以下、本発明の一実施の形態について図に基づいて説明する。
最初に本発明の一実施の形態のゴルフボールに係るディンプルパターンの構成について説明する。
ゴルフボールの表面に形成されるディンプルの配列方法は、良好な飛翔対称性が得られる限り特に限定されるものではない。ただし、好ましくは球面を正多面体に擬制したときに区画された区域を配列単位として配列することが推奨され、20面体、12面体、8面体などが挙げられる。本発明の一実施の形態のゴルフボールは、球面を20面体に擬制したときに区画される三角形区域内に形成されるディンプルを配列単位としている。
図1を参照して、本発明の一実施の形態のゴルフボールは、複数の第1のディンプル1と、複数の第2のディンプル2と、陸部3とを有している。複数の第1のディンプル1および複数の第2のディンプル2はそれぞれゴルフボールの表面に形成されている。陸部3は、複数の第1のディンプル1および複数の第2のディンプル2が形成されていない部分である。
第1のディンプル1は、異なる直径を有するディンプル群から形成されていてもよく、単一の直径を有するディンプルから形成されていてもよい。複数の直径を有するディンプルを組み合わせる場合は、2種以上7種以下のディンプルを組み合わせることが好ましい。8種以上のディンプルが組み合わせられると、均整の取れた配列にならず、外観が劣る。また、第1のディンプル1の直径は、2.5mm以上6.5mm以下であることが好ましい。第1のディンプル1の直径が最も大きいディンプルの直径は3.8mm以上6.5mm以下であることが好ましく、4.2mm以上6mm以下であることが更に好ましく、4.5mm以上5.5mm以下であることが特に好ましい。大きすぎるディンプルではディンプル配置の自由度が阻害され、小さすぎるディンプルでは高い揚力係数が得られ難い。
本発明の一実施の形態のゴルフボールは、第1のディンプル1として、直径の大きな順番に、LLディンプル11と、Lディンプル12と、LSディンプル13と、Mディンプル14と、Sディンプル15とを有している。LLディンプル11の直径が最も大きく、Sディンプル15の直径が最も小さい。このように、複数の第1のディンプル1は、複数の異なる直径を有するディンプル群が組み合わされている。
複数の第2のディンプル2は、複数の第1のディンプル1の周囲に形成されており、ゴルフボール全体に渡って形成されている。複数の第2のディンプル2は概ね規則的に配置されている。複数の第2のディンプル2は、ゴルフボールの球面の領域によって個数が異なっている。複数の第2のディンプル2は複数の第1のディンプル1よりも小さい直径を有している。
複数の第2のディンプル2は、表面において複数の第1のディンプル1のうち互いに隣接する3つの第1のディンプル1に囲まれた領域に1個ずつ設けられている。具体的には、複数の第2のディンプル2は、隣接する3つの第1のディンプル1に囲まれた三角形の中にある陸部3のいずれかに1個ずつ配置されている。より具体的には、複数の第2のディンプル2は、隣接する3つの前記第1のディンプル1に囲まれた三角形の中にある陸部3のうちの全部ではないいずれかの陸部3に1個ずつ配置されている。
また、複数の異なる直径を有するディンプル群のうち最も小さい直径を有するディンプル群以外の第1のディンプル1の各々の周囲には複数の第2のディンプル2が形成されており、複数の異なる直径を有するディンプル群のうち最も小さい直径を有するディンプル群の第1のディンプル1の各々の周囲には第2のディンプル2は形成されていなくてもよい。
ここで、複数の第2のディンプル2の直径は、0.5mm以上2.0mm以下であることが好ましく、0.8mm以上2.0mm以下であることが更に好ましい。直径が0.5mmよりも小さいと高速域においても低速域においても効果が得られず、直径が2.0mmよりも大きいと高速域での揚力係数にも影響があるため、これらの直径は、高速域での揚力係数を維持しつつ、低速域での揚力係数の著しい低下を抑制することを目的とする第2のディンプル2として不適切である。
第2のディンプル2の個数は、60個以上であることが好ましく、たとえば1350個であってもよい。また、第2のディンプル2の個数は2160個であってもよい。第2のディンプル2の個数として2160個は、第1のディンプル1の直径が前記条件内にあり第2のディンプル2を第1のディンプル1の周囲に形成する場合の最大数であり、設計限界の個数である。
