JP6938290B2 - ダイカスト金型用被膜の製造方法、当該被膜、及びキャビティ面に当該被膜が形成されたダイカスト用金型 - Google Patents

ダイカスト金型用被膜の製造方法、当該被膜、及びキャビティ面に当該被膜が形成されたダイカスト用金型 Download PDF

Info

Publication number
JP6938290B2
JP6938290B2 JP2017172940A JP2017172940A JP6938290B2 JP 6938290 B2 JP6938290 B2 JP 6938290B2 JP 2017172940 A JP2017172940 A JP 2017172940A JP 2017172940 A JP2017172940 A JP 2017172940A JP 6938290 B2 JP6938290 B2 JP 6938290B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
die
coating
alcohol
die casting
casting
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017172940A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019048304A (ja
Inventor
萩野 達也
達也 萩野
成姫 金
成姫 金
英男 太刀川
英男 太刀川
奉努 鈴木
奉努 鈴木
竹内 久人
久人 竹内
岩田 靖
靖 岩田
梶野 正樹
正樹 梶野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Central R&D Labs Inc
Aisin Corp
Original Assignee
Aisin Seiki Co Ltd
Toyota Central R&D Labs Inc
Aisin Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Aisin Seiki Co Ltd, Toyota Central R&D Labs Inc, Aisin Corp filed Critical Aisin Seiki Co Ltd
Priority to JP2017172940A priority Critical patent/JP6938290B2/ja
Publication of JP2019048304A publication Critical patent/JP2019048304A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6938290B2 publication Critical patent/JP6938290B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Molds, Cores, And Manufacturing Methods Thereof (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Description

