JP6939505B2 - 着色層付きガラス板 - Google Patents

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Description

本発明は着色層付きガラス板に関する。
透明なガラス板に着色層を設けて意匠性を高める工夫が知られている。例えば、建材の壁材として、着色層を有するガラスが販売されている(例えば、旭硝子株式会社製、商品名および登録商標:ラコベル)。また、着色層を有するガラス板は、壁材以外にも様々な用途で使用されることが期待されている(例えば、特許文献1)。
国際公開第2016−133096号
耐水性、耐酸性、耐アルカリ性に優れ、かつ、デザイン性のある着色層をガラス板に形成しようとする場合には、印刷する無機材料(例えば、塗料)をガラス板に均一、かつ精度よく塗工する必要がある。そうしないと、着色層の色がガラス板で不均一になる(以下、色むらともいう)、または、着色された加飾部の位置精度が悪くなる等のおそれがあり、ガラス板の意匠性の低下に影響する。
従来、ガラス板に形成する着色層は単色であり、この場合、塗料を塗工する回数(例えば、印刷法で塗工する場合には、塗工回数)を増やすことで、着色層の色むらの発生を低減していた。しかし、塗工の回数が増えると、加飾部の位置精度が低下する、または、塗料をガラス板に焼き付けるための焼成時において、ガラス板に残留歪が発生し、その結果、ガラス板の強度が低下するおそれがある。
本発明者は、ガラス板の意匠性を高めるために、ガラス板の少なくとも一方の面に2以上の色を有する着色層を形成することに着目した。さらに、かつ、2色以上の色を有する着色層を形成しても、ガラス板の強度の低下を抑制することを検討した。そして、ガラス板の表面に形成する着色層が2色以上の色を有する場合、各色の境界が目立つ場合があることが分かった。また、着色層の形成にあたり、微細な空隙(印刷抜け)が生じて、色むらが目立つ場合があることが分かった。これらは、ガラス板の意匠性を低下させる要因と考えられる。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、ガラス板の一方の面に2色以上の色を有する着色層を有することで、ガラス板の意匠性を高くし、かつ、ガラス板の強度に優れた着色層付きガラス板の提供を目的とする。
本発明の着色層付きガラス板は、ガラス板と着色層とを含み、第1の表面と前記第1の表面に対向する第2の表面を有し、前記第1の表面は凹凸を有し、前記第2の表面は2以上の色を有する着色層を有し、前記第1の表面の光沢度は0.1〜70であり、前記凹凸は、表面粗さの要素の平均長さRSmが10μm〜300μmであることを特徴とする。
本発明によれば、2以上の色を有する着色層を有するガラス板において、ガラス板の着色層を有さない面側からガラス板を通して着色層を見ると、着色層の色むらが目立たず、また、強度に優れた着色層付きガラス板を提供できる。
本実施形態の着色層付きガラス板の模式的断面図である。 本発明の他の実施形態に係る着色層付きガラス板の模式的断面図である。 本実施形態の着色層付きガラス板の製造方法のフローチャートである。
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は、以下の実施形態に制限されることはなく、本発明の趣旨を逸脱することなく、種々の変形および置換を加えることができる。
図1は、本発明の着色層付きガラス板の一実施形態を示す模式的断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る着色層付きガラス板1は、第1の表面1aと前記第1の表面1aと対向する第2の表面1bを有する。そして、前記第2の表面1bに存在する着色層3を備え、前記第1の表面1aはガラス板2の表面自体が凹凸を有する。
前記第1の表面1aの凹凸は、表面粗さの要素の平均長さRSmが10μm〜300μmであり、光沢度が0.1〜70である。また、前記第2の表面1bに存在する着色層3は、2以上の色を有する。
本実施形態の着色層付きガラス板1は、上記構成を備えるため、着色層付きガラス板1の第1の表面1a側から、ガラス板2を通して、第2の表面1bに存在する着色層3を見ても、着色層3の色むらが目立つことがなく、意匠性に優れる。
図2には、本発明の他の実施形態に係る着色層付きガラス板の模式的断面図である。
図2に示す着色層付きガラス板4は、第1の表面4aが、ガラス板自体が凹凸を有するのではなく、ガラス板5の表面に凹凸層を有する点で、図1に示す着色層付きガラス板1と相違し、他の点は同じ着色層付きガラス板である。すなわち、図1における第2の表面1bと図2における第2の表面4bとは実質的に同じものである。
