記載の実施形態の他の態様、特徴、および利点は、以下の詳細な説明および例としての実施例から明らかになると予想される。
腫瘍細胞で発現したプログラム死リガンド−1タンパク質(PD−L1)と、免疫エフェクター細胞、例えばT細胞上で発現したプログラム死−1タンパク質(PD−1)との間の細胞外相互作用は、腫瘍関連免疫逃避において顕著な影響を有する。抗PD−1または抗PD−L1抗体を使用する免疫チェックポイント遮断の臨床での成功にもかかわらず、PD−L1とPD−1との相互作用の基礎となる調節メカニズムおよび構造特徴は依然として不明のままである。本明細書において記述される知見によれば、PD−L1のN−連結グリコシル化はPD−1へのPD−L1の結合を促進および増強し、これがT細胞媒介免疫応答の抑制を促進することが証明されている。逆に、異常なグリコシル化、またはN−連結グリコシル化の欠如、例えば腫瘍細胞上で発現したPD−L1ポリペプチドの部分的または完全な脱グリコシル化は、PD−L1/PD−1相互作用に有害な影響を及ぼし、例えば弱めるまたは妨害し、それによって免疫抑制を阻害して、エフェクターT細胞の細胞傷害活性および腫瘍細胞の殺滅を促進することが新たに見出されている。加えて、その腫瘍が高度グリコシル化PD−L1を発現する患者の生存は不良であることから、グリコシル化PD−L1は、本明細書における知見に基づいて、がんの処置に関する有効な治療標的として認識される。本明細書において、がんを処置するために、グリコシル化PD−L1/PD−1相互作用を妨害するため、免疫抑制を阻害するため、およびT細胞エフェクター機能を促進するために、非グリコシル化PD−L1と比較してグリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合して相互作用するがんの治療薬、例えば抗glycPD−L1抗体が提供および記述される。本明細書において記述される抗グリコシル化PD−L1抗体による腫瘍の処置は、PD−L1のグリコシル化形態に対して特異的ではない抗PD−L1抗体と比較して増強された免疫抑制阻害効果を提供する。実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、モノクローナル抗体であり、本明細書において「MAb」として示される。
本明細書において記述される実施例は、本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体による、非グリコシル化PD−L1と比較したグリコシル化PD−L1の結合における有意な差、例えば2〜3倍の差を示す実験結果を提供する。実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、グリコシル化PD−L1に対して、非グリコシル化PD−L1と比較して、ナノモル濃度範囲、例えば約5〜20nM、または約10〜20nMの結合親和性を示す。
定義
本明細書において使用される用語「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つまたは複数を意味しうる。
本明細書において使用される用語「または」は、代替物のみを指すことが明白に示されている場合、または代替物が相互に排他的である場合を除き「および/または」を意味するが、本開示は、代替物のみと「および/または」を指す定義を支持する。
本明細書において使用される用語「別の」は、少なくとも2番目以上を意味する。
本明細書において使用される用語「約」は、方法が、値または試験対象間に存在する変動を決定するために使用される、値が装置の固有の誤差の変動を含むことを示すために使用される。
本明細書において使用される用語「プログラム死リガンド−1」または「PD−L1」は、特に示していなければ、哺乳動物、例えば霊長類(例えば、ヒト、カニクイザル(cyno))、イヌ、および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)を含む任意の脊椎動物源由来のポリペプチド(用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は本明細書において互換的に使用される)または任意のネイティブPD−L1を指し、ある特定の実施形態において、様々なPD−L1アイソフォーム、そのSNP変種を含む関連するPD−L1ポリペプチドを含む。
ヒトPD−L1の例示的なアミノ酸配列(UniProtKB/Swiss−Prot:Q9NZQ7.1;GI:83287884)を以下に提供する:
MRIFAVFIFM TYWHLLNAFT VTVPKDLYVV EYGSNMTIEC KFPVEKQLDL AALIVYWEME DKNIIQFVHG EEDLKVQHSS YRQRARLLKD QLSLGNAALQ ITDVKLQDAG VYRCMISYGG ADYKRITVKV NAPYNKINQR ILVVDPVTSE HELTCQAEGY PKAEVIWTSS DHQVLSGKTT TTNSKREEKL FNVTSTLRIN TTTNEIFYCT FRRLDPEENH TAELVIPELP LAHPPNERTH LVILGAILLC LGVALTFIFR LRKGRMMDVK KCGIQDTNSK KQSDTHLEET(配列番号1)配列番号1において、アミノ末端のアミノ酸1〜18は、ヒトPD−L1タンパク質のシグナル配列を構成する。したがって、成熟ヒトPD−L1タンパク質は、配列番号1のアミノ酸19〜290からなる。
本明細書において記述されるポリペプチドおよびペプチドを構成するアミノ酸残基の略語、ならびにこれらのアミノ酸残基対する保存的置換を、以下の表1に示す。1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を含むポリペプチド、または本明細書において記述されるポリペプチドの保存的に改変された変種は、当初のまたは天然に存在するアミノ酸が、類似の特徴、例えば類似の電荷、疎水性/親水性、側鎖の大きさ、骨格のコンフォメーション、構造、および剛性などを有する他のアミノ酸に置換されているポリペプチドを指す。このため、これらのアミノ酸変化は、典型的に、ポリペプチドの生物活性、機能、または他の所望の特性、例えば抗原に対するその親和性またはその特異性を変更することなく行われうる。一般的に、ポリペプチドの非必須領域における1つのアミノ酸置換は、生物活性を実質的に変更しない。さらに、構造または機能が類似であるアミノ酸の置換は、ポリペプチドの生物活性を妨害する可能性がより低い。
用語「抗体」、「免疫グロブリン」、および「Ig」は、本明細書において広い意味で互換的に使用され、具体的に、以下に記述されるように、例えば個々の抗PD−L1抗体、例えば本明細書において記述されるモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、完全長またはインタクトモノクローナル抗体、抗原結合活性を維持している抗体のペプチド断片を含む)、抗非グリコシル化PD−L1抗体、および抗グリコシル化PD−L1抗体、ポリエピトープまたはモノエピトープ特異性を有する抗PD−L1抗体組成物、ポリクローナル抗体または一価抗体、多価抗体、少なくとも2つのインタクト抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、それらが所望の生物活性を示す限り二重特異性抗体)、一本鎖抗PD−L1抗体、および抗PD−L1抗体の断片が範囲に含まれる。抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、および/または親和性成熟抗体でありうる。抗体は、他の種、例えばマウス、ラット、ウサギなど由来であってもよい。用語「抗体」は、特異的分子抗原に結合することができるポリペプチドの免疫グロブリンクラス内のB細胞のポリペプチド産物を含むと意図される。抗体は典型的に、ポリペプチド鎖の2つの同一の対で構成され、それぞれの対は、1つの重鎖(約50〜70kDa)と1つの軽鎖(約25kDa)を有し、重鎖および軽鎖のアミノ末端部分は、約100〜約130またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含み、それぞれの鎖のカルボキシ末端部分は定常領域を含む(Borrebaeck (ed.), 1995, Antibody Engineering, Second Ed., Oxford University Press.; Kuby, 1997 Immunology, Third Ed., W.H. Freeman and Company, New Yorkを参照されたい)。特異的実施形態において、本明細書において提供される抗体が結合する特異的分子抗原は、PD−L1ポリペプチド、PD−L1ペプチド断片、またはPD−L1エピトープを含む。PD−L1ポリペプチド、PD−L1ペプチド断片、またはPD−L1エピトープは、非グリコシル化またはグリコシル化されうる。特定の実施形態において、PD−L1ポリペプチド、PD−L1ペプチド断片、またはPD−L1エピトープは、グリコシル化される。PD−L1抗原に結合する抗体またはそのペプチド断片は、例えば、イムノアッセイ、BIAコア、または当業者に公知の他の技術によって同定することができる。抗体またはその断片は、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)などの実験技術を使用して決定した場合に、いかなる交叉反応抗原よりも高い親和性でPD−L1抗原に結合するとき、PD−L1抗原に特異的に結合する。典型的に、特異的または選択的結合反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍、より典型的に、バックグラウンドシグナルまたはノイズの5〜10倍以上である。例えば、抗体特異性に関する考察に関しては、Paul, ed., 1989, Fundamental Immunology Second Edition, Raven Press, New York at pages 332-336を参照されたい。
本明細書において提供される抗体には、合成抗体、モノクローナル抗体、組み換えによって産生された抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ抗体(抗Id)、および上記のいずれかの機能的断片(例えば、PD−L1結合断片などの抗原結合断片)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。結合断片は、抗体重鎖または軽鎖ポリペプチドの一部、例えば断片が由来する抗体の結合活性のいくつかまたは全てを保持するペプチド部分を指す。機能的断片(例えば、PD−L1結合断片などの抗原結合断片)の非限定的な例には、一本鎖Fvs(scFv)(例えば、単特異性、二重特異性など)、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab)2断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、およびミニボディが挙げられる。特に、本明細書において提供される抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、例えばPD−L1抗原、特にグリコシル化PD−L1抗原に結合する抗原結合部位(例えば、抗PD−L1抗体の1つまたは複数の相補性決定領域(CDR))を含む抗原結合ドメインまたは分子を含む。そのような抗体断片の説明は、例えば、Harlow and Lane, 1989, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York; Myers (ed.), Molec. Biology and Biotechnology: A Comprehensive Desk Reference, New York: VCH Publisher, Inc.;Huston et al., 1993, Cell Biophysics, 22:189-224;Pluckthun and Skerra, 1989, Meth. Enzymol., 178:497-515 and in Day, E.D., 1990, Advanced Immunochemistry, Second Ed., Wiley-Liss, Inc., New York, NYに見出されうる。本明細書において提供される抗体は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、または任意のサブクラス(例えば、IgG2aおよびIgG2b)の抗体でありうる。抗PD−L1抗体は、アゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体でありうる。ある特定の実施形態において、抗PD−L1抗体は、完全ヒト、例えば完全ヒトモノクローナル抗PD−L1抗体である。ある特定の実施形態において、抗PD−L1抗体は、ヒト化されており、例えば、ヒト化モノクローナル抗PD−L1抗体である。ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗体は、IgG抗体、またはそのクラス(例えば、ヒトIgG1またはIgG4)もしくはサブクラス、特にIgG1サブクラスの抗体である。
4本鎖抗体単位は、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖で構成されるヘテロ4量体糖タンパク質である。IgGの場合、4本鎖(非還元)抗体単位の分子量は、一般的に約150,000ダルトンである。それぞれのL鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に連結され、H鎖のアイソタイプに応じて、2つのH鎖が1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに連結される。それぞれのHおよびL鎖はまた、規則正しい間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。N末端において、それぞれのH鎖は、可変ドメイン(VH)の後に、αおよびγ鎖のそれぞれにつき3つの定常ドメイン(CH)を有し、μおよびεアイソタイプにつき4つのCHドメインを有する。それぞれのL鎖は、N末端において可変ドメイン(VL)を有し、その後にそのカルボキシ末端において定常ドメイン(CL)を有する。VLドメインは、VHドメインと整列し、CLドメインは、重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列する。特定のアミノ酸残基が、軽鎖と重鎖可変ドメインの間の界面を形成すると考えられている。VHとVLは対形成によって、共に1つの抗原結合部位を形成するが、ある特定のVHおよびVLドメインはそれぞれ、VLまたはVHドメインと対を形成しなくとも抗原に結合することができる。免疫グロブリン分子の基本構造は、当業者によって理解される。例えば、異なるクラスの抗体の構造および特性は、Terr, Abba I. et al., 1994, Basic and Clinical Immunology, 8th edition, Appleton & Lange, Norwalk, CT, page 71 and Chapter 6に見出されうる。
本明細書において使用される用語「抗原」または「標的抗原」は、抗体が選択的に結合することができる既定の分子である。標的抗原は、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、または他の天然に存在するもしくは合成の化合物でありうる。実施形態において、標的抗原は低分子である。ある特定の実施形態において、標的抗原は、ポリペプチドまたはペプチドであり、好ましくはグリコシル化PD−L1ポリペプチドである。
本明細書において使用される用語「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」、および類似の用語は、抗原と相互作用して、結合剤としての抗体に、抗原に対するその特異性および親和性を付与するアミノ酸残基を含む抗体の部分を指す(例えば、抗体のCDRは、抗原結合領域である)。抗原結合領域は、任意の動物種、例えば齧歯類(例えば、ウサギ、ラット、またはハムスター)およびヒトに由来しうる。特異的実施形態において、抗原結合領域は、ヒト起源の領域でありうる。
「単離」抗体は、細胞材料または細胞もしくは組織起源の他の混入タンパク質、および/または抗体が由来する他の混入成分を実質的に含まず、または化学合成されるときの化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。語句「細胞材料を実質的に含まない」には、単離されたまたは組み換えによって産生された細胞の細胞成分から分離されている抗体の調製物を含む。このため、細胞材料を実質的に含まない抗体は、異種タンパク質(本明細書において「混入タンパク質」とも呼ばれる)の約30%、25%、20%、15%、10%、5%、または1%未満(乾燥重量で)を有する抗体の調製物を含む。ある特定の実施形態において、抗体が組み換えによって産生されるとき、抗体は培養培地を実質的に含まず、例えば、培養培地はタンパク質調製物の体積の約20%、15%、10%、5%、または1%未満を表す。ある特定の実施形態において、抗体が化学合成によって産生されるとき、抗体は、化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まず、例えば抗体は、タンパク質の合成に関係する化学前駆体または他の化学物質から分離されている。したがって、抗体のそのような調製物は、目的の抗体以外の化学前駆体または化合物の約30%、25%、20%、15%、10%、5%、または1%未満(乾燥重量で)を有する。混入成分はまた、抗体に対する治療的使用を妨げる材料を含みうるがこれらに限定されるわけではなく、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様溶質を含みうる。ある特定の実施形態において、抗体は、(1)ローリー法(Lowry et al., 1951, J. Bio. Chem., 193: 265-275)によって決定した場合に、抗体の95重量%より大きいもしくはそれに等しい、例えば95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、もしくは99重量%まで、(2)スピニングカップシーケネーターを使用することによって、N−末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーもしくは銀染色を使用して還元もしくは非還元条件下でSDS−PAGEによって均一となるまで、精製される。単離抗体はまた、抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないことから、組み換え細胞内のその場の抗体を含む。単離抗体は、典型的に少なくとも1つの精製ステップによって調製される。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される抗体は単離されている。
本明細書において使用される用語「結合する」または「結合している」は、例えば複合体の形成を含む分子間の相互作用を指す。実例として、そのような相互作用は、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、およびファンデルワールス相互作用を含む非共有結合的相互作用を包含する。複合体はまた、共有もしくは非共有結合、相互作用、または力によって共に保持される2つまたはそれ以上の分子の結合を含みうる。抗体の1つの抗原結合部位と、PD−L1などの標的(抗原)分子上のそのエピトープの間の全体的な非共有結合的相互作用の強度は、そのエピトープに関する抗体または機能的断片の親和性である。一価の抗原への抗体の結合(kon)と解離(koff)との比率(kon/koff)は、結合定数Kaであり、これは親和性の測定値である。Kの値は、抗体および抗原の異なる複合体ごとに異なり、konおよびkoffの両方に依存する。本明細書において提供される抗体に対する結合定数Kaは、本明細書において提供される任意の方法、または当業者に公知の他の任意の方法を使用して決定されうる。1つの結合部位での親和性は、抗体と抗原の間の相互作用の真の強度を必ずしも反映しない。多数の反復抗原性決定基を含む複合抗原が、多数の結合部位を含む抗体と接触するとき、1つの部位で抗体と抗原とが相互作用すると、第2の結合部位での相互作用の確率が増加する。多価抗体と抗原の間のそのような多数の相互作用の強度は、アビディティと呼ばれる。抗体のアビディティは、その個々の結合部位の親和性よりもその結合能のよりよい尺度でありうる。例えば、高いアビディティは、時に、IgGより低い親和性を有しうる5量体のIgM抗体において見出されるように低い親和性を補うことができるが、IgMのアビディティがその多価性に起因して高い場合、IgMは抗原に有効に結合することができる。
「結合親和性」は、一般的に、ある分子(例えば、抗体などの結合タンパク質)の1つの結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)の間の非共有結合的相互作用の合計の強度を指す。特に示していなければ、本明細書において使用される「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1相互作用を反映する内因性の結合親和性を指す。結合分子Xのその結合パートナーYに対する親和性は、一般的に解離定数(Kd)によって表されうる。親和性は、本明細書において記述される方法を含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は一般的に、抗原への結合が遅く、容易に解離する傾向があるが、高親和性抗体は一般的に、抗原への結合が速く、抗原により長い時間結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する多様な方法が当技術分野で公知であり、そのいずれも、本開示の目的のために使用されうる。特異的な例示的実施形態は、以下を含む:一実施形態において、「Kd」または「Kd値」は、当技術分野で公知のアッセイ、例えば結合アッセイによって測定される。Kdは、例えば目的の抗体のFab部分とその抗原に関して実施される放射標識抗原結合アッセイ(RIA)において測定することができる(Chen, et al., 1999, J. Mol. Biol., 293:865-881)。KdまたはKd値はまた、例えばBIAcore(商標)−2000またはBIAcore(商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ(BIAcore)を使用することによって、または例えばOctetQK384システム(ForteBio,Menlo Park,CA)を使用するバイオレイヤー干渉法(BLI)によって、または水晶振動子微量天秤(QCM)技術によっても測定することができる。「オンレート」または「結合の速度」または「結合速度」または「kon」はまた、例えばBIAcore(商標)−2000もしくはBIAcore(商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)、またはOctetQK384システム(ForteBio,Menlo Park,CA)を使用する、上記の同じ表面プラズモン共鳴またはバイオレイヤー干渉法によって決定することもできる。
用語「抗PD−L1抗体」、「PD−L1に特異的に結合する抗体」、または「PD−L1に特異的である抗体」、「PD−L1エピトープに特異的に結合する抗体」、「PD−L1に選択的に結合する抗体」、「PD−L1エピトープに選択的に結合する抗体」、「PD−L1に優先的に結合する抗体」、および類似の用語は、本明細書において互換的に使用され、特に非グリコシル化PD−L1またはPD−L1のグリコシル化変異体と比較して十分な親和性および特異性で、PD−L1、すなわちグリコシル化またはWT PD−L1に結合することができる抗体を指す。本明細書において提供される抗glycPD−L1抗体の「優先的結合」は、適当な対照、例えば非グリコシル化もしくは変種PD−L1(例えば、4NQ PD−L1)への結合と比較した、細胞上で発現したPD−L1、すなわちグリコシル化PD−L1ポリペプチドもしくはPD−L1 WTもしくはグリコシル化PD−L1への抗体の結合、またはPD−L1の非グリコシル化もしくは変種形態(例えば、4NQ PD−L1)を発現する細胞、例えば分子的に改変された細胞、細胞株、もしくは腫瘍細胞単離体、例えば本明細書において例えば実施例5に記述されるものなどへの抗体の結合の蛍光強度の定量に基づいて決定または定義されうる。記述の抗glycPD−L1抗体のグリコシル化PD−L1ポリペプチドまたはグリコシル化PD−L1(PD−L1 WT)発現細胞への優先的結合は、細胞フローサイトメトリーによって評価した場合に、非グリコシル化もしくは変異体グリコシル化PD−L1ポリペプチドまたは非グリコシル化もしくは変異体グリコシル化PD−L1発現細胞への抗体の結合と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍またはそれ以上の測定された蛍光結合強度(MFI)によって示され、アッセイされる抗体は、FITCなどの蛍光標識またはマーカーによって直接または間接的に検出可能である。一実施形態において、アッセイされる抗体は、FITCなどの蛍光マーカーで直接標識される。実施形態において、グリコシル化PD−L1に優先的または選択的に結合する抗glycPD−L1抗体は、本明細書において記述される非グリコシル化PD−L1またはPD−L1グリコシル化変種、例えばグリコシル化されていない4NQ PD−L1の結合に関して、同じ抗体のMFI値より1.5倍〜25倍、または2倍〜20倍、または3倍〜15倍、または4倍〜8倍、または2倍〜10倍、または2倍〜5倍、またはそれ以上大きいMFI値を示す。前述の全ての間のおよび全てに等しい倍率の蛍光強度の値が含まれると意図される。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、グリコシル化PD−L1ポリペプチド、例えばグリコシル化PD−L1抗原、ペプチド断片、またはエピトープ(例えば、ヒトグリコシル化PD−L1ポリペプチド、抗原、またはエピトープなどのヒトグリコシル化PD−L1)に特異的かつ優先的に結合する。PD−L1(例えば、グリコシル化または野生型ヒトPD−L1)に特異的に結合する抗体は、PD−L1の細胞外ドメイン(ECD)またはECDに由来するペプチドに結合することができる。PD−L1抗原(例えば、ヒトPD−L1)に特異的に結合する抗体は、近縁の抗原(例えば、カニクイザル(cyno)PD−L1)と交叉反応しうる。好ましい実施形態において、PD−L1抗原に特異的に結合する抗体は、他の抗原と交叉反応しない。PD−L1抗原に特異的に結合する抗体は、例えば免疫蛍光結合アッセイ、免疫組織化学アッセイ法、イムノアッセイ法、Biacore、または当業者に公知の他の技術によって同定されうる。
ある特定の他の実施形態において、本明細書において記述されるPD−L1に結合する抗体は、20nM、19nM、18nM、17nM、16nM、15nM、14nM、13nM、12nM、11nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、または0.1nM未満であるかまたはそれに等しい、および/または0.1nM以上であるかまたはそれに等しい解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、抗PD−L1抗体は、異なる種(ヒトとcyno PD−L1の間)のPD−L1タンパク質において保存されているPD−L1のエピトープに結合する。抗体は、ラジオイムノアッセイ(RIA)および酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)などの実験技術を使用して決定した場合に、いかなる交叉反応抗原よりも高い親和性でPD−L1抗原に結合するとき、PD−L1抗原に特異的に結合する。典型的に、特異的または選択的反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、バックグラウンドの10倍以上でありうる。例えば、抗体の特異性に関する考察に関しては、Paul, ed., 1989, Fundamental Immunology Second Edition, Raven Press, New York at pages 332-336を参照されたい。そのような実施形態において、「非標的」タンパク質への抗体の結合の程度は、例えば蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析または放射免疫沈殿(RIA)によって決定した場合に、その特定の標的タンパク質への抗体の結合の約10%未満と予想される。
抗PD−L1抗体は、抗グリコシル化PD−L1抗体または抗野生型PD−L1(PD−L1 WT)抗体を含み、野生型PD−L1タンパク質はグリコシル化されており、グリコシル化PD−L1に対して特異的である。好ましい実施形態において、抗PD−L1抗体は、非グリコシル化PD−L1と比較してグリコシル化PD−L1に特異的に結合する抗glycPD−L1抗体である。いくつかの実施形態において、抗グリコシル化PD−L1抗体は、PD−L1の線形グリコシル化モチーフに結合する。いくつかの実施形態において、抗グリコシル化PD−L1抗体は、3次元でグリコシル化モチーフの1つまたは複数の近傍に位置するペプチド配列に結合する。いくつかの実施形態において、抗グリコシル化PD−L1抗体は、非グリコシル化PD−L1と比較して、PD−L1の1つもしくは複数のグリコシル化モチーフまたはPD−L1のグリコシル化モチーフを有するPD−L1ペプチドに選択的に結合する。他の実施形態において、抗グリコシル化PD−L1抗体(抗glycPD−L1抗体)は、PD−L1タンパク質のアミノ酸を含む線形エピトープに結合する。いくつかの実施形態において、抗グリコシル化PD−L1抗体は、PD−L1の1つまたは複数のグリコシル化モチーフに選択的に結合し、グリコシル化モチーフは、配列番号1のPD−L1ポリペプチドのN35、N192、N200、および/またはN219を含む。なお他の実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、PD−L1タンパク質のアミノ酸を含むコンフォメーション(非線形)エピトープに結合する。いくつかの実施形態において、抗glycPD−L1抗体またはその結合部分は、非グリコシル化PD−L1と比較して示されるKdの少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%より小さいKdでグリコシル化PD−L1に結合する。ある特定の実施形態において、抗glycPD−L1抗体またはその結合部分は、非グリコシル化PD−L1と比較して示されるKdより50%より小さいKdでグリコシル化PD−L1に結合する。いくつかの実施形態において、抗glycPD−L1抗体またはその結合部分は、非グリコシル化PD−L1と比較して示されるKdの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%より小さいKdでグリコシル化PD−L1に結合する。さらなる態様において、抗glycPD−L1抗体またはその結合部分は、非グリコシル化PD−L1と比較して示されるKdの少なくとも5〜10倍小さいKdでグリコシル化PD−L1に結合する。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体またはその結合部分は、非グリコシル化PD−L1と比較して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化PD−L1に結合する。ある特定の実施形態において、抗体は、非グリコシル化PD−L1への結合によって示されるKdの1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、または20%以下であるKdでグリコシル化PD−L1に結合する。