本発明は、ダイカスト金型用被膜の製造方法、当該被膜、及びキャビティ面に当該被膜が形成されたダイカスト用金型に関する。
ダイカスト法における焼付きとは、例えば、金型のキャビティ内に射出された溶湯がキャビティの内壁又は鋳抜きピン等の表面と反応して融着する現象であり、例えばダイカスト鋳造品の寸法精度、生産性及び外観品質の悪化等の問題に繋がる虞がある。そこで、当該技術分野においては、上記のような焼付きの発生を低減することを目的として、例えば金型の内部及び/又は表面の冷却の強化、離型剤の塗布並びに表面処理等の焼付き対策が広く行われている。
上記のような表面処理の具体例としては、工具鋼からなる金型基材の一部に、酸化物、炭化物、窒化物及び炭窒化物のうちの少なくとも1つ以上の化合物を含む表面処理層の付与されたキャビティ部を有するアルミニウム合金ダイカスト用金型において、ショットブラストにより表面処理層の表面に所定の微細な凹凸を形成することが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。これによれば、微細凹凸の形状によりアルミニウム合金からなる溶湯との接触を制御し、金型への焼付きを抑制して生産効率を高めると共に、優れた耐久性を有するダイカスト用金型を提供することができる。
しかしながら、上記のようなPVD及びCVD等の手法によって形成される表面処理層は、水素及び結晶水(又はOH基)を含まず、1000Hv以上の高い硬度を有するので、鋳造品の金型からの離型時に鋳造品の表面を傷付ける虞がある。特に、上記のように表面処理層の表面に凹凸が形成されている場合、鋳造品の金型からの離型時に鋳造品の表面が凸部によって傷付けられる虞が高い。また、ショットブラスト等の手法により表面処理層の表面に微細な凹凸を形成する場合、加工工程の増大に伴うコストの増大を招く。更に、ダイカスト鋳造品の離型時にかじり等の損傷がダイカスト鋳造品の表面に生じ、これにより焼付きが発生する虞もある。
また、キャビティ面に半球面状に形成された複数個のディンプルが方向性無く分散して形成されたディンプル領域を設けることによりキャビティ面に塗布される離型剤を保持し易くして、鋳造品の金型からの離型を容易にすると共に当該ディンプル領域において複数のディンプルを連通させてランダムで方向性が無い短い流路として作用させることにより、良好な離型性及び湯流れ性を達成することが知られている(例えば、特許文献2を参照。)。これによれば、優れた耐焼付き性及び耐久性を有する鋳造用金型を提供することができる。
しかしながら、上記ディンプルは非常に大きく、開口部の直径が60乃至500μm且つ深さが4乃至30μmもあるため、鋳造品の外観品質(表面品質)を損なう虞がある。また、ディンプルの形成には例えばブラスト加工等の追加工程が必要となるため、製造コストの増大に繋がる。更に、溶湯と基材との反応を抑制することができる表面処理が施されていないので、長期間に亘るダイカスト鋳造においては特に、溶湯と金型の基材との反応に起因する焼付きが生じ易い。
特開2012−183548号公報 国際公開第2011/018922号
上述したように、当該技術分野においては、ダイカスト鋳造品の品質の低下を招くこと無く溶湯に対する優れた耐焼付き性及び高い耐久性を有するダイカスト用金型を提供することができる技術が求められている。即ち、本発明は、ダイカスト鋳造品の品質の低下を招くこと無く溶湯に対する優れた耐焼付き性及び高い耐久性を有するダイカスト用金型を提供することを1つの目的とする。
そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、金属塩の水溶液を分散質とし且つ有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を分散媒とする油中水滴型(W/O型)エマルションをキャビティ面に塗布して乾燥させることにより、上記目的を達成し得る被膜をダイカスト用金型のキャビティ面に形成することができることを見出した。
上記に鑑み、本発明に係るダイカスト金型用被膜の製造方法(以降、「本発明方法」と称呼される場合がある。)は、以下に列挙する第1工程乃至第4工程を含む。
第1工程:金属塩の水溶液を分散質とし且つ有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を分散媒とする油中水滴型エマルションを調製する。
第2工程:ダイカスト用金型のキャビティ面に前記エマルションを塗布する。
第3工程:前記キャビティ面に塗布された前記エマルションを乾燥して被膜を形成する。
第4工程:前記被膜を加熱して硬化させる。
前記分散媒は、水の沸点よりも低い沸点を有する1種以上のアルコールである第1アルコールと、前記第1アルコールの沸点よりも高い沸点を有し且つ前記第1アルコールの親水性よりも低い親水性を有する1種以上のアルコールである第2アルコールと、を含む。
尚、前記油中水滴型エマルションは、無機酸化物微粒子を更に含んでもよい。
更に、本発明に係るダイカスト金型用被膜(以降、「本発明被膜」と称呼される場合がある。)は、金属塩を含む有機シロキサンからなるダイカスト金型用被膜であって、以下に列挙する特徴を有する。
15乃至300HVのビッカース硬度を有し、
0.5乃至2μmの直径及び0.1乃至1μmの深さを有する複数の凹部が表面に形成されており、
前記ダイカスト金型用被膜の表面に占める前記凹部の面積の割合が20乃至80%である。
尚、本発明被膜は、無機酸化物微粒子を更に含んでもよい。
更に、本発明に係るダイカスト用金型(以降、「本発明金型」と称呼される場合がある。)は、上述した本発明被膜がキャビティ面の少なくとも一部に形成されたダイカスト用金型である。
本発明によれば、ダイカスト鋳造品の品質の低下を招くこと無く溶湯に対する優れた耐焼付き性及び高い耐久性を有するダイカスト用金型を提供することができる。
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
本発明の第1実施形態に係るダイカスト金型用被膜の製造方法(第1方法)に含まれる第1工程乃至第4工程の実行順序を示すフローチャートである。 第1方法の第1工程において調製される油中水滴型エマルションの構成を示す模式図である。 第1方法の第2工程においてダイカスト用金型のキャビティ面にエマルションが塗布された状態を示す模式図である。 第1方法の第3工程においてエマルションの塗膜が乾燥されて厚みが小さくなり、分散質としての金属塩の水溶液からなる微細な液滴が大きくなった状態を示す模式図である。 第1方法の第3工程においてエマルションの塗膜が更に乾燥されて厚みが更に小さくなり、分散質としての金属塩の水溶液からなる微細な液滴が更に大きくなった状態を示す模式図である。 第1方法の第3工程においてエマルションの塗膜が更に乾燥されて分散質としての金属塩の水溶液から水が蒸発して液滴が消失し、当該塗膜の表面に凹部が形成された状態を示す模式図である。 本発明の第5実施形態に係るダイカスト金型用被膜の製造方法(第5方法)に含まれる第1工程において、第1原液と第2原液とを混合することによりエマルションを調製する過程の例を説明する模式図である。 第5方法に含まれる第1工程において、第1原液と第2原液とを混合することによりエマルションを調製する過程のもう1つの例を説明する模式図である。 本発明の第8実施形態に係るダイカスト金型用被膜の製造方法(第8方法)に含まれる第1工程において、第1原液と第2原液とを混合することによりエマルションを調製する過程の例を説明する模式図である。 第8方法に含まれる第1工程において、第1原液と第2原液とを混合することによりエマルションを調製する過程のもう1つの例を説明する模式図である。 本発明の実施例1に係る塗液としての油中水滴型エマルションの調製手順の概要を示す模式図である。 実施例1及び比較例1乃至3において各種被膜を形成する基材として使用したダイカストピンの形状を示す模式図である。 実施例1に係るエマルションの塗膜が乾燥されて第1アルコールがエマルションから蒸発すると共に、有機シロキサン前駆体としてのTEOS及びPTMSの縮合反応が進行する様子を示す模式図である。 実施例1に係るエマルションの塗膜が更に乾燥されて分散質としての金属塩の水溶液から水が蒸発して液滴が消失すると共に、有機シロキサン前駆体としてのTEOS及びPTMSの縮合反応が更に進行する様子を示す模式図である。 実施例1に係るエマルションの塗膜の乾燥後の表面を電子顕微鏡(W−SEM)によって観察した結果を示す写真である。 図15に示す線分A−Aに沿って塗膜の表面の形状を計測した結果を示すプロファイルである。 コンピュータによる画像処理により導き出された、実施例1に係るエマルションの塗膜の乾燥後の表面を示す画像である。 実施例1に係るエマルションの具体的な調製手順を示すフローチャートである。
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るダイカスト金型用被膜の製造方法(以降、「第1方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第1方法は、図1のフローチャートに示すように、以下に列挙する第1工程乃至第4工程を含む。
第1工程(ステップS10):金属塩の水溶液を分散質とし且つ有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を分散媒とする油中水滴型エマルションを調製する。
第2工程(ステップS20):ダイカスト用金型のキャビティ面に前記エマルションを塗布する。
第3工程(ステップS30):前記キャビティ面に塗布された前記エマルションを乾燥して被膜を形成する。
第4工程(ステップS40):前記被膜を加熱して硬化させる。
図2に示すように、第1工程(ステップS10)において調製されるエマルション(乳濁液)10においては、相対的に疎水性の高い分散媒11としての有機シロキサン前駆体のアルコール溶液中に、金属塩の水溶液からなる微細な液滴(微粒子)が分散質12として分散されている。即ち、第1工程において調製されるエマルション10は、油中水滴型(W/O型)エマルションである。ここで、「有機シロキサン前駆体」とは、化学反応によりシロキサン結合を形成することにより、珪素原子に直接結合された有機基を有するシロキサン化合物を生成することができる物質を指す。また、エマルション10は、上記以外の構成成分を更に含んでいてもよい。このような構成成分の具体例としては、例えば、有機シロキサン前駆体が反応して新たなシロキサン結合を形成する反応に必要とされる触媒等を挙げることができる。