以下では、便宜上、特に言及しない限り、図1に示す着色層付きガラス板1を用いて、本発明を説明する。
(ガラス板2)
ガラス板2は、可視光透過率(可視光線透過率)が高いガラス板であることが好ましい。ガラス板2の可視光透過率が高ければ、前記第2の表面2bに存在する着色層3の色が鮮明に見えるため好ましい。その結果、例えば、本実施形態の着色層付きガラス板1を建材として使用した場合には、周りの部材との調和を取ることができ、建材全体としての意匠性を高くできる。前記可視光透過率は、一例として、波長350nm〜750nmにおける平均透過率が、89.5%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、90.3%以上であることが特に好ましい。
前記可視光透過率は、分光光度計によって測定できる。
ガラス板2は、着色していないことが好ましい。着色していないガラス板2としては、光路長が5cmでのJIS Z8701(1999)でのXYZ表色系における三刺激値のY値が90%以上であるものが好ましい。前記Y値は91%以上がより好ましく、93%以上がさらに好ましい。Y値は、下記式により求められる。
Y=Σ(S(λ)×y(λ)) 式
ここで、S(λ)は、各波長における透過率であり、y(λ)は各波長の重みづけ係数である。したがって、Σ(S(λ)×y(λ))は、各波長の重みづけ係数と、その透過率と、を掛け合わせたものの総和をとったものである。なお、y(λ)は、眼の網膜細胞のうち、M錐体(又はG錐体、緑錐体)に対応し、波長535nmの光に最も反応する。
前記したガラス板2としては、公知のガラスを使用できる。例えば、ガラスとしては、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、またはアルミノシリケートガラス等が挙げられる。
ガラス板2は、上記したとおり、可視光透過率が高いことが好ましく、また、着色していないことが好ましい。このような特性を実現するガラス板2としては、例えば、ガラスに含まれるFeに換算した全鉄の含有量が好ましくは0.1質量%以下であるものが挙げられる。ガラスに含まれる全鉄の量が、0.1質量%超となると、ガラス板の緑色が目立ち、その結果、第2の表面の着色層の色調再現性が低下するおそれがある。そのため、前記全鉄の含有量は、0.09質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下がさらに好ましく、0.03質量%以下が特に好ましい。
ガラス板2の板厚は、本実施形態の着色層付きガラス板1を用いる用途や使用される環境に応じて適切に定められる。そして、本実施形態の着色層付きガラス板1は、その使用態様に応じて、ガラス板2を物理強化又は化学強化などの強化処理する場合がある。そのため、前記板厚は、0.1mm〜15mmが好ましい。
また、本実施形態の着色層付きガラス板1を建材として使用する場合には、ガラス板2の板厚は、1mm〜15mmが好ましい。この用途においては、ガラス板2は物理強化される場合が多く、前記板厚が1mm未満ではガラス板2が反る、もしくはガラス板2の表面に十分な圧縮応力が入らず、着色層付きガラス板の強度が低くなるおそれがある。一方、ガラス板2の板厚が15mm超では、ガラス板2が厚く、重量が大きくなり過ぎるおそれがある。物理強化での所望の強度の実現と、建材として使用する際の重量のバランスから、ガラス板2の板厚は、3mm〜12mmがより好ましい。特に、本実施形態の着色層付きガラス板1を、建築物の壁材として使用する場合は、ガラス板2の板厚は5mm〜10mmが特に好ましい。
一方で、本実施形態の着色層付きガラス板1を表示装置の筐体等のカバー部材などとして使用する場合には、軽量化の観点から、ガラス板2の板厚は、0.1mm〜5mmがより好ましく、2.3mm〜4mmがさらに好ましい。
(第1の表面)
本実施形態において、着色層付きガラス板1の第1の表面1aは、凹凸を有する。前記凹凸は、表面粗さの要素の平均長さRSmが10μm〜300μmである。表面粗さの要素の平均長さRSmは、JIS B0601(2001)に準拠して測定した値である。表面粗さの要素の平均長さRSmは、例えば、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、商品名:VK−9700)を用いて測定できる。