図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態のゴルフボールの第1のディンプル1および第2のディンプル2はそれぞれ平面視において円形に形成されている。
図3および図5を参照して、ディンプルの最深部およびゴルフボールの中心を通過する断面において、ディンプル断面に蓋をするようにディンプル断面線に接線を引いたとき、接線とディンプル断面線の両端との接点がディンプルのエッジと呼ばれる。上記接線とディンプルの最深部との距離がディンプルの深さである。上記接点間の上記接線の距離がディンプルの直径である。上記接点を結んだ円の平面の面積がディンプルの面積である。上記接点を結んだ円の平面とディンプル面とで囲まれる範囲の体積がディンプルの容積である。
図2〜図4を参照して、第1のディンプル1の構成について詳しく説明する。複数の第1のディンプル1の各々は、底面1aと、開口1bと、側面1cとを含んでいる。底面1aは球面状に構成されている。底面1aはゴルフボールの中心に向かって凹んでいる。開口1bは円形状に構成されている。開口1bは上記接点を結んだ円により規定される。開口1bは底面1aよりも大きな直径を有する。
側面1cは底面1aと開口1bとをつなぐように構成されている。側面1cは、底面1aから開口1bまで第1のディンプル1の直径が大きくなるように傾斜している。側面1cはディンプル断面において直線状に構成されている。側面1cはディンプル断面において上記接線に対して一定の角度(断面角度)で傾斜している。断面角度は、ディンプル断面において上記接線と側面1cとがなす角度である。つまり、断面角度は、開口1bを仮想面4としたときに、仮想面4と側面1cとのなす角度αである。
具体的には、第1のディンプル1は、第1のディンプル1の表面と、第1のディンプル1のエッジで形成される円の平面とで囲まれる空間がコーン形状となるように構成されている。この空間は、円錐台に、円錐台の小さい円(小円)の側に同一面積となるような球の断面を付加した形状に構成されている。円錐台と球の断面を付加した形状は滑らかに接線接続している。この円錐台は側面1cで取り囲まれた空間により規定され、円錐台の小円に付加された球は底面1aにより規定される。
第1のディンプル1の直径D1は、上記接線とディンプル断面線の両端との接点間の距離である。第1のディンプル1の直径D1は第1のディンプル1のエッジで形成される円の平面の直径である。第1のディンプル1の面積A1は、第1のディンプル1のエッジで形成される円の平面の面積である。
第1のディンプルの直径D1は、開口1bの直径D1aである。底面1aの直径D1bは、第1のディンプル1のディンプル断面における底面1aの表面を規定する曲率半径P1の円弧と側面1cとの接点間の距離である。
第1のディンプル1の深さB1は、上記接線と第1のディンプル1の最深部との距離である。つまり、第1のディンプル1の深さB1は、第1のディンプル1の表面と、第1のディンプル1のエッジで形成される円の平面との最大距離である。第1のディンプル1の容積V1は、第1のディンプル1の表面と、第1のディンプル1のエッジで形成される円の平面とで囲まれる空間の容積である。
第1のディンプル1の深さB1は、側面1cの深さB1aと底面1aの深さB1bとを合計した深さである。側面1cの深さB1aは、側面1cと第1のディンプル1のエッジで形成される円の平面との最大距離である。
底面1aの深さB1bは、第1のディンプル1の深さB1から側面1cの深さB1aを減じたものである。具体的には、底面1aの深さB1bは、底面1aの表面を規定する曲率半径P1の円弧と第1のディンプル1のエッジで形成される円の平面との最大距離から、側面と第1のディンプル1のエッジで形成される円の平面との最大距離を減じたものである。
また、第1のディンプル1の容積V1は、側面1cの表面および底面1aの表面と、第1のディンプル1のエッジで形成される円の平面とで囲まれる空間の容積である。
LLディンプル11と、Lディンプル12と、LSディンプル13と、Mディンプル14と、Sディンプル15は全て底面1a、開口1bおよび側面1cを備えている。
