腫(osteomyeloma)、骨肉腫(例えば、ユーイング)、乳頭腫、移行細胞、褐色細胞腫、下垂体腫瘍(浸潤性)、形質細胞腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫(例えば、ユーイング、組織球性細胞、イエンセン、骨原性、網膜細胞)、シュワン腫、皮下腫瘍、奇形癌腫(例えば、多能性)、奇形腫、精巣腫瘍、胸腺腫および毛包上皮腫、胃癌、線維肉腫、多形神経膠芽腫、多発性グロムス腫瘍、リー・フラウメニ症候群、脂肪肉腫、リンチ癌ファミリー症候群II、男性生殖細胞腫瘍、肥満細胞白血病、髄様甲状腺、多発性髄膜腫、内分泌新生物粘液肉腫、傍神経節腫、家族性非クロム親和性、毛母腫、乳頭部、家族性および弧発性、ラブドイド素因症候群、家族性、ラブドイド腫瘍、軟部組織肉腫および神経膠芽腫を伴うターコット症候群を含む任意の固形または非固形癌および/または腫瘍転移が挙げられる。
癌に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、癌は、白血病、リンパ腫、卵巣癌、神経芽細胞腫、前立腺癌および/または肺癌である。本発明のいくつかの実施形態に関連して治療され得る白血病の例として、これらに限定されるものではないが、急性白血病、例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)および急性リンパ性白血病が挙げられる。
本発明のいくつかの実施形態に関連して治療され得るリンパ腫の例として、これらに限定されるものではないが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、多発性骨髄腫および非ホジキンリンパ腫が挙げられる。バーキットリンパ腫は、非ホジキンリンパ腫の限定されない例である。
本発明のいくつかの実施形態に関連して治療され得る肺癌の例として、これらに限定されるものではないが、大細胞肺癌および小細胞肺癌が挙げられる。
癌に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、癌は、CXCR4を発現する細胞によって特徴付けられる。このような実施形態のいくつかでは、癌治療に使用するための化合物は、SDF−1および/またはCXCR4活性の阻害に使用するための、本明細書に記載の化合物のうちのいずれか1種である。
いずれか特定の理論に限定されるものではないが、CXCR4の発現によって特徴付けられる癌では、SDF−1およびCXCR4の活性は、一般に、転移と関連する。したがって、SDF−1および/またはCXCR4活性の阻害剤を用いる治療は、特に有利であるということが考えられる。
癌治療に関する本明細書に記載の実施形態のいずれか1つに関連したいくつかの実施形態では、癌治療は、少なくとも1種のさらなる抗癌剤(すなわち、本明細書において上記で記載される化合物に加えて)の投与をさらに含む。
さらなる抗癌剤は、癌を治療するために医術において使用される任意の薬剤でよい。抗癌剤の例として、これらに限定されるものではないが、アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール(acodazole hydrochloride)、アクロニン、アドリアマイシン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン(ambomycin)、酢酸アメタントロン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルタミド、塩酸ビサントレン、二メシル酸ビスナフィド、ビゼレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カラセミド(caracemide)、カルベチマー(carbetimer)、カルボプラチン、カルムスチン、塩酸カルビシン、カルゼレシン(carzelesin)、セデフィンゴール、クロラムブシル、シロレマイシン、シスプラチン、クラドリビン、コンブレスタチン(combrestatin)A−4リン酸、メシル酸クリスナトール、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デキソルマプラチン、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジクオン、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、ズアゾマイシン、エダトレキサート、塩酸エフロールニチン、エルサミトルシン(elsamitrucin)、エンロプラチン(enloplatin)、エンプロメート(enpromate)、エピプロピジン(epipropidine)、塩酸エピルビシン、エルブロゾール(erbulozole)、塩酸エソルビシン(esorubicin)、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、エトポシドリン酸、エトプリン(etoprine)、塩酸ファドロゾール、ファザラビン(fazarabine)、フェンレチニド、フロクスウリジン、フルダラビンリン酸、フルオロウラシル、フルロシタビン、フォスキドン(fosquidone)、フォストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、塩酸イダルビシン、イホスファミド、イルモフォシン(ilmofosine)、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、インターフェロンアルファ−n1、インターフェロンアルファ−n3、インターフェロンベータ−Ia、インターフェロンガンマ−Ib、イプロプラチン(iproplatin)、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、レトロゾール、酢酸リュープロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、塩酸ロソキサントロン、マソプロコール、マイタンシン、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカププリン、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メトプリン(metoprine)、メツレデパ、ミチンドミド、マイトカルシン(mitocarcin)、ミトクロミン、ミトグリン(mitogillin)、マイトマルシン(mitomalcin)、マイトマイシン、マイトスペル(mitosper)、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オンブラブリン(ombrabulin)、オルマプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペグアスパルガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、硫酸ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、塩酸ピロキサントロン(piroxantrone)、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、ピラゾフリン(pyrazofurin)、リボプリン(riboprine)、ログレチミド、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、セムスチン、シムトラゼン(simtrazene)、スパルフォセート(sparfosate)ナトリウム、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム(spirogermanium)、スピロムスチン、スピロプラチン(spiroplatin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル(sulofenur)、タリソマイシン、テコガラン(tecogalan)ナトリウム、テガフール、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン(tiazofuirin)、チラパザミン、塩酸トポテカン、クエン酸トレミフェン、酢酸トレストロン(trestolone)、トリシリビンリン酸、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、塩酸ツブロゾール(tubulozole)、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド(vapreotide)、ベルテポルフィン、ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、ビンピジニー(vinepidinee)、ビングリシナート(vinglycinate)、ビンレウロシン(vinleurosine)、酒石酸ビノレルビン、ビンロシジン(vinrosidine)、ビンゾリジン(vinzolidine)、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチンおよび塩酸ゾルビシンが挙げられる。さらなる抗癌剤として、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、Chapter 52, Antineoplastic Agents (Paul Calabresi and Bruce A. Chabner)およびその導入、Goodman and Gilman's "The Pharmacological Basis of Therapeutics", Eighth Edition, 1990, McGraw-Hill, Inc. (Health Professions Division)の1202-1263に開示されるものが挙げられる。
本明細書に記載の実施形態のいくつかにおいては、さらなる抗癌剤は、薬剤に対する癌細胞の耐性が、SDF−1および/またはCXCR4および/または本明細書において表2に記載されるキナーゼのうちのいずれか1種の活性と関連しているということを特徴とする。いくつかのこのような実施形態では、さらなる抗癌剤と組み合わせて使用するための化合物は、本明細書に記載の化合物のうちいずれか1種である。
本明細書に記載の実施形態のいくつかにおいては、少なくとも1種のさらなる抗癌剤は、コンブレスタチン(combrestatin)A−4リン酸、オンブラブリン(ombrabulin)および/またはコンブレスタチン(combrestatin)の任意のその他の誘導体を含む。
いずれか特定の理論に限定されるものではないが、コンブレスタチン(combrestatin)A−4リン酸およびオンブラブリン(ombrabulin)などのコンブレスタチン(combrestatin)誘導体の抗治療効果は、SDF−1/CXCR4活性によって低減されると考えられる。
非癌性過剰増殖性疾患:
「非腫瘍性増殖性疾患」および「非癌性増殖性疾患」とも称する非癌性過剰増殖性疾患は、発生または進行が、非悪性細胞増殖と関連する疾患または障害を指す。このような医学的状態の例として、これらに限定されるものではないが、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、乾癬、線維症、特発性肺線維症、強皮症および肝硬変が挙げられる。
炎症性疾患および障害:
炎症性疾患および障害は、一般に、炎症を伴う疾患および障害を包含する。
用語「炎症」とは、本明細書において、物理的傷害、感染または局所免疫応答によって開始される、体液、血漿タンパク質および白血球細胞の局所蓄積を表す一般用語である。炎症は、いくつかの徴候、例えば、発赤、疼痛、熱、膨潤および/または機能の喪失を伴い得る。炎症は、これらに限定されるものではないが、免疫障害と関連する疾患、ウイルスおよび細菌感染、関節炎、自己免疫疾患、膠原病、アレルギー、喘息、花粉症およびアトピーを含む(以下にさらに詳細に記載されるような)多数の疾患および障害の一態様である。
したがって、炎症は、傷害、例えば、皮膚、筋肉、腱または神経への傷害によって引き起こされ得る。炎症は、免疫応答、例えば、病的自己免疫応答の一部として引き起こされ得る。炎症はまた、病原体認識および組織損傷が、感染の部位での炎症反応を開始し得る感染によって引き起こされ得る。
本教示に従う炎症は、慢性(長期)炎症性疾患もしくは障害または急性(短期)炎症性疾患もしくは障害を伴い得る。
特定の実施形態によれば、炎症は、感染性疾患、自己免疫疾患、過敏症関連炎症、移植片拒絶および傷害からなる群から選択される疾病と関連している。
特定の実施形態によれば、炎症は、皮膚炎症を含む。
特定の実施形態によれば、皮膚炎症は、乾癬である。
皮膚の炎症によって特徴付けられる疾患として、これらに限定されるものではないが、皮膚炎、アトピー性皮膚炎(湿疹、アトピー)、接触皮膚炎、ヘルペス状皮膚炎、全身性剥離性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、薬疹、多形性紅斑、結節性紅斑、環状肉芽腫、ツタウルシ、ウルシ、中毒性表皮壊死症、酒さ(roseacae)、乾癬およびざ瘡が挙げられる。炎症はまた、皮膚への物理的傷害に起因し得る。
炎症は、筋肉、腱または神経への種々の種類の傷害によって引き起こされ得る。したがって、例えば、炎症は、身体の一部の反復的な動き、すなわち、反復性緊張外傷(RSI)によって引き起こされ得る。RSIによって引き起こされる炎症によって特徴付けられる疾患として、これらに限定されるものではないが、滑液包炎、手根管症候群、デュピュイトラン拘縮、上顆炎(例えば、テニス肘)、神経節(すなわち、腱鞘において形成された、通常、手首で生じる嚢胞における炎症)、肩回旋筋腱板症候群、腱炎(例えば、アキレス腱の炎症)、腱鞘炎およびばね指(腱膨潤を伴う指または親指の腱鞘の炎症)が挙げられる。
感染性疾患と関連する多数の疾患として、炎症反応があり、炎症反応は、通常、侵入する病原体によって引き起こされる自然免疫系の一部である。炎症はまた、感染に起因する細胞および組織への物理的(機械的)傷害によって引き起こされ得る。感染性疾患の例として、これらに限定されるものではないが、慢性感染性疾患、亜急性感染性疾患、急性感染性疾患、ウイルス性疾患、細菌性疾患、原虫疾患、寄生虫疾患、真菌疾患、マイコプラズマ疾患およびプリオン疾患が挙げられる。1つの具体例によれば、炎症によって特徴付けられる感染症の例として、これらに限定されるものではないが、脳炎、髄膜炎、脳脊髄炎、ウイルス性胃腸炎、ウイルス性肝炎が挙げられる。
さらに、多数の免疫障害として、急性または慢性炎症が挙げられる。例えば、関節炎は、関節の炎症によって特徴付けられる免疫障害と考えられるが、関節炎は、同様に関節組織での免疫発作によって特徴付けられる炎症性障害と考えられる。
本教示に従う炎症は、欠損免疫応答(例えば、HIV、AIDS)と、または過活動免疫応答(例えば、アレルギー、自己免疫障害)と関連し得る。したがって、本教示に従う炎症は、以下のいずれかと関連し得る。
過敏症を伴う炎症性疾患:
過敏症の例として、これらに限定されるものではないが、I型過敏症、II型過敏症、III型過敏症、IV型過敏症、即時型過敏症、抗体媒介性過敏症、免疫複合体媒介性過敏症、Tリンパ球媒介性過敏症およびDTHが挙げられる。
喘息などのI型または即時型過敏症
II型過敏症として、これらに限定されるものではないが、リウマトイド疾患、リウマトイド自己免疫疾患、関節リウマチ(Krenn V. et al., Histol Histopathol 2000 Jul;15 (3):791)、脊椎炎、強直性脊椎炎(Jan Voswinkel et al., Arthritis Res 2001、3 (3): 189)、全身性疾患、全身性自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(Erikson J. et al., Immunol Res 1998;17 (1-2):49)、硬化症、全身性硬化症(Renaudineau Y. et al., Clin Diagn Lab Immunol. 1999 Mar;6 (2):156)、Chan OT. et al., Immunol Rev 1999 Jun;169:107)、腺疾患、腺性自己免疫疾患、膵臓自己免疫疾患、糖尿病、I型糖尿病(Zimmet P. Diabetes Res Clin Pract 1996 Oct;34 Suppl:S125)、甲状腺疾患、自己免疫甲状腺疾患、グレーブス病(Orgiazzi J. Endocrinol Metab Clin North Am 2000 Jun;29 (2):339)、甲状腺炎、特発性自己免疫甲状腺炎(Braley-Mullen H. and Yu S, J Immunol 2000 Dec 15;165 (12):7262)、橋本甲状腺炎(Toyoda N. et al., Nippon Rinsho 1999 Aug;57 (8):1810)、粘液水腫、突発性粘液水腫(Mitsuma T. Nippon Rinsho. 1999 Aug;57 (8):1759)、自己免疫生殖系疾患、卵巣疾患、卵巣自己免疫(Garza KM. et al., J Reprod Immunol 1998 Feb;37 (2):87)、自己免疫抗精子不妊症(Diekman AB. et al., Am J Reprod Immunol. 2000 Mar;43 (3):134)、反復性胎児喪失(Tincani A. et al., Lupus 1998;7 Suppl 2:S107-9)、神経変性性疾患、神経疾患、神経学的自己免疫疾患、多発性硬化症(Cross AH. et al., J Neuroimmunol 2001 Jan 1;112 (1-2):1)、アルツハイマー病(Oron L. et al., J Neural Transm Suppl. 1997;49:77)、重症筋無力症(Infante AJ. And Kraig E, Int Rev Immunol 1999;18 (1-2):83)、運動神経障害(Kornberg AJ. J Clin Neurosci. 2000 May;7 (3):191)、ギランバレー症候群、神経障害および自己免疫神経障害(Kusunoki S. Am J Med Sci. 2000 Apr;319 (4):234)、筋無力症疾患、ランバート・イートン筋無力症症候群(Takamori M. Am J Med Sci. 2000 Apr;319 (4):204)、腫瘍随伴神経疾患、小脳萎縮、腫瘍随伴小脳萎縮、非腫瘍随伴スティフマン症候群、小脳萎縮、進行性小脳萎縮、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シデナム舞踏病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群、多腺性内分泌障害、自己免疫多腺性内分泌障害(Antoine JC. and Honnorat J. Rev Neurol (Paris) 2000 Jan;156 (1):23)、神経障害、異常免疫性神経障害(Nobile-Orazio E. et al., Electroencephalogr Clin Neurophysiol Suppl 1999;50:419)、神経性筋強直症、後天性神経性筋強直症、先天性多発性関節拘縮症(Vincent A. et al., Ann N Y Acad Sci. 1998 May 13;841:482)、心血管疾患、心血管自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症(Matsuura E. et al., Lupus. 