JP6932897B2 - シリンダ装置および鉄道車両用制振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、シリンダ装置および鉄道車両用制振装置に関する。
従来、この種のシリンダ装置は、たとえば、鉄道車両に車体の進行方向に対して左右方向の振動を抑制する鉄道車両用制振装置として利用される。鉄道車両用制振装置は、車体と台車との間に介装される複数のシリンダ装置で構成されており、シリンダ装置が発揮する推力或いは減衰力によって車体の振動を抑制する。
そして、このような鉄道車両用制振装置に利用されるシリンダ装置は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されるピストンと、シリンダ内に挿入されてピストンに連結されるロッドと、シリンダ内にピストンで区画したロッド側室とピストン側室と、タンクと、ロッド側室とタンクとを連通する排出通路の途中に設けた電磁リリーフ弁とで構成される(たとえば、特許文献1参照)。
そして、鉄道車両用制振装置は、電磁リリーフ弁によりシリンダ内の圧力を制御して、シリンダ装置が発生する推力或いは減衰力を高低調節して、鉄道車両の車体の振動を抑制する。
特開2010−65797号公報
ところで、鉄道車両が走行中に強い地震が発生する場合、車体が大きく揺れて脱輪する恐れがあるので、このような場合には、鉄道車両用制振装置は、シリンダ装置に高い減衰力を発揮させて脱輪を未然に防ぎたい。また、地震発生時には、電力供給を受けられなくなる場合があるので、制御失陥時に相当する状況下で高い減衰力の発揮がシリンダ装置に要望される。
そこで、本発明は、地震時の脱輪を効果的に防止できるシリンダ装置および鉄道車両用制振装置の提供を目的としている。
本発明のシリンダ装置は、シリンダと、シリンダ内に挿入されるロッドと、シリンダ内に摺動自在に挿入されるとともにロッドに連結されて、シリンダ内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストンと、タンクと、ロッド側室とタンクとを連通する排出通路と、排出通路に設けられるリリーフ弁と、前記リリーフ弁の下流に設けられる減衰弁と、排出通路の前記リリーフ弁の下流であって減衰弁の上流から分岐して減衰弁を迂回して前記タンクに連通される迂回路と、減衰弁と迂回路の一方を選択する切換弁とを備え、切換弁は、排出通路を流れる流量に応じて切り換わり、伸縮速度が所定速度未満である場合には迂回路を選択し、伸縮速度が所定速度以上の場合には減衰弁を選択する。このように構成されたシリンダ装置では、地震によって車体が著大な振動を呈しても高減衰力を発揮して車体の振動を低減でき、鉄道車両が走行中に地震が発生しても車体の振動が速やかに低減されて脱輪を効果的に抑制できる。
また、シリンダ装置は、ピストン側室からロッド側室へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路と、タンクからピストン側室へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路とを備えていてもよい。このように構成されたシリンダ装置は、パッシブダンパとして機能できる。
さらに、シリンダ装置は、ロッド側室とピストン側室とを連通する第一通路に設けた第一開閉弁と、ピストン側室とタンクとを連通する第二通路に設けた第二開閉弁とを備えていてもよい。このように構成されたシリンダ装置では、整流通路と吸込通路を備えているとカルノップのスカイフック理論に基づくセミアクティブ制御を容易に実現でき、スカイフックセミアクティブダンパとして機能できる。
またさらに、シリンダ装置は、タンクとロッド側室を連通する供給通路と、供給通路に設けられてタンクからロッド側室へ液体を供給可能なポンプとを備えていてもよい。このように構成されたシリンダ装置は、アクチュエータとして機能できる。また、このように構成されたシリンダ装置は、整流通路と吸込通路を備える場合には、アクチュエータとスカイフックセミアクティブダンパの状態の切換えを、ポンプの停止と駆動の切換えや、面倒かつ急峻な第一開閉弁と第二開閉弁の切換動作を伴わずに行える。
そして、シリンダ装置は、減衰部がリリーフ弁の下流に設けられる減衰弁と、排出通路の減衰弁の上流から分岐して減衰弁を迂回してタンクに連通される迂回路と、減衰弁と迂回路の一方を選択する切換弁とを備えて構成されてもよい。このように構成されたシリンダ装置は、地震時以外の平常時では切換弁が迂回路を選択して減衰弁を迂回するため減衰弁の影響を受けず、地震時には減衰弁を有効として高減衰力を発揮して脱輪を効果的に防止できる。
また、鉄道車両用制振装置は、鉄道車両における車体と台車との間に介装される複数のシリンダ装置を備え、各シリンダ装置が減衰部によって発生する減衰力の総和を地震時に一台車につき要求される必要減衰力に等しくして構成されている。このように構成された鉄道車両用制振装置によれば、地震によって車体が著大な振動を呈しても高減衰力を発揮して車体の振動を低減でき、鉄道車両が走行中に地震が発生しても車体の振動が速やかに低減されて脱輪を効果的に抑制できる。また、このように構成された鉄道車両用制振装置によれば、各シリンダ装置の外径の大径化と鉄道車両側のブラケットの大型化も防止できるので、鉄道車両への搭載性が良好となる。
さらに、鉄道車両用制振装置は、必要減衰力を一つの台車に設置されるシリンダ装置の設置数で割った値に各シリンダ装置が発生する減衰力を等しくしてもよい。このように構成された鉄道車両用制振装置では、各シリンダ装置の加工、組付、メンテナンスも非常に容易となる。
本発明のシリンダ装置および鉄道車両用制振装置によれば、地震時の脱輪を効果的に防止できる。
鉄道車両に搭載した状態におけるシリンダ装置を示す図である。 第一の実施の形態におけるシリンダ装置の液圧回路図である。 第一の実施の形態におけるシリンダ装置の伸縮速度に対する減衰力の特性である減衰力特性を示した図である。 第二の実施の形態におけるシリンダ装置の液圧回路図である。