一実施形態において、実施例5に記述される細胞フローサイトメトリー結合アッセイにおいて、抗体は、WT PD−L1を発現する細胞に対して、非グリコシル化PD−L1を発現する細胞への結合に対するMFIの少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍であるか、またはそれより大きい、およびある特定の実施形態において、非グリコシル化PD−L1を発現する細胞への結合に対するMFIより10倍、20倍、50倍、または100倍以下大きいMFIとして表される結合を示す。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体またはその結合部分は、ナノモル濃度の親和性で、例えば下限および上限の値を含む5〜20nMまたは10〜20nMの親和性で、グリコシル化PD−L1に結合する。
本明細書において抗体を参照して使用される用語「重(H)鎖」は、アミノ末端部分が約115〜130またはそれ以上のアミノ酸の可変(V)領域(Vドメインとも呼ばれる)を含み、カルボキシ末端部分が定常(C)領域を含む、約50〜70kDaのポリペプチド鎖を指す。定常領域(または定常ドメイン)は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づき、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、およびミュー(μ)と呼ばれる異なる5つのタイプ(例えば、アイソタイプ)の1つでありうる。異なる重鎖は、大きさが異なる:α、δ、およびγは、およそ450アミノ酸を含むが、μおよびεは、およそ550アミノ酸を含む。軽鎖と併せると、これらの異なるタイプの重鎖はそれぞれ、5つの周知のクラス(例えば、アイソタイプ)の抗体、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMを生じ、IgGの4つのサブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。抗体重鎖は、ヒト抗体重鎖でありうる。
本明細書において抗体を参照して使用される用語「軽(L)鎖」は、約25kDaのポリペプチド鎖を指し、アミノ末端部分は、約100〜約110またはそれ以上のアミノ酸の可変ドメインを含み、カルボキシ末端部分は、定常領域を含む。軽鎖(VおよびCドメインの両方)のおおよその長さは、211〜217アミノ酸である。軽鎖には2つの異なるタイプが存在し、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる。軽鎖アミノ酸配列は、当技術分野で周知である。抗体軽鎖は、ヒト抗体軽鎖でありうる。
本明細書において使用される用語「可変(V)領域」または「可変(V)ドメイン」は、軽(L)または重(H)鎖のアミノ末端に一般的に位置する抗体ポリペプチドのL鎖またはH鎖の部分を指す。H鎖Vドメインは、約115〜130アミノ酸長を有するが、L鎖Vドメインは、約100〜110アミノ酸長である。HおよびL鎖Vドメインは、その特定の抗原に対するそれぞれの特定の抗体の結合および特異性において使用される。H鎖のVドメインは、「VH」と呼ばれうる。L鎖のV領域は、「VL」と呼ばれうる。用語「可変」は、Vドメインのある特定の区分が、異なる抗体の間で配列が大きく異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原の結合を媒介して、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定義するが、可変性は抗体Vドメインの110アミノ酸の全長にわたって均一に分布しているわけではない。その代わりに、Vドメインは、それぞれが約9〜12アミノ酸長である「超可変領域」または「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれるより大きい可変性(例えば、極度の可変性)のより短い領域によって隔てられた約15〜30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれるより可変性の低い(例えば、比較的不変である)鎖からなる。抗体HおよびL鎖のVドメインはそれぞれ、4つのFRを含み、これらは大部分がβシート立体配座を採用し、3つの超可変領域で接続され、βシート構造を接続するループを形成し、いくつかの例ではβシート構造の一部を形成する。それぞれの鎖における超可変領域は、FRによって共に近位に保持され、他の鎖からの超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に関与する(例えば、Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MDを参照されたい)。Cドメインは、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)および補体依存性細胞傷害性(CDC)などの様々なエフェクター機能を示す。Vドメインは、異なる抗体クラスまたはタイプでは配列が大きく異なる。配列の多様性は、CDRに集中し、これは主に抗体と抗原との相互作用の原因である。特異的実施形態において、抗体の可変ドメインはヒトまたはヒト化可変ドメインである。
本明細書において使用される用語「相補性決定領域」、「CDR」、「超可変領域」、「HVR」、および「HV」は、互換的に使用される。「CDR」は、抗体VHβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2、もしくはH3)の1つ、または抗体VLβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2、もしくはL3)の1つを指す。この用語は、本明細書において使用されるとき、配列が高度に可変でありおよび/または構造的に定義されたループを形成する抗体Vドメインの領域を指す。一般的に、抗体は、6つの超可変領域:VHドメインにおける3つ(H1、H2、H3)およびVLドメインにおける3つ(L1、L2、L3)を含む。したがって、CDRは、典型的に、Vドメインのフレームワーク領域配列内に介在する高度に可変の配列である。「フレームワーク」または「FR」残基は、CDRに隣接するそれらの可変領域残基である。FR残基は、例えばキメラ、ヒト化、ヒト、ドメイン抗体、ダイアボディ、線形抗体、および二重特異性抗体に存在する。
多数の高度可変領域の描写が使用されており、本明細書において包含される。CDR領域は当業者に周知であり、例えば、抗体Vドメイン内の最も超可変性の領域としてKabatによって定義されている(Kabat et al., 1977, J. Biol. Chem., 252:6609-6616; Kabat, 1978, Adv. Prot. Chem., 32:1-75)。KabatのCDRは、配列多様性に基づいており、最も一般的に使用される(例えば、Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MDを参照されたい)。CDR領域配列はまた、保存されたβシートフレームワークの一部ではなく、このため異なる立体構造を採用することができる残基としてChothiaによって構造的に定義されている(Chothia et al., 1987, J. Mol. Biol., 196:901-917)。Chothiaは、その代わりに構造ループの位置を指す。Kabat付番の慣例を使用して付番したときのChothiaのCDR−H1ループの末端は、ループの長さに応じてH32からH34の間で変化する(これは、Kabatの付番スキームがH35AおよびH35Bで挿入を配置するために起こり;35Aも35Bのいずれも存在しなければ、ループは32で終了し、35Aのみが存在する場合ループは33で終了し、35Aと35Bの両方が存在する場合、ループは34で終了する)。いずれの付番システムおよび専門用語も当技術分野で十分に認識されている。
最近、普遍的な付番システム、ImMunoGeneTics(IMGT)情報システム(登録商標)(Lafranc et al., 2003, Dev. Comp. Immunol., 27(1):55-77)が開発されて、広く使用されている。IMGTは、免疫グロブリン(Ig)、T細胞受容体(TR)、ならびにヒトおよび他の脊椎動物の主要組織適合複合体(MHC)を専門とする総合情報システムである。本明細書において、CDRは、アミノ酸配列と、軽鎖または重鎖内の位置の両方に関して参照される。免疫グロブリンVドメインの構造内のCDRの「位置」は、構造特徴に従って可変ドメイン配列を整列させる付番システムを使用することによって、種の間で保存されており、ループと呼ばれる構造で存在することから、CDRおよびフレームワーク残基は容易に同定される。この情報は、1つの種の免疫グロブリンからのCDR残基を典型的にヒト抗体からのアクセプターフレームワークに移植および置換するために使用することができる。追加の付番システム(AHon)が、Honegger et al., 2001, J. Mol. Biol., 309: 657-670によって開発されている。例えばKabat付番を含む付番システムとIMGT独自の付番システムとの対応は、当業者に周知である(例えば、Kabat, Id; Chothia et al., Id.; Martin, 2010, Antibody Engineering, Vol. 2, Chapter 3, Springer Verlag;およびLefranc et al., 1999, Nuc. Acids Res., 27:209-212を参照されたい)。
CDR領域配列はまた、AbM、ContactおよびIMGTによって定義されている。AbM超可変領域は、KabatのCDRとChothiaの構造ループの間の妥協点を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(例えば、Martin, 2010, Antibody Engineering, Vol. 2, Chapter 3, Springer Verlagを参照されたい)によって使用されている。「contact」の超可変領域は、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらの超可変領域またはCDRのそれぞれからの残基を以下に示す。
CDR領域配列の例示的な描写を、以下の表2に例示する。標準的な抗体可変領域内のCDRの位置は、多数の構造との比較によって決定されている(Al-Lazikani et al., 1997, J. Mol. Biol., 273:927-948);Morea et al., 2000, Methods, 20:267-279)。超可変領域内の残基数は、異なる抗体において変化することから、標準的な可変領域付番スキーム(Al-Lazikani et al., 同上)では、標準的な位置と比較した追加の残基を、慣例によって残基番号の次にa、b、cなどと付番する。そのような命名法は同様に当業者に周知である。
「親和性成熟」抗体は、それらの変更を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の改善が起こる、1つまたは複数のそのHVRにおける1つまたは複数の変更(例えば、変化、付加、および/または欠失を含むアミノ酸配列の変動)を有する抗体である。ある特定の実施形態において、親和性成熟抗体は、標的抗原、例えばグリコシル化PD−L1に対してナノモル濃度またはピコモル濃度の親和性さえ有すると予想される。親和性成熟抗体は、当技術分野で公知の技法によって産生される。総説に関しては、Hudson and Souriau, 2003, Nature Medicine, 9:129-134;Hoogenboom, 2005, Nature Bioethanol., 23:1105-1116;Quiroz and Sinclair, 2010, Revitas Ingeneria Biomedia, 4 : 39-51を参照されたい。
「キメラ」抗体は、所望の生物活性を示す限り、Hおよび/またはL鎖の一部、例えばVドメインが、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応するアミノ酸配列と同一または相同であるが、鎖の残り、例えばCドメインは、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である抗体、ならびにそのような抗体の断片である(例えば、米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855を参照されたい)。
「ヒト化」された非ヒト(例えば、マウス)抗体は、本来のCDR残基が、所望の特異性、親和性、ならびに抗原結合および相互作用能を有する非ヒト種(例えば、ドナー抗体)、例えばマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類の対応するCDRの残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン配列を指す抗体(例えば、レシピエント抗体)のキメラ形態である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンの1つまたは複数のFR領域残基を同様に、対応する非ヒト残基で置き換えてもよい。加えて、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において見出されない残基を含みうる。これらの改変は、ヒト化抗体の性能をさらに精密化するために行われる。ヒト化抗体のHまたはL鎖は、CDRの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのCDRに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つまたは複数の可変領域の実質的に全てを含みうる。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、典型的に、ヒト免疫グロブリンの、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部(Fc)を含む。当業者に公知であるが、さらなる詳細は、望ましければ、例えばJones et al., 1986, Nature, 321:522-525;Riechmann et al., 1988, Nature, 332:323-329;およびPresta, 1992, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596;Carter et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285-4289;ならびに米国特許第6,800,738号明細書(2004年10月5日発行)、同第6,719,971号明細書(2005年9月27日発行)、同第6,639,055号明細書(2003年10月28日発行)、同第6,407,213号明細書(2002年6月18日発行)、および同第6,054,297号明細書(2000年4月25日発行)において見出されうる。
用語「ヒト抗体」および「完全ヒト抗体」は、本明細書において互換的に使用され、ヒトによって産生された、および/または当業者によって実践されるようにヒト抗体を作製する技術のいずれかを使用して作製されている抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体のこの定義は、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ(Hoogenboom et al., 1991, J. Mol. Biol., 227:381;Marks et al., 1991, J. Mol. Biol., 222:581)、および酵母ディスプレイライブラリ(Chao et al., 2006, Nature Protocols, 1:755-768)を含む、当技術分野で公知の様々な技術を使用して産生することができる。Cole et al., 1985 Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77;Boerner et al., 1991, J. Immunol., 147(1):86-95に記述される方法も同様に、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。同様にvan Dijk et al., 2001, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74も参照されたい。ヒト抗体は、その内因性のIg座が無能力化されていて、抗原チャレンジに応答してヒト抗体が生成されるように、ヒト抗体をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子を有するように遺伝子改変されているトランスジェニック動物、例えばマウスに抗原を投与することによって調製することができる(例えば、Jakobovits, A., 1995, Curr. Opin. Biotechnol. 6(5):561-566;Bruggemann et al,, 1997 Curr. Opin. Biotechnol., 8(4):455-8;ならびにXENOMOUSE(商標)技術に関して米国特許第6,075,181号明細書および同第6,150,584号明細書を参照されたい)。同様に、例えばヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されるヒト抗体に関して、Li et al., 2006, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562も参照されたい。特異的実施形態において、ヒト抗体は、ヒト起源の可変領域と定常領域とを含む。「完全ヒト」抗PD−L1抗体は、特定の実施形態において、PD−L1ポリペプチドに結合し、ヒト生殖系列免疫グロブリン核酸配列の天然に存在する体細胞変種である核酸配列によってコードされる抗体も包含することができる。特異的実施形態において、本明細書において提供される抗PD−L1抗体は、完全ヒト抗体である。用語「完全ヒト抗体」は、Kabatら(Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)によって記述されるヒト生殖系列免疫グロブリン配列に対応する可変および定常領域を有する抗体を含む。語句「組み換えヒト抗体」は、組み換え手段によって調製、発現、作製、または単離されたヒト抗体、例えば宿主細胞にトランスフェクトされた組み換え発現ベクターを使用して発現された抗体;組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体;ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックおよび/またはトランスクロモゾームである動物(例えば、マウスまたはウシ)から単離された抗体(例えば、Taylor, L. D. et al., 1992, Nucl. Acids Res. 20:6287-6295を参照されたい);またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う他の任意の手段によって調製、発現、作製、もしくは単離された抗体を含む。そのような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有しうる(Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)。しかし、ある特定の実施形態において、そのような組み換えヒト抗体は、in vitro変異誘発(またはヒトIg配列に関してトランスジェニックである動物を使用するときは、in vivo体細胞変異誘発)を受け、このため、組み換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来して関連するが、in vivoでヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在しない配列である。
本明細書において使用される用語「エピトープ」は、1つの抗体分子が結合する抗原分子の表面上の部位または領域、例えば抗原、例えば抗PD−L1または抗glycPD−L1抗体の1つまたは複数の抗原結合領域が結合することができるPD−L1ポリペプチドまたはグリコシル化PD−L1ポリペプチドの表面上の局所領域である。エピトープは、免疫原性でありえて、動物において免疫応答を誘発することができる。エピトープは、必ずしも免疫原性である必要はない。エピトープはしばしば、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学活性表面基からなり、特異的三次元構造特徴および特異的電荷特徴を有する。エピトープは、線形エピトープおよびコンフォメーションエピトープでありうる。エピトープに関与するポリペプチドの領域は、線形エピトープを形成するポリペプチドの連続するアミノ酸でありうるか、またはエピトープは、典型的にコンフォメーションエピトープと呼ばれるポリペプチドの2つもしくはそれ以上の不連続なアミノ酸もしくは領域から形成されうる。エピトープは、抗原の三次元表面特徴であってもなくてもよい。ある特定の実施形態において、PD−L1エピトープは、PD−L1ポリペプチドの三次元表面特徴である。他の実施形態において、PD−L1エピトープは、PD−L1ポリペプチドの線形特徴である。いくつかの実施形態において、PD−L1エピトープは、非グリコシル化PD−L1である。いくつかの実施形態において、PD−L1エピトープは、1つまたは複数の部位でグリコシル化される。一般的に、抗原は、いくつかのまたは多くの異なるエピトープを有し、多くの異なる抗体と反応することができる。特定の実施形態において、記述の抗glycPD−L1抗体は、コンフォメーションエピトープであるPD−L1のエピトープ、特にグリコシル化PD−L1のエピトープに結合する。
抗体は、2つの抗体が、三次元空間において、同一の、重なり合う、または隣接するエピトープを認識するとき、「1つのエピトープ」、または参照抗体と「本質的に同じエピトープ」もしくは「同じエピトープ」に結合する。2つの抗体が、三次元空間において、同一、重なり合う、または隣接するエピトープに結合するか否かを決定するために最も広く使用される迅速な方法は、競合アッセイであり、これは例えば標識抗原または標識抗体のいずれかを使用する多数の異なるフォーマットで構成することができる。いくつかのアッセイにおいて、抗原を96ウェルプレートに固定するか、または細胞表面上で発現させて、非標識抗体が、標識抗体の抗原への結合を遮断する能力を、検出可能なシグナル、例えば放射活性、蛍光、または酵素標識を使用して測定する。
PD−L1標的タンパク質またはそのペプチド上の同じエピトープまたは結合部位に関して競合する抗PD−L1抗体の文脈において使用するときの用語「競合する」は、試験中の抗体またはその結合断片が、共通の抗原(例えば、PD−L1またはその断片)への参照分子(例えば、参照リガンド、または参照抗原結合タンパク質、例えば参照抗体)の特異的結合を防止、遮断、または阻害する、アッセイにおいて決定した場合の競合を意味する。多数のタイプの競合結合アッセイを使用して、試験抗体が、PD−L1(例えば、ヒトPD−L1またはヒトグリコシル化PD−L1)への結合に関して参照抗体と競合するか否かを決定することができる。使用することができるアッセイの例には、固相の直接または間接的ラジオイムノアッセイ(RIA);固相の直接または間接的酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al., 1983, Methods in Enzymology 9:242-253を参照されたい);固相の直接のビオチン−アビジンEIA(例えば、Kirkland et al., 1986, J. Immunol. 137:3614-3619を参照されたい);固相の直接標識アッセイ;固相の直接標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane, 1988, Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Pressを参照されたい);標識ヨウ素(I125標識)を使用する固相の直接標識RIA(例えば、Morel et al., 1988, Molec. Immunol. 25:7-15を参照されたい);固相の直接ビオチン−アビジンEIA(例えば、Cheung, et al., 1990, Virology 176:546-552を参照されたい);および直接標識RIA(Moldenhauer et al., 1990, Scand. J. Immunol. 32:77-82)が挙げられる。典型的に、そのようなアッセイは、固体表面に結合した精製抗原(例えば、ヒトPD−L1またはグリコシル化PD−L1などのPD−L1)、または非標識試験抗原結合タンパク質(例えば、試験抗PD−L1抗体)もしくは標識参照抗原結合タンパク質(例えば、参照抗PD−L1抗体)のいずれかを有する細胞の使用を伴う。競合的阻害は、試験抗原結合タンパク質の公知の量の存在下で固体表面または細胞に結合した標識の量を決定することによって測定することができる。通常、試験抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイによって同定される抗体(競合抗体)は、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、および/または参照抗体が結合するエピトープに十分に近位の隣接するエピトープに結合して立体妨害を引き起こす抗体を含む。競合的結合を決定する方法に関するさらなる詳細を本明細書に記述する。通常、競合抗体タンパク質が過剰に存在するとき、競合抗体は、共通の抗原への参照抗体の特異的結合を少なくとも15%、または少なくとも23%、例えば40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%またはそれ以上、および記載の量の間のパーセント量で阻害するが、これらに限定されない。いくつかの例において、結合は、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、または97%、98%、99%、またはそれ以上阻害される。
本明細書において使用される用語「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物活性または機能的活性を防止、阻害、遮断、または低減させる抗体を指す。遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性または機能を、実質的または完全に防止、阻害、遮断、または低減させることができる。例えば、遮断抗PD−L1抗体は、PD−L1とPD−1との間の結合相互作用を防止、阻害、遮断、または低減させて、このようにPD−1/PD−L1相互作用に関連する免疫抑制機能を防止、遮断、阻害、または低減させることができる。遮断する、阻害する、および中和するという用語は、本明細書において互換的に使用され、抗glycPD−L1抗体がPD−L1/PD−1相互作用を防止またはそうでなければ妨害もしくは低減させる能力を指す。
本明細書において使用される用語「ポリペプチド」または「ペプチド」は、ペプチド結合によって連結された一続きの3またはそれ以上のアミノ酸のアミノ酸のポリマーを指す。「ポリペプチド」は、タンパク質、タンパク質断片、タンパク質アナログ、オリゴペプチドなどでありうる。ポリペプチドを構成するアミノ酸は、天然由来または合成でありうる。ポリペプチドは、生物試料から精製してもよい。例えば、PD−L1ポリペプチドまたはペプチドは、ヒトPD−L1またはグリコシル化PD−L1の少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の連続したアミノ酸で構成されうる。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ヒトPD−L1またはグリコシル化PD−L1の少なくとも25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、または285個の連続したアミノ酸を有する。ある特定の実施形態において、PD−L1ポリペプチドは、PD−L1ポリペプチドまたはグリコシル化PD−L1ポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも5つの連続したアミノ酸残基、少なくとも10個の連続したアミノ酸残基、少なくとも15個の連続したアミノ酸残基、少なくとも20個の連続したアミノ酸残基、少なくとも25個の連続したアミノ酸残基、少なくとも40個の連続したアミノ酸残基、少なくとも50個の連続したアミノ酸残基、少なくとも60個の連続したアミノ酸残基、少なくとも70個の連続したアミノ酸残基、少なくとも80個の連続したアミノ酸残基、少なくとも90個の連続したアミノ酸残基、少なくとも100個の連続したアミノ酸残基、少なくとも125個の連続したアミノ酸残基、少なくとも150個の連続したアミノ酸残基、少なくとも175個の連続したアミノ酸残基、少なくとも200個の連続したアミノ酸残基、少なくとも250個の連続したアミノ酸残基を含む。
本明細書において使用される用語「アナログ」は、参照ポリペプチドと類似もしくは同一の機能を保有するが、必ずしも参照ポリペプチドと類似もしくは同一のアミノ酸配列を含まないか、または参照ポリペプチドと類似もしくは同一の構造を保有しないポリペプチドを指す。参照ポリペプチドは、PD−L1ポリペプチド、PD−L1ポリペプチドの断片、抗PD−L1抗体、または抗glycPD−L1抗体でありうる。参照ポリペプチドと類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、本明細書において記述されるPD−L1ポリペプチドまたは抗glycPD−L1抗体でありうる参照ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。参照ポリペプチドと類似の構造を有するポリペプチドは、本明細書において記述されるPD−L1ポリペプチドまたは抗glycPD−L1抗体でありうる参照ポリペプチドの構造と類似の二次、三次、または四次構造を有するポリペプチドを指す。ポリペプチドの構造は、X線結晶学、核磁気共鳴法(NMR)、および結晶電子顕微鏡を含むがこれらに限定されるわけではない、当業者に公知の方法によって決定することができる。
本明細書において使用される用語「変種」は、PD−L1ポリペプチドまたは抗PD−L1抗体に関連して使用するとき、ネイティブまたは非改変のPD−L1配列または抗PD−L1抗体配列と比較して1つまたは複数(例えば、約1〜約25、約1〜約20、約1〜約15、約1〜約10、または約1〜約5個など)のアミノ酸配列の置換、欠失、および/または付加を有するポリペプチドまたは抗PD−L1抗体を指す。例えば、PD−L1変種は、ネイティブPD−L1のアミノ酸配列に対する1つまたは複数(例えば、約1〜約25、約1〜約20、約1〜約15、約1〜約10、または約1〜約5個など)の変化に起因しうる。同様に、例として、抗PD−L1抗体の変種は、ネイティブまたはこれまで未改変の抗PD−L1抗体のアミノ酸配列に対する1つまたは複数(例えば、約1〜約25、約1〜約20、約1〜約15、約1〜約10、または約1〜約5個など)の変化に起因しうる。変種は、対立遺伝子変種もしくはスプライス変種などの天然に存在しうるか、または人為的に構築することができる。ポリペプチド変種は、変種をコードする対応する核酸分子から調製することができる。