1998;7 Suppl 2:S135)、心筋梗塞(Vaarala O. Lupus. 1998;7 Suppl 2:S132)、血栓症(Tincani A. et al., Lupus 1998;7 Suppl 2:S107-9)、肉芽腫症、ウェジナー肉芽腫症、動脈炎、高安動脈炎および川崎症候群(Praprotnik S. et al., Wien Klin Wochenschr 2000 Aug 25;112 (15-16):660)、抗第VIII因子自己免疫疾患(Lacroix-Desmazes S. et al., Semin Thromb Hemost.2000;26 (2):157)、血管炎、壊死性小血管血管炎、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、糸球体腎炎、微量免疫型巣状壊死性糸球体腎炎、半月体形成性糸球体腎炎(Noel LH. Ann Med Interne (Paris). 2000 May;151 (3):178)、抗リン脂質症候群(Flamholz R. et al., J Clin Apheresis 1999;14 (4):171)、心不全、心不全におけるアゴニスト様β-アドレナリン受容体抗体(Wallukat G. et al., Am J Cardiol. 1999 Jun 17;83 (12A):75H)、血小板減少性紫斑病(Moccia F. Ann Ital Med Int. 1999 Apr-Jun;14 (2):114)、溶血性貧血、自己免疫性溶血性貧血(Efremov DG. et al., Leuk Lymphoma 1998 Jan;28 (3-4):285)、胃腸疾患、胃腸管の自己免疫疾患、腸疾患、慢性炎症性腸疾患(Garcia Herola A. et al., Gastroenterol Hepatol. 2000 Jan;23 (1):16)、セリアック病(Landau YE. and Shoenfeld Y. Harefuah 2000 Jan 16;138 (2):122)、筋系の自己免疫疾患、筋炎、自己免疫筋炎、シェーグレン症候群(Feist E. et al., Int Arch Allergy Immunol 2000 Sep;123 (1):92)、平滑筋自己免疫疾患(Zauli D. et al., Biomed Pharmacother 1999 Jun;53 (5-6):234)、肝疾患、肝性自己免疫疾患、自己免疫肝炎(Manns MP. J Hepatol 2000 Aug;33 (2):326)および原発性胆汁性肝硬変(Strassburg CP. et al., Eur J Gastroenterol Hepatol. 1999 Jun;11 (6):595)が挙げられる。
IV型またはT細胞媒介性過敏症として、これらに限定されるものではないが、リウマトイド疾患、関節リウマチ(Tisch R, McDevitt HO. Proc Natl Acad Sci U S A 1994 Jan 18;91 (2):437)、全身性疾患、全身性自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(Datta SK., Lupus 1998;7 (9):591)、腺疾患、腺性自己免疫疾患、膵臓疾患、膵臓自己免疫疾患、1型糖尿病(Castano L. and Eisenbarth GS. Ann. Rev. Immunol. 8:647)、甲状腺疾患、自己免疫甲状腺疾患、グレーブス病(Sakata S. et al., Mol Cell Endocrinol 1993 Mar;92 (1):77)、卵巣疾患(Garza KM. et al., J Reprod Immunol 1998 Feb;37 (2):87)、前立腺炎、自己免疫前立腺炎(Alexander RB. et al., Urology 1997 Dec;50 (6):893)、多腺性症候群、自己免疫多腺性症候群、I型自己免疫多腺性症候群(Hara T. et al., Blood. 1991 Mar 1;77 (5):1127)、神経疾患、自己免疫神経疾患、多発性硬化症、神経炎、視神経炎(Soderstrom M. et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry 1994 May;57 (5):544)、重症筋無力症(Oshima M. et al., Eur J Immunol 1990 Dec;20 (12):2563)、スティフマン症候群(Hiemstra HS. et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2001 Mar 27;98 (7):3988)、心血管疾患、シャーガス病における心臓の自己免疫(Cunha-Neto E. et al., J Clin Invest 1996 Oct 15;98 (8):1709)、自己免疫血小板減少性紫斑病(Semple JW. et al., Blood 1996 May 15;87 (10):4245)、抗ヘルパーTリンパ球自己免疫(Caporossi AP. et al., Viral Immunol 1998;11 (1):9)、溶血性貧血(Sallah S. et al., Ann Hematol 1997 Mar;74 (3):139)、肝疾患、肝臓の自己免疫疾患、肝炎、慢性活動性肝炎(Franco A. et al., Clin Immunol Immunopathol 1990 Mar;54 (3):382)、胆汁性肝硬変、原発性胆汁性肝硬変(Jones DE. Clin Sci (Colch) 1996 Nov、91 (5):551)、腎臓疾患、腎臓の自己免疫疾患、腎炎、間質性腎炎(Kelly CJ. J Am Soc Nephrol 1990 Aug;1 (2):140)、結合組織疾患、耳疾患、自己免疫結合組織疾患、自己免疫耳疾患(Yoo TJ. et al., Cell Immunol 1994 Aug;157 (1):249)、内耳の疾患(Gloddek B. et al., Ann N Y Acad Sci 1997 Dec 29;830:266)、皮膚疾患(skin diseases)、皮膚疾患(cutaneous diseases)、皮膚疾患(dermal diseases)、水泡性皮膚疾患、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡および落葉状天疱瘡が挙げられる。
遅延型過敏症の例として、これらに限定されるものではないが、接触皮膚炎および薬疹が挙げられる。
Tリンパ球媒介性過敏症の種類の例として、これらに限定されるものではないが、ヘルパーTリンパ球および細胞傷害性Tリンパ球が挙げられる。
ヘルパーTリンパ球媒介性過敏症の例として、これらに限定されるものではないが、Th1リンパ球媒介性過敏症およびTh2リンパ球媒介性過敏症が挙げられる。
特定の実施形態によれば、眼の疾患は、加齢性黄斑変性症(AMD)である。
特定の実施形態によれば、加齢性黄斑変性症(AMD)は、萎縮性、非血管新生性である(aAMD)。
特定の実施形態によれば、加齢性黄斑変性症(AMD)は、血管新生性である。
自己免疫疾患:
自己免疫疾患として、これらに限定されるものではないが、心血管疾患、リウマトイド疾患、腺疾患、胃腸疾患、皮膚疾患、肝疾患、神経疾患、筋肉疾患、腎臓疾患、生殖と関連する疾患、結合組織疾患および全身性疾患が挙げられる。
自己免疫心血管疾患の例として、これらに限定されるものではないが、アテローム性動脈硬化症(Matsuura E. et al., Lupus. 1998;7 Suppl 2:S135)、心筋梗塞(Vaarala O. Lupus. 1998;7 Suppl 2:S132)、血栓症(Tincani A. et al., Lupus 1998;7 Suppl 2:S107-9)、ウェジナー肉芽腫症、高安動脈炎、川崎症候群(Praprotnik S. et al., Wien Klin Wochenschr 2000 Aug 25;112 (15-16):660)、抗第VIII因子自己免疫疾患(Lacroix-Desmazes S. et al., Semin Thromb Hemost.2000;26 (2):157)、壊死性小血管血管炎、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、微量免疫型巣状壊死性および半月体形成性糸球体腎炎(Noel LH. Ann Med Interne (Paris). 2000 May;151 (3):178)、抗リン脂質症候群(Flamholz R. et al., J Clin Apheresis 1999;14 (4):171)、抗体誘導性心不全(Wallukat G. et al., Am J Cardiol. 1999 Jun 17;83 (12A):75H)、血小板減少性紫斑病(Moccia F. Ann Ital Med Int. 1999 Apr-Jun;14 (2):114、Semple JW. et al., Blood 1996 May 15;87 (10):4245)、自己免疫性溶血性貧血(Efremov DG. et al., Leuk Lymphoma 1998 Jan;28 (3-4):285、Sallah S. et al., Ann Hematol 1997 Mar;74 (3):139)、シャーガス病における心臓の自己免疫(Cunha-Neto E. et al., J Clin Invest 1996 Oct 15;98 (8):1709)および抗ヘルパーTリンパ球自己免疫(Caporossi AP. et al., Viral Immunol 1998;11 (1):9)が挙げられる。
自己免疫リウマトイド疾患の例として、これらに限定されるものではないが、関節リウマチ(Krenn V. et al., Histol Histopathol 2000 Jul;15 (3):791、Tisch R, McDevitt HO. Proc Natl Acad Sci units S A 1994 Jan 18;91 (2):437)および強直性脊椎炎(Jan Voswinkel et al., Arthritis Res 2001; 3 (3): 189)が挙げられる。
自己免疫腺疾患の例として、これらに限定されるものではないが、膵臓疾患、I型糖尿病、甲状腺疾患、グレーブス病、甲状腺炎、特発性自己免疫甲状腺炎、橋本甲状腺炎、突発性粘液水腫、卵巣の自己免疫、自己免疫抗精子不妊症、自己免疫前立腺炎およびI型自己免疫多腺性症候群が挙げられる。疾患として、これらに限定されるものではないが、膵臓の自己免疫疾患、1型糖尿病(Castano L. and Eisenbarth GS. Ann. Rev. Immunol. 8:647、Zimmet P. Diabetes Res Clin Pract 1996 Oct;34 Suppl:S125)、自己免疫甲状腺疾患、グレーブス病(Orgiazzi J. Endocrinol Metab Clin North Am 2000 Jun;29 (2):339、Sakata S. et al., Mol Cell Endocrinol 1993 Mar;92 (1):77)、特発性自己免疫甲状腺炎(Braley-Mullen H. and Yu S, J Immunol 2000 Dec 15;165 (12):7262)、橋本甲状腺炎(Toyoda N. et al., Nippon Rinsho 1999 Aug;57 (8):1810)、突発性粘液水腫(Mitsuma T. Nippon Rinsho. 1999 Aug;57 (8):1759)、卵巣の自己免疫(Garza KM. et al., J Reprod Immunol 1998 Feb;37 (2):87)、自己免疫抗精子不妊症(Diekman AB. et al., Am J Reprod Immunol. 2000 Mar;43 (3):134)、自己免疫前立腺炎(Alexander RB. et al., Urology 1997 Dec;50 (6):893)およびI型自己免疫多腺性症候群(Hara T. et al., Blood. 1991 Mar 1;77 (5):1127)が挙げられる。
自己免疫胃腸疾患の例として、これらに限定されるものではないが、慢性炎症性腸疾患(Garcia Herola A. et al., Gastroenterol Hepatol. 2000 Jan;23 (1):16)、セリアック病(Landau YE. and Shoenfeld Y. Harefuah 2000 Jan 16;138 (2):122)、大腸炎、回腸炎およびクローン病が挙げられる。
自己免疫皮膚疾患の例として、これらに限定されるものではないが、限定されるものではないが、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡および落葉状天疱瘡などの自己免疫水疱性皮膚疾患が挙げられる。
自己免疫肝疾患の例として、これらに限定されるものではないが、肝炎、自己免疫慢性活動性肝炎(Franco A. et al., Clin Immunol Immunopathol 1990 Mar;54 (3):382)、原発性胆汁性肝硬変(Jones DE. Clin Sci (Colch) 1996 Nov;91 (5):551、Strassburg CP. et al., Eur J Gastroenterol Hepatol. 1999 Jun;11 (6):595)および自己免疫肝炎(Manns MP. J Hepatol 2000 Aug;33 (2):326)が挙げられる。
自己免疫神経疾患の例として、これらに限定されるものではないが、多発性硬化症(Cross AH. et al., J Neuroimmunol 2001 Jan 1;112 (1-2):1)、アルツハイマー病(Oron L. et al., J Neural Transm Suppl. 1997;49:77)、重症筋無力症(Infante AJ. And Kraig E, Int Rev Immunol 1999;18 (1-2):83、Oshima M. et al., Eur J Immunol 1990 Dec;20 (12):2563)、神経障害、運動神経障害(Kornberg AJ. J Clin Neurosci. 2000 May;7 (3):191)、ギランバレー症候群および自己免疫神経障害(Kusunoki S. Am J Med Sci. 2000 Apr;319 (4):234)、筋無力症、ランバート・イートン筋無力症症候群(Takamori M. Am J Med Sci. 2000 Apr;319 (4):204)、腫瘍随伴神経疾患、小脳萎縮、腫瘍随伴小脳萎縮およびスティフマン症候群(Hiemstra HS. et al., Proc Natl Acad Sci units S A 2001 Mar 27;98 (7):3988)、非腫瘍随伴スティフマン症候群、進行性小脳萎縮、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シデナム舞踏病、ジル・ドゥ・ラ・トゥレット症候群および自己免疫多腺性内分泌障害(Antoine JC. and Honnorat J. Rev Neurol (Paris) 2000 Jan;156 (1):23)、異常免疫性神経障害(Nobile-Orazio E. et al., Electroencephalogr Clin Neurophysiol Suppl 1999;50:419)、後天性神経性筋強直症、先天性多発性関節拘縮症(Vincent A. et al., Ann N Y Acad Sci. 1998 May 13;841:482)、神経炎、視神経炎(Soderstrom M. et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry 1994 May;57 (5):544)および神経変性性疾患が挙げられる。
自己免疫筋肉疾患の例として、これらに限定されるものではないが、筋炎、自己免疫筋炎および原発性シェーグレン症候群(Feist E. et al., Int Arch Allergy Immunol 2000 Sep;123 (1):92)および平滑筋の自己免疫疾患(Zauli D. et al., Biomed Pharmacother 1999 Jun;53 (5-6):234)が挙げられる。
自己免疫腎臓疾患の例として、これらに限定されるものではないが、腎炎および自己免疫間質性腎炎(Kelly CJ. J Am Soc Nephrol 1990 Aug;1 (2):140)が挙げられる。
生殖と関連する自己免疫疾患の例として、これらに限定されるものではないが、反復性胎児喪失(Tincani A. et al., Lupus 1998;7 Suppl 2:S107-9)が挙げられる。
自己免疫結合組織疾患の例として、これらに限定されるものではないが、耳の疾患、自己免疫耳疾患(Yoo TJ. et al., Cell Immunol 1994 Aug;157 (1):249)および内耳の自己免疫疾患(Gloddek B. et al., Ann N Y Acad Sci 1997 Dec 29;830:266)が挙げられる。
免疫系疾患の例として、これらに限定されるものではないが、全身性エリテマトーデス(Erikson J. et al., Immunol Res 1998;17 (1-2):49)および全身性硬化症(Renaudineau Y. et al., Clin Diagn Lab Immunol. 1999 Mar;6 (2):156);Chan OT. et al., Immunol Rev 1999 Jun;169:107)が挙げられる。
1つの実施形態によれば、自己免疫疾患は、クローン病、乾癬、強皮症または関節リウマチである。
移植片拒絶疾患:
移植片の移植と関連する疾患の例として、これらに限定されるものではないが、移植片拒絶、慢性移植片拒絶、亜急性移植片拒絶、超急性移植片拒絶、急性移植片拒絶および移植片対宿主病が挙げられる。
アレルギー性疾患:
アレルギー性疾患の例として、これらに限定されるものではないが、喘息、じんま疹(hives)、じんま疹(urticaria)、花粉アレルギー、粉塵ダニアレルギー、毒液アレルギー、化粧品アレルギー、ラテックスアレルギー、化学物質アレルギー、薬物アレルギー、虫刺されアレルギー、動物鱗屑アレルギー、棘植物アレルギー、ツタウルシアレルギーおよび食物アレルギーが挙げられる。
医薬組成物:
本明細書に記載の実施形態のいずれかの態様に関連して記載された化合物は、それ自体で、または化合物に適した担体もしくは賦形剤と混合した医薬組成物として、利用する(例えば、患者に投与する)ことができる。
本明細書において、「医薬組成物」とは、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従うものまたは化合物の、生理学的に適した担体および賦形剤などのその他の化学成分との製剤を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