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。なお、以下に説明する各実施の形態のシリンダ装置及び鉄道車両用制振装置において共通する構成については同じ符号を付し、説明の重複を避けるために、一の実施の形態での説明において説明した構成については他の実施の形態における説明では詳細な説明を省略する。
<第一の実施の形態>
第一の実施の形態における鉄道車両用制振装置S1は、鉄道車両の車体Bの制振に利用されている。本例の鉄道車両用制振装置S1は、図1および図2に示すように、車体Bと台車Tとの間に介装される複数のシリンダ装置C1を備えている。
シリンダ装置C1は、鉄道車両の場合、車体Bの下方に垂下されるピンPに連結され、車体Bと台車Tとの間で対を成して並列に介装されている。台車Tは、車輪Wを回転自在に保持しており、車体Bと台車Tとの間には、懸架ばねCSが介装され、車体Bが下方から弾性支持されることにより、台車Tに対する車体Bの横方向への移動が許容されている。
シリンダ装置C1は、図2に示すように、鉄道車両の車体Bに連結されるシリンダ2と、シリンダ2内に摺動可能に挿入されてシリンダ2内をロッド側室5とピストン側室6とに区画するピストン3と、シリンダ2内に挿入されてピストン3と台車Tとに連結されるロッド4と、シリンダ2とシリンダ2の外周を覆う外筒7との間に設けたタンク8とを備える。さらに、シリンダ装置C1は、ロッド側室5とタンク8とを連通する排出通路21と、排出通路21に設けられるリリーフ弁としての可変リリーフ弁22と、減衰部23とを備えている。
以下、シリンダ装置C1の各部について詳細に説明する。図2に示すように、シリンダ2と外筒7はともに筒状であって、図2中左端側の開口部は、環状であって両者に嵌合するロッドガイド9によって閉塞され、シリンダ2と外筒7の図2中右端側の開口部は、両者に嵌合するボトムキャップ10によって閉塞されている。また、前記ロッドガイド9内には、シリンダ2内に移動自在に挿入されるロッド4が摺動自在に挿入されており、ロッド4の軸方向の移動がロッドガイド9によって案内される。また、ロッド4は、ロッドガイド9を通して一端をシリンダ2外へ突出させており、シリンダ2内の他端をシリンダ2内に摺動自在に挿入されるピストン3に連結している。
なお、ロッド4の外周、ロッドガイド9とシリンダ2との間、ロッドガイド9と外筒7との間、シリンダ2とボトムキャップ10との間および外筒7とボトムキャップ10との間は、それぞれ、図示を省略したシール部材によってシールされている。これによりシリンダ2内およびタンク8は密閉状態に維持されている。
そして、シリンダ2内にピストン3によって区画されるロッド側室5とピストン側室6には、本例では、作動液体として作動油が充填されるとともに、タンク8には、作動油が貯留される他に気体が充填されている。なお、タンク8内は、特に、気体を圧縮して充填して加圧状態とする必要は無い。また、作動液体は、作動油以外にも他の液体を利用してもよい。
シリンダ装置C1は、図示はしないが、ロッド4が鉄道車両の台車と車体の一方に、シリンダ2が台車と車体の他方に連結されて、台車と車体との間に介装される。シリンダ装置C1は、片ロッド型に設定されているので、両ロッド型のシリンダ装置に比較してストローク長を確保しやすく、シリンダ装置C1の全長が短くなって、鉄道車両への搭載性が向上する。
また、このシリンダ装置C1の場合、ロッド4の断面積をピストン3の断面積の二分の一にして、ピストン3のロッド側室5側の受圧面積がピストン側室6側の受圧面積の二分の一となるようになっている。よって、シリンダ装置C1の伸長時と収縮時とでシリンダ2内から排出通路21を通じてタンク8へ排出される流量が等しくなる。
戻って、ロッド4の図2中左端とシリンダ2の右端を閉塞するボトムキャップ10とには、図示しない取付け部を備えており、このシリンダ装置C1を鉄道車両における車体Bと台車Tとの間に介装できるようになっている。
そして、本例のシリンダ装置C1にあっては、ロッド側室5とピストン側室6とが第一通路11によって連通されており、この第一通路11には、第一開閉弁12が設けられている。この第一通路11は、シリンダ2外でロッド側室5とピストン側室6とを連通しているが、ピストン3に設けられてもよい。
第一開閉弁12は、電磁開閉弁とされており、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する連通ポジションとロッド側室5とピストン側室6との連通を絶つ遮断ポジションとを備えており、通電時には第一通路11を開放してロッド側室5とピストン側室6とを連通する。
また、本例のシリンダ装置C1にあっては、ピストン側室6とタンク8とが第二通路13によって連通されており、この第二通路13の途中には、第二開閉弁14が設けられている。第二開閉弁14は、電磁開閉弁とされており、ピストン側室6とタンク8とを連通する連通ポジションと、ピストン側室6とタンク8との連通を絶つ遮断ポジションとを備えており、通電時には第二通路13を開放してピストン側室6とタンク8とを連通する。
排出通路21は、ロッド側室5とタンク8とを接続しており、その途中には開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁22が設けられている。可変リリーフ弁22は、本例では、比例電磁リリーフ弁とされており、供給される電流量に応じて開弁圧を調節でき、前記電流量が最大となると開弁圧を最小とし、電流の供給がないと開弁圧を最大とするようになっている。
減衰部23は、本例では、排出通路21における可変リリーフ弁22の下流に設けられる減衰弁Vと、排出通路21の減衰弁Vの上流から分岐して減衰弁Vを迂回してタンク8に連通される迂回路BPと、排出通路21の可変リリーフ弁22と減衰弁Vとの間に設けた切換弁24とを備えている。
