JP6937585B2 - 水回り住宅設備機器用塗膜組成物 - Google Patents
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Description
そこで、水回りの住宅設備機器の部位表面に、親水性や撥水・撥油性の機能を付加させて、防汚性や耐汚染性を向上させる技術が考案されているが、住宅設備機器は日常的に拭き掃除が行われるために、部位表面に付加させた機能が摩耗等による劣化により破損してしまい、満足するような防汚性を長期間維持することが困難であつた。
また、特許文献2においては、シリカ粒子とフッ素樹脂粒子を含む凝集体を有する有機樹脂被膜を用いた防汚部材について開示されている。
(1)本発明の水回り住宅設備機器用塗膜組成物は、撥水・撥油性を有する熱硬化性塗料の硬化物である硬化塗膜と、無機粒子及び/ 又は無機粒子の凝集体からなる複数の分散粒子と、を有する塗膜組成物であって、基材表面に前記硬化塗膜が形成され、前記硬化塗膜の平面視において、前記無機粒子及び/ 又は無機粒子の凝集体からなる複数の分散粒子の占める面積比率が20〜60%であり、前記熱硬化性塗料は、少なくとも撥水・撥油性を有する第1の熱硬化性塗料と、無機粒子及び/又は無機粒子の凝集体を有する第2の熱硬化性塗料を含み、前記第1の熱硬化性塗料は、シリコーン変性アクリルウレタン塗料であることを特徴とする。
分散粒子の平均粒径が40μmを超える値であると塗膜組成物の外観を損ない、平均粒径が10μm未満であると塗膜組成物の洗浄性を維持する効果が低下する。
硬化塗膜の表面粗さ( 算術平均粗さ) が当該範囲であるならば、表面に形成される凹凸部分の凸部が洗浄時に洗浄材による磨耗を長期間に渡り維持するために十分な高さであり、凸部に存在する無機粒子が洗浄材による洗浄に長期間耐えるとともに、十分な高さの凸部の存在によって磨耗により表面に無機粒子がなくなることが無い。このため、繰り返し拭き掃除等の清掃がなされる台所設備機器等の住宅設備機器に用いて好適であり、長期間性能を維持できる塗膜組成物を提供できる。
これにより水回りの住宅設備機器に付加した防汚性能を、長期間継続して維持させることができる。即ち、表面の美観を長期間継続して維持することができる住宅設備機器用の塗膜組成物を提供できる。
図1は本実施形態の断面構造の一例を示すもので、基材1の上に無機粒子及び/又は無機粒子の凝集体からなる分散粒子3を複数含む硬化塗膜2が形成されている。
硬化塗膜2は後述する熱硬化性塗料を塗布後乾燥させて得られ、複数の分散粒子3を含む硬化塗膜2から塗膜組成物10が形成されている。
硬化塗膜2の表面部分には複数の分散粒子3と硬化塗膜表面からなる凹凸が形成され、表面において分散粒子3が形成する凸部2bの間には硬化塗膜2の表面が露出した凹部2aが形成されている。なお、図1では略されているが硬化塗膜2の表面部分に位置して凸部2bを構成する分散粒子3の表面にも薄い硬化塗膜2の一部が被覆されている。
また、図1では説明の簡略化のために個々の分散粒子3を単独で硬化塗膜2の中に分散させた状態として描いたが、図1に示す分散粒子3が粒径の小さな分散粒子を複数凝集させた凝集体であっても良い。
ここで基材1は、キッチン・洗面化粧台・浴室等の水回り設備において、天板・シンク・ボール・鏡・浴槽・洗い場・壁・カウンター等のいずれか一部を構成している基材である。なお、図1では基材1の上面に塗膜組成物10が被覆された構造を描いているが、この構造は上述の如く種々水回り設備の基材各所に適用可能であるので、基材1の側面、基材1の裏面、基材1の底面などの何れか必要な箇所の面に塗膜組成物10が被覆されていても良い。
撥水・撥油性を有する熱硬化性塗料としてその他、アクリルシリコーン樹脂系塗料、シリコーン樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料等の熱硬化性塗料を用いることができる。
硬化塗膜2の基となる熱硬化性塗料は、撥水・撥油性を有する第1の熱硬化性塗料と分散粒子3を含む第2の熱硬化性塗料の混合物を用いることができる。ここで用いる第2の熱硬化性塗料として、シリコーン変性アクリルウレタン塗料、アクリルシリコーン樹脂系塗料、シリコーン樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料の他、ウレタン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、メラミン樹脂塗料などの熱硬化性塗料を用いることができる。