以下、本明細書において同義的に使用され得る語句「生理学的に許容される担体」および「薬学的に許容される担体」とは、生物に対して重大な刺激作用を引き起こさず、投与する化合物の生物活性および特性を抑制しない、担体または希釈剤を指す。アジュバントは、これらの語句の下に含まれる。
本明細書において用語「賦形剤」とは、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加する不活性物質を指す。賦形剤の、限定的ではない例として、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖およびデンプンの種類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
それ自体で、または薬学的に許容される組成物として利用する場合に、化合物それ自体(すなわち、本明細書に記載の、化合物と同時製剤化された担体または賦形剤の重量を含まないもの)は、任意選択で、少なくとも純度80%(乾重)、任意選択で、少なくとも純度90%(乾重)、少なくとも95%純粋(乾重)、少なくとも98%純粋(乾重)、任意選択で、少なくとも純度99%(乾重)である。純度は、例えば、当技術分野で公知の任意の適した技術によって、天然供給源からの化合物の合成または化合物の単離と関連する不純物を除去することによって高めることができる。本明細書において例示されるように、本明細書に記載の化合物(例えば、BKT300)の不純物は、化合物の生物学的効果を弱め得る。
薬物の製剤化および投与の技術は、参照により本明細書に組み込まれる、"Remington's Pharmaceutical Sciences," Mack Publishing Co., Easton, PA、最新版中に見い出すことができる。
適した投与経路として、例えば、経口、直腸、経粘膜、特に経鼻、腸管または筋肉内、皮下および髄様内注射を含む非経口送達ならびにくも膜下腔内、直接脳室内、心臓内、例えば、右または左心室腔への、総頸動脈への、静脈内、腹腔内、鼻腔内または眼球内注射を挙げることができる。
あるいは、全身よりも局所で、例えば、患者の組織領域への医薬組成物の注射によって医薬組成物を投与してもよい。
用語「組織」とは、機能(単数または複数)を実施するように設計された細胞からなる生物の一部を指す。例として、これらに限定されるものではないが、脳組織、網膜、皮膚組織、肝臓組織、膵臓組織、乳房組織、骨、軟骨、結合組織、血液組織、筋肉組織、心臓組織脳組織、血管組織、腎組織、肺組織、生殖腺組織、造血組織が挙げられる。
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物は、当技術分野で周知のプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、すりつぶす、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥プロセスによって製造され得る。
したがって、本発明のいくつかの実施形態に従って使用するための医薬組成物は、賦形剤および補助剤を含む1種または複数の生理学的に許容される担体を使用して従来方法で処方することができる。当該担体は、有効成分の薬学的に許容される製剤への加工を容易にする。適切な処方は、選択された投与経路に応じて変わる。
注射のために、医薬組成物の有効成分は、水溶液中で、好ましくは、ハンクス溶液、リンゲル液または生理学的塩バッファーなどの生理学的に適合するバッファー中で処方化され得る。経粘膜投与のために、透過されるべきバリアに適切な浸透剤が処方化において使用される。このような浸透剤は、一般に、当技術分野で公知である。
経口投与のために、医薬組成物は、活性化合物を、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に処方化され得る。このような担体は、患者による経口摂取のために、医薬組成物が、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方化されることを可能にする。経口使用のための薬理学的製剤は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、必要に応じて適した補助剤を添加した後に、固体賦形剤を使用して、任意選択で、得られた混合物を粉砕し、混合物を顆粒に加工して作製され得る。適した賦形剤として、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖類、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、イネデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース製剤および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーなどの増量剤がある。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤が添加され得る。
糖衣錠コアに適したコーティングを提供する。この目的のために、任意選択で、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および適した有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る濃縮糖溶液が使用され得る。同定のために、活性化合物用量の異なる組合せを特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに色素または顔料が添加され得る。
経口的に使用され得る医薬組成物として、ゼラチンから製造されたプッシュフィットカプセル剤ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤から製造されたソフト密閉カプセル剤が挙げられる。プッシュフィットカプセル剤は、ラクトースなどの増量剤、デンプンなどの結合剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤および任意選択で、安定化剤との混合物中に有効成分を含有し得る。ソフトカプセル剤中で、有効成分は、脂肪オイル、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの適した液体中に溶解または懸濁され得る。さらに、安定化剤が添加され得る。経口投与用のすべての処方は、選択された投与経路に適した投与量でなくてはならない。
頬側投与のために、組成物は、従来法で処方化された錠剤またはトローチ剤の形態をとり得る。
鼻腔吸入による投与のために、本発明のいくつかの実施形態に従って使用するための有効成分は、適した噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ−テトラフルオロエタンまたは二酸化炭素を用いて加圧パックまたは噴霧器からエアゾールスプレー製剤の形態で送達されることが好都合である。加圧エアロゾルの場合には、投与量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。ディスペンサーにおいて使用するための、活性化合物およびラクトースまたはデンプンなどの適した粉末基剤の粉末混合物を含有する、例えばゼラチンのカプセル剤およびカートリッジ剤が処方化され得る。
本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために処方化され得る。注射用処方は、単位投与形で、例えば、アンプルでまたは任意選択で、防腐剤が添加された複数用量容器で提示され得る。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液またはエマルジョンであり得、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの処方用薬剤を含有し得る。
非経口投与のための医薬組成物は、水溶性形態の活性製剤の水溶液を含む。さらに、有効成分の懸濁液は、適当な油性または水ベースの注射懸濁液として調製され得る。適した親油性溶媒または媒体として、ゴマ油などの脂肪オイルまたはオレイン酸エチル、トリグリセリドまたはリポソームなどの合成脂肪酸エステルが挙げられる。水性注射用懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁液の粘度を増大する作用物質を含有し得る。任意選択で、懸濁液はまた、適した安定化剤または高度に濃縮された溶液の製剤を可能にするために有効成分の溶解度を増大する薬剤を含有し得る。
あるいは、有効成分は、使用前に、適した媒体、例えば、滅菌パイロジェンフリー水ベースの溶液を用いて構成するための粉末形態であり得る。
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物はまた、例えば、ココアバターまたはその他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用して坐剤または保留浣腸などの直腸組成物に処方化され得る。
本発明のいくつかの実施形態に関連して使用するのに適した医薬組成物として、有効成分が、意図される目的を達成するのに有効な量で含有される組成物が挙げられる。より具体的には、治療上有効な量とは、治療されている対象の障害(例えば、癌または転移性癌)の症状を防ぐ、軽減するもしくは寛解させる、またはその生存を延長するのに有効な有効成分(単数または複数)の量を意味する。
治療上有効な量の決定は、特に、本明細書において提供される詳細な開示内容を考慮して、十分に当業者の能力の範囲内である。
本発明の方法において使用される任意の製剤について、治療上有効な量または用量は、in vitroおよび細胞培養アッセイから最初に推定され得る。例えば、用量は、所望の濃度または力価を達成するように動物モデルにおいて処方され得る。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。
本明細書に記載の有効成分の毒性および治療効力は、in vitroで、細胞培養物または実験動物において標準医薬手順によって決定され得る。これらのin vitroおよび細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて使用するための投与量の範囲の処方において使用され得る。投与量は、使用される投与形および利用される投与経路に応じて変わり得る。正確な処方、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る(例えば、Fingl et al. (1975), in "The Pharmacological Basis of Therapeutics", Ch. 1 p.1を参照)。
投与量および投与間隔は、有効成分のタンパク質(例えば、MCP−1、SDF−1および/またはCXCR4)阻害レベルが、生物学的効果を誘導または抑制するのに十分な量(最小有効濃度、MEC)となるように、個別に調整することができる。MECは、各製剤によって変化するが、in vitroデータ、例えば、本明細書に記載のケモカイン誘導性(例えば、MCP−1−および/またはSDF−1−誘導性)遊走阻害アッセイの結果に基づいて、推定することができる。MECを達成するのに必要な投与量は、個々の特徴および投与経路に応じて変化する。血漿中濃度を調べるために、検出アッセイが使用され得る。
本明細書に記載の実施形態のいくつかにおいては、化合物の有効量は、100μM未満である。いくつかの実施形態では、有効量は、10μM未満である。いくつかの実施形態では、有効量は、5μM未満である。いくつかの実施形態では、有効量は、2.5μM未満である。
本明細書に記載の実施形態のいくつかにおいては、有効量は、阻害することを意図するケモカイン(例えば、MCP−1および/またはSDF−1)に対する化合物のIC50の少なくとも100%である。いくつかの実施形態では、有効量は、ケモカインに対する化合物のIC50の少なくとも200%である。いくつかの実施形態では、有効量は、ケモカインに対する化合物のIC50の少なくとも300%である。いくつかの実施形態では、有効量は、ケモカインに対する化合物のIC50の少なくとも500%である。いくつかの実施形態では、有効量は、ケモカインに対する化合物のIC50の少なくとも1000%である。
本明細書に記載の実施形態のいくつかにおいては、有効量は、阻害されるべき癌細胞の細胞死の誘導に対する化合物のIC50の少なくとも100%である。いくつかの実施形態では、有効量は、癌細胞に対する化合物のIC50の少なくとも200%である。いくつかの実施形態では、有効量は、癌細胞に対する化合物のIC50の少なくとも300%である。
治療されるべき状態の重症度および応答性に応じて、投与量は、数日から数週間持続する治療の過程で、または治癒が達成されるもしくは疾患状態の消失が達成されるまでに、単回または複数回投与のものであり得る。
投与する組成物の量は、当然ながら、治療される対象、苦痛の重症度、投与方式、担当医師の判断などに依存するものである。
本発明の組成物は、必要に応じて、FDA(米国食品医薬品局)により承認されたキット等のパックまたはディスペンサーデバイスに入れて提供してもよく、このようなパックまたはデバイスは、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有してもよい。パックは、例えば、金属またはプラスチックホイルを含む。パックまたはディスペンサーデバイスは、投与のための説明書が添付されていてもよい。パックまたはディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定された形態で容器に付随する通知が添付されていてもよく、この通知は、組成物の形態がヒトまたは動物への投与用として当該機関により承認されていることを反映するものである。このような通知は、例えば、処方薬に関して米国食品医薬品局により承認されたラベルの形態であってもよいし、または承認された製品の差し込み物の形態であってもよい。また、本発明の製剤を含み、適合可能な医薬用担体中に処方化された組成物を調製し、適切な容器中に入れて、上記で詳述したように、表示した病態の治療または診断用であることを標識してもよい。
本明細書に記載の化合物は、単独で、または医学的状態を軽減するために当技術分野で周知であるその他の有効成分と組み合わせて、提供され得るということを理解されたい。
したがって、例えば、化合物は、免疫調節物質とともに、同時処方または別個の処方のいずれかで一緒に投与され得る。
特定の実施形態によれば、癌(およびその他の過剰増殖性傷害)の治療は、抗癌免疫調節作用物質と組み合わせて達成される。
本明細書において、用語「抗癌免疫調節作用物質」とは、癌性細胞に対する免疫応答(例えばT細胞、NK細胞)を誘発することが可能である作用物質を指す。
特定の実施形態によれば、作用物質は、癌抗原、癌ワクチン、抗癌抗体、T細胞の活性化および/または増殖を誘導することが可能なサイトカインおよび免疫チェックポイント制御物質からなる群から選択される。
上記に代えて、または上記に加えて、このような調節物質は、癌の治療において特定の価値を有する免疫チェックポイント制御物質などの免疫刺激物質であり得る。
本明細書において、用語「免疫チェックポイント制御物質」とは、アゴニスト様にまたはアンタゴニスト様に、1種または複数の免疫チェックポイントタンパク質の活性を調節して、免疫細胞の活性化をもたらす分子を指す。
本明細書において、用語「免疫チェックポイントタンパク質」とは、免疫細胞の活性化または機能調節を行うタンパク質を指す。免疫チェックポイントタンパク質は、同時刺激タンパク質(すなわち、刺激シグナルの伝達が、免疫細胞の活性化をもたらすもの)または阻害性タンパク質(すなわち、阻害性シグナルの伝達が、免疫細胞の活性化の抑制をもたらすもの)のいずれかであり得る。特定の実施形態によれば、免疫チェックポイントタンパク質は、T細胞の活性化または機能を調節する。多数のチェックポイントタンパク質が、当技術分野で公知であり、これらに限定されるものではないが、PD1、PDL−1、B7H2、B7H4、CTLA−4、CD80、CD86、LAG−3、TIM−3、KIR、IDO、CD19、OX40、4−1BB(CD137)、CD27、CD70、CD40、GITR、CD28およびICOS(CD278)が挙げられる。
特定の実施形態によれば、免疫チェックポイント制御物質は、抗CTLA4、抗PD−1およびCD40アゴニストからなる群から選択される。
特定の実施形態によれば、免疫チェックポイント制御物質は、抗CTLA4、抗PD−1、抗PDL−1、CD40アゴニスト、4−1BBアゴニスト、GITRアゴニストおよびOX40アゴニストからなる群から選択される。
CTLA4は、ヘルパーT細胞の表面上に発現され、リガンド結合の際にT細胞に阻害性シグナルを伝達する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。本明細書において、用語「抗CTLA4」とは、CTLA4(CD152)と結合し、その抑制活性を抑制するアンタゴニスト分子を指す。したがって、抗CTLA4は、阻害性シグナルの伝達を防ぎ、それによって、共刺激分子として作用する。特定の実施形態によれば、抗CDLA4分子は、抗体である。
PD−1(Programmed Death 1)は、活性化されたT細胞、B細胞およびマクロファージの表面に発現されるT細胞制御因子の拡張されたCD28/CTLA−4ファミリーのメンバーであり、リガンド結合の際に阻害性シグナルを伝達する。本明細書において、用語「抗PD1」とは、PD−1と結合し、その抑制活性を抑制するアンタゴニスト分子を指す。したがって、抗PD−1は、阻害性シグナルの伝達を防ぎ、それによって、共刺激分子として作用する。特定の実施形態によれば、抗PD1分子は、抗体である。多数の抗PD−1抗体が、当技術分野で公知である。例えば、Topalian, et al. NEJM 2012を参照されたい。
PDL−1は、PD−1のリガンドである。PDL−1のその受容体PD−1との結合は、PD−1を発現する細胞に阻害性シグナルを伝達する。本明細書において、用語「抗PDL−1」とは、PD−1と結合すること、またはPD−LlがPD−1と結合することおよび/もしくはPD−1を活性化することを阻害することによって、PD−1シグナル伝達を阻害するアンタゴニスト分子を指す。したがって、抗PD−1は、阻害性シグナルの伝達を防ぎ、それによって共刺激分子として作用する。特定の実施形態によれば、抗PD−Llは、抗PD−Ll抗体である。多数の抗PDL−1抗体は、当技術分野で公知である。例えば、Brahmer, et al. NEJM 2012を参照されたい。
CD40(CD154)は、抗原提示細胞上に見られる共刺激受容体であり、リガンド結合の際に活性化シグナルを伝達する。本明細書において、用語「CD40アゴニスト」とは、CD40(CD154)と結合し、それによって、抗原提示細胞の活性化を誘導するアゴニスト分子を指す。
OX40は、TNF受容体スーパーファミリーに属し、CD4+およびCD8+T細胞の増幅をもたらす。本明細書において、用語「OX40アゴニスト」とは、OX40と結合しそれを活性化するアゴニスト分子を指す。
GITR(グルココルチコイド誘導性腫瘍壊死因子受容体)は、制御性T細胞の抑制活性の阻害およびT−エフェクター細胞の生存の延長に関与していることが判明した表面受容体分子である。本明細書において、用語「GITRアゴニスト」とは、GITRと結合し、活性化するアゴニスト分子を指す。特定の実施形態によれば、GITRアゴニストは、抗体である。