第1の表面1aの表面粗さの要素の平均長さRSmが10μm未満であれば、着色層3の色が薄くまたは着色層3の膜厚が薄くて光が透過する(色抜けともいう)場合や、色むらがある場合に、これらが目立ち、意匠性が低下するおそれがある。一方、第1の表面2aの表面粗さの要素の平均長さRSmが300μm超であれば、かえって着色層3の色むらが目立ち、意匠性が低下するおそれがある。このような観点から、第1の表面1aの表面粗さの要素の平均長さRSmは15μm〜250μmが好ましく、20μm〜225μmがより好ましく、50μm〜200μmがさらにより好ましい。
第1の表面1aは、光沢度が0.1〜70である。前記光沢度は、光沢計(例えば、株式会社堀場製作所製、商品名:光沢度グロスチェッカーIG−410)を使用して、入射角60°の条件で測定した値である。
前記光沢度が0.1未満であれば、第1の表面1aでの光の乱反射の程度が大きくなり過ぎる。この場合、第2の表面1bに存在する着色層3の模様や色がぼやけて認識しづらくなり、意匠性が低下する。一方で、前記第1の表面1aの光沢度が70超であれば、前記第2の表面1bに存在する着色層3の色むらが目立ち、着色層付きガラス板1の意匠性が低下するおそれがある。前記第1の表面1aの光沢度は、1〜30が好ましく、2〜16がより好ましい。
ガラス2の第1の表面1aは、図1で示すように、ガラス2自体の表面に凹凸形状を形成することで形成できる。また、他の実施形態である図2で示すように、ガラス板5に凹凸形状の被覆層(凹凸層)を形成することで、凹凸形状を有する第1の表面4aを形成できる。すなわち、本実施形態の着色層付きガラス板の第1の表面は、凹凸を有し、前記した表面粗さおよび光沢度の特徴を備えていればよく、その製造方法には、限定されない。
第1の表面1aは、表面粗さRa(算術平均粗さ)が0.1μm〜5μmであることが好ましい。表面粗さRaは、JIS B 0601(2001)に準拠して測定した値である。表面粗さRaは、レーザー顕微鏡(例えば、キーエンス社製、商品名:VK−9500)を使用して、カットオフ値λが0.25mmの条件で測定できる。表面粗さRaが前記した範囲にあれば、前記第2の表面1bに存在する着色層3の模様の再現性を最適にできる。また、前記第1の表面1aの表面を触れた際のすべり性を向上できる。同様の理由から、前記第1の表面1aの表面粗さRaは、0.2μm〜3.5μmがより好ましく、0.2μm〜2μmがさらに好ましい。
(第2の表面)
第2の表面1bには、2以上の色を有する着色層3が存在する。着色層3は、第2の表面1bの全面に設けてもよく、第2の表面1bの一部に設けてもよい。着色層3を第2の表面1bのどの部分に、どのような大きさで設けるかは、本実施形態の着色層付きガラス板1を用いる用途や設置場所等に応じて自由に変更できる。
前記着色層3は、2以上の色を有するので、着色層が単色の場合と異なり、様々な模様を表現できる。模様としては、例えば、マーブル模様、木材の模様などの天然物の模様などが挙げられる。また、その他にも画像やマークなどの人工の模様を形成できる。これらの模様は、本実施形態の着色層付きガラス板1を用いる用途や設置場所によって自由に設計できる。
着色層3の最大厚みは50μm〜300μmであることが好ましい。着色層3の最大厚みが、50μm未満であれば、着色層3が透ける(色抜けともいう)おそれがあり、この場合、着色層3の色を十分に認識できないおそれがある。これに対して、前記最大厚みを50μm以上とすることにより、着色層3の色抜けを抑制できる。前記最大厚みは、着色層3において任意に測定した10点での最大値である。
着色層3の色を十分に認識させるためには、着色層3の最大厚みは300μmあれば十分である。また、着色層3の最大厚みが300μm以下であれば、着色層3をガラス板2に焼き付ける際の焼成温度を低くできる、または短時間で行うことができる。その結果、ガラス板2の残留歪を低減して、着色層付きガラス板1の強度の低下を抑制できる。着色層付きガラス板1の強度の低下を抑制するには、着色層3の最大厚みはより好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下、最も好ましくは80μm以下である。
本実施形態において、着色層3の最大厚みは、ガラス板2の着色層3を有する領域において、任意の10点で厚みを測定した、その最大値である。着色層3の厚みは、公知の方法で測定できるが、例えば、着色層付きガラス板1を切断して顕微鏡で観察する手法、着色層付きガラス板1を切断せずレーザー顕微鏡で高さを測定する方法などが挙げられる。