なお、本願明細書において特に規定しない限り10μm〜40μmのように範囲を表記した場合は、上限と下限を含む範囲とする。このため、10μm〜40μmは、10μm以上40μm以下の範囲を意味する。
分散粒子3の平均粒径が40μmを超える粒径であると塗膜組成物10としての外観を損ない、10μmを下回る粒径であると洗浄性を維持する効果が低下する。
ここで言う被覆部の厚さとは図2に示すように表面の無機粒子3を硬化した塗膜が被覆していない構造を想定した場合、表面に突出した無機粒子3を除いた塗膜部分のみの厚さを示すための表記である。
(実施例1)
熱硬化性塗料としてシリコーン変性アクリルウレタン塗料100質量部と、シリカ粒子を艶消し剤として使用している艶消しウレタン塗料(シリカ粒子含有量4.0質量%)100質量部と、各塗料の硬化剤としてイソシアネート系硬化剤を各々20質量部、10質量部と、希釈剤としてPMA(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート)250質量部を配合、混合し、シリカ粒子及び/又はシリカ粒子の凝集体を含有した撥水・撥油塗料(熱硬化性塗料)を作製した。
その後、約10分間放置した後、前記人工大理石基材を90℃の乾燥炉に1時間入れ、前記撥水・撥油塗料を硬化させ、無機粒子を含有した撥水・撥油性の硬化塗膜からなる塗膜組成物を表面に形成した人工大理石を得た。
シリカ粒子を艶消し剤として使用している艶消しウレタン塗料のシリカ粒子含有量を2.5質量%にした以外は実施例1と同様条件にして、無機粒子を含有した撥水・撥油性の硬化塗膜からなる塗膜組成物を表面に形成した人工大理石を得た。
(実施例3)
シリカ粒子を艶消し剤として使用している艶消しウレタン塗料のシリカ含有量を9.5質量%にした以外は実施例1と同様条件にして、無機粒子を含有した撥水・撥油性の硬化塗膜からなる塗膜組成物を表面に形成した人工大理石を得た。
(実施例4、5)
シリカ粒子を艶消し剤として使用している艶消しウレタン塗料のシリカ粒子含有量を5.0質量%にした以外は実施例1と同様条件にして、無機粒子を含有した撥水・撥油性の硬化塗膜からなる塗膜組成物を表面に形成した実施例4、5の人工大理石を得た。
熱硬化性塗料として、シリコーン変性アクリルウレタン熱硬化性塗料100質量部と、塗料の硬化剤としてイソシアネート系硬化剤を20質量部と、希釈剤としてPMA125質量部を使用した以外は実施例1と同様条件にして、撥水・撥油性の硬化塗膜を表面に形成した人工大理石を得た。この比較例1の硬化塗膜はシリカ粒子を含まない塗膜である。
(比較例2)
シリカ粒子を艶消し剤として使用している艶消しウレタン塗料のシリカ粒子含有量を1.0質量%にした以外は実施例1と同様条件にして、無機粒子を含有した撥水・撥油性の硬化塗膜からなる塗膜組成物を表面に形成した人工大理石を得た。
(比較例3)
シリカ粒子を艶消し剤として使用している艶消しウレタン塗料のシリカ含有量を13.3質量%にした以外は実施例1と同様条件にして、無機粒子を含有した撥水・撥油性の硬化塗膜からなる塗膜組成物を表面に形成した人工大理石を得た。
(比較例4)
シリカ粒子を艶消し剤として使用している艶消しウレタン塗料のシリカ含有量を1.9質量%にした以外は実施例1と同様条件にして、無機粒子を含有した撥水・撥油性の硬化塗膜からなる塗膜組成物を表面に形成した人工大理石を得た。
得られたそれぞれの人工大理石を用いて、シリカ粒子またはシリカ粒子の凝集体からなる分散粒子の面積割合(平面視)、平均粒径、算術平均粗さRaの評価を以下に記載する方法で行った。
「1」シリカ粒子またはシリカ粒子の凝集体からなる分散粒子の面積割合
人工大理石表面をデジタルマイクロスコープVHX−5000(株式会社キーエンス製、装置名)にて拡大観察し、画像解析ソフトWin ROOF(三谷商事株式会社製、ソフト名)でシリカ粒子及び/又はシリカ粒子の凝集体からなる分散粒子の面積割合を算出し面積比率とした。後記する表1にはシリカ面積割合(平面視)として表記する。
図3は実施例1の人工大理石の表面を1000倍に拡大して撮影した拡大写真である。図3に示すように分散粒子は暗い灰色で表示され、硬化塗膜は明るい灰色で表示され、両者の区別は明確にできるので、分散粒子の面積比率を算出することができる。
人工大理石表面をデジタルマイクロスコープVHX−5000にて拡大観察し、無作為に選んだシリカ粒子及び/又は無機粒子の凝集体からなる分散粒子10点の粒径を測定し、その平均値を平均粒径(μm)として後記する表1に示す。
「3」算術平均粗さRa
人工大理石表面の算術平均粗さRaを表面粗さ形状測定機サーフコム130A(株式会社東京精密製、装置名)にて測定した。