用語「同一性」は、配列を整列させて比較することによって決定される、2つもしくはそれ以上のポリペプチド分子または2つもしくはそれ以上の核酸分子の配列間の関係を指す。「パーセント同一性」は、比較される分子におけるアミノ酸またはヌクレオチド間の同一残基の百分率を意味し、比較される分子の最小の大きさに基づいて計算される。これらの計算に関して、アライメントにおけるギャップ(もしあれば)は、特定の数学モデルまたはコンピュータープログラム(例えば、「アルゴリズム」)によって特定されなければならない。整列させた核酸またはポリペプチドの同一性を計算するために使用されうる方法には、Lesk, A. M., ed., 1988, Computational Molecular Biology, New York: Oxford University Press;Smith, D. W., ed., 1993, Biocomputing Informatics and Genome Projects , New York: Academic Press;Griffin, A. M., et al., 1994, Computer Analysis of Sequence Data, Part I , New Jersey: Humana Press; von Heinje, G., 1987, Sequence Analysis in Molecular Biology, New York: Academic Press;Gribskov, M. et al., 1991, Sequence Analysis Primer, New York: M. Stockton Press;およびCarillo et al., 1988, Applied Math., 48:1073に記述される方法が挙げられる。
パーセント同一性の計算において、比較される配列を、配列間で最大のマッチを生じるように整列させることができる。%同一性を決定するために使用することができるコンピュータープログラムの例は、GAPを含むGCGプログラムパッケージ(Devereux et al., 1984, Nucl. Acid Res., 12:387;Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, WI)であり、これはその%同一性を決定するために2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドを整列させるために使用されるコンピューターアルゴリズムである。配列は、そのそれぞれのアミノ酸またはヌクレオチド配列の最適なマッチングが得られるように整列させることができる(アルゴリズムによって決定された「マッチさせる範囲」)。ギャップオープンペナルティ(平均対角線の3倍として計算され、「平均対角線(average diagonal)」は、使用される比較行列の対角線の平均値であり、「対角化」は、特定の比較行列によるそれぞれの完全なアミノ酸マッチに割り付けされるスコアまたは数である)、およびギャップ伸長ペナルティ(これは通常、ギャップオープンペナルティの1/10である)、ならびにPAM250またはBLOSUM62などの比較行列が、アルゴリズムと共に使用される。ある特定の実施形態において、標準的な比較行列(PAM250比較行列に関して、Dayhoff et al., 1978, Atlas of Protein Sequence and Structure 5:345-352;BLOSUM62比較マトリックスに関して、Henikoff et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915-10919を参照されたい)も同様にアルゴリズムによって使用される。GAPプログラムを使用してポリペプチドまたはヌクレオチド配列のパーセント同一性を決定するための例示的なパラメータは、以下を含む:(i)アルゴリズム:Needleman et al., 1970, J. Mol. Biol., 48:443-453;(ii)比較行列:Henikoff et al., 同上のBLOSUM62;(iii)ギャップペナルティ:12(しかし、末端ギャップにはペナルティなし);(iv)ギャップ長ペナルティ:4;および(v)類似性の閾値:0。
2つのアミノ酸配列を整列させるためのある特定のアライメントスキームによって、2つの配列の短い領域のみのマッチが起こりえて、この小さい整列した領域は、2つの完全長の配列間にたとえ有意な関係がない場合であっても非常に高い配列同一性を有しうる。したがって、選択されたアライメント方法(例えばGAPプログラム)を、望ましければ、標的ポリペプチドの代表的な数のアミノ酸、例えば少なくとも50個の連続したアミノ酸に及ぶアライメントが得られるように調節することができる。
参照ポリペプチド配列に関連するパーセント(%)アミノ酸配列同一性は、必要であれば、最大のパーセント配列同一性が達成されるように配列を整列させてギャップを導入した後、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮することなく、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアライメントは、例として一般に利用可能なコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、当技術分野の専門家の技術の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の完全長にわたって最大のアライメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適当なパラメータを決定することができる。
本明細書において使用される用語「誘導体」は、アミノ酸残基の置換、欠失、または付加の導入によって変更されている参照ポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。参照ポリペプチドは、PD−L1ポリペプチドまたは抗PD−L1抗体でありうる。本明細書において使用される用語「誘導体」はまた、例えば任意のタイプの分子をポリペプチドに共有結合により付着させることによって化学的に改変されているPD−L1ポリペプチドまたは抗PD−L1抗体を指す。例えば、PD−L1ポリペプチドまたは抗PD−L1抗体は、例えばグリコシル化、アセチル化、peg化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解、細胞リガンドへの連結、ペプチドもしくはタンパク質タグ分子への連結、または他のタンパク質などによって化学改変することができる。誘導体は、付着した分子のタイプまたは位置のいずれかで、天然に存在するまたは開始ペプチドもしくはポリペプチドとは異なるように改変される。誘導体はさらに、ペプチドまたはポリペプチド上に本来存在する1つまたは複数の化学基の欠失を含みうる。PD−L1ポリペプチドまたは抗PD−L1抗体の誘導体は、特異的化学的切断、アセチル化、製剤化、ツニカマイシンによる代謝合成などを含むがこれらに限定されるわけではない当業者に公知の技術を使用する化学的改変によって化学的に改変されうる。さらに、PD−L1ポリペプチドまたは抗PD−L1抗体の誘導体は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含みうる。ポリペプチド誘導体は、本明細書において記述されるPD−L1ポリペプチドまたは抗PD−L1抗体、特に抗glycPD−L1モノクローナル抗体でありうる参照ポリペプチドと類似または同一の機能を保有する。
本明細書において使用される用語「融合タンパク質」は、少なくとも2つの異種ポリペプチドのアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。PD−L1ポリペプチドまたは抗PD−L1抗体に関連して使用するときの用語「融合」は、PD−L1ポリペプチドまたは抗PD−L1抗体、その変種および/または誘導体を、異種ペプチドまたはポリペプチドに接続、融合、またはカップリングさせることを指す。ある特定の実施形態において、融合タンパク質は、PD−L1ポリペプチドまたは抗PD−L1抗体の生物活性を保持する。ある特定の実施形態において、融合タンパク質は、異種ペプチドまたはポリペプチドにカップリング、融合、または接続したPD−L1抗体VH領域、VL領域、VHCDR(1、2、または3個のVHCDR)、および/またはVLCDR(1、2、または3個のVLCDR)を含み、融合タンパク質は、PD−L1タンパク質またはペプチド上のエピトープに結合する。融合タンパク質は、当技術分野で実践される化学カップリング反応を介して、または分子組み換え技術を介して調製されうる。
本明細書において使用される用語「組成物」は、明記された構成成分(例えば、本明細書において提供されるポリペプチドまたは抗体)を、任意選択で明記された量または有効量で含む産物、および任意選択で明記された量または有効量の、特異的構成成分の併用または相互作用に直接または間接的に起因する任意の所望の産物を指す。
本明細書において使用される用語「担体」は、それに曝露される細胞または哺乳動物に対して使用される投与量および濃度で非毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、ビヒクル、または安定化剤を含む。しばしば、生理的に許容される担体は、水性pH緩衝液である。生理的に許容される担体の例には、緩衝液、例えばリン酸、クエン酸、コハク酸、および他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(例えば、約10アミノ酸残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;疎水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン;グルコース、マンノース、スクロース、またはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;および/または非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびPLURONICS(商標)が挙げられる。用語「担体」はまた、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント、完全または不完全)、賦形剤、または治療薬がそれと共に投与されるビヒクルも指しうる。薬学的担体を含むそのような担体は、滅菌の液体、例えば石油、動物、植物、または合成起源の水および油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などを含む水および油でありうる。水は、組成物(例えば、医薬組成物)が静脈内投与されるときの例示的な担体である。食塩水およびデキストロース水溶液およびグリセロール水溶液もまた、特に注射用溶液の液体担体として使用することができる。適した賦形剤(例えば、薬学的賦形剤)には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。望ましければ、組成物はまた、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含みうる。組成物は、溶液、懸濁液、乳液、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態をとることができる。製剤を含む経口組成物は、標準的な担体、例えば薬学等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含みうる。適した薬学的担体の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, (1990) Mack Publishing Co., Easton, PAに記述される。薬学的化合物を含む組成物は、対象(例えば、患者)にとって適切な投与形態を提供するために、抗PD−L1抗体、例えば抗glycPD−L1抗体の治療有効量を単離または精製形態で、適量の担体と共に含みうる。組成物または製剤は、投与様式に適合しなければならない。
本明細書において使用される用語「賦形剤」は、希釈剤、ビヒクル、保存剤、結合剤、または安定化剤として一般的に使用される不活性物質を指し、これには、タンパク質(例えば、血清アルブミンなど)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、グリシン、ヒスチジンなど)、脂肪酸、およびリン脂質(例えば、スルホン酸アルキル、カプリル酸など)、界面活性剤(例えば、SDS、ポリソルベート、非イオン性界面活性剤など)、糖類(例えば、スクロース、マルトース、トレハロースなど)およびポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトールなど)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。同様に参照として、参照により全体が本明細書に組み込まれる、Remington's Pharmaceutical Sciences, (1990) Mack Publishing Co., Easton, PAを参照されたい。
本明細書において使用される用語「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」は、必要に応じて、動物、例えばヒトに投与されるときに、有害な、アレルギー、または他の予想外のもしくは望ましくない反応を生じない分子実体、製剤および組成物を指す。抗体または追加の活性成分を含む医薬組成物の調製は、本開示に照らして、Remington's Pharmaceutical Science、同上によって例示されるように当業者に公知である。その上、動物(例えば、ヒト)の投与に関して、調製物は、連邦政府または州政府の規制当局、例えばFDA Office of Biological Standardsが必要とする、または動物、より詳しくはヒトにおいて使用するために、米国薬局方、欧州薬局方、もしくは他の一般的に認識される薬局方に記載される無菌性、発熱性、全身安全性および純度の基準を満たさなければならないと理解される。
用語「医薬製剤」は、活性成分の生物活性を有効にすることができる形態(例えば、抗PD−L1抗体および抗glycPD−L1抗体)で存在し、製剤が投与される対象に対して許容されない毒性である追加の成分を含まない調製物を指す。そのような製剤は、滅菌製剤でありえて、すなわち、無菌的であるかまたは全ての生きている微生物およびその胞子などを含まない。
用語「添付文書」は、そのような治療製品の使用に関する指示、用途、用量、投与、禁忌、および/または警告に関する情報を含む、市販の治療製品のパッケージに慣例的に含まれる説明書を指すために使用される。
本明細書において使用される用語「処置する」、「処置」、または「処置している」は、少なくとも1つの陽性の治療効果または利益を得る目的、例えば疾患または健康関連状態を処置する目的で、それを必要とする対象に治療剤を投与もしくは適用すること、または対象に技法もしくはモダリティを行うことを指す。例えば、処置は、様々なタイプのがんを処置する目的での、グリコシル化PD−L1に特異的に結合する抗体またはその組成物もしくは製剤の薬学的有効量の投与を含みうる。用語「処置レジメン」、「投与レジメン」、または「投与プロトコール」は、互換的に使用され、治療剤、例えば本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体の投与時期および用量を指す。本明細書において使用される用語「対象」は、がんを有するまたはがんを有すると診断されたヒトまたは非ヒト動物、例えば霊長類、哺乳動物および脊椎動物のいずれかを指す。好ましい実施形態において、対象はヒトである。いくつかの実施形態において、対象はがん患者である。一実施形態において、それを必要とする対象は、抗glycPD−L1抗体処置から利益を得ることが予想または予測される。
本明細書において使用される用語「治療上有益な」または「治療上有効な」は、それを必要とする対象(例えば、がんを有する、またはがんを有すると診断された対象)の、特に抗glycPD−L1抗体の使用および記述の方法の実施の結果としての、状態の医学的処置、治療、用量の投与に関する幸福度の促進または増強を指す。これには、疾患の兆候または症状の頻度または重症度の低減が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。例えば、がんの処置は、例えば腫瘍の大きさの低減、腫瘍の浸潤性もしくは重症度の低減、末梢組織もしくは臓器へのがん細胞の浸潤の低減、腫瘍もしくはがんの増殖速度の低減、または転移の予防もしくは低減を伴いうる。がんの処置はまた、対象において持続的な応答を達成すること、またはがんを有する対象の生存を延長させることも指しうる。
本明細書において使用される用語「投与する」、または「投与」は、例えば、注射または経口経路を介して、体外に存在する物質を、例えば経口、皮下、粘膜、皮内、静脈内、筋肉内送達、および/または本明細書において記述されるもしくは当技術分野で公知の他の任意の物理的送達法によって、患者に物理的に送達する行為を指す。疾患、障害、もしくは状態、またはその症状が治療的に処置されるとき、物質の投与は典型的に、疾患、障害、もしくは状態、またはその症状の発症後に起こる。予防的処置は、疾患、障害、もしくは状態、またはその症状の発症前の時点での物質の投与を伴う。
本明細書において使用される用語「有効量」は、がんの重症度および/もしくは持続、またはそれに関連する症状を低減、減少、軽減、および/または改善するために十分である治療薬(例えば、本明細書において提供される抗体または医薬組成物)の分量または量を指す。この用語はまた、がんの進展または進行の低減または改善、がんの再発、発生、または発症の低減または改善;および/または別のがん治療(例えば、本明細書において提供される抗PD−L1抗体または抗glycPD−L1抗体の投与以外の治療)の予防または治療効果の改善または増強にとって必要な量を包含する。いくつかの実施形態において、本明細書において提供される抗体の有効量は、約0.1mg/kgまたは0.1mg/kgに等しい値(対象の体重1kgあたりの抗体のmg)から約100mg/kgまたは100mg/kgに等しい値までである。ある特定の実施形態において、本明細書において提供される抗体の有効量は、約0.1mg/kgまたは0.1mg/kgに等しい、約0.5mg/kgまたは0.5mg/kgに等しい、約1mg/kgまたは1mg/kgに等しい、約3mg/kgまたは3mg/kgに等しい、約5mg/kgまたは5mg/kgに等しい、約10mg/kgまたは10mg/kgに等しい、約15mg/kgまたは15mg/kgに等しい、約20mg/kgまたは20mg/kgに等しい、約25mg/kgまたは25mg/kgに等しい、約30mg/kgまたは30mg/kgに等しい、約35mg/kgまたは35mg/kgに等しい、約40mg/kgまたは40mg/kgに等しい、約45mg/kgまたは45mg/kgに等しい、約50mg/kgまたは50mg/kgに等しい、約60mg/kgまたは60mg/kgに等しい、約70mg/kgまたは70mg/kgに等しい、80mg/kg、90mg/kg、または100mg/kgである。これらの量は、その中の量および範囲を含むことを意味する。いくつかの実施形態において、「有効量」はまた、特定の結果(例えば、細胞表面PD−L1への細胞表面PD−1の結合を防止、遮断、もしくは阻害すること;またはPD−1/PD−L1媒介免疫抑制を防止、遮断、もしくは阻害すること)を得るための、本明細書において提供される抗体の量も指す。
他の治療(例えば、他の薬剤、がんの薬物、がんの治療)の投与の文脈における用語「併用」は、1つ以上の治療(例えば、薬物治療および/またはがんの治療)の使用を含む。1つまたは複数のさらなる治療剤との「併用」投与は、同時(例えば、並行)投与および任意の順序での連続投与を含む。用語「併用」の使用は、治療が対象に投与される順序を限定しない。非限定的な例として、第1の治療(例えば、抗glycPD−L1抗体などの薬剤)を、がんを有するまたはがんを有すると診断された対象への、第2の治療(例えば、薬剤)の投与の(例えば、1分、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間)前、同時、または(例えば、1分、15分、30分、45分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、もしくは12週間もしくはそれ以上)後に投与してもよい。
治療の併用(例えば、治療剤を含む薬剤の使用)は、任意の2つまたはそれ以上の単剤治療の相加効果より有効でありうる(例えば、相乗効果を有する)。相乗効果は典型的に予想外で、予測することができない。例えば、治療剤の併用の相乗効果によってしばしば、1つもしくは複数の薬剤のより低用量を使用することができ、および/または薬剤をがん患者により少ない回数で投与することができる。治療薬およびがん治療のより低用量を利用できること、ならびに/または治療の投与回数がより少ないことは、治療の有効性を低減させることなく、対象への治療の投与に関連する毒性の可能性を低減させる。加えて、相乗効果によって、処置における治療の有効性の改善またはがんの軽減が起こりうる。同様に、治療(例えば、治療剤)の併用によって証明される相乗効果により、任意の単剤治療の使用に関連する有害なまたは望ましくない副作用を回避または低減することができる。
抗グリコシル化PD−L1抗体(抗glycPD−L1抗体)
実施形態において、好ましくは非グリコシル化PD−L1より高い親和性で(すなわち、優先的に結合する)グリコシル化PD−L1タンパク質(例えば、特異的N−グリカン構造を有するPD−L1タンパク質;PD−L1の特異的グリコペプチド)またはグリコシル化PD−L1ペプチドに結合して、グリコシル化PD−L1/PD−1相互作用の免疫抑制機能を阻害する抗体またはその結合断片、および疾患、特にがんの処置におけるそのような抗体の使用が提供される。抗glycPD−L1抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE Igクラスの抗体、ならびに抗原結合活性を保持する1つまたは複数の抗体CDRドメインを含むポリペプチドでありうる。実例として、抗glycPD−L1抗体は、キメラ、親和性成熟、ヒト化、またはヒト抗体でありうる。抗glycPD−L1抗体は、モノクローナル抗体である。ある特定の実施形態において、モノクローナル抗glycPD−L1抗体は、STM004もしくはSTM115、またはそのヒト化もしくはキメラ形態である。別の好ましい実施形態において、モノクローナル抗glycPD−L1抗体は、ヒト化抗体である。公知の手段によって、および本明細書において記述されるように、そのような抗原またはエピトープが、天然起源から単離されるか、または天然のタンパク質の合成誘導体もしくは変種であるかによらず、グリコシル化PD−L1抗原、そのそれぞれのエピトープの1つもしくは複数、または前述の任意のコンジュゲートに対して特異的な、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、抗体断片、結合ドメイン、およびCDR(前述のいずれかの改変形態を含む)を作製してもよい。
一実施形態において、抗体はキメラ抗体、例えば異種の非ヒト、ヒト、またはヒト化配列(例えば、フレームワークおよび/または定常ドメイン配列)に移植された非ヒトドナー由来の抗原結合配列(例えば、Vドメインおよび/またはCDR)を含む抗体である。一実施形態において、非ヒトドナー配列は、マウスまたはラットに由来する。一実施形態において、抗原結合配列は、合成、例えば変異誘発(例えば、ヒトファージライブラリのファージディスプレイスクリーニングなど)によって得られる。一実施形態において、キメラ抗体はマウスV領域とヒトV領域とを有する。一実施形態において、マウス軽鎖V領域はヒトκ軽鎖C領域に融合される。一実施形態において、マウス重鎖V領域は、ヒトIgG1 C領域に融合される。
一実施形態において、抗体は、ラクダ抗体に由来し、好ましくはVHHドメイン配列またはNanobodies(商標)として知られる、軽鎖を欠如する重鎖ラクダ抗体に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインである。Nanobody(商標)(Nb)は、天然に存在する一本鎖抗体の最小の機能的断片または単一可変ドメイン(VHH)であり、当業者に公知である。それらは、ラクダに見られる重鎖のみの抗体に由来する(Hamers-Casterman et al., 1993, Nature, 363, p. 446-448;Desmyter et al., 1996, Nat. Struct. Biol., p. 803-811)。「ラクダ」科では、軽鎖ポリペプチドを欠如する免疫グロブリンが見出される。「ラクダ」は、旧大陸ラクダ(フタコブラクダ(Camelus bactrianus)およびヒトコブラクダ(Camelus dromedarius))、ならびに新大陸ラクダ(例えば、アルパカ(Lama paccos)、リャマ(Lama glama)、グアナコ(Lama guanicoe)、およびビクーニャ(Lama vicugna))を含む。単一可変ドメイン重鎖抗体は、本明細書において、Nanobody(商標)またはVHH抗体として示される。Nbの大きさが小さいことおよび独自の生物物理学的特性は、一般的でないまたは隠れたエピトープの認識に関して、およびタンパク質標的の腔または活性部位への結合に関して通常の抗体断片より優れている。さらに、Nbは、レポーター分子に付着したまたはヒト化された、多重特異性および多価抗体として設計することができる。Nbは、安定で、消化管系で分解されることなく、容易に製造することができる。
別の実施形態において、抗体は二重特異性抗体である。異なる特異性の2つの抗原結合部位を1つの構築物に統合すると、二重特異性抗体は、優れた特異性を有する2つの異なる抗原を一つにする能力を有し、したがって、治療剤として非常に有望である。二重特異性抗体は、それぞれが異なる免疫グロブリンを産生することができる、2つのハイブリドーマを融合することによって当初作製された。二重特異性抗体はまた、完全な免疫グロブリンに存在するFc部分を除外しながら2つのscFv抗体断片を接続させることによっても産生される。そのような構築物におけるそれぞれのscFv単位は、合成ペプチドリンカーによって互いに接続した、重鎖(VH)および軽鎖(VL)抗体鎖のそれぞれからの1つの可変ドメインを含み、後者はしばしば、タンパク質分解に対して最大限の抵抗性を残しながら最小の免疫原性となるように遺伝子改変されている。それぞれのscFv単位を、2つのscFv単位を架橋する短い(通常、10アミノ酸未満)ポリペプチドスペーサーを組み込むことを含む、多数の公知の技術によって接続して、それによって二重特異性一本鎖抗体を作製してもよい。したがって、得られた二重特異性一本鎖抗体は、それぞれのscFv単位におけるVHおよびVLドメインが、これらの2つのドメイン間の分子内会合を可能にするために十分に長いポリペプチドリンカーによって隔てられており、そのように形成されたscFv単位が、例えば1つのscFv単位のVHドメインと他のscFv単位のVLドメインとの間での望ましくない会合を防止するために十分に短く維持されるポリペプチドスペーサーを通して互いに連続してつながれている、1つのポリペプチド鎖上で異なる特異性の2つのVH/VL対を含む種である。
使用するために適した抗体断片の例には、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VHおよびCH1ドメインからなる「Fd」断片;(iii)1つの抗体のVLおよびVHドメインからなる「Fv断片」;(iv)VHドメインからなる「dAb」断片;(v)単離CDR領域;(vi)F(ab’)2断片、2つの連結したFab断片を含む二価の断片;(vii)VHドメインとVLドメインが、2つのドメインを会合させて結合ドメインを形成するペプチドリンカーによって連結されている一本鎖Fv分子(「scFv」);(viii)二重特異性一本鎖Fv二量体(米国特許第5,091,513号明細書を参照されたい);および(ix)ダイアボディ、遺伝子融合によって構築された多価または多重特異性断片(米国特許出願公開第20050214860号明細書)が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。Fv、scFv、またはダイアボディ分子は、VHおよびVLドメインを連結するジスルフィド架橋を取り込むことによって安定化されうる。CH3ドメインに接続したscFvを含むミニボディ(Hu et al., 1996, Cancer Res., 56:3055-3061)も同様に、有用でありうる。加えて、抗体様結合ペプチド模倣体も同様に、実施形態において企図される。「抗体様結合ペプチド模倣体」(ABiP)は、小さい抗体として作用し、より長い血清中半減期およびより面倒でない合成方法という特定の利点を有するペプチドであり、Liu et al., 2003, Cell Mol. Biol., 49:209-216によって報告されている。
動物に、グリコシル化PD−L1ポリペプチドまたはペプチドなどの抗原を接種して、免疫応答を生成させて、グリコシル化PD−L1ポリペプチドに対して特異的な抗体を産生してもよい。免疫応答を増強するために、しばしば、抗原を別の分子に結合またはコンジュゲートさせる。本明細書において使用されるように、コンジュゲートは、動物において免疫応答を誘発するために使用される、抗原に結合する任意のペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または非タンパク質様物質である。抗原の接種に応答して動物において産生される抗体は、多様な個々の抗体産生Bリンパ球によって作製される多様な非同一の分子(ポリクローナル抗体)を含む。ポリクローナル抗体は、そのそれぞれが、同じ抗原上の異なるエピトープを認識しうる抗体種の混合集団である。動物におけるポリクローナル抗体産生に対する正確な条件を考慮すると、動物の血清中の抗体のほとんどは、動物が免疫されている抗原性化合物上の集合的エピトープを認識する。この特異性を親和性精製によってさらに増強して、目的の抗原またはエピトープを認識するそれらの抗体のみを選択する。
モノクローナル抗体は、全ての抗体産生細胞が、1つの抗体産生Bリンパ球(または他のクローン細胞、例えば抗体分子を組み換え発現する細胞)に由来することから、あらゆる抗体分子が同じエピトープを認識する抗体の1つのクローン種である。モノクローナル抗体(MAb)を作製する方法は、ポリクローナル抗体を調製する方法と同じ方向に沿って始まる。いくつかの実施形態において、マウスおよびラットなどの齧歯類を、モノクローナル抗体の生成に使用する。いくつかの実施形態において、ウサギ、ヒツジ、またはカエル細胞がモノクローナル抗体の生成に使用される。ラットの使用は周知であり、特定の利点を提供しうる。マウス(例えば、BALB/cマウス)は日常的に使用され、一般的に、安定な融合体を高い割合で生じる。モノクローナル抗体産生に使用されるハイブリドーマ技術は、グリコシル化PD−L1タンパク質またはペプチドによって予め免疫したマウスから単離した1つの抗体産生Bリンパ球と、不死化骨髄腫細胞、例えばマウス骨髄腫細胞株との融合を伴う。この技術は、1つの抗体産生細胞を、無限の世代にわたって繁殖させる方法を提供し、それによって同じ抗原またはエピトープ特異性を有する構造的に同一の抗体、すなわちモノクローナル抗体の無限の量が産生されうる。
モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖定常ドメインを、外来抗体の可変領域をインタクトにしたままで、ヒト起源の類似のドメインで置き換える方法が開発されている。あるいは、「完全ヒト」モノクローナル抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックであるマウスまたはラットにおいて産生する。齧歯類とヒトの両方のアミノ酸配列を有する抗体可変ドメインを組み換えにより構築することによって、モノクローナル抗体の可変ドメインを、よりヒト形態に変換する方法も同様に開発されている。「ヒト化」モノクローナル抗体では、超可変CDRのみが非ヒト(例えば、マウス、ラット、ニワトリ、ラマなど)モノクローナル抗体に由来して、フレームワーク領域は、ヒト抗体アミノ酸配列に由来する。齧歯類の特徴である抗体中のアミノ酸配列をヒト抗体の対応する位置で見出されるアミノ酸配列に置き換えると、ヒトにおいて治療的に使用する際の外来タンパク質に対する有害な免疫反応の可能性を低減させる。ハイブリドーマまたは他の抗体産生細胞を同様に、ハイブリドーマによって産生される抗体の結合特異性を変更しうるまたは変更しない遺伝子変異または他の変化に供してもよい。
モノクローナル抗体および他の抗体および組み換えDNA技術を使用して改変抗体を作製して、当初の抗体の抗原またはエピトープ結合特異性を保持する他の抗体またはキメラ抗体を産生してもよく、すなわち分子は、特異的結合ドメインを有する。そのような技術は、抗体の免疫グロブリン可変領域またはCDRをコードするDNAを、異なる抗体のフレームワーク領域、定常領域、または定常領域プラスフレームワーク領域に対する遺伝子材料に導入することを伴い得る。例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,091,513号明細書および同第6,881,557号明細書を参照されたい。
本明細書において記述される公知の手段によって、そのような抗原またはエピトープが天然起源から単離されたか、または天然化合物の合成誘導体もしくは変種であるか否かによらず、グリコシル化PD−L1タンパク質、1つもしくは複数のそのそれぞれのエピトープ、または前述のいずれかのコンジュゲートに特異的に結合する、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、結合活性、結合ドメイン、およびCDRを有する抗体断片(前述の任意の改変形態を含む)を作製してもよい。
抗体は、鳥類および哺乳動物を含む任意の動物起源から産生してもよい。好ましくは、抗体は、ヒツジ、ネズミ(例えば、マウスおよびラット)、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、またはニワトリである。加えて、より新しい技術によって、ヒトコンビナトリアル抗体ライブラリによりヒト抗体の開発およびスクリーニングが可能である。例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,946,546号明細書に記述されるように、動物の免疫を行うことなく、バクテリオファージ抗体発現技術によって、特異的抗体を産生することができる。これらの技術は、Marks et al., 1992, Bio/Technol., 10:779-783;Stemmer, 1994, Nature, 370:389-391;Gram et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:3576-3580;Barbas et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:3809-3813;およびSchier et al., 1996, Gene, 169(2):147-155に詳しく記述されている。
様々な動物種においてポリクローナル抗体を産生する方法、ならびにヒト化、キメラ、および完全ヒトを含む様々なタイプのモノクローナル抗体を産生する方法は、当技術分野で周知であり、非常に再現性が高い。例えば、以下の米国特許は、そのような方法の説明を提供するものであり、参照により全体が本明細書に組み込まれる:米国特許第3,817,837号明細書;同第3,850,752号明細書;同第3,939,350号明細書;同第3,996,345号明細書;同第4,196,265号明細書;同第4,275,149号明細書;同第4,277,437号明細書;同第4,366,241号明細書;同第4,469,797号明細書;同第4,472,509号明細書;同第4,606,855号明細書;同第4,703,003号明細書;同第4,742,159号明細書;同第4,767,720号明細書;同第4,816,567号明細書;同第4,867,973号明細書;同第4,938,948号明細書;同第4,946,778号明細書;同第5,021,236号明細書;同第5,164,296号明細書;同第5,196,066号明細書;同第5,223,409号明細書;同第5,403,484号明細書;同第5,420,253号明細書;同第5,565,332号明細書;同第5,571,698号明細書;同第5,627,052号明細書;同第5,656,434号明細書;同第5,770,376号明細書;同第5,789,208号明細書;同第5,821,337号明細書;同第5,844,091号明細書;同第5,858,657号明細書;同第5,861,155号明細書;同第5,871,907号明細書;同第5,969,108号明細書;同第6,054,297号明細書;同第6,165,464号明細書;同第6,365,157号明細書;同第6,406,867号明細書;同第6,709,659号明細書;同第6,709,873号明細書;同第6,753,407号;同第6,814,965号明細書;同第6,849,259号明細書;同第6,861,572号明細書;同第6,875,434号明細書;同第6,891,024号明細書;同第7,407,659号明細書;および同第8,178,098号明細書。
本明細書において記述されるグリコシル化PD−L1に対する抗体は、動物種、モノクローナル細胞株、または他の抗体起源によらず、グリコシル化PD−L1の効果を中和、遮断、阻害、または拮抗する能力を有すると予想される。ある特定の動物種は、それらが、抗体の「Fc」部分を通して補体系の活性化により免疫応答またはアレルギー応答を引き起こす可能性がありうることから、治療抗体を作製するためにはあまり好ましくない。しかし、抗体全体を、「Fc」(補体結合)断片および結合ドメインまたはCDRを有するペプチド断片へと酵素的に消化してもよい。Fc部分の除去は、この抗体断片が望ましくない免疫応答を誘発する可能性を低減させ、このように、Fc部分を有しない抗体は、予防的または治療的処置にとって好ましくなりうる。上記のように、抗体はまた、キメラ、ヒト化、または部分的もしくは完全なヒトとなるように、別の種において産生されているまたは別の種からのアミノ酸配列を有する抗体を動物に投与することに起因する、潜在的に有害な免疫学的効果を低減または消失させるように構築されうる。
置換変種は典型的に、タンパク質内の1つまたは複数の部位で1つのアミノ酸の別のアミノ酸への交換を含み、他の機能もしくは特性の喪失を伴うまたは伴うことなく、ポリペプチドの1つまたは複数の特性を調節するように設計されうる。置換は保存的、すなわち1つのアミノ酸が類似の形状および電荷のアミノ酸に置き換えられる置換でありうる。保存的置換は、上記の表1に記述される通りである。あるいは、置換は、ポリペプチドの機能または活性が影響を受ける非保存的であってもよい。非保存的変化は典型的に、ある残基を化学的に異なる残基に置換すること、例えば極性または荷電アミノ酸を非極性または非荷電アミノ酸に置換することおよびその逆を伴う。
抗体タンパク質は、組み換えであってもよく、またはin vitroで合成されてもよい。本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体含有組成物において、全抗体ポリペプチドが1mlあたり約0.001mgから10mgの間で存在すると企図される。このため、組成物中の抗体タンパク質の濃度は、約、少なくとも約、または多くて約0.001、0.010、0.050、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0mg/mlまたはそれ以上(またはそれらから誘導可能な任意の範囲)でありうるかまたはそれらに等しい。この中で、グリコシル化PD−L1に結合する抗体は、約、少なくとも約、多くて約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%でありうるか、またはそれらに等しい。
抗体または結合活性を保持する抗体の免疫学的部分を、他のタンパク質に化学的にコンジュゲートさせることができ、または他のタンパク質との融合タンパク質として組み換え発現させることができる。本明細書において記述される目的として、そのような全ての融合タンパク質が、抗体または抗体の免疫学的部分の定義に含まれる。いくつかの実施形態において、グリコシル化PD−L1に対して作製された抗体および抗体様分子、または少なくとも1つの薬剤と連結して抗体コンジュゲートもしくはペイロードを形成するポリペプチドが包含される。診断または治療剤としての抗体分子の有効性を増加させるために、慣例的に少なくとも1つの所望の分子または部分を抗体に連結または共有結合または複合体形成させる。そのような連結された分子または部分は、少なくとも1つのエフェクターまたはレポーター分子でありうるがこれらに限定されるわけではない。エフェクター分子は、所望の活性、例えば細胞傷害活性を有する分子を含む。抗体に付着されうるエフェクター分子の非限定的な例には、毒素、治療的酵素、抗体、放射標識ヌクレオチドなどが挙げられる。これに対し、レポーター分子は、アッセイを使用して検出されうる任意の部分として定義される。抗体にコンジュゲートされうるレポーター分子の非限定的な例には、酵素、放射標識、ハプテン、蛍光標識、リン光分子、化学発光分子、発色団、発光分子、光親和性分子、着色粒子またはリガンド、例えばビオチンなどが挙げられる。抗体をコンジュゲート分子または部分に付着またはコンジュゲートさせるいくつかの方法が当技術分野で公知である。いくつかの付着方法は、非限定的な例として有機キレート剤、例えばジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA);エチレントリアミン四酢酸;N−クロロ−p−トルエンスルホンアミド;および/または抗体に付着させたテトラクロロ−3−6α−ジフェニルグリクリル−3を使用する、金属キレート錯体を使用することを伴う。抗体、特に本明細書において記述されるモノクローナル抗体はまた、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩などのカップリング剤の存在下で酵素と反応しうる。フルオレセインマーカーとのコンジュゲートは、慣例的に、これらのカップリング剤の存在下で、またはイソチオシアネートとの反応によって調製される。別の実施形態において、本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体、特にその結合断片を、投与後の血漿、血清、または血液中のそのin vivo半減期を増加させるために、化合物または物質、例えばポリエチレングリコール(PEG)にカップリングまたは連結させてもよい。
特定の実施形態において、非グリコシル化PD−L1タンパク質と比較してグリコシル化PD−L1タンパク質に特異的かつ優先的に結合する抗体、例えばモノクローナル抗体が提供される。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、例えば配列番号1に記載されるPD−L1タンパク質のアミノ酸配列のN35、N192、N200、および/またはN219位でグリコシル化されているPD−L1タンパク質に特異的または優先的に結合する。あるいは、抗glycPD−L1抗体は、3次元空間においてN35、N192、N200、またはN219位の1つまたは複数の近位に結合し、例えば、グリコシル化残基または複数の残基を隠すまたは遮断しうる。例えば、抗glycPD−L1抗体の特異的または選択的結合は、非グリコシル化PD−L1と比較して示されるKdの半分より小さいKdでPD−L1抗原への抗体の結合を伴う。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、非グリコシル化PD−L1と比較して示されるKdより少なくとも5倍小さいKdでグリコシル化PD−L1タンパク質に結合する。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、非グリコシル化PD−L1と比較して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化PD−L1タンパク質に結合する。一実施形態において、実施例5に記述される細胞フローサイトメトリー結合アッセイにおいて、抗体は、WT PD−L1を発現する細胞に、非グリコシル化PD−L1を発現する細胞への結合に対するMFIより1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍高いMFIとして表される結合を示す。
特定の実施形態は、抗glycPD−L1モノクローナル抗体STM004である、グリコシル化PD−L1に対して特異的な抗体、またはその結合断片を提供する。他の実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、本明細書において配列番号1に記載されるヒトPD−L1アミノ酸配列のY56、K62、およびK75位のアミノ酸残基に対応するPD−L1上のエピトープに特異的に結合する。STM004は、PD−L1内の非連続のアミノ酸に結合し、エピトープはコンフォメーションエピトープである。STM004 MAbエピトープを包含するヒトPD−L1ポリペプチドの部分は、配列LDLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQH(配列番号93)を有する。本明細書において示されるように、MAb STM004によって認識されるエピトープを構成するアミノ酸残基Y56、K62、およびK75を下線で示す。
別の特定の実施形態は、抗glycPD−L1モノクローナル抗体STM115である、グリコシル化PD−L1に対して特異的な抗体、またはその結合断片を提供する。他の実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、本明細書において配列番号1に記載されるヒトPD−L1アミノ酸配列のK62、H69、およびK75位のアミノ酸残基に対応するPD−L1上のエピトープに特異的に結合する。STM115 MAbエピトープを包含するヒトPD−L1ポリペプチドの部分は、配列番号1内の配列DKNIIQFVHGEEDLKVQHを有する。本明細書において示されるように、MAb STM115によって認識されるエピトープを構成するアミノ酸残基K62、H69、およびK75を下線で示す。
STM004 MAbの重鎖および軽鎖可変(V)ドメインの核酸(DNA)および対応するアミノ酸配列を、以下の表3に示す。表3は、STM004の成熟(すなわち、シグナルペプチドを含まない)VHおよびVLドメイン(それぞれ、配列番号2、3、10、および11)、ならびにシグナルペプチドを含むVHおよびVLドメイン配列(それぞれ、配列番号85、86、87、および88)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列の両方を提供する。表3に示される重鎖および軽鎖ドメインを含むシグナル配列の重鎖DNAおよびタンパク質Vドメイン配列において、アミノ末端シグナル配列(それぞれ、VHドメインのヌクレオチド1〜57およびアミノ酸1〜19、ならびにVLドメインのヌクレオチド1〜60およびアミノ酸1〜20)をイタリック体で表す。同様に、KabatおよびChothia両方の付番定義を使用する、STM004 MAb重鎖および軽鎖VドメインCDRを表3に示す。
一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、配列番号3のVHドメインおよび配列番号11のVLドメインを含む。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、グリコシル化PD−L1への特異的結合に関して、配列番号3のVHドメインと配列番号11のVLドメインとを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1〜3、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1〜3、またはその組み合わせを含むVHドメインを含む。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、グリコシル化PD−L1への特異的結合に関して、配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1〜3、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1〜3、またはその組み合わせを含むVHドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1〜3を含むVLドメインを含む。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、グリコシル化PD−L1への特異的結合に関して、配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1〜3を含むVLドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、(a)配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1〜3、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1〜3、またはその組み合わせを含むVHドメインと、(b)配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1〜3を含むVLドメインとを含む。実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、グリコシル化PD−L1への特異的結合に関して、上記のVHおよびVLドメイン、ならびにそのCDRを含む抗体と競合する。
一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的に結合する抗glycPD−L1抗体は、配列番号3のアミノ酸配列と、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるVHドメイン、および/または配列番号11のアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるVLドメインを含み、グリコシル化PD−L1のPD−1への結合を阻害または遮断する。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列それぞれに関して、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1〜3を含むVHドメインを含み、抗glycPD−L1抗体は、グリコシル化PD−L1のPD−1への結合を遮断する。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1〜3を含むVLドメインを含む。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、(a)少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列それぞれに関して、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1〜3を含むVHドメインと、(b)少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1〜3を含むVLドメインとを含み、抗体は、グリコシル化PD−L1のPD−1への結合を遮断する。同様に、AbM、Contact、またはIMGT定義CDRを使用して、ヒトフレームワーク領域、および任意選択でヒト定常ドメインを有するSTM004のヒト化形態が提供される。
前述の抗glycPD−L1抗体は、非グリコシル化PD−L1と比較して示されるKdの半分より小さいKdでグリコシル化PD−L1に結合する。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、非グリコシル化PD−L1と比較して示されるKdより少なくとも5倍小さいKdでグリコシル化PD−L1タンパク質に結合する。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、非グリコシル化PD−L1タンパク質と比較して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化PD−L1タンパク質に結合する。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に対する抗glycPD−L1抗体の結合親和性は、下限および上限値を含む、5〜20nMまたは5〜10nMである。一実施形態において、実施例5に記述される細胞フローサイトメトリー結合アッセイにおいて、抗体は、WT PD−L1を発現する細胞に、非グリコシル化PD−L1を発現する細胞への結合に対するMFIより1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍大きいMFIとして表される結合を示す。
一実施形態において、抗体は、PD−1とPD−L1との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞によって発現されるPD−1と、腫瘍細胞によって発現されるPD−L1、特にグリコシル化PD−L1との相互作用を阻害する。
別の特定の実施形態において、抗glycPD−L1モノクローナル抗体STM115である、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗体またはその結合断片が提供される。STM115 MAbの成熟重鎖および軽鎖可変(V)ドメイン(配列番号18、19、26、および27)の核酸(DNA)および対応するアミノ酸配列を以下の表3に示す。プロセシングされていない重鎖および軽鎖Vドメイン配列(すなわち、N−末端のシグナル配列を含む配列)のDNAおよびアミノ酸配列も同様に、表3(配列番号89、90、91、および92)に示し、アミノ末端シグナル配列をイタリック体(VHドメインのヌクレオチド1〜57およびアミノ酸1〜19、ならびにVLドメインのヌクレオチド1〜66およびアミノ酸1〜22)で表す。同様に、KabatおよびChothia両方の定義に従う、STM115 MAb重鎖および軽鎖VドメインCDRも表3に示す。
一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、配列番号19のアミノ酸配列のVHドメインと、配列番号27のアミノ酸配列のVLドメインとを含む。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、グリコシル化PD−L1への特異的結合に関して、配列番号19のアミノ酸配列のVHドメインと、配列番号27のアミノ酸配列のVLドメインとを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1〜3、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1〜3、またはその組み合わせを含むVHドメインを含む。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、グリコシル化PD−L1への特異的結合に関して、配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1〜3、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1〜3、またはその組み合わせを含むVHドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1〜3を含むVLドメインを含む。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、グリコシル化PD−L1への特異的結合に関して、配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1〜3を含むVLドメインを含む抗体と競合する。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、(a)配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列をそれぞれ有するChothia CDR1〜3、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列をそれぞれ有するKabat CDR1〜3、またはその組み合わせを含むVHドメインと、(b)配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列をそれぞれ有するCDR1〜3を含むVLドメインとを含む。実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、グリコシル化PD−L1への特異的結合に関して、上記のVHおよびVLドメインならびにそのCDRを含む抗体と競合する。
一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、配列番号19のアミノ酸配列と、80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるVHドメインと、配列番号27のアミノ酸配列と80%、85%、90%、95%、98%または99%同一であるVLドメインとを含む。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1〜3、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列それぞれ、またはその組み合わせを有するCDR1〜3を含むVHドメインを含む。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1〜3を含むVLドメインを含む。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合する抗glycPD−L1抗体は、(a)少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列それぞれに関して、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列それぞれ、またはその組合せに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1〜3を含むVHドメイン、および/または(b)少なくとも1、2または3個全てのCDRが配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列それぞれに関して少なくとも1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するCDR1〜3を含むVLドメインを含む。同様に、AbM、Contact、またはIMGT定義CDRを使用して、ヒトフレームワーク領域、および任意選択でヒト定常ドメインを有するSTM115のヒト化形態が提供される。
実施形態において、前述の抗glycPD−L1抗体は、非グリコシル化PD−L1と比較して示されるKdの半分より小さいKdでグリコシル化PD−L1に結合する。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、非グリコシル化PD−L1と比較して示されるKdより少なくとも5倍小さいKdでグリコシル化PD−L1タンパク質に結合する。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、非グリコシル化PD−L1タンパク質と比較して示されるKdの少なくとも10倍小さいKdでグリコシル化PD−L1タンパク質に結合する。一実施形態において、グリコシル化PD−L1に対するSTM115の結合親和性は、下限および上限値を含む、5〜20nMまたは5〜10nMである。一実施形態において、実施例5に記述される細胞フローサイトメトリー結合アッセイにおいて、抗体は、WT PD−L1を発現する細胞に、非グリコシル化PD−L1を発現する細胞への結合に対するMFIより1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍大きいMFIとして表される結合を示す。これらの抗glycPD−L1抗体は、PD−1とPD−L1との相互作用を阻害し、特にエフェクターT細胞によって発現されるPD−1と、腫瘍細胞によって発現されるPD−L1、特にグリコシル化PD−L1との相互作用を阻害する。
別の実施形態は、グリコシル化PD−L1に結合して、通常の競合法によってアッセイするときに、グリコシル化PD−L1への特異的結合に関して、本明細書において記述されるMAb STM004またはMAb STM115と競合または交叉競合する、単離抗glycPD−L1抗体またはその結合断片を提供する。一態様において、MAb STM004またはMAb STM115と同じエピトープに結合する単離抗体、例えばモノクローナル抗体またはその結合断片が提供される。
別の実施形態は、配列番号1の成熟ヒトPD−L1ポリペプチド配列内に位置する、LDLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQH(配列番号93)から選択されるアミノ酸配列内のエピトープに特異的に結合する単離抗glycPD−L1抗体を提供する。
別の実施形態は、配列番号1のヒトPD−L1タンパク質のアミノ酸残基Y56、K62、およびK75を含むエピトープに結合する単離抗glycPD−L1抗体を提供する。一態様において、以下のアミノ酸残基、配列番号1のY56、K62、またはK75の少なくとも1つを含むエピトープでグリコシル化ヒトPD−L1に特異的に結合する単離抗glycPD−L1l抗体が提供される。別の実施形態は、配列番号1のヒトPD−L1タンパク質のアミノ酸残基K62、H69、およびK75を含むエピトープに結合する単離抗glycPD−L1抗体を提供する。一態様において、以下のアミノ酸残基、配列番号1のK62、H69、またはK75の少なくとも1つを含むエピトープでグリコシル化ヒトPD−L1に特異的に結合する単離抗glycPD−L1抗体が提供される。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、PD−L1、すなわちグリコシル化ヒトPD−L1のエピトープ領域を含むアミノ酸残基の少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つに接触する。
なお別の実施形態は、配列番号1のL48〜H78のアミノ酸領域内、またはD61〜H78のアミノ酸領域内の少なくとも1つのアミノ酸を含むエピトープでグリコシル化ヒトPD−L1に特異的に結合する単離抗glycPD−L1抗体を提供する。一実施形態において、配列番号1のL48〜H78のアミノ酸領域内で以下の群のアミノ酸残基:Y56、K62、K75を含むエピトープでグリコシル化ヒトPD−L1に特異的に結合する単離抗glycPD−L1抗体が提供される。別の実施形態において、配列番号1のL48〜H78のアミノ酸領域内で、またはD61〜H78のアミノ酸領域内で以下の群のアミノ酸残基:K62、H69、K75を含むエピトープでグリコシル化ヒトPD−L1に特異的に結合する単離抗glycPD−L1抗体が提供される。