着色層3は、第2の表面1bに直接形成されていることが好ましい。これにより、着色層3の耐久性を向上できる。前記耐久性としては、紫外線または、高温もしくは高湿の条件にさらした場合の着色層3がガラス板2から剥離または退色の耐久性などが挙げられる。
着色層3内において、隣り合う第1の色を有する領域の面積と第2の色を有する領域の面積との比率(第1の色を有する領域の面積/第2の色を有する領域の面積)は、0.01〜0.99となることが好ましい。着色層3の第1の色と第2の色の領域が上記関係を満たす範囲とは、着色層3と観察者(人)との距離が離れても、人の目の分解能で、色むらが容易に認識されるおそれがある範囲である。しかしながらこれに対して、本実施形態の着色層付きガラス板1は、第1の表面1aの光沢度が0.1〜70であり、第1の表面1aが凹凸を有し、かつその表面粗さの要素の平均長さRSmが10μm〜300μmであるので、第1の表面1a側から人が着色層3を視認した場合、着色層3の色むらが目立つことを防止でき、意匠性を高くできる。
前記着色層3は、無機材料からなることが好ましく、すなわち、無機材料を主成分として含むことが好ましい。主成分として含むとは、無機材料以外の他の成分を含むことを許容することを意味する。前記他の成分としては、例えば、有機材料が挙げられる。
前記無機材料は、粒子状であることが好ましい。そして、前記無機材料は、最大粒子径が、30μm〜120μmであることが好ましい。最大粒子径が前記した範囲にあれば、ガラス板2の第2の表面2bに緻密で微細な模様を有する着色層3を形成できる。同様の理由で、前記最大粒子径は、50μm〜80μmがより好ましい。
前記無機材料としては、ガラスセラミックスが好適に挙げられる。
ガラスセラミックスとは、ガラス粉末およびセラミックス粉末の混合物であり、所望の着色層3を形成するうえでは、ガラス粉末及びセラミックス粉末以外の他の材料を含んでもよい。ガラスセラミックスは温度の変化に対する耐久性が高いため、本実施形態の着色層付きガラス板1が高温にさらされる場合に、ガラス板2から着色層3が剥がれ落ちることなどを防止できる。また、ガラスセラミックスは、2以上のガラス組成の異なる材料を使用することで容易に2以上の色を有する着色層3を形成できる。
ガラス板2は、その表層に圧縮応力層を有することが好ましい。ガラス板2の表層に圧縮応力層を有することで、ガラス板2の強度を向上でき、その結果、外部からの衝撃に対してガラス板2の割れを防止できる。
ガラス板2の表層に圧縮応力層を形成する方法としては、物理強化またはイオン交換による化学強化が挙げられる。物理強化および化学強化は、ガラス板2が使用される用途やガラス板2の板厚に応じて自由に使い分けることができる。
本実施形態の着色層付きがガラス板1を建材の用途で使用する場合、ガラス板2の表面の圧縮応力は20MPa〜200MPaであることが好ましい。この圧縮応力は、ガラス板2への物理強化によって実現できる。
ガラス板2は、抗菌機能を有するものが好ましい。抗菌機能を有するガラス板としては、ガラス中に銀及び銅の少なくともいずれか一方を含むガラス板が挙げられる。
さらに、前記第1の表面1aの上には、図示しない反射防止膜、防汚膜、撥水膜、撥油膜等の他の機能膜を設けてもよい。他の機能膜としては、上記したものに限定されず、様々な膜を形成できる。これらの他の機能膜は、本実施形態の着色層付きがガラス板1を使用する用途や配置される環境などに応じて自由に設計される。
前記した他の機能膜を形成する方法は特に限定されず、公知の方法を採用できる。
(着色層付きガラス板の製造方法)
本実施形態の着色層付きガラス板は、図3のフローチャートで示すように、ガラス板2を準備し(S1)、ガラス板の一面(第1の主面)に凹凸を形成して第1の表面を形成し(S2)、ガラス板の他の面(第2の主面)に着色層を形成する(S3)ことで、製造できる。前記凹凸を形成する際に、その凹凸の表面粗さの要素の平均長さRSmが10μm〜300μmであり、第1の表面の光沢度が0.1〜70となるように処理する。
図3のフローチャートでは、ガラス板の一面に凹凸を形成して第1の表面を形成する工程と、ガラス板の他の面に着色層を形成する工程をこの順で行うことを示しているが、本実施形態の着色層付きガラス板の製造方法において、これらの順は特に限定されない。
製造効率を高める点で、ガラス板の第1の表面に凹凸を形成し、次いで、ガラス板の第2の表面に着色層を形成することが好ましい。