本明細書に記載の別の態様によれば、本明細書に記載の状態の治療(例えば、癌の治療または腫瘍転移の予防または非癌性増殖性疾患もしくは障害の治療または炎症の治療)のためのキットが提供され、キットは、本明細書に記載の化合物をパッケージングするパッケージング材料を含む。
いくつかの実施形態では、化合物は、本明細書に記載の、状態の発生または進行と関連するSDF−1および/またはCXCR4活性の阻害剤として同定される。
いくつかの実施形態では、化合物は、本明細書に記載の病態の発生または進行と関連するキナーゼ活性の阻害剤として同定される。
いくつかの実施形態では、化合物は、本明細書に記載の病態と関連する細胞のアポトーシスおよび/または細胞成長停止を誘導するものとして同定される。
定義:
本明細書で使用する「治療する」とは、病態の進行の抑止、実質的な阻害、遅延、若しくは逆転、状態の臨床的若しくは審美的症状の実質的な寛解、または病態の臨床的若しくは審美的症状の悪化の実質的な予防を含む。例えば、転移および/または血管新生の防止という観点からは、「防止」とは、転移および/または血管新生のプロセス、またはそれらの進行およびその後の転移および/または血管新生を阻止、停止または阻害することを指す。
本明細書において、用語「患者」とは、哺乳類(ヒト等)、例えば、本明細書に記載の病態(癌等)を有すると診断されたものを指す。
用語「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(include)」「含んでいる(including)」、「有している(having)」およびそれらの活用形は、「含むが、限定されない」ことを意味する。
用語「からなる」は、「含み、限定される」ことを意味する。
用語「から本質的になる」は、組成物、方法または構造が追加の成分、工程および/または部分を含み得ると定義する。しかし、追加の成分、工程および/または部分は、特許請求される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特性を実質的に変更しない場合に限られる。
本明細書で使用する単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他を指示しない限り、複数を対象とする。例えば、「化合物(a compound)」または「少なくとも1種の化合物」には、複数の化合物が含まれ、それらの混合物をも含み得る。
本願全体を通して、本発明のさまざまな実施形態は、範囲形式にて示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性および簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限でではないことを理解されたい。従って、範囲の記載は、可能な下位の範囲の全部、およびその範囲内の個々の数値を特異的に開示していると考えるべきである。例えば、1〜6等の範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6等の部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5および6も特異的に開示するものとする。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。
本明細書に数値範囲が示される場合、それは常に示される範囲内の任意の引用数(分数または整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数「との間の範囲」という表現と、第1の指示数「から」第2の指示数「の範囲」という表現は、本明細書で代替可能に使用され、第1の指示数および第2の指示数と、それらの間の分数および整数の全部を含むことを意図する。
本明細書で使用する「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学および医療の各分野の従事者に既知のもの、または既知の様式、手段、技術および手順から従事者が容易に開発できるものが含まれるが、これらに限定されない。
本明細書を通じて、語句「連結基」とは、化合物中の別の部分と、その2個以上の原子を介して結合される基(置換基)を示す。連結基と、化合物中の別の部分と1個の原子を介して結合される置換基とを区別するために、後者は、本明細書を通じて、「末端基」と称する。
本明細書で使用する用語「アミン」は、−NR’R”基および−NR’−基の両方を示し、R’およびR”は以下に定義されるように、それぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリールである。
従って、アミン基は、R’およびR”の両方が水素である第1級アミン、R’が水素であり、R”がアルキル、シクロアルキル若しくはアリールである第2級アミン、またはR’およびRのそれぞれが独立してアルキル、シクロアルキル若しくはアリールである第3級アミンであり得る。
あるいは、R’およびR”は、それぞれ独立して、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環式アミン、ハロゲン化物、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、C−カルボキシレート、O−カルボキシレート、N−チオカルバメート、O−チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N−カルバメート、O−カルバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジンおよびヒドラジンであってもよい。
用語「アミン」は、アミンが末端基の場合または末端基の一部を構成する場合、−NR’R”基を示すものとして本明細書で使用し、アミンが結合基の場合、−NR’−基を示すものとして本明細書で使用する。
用語「アルキル」は、直鎖および分岐鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素を示す。アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有することが好ましい。本明細書で数値範囲、例えば「1〜20」が述べられる場合、この範囲は置換基、この場合アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、20個迄の炭素原子を含みうることを意味する。いくつかの実施形態においてアルキルは、炭素原子数が1〜10の中間サイズのアルキルである。特に示さない限り、アルキルは、炭素原子数が1〜4の低級アルキルである。いくつかの実施形態では、アルキルは、少なくとも4個の炭素原子を有する、例えば、アルキルは、4〜12個または4〜10個または4〜8個の炭素原子を有している。アルキル基は、置換されていても、非置換であってもよい。置換アルキルは、1つまたは複数の置換基を有し、ここで各置換基は、それぞれ独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環基、アミン、ハロゲン化物、スルフィネート、スルフェート、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、オキソ、カルボニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C−カルボキシレート、O−カルボキシレート、N−チオカルバメート、O−チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N−カルバメート、O−カルバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジンおよびヒドラジンであり得る。
アルキル基は、末端基であってもよく、その場合は上記で定義したように、隣接する1つの原子に結合し、または結合基であってもよく、その場合は上記で定義したように、鎖中の少なくとも2つの炭素を介して2つ以上の部分と結合している。アルキルが連結基である場合、本明細書においては用語「アルキレン」、例えば、メチレン、エチレン、プロピレンなどとも称する。
用語「アルケニル」は、本明細書において定義されるように、炭素原子の少なくとも1つの対が、二重結合によって互いに連結されているアルキルを示す。
用語「アルキニル」または「アルキン」とは、本明細書において定義されるように、少なくとも1対の炭素原子が、三重結合によって互いに連結されているアルキルを示す。
用語「シクロアルキル」は、炭素のみからなる単環基または縮合環基(即ち、隣接する炭素原子対を共有する環)であって、環のうちの1つ以上が、完全に共役したπ電子系を有さないものを示す。シクロアルキル基は、置換されたものでも、非置換のものでもよい。置換シクロアルキルは、1つまたは複数の置換基を有し、ここで各置換基は、それぞれ独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環基、アミン、ハロゲン化物、スルフィネート、スルフェート、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、オキソ、カルボニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C−カルボキシレート、O−カルボキシレート、N−チオカルバメート、O−チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N−カルバメート、O−カルバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジンおよびヒドラジンであり得る。シクロアルキル基は、末端基であってもよく、その場合は上記で定義したように、隣接する1つの原子に結合し、または結合基であってもよく、その場合は上記で定義したように、2つ以上の位置で2つ以上の部分に結合する。
用語「複素脂環基」は、(1つまたは複数の)環内に1種以上の原子、例えば窒素、酸素および硫黄等、を有する単環基または縮合環基を示す。環は、1つ以上の二重結合も有し得る。しかしながら、環は、完全に共役したπ電子系を有さない。複素脂環基は、置換されたものでも、非置換のものでもよい。置換複素脂環基は、1つまたは複数の置換基を有し、ここで各置換基は、独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環基、アミン、ハロゲン化物、スルフィネート、スルフェート、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、オキソ、カルボニル、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C−カルボキシレート、O−カルボキシレート、N−チオカルバメート、O−チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバメート、N−カルバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジンおよびヒドラジンであり得る。複素脂環基は、末端基であってもよく、その場合は上記で定義したように、隣接する1つの原子に結合し、または結合基であってもよく、その場合は上記で定義したように、2つ以上の位置で2つ以上の部分に結合する。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノ等である。
用語「アリール」は、炭素のみからなる単環基または縮合多環基(即ち、隣接する炭素原子対を共有する環)を示す。アリール基は、置換されたものでも、非置換のものでもよい。置換アリールは、1つまたは複数の置換基を有し、ここで各置換基は、独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環基、アミン、ハロゲン化物、スルフィネート、スルフェート、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C−カルボキシレート、O−カルボキシレート、N−チオカルバメート、O−チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N−カルバメート、O−カルバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジンおよびヒドラジンであり得る。アリール基は、末端基であってもよく、その場合は上記で定義したように、隣接する1つの原子に結合し、または結合基であってもよく、その場合は上記で定義したように、2つ以上の位置で2つ以上の部分に結合する。好ましくは、アリールは、フェニルである。任意選択で、アリールは、ナフタレニルである。
用語「ヘテロアリール」は、(1つまたは複数の)環内に1種以上の原子、例えば窒素、酸素および硫黄等、を有し、更に完全に共役したπ電子系を有する単環基または縮合環基(即ち、隣接する炭素原子対を共有する環)を示す。ヘテロアリール基の例としては、これらに限定されるものではないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、テトラジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが挙げられる。ヘテロアリール基は、置換されていても、非置換であってもよい。置換ヘテロアリールは1つまたは複数の置換基を有し、ここで各置換基は、独立に、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環基、アミン、ハロゲン化物、スルフィネート、スルフェート、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C−カルボキシレート、O−カルボキシレート、N−チオカルバメート、O−チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O−カルバメート、N−カルバメート、C−アミド、N−アミド、グアニル、グアニジンおよびヒドラジンであり得る。ヘテロアリール基は、末端基であってもよく、その場合は上記で定義したように、隣接する1つの原子に結合し、または結合基であってもよく、その場合は上記で定義したように、2つ以上の位置で2つ以上の部分に結合する。
用語「アルカリル」は、1つまたは複数のアリールまたはヘテロアリール基によって置換された、本明細書において定義されるようなアルキルを示す。アルカリルの一例はベンジルである。
用語「ハロゲン化物」および「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を示す。
用語「ハロアルキル」は、1種以上のハロゲン化物で置換した、上記に定義したアルキル基を示す。
用語「スルフェート」は、上記で定義したような−O−S(=O)2−OR’末端基、または上記で定義したような−O−S(=O)2−O−結合基を示し、R’は、上記に定義した通りである。
「チオスルフェート」は、上記で定義したような−O−S(=S)(=O)−OR’末端基または−O−S(=S)(=O)−O−結合基を示し、R’は、上記に定義した通りである。
用語「スルファイト」は、上記で定義したような−O−S(=O)−O−R’末端基または−O−S(=O)−O−基結合基を示し、R’は、上記に定義した通りである。
用語「チオスルファイト」は、上記で定義したような−O−S(=S)−O−R’末端基または−O−S(=S)−O−基結合基を示し、R’は、上記に定義した通りである。
用語「スルフィネート」または「スルフィニル」は、上記で定義したような−S(=O)−OR’末端基または−S(=O)−O−基結合基を示し、R’は、上記に定義した通りである。
用語「スルホキシド」は、上記で定義したような−S(=O)R’末端基または−S(=O)−結合基を示し、R’は、上記に定義した通りである。
用語「スルホネート」または「スルホニル」は、上記で定義したような−S(=O)2−OR’末端基(本明細書において、−SO3R’または−SO3Hとも称する)または−OS(=O)2−結合基を示し、R’は、本明細書に定義した通りである。
用語「S−スルホンアミド」は、上記で定義したような−S(=O)2−NR’R”末端基または−S(=O)2−NR’−結合基を示し、R’およびR”は、本明細書に定義した通りである。
用語「N−スルホンアミド」は、上記で定義したようなR’S(=O)2−NR”−末端基または−S(=O)2−NR’−結合基を示し、R’およびR”は、本明細書に定義した通りである。
用語「ジスルフィド」は、上記で定義したような−S−SR’末端基または−S−S−結合基を指し、R’は、本明細書に定義した通りである。
用語「ホスホネート」は、上記で定義したような−P(=O)(OR’)(OR’’)末端基または−P(=O)(OR’)(O)−連結基を示し、R’およびR’’は、本明細書において定義されるとおりである。
用語「チオホスホネート」は、上記で定義したような−P(=S)(OR’)(OR’’)末端基または−P(=S)(OR’)(O)−連結基を示し、R’およびR’’は、本明細書において定義されるとおりである。
用語「カルボニル」または「カーボネート」は、本明細書で使用する場合、上記で定義したような−C(=O)−R’末端基または−C(=O)−結合基を示し、R’は、本明細書に定義した通りである。
用語「チオカルボニル」は、本明細書で使用する場合、上記で定義したような−C(=S)−R’末端基または−C(=S)−結合基を示し、R’は、本明細書に定義した通りである。
用語「オキソ」は、本明細書において、=O末端基を示すものとした。
用語「チオオキソ」は、本明細書において、=S末端基を示すものとした。
用語「オキシム」は、上記で定義したような=N−OH末端基または=N−O−結合基を示す。
用語「ヒドロキシル」は、−OH基を示す。
用語「アルコキシ」は、本明細書に定義した−O−アルキルおよび−O−シクロアルキル基の両方を示す。
用語「アリールオキシ」は、本明細書に定義した−O−アリールおよび−O−ヘテロアリール基の両方を示す。
用語「チオヒドロキシ」は、−SH基を示す。
用語「チオアルコキシ」は、本明細書に定義した−S−アルキル基、および−S−シクロアルキル基の両方を示す。
用語「チオアリールオキシ」は、本明細書に定義した−S−アリールおよび−S−ヘテロアリール基の両方を示す。
用語「シアノ」は、−C≡N基を示す。
用語「イソシアネート」は、−N=C=O基を示す。
用語「ニトロ」は、−NO2基を示す。
用語「カルボキシレート」は、本明細書において、C−カルボキシレートおよびO−カルボキシレートを包含する。
用語「C−カルボキシレート」は、上記で定義したC(=O)−OR’末端基または−C(=O)−O−結合基を示し、R’は、本明細書に定義した通りである。
用語「O−カルボキシレート」は、上記で定義したOC(=O)R’末端基または−OC(=O)−結合基を示し、R’は、本明細書に定義した通りである。
用語「チオカルボキシレート」は、本明細書において、「C−チオカルボキシレートおよびO−チオカルボキシレートを包含する。
用語「C−チオカルボキシレート」は、上記で定義したC(=S)−OR’末端基または−C(=S)−O−結合基を示し、Rは、本明細書に定義した通りである。
用語「O−チオカルボキシレート」は、上記で定義したOC(=S)R’末端基または−OC(=S)−結合基を示し、R’は、本明細書に定義した通りである。
用語「カルバメート」は、本明細書において、N−カルバメートおよびO−カルバメートを包含する。
