以下、本発明の高圧燃料供給ポンプの実施の形態について図面を用いて説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプを含む内燃機関の燃料供給システムの構成及び動作について図1を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプを含む内燃機関の燃料供給システムを示す構成図である。図1中、破線で囲まれた部分は高圧燃料供給ポンプ1の本体であるポンプボディ1aを示しており、この破線の中に示されている機構及び部品はポンプボディ1aに組み込まれたものである。
図1において、燃料供給システムは、燃料を貯留する燃料タンク101と、燃料タンク101内の燃料を汲み上げて送出するフィードポンプ102と、フィードポンプ102から送出された低圧の燃料を加圧して吐出する高圧燃料供給ポンプ1と、高圧燃料供給ポンプ1から圧送された高圧の燃料を噴射する複数のインジェクタ104とを備えている。高圧燃料供給ポンプ1は、吸入配管103を介してフィードポンプ102に接続されており、コモンレール105を介してインジェクタ104に燃料を圧送する。インジェクタ104は、内燃機関としてエンジンのシリンダ筒内に燃料を直接噴射するものであり、気筒数に合わせてコモンレール105に装着されている。コモンレール105には、高圧燃料供給ポンプ1から吐出された燃料の圧力を検出する圧力センサ106が装着されている。
高圧燃料供給ポンプ1は、加圧室4内の燃料を往復運動により加圧するプランジャ5と、加圧室4に吸入する燃料量を調節する電磁吸入弁機構300と、プランジャ5により加圧された燃料を吐出する吐出弁機構500とを備えている。電磁吸入弁機構300の上流側には、高圧燃料供給ポンプ1内で発生した圧力脈動が吸入配管103へ波及することを低減する圧力脈動低減機構600が設けられている。
フィードポンプ102、高圧燃料供給ポンプ1の電磁吸入弁機構300、インジェクタ104は、エンジンコントロールユニット(以下、ECUという)107の出力する制御信号によって制御される。ECU107には、圧力センサ106からの検出信号が入力される。
燃料供給システムでは、燃料タンク101内の燃料がECU107の制御信号に基づき駆動されたフィードポンプ102によって汲み上げられる。この燃料は、フィードポンプ102によって適切なフィード圧力に加圧されて吸入配管103を通して高圧燃料供給ポンプ1の低圧燃料吸入口2aに送られる。低圧燃料吸入口2aを通過した燃料は、圧力脈動低減機構600、吸入通路2cを介して電磁吸入弁機構300の吸入ポート32aに至る。電磁吸入弁機構300に流入した燃料は、ECU107の制御信号に基づき開閉する吸入弁31を通過する。吸入弁31を通過した燃料は、往復運動するプランジャ5の下降行程で加圧室4へ吸入され、プランジャ5の上昇行程で加圧室4内において加圧される。加圧された燃料は、吐出弁機構500を介して燃料吐出口2dからコモンレール105へ圧送される。コモンレール105内の高圧の燃料は、ECU107の制御信号に基づき開弁及び閉弁するインジェクタ104によって内燃機関のシリンダ筒内へ噴射される。
次に、本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプの各部の構成を図2〜図4を用いて説明する。図2は本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプを図2とは異なる切断面で示す縦断面図である。図3は図2に示す本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプをIII−III矢視から見た断面図である。図4は、本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプにおける電磁吸入弁機構を拡大した状態で示す断面図であり、電磁吸入弁機構を開弁した状態で図示したものである。なお、図2及び図3中、太い矢印は、燃料の流れを示している。図4中、太い矢印は、磁気回路を示している。
図2において、高圧燃料供給ポンプ1は、燃料を加圧する加圧室4を内部に有するポンプボディ1a、ポンプボディ1aに組み付けられたプランジャ5、電磁吸入弁機構300、吐出弁機構500、及び圧力脈動低減機構600を備えている。高圧燃料供給ポンプ1は、取付フランジ21、複数のボルト22、ブッシュ23により、エンジンのポンプ取付部111に固定される。取付フランジ21は、ポンプボディ1aの全周に溶接部21aを介して接合され、環状固定部として構成されている。
ポンプボディ1aの一方側(図2中、下側)の中央部には、有底で段付きの第1穴部3aが設けられている。第1穴部3aは、その一部分が加圧室4を構成する。第1穴部3aにおける開口側の内壁面には、雌ねじ部1bが螺刻されている。
第1穴部3aには、往復運動するプランジャ5を摺動可能に保持するシリンダ6が挿入されており、シリンダ6はシリンダホルダ13を介してポンプボディ1aに固定されている。シリンダ6は、プランジャ5との摺動長を適正に保つために、第1穴部3a内に深く挿入されるように形成されている。シリンダ6は、プランジャ5の往復運動の方向に交差する圧着部6aを有している。圧着部6aは、第1穴部3aの段差面である圧着面1cに圧着する部分である。圧着部6aと圧着面1cの圧着は、詳細は後述するが、シリンダホルダ13のポンプボディ1aに対するねじ込みによって行われる。シリンダ6は、圧着部6aがポンプボディ1aの圧着面1cへ圧着することで、ポンプボディ1aと共に加圧室4の一部を形成している。シリンダ6における圧着部6aよりも加圧室4側の部分の外周面とポンプボディ1aの第1穴部3aの内壁面との間には、シリンダ6の当該外周面とポンプボディ1aの当該内壁面が接触しないように、クリアランスCが設けられている。
プランジャ5は、シリンダ6に滑合する大径部5aと、大径部5aから加圧室4とは反対側に延在する小径部5bとを有している。大径部5aの直径は小径部5bの直径より大きく設定されており、大径部5aと小径部5bは互いに同軸に形成されている。プランジャ5の小径部5bの先端側(図2中、下端側)には、タペット10が設けられている。タペット10は、エンジンのカム112の回転運動を直線的な往復運動に変換してプランジャ5に伝達するものである。プランジャ5は、リテーナ11に嵌合しており、リテーナ11を介してばね12の付勢力によりタペット10に圧着されている。これにより、プランジャ5がカム112の回転運動に伴い往復運動する。
シリンダホルダ13は、一方側の内周面でシリンダ6を保持する第1円筒部13aと、第1円筒部13aの他方側かつ内周側に同軸上に一体に設けられた第2円筒部13bと、第1円筒部13aの他方側かつ外周側に一体に設けられた第3円筒部13cとで構成されている。第1円筒部13aの内部と第2円筒部13bの内部は連続しており、当該内部には環状低圧シール室13dが形成されている。環状低圧シール室13dは、プランジャ5とシリンダ6の摺動部を介して加圧室4から漏れ出る燃料を貯めておく空間である。第3円筒部13cは第2円筒部13bの外側に間隔をあけて同軸上に配置されている。
第1円筒部13aの外周部には、第1穴部3aの雌ねじ部1bにねじ込み可能な雄ねじ部13eが螺刻されている。シリンダホルダ13の雄ねじ部13eをポンプボディ1の雌ねじ部1bにねじ込むことによって、シリンダ6がポンプボディ1aに固定されている。シリンダホルダ13の雄ねじ部13eとポンプボディ1aの雌ねじ部1bの締付けトルクは、加圧室4内の高圧燃料がシリンダ6の圧着部6aとポンプボディ1の圧着面1cとの隙間を通って外部へ漏れることがないように管理されている。