但し、分散媒は、水の沸点よりも低い沸点を有する1種以上のアルコールである第1アルコールと、第1アルコールの沸点よりも高い沸点を有し且つ第1アルコールの親水性よりも低い親水性を有する1種以上のアルコールである第2アルコールと、を含む。換言すれば、第1アルコールは100℃未満の沸点を有する各種アルコールの中から選ばれる1種のアルコール又は2種以上のアルコールの混合物であり、第2アルコールは第1アルコールの沸点よりも高い沸点を有する各種アルコールの中から選ばれる1種のアルコール2種以上のアルコールの混合物である。尚、第2アルコールは140℃以下の沸点を有するアルコールであることが望ましい。更に、第2アルコールは、第1アルコールの親水性よりも低い親水性を有する。換言すれば、第1アルコールは第2アルコールに比べて親水性が高く、第2アルコールは第1アルコールに比べて疎水性が高い。
エマルション10を構成する金属塩、有機シロキサン前駆体及びアルコール(即ち、第1アルコール及び第2アルコール)に該当する具体的な物質の種類及び濃度は、上記のような油中水滴型エマルションが形成されるように、適宜選択される。これらの構成成分の詳細については、後述する他の実施形態に関する説明において詳細に述べる。
次に、第2工程(ステップS20)においては、図3に示すように、ダイカスト用金型20のキャビティ面21にエマルション10が塗布される。「キャビティ面」とは、ダイカスト用金型の内部においてダイカスト鋳造品の形状に対応する空間を画定する内壁面である。キャビティ面が複数の金型用部品によって構成される場合、キャビティ面は、これら複数の部品のキャビティ面を構成する表面を指す。
尚、第2工程においてエマルション10が塗布されるキャビティ面21は、必ずしも当該金型のキャビティ面の全面である必要は無い。例えば、キャビティ面の一部の領域にのみ高い離型性が求められる場合は、当該領域にのみエマルション10を塗布するようにしてもよい。
また、エマルション10の塗布方法は、油中水滴型の構造が維持されたまま塗布することが可能である限り、特に限定されない。典型的には、エマルション20は、所謂「ディッピング」によって、ダイカスト用金型20のキャビティ面21に塗布される。
尚、本発明の効果を達成するためには、第2工程における塗布過程において油中水滴型の構造が少なくとも部分的には維持される必要がある。従って、エマルション10を構成する金属塩、有機シロキサン前駆体及びアルコールに該当する具体的な物質の種類及び濃度は、第2工程において採用される塗布方法に応じて、油中水滴型の構造が維持されるように、適宜選択される。尚、上記「油中水滴型の構造」とは、金属塩の水溶液からなる微細な液滴(分散質12)が有機シロキサン前駆体のアルコール溶液(分散媒11)中に分散されている構造を指す。
次に、第3工程(ステップS30)においては、キャビティ面21に塗布されたエマルション10が乾燥され、図4において白抜きの矢印によって示すように、より低い沸点を有する溶媒(主として、第1アルコール)から順にエマルション10から蒸発する。これに伴い、図4において黒塗りの矢印によって示すように、キャビティ面21に塗布されたエマルション10の厚みが小さくなる(塗膜が薄くなる)。その結果、分散媒11としての有機シロキサン前駆体のアルコール溶液の疎水性が高まり、高いイオン強度を有する分散質12としての金属塩の水溶液からなる微細な液滴が互いに結合(合一)して、より小さい比表面積を有する、より大きい液滴となる。図5は、乾燥過程が更に進み、より低い沸点を有する溶媒(主として、第1アルコール)の全てがエマルション10から蒸発した状態を示す模式図である。
更に乾燥が進むと、図6において白抜きの矢印及び黒塗りの矢印によってそれぞれ示すように、分散媒11としての有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を構成する、より高い沸点を有する溶媒(主として、第2アルコール)と、分散質12としての金属塩の水溶液を構成する水と、が蒸発し始める。水の蒸発に伴い、分散質12としての液滴が小さくなり、やがて消失する。その結果、エマルション10の塗膜の表面において分散質12が分散媒11に埋没していた部分の少なくとも一部が凹部13として残る。
上記のようにエマルション10の塗膜の表面に凹部13が残るためには、分散質12の消失に伴って生ずる凹部13に周囲の分散媒11が流れ込むことを防止する必要がある。従って、エマルション10を構成する金属塩、有機シロキサン前駆体及びアルコールに該当する具体的な物質の種類及び濃度は、分散質12としての液滴が縮小及び/又は消失しても、結果として生ずる空間に周囲の分散媒11が流れ込まないように適宜選択される。具体的には、第3工程における分散質12からの水の蒸発と並行して起こる分散媒11からの溶媒の蒸発に伴って分散媒11の粘度が十分に高まり且つ流動性が十分に低下するように、これらの構成成分が適宜選択される。
尚、第3工程における乾燥の具体的な手法及び条件は、上記のようにエマルション10の塗膜の表面に分散質12としての液滴に対応する凹部13が残ることが可能である限り、特に限定されない。具体的には、第3工程における乾燥方法は、例えば、室温における自然乾燥であってもよく、或いは、何らかの加熱手段による加熱を伴うものであってもよい。
上述したように、第3工程における乾燥により、上記のように各種溶媒が蒸発して凹部13が形成されると共に、分散媒11に含まれる有機シロキサン前駆体が反応して新たなシロキサン結合が形成され、ガラス状のシロキサン骨格を有する有機シロキサンを母材とする被膜(ガラス被膜)へとエマルション10の塗膜が変化する。
しかしながら、例えば第3工程における乾燥方法及びエマルション10の構成成分等によっては、第3工程における乾燥後も一部の溶媒等が被膜中に残存している可能性がある。また、有機シロキサン前駆体から有機シロキサンを生成する反応も未完了である可能性がある。このような状態では被膜の硬度が不十分(軟らか過ぎる)であり、被膜の耐摩耗性等が不十分となる。その結果、例えば金型の使用に伴う被膜の摩耗等の問題が生じて、溶湯に対する優れた耐焼付き性及び高い耐久性を有するダイカスト用金型を提供するという本発明の目的を達成することが困難となる虞がある。
そこで、第4工程(ステップS40)においては、上記被膜(第3工程において乾燥されたエマルション20の塗膜)を加熱して硬化させる。第4工程における加熱の具体的な手法及び条件は、第3工程においてエマルション10の塗膜の表面に形成された凹部13の形状を少なくとも部分的には維持することが可能である限り、特に限定されない。具体的には、例えば、赤外線ヒータ等の熱源を備える恒温槽において、有機シロキサン前駆体の変質及び/又は分解並びに形成される有機シロキサンを母材とする被膜(ガラス被膜)の流動及び/又は熔解等が起こらない温度範囲にて、上記被膜を加熱して硬化させることができる。更に、第4工程における乾燥過程を減圧下において行ってもよい。
上記のように、第4工程における加熱の具体的な手法及び条件は、第3工程においてエマルション10の塗膜の表面に形成された凹部の形状を少なくとも部分的には維持することが可能であるように、適宜定められる。換言すれば、エマルション10を構成する金属塩、有機シロキサン前駆体及びアルコールに該当する具体的な物質の種類及び濃度は、第4工程における加熱の具体的な手法及び条件においても、第3工程においてエマルション10の塗膜の表面に形成された凹部13の形状が少なくとも部分的には維持されるように、適宜定められる。
〈効果〉
上記のように、第1方法によれば、所定の構成成分からなるエマルションをキャビティ面に塗布し、乾燥及び硬化させることにより、微細な凹部が表面に形成された有機シロキサンを母材とする被膜をキャビティ面に極めて簡潔に形成することができる。即ち、前述した従来技術のようにショットブラスト及び/又はショットピーニング等の表面加工を別途施す必要が無いので、製造コストを低減しつつ、離型剤溜まりとして機能する微細な凹部が表面に形成されたダイカスト金型用被膜を製造することができる。
また、第1方法によって形成されるダイカスト金型用被膜は、有機シロキサンを母材とするので軟らかく(例えば、15乃至300HVのビッカース硬度を有する)、ダイカスト鋳造品の金型からの離型時にダイカスト鋳造品の表面に傷を付ける虞が少ない。
更に、上記凹部は、上述したように、エマルションの塗膜の表面において分散媒に埋没していた分散質から水分が蒸発することによって形成される。エマルションの塗膜の表面において分散質が埋没していない領域には、平坦且つ均一な表面が分散媒によって形成されており、当該表面から突出する突起等の凸部は実質的に存在しない。上述した第3工程における各種溶媒の蒸発に伴って塗膜の厚みが減少し、更に有機シロキサン前駆体の反応により有機シロキサン被膜が形成され、次の第4工程において当該被膜が硬化されても、上記領域においては実質的に凸部が存在しない平滑な表面が維持される。
上記のように、第1方法によって形成されるダイカスト金型用被膜は、その表面に凸部が実質的に存在しないので、ダイカスト鋳造品の金型からの離型時にダイカスト鋳造品の表面に傷を付ける虞が少なく、ダイカスト金型用被膜として好適である。従って、当該被膜の形成後に凸部を除去するための二次的な加工を施す必要が無く、製造コストの増大を招く虞が無い。
加えて、第1方法によって形成されるダイカスト金型用被膜の表面に形成される微細な凹部は浅い(例えば、0.1乃至1μmの深さを有する)ことから、ダイカスト鋳造品の外観品質(表面品質)を損なう虞が低い。
以上のように、第1方法によれば、ダイカスト鋳造品の品質の低下を招くこと無く溶湯に対する優れた耐焼付き性及び高い耐久性を有するダイカスト用金型を提供することができる。
《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係るダイカスト金型用被膜の製造方法(以降、「第2方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
上述したように、第1方法の第1工程において調製されるエマルション10は、金属塩の水溶液を分散質12とし且つ有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を分散媒11とする油中水滴型エマルションである。また、上記分散媒11は、水の沸点よりも低い沸点を有する1種以上のアルコールである第1アルコールと、第1アルコールの沸点よりも高い沸点を有し且つ第1アルコールの親水性よりも低い親水性を有する1種以上のアルコールである第2アルコールと、を含む。
本発明者は、鋭意研究の結果、第1アルコール及び第2アルコールのそれぞれにつき、上記要件を満たす好ましい選択肢を特定した。具体的には、第1アルコールは、メタノール、エタノール、2−プロパノール及び2−メチル−2−プロパノールからなる群より選ばれる1種以上のアルコールである。また、第2アルコールは、2−プロパノール、1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、3−ペンタノール、2−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール及び1−ペンタノールからなる群より選ばれる1種以上のアルコールである。