用語「N−カルバメート」は、上記で定義したR”OC(=O)−NR’−末端基または−OC(=O)−NR’−結合基を示し、R’およびR”は、本明細書に定義した通りである。
用語「O−カルバメート」は、上記で定義したOC(=O)−NR’R”末端基または−OC(=O)−NR’−結合基を示し、R’およびR”は、本明細書に定義した通りである。
用語「チオカルバメート」は、本明細書において、N−チオカルバメートおよびO−チオカルバメートを包含する。
用語「O−チオカルバメート」は、上記で定義したOC(=S)−NR’R”末端基または−OC(=S)−NR’−結合基を示し、R’およびR”は、本明細書に定義した通りである。
用語「N−チオカルバメート」は、上記で定義したR”OC(=S)NR’−末端基または−OC(=S)NR’−結合基を示し、R’およびR”は、本明細書に定義した通りである。
用語「ジチオカルバメート」は、本明細書において、N−ジチオカルバメートおよびS−ジチオカルバメートを包含する。
用語「S−ジチオカルバメート」は、上記で定義したSC(=S)−NR’R”末端基または−SC(=S)NR’−結合基を示し、R’およびR”は、本明細書に定義した通りである。
用語「N−ジチオカルバメート」は、上記で定義したR”SC(=S)NR’−末端基または−SC(=S)NR’−結合基を示し、R’およびR”は、本明細書に定義した通りである。
用語「尿素」は、本明細書で「ウレイド」とも称され、上記で定義したNR’C(=O)−NR”R”’末端基または−NR’C(=O)−NR”−結合基を示し、R’およびR”は、本明細書に定義した通りであり、R”’は、R’およびR”に関して本明細書に定義した通りである。
用語「チオ尿素」は、本明細書で「チオウレイド」とも称され、−NR’−C(=S)−NR”R”’末端基または−NR’−C(=S)−NR”−結合基を示し、R’、R”およびR”’は、本明細書に定義した通りである。
用語「アミド」は、本明細書において、C−アミドおよびN−アミドを包含する。
用語「C−アミド」は、上記で定義したC(=O)−NR’R”末端基または−C(=O)−NR’−結合基を示し、R’およびR”は、本明細書に定義した通りである。
用語「N−アミド」は、上記で定義したR’C(=O)−NR”−末端基またはR’C(=O)−N−結合基を示し、R’およびR”は、本明細書に定義した通りである。
用語「グアニル」は、上記で定義したR’R”NC(=N)−末端基または−R’NC(=N)−結合基を示し、R’およびR”は、本明細書に定義した通りである。
用語「グアニジン」は、上記で定義したR’NC(=N)−NR”R”’末端基または−R’NC(=N)−NR”−結合基を示し、R’、R”およびR”’は、本明細書に定義した通りである。
用語「ヒドラジン」は、上記で定義したNR’−NR”R”’末端基または−NR’−NR”−結合基を示し、R’、R”、およびR”’は、本明細書に定義した通りである。
本明細書で使用するように、用語「ヒドラジド」は、上記で定義したC(=O)−NR’ −NR”R”’末端基または−C(=O)−NR’−NR”−結合基を表し、R’、R”およびR’”は、本明細書に定義した通りである。
本明細書で使用されるように、用語「チオヒドラジド」は、上記で定義したC(=S)−NR’ −NR”R”’末端基または−C(=S)−NR’−NR”−結合基を表し、R’、R”およびR’”は、本明細書に定義した通りである。
本明細書に記載の実施形態のいずれかについて、本明細書に記載の化合物は、その塩、例えば、その薬学的に許容される塩の形態および/またはそのプロドラッグの形態であり得る。
本明細書において、語句「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の荷電種とその対イオンを指し、通常、投与化合物の生物活性および特性を抑制することなく、親化合物の溶解特性を変更するため、および/または親化合物によって生物で生じる顕著な刺激を低減するために使用される。
本発明の実施形態の一部の態様において、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩は、任意選択で塩基付加塩であってもよく、当該塩基付加塩は、負電荷を有する形態(例えば、酸性基が脱プロトン化されている形態)の本化合物の少なくとも1つの酸性基(例えば、フェノール基および/またはカルボン酸基)と、薬学的に許容される塩を形成する、選択した酸性基から誘導された少なくとも1つの対イオンとの組合せを含む。
それゆえに本明細書に記載の化合物の酸付加塩は、本化合物の1つまたは複数の塩基性基と、それと当量の1つまたは複数の酸とで形成された複合体であり得る。
塩基付加塩としては、これらに限定されるものではないが、ナトリウム塩(例えば、NaOH付加)、カリウム塩(例えば、KOH付加)、カルシウム塩(例えば、Ca(OH)2付加)、マグネシウム塩(例えば、Mg(OH)2付加)、アルミニウム塩(例えば、Al(OH)3付加)およびアンモニウム塩(例えば、アンモニア付加)などの種々の有機および無機対イオンおよび塩基が挙げられる。これらの塩基付加塩の各々は、本明細書において定義するような、モノ付加塩またはポリ付加塩のいずれでもよい。
本発明の実施形態の一部の態様において、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩は、任意選択で酸付加塩であってもよく、当該酸付加塩は、正電荷を有する形態(例えば、塩基性基がプロトン化されている形態)の本化合物の少なくとも1つの塩基性基(例えば、アミンおよび/またはグアニジン)と、薬学的に許容される塩を形成する、選択した塩基から誘導された少なくとも1つの対イオンとの組合せを含む。
それゆえに本明細書に記載の化合物の酸付加塩は、本化合物の1つまたは複数の塩基性基と、それと当量の1つまたは複数の酸とで形成された複合体であり得る。
酸付加塩としては、これらに限定されるものではないが、塩酸付加塩を提供する塩酸、臭化水素酸付加塩を提供する臭化水素酸、酢酸付加塩を提供する酢酸、アスコルビン酸付加塩を提供するアスコルビン酸、ベシレート付加塩を提供するベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸付加塩を提供するカンファースルホン酸、クエン酸付加塩を提供するクエン酸、マレイン酸付加塩を提供するマレイン酸、リンゴ酸付加塩を提供するリンゴ酸、メタンスルホン酸(メシレート)付加塩を提供するメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸付加塩を提供するナフタレンスルホン酸、シュウ酸付加塩を提供するシュウ酸、リン酸付加塩を提供するリン酸、p−トルエンスルホン酸付加塩を提供するトルエンスルホン酸、コハク酸付加塩を提供するコハク酸、硫酸付加塩を提供する硫酸、酒石酸付加塩を提供する酒石酸およびトリフルオロ酢酸付加塩を提供するトリフルオロ酢酸などの種々の有機および無機酸を含み得る。これらの酸付加塩の各々は、本明細書において定義するような、モノ付加塩またはポリ付加塩のいずれでもよい。
本化合物中の電荷を有する基と、塩における対イオンとの化学量論的な割合に応じて、酸または塩基付加塩は、モノ付加塩(mono−addition salt)またはポリ付加塩(poly−addition salt)のいずれかであり得る。
用語「モノ付加塩」は、本明細書で使用する場合、対イオンと、電荷を有する形態の本化合物との化学量論的な比率が1:1である塩であって、1モル当量の本化合物当たり1モル当量の対イオンを包含する塩を指す。
用語「ポリ付加塩」は、本明細書で使用する場合、対イオンと、電荷を有する形態の本化合物との化学量論的な比率が1:1より大きく、例えば2:1、3:1、4:1などである塩であって、1モル当量の本化合物当たり2モル当量以上の対イオンを包含する塩を指す。
本明細書において、用語「プロドラッグ」とは、体内において活性化合物(例えば、上述した式で表される化合物)に変換される化合物を指す。プロドラッグは、通常、例えば、吸収を増強することによって、投与を促進するように設計される。プロドラッグは、例えば、エステル基で修飾された(例えば、化合物の任意の1つもしくは複数のヒドロキシル基が、エステル基を形成するようにアシル基、任意選択で、(C1〜4)アシル(例えば、アセチル)基によって修飾されている、および/または化合物の任意の1つもしくは複数のカルボン酸基が、エステル基を形成するようにアルコキシ基もしくはアリールオキシ基、任意選択で、(C1〜4)アルコキシ(例えば、メチル、エチル)基によって修飾されている)活性化合物を含み得る。
さらに、本明細書に記載の化合物の各々は、その塩も含み、その溶媒和物または水和物の形態であり得る。
用語「溶媒和物」は、溶質(本明細書に記載の複素環式化合物)と溶媒によって形成される、可変の化学量論(例えば、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサなど)を有する複合体であって、溶媒が溶質の生物活性を妨害しないものを指す。
用語「水和物」は、溶媒が水である、上記溶媒和物を指す。
本明細書に記載の化合物は、多形体として使用してもよく、本実施形態は、化合物の任意の同形体およびそれらの任意の組合せをさらに包含する。
本実施形態は、本明細書に記載の化合物の任意のエナンチオマーおよびジアステレオマーをさらに包含する。
用語「エナンチオマー」は、本明細書で使用する場合、化合物の立体異性体であって、互いの完全な反転/鏡映(鏡像)によってのみその対応構造と重ね合わせることができるものを指す。エナンチオマーは、互いに右手と左手のようであると述べられることから、「対掌性」を有すると言われている。エナンチオマーは、それ自体が対掌性を有する環境(例えばあらゆる生物系)に存在する場合を除いて、同じ化学的および物理的特性を有する。本発明の実施形態において、化合物は1つまたは複数のキラル中心を有してもよく、それぞれがR配置またはS配置であり、あらゆる組合せをでもよい。本発明の一部の実施形態に係る化合物は、R配置またはS配置を示す、あらゆるキラル中心を有し得る。
用語「ジアステレオマー」は、本明細書で使用する場合、互いにエナンチオマーではない立体異性体を指す。ある化合物の2つ以上の立体異性体が、等価な(関連する)立体中心の全てではないが1つまたは複数で異なる配置を有し、互いに鏡像ではない場合に、ジアステレオマー特性(diastereomerism)を発揮する。2つのジアステレオ異性体が1つの立体中心のみで互いに異なる場合、それらは、エピマーである。各立体中心(キラル中心)は、2つの異なる配置、したがって2つの異なる立体異性体をもたらす。本発明の文脈において、本発明の実施形態は、立体配置のあらゆる組合せ、すなわち、あらゆるジアステレオマーで生じる、複数のキラル中心を有する化合物を包含する。
本発明の特徴であって、明確にするために個別の実施形態のとして記載したものは、組み合わせて1つの実施形態としても提供可能であることを理解されたい。逆に、簡潔にするために1つの実施形態として記載した本発明の様々な特徴を、個別に、または任意の適切な部分組合せで、または本発明で記載した他の実施形態との適切な組み合わせとして提供することもできる。様々な実施形態に関連して記載された特徴は、その特徴なしでは実施形態が動作不能でない限り、それらの実施形態の必須要件とは見なさない。
上述したように本明細書に記載され、下記特許請求の範囲によって請求される本発明のさまざまな実施形態および態様は、以下の実施例によって実験的に支持されるものである。
以下の実施例を次に参照するが、これらは上記説明と共に、本発明のいくつかの実施形態を限定することなく例示するものである。
材料および方法
材料:
抗ヒトIgG−XL665抗体は、Cisbio Bioアッセイ社から入手した。
Ficoll Histopaque(登録商標)1077は、Sigma社(イスラエル国)から入手した。
ビオチンは、Sigma社(イスラエル国)から入手した。
ビオチン化MIP3aは、Almac Sciences社(英国)から入手した。
テルビウムクリプテート結合ストレプトアビジン(Lumi4(登録商標))は、Cisbio Bioassays社から入手した。
BKT130は、BKT130が「BKT−P2−FC」と称される国際公開第2010/146584号の記載のとおりに調製した。ここには、BKT130の配列も提供されている。
化合物BKT300は、純度78%のものおよび高純度のものをAnalytiCon Discovery GmbHから入手した。NMR分光法を使用して、高純度サンプルの純度は約98%であると決定し、その他のサンプルの純度は、約78%であることを確認した。
BKT300−3−c5およびBKT300−11−a5の化学合成を、本明細書の実施例6に後述する。すべての試薬は、公知のベンダーから入手した。
遊走アッセイ:
600μlのRPMI培地を、Transwell(登録商標)遊走(transmigration)プレートの下側チャンバーに加え、そこに、2μg/mlのMIP3a、100ng/mlのSDF−1または10ng/mlのMCP−1を添加した。試験した小分子は、指定した濃度で、対照サンプル以外の下部チャンバーに添加した。MIP3a、SDF−1またはMCP−1を、小分子とともに室温で30分間インキュベートし、その後、遊走アッセイを開始した。30分間のインキュベーション後、2×105個の免疫細胞を、100μlの総容量で遊走プレートの上部チャンバーに添加した。3時間以内にTranswell(登録商標)プレートの底部チャンバーに遊走した細胞を、FACScalibur(商標)フローサイトメーターを使用して計数した。
MIP3aへの遊走を評価するために、Ficoll Histopaque(登録商標)1077上でのヘパリン処置した静脈血から遠心分離によって、末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。RosetteSep(商標)ヒトCD4+T細胞濃縮カクテル(StemCell Technologies Inc.製)を、製造業者の説明書に従って用い、CD4+T細胞をさらに単離した。
SDF−1への遊走を評価するために、ジャーカット細胞を、1%ウシ胎児血清(FCS)を含有するRPMI培地に再懸濁した。
MCP−1への遊走を評価するために、JTHP−1細胞を、1%ウシ胎児血清(FCS)を含有するRPMI培地に再懸濁した。
癌細胞生存アッセイ:
96ウェルプレート中、最終容量250μlとなるように、1%ウシ胎児血清(FCS)を有する細胞培地中で2×105個細胞/ウェルの濃度で癌細胞をインキュベートした。試験した小分子を、指定の濃度で細胞に添加した。細胞を24時間インキュベートし、次いで、ヨウ化プロピジウム(PI)染色を使用する蛍光標識細胞分取(FACS)によって死細胞および生存細胞の数を評価した。小分子誘導性細胞死のIC50を、GraphPad Prismソフトウェアを使用して決定した。
In vivo研究:
In vivo研究のプロトコールは、下記の実施例3に詳細に記載する。
MIP3aと結合し、MIP3aの遊走に影響を及ぼす小分子を同定するスクリーニングアッセイおよび活性測定
均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイを、ハイスループットスクリーニング(HTS)のプラットフォームとして設計した。このアッセイは、BKT130、ビオチン化MIP3a、抗ヒトIgG−XL665抗体(BKT130のFcドメインと結合)およびLumi4(登録商標)テルビウムクリプテート結合ストレプトアビジン(MIP3aに結合したビオチン部分と結合)を使用して、BKT130とMIP3aとの相互作用を検出した。
ビオチン化MIP3aまたはビオチンを、最終濃度が16.7nMになるように、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)からなるアッセイバッファーで希釈した。BKT130、テルビウム結合ストレプトアビジンおよび抗ヒトIgG−XL665抗体を、アッセイバッファーに、それぞれ、92.5nM、0.01ng/mlおよび0.9ng/mlの濃度に希釈することによって、検出ミックスを形成した。23μlの反応液を、黒色非結合384ウェルプレート(Greiner 784900)中、室温で45分間インキュベートし、次いで、専用のHTRFレーザー励起を備えたPHERAstar FS(登録商標)ハイスループットマイクロプレートリーダー(BMG LABTECH社製)で読み取った。HTRFの読み取り値は、テルビウムドナー(625nmの波長で発光する)からXL665アクセプターへ移動する共鳴エネルギーの関数であり、当該アクセプターは、665nmの波長で励起され、蛍光シグナルを発するものである。MIP3aとBKT130との結合によって近接近したドナー/アクセプター対のみが、共鳴エネルギーの移動をもたらす。結合は、625nmでのシグナルに対する665nmでのシグナルの比(×10,000)として表される。
ハイスループットスクリーニング(HTS)は、50nlのピンツールおよびBioTek(商標)EL406ディスペンサーが組み込まれた自動化ワークステーションを使用して実施した。約3,500種の天然化合物の天然ライブラリーから得た化合物を、およそ10mMのDMSO保存溶液中で維持し、次いで、ビオチン−MIP3a(またはビオチン対照)を含有するアッセイミックスに移し、室温で15分間インキュベートして、化合物の結合させた。次いで、検出ミックスを添加し、プレートを室温でさらに45分間インキュベートし、上述したように読み取った。
結合の大幅な阻害を伴う化合物を選択し、段階希釈後の反復アッセイのためにライブラリーから選び取り、用量反応曲線を得た。
スクリーニングおよび曲線適合のための解析を、Genedata Screener(登録商標)ソフトウェアパッケージを使用して行った。
BKT130およびビオチン化MIP3aの存在下、他の化合物の添加なしの条件下で、シグナル比は3621(±409)であり、これは、結合の0%阻害に対応していた(中立対照)。ビオチン単独およびBKT130の存在下では、得られたシグナル比は763(±23)であり、結合の100%阻害に対応していた(阻害対照)。
3,500種のスクリーニングした化合物のうち、32種の小分子が、BKT130とMIP3aとの結合の、(625nmでのシグナルに対する665nmでのシグナルの比で表される)阻害は40%超だった。
32種の小分子のうち、18種の小分子が、ハイスループットスクリーニングにおいてBKT130とMIP3a間の相互作用を顕著に阻害すると判明し、段階希釈アッセイにおいて用量反応曲線を示し、さらなる解析のために選択した。
スクリーニングアッセイによって明らかになった18種の化合物について、最終濃度を10および50μg/mlとし、ヒトCD4+T細胞のMIP3aへの遊走の阻害、およびMCP−1およびSDF−1への応答である免疫細胞遊走の阻害に関するそれらの能力について、上記の材料および方法に記載した手順を使用してさらに試験した。
これらのアッセイにおいて、BKT300と称する化合物を、非常に強力な化合物として同定した。
図1は、濃度50μg/mlのBKT300(純度78%)が、CD4+T細胞のMIP3aへの遊走を完全に阻害したことを示し、したがって、(HTSアッセイにおいて検出されるような)当該化合物とMIP3aとの結合が、MIP3a活性阻害と関連することを示す。
図2Aおよび2Bは、濃度10μg/mlの、純度78%(図2A)および純度98%(図2B)のBKT300が、リンパ性ジャーカット細胞のSDF−1への遊走を有意に阻害することを示す。