第2円筒部13b内のカム112側の端部(図2中、下端部)には、プランジャシール14がプランジャ5の外周面に摺動可能な状態で配置されている。プランジャシール14は、シールホルダ15が第2円筒部13b内に圧入固定されることにより、第2円筒部13b内の端部に保持されている。プランジャシール14の軸は、第2円筒部13bによって第1円筒部13aの軸と同軸上に保持されている。プランジャシール14は、プランジャ5の往復運動時に、環状低圧シール室13d内の燃料がエンジン内部へ流入するのを防止する。同時に、エンジン内の潤滑油(エンジンオイルを含む)がエンジン側からポンプボディ1aの内部へ流入するのを防止する。
第3円筒部13cは、エンジン側のポンプ取付部111の嵌合穴111aに挿入されるものである。第3円筒部13cの外周面には、周方向に延在する環状溝部13fが設けられている。環状溝部13fには、Oリング16が嵌め込まれている。Oリング16は、ポンプ取付部111の嵌合穴111aの内壁面とシリンダホルダ13の第3円筒部13cの外周面との間を封止することで、エンジンオイル等が外部へ漏れることを防止する。
また、ポンプボディ1aにおける取付フランジ21の反対側に位置する先端部(図2中、上端部)には、低圧燃料室2bが形成されている。具体的には、ポンプボディ1aの先端部には、一方側が開放された凹部1eが設けられていると共に、ダンパカバー17が凹部1eを覆うように取り付けられている。ポンプボディ1aの凹部1eとダンパカバー17とにより低圧燃料室2bが形成されている。低圧燃料室2bは、図3に示すように、燃料通路2eを介して環状低圧シール室13dに連通している。
低圧燃料室2b内には、図2及び図3に示すように、圧力脈動低減機構600が配設されている。圧力脈動低減機構600は、燃料圧力の脈動を吸収して低減する金属ダンパ61と、金属ダンパ61を低圧燃料室2b内に保持するための保持部材62と有している。金属ダンパ61は、2枚の金属ダイアフラムで構成されており、両金属ダイアフラム間の空間にガスが封入された状態で外周部が全周溶接にて互いに接合されている。金属ダンパ61は、ガスの封入された空間の容積が変化することで圧力脈動を低減するものである。
ダンパカバー17には、低圧燃料吸入口2aを形成する吸入ジョイント18が取り付けられている。吸入ジョイント18には、吸入配管103(図1参照)が接続可能である。吸入ジョイント18の内部には、吸入フィルタ19が固定されている。吸入フィルタ19は、燃料タンク101(図1参照)から低圧燃料吸入口2aまでの間に存在する異物が燃料の流れによって高圧燃料供給ポンプ1内に吸収されることを防ぐ役目がある。
また、図2に示すように、ポンプボディ1aの側壁(図2中、右側の側壁)には、加圧室4に向かって第2穴部3bが設けられている。第2穴部3bには、電磁吸入弁機構300が装着されている。電磁吸入弁機構300は、吸入弁31を主体に構成された吸入弁機構部と、可動なロッド37とアンカー38を主体に構成されたソレノイド機構部と、電磁コイル44を主体に構成されたコイル機構部とに大別される。
吸入弁機構部は、図4に示すように、吸入弁31、吸入弁シート32、吸入弁ホルダ33、吸入弁ばね34とからなる。吸入弁シート32は、例えば、環状の吸入弁シート部35と、ガイド孔36aを有するロッドガイド部36とを含んでいる。吸入弁シート部35は、吸入弁ホルダ33に圧入固定されている。ロッドガイド部36は、ガイド孔36a内においてロッド37を摺動可能に保持するものである。ロッドガイド部36には、軸方向に貫通する貫通穴36bが設けられている。貫通穴36bは、軸方向両側の燃料の圧力差によるアンカー38の運動応答性の低下を防止するものである。吸入弁シート32には、低圧燃料室2b(図2参照)に連通する吸入ポート32aが周方向に複数設けられている。吸入弁ホルダ33は、ポンプボディ1aの第2穴部3bに圧入固定されており、吸入弁31のストッパとして機能する。吸入弁ばね34は、吸入弁31と吸入弁ホルダ33との間に配置され、吸入弁31を閉弁方向に付勢している。吸入弁31は、吸入弁シート部35に当接することで閉弁し、吸入弁ホルダ33に当接することで移動が規制されて開弁状態となる。吸入弁ホルダ33に当接した状態の吸入弁31と吸入弁シート部35との間に存在する隙間が吸入弁31の可動範囲、すなわち、吸入弁31のストロークである。
ソレノイド機構部は、可動部であるロッド37及びアンカー38と、固定部であるコア39と、可動部を付勢するロッドばね40とで構成されている。
ロッド37は、軸方向に摺動自在にロッドガイド部36及びアンカー38に保持されている。ロッド37は、一方側(図4中、左側)の先端部が吸入弁31に接離可能で、他方側(図4中、右側)の端部にロッドつば部37aを有している。
アンカー38は、ロッドつば部37a及びロッドばね40の一部を収容する収容凹部38aを有しており、収容凹部38aの底部がロッドつば部37aと係合することでロッド37と共に移動可能な構成である。アンカー38には、径方向に貫通する貫通穴38bが設けられている。貫通穴38bは、アンカー38の内側と外側の燃料の通過を容易にすることで、アンカー38の運動応答性の低下を防止するものである。
コア39は、筒状の第1コア部41と、ロッドばね40の一部を収容する収容凹部42aを有する第2コア部42と、第1コア部41と第2コア部42との間に設けられた磁気オリフィス部43とで構成されている。コア39は、詳細は後述するが、アンカー38と共に磁気回路の一部を構成するものである。コア39は、第1コア部41が第2穴部3bに圧入された状態でポンプボディ1aに溶接により接合されている。これにより、ポンプボディ1aと電磁吸入弁機構300との隙間からの燃料の漏洩を防止している。
第1コア部41の開口側には、吸入弁シート32のロッドガイド部36が圧入嵌合されている。第1コア部41の内部には、アンカー38が摺動可能に配置されている。第2コア部42は、第1コア部41側(図4中、左側)に、アンカー38の収容凹部38a側の端面と対向する端面を有している。第2コア部42の第1コア部41側の端面とそれに対向するアンカー38の端面は、相互間に磁気吸引力が作用する磁気吸引面Sを構成する。第1コア部41と第2コア部42は、強度的に十分な肉厚が確保されるように形成されている。磁気オリフィス部43は、コア39の磁気吸引面S及びアンカー38の磁気吸引面Sの近傍に位置し、肉厚が強度的に許す限り薄くなるように形成されている。この構成では、磁気回路に生じた磁束のうち、磁気オリフィス部43を通過する磁束が小さくなり、その分、アンカー38を通過する磁束が大きくなる。これにより、コア39とアンカー38の間に発生する磁気吸引力の低下を許容範囲内にしている。
ロッドばね40は、アンカー38の収容凹部38a及び第2コア部42の収容凹部42a内に配置されている。ロッドばね40は、ロッド37を介して吸入弁31を開弁方向へ付勢するものであり、ロッドつば部37aをアンカー38の収容凹部38aの底部に押し付けている。ロッドばね40の付勢力は、吸入弁ばね34の付勢力よりも大きくなるように設定されている。これにより、電磁コイル44が無通電状態において、ロッド37及びアンカー38は、図4に示すように、ロッドばね40の付勢力と吸入弁ばね34の付勢力との差によって開弁方向(図4中、左方向)に付勢され、吸入弁31が開弁状態となる。
コイル機構部は、電磁コイル44、ボビン45、ヨーク46、端子48を有するコネクタ47から構成されている。電磁コイル44は、ボビン45の外周にリード線を巻つけることで構成されている。電磁コイル44は、ヨーク46によって取り囲まれており、コア39の外周側に配置されている。電磁コイル44のリード線の両端は、端子48に溶接により接続されている。コネクタ47は、ECU27からの相手側コネクタが接続されることで、端子48が相手側コネクタの端子と接続されるように構成されている。