ガラス板自体に凹凸を形成する方法としては、ブラスト処理、フロスト液を使用したフロスト処理、エッチング液を用いたガラス板のエッチング処理またはこれらの組合せなどが挙げられる。このような方法により、例えば、図1に示す第1の表面1aを形成できる。なお、ガラス板の一面にのみ凹凸を形成する場合には、ガラス板の他の面は、保護フィルムなどで保護していることが好ましい。これにより、ガラス板の他の面を清浄に保つことができる。
ガラス板自体に凹凸を形成する場合、前記凹凸の表面粗さの要素の平均長さRSmが10μm〜300μmであり、凹凸を有する面の光沢度を0.1〜70に調整しやすいのでフロスト法を採用することが好ましい。
ガラス板の一面に凹凸を形成する他の方法としては、スプレー処理が挙げられる。スプレー処理は、スプレー法により、透光性材料を含む樹脂を塗布し、乾燥することにより、ガラス板の一面に凹凸層を形成できる。このような方法により、例えば、図2に示す第1の表面4aを形成できる。
ガラス板の他の面に、2以上の色を有する着色層を形成する方法としては、2種以上の無機材料を、塗布し、焼成する方法が挙げられる。無機材料を塗布する方法としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷または焼き付け法などが挙げられる。着色層の模様の解像度を高められる点で、インクジェット印刷により塗布する方法が好ましい。
また、着色層を形成する際の、無機材料を塗布した後の焼成により、着色層の形成と、ガラス板に物理強化による圧縮応力層の形成を同時に行える。
本実施形態の着色層付きガラス板の製造方法においては、ガラス板に他の機能膜を形成する工程、ガラス板の表面に圧縮応力層を形成する工程をそれぞれ有してもよい。
これらの工程は、本実施形態の着色層付きガラス板の製造方法において、任意に行える。ガラス板に圧縮応力層を形成する場合には、上述のとおり、製造効率の観点からは、ガラス板の一面に凹凸を形成して第1の表面を得る工程の後で、ガラス板の他の面に着色層を形成すると同時に物理強化により、ガラス板の表面に圧縮応力層の形成を実施することが好ましい。
また、本実施形態の着色層付きガラス板の製造方法において、ガラス板に圧縮応力層を化学強化処理によって形成する場合には、イオン交換処理によりガラス板に圧縮応力層を形成し、その後に、上記した方法でガラス板に着色層を形成する方法が挙げられる。
以下に具体的な実施例を挙げて説明する。例1〜5が実施例であり、例6が参考例である。
(1)評価方法
例1〜6の着色層付きガラス板について以下のようにして評価を行った。
(表面凹凸)
第1の表面は、JIS B0601(2001)に準拠し、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、商品名:VK−9700)を用いて、表面粗さの要素の平均長さRSmおよび表面粗さRaを測定した。なお、表面粗さRaの測定においては、カットオフ値λは0.25mmの条件で行った。
(光沢度)
第1の表面の光沢度は、光沢計(株式会社堀場製作所製、商品名:光沢度グロスチェッカーIG−410)を使用して、入射角60°の条件で測定した。
(色むらの評価)
例1〜6の着色層付きガラス板を地面に対して垂直に配置し、ガラス板に対して、垂直方向に1m離れた地点から人の目で観測した。5人の観測者のうち、5人が色むらを認識できなかった場合を「◎」、2〜4人が色むらを認識できなかった場合を「○」、4人が色むらを認識した場合を「△」、全員が色むらを認識した場合を「×」として評価した。
(2)サンプル作成
(例1)
ガラス板として、縦300mm×横300mm×厚さ3mmのソーダライムガラス(旭硝子株式会社製)を使用した。このガラス板の可視光透過率は90.4%であり、Feに換算した全鉄の含有量が0.03質量%であった。
このガラス板を使用してサンドブラスト法により、ガラス板の一面に凹凸を形成し、第1の表面とした。サンドブラスト法では、♯3000の研磨材を吹き付けて行った。
次いで、ガラス板の他の面に、インクジェット法で白色のガラスセラミックス粉末(最大粒子径50μm)と黒色のガラスセラミックス粉末(最大粒子径70μm)を塗布し、次いで、640℃で4分間焼成することで、ガラス板の他の面の全面に着色層を形成し、第2の表面とした。着色層の最大厚みは、80μmであった。
これにより、例1の着色層付きガラス板を得た。
(例2)
ガラス板として、縦300mm×横300mm×厚さ3mmのガラス(AGCガラス・ヨーロッパ製、商品名:LST60)を使用した。このガラス板は、第1の表面に凹凸が形成されている。ガラス板の可視光透過率は90.4%であり、Feに換算した全鉄の含有量が0.08質量%であった。
ガラス板を上記したものを使用し、例1と同じ方法で、ガラス板の他の面に着色層を形成し、第2の表面とした。