尚、上記に示すように、2−プロパノール及び2−メチル−2−プロパノールの2種のアルコールは、第1アルコール及び第2アルコールの両方の選択肢に含まれている。しかしながら、第1方法及び第2方法を始めとする本発明方法においては、上述したように、第1アルコールの沸点よりも高い沸点を有し且つ第1アルコールの親水性よりも低い親水性を有する1種以上のアルコールが、第2アルコールとして選択される。即ち、同一のアルコールが第1アルコール及び第2アルコールの両方として選択されることは無い。
〈効果〉
第2方法においては、上記選択肢の中から、水の沸点よりも低い沸点を有する1種以上のアルコールが第1アルコールとして選択され、第1アルコールの沸点よりも高い沸点を有し且つ第1アルコールの親水性よりも低い親水性を有する1種以上のアルコールが第2アルコールとして選択される。これにより、所望の性状を有するダイカスト金型用被膜の原料として、金属塩の水溶液を分散質とし且つ有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を分散媒とする油中水滴型エマルションを容易に且つ確実に調製することができる。
典型的には、第1アルコールはエタノールと2−プロパノールとの混合物であり、第2アルコールは1−ブタノールである。
《第3実施形態》
以下、本発明の第3実施形態に係るダイカスト金型用被膜の製造方法(以降、「第3方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
上述したように、第1方法及び第2方法の第1工程において調製されるエマルション10は、金属塩の水溶液を分散質12とし且つ有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を分散媒11とする油中水滴型エマルションである。
本発明者は、鋭意研究の結果、有機シロキサン前駆体についての好ましい選択肢を特定した。具体的には、有機シロキサン前駆体は、少なくとも1種のテトラアルコキシシランと、アルキルアルコキシシラン、アルケニルアルコキシシラン、アリールアルコキシシラン及びアルキルシラザンからなる群より選ばれる1種以上の化合物と、を含む。
より具体的には、上記テトラアルコキシシランは、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランからなる群より選ばれる1種以上の化合物である。上記アルキルアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチチルジメトキシシラン、及びシクロヘキシルメチルジメトキシシランからなる群より選ばれる1種以上の化合物である。上記アルケニルアルコキシシランは、ビニルトリメトキシシランである。上記アリールアルコキシシランは、フェニルトリメトキシシラン及びジフェニルジメトキシシランからなる群より選ばれる1種以上の化合物である。上記アルキルシラザンは、ヘキサメチルジシラザンである。
〈効果〉
第3方法においては、上記選択肢の中から、少なくとも1種のテトラアルコキシシランと、珪素原子に直接結合された有機基を有するアルコキシシラン及び/又はアルキルシラザンとが、有機シロキサン前駆体として選択される。これにより、所望の性状を有するダイカスト金型用被膜の原料として、金属塩の水溶液を分散質とし且つ有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を分散媒とする油中水滴型エマルションを容易に且つ確実に調製することができる。
尚、ダイカスト金型用被膜としての耐久性を維持する観点からは、珪素原子に直接結合された有機基を有するアルコキシシランにおける有機基は、化学的に安定であることが臨まれる。このような有機基の具体例としては、例えばフェニル基等のアリール基を挙げることができる。
典型的には、テトラエトシキシラン(TEOS:テトラエチルオルト珪酸)とフェニルトリメトシキシランとの組み合わせが有機シロキサン前駆体として選択される。
《第4実施形態》
以下、本発明の第4実施形態に係るダイカスト金型用被膜の製造方法(以降、「第4方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
上述したように、第1方法乃至第3方法の第1工程において調製されるエマルション10は、金属塩の水溶液を分散質12とし且つ有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を分散媒11とする油中水滴型エマルションである。
上記金属塩は、分散質12としての金属塩の水溶液におけるイオン強度を高め、上記エマルション10において、分散媒11としての有機シロキサン前駆体のアルコール溶液中に微細な液滴として分散させることに寄与する。尚、最終的にダイカスト金型用被膜の構成成分として残る物質における当該金属塩の含有率は極めて小さいが、当該被膜がキャビティ面に形成される金型によって製造される鋳造品の材料との反応性が低く、焼付き等の問題を招く虞が低い物質を選択することが望ましいことは言うまでも無い。
そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、上記金属塩についての好ましい選択肢を特定した。具体的には、上記金属塩は、マグネシウム塩及びカルシウム塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物である。
〈効果〉
第4方法においては、上記選択肢の中から、少なくとも1種の化合物が上記金属塩として選択される。これにより、所望の性状を有するダイカスト金型用被膜の原料として、金属塩の水溶液を分散質とし且つ有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を分散媒とする油中水滴型エマルションを容易に且つ確実に調製することができる。
より具体的には、上記金属塩は、硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物である。典型的には、上記金属塩は、硝酸マグネシウムと硝酸カルシウムとの組み合わせである。
《第5実施形態》
以下、本発明の第5実施形態に係るダイカスト金型用被膜の製造方法(以降、「第5方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
上述したように、第1方法乃至第3方法の第1工程において調製されるエマルション10は、金属塩の水溶液を分散質12とし且つ有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を分散媒11とする油中水滴型エマルションである。また、上記分散媒11は、水の沸点よりも低い沸点を有する1種以上のアルコールである第1アルコールと、第1アルコールの沸点よりも高い沸点を有し且つ第1アルコールの親水性よりも低い親水性を有する1種以上のアルコールである第2アルコールと、を含む。
上記要件が満たされる限りエマルション10の具体的な調製方法は特に限定されない。一方、エマルションは、例えば長期間に亘って静置された場合等において、やがては分散質からなる1つの相と分散媒からなる1つの相とに層状に分かれて相分離することが一般的である。このような相分離が速いエマルションについては、エマルションの状態で長期間に亘って保管することは困難である。
従って、エマルションの構成成分を、これらの構成成分が均一に分散又は溶解することが可能な複数の原液に分けた状態にて保管しておき、第2工程においてダイカスト用金型のキャビティ面にエマルションを塗布する直前に、これらの原液を混合して、目的とするエマルションを調製することが望ましい場合がある。
上記のような観点から、例えば、上述した金属塩、有機シロキサン前駆体、水及び第1アルコールを含む相対的に親水性の高い原液と、上述した第2アルコールを含む相対的に疎水性の高い原液と、を混合することにより、エマルション10を調製してもよい。
そこで、第5方法においては、第1工程は、第1原液と第2原液とを混合することを含む。第1原液は、上述した金属塩、有機シロキサン前駆体、水、及び第1アルコールを構成する少なくとも1種のアルコールを含む原液である。第2原液は、上述した第2アルコールを構成する少なくとも1種のアルコールを含む原液である。
第5方法に含まれる第1工程においては、例えば、図7に示すように、金属塩、有機シロキサン前駆体、水、及び第1アルコールを含む原液である第1原液と、第2アルコールを含む原液である第2原液と、を混合することにより、上述したようなエマルションを調製してもよい。
或いは、例えば、図8に示すように、金属塩、有機シロキサン前駆体、水、及び第1アルコールを構成するアルコール(第1アルコールA)を含む原液である第1原液と、第1アルコールを構成する他のアルコール(第1アルコールB)及び第2アルコールを含む原液である第2原液と、を混合することにより、上述したようなエマルションを調製してもよい。
第1原液及び第2原液の組成は、例えば、それぞれの原液を構成する構成成分の溶解度及び親水性又は疎水性等の性状に応じて、これらの構成成分が均一に分散又は溶解するように適宜選択される。
〈効果〉
第5方法によれば、例えば、第2工程においてダイカスト用金型のキャビティ面にエマルションを塗布するまでの期間において、当該エマルションの構成成分が均一に分散又は溶解している状態を維持しつつ保管することが可能となるため、ダイカスト金型用被膜の製造をより容易なものとすることができる。
《第6実施形態》
以下、本発明の第6実施形態に係るダイカスト金型用被膜の製造方法(以降、「第6方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
上述したように、第1方法乃至第5方法を始めとする本発明方法によって形成されるダイカスト金型用被膜は、有機シロキサンを母材とするので軟らかく、ダイカスト鋳造品の金型からの離型時にダイカスト鋳造品の表面に傷を付ける虞が少ない。しかしながら、例えば、ダイカスト鋳造品の硬度及び鋳造条件等によっては、本発明方法によって形成されるダイカスト金型用被膜の摩耗により、溶湯に対する優れた耐焼付き性を維持することが困難となる場合がある。
そこで、第6方法において、上述した油中水滴型エマルションは、無機酸化物微粒子を更に含む。無機酸化物微粒子を構成する物質及び当該粒子の大きさ等は、例えば、溶湯の組成、ダイカスト鋳造品の硬度、及び鋳造条件等を考慮して、適宜定められる。具体的には、溶湯を構成する物質との意図しない反応に起因する焼付き、鋳造条件下における劣化及び分解、並びにダイカスト鋳造品の外観品質(表面品質)の低下等の問題を生ずることの無いように、例えば、化学的及び物理的に十分な安定性、硬度、粒子形状、及び粒径を有する無機酸化物微粒子が選択される。
好ましくは、上記無機酸化物微粒子は、酸化窒化チタン、酸化チタン及び酸化アルミニウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物である。