上記構成では、図4に示すように、ヨーク46、コア39、アンカー38により磁気回路が形成されている。この磁気回路では、電磁コイル44に電流を与えると、電磁コイル44の周囲に発生した磁場によって磁束が発生し、コア39の第2コア部42とアンカー38と間に互いを吸引する磁気吸引力が生じる。
図2に戻り、ポンプボディ1aにおける加圧室4を挟んで第2穴部3bとは反対側の位置の側壁には、第3穴部3cが設けられている。第3穴部3cの内部には、加圧室4の出口側に配置される吐出弁機構500が装着されている。吐出弁機構500の下流側には、燃料吐出口2dを形成する吐出ジョイント70が配置されている。吐出ジョイント70は、ポンプボディ1aにおける第3穴部3cの開口部の周縁部に溶接により接合されている。
吐出弁機構500は、加圧室4の燃料を吐出するものであり、吐出弁シート51と、吐出弁シート51に対して接離する吐出弁52と、吐出弁52を吐出弁シート51に向かって付勢する吐出弁ばね53と、吐出弁シート51の一部及び吐出弁52を収容する吐出弁ホルダ54とから構成されている。吐出弁シート51は、例えば、ポンプボディ1aの第3穴部3c内に圧入保持されている。吐出弁シート51と吐出弁ホルダ54は溶接により接合されて一体のユニットを構成している。吐出弁ホルダ54の内部には、吐出弁52のストロークを規制するストッパとして機能する段付部54aが設けられている。
吐出弁52は、開弁の際に吐出弁ホルダ54の段付部54aと接触することで、ストロークが制限されている。吐出弁52のストロークは、吐出弁ホルダ54によって適切に決定されている。これにより、過大なストロークにより吐出弁52の閉じ遅れが生じて吐出ジョイント70側へ吐出された高圧燃料が再び加圧室4内に逆流することを防止し、高圧燃料供給ポンプ1の効率低下を抑制している。また、吐出弁52が開弁および閉弁運動を繰り返す時にストローク方向にのみ移動するように、吐出弁ホルダ54の内周面が吐出弁52をガイドするように構成されている。以上のような構成により、吐出弁機構500は、燃料の流通方向を一方向に制限して逆流を防止する逆止弁として機能する。
吐出弁機構500は、加圧室4と吐出ジョイント70の内部との間に燃料差圧が無い状態では、吐出弁ばね53の付勢力により吐出弁52が吐出弁シート51に押圧され閉弁状態となるように構成されている。加圧室4の燃料圧力が吐出ジョイント70の内部の燃料圧力よりも大きくなった時に初めて、吐出弁52が吐出弁ばね53の付勢力に逆らって開弁するように構成されている。
上記の構成において、加圧室4は、ポンプボディ1aと、ポンプボディ1aに組み付けたシリンダ6、電磁吸入弁機構300、吐出弁機構500と、ポンプボディ1a内に配置されたプランジャ5とによって構成されている。
次に、高圧燃料供給ポンプの動作を図2〜図5を用いて説明する。図5は図4に示す本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプの電磁吸入弁機構を閉弁した状態で示す断面図である。
図2に示すカム112の回転によりプランジャ5がカム112側に移動して吸入行程の状態(上死点位置から下死点位置へ移動する間)にある時、加圧室4の容積が増加する。このとき、電磁コイル44は無通電状態であり、吸入弁31は開弁している。したがって、加圧室4内の燃料圧力が吸入通路2c内の燃料圧力よりも低下し、図4に示すように、燃料は吸入通路2cから吸入弁シート32の吸入ポート32a、吸入弁31の開口部31aを通過して加圧室4内へ流れ込む。
この状態で吸入行程を終了し、プランジャ5は、下死点から上死点へ移動する上昇行程へと移行する。このとき、電磁コイル44の無通電状態が維持されており、吸入弁31は開弁状態にある。したがって、加圧室4の容積はプランジャ5の上昇工程における上昇運動に伴い減少するが、加圧室4に一度吸入された燃料が再び吸入弁31の開口部31aを通して低圧燃料室2b(図2参照)へと戻されるので、加圧室4の圧力が上昇することは無い。この行程を戻し行程と称する。
戻し工程時に、吸入弁31には、ロッドばね40の付勢力と吸入弁ばね34の付勢力の差による開弁方向の力と、加圧室4から低圧燃料室2b(図2参照)への燃料の逆流時に発生する流体力による閉弁方向の力が働く。戻し工程中に吸入弁31の開弁状態を維持するために、ロッドばね40と吸入弁ばね34の付勢力の差が上記流体力よりも大きくなるように設定されている。
この状態で、ECU107(図1参照)からの電磁吸入弁機構300に対する通電指令により電磁コイル44が端子48を介して通電する。これにより、コア39とアンカー38との間に互いに引き合う磁気吸引力が発生し、この磁気吸引力がロッドばね40の付勢力に打ち勝ってアンカー38を閉弁方向へ移動させる。ロッドつば部37aがアンカー38の収容凹部38aの底部に押し付けられているので、アンカー38の閉弁方向へ移動により、ロッド37がアンカー38と共に閉弁方向へ移動する。アンカー38は、コア39の第2コア部42に衝突することで移動を停止し、ロッド37はロッドばね40によって運動エネルギーを吸収されて移動を停止する。
アンカー38とロッド37が閉弁方向に移動すると、吸入弁31には吸入弁ばね34の付勢力のみが働く。そのため、吸入弁31は、吸入弁ばね34の付勢力によって閉弁方向に移動し、図5に示すように、吸入弁シート部35と接触して閉弁状態となる。
吸入弁31が閉弁状態になると、加圧室4の燃料圧力は、プランジャ5の上昇運動に応じて上昇する。その後、燃料吐出口2dの圧力以上になると、図2に示す吐出弁機構500の吐出弁52が開弁する。これにより、加圧室4内の高圧燃料は、吐出ジョイント70の燃料吐出口2dから吐出され、コモンレール105(図1参照)へ供給される。この行程を吐出行程と称する。このように、プランジャ5の上昇行程は、戻し行程と吐出行程からなる。
吐出行程において加圧燃料の吐出が開始された後は、電磁コイル44への通電を解除することが可能である。なぜなら、加圧室4内の圧力が吐出ジョイント70内部の圧力以上になると、図5に示す吸入弁31には、加圧室4内の圧力により閉弁方向に力が働く。この閉弁方向の力はロッドばね40の付勢力と吸入弁ばね34の付勢力の差による開弁方向の力よりも大きいので、電磁コイル44の通電により生じる磁気吸引力がなくとも、吸入弁31の閉弁状態を維持することができる。電磁コイル44への通電の解除により、電磁コイル44での消費電力の抑制が可能となる。
上昇工程では、電磁吸入弁機構300の電磁コイル44への通電タイミングを制御することで、吐出される高圧燃料の流量を制御することができる。電磁コイル44へ通電するタイミングを早くすれば、上昇行程のうち、戻し行程の割合が小さくなり、吐出行程の割合が大きくなる。すなわち、低圧燃料室2bに戻される燃料が少なくなる一方、高圧吐出される燃料が多くなる。それに対して、通電するタイミングを遅くすれば、上昇行程のうち、戻し行程の割合が大きくなり、吐出行程の割合が小さくなる。すなわち、低圧燃料室2bに戻される燃料が多くなる一方、高圧吐出される燃料が少なくなる。電磁コイル44への通電タイミングは、ECU107(図1参照)からの指令によって制御される。
図2に示すプランジャ5が上昇工程を終了し吸入行程へ移行すると、加圧室4の容積が再び増加を開始して加圧室4内の圧力が低下する。これにより、図4に示す吸入弁31は、ロッドばね40と吸入弁ばね34の付勢力の差によって開弁方向(図4中、左方向)への移動を開始し、ストローク分だけ移動した後、吸入弁ホルダ33に衝突して移動を停止する。このとき、アンカー38は、ロッドつば部37aが収容凹部38aの底部を押すことによりロッド37と共に開弁方向への移動を行う。これにより、低圧燃料室2bから吸入弁シート32の吸入ポート32a、吸入弁31の開口部31aを通って加圧室4へ燃料が流入する。