本例では、減衰弁Vは、オリフィスとされている。シリンダ装置C1が所定速度以上で伸縮する際にシリンダ2内から排出通路21を通じてタンク8へ排出される流量の作動油が減衰弁Vを通過する際の圧力損失は、同じ流量の作動油が非通電時の可変リリーフ弁22を通過する際に生じる圧力損失よりも大きく設定されている。具体的には、所定速度は、地震が発生した際に到達するであろうシリンダ装置C1の伸縮速度に設定されており、本例では、0.2m/secに設定されている。なお、排出通路21を通過する作動油の流量は、ピストン3の断面積からロッド4の断面積を引いた値にピストン3の移動量を乗じた量になる。よって、所定速度が設定されると、所定速度で伸縮する際にシリンダ2内から排出通路21を通じてタンク8へ排出される流量が一義的に決まり、この流量を設定流量としてある。
切換弁24は、排出通路21の途中に設けられて可変リリーフ弁22の下流を迂回路BPへ連通する第一ポジション24bと可変リリーフ弁22の下流を減衰弁Vへ接続する第二ポジション24cとを備えた弁体24aと、第一ポジション24bを採るように弁体24aを附勢するばね24dと、可変リリーフ弁22より下流であって切換弁24の上流の圧力を弁体24aに対して第二ポジション24cを採るように作用させるパイロット通路24eとを備えている。切換弁24は、第一ポジション24bを採る際に作動油の通過に対して圧力損失を生じるようになっている。そして、作動油の通過流量が前記設定流量となるとパイロット通路24eで導入される圧力による弁体24aを押す力がばね24dの附勢力に打ち勝って弁体24aは、第一ポジション24bから第二ポジション24cへ切換わる。よって、切換弁24は、排出通路21を流れる作動油の流量が設定流量に満たない場合には、迂回路BPを選択して減衰弁Vを通過させずに作動油をタンク8へ流す。他方、切換弁24は、排出通路21を流れる作動油の流量が設定流量以上となると減衰弁Vを選択して、減衰弁Vを介して可変リリーフ弁22を通過した作動油をタンク8へ流す。つまり、切換弁24は、シリンダ装置C1が所定速度未満で伸縮する場合には、迂回路BPを選択し、シリンダ装置C1が所定速度以上で伸縮する場合には、減衰弁Vを選択する。迂回路BPは、殆ど抵抗なく作動油を通過させるので、第一ポジション24bおよび迂回路BPで生じる圧力損失は、可変リリーフ弁22で生じる圧力損失に比較しても非常に小さくなるように設定されている。
よって、減衰部23は、シリンダ2に対するピストン3の相対速度が所定速度未満では可変リリーフ弁22に比較して小さな圧力損失しか生じさせず、前記相対速度が所定速度以上となると減衰弁Vにより可変リリーフ弁22より大きな圧力損失を生じさせる。
また、図2に示すように、本例のシリンダ装置C1は、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう流れのみを許容する整流通路18を備えている。なお、整流通路18は、ピストン3以外に設けてもよい。さらに、本例のシリンダ装置C1は、タンク8からピストン側室6へ向かう流れのみを許容する吸込通路19を備えている。
したがって、この本例のシリンダ装置C1にあっては、第一開閉弁12および第二開閉弁14が遮断ポジションを採る場合にあって、外力を受けて伸長すると、圧縮されるロッド側室5から作動油が排出通路21を通じてタンク8へ押し出される。そして、拡大するピストン側室6には吸込通路19を通じてタンク8から作動油が供給される。この伸長作動時においてシリンダ装置C1の伸長速度が所定速度未満では、シリンダ装置C1は、可変リリーフ弁22で作動油の流れに抵抗を与えて、伸長を抑制する減衰力を発揮する。また、伸長作動時においてシリンダ装置C1の伸長速度が所定速度以上となると、シリンダ装置C1は、可変リリーフ弁22および減衰部23における減衰弁Vで作動油の流れに抵抗を与えて伸長を抑制する減衰力を発揮する。
反対に、第一開閉弁12および第二開閉弁14が遮断ポジションを採る場合にあって、外力を受けてシリンダ装置C1が収縮すると、整流通路18を介して圧縮されるピストン側室6からロッド側室5へ作動油が移動する。また、シリンダ装置C1の収縮時には、ロッド4がシリンダ2内に侵入するため、ロッド4がシリンダ2内に侵入する体積分の作動油がシリンダ2内で過剰となって排出通路21を通じてタンク8へ排出される。この収縮作動時においてシリンダ装置C1の収縮速度が所定速度未満では、シリンダ装置C1は、可変リリーフ弁22で作動油の流れに抵抗を与えて、収縮を抑制する減衰力を発揮する。また、収縮作動時においてシリンダ装置C1の収縮速度が所定速度以上となると、シリンダ装置C1は、可変リリーフ弁22および減衰部23における減衰弁Vで作動油の流れに抵抗を与えて収縮を抑制する減衰力を発揮する。
なお、この場合、排出通路21を通過する作動油の流量は、ロッド4の断面積にピストン3の移動量を乗じた量になる。ここで、ロッド4の断面積は、ピストン3の断面積の二分の一に設定されているので、シリンダ装置C1が伸長しても収縮してもピストン3の移動量が同じであれば、排出通路21を通過する作動油の流量は等しくなる。よって、シリンダ装置C1は、伸縮両側でピストン3の移動速度が同じであれば、等しい減衰力を発揮できる。
なお、第一開閉弁12も第二開閉弁14も非通電時に遮断ポジションを採り、電力供給不能な失陥時には、本例のシリンダ装置C1は、前述のように伸縮に対して必ず減衰力を発揮するので、パッシブなダンパとして機能する。
また、本例のシリンダ装置C1にあっては、第一開閉弁12を連通ポジションとして第二開閉弁14を遮断ポジションとする場合、ロッド側室5とピストン側室6が第一通路11を介して連通されるがピストン側室6とタンク8との連通が絶たれる。この状態でシリンダ装置C1が外力を受けて収縮すると、ロッド4がシリンダ2内に侵入する体積分の作動油がシリンダ2から排出通路21へ排出され、前記同様に収縮に対抗する減衰力を発揮する。他方、この状態で、シリンダ装置C1が伸長すると、縮小するロッド側室5から拡大するピストン側室6へ第一通路11を介して作動油が移動し、ロッド4がシリンダ2から退出する体積分の作動油が吸込通路19を介してタンク8からシリンダ2内へ供給される。よって、この場合、作動油が排出通路21へ流れないので、シリンダ装置C1は減衰力を発揮しない。