これらの結果は、BKT300が、SDF−1機能の有効な阻害剤であることを示し、この化合物が、SDF−1およびCXCR4(SDF−1の受容体)の活性と関連する病態の治療に有効であることを示唆する。
図2Cが示すように、BKT300と構造的に類似した、BKT400と称する化合物も、リンパ性ジャーカット細胞のSDF−1への遊走を阻害すると判明した。
図3がさらに示すように、化合物BKT300(純度78%)は、濃度50μg/mlで、単球性THP−1細胞のMCP−1への遊走を強力に阻害したが、濃度10μg/mlでは、MCP−1への遊走に対して明らかな効果を発揮しなかった。
まとめると、上記の結果は、化合物BKT300が、比較的選択的にSDF−1機能を強力に阻害し、MCP−1および/またはMIP3a機能は、(例えば、濃度約10μg/mlで)相当に弱く阻害することを示し、化合物BKT300が、SDF−1およびCXCR4(SDF−1の受容体)の活性と関連する病態を治療するのに特に有効であることを示唆する。
癌細胞に対するBKT300の効果
癌細胞に対する効果に関するさらなるin vitroおよびin vivo研究によって、癌細胞に対するBKT300の潜在的な効果をさらに確認した。
癌細胞生存率に対するBKT300の効果を評価するために、MV4−11ヒト急性骨髄性白血病細胞に対するin vitro効果を評価した。MV4−11癌細胞を、96ウェルプレートを用い、1%ウシ胎児血清(FCS)を添加したRPMI細胞培地中に、最終容量250μlとなるように、2×105個細胞/ウェルの濃度でインキュベートした。指定した濃度のBKT300を細胞に添加した。細胞を24時間インキュベートし、次いで、ヨウ化プロピジウム(PI)染色を使用する蛍光標識細胞分取(FACS)によって死細胞数および生存細胞数を評価した。ケモカイン誘導性細胞死のIC50を、GraphPad Prismソフトウェアを使用して決定した。
図4A〜4Bが示すように、BKT300(純度78%)は、2μg/ml程度の低い濃度(最低試験濃度)で、MV4−11ヒト急性骨髄性白血病細胞の細胞死を誘導した。MV4−11細胞のBKT300(純度78%)誘導死のIC50は、2.72μg/mlであった。
純度78%のBKT300サンプルの効果を、純度98%のBKT300サンプルと比較しながら、BKT300による細胞死誘導を繰り返した。
図5A〜5Dが示すように、細胞死の誘導において、純度98%のBKT300は、純度78%のBKT300よりも大幅に有効であった。例えば、BKT300(純度98%)は、純度78%のBKT300よりも、4.25μg/mlでよりも顕著に大きな程度の細胞死を誘導した。
これらの結果は、BKT300(例えば、純度78%のBKT300)中に存在する不純物が、BKT300自体によって誘導される細胞死を低減し得ること、および高純度(例えば、98%)のBKT300が、本明細書に記載のその他の化合物との比較において特に強力であることを示唆する。
これらの結果は、BKT300のケモカイン結合活性が、抗癌活性と関連していることを示唆する。
MV4−11細胞について上記した手順を使用して、癌細胞生存率に対するBKT300(純度78%)のin vitro効果を、種々のさらなる癌細胞株を使用してさらに評価した。
図6Aおよび6Bが示すように、BKT300(純度78%で)は、2μg/ml程度の低い濃度(最低試験濃度)でRPMIヒト多発性骨髄腫細胞の細胞死を誘導した。
図7Aおよび7Bが示すように、BKT300(純度78%)は、2μg/ml程度の低い濃度(最低試験濃度)でジャーカットヒト急性リンパ性白血病細胞の細胞死を誘導した。ジャーカット細胞のBKT300誘導性死滅のIC50は、3.5μg/mlであった。
図8A〜9Bが示すように、BKT300(純度78%で)は、濃度8.5μg/mlで、ラジ(図8Aおよび8B)およびBjab(図9Aおよび9B)ヒトリンパ腫細胞の約30%の細胞死を誘導し、濃度4.25μg/mlでは、ラジ細胞のわずかな細胞死を誘導した(図8Aおよび8B)。
図10Aおよび10Bが示すように、BKT300(純度78%)は、濃度10μg/mlで、H460ヒト大細胞肺癌細胞の約80%の細胞死を誘導した。
図11Aおよび11Bが示すように、BKT300(純度78%)は、濃度8.5μg/mlで、H345ヒト小細胞肺癌細胞の90%を超える細胞死を誘導した。
In vivo研究
In vivoでのAML細胞の増殖に対するBKT300(純度98%)の効果を、MV4−11(FLT3−ITD)細胞を移植したNOD Scidγ(NSG)マウスの治療によって調べた。
マウスを300ラドの照射に付し、翌日、IV注射によって、10×106個細胞/マウスのMV4−11(FLT3−ITD)細胞を移植した。移植の21日後、処置群には、注射あたり1mg/KgのBKT300(純度98%)を3日間連続して腹膜内に注射した。移植後25日目に、マウスを屠殺し、抗ヒトCD45を使用して、血液、脾臓および骨髄におけるヒトAML芽細胞の生存を評価した。
以下の表1は、研究プロトコールを示し、結果のいくつかを図12A〜Cに示した。
図12Bが示すように、BKT300の投与は、マウス骨髄におけるAML細胞数およびAML細胞のパーセンテージを劇的に低減した。
図12Bおよび12Cは、未処置マウス(図12C)およびBKT300処置マウスの骨髄におけるヒトMV4−11細胞の存在を示す、代表的なFACS解析で得られたデータを示し、これは、BKT300の、白血病細胞を根絶する能力をさらに実証する。
BKT300によるキナーゼ活性の阻害
細胞シグナル伝達に対するBKT300の効果をさらに特徴付けるために、LanthaScreen(登録商標)ユウロピウムキナーゼ結合アッセイを使用して、BKT300(純度78%)のキナーゼプロファイリングを(Life Technologies SelectScreen(登録商標)Biochemical Profiling Labによって)実施し、440種のキナーゼをスクリーニングした。
LanthaScreen(登録商標)アッセイの原理を、図13に表す。Alexa Fluor(登録商標)結合体または「トレーサー」のキナーゼへの結合を、ユウロピウム(Eu)標識した抗タグ抗体の添加によって検出する。トレーサーおよび抗体のキナーゼとの結合は、高度のFRETをもたらすのに対し、トレーサーをキナーゼ阻害剤と置き換えると、FRETの喪失をもたらす。キナーゼトレーサーは、ATP競合キナーゼ阻害剤に基づいており、それらを、ATP部位と結合する任意の化合物の検出に適したものにする。ATP部位と結合する阻害剤は、ATP部位ともっぱら結合するI型キナーゼ阻害剤、およびATP部位と、アロステリック部位と称することが多い第2部位との両方に結合するII型阻害剤(例えば、イマチニブ、ソラフェニブ、BIRB−796)の両方を含む。
440種のスクリーニングしたキナーゼのうち、BKT300は、36種のキナーゼを40%超阻害した。これらのキナーゼは、以下の表2に示した。
表2に示したように、BKT300によって阻害されたキナーゼの大部分がセリン/トレオニンキナーゼであった。
このようなキナーゼの多くが癌に関与しており、いくつかは免疫調節に関与している。これらの結果は、BKT300によるキナーゼ阻害は、特に、癌免疫療法によって癌を治療するために利用できることを示唆する。
BKT300とキナーゼとのコンピュータによる結合モデル
すべてのモデリング作業は、Accelrysソフトウェアパッケージ「Discovery Studio」を使用して実施した。
(パッケージの自動化ファルマコフォアツールを使用せずに)ファルマコフォアモデルを手作業で構築した。
「BEST」立体構造検索アルゴリズムを使用して、すべての小分子の立体構造を作製した。
ファルマコフォアマッピングを、「フレキシブル(flexible)」オプションを入れた、Discovery Studioの「ファルマコフォアマッピング」ツールを使用して実施した。
最良の候補ポーズを選択するために、ファルマコフォアマッピングのすべての結果を目視検証した。
キナーゼとの結合モデルの設計:
上記実施例1〜3において実証されたように、細胞に基づくアッセイによって、BKT300は、白血病細胞株に対して有望な活性作用物質と同定された。上記の実施例4が示すように、ヒトカイノームに対する阻害のスクリーニングにおいて、選択したキナーゼを阻害することが示された。これら阻害データと、遺伝子発現データおよび生物学的考察との組み合わせから、いくつかの組合せにおいて、BKT300の抗白血病効果を媒介しうる潜在的な標的として、次の4種のキナーゼを選択した:MELK、MAP4K4および2種のPi3−キナーゼ(PIK3CAおよびPIK3CDとも称する、Pik3CαおよびPik3Cδ)。これらは上記の表2中では強調されている。
公知(PDB)の入手可能な構造の全てを使用して、これら4種のキナーゼの構造解析を実施した。ファルマコフォアモデルの予備的構築のために、2種のタンパク質キナーゼ、MELKおよびMAP4K4を選択した。
各キナーゼについて、実験的に検証された「ホットスポット」(変異導入した際に、活性に1桁以上の喪失をもたらすアミノ酸残基)を同定するために、文献検索を実施した。次の2個のこのようなアミノ酸残基を同定した:Lys40およびAsp150。両方ともキナーゼのATP結合部位内に位置する。
次いで、2種のタンパク質キナーゼのATP結合ポケット、特に、Lys40およびAsp150の考えられる最良のアラインメントが得られるように、アライメントを行った。アラインメントは図14にした。
当技術分野で公知のこれら2種のキナーゼの阻害剤を使用して、結合モデルを開発し、また、MELKおよびMAP4K4の阻害に関する予測される能力に関して、候補化合物をランク付けするためのスコアリング機能を開発した。
2種のデータセットを収集した:(i)4.9〜10000nMを超える範囲の酵素に対して親和性を有する76種の化合物を含む、MELK阻害剤のデータセットおよび(ii)140〜10000nMを超える範囲の酵素に対する親和性を有する、8種の化合物を含むMAPK4K阻害剤のデータセット。
入手可能なMELK阻害剤およびMAPK4K阻害剤の結晶構造を使用して、ファルマコフォアを含有する結合モデルおよびリガンドの全体的な形状を構築した。ファルマコフォアは、結合したリガンドの、Lys40およびAsp150との相互作用が必須となるように設計した。
モデルの検証は、モデル上に上記のデータセットから得た既知のMELK阻害剤およびMAPK4K阻害剤をマッピングすることで実施した。評価した全MELK阻害剤の90%が、ファルマコフォアに成功裏にマッピングされ、それによって1000nM未満のKDを特色とする高親和性阻害剤については、100%がモデル上に成功裏にマッピングされた。MAPK4K阻害剤については、8種の阻害剤のすべてがモデルに成功裏にマッピングされた。
これらの結果は、設計した結合モデルが妥当であり、BKT300の結合様式の予測に使用できることを示した。
キナーゼに対するBKT300の結合立体構造の予測:
BKT300を、設計した結合モデルにマッピングした、即ち、BKT300のすべての低エネルギー立体構造を作製し、モデルにマッピングした。次いで、モデルをガイドとして、すべての成功裏にマッピングされた立体構造異性体を、MELKの結合部位にドッキングし、タンパク質の側鎖が各ポーズに適合することが可能なように、ドッキングされた複合体をエネルギー的に最小化した。165種の成功した立体構造/ポーズが得られ、各々を目視検証して、リガンドとMELKとの相互作用を評価し、それによって最も適した立体構造およびポーズを選択し、これを図15に示した。
このポーズについてさらなる支持の提供を目的として、BKT300の3環骨格に隣接する脂肪族基(「テール」)が占有するのと同じキナーゼ上の部位を占有する基を特徴とする化合物を同定するために、MELK阻害剤の既知結晶構造をスクリーニングした。
2種のこのような構造:N−[3−(4−アミノキナゾリン−6−イル)−5−フルオロフェニル]−2−(ピロリジン−1−イル)アセトアミド(PDB 4OBQ)および3’−{[(4−ブロモ−1−メチル−1H−ピロール−2−イル)カルボニル]アミノ}−N−[(1S)−1−フェニル−2−(ピロリジン−1−イル)エチル]−1’,4’−ジヒドロ−5’H−スピロ[シクロプロパン−1,6’−ピロロ[3,4−c]ピラゾール]−5’−カルボキサミド(PDB 4BKY)を見い出した。図16に示すように、これらの構造を、BKT300の選択したポーズに重ねた。
これらの阻害剤の隣接する基(「テール」)の化学的性質は、BKT300の隣接するアルキル基とは異なるが、タンパク質キナーゼ中の同一サブポケットを占有することを留意されたい。BKT300の親和性は相対的に低く(上記表2にまとめたキナーゼスクリーニングアッセイに基づいて、数十μMであり)、それによって、重ねられた阻害剤の親和性は有意に高い(nM範囲である)ことをさらに留意されたい。
BKT300類似体の調製
上記の結合モデルを使用して、BKT300の構造的類似体を設計した。
本明細書においてBKT300−3−c5およびBKT300−11−a5と称する例示的なな類似体の化学的合成は、以下のとおりである。
BKT300−3−c5:
BKT300−3−c5の化学構造は、2種の互換異性体として提示することができる。
ケト互変異性体の化学名は、8−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−6−メトキシ−3−ペンチルキノリン−2,4(1H,3H)−ジオンである。
エノール互変異性体の化学名は、8−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−ヒドロキシ−6−メトキシ−3−ペンチルキノリン−2(1H)−オンである。
簡素化のために、以下、ケト互変異性体のみに言及する。しかし、2種の互換異性体は、平衡状態で、または互換異性体の一方として、環境条件によっては存在し得るということを留意されたい。
BKT300−3−c5の化学合成を、図17に示す。
2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(BKT300−3−c1)の調製:
2,4−ジメトキシフェノール(R11)(2.0グラム、13.00mmol)のTHF溶液(50mL)に、NaH(60%)(450mg、26.00mmol)を添加した。反応混合物を0℃で30分間撹拌した。次いで、0℃で2−フルオロ−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(2.22グラム、13.00mmol)を添加し、得られた混合物を室温で一晩撹拌した。反応完了を、TLC(EtOAc:石油エーテル=1:10)によってモニタリングした。反応混合物を、氷水中に注ぎ入れ、EtOAcで抽出した(2×20mL)。有機層をブラインを用いて洗浄し(2×50mL)、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を真空で濃縮すると、生成物2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(BKT300−3−c1)(3.04グラム、76.8%収率)が、黄色オイルとして得られた。
2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシアニリン(BKT300−3−c2)の調製:
MeOH(100mL)中の、2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(BKT300−3−c1)(3.04グラム、10.00mmol)およびラネーNi(770mg)の混合物を、室温で4時間撹拌した。反応完了を、LC−MSによってモニタリングした。その後、反応混合物を濾過し、濾液を真空で濃縮すると、生成物2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシアニリン(BKT300−3−c2)(2.58グラム、94.2%収率)が黒色オイルとして得られた。
LC−MS:m/z 276.0(M++H)
メチル2−((2−(2,5−ジメトキシフェノキシ)−5−メトキシフェニル)カルバモイル)ヘプタノエート(BKT300−3−c3)の調製:
トルエン(40mL)中の、2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシアニリン(BKT300−3−c2)(3.75グラム、13.62mmol)、ジメチル2−ペンチルマロネート(5.5グラム、27.2mmol)およびピリジン(2.15グラム、27.2mmol)の混合物を、還流下で40時間撹拌した。反応完了をLC−MSによってモニタリングした。その後、反応混合物を真空で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、EtOAc:石油エーテル(1:20〜1:10)の混合物を用いて溶出し、生成物メチル2−((2−(2,5−ジメトキシフェノキシ)−5−メトキシフェニル)カルバモイル)ヘプタノエート(BKT300−3−c3)(5.0グラム、82.45%収率)が、黄色オイルとして得られた。
LC−MS:m/z 446.0(M++H)
2−((2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−5−メトキシフェニル)カルバモイル)ヘプタン酸(BKT300−3−c4)の調製:
THF(10mL)、MeOH(10mL)およびH2O(10mL)の混合溶液中の、メチル2−((2−(2,5−ジメトキシフェノキシ)−5−メトキシフェニル)カルバモイル)ヘプタノエート(BKT300−3−c3)(5.0グラム、11.23mmol)の溶液に、LiOH−H2O(944mg、22.46mmol)を添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応完了を、LC−MSによってモニタリングした。その後、反応混合物を、真空で濃縮した。残渣をH2O(50mL)に溶解し、濃HCLを使用してpH2〜3に酸性化した。反応混合物を、EtOAcで抽出し(2×20mL)、有機層をブラインで洗浄し(2×50mL)、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を真空で濃縮すると、生成物2−((2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−5−メトキシフェニル)カルバモイル)ヘプタン酸(BKT300−3−c4)(4.85グラム、100%収率)が、黄色固体として得られた。
LC−MS:m/z 432.0(M++H)
8−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−6−メトキシ−3−ペンチルキノリン−2,4(1H,3H)−ジオン(BKT300−3−c5)の調製:
120℃のPPA溶液(8mL)に、2−((2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−5−メトキシフェニル)カルバモイル)ヘプタン酸(BKT300−3−c4)(2.0グラム、4.64mmol)を少量ずつ添加した。反応混合物を、120℃で6時間撹拌した。反応完了を、LC−MSによってモニタリングした。反応混合物をH2O(100mL)中に注ぎ入れ、EtOAcで抽出した(2×20mL)。有機層を、ブラインで洗浄し(2×50mL)、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を、真空で濃縮した。残渣を、EtOAc:石油エーテル(1:10〜1:5)の混合物を溶出剤として使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製すると、生成物8−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−6−メトキシ−3−ペンチルキノリン−2,4(1H,3H)−ジオン(BKT300−3−c5)(240mg、12.5%収率)が、黄色固体として得られた。