以上のように、高圧燃料供給ポンプ1では、電磁コイル44への通電タイミングを制御することで、高圧吐出される燃料の量をエンジンが必要とする量に制御することができる。
また、上記の吸入行程、戻し行程、および吐出行程の3つの行程中、燃料が常に低圧燃料室2bに出入りするので、燃料圧力に周期的な脈動が生じる。この圧力脈動は、図2に示す低圧燃料室2b内に配置された圧力脈動低減機構600によって吸収低減さる。これにより、フィードポンプ102(図1参照)からポンプボディ1aへ至る吸入配管103(図1参照)への圧力脈動の伝播を遮断して吸入配管103の破損等を防止すると同時に、燃料を安定した圧力で加圧室4へ供給することを可能としている。また、圧力脈動低減機構600の金属ダンパ61の両面に燃料の圧力が作用するので、金属ダンパ61の内部空間の膨張及び収縮により燃料の圧力脈動が効果的に抑制される。
また、大径部5aと小径部5bとを有するプランジャ5の往復運動によって、環状低圧シール室13dの容積が増減する。吸入工程では、図3に示すように、プランジャ5の大径部5aの下降によって環状低圧シール室13dの容積が減少し、環状低圧シール室13dから燃料通路2eを介して低圧燃料室2bへ燃料が流れる。一方、戻し工程および吐出工程では、プランジャ5の大径部5aの上昇によって環状低圧シール室13dの容積が増加し、低圧燃料室2bから燃料通路2eを介して環状低圧シール室13dへ燃料が流れる。
低圧燃料室2bに着目すると、図2及び図3に示すように、吸入行程では、低圧燃料室2bから加圧室4へ燃料が流出する一方、環状低圧シール室13dから低圧燃料室2bへ燃料が流入する。戻し行程では、加圧室4から低圧燃料流室2bへ燃料が流入する一方、低圧燃料室2bから環状低圧シール室13dへ燃料が流出する。また、吐出行程では、低圧燃料室2bから環状低圧シール室13dへ燃料が流出する。このように、環状低圧シール室13dは、低圧燃料室2bへの燃料の出入りを助ける機能を有するので、低圧燃料室2bで発生する燃料の圧力脈動を低減する効果がある。
ところで、高圧燃料供給ポンプ1では、加圧室4からの高圧燃料が吐出ジョイント70の内部に流れる際に、高圧燃料の内部圧力が吐出ジョイント70とポンプボディ1aとを接合する溶接部に繰り返し負荷される。したがって、当該溶接部は、この内部圧力の繰り返し負荷に耐えられる疲労強度を備える必要がある。近年、燃料の更なる高圧化が求められており、当該溶接部の疲労強度を向上させる必要がある。
溶接部の疲労強度を向上させる方法の1つとして、溶接部の溶け込み深さを大きくすることが考えられる。しかし、吐出ジョイント70とポンプボディ1aをレーザ溶接により接合する場合、溶接部の溶け込み深さを大きくするには、レーザ出力を従来よりも増大させる必要がある。この場合、レーザ出力の増加分、被溶接部材としての吐出ジョイント70及びポンプボディ1aへの入熱量が増加し、吐出ジョイント70及びポンプボディ1aにおける溶接部の近傍の熱変形量が大きくなる。その結果、吐出ジョイント70とポンプボディ1a(被溶接部材間)の組付け精度が低下してしまう。また、レーザ出力を増大させる場合、溶接設備の大規模化や追加設備の導入につながり、生産コストが増加する傾向にある。したがって、レーザ出力を増大させて吐出ジョイント70及びポンプボディ1aに対する溶接時の入熱量を過度に増加させることは好ましくない。
本実施の形態では、上述した懸念事項を考慮して、ポンプボディ1aと吐出ジョイント70の取付構造を溶接時の入熱量を過度に増加させることなく溶接部の疲労強度の向上が可能な構成としている。
次に、本発明の第1の実施の形態の特徴部であるポンプボディと吐出ジョイントの取付構造の詳細を図2、図6、図7を用いて説明する。図6は本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプにおけるポンプボディと吐出ジョイントの溶接後の取付構造を示す断面図である。図7は本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプにおけるポンプボディと吐出ジョイントの溶接前の取付構造を示す断面図である。
図2において、吐出ジョイント70は、例えば、外周に段差が設けられた軸線Xを有する筒状の部材であり、内部が加圧室4で加圧された高圧の燃料が流れる流路となっている。吐出ジョイント70は、外径の大きい軸方向一方側(図2中、右側)がポンプボディ1aの所定部分に対して圧入された状態で溶接により接合され、外径の小さい軸方向他方側(図2中、左側)がコモンレール105(図1参照)に接続可能なものである。吐出ジョイント70の段差面70aは、吐出ジョイント70をポンプボディ1aに圧入する際に、治具を押し当てる押し当て面として機能する。吐出ジョイント70は、それを形成する材料の強度がポンプボディ1aを形成する材料の強度よりも高くなるように構成されている。
吐出ジョイント70は、図2及び図6に示すように、その軸方向一方側(図2及び図6中、右側)の端部に、ポンプボディ1aへ取り付けるためのジョイント側取付部71を有している。ジョイント側取付部71は、図6に示すように、ポンプボディ1aに対して溶接部92を介して接合される部分のジョイント側突合せ部72と、吐出ジョイント70をポンプボディ1aに接合する際の位置決めを行う部分のジョイント側ガイド部73とで構成されている。
ジョイント側突合せ部72は、例えば、吐出ジョイント70の軸方向一端部の円筒部であり、円筒部の厚みがその軸方向において一定となるように構成されている。ジョイント側突合せ部72は、吐出ジョイント70の外周面の一部を構成する外側円筒面74と、外側円筒面74の反対側に外側円筒面74に対して平行な内側円筒面75とを有している。また、ジョイント側突合せ部72は、図7に示すように、吐出ジョイント70がポンプボディ1aに溶接される前の部品単体の状態において、一方側(外周側)が外側円筒面74に連続すると共に、他方側(内周側)が内側円筒面75に連続する円環状の端面76を有している。端面76は、外側円筒面74及び内側円筒面75に対して直交する平面であり、溶接の際にポンプボディ1aに突き合わせる突合せ面(対向する対向面)として構成されている。
ジョイント側ガイド部73は、図6及び図7に示すように、ジョイント側突合せ部72よりも径方向内側に設けられたガイド穴である。ガイド穴73は、ジョイント側突合せ部72の外側円筒面74と同軸になるように形成されている。ガイド穴73の内壁面は、接続面78を介してジョイント側突合せ部72の内側円筒面75に連続している。接続面78は、例えば、ジョイント側突合せ部72の突合せ方向側を向き、端面76に対して平行な円環状の平面である。接続面78は、図6に示すように、溶接部92における溶け込み幅Wの幅方向の端部から離隔した位置において内側円筒面75に連続している。
一方、ポンプボディ1aは、図2及び図6に示すように、第3穴部3cの開口部の周縁部に、吐出ジョイント70を取り付けるための本体側取付部81を有している。本体側取付部81は、図6に示すように、吐出ジョイント70のジョイント側突合せ部72に突き合わされて(対向して)溶接部92を介して接合される部分の本体側突合せ部82と、吐出ジョイント70をポンプボディ1aに接合する際に吐出ジョイント70のガイド穴73と共に位置決めを行う部分の本体側ガイド部83とで構成されている。
本体側突合せ部82は、例えば、ポンプボディ1aの側壁から外側へ向かって第3穴部3cの軸方向に延在する筒部であり、筒部の厚みがその突合せ方向(図6中、左方向)に向かって徐々に薄くなるように形成されている。本体側突合せ部82は、外側円筒面84及び外側円筒面84の反対側の内側テーパ面85を有している。外側円筒面84は、その径がジョイント側突合せ部72の外側円筒面74と同じ径となるように設定され、外側円筒面74と同一面上に位置するように構成されている。内側テーパ面85は、外側円筒面84に対して、溶接部92又は後述の端面86(図7参照)から離れるにしたがって徐々に遠ざかる方向へ傾斜するように形成されている。換言すると、内側テーパ面85は、溶接部92又は後述の端面86側に向かって(突合せ方向に)拡径する内周面である。内側テーパ面85の外側円筒面84に対する傾斜角θは、例えば、40°から50°の範囲に設定されている。