LLディンプル11の直径D1は、たとえば4.701mmである。LLディンプル11の深さ(全体深さ)B1は、たとえば0.275mm以上0.398mm以下である。LLディンプル11の断面角度は7.7度以上10.0度以下である。
LLディンプル11の側面1cの深さ(側面深さ)B1aは、たとえば0.268mm以上0.382mm以下である。LLディンプル11の底面1aの直径(底面直径)D1bは、たとえば0.251mm以上0.364mm以下である。LLディンプル11の直径D1に対するLLディンプル11の底面1aの直径(底面直径)D1bの比である直径比(底面直径D1b/直径D1)は0.053以上0.077以下である。
LLディンプル11の容積V1は、たとえば1.637mm3以上2.395mm3以下である。LLディンプル11の個数は、たとえば150個である。LLディンプル11の容積V1を合計した総容積は、たとえば246mm3以上359mm3以下である。
Lディンプル12の直径D1は、たとえば4.270mmである。Lディンプル12の深さ(全体深さ)B1は、たとえば0.271mm以上0.391mm以下である。Lディンプル12の断面角度は8.3度以上10.9度以下である。
Lディンプル12の側面1cの深さ(側面深さ)B1aは、たとえば0.262mm以上0.372mm以下である。Lディンプル12の底面1aの直径(底面直径)D1bは、たとえば0.273mm以上0.396mm以下である。Lディンプル11の直径D1に対するLディンプル12の底面1aの直径(底面直径)D1bの比である直径比(底面直径D1b/直径D1)は0.064以上0.093以下である。
Lディンプル12の容積V1は、たとえば1.336mm3以上1.959mm3以下である。Lディンプル12の個数は、たとえば24個である。Lディンプル12の容積V1を合計した総容積は、たとえば32mm3以上47mm3以下である。
LSディンプル13の直径D1は、たとえば4.064mmである。LSディンプル13の深さ(全体深さ)B1は、たとえば0.285mm以上0.412mm以下である。LSディンプル13の断面角度は9.3度以上12.1度以下である。
LSディンプル13の側面1cの深さ(側面深さ)B1aは、たとえば0.274mm以上0.389mm以下である。LSディンプル13の底面1aの直径(底面直径)D1bは、たとえば0.303mm以上0.440mm以下である。LSディンプル13の直径D1に対するLSディンプル13の底面1aの直径(底面直径)D1bの比である直径比(底面直径D1b/直径D1)は0.075以上0.108以下である。
LSディンプル13の容積V1は、たとえば1.281mm3以上1.884mm3以下である。LSディンプル13の個数は、たとえば74個である。LSディンプル13の容積V1を合計した総容積は、たとえば95mm3以上139mm3以下である。
Mディンプル14の直径D1は、たとえば3.800mmである。Mディンプル14の深さ(全体深さ)B1は、たとえば0.302mm以上0.436mm以下である。LLディンプル11の断面角度は10.6度以上13.8度以下である。
Mディンプル14の側面1cの深さ(側面深さ)B1aは、たとえば0.287mm以上0.405mm以下である。Mディンプル14の底面1aの直径(底面直径)D1bは、たとえば0.344mm以上0.500mm以下である。Mディンプル14の直径D1に対するMディンプル14の底面1aの直径(底面直径)D1bの比である直径比(底面直径D1b/直径D1)は0.091以上0.132以下である。
Mディンプル14の容積V1は、たとえば1.194mm3以上1.763mm3以下である。Mディンプル14の個数は、たとえば12個である。Mディンプル14の容積V1を合計した総容積は、たとえば14mm3以上21mm3以下である。
Sディンプル15の直径D1は、たとえば2.780mmである。Sディンプル15の深さ(全体深さ)B1は、たとえば0.225mm以上0.325mm以下である。LLディンプル11の断面角度は11.0度以上14.5度以下である。
Sディンプル15の側面1cの深さ(側面深さ)B1aは、たとえば0.210mm以上0.292mm以下である。Sディンプル15の底面1aの直径(底面直径)D1bは、たとえば0.358mm以上0.525mm以下である。Sディンプル15の直径D1に対するSディンプル15の底面1aの直径(底面直径)D1bの比である直径比(底面直径D1b/直径D1)は0.129以上0.189以下である。