さらに、本例のシリンダ装置C1にあっては、第一開閉弁12を遮断ポジションとして第二開閉弁14を連通ポジションとする場合、ロッド側室5とピストン側室6の連通が絶たれるが、ピストン側室6とタンク8とが第二通路13を介して連通される。この状態でシリンダ装置C1が外力を受けて伸長すると、ロッド側室5の縮小に伴ってロッド側室5から作動油が排出通路21へ排出され、前記同様に伸長に対抗する減衰力を発揮する。他方、この状態で、シリンダ装置C1が収縮すると、縮小するピストン側室6から拡大するロッド側室5へ整流通路18を介して作動油が移動し、ロッド4がシリンダ2内へ侵入する体積分の作動油が第二通路13を介してピストン側室6からタンク8内へ排出される。よって、この場合、作動油が排出通路21へ流れないので、シリンダ装置C1は減衰力を発揮しない。このように、このシリンダ装置C1では、伸長と収縮のいずれか一方を選択して減衰力を発揮する片利きのダンパとして機能できるようになっている。
このように構成されたシリンダ装置C1における非通電時の減衰力特性は、図3に示したようになる。非通電時では、第一開閉弁12、第二開閉弁14および可変リリーフ弁22に電力供給せず、シリンダ装置C1がパッシブダンパとして機能し、可変リリーフ弁22の開弁圧が最大となっている。非通電時におけるシリンダ装置C1の減衰力特性は、シリンダ2に対するピストン3の相対速度、つまり、シリンダ装置C1の伸縮速度が所定速度(本例では、0.2m/sec)未満では、可変リリーフ弁22で減衰力を発揮するので、その減衰力特性は、図3に示すように、可変リリーフ弁22における特性が表れる。シリンダ2に対するピストン3の相対速度が高くなり所定速度以上となると、切換弁24が第二ポジション24cに切換わって作動油は減衰弁Vを通過するようになる。この場合、減衰弁Vには設定流量以上の流量の作動油が流れ、この状態において減衰弁Vおける圧力損失が可変リリーフ弁22における圧力損失よりも大きい。そのため、シリンダ装置C1の伸縮速度が所定速度である0.2m/sec以上となると、シリンダ装置C1の減衰力特性は、減衰弁Vの特性が表れる。具体的には、図3に示すようにオリフィスの二乗特性が表れ、シリンダ装置C1は高い減衰力を発揮する。なお、可変リリーフ弁22の開弁圧を調節すると、可変リリーフ弁22の特性のみが表れるシリンダ装置C1の伸縮速度が0.2m/sec未満の範囲では、図3中の特性線より下の範囲においてシリンダ装置C1の減衰力を高低調節できる。
そして、本例の鉄道車両用制振装置S1は、一つの台車Tにつき、二つのシリンダ装置C1を備えている。地震発生時に、車体Bの振動を抑制して鉄道車両における車輪Wのレールからの脱輪を防止するために一つの台車Tあたりで必要とされる減衰力は経験的に分かっている。よって、二つのシリンダ装置C1で前記した脱輪の防止に必要な減衰力(必要減衰力)以上の減衰力を発揮すればよく、本発明の鉄道車両用制振装置S1は、各シリンダ装置C1で分担して前記必要減衰力を発揮するようになっている。具体的には、本例の鉄道車両用制振装置S1は、一つの台車Tに二つのシリンダ装置C1が設けられているので、各シリンダ装置C1がそれぞれ基準速度で伸縮する際に必要減衰力の二分の一を出力するようになっていて、全体として必要減衰力を発揮する。
鉄道車両用制振装置S1が地震時において必要減衰力を発揮する場合、地震時の脱輪を防止するには、シリンダ装置C1の伸縮速度が目安となる基準速度において必要減衰力の発揮が要望される。そして、本例の鉄道車両用制振装置S1は、各シリンダ装置C1が必要減衰力の二分の一を発揮するため、各シリンダ装置C1は、基準速度で必要減衰力の二分の一ずつを発揮できればよい。基準速度は、所定速度よりも高い速度であって、鉄道車両において脱輪が生じる恐れがある速度に設定されていて、本例では、0.6m/secに設定されている。また、必要減衰力は、80kNに設定されている。よって、各シリンダ装置C1は、図3に示したように、シリンダ装置C1の伸縮速度が0.6m/secで40kNの減衰力を発揮するよう設定されている。基準速度を超える伸縮速度に対しては、各シリンダ装置C1の減衰力の総和が必要減衰力以上となるようになっていればよい。なお、本例では、一つの台車Tに対して二つのシリンダ装置C1を備えているから、各シリンダ装置C1が基準速度で必要減衰力の二分の一を出力するようなっているが、必要減衰力の分担割合は変更できる。また、シリンダ装置C1の一つの台車Tあたりの設置数が3つ以上であれば、各シリンダ装置C1が基準速度で出力する減衰力の総和が必要減衰力以上となるように設定すればよい。なお、必要減衰力は、鉄道車両に適した値に設定されればよい。
戻って、シリンダ装置C1は、前述したところから、第一開閉弁12および第二開閉弁14を遮断ポジションとする場合、パッシブダンパとして機能し、シリンダ装置C1の伸縮速度が所定速度未満では、可変リリーフ弁22へ供給する通電量を調節して開弁圧を調節すると減衰力を調節できる。また、第一開閉弁12および第二開閉弁14を遮断ポジションとする場合、シリンダ装置C1は、パッシブダンパとして機能し、シリンダ装置C1の伸縮速度が所定速度以上になると減衰弁Vにより発生する減衰力が高くなる。
また、第一開閉弁12を連通ポジションとして第二開閉弁14を遮断ポジションとする場合および第一開閉弁12を遮断ポジションとして第二開閉弁14を連通ポジションとする場合には、前述したように、伸長或いは収縮のいずれか一方に対してのみシリンダ装置C1が減衰力を発揮するモードとなる。よって、たとえば、このモードを選択すれば、減衰力を発揮する方向が鉄道車両の台車の振動により車体を加振してしまう方向である場合、そのような方向には減衰力を出さないようにシリンダ装置C1を片効きのダンパとできる。よって、このシリンダ装置C1では、カルノップのスカイフック理論に基づくセミアクティブ制御を容易に実現できるため、シリンダ装置C1をスカイフックセミアクティブダンパとして機能させ得る。このように第一開閉弁12および第二開閉弁14を開閉させる場合、シリンダ装置C1の伸縮速度が所定速度未満である場合には、可変リリーフ弁22によって減衰力を発揮するので、当該減衰力の調整が可能である。また、第一開閉弁12および第二開閉弁14を開閉させる場合であっても、シリンダ装置C1の伸縮速度が所定速度以上となる場合には、シリンダ装置C1は、減衰弁Vによって高い減衰力を発揮する。