なお別の実施形態は、配列番号2もしくは18と少なくとも90〜98%同一であるヌクレオチド配列を含む抗glycPD−L1 VHドメインをコードする、および/または配列番号10もしくは26と少なくとも90〜98%同一であるヌクレオチド配列を含む抗glycPD−L1抗体VLドメインをコードする単離核酸分子を提供する。実施形態において、VHおよび/またはVLドメインをコードするヌクレオチド配列は、配列番号2もしくは18、または配列番号10もしくは26とそれぞれ、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一である。
疾患の処置
ある特定の態様において、本明細書における実施形態に記述される抗体またはその抗原結合断片(例えば、グリコシル化PD−L1に特異的かつ優先的に結合して、PD−1へのPD−L1の結合を遮断または阻害する抗体)は、がんを処置するための処置方法において使用され、投与されうる。したがって、本明細書において、がんを処置するために、本明細書において記述される少なくとも1つの抗glycPD−L1抗体の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することによって、がんを処置する方法を提供する。対象は、好ましくはヒト患者である。本明細書において述べたように、処置または治療的処置は、患者におけるがん細胞の成長、増殖、遊走などを低減させる、防止する、阻害する、または遮断する、特に、がん細胞の細胞殺滅またはアポトーシスを促進することを伴う。記述の方法は、特に免疫エフェクター細胞、例えばT細胞、特にキラーまたは細胞傷害性T細胞の細胞表面で発現するPD−1に結合/相互作用することができるPD−L1細胞表面タンパク質を発現する対象の腫瘍細胞に関して、処置を受けている対象、好ましくはヒト対象に利益を提供する。
これらの対象を、本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体の少なくとも1つの有効量によって処置すると、腫瘍細胞上のグリコシル化PD−L1への抗体の結合が起こり、PD−L1発現腫瘍細胞とPD−1発現T細胞との相互作用を防止、遮断、または阻害して、それによってT細胞活性の免疫抑制を防止または回避して、T細胞を活性化させてPD−L1を有する腫瘍細胞を殺滅させることができると予想される。したがって、提供される方法は、本発明の方法の実践によって得られる抗がん結果を必要とする、抗がん結果から利益を得ることができる、または抗がん結果の利益を受けることを望む対象にとって有利である。対象が、少なくとも1つの抗glycPD−L1抗体の治療有効量の投与を伴う方法の治療上の利益を求めること、またはそのような治療上の利益を受けることは、当技術分野に利点をもたらす。加えて、本発明の方法は、副作用、有害な転帰、禁忌などを消失もしくは回避させる利点、または他の処置および処置モダリティと比較してそのような問題が起こるリスクもしくは可能性を低減させるさらなる利点を提供する。
ある特定の実施形態において、方法は、本明細書において記述される2つまたはそれ以上の異なる抗glycPD−L1抗体の投与を含む。抗glycPD−L1抗体の同時投与は、いずれかの抗体単独の投与より治療上もしくは予防上有効でありうる、および/またはいずれかの抗体単独より低用量もしくは少ない回数での投与が可能となりうる。
本発明の処置方法が有用であるがんは、任意の悪性細胞タイプ、例えば固形腫瘍または血液腫瘍において見出されるがんを含む。一般的に、腫瘍は、任意の大きさの悪性または潜在的に悪性の新生物または組織塊を指し、原発腫瘍および二次腫瘍を含む。固形腫瘍は、通常、嚢胞または液体を含まない異常な組織塊または成長である。例示的な固形腫瘍には、膵臓、胆嚢、結腸、盲腸、胃、脳、頭部、頸部、卵巣、精巣、腎臓、咽頭、肉腫、肺、膀胱、黒色腫、前立腺、および乳房からなる群より選択される臓器の腫瘍が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。例示的な血液腫瘍には、骨髄の腫瘍、TまたはB細胞悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、芽腫、骨髄腫などが挙げられる。本明細書において提供される方法を使用して処置されうるがんのさらなる例には、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病、扁平上皮がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺癌、および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜のがん、肝細胞がん、胃がん(gastric cancer)または胃がん(stomach cancer)(消化管がん、および消化管間質がんを含む)、膵臓がん、胆嚢がん、神経膠芽腫、子宮頚がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん(kidney cancer)または腎臓がん(renal cancer)、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、様々なタイプの頭頚部がん、黒色腫、表在拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、肢端黒子型黒色腫、結節性黒色腫、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中間悪性度/濾胞性NHL、中間悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非切れ込み型細胞NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、およびワルデンストレームマクログロブリン血症)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ヘアリーセル白血病、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性骨髄芽球性白血病が挙げられるがこれらに限定されるわけではない
がんは、具体的に以下の組織学タイプのがんでありうるが、これらに限定される必要はない:悪性新生物;癌腫;未分化癌;巨細胞および紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;悪性ガストリノーマ;胆管癌;肝細胞癌;混合型肝細胞癌および胆管癌;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺癌、腺腫様ポリープ;腺癌、家族性大腸ポリポーシス;固形癌;悪性カルチノイド腫瘍;気管支肺胞腺癌;乳頭状腺癌;色素嫌性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭状濾胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;子宮内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳道腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;膠様腺癌;印環細胞癌;浸潤性乳管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;乳房パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を有する腺癌;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質腫瘍;悪性莢膜細胞腫;悪性顆粒膜細胞腫瘍;悪性男性胚細胞腫;セルトリ細胞癌;悪性ライディッヒ細胞腫瘍;悪性脂質細胞腫瘍;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;メラニン欠乏性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素性母斑の悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児型横紋筋肉腫;胞巣型横紋筋肉腫;間質性肉腫;悪性混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;悪性間葉腫;ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胎生期癌;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管外皮腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮歯牙腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣腫;星細胞腫;原形質性星細胞腫;原線維性星細胞腫;星芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起神経芽細胞腫;原始神経外胚葉腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅神経腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫瘍;悪性リンパ腫;ホジキン病;側肉芽腫;小リンパ球性悪性リンパ腫;びまん性大細胞型悪性リンパ腫;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉腫;他の明記された非ホジキンリンパ腫;悪性組織球腫;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ球性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞性白血病;巨核球性白血病;骨髄肉腫;およびヘアリーセル白血病。
処置されるがんは、好ましくはPD−L1陽性、特にグリコシル化PD−L1陽性である。ある特定の実施形態において、腫瘍細胞はまた、例えば乳がんに対する腫瘍細胞マーカー、例えばEGFRまたはHER2/neu発現に関して陽性である。これらのマーカーの存在または非存在は、EGFR陽性がんに対する標的化治療薬、例えばゲフィチニブなどのチロシンキナーゼ阻害剤、またはHER2/neu陽性がんに対するハーセプチンとの併用治療が、本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体と二重に機能することを示しうる。このように、ある特定の実施形態は、記述の抗glycPD−L1抗体を、第2のがんマーカーを標的とするがんの治療薬、例えばゲフィチニブなどのEGFRチロシンキナーゼ阻害剤と併用して投与することを含む、がんに罹患している対象における、グリコシル化PD−L1に関して陽性である、およびEGFRなどの第2のがんマーカーに関して陽性であるがんの処置方法を提供する。そのような併用によって、副作用、毒性の低減などを含む、治療有効性の改善が得られうる。ある特定の実施形態において、がんはBLBCである。
治療の選択を誘導するためにがんを特徴付けするためまたは治療をモニターするために使用されうる他のマーカーには、非小細胞肺がんおよび異型性大細胞リンパ腫におけるALK遺伝子の再配列および過剰発現;肝臓がんおよび胚細胞腫瘍に関するα−フェトプロテイン(AFP);多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、およびいくつかのリンパ腫に関するβ−2ミクログロブリン(B2M);絨毛がんおよび胚細胞腫瘍に関するβ−ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β−hCG);卵巣がんおよび乳がんに関するBRCA1およびBRCA2遺伝子変異;慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄性白血病に関するBCR−ABL融合遺伝子(フィラデルフィア染色体);皮膚黒色腫および結腸直腸がんに関するBRAF V600変異;消化管間質腫瘍および粘膜黒色腫に関するC−kit/CD117;乳がんに関するCA15−3/CA27.29;膵臓がん、胆嚢がん、胆管がん、および胃がんに関するCA19−9;卵巣がんに関するCA−125;甲状腺髄様がんに関するカルシトニン;結腸直腸がんおよびいくつかの他のがんに関する癌胎児性抗原(CEA);非ホジキンリンパ腫に関するCD20;神経内分泌腫瘍に関するクロモグラニンA(CgA);膀胱がんに関する第3、7、17および9p21染色体;肺がんに関するサイトケラチン断片21−1;非小細胞肺がんに関するEGFR遺伝子変異分析;乳がんに関するエストロゲン受容体(ER)/プロゲステロン受容体(PR);膀胱がんに関するフィブリン/フィブリノーゲン;卵巣がんに関するHE4;乳がん、胃がん、および胃食道接合部腺癌に関するHER2/neu遺伝子増幅またはタンパク質過剰発現;多発性骨髄腫およびワルデンストレームマクログロブリン血症に関する免疫グロブリン;結腸直腸癌および非小細胞肺がんに関するKRAS遺伝子変異分析;胚細胞腫瘍、リンパ腫、白血病、黒色腫、および神経芽細胞腫に関する乳酸デヒドロゲナーゼ;小細胞肺がんおよび神経芽腫に関するニューロン特異的エノラーゼ(NSE);膀胱がんに関する核マトリクスタンパク質22;前立腺がんに関する前立腺特異的抗原(PSA);甲状腺がんに関するサイログロブリン;ならびに乳がんに関するウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)およびプラスミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI−1)が挙げられる。
抗glycPD−L1抗体、例えばモノクローナル抗体は、多様なモダリティにおいて抗腫瘍剤として使用されうる。特定の実施形態は、抗腫瘍剤として抗体を使用する方法に関し、したがって、抗体または抗体を含む組成物の治療有効量を腫瘍細胞集団に、腫瘍細胞の成長を遮断または阻害するために十分な期間、接触させることを含む。一実施形態において、in vivoで腫瘍細胞に接触させることは、本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体を含む生理学的に忍容可能な組成物の治療有効量を、例えば静脈内、皮下、腹腔内、または腫瘍内注射によって、それを必要とする患者に投与することによって達成される。抗体は、注射または経時的な徐々の注入によって非経口投与されてもよい。有用な投与および送達レジメンには、静脈内、腹腔内、経口、筋肉内、皮下、腔内、経皮、皮内、蠕動ポンプ手段、または腫瘍細胞を含む組織への直接注射が挙げられる。
抗体を含む治療組成物は、慣例的に静脈内に、例えば単位用量の注射によって投与される。治療組成物を参照して使用される用語「単位用量」は、それぞれの単位が、必要な希釈剤、すなわち担体またはビヒクルに関連して所望の治療効果を生じるように計算された活性材料の既定量を含む、対象の単位投与量として適した物理的に個別の単位を指す。抗glycPD−L1抗体を含む組成物は、投与製剤と適合性である方法で、治療有効量で投与される。投与される量は、処置される対象、対象の系が活性成分を利用する能力、所望の治療効果の程度に依存する。投与に必要な活性成分の正確な量は、医師の判断に依存して、個々の個体に特異的である。しかし、全身適用に関して適した投与量範囲が本明細書において開示され、投与経路に依存する。初回および追加投与にとって適したレジメンも同様に企図され、典型的に初回投与後に1つまたは複数の間隔(時間)で皮下注射または他の投与による繰り返し投与を伴いうる。例示的な複数回投与は、抗体の高い血清中および組織レベルを持続的に維持するために適している。あるいは、in vivo治療に関して明記された範囲で血液中の濃度を維持するために十分な持続的な静脈内注入が企図される。
本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体は、局所進行または転移性がんを有するがん患者において、疾患を処置するために、例えば腫瘍細胞の成長を阻害するために、またはがん細胞を殺滅させるために全身または局所投与されうると企図される。抗体は、単独で、または抗増殖薬もしくは抗がん薬と併用して投与されうる。一実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、手術または他の技法前に患者におけるがんの負荷を低減させるために投与される。あるいは、残っているいかなるがん(例えば、手術によって除去できなかったがん)も大きさまたは成長能が確実に低減されるように、および/または確実に生存しないように、抗glycPD−L1抗体を、術後、定期的な間隔で投与することができる。上記で注目したように、抗体の治療有効量は、所望の効果を達成するように計算された既定量である。このため、抗glycPD−L1抗体の投与のための投与量範囲は、腫瘍細胞分裂および細胞周期進行の兆候が低減される所望の効果を生じるために十分に大きい範囲である。最適には、投与量は、有害な副作用、例えば過粘稠度症候群、肺浮腫、うっ血性心不全、神経学的効果などを引き起こすほど多量であってはならない。一般的に、投与量は、患者の年齢、状態、体格、および性別、ならびに疾患の程度によって変化し、内科医または臨床医などの当業者が決定することができる。当然、いずれかの合併症が起こった場合には、個々の医師が投与量を調節することができる。
処置方法
ある特定の実施形態において、記述の組成物および方法は、本明細書に記述の抗glycPD−L1抗体の単独投与、または第2のもしくは追加の薬物もしくは治療との併用投与を伴う。そのような薬物または治療は、PD−L1またはグリコシル化PD−L1、好ましくはヒトPD−L1もしくはグリコシル化ヒトPD−L1とヒトPD−1との相互作用に関連する任意の疾患の処置に適用されうる。例えば、疾患はがんでありうる。非グリコシル化PD−L1または変種グリコシル化PD−L1と比較してグリコシル化PD−L1タンパク質に優先的に結合する少なくとも1つの抗PD−L1抗体を含む組成物および方法は、がんまたは他の疾患の処置において、特にPD−1/PD−L1相互作用を防止、低減、遮断、または阻害して、それによって治療効果および処置を提供することによって、治療効果または保護効果を有する。
併用治療を含む組成物および方法は、治療効果もしくは保護効果を有し、治療効果もしくは保護効果を増強し、および/または別の抗がん治療もしくは抗増殖剤治療の治療効果を増加させうる。治療および予防の方法ならびに組成物は、所望の効果、例えばがん細胞の殺滅および/または細胞の過増殖の阻害を達成するために有効な併用量で提供されうる。このプロセスは、抗glycPD−L1抗体またはその結合断片と、第2の治療とを投与することを伴いうる。第2の治療は、直接の細胞傷害効果を有しても有しなくてもよい。例えば、第2の治療は、直接の細胞傷害作用を有することなく免疫系をアップレギュレートする薬剤でありうる。組織、腫瘍および/または細胞に、1つもしくは複数の薬剤(例えば、抗体もしくは抗がん剤)を含む1つもしくは複数の組成物もしくは薬理学的製剤を曝露するか、または組織、腫瘍、および/もしくは細胞に、2つもしくはそれ以上の異なる組成物もしくは製剤を曝露することができ、1つの組成物は、例えば、1)抗体、2)抗がん剤、3)抗体と抗がん剤の両方、または4)2つもしくはそれ以上の抗体を提供する。いくつかの実施形態において、第2の治療もまた、抗PD−L1抗体、好ましくは非グリコシル化PD−L1と比較してグリコシル化PD−L1に優先的に結合する抗glycPD−L1抗体であるか、または他の実施形態において、抗PD−1抗体である。限定されないが、例示的な抗PD−1抗体は、ペムブロリズマブおよびニボルマブを含み、例示的な抗PD−L1抗体はアテゾリズマブを含む。同様に、そのような併用治療は、化学療法、放射線療法、外科療法、または免疫療法と共に使用されうると企図される。
例として、用語「接触した」および「曝露した」は、細胞に適用されるとき、本明細書において、特に腫瘍またはがん細胞の表面で発現または高度に発現した標的抗原、例えばPD−L1、特にグリコシル化PD−L1に特異的に結合するように、治療ポリペプチド、好ましくは本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体を標的細胞に送達するかまたは標的細胞の直接近位に配置するプロセスを記述するために使用される。治療的抗glycPD−L1抗体またはその結合断片によるそのような結合は、腫瘍またはがん細胞が発現するPD−L1とエフェクターT細胞上のPD−1との相互作用を防止、遮断、阻害、または低減させて、それによって、PD−L1/PD−1相互作用に関連する免疫抑制を防止する。実施形態において、化学療法剤または放射線療法剤はまた、抗glycPD−L1抗体またはその結合断片と共に対象に投与または送達される。細胞の殺滅を達成するために、例えば1つまたは複数の薬剤は、細胞を殺滅させるためにまたは細胞が分裂するのを防止するために有効な併用量で細胞に送達される。
抗glycPD−L1抗体は、別の抗がん処置に対してその前に、間に、後に、または様々な組み合わせで投与されうる。投与は、互いを前後として、同時から数分まで、数日まで、数週間までの範囲の間隔でありうる。抗体が抗がん剤とは別に患者に提供される実施形態において、投与された化合物が患者に対して有利な併用効果をなおも発揮することができるように、一般的に、それぞれの送達時間の間に有意な時間が経過しないように確保される。実例として、そのような例において、患者に抗体と抗がん治療とを互いに約12〜24時間または72時間以内に、より詳しくは互いに約6〜12時間以内に提供してもよいと企図される。いくつかの状況では、それぞれの投与の間に数日(2、3、4、5、6、または7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8週間)が経過する、処置期間の有意な延長が望ましいと予想される。
ある特定の実施形態において、一連の処置または処置サイクルは、1〜90日またはそれ以上持続すると予想される(この範囲はその間の日および最後の日を含む)。1つの薬剤を、1日〜90日のいずれかの日(このような範囲はその間の日および最後の日を含む)にまたはその任意の組み合わせで投与してもよく、別の薬剤が1日〜90日(このそのような範囲は、その間の日および最後の日を含む)またはその任意の組み合わせのいずれかの日に投与されると企図される。1日の間(24時間の期間)に、患者に、薬剤を1回または複数回投与してもよい。その上、一連の処置の後、抗がん処置が投与されない期間が存在してもよいと企図される。この期間は、患者の状態、例えば予後、体力、健康などに応じて、例えば1〜7日間、および/または1〜5週間、および/または1〜12ヶ月またはそれ以上持続してもよい(このそのような範囲は、その間の日および上限の時点を含む)。処置のサイクルは必要に応じて繰り返される。様々な処置の組み合わせを使用してもよい。以下に示す併用処置レジメンの代表的な例において、抗体、例えば抗glycPD−L1抗体またはその結合断片を「A」で表し、抗がん治療を「B」で表す。
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
本実施形態の任意の抗体または治療の患者への投与は、もしあるとすれば、薬剤の毒性を考慮に入れて、そのような化合物を投与するための一般的プロトコールに従う。したがって、いくつかの実施形態において、有害事象および毒性、特に併用治療に帰することができる有害事象および毒性をモニターするステップが存在する。
一実施形態において、抗glycPD−L1抗体を単独または別の抗がん剤と併用して、それを必要とする患者、すなわちがんまたは腫瘍を有する患者に投与することを伴う方法が提供される。抗glycPD−L1抗体の投与前に、患者の腫瘍またはがんの試料をPD−L1の存在に関して評価してもよい。そのような評価の結果によって、患者の腫瘍またはがんがグリコシル化PD−L1に関して陽性であることが判明すれば、患者のglycPD−L1+腫瘍またはがんが抗glycPD−L1抗体による処置により感受性がある可能性、および処置を進めて有益な転帰が得られる可能性がより高いことに基づいて、患者を処置に関して選択する。医療の専門家または医師は、抗glycPD−L1抗体処置方法を進めるように患者に助言を与えてもよく、患者は医療の専門家または医師の助言に基づいて処置を進めることを決定してもよい。加えて、一連の処置において、患者の腫瘍またはがん細胞を、処置の進行または有効性をモニターする方法として、グリコシル化PD−L1の存在に関してアッセイしてもよい。アッセイによって、例えば、患者の腫瘍またはがん細胞上のグリコシル化PD−L1の変化、喪失、または減少が示される場合、医療の専門家は患者と共に、処置を継続すべきか否か、または何らかの方法で変更すべきか、例えばより高い投薬量に、別の抗がん剤もしくは治療を追加するか否かなどを決定してもよい。
化学療法
広く多様な化学療法剤が、本実施形態の処置または治療方法に従って使用されうる。用語「化学療法」は、がんを処置するための薬物の使用を指す。「化学療法剤」は、がんの処置において投与される化合物または組成物を意味する。そのような薬剤または薬物は、細胞内でのその活性様式、例えばそれらが細胞周期、細胞成長、および増殖のどの段階に影響を及ぼすかによって分類される。あるいは、化学療法剤は、DNAを直接架橋する、DNAにインターカレートする、または細胞における核酸合成に影響を及ぼすことによって染色体異常および分裂異常を導入するその能力に基づいて特徴付けされうる。
化学療法剤の非限定的な例には、アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミド;スルホン酸アルキル類、例えばブスルファン、イムプロスルファン、およびピポスルファン;アジリジン類、例えばベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ、およびウレドーパ;アルトレタミン、トリエチレンアミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロールアミンを含むエチレンイミン類およびメチルアメラミン類;アセトゲニン類(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログであるトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン類(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW2189およびCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;ナイトジェンマスタード類、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロフォスフェミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、およびウラシルマスタード;ニトロソウレア類、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン;抗生物質、例えば、エネジイン系抗生物質(例えば、カリケアミシン、特に、カリケアミシン・ガンマ1I、カリケアミシン・オメガI1;ダイネミシンAを含むダイネミシン;ビスホスホネート類、例えば、クロドロネート;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチン発色団および関連する色素タンパク質、エンジイン系抗生物質発色団、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン類、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、およびゾルビシン;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、およびチオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、およびフロクスウリジン;アンドロゲン類、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、およびテストラクトン;抗副腎皮質剤、例えば、ミトタンおよびトリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フォリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド類、例えば、メイタンシンおよびアンサマイトシン類;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;ジゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’−2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T−2毒素、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;タキソイド類、例えば、パクリタキセルおよびドキセタキセル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT−11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド類、例えば、レチン酸;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス型白金製剤、ならびに上記いずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。
放射線療法
放射線療法は、DNAの損傷を引き起こす薬剤による処置を含む。放射線療法は、がんおよび疾患の処置において広く使用されており、一般的にγ線、X線として知られるもの、および/または腫瘍細胞への放射性同位元素の直接送達を包含する。他の形態のDNA損傷因子、例えばマイクロ波、光子線照射(米国特許第5,760,395号明細書および同第4,870,287号明細書)、およびUV照射も同様に企図される。これらの要因は全て、DNAそのもの、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に広範囲の損傷を与える可能性が最も高い。X線の例示的な線量範囲は、50〜200レントゲンの長期間(3〜4週間)毎日照射から2000〜6000レントゲンの1回照射の範囲である。放射性同位元素の線量範囲は広く異なり、同位体の半減期、放出される放射線の強度およびタイプ、新生物細胞による取り込み、ならびに処置を受ける対象の忍容性に依存する。
免疫療法