また、本体側突合せ部82は、図7に示すように、吐出ジョイント70が溶接される前の状態において、一方側(外周側)が外側円筒面84に連続すると共に、他方側(内周側)が内側テーパ面85に連続する円環状の端面86を有している。端面86は、外側円筒面84に対して直交する平面であり、溶接の際に吐出ジョイント70側の突合せ面としての端面76と突き合わされる突合せ面(対向する対向面)として構成されている。端面86の幅(外側円筒面84から内側テーパ面85までの径方向の長さ)は、吐出ジョイント70の端面76の幅(外側円筒面74から内側円筒面75までの径方向の長さ)と同じになるように設定されている。
本体側ガイド部83は、図6に示すように、本体側突合せ部82よりも径方向内側に設けられた円筒部であり、その内部が燃料Fの流路として構成されている。本体側ガイド部83は、その外周面83aが吐出ジョイント70のガイド穴73の内壁面を案内するものであり、本体側突合せ部82の外側円筒面84と同軸になるように形成されている。本体側ガイド部83の外周面83aは、本体側突合せ部82の内側テーパ面85に連続している。
溶接前の吐出ジョイント70のジョイント側取付部71及びポンプボディ1aの本体側取付部81は、図7に示すように、ガイド穴73を本体側ガイド部83に圧入(嵌合)した状態において、ジョイント側取付部71の外側円筒面74と本体側取付部81の外側円筒面84が同一面上に位置するように構成されている。さらに、溶接前のジョイント側取付部71及び本体側取付部81は、ガイド穴73を本体側ガイド部83に圧入(嵌合)した状態において、ジョイント側取付部71の端面76と本体側取付部81の端面86が突き合わされた(対面した)状態になるように構成されている。
また、溶接前のジョイント側取付部71及び本体側取付部81は、ガイド穴73が本体側ガイド部83に圧入されてジョイント側突合せ部72の端面76と本体側突合せ部82の端面86が突き合わされた状態において、内側円筒面75及び内側テーパ面85側に環状の空隙部91を形成している。換言すると、空隙部91は、図6に示すように、ジョイント側取付部71及び本体側取付部81における、溶接時に照射されるレーザの受け部Rの反対側(ジョイント側突合せ部72及び本体側突合せ部82の径方向内側)に設けられている。空隙部91は、溶接部92の溶け込み長さを決定すると共に、溶接部92の応力集中を防いで溶接部92の全体に均等に応力を分散させるものである。ジョイント側取付部71と本体側取付部81が溶接される前の空隙部91の壁面は、ジョイント側取付部71の内側円筒面75及び接続面78と、本体側取付部81の内側テーパ面85及び本体側ガイド部83の外周面83aとによって構成されている。本体側ガイド部83の外周面83aは、ジョイント側取付部71の内側円筒面75に対向している。
溶接部92は、図6に示すように、ジョイント側突合せ部72と本体側突合せ部82を、外側円筒面74及び外側円筒面84から内側円筒面75及び内側テーパ面85(空隙部91)まで到達した完全溶込みの状態で接合している。溶接部92の空隙部91側の端部は、ジョイント側取付部71の内側円筒面75及び本体側取付部81の内側テーパ面85と共に、空隙部91の連続した壁面の一部を構成している。また、溶接部92の空隙部91側の端部に対して、本体側ガイド部83の外周面83aが対向して位置している。
次に、本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプの製造方法を図2、図6、図7を用いて説明する。
まず、図2に示す吐出ジョイント70のポンプボディ1aに対する位置決めを行う。具体的には、図7に示す吐出ジョイント70のジョイント側取付部71のガイド穴73をポンプボディ1aの本体側取付部81の本体側ガイド部83の外周面83aへ圧入する(嵌合する)ことで、吐出ジョイント70をポンプボディ1aに固定する。これにより、ジョイント側突合せ部72の端面76と本体側突合せ部82の端面86とが突き合わされ、ジョイント側取付部71の外側円筒面74と本体側取付部81の外側円筒面84とが同一面上に位置した状態に位置決めされる。すなわち、幅方向(径方向)の長さが同じである吐出ジョイント70の端面76とポンプボディ1aの端面86がずれなく一致した状態で対面するように位置決めされる。
次に、吐出ジョイント70のジョイント側取付部71とポンプボディ1aの本体側取付部81を溶接により接合する。具体的には、ジョイント側取付部71の端面76及び本体側取付部81の端面86の突合せ部分(対面部分)に対して、吐出ジョイント70の外側(外側円筒面74及び外側円筒面84の外側)から溶接レーザを照射し、ジョイント側取付部71と本体側取付部81の全周を溶接する。溶接レーザの照射方向としては、例えば、図7の太い矢印Lで示す外側円筒面74及び外側円筒面84に対して直交する方向(端面76及び端面86に沿った方向)、又は、外側円筒面74及び外側円筒面84の直交方向に対して吐出ジョイント70及びポンプボディ1aのどちらか一方側へ傾いた方向が可能である。
この溶接では、図6に示すように、ジョイント側突合せ部72の外側円筒面74及び本体側突合せ部82の外側円筒面84から内側円筒面75及び内側テーパ面85(空隙部91)まで到達してジョイント側突合せ部72の端面76と本体側突合せ部82の端面86の境界が完全に消失するように溶接部92を形成する。すなわち、ジョイント側突合せ部72と本体側突合せ部82が完全溶け込みの状態で接合されるように、レーザ出力を設定する。
これにより、溶接部92の空隙部91側の端部は、ジョイント側取付部71の内側円筒面75及び本体側取付部81の内側テーパ面85に連続した状態となり、空隙部91の壁面の一部を構成する。なお、溶接部92は、接続面78に接触しないような溶け込み幅Wに形成される。
次に、本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプの効果を従来構造の比較例と比較しつつ図6〜図8を用いて説明する。先ず、比較例の吐出ジョイントとポンプボディの取付構造について図8を用いて説明する。図8は本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプに対する比較例としての高圧燃料供給ポンプにおけるポンプボディと吐出ジョイントの取付構造を示す断面図である。なお、図8は溶接前の構造を理解可能な状態で示している。また、図8において、比較例の取付構造を構成する部分が本実施の形態の取付構造を構成する部分と同様な部分である場合には、図1〜図8に示す符号と同符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図8に示す比較例としての吐出ジョイント170とポンプボディ180の取付構造の本実施の形態に対する相違点は、次のとおりである。第1に、比較例としての吐出ジョイント170及びポンプボディ180は、それらを形成する材料の強度が同じである。第2に、ポンプボディ180の本体側突合せ部182は、筒部の厚みが軸方向において一定となるように構成されている。本体側突合せ部182は、吐出ジョイント170が溶接される前の状態において、本実施の形態と同様な外側円筒面84及び端面86と、本実施の形態の内側テーパ面85とは異なる、端面86の空隙部191側に連続し外側円筒面84に平行な内側円筒面185とを有している。内側円筒面185は、接続面188を介して本体側ガイド部83の外周面83aに連続している。第3に、溶接前の空隙部191の壁面は、ジョイント側取付部171の内側円筒面75及び接続面78と、本体側取付部181の内側円筒面185、接続面188、本体側ガイド部83の外周面83aとによって構成されている。