(例3)
ガラス板として、縦300mm×横300mm×厚さ3mmのガラス(AGCガラス・ヨーロッパ製、商品名:VRD50)を使用した。このガラス板は、第1の表面に凹凸が形成されている。ガラス板の可視光透過率は90.4%であり、Feに換算した全鉄の含有量が0.08質量%であった。
ガラス板を上記したものを使用し、例1と同じ方法で、ガラス板の他の面に着色層を形成し、第2の表面とした。
(例4)
ガラス板として、縦300mm×横300mm×厚さ3mmのガラス(フィグラ株式会社製、製品名:エッチングガラス)を使用した。このガラス板は、第1の表面に凹凸が形成されている。このガラス板の可視光透過は91.3%であり、Feに換算した全鉄の含有量が0.03質量%であった。
ガラス板を上記したものを使用し、例1と同じ方法で、ガラス板の他の面に着色層を形成し、第2の表面とした。
(例5)
ガラス板として、縦300mm×横300mm×厚さ6mmのガラス(フィグラ株式会社製、製品名:エッチングガラス)を使用した。このガラス板は、第1の表面に凹凸が形成されている。このガラス板の可視光透過率は90.9%であり、Feに換算した全鉄の含有量が0.03質量%であった。
ガラス板を上記したものを使用し、例1と同じ方法で、ガラス板の他の面に着色層を形成し、第2の表面とした。
(例6)
ガラス板として、縦300mm×横300mm×厚さ6mmのソーダライムガラス(旭硝子株式会社製)を使用した。このガラス板は、両面に凹凸が形成されておらず、可視光透過率が88.7%であり、Feに換算した全鉄の含有量が0.08質量%であった。
ガラス板を上記したものを使用し、例1と同じ方法で、ガラス板の他の面に着色層を形成し、第2の表面とした。
Figure 0006939505
表1に示すとおり、ガラス板の第1の表面のRSmが10μm〜300μmで、光沢度が0.1〜70の例1〜5の着色層付きガラス板は、色むらの評価が良好であった。一方で、ガラス板の第1の表面にRSmが10μm以上の凹凸を有さず、光沢度が70超であるガラス板を使用した例6においては、観測者全員により色むらが視認された。
本発明の着色層付きガラス板は、建築物の内装および外装に使用できる。また、本発明の着色層付きガラス板は、電子機器のカバーガラスや内部構造の壁材として使用できる。すなわち、本発明の着色層付きガラス板は、ガラスという材料を使用した様々なデザインを実現する材料として利用できる。
1 着色層付きガラス板
1a 第1の表面
1b 第2の表面
2 ガラス板
3 着色層
4 着色層付きガラス板
4a 第1の表面
4b 第2の表面
5 ガラス板

Claims (9)

  1. ガラス板と着色層とを含む着色層付きガラス板であって、
    第1の表面と前記第1の表面に対向する第2の表面を有し、
    前記第1の表面は凹凸を有し、前記第2の表面は2以上の色を有する前記着色層を有し、
    前記第1の表面の光沢度は0.1〜70であり、前記凹凸は、表面粗さの要素の平均長さRSmが10μm〜300μmであることを特徴とする着色層付きガラス板。
  2. 前記着色層は、無機材料からなる請求項1記載の着色層付きガラス板。
  3. 前記無機材料は、最大粒子径が30μm〜120μmのガラスセラミックスを含む請求項2記載の着色層付きガラス板。
  4. 前記ガラス板は、Feに換算した全鉄の含有量が0.1質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の着色層付きガラス板。
  5. 前記ガラス板は、可視光線透過率が89.5%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の着色層付きガラス板。
  6. 前記ガラス板は、銀及び銅の少なくともいずれか一方を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の着色層付きガラス板。
  7. 前記ガラス板は、表層に圧縮応力層を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の着色層付きガラス板。
  8. 前記着色層の最大厚みが50μm〜300μmである請求項1〜7のいずれか1項に記載の着色層付きガラス板。
  9. 前記第1の表面の表面粗さRaが0.1μm〜5μmである請求項1〜8のいずれか1項に記載の着色層付きガラス板。
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