方法のいくつかの実施形態において、本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体の投与と併用して、または投与と共に、免疫療法を使用してもよい。がんの処置の文脈において、免疫療法は一般的に、がん細胞を標的として破壊するために、免疫エフェクター細胞および分子の使用に依存する。リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))は、そのような一例である。イピリムマブを含む他のチェックポイント阻害剤もまた、併用して投与することができる。抗glycPD−L1抗体はまた、他の抗PD−1または抗PD−L1阻害剤、例えばアテゾリズマブ、デュルバルマブ、もしくはアベルマブを含むPD−L1に対する抗体、またはニボルマブ、ペムブロリズマブ、もしくはピディリズマブを含むPD−1に対する抗体と併用して投与されうる。加えて、実施形態の抗glycPD−L1抗体の1つまたは複数を、互いに併用して投与してもよい。抗体単独は、治療のエフェクターとしての役割を果たしてもよく、または細胞殺滅を実際に行うために他の細胞を動員してもよい。抗体はまた、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートしてもよく、単に標的化剤としての役割を果たしてもよい。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接または間接的に相互作用する表面分子、例えばT細胞上のPD−1/腫瘍細胞上のPD−L1相互作用を有するリンパ球でありうる。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。
免疫療法の一態様において、腫瘍細胞は、標的化に感受性があるいくつかのマーカー(タンパク質/受容体)を有しなければならない。最適には、腫瘍マーカータンパク質/受容体は、大部分の他の細胞、例えば非がん細胞または正常細胞には存在しない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらのいずれも本実施形態の文脈において、抗glycPD−L1抗体と共に投与される別の薬物または治療による標的化にとって適しうる。一般的な腫瘍マーカーには、例えばCD20、がん胎児性抗原(CEA)、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG−72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、ラミニン受容体、erbB、およびp155が挙げられる。免疫療法の代替の態様は、抗がん作用と免疫刺激作用とを組み合わせることである。免疫刺激分子も同様に存在し、これにはサイトカイン、例えばIL−2、IL−4、IL−12、GM−CSF、γ−IFN;ケモカイン、例えばMIP−1、MCP−1、IL−8;および増殖因子、例えばFLT3リガンドが挙げられる。
現在治験中または使用されている免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えば、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、ジニトロクロロベンゼン、および芳香族化合物(米国特許第5,801,005号明細書および同第5,739,169号明細書;Hui et al., 1998, Infection Immun., 66(11):5329-5336;Christodoulides et al., 1998, Microbiology, 144(Pt 11):3027-3037);サイトカイン療法、例えばα、β、およびγインターフェロン;IL−1、GM−CSF、およびTNF(Bukowski et al., 1998, Clinical Cancer Res., 4(10):2337-2347;Davidson et al., 1998, J. Immunother., 21(5):389-398;Hellstrand et al., 1998, Acta Oncologica, 37(4):347-353);遺伝子治療、例えばTNF、IL−1、IL−2、およびp53(Qin et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(24):14411-14416;Austin-Ward and Villaseca, 1998, Revista Medica de Chile, 126(7):838-845;米国特許第5,830,880号明細書および同第5,846,945号明細書);ならびにモノクローナル抗体、例えば抗CD20、抗ガングリオシドGM2、および抗p185(Hollander, 2012, Front. Immun., 3:3;Hanibuchi et al., 1998, Int. J. Cancer, 78(4):480-485;米国特許第5,824,311号明細書)である。1つまたは複数の抗がん治療を、本明細書において記述される抗体治療と共に使用してもよいと企図される。
手術
がんを有するおよそ60%の個体が、予防的、診断的、または進行期分類、根治的、および姑息的手術を含む何らかのタイプの手術を受ける。根治的手術は、がん様組織の全てまたは一部が物理的に除去、切除、および/または破壊される切除を含み、他の治療、例えば本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子治療、免疫療法、および/または代替治療、ならびにその組み合わせと共に使用されうる。腫瘍の切除は、腫瘍の少なくとも一部の物理的除去を指す。腫瘍の切除に加えて、手術による処置は、レーザー手術、凍結手術、電気的手術、および顕微鏡下の手術(モース顕微鏡手術)を含む。がん様細胞、組織、または腫瘍の一部または全ての切除後、体に腔が形成されることがある。追加の抗がん治療によってその領域の灌流、直接注射、または局所適用による処置を行ってもよい。そのような処置を、例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7日ごと、または1、2、3、4、もしくは5週間ごと、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月ごとに繰り返してもよい。これらの処置も同様に、多様な用量の処置でありうる。
タンパク質の精製
抗体および特に抗glycPD−L1抗体を含むタンパク質の精製技術は、当業者に周知である。これらの技術は、1つのレベルで細胞、組織、または臓器のホモジナイゼーション、ならびにポリペプチドおよび非ポリペプチド分画への簡易分画を伴う。目的のタンパク質またはポリペプチドを、特に示していなければ部分精製または十分な精製(または均一になるまで精製)を達成するためにクロマトグラフィーおよび電気泳動技術を使用してさらに精製してもよい。純粋なタンパク質またはペプチドの調製に特に適した分析方法は、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、イムノアフィニティークロマトグラフィー、および等電点電気泳動である。ペプチドの特に効率的な精製方法は、中圧液体クロマトグラフィー(FPLC)または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。一般的に当技術分野で公知であるように、様々な精製ステップを実施する順序を変化させてもよく、および/またはある特定のステップを省略してもよく、それでもなお実質的に精製されたポリペプチドの適した調製方法が得られうる。
精製ポリペプチド、例えば本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体は、他の成分から単離可能なまたは単離されて、その天然に得ることができる状態と比較して任意の程度に精製されるポリペプチドを指す。したがって、単離または精製ポリペプチドはまた、それが天然に存在しうる環境、例えば、細胞、組織、臓器、生物試料などを含まないポリペプチドを指す。一般的に、「精製」は、様々な他の成分を除去するために分画に供されているが、組成物がその発現された生物活性を実質的に保持しているポリペプチド組成物を指す。「実質的に精製された」組成物は、ポリペプチドが組成物の主成分を形成し、そのため、ポリペプチドが、組成物のタンパク質成分の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上を構成する組成物を指す。
ポリペプチド、例えば抗体タンパク質の精製の程度を定量する様々な方法が、本開示に照らして当業者に公知である。これらは、例えば、活性分画の特異的活性を決定すること、またはSDS/PAGE分析によって分画内のポリペプチドの量を評価することを含む。分画の純度を評価する好ましい方法は、分画の特異的活性を計算すること、それを最初の抽出物の特異的活性と比較すること、およびこのようにして「精製倍率」によって評価したその純度の程度を計算することである。活性の量を表すために使用される実際の単位は、精製後に行うように選択される特定のアッセイ技術、および発現されたポリペプチドが検出可能な活性を示すか否かに依存する。
一般的に、ポリペプチドが常にその最も精製された状態で提供される必要はない。実際に、実質的にあまり精製されていない産物は、ある特定の実施形態において有用性を有しうると企図される。部分精製は、より少ない精製ステップを組み合わせて使用することによって、または同じ一般的精製スキームの異なる形態を利用することによって達成されうる。例えば、HPLC装置を利用して実施する陽イオン交換カラムクロマトグラフィーでは、一般的に、低圧のクロマトグラフィーシステムを利用する同じ技術より大きい精製「倍率」が得られると認識される。低い程度の相対的精製を示す方法は、タンパク質産物の全体的な回収において、または発現されたタンパク質の活性の維持において利点を有しうる。
アフィニティークロマトグラフィーは、単離される物質(タンパク質)とそれが特異的に結合することができる分子との間の特異的親和性、すなわち、受容体−リガンド型相互作用に依存するクロマトグラフィー技法である。結合パートナーの1つを不溶性マトリクスに共有結合的にカップリングさせることによって、カラム材料(樹脂)を合成する。次いで、カラム材料は、カラム樹脂の上を通過する溶液から物質を特異的に吸着することができる。条件を、結合が妨害される/起こらない条件(例えば、pH、イオン強度、温度の変更など)に変化させることによって、溶出が起こる。マトリクスは、いかなる有意な程度にも分子を吸着せず、広範囲の化学的、物理的、および温度安定性を有する物質であるべきである。リガンドは、その結合特性に影響を及ぼさないようにカップリングすべきである。リガンドはまた、比較的堅固な結合を提供すべきであるが、結合した物質の溶出は、望ましい試料タンパク質またはリガンドを破壊することなく起こるべきである。
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、溶液中の分子がその大きさに基づいて、またはより技術的な用語ではその流体力学的体積に基づいて分離されるクロマトグラフィー方法である。これは通常、大きい分子または高分子複合体、例えばタンパク質および工業用ポリマーに適用される。典型的に、水溶液を使用して試料をカラムの中に通過させるとき、この技術は、ゲル濾過クロマトグラフィーとして知られるが、これに対し、ゲル透過性クロマトグラフィーという名称は、移動相として有機溶媒を使用するときに使用される。SECの基礎となる原理は、異なる大きさの粒子が、異なる速度で静止相の中を溶出(濾過)して、それによって、大きさに基づいて粒子の溶液が分離されることである。粒子の全てが同時またはほぼ同時にロードされると仮定すれば、同じ大きさの粒子は共に溶出するはずである。
高速(すなわち、高圧)液体クロマトグラフィー(HPLC)は、化合物を分離、同定、および定量するために生化学および分析化学において頻繁に使用されるカラムクロマトグラフィーの1つの形態である。HPLCは、クロマトグラフィー充填材料(静止相)、移動相をカラムの中に移動させるポンプ、および分子の保持時間を示す検出器を利用する。保持時間は、静止相、分析される分子、および使用する溶媒の間の相互作用に応じて変化する。
医薬調製物
抗glycPD−L1抗体またはグリコシル化PD−L1ポリペプチドを含む医薬組成物の臨床応用を行う場合、一般的に、意図される適用にとって適当な医薬または治療組成物を調製することが有益である。一般的に、医薬組成物は、薬学的に許容される担体に溶解または分散した1つまたは複数のポリペプチドの有効量または追加の薬剤を含みうる。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば少なくとも約0.1%のポリペプチドまたは抗体を含みうる。他の実施形態において、ポリペプチドまたは抗体は、単位重量の約2%から約75%の間、または約25%から約60%の間、例えば、その上限および下限値を含むその間で誘導可能な任意の範囲を含みうる。それぞれの治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、適した投与量が任意の所定の単位用量において得られるように調製されうる。溶解度、生物学的利用率、生物学的半減期、投与経路、産物の貯蔵寿命、および他の薬理学的検討などの要因は、そのような医薬製剤を調製する当業者によって企図され、そのため、多様な投与量および処置レジメンが望ましいと予想される。
さらに、ある特定の態様に従って、投与に適した組成物は、不活性希釈剤の存在下または非存在下で薬学的に許容される担体中で提供されうる。担体は、同化可能でなければならず、液体、半固体、例えばゲルもしくはペースト、または固体担体を含むべきである。担体または希釈剤の例には、脂肪、油、水、食塩水溶液、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、増量剤など、またはその組み合わせが挙げられる。本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」は、当業者に公知である、ありとあらゆる水性溶媒(例えば、水、アルコール/水溶液、エタノール、食塩水溶液、非経口用ビヒクル、例えば塩化ナトリウム、リンゲルデキストロースなど)、非水性溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチル)、分散培地、コーティング(例えば、レシチン)、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗菌剤または抗真菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサル)、等張剤(例えば、糖、塩化ナトリウム)、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン)、塩、薬物、薬物安定化剤(例えば、緩衝剤、アミノ酸、例えばグリシンおよびリジン、炭水化物、例えばデキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなど)、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、香味料、色素、血液体液用薬、そのような類似の材料および組み合わせを含む。任意の通常の培地、薬剤、希釈剤、または担体がレシピエントまたはその中に含まれる組成物の治療上の有効性にとって有害である場合を除き、方法の実践のために投与可能な組成物におけるその使用が適切である。医薬組成物中の様々な成分のpHおよび正確な濃度は、周知のパラメータに従って調整される。ある特定の態様に従って、組成物を、任意の通常のおよび実践的方法で、すなわち、溶液、懸濁液、乳液、混合物、カプセル化、吸収、粉砕などによって担体と結合させる。そのような技法は当業者にとって日常的である。
ある特定の実施形態において、組成物は、それらが固体、液体、エアロゾル剤形のいずれで投与されるかに応じて、およびそれが注射などの投与経路に関して無菌的である必要があるか否かに応じて、異なるタイプの担体を含みうる。組成物は、当業者に公知であるように、静脈内、皮内、経皮、髄腔内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、筋肉内、皮下、粘膜内、経口、局所表面、局所、または吸入(例えば、エアロゾル吸入)、注射、注入、連続的注入、標的細胞を直接浴する局所灌流、カテーテル、洗浄、脂質組成物(例えば、リポソーム)、または他の方法、または前述の任意の組み合わせによる投与のために製剤化されうる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., 1990を参照されたい。典型的に、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして調製することができ、注射前に液体の添加による溶液または懸濁液の調製に使用するために適した固体または再構成可能な形態も同様に調製することができ、調製物はまた乳化させることもできる。
抗体は、遊離の塩基、中性、または塩形態として組成物中に製剤化されてもよい。薬学的に許容される塩には、酸付加塩、例えば、タンパク質様組成物の遊離のアミノ基によって形成される塩、または無機酸、例えば塩酸もしくはリン酸など、または酢酸、酒石酸、もしくはマンデル酸などの有機酸によって形成される塩が挙げられる。遊離のカルボキシル基によって形成される塩もまた、無機塩基、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、もしくは水酸化第二鉄など、またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、もしくはプロカインなどの有機塩基から誘導してもよい。
さらなる実施形態において、ポリペプチド、1つまたは複数の脂質、および水性溶媒を含む薬学的脂質ビヒクル組成物を使用してもよい。本明細書において使用される用語「脂質」は、特徴的に水に不溶性であり、有機溶媒によって抽出可能である広範囲の物質のいずれかを指す。この広いクラスの化合物は当業者に周知であり、用語「脂質」が本明細書において使用される場合、これは任意の特定の構造に限定されない。例には、長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含む化合物が挙げられる。脂質は、天然に存在するかまたは合成でありうる(すなわち、ヒトによって設計または生成される)。しかし、脂質は通常、生体物質である。生体脂質は、当技術分野で周知であり、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、グリコスフィンゴリピッド、糖脂質、スルファチド、エーテルおよびエステル結合した脂肪酸を有する脂質、重合化可能な脂質、およびその組み合わせを含む。当然、当業者によって脂質として理解される、本明細書において具体的に記述される化合物以外の化合物も同様に、組成物および方法に包含される。当業者は、脂質ビヒクル中に組成物を分散させるために使用することができる技術範囲を周知していると予想される。例えば、抗体を、脂質を含む溶液中に分散させる、脂質と共に溶解する、脂質によって乳化する、脂質と混合する、脂質と組み合わせる、脂質に共有結合させる、脂質中に懸濁剤として含める、ミセルもしくはリポソームに含めるもしくはそれらと複合体を形成する、または当業者に公知の任意の手段によって脂質もしくは脂質構造に会合させてもよい。分散によって、リポソームが形成してもしなくてもよい。
用語「単位用量」または「投与量」は、それぞれの単位が、その投与に関連して、すなわち適切な経路および処置レジメンに関連して、上記の所望の応答を生じるように計算された、治療抗体または治療抗体を含む組成物の既定量を含む、対象において使用するために適した物理的に個別の単位を指す。処置の回数および単位用量の両方に従って投与される量は、所望の効果に依存する。患者または対象に投与される本実施形態の組成物の実際の投与量は、身体的および生理学的要因、例えば対象の体重、年齢、健康、および性別、処置される疾患のタイプ、疾患浸透の程度、過去のまたは同時の治療介入、患者の特発性疾患、投与経路、ならびに特定の治療物質の効力、安定性、および毒性によって決定することができる。他の非限定的な例において、用量はまた、投与あたり、約1μg/kg/体重、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重〜約1000mg/kg/体重またはそれ以上、およびそこから誘導可能な任意の範囲を含みうる。本明細書において記載した数値から誘導可能な範囲の非限定的な例において、上記の数値に基づいて、約5mg/kg/体重〜約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重〜約500mg/kg/体重などの範囲を投与することができる。前述の用量は、記載の用量の間の量を含み、同様に、範囲の下限および上限値を含むと意図される。投与の責任者である医師は、いずれにせよ、組成物中の活性成分の濃度および個々の対象に関して適切な用量を決定すると予想される。
治療組成物または調製物の特定の性質は、限定的であると意図されない。例えば、適した組成物は、生理的に忍容可能な液体、ゲル、または固体担体、希釈剤、および賦形剤と共に製剤中で提供されうる。いくつかの実施形態において、治療調製物は、他の治療剤と類似の方法で、家畜動物などの獣医学での使用のために、およびヒトでの臨床での使用のために哺乳動物に投与されうる。一般的に、治療有効性のために必要な投与量は、使用のタイプおよび投与様式、ならびに上記のように個々の対象の特定の必要条件に従って変化する。
バイオマーカーとしてのグリコシル化PD−L1
実施形態に記述される少なくとも1つの抗glycPD−L1抗体の使用を伴う方法が提供される。そのような方法は、がんまたは腫瘍を有する対象から得た腫瘍またはがん細胞のバイオマーカー評価において有用でありうる。がんを有する対象が、PD−L1を有する腫瘍またはがん細胞のバイオマーカーとしてグリコシル化PD−L1、特にそのような細胞の細胞表面上にグリコシル化PD−L1の検出可能なレベルを発現するがんまたは腫瘍を有するか否かを決定する方法が提供される。例えば、対象のがんまたは腫瘍細胞を試験して、細胞表面上にグリコシル化PD−L1を発現すると決定されれば、対象は、記述の抗glycPD−L1抗体の単独、または例えば別の抗がん剤との併用による処置の候補であり、処置によって利益が得られると予想される。そのような方法は、がんまたは腫瘍を有する対象から試料を得ること、当技術分野において公知で使用される、および本明細書において記述される結合方法を使用して、例えば、実施形態の抗glycPD−L1抗体を使用して対象のがんまたは腫瘍に由来する細胞上のグリコシル化PD−L1の存在に関して試料を試験すること、ならびに対象のがんまたは腫瘍がグリコシル化PD−L1タンパク質の細胞表面発現に関して陽性であることが見出されれば、対象に、抗glycPD−L1抗体の有効量を単独でまたは別の抗がん剤と併用して投与することを含む。処置前に対象が、グリコシル化PD−L1を発現するがんまたは腫瘍を有すると診断されれば、投与された抗glycPD−L1抗体が、対象のグリコシル化PD−L1発現がんまたは腫瘍細胞と、対象のPD−1発現T細胞との相互作用を遮断または阻害する可能性がより高く、それによってT細胞活性の免疫抑制を防止して、活性化T細胞殺滅により腫瘍またはがん細胞の殺滅を促進することから、より有効な処置が得られ、対象にとって利益が得られる。一実施形態において、方法は、そのがんまたは腫瘍が、発現されたグリコシル化PD−L1タンパク質の存在に対する試験に感受性がありうる対象を最初に選択することを伴いうる。
類似の方法を使用して、抗glycPD−L1抗体と別の抗がん薬または処置との併用処置を含む、一連のがんの処置または治療の間に、ならびに処置の終了後に、患者の腫瘍細胞上のグリコシル化PD−L1の存在を経時的にモニターしてもよい。そのような方法はまた、処置前に、および一連の処置の間に、抗がん処置レジメンまたは併用処置が、グリコシル化PD−L1発現腫瘍またはがん細胞に関して患者の腫瘍またはがん試料を試験またはアッセイすること、例えば成功の転帰またはその可能性を決定するためにモニターすることを伴うコンパニオン診断法において使用されうる。
他の薬剤
他の薬剤を、処置の治療有効性を改善するために、本実施形態のある特定の態様と共に使用してもよいと企図される。これらの追加の薬剤は、細胞表面受容体およびGAP接合部のアップレギュレーションに影響を及ぼす薬剤、細胞抑制および分化剤、細胞接着阻害剤、アポトーシス誘発剤に対する過増殖細胞の感受性を増加させる薬剤、または他の生物薬剤を含む。GAP接合部の数を増加させることによる細胞内シグナル伝達の増加は、隣接する過増殖細胞集団に対して抗過増殖作用を増加させうる。他の実施形態において、細胞抑制または分化剤は、処置の抗過増殖有効性を改善するために、本実施形態のある特定の態様と併用して使用されうる。細胞接着阻害剤は、本実施形態の有効性を改善すると企図される。細胞接着阻害剤の例は、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。さらに、処置の有効性を改善するために、アポトーシスに対する過増殖細胞の感受性を増加させる他の薬剤、例えば抗体c225を、本実施形態のある特定の態様において併用して使用することができると企図される。
キットおよび診断
別の実施形態において、治療剤および/または他の治療剤および送達剤を含むキットが提供される。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体を伴う治療を準備および/または投与するために使用される。キットは、本明細書において記述される医薬組成物のいずれかを含む1つまたは複数の密封されたバイアルを含みうる。キットは、例えば少なくとも1つの抗グリコシル化PD−L1抗体、ならびに1つまたは複数の抗glycPD−L1抗体を調製、製剤化、および/もしくは投与するための、または記述の方法の1つもしくは複数のステップを実施するための試薬を含みうる。いくつかの実施形態において、キットはまた、キットの成分と反応しない容器である適した容器手段、例えばエッペンドルフチューブ、アッセイプレート、シリンジ、ボトル、またはチューブを含みうる。容器は、滅菌可能な材料、例えばプラスチックまたはガラス製でありうる。
キットはさらに、本明細書において記載される方法の技法ステップを概要する説明書を含んでもよく、本明細書において記述されるまたは当業者に公知である技法と実質的に同じ技法に従う。説明書の情報は、コンピューターを使用して実行するとき、ディスプレイに、治療剤の薬学的有効量を送達する実際のまたはバーチャル技法を表示させる、機械読み取り可能な説明書を含むコンピューター読み取り可能な媒体であってもよい。
融合体およびコンジュゲート
本明細書において提供される抗グリコシル化PD−L1抗体またはグリコシル化PD−L1ポリペプチドはまた、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させるか、または別の部分と化学的にコンジュゲートさせることができる。いくつかの実施形態において、抗体またはポリペプチドは、アイソタイプまたはサブクラスによって変化しうるFc部分を有し、キメラもしくはハイブリッドであってよく、および/または例えばエフェクター機能を改善するために、半減期もしくは組織アクセシビリティを制御するために、生物物理学的特徴、例えば安定性を強化するために、および産物の有効性を改善するために、改変することができ、これらはコスト低減に関連しうる。融合タンパク質の構築において有用な多くの改変、およびそれらを作製するための方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Mueller, J.P. et al., 1997, Mol. Immun. 34(6):441-452;Swann, P.G., 2008, Curr. Opin. Immunol., 20:493-499;およびPresta, L.G., 2008, Curr. Opin. Immunol., 20:460-470に記述されている。いくつかの実施形態において、Fc領域は、抗体のネイティブIgG1、IgG2、またはIgG4 Fc領域である。いくつかの実施形態において、Fc領域はハイブリッド、例えばIgG2/IgG4 Fc定常領域を含むキメラである。Fc領域の改変には、Fcγ受容体および補体への結合を防止するために改変されるIgG4;1つまたは複数のFcγ受容体への結合を改善するために改変されるIgG1;エフェクター機能を最小限にするように改変されるIgG1(アミノ酸の変化);変更されたグリカンを有する/グリカンを有しない(典型的に、発現宿主を変化させることによって)IgG1;ならびにFcRnへのpH依存的結合が変更されたIgG1が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。Fc領域は、全ヒンジ領域、または抗体の全ヒンジ領域より少ない部分を含みうる。
別の実施形態は、その半減期を増加させるFcRへの結合が低減したIgG2−4ハイブリッドおよびIgG4変異体を含む。代表的なIgG2−4ハイブリッドおよびIgG4変異体は、例えば、Angal et al., 1993, Molec. Immunol., 30(1):105-108;Mueller et al., 1997, Mol. Immun., 34(6):441-452;および米国特許第6,982,323号明細書に記載され、その参照により全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、IgG1および/またはIgG2ドメインは欠失している。例えば、Angalら、同上は、IgG1およびIgG2ドメインのセリン241位がプロリンで置換されているタンパク質を記述している。いくつかの実施形態において、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100個のアミノ酸を有する融合タンパク質またはポリペプチドが企図される。
いくつかの実施形態において、抗グリコシル化PD−L1抗体またはグリコシル化PD−L1ポリペプチドを、連結または共有結合させる、または少なくとも1つの部分と複合体を形成させる。そのような部分は、診断剤または治療剤として抗体の有効性を増加させる部分でありうるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの実施形態において、部分は、造影剤、毒素、治療酵素、抗生物質、放射標識ヌクレオチド、化学療法剤などでありうる。
いくつかの実施形態において、抗glycPD−L1抗体もしくはグリコシル化ポリペプチドまたはその一部にコンジュゲートまたは融合される部分は、酵素、ホルモン、細胞表面受容体、毒素(例えば、アブリン、リシンA、シュードモナスエンテロトキシン(すなわちPE−40)、ジフテリア毒素、リシン、ゲロニン、またはヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質)、タンパク質(腫瘍壊死因子、インターフェロン(例えば、α−インターフェロン、β−インターフェロン)、神経生長因子(NGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、またはアポトーシス剤(例えば、腫瘍壊死因子−α、腫瘍壊死因子−β)、生物応答修飾剤(例えば、リンフォカイン(例えば、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」))、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、またはマクロファージコロニー刺激因子(「M−CSF」)、または増殖因子(例えば、成長ホルモン(「GH」))、細胞毒素(例えば、細胞抑制または細胞障害剤、例えばパクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロミド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE、例えばベドチン)、ならびにピューロマイシンおよびそのアナログまたはホモログ)、抗代謝薬(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル、ダカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、BiCNU(登録商標)(カルムスチン、BSNU)およびロムスチン(CCNU))、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾシン、マイトマイシンC、およびシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)、シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(これまでダウノマイシン)、およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(これまでのアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC))、抗分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、またはその組み合わせであってもよい。