〈効果〉
第6方法によれば、例えば焼付き及びダイカスト鋳造品の外観品質の低下等の問題を低減しつつ、当該方法によって形成されるダイカスト金型用被膜の摩耗により溶湯に対する優れた耐焼付き性を維持することが困難となる虞を低減することができる。即ち、ダイカスト鋳造品の品質及び生産効率を低下させること無く、ダイカスト金型用被膜の耐久性を高め、ダイカスト鋳造品の製造コストを低減することができる。
《第7実施形態》
以下、本発明の第7実施形態に係るダイカスト金型用被膜の製造方法(以降、「第7方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
前述したように、本発明方法によれば、最終的には、分散媒に含まれる有機シロキサン前駆体が反応して新たなシロキサン結合が形成され、ガラス状のシロキサン骨格を有する有機シロキサンを母材とする被膜(ガラス被膜)が形成される。従って、第6方法に関して上述したように無機酸化物微粒子を上記エマルションが更に含む場合、当該無機酸化物微粒子は有機シロキサンからなる母材中に分散されることとなる。
一方、無機酸化物微粒子の表面性状は一般的に親水性が高いので、そのままの表面性状では、最終的に形成されるダイカスト金型用被膜の母材中に当該微粒子を均一に分散させることが困難な場合がある。
上記観点から、第7方法において、上記無機酸化物微粒子としては、ナノメートル(nm)レベルの粒径を有する微粒子が用いられる。これは、ナノメートル(nm)レベル(例えば、1nm乃至数十nm)の粒径を有する微粒子は、液体(当該粒子の分散媒)のブラウン運動により沈降すること無く、液体中に均一に分散することができるためである。尚、上記無機酸化物微粒子として、疎水化表面処理が施された微粒子を使用してもよい。この場合、疎水化表面処理の具体例としては、例えば、金属石鹸等の界面活性剤を用いる表面処理等を挙げることができる。
〈効果〉
第7方法によれば、疎水化表面処理により無機酸化物微粒子の表面の疎水性が高まるので、最終的に形成される有機シロキサンを母材とする被膜(ガラス被膜)中に無機酸化物微粒子をより均一に分散させることができる。その結果、例えば、無機酸化物微粒子の凝集及び母材からの剥離を低減することができ、結果として、第7方法によって形成されるダイカスト金型用被膜の耐摩耗性及び耐久性を高めることができる。
《第8実施形態》
以下、本発明の第8実施形態に係るダイカスト金型用被膜の製造方法(以降、「第8方法」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
図7及び図8を参照しながら第5方法に関して上述したように、金属塩、有機シロキサン前駆体、水、及び第1アルコールを構成する少なくとも1種のアルコールを含む原液である第1原液と、第2アルコールを構成する少なくとも1種のアルコールを含む原液である第2原液とを混合することにより、上述したような油中水滴型エマルションを調製してもよい。第6方法及び第7方法に関して上述したように無機酸化物微粒子を上記エマルションに更に含ませる場合は、上記第1原液及び第2原液の何れに無機酸化物微粒子を配合してもよい。但し、何れの場合においても、最終的には、当該無機酸化物微粒子は有機シロキサンからなる母材中に分散されることとなる。
従って、無機酸化物微粒子の母材に対する親和性を考慮すると、相対的に高い親水性を有する第1原液よりも、相対的に高い疎水性を有する第2原液に、無機酸化物微粒子を配合することが望ましい。特に、無機酸化物微粒子の表面性状が表面処理によって疎水化されている場合は尚更である。
そこで、第8方法においては、例えば、図9及び図10に示すように、相対的に高い疎水性を有する第2原液に無機酸化物微粒子が配合される。即ち、第1工程は、金属塩、有機シロキサン前駆体、水、及び第1アルコールを構成する少なくとも1種のアルコールを含む原液である第1原液と、無機酸化物微粒子及び第2アルコールを構成する少なくとも1種のアルコールを含む原液である第2原液と、を混合することを含む。
〈効果〉
第8方法によれば、相対的に高い疎水性を有する第2原液に無機酸化物微粒子が配合されるので、相対的に高い親水性を有する第1原液に無機酸化物微粒子が配合される場合と比較して、無機酸化物微粒子の表面の疎水性が高まる。その結果、最終的に形成される有機シロキサンを母材とする被膜(ガラス被膜)中に無機酸化物微粒子をより均一に分散させることができる。無機酸化物微粒子の疎水化表面処理が施されている場合は、無機酸化物微粒子を更に均一に被膜中に分散させることができる。
従って、例えば、無機酸化物微粒子の凝集及び母材からの剥離を低減することができ、結果として、第7方法によって形成されるダイカスト金型用被膜の耐摩耗性及び耐久性を高めることができる。
《第9実施形態》
本明細書の冒頭において述べたように、本発明は、ダイカスト金型用被膜の製造方法、当該被膜、及びキャビティ面に当該被膜が形成されたダイカスト用金型に関する。以下、本発明の第9実施形態に係るダイカスト金型用被膜(以降、「第9被膜」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第9被膜は、金属塩を含む有機シロキサンからなるダイカスト金型用被膜である。本発明方法に関して前述したように、上記金属塩としては、当該被膜がキャビティ面に形成される金型によって製造される鋳造品の材料との反応性が低く、焼付き等の問題を招く虞が低い物質を選択することが望ましい。好ましくは、上記金属塩は、マグネシウム塩及びカルシウム塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物である。より好ましくは、上記金属塩は、硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物である。典型的には、上記金属塩は、硝酸マグネシウムと硝酸カルシウムとの組み合わせである。
更に、第9被膜は、以下の(1)乃至(3)に列挙する特徴を有する。
(1)15乃至300HVのビッカース硬度を有する。
(2)0.5乃至2μmの直径及び0.1乃至1μmの深さを有する複数の凹部が表面に形成されている。
(3)ダイカスト金型用被膜の表面に占める凹部の面積の割合が20乃至80%である。
当該被膜のビッカース硬度が15HV未満である場合、被膜としての耐摩耗性が不十分となり、金型の使用に伴って被膜が摩耗し、所期の耐焼付き性を十分な期間に亘って維持することが困難となるので望ましくない。一方、当該被膜のビッカース硬度が300HVよりも大きい場合、被膜としての柔軟性が不十分となり、金型の使用に伴ってキャビティ面から被膜が剥離し、所期の耐焼付き性を十分な期間に亘って維持することが困難となるので望ましくない。また、例えばキャビティの形状等によっては、ダイカスト鋳造品を金型から離型するときにダイカスト鋳造品の表面を傷付ける等の問題に繋がる虞がある。
また、被膜の表面に形成された凹部の直径が0.5μm未満である場合、離型剤溜まりとしての機能が不十分となり、例えば焼付き及びかじり等の問題に繋がる虞があるので望ましくない。一方、被膜の表面に形成された凹部の直径が2μmよりも大きい場合、例えば、ダイカスト鋳造品の表面に凹部の形状が転写する等して、ダイカスト鋳造品の外観品質(表面品質)を損なう虞があるので望ましくない。
更に、被膜の表面に形成された凹部の深さが0.1μm未満である場合、離型剤溜まりとしての機能が不十分となり、例えば焼付き及びかじり等の問題に繋がる虞があるので望ましくない。一方、被膜の表面に形成された凹部の深さが1μmよりも大きい場合、例えば、ダイカスト鋳造品の表面に凹部の形状が転写する等して、ダイカスト鋳造品の外観品質を損なう虞があるので望ましくない。
加えて、ダイカスト金型用被膜の表面に占める上記凹部の面積の割合が20%未満である場合、離型剤溜まりとしての機能が不十分となり、例えば焼付き及びかじり等の問題に繋がる虞があるので望ましくない。一方、ダイカスト金型用被膜の表面に占める上記凹部の面積の割合が80%よりも大きい場合、被膜の表面の大部分を凹部が占めることとなり、例えば、凹部が形成されていない領域が(稜線状の)凸部とみなすことができる状態となる。この場合、例えば、ダイカスト鋳造品の表面に当該凸部の形状が転写する等して、ダイカスト鋳造品の外観品質を損なう虞があるので望ましくない。
尚、第9被膜の製造方法は特に限定されないが、例えば、上述した第1方法乃至第8方法を始めとする本発明に係るダイカスト金型用被膜(本発明方法)の何れによっても製造することができる。
〈効果〉
上記のように、第9被膜は、当該被膜のビッカース硬度15乃至300HVの範囲にあるので、十分な耐摩耗性を有し、所期の耐焼付き性を十分な期間に亘って維持することができる。また、第9被膜は、その表面に形成された凹部の大きさ及び深さが上述した範囲にあるので、ダイカスト鋳造品の外観品質を損なうこと無く離型剤溜まりとしての機能を十分に発揮して、所期の耐焼付き性を十分な期間に亘って維持することができる。更に、第9被膜の表面に占める凹部の面積の割合が20乃至80%の範囲にあるので、ダイカスト鋳造品の外観品質を損なうこと無く、所期の耐焼付き性を発揮することができる。
《第10実施形態》
以下、本発明の第10実施形態に係るダイカスト金型用被膜(以降、「第10被膜」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
上述したように、第1方法乃至第5方法を始めとする本発明に係るダイカスト金型用被膜の製造方法(本発明方法)によって形成されるダイカスト金型用被膜は、有機シロキサンを母材とするので軟らかく、ダイカスト鋳造品の金型からの離型時にダイカスト鋳造品の表面に傷を付ける虞が少ない。しかしながら、例えば、ダイカスト鋳造品の硬度及び鋳造条件等によっては、本発明方法によって形成されるダイカスト金型用被膜の摩耗により、溶湯に対する優れた耐焼付き性を維持することが困難となる場合がある。
そこで、第10被膜は、無機酸化物微粒子を更に含む。第6方法に関する説明において既に述べたように、無機酸化物微粒子を構成する物質及び当該粒子の大きさ等は、例えば、溶湯の組成、ダイカスト鋳造品の硬度、及び鋳造条件等を考慮して、適宜定められる。具体的には、溶湯を構成する物質との意図しない反応に起因する焼付き、鋳造条件下における劣化及び分解、並びにダイカスト鋳造品の外観品質(表面品質)の低下等の問題を生ずることの無いように、例えば、化学的及び物理的に十分な安定性、硬度、粒子形状、及び粒径を有する無機酸化物微粒子が選択される。
好ましくは、上記無機酸化物微粒子は、酸化窒化チタン、酸化チタン及び酸化アルミニウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物である。
〈効果〉