つづいて、鉄道車両の走行中に大きな地震が発生する等して、電力供給が途絶えた制御失陥時には、第一開閉弁12および第二開閉弁14が遮断ポジションを採り、前述のようにシリンダ装置C1はパッシブダンパとして機能する。この状態では、シリンダ装置C1が伸縮すると必ずシリンダ2内から作動油が排出され、排出された作動油は、排出通路21を通過してタンク8へ流入する。したがって、この制御失陥時にあってもシリンダ装置C1は減衰力を発揮するが、大地震によって台車が激しく振動して車体との相対速度が速く、シリンダ装置C1の伸縮速度が所定速度以上となると、シリンダ装置C1は、減衰弁Vによって減衰力を発揮するようになるため、可変リリーフ弁22のみで減衰力を発揮する平常時より高い減衰力を発揮する。
以上より、本発明のシリンダ装置C1によれば、地震によって車体Bが著大な振動を呈しても高減衰力を発揮して車体Bの振動を低減でき、鉄道車両が走行中に地震が発生しても車体Bの振動が速やかに低減されて脱輪を効果的に抑制できる。
また、本発明の鉄道車両用制振装置S1によれば、地震によって車体Bが著大な振動を呈しても高減衰力を発揮して車体Bの振動を低減でき、鉄道車両が走行中に地震が発生しても車体Bの振動が速やかに低減されて脱輪を効果的に抑制できる。そして、本例の鉄道車両用制振装置S1では、一つの台車Tに対して設置された複数のシリンダ装置C1を備えているので、各シリンダ装置C1が脱輪を防止するための必要減衰力を分担して発揮する。したがって、本例の鉄道車両用制振装置S1では、一のシリンダ装置C1のみで必要減衰力を発揮する場合に比して、各シリンダ装置C1が発揮すべき減衰力の上限を低くできるので、各シリンダ装置C1のロッド4の径が小径となってシリンダ2および外筒7の外径も小さくなる。また、一つのシリンダ装置で必要減衰力を発揮する場合、強度面の問題から鉄道車両側でもシリンダ装置を取付けるブラケットの大型化が避けられないが、本例の鉄道車両用制振装置S1では、各シリンダ装置C1が必要減衰力を分担するので前記ブラケットの大型化も避けられる。よって、鉄道車両用制振装置S1は、脱輪防止を可能としつつも、各シリンダ装置C1の外径の大径化と鉄道車両側のブラケットの大型化も防止できるので、各シリンダ装置C1の鉄道車両への搭載性が良好となる。
さらに、本例の鉄道車両用制振装置S1では、各シリンダ装置C1は、基準速度で伸縮する場合に発揮する減衰力は必要減衰力を設置数で除した値に設定されている。よって、各シリンダ装置C1を構成するシリンダ2、ピストン3、ロッド4といった各部品を共通部品で構成でき、より一層の小型化に寄与でき、鉄道車両側のブラケットも共通部品となる。したがって、鉄道車両用制振装置S1における各シリンダ装置C1の加工、組付、メンテナンスも非常に容易となる。
また、減衰部23は、本例では、排出通路21における可変リリーフ弁22の下流に設けられる減衰弁Vと、排出通路21の減衰弁Vの上流から分岐して減衰弁Vを迂回してタンク8に連通される迂回路BPと、排出通路21の可変リリーフ弁22と減衰弁Vとの間に設けた切換弁24とを備えている。そして、減衰部23によって高い減衰力を発揮し始める所定速度としては、本例では、地震時に到達するであろう台車Tに対する車体Bの相対速度に設定されている。減衰部23がこのように構成されたシリンダ装置C1では、地震時以外の平常時では切換弁24が迂回路BPを選択して減衰弁Vを迂回するため減衰弁Vの影響を受けず、地震時には減衰弁Vを有効として高減衰力を発揮して脱輪を効果的に防止できる。また、減衰弁Vは、本例ではオリフィスとされているので安価で済むが、オリフィス以外の弁を採用してもよい。さらに、本例では、所定速度は、0.2m/secに設定されているが、他の数値に設定されてもよい。
なお、減衰部23は、前記構成に限定されるものではない。減衰部23は、シリンダ2に対するピストン3の相対速度が所定速度以上となるとリリーフ弁(可変リリーフ弁22)より大きな圧力損失を生じさせるものであればよい。このようにすれば、減衰部23は、所定速度未満ではリリーフ弁(可変リリーフ弁22)よる小さな圧力損失を生じさせるので、平常時におけるリリーフ弁(可変リリーフ弁22)よって発揮される減衰力への影響が少なく、地震時には脱輪を防止できる。
また、本例のシリンダ装置C1にあっては、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する第一通路11の途中に設けた第一開閉弁12と、ピストン側室6とタンク8とを連通する第二通路13の途中に設けた第二開閉弁14と、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう流れのみを許容する整流通路18と、タンク8からピストン側室6へ向かう流れのみを許容する吸込通路19とを備えている。よって、本例のシリンダ装置C1では、カルノップのスカイフック理論に基づくセミアクティブ制御を容易に実現でき、シリンダ装置C1をスカイフックセミアクティブダンパとして機能させ得る。なお、整流通路18を第一開閉弁12の遮断ポジションに統合し、吸込通路19を第二開閉弁14の遮断ポジションに統合してもよい。また、シリンダ装置C1の構成から第一通路11、第一開閉弁12、第二通路13および第二開閉弁14を廃止する場合には、シリンダ装置C1はパッシブダンパとして機能する。よって、シリンダ装置C1をスカイフックセミアクティブダンパとして機能させる必要がなく、パッシブダンパとしてのみ機能させる場合には、第一通路11、第一開閉弁12、第二通路13および第二開閉弁14を廃止してもよい。
なお、本例のシリンダ装置C1では、リリーフ弁を可変リリーフ弁22としているが、減衰力を可変にしない場合には、リリーフ弁を開弁圧が一定のリリーフ弁としてもよい。このようにシリンダ装置C1を構成しても、地震時には減衰弁Vが流路面積を減少させて減衰力を高くでき、脱輪を防止できる。
<第二の実施の形態>