特定の実施形態において、抗glycPD−L1抗体は、典型的に不安定な結合を有する化学リンカーによって、生物活性薬もしくは薬剤、例えば細胞障害剤もしくは化学療法剤、または放射性核種にコンジュゲートさせて、抗glycPD−L1抗体−薬物コンジュゲート(ADC)を産生してもよい。したがって、そのようなADCが細胞に内在化されるとき、それらは、細胞を直接殺滅するか、または細胞内の分子を標的とするように作用して、それによってアポトーシスまたは細胞死が起こる。本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体、特にモノクローナル、ヒト化、キメラ、またはヒト抗体を含むそのようなADCは、腫瘍およびがん細胞上のグリコシル化PD−L1に対する抗体の特異的標的化を、細胞障害薬のがんの細胞殺滅能と組み合わせて、それによって抗glycPD−L1抗体による処置および治療に関するさらなる利点を提供する。ADCを調製および使用する技術は当技術分野で公知であり、本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体に限定されないと意図される。(例えば、Valliere Douglass, J.F., et al., 2015, Mol. Pharm., 12(6):1774-1783;Leal, M. et al., 2014, Ann. N.Y. Acad. Sci., 1321:41-54;Panowski, S. et al., 2014, mAbs, 6(1):34-45;Beck, A. 2014, mAbs, 6(1):30-33;Behrens, C.R. et al., 2014, mAbs, 6(1):46-53;およびFlygare, J.A. et al., 2013, Chem. Biol. Drug Des., 81(1):113-121を参照されたい)。実施形態において、上記の部分のいくつかまたは全て、特に毒素および細胞毒素を、抗glycPD−L1抗体にコンジュゲートさせて、がんを処置するために有効なADCを産生してもよい。
治療的または細胞傷害性部分を抗体にコンジュゲートさせる方法は周知である。例えば、Amon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", in MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Reisfeld et al. (eds.), 1985, pp. 243-56, Alan R. Liss, Inc.);Hellstrom et al., "Antibodies For Drug Delivery", in CONTROLLED DRUG DELIVERY (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), 1987, pp. 623-53, Marcel Dekker, Inc.);Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", in MONOCLONAL ANTIBODIES '84: BIOLOGICAL AND CLINICAL APPLICATIONS, Pinchera et al. (eds.), 1985, pp. 475-506);"Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy", in MONOCLONAL ANTIBODIES FOR CANCER DETECTION AND THERAPY, Baldwin et al. (eds.), 1985, pp. 303-16, Academic Press;Thorpe et al., Immunol. Rev. 62:119-158 (1982);Carter et al., Cancer J. 14(3):154-169 (2008);Alley et al., Curr. Opin. Chem. Biol. 14(4):529-537 (2010);Carter et al., Amer. Assoc. Cancer Res. Educ. Book. 2005(1):147-154 (2005);Carter et al., Cancer J. 14(3):154-169(2008);Chari, Acc. Chem Res. 41(1):98-107 (2008);Doronina et al., Nat. Biotechnol. 21(7):778-784(2003);Ducry et al., Bioconjug Chem. 21(1):5-13(2010);Senter, Curr. Opin. Chem. Biol. 13(3):235-244 (2009);およびTeicher, Curr Cancer Drug Targets. 9(8):982-1004 (2009)を参照されたい。
いくつかの実施形態において、本明細書において記述される抗体およびポリペプチドは、精製を容易にするために、マーカー、例えばペプチドにコンジュゲートさせてもよい。いくつかの実施形態において、マーカーは、ヘキサヒスチジンペプチド、すなわちインフルエンザ血液凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する血液凝集素「HA」タグ(Wilson, I. A. et al., Cell, 37:767-778 (1984))、または「flag」タグ(Knappik, A. et al., Biotechniques 17(4):754-761 (1994))である。
他の実施形態において、本明細書において記述される抗体およびポリペプチドにコンジュゲートされる部分は、アッセイにおいて検出することができる造影剤でありうる。そのような造影剤は、酵素、補欠分子団、放射標識、非放射活性常磁性金属イオン、ハプテン、蛍光標識、リン光分子、化学発光分子、発色団、発光分子、生物発光分子、光親和性分子、または色素粒子もしくはリガンド、例えばビオチンでありうる。実施形態において、適した酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられるがこれらに限定されるわけではない;補欠分子団には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられるがこれらに限定されるわけではない;蛍光材料には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリスリンが挙げられるがこれらに限定されるわけではない;発光材料には、ルミノールが挙げられるがこれらに限定されるわけではない;生物発光材料には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられるがこれらに限定されるわけではない;放射活性材料には、ビスマス(213Bi)、炭素(14C)、クロム(51Cr)、コバルト(57Co)、フッ素(18F)、ガドリニウム(153Gd、159Gd)、ガリウム(68Ga、67Ga)、ゲルマニウム(68Ge)、ホルミウム(166Ho)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、ヨウ素(131I、125I、123I、121I)、ランタン(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、パラジウム(103Pd)、リン(32P)、プラセオジム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルテニウム(97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレン(75Se)、ストロンチウム(85Sr)、イオウ(35S)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、スズ(113Sn、117Sn)、トリチウム(3H)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb)、イットリウム(90Y)、亜鉛(65Zn);様々な陽電子射出トモグラフィーを使用して陽子を放出する金属;および非放射活性常磁性金属イオンが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
造影剤は、当技術分野で公知の技術を使用して、本明細書において記述される抗体またはポリペプチドに、直接、または中間体(例えば、当技術分野で公知のリンカー)を通して間接的にコンジュゲートさせてもよい。例えば、診断薬として使用するために、本明細書において記述される抗体および他の分子にコンジュゲートすることができる金属イオンに関して報告する米国特許第4,741,900号明細書を参照されたい。いくつかのコンジュゲーション方法は、例えば抗体に付着した有機キレート剤、例えばジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸、N−クロローp−トルエンスルホンアミド、および/またはテトラクロロ−3−6α−ジフェニルグリクリル−3を使用する金属キレート錯体の使用を伴う。モノクローナル抗体はまた、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩などのカップリング剤の存在下で酵素と反応することができる。フルオレセインマーカーとのコンジュゲートは、これらのカップリング剤の存在下で、またはイソチオシアネートとの反応によって調製することができる。
いくつかの実施形態において、本明細書において記述される抗glycPD−L1抗体またはglycPD−L1ポリペプチドを、例えば米国特許第4,676,980号明細書に記述されるように、二次抗体にコンジュゲートして、抗体ヘテロコンジュゲートを形成してもよい。そのようなヘテロコンジュゲート抗体はさらにハプテン(例えば、フルオレセイン)または細胞マーカー(例えば、限定されないが4−1−BB、B7−H4、CD4、CD8、CD14、CD25、CD27、CD40、CD68、CD163、CTLA4、GITR、LAG−3、OX40、TIM3、TIM4、TLR2、LIGHT、ICOS、B7−H3、B7−H7、B7−H7CR、CD70、CD47)、またはサイトカイン(例えば、IL−7、IL−15、IL−12、IL−4、TGF−β、IL−10、IL−17、IFNγ、Flt3、BLys))、またはケモカイン(例えば、CCL21)に結合させることができる。
いくつかの実施形態において、本明細書において記述される抗グリコシル化PD−L1抗体またはグリコシル化PD−L1ポリペプチドは、固相支持体に付着させることができ、これは、本明細書において記述される抗体もしくは抗原結合断片との結合を通して支持体に固定されている標的抗原もしくは標的抗原に結合することができる他の分子のイムノアッセイまたは精製を行うために有用でありうる。そのような固相支持体には、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
以下の実施例は、非グリコシル化PD−K1および/またはPD−L1グリコシル化変異体と比較してグリコシル化PD−L1に優先的に結合する抗glycPD−L1抗体に関連する実施形態および本明細書において記述される使用方法を実証するために含まれる。代表的な抗glycPD−L1抗体を例示する。開示の抗glycPD−L1抗体は例であり、限定でないと意図されることは当業者によって認識されるべきである。
材料および方法
細胞培養、安定なトランスフェクタント、およびトランスフェクション。細胞は全て、American Type Culture Collection(ATCC)から得た。これらの細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したDMEM/F12またはRPMI 1640培地で成長させた。MDA−MB−468、BT549、および293T細胞におけるPD−L1安定トランスフェクタントを、ピューロマイシン(InvivoGen,San Diego,CA,USA)を使用して選択した。一過性のトランスフェクションに関して、細胞に、SNリポソーム(Hu, M. C. et al., 2004, Cell, 117:225-237)およびlipofectamine(商標)2000(Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)を使用して、DNA、例えばPD−L1をコードするDNAを一過性にトランスフェクトした。
レンチウイルス感染を使用する安定な細胞の生成。細胞におけるPD−L1の発現をノックダウンするために使用されるレンチウイルスに基づくshRNA(pGIPZプラスミド)(Shen, J. et al., 2013, Nature, 497:383-387)を、shRNA/ORFコア施設(UT MD Anderson Cancer Center)から購入した。MDA−MB−231またはA431細胞におけるPD−L1タンパク質発現のノックダウン効率に基づいて、本発明者らは、この試験に関して2つのPD−L1クローンを選択した。成熟アンチセンス配列は以下の通りである:TCAATTGTCATATTGCTAC(shPD−L1 #1、配列番号34)、TTGACTCCATCTTTCTTCA(shPD−L1 #5、配列番号35)。内因性のPD−L1をノックダウンして同時にFlag−PD−L1を再構成するために、pGIPZ−shPD−L1/Flag−PD−L1二重発現構築物を使用して、本発明者らは、内因性のPD−L1ノックダウンおよびFlag−PD−L1 WTまたは4NQ変異体発現細胞株を確立した。PD−L1およびFlag−PD−L1に関するレンチウイルス発現shRNAを生成するために、本発明者らは、FuGENE6トランスフェクション試薬によって、293T細胞にpGIPZ非サイレンス(ベクター対照ウイルスに関して)、pGIPZ−shPD−L1、またはpGIPZ−shPD−L1/PD−L1 WT、またはpGIPZ−shPD−L1/PD−L1 4NQ変異体をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、培地を交換した後、培地を24時間間隔で収集した。収集したレンチウイルスを含む培地を遠心分離して、細胞破片を除去し、0.45μmフィルターを通して濾過した。細胞を、注射の12時間前に50%コンフルエンスで播種して、培地を、レンチウイルスを含む培地に交換した。24時間感染後、培地を新しい培地に交換して、感染した細胞を1μg/mlピューロマイシン(InvivoGen)によって選択した。
プラスミド。ヒトPD−L1クローンをshRNA/ORFコア施設(UT MD Anderson Cancer Center,Houston,TX,USA)から得て、pCDHレンチウイルス発現ベクターにクローニングして、公知の分子生物学技術を使用してPD−L1−FlagまたはPD−L1−Myc発現細胞株を確立した。加えてヒトPD−L1核酸を、一過性のトランスフェクションのためにpEGFP−N1およびpCMV−HA哺乳動物細胞発現ベクターにクローニングした。pCDH/PD−L1−Flag発現ベクターを鋳型として使用して、以下の表4に示されるプライマーを使用して部位特異的変異誘発を実施することによって、PD−L1−Flag NQ変異体N35Q、N192Q、N200Q、N219Q、および4NQ(N35Q/N192Q/N200Q/N219Q)を生成した。内因性のPD−L1をノックダウンして同時にFlag−PD−L1を再構成するために、pGIPZ−shPD−L1/Flag−PD−L1二重発現構築物を作製するために、PD−L1 mRNAの3−UTR領域を標的とするshPD−L1構築物(shPD−L1 #5)を選択した。Flag−PD−L1野生型(WT)または4NQ変異体DNAを、内因性のPD−L1に対して特異的なshRNAを発現するpGIPZ−shPD−L1(Thermo Scientific,Pittsburgh,PA,USA)にクローニングした。全ての構築物を酵素消化およびDNAシークエンシングを使用して確認した。
mRNAの発現を測定するためにqRT−PCRアッセイを実施した(Shen et al., 2013, Nature, 497:383-7;およびChang et al., 2011, Nature cell biology, 13:317-23)(以下の表5を参照されたい)。細胞をPBSで2回洗浄して、QIAzol中で直ちに溶解した。溶解した試料を、RNeasy Miniキット(Qiagen,Hilden,Germany)を使用して総RNA抽出に供した。mRNAの発現を測定するために、ランダムヘキサマー(Life Technologies)を使用してSuperScriptIII第一鎖cDNA合成システムによって、製造元の説明書に従って精製総RNA 1μgからcDNAを合成した。リアルタイムPCR機器(iQ5,BioRad,Hercules,CA,USA)を使用してqPCRを実施した。データ分析は全て、比較Ct法を使用して実施した。結果を最初に、内部対照β−アクチンmRNAに対して標準化した。
抗体および化学物質。以下の抗体を実施例に記述される実験に使用した:Flag(F3165;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA);Myc(11667203001;Roche Diagnostics,Indianapolis,IN,USA);HA(11666606001;Roche Diagnostics);PD−L1(13684;Cell Signaling Technology,Danvers,MA,USA);PD−L1(329702;BioLegend,San Diego,CA,USA,);PD−L1(GTX117446;GeneTex,Irvine,CA,USA);PD−L1(AF156;R&DSystems,Minneapolis,MN,USA);PD−1(ab52587;Abcam,Cambridge,MA,USA);α−チューブリン(B−5−1−2;Sigma−Aldrich);およびβ−アクチン(A2228;Sigma−Aldrich)。
イムノブロット分析、免疫組織化学、および免疫沈降。イムノブロット分析は既に記述されるように実施した(Lim et al., 2008, Gastroenterology, 135:2128-2140;およびLee et al., 2007, Cell, 130:440-455)。画像獲得およびバンド強度の定量を、Odyssey(登録商標)赤外線イメージングシステム(LI−COR Biosciences,Lincoln,NE,USA)を使用して実施した。免疫沈降に関して、細胞を緩衝液(50mM Tris・HCl、pH 8.0、150mM NaCl、5mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、および0.5%NonidetP−40(NP−40))中で溶解して、16,000×gで30分間遠心分離して、破片を除去した。きれいにした溶解物を、抗体による免疫沈降に供した。免疫細胞化学に関して、細胞を4%パラホルムアルデヒド中、室温で15分間固定して5%TritonX−100中で5分間透過性にした後、一次抗体を使用して染色した。使用した二次抗体は、抗マウスAlexa Fluor488または594色素コンジュゲートおよび/または抗ウサギAlexaFluor488または594色素コンジュゲート(Life Technologies)であった。核を4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPIblue)(Life Technologies)によって染色した。封入後、多光子共焦点レーザー走査型顕微鏡(Carl Zeiss,Thornwood,NY,USA)を使用して、細胞を可視化した。
PD−L1およびPD−1(PD−L1/PD−1)相互作用アッセイ。PD−1タンパク質とPD−L1タンパク質の相互作用を測定するために、細胞を4%パラホルムアルデヒド中、室温で15分間固定した後、組み換えヒトPD−L1 Fcキメラタンパク質(R&DSystems)と共に1時間インキュベートした。使用した二次抗体は抗ヒトAlexa Fluor488色素コンジュゲート(Life Technologies)であった。核を4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPIblue)(Life Technologies)によって染色した。Alexa Fluor488色素の蛍光強度を、マイクロプレートリーダーSynergy Neo(BioTeK,Winooski,VT,USA)を使用して測定して、総タンパク質の量によって強度に対して標準化した。封入後、画像を得るために、共焦点レーザー走査型顕微鏡(Carl Zeiss)を使用して、細胞を可視化した。
PD−L1のグリコシル化分析。PD−L1タンパク質のグリコシル化を確認するために、細胞溶解物を、酵素PNGアーゼF、EndoH、O−グリコシダーゼ(New England BioLabs,Ipswich,MA,USA)によって製造元によって記述されるように処置した。グリコシル化PD−L1タンパク質を染色するために、精製PD−L1タンパク質を、製造元によって説明されるように糖タンパク質染色キット(Peirce/Thermo Scientific)を使用して染色した。
N−グリコペプチドの同定。精製HisタグPD−L1タンパク質を、10mMジチオスレイトール(DTT)によって37℃で1時間還元し、25mM重炭酸アンモニウム緩衝液中で50mMヨードアセトアミドによって、室温の暗所で1時間アルキル化した後、シークエンシング等級のトリプシンによって、酵素対基質比1:50で、37℃で終夜処置した。消化された産物をギ酸で希釈して、最終濃度0.1%を得て、ZipTip C118(Millipore)によってさらに洗浄した後、LC−MS/MS分析を行った。LC−MS/MSデータを、IBCのAcademia Sinica Mass Spectrometry Facilityで得た。ペプチド混合物を、トラップカラムAcclaim PepMap100(内径2cm×100μm)(Dionex)を備えたUltiMate3000 RSLCナノシステム(Dionex)にカップリングされたOrbitrap Fusion Tribrid(Thermo Scientific)においてナノスプレーLC−MS/MSによって分析した。ペプチド混合物を、カラム内径25cm×75μmのAcclaim PepMap RSLCにロードして、5%〜35%溶媒B(0.1%ギ酸を含む100%アセトニトリル)の勾配を使用して流速500nL/分で60分間分離した。溶媒Aは0.1%ギ酸水溶液であった。CIDモードに対応するHCD下でMSおよびMS/MSデータ獲得に使用したパラメータは:サイクル時間3秒のトップスピードモード;FTMS:スキャン範囲(m/z)=400〜2000;解像度=120K;AGC標的=2×105;経過時間(ms)=50;FTMSn(HCD):単離モード=四重極;単離ウィンドウ=1.6;衝突エネルギー(%)=段階的衝突エネルギー5%で30;解像度=30K;AGCターゲット=5×104;経過時間(ms)=60;ITMSn(CID);単離モード:四重極;単離ウィンドウ=1.6;衝突エネルギー(%)=30;AGCターゲット=1×104であった。生データをProteome Discoverer 1.4によってマスコット汎用フォーマット(MGF)に変換した。グリコペプチドの同定に関して、HCD MS2データを、Byonic(バージョン2.0−25)を使用して、以下の検索パラメータによって検索した:ペプチド公差=2ppm;断片公差=6ppm;切れ残り=1;修飾:カルバミドメチルシステイン(fixed)、メチオニン酸化(common2)、Nでの脱アミノ化(rare1)。Byonicによって示唆されるグリコペプチドのヒットを、HCDおよびCID MS2結果を組み合わせることによって手動でさらにチェックした。
統計分析。棒グラフのデータは、3回の独立した実験の標準偏差と共に無処置または対照群と比較した倍率変化を意味する。統計分析は、SPSS(バージョン、20 SPSS、Chicago,IL)を使用して実施した。タンパク質発現と、BLBCサブセットの間の相関を、Spearman相関およびMan Whitney検定を使用して分析した。実験データに関してスチューデントのt検定を実施した。P値<0.05は統計学的に有意であると考えられた。
PD−L1タンパク質発現分析
PD−L1の基礎となるメカニズムを明らかにして解明するために、PD−L1のタンパク質発現を、ヒト腫瘍組織およびがん細胞株において調べた。図1Aおよび1B、ならびに図2A〜2Dは、ウェスタンブロット分析による肺がん、乳がん、結腸がん、および卵巣がん細胞系におけるタンパク質発現を示す。図3Aは、異なるPD−L1抗体による細胞中のPD−L1タンパク質の結合を示す。大部分のPD−L1タンパク質が約45kDa(黒丸)で検出されたが、より小さい分画が33kDa(黒色の矢印の先)にも出現することが観察された。コード配列(shPD−L1 #1)または3’UTR(shPD−L1 #5)のいずれかを標的とするレンチウイルスの低分子ヘアピンRNA(shRNA)によるPD−L1のノックダウンにより、PD−L1の33kDaおよび45kDaの両方の形態の発現がダウンレギュレートされた。PD−L1を再構成すると、shPD−L1 #5クローンでは両方の形態の発現が回復した(図1C、図3Cはベクターの設計を示す)。これらの結果は、ウェスタンブロットにおける両方のバンドがPD−L1タンパク質であり、PD−L1のより高分子量形態が翻訳後修飾を示すことを示した。
グリコシル化タンパク質は、しばしば、PD−L1の高分子量(約45kDa)に関して観察されるように、ウェスタンブロットにおいて不均一なパターンを生じる。PD−L1に関して観察されたグリコシル化パターンがグリコシル化形態に対応するか否かを試験するために、MDA−MB−231およびHeLa細胞を、組み換えグリコシダーゼ(ペプチド−N−グリコシダーゼF;PNGアーゼF)によって処置してN−グリカン構造を除去した後、ウェスタンブロット分析に供した。図3Dに示されるように、PNGアーゼF処置によって、45kDa PD−L1の有意な部分がPD−L1の33kDa形態に還元された。精製HisタグPD−L1では、一貫してグリカン構造の陽性染色が観察されたが、PNGアーゼFの存在下では観察されなかった(図1D)。これらの結果は、より高分子量のPD−L1が、実際にPD−L1タンパク質のグリコシル化形態であることを実証している。
細胞におけるPD−L1タンパク質の発現を要約するために、タンパク質の内因性の発現を模倣するために、様々な過剰発現構築物を作製した。N−末端シグナリングペプチドでの起こりうる切断を回避するために、様々なタグ配列をN−またはC−末端のいずれかに融合させた(図4Aおよび4B、ブロットの上)。内因性のPD−L1発現分析からの結果と同様に、全てのGFP−、HA−、Flag−、またはMyc−タグPD−L1の一過性のトランスフェクションにより、ウェスタンブロット上で分子量がその実際の大きさから約15kDaシフトした(図1Eおよび4Aおよび4B)。PD−L1タンパク質上のN−グリカン構造の全てを除去するPNGアーゼF処置とは対照的に、組み換えグリコシダーゼ、エンドグリコシダーゼH(EndoH)の添加は、PD−L1グリコシル化を部分的に低減させたに過ぎず、PD−L1には主にN−連結グリカン構造の複合体型(高いマンノースおよびハイブリッド形態の両方を含む)が存在することを示唆している(Stanley, P., 2011, Cold Spring Harbor perspectives in biology, 3)。さらに、N−連結グリコシル化阻害剤であるツニカマイシン(TM)によって細胞を処置したとき、PD−L1のグリコシル化は完全に阻害された(図1Fおよび4A〜4D)が、O−グリコシダーゼ(図4E)では阻害されなかった。併せると、これらの結果は、PD−L1が、試験した細胞において広範囲にN−連結グリコシル化されることを示している(Heifetz, A., et al., 1979, Biochemistry, 18:2186-2192)。
グリコシル化分析
2つのPD−L1特異的抗体(抗PD−L1および抗hB7−H1)を使用するウェスタンブロット分析により、PD−L1グリコシル化がその細胞外ドメイン(ECD、抗hB7−H1によって認識される)で起こるが、その細胞内ドメイン(ICD、抗PD−L1によって認識される)では起こらないことが示された(図1Fおよび4C)。グリコシル化部位を正確に示すために、異なる種のPD−L1アミノ酸配列の配列アライメントを実施して、進化的に保存されたNXTモチーフ、コンセンサスN−グリコシル化認識配列に関して検索した(Schwarz, F. et al., 2011, Current opinion in structural biology, 21, 576-582)。初期の予測と一貫して(Cheng et al., 2013, The Journal of biological chemistry, 288:11771-85;およびVigdorovich et al., 2013, Structure, 21:707-17)、4つのNXTモチーフが同定された(図1Gおよび図5Aおよび5B)。これらの配列が実際にグリコシル化されたか否かを確認するために、精製ヒトPD−L1のトリプシンペプチドをナノLC−MS/MSによって分析した。複合体型のN−グリカンを有するグリコペプチドを、4つのN−グリコシル化部位のそれぞれに関して同定し(図6A〜6H)、EndoH処置に対する見かけの抵抗性と一貫した(図1E)。一連のアスパラギン(N)からグルタミン(Q)への置換を作製して、PD−L1タンパク質上の特異的グリコシル化部位を決定した。4つ全ての変異体N35Q、N192Q、N200Q、およびN219Qが、WT PD−L1と比較してある程度のグリコシル化の低減を示した(図1H、レーン2、3、4、および5)。グリコシル化の検出可能な差は、3つの非NXT NQ PD−L1変異体に関して観察されなかった(図1H、レーン11、12、および13)。加えて、PD−L1グリコシル化は、4つ全てのアスパラギンがグルタミンに変異したPD−L1 4NQ変種において、45kDaでのグリコシル化形態に対応するシグナルが存在しないことによって示されるように完全に消失した(図1H、レーン10(4NQ)およびレーン14(WT))。PD−1/PD−L1複合体の結晶構造(Lin, D.Y. et al., 2008, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 105, 3011-3016)に基づくと、PD−L1のこれら4つのグリコシル化部位(N35、N192、N200、およびN219)は、タンパク質の表面に露出する。PD−L1グリコシル化部位の変異(PD−L1 4NQ)は、予測に基づいて全体的な構造に影響を及ぼさなかった。これらの結果は、PD−L1が細胞においてもっぱらN−グリコシル化糖タンパク質として存在し、4つ全てのNXTモチーフがグリコシル化されていることを示唆している。