Sディンプル15の容積V1は、たとえば0.487mm3以上0.726mm3以下である。Sディンプル15の個数は、たとえば12個である。Sディンプル15の容積V1を合計した総容積は、たとえば6mm3以上9mm3以下である。
上記第2のディンプル2の容積V2を除いて、上記第1のディンプル1の容積V1を全て合計した総容積は、393mm3以上576mm3以下である。この上記第1のディンプル1の容積V1を全て合計した総容積は、370mm3以上600mm3以下であることが好ましい。
第1のディンプル1の深さB1は0.200mm以上0.460mm以下であることが好ましい。第1のディンプル1の深さB1は0.300mm以上0.460mm以下であることがさらに好ましい。これらの第1のディンプル1の深さB1の下限値は設計上の誤差として0.025mm小さくされている。また、これらの第1のディンプル1の深さB1の上限値は設計上の誤差として0.025mm大きくされている。
第1のディンプル1の開口1bを仮想面4としたときに、仮想面4と側面1cとのなす角度αは15度未満であることが好ましい。
複数の第1のディンプル1の総容積は370mm3以上600mm3以下であることがさらに好ましい。
第1のディンプル1の底面1aの直径(底面直径)D1bは、たとえば1.0mm以下であることが好ましい。
図2および図5を参照して、第2のディンプル(SSディンプル)2の構成について詳しく説明する。第2のディンプル(SSディンプル)2は球面状に構成されている。第2のディンプル(SSディンプル)2の表面を規定する曲率半径は、第1のディンプル1の底面1aの表面を規定する曲率半径P1と等しい。
第2のディンプル2の直径D2は、上記接線とディンプル断面線の両端との接点間の距離である。第2のディンプル2の直径D2は第2のディンプル2のエッジで形成される円の平面の直径である。第2のディンプル2の面積A2は、第2のディンプル2のエッジで形成される円の平面の面積である。
第2のディンプル2の深さB2は、上記接線と第2のディンプル2の最深部との距離である。つまり、第2のディンプル2の深さB2は、第2のディンプル2の表面と、第2のディンプル2のエッジで形成される円の平面との最大距離である。第2のディンプル2の容積V2は、第2のディンプル2の表面と、第2のディンプル2のエッジで形成される円の平面とで囲まれる空間の容積である。
第2のディンプル2の直径(SSディンプルの直径)D2は、たとえば1.240mmである。第2のディンプル2の深さ(全体深さ)B2は、たとえば0.206mm3である。第2のディンプル2の個数は、たとえば240個である。第2のディンプル2の容積V2は、たとえば0.131mm3である。第2のディンプル2の容積V2を合計した総容積は、たとえば31mm3である。
次に、本発明の一実施の形態のゴルフボールの構造について説明する。
図6を参照して、ゴルフボールは、球状のコア10と、カバー20とを備えている。ただし、コア10とカバー20の間に1層または2層以上の中間層が設けられても良い。また、カバー20の表面には、多数のディンプルが形成されている。このゴルフボールは、カバー20の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
コア10の形状としては、球状が一般的であるが、例えば、球状のコア10の表面を均等に分割するように突条が設けられていても良いし、均等に分布した凹部が設けられていても良い。突条を設ける場合には、突条によって仕切られる凹部を、複数の包囲層、あるいは、それぞれの凹部を被覆するような単層の包囲層によって充填するようにして、コア10と包囲層からなる成形体の形状を球形とすることが好ましい。凹部を設ける場合には、コア10を被覆する外層材で凹部が充填されるように成形され、形状を球形とすることが好ましい。
ゴルフボールの直径は、規則(R&A、及びUSGA参照)の定めるところにより、42.67mm以上にすることが求められている。但し、空力特性等を考慮するとボール径はできるだけ小さくすることが好ましく、例えば42.7〜43.7mmとすることができる。重さも、規則の定めるところにより45.93g以下にすることが求められている。空力特性を考慮すると重さはできるだけ大きいことが好ましく、45.2g〜45.93g以下に形成することができる。