LC−MS:m/z 414.7(M++H)
化合物の構造を、1H−NMR(溶媒として重水素化DMSOを使用する)によって.さらに検証した。
BKT300−11−a5:
BKT300−11−a5の化学構造は、2種の互換異性体として提示することができる。
ケト互変異性体の化学名は、6−メトキシ−8−(4−メトキシ−2−ペンチルフェノキシ)−3−ペンチルキノリン−2,4(1H,3H)−ジオンである。
エノール互変異性体の化学名は、4−ヒドロキシ−6−メトキシ−8−(4−メトキシ−2−ペンチルフェノキシ)−3−ペンチルキノリン−2(1H)−オンである。
簡素化のために、以下、ケト互変異性体のみに言及する。しかし、2種の互換異性体は、平衡状態で、または互換異性体の一方として、環境条件によっては存在し得るということを留意されたい。
BKT300−11−a5の化学合成を、図18に示す。
4−メトキシ−1−(5−メトキシ−2−ニトロフェノキシ)−2−ペンチルベンゼン(BKT300−11−a1)の調製:
4−メトキシ−2−ペンチルフェノール(R11)(2.5グラム、11.15mmol)のTHF溶液(50mL)に、NaH(60%)(892mg、22.30mmol)を添加した。反応混合物を、0℃で30分間撹拌した。次いで、2−フルオロ−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(1.91グラム、11.15mmol)を、0℃で添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応完了を、TLC(EtOAc:石油エーテル1:10)によってモニタリングした。その後、反応混合物を氷水中に注ぎ入れ、EtOAcで抽出した(2×20mL)。有機層を、ブラインで洗浄し(2×50mL)、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を、真空で濃縮すると、生成物4−メトキシ−1−(5−メトキシ−2−ニトロフェノキシ)−2−ペンチルベンゼン(BKT300−11−a1)(3.85グラム、100%収率)が、黄色オイルとして得られた。
4−メトキシ−2−(4−メトキシ−2−ペンチルフェノキシ)アニリン(BKT300−11−a2)の調製:
MeOH(100mL)中の、4−メトキシ−1−(5−メトキシ−2−ニトロフェノキシ)−2−ペンチルベンゼン(BKT300−11−a1)(3.85グラム、11.15mmol、1.0当量)およびラネーNi(770mg)の混合物を、室温で4時間撹拌した。反応完了を、LC−MSによってモニタリングした。その後、反応混合物を濾過し、濾液を真空で濃縮すると、生成物4−メトキシ−2−(4−メトキシ−2−ペンチルフェノキシ)アニリン(BKT300−11−a2)(4.41グラム、100%収率)が黒色オイルとして得られた。
LC−MS:m/z 316.0(M++H)
メチル2−((5−メトキシ−2−(5−メトキシ−2−ペンチルフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタノエート(BKT300−11−a3)の調製:
トルエン(80mL)中の、4−メトキシ−1−(5−メトキシ−2−ニトロフェノキシ)−2−ペンチルベンゼン(BKT300−11−a1)(4.145グラム、13.14mmol)、ジメチル2−ペンチルマロネート(3.98グラム、19.71mmol)およびピリジン(2.08グラム、26.28mmol)の混合物を、還流下で40時間撹拌した。反応完了を、LC−MSによってモニタリングした。反応混合物を真空で濃縮し、残渣を、EtOAc:石油エーテル(1:20〜1:10)の混合物を溶出剤として使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製すると、生成物メチル2−((5−メトキシ−2−(5−メトキシ−2−ペンチルフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタノエート(BKT300−11−a3)(7.2グラム、100%収率)が、黄色オイルとして得られた。
LC−MS:m/z 486.0(M++H)
2−((5−メトキシ−2−(4−メトキシ−2−ペンチルフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタン酸(BKT300−11−a4)の調製:
THF(10mL)、MeOH(10mL)およびH2O(10mL)の混合物溶液中の、メチル2−((5−メトキシ−2−(5−メトキシ−2−ペンチルフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタノエート(BKT300−11−a3)(3.0グラム、6.19mmol)の溶液に、LiOH−H2O(520mg、12.37mmol)を添加した。反応物を、室温で16時間撹拌した。反応完了を、LC−MSによってモニタリングした。その後、反応混合物を真空で濃縮し、残渣をH2O(50mL)に溶解し、濃HCLを使用してpH2〜3に酸性化した。反応混合物を、EtOAcで抽出した(2×20mL)。有機層を、ブラインで洗浄し(2×50mL)、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を真空で濃縮すると、生成物2−((5−メトキシ−2−(4−メトキシ−2−ペンチルフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタン酸(BKT300−11−a4)(2.5グラム、85.6%収率)が、黄色固体として得られた。
LC−MS:m/z 472.0(M++H)
6−メトキシ−8−(4−メトキシ−2−ペンチルフェノキシ)−3−ペンチルキノリン−2,4(1H,3H)−ジオン(BKT300−11−a5)の調製:
120℃のPPA溶液(8mL)に、2−((5−メトキシ−2−(4−メトキシ−2−ペンチルフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタン酸(BKT300−11−a4)(1.0gRAM、2.12mmol)を少量ずつ添加した。反応混合物を、120℃で6時間撹拌した。反応完了を、LC−MSによってモニタリングした。その後、反応混合物をH2O(100mL)中に注ぎ入れ、EtOAcで抽出した(2×20mL)。有機層を、ブラインで洗浄し(2×50mL)、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣を、EtOAc:石油エーテル(1:10〜1:5)の混合物を溶出剤として使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製すると、生成物6−メトキシ−8−(4−メトキシ−2−ペンチルフェノキシ)−3−ペンチルキノリン−2,4(1H,3H)−ジオン(BKT300−11−a5)(260mg、27.1%収率)が、黄色固体として得られた。
LC−MS:m/z 454.7(M++H)
1H NMR(400MHz,DMSO−d6):δ11.76(s,1H)、7.56(s,1H)、4.05(t,J=6.8Hz,2H)、1.63〜1.56(m,2H)、1.36〜1.27(m,4H)、0.88(t,J=6.8Hz,3H)。
BKT300類似体の活性
ケモカイン媒介性遊走:
BKT300類似体を、上記「方法」に記載した細胞遊走アッセイで試験して、試験したケモカインの生物活性に対する効果、即ち、ケモカインと関連する疾患の治療におけるその活性を調べた。
図19A〜Bは、SDF−1に応答したジャーカットT細胞の遊走に対する、BKT300−3−c5(図19A)およびBKT300−11−a5の効果を示し、ジャーカット細胞のSDF−1/CXCR4媒介性遊走の阻害に反映される、これら化合物によるSDF−1の調節を示す。
SDF−1に応答したジャーカットT細胞、およびMCP−1に応答したTHP−1の遊走に対するBKT300−3−c5の効果をさらに試験し、IPI−145のものと比較した。
IPI−145は、デュベリシブの名称でInfinity Pharmaceuticals社によって開発された小分子であり、第III相臨床治験によって現在検討中である。IPI−145は、ホスホイノシチド−3キナーゼ(PI3K)のδおよびγアイソフォームの、生物が経口的に利用可能な阻害剤であり、潜在的な免疫調節および抗悪性腫瘍薬活性を示すといわれている。
得られた比較データを、SDF−1について図20Aに、およびMCP−1について図20Bに示し、BKT300−3−c5が、ジャーカット細胞(TLL)のSDF−1/CXCR4媒介性遊走およびTHP−1(骨髄単球性細胞)のMCP−1誘導性遊走の両方の阻害において、IPI−145よりも有効であることを明確に示す。
癌細胞に対する効果:
種々の癌細胞の生存率に対するBKT300−3−c5の効果を、上記「方法」に記載したように試験し、IPI−145の効果と比較した。
図21A〜Bは、MV4−11細胞の生存率に対するBKT300−3−c5およびIPI−145の効果(図21A)および24時間の処置後のMV4−11 AML細胞の生存率に対するBKT300−3−c5の効果に関するプロットを示し、0.85μMのBKT300−3−c5のIC50値を示す(図21B)。
図22A〜B、23A〜B、24A〜Bおよび25A〜Bは、種々の白血病細胞(それぞれ、U937、REH、THP−1およびNB4)に対するBKT300−3−c5およびIPI−145の効果を示す。
図26は、前立腺癌PC−3細胞に対するBKT300−3−c5およびIPI−145の効果を示す。
図27は、黒色腫B16−F10細胞に対するBKT300−3−c5およびIPI−145の効果を示す。
種々の試験した細胞株のすべてにおいて、BKT300−3−c5が、癌細胞の生存率低減において、IPI−145と比較して優れた効果を有することが示される。
図28A〜Bは、MV4−11の生存率に対するBKT300−11−a5の効果を示し、このBKT300類似体も、癌細胞の生存率に影響を及ぼすことを示す。
BKT300−3−c5の活性をさらに研究するために、種々の癌細胞を1μMのBKT300−3−c5とともに、またはそれなしで(対照)インキュベートし、次いで、7−ADDを染色した。
得られたデータを図29に示し、これは、試験した細胞のすべてにおいて、BKT300−3−c5は、細胞周期のG2M期で成長を停止し、アポトーシス細胞死を誘導することを示す。図29には、IPI−145について得られたデータ(上列、右)も示しているが、これは成長停止にも、アポトーシスにも影響を及ぼさない。
BKT300−3−c5(BKT300(S)とも称す)の効果を、下記の追加の種々の癌細胞系についても示した:慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、骨髄腫、卵巣癌、神経芽細胞腫、肺癌。データは下記表3に示す。
これらの結果は、BKT300が、さまざまな癌細胞型の細胞死の誘導に有効であることをさらに示す。
さらなる研究では、MV4−11細胞を、BKT300−3−c5(1μM)の存在下または不存在下で24時間インキュベートし、続いて、細胞をアネキシン−Vおよびヨウ化プロピジウム(PI)について染色することによって、BKT300−3−c5によるアポトーシス誘導を確立した。得られたデータを図30に示し、これはアポトーシスによる生細胞のパーセンテージの低減を明確に示す。
さらなる研究では、AML細胞株であるNB4、U937およびMV4−11のBKT300−3−c5誘導性アポトーシスにおける、カスパーゼ−3(CASP3)の役割を試験した。細胞をBKT300−3−c5(1μM)とともに24時間インキュベートし、次いで、ヒト切断カスパーゼ3に対するmAbを使用した、カスパーゼ−3に対するウエスタンブロットおよびElisaアッセイによって、切断されたものの存在を試験した。
CASP3タンパク質は、システイン−アスパラギン酸プロテアーゼ(カスパーゼ)ファミリーのメンバーである。カスパーゼの段階的な活性化は、細胞アポトーシスの遂行期において中心的な役割を果たす。カスパーゼは、不活性の酵素前駆体として存在し、保存性のアスパラギン酸残基でタンパク質分解性プロセシングを受けて、大小2つのサブユニットが生成され、これらが二量体化して、活性酵素を形成する。活性酵素は、カスパーゼ6および7を切断し、活性化し、その後、プロセシングを受けて、カスパーゼ8、9および10によって活性化される。
得られたデータを図31A〜Cに示した。これらは、BKT300−3−c5誘導性アポトーシスが、カスパーゼ−3活性化を介するものであることを明確に示す。
BKT300−3−c5の類似体
化学合成:
BKT300−3−c5の以下の類似体を、類似体の最終構造に従って、c1および/またはc3を調製するように反応物を変えながら(図17を参照)、BKT300−3−c5と同様に合成した。
以下の構造は、その「ケト」型で表されているが、対応する「エノール」型および平衡形態も考えられる。
化合物A1の調製:
2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(化合物A1−1)の調製:
2,4−ジメトキシフェノール(5.0グラム、32.4mmol)のTHF溶液(125mL)に、NaH(60%)(112.5mg、64.8mmol)を添加した。反応混合物を、0℃で30分間撹拌した。次いで、2−フルオロ−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(5.5グラム、32.4mmol)を0℃で添加した。反応混合物を、室温で一晩撹拌した。TLCは、反応が完了したことを示した(石油エーテル:EtOAc=10:1)。反応混合物を、氷水中に注ぎ入れ、EtOAcで抽出した(3×100mL)。有機層をブラインで洗浄し(2×100mL)、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を真空で濃縮した。粗生成物を、(PE:EA=10:1)を用いて溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで精製すると、生成物2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(化合物1)(8.3グラム、83.8%収率)が、黄色オイルとして得られた。
2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシアニリン(化合物A1−2)の調製:
MeOH(300mL)中の、2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(化合物1)(8.3グラム、27.2mmol)およびラネーNi(400mg)の混合物を、室温で一晩撹拌した。TLCは、反応が完了したことを示した(PE:EA=2:1)。反応混合物を濾過した。濾液を、真空で濃縮すると、生成物2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシアニリン(化合物2)(8.0グラム、>100%収率)が、黒色オイルとして得られ、これをさらなる精製を行わずに使用した。LC−MS:m/z 276.0(M++H)
エチル3−((2−(2,5−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシフェニル)アミノ)−3−オキソプロパノエート(A1−3)の調製:
トルエン(20mL)中の、2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシアニリン(化合物2)(800mg、2.91mmol)、ジエチルマロネート(960mg、5.81mmol)およびピリジン(460mg、5.81mmol)の混合物を、還流下で24時間撹拌した。LCMSによるモニタリングにおいて反応が完了した後、反応混合物を真空で濃縮した。残渣を、溶出に(PE:EA=20:1〜10:1)を用いるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製すると、生成物エチル3−((2−(2,5−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシフェニル)アミノ)−3−オキソプロパノエート(A1−3)(740mg、65.3%収率)が、黄色オイルとして得られた。LC−MS:m/z 390(M++H)
3−((2−(2,5−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシフェニル)アミノ)−3−オキソプロパン酸(A1−4)の調製:
THF(15mL)、MeOH(15mL)およびH2O(15mL)の混合物溶液中の、エチル3−((2−(2,5−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシフェニル)アミノ)−3−オキソプロパノエート(A1−3)(740mg、1.90mmol)の溶液に、LiOH−H2O(798mg、19mmol)を添加した。反応混合物を、室温で一晩撹拌し、その後、真空で濃縮した。残渣を、H2O(100mL)に溶解し、濃HClを使用してpH2〜3に酸性化した。反応混合物を、EtOAc(2×100mL)を用いて抽出した。有機層を、ブラインを用いて洗浄し(2×100mL)、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を真空で濃縮すると、生成物3−((2−(2,5−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシフェニル)アミノ)−3−オキソプロパン酸(A1−4)(680mg、98%収率)が、黄色オイルとして得られた。LC−MS:m/z 362(M++H)
8−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−6−メトキシキノリン−2,4(1H,3H)−ジオン (A1)の調製:
120℃のPPA溶液(30.0グラム)に、3−((2−(2,5−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシフェニル)アミノ)−3−オキソプロパン酸(A1−4)(680mg、1.88mmol)を少量ずつ添加した。反応混合物を120℃で2時間撹拌した。LCMSによるモニタリングにおいて反応が完了した後、反応混合物をH2O(250mL)中に注ぎ入れ、EtOAc(3×200mL)を用いて抽出した。有機層をブラインで洗浄し(2×100mL)、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を、真空で濃縮した。残渣を(PE:EA=2:1)を用いて溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで精製すると、生成物8−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−6−メトキシキノリン−2,4(1H,3H)−ジオン(A1)(65mg、10%収率)が、黄色固体として得られた。