このような構成のジョイント側突合せ部72と本体側突合せ部182を溶接により接合する。溶接部192は、ジョイント側突合せ部72の外側円筒面74及び本体側突合せ部182の外側円筒面84から空隙部191(ジョイント側突合せ部72の内側円筒面75及び本体側突合せ部82の内側円筒面185)まで到達してジョイント側突合せ部72の端面76と本体側突合せ部182の端面86の境界が完全に消失するように形成されている。
比較例の取付構造では、吐出ジョイント170の端面76とポンプボディ180の端面86の長さが同じである。さらに、空隙部191の壁面の一部を構成するジョイント側取付部171の内側円筒面75及び本体側取付部181の内側円筒面185がジョイント側取付部171の外側円筒面74及び本体側取付部181の外側円筒面84に対して平行に形成されている。したがって、吐出ジョイント170(ジョイント側突合せ部72)に対する溶接部192の溶け込み長さL3とポンプボディ180(本体側突合せ部182)に対する溶接部192の溶け込み長さL4が略等しくなる。
比較例の取付構造では、燃料の更なる高圧化に対して、溶接部192の疲労強度が不足する虞がある。しかし、前述したように、溶接部192の疲労強度を向上させるために、吐出ジョイント170の端面76及びポンプボディ180の端面86の幅方向(径方向)の長さを増大させて溶接部192の溶け込み深さを大きくすることは、レーザ出力の増大による組付け精度の低下や溶接設備の大規模化等の理由により難しい。
それに対して、本実施の形態においては、図7に示す吐出ジョイント70を形成する材料の強度を、ポンプボディ1aを形成する材料の強度よりも高くしている。すなわち、吐出ジョイント70の材料の強度を比較例の取付構造の吐出ジョイント170の材料の強度よりも高くなるように変更している。被溶接部材の材料として相対的に高い強度の材料を用いた方が溶接部の疲労強度が向上することが知られている。したがって、吐出ジョイント70の端面76及びポンプボディ1aの端面86の幅方向(径方向)の長さが比較例の取付構造と同様な場合であっても、図6に示す溶接部92における吐出ジョイント70側の部分は、図8に示す比較例の取付構造の溶接部192における吐出ジョイント170側の部分よりも、疲労強度が向上する。
さらに、本実施の形態においては、図7に示す吐出ジョイント70のジョイント側取付部71における空隙部91側の内側円筒面75を外側円筒面74に対して平行となるように構成すると共に、ポンプボディ1aの本体側取付部81における空隙部91側の内側テーパ面85を外側円筒面84に対して端面86から離れるにしたがって徐々に遠ざかる方向へ傾斜するように構成している。したがって、吐出ジョイント70の端面76とポンプボディ1aの端面86を対面させ吐出ジョイント70の外側円筒面74とポンプボディ1aの外側円筒面84が同一面上に位置した状態において、ジョイント側突合せ部72と本体側突合せ部82の突合せ部分(対面部分)に対して完全溶け込みの状態の溶接部92を形成すると、図6に示すように、材料の強度が相対的に低いポンプボディ1aの本体側突合せ部82に対する溶接部92の溶け込み長さL2が、材料の強度が相対的に高い吐出ジョイント70のジョイント側突合せ部72に対する溶接部92の溶け込み長さL1よりも長くなるように誘導することができる。
したがって、ポンプボディ1aに対する溶接部92の溶け込み長さL2は、図8に示す比較例の取付構造のポンプボディ180に対する溶接部192の溶け込み長さL4よりも長くなる。前述したように、溶接溶け込み深さ(溶接部の溶け込み長さ)が大きいほど溶接部の疲労強度が向上する。したがって、ポンプボディ1aの材料が比較例の取付構造のポンプボディ180の材料と同じ場合であっても、溶接部92におけるポンプボディ1a側の部分は、溶接部92のポンプボディ1aに対する溶け込み長さL2が長い分、図8に示す比較例の取付構造の溶接部192におけるポンプボディ180側の部分よりも、疲労強度が向上する。
また、本実施の形態においては、図6に示すように、材料の強度が相対的に低いポンプボディ1aの本体側突合せ部82に対する溶接部92の溶け込み長さL2が材料の強度が相対的に高い吐出ジョイント70のジョイント側突合せ部72に対する溶接部92の溶け込み長さL1よりも長くなるので、溶接部92における吐出ジョイント70側の部分及びポンプボディ1a側の部分のいずれか一方の疲労強度が必ず相対的に低くなることもない。
以上から、本実施の形態のおいては、溶接部92における吐出ジョイント70側の部分及びポンプボディ1a側の部分の双方の疲労強度が向上するので、溶接部92の全体における疲労強度が比較例の取付構造の溶接部192よりも向上する。
また、本実施の形態においては、吐出ジョイント70の端面76及びポンプボディ1aの端面86の径方向の長さ(外側円筒面84から内側テーパ面85までの長さ)を比較例の取付構造から変更する必要がないので、溶接部92の溶け込み長さが比較例の取付構造に対して過度に長くなることはない。したがって、溶接設備を大規模化せずに、既存の溶接設備を用いて溶接部92の疲労強度を向上させることができる。
また、本実施の形態においては、空隙部91の構成面のうち、吐出ジョイント70のジョイント側取付部71の内側円筒面75に対して直交した状態で連続する接続面78が溶接部92における幅方向の端部から離隔した位置に設けられている。したがって、溶接部92の空隙部91側の端部が接続面78に接触して応力集中の発生するような形状(溶接部92の空隙部91側の先端部と接続面78とのなす角が鋭角になる形状)になることを回避することができる。
また、本実施の形態においては、吐出ジョイント70の端面76の径方向の長さ(外側円筒面74から内側円筒面75までの長さ)とポンプボディ1aの端面86の径方向の長さ(外側円筒面84から内側テーパ面85までの長さ)を同じにしている。それに対して、吐出ジョイント70の端面及びポンプボディ1aの端面のどちらか一方が空隙部側に長い構成のものがある。この場合、溶接レーザで溶けた溶融金属が空隙部側へ移動して溶接レーザの受け部R(吐出ジョイント70の外側円筒面74及びポンプボディ1aの外側円筒面84)が凹むことがある。溶接レーザの受け部Rが凹むと、溶接部の溶け込み長さが意図した長さに達せず、必要な疲労強度を確保できない虞がある。これは、端面の長い方に合わせてレーザ出力の調整を行うことで端面の短い部分に対してレーザ出力が局部的に過多となり、溶融金属が移動するからである。それに対して、本実施の形態においては、端面76側及び端面86側の双方に対してレーザ出力が局部的に過多となることがないので、溶融金属が空隙部91側へ移動する量を抑制できる。したがって、溶接レーザの受け部Rの凹みを抑制し、安定した溶接部92の疲労強度を得ることができる。
また、本実施の形態においては、吐出ジョイント70の方をポンプボディ1aよりも材料の強度が相対的に高くなるように構成している。被溶接部材は、材料の強度が高いほど、材料価格が増加すると共に、加工性が悪く複雑な形状の加工が困難となり、加工コストが増加する傾向にある。吐出ジョイント70は、ポンプボディ1aよりも、体積が相対的に小さく、加工形状が相対的に簡素で、加工量が相対的に少ない。したがって、ポンプボディ1aの方を吐出ジョイント70よりも材料の強度を相対的に高くする場合よりも、高強度な材料への変更による不利益を抑制することができる。