コア10は、球状に形成され、ゴム組成物で形成されている。コア10の直径は、35.0mm〜41.0mmにすることが好ましく、38.5mm〜40.0mmにすることが特に好ましい。コア10が小さいと反発性能が低下し、コア10が大きすぎるとコア10を被覆するカバー20の厚みが小さすぎて耐久性が落ちたり、ボールが軟らかくなりすぎ逆に反発性能が低下したりする。
コア10は、基材ゴム、架橋材、不飽和カルボン酸の金属塩、充填剤等を配合した公知のゴム組成物で製造することができる。基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリイソブレンゴム、スチレンブタジエンゴム、EPDM等を使用できるが、シス1,4結合を少なくとも40%以上、好ましくは80%以上を有するハイシスポリブタジエンを使用することが特に好ましい。
架橋剤としては、例えばジクミルパーオキサイドやt−ブチルパーオキサイドのような有機過酸化物を使用することができるが、ジクミルパーオキサイドを使用するのが特に好ましい。
不飽和カルボン酸の金属塩としては、アクリル酸又はメタクリル酸のような炭素数3〜8の一価又は二価の不飽和カルボン酸の金属塩を使用することが好ましいが、アクリル酸亜鉛を使用するとボールの反発性能を向上することができ、特に好ましい。
充填剤は、コアに通常配合されるものを使用することができ、例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を使用することができる。また、必要に応じて有機硫黄化合物、老化防止剤、またはしゃく解剤等を配合してもよい。
なお、コア10を構成する材料は、上記ゴム組成物の他、公知のエラストマーを用いることができる。
カバー20は、エラストマーで構成されている。そして、その表面にはディンプルが形成されている。カバー20の層厚は0.3mm〜2.5mmとするのが好ましく、0.8mm〜1.8mmとすることが特に好ましい。
カバー20の材料として、アイオノマー樹脂、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性および熱硬化性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー及び熱可塑性ポリオレフィンエラストマーが例示される。これらの材料を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
特に好ましい基材ポリマーは、アイオノマー樹脂である。好ましいアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい二元共重合体は、80質量%以上90質量%以下のα−オレフィンと、10質量%以上20質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸とを含む。この二元共重合体は、反発性能に優れる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。好ましい三元共重合体は、70質量%以上85質量%以下のα−オレフィンと、5質量%以上30質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸と、1質量%以上25質量%以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとを含む。この三元共重合体は、反発性能に優れる。二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。特に好ましいアイオノマー樹脂は、エチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体である。
二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。中和が、2種以上の金属イオンでなされてもよい。ゴルフボールの反発性能及び耐久性の観点から特に好適な金属イオンは、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、及びマグネシウムイオンである。