PD−L1糖表現型の機能性
PD−L1 WTおよび4NQ変異体は、内因性のPD−L1欠失MDA−MB−468およびBT549細胞において安定に発現された。これらの細胞株を使用して、PD−1およびPD−L1結合親和性を分析した。示されるように、グリコシル化変種PD−L1 4NQとPD−1との会合は減少した(図7A)。In vitro結合実験によりさらに、PD−L1とPD−1との会合にとってグリコシル化が必要であることが証明された(図7B)。T細胞媒介腫瘍細胞殺滅を、BT549 PD−L1 WTおよびPD−L1 4NQ発現安定細胞株をヒト初代培養T細胞と同時培養することによって、in vitroで測定した(低速度撮影顕微鏡)。PD−1結合の喪失と一貫して、PD−L1 4NQ安定細胞株は、より多くのがん細胞のT細胞媒介殺滅を示した(図7C)。加えて、PD−L1の免疫抑制機能を、PD−L1 WTまたはPD−L1 4NQ発現4T1細胞のいずれかを投与したBALB/cマウスにおいて腫瘍の成長を測定する、同系の4T1マウスモデルにおいてin vivoで測定した。PD−L1 WTを発現する細胞を有するマウスと比較して、PD−L1 4NQを発現する細胞を有するマウスは、低減された腫瘍の大きさおよびより活性化された細胞傷害性T細胞を示した(図7Dおよび7E)。併せると、これらのデータは、PD−L1グリコシル化の喪失が、PD−1とのその相互作用を障害し、PD−1/PD−L1相互作用による腫瘍細胞のT細胞による免疫監視逃避能を障害することを証明している。したがって、PD−L1がグリコシル化されていない、または異常にグリコシル化されている腫瘍細胞は、機能的なエフェクターT細胞による殺滅に対して感受性がある標的を提供する。その膜発現PD−L1のグリコシル化障害により、腫瘍細胞によるT細胞免疫監視の逃避を防止または遮断するこのメカニズムは、PD−L1糖表現型の完全性が、その免疫抑制機能にとって必要であることをさらに裏付ける。
グリコシル化PD−L1結合モノクローナル抗体の産生およびスクリーニング
グリコシル化ヒトPD−L1に対して作製されたモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、標準化プロトコールに従って、SP2/0マウス黒色腫細胞と、ヒトPD−L1免疫BALB/cマウス(n=6)から単離した脾細胞との融合によって得た(Antibody Solution,Inc)。融合前に、免疫したマウスの血清を、FACS分析を使用してPD−L1免疫原への結合に関して確認した。モノクローナル抗体(MAb)産生ハイブリドーマを作製した。MAbの全てのアイソタイプはIgG1であった。抗体を産生するハイブリドーマを、特異性に関して再度試験した。
非グリコシル化PD−L1と比較してグリコシル化PD−L1抗原に対して特異的であり、優先的に結合する抗glycPD−L1 MAb(すなわち、グリコシル化PD−L1特異的MAb)を同定するために、異なるタイプのアッセイを実施した。グリコシル化PD−L1へのMAbの優先的結合を検出するスクリーニングアッセイにおいて、FACS分析による蛍光強度の測定に基づいて(細胞膜結合タンパク質を使用する)、抗体の結合を決定した。例として、BT549ヒト乳がん細胞株を使用して、アッセイを実施した。実例として、PD−L1 WT(完全にグリコシル化)を過剰発現するBT549細胞を、通常の技法に従ってビオチンによって標識した後、PD−L1 4NQ(完全な非グリコシル化PD−L1変種)を過剰発現するBT549細胞と混合した。混合した細胞を、抗PD−L1抗体、例えば抗glycPD−L1抗体と共にインキュベートして、検出剤としてのFITCにコンジュゲートした二次抗体と共にさらにインキュベートした。洗浄後、蛍光強度(測定蛍光強度、MFI)をFACS/フローサイトメトリー分析によって測定して、膜結合PD−L1 WT(細胞上)または4NQ PD−L1(細胞上)への抗PD−L1抗体の相対的結合を評価した。4NQ PD−L1と比較してWT PD−L1において有意により高いMFIを示した抗体を、さらなる評価のために選択した。STM004およびSTM115 MAbの蛍光結合分析の結果を、以下の表6に示し、これは、野生型(グリコシル化)PD−L1を発現するBT549細胞(BT549PD−L1WT細胞)への抗体結合に対するMFI値を、変種(非グリコシル化4NQ)PD−L1を発現するBT549細胞(BT549PD−L1 4NQ細胞)への抗体結合に対するMFI値と比較して示す。表6に示す実験結果は、BT549PD−L1 4NQ細胞(非グリコシル化PD−L1発現細胞)と比較してBT549PD−L1 WT細胞(グリコシル化PD−L1発現細胞)に対するSTM004 MAbの結合のMFI値がおよそ5倍高いことを示す。BT549PD−L1 4NQ細胞と比較して、BT549PD−L1 WTへのSTM115の結合に対するMFI値は、2倍より高いと決定された。
結合分析に基づき、42個の候補MAb産生ハイブリドーマを選択して、ADCF培地中で成長させ、モノクローナル抗体を含むその上清を濃縮して精製した。
いくつかの例において、精製MAbをさらに、生細胞イメージングアッセイIncucyte(商標)(Essen Bioscience)を使用して、そのPD−L1とPD−1との間の相互作用(PD−L1/PD−1相互作用)の中和または阻害能に関して試験した。このアッセイに関して、PD−L1を発現するBT−549細胞を、抗ヒトPD−L1抗体および蛍光標識PD−1−Fc融合タンパク質と共にインキュベートした。リガンドおよび受容体結合を、製造元の説明書に従ってIncycyte(商標)Zoomによって毎時間定量した。このアッセイに基づいて、試験した42個のMAbのうち、15個のMAbは、PD−L1のPD−1への結合を完全に遮断した。強い遮断有効性を示す15個のMAbのいくつかは、非グリコシル化PD−L1にもある程度結合することを示した。
別のアッセイにおいて、グリコシル化ヒトPD−L1タンパク質および非グリコシル化PD−L1、すなわちPNGアーゼFによって処置したPD−L1タンパク質の両方を、固相表面にコーティングして、PD−L1抗原に対するMAbの結合親和性に関して試験した。「PD−L1抗原」は、「PD−L1タンパク質」と同義であると理解される。12個のMAbが、非グリコシル化PD−L1タンパク質(PNGアーゼF処置タンパク質)と比較してグリコシル化PD−L1タンパク質と高親和性の相互作用を示した。さらなる特異性分析に関して、選択されたMAbをウェスタンブロットおよびFACSフローサイトメトリー分析によって分析した。様々な分析から、STM004およびSTM115などのMAbが、PD−L1の非グリコシル化形態と比較してPD−L1のグリコシル化形態に特異的に結合することが見出され、このことは、グリコシル化PD−L1抗原に関するこれらのMAbの特異性をさらに確認した。
特異的グリコシル化PD−L1結合抗体の結合領域の同定
グリコシル化PD−L1に結合するモノクローナル抗glycPD−L1抗体の領域を同定するために、野生型(グリコシル化)PD−L1(PD−L1 WT)およびグリコシル化変種タンパク質N35/3NQ、N192/3NQ、N200/3NQ、およびN219/3NQ(35、192、200、または219位でのグリコシル化部位の1つが、その位置での野生型アスパラギン(N)であるが、他の3つの位置がグルタミン(Q)に変異しており、そのためグリコシル化されていない)(図8A)を、PD−L1ノックダウンBT549細胞において過剰発現させた。ウェスタンブロットによって決定されるように、いくつかのMAbは他のPD−L1変異体と比較してより高い結合レベルを有する特定のPD−L1変異体を認識し、そのようなMAbが部位特異的であることを証明した。例えば、MAb STM004は、N35/3NQ変異体を認識して結合したが、N192/3NQ、N200/3NQ、またはN219/3Q変異体には結合せず、この抗体がPD−L1のN35領域に結合することを証明した(図8B)。さらに、肝臓がん細胞溶解物を使用するウェスタンブロット分析により、STM004などの代表的な抗glycPD−L1抗体に関してPD−L1グリコシル化の差別的パターンが明らかとなった(図8C)。
これらのMAbの組織病理学的関連性を、免疫組織化学(IHC)染色によってさらに証明した。サイトスピン染色分析において、抗glycPD−L1モノクローナル抗体は、一貫してPD−L1タンパク質のグリコシル化タンパク質を認識して結合したが、非グリコシル化PD−L1タンパク質には結合しなかった。ヒトトリプルネガティブ乳がん患者の試料において、抗glycPD−L1モノクローナル抗体はまた、膜および細胞質染色を1:30の比率で示した。これらのデータは、抗glycPD−L1モノクローナル抗体が、バイオマーカー分析において、バイオマーカーとしてグリコシル化PD−L1の検出のために使用することができることを証明した。
グリコシル化PD−L1結合抗体のエピトープマッピング
マウスモノクローナル抗glycPD−L1抗体STM004のエピトープマッピングを、CovalX AG社(Switzerland)が実施した。抗glycPD−L1抗体全般、特にSTM004 MAbによって認識されるエピトープの性質、例えば線形またはコンフォメーションであるかを決定するために、試験を実施して、標的抗原としてのPD−L1タンパク質と抗glycPD−L1抗体との相互作用が、PD−L1抗原のタンパク質分解によって生成される非構造化ペプチドによって阻害されうるか否かを評価した。PD−L1抗原の十分なタンパク質分解によって生成されるペプチドが、抗体による抗原の結合を阻害することができれば、相互作用はコンフォメーションに基づいておらず、エピトープは線形である。エピトープの配列を決定するためには、抗原の配列から生成された重なり合うペプチドのバンクによる単純な競合アッセイで十分である。あるいは、PD−L1抗原の十分なタンパク質分解によって生成されたペプチドが抗体による抗原の結合を阻害することができなければ、標的のコンフォメーションは、相互作用にとって必要であると決定され、エピトープはコンフォメーションであり、例えば連続(ループなどの空間的コンフォメーションで)または不連続(三次元構造により)である。コンフォメーションエピトープへの結合をさらに解明するために、共有結合標識、ペプチドマッピング、および高解像度質量分析も同様に使用した。
競合アッセイは、PD−L1抗原から生成されたペプチドが本明細書において記述される抗glycPD−L1モノクローナル抗体、例えば代表的なMAb STM004のPD−L1抗原への結合を阻害しなかったことを示し、これらの抗体および代表的なSTM004 MAbによって認識されるPD−L1のエピトープ領域が、コンフォメーションであって、線形ではないことを確認した。化学的クロスリンク、高質量のMALDI質量分析およびnLC−Orbitrap質量分析を使用して、PD−L1タンパク質と抗体との相互作用表面を特徴付けした。PD−L1のペプシンタンパク質分解、得られたペプシン生成PD−L1ペプチドと抗体およびインタクトPD−L1との混合物を使用する競合アッセイ、ならびに公知の方法による抗原/抗体相互作用の分析により、PD−L1ペプチドによる、STM004モノクローナル抗体のPD−L1抗原への結合の検出可能な阻害は示されなかった。したがって、抗PD−L1 MAb STM004によって認識されるPD−L1のエピトープは、コンフォメーションであって、線形ではないと決定された。
STM004は、配列番号1の残基48〜78位内のY56、K62、およびK75位(配列番号1の付番)でアミノ酸残基に接触するPD−L1上のエピトープに結合することが決定された。
STM115は、配列番号1の残基61〜78位内のK62、H69、およびK75位(配列番号1の付番)のアミノ酸残基に接触するPD−L1上のエピトープに結合することが決定された。
T細胞殺滅アッセイ
T細胞殺滅活性を利用して、本明細書において記述される抗glycPD−L1モノクローナル抗体が腫瘍細胞に及ぼす細胞傷害活性を決定した。従ったプロトコールは以下のとおりである;0日目、グリコシル化野生型PD−L1(PD−L1 WT)発現BT549 RFP標的細胞培養物から血清含有培地を除去して、PBSで丁寧に2回すすいだ。細胞を回収して計数した。細胞浮遊液を遠心分離(1000RPM、4分間)して、細胞沈降物を培養培地に細胞50,000個/mlで浮遊させた。手動のマルチチャンネルピペットを使用して、細胞を平底マイクロプレートのあらゆるウェルに播種した(100μL/ウェル、すなわち、細胞5000個/ウェル)。プレートを室温で30分間放置した後、IncuCyteZOOM(登録商標)生細胞イメージング装置の中に入れて、20分間平衡にした後、初回スキャンを計画した。初回スキャンの開始直後から3時間ごとに、24時間の繰り返しスキャン(10倍対物レンズ)を計画した。細胞のコンフルエンスを、所望のコンフルエンス(例えば20%)が達成されるまで、続く18時間で(終夜)モニターした。
翌朝、アッセイの日(すなわち、1日目)、IncuCyte(商標)Caspase3/7アポトーシス緑色蛍光検出試薬(Essen Bioscience 4440)の10μM溶液を、アッセイ培地(4×最終アッセイ濃度2.5μM)中で調製して、インキュベータにおいて37℃に加温した。抗CD3抗体(100ng/mL)+IL−2(10ng/mL)T細胞活性化剤処置を、アッセイ培地中で4×最終アッセイ濃度で調製して、37℃に加温した。試験MAbも同様に調製した。標的細胞プレートをインキュベータから取り出して、細胞層を傷つけないように注意して培地を吸引した。マルチチャンネルピペットを使用して、加温したカスパーゼ3/7溶液25μLを各ウェルに移した。その後、加温した抗CD3抗体+IL−2 25μLおよび抗体を、細胞プレートの適切なウェルの中に入れた。エフェクター細胞(PBMCまたは総T細胞)を含む追加の培地50μLを添加して、総アッセイ容積を100μLにした。脱気した細胞プレートをIncuCyteZOOM(登録商標)機器の中に入れて、20分間平衡にして、初回スキャンを行った。24時間の繰り返しスキャンを2〜3時間毎に5日まで計画した。(対物レンズ10倍;容器のタイプ:Corning3596;スキャンモード:標準;スキャンパターン:ウェルあたり画像2個;チャンネル:フェーズ+「緑色」(+NucLight(商標)赤色標的細胞を使用する場合は+「赤色」)。
分析に関して、標的細胞アポトーシスを、視野における「大きい」緑色蛍光オブジェクト(核)の総数を経時的に計数することによってIncuCyte(商標)ソフトウェアにおいて定量した。標的細胞の増殖は、赤色細胞核の数に対応する、赤色オブジェクトの数から測定した。データは1mm2あたりの蛍光オブジェクト数として表記した。データは、本明細書において記述した抗体、具体的にSTM004の添加が腫瘍細胞殺滅を増強することを示した(図9)。
結合アッセイ
本明細書において記述される抗glycPD−L1モノクローナル抗体がPD−1とPD−L1との相互作用を特異的に阻害するか否かを決定するために、以下の結合アッセイを実施した。アッセイの0日目に、血清含有培地をPD−L1発現BT549標的細胞培養物から採取して、D−PBSによって丁寧に2回すすいだ。細胞を採取して計数した。細胞浮遊液を遠心分離(1000RPM、5分間)して、細胞沈降物を細胞50,000個/mlで培養培地に浮遊させた。手動でのマルチチャンネルピペットを使用して、細胞(100μL/ウェル、すなわち、細胞5000個/ウェル)を平底マイクロプレートのあらゆるウェルに播種した。プレートを室温で30分間放置した。その後、細胞を含むプレートを、5%CO2インキュベータにおいて終夜インキュベートした。
アッセイの1日目に(すなわち翌朝)、1μg/mL PD−1/Fcおよび1:400倍希釈のAlexa Fluor488ヤギ抗ヒトIgGを含む培養培地を調製して、インキュベータ内で37℃に加温した。細胞プレートをインキュベータから取り出して、細胞層を傷つけないように注意して培地を吸引した。試験抗体50μLを、用量依存的に各ウェルに添加した。PD−1/FcおよびAlex Fluor488ヤギ抗ヒトIgGを含む培養培地50μLをあらゆるウェルに添加した。細胞プレートをIncuCyteZOOM(登録商標)機器の中に入れて、20分間平衡にして、初回スキャンを行った。24時間の自動繰り返しスキャンを1〜2時間毎に24時間まで計画した。対物レンズ10倍;容器のタイプ:Corning3596;スキャンモード:標準;スキャンパターン:ウェルあたり画像4個;チャンネル:フェーズ+「緑色」。
図10Aは、代表的なMAb STM004が、PD−L1を発現する細胞へのPD−L1/Fcの結合を用量依存的に阻害したことを示している。対照アッセイの結果を図10Bに示す。
本明細書において開示され特許請求される方法の全ては、本開示に照らして不当な実験を行うことなく、作製および実行することができる。組成物および方法は、実施形態および好ましい実施形態に関して記述してきたが、記述の本発明の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書において記述される方法およびステップに、または方法のステップの順序に変更を適用してもよいことは、当業者に明白である。より具体的に、化学的および物理的に関連する特定の薬剤を、本明細書において記述される薬剤の代わりに置換してもよく、それでも同じまたは類似の結果が得られることは明白である。当業者に明白であるそのような全ての類似の置換および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義される記述の実施形態の精神、範囲、および概念に含まれると考えられる。
本明細書において引用した全ての特許、刊行された特許出願、およびその他の刊行物は、参照により全体が本出願に組み込まれる。
本発明は次の実施態様を含む。
[1]非グリコシル化PD−L1と比較してグリコシル化PD−L1に選択的に結合して、グリコシル化PD−L1のPD−1への結合を阻害する単離抗体。
[2]組み換えにより改変された、キメラ、ヒト化、または完全ヒト抗体である、上記[1]に記載の単離抗体。
[3]非グリコシル化PD−L1と比較して、配列番号1における35、192、200、および/または219位のアミノ酸を含むPD−L1タンパク質の領域内のアミノ酸残基に選択的に結合する、上記[1]または[2]に記載の単離抗体。
[4]非グリコシル化PD−L1への抗体結合によって示されるK d の半分より小さいK d でグリコシル化PD−L1に結合する、上記[1]から[3]のいずれかに記載の単離抗体。
[5]非グリコシル化PD−L1への抗体結合によって示されるK d の少なくとも10倍小さいK d でグリコシル化PD−L1に結合する、上記[4]に記載の単離抗体。
[6]5〜20nMの親和性でグリコシル化PD−L1に結合する、上記[1]から[5]のいずれかに記載の単離抗体。
[7]前記抗体が、蛍光標識によって直接または間接的に検出可能であり、細胞フローサイトメトリーアッセイにおいて非グリコシル化PD−L1を発現する細胞への抗体結合によって示される平均蛍光強度(MFI)より2倍から10倍高いMFIでグリコシル化PD−L1を発現する細胞に優先的に結合する、上記[1]から[3]のいずれかに記載の単離抗体。
[8]非グリコシル化PD−L1を発現する細胞への抗体結合によって示されるMFIより3倍〜5倍、またはそれより高いMFIでグリコシル化PD−L1を発現する細胞に優先的に結合する、上記[7]に記載の単離抗体。
[9]配列番号1の56、62、69、および75位のアミノ酸の少なくとも1つを含むグリコシル化PD−L1のエピトープに特異的に結合する、上記[1]から[8]のいずれかに記載の単離抗体。
[10]前記エピトープが、配列番号1のL48〜H78の領域内のアミノ酸を含む、上記[9]に記載の単離抗体。
[11]前記エピトープが、配列番号1のD61〜H78の領域内のアミノ酸を含む、上記[9]に記載の単離抗体。
[12]モノクローナル抗体(MAb)STM004またはMAb STM115によって認識されるPD−L1のエピトープに特異的に結合する、上記[1]から[8]のいずれかに記載の単離抗体。
[13]グリコシル化PD−L1への特異的結合に関して、MAb STM004またはMAb STM115と競合するかまたは交叉競合する、上記[1]から[8]のいずれかに記載の単離抗体。
[14]MAb STM004またはMAb STM115の重鎖可変(V H )ドメインまたは軽鎖可変(V L )ドメインを含む、上記[1]から[8]のいずれかに記載の単離抗体。
[15]MAb STM004またはMAb STM115の重鎖CDR1〜3および/または軽鎖CDR1〜3を含む、上記[1]から[8]のいずれかに記載の単離抗体。
[16]V H ドメインが、配列番号3または配列番号19のアミノ酸配列を有する、上記[1]から[8]のいずれかに記載の単離抗体。
[17]V L ドメインが、配列番号11または配列番号27のアミノ酸配列を有する、上記[1]から[8]または[16]のいずれかに記載の単離抗体。
[18]V H ドメインが配列番号3のアミノ酸配列を有し、V L が配列番号11のアミノ酸配列を有する、上記[1]から[8]のいずれかに記載の単離抗体。
[19]V H ドメインが配列番号19のアミノ酸配列を有し、V L ドメインが配列番号27のアミノ酸配列を有する、上記[1]から[8]のいずれかに記載の単離抗体。
[20]V H ドメインが、配列番号3または配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、上記[1]から[8]または[17]のいずれかに記載の単離抗体。
[21]V L ドメインが、配列番号11または配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、上記[1]から[8]、[16]または[20]のいずれかに記載の単離抗体。
[22]ヒト定常ドメインを含む、上記[14]または[16]から[21]のいずれかに記載の単離抗体。
[23]配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR H1、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むV H ドメイン、または配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR H1、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号9のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むV H ドメインを有する、上記[1]から[8]のいずれかに記載の単離抗体。
[24]配列番号12のアミノ酸配列を有するCDR L1、配列番号14のアミノ酸配列を有するCDR L2、および配列番号16のアミノ酸配列を有するCDR L3を含むV L ドメインを有する、上記[1]から[8]または[23]のいずれかに記載の単離抗体。
[25]配列番号20のアミノ酸配列を有するCDR H1、配列番号22のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号24のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むV H ドメイン、または配列番号21のアミノ酸配列を有するCDR H1、配列番号23のアミノ酸配列を有するCDR H2、および配列番号25のアミノ酸配列を有するCDR H3を含むV H ドメインを有する、上記[1]から[8]のいずれかに記載の単離抗体。
[26]配列番号28のアミノ酸配列を有するCDR L1、配列番号30のアミノ酸配列を有するCDR L2、および配列番号32のアミノ酸配列を有するCDR L3を含むV L ドメインを有する、上記[1]から[8]または[25]のいずれかに記載の単離抗体。
[27]配列番号4、配列番号6、および配列番号8のアミノ酸配列をそれぞれ有する、または配列番号5、配列番号7、および配列番号9のアミノ酸配列をそれぞれ有する1、2、または3個のCDRにおいて1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を有するCDR H1、H2、およびH3を含むV H ドメインを有する、上記[1]から[8]または[24]のいずれかに記載の単離抗体。
[28]配列番号12、配列番号14、および配列番号16のアミノ酸配列をそれぞれ有する1、2、または3個のCDRにおいて1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を有するCDR L1、L2およびL3を含むV L ドメインを有する、上記[1]から[8、23]または[26]のいずれかに記載の単離抗体。
[29]配列番号20、配列番号22、および配列番号24のアミノ酸配列をそれぞれ有する、または配列番号21、配列番号23、および配列番号25のアミノ酸配列をそれぞれ有する1、2、または3個のCDRにおいて1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を有するCDR H1、H2、およびH3を含むV H ドメインを有する、上記[1]から[8]または[26]のいずれかに記載の単離抗体。
[30]配列番号28、配列番号30、および配列番号32のアミノ酸配列をそれぞれ有する1、2、または3個のCDRにおいて1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を有するCDR L1、L2およびL3を含むV L ドメインを有する、上記[1]から[8、25]または[29]のいずれかに記載の単離抗体。
[31]ヒトフレームワーク領域を有する、上記[15]または[23]から[30]のいずれかに記載の単離抗体。
[32]1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する重鎖または軽鎖ヒトフレームワーク領域を有する、上記[15]または[23]から[30]のいずれかに記載の単離抗体。
[33]IgG、IgM、IgA抗体、またはその抗原結合断片である、上記[1]から[32]のいずれかに記載の抗体。
[34]Fab’、F(ab’)2、F(ab’)3、一価scFv、二価scFv、または単一ドメイン抗体である、上記[1]から[32]のいずれかに記載の抗体。
[35]造影剤、化学療法剤、毒素、または放射性核種にコンジュゲートされる、上記[1]から[34]のいずれかに記載の抗体。
[36]配列番号2または18のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
[37]配列番号10または26のヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
[38]上記[1]から[35]のいずれかに記載の抗体のV H ドメインおよび/またはV L ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸分子。
[39]薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、またはビヒクル中に上記[1]から[35]のいずれかに記載の抗体を含む組成物。
[40]上記[1]から[35]のいずれかに記載の抗体の有効量を、がんを有する対象に投与することを含む、それを必要とする対象におけるPD−L1陽性がんを処置する方法。
[41]前記対象がヒトである、上記[40]に記載の方法。
[42]前記がんが、乳がん、肺がん、頭頚部がん、前立腺がん、食道がん、気管がん、皮膚がん、脳がん、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、膵臓がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頚がん、精巣がん、結腸がん、直腸がん、または皮膚がんである、上記[40]または上記[41]に記載の方法。
[43]がんが、血液のがんである、上記[40]から[42]のいずれかに記載の方法。
[44]前記抗体が、薬学的に許容される組成物中で投与される、上記[40]から[43]のいずれかに記載の方法。
[45]前記抗体が、全身、静脈内、皮内、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下、または局所投与される、上記[44]に記載の方法。
[46]少なくとも第2の抗がん剤および/または抗がん治療を対象に投与することをさらに含む、上記[38]から[45]のいずれかに記載の方法。
[47]前記第2の抗がん治療が、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、免疫療法、またはサイトカイン療法である、上記[46]に記載の方法。
[48]生物試料中のグリコシル化PD−L1の存在をアッセイする方法であって、上記[1]から[35]のいずれかに記載の抗体を生物試料に接触させることを含み、前記抗体の結合の検出は、試料がグリコシル化PD−L1を含むことを示す、方法。
[49]前記試料が細胞試料である、上記[48]に記載の方法。
[50]前記細胞試料が、対象のがんまたは腫瘍に由来する、上記[49]に記載の方法。
[51]配列番号1のN35、N192、N200、またはN219位に対応する少なくとも1つのアミノ酸を含むヒトPD−L1の少なくとも7つの連続したアミノ酸の断片を含む単離ポリペプチドであって、PD−L1のN35、N192、N200、またはN219位に対応するアミノ酸の少なくとも1つがグリコシル化されている、単離ポリペプチド。
[52]ヒトPD−L1の少なくとも8〜20個の連続したアミノ酸を含む、上記[51]に記載の単離ポリペプチド。
[53]配列番号1のN35、N192、N200、および/またはN219位に対応するグリコシル化アミノ酸を含む、上記[51]または上記[52]に記載の単離ポリペプチド。
[54]そのアミノ末端またはカルボキシ末端で免疫原性ポリペプチドに融合またはコンジュゲートされる、上記[51]から[53]のいずれかに記載のポリペプチド。
[55]薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、またはビヒクル中に上記[51]から[54]のいずれかに記載のポリペプチドを含む組成物。
[56]免疫原性組成物である、上記[55]に記載の組成物。
[57]アジュバントをさらに含む、上記[56]に記載の免疫原性組成物。
[58]配列番号2または18のヌクレオチド配列と少なくとも90〜98%同一である、上記[1]に記載の抗体のV H ドメインをコードするヌクレオチド配列、および/または配列番号19または26のヌクレオチド配列と少なくとも90〜98%同一である、上記[1]に記載の抗体のV L ドメインをコードするヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
[59]前記V H ドメインをコードするヌクレオチド配列が、配列番号2または18と95〜99%同一であり、および/または前記V L ドメインをコードするヌクレオチド配列が、配列番号10または26と95〜99%同一である、上記[58]に記載の単離核酸分子。
[60]PD−L1とPD−1との結合を遮断する薬剤による処置のための候補がん患者を同定する方法であって、上記[1]から[35]のいずれかに記載の抗体を使用して、患者のがん細胞の試料に由来する細胞上のグリコシル化PD−L1の存在に関して試験することを含み、前記細胞がグリコシル化PD−L1に関して陽性であれば、前記患者は前記処置の候補である、方法。
[61]グリコシル化PD−L1のPD−1への結合を防止する薬剤の有効量を、候補がん患者として同定された患者に投与することをさらに含む、上記[60]に記載の方法。
[62]グリコシル化PD−L1のPD−1への結合を防止する前記薬剤が、上記[1]から[34]のいずれかに記載の単離抗体である、上記[61]に記載の方法。
[63]前記単離抗体が、別の抗がん剤または治療薬と併用して投与される、上記[62]に記載の方法。