LC−MS:m/z 344.1(M++H)。
1H NMR(400MHz,DMSO):δ=11.39(s,1H)、10.31(s,1H)、7.11(d,J=8.4Hz,1H)、6.89(d,J=2.4Hz,1H)、6.76(d,J=2.4Hz,1H)、6.57(m,1H)、6.16(d,J=2.8Hz,1H)、5.81(s,1H)、3.79(s,3H)、3.76(s,3H)、3.73(s,3H)。
化合物A3の調製:
2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(化合物A3−1)の調製:
2,4−ジメトキシフェノール(5.0グラム、32.4mmol)のTHF溶液(125mL)に、NaH(60%)(112.5mg、64.8mmol)を添加した。反応混合物を、0℃で30分間撹拌した。次いで、2−フルオロ−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(5.5グラム、32.4mmol)を0℃で添加した。反応混合物を、室温で一晩撹拌した。TLCは、反応が完了したことを示した(石油エーテル:EtOAc=10:1)。反応混合物を、氷水中に注ぎ入れ、EtOAc(3×100mL)を用いて抽出した。有機層を、ブラインで洗浄し(2×100mL)、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を、真空で濃縮した。粗生成物を、PE:EA=10:1を用いて溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製すると、生成物2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(化合物A3−1)(8.3グラム、83.8%収率)が、黄色オイルとして得られた。
2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシアニリン(化合物A3−2)の調製:
MeOH(300mL)中の2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(化合物A3−1)(8.3グラム、27.2mmol)およびラネーNi(400mg)の混合物を、室温で一晩撹拌した。TLCは、反応が完了したことを示した(PE:EA=2:1)。反応混合物を濾過した。濾液を、真空で濃縮すると、生成物2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシアニリン(化合物A3−2)(8.0グラム、>100%収率)が、黒色オイルとして得られ、これをさらなる精製を行わずに使用した。LC−MS:m/z 276.0(M++H)。
エチル3−((2−(2,5−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシフェニル)アミノ)−3−オキソプロパノエート(A3−3)の調製:
トルエン(20mL)中の、2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシアニリン(化合物A3−2)(800mg、2.91mmol)、ジエチル2−エチルマロネート(1.10グラム、5.81mmol)およびピリジン(460mg、5.81mmol)の混合物を、還流下で24時間撹拌した。LCMSによるモニタリングにおいて反応が完了した後、反応混合物を真空で濃縮した。残渣を、PE:EA=20:1〜10:1を用いて溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製すると、生成物エチル3−((2−(2,5−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシフェニル)アミノ)−3−オキソプロパノエート(A3−3)(840mg、69.2v%収率)が、黄色オイルとして得られた。LC−MS:m/z 417(M++H)
2−((2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシフェニル)カルバモイル)ブタン酸(A3−4)の調製:
THF(15mL)、MeOH(15mL)およびH2O(15mL)の混合物溶液中の、エチル3−((2−(2,5−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシフェニル)アミノ)−3−オキソプロパノエート(A3−3)(840mg、2.0mmol)の溶液に、LiOH−H2O(798mg、19mmol)を添加した。反応物を、室温で一晩撹拌し、その後、真空で濃縮した。残渣をH2O(100mL)に溶解し、濃HClを使用してpH2〜3に酸性化した。反応混合物をEtOAc(2×100mL)を用いて抽出した。有機層をブラインで洗浄し(2×100mL)、無水Na2SO4を用いて乾燥させ、濾過した。濾液を真空で濃縮すると、生成物2−((2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシフェニル)カルバモイル)ブタン酸(A3−4)(650mg、83%収率)が、黄色オイルとして得られた。LC−MS:m/z 389(M++H)
8−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−3−エチル−6−メトキシキノリン−2,4(1H,3H)−ジオン(A3)の調製:
120℃のPPA溶液(30グラム)に、2−((2−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−4−メトキシフェニル)カルバモイル)ブタン酸(A3−4)(650mg、1.67mmol)を少量ずつ添加した。反応混合物を120℃で2時間撹拌した。LCMSによるモニタリングにおいて反応が完了した後、反応混合物をH2O(250mL)中に注ぎ入れ、EtOAc(3×200mL)を用いて抽出した。有機層をブラインで洗浄し(2×100mL)、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を真空で濃縮した。残渣を、(PE:EA=2:1)を用いて溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製すると、生成物8−(2,4−ジメトキシフェノキシ)−3−エチル−6−メトキシキノリン−2,4(1H,3H)−ジオン(A3)(93mg、15%収率)が、黄色固体として得られた。
LC−MS:m/z 372.1(M++H)。
1H NMR(400MHz,DMSO):δ=10.32(s,1H)、10.06(s,1H)、7.10(d,J=4.2Hz,1H)、7.03(d,J=2.4Hz,1H)、6.76(d,J=2.8Hz,1H)、6.57(m,1H)、6.13(d,J=2.8Hz,1H)、5.81(s,1H)、3.79(s,3H)、3.73(s,3H)、3.69(s,3H)、3.26(m,2H)、1.03(m,3H)。
4−メトキシフェノール(2.3グラム、18.5mmol)の0℃で冷却したTHF溶液(30mL)に、NaH(1.48グラム、37.09mmol)をゆっくりと添加した。混合物を0℃で30分間撹拌し、次いで、2−フルオロ−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(3.17グラム、18.5mmol)を0℃で添加し、その後、反応混合物を室温に加温させ、一晩維持した。その後、反応混合物を水を用いて希釈し、EAを用いて抽出した。有機層をブラインを用いて洗浄し、NaSO4で乾燥させ、真空で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、化合物B1−1(4−メトキシ−2−(4−メトキシフェノキシ)−1−ニトロベンゼン)(4.6グラム、90.2%収率)が得られた。
4−メトキシ−2−(4−メトキシフェノキシ)−1−ニトロベンゼン(4.6グラム、16.73mmol)のMeOH溶液に、H2下でPd/C(400mg)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。混合物をガラスフィルターで濾過し、濾液を真空で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、生成物4−メトキシ−2−(4−メトキシフェノキシ)アニリン(2.3グラム、56.3%収率)が得られた。
トルエン(40ml)中の、4−メトキシ−2−(4−メトキシフェノキシ)アニリン(2.3グラム、9.39mmol)、ジメチル2−ペンチルマロネート(9.48グラム、46.94mmol)およびピリジン(1.48グラム、18.78mmol)の混合物を、還流下で40時間撹拌した。その後、反応混合物を真空で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、生成物メチル2−((4−メトキシ−2−(4−メトキシフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタノエート(2.76グラム、69.8%純度)が得られた。
THF(10ml)、MeOH(10ml)およびH2O(10ml)の混合物溶液中の、メチル2−((4−メトキシ−2−(4−メトキシフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタノエート(2.76グラム、6.43mmol)の溶液に、LiOH−H2O(1.08グラム、25.73mmol)を添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌し、その後、真空で濃縮した。残渣をH2O(50ml)に溶解し、濃HCLを使用してpH2〜3に酸性化した。反応混合物をEA(2×20ml)を用いて抽出した。有機層をブラインを用いて洗浄し(2×50ml)、無水Na2SO4を用いて乾燥させ、濾過した。濾液を真空で濃縮すると、生成物2−((4−メトキシ−2−(4−メトキシフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタン酸(2.6グラム、100パーセント)が得られ、これをさらなる精製を行わずに使用した。
120℃のPPA溶液(8ml)に2−((4−メトキシ−2−(4−メトキシフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタン酸(2.6グラム、6.48mmol)を添加した。反応混合物を120℃で6時間撹拌した。次いで、反応混合物をH2O(100ml)中に注ぎ入れ、EA(2×20ml)を用いて抽出した。有機層をブラインを用いて洗浄し(2×50ml)、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を真空で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、生成物6−メトキシ−8−(4−メトキシフェノキシ)−3−ペンチルキノリン−2,4(1H,3H)−ジオン(200mg、8.1%収率)が得られた。
1H NMR(400MHz,MeOD):δ=7.14(s,1H)、7.09〜7.06(d,J=8.8Hz,2H)、6.99〜6.97(d,J=8.8Hz,2H)、6.41(s,1H)、3.81(s,3H)、3.77(s,3H)、2.68〜2.64(t,J=7.6Hz,15.2Hz,2H)、1.54(m,2H)、1.39(m,4H)、0.94〜0.90(m,3H)。
HPLC:純度:254nmで=95.76%;214nmで=95.07%。
LCMS:m/z[M−1]− 382.2。
2−メトキシフェノール(2.3グラム、18.5mmol)の0℃で冷却したTHF溶液(30ml)に、NaH(1.48グラム、37.09mmol)をゆっくりと添加した。混合物を0℃で30分間撹拌し、次いで、2−フルオロ−4−メトキシ−1−ニトロベンゼン(3.17グラム、18.5mmol)を0℃で添加し、その後、反応混合物を室温に加温させ、一晩維持した。次いで、反応混合物を水で希釈し、EAを用いて抽出した。有機層をブラインを用いて洗浄し、NaSO4で乾燥させ、真空で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、化合物D1−1(4−メトキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)−1−ニトロベンゼン)(4.6グラム、90.2%収率)が得られた。
4−メトキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)−1−ニトロベンゼン(2.4グラム、8.73mmol)のMeOH溶液に、H2下でPd/C(200mg)を添加した。反応混合物を、室温で一晩撹拌した。次いで、混合物を、ガラスフィルターで濾過した。濾液を真空で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、生成物4−メトキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)アニリン(1.3グラム、61.9%収率)が得られた。
トルエン(20ml)中の4−メトキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)アニリン(1.3グラム、5.31mmol)、ジメチル2−ペンチルマロネート(6.1グラム、26.53mmol)およびピリジン(0.84グラム、10.61mmol)の混合物を、還流下で40時間撹拌した。反応混合物を真空で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、生成物メチル2−((4−メトキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタノエート(920mg、39.6%収率)が得られた。
THF(10ml)、MeOH(10ml)およびH2O(10ml)の混合物溶液中の、メチル2−((4−メトキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタノエート(920mg、2.14mmol)の溶液に、LiOH−H2O(360グラム、8.58mmol)を添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を真空で濃縮した。残渣をH2O(50ml)に溶解し、濃HClを使用してpH2〜3に酸性化した。反応混合物をEA(2×20ml)を用いて抽出した。有機層をブラインを用いて洗浄し(2×50ml)、Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を真空で濃縮すると、生成物2−((4−メトキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタン酸(850mg、100%収率)が得られ、これをさらなる精製を行わずに使用した。
120℃のPPA溶液(5ml)に、2−((4−メトキシ−2−(2−メトキシフェノキシ)フェニル)カルバモイル)ヘプタン酸(850mg、22.07mmol)を添加した。反応混合物を120℃で6時間撹拌した。次いで、反応混合物をH2O(100ml)中に注ぎ入れ、EAを用いて抽出した(2×20ml)。有機層をブラインを用いて洗浄し(2×50ml)、Na2SO4を用いて乾燥させ、濾過した。濾液を真空で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製すると、生成物6−メトキシ−8−(2−メトキシフェノキシ)−3−ペンチルキノリン−2,4(1H,3H)−ジオン(50mg、6.2%収率)が得られた。
1H NMR(400MHz,MeOD):δ=7.28(m,1H)、7.19〜7.16(m,2H)、7.12(s,1H)、7.05〜7.01(m,1H)、6.29(s,1H)、3.78(s,3H)、3.76(s,3H)、3.72(s,1H)、2.69〜2.65(t,J=7.6Hz,15.2Hz,2H)、1.55(m,2H)、1.39(m,4H)、0.94〜0.90(m,3H)。
HPLC:純度:254nmで=98.76%、214nmで=97.26%。
LCMS:m/z[M−1]− 382.2。
活性アッセイ:
0.1、1および10μMの化合物A1、A3、B1、D1およびBKT300−3−c5(DMSOを溶媒とした)の存在下で、U937細胞をRPMI培地 1%FC中で24時間インキュベートした。
アネキシン−V/PIアッセイを使用して、アポトーシスおよび細胞生存率を測定した。
7−AADアッセイを使用して細胞周期を測定した。
化合物B1について得られたデータを図32A〜Cに示した。図32Aに示すように、化合物B1は、10μMで細胞周期の停止を示し、1μMの濃度でも、いくらかの効果がすでに観察された。図32Bおよび32Cに示したように、細胞生存率およびアポトーシスのそれぞれに対する化合物B1の効果が、1μMの濃度で観察された。
化合物D1について得られたデータを図33A〜Cに示した。図33Aに示すように、化合物D1は、1μMで細胞周期の停止を示した。図33Bおよび33Cに示すように、細胞生存率およびアポトーシスのそれぞれに対する化合物D1の効果が、0.1μMの濃度で観察された。
化合物BKT300−3−c5について得られたデータを図34A〜Cに示した。図34Aに示すように、化合物BKT300−3−c5は、0.1μMで細胞周期の停止を示した。図34Bおよび34Cに示すように、細胞生存率およびアポトーシスのそれぞれに対する化合物BKT300−3−c5の効果が、0.1μMの濃度で観察された。
化合物A1について得られたデータを、図35A〜Cに示した。
化合物A3について得られたデータを、図36A〜Cに示した。
図35A〜Cおよび36A〜Cに示すように、化合物A1およびA3については試験した濃度のいずれにおいても、細胞周期およびアポトーシスの両方に対する効果は観察されなかった。
図37A〜Cが示すように、細胞を溶媒(DMSO)のみとともにインキュベートした場合には、効果は観察されなかった。
これらのデータは、(式IaおよびIb中の置換基変数Aで表される)中鎖〜長鎖アルキルの存在が、BKT300−3−C5および構造的に関連する化合物(類似体)の活性にとって必須であることを示す。これは、分子の細胞への浸入を当該アルキルが促進/容易にするという役割による可能性がある。活性の一部は、式IaおよびIb中の置換基D、EおよびGであるアルコキシ基にも起因する。
本発明をその特定の実施形態との関連で記載してきたが、多数の変更、修正および変化が当業者には明らかであろう。従って、そのような変更、修正および変化の全ては、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に含まれることを意図するものである。
本明細書で言及される全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許および特許出願のそれぞれが具体的および個別に参照により本明細書に組み込まれる場合と同程度に、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本明細書中の任意の参考文献の引用または特定は、それらの参考文献が本発明の先行技術として使用できることの容認として解釈されるべきではない。また、各節の表題が使用される範囲において、必ずしも限定するものとして解釈されるべきではない。