また、本実施の形態においては、吐出ジョイント70のポンプボディ1aに対する位置決め機構として、互いに嵌合することでジョイント側取付部71の外側円筒面74と本体側取付部81の外側円筒面84を同一面上に位置した状態に位置決めする吐出ジョイント70のガイド穴73及びポンプボディ1aの本体側ガイド部83を備えている。さらに、本体側ガイド部83の外周面83aが溶接部92の空隙部91側の端部(ジョイント側取付部71の内側円筒面75)に対向する位置において空隙部91の壁面の一部を構成している。したがって、ジョイント側取付部71の外側円筒面74と本体側取付部81の外側円筒面84とを容易に同一面上に位置決めすることができる共に、吐出ジョイント70とポンプボディ1aを溶接する際に空隙部91内へ飛散するスパッタが燃料流路内へ侵入することを防止することができる。
また、本実施の形態においては、ポンプボディ1aの本体側取付部81の内側テーパ面85の外側円筒面84に対する傾斜角θを40°から50°の範囲に設定している。したがって、溶接部92における空隙部91側の端部形状が応力集中の生じるような形状(溶接部92の空隙部91側の端部表面と内側テーパ面85とのなす角が鋭角になる形状)となることを確実に回避しつつ、ポンプボディ1aに対する溶接部92の溶け込み長さL2を比較例の取付構造よりも長くすることができる。
なお、本実施の形態においては、吐出ジョイント70が第1部材を、ポンプボディ1aが第2部材を構成する。また、吐出ジョイント70のジョイント側取付部71、外側円筒面74、内側円筒面75、端面76がそれぞれ、第1取付部、第1主面、第1副面、第1突合せ面を構成する。一方、ポンプボディ1aの本体側取付部81、外側円筒面84、内側テーパ面85、端面86がそれぞれ、第2取付部、第2主面、第2副面、第2突合せ面を構成する。また、吐出ジョイント70の接続面78が空隙構成面を構成する。さらに、吐出ジョイント70のガイド穴73が第1位置決め部を、ポンプボディ1aの本体側ガイド部83が第2位置決め部を構成する。
上述したように、本発明の第1の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプ及びその製造方法によれば、材料の強度が相対的に低いポンプボディ1a(第2部材)に対する溶接部92の溶け込み長さL2が材料の強度が相対的に高い吐出ジョイント70(第1部材)に対する溶接部92の溶け込み長さL1よりも長くなるので、溶接時の入熱量を従来よりも過度に増加させることなく当該溶接部92の疲労強度を向上させることができる。
[第1の実施の形態の変形例]
次に、本発明の第1の実施の形態の変形例に係る高圧燃料供給ポンプにおけるポンプボディと吐出ジョイントの取付構造について図9を用いて説明する。図9は本発明の第1の実施の形態の変形例に係る高圧燃料供給ポンプにおけるポンプボディと吐出ジョイントの取付構造を示す断面図である。なお、図9は溶接前の構造を理解可能な状態で示している。また、図9において、図1〜図8に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図9に示す本発明の第1の実施の形態の変形例に係るポンプボディと吐出ジョイントの取付構造が第1の実施の形態に係るポンプボディと吐出ジョイントの取付構造(図6及び図7参照)と相違する主な点は、ポンプボディ1aの本体側取付部81Aの端面86Aを吐出ジョイント70のジョイント側取付部71の端面76よりも空隙部91A側に長くなるように構成したことである。すなわち、ポンプボディ1aの端面86Aにおける外側円筒面84から内側テーパ面85までの径方向の長さは、吐出ジョイント70の端面76における外側円筒面74から内側円筒面75までの径方向の長さよりも空隙部91A側に長い。この構成は、部品の加工上の都合などにより想定されるものである。
溶接前の空隙部91Aの壁面は、ジョイント側取付部71の内側円筒面75及び接続面78と、本体側取付部81Aの端面86Aにおける内側円筒面75よりも径方向内側の部分、内側テーパ面85、及び本体側ガイド部83の外周面83aとによって構成されている。溶接部92Aは、ジョイント側取付部71のジョイント側突合せ部72と本体側取付部81Aの本体側突合せ部82Aを、外側円筒面74及び外側円筒面84側から空隙部91A(内側円筒面75及び内側テーパ面85)まで到達して端面76と端面86Aの境界が完全に消失するように接合している。溶接部92Aの空隙部91A側の端部は、ジョイント側取付部71の内側円筒面75及び本体側取付部81Aの内側テーパ面85と共に、空隙部91Aの連続した壁面の一部を構成している。
上述した本発明の第1の実施の形態の変形例に係る高圧燃料供給ポンプ及びその製造方法によれば、上述した第1の実施の形態と同様に、材料の強度が相対的に低いポンプボディ1aに対する溶接部92Aの溶け込み長さL2が材料の強度が相対的に高い吐出ジョイント70に対する溶接部92Aの溶け込み長さL1よりも確実に長くなるので、溶接時の入熱量を従来よりも過度に増加させることなく溶接部92Aの疲労強度を向上させることができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプにおけるポンプボディと吐出ジョイントの取付構造を図10及び図11を用いて説明する。図10は本発明の第2の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプにおけるポンプボディと吐出ジョイントの溶接後の取付構造を示す断面図である。図11は本発明の第2の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプにおけるポンプボディと吐出ジョイントの溶接前の取付構造を示す断面図である。なお、図10及び図11において、図1〜図9に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図10及び図11に示す本発明の第2の実施の形態に係るポンプボディと吐出ジョイントの取付構造が第1の実施の形態に係るポンプボディと吐出ジョイントの取付構造(図6及び図7参照)と相違する主な点は、吐出ジョイントとポンプボディの材料の相対的な強度が逆転した関係にあること及び吐出ジョイントのジョイント側突合せ部とポンプボディの本体側突合せ部の形状が逆転した関係にあることである。
具体的には、ポンプボディ1aは、それを形成する材料の強度が吐出ジョイント70を形成する材料の強度よりも高くなるように構成されている。
また、ジョイント側取付部71Bのジョイント側突合せ部72Bは、筒部の厚みがその突合せ方向(図10及び図11中、右方向)に向かって徐々に薄くなるように形成されている。ジョイント側突合せ部72Bは、図11に示すように、ポンプボディ1aに溶接される前の部品単体の状態において、第1の実施の形態と同様な外側円筒面74及び端面76と、端面76の空隙部91B側に連続する内側テーパ面75Bとを有している。内側テーパ面75Bは、図10及び図11に示すように、外側円筒面74に対して、溶接部92B又は端面76から離れるにしたがって徐々に遠ざかる方向へ傾斜するように形成されている。換言すると、内側テーパ面75Bは、溶接部92B又は端面76側に向かって(突合せ方向に)拡径する内周面である。
一方、本体側取付部81Bの本体側突合せ部82Bは、筒部の厚みがその軸方向において一定となるように構成されている。本体側突合せ部82Bは、第1の実施の形態と同様な外側円筒面84及び端面86と、端面86の空隙部91B側に連続し外側円筒面84に対して平行な内側円筒面85Bとを有している。内側円筒面85Bは、接続面88を介して本体側ガイド部83の外周面83aに連続している。接続面88は、例えば、本体側突合せ部82Bの突合せ方向側を向き、端面86に対して平行な円環状の平面である。接続面88は、図10に示すように、溶接部92Bにおける溶け込み幅Wの幅方向の端部から離隔した位置において内側円筒面85Bに連続している。