第二の実施の形態におけるシリンダ装置C2は、図4に示すように、第一の実施の形態のシリンダ装置C1の構成に、ロッド側室5へ作動油を供給可能なポンプ15を設けたものである。また、鉄道車両用制振装置S2は、図示はしないが、第一の実施の形態の鉄道車両用制振装置S1と同様に、一つの台車Tに対して二つのシリンダ装置C2を備えている。
シリンダ装置C2は、具体的には、タンク8とロッド側室5とを連通する供給通路16と、この供給通路16に設けられて作動油をタンク8から吸い上げてロッド側室5へ吐出するポンプ15と、供給通路16のポンプ15の吐出側に設けられてロッド側室5からタンク8へ向かう作動油の流れを阻止する逆止弁17とを備えている。
そして、ポンプ15は、図示しないコントローラに制御されるモータ20によって駆動され、一方向のみに作動油を吐出するポンプとされている。また、ポンプ15は、供給通路16に吸込口をタンク8側に吐出口をロッド側室5側に向けて設置されていて、モータ20によって駆動されるとタンク8から作動油を吸込んでロッド側室5へ作動油を供給する。
前述のようにポンプ15は、一方向のみに作動油を吐出するのみで回転方向の切換動作がないので、回転切換時に吐出量が変化するといった問題は皆無であり、安価なギアポンプ等を使用できる。
さらに、ポンプ15の回転方向が常に同一方向であるので、ポンプ15を駆動する駆動源であるモータ20にあっても回転切換に対する高い応答性が要求されず、その分、モータ20も安価なものを使用できる。なお、逆止弁17は、シリンダ装置C2が外力によって強制的に伸縮させられる際に、ポンプ15側への作動油の逆流を阻止するために設けてある。
つづいて、前記のように構成されたシリンダ装置C2に所望の伸長方向の推力を発揮させる場合、モータ20を回転させポンプ15からシリンダ2内へ作動油を供給しつつ、第一開閉弁12を連通ポジションとし第二開閉弁14を遮断ポジションとする。すると、ロッド側室5とピストン側室6とが連通状態におかれて両者にポンプ15から作動油が供給され、ピストン3が図4中左方へ押されシリンダ装置C2は伸長方向の推力を発揮する。ロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力が可変リリーフ弁22の開弁圧を上回ると、可変リリーフ弁22が開弁して作動油が排出通路21を介してタンク8へ排出される。よって、ロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力は、可変リリーフ弁22に与える電流量で決まる可変リリーフ弁22の開弁圧にコントロールされる。そして、シリンダ装置C2は、ピストン3におけるピストン側室6側とロッド側室5側の受圧面積差に可変リリーフ弁22によってコントロールされるロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力を乗じた値の伸長方向の推力を発揮する。
これに対して、シリンダ装置C2に所望の収縮方向の推力を発揮させる場合、モータ20を回転させてポンプ15からロッド側室5内へ作動油を供給しつつ、第一開閉弁12を遮断ポジションとし第二開閉弁14を連通ポジションとする。すると、ピストン側室6とタンク8が連通状態におかれるとともにロッド側室5にポンプ15から作動油が供給されるので、ピストン3が図4中右方へ押されシリンダ装置C2は収縮の推力を発揮する。そして、前述と同様に、可変リリーフ弁22へ与える電流量の調節により、シリンダ装置C2は、ピストン3におけるロッド側室5側の受圧面積と可変リリーフ弁22によってコントロールされるロッド側室5内の圧力を乗じた収縮方向の推力を発揮する。このように第二の実施の形態におけるシリンダ装置C2は、アクチュエータとして機能できるのである。
また、第一開閉弁12を開き第二開閉弁14を閉じた状態で、外力でロッド4が図4中左方へ移動する場合、ポンプ15の駆動の有無に拘わらず、シリンダ装置C2はロッド4の移動を妨げる方向、つまり、収縮方向の力を発揮しない。この場合、ポンプ15が駆動中では、ロッド4がシリンダ2から退出する際に減少するシリンダ2内における体積変化にポンプ15の吐出流量が追い付かなくなるが、吸込通路19を通じてタンク8からシリンダ2内へ作動油が供給される。また、この場合において、ポンプ15が駆動していない場合には、ロッド4がシリンダ2から退出する体積分の作動油が吸込通路19を通じてタンク8からシリンダ2内へ作動油が供給される。いずれにせよ、この場合には、シリンダ2内の圧力はタンク圧となるから、シリンダ装置C2はロッド4の移動を妨げる方向、つまり、収縮方向の減衰力を発揮しない。
なお、第一開閉弁12を開き第二開閉弁14を閉じた状態で、外力でロッド4が図4中右方へ移動する場合、ポンプ15の駆動の有無に拘わらず、シリンダ2内へのロッド4の侵入によってシリンダ2内から押し出された作動油は、排出通路21を通じてタンク8へ戻される。この場合には、シリンダ2内の圧力が可変リリーフ弁22によって所望の圧力に制御されるので、シリンダ装置C2はロッド4の移動を妨げる方向、つまり、伸長方向の力を発揮できる。
他方、第一開閉弁12を閉じ第二開閉弁14を開いた状態で、外力でロッド4が図4中右方へ移動する場合、ポンプ15の駆動の有無に拘わらず、シリンダ装置C2はロッド4の移動を妨げる方向、つまり、伸長方向の力を発揮しない。この場合、ポンプ15が駆動中では、ロッド4がシリンダ2へ進入する際に増加するロッド側室5内における体積変化にポンプ15の吐出流量が追い付かなくなるが、整流通路18を通じてピストン側室6からロッド側室5内へ作動油が供給される。また、ロッド4がシリンダ2内へ進入するために、シリンダ2内でロッド4のシリンダ2侵入分の体積の作動油が過剰となるが、圧縮側のピストン側室6が第二通路13を通じており、この過剰分の作動油がタンク8へ排出される。また、この場合において、ポンプ15が駆動していない場合にも、駆動中と同様に、ロッド4がシリンダ2へ進入する際に増加するロッド側室5内の体積分の作動油が整流通路18を通じてピストン側室6から供給される。そして、過剰となるロッド4のシリンダ2侵入分の体積の作動油は、圧縮されるピストン側室6から第二通路13を介してタンク8へ排出される。いずれにせよ、この場合には、シリンダ2内の圧力はタンク圧となるから、シリンダ装置C2はロッド4の移動を妨げる方向、つまり、伸長方向の減衰力を発揮しない。