カバー20の形成には、射出成形法、圧縮成形法、注型成形法等の既知の手法が採用されうる。カバー成形の際、通常、カバー表面にディンプルが形成される。成形後、必要に応じて、バリ取り、洗浄、研摩、塗装、マーク印刷がなされ、ゴルフボールが完成される。
次に、本発明の一実施の形態におけるゴルフボールの作用効果について説明する。
本発明の一実施の形態におけるゴルフボールは、複数の第1のディンプル1と複数の第2のディンプル2とを備えている。そして、複数の第1のディンプル1の各々は、球面状の底面1aと、円形状であり底面1aよりも大きな直径を有する開口1bと、底面1aと開口1bとをつなぐ側面1cとを含んでいる。側面1cは、底面1aから開口1bまで第1のディンプル1の直径D1が大きくなるように傾斜している。これにより、複数の第1のディンプル1が単純に球面状に構成されている場合に比べて、さらに全ての速度域で揚力係数を向上しつつ、低速域での揚力係数の極端な低下を抑制できることを発明者らは見い出した。
また、第1のディンプル1の深さB1は0.200mm以上0.460mm以下である。これにより、さらに全ての速度域で揚力係数を向上しつつ、低速域での揚力係数の極端な低下を抑制できることを発明者らは見い出した。
また、第1のディンプル1の深さB1は0.300mm以上0.460mm以下である。これにより、特に、低速域での揚力係数の極端な低下を抑制できることを発明者らは見い出した。
また、開口1bを仮想面4としたときに、仮想面4と側面1cとのなす角度αは15度未満である。これにより、特に、低速域での揚力係数の極端な低下を抑制できることを発明者らは見い出した。
また、複数の第1のディンプルの総容積は370mm3以上600mm3以下である。これにより、さらに全ての速度域で揚力係数を向上しつつ、低速域での揚力係数の極端な低下を抑制できることを発明者らは見い出した。
また、第1のディンプル1の底面1aの曲率半径は、第2のディンプル2の曲率半径と同一である。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、上記と同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、特に言及しない限り説明を繰り返さない。
本発明の実施例1〜5のゴルフボールは図1に示すゴルフボールと同様の構成を備えている。
表1は実施例1のゴルフボールの構成を示しており、表2は実施例1のゴルフボールの揚力係数CLとスピンパラメータSpとを示している。同様に、表3および表4は実施例2のゴルフボールを示し、表5および表6は実施例3のゴルフボールを示し、表7および表8は実施例4のゴルフボールを示し、表9および表10は実施例5のゴルフボールを示している。
実施例1〜5のゴルフボールでは互いに第1のディンプルの深さが異なっている。実施例1のゴルフボールは実施例3のゴルフボールに比べて第1のディンプルの深さが30%深くなっている。実施例2のゴルフボールは実施例3のゴルフボールに比べて第1のディンプルの深さが10%深くなっている。実施例4のゴルフボールは実施例3のゴルフボールに比べて第1のディンプルの深さが10%浅くなっている。実施例5のゴルフボールは実施例3のゴルフボールに比べて第1のディンプルの深さが30%浅くなっている。
表11は比較例のゴルフボールの構成を示しており、表12は比較例のゴルフボールの揚力係数CLとスピンパラメータSpとを示している。比較例のゴルフボールは複数の第1のディンプルおよび複数の第2のディンプルを備えている。比較例のゴルフボールは、実施例1〜5のゴルフボールに比べて第1のディンプルの構成が異なっている。具体的には、比較例のゴルフボールでは、第1のディンプルは球面状に構成されており、実施例1〜5の側面を含んでいない。
続いて、実施例1〜5および比較例のボール速度と、揚力係数CLと、スピンパラメータSpとの関係について説明する。図7〜図11はそれぞれ実施例1〜5のボール速度と、揚力係数CLと、スピンパラメータSpとの関係を示している。図12は比較例のボール速度と、揚力係数CLと、スピンパラメータSpとの関係を示している。
なおスピンパラメータSpは下記の式(1)で規定される。スピンパラメータは周速度/速度で表される。
Sp=πdN/U (1)