溶接前の空隙部91Bの壁面は、ジョイント側取付部71Bの内側テーパ面75B及び接続面78と、本体側取付部81Bの内側円筒面85B、接続面88、及び本体側ガイド部83の外周面83aとによって構成されている。
このような構成の吐出ジョイント70のジョイント側突合せ部72Bとポンプボディ1aの本体側突合せ部82Bが溶接により接合されている。溶接部92Bは、図10及び図11に示すように、ジョイント側突合せ部72Bの外側円筒面74及び本体側突合せ部82Bの外側円筒面84側から内側テーパ面75B及び内側円筒面85B(空隙部91B)まで到達して端面76と端面86の境界が完全に消失するように形成されている。溶接部92Bの空隙部91B側の端部は、ジョイント側取付部71Bの内側テーパ面75B及び本体側取付部81Bの内側円筒面85Bと共に、空隙部91Bの連続した壁面の一部を構成している。
本実施の形態においては、ポンプボディ1aを形成する材料の強度を、吐出ジョイント70を形成する材料の強度よりも高くしている。したがって、吐出ジョイント70のジョイント側突合せ部72Bの端面76及びポンプボディ1aの本体側突合せ部82Bの端面86の幅方向(径方向)の長さが比較例の取付構造と同様な場合であっても、図10に示す溶接部92Bにおけるポンプボディ1a側の部分は、比較例の取付構造の溶接部192におけるポンプボディ180側の部分よりも、疲労強度が向上する。
さらに、本実施の形態においては、吐出ジョイント70のジョイント側取付部71Bにおける空隙部91B側の内側テーパ面75Bを外側円筒面74に対して端面76から離れるにしたがって徐々に遠ざかる方向へ傾斜するように構成すると共に、ポンプボディ1aの本体側取付部81Bにおける空隙部91B側の内側円筒面85Bを外側円筒面84に対して平行となるように構成している。したがって、吐出ジョイント70の端面76とポンプボディ1aの端面86を対面させ吐出ジョイント70の外側円筒面74とポンプボディ1aの外側円筒面84が同一面上に位置した状態において、ジョイント側突合せ部72B及び本体側突合せ部82Bの突合せ部分(対面部分)に対して完全溶け込みの状態の溶接部92Bを形成すると、図10に示すように、材料の強度が相対的に低い吐出ジョイント70のジョイント側突合せ部72Bに対する溶接部92Bの溶け込み長さL1が、材料の強度が相対的に高いポンプボディ1aの本体側突合せ部82Bに対する溶接部92Bの溶け込み長さL2よりも長くなるように誘導することができる。したがって、吐出ジョイント70に対する溶接部92Bの溶け込み長さL1が比較例の取付構造の吐出ジョイント170に対する溶接部192の溶け込み長さL3よりも長くなる。したがって、吐出ジョイント70の材料が比較例の取付構造の吐出ジョイント170の材料と同じ場合であっても、溶接部92Bにおける吐出ジョイント70側の部分は、比較例の取付構造の溶接部192における吐出ジョイント170側の部分よりも、溶け込み長さが長い分、疲労強度が向上する。
また、本実施の形態においては、材料の強度が相対的に低い吐出ジョイント70のジョイント側突合せ部72Bに対する溶接部92Bの溶け込み長さL2が材料の強度が相対的に高いポンプボディ1aの本体側突合せ部82Bに対する溶接部92Bの溶け込み長さL1よりも長くなるので、溶接部92Bにおける吐出ジョイント70側の部分及びポンプボディ1a側の部分のいずれか一方の疲労強度が必ず相対的に低くなることもない。
以上から、本実施の形態のおいては、溶接部92Bにおける吐出ジョイント70側の部分及びポンプボディ1a側の部分の双方の疲労強度が向上するので、溶接部92Bの全体における疲労強度が比較例の取付構造の溶接部192よりも向上する。
なお、本実施の形態においては、吐出ジョイント70が第2部材を、ポンプボディ1aが第1部材を構成する。また、吐出ジョイント70のジョイント側取付部71B、外側円筒面74、内側テーパ面75B、端面76がそれぞれ、第2取付部、第2主面、第2副面、第2突合せ面を構成する。一方、ポンプボディ1aの本体側取付部81B、外側円筒面84、内側円筒面85B、端面86がそれぞれ、第1取付部、第1主面、第1副面、第1突合せ面を構成する。また、ポンプボディ1aの接続面88が空隙構成面を構成する。さらに、吐出ジョイント70のガイド穴73が第2位置決め部を、ポンプボディ1aの本体側ガイド部83が第1位置決め部を構成する。
上述した本発明の第2の実施の形態に係る高圧燃料供給ポンプ及びその製造方法によれば、前述した第1の実施の形態と同様に、材料の強度が相対的に低い吐出ジョイント70に対する溶接部92Bの溶け込み長さL1が材料の強度が相対的に高い吐出ジョイント70に対する溶接部92Bの溶け込み長さL2よりも長くなるので、溶接時の入熱量を従来よりも過度に増加させることなく溶接部92Bの疲労強度を向上させることができる。
[第2の実施の形態の変形例]
次に、本発明の第2の実施の形態の変形例に係る高圧燃料供給ポンプにおけるポンプボディと吐出ジョイントの取付構造について図12を用いて説明する。図12は本発明の第2の実施の形態の変形例に係る高圧燃料供給ポンプにおけるポンプボディと吐出ジョイントの取付構造を示す断面図である。なお、図12は溶接前の構造を理解可能な状態で示している。また、図12において、図1〜図11に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図12に示す本発明の第2の実施の形態の変形例に係るポンプボディと吐出ジョイントの取付構造が第2の実施の形態に係るポンプボディと吐出ジョイントの取付構造(図10及び図11参照)と相違する主な点は、吐出ジョイント70のジョイント側取付部71Cの端面76Cをポンプボディ1aの本体側取付部81Bの端面86よりも空隙部91C側に長くなるように構成したことである。すなわち、吐出ジョイント70の端面76Cにおける外側円筒面74から内側テーパ面75Bまでの径方向の長さは、ポンプボディ1aの端面86における外側円筒面84から内側円筒面85Bまでの径方向の長さよりも空隙部91C側に長い。この構成は、部品の加工上の都合などにより想定されるものである。
溶接前の空隙部91Cの壁面は、ジョイント側取付部71Cの端面76Cにおける内側円筒面85Bよりも径方向内側の部分、内側テーパ面75B、及び接続面78と、本体側取付部81Bの内側円筒面85B、接続面78、及び本体側ガイド部83の外周面83aとによって構成されている。溶接部92Cは、ジョイント側取付部71Cのジョイント側突合せ部72Cと本体側取付部81Bの本体側突合せ部82Bを、外側円筒面74及び外側円筒面84側から空隙部91C(内側テーパ面75B及び内側円筒面85B)まで到達して端面76Cと端面86の境界が完全に消失するように接合している。溶接部92Cの空隙部91C側の端部は、ジョイント側取付部71Cの内側テーパ面75B及び本体側取付部81Bの内側円筒面85Bと共に、空隙部91Cの連続した壁面の一部を構成している。
上述した本発明の第2の実施の形態の変形例に係る高圧燃料供給ポンプ及びその製造方法によれば、上述した第2の実施の形態と同様に、材料の強度が相対的に低い吐出ジョイント70に対する溶接部92Cの溶け込み長さL1が材料の強度が相対的に高いポンプボディ1aに対する溶接部92Cの溶け込み長さL2よりも確実に長くなるので、溶接時の入熱量を従来よりも過度に増加させることなく溶接部92Cの疲労強度を向上させることができる。
なお、本発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
例えば、上述した本実施の形態においては、吐出ジョイント70とポンプボディ1aを溶接により接合するための取付構造の例を示したが、吸入ジョイントとポンプボディ1aを溶接により接合する取付構造にも適用可能である。