第10被膜によれば、例えば焼付き及びダイカスト鋳造品の外観品質の低下等の問題を低減しつつ、当該被膜の摩耗により溶湯に対する優れた耐焼付き性を維持することが困難となる虞を低減することができる。即ち、ダイカスト鋳造品の品質及び生産効率を低下させること無く、ダイカスト金型用被膜の耐久性を高め、ダイカスト鋳造品の製造コストを低減することができる。
《第11実施形態》
本明細書の冒頭において述べたように、本発明は、ダイカスト金型用被膜の製造方法、当該被膜、及びキャビティ面に当該被膜が形成されたダイカスト用金型に関する。以下、本発明の第11実施形態に係るダイカスト用金型(以降、「第11金型」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第11金型は、上述した第9被膜及び第10被膜を始めとする本発明に係るダイカスト金型用被膜(本発明被膜)がキャビティ面の少なくとも一部に形成された、ダイカスト用金型である。本発明被膜は、上述した第1方法乃至第8方法を始めとする本発明に係るダイカスト金型用被膜(本発明方法)の何れによっても製造することができる。本発明方法及び本発明被膜の詳細については既に上述したので、ここでは説明を繰り返さない。
上述したように、第11金型においては、キャビティ面の少なくとも一部に本発明被膜が形成されている。即ち、第1方法に関する説明において既に述べたように、本発明被膜が形成されるキャビティ面は、必ずしも第11金型のキャビティ面の全面である必要は無い。例えば、キャビティ面の一部の領域にのみ高い離型性が求められる場合は、当該領域にのみ本発明被膜を形成するようにしてもよい。
〈効果〉
第11金型は、本発明被膜がキャビティ面の少なくとも一部に形成されたダイカスト用金型である。従って、第11金型によれば、ダイカスト鋳造品の外観品質を損なうこと無く、所期の耐焼付き性を長期間に亘って維持することができる。その結果、ダイカスト鋳造品の品質を低下させること無く、ダイカスト鋳造品の製造コストを低減することができる。
本実施例においては、本発明の1つの実施態様である実施例1と、従来技術及び比較対照用の実施態様である比較例1乃至比較例3と、に係るダイカスト金型用被膜の各種試料を調製し、それぞれの耐焼付き性等について評価した。
《各種試料の調製》
(実施例1)
先ず、実施例1に係るダイカスト金型用被膜を形成するための塗液は、金属塩の水溶液を分散質とし且つ有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を分散媒とする油中水滴型エマルションであって、分散媒は第1アルコール及び第2アルコールを含む。水の沸点よりも低い沸点を有する1種以上のアルコールである第1アルコールとしては、エタノール及び2−プロパノールの組み合わせを採用した。一方、第1アルコールの沸点よりも高い沸点を有し且つ第1アルコールの親水性よりも低い親水性を有する1種以上のアルコールである第2アルコールとしては、1−ブタノールを採用した。
また、金属塩としては、硝酸マグネシウムと硝酸カルシウムとの混合物を採用した。更に、有機シロキサン前駆体としては、テトラエトキシシラン(TEOS)及びフェニルトリメトシキシラン(PTMS)の組み合わせを採用した。加えて、無機酸化物微粒子として、疎水的な表面処理を施した酸化窒化チタン微粒子を更に配合した。
尚、図11に示すように、実施例1に係る塗液としての油中水滴型エマルションは、第1原液と第2原液とを混合することによって調製した。第1原液は、(a)に示すように、金属塩としての硝酸マグネシウムと硝酸カルシウム、有機シロキサン前駆体としてのTEOS及びPTMS、水、及び第1アルコールを構成する一方のアルコールであるエタノールを含む原液である。一方、第2原液は、(b)に示すように、無機酸化物微粒子としての酸化窒化チタン(TiON)微粒子、第2アルコールを構成するアルコールである1−ブタノール、及び第1アルコールを構成する他方のアルコールである2−プロパノールを含む原液である。
上記のような第1原液と第2原液とを混合することにより、(c)に示すように、金属塩の水溶液を分散質とし且つ有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を分散媒とする油中水滴型エマルションを調製した(第1工程)。
そして、図12に示す金型用合金工具鋼SKD61製のダイカストピン(鋳抜きピン)のキャビティ内に露出する面(キャビティ面)に上記エマルションを塗布した(第2工程)。このとき、塗布方法としては、上記ダイカストピンのキャビティ面を上記エマルション中に浸した後に引き上げる所謂「ディッピング」を採用した。
次に、上記ダイカストピンのキャビティ面に塗布された上記エマルションを大気雰囲気下、室温において10分間に亘って自然乾燥させて被膜を形成した(第3工程)。この間、図13の(a)において斜線が施された矢印によって示すように、相対的に低い沸点を有する溶媒(本例においては、エタノール及び2−プロパノール)がエマルション10から蒸発する。これに伴い、(b)に示すように、有機シロキサン前駆体としてのTEOS及びPTMSの縮合反応が進行して新たなシロキサン結合が形成され、ガラス状のシロキサン骨格を有する有機シロキサンが生成される。
更に乾燥が進むと、図14において斜線が施された矢印及び黒塗りの矢印によってそれぞれ示すように、分散媒11としての有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を構成する、相対的に高い沸点を有する溶媒(本例においては、1−ブタノール)と、分散質12としての金属塩の水溶液を構成する水と、が蒸発し始める。水の蒸発に伴い、分散質12としての液滴が小さくなり、やがて消失する。その結果、エマルション10の塗膜の表面(図14においては向かって右側)において分散質12が分散媒11に埋没していた部分の少なくとも一部が凹部13として残る。
この時点におけるエマルション10の塗膜の表面を電子顕微鏡(W−SEM)によって観察した結果、図15に示すように、乾燥された塗膜(被膜)の表面には多数の微細な凹部が形成されていることが確認された。そこで、図15において線分A−Aによって示す部分につき、表面の微細な形状を計測した結果、図16に示すようなプロファイルが得られた。当該プロファイルから、0.5乃至2μmの直径及び0.1乃至1μmの深さを有する複数の凹部が表面に形成されていることが確認された。また、凹部が形成されていない領域には、平坦且つ均一な表面が形成されており、当該表面から突出する突起等の凸部は実質的に存在しないことも確認された。
そこで、コンピュータによる画像処理により、乾燥された塗膜(被膜)の表面の三次元画像を導き出した結果を図17に示す。図17に示すように、実施例1に係るエマルション10の塗膜の表面には、当該エマルションをキャビティ面に塗布した後に乾燥させるだけで、離型剤溜まりとして好適に機能し得る微細な凹部が容易に形成される。
その後、200℃の温度において10分間に亘って上記被膜を加熱して硬化させることにより、実施例1に係るダイカスト金型用被膜を形成した(第4工程)。
尚、上記エマルションの具体的な調製手順は、図18のフローチャートに示す通りである。当該フローチャートにおけるステップS11からステップS17までの工程は、図1に示したフローチャートを参照しながら前述したステップS10に該当する。また、図18におけるステップS13に示すように、本例においては、有機シロキサン前駆体が反応して新たなシロキサン結合を形成する反応に必要とされる触媒として、10%塩酸(HCl)水溶液を添加して、エマルションのpHが2乃至3となるように調節した。
(比較例1〜3)
一方、比較例1乃至比較例3に係る被膜としては、以下の表1に列挙する被膜を採用した。表1に示すように、比較例1については、塩浴窒化法(タフトライド処理)により、上述した鋳抜きピンの表面に窒化物の被膜を形成した(塩浴窒化法により表面を硬化させた)。
比較例2については、上述した第2原液に相当する塗液を採用した。具体的には、上述したように無機酸化物微粒子としての疎水的な表面処理を施した酸化窒化チタン(TiON)微粒子、第2アルコールを構成するアルコールである1−ブタノール、及び第1アルコールを構成する他方のアルコールである2−プロパノールを含む第2原液に有機シロキサン前駆体を添加したものを塗液として採用した。そして、当該塗液及び上述した鋳抜きピンを用いて、実施例1と同様に被膜を形成した。
比較例3については、上述した第1原液そのものを塗液として採用した。具体的には、上述したように金属塩としての硝酸マグネシウムと硝酸カルシウム、有機シロキサン前駆体としてのTEOS及びPTMS、水、及び第1アルコールを構成する一方のアルコールであるエタノールを含む第1原液に有機シロキサン前駆体を添加したものを塗液として採用した。そして、当該塗液及び上述した鋳抜きピンを用いて、実施例1と同様に被膜を形成した。
Figure 0006938290
《各種試料の耐焼付き性の評価》
上記のようにして形成された実施例1及び比較例1乃至比較例3に係る各種被膜が形成された各種鋳抜きピンを、アルミダイカストマシンにセットし、650℃の温度及び500t/cmの圧力にて、アルミニウム合金ADC12のダイカストを、それぞれ15ショットずつ鋳造した。そして、各種鋳抜きピンの各々について、上記15ショットのダイカスト鋳造工程の前後における鋳抜きピンの質量の変化量(増加幅)を、アルミニウム(Al)付着量として求めた。当該評価結果もまた上述した表1に列挙する。
表1に示すように、実施例1に係るダイカスト金型用被膜によれば、上記鋳造試験に伴う鋳抜きピンへのアルミニウム(Al)付着量を、従来技術に係るダイカスト金型用被膜に相当する比較例1(タフトライド処理)と比較して、約半分に低減することができた。即ち、実施例1に係るダイカスト金型用被膜は、従来技術に係る被膜(比較例1)と比較して、良好な耐焼き付き性を達成することができた。
一方、上述した第2原液に相当する塗液から形成された比較例2に係る被膜及び第1原液から形成された比較例3に係る被膜については、従来技術に係るタフトライド処理とほぼ同等のアルミニウム(Al)付着量が認められた。即ち、比較例2及び比較例3に係る被膜によっては、耐焼き付き性の改善は達成されなかった。
以上の結果から、本発明によれば、ダイカスト鋳造品の品質の低下を招くこと無く溶湯に対する優れた耐焼付き性及び高い耐久性を有するダイカスト用金型を提供することができることが確認された。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び実施例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び実施例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
10…油中水滴型エマルション、11…分散媒(有機シロキサン前駆体のアルコール溶液)、12…分散質(金属塩の水溶液からなる微細な液滴)、20…金型(の構成部品)、21…キャビティ面。