なお、第一開閉弁12を閉じて第二開閉弁14を開いた状態で、外力でロッド4が図4中左方へ移動する場合、ポンプ15の駆動の有無に拘わらず、ロッド側室5から押し出された作動油は、排出通路21を通じてタンク8へ戻される。この場合には、ロッド側室5内の圧力が可変リリーフ弁22によって所望の圧力に制御されるので、シリンダ装置C2はロッド4の移動を妨げる方向、つまり、収縮方向の力を発揮できる。
つまり、第一開閉弁12を開いて第二開閉弁14を閉じる場合或いは第一開閉弁12を閉じて第二開閉弁14を開く場合、ポンプ15の駆動状況に拘わらず、シリンダ装置C2は、外力からの振動入力に対して伸長或いは収縮のいずれか一方にのみ減衰力を発揮する状態となる。
よって、本例のシリンダ装置C2は、たとえば、力を発揮する方向が鉄道車両の台車Tの振動により車体Bを加振する方向である場合、そのような方向には力を出さないようにシリンダ装置C2を片効きのダンパとして機能させ得る。よって、このシリンダ装置C2は、カルノップのスカイフック理論に基づくセミアクティブ制御を容易に実現できるため、セミアクティブダンパとしても機能できる。
そして、このシリンダ装置C2にあっても、第一の実施の形態のシリンダ装置C1の説明で理解できるように、第一開閉弁12と第二開閉弁14の開閉のみでダンパとして機能もできる。つまり、モータ20でポンプ15を駆動している状況にあっても、シリンダ装置C2が外力で強制的に伸縮させられる際には、スカイフックセミアクティブダンパとしてもパッシブダンパとして機能でき、可変リリーフ弁22の開弁圧の調節で減衰力も調節できる。このように、シリンダ装置C2は、アクチュエータとして機能するのみならず、モータ20の駆動状況に拘わらず、第一開閉弁12と第二開閉弁14の開閉のみでダンパとしても機能できる。そして、シリンダ装置C2が推力或いは減衰力を発揮すべき方向は、第一開閉弁12と第二開閉弁14の開閉のみで制御され、推力と減衰力を発揮すべき方向が同じである場合には第一開閉弁12と第二開閉弁14の開閉状態は一致する。よって、シリンダ装置C2では、アクチュエータとスカイフックセミアクティブダンパの状態の切換えを、ポンプ15の停止と駆動の切換えや、面倒かつ急峻な第一開閉弁12と第二開閉弁14の切換動作を伴わずに行える。したがって、シリンダ装置C2は、応答性および信頼性が高いシステムとなる。
このように構成されたシリンダ装置C2は、減衰部23を備えているので、シリンダ装置C1と同様に、シリンダ装置C2が外力で伸縮させられた際に伸縮速度が所定速度以上となると減衰弁Vによって高い減衰力を発揮する。よって、本発明のシリンダ装置C2にあっても、車体Bが著大な振動を呈しても高減衰力を発揮して車体Bの振動を低減でき、鉄道車両が走行中に地震が発生しても車体Bの振動が速やかに低減されて脱輪を効果的に抑制できる。
また、本発明の鉄道車両用制振装置S2によれば、地震によって車体Bが著大な振動を呈しても高減衰力を発揮して車体Bの振動を低減でき、鉄道車両が走行中に地震が発生しても車体Bの振動が速やかに低減されて脱輪を効果的に抑制できる。そして、本例の鉄道車両用制振装置S2では、一つの台車Tに対して設置された複数のシリンダ装置C2を備えているので、各シリンダ装置C2が脱輪を防止するための必要減衰力を分担して発揮する。したがって、本例の鉄道車両用制振装置S2では、一のシリンダ装置C2のみで必要減衰力を発揮する場合に比較して、各シリンダ装置C2が発揮すべき減衰力の上限を低くできるので、各シリンダ装置C2のロッド4の径が小径となってシリンダ2および外筒7の外径も小さくなる。また、一つのシリンダ装置で必要減衰力を発揮する場合、強度面の問題から鉄道車両側でもシリンダ装置を取付けるブラケットの大型化が避けられないが、本例の鉄道車両用制振装置S2では、各シリンダ装置C2が必要減衰力を分担するので前記ブラケットの大型化も避けられる。よって、鉄道車両用制振装置S2は、脱輪防止を可能としつつも、各シリンダ装置C2の外径の大径化と鉄道車両側のブラケットの大型化も防止できるので、各シリンダ装置C2の鉄道車両への搭載性が良好となる。
さらに、本例の鉄道車両用制振装置S2では、各シリンダ装置C2は、基準速度で伸縮する場合に発揮する減衰力は必要減衰力を設置数で除した値に設定されているので、各シリンダ装置C2を構成するシリンダ2、ピストン3、ロッド4といった各部品を共通部品で構成でき、より一層の小型化に寄与でき、鉄道車両側のブラケットも共通部品となる。よって、鉄道車両用制振装置S2における各シリンダ装置C2の加工、組付、メンテナンスも非常に容易となる。
<鉄道車両用制振装置のバリエーション>
なお、鉄道車両用制振装置は、複数の全く同じ構成のシリンダ装置C1(C2)で構成されてもよいが、地震発生時における脱輪の防止の観点からすれば、シリンダ装置C1とシリンダ装置C2とで構成、つまり、構成の異なる複数のシリンダ装置で構成されてもよい。したがって、鉄道車両用制振装置は、シリンダ装置C1と、シリンダ装置C1の構成から第一通路11、第一開閉弁12、第二通路13および第二開閉弁14を廃止したパッシブダンパ機能のみを有するシリンダ装置とで構成されもよい。よって、鉄道車両用制振装置は、シリンダ装置C1の構成から第一通路11、第一開閉弁12、第二通路13および第二開閉弁14を廃止したパッシブダンパ機能のみを有するシリンダ装置、シリンダ装置C1およびシリンダ装置C2のうちから任意の複数のシリンダ装置を適宜選択して組み合わせて構成されてもよいのである。このようにしても、鉄道車両用制振装置は、地震によって車体Bが著大な振動を呈しても高減衰力を発揮して車体Bの振動を低減でき、鉄道車両が走行中に地震が発生しても車体Bの振動が速やかに低減されて脱輪を効果的に抑制できる。また、鉄道車両用制振装置は、一つの台車Tに対して設置された複数のシリンダ装置を備えており、各シリンダ装置が脱輪を防止するための必要減衰力を分担して発揮するから、鉄道車両への搭載性が良好となる。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