式(1)の各符号について説明する。式(1)において、dは直径(m)であり、Nは回転速度(rps)であり、Uはボール速度(m/s)である。たとえば、ボール速度(球速)60m/s、回転数2700rpmのとき、スピンパラメータSp≒0.1となる。
揚力係数CLは、特許4982148号に開示されているような空気力測定装置を用いて、回転させたゴルフボールに風を吹き付け、発生する空気力の3分力(抗力・揚力・横力)から算出することができる。吹き付ける風の流速と、ゴルフボールの回転数を調整することで、スピンパラメータは適時変更が可能である。また揚力係数は、赤外線センサーを用いて軌道を計測しその軌道から算出する方法や、TrackMan社製TrackManに代表されるゴルフボール弾道計測器を用いて計測することができる。
ゴルフボールの飛び出し時の初期速度は、一般男子の平均値が約60m/sであり、男子プロゴルファの平均値が約70m/sである。一方、“鳴尾丈司、溝田武人、下園仁志、「一様気流中で高速回転するゴルフボールの空気力測定と飛翔実験」、2004年、日本機械学会論文集B編、第70巻、第698号、pp.2371−2377”にあるように、35〜80m/sの流速において、揚力係数、抗力係数にレイノルズ数即ち速度依存性が無く、ゴルフボールの飛び出し時の初期速度は、スピンパラメータのみに依存する。以上より、本実施例で行った実験は最大で44m/sであるが、所定の回転数が得られれば、この流速範囲で80m/sまでの流速における空気力特性を把握することができる。
図7〜図12を参照して、実施例1〜4では比較例に比べて揚力係数CLが大きくなった。また、実施例1〜4では比較例に比べてボール速度によって揚力係数CLにばらつきが小さくなった。具体的には、比較例では、ボール速度が25m/sで揚力係数CLにばらつきが大きくなった。
表2、表4、表6、表8、表10、表12に示すように、スピンパラメータSpが0.10のときに、実施例1〜4では比較例に比べて揚力係数CLが大きくなった。特に、ボール速度が25m/sで実施例1〜4では比較例に比べて揚力係数が非常に大きくなった。
また、スピンパラメータSpが0.10のときに、実施例1〜4では比較例に比べてボール速度が25m/sの揚力係数CLと、ボール40m/sの揚力係数CLとの差が小さくなった。特に、実施例1〜2では比較例に比べてボール速度が25m/sの揚力係数CLと、ボール40m/sの揚力係数CLとの差が非常に小さくなった。
また、実施例1〜4では第1のディンプルの深さが深い順に揚力係数CLが大きくなった。これにより、実施例1〜4のように、第1のディンプルの深さの深い方が揚力係数CLが大きくなることがわかった。
次に、実施例1〜5および比較例のゴルフボールの飛距離をシミュレーションにより測定した。
表13を参照して、飛距離は、一般アマチュアゴルファー(アマ)相当の打ち出し条件と、女子プロゴルファー(女子プロ)相当の打ち出し条件と、男子プロゴルファー(男子プロ)相当の打ち出し条件とで比較した。一般アマチュアゴルファー(アマ)相当の打ち出し条件は、初速60m/s、打ち出し角12度、スピン量2800rpmに設定した。女子プロゴルファー(女子プロ)相当の打ち出し条件は、初速65m/s、打ち出し角15度、スピン量2500rpmに設定した。男子プロゴルファー(男子プロ)相当の打ち出し条件は、初速78m/s、打ち出し角12度、スピン量2200rpmに設定した。ただしスピン軸は傾いていない純縦回転に設定した。
飛距離は、それぞれの飛び出し条件で放たれた後、気温24℃、湿度50%、1気圧、無風の中を飛翔し、打撃位置から再び水平高さに落下するまでの距離を表している。また使用するゴルフボールは、質量45.6g、直径42.8mm、慣性モーメント8.1×10-6kg・m2とした。
飛距離の算出で使用した空気特性としては、図8〜図12に示される揚力係数特性を用いた。また抗力係数特性は共通の特性を使用した。飛び出し後の位置は、特許第3825359号公報の段落番号0032〜0092に記載された方法を用いて算出した。
いずれの打ち出し条件においても、実施例1〜5は比較例よりも飛距離が大きくなった。これにより、実施例1〜5は飛距離性能を向上できることが確認できた。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。