Claims (16)

  1. 金属塩の水溶液を分散質とし且つ有機シロキサン前駆体のアルコール溶液を分散媒とする油中水滴型エマルションを調製する第1工程、
    ダイカスト用金型のキャビティ面に前記エマルションを塗布する第2工程、
    前記キャビティ面に塗布された前記エマルションを乾燥して被膜を形成する第3工程、
    前記被膜を加熱して硬化させる第4工程、
    を含み、
    前記分散媒は、水の沸点よりも低い沸点を有する1種以上のアルコールである第1アルコールと、前記第1アルコールの沸点よりも高い沸点を有し且つ前記第1アルコールの親水性よりも低い親水性を有する1種以上のアルコールである第2アルコールと、を含む、
    ダイカスト金型用被膜の製造方法。
  2. 請求項1に記載された、ダイカスト金型用被膜の製造方法であって、
    前記第1アルコールは、メタノール、エタノール、2−プロパノール及び2−メチル−2−プロパノールからなる群より選ばれる1種以上のアルコールであり、
    前記第2アルコールは、2−プロパノール、1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、3−ペンタノール、2−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール及び1−ペンタノールからなる群より選ばれる1種以上のアルコールである、
    ダイカスト金型用被膜の製造方法。
  3. 請求項2に記載された、ダイカスト金型用被膜の製造方法であって、
    前記第1アルコールは、エタノール及び2−プロパノールであり、
    前記第2アルコールは、1−ブタノールである、
    ダイカスト金型用被膜の製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載された、ダイカスト金型用被膜の製造方法であって、
    前記有機シロキサン前駆体は、少なくとも1種のテトラアルコキシシランと、アルキルアルコキシシラン、アルケニルアルコキシシラン、アリールアルコキシシラン及びアルキルシラザンからなる群より選ばれる1種以上の化合物と、を含む、
    ダイカスト金型用被膜の製造方法。
  5. 請求項4に記載された、ダイカスト金型用被膜の製造方法であって、
    前記テトラアルコキシシランは、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランからなる群より選ばれる1種以上の化合物であり、
    前記アルキルアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチチルジメトキシシラン、及びシクロヘキシルメチルジメトキシシランからなる群より選ばれる1種以上の化合物であり、
    前記アルケニルアルコキシシランは、ビニルトリメトキシシランであり、
    前記アリールアルコキシシランは、フェニルトリメトキシシラン及びジフェニルジメトキシシランからなる群より選ばれる1種以上の化合物であり、
    前記アルキルシラザンは、ヘキサメチルジシラザンである、
    ダイカスト金型用被膜の製造方法。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載された、ダイカスト金型用被膜の製造方法であって、
    前記金属塩は、マグネシウム塩及びカルシウム塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物である、
    ダイカスト金型用被膜の製造方法。
  7. 請求項6に記載された、ダイカスト金型用被膜の製造方法であって、
    前記金属塩は、硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物である、
    ダイカスト金型用被膜の製造方法。
  8. 請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載された、ダイカスト金型用被膜の製造方法であって、
    前記第1工程は、前記金属塩、前記有機シロキサン前駆体、水、及び前記第1アルコールを構成する少なくとも1種のアルコールを含む原液である第1原液と、前記第2アルコールを構成する少なくとも1種のアルコールを含む原液である第2原液と、を混合することを含む、
    ダイカスト金型用被膜の製造方法。
  9. 請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載された、ダイカスト金型用被膜の製造方法であって、
    前記油中水滴型エマルションは、無機酸化物微粒子を更に含む、
    ダイカスト金型用被膜の製造方法。
  10. 請求項9に記載された、ダイカスト金型用被膜の製造方法であって、
    前記無機酸化物微粒子は、酸化窒化チタン、酸化チタン及び酸化アルミニウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物である、
    ダイカスト金型用被膜の製造方法。
  11. 請求項9又は請求項10に記載された、ダイカスト金型用被膜の製造方法であって、
    前記無機酸化物微粒子は、疎水化表面処理が施されている、
    ダイカスト金型用被膜の製造方法。
  12. 請求項9乃至請求項11の何れか1項に記載された、ダイカスト金型用被膜の製造方法であって、
    前記第1工程は、前記金属塩、前記有機シロキサン前駆体、水、及び前記第1アルコールを構成する少なくとも1種のアルコールを含む原液である第1原液と、前記無機酸化物微粒子及び前記第2アルコールを構成する少なくとも1種のアルコールを含む原液である第2原液と、を混合することを含む、
    ダイカスト金型用被膜の製造方法。
  13. 硝酸マグネシウム及び硝酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上の金属塩を含む有機シロキサンからなるダイカスト金型用被膜であって、
    15乃至300HVのビッカース硬度を有し、
    0.5乃至2μmの直径及び0.1乃至1μmの深さを有する複数の凹部が表面に形成されており、
    前記ダイカスト金型用被膜の表面に占める前記凹部の面積の割合が20乃至80%である、
    ダイカスト金型用被膜。
  14. 請求項13に記載されたダイカスト金型用被膜であって、
    無機酸化物微粒子を更に含む、
    ダイカスト金型用被膜。
  15. 請求項14に記載された、ダイカスト金型用被膜であって、
    前記無機酸化物微粒子は、酸化窒化チタン、酸化チタン及び酸化アルミニウムからなる群より選ばれる1種以上の化合物である、
    ダイカスト金型用被膜。
  16. 請求項13乃至請求項15の何れか1項に記載されたダイカスト金型用被膜がキャビティ面の少なくとも一部に形成された、
    ダイカスト用金型。
JP2017172940A 2017-09-08 2017-09-08 ダイカスト金型用被膜の製造方法、当該被膜、及びキャビティ面に当該被膜が形成されたダイカスト用金型 Active JP6938290B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017172940A JP6938290B2 (ja) 2017-09-08 2017-09-08 ダイカスト金型用被膜の製造方法、当該被膜、及びキャビティ面に当該被膜が形成されたダイカスト用金型