2・・・シリンダ、3・・・ピストン、4・・・ロッド、5・・・ロッド側室、6・・・ピストン側室、8・・・タンク、11・・・第一通路、12・・・第一開閉弁、13・・・第二通路、14・・・第二開閉弁、15・・・ポンプ、16・・・供給通路、18・・・整流通路、19・・・吸込通路、21・・・排出通路、22・・・リリーフ弁、23・・・減衰部、24・・・切換弁、B・・・車体、BP・・・迂回路、C1,C2・・・シリンダ装置、S1,S2・・・鉄道車両用制振装置、T・・・台車、V・・・減衰弁

Claims (6)

  1. 液体が充填されるシリンダと、
    前記シリンダ内に挿入されるロッドと、
    前記シリンダ内に摺動自在に挿入されるとともに前記ロッドに連結されて、前記シリンダ内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストンと、
    前記液体を貯留するタンクと、
    前記ロッド側室と前記タンクとを連通する排出通路と、
    前記排出通路に設けられるリリーフ弁と、
    前記リリーフ弁の下流に設けられる減衰弁と、
    前記排出通路の前記リリーフ弁の下流であって前記減衰弁の上流から分岐して前記減衰弁を迂回して前記タンクに連通される迂回路と、
    前記減衰弁と前記迂回路の一方を選択する切換弁とを備え、
    前記切換弁は、前記排出通路を流れる流量に応じて切り換わり、伸縮速度が所定速度未満である場合には前記迂回路を選択し、前記伸縮速度が前記所定速度以上の場合には前記減衰弁を選択する
    ことを特徴とするシリンダ装置。
  2. 前記ピストン側室から前記ロッド側室へ向かう前記液体の液体流れのみを許容する整流通路と、
    前記タンクから前記ピストン側室へ向かう前記液体の流れのみを許容する吸込通路とを備えた
    ことを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
  3. 前記ロッド側室と前記ピストン側室とを連通する第一通路に設けた第一開閉弁と、
    前記ピストン側室と前記タンクとを連通する第二通路に設けた第二開閉弁とを備えた
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のシリンダ装置。
  4. 前記タンクと前記ロッド側室を連通する供給通路と、
    前記供給通路に設けられて前記タンクから前記ロッド側室へ前記液体を供給可能なポンプとを備えた
    ことを特徴とする請求項3に記載のシリンダ装置。
  5. 液体が充填されるシリンダと、前記シリンダ内に挿入されるロッドと、前記シリンダ内に摺動自在に挿入されるとともに前記ロッドに連結されて前記シリンダ内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストンと、前記液体を貯留するタンクと、前記ピストン側室から前記ロッド側室へ向かう前記液体の流れのみを許容する整流通路と、前記タンクから前記ピストン側室へ向かう前記液体の流れのみを許容する吸込通路と、前記ロッド側室と前記タンクとを連通する排出通路と、前記排出通路に設けられるリリーフ弁と、前記シリンダに対する前記ピストンの相対速度が所定速度以上となると前記リリーフ弁より大きな圧力損失を生じさせる減衰部とを有するシリンダ装置、
    液体が充填されるシリンダと、前記シリンダ内に挿入されるロッドと、前記シリンダ内に摺動自在に挿入されるとともに前記ロッドに連結されて前記シリンダ内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストンと、前記液体を貯留するタンクと、前記ピストン側室から前記ロッド側室へ向かう前記液体の流れのみを許容する整流通路と、前記タンクから前記ピストン側室へ向かう前記液体の流れのみを許容する吸込通路と、前記ロッド側室と前記ピストン側室とを連通する第一通路に設けた第一開閉弁と、前記ピストン側室と前記タンクとを連通する第二通路に設けた第二開閉弁と、前記ロッド側室と前記タンクとを連通する排出通路と、前記排出通路に設けられるリリーフ弁と、前記シリンダに対する前記ピストンの相対速度が所定速度以上となると前記リリーフ弁より大きな圧力損失を生じさせる減衰部とを有するシリンダ装置、
    および、液体が充填されるシリンダと、前記シリンダ内に挿入されるロッドと、前記シリンダ内に摺動自在に挿入されるとともに前記ロッドに連結されて前記シリンダ内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストンと、前記液体を貯留するタンクと、前記ロッド側室と前記ピストン側室とを連通する第一通路に設けた第一開閉弁と、前記ピストン側室と前記タンクとを連通する第二通路に設けた第二開閉弁と、前記タンクと前記ロッド側室を連通する供給通路と、前記供給通路に設けられて前記タンクから前記ロッド側室へ前記液体を供給可能なポンプと、前記ロッド側室と前記タンクとを連通する排出通路と、前記排出通路に設けられるリリーフ弁と、前記シリンダに対する前記ピストンの相対速度が所定速度以上となると前記リリーフ弁より大きな圧力損失を生じさせる減衰部とを有するシリンダ装置のうち、
    任意に選択した複数のシリンダ装置を備え、
    前記各シリンダ装置が鉄道車両における車体と台車との間に介装され、
    前記各シリンダ装置は、それぞれ、前記シリンダに対する前記ピストンの相対速度が所定速度以上となると前記減衰部によって減衰力を発揮し、
    前記各シリンダ装置が前記所定速度より高い基準速度で伸縮する際に前記減衰部によって発生する減衰力の総和を地震時に一つの台車あたり要求される必要減衰力に等しくした
    ことを特徴とする鉄道車両用制振装置。
  6. 前記各シリンダ装置が基準速度で伸縮する際に前記減衰部によって発生する減衰力は、前記必要減衰力を一つの台車に設置される前記各シリンダ装置の設置数で割った値に等しくした
    ことを特徴とする請求項に記載の鉄道車両用制振装置。
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