台所用中性洗剤を水道水で3%に薄めた水溶液をナイロンたわしに含ませ、上述の各人工大理石の表面に前記ナイロンたわしを当て、30g/cm2の荷重をかけたまま30万回往復摩擦操作を行い、試験後水洗いし、24時間風乾させた後、摩擦部分の食用油の弾き性を評価した。後記する表1に繰り返し洗浄試験後の油弾きとして示す。
図4は実施例1の人工大理石の繰り返し洗浄試験後の表面を1000倍に拡大して撮影した拡大写真である。また、油弾きの評価は、染色食用油を人工大理石の表面に塗り拡げた場合、図5(A)の写真に示すように油滴が濡れ拡がった場合は×、図5(B)の写真のように細かい油滴となって分離した場合に○と評価した。
以上の試験結果を以下の表1に併記した。
表1に示した結果から、実施例1〜5の人工大理石は、前記無機粒子及び/又は無機粒子の凝集体が占める面積比率を20〜60%の範囲、平均粒径を10〜40μmの範囲、算術平均粗さRaを0.3〜0.7μmの範囲としていることで、繰り返し洗浄試験後の食用油の弾きを有し、耐久性に優れた人工大理石となっていた。
実施例4の人工大理石は繰り返し洗浄試験後の食用油の弾きについて耐久回数が50万回となり最高の耐久性を示した。なお、実施例1〜3、5の人工大理石は30万回の耐久回数で試験を終了している。
実施例5の人工大理石は平均粒径をより好ましい範囲より大きい57μm、粗さRaをより好ましい範囲より大きな0.8μmとしたが、シリカ粒子及び/又はシリカ粒子の凝集体が占める面積比率を望ましい範囲内の42%としているので、30万回という望ましい耐久性を示した。
比較例2では前記シリカ粒子及び/又はシリカ粒子の凝集体が占める面積比率を19%以下、平均粒径を9μm以下、算術平均粗さRaを0.3μm以下としている為、無機粒子の割合が少な過ぎ、3万回の往復摩擦操作による繰り返し洗浄試験には耐えたが、5万回の往復摩擦操作による繰り返し洗浄試験には耐えられず、洗浄試験後において食用油を弾かない結果となった。
比較例3では前記シリカ粒子及び/又はシリカ粒子の凝集体が占める面積比率を61%以上、平均粒径を41μm以上、算術平均粗さRaを0.7μmより大きくしたなど無機粒子の割合が多い。その為、繰り返し洗浄試験においてシリカ粒子上の皮膜が無くなった際に硬化塗膜の凹部が存在する面積比率が少なく、撥水・撥油成分の量が少なくなり、食用油を弾かない結果となった。また、耐久回数について5万回の往復摩擦操作による繰り返し試験には耐えたが、10万回の往復摩擦操作による繰り返し試験には耐えられなかった。
比較例4では、平均粒径を望ましい範囲としたが、、シリカ粒子及び/又はシリカ粒子の凝集体が占める面積比率が低く、Raが小さすぎたため、油弾きが悪く、耐久性も低下した。
これらの対比から、シリカ粒子及び/又はシリカ粒子の凝集体の面積比率が耐久性に対して最も影響の大きいパラメーターであることが分かった。従って、シリカ粒子及び/又はシリカ粒子の凝集体の面積比率を望ましい範囲とした上で、更に平均粒径あるいは粗さRaを望ましい範囲とすることがより高い耐久性を得る上で有効であると考えられる。
Claims (5)
- 撥水・撥油性を有する熱硬化性塗料の硬化物である硬化塗膜と、無機粒子及び/又は無機粒子の凝集体からなる複数の分散粒子と、を有する塗膜組成物であって、基材表面に前記硬化塗膜が形成され、前記硬化塗膜の平面視において、前記無機粒子及び/又は無機粒子の凝集体からなる複数の分散粒子が占める面積比率が20〜60%であり、
前記熱硬化性塗料は、少なくとも撥水・撥油性を有する第1の熱硬化性塗料と、無機粒子及び/又は無機粒子の凝集体を有する第2の熱硬化性塗料を含み、
前記第1の熱硬化性塗料は、シリコーン変性アクリルウレタン塗料であることを特徴とする塗膜組成物。 - 前記無機粒子は、シリカ粒子であることを特徴とする請求項1に記載の塗膜組成物。
- 前記無機粒子及び/又は無機粒子の凝集体は、平均粒径:10〜40μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗膜組成物。
- 前記硬化塗膜の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.3〜0.7μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の塗膜組成物。
- 前記硬化塗膜が、水回りの住宅設備機器の部位表面に形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の塗膜組成物。
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