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017172940A JP6938290B2 (ja) 2017-09-08 2017-09-08 ダイカスト金型用被膜の製造方法、当該被膜、及びキャビティ面に当該被膜が形成されたダイカスト用金型

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019048304A JP2019048304A (ja) 2019-03-28
JP6938290B2 true JP6938290B2 (ja) 2021-09-22

Family

ID=65905677

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017172940A Active JP6938290B2 (ja) 2017-09-08 2017-09-08 ダイカスト金型用被膜の製造方法、当該被膜、及びキャビティ面に当該被膜が形成されたダイカスト用金型

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6938290B2 (ja)

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8424588B2 (en) * 2009-08-08 2013-04-23 Sintokogio, Ltd. Casting die
JP2012183548A (ja) * 2011-03-04 2012-09-27 Daido Steel Co Ltd ダイカスト用金型

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019048304A (ja) 2019-03-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2010067786A1 (ja) 表面処理方法
JP5035151B2 (ja) パターン反転用樹脂組成物及び反転パターン形成方法
CN1247951C (zh) 热交换器的亲水处理方法及亲水处理的热交换器
TWI549187B (zh) 絕緣膜的形成方法
CN104169674B (zh) 热交换器用铝翅片材
CN105873688A (zh) 防腐蚀层及其制备方法
Nakayama et al. Rapid and Repeatable Self‐Healing Superoleophobic Porous Aluminum Surface Using Infiltrated Liquid Healing Agent
US20110252799A1 (en) Condenser tube having increased hydrophobicity, production method and use thereof
TW201610590A (zh) 圖型形成方法
JP6938290B2 (ja) ダイカスト金型用被膜の製造方法、当該被膜、及びキャビティ面に当該被膜が形成されたダイカスト用金型
JP4854599B2 (ja) コーティング方法及び物品
JP2017147336A (ja) 着色膜の形成方法
KR101864767B1 (ko) 고순도 중공 실리카 나노분말의 제조방법 및 동 나노분말을 포함하는 저반사 코팅막
JP2000033457A (ja) 潤滑離型剤
WO2016152872A1 (ja) 化粧料用添加剤およびその製造方法
JP6501772B2 (ja) 金属表面を覆うための連続有機相と油中水型エマルジョンとを含む組成物、および前記組成物の製造方法
CN106133196B (zh) 具有优异的耐蚀性和加工性的皮膜的钢线材及其制造方法
CN113993823B (zh) 从可聚合溶液生产玻璃主体
JP4818659B2 (ja) 内燃機関の燃焼室用摺動部材及びその製造方法
TWI727007B (zh) 含苯基膦酸之矽石溶膠及其用途
US20120308775A1 (en) Hydrophilic surfaces and process for preparing
TW202204261A (zh) 中空無機粒子、該中空無機粒子之製造方法以及低介電材料
JP2018083759A (ja) 化粧料
JPH06264001A (ja) アルミニウム材料の表面に親水性を付与する表面処理
JP2009113055A (ja) 精密鋳造鋳型用スラリー

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200807

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210521

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210608

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210726

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210817

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210901

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6938290

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250